- 1 -主文被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 大阪地方検察庁で保管中の覚せい剤2袋を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は第1A,B及びCと共謀の上,平成20年2月28日午前2時ころ,横浜市旭区内の団地駐車場において,Dほか1名所有又は管理に係る現金2万円及び預金通帳等13点積載の普通乗用自動車1台(時価合計252万1000円相当)を窃取した第2Eと共謀の上,不正に入手したF名義のクレジットカードを使用して商品をだまし取ろうと企て, 同年3月9日午後零時33分ころから同日午後零時57分ころまでの間,大阪市鶴見区鶴見4丁目17番1号イオンモール鶴見リーファ1階ブランドオフイオンモール鶴見リーファ店において,4回にわたり,同店店員Gほか1名に対し,上記クレジットカードの正当な使用権限も同カードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,上記クレジットカードを呈示し,バッグ等6点の購入を申し込み,行使の目的で,ほしいままに,被告人がクレジットカード売上票4通の各ご署名欄に「F」とそれぞれ記載してF作成名義にかかるクレジットカード売上票4通を偽造した上,上記Gらに対し,これらを真正に成立したもののように装って提出行使し,同人らをして,被告人らが上記クレジットカードの正当な使用権限を有し,後日同カードシステム所定の方法により確実に代金の支払いを受けられるものと誤信させ,即時同所において,上記Gらからバッグ等6点(消費税込みの販売価格合計66万3500円)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた- 2 - 同日午後1時26分ころ,上記イオンモール鶴見リーファ1階所在のトミーヒルフィガーイオンモール鶴見リーファ店において,同店店員Hに対 )の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた- 2 - 同日午後1時26分ころ,上記イオンモール鶴見リーファ1階所在のトミーヒルフィガーイオンモール鶴見リーファ店において,同店店員Hに対し,上記クレジットカードの正当な使用権限も同カードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,上記クレジットカードを呈示し,ジャケット等16点の購入を申し込み,上記Hをして,被告人らが上記クレジットカードの正当な使用権限を有し,後日同カードシステム所定の方法により確実に代金の支払いを受けられるものと誤信させ,即時同所において,上記Hからジャケット等16点(販売価格〔消費税抜き〕合計22万4400円)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第3法定の除外事由がないのに,同月19日ころ,同市浪速区大国1丁目1番6号先路上に停車中の普通貨物自動車内において,フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって,覚せい剤を使用した第4みだりに,同月21日,大阪府吹田市山田北18番1号先主要地方道大阪中央環状線東行路上に停車中の普通貨物自動車内において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶1.697グラムを所持した第5同日午前5時7分ころ,大阪市淀川区東三国6丁目3番所在の駐車場「パネモパーキング」前北側路上において,大阪府淀川警察署勤務の巡査長I(当時27歳)及び同巡査部長J(当時37歳)が,同駐車場で金品を窃取しようとしていた者として,被告人の知人であるCを職務質問しているのを認めるや,自らもIらから職務質問を受けて自己の覚せい剤所持事実等が発覚しないよう逃走すべく,同駐車場内に駐車していた普通貨物自動車に乗り込んだが,そのまま同車を発進 であるCを職務質問しているのを認めるや,自らもIらから職務質問を受けて自己の覚せい剤所持事実等が発覚しないよう逃走すべく,同駐車場内に駐車していた普通貨物自動車に乗り込んだが,そのまま同車を発進させれば,同車をIらに衝突させ,同人らを同車で轢過するなどして死亡させる危険性が高いことを認識しながら,同人らを死亡させることもやむなしと決意し,あえて同車を上記駐車場内からIらのいた北側路上に向けて急発進させて,同車前部をIの腰部付近に衝突させて路上に転倒させた上,- 3 -同人を同車底部に巻き込んだまま,同車を約11.2メートル前進させて同人を路上に引きずり,その際,さらに,同人を助けるため同車フードパネルを押すなどして同車の前進を阻止しようとしたJに向かって,同車を前進させて同人を路上に転倒させて同車右前輪で同人の右下肢を轢過するなどし,もって,I及びJの職務の執行を妨害するとともに,Iに全治約6か月間を要する左第1・2肋骨骨折,右外傷性血気胸,左肺挫傷等の各傷害を,Jに安静加療約1か月間を要する右下腿圧挫傷の傷害を負わせたが,同人らを殺害するには至らなかった第6上記第5の犯行後,上記車両を運転して逃走中,同日午前5時18分ころ,大阪府吹田市山田北18番1号先主要地方道大阪中央環状線東行き第1通行帯を逆走していたところ,大阪府警察本部地域部第二方面機動警ら隊勤務の巡査長K(当時31歳)が運転し,同巡査部長L(当時40歳)が助手席に乗務して上記第5の犯行の犯人として被告人を探索して同第1通行帯を走行中の警ら用無線自動車を自車進路前方に発見し,Lが逮捕すべく車載マイクで被告人に停止を求めたにもかかわらず,なお逃走するため,上記警ら用無線自動車の左前部に自車左前部を衝突させる暴行を加え,もって,K及びLの職務の執行を妨害するとともに, ,Lが逮捕すべく車載マイクで被告人に停止を求めたにもかかわらず,なお逃走するため,上記警ら用無線自動車の左前部に自車左前部を衝突させる暴行を加え,もって,K及びLの職務の執行を妨害するとともに,上記暴行により,Kに加療約1週間を要する頚椎捻挫の傷害を,Lに加療約1週間を要する前額部打撲等の傷害を負わせ,さらに,大阪府警察本部長管理にかかる上記警ら用無線自動車の左フロントフェンダー等を損壊させ(損害額150万3770円,もって,他人の器物を損壊した)ものである。 (証拠の標目〈省略〉)(事実認定の補足説明)※なお,補足説明中月日のみの記載は平成20年を指す。 弁護人は,①判示第1の窃盗につき,被告人が共犯者らとともに犯行場所に赴いたことは認めるが,被告人は共犯者らが窃盗行為に及ぶことは知らされておらず,共犯者との間で窃盗の共謀はなく,被告人自身が窃盗の実行行為に及んだこ- 4 -ともないので無罪である,②判示第5の殺人未遂の点につき,被告人には警察官2名が自車進路上にいることを認識していなかったので故意がない(なお公務執行妨害罪の成立は争っていない)と主張し,被告人もこれらの主張に沿う供述。 をしている。そこで,当裁判所が判示のとおり事実を認定した理由について補足して説明する。 判示第1の事実について〈省略〉 判示第5の殺人未遂の点について(1)前提事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。なお,以下の各事実については当事者間におおむね争いがなく,証拠上も優に認定することができる。 ア被告人は,3月21日未明,Cが窃取した車を買い受けるため,レジアスエースを運転し,判示第5記載のパネモパーキング(以下「本件駐車場」という)に赴いた。なお,レジアスエースには,被告人が密売人から買い受。 けていた覚せい剤が積載 取した車を買い受けるため,レジアスエースを運転し,判示第5記載のパネモパーキング(以下「本件駐車場」という)に赴いた。なお,レジアスエースには,被告人が密売人から買い受。 けていた覚せい剤が積載されていた。 イ被告人は,本件駐車場に到着すると,レジアスエースを本件駐車場出入口から15ないし20メートルほど奥に入った場所に停車させ,その場にいたCと会った。 ウその後,被告人とCが,本件駐車場において,盗難車の積載品を物色するなどしていたところ,本件駐車場の出入口付近に停車していた黒色チェイサー(以下「チェイサー」という)の運転手(Cと同行して本件駐車場に赴。 いていた者)が,クラクションを鳴らした。 。 エCは,このクラクションが警察官等の接近を自己に知らせるものだと思い,チェイサーのもとまで走った。 オそのころ,自転車に乗って付近を走行中であった当時交番勤務の警察官I及び同Jは,本件駐車場付近を通りかかったが,その際,Iは,本件駐車場から何かを抱えて車道上に飛び出してきたCを認めた。 - 5 -カIは,Cの挙動から,Cが何らかの犯罪行為を行ったのではないかとの嫌疑を抱き,Cに職務質問をするため声を掛けたところ,Cはチェイサーのトランク上部に飛び乗ろうとした。 キそのため,IとJは,自転車から飛び降り,Cを取り押さえようとしてその肩をつかむなどしたが,Cが手をばたつかせて抵抗したので,3名はチェイサーのトランク付近でもみ合いとなった。 クそのころ,被告人は,警察官が臨場したことを察知し,上記のとおりレジアスエースに覚せい剤を積載していたことから,自己の覚せい剤所持等の事実が発覚することを免れるために,その場から逃走すべく,同車に乗り込み,同車を発進させた。 ケレジアスエースが本件駐車場の出入口付近にさしかかったところで,同 いたことから,自己の覚せい剤所持等の事実が発覚することを免れるために,その場から逃走すべく,同車に乗り込み,同車を発進させた。 ケレジアスエースが本件駐車場の出入口付近にさしかかったところで,同車はIに衝突した(なお,この際のレジアスエースの速度は少なくとも時速約29キロメートルであった。Jは,レジアスエースの接近に気づき,と。)っさに身をかわしたため,衝突を免れたが,Iが同車に衝突し,同車の下部に巻き込まれた状態であるにもかかわらず,被告人が同車をさらに進行させようとアクセルをふかしていたため,Iを助けるため,同車の前方に立ち,同車前部に手をつけ,同車を止めようとした。 コしかし,レジアスエースが,上記の状態のまま再び前進し,加速したため,Jは耐えきれず,その場にしりもちをつき,直後にその右下肢を同車の右前輪でひかれた。また,Iは,レジアスエースの底部に巻き込まれたまま,約11.2メートルにわたって引きずられた。 サ本件により,Iは,全治約6か月間を要する左鎖骨骨折,右外傷性血気胸,左肺挫傷,左第1・2肋骨及び右第11肋骨骨折などの傷害を,Jは,安静加療約1か月間を要する右下腿圧挫傷などの傷害を,それぞれ負った。 (2)J供述Jは,公判廷において,概要,以下のとおり供述している。 - 6 -私とIがCに対して職務質問をしようとしたところ,Cは,本件駐車場の出入口付近に停車していたチェイサーのトランク上部に上ろうとした。そこで,私とIは,自転車をその場に倒し,Cを取り押さえようとした。なお,実況見分調書(甲38号証)添付の写真第10号(以下「本件現場写真」という)。 の中央付近に写っている自転車は,Iが乗っていた自転車であり,事件後にこれを動かしていないことから,事件当時も写真に写っている位置に倒れていた。 また,チェイサ 0号(以下「本件現場写真」という)。 の中央付近に写っている自転車は,Iが乗っていた自転車であり,事件後にこれを動かしていないことから,事件当時も写真に写っている位置に倒れていた。 また,チェイサーは,本件現場写真に写っている「H」という札の付近(Jの。 。 証人尋問調書添付書面の「①」と書かれた位置)にその後端が位置していた私とIがCの体をつかんだところ,Cは我々から逃げるようにして手をばたつかせた。そのため我々3人は,最終的に本件現場写真に写っている黒色ポーチの付近(同書面の「②」と書かれた位置)まで移動した。なお,我々3人。 が,当該位置まで飛び出したというような状況はなかった。 そのとき,本件駐車場からレジアスエースが出てきて,Iの背中が同車の左前面と衝突した。私たちがCを捕まえようとしてから,Iがレジアスエースと衝突するまでの間は5ないし10秒程度であった。 Iは,前に一,二歩つんのめり,その後崩れ落ちるように四つんばいになった。レジアスエースはそのまま進行したため,同車のバンパー部分がIの右腰に当たり,Iは同車に巻き込まれ,同車は動かなくなった。 私は,Iを助けようと,レジアスエースの前に立ち,同車の右前部を両手で押さえ,運転席に向かって「止まれ。止まれ」と叫ぶとともに,同車バン,。 パーの真下にいるIに向かってその名前を呼んだ。その際,私は,前にかがんではいたけれども,しゃがんだりはしておらず,私の顔はレジアスエースのフロントガラスよりも上にあった。 その後二,三秒すると再びレジアスエースは前進をし,加速してきたので,私は耐えきれず,後ろにしりもちをついてしまい,その後右足のくるぶしの上からふくらはぎを同車の右前輪でひかれた。 - 7 -レジアスエースはそのまま若干右にハンドルを切って前進し,本件駐車場とは反対側の歩道上 ず,後ろにしりもちをついてしまい,その後右足のくるぶしの上からふくらはぎを同車の右前輪でひかれた。 - 7 -レジアスエースはそのまま若干右にハンドルを切って前進し,本件駐車場とは反対側の歩道上にある街路樹と衝突し,いったんバックをして切り返したのち,東に向かって逃げていった。レジアスエースが走り去った後,Iは本件駐車場と反対側の歩道近くの車道上でぐったりと横たわっていた。 (3)C供述Cは,公判廷において,概要,以下のとおり供述している。 私は,本件駐車場で,被告人と会った後,警察官が通りかかったので,連れが待機しているチェイサーのトランク上部に飛び乗ろうとしたが,警察官に体をつかまれ,路上に引っ張り下ろされた。その際,チェイサーは,本件現場写真に写っている「D」という札のやや右下辺り(Cの証人尋問調書添付書面の「①」と書かれた位置)にその後端が位置していた。 。 そのまま私は警察官2名ともみ合いになったが,最終的に,本件現場写真に。 ,写っている「I」という札の右横辺り(同書面の「②」と書かれた位置)で私の左側にいた警察官1名がレジアスエースにはねられた。なお,私と警察官2名がレジアスエースの前に飛び出したかどうかについては記憶がない。もみ合いになってから警察官がはねられるまでの時間は10秒くらいあったかも知れない。 私は,自分が直接レジアスエースに衝突したのかどうかは分からないが,左腰辺りに軽い衝撃を感じ,右前方に2歩くらいよろけた。 はねられた警察官は,地面に倒れ,もう一方の警察官が倒れた警察官のもとに駆け寄って行き,左手を上げ,被告人に向かって止まれというようなことを言っていた。 その後,はねられなかった方の警察官が,レジアスエースの右前輪に足を踏まれた。 (4)M供述本件駐車場の対面側に居住しているMは,公判廷におい 告人に向かって止まれというようなことを言っていた。 その後,はねられなかった方の警察官が,レジアスエースの右前輪に足を踏まれた。 (4)M供述本件駐車場の対面側に居住しているMは,公判廷において,概要,以下のと- 8 -おり供述している。 3月21日の午前5時を少し回ったころ,家の外で大きな音がしたので,私がベランダに出ると,自宅前の路上で男の人が倒れており,その横に白のワゴン車が止まっていた。ワゴン車の運転席の前辺りに人が立っており,車体に両手をついて「こら,バックせえ」と3回言っていた。 ,。 その三,四秒後,ワゴン車は急に前進し,街路樹にぶつかった。私は,車の前に立っていた人がワゴン車にひかれるところは見えなかったが,ワゴン車のスピードが速かったので,ひかれてしまったのではないかと思った。 私の視力は裸眼で1.5くらいはある。 (5)上記各供述及び関係証拠から認められる事実上記3名の各供述のほか,関係各証拠によれば,以下の事実を認定することができる。なお,証人間の供述が齟齬しているなど,上記各供述の信用性が問題となる場合には,項目ごとにその信用性に関する判断を示すこととする。 ア警察官2名がCともみ合いを始めた位置についてI及びJは,本件駐車場出入口付近に停車していたチェイサーのトランク上部に乗って逃げようとしていたCを取り押さえようとして,そのトランク付近で同人ともみあいを始めたものであるが,上記チェイサーの停車位置について,Cはチェイサーの後端が本件駐車場出入口の西端付近に位置していたと供述し,他方,Jはチェイサーの後端が本件駐車場出入口の中央付近に位置していたと供述している(なお,Mは「本件駐車場の出入口をふさぐ,ような形ではなく,隣のマンションに入る道のちょっと手前,一杯に止まっていました」と供述するが,その 件駐車場出入口の中央付近に位置していたと供述している(なお,Mは「本件駐車場の出入口をふさぐ,ような形ではなく,隣のマンションに入る道のちょっと手前,一杯に止まっていました」と供述するが,その供述する位置については必ずしも明確で。 はない。そして,他にチェイサーの停車位置に関する客観的な証拠はな。)く(なお,チェイサーを運転していた者は,Iら警察官とCとがもみ合いを開始してから,被告人が本件現場を逃走するまでの間に,チェイサーとともに逃走している,この点に関するJ及びCの供述のいずれの信用性が高。)- 9 -いとも断定することは困難であり,それ以外の地点に停車中の同車の後端があったとうかがわせる証拠もないから,チェイサーの停車位置の後端が本件駐車場出入口の西端から中央付近にあったという限度で認定しうるにとどまり,Iらのもみ合いも上記範囲内の地点で始まったと認められる。 イIに衝突するまでのレジアスエースの走行経路等についてJは,上記のとおり,本件駐車場出入口中央付近に倒れていたIの自転車は,I及びJが本件駐車場でCに対して職務質問を開始しようとした際に,Iが倒したままの位置に変わりないと供述し,その信用性を疑わせる事情は見当たらないところ,本件駐車場出入口歩道西側の半分を占めるようにして,Iの自転車が乗り捨てられ,しかもレジアスエースが本件駐車場内から出てきた際に,上記自転車と接触したことをうかがわせるような痕跡もないこと,本件現場に残されたタイヤ痕との位置関係,Iの自転車と本件駐車場出入口東端との間の距離は,約2メートル余りである(甲38)ことからすれば,レジアスエースは本件駐車場出入口のうち,東側約2メートルの間を時速約29キロメートルの速度で進行し,Iに衝突したものと認められる。 ウIがレジアスエースと衝突した である(甲38)ことからすれば,レジアスエースは本件駐車場出入口のうち,東側約2メートルの間を時速約29キロメートルの速度で進行し,Iに衝突したものと認められる。 ウIがレジアスエースと衝突した位置について(ア)C及びJの各供述Jは,Iがレジアスエースと衝突したのは,同車左前部であったと供述する。 他方,Cは,Iらが本件駐車場出入口東端付近にいたときにレジアスエースと衝突したと供述しているところ,上記のような同車の進行した位置も考慮すれば,Cの供述を前提とすると,Iは,同車右前部に衝突したということができる。 (イ)レジアスエースには,その右フードパネル(フロントパネル)部分に,軟体物と衝突したことによると思われる凹みがあり,その付近には紺色繊維の付着が認められる。また,右フロントバンパー前面部には紺色繊維の- 10 -付着やその付着を伴う擦過痕,左フロントバンパー付近にも,紺色繊維の付着を伴う擦過痕が,左フロントパネル部分には,生地目様の印象を伴う擦過痕が,それぞれ認められる(甲39。 )この点,後記のとおり,レジアスエースがIと衝突した後,同車を停止させようとしていたJは同車が進行してきたため,押さえきれずにしりもちをついたというのであり,Jが同車のフードパネルに衝突した状況はうかがえない。また,レジアスエースのフロントナンバー付近に樹液が付着していたことから,同車が街路樹と衝突したのは,同車前部中央付近であり,同車がその後中央環状線で警察車両と衝突した際には,同車の左前部が警察車両と衝突したものであって,フードパネル右前面部に軟体物による凹損を生じさせる原因とはなり難く,Iの身体以外の軟体物が同部位に衝突したことをうかがわせる証拠はないから,同車右前部にある凹みは,同車がIと衝突した際に生じたとみるのが合理的である に軟体物による凹損を生じさせる原因とはなり難く,Iの身体以外の軟体物が同部位に衝突したことをうかがわせる証拠はないから,同車右前部にある凹みは,同車がIと衝突した際に生じたとみるのが合理的である。 そうすると,Cの上記供述は,レジアスエース車体の客観的状況と整合的である。 他方,Jの供述を前提とすれば,レジアスエースのフードパネルの右前部にある軟体物による凹みが生じた原因を合理的に説明することはできず,同人の供述はレジアスエース車体の客観的状況と整合しない。 (ウ)以上によれば,Iはレジアスエースの右前部付近に衝突したのであり,レジアスエースの走行経路が上記のとおりであったことからすると,その衝突地点は,本件駐車場出入口東端付近であったと認定することができる。 エ警察官2名とCがもみ合いを始めてから,Iがレジアスエースと衝突するまでの3名の動きについて上記のとおり,3名がもみ合いを開始したのは,本件駐車場出入口西端付近から中央付近にかけての地点である。そして,その後,Iが本件駐車場東端付近でレジアスエースと衝突していることから,3名は,もみ合いを開始- 11 -した後,西から東に向かって約3ないし5メートルほど移動したと認められる。なお,その際の3名の移動の速度がどの程度のものであったかについては必ずしも明らかではないが,本件駐車場に隣接する建物に設置された防犯カメラの映像及び音声データの解析(甲50)によれば,被告人が同車を発進させたのは,同日午前5時7分1秒ないし2秒ころ(レジアスエースと思料される車のテールランプが移動し始めた時刻)であり,同車がIと衝突したのは,同日午前5時7分7秒(バンッという衝突音のような音が録音された時刻)であると考えられるので,結局3名が移動していた時間は5秒程度であったと認められる。そうすると )であり,同車がIと衝突したのは,同日午前5時7分7秒(バンッという衝突音のような音が録音された時刻)であると考えられるので,結局3名が移動していた時間は5秒程度であったと認められる。そうすると,3名は,約3ないし5メートルの距離を5秒程度の時間をかけて西から東に移動していたということができる。 オIがレジアスエースと衝突した後の状況について上記のとおりJは,レジアスエースの右前方に立ち,両手を同車の前部につけた状態で,同車を運転していた被告人に対し「止まれ」と叫ぶとと,。 もに,同車のバンパー下部にいたIに対しその名前を呼んでいたと供述しているところ,かかる供述はMの供述と整合している。そして,Mは,本件とは無関係の第三者である上に,観察条件にも問題はなく,その供述は信用できるのであり,この点からしてもJの上記供述は十分信用することができる。 なお,Cは,Jがレジアスエースの前方でしゃがみこんでいた場面もあったと供述しているが,最終的には,その場面に関する供述には想像も入っている旨供述しているところであり,JがしゃがんでいたというCの上記供述はにわかに信用することはできず,この点に関する上記J供述の信用性に影響するものではない。 以上によれば,レジアスエースがIと衝突したのち,Jが同車右前方に立ち,同車に手を付けた状態で,被告人に対し「止まれ」と叫ぶとともに,,。 Iの名前を呼んでいたという事実を認定することができる。 (6)被告人の供述- 12 -ア概要被告人は,公判廷において,概要,以下のとおり供述している。 Cが本件駐車場で車内(セルシオ)を物色していたとき,本件駐車場出入口付近に止まっていたチェイサーがクラクションを鳴らしたので,私は警察か何かが来たのかと思った。すると,Cがチェイサーのほうに向かって慌てて走っ で車内(セルシオ)を物色していたとき,本件駐車場出入口付近に止まっていたチェイサーがクラクションを鳴らしたので,私は警察か何かが来たのかと思った。すると,Cがチェイサーのほうに向かって慌てて走っていった。私も覚せい剤を持っていたこともあったので,その場を立ち去ろうと,慌ててレジアスエースに乗った。そしてチェイサーのほうを見ると,Cが警察官2名と押し問答になっていた。 私は,C及び2名の警察官が押し問答をしている場所の横には,レジアスエースが通過できるだけのスペースがあったことから,そこをくぐり抜けて同車を出そうと思い,発進させた。 すると,レジアスエースが本件駐車場出入口を出て歩道に進入する辺りで,3名が急に私の視界に入ってきて,同車左前方にいたIに衝突し,Iは私の視界から消えた。なお,私がレジアスエースを発進させた後,3名がもみ合っている様子は,私の視界にはなかった。 私は,レジアスエースが警察官1名に当たったということは分かったが,警察官がそのあとどの方向に消えていったかは分からず,同車の下に倒れているとは認識していなかった。また,私はJがレジアスエースの前で同車に手を押し付けていたという認識もなかった。私は,とにかくこの場から立ち去りたいという気持ちでアクセルを踏み込んだが,レジアスエースは思うように前進しなかった。 イ被告人供述の信用性(ア)警察官2名及びCが急に視界に入ってきたとする点について被告人がレジアスエースを発進させた場所は,本件駐車場内の出入口から15ないし20メートルほど中に入った地点であるところ,同時点から出入口付近までの間に視界を遮るようなものはない。そして,警察官2名- 13 -及びCは,上記認定のとおり,本件駐車場出入口西端ないし中央付近から,同東端付近まで移動したと認められ,出入口を超えた範囲で 付近までの間に視界を遮るようなものはない。そして,警察官2名- 13 -及びCは,上記認定のとおり,本件駐車場出入口西端ないし中央付近から,同東端付近まで移動したと認められ,出入口を超えた範囲で移動してはいないところ,本件駐車場出入口の幅は5.2メートルであり,3名は最大でも5.2メートルという狭い範囲内で移動をしていたに過ぎない。しかも,Iがレジアスエースと衝突した地点は,上記のとおり,本件駐車場出入口東端付近と認められるのであり,3名は,被告人が同車を進行させようとしていた方向の左側から右側に向けて,同車の進路を横切るように移動をしていたものということができる。 被告人は,レジアスエースに乗った段階で,いったんは3名がもみ合いになっている状況を認識していること,上記のように,被告人が同車を発進させた後,Iら3名が5.2メートルという狭い範囲内で,自車の進路上を横切る形で移動をしていたこと,被告人が同車を急発進させてから衝突地点である出入口付近に到達するまでには5秒程度の時間的間隔があるから,被告人が同車を急発進させた後も,もみ合っていたIら3名の様子をうかがう時間的余裕は十分にあったことなどの事情に照らすと,当時の被告人がいかに動揺していたとしても,Iに衝突する直前まで同人らの姿が見えなかったというのは,不自然不合理というほかない。 したがって,この点に関する被告人の供述は信用できず,被告人は,本件駐車場出入口付近でIら3名がもみ合っていることを認識しつつ,レジアスエースを急発進させ,同車が出入口付近にさしかかるまでの間も,3名が出入口東端付近に向かって移動している状況を認識していたものと認められる。 (イ)本件駐車場出入口付近でレジアスエースを再発進させた際,同車下部にIが,同車前部にJがそれぞれいたことを認識していなかっ 口東端付近に向かって移動している状況を認識していたものと認められる。 (イ)本件駐車場出入口付近でレジアスエースを再発進させた際,同車下部にIが,同車前部にJがそれぞれいたことを認識していなかったとする点について被告人は,レジアスエースが警察官のうち1名に衝突したということは- 14 -分かった旨供述しているところ,自車前部に衝突した者が前方の視界から消えたのであれば,合理的に考えて,その者は自車の前方に転倒するなどしているということは当然に想定できることである。また,本件では上記のとおり,Iら3名のほかにレジアスエースの進行を妨げるようなものは,同車進路上にはなかったのであり,被告人は,同車がアクセルを踏んでも前進しない状況であったことは認識していたというのであるから,本件駐車場出入口付近で同車と衝突したいずれかの者が自車の下部におり,同人を巻き込んだ状態であったことも当然認識できたというべきである。被告人は,当時気が動転していたので,なぜレジアスエースが前進しないのかという原因などは分からなかった旨の供述をするが,同車の下部及び前部の状況は,運転席からミラーでも確認できるのであり,本件駐車場から逃げようとしている被告人が,出入口付近で急に自車が前進しなくなった状況下において,自車前方の様子に気を留めなかったとは到底考えられない。 さらに,レジアスエースのフロントガラス下部は,地面から約1.3メートルの高さに位置しており,Jは,上記認定のとおり,同車運転席側の前方に立ち,かつ,被告人に対して「止まれ」と叫んだり,Iの名前,。 を呼ぶなどしていたのであるから,このような状況であれば,同車を運転していた被告人は,当然にJの存在を認識していたというべきである。 よって,この点に関する被告人の供述も信用できず,被告人は,レジアスエ ぶなどしていたのであるから,このような状況であれば,同車を運転していた被告人は,当然にJの存在を認識していたというべきである。 よって,この点に関する被告人の供述も信用できず,被告人は,レジアスエース下部にIが,前方にJがいることをそれぞれ認識しつつ,アクセルを踏み続けたものと認められる。 (7)当裁判所の判断上記の認定事実を基に,被告人に,I及びJに対する殺意があったか否かについて検討する。 ア本件駐車場出入口の幅は5.2メートルである上に,その中央付近には上記のとおりIの自転車が倒れており,レジアスエースが同自転車と衝突せず- 15 -に走行する場合,その幅は2メートル余りと非常に狭かったものである。しかも,Iら3名は,被告人がレジアスエースを走行させようとしていた本件駐車場出入口東側に向かってもみ合ったまま移動していたのであり,被告人は,そのような状況を認識しながらレジアスエースを急発進させているのであるから,もみ合っていたIらに自車が衝突する危険性が高いことを認識しながら,それでもあえて同車を発進,走行させたものということができる。 そして,被告人は,レジアスエースを発進させてからもアクセルを踏み続け,同車を時速約29キロメートル程度にまで急加速させているのであり,本件駐車場出入口付近でも急制動の措置をとるなどIらとの衝突を避けるための措置をとったり,配慮をすることなく,同車を進行させていたものである。 レジアスエースは重量が約1860キログラムと,普通車の中でも重い部類に属するのであり,時速約29キロメートルの速度で人に衝突すれば,衝突された者が死に至る危険性が高いということは,通常人であれば当然に認識可能なことであって,被告人もこのことは当然に認識していたと考えられる。 そうすると,被告人は,レジアスエースがIら3名 ば,衝突された者が死に至る危険性が高いということは,通常人であれば当然に認識可能なことであって,被告人もこのことは当然に認識していたと考えられる。 そうすると,被告人は,レジアスエースがIら3名に衝突する危険性が高いことを認識しつつ,それでもあえて,同車を急発進させ,Iに衝突させたのであり,自己の行為がIらを死に至らしめる危険性の高い行為であることを認識しつつ行動していたことは明らかである。 したがって,被告人がレジアスエースを本件駐車場内から発進させた時点において,少なくとも被告人に,Iらに対する未必的な殺意があったものと認められる。 イまた,J及びMの各供述,並びに街路樹に衝突したことによるとみられる同車の損傷状況に照らすと,被告人が本件駐車場出入口付近でレジアスエースを再発進させて次第に加速し,街路樹に衝突する時までにはある程度の速- 16 -度に達していたことが認められる。 そして,当時,レジアスエースの前方にはJが立って同車の進行を止めようしていたのであるから,上記認定のような重量のある同車をそのまま発進,加速させれば,同車が同人と衝突したり,同人を轢過するなどし,同人を死に至らしめる危険性があったことは明らかである。また,その時点でレジアスエースの下部にはIが巻き込まれていたのであるから,そのまま同車を発進させれば,同人の身体が地面と車との間で強く圧迫されたり,頭部などの枢要部を地面や車の底部に打ち付けたり,アスファルト面との摩擦で全身が損傷して,同人が死に至る危険性も極めて高かったものということができる。 そして,被告人は,上記のとおり,レジアスエース下部にIが,前方にJがいることを認識しつつ,そのまま同車を発進させているのであるから,自己の行為によりI及びJを死亡させる危険性が高いことを認識しながら,あえて同車を 上記のとおり,レジアスエース下部にIが,前方にJがいることを認識しつつ,そのまま同車を発進させているのであるから,自己の行為によりI及びJを死亡させる危険性が高いことを認識しながら,あえて同車を発進させているというべきであるから,この時点においても,被告人にはI及びJに対する未必の殺意が継続していたと認められる。 (8) 結論 以上のとおりであるから,被告人に対しI及びJに対する各殺人未遂罪の成立を認めた次第である(なお,I及びJに対する各殺人未遂罪と,両名に対する公務執行妨害罪は,観念的競合として実体法上1罪の関係になる。 。)(法令の適用〈省略〉)(量刑の理由) 本件は,被告人が,(1)共犯者3名と共謀の上,自動車1台を盗んだという窃盗(判示第1,)(2)共犯者1名と共謀の上,不正に入手した他人名義のクレジットカードを利用し,アクレジットカードの売上票4通を偽造・行使した上で商店から商品をだまし取ったという有印私文書偽造,同行使,詐欺(判示第2の1,)- 17 -イ商店から商品をだまし取ったという詐欺(判示第2の2,)(3)覚せい剤を注射使用したという覚せい剤取締法違反(判示第3,)(4)覚せい剤を所持したという覚せい剤取締法違反(判示第4,)(5)知人が警察官2名から職務質問を受けた際,自己の覚せい剤所持が発覚することを免れるため,未必の殺意をもって警察官2名を車でひくなどした公務執行妨害,殺人未遂(判示第5)(6)上記(5)の犯行後,車で逃走している際,警察車両に自車を衝突させ,警察官2名の職務の執行を妨害するとともに,同人らに傷害を負わせ,さらに警察車両を損壊したという公務執行妨害,傷害,器物損壊(判示第6)の各事案である。 判示第5の公務執行妨害,殺人未遂について被告人は,警 務の執行を妨害するとともに,同人らに傷害を負わせ,さらに警察車両を損壊したという公務執行妨害,傷害,器物損壊(判示第6)の各事案である。 判示第5の公務執行妨害,殺人未遂について被告人は,警察官から職務質問を受ければ自己の覚せい剤所持が発覚してしまうだろうと考え,これを免れようとする動機で判示第5の犯行に及んだものであるが,警察官の生命を奪うことになるかもしれないことを認識しながら,なおも自己の保身を優先しようとする非常に身勝手で自己中心的な動機に酌量の余地は微塵もない。 犯行態様は,判示のとおり,未必の殺意をもって,重量のあるワゴン車を警察官2名のいる方向に向けて急発進させ,うち1名に衝突させるとともに,衝突された警察官1名が自車の下部に,もう1名が自車の前部にいる状態を認識しつつ,さらに自車のアクセルを踏んで発進させ,前部にいた警察官を轢過すると同時に,下部にいた警察官を自車底部に巻き込んだまま11メートル余りにわたって走行したという極めて危険なものであり,2名の警察官を死に至らしめる危険性が相当に高かった悪質極まりない態様である。 本件により,Iは約3週間の入院加療を含む全治約6か月間を要する左第1・2肋骨骨折,右外傷性血気胸,左肺挫傷等の非常に重い傷害を負い,事件後約2日間は意識不明の状態が続いていたほど生命の危機にさらされたものである。J- 18 -も1週間の入院加療を含む安静加療約1か月間を要する右下腿圧挫傷という重い傷害を負っており,事件から2か月余りの間は職務に復帰することもできなかった。このように,2名の警察官が負った傷害の程度は非常に重く,当然のことながら両名の処罰感情もしゅんれつであり,いずれも被告人に対する厳重処罰を希望している。また,警察官2名による公務の執行を妨害した程度も著しく,結果はいずれも重大 傷害の程度は非常に重く,当然のことながら両名の処罰感情もしゅんれつであり,いずれも被告人に対する厳重処罰を希望している。また,警察官2名による公務の執行を妨害した程度も著しく,結果はいずれも重大である。 判示第6の公務執行妨害,傷害,器物損壊について被告人は,判示第5の犯行を行い,自らが警察に追われていることを認識しながらも,検挙を免れようとする動機で判示第6の犯行に及んだものであるが,他人に危害が及ぶことを一切顧みず,自己の利益を優先させようとする身勝手極まりない動機に酌量の余地は全くない。 被告人は,本件駐車場から逃走後,追尾を受けた警察車両に乗務していた警察官から何度も停止命令を受けていたにもかかわらず,これをことさらに無視し,さらには早朝とはいえ交通量の多い幹線道路を時速40ないし50キロメートルという高速度で逆走した上,警察車両に自車を衝突させたものであり,警察官はもちろん,付近を走行していた一般人さえも事故に巻き込みかねない非常に危険な犯行態様ということができる。なお被告人は,警察車両の方から被告人車両に衝突してきたと供述するけれども,衝突した警察車両や被告人車両を追尾していた警察車両に乗務していた警察官らの供述,さらには被告人車両に同乗していたCの供述によれば,警察車両の方から被告人車両に衝突してきた状況は一切うかがえず,むしろ警察車両は被告人車両との衝突を避けるために右にハンドルを切ったが,避けきれなかったものと認められる。 判示第6の被害にあったKは,加療1週間を要する頚椎捻挫の傷害を,Lは,加療1週間を要する前額部打撲及び頚椎捻挫の傷害を,それぞれ負ったものであるが,上記のような犯行態様に照らせば,2名の警察官の負った傷害が上記の程度にとどまったのは不幸中の幸いに過ぎないといえる。さらには,判示第6の犯- 及び頚椎捻挫の傷害を,それぞれ負ったものであるが,上記のような犯行態様に照らせば,2名の警察官の負った傷害が上記の程度にとどまったのは不幸中の幸いに過ぎないといえる。さらには,判示第6の犯- 19 -行によって警察官の公務が著しく妨害されたばかりでなく,警察車両への損害額も150万円余りと非常に高額に及んでいるが,被害弁償はなされておらず,その見込みも乏しい。したがって判示第6の犯行による結果も重大というほかなく,上記警察官2名とも,被告人に対する厳重処罰を希望している。 判示第1の窃盗について被告人は判示第1の犯行への関与を否認し,犯行動機について供述していないが,本件犯行の態様や,関係証拠から認められる犯行前後の被告人の言動などによれば,被告人は,自動車窃盗によって得られる報酬や,盗んだ自動車に積載された金品等で利益を得ようとする目的で犯行に及んだことは明らかと言える。そして,このような利欲的な動機に酌量の余地はない。 犯行態様については,自動車窃盗に精通した共犯者において,夜間団地の駐車場に停めてあった自動車を,特殊工具を用いるなどして窃取するという,それ自体周到かつ計画的で相当に悪質なものであるが,被告人は,共犯者が窃盗の実行行為に及んでいた間,周囲の見張り役をしていたものであり,果たした役割は小さいものとはいえない。 判示第1の犯行による被害額も254万円余りと相当高額に及んでいる上に,被害弁償もなされておらず,被害者は被告人の厳重処罰を希望している。 判示第2の1及び2の有印私文書偽造,同行使,詐欺について被告人は,共犯者から他人名義のクレジットカードを入手したことを聞くや,これを不正利用して商品をだまし取り,利益を得ようとする動機で判示第2の各犯行に及んだものであるが,このような利欲的な動機に酌量の余地はない。 から他人名義のクレジットカードを入手したことを聞くや,これを不正利用して商品をだまし取り,利益を得ようとする動機で判示第2の各犯行に及んだものであるが,このような利欲的な動機に酌量の余地はない。 犯行態様についても,被告人がクレジットカードの使用権限を有するかのようにして店員をだましているほか,判示第2の1の犯行においては,クレジットカードの売上票4通を偽造し,これを行使して,商店から高額な商品を多数だまし取るというものであり,悪質といえる。 判示第2の1の犯行による被害額は66万円余り,判示第2の2の犯行による- 20 -被害額は22万円余りといずれも高額に及んでおり,結果は重大であり,被害弁償はなされておらず,その見込みも乏しい。 判示第3及び第4の覚せい剤自己使用及び所持について被告人は,覚せい剤の薬理作用による一時的快感を得る目的で覚せい剤を使用するとともに,自ら使用するために覚せい剤を所持していたものであるが,このような安易で短絡的な動機に酌量の余地はない。 所持に係る覚せい剤の量も,合計1.697グラムと,自己使用目的としては相当に多量にである。 被告人には覚せい剤取締法違反の前科があるほか,上記のような覚せい剤所持量の多さや,被告人の供述に照らしても,近時における被告人の覚せい剤使用には相当程度の常習性があり,犯情は悪い。 一般情状について被告人は,判示第1の窃盗及び判示第5のうち殺人未遂の点について,いずれも極めて不合理な弁解に汲々としており,また,判示第6の点についても,犯行を認めてはいるものの,警察車両の方から自車に衝突してきたなどという不合理な供述もしている。そうすると,その余の犯行については認める供述をしていることを考慮しても,上記のような被告人の供述態度に照らせば,結局被告人について真しな反省の情を見 衝突してきたなどという不合理な供述もしている。そうすると,その余の犯行については認める供述をしていることを考慮しても,上記のような被告人の供述態度に照らせば,結局被告人について真しな反省の情を見出すことはできない。 また,被告人には,相当以前とはいえ,覚せい剤取締法違反により執行猶予の付された懲役刑に処せられた前科,及び平成12年と平成15年に,いずれも傷害罪等により罰金30万円に処せられた前科があるにもかかわらず,本件各犯行に及んだものであることからしても,被告人の規範意識は低下しているといわざるを得ない。 以上によれば,被告人の刑事責任は非常に重い。 他方,判示第5の公務執行妨害,殺人未遂については,犯行に計画性はなく,また,被告人には警察官2名を積極的に殺害しようとするまでの意図はなかった- 21 -こと,判示第1の窃盗について,被告人の関与は従属的なものであること,妻が公判廷に出廷し,社会復帰後の監督を誓約していること,幼い子どもが2人いることなど,被告人にとって有利に考慮すべき事情も認められる。 そこで,これらの事情を総合考慮し,主文の刑を量定した次第である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役18年及び覚せい剤の没収)平成20年12月10日大阪地方裁判所第12刑事部裁判長裁判官並木正男裁判官本村曉宏裁判官安原和臣
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