平成17(行コ)216 特別掛金賦課処分無効確認等請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成13年(行ウ)第67号)

裁判年月日・裁判所
平成17年12月14日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文8,079 文字)

- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が平成12年11月21日付け納入告知書をもってした控訴人に対する特別掛金8711万3646円の賦課処分が無効であることを確認する。 第2事案の概要 本件は,厚生年金保険法に基づく厚生年金基金である被控訴人から控訴人を事業主とする設立事業所が脱退した際に,被控訴人において,その規約に基づき,控訴人に対し,被控訴人の積立金の不足分のうち同事業所に係る部分を特別掛金(以下「本件特別掛金」という)として一括して徴収することとし,。 平成12年11月21日付け納入告知書をもって納入の告知をしたところ,控訴人が,このような設立事業所の脱退に係る特別掛金の一括徴収は当時の厚生年金保険法の規定に反するなど,上記の特別掛金に係る納入の告知には明白かつ重大な瑕疵があると主張して,その無効の確認を求めた事案である。 原判決は,被控訴人が控訴人に対してした納入告知処分につき,当時の厚生年金保険関係法令の規定に反するなど重大かつ明白な瑕疵を有するものとして無効であるということはできないとして,請求を棄却したため,控訴人が控訴をした。 その他,基礎となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,4のとおり控訴人の当審における主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」の第3及び第4に記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴人の当審における主張(1)ア平成13年法律第50号による改正前の厚生年金保険法(以下単に- 2 -「厚生年金保険法」という)115条1項10号は,厚生年金基金(以。 下「基金」という)が規約をもって掛金及びその負担区分に関する事項。 を定めなければならないとしており,被控訴人は に- 2 -「厚生年金保険法」という)115条1項10号は,厚生年金基金(以。 下「基金」という)が規約をもって掛金及びその負担区分に関する事項。 を定めなければならないとしており,被控訴人は,その規約に基づいて,控訴人を事業主とする設立事業所の脱退に際し,特別掛金を一括徴収しようとしたものであるが,規約において定めることができるとされた事項であっても,定めた内容が法令の規定に反し,又はその根拠法令が存在しないときには,そのような規約の定めは無効であると解するべきである。本件特別掛金の目的に正当性があるとしても,それによりその根拠となる法令の規定の解釈が変更されるわけではない。 イ厚生年金保険法138条2項は,掛金は年金たる給付(以下「年金給付」という)の額の計算の基礎となる各月につき徴収するものとしてい。 るところ,この規定は,基金においては,年金給付の額の計算の基礎となる期間の各月について,月を単位として,各月の加入員の資格や標準給与等の事実関係に基づいてそれぞれ掛金を算定し,これを各月,徴収すべきことを定めたものと解される。本件特別掛金は,脱退の際に一括して徴収するものであるから,これを基金の規約で定め徴収することは明らかに厚生年金保険法138条2項に違反しており,違法である。 ウ(ア)厚生年金保険法138条3項は,掛金の額は政令の定めるところにより加入員の標準給与の額を標準として算定するものとし,厚生年金基金令(以下「基金令」という)33条1項は,掛金の額の算定は加入。 員の標準給与の額に一定の率を乗ずる方法その他省令で定める方法によるべきものとし,さらに,これを受けた厚生年金基金規則(以下「基金規則」という)31条は,その方法につき,加入員の標準給与の額に。 一定の率を乗じた額に一定の額を加算する方法としている。 方法によるべきものとし,さらに,これを受けた厚生年金基金規則(以下「基金規則」という)31条は,その方法につき,加入員の標準給与の額に。 一定の率を乗じた額に一定の額を加算する方法としている。 (イ)被控訴人規約附則13条1項1号に規定する未償却過去勤務債務は,加入員の標準給与の月額に一定の割合を乗じて得られる掛金について,- 3 -将来分の中間利息を控除し,その現価額として算出されるものであるが,これは,法令の定める掛金の算定方法とは「一定の額を加算する部,分」がない点で異なっている。 (ウ)被控訴人規約附則13条1項2号に規定する繰越不足金及び移行調整金残高は,被控訴人における責任準備金と純資産との差額に,被控訴人の標準給与月額の総額に対する控訴人事業所の加入員に係る標準給与月額の割合を乗じて算出されるものであるが,これは,繰越不足金及び移行調整金残高について控訴人に負担させる金額を算出するため按分する方法として,控訴人及び被控訴人の各加入員の標準給与月額を使用したものであって,アの法令の定める掛金の算定方法とは全く異なる方法で算出されているものと評価できる。 (エ)被控訴人規約附則13条1項3号に規定する加入員脱退に伴う脱退差損は,控訴人事業所の加入員に対する脱退一時金及び年金の給付の現価額から控訴人事業所の加入員に係る責任準備金の額を控除した上,これに控訴人事業所の脱退予定日までの運用利益を加えて算出されるものであるが,これは加入員の標準給与月額を全く度外視した算出方法であり,アの法令の定める掛金の算定方法とは全く異なる方法で算出されているものと評価できる。 (オ)そうすると,本件特別掛金の算出方法は,厚生年金保険法138条3項に反する違法なものというべきである。 (2)原判決は,平成13年法律第50号による厚 法で算出されているものと評価できる。 (オ)そうすると,本件特別掛金の算出方法は,厚生年金保険法138条3項に反する違法なものというべきである。 (2)原判決は,平成13年法律第50号による厚生年金保険法の改正によって,基金の設立事業所が減少する場合に当該事業所の事業主から特別の掛金を一括して徴収する旨の規定が新たに設けられ(同法138条5項,各月)につき掛金を徴収するものとする厚生年金保険法138条2項,掛金の額を加入員の標準給与の額を標準として算定するものとする同条3項,及び,掛金の半額負担の原則を定める同法139条1項,2項について,各項にいう- 4 -掛金には上記の設立事業所の減少に係る掛金は含まれないことが明示されたことについて,従前から許容されていた特別掛金について確認的に規定したものとするが,これは誤りであり,それまで許容されていなかった特別掛金について,新たに許容する旨の規定が設けられたものであると解するべきである。 (3)原判決は,基金は,法令の規定に反しない限り,掛金及びその負担区分に関する事項について,規約において定めることができ(厚生年金保険法115条1項10号,その規約の変更は,代議員会の議決等の法定の手続)(同法118条1項1号,115条2項)を経れば効力を生じるものであるから,本件規約変更について,控訴人の承諾がなくても効力が及ぶとしている。しかし,控訴人は被控訴人の原始定款を承認してその構成員である設立事業所の事業主となったのであり,その規約が控訴人と被控訴人の契約となるのであるから,構成員の契約上の基本的な権利に関する重大な変更の効果を既に構成員になっている設立事業所の事業主に及ぼすためには,当該事業主との関係では,その個別的な承諾を得ることが必要と解するべきである。 厚生年金基金制度に 上の基本的な権利に関する重大な変更の効果を既に構成員になっている設立事業所の事業主に及ぼすためには,当該事業主との関係では,その個別的な承諾を得ることが必要と解するべきである。 厚生年金基金制度において,基金と構成員との関係と,基金と年金等の給付を受ける加入員との関係は別個であるところ,原始定款には特別掛金は存在しなかったこと,これを設けなければならない事情の変化は控訴人が加入した当時想定できなかったこと,特別掛金は膨大な金額の一括払義務を負担させるものであり,事業主が一時に支払うことができる範囲の金額ではないことからすると,特別掛金の創設は,契約上の基本的な義務の重大な変更であり,それについて控訴人の個別の承諾がないから,その効力は控訴人には及ばない。 (4)基金は,民法上の公益社団法人であり,社団法人の責任は有限責任であって,構成員は社団法人が現在及び将来負担する債務について負担を負うことはなく,例外的に責任を負うのは,法令に根拠がある場合又は構成員の個- 5 -別の承諾がある場合に限られる。本件特別掛金については,法令に根拠がなく,控訴人の個別の承諾もないから,その効力は控訴人に及ばない。 (5)以上のとおり,本件特別掛金を控訴人から徴収しようとする本件納入告知処分は,法令の規定に反し,重大かつ明白な瑕疵があるから無効である。 第3当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないから棄却されるべきであると判断するが,その理由は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第5当裁判所の判断」に記載されたとおりであるから,これを引用する。 原判決23頁19行目の次に,行を改めて次のとおり加える。 「この点につき,控訴人は,規約において定めることができるとされた事項であっても,定めた内容について根拠法令 あるから,これを引用する。 原判決23頁19行目の次に,行を改めて次のとおり加える。 「この点につき,控訴人は,規約において定めることができるとされた事項であっても,定めた内容について根拠法令が存在しないときは,規約の定めは無効であると主張する。しかし,基金である被控訴人は,厚生年金保険法に基づいて設立された法人ではあるが,基金を設立するかどうかは加入事業主の任意であり,その給付水準も個別の基金ごとに定められるものであるから,その運営は,基金が自主性をもって行うことができるものであり,法令で義務づけられている事項のほか,法令に反しない範囲で実情に応じて独自の事項を規約に定めることができると解するべきである。したがって,規約で定めることができるとされる事項については,直接それを定める根拠法令が存在しなくても,法令に反さず,合理的な定めである限り,有効である」。 原判決28頁5行目から30頁16行目までを次のとおり改める。 「ア厚生年金保険法138条2項について厚生年金基金法138条2項は,掛金は,年金給付の額の計算の基礎となる各月につき徴収するものとする旨を規定している。 この規定は,年金においては,加入員の資格の取得,喪失又は標準給与の変動が毎月生じ得ることから,これらの変動をとらえる最小単位を月と定め,月単位で確定した情報に基づき計算された掛金を徴収することを明らかにし- 6 -たものである。そして,次のイで述べるとおり,毎月の掛金について翌月末日までに納付することとされている(厚生年金保険法141条1項,83条1項,85条)こととあいまって,掛金は月ごとに算定され,徴収されることとなっている。しかし,この規定は,毎月支払が行われる通常の掛金を想定しているものであるが,掛金の徴収としてはこの方法に限定しているとみる必要 ととあいまって,掛金は月ごとに算定され,徴収されることとなっている。しかし,この規定は,毎月支払が行われる通常の掛金を想定しているものであるが,掛金の徴収としてはこの方法に限定しているとみる必要はなく,規約の定めに基づき一括して特別掛金を賦課することを排斥しているとまで解することはできない。前判示のとおり,本件特別掛金については,基金に係る法令の趣旨に反するものではないので,その算定方法が後記ウ及びエ記載の考え方にそう合理的なものである限り,有効であると解される。 よって,本件特別掛金が138条2項に違反する旨の控訴人の主張は理由がない。 イ厚生年金保険法141条1項,83条1項,85条について厚生年金保険法141条1項,83条1項は,毎月の掛金は,翌月末日までに納付しなければならない旨を規定し,一方,同法141条1項,85条は,掛金を納期前に徴収することができる場合を掲げている。これらの規定についても,前記アと同様,毎月支払が行われる通常の掛金を想定している規定であり,これ以外には,規約の定めに基づき一括して特別掛金を賦課することを認めない趣旨の規定であると解することはできない。 よって,本件特別掛金が141条1項,83条1項,85条に違反する旨の控訴人の主張は理由がない。 ウ厚生年金保険法138条3項について(ア)厚生年金保険法138条3項は,掛金の額は政令の定めるところにより加入員の標準給与の額を標準として算定するものとし,これを受けて,基金令33条1項は,掛金の額の算定は加入員の標準給与の額に一定の率を乗ずる方法その他省令で定める方法によるべきものとし,さらに,これ- 7 -を受けた基金規則31条は,その方法につき,加入員の標準給与の額に一定の率を乗じた額に一定の額を加算する方法としている。 これらの規定もまた,毎月 める方法によるべきものとし,さらに,これ- 7 -を受けた基金規則31条は,その方法につき,加入員の標準給与の額に一定の率を乗じた額に一定の額を加算する方法としている。 これらの規定もまた,毎月支払が行われる通常の掛金を想定している規定であり,掛金の額の算定の基本的な考え方を表したものであるが,規約の定めに基づき一括して特別掛金を賦課する場合については,直接には適用がないものと解するのが相当である。もっとも,本件特別掛金が有効とされるためには,その算定方法がこの考え方にそう合理的なものでなければならない。 (イ)そこで,本件特別掛金の算定方法を検討すると,まず,被控訴人規約附則13条1項1号に規定する未償却過去勤務債務は,前記(1)ア(イ),イ(ア)のとおり,加入員の標準給与の月額に一定の割合を乗じて得られる掛金について,将来分の中間利息を控除し,その現価額として算出されるものであり,加入員の標準給与の額に一定の率を乗じたものということができ,前記の掛金の額の算定の基本的な考え方にそうものである。また,被控訴人規約附則13条1項2号に規定する繰越不足金及び移行調整金残高は,前記(1)ア(ウ),イ(イ)・(ウ)のとおり,被控訴人における責任準備金と純資産との差額に,被控訴人の標準給与月額の総額に対する控訴人事業所の加入員に係る標準給与月額の割合を乗じて算出されるものであるが,これは,結局,加入員の標準給与の額に,被控訴人の積立不足の程度に応じた一定の率を乗じたものということができ,これも掛金の額の算定の基本的な考え方にそうものである。さらに,被控訴人規約附則13条1項3号に規定する加入員脱退に伴う脱退差損は,脱退を機に具体化した脱退事業所に係る給付の現実の額と予想額との差額ということができ,基本的な考え方と矛盾するものではない。 に,被控訴人規約附則13条1項3号に規定する加入員脱退に伴う脱退差損は,脱退を機に具体化した脱退事業所に係る給付の現実の額と予想額との差額ということができ,基本的な考え方と矛盾するものではない。 (ウ)このような本件特別掛金の算定方法は,基金から脱退する設立事業所につき,その加入員及び元加入員に係る年金等の給付のための財源の不足- 8 -の補填を求めるという趣旨に合致するとともに,基金規則31条に規定する,加入員の標準給与の額に一定の率を乗じた額に一定の額を加算する方法と同様の,あるいはそれと矛盾しない考え方に基づく方法と評価することができるものであって,合理的なものであり,上記各法令に違反するものではない」。 原判決31頁13行目から32頁3行目までを次のとおり改める。 「オ小括以上のとおり,控訴人において,本件特別掛金の具体的な内容や徴収方法が法令の規定に反するとして指摘する点についてはいずれも理由がない」。 原判決33頁4行目の「前記4」を「前記3」に改め,同5行目の次に,次のとおり加える。 「控訴人は,厚生年金保険法の改正について,それまで許容されていなかった特別掛金について創設的にこれを許容する規定を設けたものである旨主張するが,以上のとおりの理由で採用できない」。 原判決33頁7行目から25行目までを次のとおり改める。 「(1)控訴人は,被控訴人の原始定款を承認してその構成員である設立事業所の事業主となったのであり,その規約が控訴人と被控訴人の契約となるから,構成員の契約上の基本的な権利に関する重大な変更の効果を既に構成員になっている設立事業所の事業主に及ぼすためには,当該事業主の個別的な承諾を得ることが必要であるところ,原始定款にはない特別掛金を設けるべき事情の変化は予見できないのに,膨大な金額 効果を既に構成員になっている設立事業所の事業主に及ぼすためには,当該事業主の個別的な承諾を得ることが必要であるところ,原始定款にはない特別掛金を設けるべき事情の変化は予見できないのに,膨大な金額の一括払義務を負担させる特別掛金の創設は,それについて控訴人の個別の承諾がないから,その効力は控訴人には及ばないと主張する。 しかし,控訴人が被控訴人の設立事業所の事業主となった段階で,厚生年金保険法には,法令の規定に反しない限り,掛金及びその負担区分に関する事項について規約において定めることができ(115条1項10号,その)- 9 -規約の変更は,代議員会の議決等の法定の手続を経れば効力を生じる(118条1項1号,115条2項)旨の規定があった上,被控訴人規約中にも,掛金についての規定があり(76条ないし79条,代議員会において規約)の変更があり得ることを明示していた(23条(1)のであるから,控訴)人は,規約の変更に伴う新たな掛金の負担があり得ることについては了解して被控訴人の設立事業所の事業主となったものと評価すべきである。したがって,規約の変更の効力を及ぼすために個別の承諾が必要である旨の控訴人の主張は理由がない。 (2)控訴人は,被控訴人が民法上の公益社団法人であり,社団法人の責任は有限責任であるから,構成員が社団法人の債務について負担を負うのは法令に根拠がある場合又は構成員の個別の承諾がある場合に限られるが,本件特別掛金については,法令に根拠がなく,控訴人の個別の承諾もないから,その効力は控訴人に及ばないと主張する。 しかし,基金については,厚生年金保険法に詳細な定めがあり,その中で設立事業所の負担すべき掛金については規約において定めることができ,代議員会において規約を変更することができる旨定めているのであるから,被控 金については,厚生年金保険法に詳細な定めがあり,その中で設立事業所の負担すべき掛金については規約において定めることができ,代議員会において規約を変更することができる旨定めているのであるから,被控訴人が民法上の公益社団法人であったとしても,このような規約の定めにより構成員が債務を負担することは許されるものというべきである。そして,,規約の変更の効果が当然に控訴人に及ぶことは前記(1)のとおりであるから控訴人の主張は理由がない」。 第4 結論 よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官千葉勝美- 10 -裁判官片山良広裁判官後藤健

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