主文 1 控訴人の控訴に基づいて原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人、控訴人間における原判決別紙物件目録記載の土地の賃貸借契約について、賃料は、平成6年4月1日以降平成9年3月31日まで1か月9万5300円であり、平成9年4月1日以降平成12年3月31日まで1か月9万8400円であり、平成12年4月1日以降1か月10万0400円であることを確認する。 3 被控訴人のその余の請求を棄却する。 4 本件附帯控訴を棄却する。 5 訴訟費用は、第1、第2審を通じて、これを2分し、その1を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判(控訴について) 1 控訴人 (1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は、第1、2審を通じて、被控訴人の負担とする。 2 被控訴人 (1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 (附帯控訴について) 1 被控訴人 (1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 被控訴人が控訴人に賃貸している原判決別紙物件目録記載の土地の賃料は、平成6年4月1日以降平成9年3月31日まで1か月11万6400円であり、平成9年4月1日以降1か月14万5500円であることを確認する。 (3) 訴訟費用は、第1、第2審を通じて、控訴人の負担とする。 2 控訴人 (1) 本件附帯控訴を棄却する。 (2) 附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。 第2 事実関係 1 事実関係は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第2記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決1頁25行目の「所有者」の次に「である被控訴人が」を付加し、「市」を「控訴人」と改める。 正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決1頁25行目の「所有者」の次に「である被控訴人が」を付加し,「市」を「控訴人」と改める。 (2) 同1頁26行目の「借地料」を「賃料」と改める。 (3) 同2頁1行目の「市」を「控訴人」と改める。 (4) 同2頁2行目の「求めた事案」の次に「の控訴事件」を付加する。 (5) 同2頁10行目の「一部となっている」から13行目までを「一部となっており,市街化区域に存在し,非課税とされている(原審鑑定人甲の鑑定の結果(以下「甲鑑定」という。))。」と改める。 (6) 同3頁4行目及び9行目の各「地代」を「賃料」とそれぞれ改める。 (7) 同3頁17行目の「賃料について」を「上記賃料増額について争い」と改める。 (8) 同4頁2行目から3行目にかけての「,以下「本件調停事件」という。」を削除する。 (9) 同4頁5行目と6行目の各「当時」を「時点」とそれぞれ改める。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件土地の平成6年4月1日時点,平成9年4月1日時点及び平成12年4月1日時点の賃料が,借地借家法所定の事由により不相当になったといえるか。)について上記第2,1記載の前提となる事実,甲鑑定,証人甲(書面尋問),当審鑑定人乙の鑑定の結果(以下「乙鑑定」という。),証人乙(書面尋問)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の賃料は,平成3年4月1日,月額8万1480円(1か月あたり坪140円)に改訂されたが,被控訴人が控訴人に対する意思表示により賃料増額請求をなした平成6年4月1日時点の賃料,平成9年4月1日時点の賃料及び平成12年4月1日時点の賃料は,いずれも「近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となった」ものであると推認され,被控訴人が控 請求をなした平成6年4月1日時点の賃料,平成9年4月1日時点の賃料及び平成12年4月1日時点の賃料は,いずれも「近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となった」ものであると推認され,被控訴人が控訴人に対し,本件土地についてなした上記各賃料増額請求は,借地借家法11条1項の要件を備えているものと認めることができる。 2 争点(2)(平成6年4月1日時点,平成9年4月1日時点及び平成12年4月1日時点における本件土地の各適正継続賃料)について(1) 本件土地の適正継続賃料について,原審における甲鑑定と当審における乙鑑定があるので,これらを以下検討することにする。なお,不動産鑑定士丙の各意見書(乙12,17)及び株式会社明和不動産鑑定所の調査報告書(乙15)は,甲鑑定及び乙鑑定に比較して,正確性において劣るものと考えられる(裁判所による鑑定ではなく私的な意見書ないし報告書にすぎない。)ので,個別の説示はしない。 (2) 甲鑑定は次のごとく適正継続賃料を算定する。 ア平成6年4月1日時点(ア) 差額配分法による試算本件土地を含む本件小学校の敷地全体の更地価格13億0946万6000円を基礎価格とし,これに期待利回り3パーセントを乗じた1か月あたり坪520円と,平成3年4月1日時点の賃料1か月あたり坪140円との差額380円について,3分法を用いてその3分の1に相当する127円を,平成3年4月1日時点の坪あたり賃料単価140円に加算した1か月あたり坪267円が適正継続賃料である。 (イ) 賃貸事例比較法(以下「比準法」という。)による試算継続賃料の形成は,個別性が強く,本件土地について,正常な比準賃料を把握することは容易ではないので,賃料を直接比較するのではなく,本件小学校と同じ市街化 下「比準法」という。)による試算継続賃料の形成は,個別性が強く,本件土地について,正常な比準賃料を把握することは容易ではないので,賃料を直接比較するのではなく,本件小学校と同じ市街化区域に存在する近隣市町における借地料の,各市町別平成6年7月1日時点の平均住宅地価格に対する割合(粗乗率)を求め,これを岩倉市の同日時点における平均住宅地価格に乗じて適正継続賃料を算定する。なお,選択事例地のうちの課税地は非課税地にひき直す。そうすると,岩倉市の平均住宅価格坪42万3000円に粗乗率0.008を乗じた1か月坪280円が適正継続賃料である。 (ウ) 利回り法本件土地の更地価格13億0946万6000円に一般的利回り率1パーセントを乗じた1か月坪173円が適正継続賃料である。 (エ) スライド法本件土地の平成3年4月1日の改定合意賃料1か月坪140円に,平成6年4月までの消費者物価指数(総合),家賃推移指数,賃金年平均指数及び公租公課推移指数の平均変動率1.1363を乗じた1か月坪159円が適正継続賃料である。 (オ) スライド法による試算は,前提となる従前の合意賃料が低額で全幅の信頼を置けないので,差額配分法1,比準法1,利回り法1,スライド法0.5の比率として加重平均すると,適正継続賃料は1か月坪220円であり,本件土地582坪については月額12万8040円である。 イ平成11年4月1日時点平成6年4月1日時点の本件土地の適正継続賃料月額坪220円を基礎として,スライド法を適用し,平成11年4月までの消費者物価指数(総合),家賃推移指数,賃金年平均指数及び公租公課推移指数の平均変動率1.1077を乗じた1か月坪240円が適正継続賃料である。 (3) 乙鑑定は次 ド法を適用し,平成11年4月までの消費者物価指数(総合),家賃推移指数,賃金年平均指数及び公租公課推移指数の平均変動率1.1077を乗じた1か月坪240円が適正継続賃料である。 (3) 乙鑑定は次のごとく適正継続賃料を算定する。 ア差額配分法(ア) 平成6年4月1日時点本件小学校の敷地全体の更地価格を基礎価格として,本件土地計1923平方メートルの更地価格1億2318万円に期待利回り2.61パーセントを乗じた1か月あたり26万7900円と,平成3年4月1日時点の賃料1か月あたり8万1480円との差額18万6420円について,3分法を用いてその3分の1に相当する金額を,平成3年4月1日時点の賃料8万1480円に加算した1か月あたり14万3600円(坪247円)が適正継続賃料である。 (イ) 平成9年4月1日時点本件小学校の敷地全体の更地価格を基礎価格として,本件土地計1923平方メートルの更地価格1億1214万円に期待利回り2.87パーセントを乗じた1か月あたり26万8200円と,平成3年4月1日時点の賃料1か月あたり8万1480円との差額18万6720円について,3分法を用いてその3分の1に相当する金額を,平成3年4月1日時点の賃料8万1480円に加算した1か月あたり14万3700円(坪247円)が適正継続賃料である。 (ウ) 平成12年4月1日時点本件小学校の敷地全体の更地価格を基礎価格として,本件土地計1923平方メートルの更地価格1億0711万円に期待利回り3パーセントを乗じた1か月あたり26万7800円と,平成3年4月1日当時の賃料1か月あたり8万1480円との差額18万6320円について,3分法を用いてその3分の1に相当する金額を,平成3年4月1日時点の賃料8 じた1か月あたり26万7800円と,平成3年4月1日当時の賃料1か月あたり8万1480円との差額18万6320円について,3分法を用いてその3分の1に相当する金額を,平成3年4月1日時点の賃料8万1480円に加算した1か月あたり14万3600円(坪247円)が適正継続賃料である。 イスライド法平成3年4月1日時点の合意賃料月額8万1480円に,消費者物価指数,家賃指数及び賃金指数の平均を採用したスライド指数を乗じて算出する。なお,地価指数は,現在のような地価の大幅な下落期において,過去の賃料水準や改訂方法が必ずしも時価を適正に反映したものとは認められない事情があるので,地価指数を採用すると過去の賃料を固定させることにつながるため本件においては採用しない。 平成6年4月1日時点のスライド指数は103.8であり,平成9年4月1日時点の同指数は107.4であり,平成12年4月1日時点の同指数は107.1であるから,上記8万1480円にこれらを乗じると,平成6年4月1日時点のスライド賃料は月額8万4600円(坪145円)であり,平成9年4月1日時点のスライド賃料は月額8万7500円(坪150円)であり,平成12年4月1日時点のスライド賃料は月額8万7300円(坪150円)である。 ウ利回り法本件土地の価格に継続的賃料利回りを乗じて算出するが,同利回りは地域の平均的な賃料利回りや不動産鑑定士協会が行った過去の実態調査結果を基準にして,本件土地の賃貸借契約の開始時期や最近の地価動向(地価の低下に伴う利回りの上昇)等を考慮して,本件土地が非課税地であることも勘案の上,継続的賃料利回りを本件土地更地価格に対して,平成6年4月1日時点を0.77パーセント,平成9年4月1日時点を0.85パーセント,平成12年4月1日時点を ,本件土地が非課税地であることも勘案の上,継続的賃料利回りを本件土地更地価格に対して,平成6年4月1日時点を0.77パーセント,平成9年4月1日時点を0.85パーセント,平成12年4月1日時点を0.89パーセントと判定する。なお,本件土地の賃貸借契約開始時期が相当古いため標準的な継続的賃料利回りより20パーセント位下方修正し,さらに非課税地であることにつき,通常の継続的賃料利回りが住宅地であることを考慮して0.1パーセントマイナス修正する。 すると,平成6年4月1日時点の利回り賃料は月額7万9000円(坪136円)であり,平成9年4月1日時点の利回り賃料は月額7万9400円(坪136円)であり,平成12年4月1日時点の利回り賃料は月額7万9400円(坪136円)である。 エ比準法(ア) 本件土地の賃料を近隣及び周辺地域における継続地代の事例と比準して算定する(以下,事例イ,ロによるものを「比準賃料A」という。)。 事例イの土地は,岩倉市本町畑中地内,借地面積257.05平方メートルである。賃料は平成6年1月から月額1万9440円(坪250円),平成9年1月から月額2万3330円(坪300円),平成12年1月から月額2万7220円(坪350円)であり,利用目的は木造平家建店舗併用住宅である。賃貸借契約開始時期は不明であるが100年程度前と推測される。 事例ロの土地は,同市本町畑中地内,借地面積204.95平方メートルである。賃料は平成6年1月から月額2万1700円(坪350円),平成9年1月から月額2万4800円(坪400円)であり,平成12年1月からは月額2万7900円(坪450円)と推定する。利用目的は木造平家建店舗併用住宅で,賃貸借契約開始時期は不明であるが80年程度前と推測 から月額2万4800円(坪400円)であり,平成12年1月からは月額2万7900円(坪450円)と推定する。利用目的は木造平家建店舗併用住宅で,賃貸借契約開始時期は不明であるが80年程度前と推測される。 本件土地が非課税地であることから,事例イ,ロの土地について推定公租公課額を控除し,イ,ロの平均賃料をもって比準賃料を決定する。 そうすると,平成6年4月1日時点の比準賃料は月額7万5200円(坪129円)であり,平成9年4月1日時点の比準賃料は月額8万8400円(坪152円)であり,平成12年4月1日時点の比準賃料は月額10万0500円(坪173円)である。 (イ) 本件土地の賃料を,周辺市町村の学校用地の継続地代と比準して算定する(以下,事例ハによるものを「比準賃料B」という。)。 事例ハの土地は,江南市所在の布袋北小学校敷地597平方メートルであり,賃貸借契約開始時期は明治26年である。賃料は,平成6年,平成9年及び平成12年に,いずれも月額坪283円である。そして,事例ハの土地についても推定公租公課額を控除する。 そうすると,平成6年4月1日時点の比準賃料は月額9万5400円(坪164円)であり,平成9年4月1日時点の比準賃料は月額8万5700円(坪147円)であり,平成12年4月1日時点の比準賃料は月額7万6000円(坪131円)である。 オ上記各方法による試算賃料の調整と本件土地の適正継続賃料の決定は次のとおりである。すなわち,(ア) 差額配分法による賃料は,対象不動産の経済価値に依拠して算出され有用性は高いが,更地価格を出発点とし,純賃料利回りも平成12年で3パーセントと住宅地としてはほぼ上限値を採用しているところから賃貸人サイドに立った賃料といえる。 動産の経済価値に依拠して算出され有用性は高いが,更地価格を出発点とし,純賃料利回りも平成12年で3パーセントと住宅地としてはほぼ上限値を採用しているところから賃貸人サイドに立った賃料といえる。 (イ) スライド法による賃料は,一般的な経済変動,不動産価格,賃料の変動過程を反映し,現実的であり実現性は高いが,一面過去の当事者の関係を固定化したままで持続させる点は賃料の調整に際し考慮すべきであり,本件の場合も,控訴人の岩倉市内における全ての賃借公共用地について賃料が同一に設定されており,賃料の決定方法も合理的なものとはいえない側面がある。しかし,これまで,当事者間の合意により定期的に賃料改定がなされている経緯は考慮すべきである。同方法による賃料は,過去の経緯も含めると,賃借人サイドに立った賃料になっていることは否めない。 (ウ) 利回り法による賃料は,市場における標準的な継続賃料利回り等をもとに算定したものであり,実証的であるが,地価変動期においては適正な利回りの判定が困難となりやすく,精度面でやや低いが,広域的な賃料水準という意味では参考となるものである。 (エ) 比準法による賃料のうち,比準賃料Aは,2事例であるが,本件土地に非常に近く,賃貸借契約の開始時期も同時期であり,定期的に賃料改定がなされている事例のため,用途は異なるものの規範性は高い。しかし,2事例の賃料間に開差があり,採用する事例の如何によっては結果が左右される点があることを留意する必要がある。 比準賃料Bは,特殊な用途である学校用地の事例という意味において規範性があり,本件土地と最も類似する事例であるが,事例ハの土地は課税がなされており税額等の詳細が不明なことと長期間賃料が据え置かれていることは考慮する必要がある。 (オ) う意味において規範性があり,本件土地と最も類似する事例であるが,事例ハの土地は課税がなされており税額等の詳細が不明なことと長期間賃料が据え置かれていることは考慮する必要がある。 (オ) 本件賃貸借契約における平成3年の最終賃料合意以来,地価は下落傾向が続いており,それが賃料の下落に直結するか否かは意見が分かれるところであるが,地価の上昇と賃料の上昇が長期的には牽連性を有するものの,過去において賃料の上昇率は地価の上昇率より大幅に低かった場合も多く,そのような場合は現行の賃料水準が適正な継続賃料の水準に至っていないので,周辺賃料水準を指向して地価下落にもかかわらず賃料が上昇することもある。ただし,本件土地の過去の賃料水準は利回り賃料からも判定できるとおり,広域的な賃料水準を大きく逸脱するものではないこともうかがえる。一般的に,地代上昇の要因として,公租公課の増加があげられ,本件土地は非課税地であるから公租公課の上昇分を賃料に反映する必要はないが,周辺賃貸事例の賃料が公租公課額増加分や物価の上昇分以上の割合で増加していることを考慮すると,通常のスライド賃料以上の改訂が必要であると認められる。 (カ) 以上の(ア)ないし(オ)の事情をふまえ,各試算賃料の特性と規範性を検討して,差額配分法を3,スライド法を3,利回り法を2,比準法の比準賃料Aを4,比準賃料Bを2とする比率による加重平均で調節をするのが妥当である。 そうすると,本件賃貸借契約における平成6年4月1日時点の適正継続賃料は月額9万5300円(坪164円)であり,平成9年4月1日時点の適正継続賃料は月額9万8400円(坪169円)であり,平成12年4月1日時点の適正継続賃料は月額10万0400円(坪173円)である。 (4) 甲鑑定と乙鑑定について り,平成9年4月1日時点の適正継続賃料は月額9万8400円(坪169円)であり,平成12年4月1日時点の適正継続賃料は月額10万0400円(坪173円)である。 (4) 甲鑑定と乙鑑定について以下比較,検討する。 ア差額配分法による試算について,両鑑定とも本件土地の更地価格は大差がなく,3分法を採用することも同様であるが,平成6年4月1日時点の期待利回りを甲鑑定は3パーセントとするのに対し,乙鑑定は平成12年4月1日時点では3パーセントとし,平成9年4月1日時点では2.87パーセント,平成6年4月1日時点では2.61パーセントとする。 期待利回りは,一般的金利状況,不動産の取引状況等を考慮して決定されるものであるところ,甲鑑定,乙鑑定及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約における最終賃料合意のなされた平成3年から平成6年,平成9年及び平成12年と地価下落が続いており,一般的金利も同様に低下が続いていると認められることを考えると,平成12年における期待利回り3パーセントは妥当なものと認められる。そして,平成6年及び平成9年は,地価下落期にかかわらず一般には住宅地の賃料が若干しか下がっていないことを考慮して,時点修正率で割り戻し,平成6年及び平成9年の各期待利回りを2.61パーセント及び2.87パーセントとした乙鑑定は,合理性があるものと認められる。被控訴人は,金融資産の利回り(金利)等を考慮すると,平成12年より平成6年の期待利回りが低いということにはならない旨主張するが,一面的な見解であり,乙鑑定の上記鑑定を左右するものとは考え難い。 イスライド法による試算について,甲鑑定は,公租公課推移指数を加えて平均変動率を決定しており,乙鑑定はこれを除いている。 証人甲(書面尋問)によれば,甲鑑定が公租公 のとは考え難い。 イスライド法による試算について,甲鑑定は,公租公課推移指数を加えて平均変動率を決定しており,乙鑑定はこれを除いている。 証人甲(書面尋問)によれば,甲鑑定が公租公課推移指数を加えた理由は,消費者指数と家賃指数は貸主側,借地人側のどちらにも偏向のない指数であるが,公租公課指数は貸主側にとっての指数であるのに対し,賃金年平均指数が,どちらかといえば給与収入を糧とする一般借地人側の指数であるから,単純平均したとのことである。しかしながら,公租公課は経済変動に応じた変動をするわけではなく,また,本件土地は非課税地であるから,本件土地について公租公課指数を適用することには疑問があると考えられる。さらに,証人乙(書面尋問)によれば,平成3年から平成12年にかけては,土地評価額の大幅な見直し(公示価格の7割評価への上昇)がなされ,同時に負担調整措置がとられているため,公租公課の推移が物価や賃料の変動を反映しているとはいえず,指数としても不安定であること,公租公課は貸主側の必要経費であるから,課税地である場合でも,各指数を乗じた後に公租公課額を加減し,その増減率をそのまま賃料に乗じることはしないことが一般的なスライド法の手法であることが認められる。したがって,スライド法による試算においては,甲鑑定より乙鑑定の方が妥当性があると解される。 ウ利回り法による試算について,甲鑑定は,利回り率を1パーセントとするのに対し,乙鑑定は,平成6年4月1日時点を0.77パーセント,平成9年4月1日時点を0.85パーセント,平成12年4月1日時点を0.89パーセントとする。いずれも,専門家の実証的,経験的見解に基づくもので,にわかにその優劣をつけ難いが,本件賃貸借契約の開始時期,最近の地価動向等を考慮し,本件土地が非課税地である 1日時点を0.89パーセントとする。いずれも,専門家の実証的,経験的見解に基づくもので,にわかにその優劣をつけ難いが,本件賃貸借契約の開始時期,最近の地価動向等を考慮し,本件土地が非課税地であることも勘案した判断のきめ細かさからすると,乙鑑定の試算が優れていると考えられる。 控訴人は,乙鑑定について,平成12年の利回りに時点修正している試算方法に問題があり,また,賃貸借契約の開始時期が大正時代の利回りを用いているが,これを本件賃貸借契約に適用する是非が検討されていない旨主張する。 しかしながら,時点修正をせず,愛知県全体の平均利回りを用いて試算すると,平成6年時点の利回りが0.99パーセント,平成9年時点の利回りが1.089パーセント,平成12年時点の利回りが1.14パーセントとなり,平成9年と平成12年時点の各利回りが1パーセントを超えてしまうことになってしまい,妥当なものとは考え難く,また,甲鑑定,乙鑑定及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約の開始時期は少なくとも大正時代であることが認められ,賃貸借契約の開始時期が大正時代の利回りを用いていることは特に不合理ではないと解されること等にかんがみると,控訴人の上記主張は採用できない。 エ比準法による試算について,甲鑑定は,本件小学校と同じ市街化区域に存在する近隣市町における借地料の,各市町別平成6年7月1日時点の平均住宅地価格に対する割合である粗乗率0.008を,岩倉市の同日時点における平均住宅地価格に乗じて適正継続賃料を算定するが,選択事例地の課税地を非課税地にひき直すものとしている。乙鑑定は,本件土地の賃料を近隣及び周辺地域における継続地代の事例と比準して算定する比準賃料Aと本件土地の賃料を周辺市町村の学校用地の継続地代と比準して算定する比準賃料Bとに分けて試 のとしている。乙鑑定は,本件土地の賃料を近隣及び周辺地域における継続地代の事例と比準して算定する比準賃料Aと本件土地の賃料を周辺市町村の学校用地の継続地代と比準して算定する比準賃料Bとに分けて試算するが,いずれも本件土地が非課税地であることから,事例の土地について推定公租公課額を控除している。 ところで,甲鑑定は,本件土地の所在する岩倉市地域以外の事例を採用しており,かつ,平均的なものとして粗乗率を適用しているが,賃料には,地域的格差があり,賃貸借契約の開始時期,期間等の個別的,具体的要素が関係するものと考えられるから,これらを考慮することなく岩倉市地域外の事例に基づき,抽象的な粗乗率を適用したのみの同鑑定は,たやすく採用できない。 これに対して,乙鑑定は,比準賃料Aにおいて,本件土地に近く,かつ,本件賃貸借契約と同様に古い100年ないし80年程度の契約期間を経過している岩倉市内の事例を適用しており,比準賃料Bにおいて,岩倉市外ではあるが本件土地と場所的に近く地価水準や地域の状況が類似し,かつ,利用目的が同じで賃貸借契約開始時期が古い事例を適用しており,上記のごとき問題はない。 控訴人は,乙鑑定における比準賃料Aは,適用事例がいずれも本件土地と利用目的が異なる店舗併用住宅用地であり,土地面積も本件土地と比較してかなり狭いものであるから,妥当でなく,比準賃料Bにおいては,1事例のみであるから,信頼性のある賃料算出は困難である旨主張する。 しかしながら,乙鑑定,証人乙(書面尋問)及び弁論の全趣旨によれば,比準賃料Aの適用事例は,本件土地に非常に近いもので,店舗としての収益性が見込めない地域にあって,地価水準も住宅地と同水準のため,地域の賃料水準を反映しており,借地面積もそれぞれ257.05平方 比準賃料Aの適用事例は,本件土地に非常に近いもので,店舗としての収益性が見込めない地域にあって,地価水準も住宅地と同水準のため,地域の賃料水準を反映しており,借地面積もそれぞれ257.05平方メートルと204.95平方メートルで借地利用上適度な面積といえるものであり,面積が1923平方メートルもあって借地利用上不便な本件土地より賃料が低額となるとは考え難いと認められることに照らすと,比準賃料Aの適用事例は不適当なものではない。また,比準賃料Bに適用された事例は1例のみであるが,事例自体としては上記のとおりであるから本件土地の比準地として適当であると考えられること,各試算賃料の特性と規範性を検討して加重平均する際して,乙鑑定は,比準賃料Aが4であるのに対し比準賃料Bを2として少ない比率で調整していること等にかんがみると,比準賃料Bを本件賃料の鑑定評価に採用することは特段問題とならない。 したがって,比準法による本件賃料の試算においても,乙鑑定を採用することが相当である。 オそして,乙鑑定について上記第3,3(3)アないしオに記載したとおり,各試算賃料の特性と規範性を検討して,差額配分法を3,スライド法を3,利回り法を2,比準賃料Aを4,比準賃料Bを2とする比率による加重平均で調節して,本件賃貸借契約の適正継続賃料を算定することが妥当である。 (5) すると,上記第3,2(3),オ(カ)のとおり,本件賃貸借契約における平成6年4月1日時点の適正継続賃料は月額9万5300円(坪164円)であり,平成9年4月1日時点の適正継続賃料は月額9万8400円(坪169円)であり,平成12年4月1日時点の適正継続賃料は月額10万0400円(坪173円)であると認められる。 3 以上のとおりであるから,被控訴人の本訴 点の適正継続賃料は月額9万8400円(坪169円)であり,平成12年4月1日時点の適正継続賃料は月額10万0400円(坪173円)であると認められる。 3 以上のとおりであるから,被控訴人の本訴請求は,被控訴人,控訴人間における本件賃貸借契約について,賃料が,平成6年4月1日以降平成9年3月31日まで1か月9万5300円であり,平成9年4月1日以降平成12年3月31日まで1か月9万8400円であり,平成12年4月1日以降1か月10万0400円であることの各確認を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,被控訴人の附帯控訴請求は理由がない。 第4 結論よって,控訴人の控訴に基づいてこれと異なる原判決を上記趣旨に変更し,被控訴人の本件附帯控訴を棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条,61条,64条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官大内捷司裁判官島田周平 裁判官玉越義雄
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