平成13年12月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成11年(ワ)第555号預託金支払請求事件口頭弁論終結日平成13年9月28日判決 主文 1 被告は,原告に対し,金837万3943円及びこれに対する平成11年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金1523万4000円及びこれに対する平成11年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告に委託して商品先物取引を行った原告が,その商品先物取引について被告の従業員が違法行為を行い,その結果原告に損害が発生したと主張し,被告に対し,民法715条に基づく損害賠償と本件の訴状が被告に送達された日の翌日を起算日とする民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 争いのない事実等((1)から(4)の事実は当事者間に争いがなく,(5)の事実は乙3の1,3の2により認定した。)(1) 原告は,株式会社Dに勤務する者である。 (2) 被告は,商品取引所法に基づく商品取引市場において,上場商品及び上場商品指数の先物取引並びに先物取引の受託業務を行うことをその目的とする株式会社である。 (3) 原告は,被告に対し,別紙記載の商品先物取引を委託し,被告はこれを受託した(以下この委託にかかる取引を「本件取引」という。)。 (4) 原告は,被告に対し,本件取引の委託証拠金として,平成8年9月27日に80万円,同年10月 載の商品先物取引を委託し,被告はこれを受託した(以下この委託にかかる取引を「本件取引」という。)。 (4) 原告は,被告に対し,本件取引の委託証拠金として,平成8年9月27日に80万円,同年10月1日に40万円,同年10月15日に40万円,同年11月6日に11万円,同年11月29日に100万円,同年12月18日に130万円,同年12月25日に133万円,平成9年1月17日に160万円,同年1月23日に30万円,同年1月24日に37万3000円,同年2月19日に301万6000円,同年3月25日に100万円,同年4月16日に60万円,同年4月18日に52万5000円,同年5月20日に100万円,同年6月19日に40万円,同年6月30日に40万円,同年7月30日に18万円,同年12月12日に50万円を各預託した(この預託金の合計は1523万4000円である。この預託金を総称して以下「本件委託証拠金」という。)。 (5) 本件取引において,損失932万3500円,取引税2万3762円,委託手数料568万5900円,消費税19万4725円が各発生し,本件委託証拠金の残は6113円になった。 3 争点(1) 不法行為の成否(原告の主張)ア商品先物取引は高度の専門性が必要な取引であり,かつ,投機性が極めて高い取引である。したがって,消費者保護のため,商品取引所法委託準則・業者の自主規制等により,様々な規制が加えられているが,本件取引は次に述べるように,この規制に違反した違法な取引であり,社会的相当性を逸脱したものである。したがって,被告は不法行為を原因として,原告の被った損害を賠償しなければならない。 イ違法な勧誘(ア) 平成8年9月中旬頃,被告から原告あてにいきなり商品先物取引の資料が送付されてきた。そして,その後,何度か,被告の従業員Aから原 ,原告の被った損害を賠償しなければならない。 イ違法な勧誘(ア) 平成8年9月中旬頃,被告から原告あてにいきなり商品先物取引の資料が送付されてきた。そして,その後,何度か,被告の従業員Aから原告に電話があり,先物取引の勧誘を受けたが,原告はその度ごとに断っていた。しかし,原告は,平成8年9月25日,被告の従業員であるA及びBから話だけでもしたいと誘われ,職場近くのファミリーレストランにおいて,同人らから商品先物取引の勧誘を受けた。 (イ) 被告の従業員らは,原告に対し,「現在コーンは値が上がっている。毎年この時期は上がっている。買いを建てれば儲かる。保証されているようなものだ。新車の頭金にでもして下さい。」と話した。そして,「特に初めてのお客さんには損をさせません。」と説明し,利益が確実に生ずるような断定的判断を提供して原告を勧誘した。 (ウ) 原告は,前記の説明を信用し,取引することを承諾した。なお,被告の従業員は追証拠金及び両建てについての説明を前記勧誘の際に全くしなかった。また,損をする範囲は委託証拠金の半分までであるという虚偽の説明を行った。 (エ) さらに,原告は,被告の従業員に対し,80万円の委託証拠金での取引1回のみでやめる旨を伝え,被告従業員らはこれを了解したにもかかわらず,原告に対し継続的な取引を強要した。 (オ) 最後に,被告従業員らは,原告に対し,既に利益が乗っている買建玉を分けると言って,原告にその取引を承諾させた。このことは明らかに違法である。 ウ自主規制違反(ア) 原告は,商品先物取引をしたことがなく,その知識を全く持っていなかったものであり,被告は当初からこの事実を知っていた。商品先物取引を始める顧客に対しては,当初3ヵ月の間は試験期間として,20枚を超える取引を禁止している。 (イ) 本件取引の平成8年9月 っていなかったものであり,被告は当初からこの事実を知っていた。商品先物取引を始める顧客に対しては,当初3ヵ月の間は試験期間として,20枚を超える取引を禁止している。 (イ) 本件取引の平成8年9月25日から同年12月25日までの取引をみると,東京穀物商品取引所におけるコーンの取引高において,同年12月6日の時点で,買建玉合計33枚,売建玉合計43枚,総合計76枚の保有となっており,前記規制を大幅に超過するものとなっている。 (ウ) しかも,前記期間における手仕舞いの回数も多く,合計建玉枚数は120枚,委託証拠金は合計で534万円に及んでいるのである。被告は,商品先物取引の知識,及び,経験の全くなかった原告に対し,過大な取引を指導したものであり,明らかに前記自主規制に違反した取引であった。 エ無用な両建取引(ア) コーンについては,平成8年12月5日に買建玉の枚数が合計33枚であったが,その翌日である12月6日に,合計43枚の新規売建玉が行なわれており,それ以降継続的に両建が行われている。 (イ) 白金については,平成9年3月28日に合計71枚の買建玉が,同年4月3日に合計45枚の売建玉が行われている。 (ウ) 前記両建を行う必要性はなく,被告は意味のない両建てを原告に指導し,取引金額及びその回数を増大させ,結局,原告の負担により被告の利益を増大させたのである。 オ手数料稼ぎのころがし(ア) さらに,被告は,原告に対し,原告の利益には全くならず,被告の手数料増大のためのみを目的とした取引を指導した。 (イ) たとえば,コーンについていえば,平成9年1月28日の前場3節において,買10枚・買17枚の計27枚の手仕舞いと買い58枚の新規建玉がなされている。同年1月29日の前場3節において,買6枚・買4枚・買8枚・買58枚の計76枚の手仕舞いと新た 月28日の前場3節において,買10枚・買17枚の計27枚の手仕舞いと買い58枚の新規建玉がなされている。同年1月29日の前場3節において,買6枚・買4枚・買8枚・買58枚の計76枚の手仕舞いと新たな買70枚・買35枚の計105枚の新規建玉がなされている。同年2月27日の前場3節において,買20枚の手仕舞いと買8枚・買20枚の計28枚の新規建玉がなされている。同年3月10日の前場3節において,買25枚の手仕舞いと買8枚・買8枚・買30枚・買10枚の計56枚の新規建玉がなされている。 (ウ) この売付・買付は,コーンの値動きの予想に基づくものではなく,被告の手数料稼ぎの指導によるものであるが,このころがしに関連した被告の手数料だけでも合計130万2700円になる。 そして,原告は,このほか取引税,消費税も負担している。 カ原告は,先物取引の経験と知識の全くない,年収300万円・預貯金100万円程度のサラリーマンである。そのため,原告は,本件委託証拠金の多くを借入金でまかなった。被告従業員は,この事実を知っており,また,資金を借り入れてでも本件委託証拠金を支払うよう促していた。 (被告の主張)ア原告の主張アについて商品取引に高度の専門性が必要というが,買った物の値段が上がれば利益となり下がれば損をする,売った場合はこの反対になるという意味において我々の経済観念からみて極めて常識的なものである。取引単位の数え方がやや複雑であることと限月といわれる取引期間があることがやや他の取引と変わっているだけである。投機性についても株式取引や債券取引と少しも変わるものではない。 イ原告の主張イについて(ア) 原告は,あたかも原告が商品取引に全く関心がなかったかのように主張するが,商品取引に関する資料の送付を受け(なお,被告の従業員は原告に電話した後に資料 ものではない。 イ原告の主張イについて(ア) 原告は,あたかも原告が商品取引に全く関心がなかったかのように主張するが,商品取引に関する資料の送付を受け(なお,被告の従業員は原告に電話した後に資料を送付した。),被告の従業員と会って話を聞いたという事実経過からみれば,原告にも商品取引に関する関心が十分にあったと判断できる。 (イ) 被告の従業員が「買を建てれば儲かる。保証されているようなものだ。初めてのお客さんには損はさせません」というような断定的判断の提供をしたことは争う。 (ウ) 健全な常識人であれば,利益が確実に生じる取引などあるはずがないことは十分に分かるはずである。そして,原告は,被告の従業員が追証,両建の説明をしなかったというがそんなことはあり得ない。また,損をする限度が証拠金の半分までであるとの説明をしたというがこのようなことも同様にあり得ない。取引による利益・損失は,商品の価額の変動で決まることであるが,この変動は限度があるわけではなく,したがって,損失の限度があるはずもないし,万一そうであるとすれば,最大の損失の2倍の証拠金を預託する意味がない。原告の主張は矛盾に満ちた説明を受けたとの主張である。 ウ原告の主張ウについて(ア) 原告の主張ウ・(ア)の主張は争う。そもそも20枚の枠は,1回の取引か建玉合計か,売買の合計か明らかにして欲しい。 (イ) 同(イ)記載のうち,売建玉合計43枚(33枚のはず)及び規制を大幅に超過するとの点は争う。 (ウ) 同(ウ)は争う。平成8年12月25日までの原告の取引は売建玉6回,買建玉6回の計12回しかなく,建玉数も売り61枚,買い43枚の計104枚にすぎない。一般的にいえば極めて抑制された取引状況である。そして,原告の取引は,平成8年9月27日から平成11年1月5日までの取引において,回 しかなく,建玉数も売り61枚,買い43枚の計104枚にすぎない。一般的にいえば極めて抑制された取引状況である。そして,原告の取引は,平成8年9月27日から平成11年1月5日までの取引において,回数でコーン37回,白金11回であり,枚数も1回当たりの枚数は半分以上が10枚未満の取引であって,決して過大でも何でもない。 エ原告の主張エについて(ア) 原告の主張エ・(ア)のうち,12月6日の売建玉数は争い(33枚のはず),その余は認める。 (イ) 同(イ)のうち,3月28日の買建玉数は争い(53枚のはず),その余は認める。 (ウ) 同(ウ)は争う。意味のない両建と主張するが,そもそもこのような取引の意思を決定して実行させたのは原告である。もちろん,被告担当者の助言,指導があったはずではあるが。 前記(ア)記載のコーン取引でいえば,12月6日当時の買建玉33枚はいずれも1万4000円ないし1万5000円台での建玉であるところ,これらの建玉は値上がりを予想して建てられたものである。ところが,案に相違して12月6日ころには1万3000円台に値下がりしてしまったのである。このような場合,そのまま放置して追証が発生した場合には,追証を支払うか,そこで損を覚悟で売ってしまうか,さらに買建玉を増やして買単価(平均)を下げるか(いわゆる難平),両建をするかいずれかの方法をとるのが普通である。 両建は,反対の建玉を行うことにより買建玉の値下がりによる損失を防ぐためのものである。あわせて,値動きの状況を見て,決断を将来に引き延ばすものである。取引を行うものは,買建玉が値下がりしたからといって,すぐにあきらめて売ってしまうことがなかなかできないものである。「見切り千両」といわれるゆえんである。そして,原告が主張する平成8年12月5日分は差し引き70万円の利益と 値下がりしたからといって,すぐにあきらめて売ってしまうことがなかなかできないものである。「見切り千両」といわれるゆえんである。そして,原告が主張する平成8年12月5日分は差し引き70万円の利益となっている。前記の白金の取引も同様に,3月28日の買建玉1461円に対し,4月3日の売建玉の価格は1439円であり,値下がり傾向にあったことがわかる。 オ原告の主張オについて(ア) 原告の主張は争う。原告の主張は,両建の場合と同様に,投資する者の心理を全く無視したもので被告に対する誤った攻撃である。投資家は利益が目的で投資を行うもので,原告も例外ではないはずである。 (イ) 商品先物取引では,買建玉がいくら値上がりしても売らなければその利益は確定せず,将来値下がりしてしまうかも知れない。そこで,取引を行うものは,例えば値上がりによる利益が出た場合は,一旦これを処分して利益を確定した上で,さらに値上がりすると思えば改めて建玉を行うという方法をとる場合が多い。これを買い直しという。この方法は,確かに手数料はかかるが,他方で利益は確定するし,次に買う場合に枚数を増やすことができる(利益分を証拠金にまわすことができるため)。そのために,このような方法がとられることが多いのである。本件では,原告は,その主張する1月28日の買い直しにより,いずれの取引も利益を得ているのである。また,1月29日の取引でも利益を上げている取引もある。この時期に続けて買い直しを行ったのは値段が上がっている状況にあったからである。値段が上がっている状況にあれば,買建玉を行う一方で売建玉を処分することも当然必要なことで,選択の一つである。そのまま売建玉を放置すれば損失が拡大するばかりのはずである。原告の主張は結果論,形式論で取引内容を非難するものである。 (ウ) 原告は,平成9年3月1 することも当然必要なことで,選択の一つである。そのまま売建玉を放置すれば損失が拡大するばかりのはずである。原告の主張は結果論,形式論で取引内容を非難するものである。 (ウ) 原告は,平成9年3月10日の取引につき,売と買を同時に建玉したと主張するが,同日の建玉は買建玉46枚の1回だけのはずである。 カ商品先物取引は商品取引所法で認められた公設の市場を通して行われるものであって,誰でも参加できるものである。そこでは,損益はいずれも取引を行う委託者に帰属するものである。 原告は,取引の都度被告から送付される売買報告書,月1回の頻度で送付される残高照会通知書等により,自らの取引の内容,状況を十分に把握できるものであり,自らの判断で取引を行ってきたものである。従ってその取引の結果は甘受すべきである。 本件取引は,平成8年9月27日から平成11年1月5日までの約2年3ヶ月ほどの期間に,コーン37回,白金11回(建てて,仕切るのをあわせて1回と計算)の取引を行ったものであるが,月平均で1.8回程度のものであって,他の事例に比較しても決して多い取引回数ではなく,手数料稼ぎを目的とした不法行為などと評価されるべきものではない。 (2) 過失相殺の成否(被告の主張)ア原告は,先物取引の危険性を十分に認識していた。そして,現実にも,原告は,最初の取引で29万8479円の損を出しており,先物取引において損をすることを現実に認識したはずである。さらに,平成9年1月28日には約141万円,同年2月3日には約175万円,同年3月28日には約187万円というように損失が発生していたので,当然先物取引の危険性を十分に認識していたはずである。にもかかわらず,原告は,平成11年1月まで前後2年3ヶ月も取引を続けていたのであり,原告の損害は自らの責任に基づくものといっ が発生していたので,当然先物取引の危険性を十分に認識していたはずである。にもかかわらず,原告は,平成11年1月まで前後2年3ヶ月も取引を続けていたのであり,原告の損害は自らの責任に基づくものといってよいほどである。 イそこで,仮に,被告に何らかの不法行為責任があるとしても,本件取引においては原告にも重大な過失があり,その過失割合は70%ないし80%というべきである。 (原告の主張)ア本件取引には,被告による違法な勧誘,自主規制違反,手数料稼ぎのころがし,無用な両建取引等が存在し,原告の損害も甚大である。 イそこで,仮に,本件において過失相殺を認めるとしても,原告の過失の割合をごく狭い範囲にとどめるべきである。 (3) 損害額(原告の主張)ア原告は,本件取引にかかる不法行為により,本件委託証拠金に相当する1523万4000円と弁護士費用150万円の損害を被った。 イ原告は,被告に対し,前記アの損害合計1673万4000円のうち1523万4000円の支払を請求する。 (被告の主張)ア原告は,被告に委託して,平成8年9月27日から平成11年1月5日まで東京穀物商品取引所におけるコーンの先物取引を37回,平成9年3月28日から同年6月12日まで東京工業商品取引所における白金の先物取引を11回行った。 イ被告は,原告との取引約定にしたがい,本件委託証拠金から,本件取引につき原告が負担すべき金額を差し引き,その結果被告が預かっている金額が6113円になったのであるから,本件委託証拠金の減少額が不法行為による損害額になることはない。 ウ仮に,本件取引の勧誘の段階で,被告従業員から利益が確実に得られると説明を受け,原告がこれを信じたとしても,このような説明が真実でないことは,前記のとおり取引開始の段階ですぐに認識できたはずである。したがっ 件取引の勧誘の段階で,被告従業員から利益が確実に得られると説明を受け,原告がこれを信じたとしても,このような説明が真実でないことは,前記のとおり取引開始の段階ですぐに認識できたはずである。したがって,その後も原告が取引を続けたことにより原告の主張する損害が発生したとしても,その損害と被告従業員の勧誘行為との間には何らの因果関係もない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 証拠(甲3,乙1,3の1,3の2,4,7の1,7の2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成3年3月,日本工学院八王子専門学校を卒業し,同年4月株式会社Dに入社し,以来一貫して半導体分野のシステムエンジニアをしてきた。原告は,それまで商品先物取引や株の取引をしたことがなかったが,平成8年9月中旬ころ,被告から,商品先物取引の資料が送られてきた(資料は勤務先に送られたきた。)。そして,2~3度,当時被告の従業員であったAから電話を受け,商品先物取引の勧誘を受けたが,その都度勧誘を断っていた。 イ平成8年9月25日,Aから,勤務先にいた原告あてに電話があり,「会社の近くまできているので名刺交換だけでもしてくれないか」と言われ,原告は「その程度ならいいでしょう」と答えた。 その後,Aから原告あてに「会社の正門のところまできているので玄関にきてくれないか」という電話があり,原告は会社の玄関のところまで出向き,そこでAと名刺交換をしたところ,Aから,近くに話しのできるファミリーレストランがないかと聞かれたが,原告は知らないと答え,すぐにAと別れ仕事に戻った。ところが,その日の夕方ころ,Aから原告あてに電話があり,原告は,Aから,「会社の近くにファミリーレストランをみつけた。話だけでもいいから聞いてくれ。正門のところで待っている。」 別れ仕事に戻った。ところが,その日の夕方ころ,Aから原告あてに電話があり,原告は,Aから,「会社の近くにファミリーレストランをみつけた。話だけでもいいから聞いてくれ。正門のところで待っている。」という申し出を受けた。原告は,せっかく遠くから来ているのだから話だけは聞いてみようかという気になり,A,Aに同行していたB(被告の従業員である。)とともにファミリーレストランにおもむいた。 ウ原告は,そのファミリーレストランにおいて,Bらから,「現在コーンは値が上がっている。毎年この時期は上がっており,買っておけば儲かりますよ。特に初めてのお客さんには損をさせません。儲かるのは保証されているようなものです。儲けは新車の頭金にでもして下さい。原告が卒業した高校の卒業生で先物取引をして儲かった人がいる。その人が気をよくして高校の卒業名簿を渡してくれた」等と言われ,また,先物取引の基本的な説明を受けた(ただし,先物取引にあっては委託証拠金の何倍もの取引をすること,追証拠金の制度があること,両建という取引方法があることの説明は受けなかった。)。原告は,その場で,Bらに対し,80万円を預けて1回だけ商品先物取引をしてみたいと申し出た。 エ原告は,被告に対し,平成8年9月27日,委託証拠金として80万円を預けた。その際,Aは,原告に対し,追証拠金と両建の説明を忘れていたと言って,損が半分以上になるとお金を追加しなければならないこと,売りを建て均衡を保つ方法もあるが今回の場合はそういう事態は起こらないという説明をした。 オ平成8年9月30日,原告は,Bから,コーンの値が急落した,損金が委託証拠金の半分を割り込んだが,コーンは必ず上がるのでお金を入れてくれという連絡を受けた。原告は,数日で40万円以上も損をしたと聞かされ,気が動転したが,何とか取り戻さなければ 値が急落した,損金が委託証拠金の半分を割り込んだが,コーンは必ず上がるのでお金を入れてくれという連絡を受けた。原告は,数日で40万円以上も損をしたと聞かされ,気が動転したが,何とか取り戻さなければならないとの思いで,Bの言うとおり40万円を用意した。そして,これをきっかけとして,BやBの後に担当者となったCに勧められるままに取引を行っていった。 カ本件取引当時,原告の年齢は20台の後半で,年収は税込みで300万円前後であった。そして,原告は,本件委託証拠金のうち約231万円を自己資金でまかない,その他の約1292万円は借入金でまかなった。他方,Bらは,遅くとも平成8年11月29日までには,原告が先物取引の委託証拠金を自己資金で用意できない状態になったことを知ったが,その後も原告に先物取引を勧め,平成11年1月5日まで先物取引を行わせた。 (2) 先物取引は,少額の委託証拠金によって多額の取引を行うことができる投機性の高い取引である。そこで,顧客保護のために種々の法的規制等が行われているのであり,商品取引員とその従業員には,法の規制等を遵守し,商品取引に十分な知識・経験を有しないものが安易に取引に手を出すことがないようにし,また,本人に予想しない大きな損害を被らせることがないように努めるべき高度の注意義務が課せられているというべきである。そして,これを本件でみると,前記(1)で認定した事実によれば,BとAは,原告に対し,商品先物取引により確実に利益をあげられるという虚偽の断定的判断を提供して原告を商品先物取引に引き込み,その後,BとCは,原告に自己資金がなくなってきたことを認識したのちも原告に商品先物取引を続けさせ,これにより本件取引を成立させたというべきであり,このことに商品取引員の従業員であるBとCに少なくとも過失が認められる。したがっ 金がなくなってきたことを認識したのちも原告に商品先物取引を続けさせ,これにより本件取引を成立させたというべきであり,このことに商品取引員の従業員であるBとCに少なくとも過失が認められる。したがって,A,B及びCの使用者である被告は,本件取引全体につき民法715条による不法行為責任を負わなければならない。 (3) 本件取引を検討すると,本件取引における建玉が,原告が争点(1)・ウ・(イ),争点(1)・エ・(ア),同(イ),争点(1)・オ・(イ)で各主張する状態であったことを認めることができるが,この状態自体が原告が主張するように違法であるという事実を認めるに足りる証拠はない。 2 争点(2)について(1) 証拠(乙4)によれば,原告が,本件取引の開始にあたって被告から受領した資料中に先物取引の危険性についての説明があると認めることができる。また,そのような資料がなくても,商品先物取引の危険性を認識することは容易であるから,本件取引による損害につき原告にも過失があるというべきである。 (2) そして,本件取引における原告と被告従業員の各過失内容を考慮すると,その過失割合を原告50,被告50とするのが相当である。 3 争点(3)について(1) 前記のとおり本件委託証拠金の残額は6113円になった(争いのない事実等(5))。そこで,原告は,本件取引により1522万7887円の損害を被ったことになる。 (2) そして,前記(1)の損害につき,原告にも前記のとおりの過失があるから,これによる減額をすると,前記(1)の損害のうち,原告が被告に請求できる金額は761万3943円である。 (3) 本件における弁護士費用相当損害金の金額を76万円とするのが相当である。 第4 結論 1 以上によれば,原告の請求は,被告に対し837万3943円と遅延損害金の支払いを求め 万3943円である。 (3) 本件における弁護士費用相当損害金の金額を76万円とするのが相当である。 第4 結論 1 以上によれば,原告の請求は,被告に対し837万3943円と遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。 2 よって,原告の請求を前記1の限度で認容し,その余を棄却し,主文のとおり判決する。 前橋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官中野智明裁判官丹羽敏彦裁判官山崎威
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