【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人永岡外次上告趣意書 原判決ハ擬律ニ誤リアル失当ノ裁判ナリト思料ス 本件事実ハ原判決ニ摘示スルカ故ニ茲ニ再記ノ労ヲ
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人永岡外次上告趣意書 原判決ハ擬律ニ誤リアル失当ノ裁判ナリト思料ス 本件事実ハ原判決ニ摘示スルカ故ニ茲ニ再記ノ労ヲ省ク而シテ被告ノ為シタル旧 百円券ニ証紙貼付並ニ同行使ノ所為ハ別罪ヲ構成スルハ格別ナルモ決シテ通貨偽造 ノ罪ヲ構成スルモノニアラズ蓋シ通貨偽造ノ行為ハ全然法規ノ定ムルトコニ拠ラザ ル偽作ヲ意味スルモノニシテ本件ハ其使用ノ旧百円券並ニ証紙トモ法律ノ規定ニ拠 リ適法ニ製作セラレタルモノニ係リ唯被告ガ其証紙貼付ノ手続ヲ誤リタルニ過ギザ ルガ故ニ通貨偽造ノ罪ヲ以テ律スベキモノニアラズ然ルニ原判決ガ同罪ノ成立ヲ認 メ其法条ヲ適用シテ之レヲ処断シタルハ擬律錯誤ノ失当アルモノト思料ス と言ふのであるが、そもそも通貨偽造罪は通貨を発行する権限をもたない者が流通 におく目的をもつて通貨の外観を具えた物を作成する行為によつて成立する。けだ し通貨偽造罪は通貨発行権者の発行権を保障することによつて通貨に対する社会の 信用を確保しようとするのであるから作成者が通貨発行の権限を有たない者である 限りその作成がたとえたまたま発行権限をもつ者の場合とまつたく同一の材料と方 法とによつて為され従つて作成された物が外観の点においてのみならずその実質の 点においても発行権限をもつ者の作成する物といささかの逕庭なくこれとまつたく 同一のものであつてとしてもその作成行為はもとより通貨偽造たるを免れず、その 作成された物はおのずから偽造通貨たるを失ふものではない。ところで昭和二十一 年二月十七日勅令第八十四号日本銀行券預入令並びに同日大蔵省令第十三号日本銀 行券預入令施行規則によれば従来の日本銀行券(旧券)は昭和二十一年三月二日限 り強制通用力を失いこれを所持する者は同月七日迄にこれを金融機関に預入しそし て預入と同時 令並びに同日大蔵省令第十三号日本銀 行券預入令施行規則によれば従来の日本銀行券(旧券)は昭和二十一年三月二日限 り強制通用力を失いこれを所持する者は同月七日迄にこれを金融機関に預入しそし て預入と同時に一定の金額を限り新たな日本銀行券(新券)による預金の支払を請 - 1 - 求することができることになり更に昭和二十一年二月二十日勅令第九十号日本銀行 券預入の特例の件によると日本銀行において旧券に一定の証紙を貼付したものは新 券と看做されることになつたのであるが政府は旧券の右預入並びに一定額以内の新 券による支払請求の手続に代え臨機応急の措置として郵便官署その他金融機関から 国民一人につき金額百円に相当する証紙を交付し国民各自をして夫々その所持する 旧券にこの証紙を貼付させることによつて各自が該金額に相当する新券による預金 の支払を受けたと同じ結果を得させようとしたのであつた。そこで国民各自が政府 の採つたこの措置に従い正規の手続によつて交付された証紙を右の金額の限度内に おいて旧券に貼付し以て新券と看做されるものを作成することはもとより適法であ つてこれを違法とすべき筋合でないことは敢て言うを俟たないところであるが若し 夫れ正規の手続によらずして入手した証紙を利用し右の限度を無視して貼付行為を なすが如きはまさにこれ通貨発行権を有たない者が通貨を作成する場合と法律上の 評価の同じかるべきこと理の当に然る所であるからそこに通貨偽造罪の成立ありと するにつき何等の妨げあるを見ないのであつてかような貼付行為によつて作成され た物自体が右の限度内において作成された物とその形式及び実質の点において毫末 も逕庭なく優に真正なる新券と同様の流通状態におかれ得るの一事あるの故をもつ てこれを異別に論ずべき謂われはない。さて原判示第二事実はまさしく被告人が正 規の手続によらずして入手した証紙 点において毫末 も逕庭なく優に真正なる新券と同様の流通状態におかれ得るの一事あるの故をもつ てこれを異別に論ずべき謂われはない。さて原判示第二事実はまさしく被告人が正 規の手続によらずして入手した証紙を利用しこれを許された限度額を超へて旧券に 貼付したと言うのであるからこの事実たるや、まさに刑法第百四十八条通貨偽造罪 の処罰に服すべき違法あるを免れないのであつて、之と同一の趣旨に出で右判示事 実に対し判示法条を適用して被告人を処断した原判決の措置はまことに正当となす の外はない所論はまつたく独自の見解たるに過ぎず採用に値しない。原判決には所 論の如き擬律錯誤の違法はない。従つて論旨は理由がない。 以上の理由により刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の如く判決する。 - 2 - この判決は裁判官の全員一致の意見によるものである。 検察官十蔵寺宗雄関与 昭和二十二年十二月十七日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義 裁判官 霜 山 精 一 裁判官 栗 山 茂 裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 藤 田 八 郎 - 3 -
▼ クリックして全文を表示