平成29年(ネ)第373号,令和2年(ネ)第56号,第62号原状回復等請求控訴,同附帯控訴事件 判決書 仙台高等裁判所第3民事部 前注・略語・用語については,原則として原判決のとおりとする。 ・当事者については,以下の表記を原則とする。 「一審原告」… 本件訴訟(控訴審のみを含む)において請求に対する審判を求めて訴訟を追行していた者をいい,後記「提訴時」,「死亡」,「承継」,「取下」,「「ふるさと喪失」」を付さずに用いる場合は,原則として口頭弁論終結時点で訴訟を追行していた者,すなわち,後記「提訴時一審原告」(ただし,後記「取下一審原告」及び「死亡一審原告」を除く)並びに後記「承継一審原告」(ただし,口頭弁論終結時までに訴えを取り下げた者を除く)を指すが,第3章第5節及び第6節において,本件事故で被害を被った主体を指すときは,原則として後記「承継一審原告」を除き,「死亡一審原告」を加えた者,すなわち,後記「提訴時一審原告」から「取下一審原告」を除いた者を指す。 「提訴時一審原告」… 第1~6事件を提訴した者 「取下一審原告」… 口頭弁論終結時までに訴えを取り下げ,一審被告らによる同意が得られた提訴時一審原告及び口頭弁論終結時までに死亡した提訴時一審原告のうち,同人を承継した全ての「承継一審原告」が口頭弁論終結時までに訴えを取り下げ,一審被告らによる同意が得られた者 「死亡一審原告」… 口頭弁論終結時までに死亡した提訴時一審原告(ただし,一人の死亡一審原告に係る全ての「承継一審原告」が口頭弁論終結時までに訴えを取り下げ,一審被告らによる同意が得られた者は除く。) 「承継一審原告」… 時までに死亡した提訴時一審原告(ただし,一人の死亡一審原告に係る全ての「承継一審原告」が口頭弁論終結時までに訴えを取り下げ,一審被告らによる同意が得られた者は除く。) 「承継一審原告」… 口頭弁論終結時までに死亡した提訴時一審原告を承継した一審原告(同人自身が提訴時一審原告であるか否かを問わない) 「「ふるさと喪失」一審原告」… 第2事件(26人)又は第6事件(14人)の提訴時一審原告(合計40人)・原判決と同一の事実を同一の証拠によって認定する場合は,原則として証拠引用を省略し,証拠を付加する場合及び新たな事実を認定する場合にのみ,当該証拠の番号を記載するものとする。 ・人物名については原則として敬称略とする。 ・月又は月日のみで表記した日付は平成23年のものとする。 令和2年9月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ネ)第373号,令和2年(ネ)第56号,第62号原状回復等請求控訴,同附帯控訴事件(原審・福島地方裁判所平成25年(ワ)第38号,第94号,第175号,平成26年(ワ)第14号,第165号,第166号〔以下,これらの各事件を順に「第1事件」,「第2事件」等ということがある。〕)口頭弁論終結日令和2年2月20日判決当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり 主文 1 原判決主文第1ないし3項に係る控訴及び附帯控訴について(それぞれ関連する一審原告ら共通)⑴ 一審原告らの控訴のうち原判決主文第1項及び第3項に係る部分をいずれも棄却する。 ⑵ 一審被告らの附帯控訴に基づき,原判決主文第2項を取り消す。 ⑶ 上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 2 原判決主文第4ないし7項に係る控訴について 棄却する。 ⑵ 一審被告らの附帯控訴に基づき,原判決主文第2項を取り消す。 ⑶ 上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 2 原判決主文第4ないし7項に係る控訴について⑴ 一審原告らのうち,別紙6主文一覧表の「分類」欄に①と記載のある者(以下「一審原告ら①」という。)関係ア一審原告ら①の控訴に基づき,原判決(主文第4ないし7項。以下,本判決第2項において同じ)中一審原告ら①に係る部分を次のとおり変更する。 イ一審被告らは,一審原告ら①に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びうち同表の「原審元金」欄記載の各金員に対す る平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ一審原告ら①のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑵ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に②と記載のある者(以下「一審原告ら②」という。)関係ア一審原告ら②の控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 イ一審被告らは,一審原告ら②に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から(ただし,同表の「始期」欄に日付の記載のある者については,当該日から)支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ一審原告ら②のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑶ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に③と記載のある者(以下「一審原告ら③」という。)関係ア一審原告ら③の控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 イ一審被告らは,一審原告ら③に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ を次のとおり変更する。 イ一審被告らは,一審原告ら③に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に④と記載のある者(以下「一審原告ら④」という。)関係ア一審原告ら④の控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 イ一審被告らは,一審原告ら④に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びうち同表の「原審元金」欄記載の各金員に対す る平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑸ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑤と記載のある者(以下「一審原告ら⑤」という。)関係ア一審被告らの一審原告ら⑤に対する控訴をいずれも棄却する。 イ一審原告ら⑤の控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 ウ一審被告らは,一審原告ら⑤に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びうち同表の「原審元金」欄記載の各金員に対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審原告ら⑤のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑹ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑥と記載のある者(以下「一審原告ら⑥」という。)関係ア一審被告らの一審原告ら⑥に対する控訴をいずれも棄却する。 イ一審原告ら⑥の控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 ウ一審被告らは,一審原告ら⑥に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審原告ら⑥のその余の請求 一審被告らは,一審原告ら⑥に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審原告ら⑥のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑺ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑦と記載のある者(以下「一審原告ら⑦」という。)関係ア一審原告ら⑦の控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 イ一審被告東電は,一審原告ら⑦に対し,同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ一審原告ら⑦のその余の請求をいずれも棄却する。 エなお,一審原告ら⑦は当審において一審被告国に対する訴えを取り下げた。 ⑻ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑧と記載のある者(以下「一審原告ら⑧」という。)関係ア一審原告ら⑧の一審被告東電に対する控訴及び一審被告国の同一審原告らに対する控訴をいずれも棄却する。 イ一審原告ら⑧の一審被告国に対する控訴及び一審被告東電の同一審原告らに対する控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 ウ一審被告らは,一審原告ら⑧に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審原告ら⑧のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑼ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑨と記載のある者(以下「一審原告ら⑨」という。)関係ア一審原告ら⑨の一審被告らに対する控訴及び一審被告国の同一審原告らに対する控訴をいずれも棄却する。 イ一審被告東電の一審原告ら⑨に対する控訴に基づき,原判決中一 原告ら⑨」という。)関係ア一審原告ら⑨の一審被告らに対する控訴及び一審被告国の同一審原告らに対する控訴をいずれも棄却する。 イ一審被告東電の一審原告ら⑨に対する控訴に基づき,原判決中一審被告東電に対する一審原告ら⑨の請求部分を次のとおり変更する。 ウ一審被告東電は,一審原告ら⑨に対し,一審被告国と連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審原告ら⑨のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑽ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑩と記載のある者(以下「一審原告ら⑩」という。)関係ア一審原告ら⑩の控訴をいずれも棄却する。 イ一審原告ら⑩に対する一審被告らの控訴に基づき,原判決中同一審原告らに係る部分を次のとおり変更する。 ウ一審被告らは,一審原告ら⑩に対し,連帯して同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審原告ら⑩のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑾ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑪と記載のある者(以下「一審原告ら⑪」という。)関係ア一審原告ら⑪の控訴をいずれも棄却する。 イ一審原告ら⑪に対する一審被告らの控訴に基づき,原判決中一審被告ら敗訴部分を取り消す。 ウ上記部分に係る一審原告ら⑪の請求をいずれも棄却する。 ⑿ 一審原告らのうち,同表の「分類」欄に⑫と記載のある者(以下「一審原告ら⑫」という。)関係一審原告ら⑫の控訴をいずれも棄却する。 3 当審における追加請求について⑴ 一審被告らは,一審原告ら①,④及び⑤に対し,連帯して同表の「追加元金」欄記載の各金員に対 告ら⑫」という。)関係一審原告ら⑫の控訴をいずれも棄却する。 3 当審における追加請求について⑴ 一審被告らは,一審原告ら①,④及び⑤に対し,連帯して同表の「追加元金」欄記載の各金員に対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 一審原告ら①及び⑤のその余の当審における追加請求並びに一審原告ら②,⑥ないし⑫の当審における追加請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,次のとおりとする。 ⑴ 一審原告ら①ないし⑥,⑧及び⑩と一審被告らとの間で生じた訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を一審被告らの,その余を同一審原告らの負担とする。 ⑵ 一審原告ら⑦及び⑨と一審被告東電との間で生じた訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を一審被告東電の,その余を同一審原告らの負担とする。 ⑶ 一審原告ら⑨と一審被告国との間で生じた控訴費用は各自の負担とし,附帯控訴費用は同一審原告らの負担とする。 ⑷ 一審原告ら⑪及び⑫と一審被告らとの間で生じた訴訟費用は,第1,2審を通じて全て同一審原告らの負担とする。 5 本判決第2項の⑴イ,⑵イ,⑶イ,⑷イ,⑸ウ,⑹ウ,⑺イ,⑻ウ,⑼ウ及び⑽ウ並びに第3項の⑴は,本判決がこれらの部分に係る各一審被告に送達された日から14日を経過したときは,仮に執行することができる。 ただし,一審被告らが,同部分に係る各一審原告に対し,同表の「担保額」欄記載の各金員の担保を各自供するときは,当該一審被告は,当該一審原告との関係で,その執行を免れることができる。 目次前注 ................................................................. ことができる。 目次前注 ...................................................................................... 1主文 ...................................................................................... 3目次 ...................................................................................... 9第1章当事者の求めた裁判(当審における訴え変更後のもの) ........... 34第1 一審原告ら ........................................................................ 34第2 一審被告東電 ..................................................................... 36第3 一審被告国 ........................................................................ 36第2章本件の概要 ........................................................................... 37第1節事案の概要等 ..................................................................... 37 1 事案 ...... 37第1節事案の概要等 ..................................................................... 37 1 事案の概要 ....................................................................... 37 2 原判決の概要 .................................................................... 39 3 当審における主張経過概要 ................................................ 40控訴提起等 .................................................................... 40平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求について ................ 41「ふるさと喪失」による損害賠償請求について ................ 43第2節前提事実(争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ........................................................... 43第1 当事者 .............................................................................. 43 1 提訴時一審原告ら ............................................................. 43 2 一審被告東電 ................ 提訴時一審原告ら ............................................................. 43 2 一審被告東電 .................................................................... 44 3 一審被告国 ....................................................................... 44第2 福島第一原発の概要等 ........................................................ 44 1 福島第一原発の概要 .......................................................... 44 2 沸騰水型軽水炉の概要 ....................................................... 45 3 福島第一原発に係る非常時における安全設備等 ................... 47第3 本件地震の発生から本件事故に至る経緯 .............................. 49 1 本件地震の発生及び本件津波の到来 ................................... 49 2 1号機の状況 .................................................................... 50 3 2号機の状況 .................................................................... 52 ............. 50 3 2号機の状況 .................................................................... 52 4 3号機の状況 .................................................................... 53 5 4号機の状況 .................................................................... 54 6 5号機,6号機の状況 ....................................................... 54 7 放射性物質の大量放出 ....................................................... 55第3節争点 ................................................................................. 55 1 原状回復請求 .................................................................... 55 2 一審被告東電の損害賠償責任 ............................................. 55 3 一審被告国の損害賠償責任 ................................................ 55 4 損害 ............................................................................ .............. 55 4 損害 ................................................................................. 55第4節争点に対する当事者の主張(要旨) ..................................... 55第3章当裁判所の判断 ..................................................................... 56第1節原状回復請求について ........................................................ 56第1 総論 ................................................................................. 56第2 請求の特定性について ........................................................ 56 1 実現すべき結果のみを記載した請求が特定性を欠いていること........................................................................................ 56 2 特定の作為を求める請求と善解しても不適法であること ...... 58第3 原状回復請求の適法性についてのまとめ .............................. 60第2節認定事実 .................................................................... .................. 60第2節認定事実 ........................................................................... 60 第1 総論 ................................................................................. 60第2 おおむね「長期評価」公表以前 ........................................... 61 1 津波地震等に係る一般的な知見 .......................................... 61津波地震 ....................................................................... 61津波地震の機序に係る知見 ............................................. 61アプレート間地震に係る津波 .......................................... 62イ 「比較沈み込み学」 .................................................... 63ウ地震地体構造論 .......................................................... 64萩原マップ(1991,甲B413・190頁) ...... 65垣見マップ(2003,乙B163) ...................... 65エアスペリティモデル ............... 991,甲B413・190頁) ...... 65垣見マップ(2003,乙B163) ...................... 65エアスペリティモデル .................................................... 66オ付加体モデル ............................................................. 66カ明治三陸地震(1896)に係る谷岡・佐竹論文(1996) .......................................................................... 67キ JAMSTECによる構造探査(平成13年) ............ 67 2 869年貞観津波(甲B1の1,12の1)に係る知見 ...... 68概要 .............................................................................. 68「長期評価」公表までの知見 .......................................... 68ア平成2年 .................................................................... 68イ平成10年 ................................................................. 69ウ平成12年 ................................................................. 69エ平成13年 .......... 69ウ平成12年 ................................................................. 69エ平成13年 ................................................................. 69オ平成14年 ................................................................. 70 3 想定津波に係る知見等 ....................................................... 71設置許可時点における想定津波(3.1m) ................... 71 平成6年時点での一審被告東電による想定津波(3.5m).................................................................................... 717省庁手引き ................................................................. 714省庁報告書 ................................................................. 72ア 4省庁報告書による想定津波(6.4m) ................... 72イ電事連による想定津波(8.6m) ............................. 72ウ平成10年時点での一審被告東電による想定津波(4.8m) .................. 事連による想定津波(8.6m) ............................. 72ウ平成10年時点での一審被告東電による想定津波(4.8m) .......................................................................... 72エ計算値の2倍又は標準偏差分の2倍の津波までの考慮 ... 73「津波浸水予測図」 ....................................................... 73土木学会の「津波評価技術」 .......................................... 74ア平成14年2月の「津波評価技術」 ............................. 74イ一審被告東電の対応 .................................................... 75ウ本件事故後の津波評価技術の改訂 ................................ 76第3 地震調査研究推進本部地震調査委員会による「長期評価」 ..... 76 1 「長期評価」の作成・公表等 ............................................. 76「長期評価」の作成・公表(平成14年7月) ................ 76「長期評価」の概要 ....................................................... 77「長期評価」の信頼度の公表(平成15年3月) ............ 79地震本部による地震動予測地図の公表(平成17年3月) 79 ...................... 77「長期評価」の信頼度の公表(平成15年3月) ............ 79地震本部による地震動予測地図の公表(平成17年3月) 79 2 「長期評価」に対する一審被告らの対応 ............................. 80保安院によるヒアリングと一審被告東電の対応(平成14年8月) .......................................................................... 80平成20年2月16日 .................................................... 82今村文彦見解(平成20年2月26日) ......................... 83平成20年試算(平成20年4月18日) ...................... 83 平成20年6月10日 .................................................... 84一審被告東電内部における「長期評価」対応方針決定(平成20年7月31日)とそれ以降のやり取り ...................... 84ア平成20年7月31日 ................................................ 85イ平成20年8月6日 .................................................... 86ウ平成20年8月11日 ................................................ 87エ平成20年8月14日 ................. 86ウ平成20年8月11日 ................................................ 87エ平成20年8月14日 ................................................ 88オ平成20年8月18日 ................................................ 88カ平成20年10~12月頃土木学会委員からの意見聴取................................................................................. 88耐震バックチェック内部説明会(平成20年9月10日) 89平成21年2月11日 .................................................... 89平成21年6月 ............................................................. 90平成21年8月 ............................................................. 90平成21年8月28日 .................................................... 90平成22年8月~平成23年2月 ................................... 91平成23年3月7日 ....................................................... 91一審被告国の対応 ...... ........ 91平成23年3月7日 ....................................................... 91一審被告国の対応 .......................................................... 91第4 おおむね「長期評価」公表以降 ........................................... 92 1 土木学会の「長期評価」への対応等 ................................... 92土木学会における検討・審議予定等 ................................ 92平成16年度アンケート ................................................ 93平成20年度アンケート ................................................ 94 2 中央防災会議の報告 .......................................................... 95 3 福島県の津波想定区域図等 ................................................ 95福島県の津波想定区域図 ................................................ 95 一審被告東電による想定津波(5m) ............................. 96 4 茨城県の浸水想定区域図等 .............................................. (5m) ............................. 96 4 茨城県の浸水想定区域図等 ................................................ 96茨城県の浸水想定区域図の作成 ....................................... 96一審被告東電による想定津波(4.7m) ...................... 96 5 耐震バックチェック中間報告書の評価についての議論 ......... 96耐震バックチェック指示 ................................................ 97耐震バックチェック中間報告等 ....................................... 98平成20年試算 ............................................................. 98平成21年報告 ............................................................. 98 6 おおむね「長期評価」公表以降の関連論文等 ...................... 99鶴論文(平成14年) .................................................... 99松澤・内田論文(平成15年) ..................................... 100石橋論文(平成15年) .............................................. 100都司論文(平成15年) ............ .... 100石橋論文(平成15年) .............................................. 100都司論文(平成15年) .............................................. 100今村・佐竹・都司論文(平成19年) ........................... 100「日本の地震活動」(平成21年3月) ....................... 101松澤論文(本件事故後。平成23年11月) ................. 101島崎論文(本件事故後。平成23年5月) .................... 102 7 「長期評価」公表以降の貞観津波に係る知見 .................... 102⑴ 本件地震までの知見 ..................................................... 102ア平成16年 ............................................................... 102イ平成17年~平成22年文部科学省委託業務 ............ 103ウ平成21年 ............................................................... 107エ平成22年 ............................................................... 108オ平成23年 ............................................................... .................... 108オ平成23年 ............................................................... 109⑵ 一審被告東電による検討 .............................................. 109 ア佐竹論文による検討 .................................................. 109イ津波堆積物調査 ........................................................ 110 8 本件地震以前における地震・津波に関する地震学者の考え方...................................................................................... 111第5 溢水事故及び溢水事故対策等に係る知見等 ......................... 112 1 総論 ............................................................................... 112 2 本件事故前の事例 ........................................................... 113日・福島第一原発溢水事故(平成3年溢水事故) .......... 113仏・ルブレイエ原発溢水事故(1999年) ................. 113台・馬鞍山原発外部電源喪失事故(2001年) .......... 115印・マドラス原発溢水事故(2 仏・ルブレイエ原発溢水事故(1999年) ................. 113台・馬鞍山原発外部電源喪失事故(2001年) .......... 115印・マドラス原発溢水事故(2004年) .................... 116本件事故後の一審被告東電による振返り ....................... 117 3 本件事故前における各国の原子力発電所における水密化 .... 118 4 溢水勉強会 ..................................................................... 118概要 ............................................................................ 118平成18年5月11日第3回溢水勉強会 ....................... 119平成18年5月25日第4回溢水勉強会及びマイアミ論文.................................................................................. 120平成19年4月調査結果報告書 ..................................... 122 5 衆議院における質疑 ........................................................ 123 6 本件事故後の国内の原発における水密化 ........................... 123第3節一審被告東電の損害賠償責任 ......................................... における水密化 ........................... 123第3節一審被告東電の損害賠償責任 ............................................ 124第1 一般不法行為に基づく請求の可否について ......................... 124 1 当裁判所の判断 ............................................................... 124 2 当審における一審原告らの主張に対する判断 .................... 124第2 一審被告東電の義務違反 ................................................... 127 1 総論 ............................................................................... 127 2 一審被告東電の負っていた義務 ........................................ 127本件事故当時の一審被告東電に対する規制法令の概要 .... 127ア原子力基本法 ........................................................... 127イ炉規法 ..................................................................... 128ウ電気事業法 ............................................................... 130エ省令62号 ......... 128ウ電気事業法 ............................................................... 130エ省令62号 ............................................................... 133原子力発電所の有する危険性 ........................................ 134一審被告東電の義務内容 .............................................. 135 3 津波に対する予見義務 ..................................................... 135 4 予見可能性の対象 ........................................................... 137 5 一審被告東電の予見可能性 .............................................. 138 6 本件事故発生を防止するために必要であった措置 .............. 144 7 一審被告東電の結果回避可能性 ........................................ 145⑴ 結果回避可能性に係る主張立証責任等 ........................... 145⑵ 一審被告東電の結果回避可能性 ..................................... 146 8 一審被告東電の義務違反の有無及び程度 ........................... 148 9 一審被告東電の当審における ......................... 146 8 一審被告東電の義務違反の有無及び程度 ........................... 148 9 一審被告東電の当審における主張について ....................... 152第4節一審被告国の損害賠償責任 ............................................... 156第1 規制権限不行使の違法性の判断枠組み ............................... 156 1 当裁判所が採用する違法性の判断枠組み ........................... 156 2 一審被告国の当審における新主張に対する判断 ................. 158第2 本件における規制権限不行使の違法性 ............................... 160 1 経済産業大臣の規制権限の有無 ........................................ 160 2 法令の趣旨・目的と被害法益の性質・重大性 .................... 167 3 予見可能性 ..................................................................... 169 ⑴ 予見可能性の対象 ........................................................ 169⑵ 一審被告国の予見可能性 .............................................. 169⑶ 一審被告国の主張に対する判断 .................. 一審被告国の予見可能性 .............................................. 169⑶ 一審被告国の主張に対する判断 ..................................... 171ア 「長期評価」の意義・性格 ........................................ 172イ 「長期評価」の作成過程における異論等 .................... 173海溝型分科会における議論 ..................................... 173公募意見における批判 ........................................... 176ウ地震地体構造等に係る知見との関係 ........................... 178エ慶長三陸地震及び延宝房総沖地震 .............................. 180オ 「長期評価」公表後の専門家らによる異論等 .............. 183原子力安全委員会における議論等 ........................... 183垣見マップ ........................................................... 183鶴論文,松澤・内田論文,石橋論文及び都司論文 .... 184地震学会会長兼調査委員会委員長の異論 ................. 186「地震動予測地図」との関係 ................................. 187中央防災会議の報告 .................................... 「地震動予測地図」との関係 ................................. 187中央防災会議の報告 .............................................. 189土木学会の第4期津波評価部会 .............................. 190カ 「長期評価」公表後の改訂等..................................... 191長期評価信頼度の公表 ........................................... 191平成21年3月の「長期評価」の一部改訂 .............. 192キ本件事故後に証拠化された専門家の供述 .................... 193ク小括 ........................................................................ 196 4 結果回避可能性 ............................................................... 196⑴ 一審被告国の結果回避可能性の位置付け ....................... 196⑵ 結果回避可能性を基礎付ける事実の主張立証責任 .......... 197⑶ 防潮堤の設置について .................................................. 199 ⑷ 重要機器室及びタービン建屋等の水密化について .......... 202⑸ 小括 ................................................. ⑷ 重要機器室及びタービン建屋等の水密化について .......... 202⑸ 小括 ............................................................................ 205 5 規制権限の性質及び被害者による被害回避可能性 .............. 205 6 「長期評価」の見解に対する一審被告国の対応 ................. 206⑴ 平成14年8月の一審被告東電に対するヒアリング等 .... 206⑵ 保安院によるその後の調査 ........................................... 209⑶ 「津波評価技術」の考え方との関係 .............................. 217 7 総合的検討 ..................................................................... 222⑴ 規制権限不行使の違法性 .............................................. 222⑵ 一審被告国の主張に対する判断 ..................................... 223第3 一審被告国の損害賠償責任とその範囲 ............................... 228 1 一審被告国の損害賠償責任の成否..................................... 228 2 一審被告国の損害賠償責任の範囲..................................... 228第5節損害論(総論) .................... .. 228 2 一審被告国の損害賠償責任の範囲..................................... 228第5節損害論(総論) ............................................................... 230第1 一審原告らの請求の整理 ................................................... 230 1 提訴後損害分として請求している部分について ................. 230 2 平穏生活権侵害に係る損害賠償請求の整理 ....................... 231 3 訴訟物の整理 .................................................................. 232平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求 ........................... 232「ふるさと喪失」損害の賠償請求 ................................. 235中間指針等の月額10万円等の慰謝料の性格 ................. 237 ....... 238一律請求について ........................................................ 239第2 損害の有無及び損害額の判断の在り方 ............................... 241 1 一審原告らの主張の整理 .................................................. 241 2 損害の判断の在り方 ................... 一審原告らの主張の整理 .................................................. 241 2 損害の判断の在り方 ........................................................ 241 3 損害の判断において考慮すべき要素 ................................. 242本件事故により侵害された事柄 ..................................... 242ア基本的な社会インフラ .............................................. 244イ生活の糧を取得する手段 ........................................... 244ウ家庭・地域コミュニティを育む物理的・社会的諸要素 . 244エ周囲の環境・自然 ..................................................... 244オ帰るべき地・心の拠り所となる地・想い出の地等としての「ふるさと」 ........................................................... 245カその他 ..................................................................... 245侵害態様・程度 ........................................................... 245本件事故後の経緯・現状 ............................... .................................................. 245本件事故後の経緯・現状 .............................................. 246第6節損害論(各論) ............................................................... 246第1 政府による避難指示等 ..................................................... 246 1 概要 ............................................................................... 246 2 避難区域等の設定等 ........................................................ 247 3 一時避難要請区域の設定等 .............................................. 248 4 特定避難勧奨地点の設定等 .............................................. 248 5 収束宣言等 ..................................................................... 249 6 避難区域等の再編 ........................................................... 251帰還困難区域 ............................................................ .......................... 251帰還困難区域 ............................................................... 251居住制限区域 ............................................................... 251避難指示解除準備区域 .................................................. 252 7 避難指示の解除等 ........................................................... 252避難指示解除の要件 ..................................................... 252避難指示等解除の推移 .................................................. 253 8 特定復興再生拠点区域 ..................................................... 254 第2 中間指針等による賠償の枠組み ........................................ 255 1 中間指針 ........................................................................ 255中間指針の策定 ........................................................... 255避難指示等対象区域 .................. 指針の策定 ........................................................... 255避難指示等対象区域 ..................................................... 255ア避難区域 .................................................................. 255イ屋内退避区域 ........................................................... 255ウ計画的避難区域 ........................................................ 255エ緊急時避難準備区域 .................................................. 256オ特定避難勧奨地点 ..................................................... 256カ一時避難要請区域(南相馬市) ................................. 256避難等対象者 ............................................................... 256避難等対象者への賠償額の目安 ..................................... 257ア本件事故発生日から6か月間(第1期) .................... 257イ第1期終了から6か月間(第2期) ........................... 258ウ第2期 事故発生日から6か月間(第1期) .................... 257イ第1期終了から6か月間(第2期) ........................... 258ウ第2期終了から終期までの期間(第3期) ................. 258エ..................................................... 258備考 ............................................................................ 259 2 中間指針第一次追補 ........................................................ 259中間指針第一次追補の策定 ........................................... 259自主的避難等対象区域 .................................................. 259ア県北地域 .................................................................. 259イ県中地域 .................................................................. 260ウ相双地域 .................................................................. 260エいわき地域 ............................................................. ......................... 260エいわき地域 ............................................................... 260自主的避難等対象者 ..................................................... 260自主的避難等対象者の賠償額の目安 .............................. 260 ア子供及び妊婦 ........................................................... 261イその他の者 ............................................................... 262備考 ............................................................................ 262 3 中間指針第二次追補 ........................................................ 262中間指針第二次追補の策定 ........................................... 262第2期の終期変更 ........................................................ 262第3期の賠償額の目安 .................................................. 263ア避難指示解除準備区域 ................................. ................................................ 263ア避難指示解除準備区域 .............................................. 263イ居住制限区域 ........................................................... 263ウ帰還困難区域 ........................................................... 263エ旧緊急時避難準備区域 .............................................. 264オ特定避難勧奨地点 ..................................................... 264カ自主的避難等対象区域 .............................................. 264備考 ............................................................................ 265 4 中間指針第四次追補 ........................................................ 265中間指針第四次追補等の策定 ........................................ 265第3期の賠償額の目安 .................................................. 266ア帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域ないし避難指示解除準備区域 ... .................................................. 266ア帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域ないし避難指示解除準備区域 ........................................... 266イそれ以外の地域 ........................................................ 267備考 ............................................................................ 267 5 自主賠償基準 .................................................................. 267帰還困難区域,大熊町,双葉町旧居住者 ....................... 268居住制限区域,避難指示解除準備区域(旧居住制限区域,旧避難指示解除準備区域を含み,大熊町,双葉町を除く。)旧居住者 ............................................................................ 268 旧特定避難勧奨地点(南相馬市)旧居住者 .................... 268旧特定避難勧奨地点(川内村,伊達市)旧居住者 .......... 268旧緊急時避難準備区域旧居住者 ..................................... 268旧一時避難要請区域,旧屋内退避区域旧居住者 .............. 268自主的避難等対象区域旧居住者 .......... ......................... 268旧一時避難要請区域,旧屋内退避区域旧居住者 .............. 268自主的避難等対象区域旧居住者 ..................................... 269県南地域及び宮城県丸森町旧居住者 .............................. 269 6 全中間指針の位置付け等 .................................................. 270全中間指針について ..................................................... 270中間指針を巡る原賠審における議論 .............................. 270ア中間指針策定まで ..................................................... 270第4回(5月16日) ........................................... 271第7回(6月9日) .............................................. 271第8回(6月20日) ........................................... 273第12回(7月29日) ........................................ 274第13回(8月5日) ........................................... 275イ中間指針第一次追補策定まで............................. (8月5日) ........................................... 275イ中間指針第一次追補策定まで..................................... 278第14回(9月21日) ........................................ 278第15回(10月20日) ..................................... 279第16回(11月10日) ..................................... 280第17回(11月25日) ..................................... 280第18回(12月6日) ........................................ 282ウ中間指針第二次追補策定まで..................................... 286第19回(12月21日)(丙A46,47) ......... 286第21回(平成24年1月27日) ....................... 287第23回(平成24年2月17日) ....................... 288第24回(平成24年2月23日) ....................... 288 第25回(平成24年3月8日) ........................... 288エ中間指針第四次追補策定まで..................................... 288第34回(平成25年9月10日) ....................... 中間指針第四次追補策定まで..................................... 288第34回(平成25年9月10日) ....................... 289第35回(平成25年10月1日) ....................... 289第36回(平成25年10月25日) .................... 291第37回(平成25年11月22日) .................... 292第39回(平成25年12月26日) .................... 293全中間指針の位置付け .................................................. 295第3 相当因果関係(総論) ..................................................... 296 1 放射線に関する知見 ........................................................ 296放射線に関する基礎的な知見 ........................................ 296放射線による被曝 ........................................................ 297放射線による健康被害 .................................................. 299 2 本件事故と放射性物質の放出 ........................................... 301 3 低線量被曝に関する知見等 ................... 2 本件事故と放射性物質の放出 ........................................... 301 3 低線量被曝に関する知見等 .............................................. 303低線量被曝に関する科学的知見 ..................................... 303ICRPの勧告 ........................................................... 305ア 1990年勧告 ........................................................ 305イ 2007年勧告 ........................................................ 306本件事故当時の国内法令の定め ..................................... 308健康調査等 .................................................................. 310ア基本調査 .................................................................. 310イ甲状腺検査 ............................................................... 310ウ健康診査 .................................................................. 312エこころの健康度・生活習慣に関 ウ健康診査 .................................................................. 312エこころの健康度・生活習慣に関する調査 .................... 312オ妊産婦に関する調査 .................................................. 312 カ内部被曝検査 ........................................................... 313UNSCEARの報告 .................................................. 313ア 2013年福島報告書 .............................................. 313滞在者の実効線量 .................................................. 314避難者の実効線量 .................................................. 314公衆における健康影響 ........................................... 315イ 2015年報告書 ..................................................... 316ウ 2016年報告書 ..................................................... 316社会心理学的知見 ........................................... ......................................... 316社会心理学的知見 ........................................................ 317アリスク認知の2因子モデル ........................................ 317イ災害によるPTSDに係る知見 ................................. 318ウ原発事故のリスク認知 .............................................. 319ストレス調査等 ........................................................... 320ア 「震災を踏まえた子育て環境に関する調査研究」 ....... 320イ 「福島子ども健康プロジェクト」 .............................. 321ウいわき市民調査 ........................................................ 323エ福島市民調査 ........................................................... 323オ子供ストレス調査 ..................................................... 323カ NHK/WIMAアンケート調査に基づく実証的研究 . 324キ放射能に関する福島市民意識調査 .............................. 326ク双葉8か町村災害復興実態調査 ............ に基づく実証的研究 . 324キ放射能に関する福島市民意識調査 .............................. 326ク双葉8か町村災害復興実態調査 ................................. 326第4 相当因果関係(各論) ..................................................... 326 1 一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況等 .................... 327水の状況 ..................................................................... 327食品の状況 .................................................................. 329ア国,地方自治体等による規制等 ................................. 329 基準値等 ............................................................... 329検査結果,出荷制限等 ........................................... 330イ米に係る規制 ........................................................... 332ウ内水面の規制等 ........................................................ 335エ住民の受けた影響 .................................. ................................................. 335エ住民の受けた影響 ..................................................... 335海の状況 ..................................................................... 335ア出荷制限等 ............................................................... 336イ住民の受けた影響 ..................................................... 336除染の状況 .................................................................. 337教育施設の状況 ........................................................... 339ア各教育施設の対応等 .................................................. 339イ避難指示区域における学校の状況等 ........................... 342避難指示区域における学校の状況 ........................... 342小中学校の校数及び児童数の変遷 ........................... 343ウ令和元年5月27日時点における富岡町小中学校の状況等............................................ .................... 343ウ令和元年5月27日時点における富岡町小中学校の状況等............................................................................... 345エ住民の受けた影響 ..................................................... 346医療・介護施設の状況 .................................................. 346ア医療施設等 ............................................................... 346福島県全体 ........................................................... 346相馬エリア ........................................................... 350双葉エリア ........................................................... 350 ア内) .................................................................. 351いわきエリア ........................................................ 352イ介護施設等 ............................................................... 352 .............. 352イ介護施設等 ............................................................... 352 民間事業等の状況 ........................................................ 353ア概観 ........................................................................ 353イ 「さくらモールとみおか」 ........................................ 354健康調査等 .................................................................. 355避難及び帰還の状況 ..................................................... 356 2 グループごとの検討 ........................................................ 360 3 旧居住地が帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域(以下「帰還困難区域等」という。)である一審原告らについて .............................................. 362認定事実 ..................................................................... 362ア帰還困難区域の概要 .................................... .............................................. 362ア帰還困難区域の概要 .................................................. 362イ大熊町の旧居住制限区域並びに大熊町の旧避難指示解除準備区域及び双葉町の避難指示解除準備区域の概要 ....... 363ウ帰還困難区域等旧居住者の受けた被害 ....................... 363居住・移転の自由の制限 ........................................ 364旧居住地の汚染 ..................................................... 364日常生活の阻害 ..................................................... 365長期間の設定による今後の生活の見通しに対する不安,帰還困難による不安 .............................................. 366生活費の増加 ........................................................ 366ふるさとの喪失 ..................................................... 367検討 ............................................................................ 368ア評価(損害額) ................................................ .................................... 368ア評価(損害額) ........................................................ 368イ一審原告らに対する具体的な認容額 ........................... 370全般 ..................................................................... 370一審原告(H-201)について ........................... 372 一審原告(亡)(T-1370)について ............... 373 4 旧居住地が旧居住制限区域である一審原告ら(旧居住地が大熊町の旧居住制限区域である一審原告らを除く。以下,本項において同じ。)について....................................................... 374認定事実 ..................................................................... 374ア旧居住制限区域の概要 .............................................. 374イ旧居住制限区域旧居住者の受けた被害 ....................... 377検討 ............................................................................ 379ア評価(損害額) ................................. ................................................... 379ア評価(損害額) ........................................................ 379イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 382全般 ..................................................................... 382一審原告(亡)(H-0120)について ............... 382 5 旧居住地が旧避難指示解除準備区域である一審原告ら(旧居住地が大熊町,双葉町の旧避難指示解除準備区域である一審原告らを除く。以下,本項において同じ。)について ............... 383認定事実 ..................................................................... 383ア旧避難指示解除準備区域の概要 ................................. 383イ旧避難指示解除準備区域旧居住者の受けた被害 .......... 384検討 ............................................................................ 386ア評価(損害額) ........................................................ 386イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 389 6 旧居住地が ................................... 386イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 389 6 旧居住地が旧緊急時避難準備区域である一審原告らについて...................................................................................... 389認定事実 ..................................................................... 389ア旧緊急時避難準備区域の概要..................................... 389イ旧緊急時避難準備区域旧居住者の受けた被害 .............. 390 広野町の状況 ........................................................ 391川内村の状況(本訴において旧居住地が川内村である一審原告はいない。) ................................................ 392田村市の状況 ........................................................ 393南相馬市の状況 ..................................................... 395楢葉町の状況(本訴において旧居住地が楢葉町の旧緊急時避難準備区域である一審原告はいない。) ............ 396検討 ......................... 楢葉町の状況(本訴において旧居住地が楢葉町の旧緊急時避難準備区域である一審原告はいない。) ............ 396検討 ............................................................................ 398ア評価(損害額) ........................................................ 398イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 400全般 ..................................................................... 400一審原告(H-201)について ........................... 401 7 旧居住地が旧特定避難勧奨地点である一審原告らについて . 401認定事実 ..................................................................... 401ア旧特定避難勧奨地点の概要 ........................................ 401イ旧特定避難勧奨地点旧居住者の受けた被害 ................. 402検討 ............................................................................ 402ア評価(損害額) ........................................................ 402イ一審原告らに対 ............. 402ア評価(損害額) ........................................................ 402イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 404全般 ..................................................................... 404一審原告(亡)(T-1529)について ............... 404旧緊急時避難準備区域と重なる一審原告らについて . 404 8 旧居住地が旧一時避難要請区域である一審原告らについて . 405認定事実 ..................................................................... 405ア旧一時避難要請区域の概況 ........................................ 405イ旧一時避難要請区域旧居住者の受けた被害 ................. 406 検討 ............................................................................ 407ア評価(損害額) ........................................................ 407イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 408全般 ........................................................... 損害額 ........................... 408全般 ..................................................................... 408旧特定避難勧奨地点を旧居住地とする一審原告らについて ........................................................................ 408 9 旧居住地が自主的避難等対象区域である一審原告らについて...................................................................................... 409認定事実 ..................................................................... 409ア自主的避難等対象区域の概況..................................... 409イ各地域の状況 ........................................................... 411福島市 .................................................................. 411二本松市 ............................................................... 415伊達市 .................................................................. 418本宮市 ....... ..... 415伊達市 .................................................................. 418本宮市 .................................................................. 420桑折町 .................................................................. 422国見町 .................................................................. 425川俣町 .................................................................. 426大玉村 .................................................................. 429郡山市 .................................................................. 431須賀川市 ............................................................... 434田村市 .................................................................. 436鏡石町 .................................................................. 438天栄村 ................ 鏡石町 .................................................................. 438天栄村 .................................................................. 439石川町 .................................................................. 441玉川村 .................................................................. 443 平田村 .................................................................. 445浅川町 .................................................................. 446古殿町 .................................................................. 448三春町 .................................................................. 450小野町 .................................................................. 451相馬市 .................................................................. 453新地町 ............... 相馬市 .................................................................. 453新地町 .................................................................. 455いわき市 ............................................................... 457ウ各地域の自主的避難者数 ........................................... 461エ自主的避難等対象区域旧居住者の受けた被害 .............. 462検討 ............................................................................ 463ア評価(損害額) ........................................................ 463イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 468全般 ..................................................................... 468一審原告T-3184について .............................. 469子供であった者として扱うべき一審原告について .... 469妊婦であった者として扱うべき一審原告について .... 470旧居住地が県南地域及び宮城県丸森町である一審原告らについて ................... いて .... 469妊婦であった者として扱うべき一審原告について .... 470旧居住地が県南地域及び宮城県丸森町である一審原告らについて .................................................................................. 472認定事実 ..................................................................... 472ア県南地域及び宮城県丸森町の概要 .............................. 472イ各地域の状況 ........................................................... 473平成23年3月 ..................................................... 473平成23年4月 ..................................................... 474平成23年5~12月 ........................................... 475平成24年1~8月 .............................................. 476 平成24年9月以降 .............................................. 477ウ各地域の自主的避難者数 ........................................... 477エ県南地域及び宮城県丸森町旧居住者の受けた被害 ... ... 477ウ各地域の自主的避難者数 ........................................... 477エ県南地域及び宮城県丸森町旧居住者の受けた被害 ....... 478検討 ............................................................................ 479ア評価(損害額) ........................................................ 479イ一審原告らに対する具体的な損害額 ........................... 484全般 ..................................................................... 484子供であった者として扱うべき一審原告について .... 485妊婦であった者として扱うべき一審原告について .... 486 11 旧居住地が上記3~10 以外の地域である一審原告らについて...................................................................................... 486会津地域 ..................................................................... 486ア認定事実 .................................................................. 486会津地域の概要 ...................................... ............................................... 486会津地域の概要 ..................................................... 486会津地域の状況 ..................................................... 487会津地域の自主的避難者数 ..................................... 488イ一審原告らの損害 ..................................................... 488会津地域旧居住者の損害 ........................................ 488一審原告らに対する具体的な損害額 ....................... 490子供であった者として扱うべき一審原告について .... 490妊婦であった者として扱うべき一審原告について .... 491宮城県(丸森町を除く。) ............................................. 491ア認定事実 .................................................................. 491宮城県(丸森町を除く。)の概要 ............................ 491宮城県の状況 ........................................................ 492宮城県内における本件事故関係の報道 .................... 493 ................................................. 492宮城県内における本件事故関係の報道 .................... 493 イ一審原告らの損害 ..................................................... 497宮城県旧居住者の損害 ........................................... 497一審原告らに対する具体的な損害額 ....................... 498茨城県 ........................................................................ 498ア認定事実 .................................................................. 498茨城県の概要 ........................................................ 498茨城県の状況 ........................................................ 499イ一審原告らの損害 ..................................................... 502茨城県水戸市及び日立市旧居住者の損害 ................. 502茨城県つくば市及び牛久市旧居住者の損害 .............. 503一審原告らに対する具体的な損害額 ....................... 503栃木県 ...... 茨城県つくば市及び牛久市旧居住者の損害 .............. 503一審原告らに対する具体的な損害額 ....................... 503栃木県 ........................................................................ 503ア認定事実 .................................................................. 503栃木県の概要 ........................................................ 503栃木県の状況 ........................................................ 504イ一審原告らの損害 ..................................................... 506栃木県旧居住者の損害 ........................................... 506一審原告(T-2341)に対する具体的な損害額 . 507上記3~10 以外の旧居住者の損害についてのまとめ ...... 508第5 弁済の抗弁 ..................................................................... 508 1 追加賠償項目 .................................................................. 508ADR等増額賠償 ................................ .................................................... 508ADR等増額賠償 ........................................................ 509要介護者増額賠償 ........................................................ 512透析賠償 ..................................................................... 514ペット賠償 .................................................................. 514 2 世帯内融通について ........................................................ 516 3 精神的損害以外の項目(費目間の融通)について .............. 518第6 弁護士費用等 .................................................................. 520 1 弁護士費用 ..................................................................... 520 2 端数の取扱い .................................................................. 520 3 遅延損害金 ......................................................... ............................. 520 3 遅延損害金 ..................................................................... 521第7節相互の保証について(一審被告国関係) ........................... 522第1 総論 ............................................................................... 522第2 「相互の保証」の主張立証責任 ........................................ 522第3 「相互の保証」の内容 ..................................................... 523第4 一審原告らについての検討 .............................................. 524 1 韓国について .................................................................. 524 2 中国について .................................................................. 524 3 フィリピンについて ........................................................ 526 4 ウクライナについて ........................................................ 527 5 相互の保証についてのまとめ .... 4 ウクライナについて ........................................................ 527 5 相互の保証についてのまとめ ........................................... 528第8節訴えを取り下げた一審原告らの扱いについて .................... 528 1 二重訴訟一審原告 ........................................................... 529 2 一審被告国のみが取下げに同意した一審原告 .................... 531第9節結論 ............................................................................... 532 事実及び理由 第1章当事者の求めた裁判(当審における訴え変更後のもの)第1 一審原告ら 1 原判決を次のとおり変更する。 2 原状回復請求一審被告らは,各自,各一審原告(承継一審原告を除く。)らに対し,それぞれ原判決別紙2原告目録の「旧居住地」欄記載の居住地において,空間線量率を1時間当たり0.04μ Sv以下とせよ。 3 損害賠償請求(平穏生活権侵害)承継一審原告らを除く一審原告ら関係ア提訴日の前日までの確定損害分一審被告らは,各自,一審原告(承継一審原告を除く。)らに対し,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「38」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については各132万円,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「175」とある一審原告(承継一審原告を除く。)について 告等目録の「事件番号」欄に「38」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については各132万円,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「175」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については各165万円,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「14」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については各192万5000円,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「165」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については各231万円,及び各金員に対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ提訴後損害分一審被告らは,各自,一審原告(承継一審原告を除く。)らに対し, 別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「38」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については平成25年3月11日から,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「175」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については平成25年9月11日から,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「14」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については平成26年2月11日から,別紙2一審原告等目録の「事件番号」欄に「165」とある一審原告(承継一審原告を除く。)については平成26年9月11日から,それぞれ口頭弁論終結日までの間,各1か月5万5000円の割合による金員及び各金員に対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 承継一審原告(ただし,口頭弁論終結時までに訴えを取り下げた者を除く。)関係一審被告らは,各自,承継一審原告らに対し,別紙7理由一覧表の「承継請求額」欄記載の額及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 取り下げた者を除く。)関係一審被告らは,各自,承継一審原告らに対し,別紙7理由一覧表の「承継請求額」欄記載の額及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 損害賠償請求(ふるさと喪失)一審被告らは,各自,別紙2一審原告等目録の「94号」欄又は「166号」欄に記載のある一審原告ら(承継一審原告を兼ねる者を除く。)に対し,各660万円,一審原告兼亡H-376承継人H-95に対し,1320万円, 一審原告兼亡H-101承継人H-100に対し,660万円,及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は,第1,2審を通じて,一審被告らの負担とする。 第2 一審被告東電 1 原判決中,一審被告東電敗訴部分及び本件訴えのうち平成29年3月22日以降の損害賠償金の支払を求める訴えをいずれも却下した部分を取り消す。 2 上記部分につき,一審原告らの請求をいずれも棄却する。 3 一審原告らの当審における追加請求をいずれも棄却する。 4 一審原告らと一審被告東電との間に生じた訴訟費用は,第1,2審を通じて,一審原告らの負担とする。 第3 一審被告国 1 原判決中,一審被告国敗訴部分及び本件訴えのうち平成29年3月22日以降の損害賠償金の支払を求める訴えをいずれも却下した部分を取り消す。 2 上記部分につき,一審原告らの請求をいずれも棄却する。 3 一審原告らの当審における追加請求をいずれも棄却する。 4 一審原告らと一審被告国との間に生じた訴訟費用は,第1,2審を通じて,一審原告らの負担とする。 第2章本件の概要第1節事案の概要等 1 事案の概要平成23年3月11 原告らと一審被告国との間に生じた訴訟費用は,第1,2審を通じて,一審原告らの負担とする。 第2章本件の概要第1節事案の概要等 1 事案の概要平成23年3月11日午後2時46分,牡鹿半島の東南東約130kmを震源とするM(マグニチュード)9.0,Mt(津波マグニチュード)9.1の東北地方太平洋沖地震(本件地震)が発生した。本件地震は,複数の震源域が連動して発生し,その範囲は,岩手県沖から茨城県沖にかけて,長さ約450km,幅は約200kmに及んだとされ,日本国内では観測史上最大規模であり,世界でも観測史上4番目に大きな規模であった。 本件は,同日,この本件地震が引き起こした津波(本件津波)の影響で,一審被告東電が設置し運営する福島第一原子力発電所(福島第一原発)1~4号機から放射性物質が放出される事故(本件事故)が発生したことにより,本件事故当時の居住地(旧居住地)が放射性物質により汚染されるなどしたとして,福島県又は同県に隣接する宮城県,茨城県若しくは栃木県に居住していた提訴時一審原告ら3864人のうち,① 全員が,一審被告らに対し,人格権又は一審被告東電に対しては民法709条,一審被告国に対しては国賠法1条1項に基づき,旧居住地における空間放射線量率を本件事故前の値である0.04μSv/h以下にすることを求める(原状回復請求)とともに,② 全員が,一審被告らに対し,一審被告東電に対しては,主位的に民法709条,710条,予備的に原賠法3条1項に基づき,一審被告国に対しては国賠法1条1項,民法710条に基づき,各自,平穏生活権侵害による慰謝料の,提訴時までの確定損害分としては,本件事故日である平成23年3月11日から第1,第3,第4又は 第5事件の各提訴日の前日まで1か 710条に基づき,各自,平穏生活権侵害による慰謝料の,提訴時までの確定損害分としては,本件事故日である平成23年3月11日から第1,第3,第4又は 第5事件の各提訴日の前日まで1か月5万円の割合で算定した確定損害金及び1割相当の弁護士費用並びにこれらに対する本件事故日である平成23年3月11日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下,遅延損害金について同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の,提訴後損害分としては,同各提訴日からそれぞれ各旧居住地において空間線量率が0.04μ Sv/h以下となるまでの間1か月5万円の割合による損害金及び1割相当の弁護士費用の,それぞれ支払を求め(平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求),③ 「ふるさと喪失」一審原告ら40人(第2事件に係る26人及び第6事件に係る14人であり,いずれも第1,第3,第4又は第5事件の一審原告でもある。別紙2一審原告等目録の「94号」欄又は「166号」欄に丸数字を記載している。以下,例えば「94号」欄に「①」と記載のある一審原告の番号を「94号-1」とする例に従って表記することがある。)が,一審被告らに対し,上記②と同様の根拠法条に基づき,各自,「ふるさと喪失」による慰謝料として2000万円及び1割相当の弁護士費用合計2200万円並びにこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(「ふるさと喪失」による損害賠償請求)た事案である。 その後,原審の口頭弁論終結時までに,提訴時一審原告らのうち34人が死亡し,死亡一審原告らについては,上記②の平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求を,本件事故日である平成23年3月11日から各死亡一審原告らの死亡日まで1か月5万円の割合 訴時一審原告らのうち34人が死亡し,死亡一審原告らについては,上記②の平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求を,本件事故日である平成23年3月11日から各死亡一審原告らの死亡日まで1か月5万円の割合で算定した損害金及び1割相当の弁護士費用(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」 欄記載の金額)を求める限度へ減縮した請求について,各承継一審原告ら(合計91人)がこれを各自の承継分に応じて承継した(死亡した「ふるさと喪失」一審原告ら2人の各承継一審原告らについては,上記③の「ふるさと喪失」損害に係る請求も承継した。)。 また,原審の口頭弁論終結時までに,提訴時一審原告らのうち40人が訴えを取り下げた。 以上により,原審の口頭弁論終結時の一審原告らは,3881人となった(ただし,承継一審原告らの一部は元々提訴時一審原告であり,両者を兼ねている者もいるところ,両者を兼ねているか否かについて一件記録上必ずしも明確ではない者もいるため,全員について,両者を兼ねているか否かを問わず,それぞれで1人と数えることとする。 その結果,上記人数は,両者を兼ねている者については2人と数えた延べ人数となる。)。 2 原判決の概要原判決は,上記1①の原状回復請求に係る訴えを不適法であるとして却下し,1②の平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求の提訴後損害分に係る訴えのうち,原審の口頭弁論終結後の期間に対応する損害賠償を求める部分を不適法であるとして却下するとともに,原審の口頭弁論終結前の期間に対応する損害賠償を求める部分については,一審被告東電に対する主位的請求(民法709条,710条)をいずれも全部棄却した上で,予備的請求(原賠法3条1項)につき,一部の一審原告らについてはその一部を認容してその余の請求を棄却し,その余の一審原告らについて る主位的請求(民法709条,710条)をいずれも全部棄却した上で,予備的請求(原賠法3条1項)につき,一部の一審原告らについてはその一部を認容してその余の請求を棄却し,その余の一審原告らについてはいずれも全部棄却し,一審被告国に対する請求(国賠法1条1項,民法710条)は,一審被告東電に対する予備的請求を一部認容した一審原告らについてはその一部(一審被告東電に対する認容額の2分の1の額)を認容してその余の請求を棄却し, その余の一審原告らについてはいずれも全部棄却し,上記1③のふるさと喪失による損害賠償請求についてはいずれも全部棄却した。 なお,原審による上記判断は,証拠上認められる全ての考慮要素を中間指針等による賠償額」を超える場合には,その超えて支払われた賠償金による償額」を超えない場合又は弁済が認められる金額を超えない場合には,請求を全部棄却することとしたものであり,当審も,かかる判断方法を踏襲することとする。 3 当審における主張経過概要控訴提起等原判決に対し,原審の口頭弁論終結時の一審原告ら全員及び一審被告らが控訴を提起した(一審被告らは,請求が認容された一審原告らに係る訴えとの関係でのみ控訴を提起した。)。 その後,当審の口頭弁論終結時までに,提訴時一審原告らのうち59人が更に死亡し(死亡一審原告は,原審と合計で93人),死亡一審原告らについては,原審と同様,上記1②の平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求を,本件事故日である平成23年3月11日から各死亡一審原告らの死亡日まで1か月5万円の割合で算定した損害金及び1割相当の弁護士費用(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄記載の金額)を求める限度へ減縮した請求について,各承継一審原告ら(合計201人)が各自の承継分に応じてこれを承継した 定した損害金及び1割相当の弁護士費用(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄記載の金額)を求める限度へ減縮した請求について,各承継一審原告ら(合計201人)が各自の承継分に応じてこれを承継した。 また,当審の口頭弁論終結時までに,提訴時一審原告らが更に198人,及び承継一審原告らのうち16人が,それぞれ訴えを取り下げたところ(なお,承継一審原告らの取下げにより,提訴時一審原告のうち3人は,同人らを承継した全ての「承継一審原告」が口頭弁論終結時までに訴えを取り下げることとなった。この3人の提訴時一審原告についても「取下一審原告」と表記することについては,前注記載のとおりであり,別紙2一審原告等目録の「分類」欄に「×」と記載している。),提訴時一審原告らのうち6人(H-0414,H-0415,H-0416,H-0417,H-0456,H-0519)については一審被告ら双方が,うち2人(H-0142,H-0143)については一審被告東電のみが,それぞれ民訴法261条2項所定の同意をしなかったため,前6者については一審被告ら双方との関係で,後2者については一審被告東電のみとの関係で,訴え取下げの効力が生じていない(これらの一審原告らの扱いについては,後に項を設けて説示する(第3章第8節)。)。 最終的に,当審の口頭弁論終結時において当事者であり判決の対象となる一審原告らは,提訴時一審原告らが3541人(うち2人は一審被告東電との間の訴訟のみ係属。),承継一審原告らが276人,合計3817人である(ただし,上記1と同様に,上記人数は,提訴時一審原告と承継一審原告を兼ねている者について2人と数えた延べ人数となる。)。 平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求について一審原告らは,当審において,上記1②の請求のうち 上記人数は,提訴時一審原告と承継一審原告を兼ねている者について2人と数えた延べ人数となる。)。 平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求について一審原告らは,当審において,上記1②の請求のうち,当審口頭弁論終結日の翌日から旧居住地の空間線量率が0.04μ Sv/h以下になるまでの間1か月5万円の割合による慰謝料を請求する部分を取り下げ,かつ,第1,第3,第4,又は第5事件の各提訴日か ら当審口頭弁論終結日までの損害金等に対する本件事故日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴え(附帯請求)を追加したところ,一審被告らは,一審原告らの上記訴えの一部取下げに同意し,又は同意したものとみなされた。これにより,当審においては,上記1②の平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求は,一審原告らが,一審被告らに対し,一審被告東電に対しては主位的に民法709条,710条,予備的に原賠法3条1項に基づき,一審被告国に対しては国賠法1条1項,民法710条に基づき,各自,本件事故日である平成23年3月11日から当審口頭弁論終結日(令和2年2月20日)までの間,1か月5万円の割合による平穏生活権侵害による慰謝料(ただし,承継一審原告らについては,前示のとおり,本件事故日である平成23年3月11日から各死亡一審原告らの死亡日まで1か月5万5000円の割合(弁護士費用を含む。)で算定した額を基に各自の承継分に応じて算出した金額)及びこれに対する本件事故日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める内容となった。 一審被告らは,これを受けて,上記平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求のうち,原審の口頭弁論終結日の翌日から当審口頭弁論終結日ま 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める内容となった。 一審被告らは,これを受けて,上記平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求のうち,原審の口頭弁論終結日の翌日から当審口頭弁論終結日まで(ただし,当審係属中に死亡した死亡一審原告に係る承継一審原告らについては死亡一審原告の死亡時まで)の損害金及び弁護士費用の支払を求める請求に係る訴えについて,附帯控訴を提起し,同訴えについて従前主張していた本案前の答弁を撤回した上で,これを却下した原判決の取消しと同請求の棄却を求めた上,一審原告らが追加した同請求部分に係る附帯請求の棄却を求めた。これにより,上記平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求については,一審 原告らの主たる請求及び附帯請求に対し,一審被告らによる棄却答弁のみがされている状態となった。 「ふるさと喪失」による損害賠償請求について上記1③の請求をしている一審原告ら(「ふるさと喪失」一審原告ら)及び同一審原告らに係る承継一審原告らは,当審において,同請求を,「ふるさと喪失」による慰謝料として600万円及び1割相当の弁護士費用合計660万円並びにこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求へと減縮し,一審被告らはいずれもこれに同意した。なお,「ふるさと喪失」一審原告のうち1名(H-0086)は,当審において訴えを取り下げた。 第2節前提事実(争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)第1 当事者 1 提訴時一審原告ら提訴時一審原告らは,いずれも平成23年3月11日当時,福島県又は同県に隣接する宮城県,茨城県若しくは栃木県に居住していた住民である。全部で3864人(第1事件800人〔うち避難者193人,滞 提訴時一審原告らは,いずれも平成23年3月11日当時,福島県又は同県に隣接する宮城県,茨城県若しくは栃木県に居住していた住民である。全部で3864人(第1事件800人〔うち避難者193人,滞在者607人〕,第3事件1159人〔うち避難者177人,滞在者982人〕,第4事件620人〔うち避難者69人,滞在者551人〕,第5事件1285人〔うち避難者102人,滞在者1183人〕)であったが,前示のとおり,その後,訴え取下げ又は死亡及び承継により,当審の口頭弁論終結時点においては延べ3817人(うち3541人が提訴時一審原告ら)である。 一審原告らのうち,本件事故によって旧居住地から避難をした者を避難者と,旧居住地に滞在を継続している者を滞在者とそれぞれ呼称 し,別紙2一審原告等目録の「原告番号」の頭字にそれぞれH,Tを付することとしている。 2 一審被告東電一審被告東電は,平成23年3月11日当時,福島県双葉郡双葉町及び同郡大熊町に福島第一原発を設置し運転していた東京電力株式会社が会社分割及び商号変更を経た株式会社であり,本件事故に関し,原賠法上の「原子力事業者」(3条1項)に該当する。 3 一審被告国一審被告国は,国賠法上の賠償義務を負う主体であり,本件訴訟において法務大臣が代表している。 第2 福島第一原発の概要等 1 福島第一原発の概要福島第一原発は,福島県双葉郡双葉町(以下「双葉町」という。)及び同郡大熊町(以下「大熊町」という。)に位置し,その敷地の東側が太平洋に面しており,敷地全体の広さは約350万㎡である。福島第一原発には原子炉が1~6号機まで6機設置されており,1号機は一審被告東電が初めて建設し,昭和46年3月26日に運転を開始した発電用原子炉である。その後,2号機は昭和49年7月に 万㎡である。福島第一原発には原子炉が1~6号機まで6機設置されており,1号機は一審被告東電が初めて建設し,昭和46年3月26日に運転を開始した発電用原子炉である。その後,2号機は昭和49年7月に,3号機は昭和51年3月に,4号機は昭和53年10月に,5号機は昭和53年4月に,6号機は昭和54年10月に,それぞれ運転が開始された(このうち1~4号機は大熊町に,5,6号機は双葉町に設置されている。)。 1~6号機はいずれも沸騰水型(BWR)軽水炉(LWR)であり,米国から全面的に技術を導入して設置された。電気出力は1号機が46万kw,2~5号機が78.4万kw,6号機が110万kwである。各号機は,原子炉建屋(R/B),タービン建屋(T/B),コント ロール建屋(C/B),サービス建屋(S/B),放射性廃棄物処理建屋(RW/B)などからなり,それぞれ単独で,又は隣接号機による共用形式で設置されている。 1~4号機の主要建屋の敷地高はO.P.+10mであり,5及び6号機の主要建屋の敷地高はO.P.+13mである。また,敷地の最も海側の部分であり,後記の非常用海水ポンプ等が設置されているエリアの敷地高はO.P.+4mである。 (甲B1の1,乙B127) 2 沸騰水型軽水炉の概要軽水炉では,原子炉圧力容器内に,核分裂を起こしやすい物質であるウラン235の比率を濃縮により3~5%に高めて燃料被覆材で覆いペレット状にした燃料棒を集合体にした核燃料を設置し,その周囲に軽水(普通の水)を巡らせており,この軽水が,核燃料の核分裂により発生する中性子を減速させ(高速中性子から熱中性子へ)次の核分裂を引き起こしやすくする減速材としての機能と,核分裂により高熱を発した燃料から熱エネルギーを取り出して原子炉を一定以下の温度に保つ冷 り発生する中性子を減速させ(高速中性子から熱中性子へ)次の核分裂を引き起こしやすくする減速材としての機能と,核分裂により高熱を発した燃料から熱エネルギーを取り出して原子炉を一定以下の温度に保つ冷却剤としての機能を同時に果たしている。軽水炉には沸騰水型と加圧水型(PWR)があるところ,福島第一原発の1~6号機で採用されている沸騰水型は,原子炉内で発生した蒸気で直接発電機のタービンを回す点が加圧水型と異なっている。沸騰水型では,給水ポンプと再循環ポンプによって送られた冷却水は,R/B内の原子炉圧力容器の下部から上方に向かって燃料棒に沿って流れ,発熱した核燃料によって加熱されるため,水の温度は上方に行くほど高くなり,途中から沸騰を始めて水と蒸気が混ざった状態となるところ,この沸騰した冷却水から原子炉圧力容器上方にある汽水分離器で蒸気を取り出し乾燥させてT/Bに送り(電気出力100万kw級の沸騰水型で は,原子炉出口での蒸気の温度はおおむね286℃となる。),この蒸気の力でタービンを回して発電する。タービンを回した蒸気は海水を冷却水とする復水器において水に戻され,再びR/B内へ送られる,という循環を繰り返す。 異常時には,①原子炉圧力容器内で,中性子吸収剤と構造材から構成される燃料制御棒が核燃料の集合体の中に急速に挿入されることで,核燃料の核分裂反応を抑制し,原子炉の出力を低下させること(原子炉停止機能),②このように停止後も核燃料はその内に残存する多量の放射性物質の崩壊により発熱は続くことから,燃料被覆の破損を防止するために炉心の冷却を続ける必要があり,そのために通常の給水系の他に設置された様々な注水系(電動ポンプ等により原子炉に注水する設備)により炉心(燃料集合体をまとめてシュラウドの中に挿入したもの)の冷却を継続 心の冷却を続ける必要があり,そのために通常の給水系の他に設置された様々な注水系(電動ポンプ等により原子炉に注水する設備)により炉心(燃料集合体をまとめてシュラウドの中に挿入したもの)の冷却を継続すること(原子炉冷却機能),③原子炉内に蓄積される極めて強い放射能を有する放射性物質を施設外へ放出することを防止すること(格納機能)によって,放射性物質が原子炉外に流出する事故を防ぐことが必須であるとされている。 仮に核燃料の冷却に支障を来たしたまま原子炉を停止するための措置が取られないと,燃料表面では蒸気が形成され,それが断熱体として働き,蒸気のブランケットによって熱の流れがなくなるまで燃料要素は過熱され,約950℃に達すると,燃料被覆材は水素化されてもろくなり,蒸気との発熱反応(水― ジルコニウム反応等)によって水素を生成する。この状態が進むと燃料要素はかなりの損傷を受け,炉心損傷に至ることになる。したがって,沸騰水型軽水炉の設計においては,第一に,起こりそうもない事故状態を含む全ての予測される状態に対して,適切な炉心冷却装置を設ける必要性と,第二に,圧力容器の健全性を維持し,予測されるいかなる漏れに対しても適切な水の 補給が有効となることを確実にする必要性の二つの基本的な安全が図られるべきであるとされている。 (甲B1の1,204,乙B126,丙B41の1) 3 福島第一原発に係る非常時における安全設備等沸騰水型軽水炉である福島第一原発においても,上記①の原子炉停止機能としての燃料制御棒や③の格納機能としての圧力容器(RPV),格納容器(PCV)等の設備を有していた。格納容器の形状は1~5号機が「マークⅠ型」,6号機が「マークⅡ型」であり,前者は,フラスコ型をしたドライウェル(D/W)とドーナツ型をしたサプレッシ V),格納容器(PCV)等の設備を有していた。格納容器の形状は1~5号機が「マークⅠ型」,6号機が「マークⅡ型」であり,前者は,フラスコ型をしたドライウェル(D/W)とドーナツ型をしたサプレッションチャンバー(S/C。ウェットウェル等ともいわれる。)から構成される。S/Cは内部に大量の水を蓄え,D/Wとベント管と呼ばれる8本の太い管でつながっており,配管破断等の事故時には,圧力容器から放出された蒸気を凝縮して水に戻し,格納容器全体の圧力を抑制する機能を有する。S/C内の水は,圧力容器内に注水する非常用炉心冷却系(ECCS)の水源としての機能や,事故時に圧力容器から蒸気と共に放出される核分裂生成物を1/100以下に除去するフィルタとしての機能も有している。(甲B1の1,甲B204の1等)また,上記②の原子炉冷却機能としては,主な設備として,1号機には炉心スプレイ系(CS),非常用復水器(IC),高圧注水系(HPCI),原子炉停止時冷却系(SHC)及び格納容器冷却系(CCS)が,2~5号機にはCS及びHPCIのほか,原子炉隔離時冷却系(RCIC)及び残留熱除去系(RHR)が,6号機にはRCIC及びRHRのほか,高圧炉心スプレイ系(HPCS)及び低圧炉心スプレイ系(LPCS)が,それぞれ設置されていた。また,1号機のCCS及び2~6号機のRHRの熱交換器を除熱するため,冷却水として海水を使用するところ,これを供給するために非常用海水ポンプ(CCS W及びRHRS)が設置されていた。CS駆動のためには交流電源が必要であり,IC,HPCI及びRCIC起動のためには直流電源が必要である。また,CCSW及びRHRSはいずれも作動させるために6900Vの交流電源を必要とする。(甲B1の1)福島第一原発では,通常運転中は自ら ,HPCI及びRCIC起動のためには直流電源が必要である。また,CCSW及びRHRSはいずれも作動させるために6900Vの交流電源を必要とする。(甲B1の1)福島第一原発では,通常運転中は自ら発電した電力を使用し,緊急停止時など発電停止時には新福島変電所からの外部電源を用い,外部電源すら用い得なくなったときには,非常用ディーゼル発電機を用いることになる。外部電源や非常用ディーゼル発電機からの電源は,高圧交流電源であり,これを各号機に配置された動力用電源盤で変圧して利用する。動力用電源盤には,高圧電源用金属閉鎖配電盤(M/C),低圧低電圧回路に使用されるパワーセンター(P/C)及び小容量の所内低電圧回路に使用されるモーターコントロールセンター(MCC)が存在し,交流を直流に返還する直流電源盤(バッテリー付属)も存在する。そして,福島第一原発では,隣接する1及び2号機間,3及び4号機間,5及び6号機間で互いに電源を融通し合えるよう設計されている。非常用ディーゼル発電機は,1~4号機に,それぞれA,B2系統が設置されていた。1号機の非常用ディーゼル発電機A・B系は,タービン建屋地下1階(A系がO.P.+4.9m,B系がO. P.+2m)に,2号機の非常用ディーゼル発電機は,A系がタービン建屋地下1階(O.P.+1.9m),B系(空冷式)が共用プール建屋1階(O.P.+10.2m)に,3号機の非常用ディーゼル発電機A,B系は,いずれもタービン建屋地下1階(O.P.+1.9m)に,4号機の非常用ディーゼル発電機A系はタービン建屋地下1階(O. P.+1.9m),B系(空冷式)は共用プール建屋1階(O.P.+10.2m)に,それぞれ設置されていた。 (甲B1の1資料編76頁,乙B259・4-56頁) 非常用ディーゼル発電機 .+1.9m),B系(空冷式)は共用プール建屋1階(O.P.+10.2m)に,それぞれ設置されていた。 (甲B1の1資料編76頁,乙B259・4-56頁) 非常用ディーゼル発電機は,空冷式である2,4号機各B系を除く6台は,非常用海水ポンプで取り込まれる海水を利用して発電機の冷却を行う水冷式構造になっており,その非常用海水ポンプ6台は,いずれも屋外の海側エリア(O.P.+4m)に,建屋に覆われずにむき出しで設置されていた。(甲B1の1本文編25,28頁,資料編75頁,乙B259・4-56頁)非常用ディーゼル発電機によって発電された電気は,まず高圧配電盤(M/C)により6900Vに変圧され,更に低圧配電盤(P/C,MCCなど)で480V又は210Vに変圧されて,発電所内の各機器に供給されることとなっており,非常用ディーゼル発電機自体の機能が維持されていても,配電盤が機能喪失すれば電源を供給することはできなくなるところ,配電盤は,1号機は,C,Dの2系統ともタービン建屋1階(O.P.+10.2m)に,2号機は,C,Dの2系統がタービン建屋地下1階(O.P.+1.9m),E系が共用プール建屋地下1階(O.P.+2.7m)に,3号機は,C,Dの2系統がいずれもタービン建屋地下1階(O.P.-0.3m)に,4号機の非常用高圧配電盤は,C,Dの2系統がいずれもタービン建屋地下1階(O.P.+1.9m),E系が共用プール建屋地下1階(O.P.+2.7m)に,それぞれ設置されていた。(甲B1の1資料編76~77頁,乙B259・4-56頁)第3 本件地震の発生から本件事故に至る経緯本件地震の発生から本件事故に至る経緯は,以下のとおりであり,基本的に原審が認定したとおりである。 1 本件地震の発生及び本件津波の到来平 6頁)第3 本件地震の発生から本件事故に至る経緯本件地震の発生から本件事故に至る経緯は,以下のとおりであり,基本的に原審が認定したとおりである。 1 本件地震の発生及び本件津波の到来平成23年3月11日午後2時46分,東北地方太平洋沖でM9. 0(Mt9.1)の連動型巨大地震(本件地震)が発生した。本件地震 の震源は,牡鹿半島の東南東約130km付近(北緯38°06.2′ ,東経142°51.6′ ),深さ約24kmの地点であり,震源域は,三陸沖南部海溝寄り,宮城県沖,福島県沖,茨城県沖の複数の領域を震源域として連動して発生し,その長さは約500km,幅は約200kmで,最大すべり量は50m以上であった。この地震は,西北西― 東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で,海のプレートである太平洋プレートと陸のプレートの境界の広い範囲で破壊が起きたことにより発生した(甲B1の1,乙B9,10,13,444)。 本件地震後,これに伴う津波(本件津波)が,ほぼ東方から福島第一原発に到来した。福島第一原発約1.5km沖合の波高計によれば,水位は,午後3時15分頃から上昇し,午後3時27分頃に約4mのピークとなった(第一波)後,いったん低下し,午後3時33分頃から急に上昇し,午後3時35分頃に測定限界であるO.P.+7.5mを超えた(第二波)。福島第一原発付近での津波の高さは,被告東電の推計で+13.1m,中央防災会議の推計で+8.5m,藤井雄士郎,佐竹健治による推計で約10m,8学会合同調査報告による推計で約10mなどと推計されている。 本件津波は,1~4号機の主要建屋敷地高さ(O.P.+10m)を超えて遡上し,1~4号機海側エリア及び主要建屋設置エリアはほぼ全域が浸水した。1~4号機敷地エリアでの浸水高はO.P.+11. る。 本件津波は,1~4号機の主要建屋敷地高さ(O.P.+10m)を超えて遡上し,1~4号機海側エリア及び主要建屋設置エリアはほぼ全域が浸水した。1~4号機敷地エリアでの浸水高はO.P.+11. 5~15.5m(浸水深1.5~5.5m)であり,局所的に最大O. P.+16~17m(浸水深6~7m)に及んだ。 2 1号機の状況1号機の原子炉は,本件地震により自動的に緊急停止(原子炉スクラム)した。1号機は,3月11日午後3時37分,本件地震及び本件津波により,1号機自体の発電能力による内部電源,新福島変電所 からの外部電源,非常用ディーゼル発電機からの非常用電源の全交流電源を喪失し,前後して,バッテリーからの直流電源も喪失した(全電源喪失)。このため,非常用冷却設備である非常用復水器(IC),高圧注水系(HPCI)がいずれも機能を喪失し,炉心の冷却が不可能になった。その結果,1号機の原子炉水位が急激に低下し,国会事故調及び東電事故調によれば3月11日午後6時50分頃,保安院によれば3月11日午後6時頃,炉心損傷が開始した。 政府事故調は,3月11日午後8時07分以降,午後10時頃までに,炉心損傷が進んで炉心溶融(燃料ペレットの溶融)が生じ,圧力容器又はその周辺部にその閉じ込め機能を喪失させるような損傷が生じていた可能性があり,3月12日午前2時45分頃までにはそのような損傷(すなわち,炉心溶融)が生じていたものと推定している(甲B1の2本文編28~29頁,資料編14~38頁)。 国会事故調は,炉心損傷の開始を3月11日午後6時50分頃とする被告東電の解析結果を引用しつつ,同日午後5時30分頃の段階で,「このときまでには既にICを隔離してから約2時間が過ぎており,既に炉心上部が露出し,溶融も始まっていたと推定される 6時50分頃とする被告東電の解析結果を引用しつつ,同日午後5時30分頃の段階で,「このときまでには既にICを隔離してから約2時間が過ぎており,既に炉心上部が露出し,溶融も始まっていたと推定される。」ともしている。 東電事故調は,本件地震発生8時間後(3月11日午後10時50分頃)に溶融燃料の落下を仮定し,実際の炉心溶融時期を特定していないが,炉心損傷後に炉心溶融が起こったこと自体は否定していない。 3月12日午後2時30分頃には,ベント(格納容器圧力の異常上昇を防止し,格納容器を保護するため,放射性物質を含む格納容器内の気体(ほとんどが窒素)を一部外部環境に放出し,圧力を降下させる措置)が成功したが,その結果,1号機から大気中に放射性物質が放出された。 3月12日午後3時36分には,1号機原子炉建屋で,炉心損傷等により発生し建屋内に蓄積された水素に着火した結果水素爆発が起き,建屋上部は骨組みが露出する状態となり,放射性物質が大量に放出されるに至った。 3 2号機の状況2号機の原子炉は,本件地震により自動的に緊急停止(原子炉スクラム)した。2号機は,3月11日午後3時41分,本件地震及び本件津波により,内部電源,外部電源,非常用電源の全交流電源を喪失し,前後して直流電源を喪失した(全電源喪失)。このため,非常用冷却設備である高圧注水系(HPCI)は機能を喪失し,原子炉隔離時冷却系(RCIC)も制御不能となり,3月14日午後1時25分頃までに機能を喪失し,炉心の冷却が不可能になった。その結果,2号機の原子炉水位が低下し,国会事故調及び東電事故調によれば同日午後7時20分頃,保安院によれば同日午後8時頃,炉心損傷が開始した。政府事故調は,同日午後1時45分頃から午後6時10分頃までの間に,圧力容器又はその周 下し,国会事故調及び東電事故調によれば同日午後7時20分頃,保安院によれば同日午後8時頃,炉心損傷が開始した。政府事故調は,同日午後1時45分頃から午後6時10分頃までの間に,圧力容器又はその周辺部にその閉じ込め機能を損なうような損傷(溶融燃料の落下によるものを含む。)が生じていた可能性があり,同日午後9時18分頃までには圧力容器又はその周辺部にそのような損傷が生じたもの(すなわち,炉心溶融が生じていたもの)と推定している。 3月14日午後9時過ぎ頃にベント又は原子炉建屋からの放出により,3月15日午前7時から翌16日午前0時までの間に原子炉建屋等からの放出により,それぞれ大気中に放射性物質が大量に放出された(なお,同月15日午前6時から6時12分にかけての頃,2号機S/C付近において水素爆発によるものと思われる衝撃音が確認され,原子炉建屋には外観上損傷はなかったものの,隣接する廃棄物処理建 屋の屋根が破損していることが確認されており,これらの過程で放射性物質が環境中へ放出された可能性も指摘されているが,これを否定する見解もある。(甲B1の2本文編64~67頁,乙B3の1・IV-52頁) 4 3号機の状況3号機の原子炉は,本件地震により自動的に緊急停止(原子炉スクラム)した。3号機は,3月11日午後3時38分頃(甲B1の2・148頁),本件地震及び本件津波により,内部電源,外部電源,非常用電源の全交流電源を喪失したが(全交流電源喪失),バッテリーからの直流電源は一部で機能を維持していた。そのため,3号機はバッテリーからの直流電源による原子炉隔離時冷却系(RCIC)で原子炉を冷却していたが,3月12日午前11時36分には原子炉隔離時冷却系が自動停止し,午後0時35分には高圧注水系(HPCI)が自動起動した。 からの直流電源による原子炉隔離時冷却系(RCIC)で原子炉を冷却していたが,3月12日午前11時36分には原子炉隔離時冷却系が自動停止し,午後0時35分には高圧注水系(HPCI)が自動起動した。3月13日午後2時42分に高圧注水系が手動停止された後,原子炉隔離時冷却系や高圧注水系の再起動が試みられたが,直流電源の枯渇により再起動ができず(全電源喪失),炉心の冷却が不可能になった。その結果,3号機の原子炉水位が低下し,国会事故調及び東電事故調によれば3月13日午後10時40分頃,保安院によれば同日午後11時頃,炉心損傷が開始した。政府事故調は,同日午前6時30分頃から午後9時10分頃までの間,圧力容器又はその周辺部にその閉じ込め機能を損なうような損傷(溶融燃料の落下によるものを含む。)が生じていた可能性があり,3月14日午前5時頃までにはそのような損傷が生じたもの(すなわち,炉心溶融が生じていたもの)と推定している。 3月14日午前11時01分には,3号機原子炉建屋で,炉心損傷等により発生し建屋内に蓄積された水素に着火した結果水素爆発が起 き,建屋の屋根が全て滅失するなどした結果,放射性物質が大量に放出されるに至った。 後記5のとおり,3月15日午前6時過ぎ頃には,定期検査のため運転停止中であった4号機原子炉建屋が爆発し,4号機原子炉建屋開口部を通じて,3号機由来の放射性物質が大気中に放出された。 3月16日午前10時過ぎには,3号機原子炉建屋からの放出により,大気中に放射性物質が大量に放出された。 5 4号機の状況4号機は,平成22年11月から定期検査のため運転停止中であり,全ての燃料は原子炉建屋4,5階の使用済み燃料プールに取り出されていた。また,非常用ディーゼル発電機2台のうちA系は点検中のため使用不 4号機は,平成22年11月から定期検査のため運転停止中であり,全ての燃料は原子炉建屋4,5階の使用済み燃料プールに取り出されていた。また,非常用ディーゼル発電機2台のうちA系は点検中のため使用不能であった。 4号機は,3月11日午後3時38分,本件地震及び本件津波により,外部電源,非常用ディーゼル発電機B系からの非常用電源の全交流電源,バッテリーからの直流電源を喪失した(全電源喪失)。このため,使用済み燃料プールの冷却が不可能となり,3月14日4時08分には水温が84℃に達するなど使用済み燃料の損傷が懸念されたが,3月20日頃には放水車からの放水などにより燃料プールの水位・水温が維持され,燃料損傷は回避された。 3月15日午前6時過ぎ頃,4号機原子炉建屋が爆発し,原子炉建屋4,5階部分が損傷した。その原因は,排気筒合流部を通じて3号機から流入した水素による水素爆発とみられている。 6 5号機,6号機の状況5号機及び6号機は,定期検査のためいずれも停止中(6号機は冷温停止状態)であり,本件津波により5号機は全交流電源喪失の状態になったものの,6号機の非常用ディーゼル発電機1台が運転を継続 しており,3月12日午前8時13分には,この6号機の非常用ディーゼル発電機から5号機への電源融通が開始され,その後順次電源を復旧していく中で,残留熱除去系ポンプを起動するなどした結果,5号機も,3月20日午後2時30分に冷温停止状態となった。 (乙B3の1・Ⅳ― 82~86頁,丙B41の1・206~215頁) 7 放射性物質の大量放出上記の本件事故の一連の経緯により大気中に放出された放射性物質の量は,ヨウ素131換算値にして,保安院による4月12日の推定で37万TBq,6月6日の推定で77万TBq,平成24年2月1日の推 上記の本件事故の一連の経緯により大気中に放出された放射性物質の量は,ヨウ素131換算値にして,保安院による4月12日の推定で37万TBq,6月6日の推定で77万TBq,平成24年2月1日の推定で48万TBq,原子力安全委員会による4月12日の推定で63万TBq,独立行政法人日本原子力研究開発機構による8月24日の推定で57万TBq,一審被告東電による平成24年5月24日の推定で90万TBqなどと推計されている。 このほか,放射性物質による汚染水も大量に海洋に放出された。 第3節争点 1 原状回復請求 2 一審被告東電の損害賠償責任 3 一審被告国の損害賠償責任 4 損害第4節争点に対する当事者の主張(要旨)一審原告らの主張は別紙8「一審原告らの主張整理」のとおり,一審被告東電の主張は別紙9「1審被告東京電力の主張の要旨」(別紙10「弁済の抗弁(精神的損害の追加賠償金額)および既払い賠償金額一覧表」を含む。)のとおり,一審被告国の主張は別紙11「一審被告国の主張の要旨」(令和2年2月27日付け)のとおりである。 第3章当裁判所の判断第1節原状回復請求について第1 総論一審原告(承継一審原告を除く。以下,この節において同じ。)らは,被控訴人らに対し,それぞれ原判決別紙2原告目録の「旧居住地」欄記載の居住地において,空間線量率を1時間当たり0.04μ Sv以下とするよう求めている。 原判決は,上記請求は,被控訴人らにおいてなすべき作為の内容が全く特定されておらず請求の特定性を欠き不適法である,また,実現不可能な作為を求めるものであるから不適法であるとして,上記請求に係る訴えを却下したところ,当裁判所も,上記請求に係る訴えは不適法であり却下すべきであると判断する。その理由は以下 である,また,実現不可能な作為を求めるものであるから不適法であるとして,上記請求に係る訴えを却下したところ,当裁判所も,上記請求に係る訴えは不適法であり却下すべきであると判断する。その理由は以下のとおりである。 第2 請求の特定性について 1 実現すべき結果のみを記載した請求が特定性を欠いていること⑴ 給付請求における請求の趣旨は,一審原告らが求める判決の主文と同一のものであり,強制執行が可能な程度に特定され,明確化される必要がある。本件の請求の趣旨第1項の原状回復請求は,「被控訴人らは,各自,各一審原告に対し,それぞれ原判決別紙2原告目録の「旧居住地」欄記載の居住地において,空間線量率を1時間当たり0.04μ Sv以下とせよ」というもので,実現すべき結果のみを記載しているが,そのような結果を実現するために,被告らに対し作為を求めるものであると解されるから,その作為の内容は,上記に述べたとおり,強制執行が可能な程度に特定されなければならない。 しかるに,一審原告らの原状回復請求は,被控訴人らにおいてなすべき作為(除染工事)の内容が全く特定されていないから,請求の特定性を欠き不適法である。 ⑵ これに対し,一審原告らは,国道43号線訴訟(大阪高裁平成4年2月20日判決・民集49巻7号2409頁,最高裁平成7年7月7日第二小法廷判決・民集49巻7号2599頁)や横田基地第1次・第2次訴訟(最高裁平成5年2月25日第一小法廷判決・集民167号下359頁)において抽象的不作為請求が適法とされていることを指摘し,特に公害・環境問題をめぐって違法な権利侵害状態の差止めや違法な権利侵害状態の存在を前提にその違法状態の除去等のための一定の作為を求める訴訟においては,被害者側において,実現すべき状態(請求内容)をも 公害・環境問題をめぐって違法な権利侵害状態の差止めや違法な権利侵害状態の存在を前提にその違法状態の除去等のための一定の作為を求める訴訟においては,被害者側において,実現すべき状態(請求内容)をもたらす具体的な方法まで特定する必要はないのであり,請求内容の実現のための方法を特定しない請求も民事訴訟としては適法とされるべきである,などと主張し,当審において,作為請求と不作為請求は,表裏一体の関係にある場合も多く存し,例えば,60ホンを超える音量を出すことを禁ずる不作為命令は,60ホン以下に音量を抑える措置を求める作為命令に置換え可能であり,義務負担者からすれば,行動指示形式が不作為か作為かで異なるだけであって,具体的な義務内容としては同一であり,とりわけ,本件の原状回復請求のごとく講学上結果除去請求と称される請求は,既に生じている侵害結果を除去しないことが侵害の継続になるのであって,作為請求とはいえ,将来の侵害をしないという不作為を求める不作為請求と機能的に同一であることなどから,判決によって義務付けられる内容に差があるとするのは不相当である,と主張する。 しかしながら,これまでに請求の特定性が肯定された抽象的不作為請求の事案では,原告において,侵害結果と当該結果を生じさせている発生源とを明らかにしさえすれば,その除去あるいは防止は種々の手段・方法によって容易に実現可能であるため,具体的な除去・防止行為の特定を被告に任せて履行させることとしても,被告にとって酷とはいえないと考えられるのに対し,本件においては,そもそも侵害結果を生じさせている発生源たる放射性物質による汚染状況の詳細は不明といわざるを得ず,一審原告らの旧居住地における空間線量率を1時間当たり0.04μ Sv以下とするための作為の具体的な内容を一 侵害結果を生じさせている発生源たる放射性物質による汚染状況の詳細は不明といわざるを得ず,一審原告らの旧居住地における空間線量率を1時間当たり0.04μ Sv以下とするための作為の具体的な内容を一審被告らが認識することは不可能な現況にある(後記2参照)のであるから,実現可能な義務の具体的内容が合理的に限定されているとはいえない。 また,一審原告らの挙げる国道43号線訴訟等の事例においては,不作為命令によって禁止する侵害行為の発生源が義務負担者の支配領域内にあり,侵害の結果の防止方法についての資料,情報等が義務負担者に集中しているといえるのに対し,本件においては,本件事故によって放出された放射性物質はもはや一審被告らの支配領域外に拡散しており,侵害の結果の防止方法(一審原告らが求めるレベルまでの除染方法)についての資料,情報等が一審被告らに集中しているということもできないから,一審原告らの請求を認容することはこの点からも不相当である。 ⑶ したがって,一審原告らの主張は採用できない。 2 特定の作為を求める請求と善解しても不適法であること仮に,一審原告らの請求を,例えば,除染特措法に基づき一審被告国や市町村が実施する除染については,環境省により除染関係ガイドラインが定められていることを参考にして,「一審被告らは,各自,各 一審原告に対し,各一審原告の旧居住地において居住の用に供されている主たる建物について,除染関係ガイドラインに定められた「建物等の工作物の除染等の措置」に従った除染工事を行い,同ガイドラインに定められた測定方法により,生活空間2~5点程度の地表から1mの高さの位置においてNaIシンチレーション式サーベイメータで測定したγ 線の空間線量率がいずれも1時間当たり0.04μ Sv以下となるようにせ た測定方法により,生活空間2~5点程度の地表から1mの高さの位置においてNaIシンチレーション式サーベイメータで測定したγ 線の空間線量率がいずれも1時間当たり0.04μ Sv以下となるようにせよ」と特定の作為を求めているものと善解したとしても,以下のとおり,一審原告らの請求は,実現不可能な作為を求めるものとして不適法である。 すなわち,除染関係ガイドラインは,除染特措法に基づき一審被告国又は市町村が行う除染を前提としているところ,除染特措法が想定している除染結果は,長期的な目標として追加被曝線量が1mSv/y以下となることを目標として行われているものであり,除染関係ガイドラインに従った除染工事を行ったとしても,空間線量率を一審原告らの求める1時間当たり0.04μ Sv以下に低下させることが保証されているものではない。したがって,仮に一審原告らの主張を上記のように解したとしても,実現不可能な作為を求めるものといわざるを得ない。 さらに,除染関係ガイドラインに従った除染工事のほかに,確実に一審原告らの旧居住地の空間線量率を1時間当たり0.04μ Sv以下まで低減させる実現可能な方法が存在すると認めるに足りる証拠はないから,一審原告らの原状回復請求は,実現可能な執行方法が存在しないという点からも不適法である。 以上に対し,一審原告らは,当審において,除染特措法の目標値はあくまでも政策的な目標にすぎないこと,除染関係ガイドラインは範囲が限定されたものであり,かつ,改訂されるなどしているのである から,これらをもって実現可能な執行方法が存在しないと速断するのは不相当であると主張する。しかしながら,一審原告らは,当審においても,具体的に一審原告らが求めるレベルまでの除染方法について具体的な主張立証をしていない以上,一審 執行方法が存在しないと速断するのは不相当であると主張する。しかしながら,一審原告らは,当審においても,具体的に一審原告らが求めるレベルまでの除染方法について具体的な主張立証をしていない以上,一審原告らの主張によっても前記判断は覆らない。 第3 原状回復請求の適法性についてのまとめ以上によれば,一審原告らの原状回復請求は,除染特措法に基づく行政権の行使を不可避的に包含するかなどその余の点について判断するまでもなく,一審被告らに求める作為の内容が特定されていないものであって,不適法である。 一審原告らによる原状回復請求は,一審原告らが,本件事故によって放出された放射性物質について,自分たちが受容し,その線量や影響を受忍しなければならないいわれはなく,何としてでも本件事故前の状態に戻してほしいとの切実な思いや,放射性物質を放出させるような事故を起こした原子力発電所を設置・運転してきた一審被告東電及び国民の平穏生活権の保障に責任をもって当たるべき一審被告国において,どのような手段をもってしても原状回復をすべきであるとの強い思いに基づく請求であることがうかがわれ,心情的には共感を禁じ得ないところではあるが,民事訴訟手続における請求によって法的に実現できるものとはいえない。 第2節認定事実第1 総論本件事故は,福島第一原発の非常用電源設備が津波により浸水したことにより生じたものであるところ,その予見可能性等に関連する津波やその原因たる地震に関する知見等を,本件において重要な事実である「長期評価」の公表時点を中心として時系列的に整理すれば,後 記第2から第4までに認定するとおりであり,また,溢水事故及び溢水事故対策等に係る知見等については,後記第5に認定するとおりである。 第2 おおむね「長期評価」公表以前 れば,後 記第2から第4までに認定するとおりであり,また,溢水事故及び溢水事故対策等に係る知見等については,後記第5に認定するとおりである。 第2 おおむね「長期評価」公表以前 1 津波地震等に係る一般的な知見津波地震津波地震は,明治三陸地震のような,地震動に対して異常に大きな津波を発生させる地震を指すものとして,1972年,地震学者の金森博雄によって提唱された。その後,1981年,「長期評価」策定にも関与した阿部勝征は,津波地震を,津波マグニチュード(Mt)と表面波マグニチュード(Ms)の差,すなわちMt-Msが0.5以上である地震と定量的に定義した。(乙B148)津波地震とされている代表的な地震としては,明治三陸地震(1896(以下,地震又は津波の表記において,地震又は津波の通称名の次の括弧内に地震又は津波の発生年の西暦を書いて示すことがある。)),アリューシャン地震(1946),ニカラグア地震(1992),ペルー地震(1996)などが挙げられている。 なお,津波地震ではない地震により津波が発生することも知られており,津波地震は津波発生の必要条件ではない(ちなみに,地震本部等の見解によれば,本件地震は津波地震の定義からは外れるとされている(乙B444・7頁)。)。 津波地震の機序に係る知見津波地震の機序については,付加体と呼ばれる堆積物(プレートが沈み込む際にはぎ取られ上陸プレートに付加したもの)の中で断層運動が起き,津波を発生させるという説もあるが,最近では,付加体が存在せず,上盤プレート上の堆積物がそのまま沈み込んでい るところ(例えばニカラグアなど)でも津波地震が起きていることが報告されており,付加体説は必ずしも当てはまらないとの説もみられる。その概要は以下の ト上の堆積物がそのまま沈み込んでい るところ(例えばニカラグアなど)でも津波地震が起きていることが報告されており,付加体説は必ずしも当てはまらないとの説もみられる。その概要は以下のとおりである。 アプレート間地震に係る津波1960年代に,複数の地球学者から「プレートテクトニクス」という概念が提唱されるようになった。 地球の表面は,十数枚のプレートと呼ばれる厚さ数十キロメートル程度の岩盤で覆われており,これらが,それぞれ異なる方向に年間数cmの早さで移動しているため,プレート同士の間に圧縮したり引っ張ったりする力が働く。プレート境界は,互いに近づく収束境界(日本海溝などの海溝),互いに離れていく発散境界(大西洋中央海嶺など)及び互いにすれ違う横ずれ境界(米国のサンアンドレス断層など)に分類される。プレート間の相互運動によりプレート境界にゆがみが生じる。このゆがみは次第に蓄積し,ついに限界に達したとき,ゆがみを解放する運動として地震が発生する。このようにプレートとプレートとの間の相対運動の結果として起こる地震をプレート間地震と呼ぶ。 例えば,日本列島はユーラシアプレート(説によっては加えて北米プレート)の東縁に位置しており,東方向から太平洋プレートが毎年10cm程度,南東方向からフィリピン海プレートが毎年4cm程度近づき,それぞれ千島海溝― 日本海溝― 伊豆マリアナ海溝及び相模トラフ― 南海トラフ― 琉球海溝を沈み込み口として日本列島の乗るユーラシアプレート(及び北米プレート)の下に沈み込んでいる。このように太平洋プレートやフィリピン海プレートのような海のプレートが沈み込む場所が海溝ないしトラフと呼ばれる地球上で最も低い場所であり,これらの海のプレート が沈み込むのに従って,陸側プレートである レートやフィリピン海プレートのような海のプレートが沈み込む場所が海溝ないしトラフと呼ばれる地球上で最も低い場所であり,これらの海のプレート が沈み込むのに従って,陸側プレートであるユーラシアプレート(及び北米プレート)が引きずられるように沈降し,限界に達した際に破壊を生じて反発して跳ね上がる際に,太平洋沿岸のプレート間地震を発生させている。海のプレートは絶えず動き続けるため,陸側プレートは再び沈降― 隆起し,プレート間地震は繰り返されることになる。 近代的観測が可能になって以降に発生した明治三陸地震(1896),アリューシャン地震(1946),ニカラグア地震(1992),ジャワ地震(1994),ペルー地震(1996)等の津波地震は,地震計記録や検潮所の津波波形の分析により,いずれも海溝軸近傍のプレート境界で起こっていることが確認された。太平洋沖の巨大地震は,1933年の三陸地震のような海のプレート内部の地震(海のプレートが沈降する際に下方に曲げられ,ゆがみが蓄積されて,伸長が生じる上部では正断層の地震が,圧縮が生じる下部では逆断層の地震が起こる。前者は巨大地震となることがあり,沿岸部に津波などの被害をもたらす。1933年の三陸地震はこの代表例とされる。)を除き,全てプレート間地震である。 1990年頃までには,津波地震は海溝軸近傍のプレート境界(海溝)沿いの浅いところで起き,一方普通のプレート間地震は深いところで起きるという考え方が,「長期評価」までの知見として存在した。 (甲B327,413,414,乙B156)イ 「比較沈み込み学」金森博雄は,1972年,プレート間の相互作用は地域によって異なり,それに従って巨大地震の発生様式も異なると提唱し, その後,上田誠也らと共に「比較沈み込 イ 「比較沈み込み学」金森博雄は,1972年,プレート間の相互作用は地域によって異なり,それに従って巨大地震の発生様式も異なると提唱し, その後,上田誠也らと共に「比較沈み込み学」として,巨大地震が発生するチリ型と巨大地震が発生しないマリアナ型を両極端とする考えに発展した。すなわち,海のプレートは陸のプレートよりも重いため,これらが衝突すると海のプレートが陸のプレートの下に沈み込むところ,海のプレートの中でも比較的若いプレートは高温で軽いため浮力が強く,陸のプレートよりは重いため沈み込むものの浮力も強いため両者の境界面はしっかりと固着されるのに対し,海のプレートでも比較的古いプレートは海水により冷却されて重くなるため,陸のプレートと衝突すると簡単に沈み込み両者の境界面はそれほどしっかりと固着しないと考えられる。 チリ沖やアラスカ沖などは若い海のプレートが沈み込んでいるため陸のプレートとの固着が強い分,大規模な地震が発生しやすく,マリアナなどは古い海のプレートが沈み込んでいるため固着が弱い分大規模地震が発生しにくいというものである。このように様々なプレート沈み込み帯を比較することにより沈み込み帯における地震の特徴を抽出しようとする考え方を「比較沈み込み学」という。 この比較沈み込み学に照らすと,東北地方太平洋沖地震が発生した領域での海のプレートは1億2000万年よりも古く,マグニチュード9クラスの巨大地震が起きるほど若くないため,最大でもマグニチュード8前半クラスまでしか発生しないと考えられていた。 (乙B35,177)ウ地震地体構造論地震地体構造論とは,地震の起こり方(規模,頻度,深さ,震源モデルなど)の共通性又は差異に基づいて特定の地域ごとに区分 し,それと地体構造との関連性を 177)ウ地震地体構造論地震地体構造論とは,地震の起こり方(規模,頻度,深さ,震源モデルなど)の共通性又は差異に基づいて特定の地域ごとに区分 し,それと地体構造との関連性を明らかにする学問であり,旧ソ連を含むヨーロッパ諸国では1940年代頃から主張され始めたが,地震に関する記録が比較的容易に入手可能な日本では長らく一般化しなかった。 比較沈み込み学と地震地体構造論の考え方は,いずれも地震の発生メカニズムについて地質体の相互作用の共通性から分類するという考え方としては同様であるが,前者は主に海溝型地震を対象としたものであるのに対し,後者はどちらかといえば内陸地震を対象としたものである。 地震地体構造に関する代表的な文献としては,宮村論文(1962)(以下,論文は,「… … 論文(1996)」又は「… …「(論文名)」(2000)」のように,論文(名)の前に論文執筆者を,次の括弧内に論文の発表年の西暦を表記するものとする。),垣見論文(1983),マツダ論文(1990),Kinugasa 論文(1990)などが挙げられるが,その後,以下のとおり,萩原編論文(1991,以下「萩原マップ」という。),垣見ほか論文(2003,以下「垣見マップ」という。)が発表された。 萩原マップ(1991,甲B413・190頁)過去の地震地体構造研究から,それぞれの地形・地質学的,地球物理学的な共通の特徴を抽出し,地震地体構造区分図を作成したもの。同マップでは,日本海溝沿いの岩手県南部沖から房総半島沖までの海域一帯をG3(最大期待地震規模M8)として1つの区分としている。 垣見マップ(2003,乙B163)萩原マップも含めた過去の知見を比較・参照した上で,垣見ほか(1994)の区分図を改定し,新たな地震地体構造 待地震規模M8)として1つの区分としている。 垣見マップ(2003,乙B163)萩原マップも含めた過去の知見を比較・参照した上で,垣見ほか(1994)の区分図を改定し,新たな地震地体構造区分 図を作成したもの。萩原マップよりも区分が細かく,宮城県沖から茨城県沖までを8A3(最大期待地震規模M7.5)として1つの区分としている。垣見マップは,「長期評価」が公表される以前である平成14年4月6日に投稿され,査読を経て平成15年に学会誌に掲載された。 (甲B413,乙B162,163,174,371)エアスペリティモデルプレート間には固着が強いアスペリティ(地層の断層面で固着していて大きな地震動を出す部分)と滑らかにすべっている部分が存在するとして,アスペリティの空間的分布や面積比によって地震の起こり方に特徴があると考え,世界各地の沈み込み帯を4個のカテゴリーに分類した論文(T.レイ・金森博雄ら論文(1982))により比較沈み込み学が更に進展した。 現に,20世紀以降本件地震までに発生したマグニチュード9以上の巨大地震は,全世界において,カムチャツカ地震(1952),チリ地震(1960),アラスカ地震(1964),スマトラ地震(2004)の4個であったところ,スマトラ地震を除く3個の地震は,上記4個のカテゴリー上超巨大地震が起こるとされるカテゴリー1の沈み込み帯で発生していた。 日本海溝では,北の宮城沖に比べて福島沖では固着は弱いと考えられていた(太平洋プレートは沈み込んでいるが,その上のプレートはそれほど動いておらず,海溝より西側の地表や海底での地殻変動は,北の宮城沖に比べて小さいことがその根拠である。)ため,大きな地震は起きづらいと考えられていた。 (乙B35,174,177)オ付加体モ 動いておらず,海溝より西側の地表や海底での地殻変動は,北の宮城沖に比べて小さいことがその根拠である。)ため,大きな地震は起きづらいと考えられていた。 (乙B35,174,177)オ付加体モデル その後,津波地震は,沈み込む海洋プレートの表面に乗った未固結で密度の小さな堆積物の一部が沈み込むことができず,剥ぎ取られて陸寄り斜面に取り残されて厚い付加体プリズムを形成している特殊な海底構造を有する領域でのみ発生する極めて特殊な地震であるという考え方(以下「付加体モデル」という。)も,vonHuene &School(1991)等によって提唱された。 もっとも, ペルー地震(1960),ニカラグア地震(1992)など,海溝付近に付加体が形成されていない領域でも過去に津波地震が発生していることは,平成14年頃,既に明らかになっていた。(今村論文(1993,甲B449),谷岡・佐竹論文(2003,甲B327),今村論文(2003,甲B333),乙B393の1等)カ明治三陸地震(1896)に係る谷岡・佐竹論文(1996)明治三陸地震(1896)が発生した三陸沖の海溝寄りの領域は,海底に凹凸があり,凹んでいる部分には堆積物が入る一方で,凸の部分(地塁)には堆積物が溜まらず,陸側のプレートとより強くカップリング(固着)するため,そのような場所では,海溝付近でも地震が発生し,津波地震になる(他方で,海底地形に凹凸がないところでは堆積物が一様に入ってくるので,堆積物の下ではカップリング(固着)が弱くなって地震を起こしにくい)という見解が,谷岡・佐竹「津波地震はどこで起こるか」(1996)(乙B148,以下「谷岡・佐竹論文(1996)」という。)によって示されていた。 キ JAMSTECによる構造探査(平成13年 という見解が,谷岡・佐竹「津波地震はどこで起こるか」(1996)(乙B148,以下「谷岡・佐竹論文(1996)」という。)によって示されていた。 キ JAMSTECによる構造探査(平成13年)文部科学省所管の独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は,海底の深部構造を調査して地震や津波の発生メカニズ ムを解明するため,平成7年から構造探査を開始し,平成9年からは,海溝型巨大地震の発生過程を解明するため,段階的に構造探査システムを増強しながら類似の調査を遂げ,多くの知見を公表してきたところ,平成13年に公表された三浦誠一ほか「日本海溝前弧域(宮城沖)における地震学的探査― KY9905航海― 」(乙B146)において,日本海溝における構造探査が1960年代から屈折法,反射法など数多く行われてきた中で,日本海溝の北部である三陸沖及び南部である福島沖では詳細な構造探査が行われ,海溝軸近傍及びプレート境界部の低速度領域の存在,プレート沈み込み角度など,南北の違いが明らかになっているとした。 2 869年貞観津波(甲B1の1,12の1)に係る知見概要貞観津波は,869年7月13日(貞観11年5月26日)に東北地方沿岸を襲った巨大津波であり,史料がほとんど残されていないものの(「日本三代実録」が唯一の正史といわれる。),地層の痕跡調査などから,これまでに多くの専門家によって調査が進められてきた。(甲B1の1)「長期評価」公表までの知見ア平成2年平成2年阿部壽ほか「仙台平野における貞観11年(869年)三陸津波の痕跡高の推定」(1990年「地震」第2輯43巻)は,仙台平野の痕跡高を考古学的所見及び堆積学的検討に基づく手法により推定すると,貞観津波の痕跡高は仙台平野の河川から離れた一般 9年)三陸津波の痕跡高の推定」(1990年「地震」第2輯43巻)は,仙台平野の痕跡高を考古学的所見及び堆積学的検討に基づく手法により推定すると,貞観津波の痕跡高は仙台平野の河川から離れた一般の平野部で2.5m~3mで,浸水域は海岸線から3kmくらいの範囲であったこと,海岸付近の津波高は,痕跡高を数m 上回る規模であったことなどが推定され,既往の研究が述べているように1611年慶長三陸地震に匹敵するような大津波であったと思われるとした。(甲B1の1,12の1)イ平成10年平成10年渡邊偉夫「869(貞観11)年の地震・津波の実態と推定される津波の波源域」は,津波が襲来した沿岸は仙台平野から福島県北部沿岸で,災害が発生し,津波の波源域は三陸はるか沖の北緯39度付近から福島県北部沿岸はるか沖まで長さ約200㎞,幅約50kmであったと推定されるとし,その後千年以上もこの地域に津波の発生していないことは,注目に値する,もっとも,使用したデータの数や質を考えると,精度は必ずしも良いとはいえないため,今後新しいデータが発見されれば,大幅に変えられる可能性は十分ある,などとした。(甲B12の2)ウ平成12年平成12年今村文彦・箕浦幸治ほか「貞観津波と海底潜水調査」は,日本の津波の85%以上が三陸沖の日本海溝付近によるプレートのひずみ変動であり,貞観津波もこの三陸沖型の津波と言われてきたが,この研究により,もっと内陸に近いところでの発生ではないかとの研究結果が出た,貞観津波の影響は福島県から宮城県まで70kmの海岸線に及んだこと,海底潜水調査の結果作製した海底図等をもとに,M8.5とし,想定津波の影響をシミュレーション計算してみると,その計算結果は,史実に述べられている状況に非常に似ていることが分かった,など 及んだこと,海底潜水調査の結果作製した海底図等をもとに,M8.5とし,想定津波の影響をシミュレーション計算してみると,その計算結果は,史実に述べられている状況に非常に似ていることが分かった,などとした。(甲B12の3)エ平成13年 平成13年箕浦・今村「貞観津波の堆積物及び東北日本太平洋岸における大規模津波の再来間隔」は,貞観津波の堆積物調査と数値シミュレーションに関する英文報告であるところ,大規模津波の再来間隔は800~1100年であるところ,貞観津波からは1100年以上が経過しており,再来間隔を考えれば,大津波が仙台平野を襲う可能性は高いなどとした。(甲B359)平成13年菅原大助・箕浦・今村「西暦869年貞観津波による堆積作用とその数値復元」は,津波堆積物調査を行い,福島県相馬市の松川浦付近で仙台平野と同様の堆積層を検出したことなどから,貞観津波の堆積作用は局地的な現象ではなく,仙台平野から福島県相馬市に及ぶ大規模なものであった,海岸部に到達した津波の波高が極めて大きかった可能性があることが明らかになった,陸上での地震動の大きさを少なめに見積もって計算すると,貞観津波の規模はおよそM8.3と考えられ,この数値復元によれば,海岸線に沿った津波波高は,大洗から相馬にかけてはおよそ2~4m,相馬から気仙沼にかけてはおよそ6~12mとなった,などとした。(甲B1の1,12の5)平成13年箕浦「津波災害は繰り返す」は,今村教授と共同で津波発生の理工学的解析を試みた結果,貞観津波の数値的復元に成功し,仙台平野の海岸で最大9mに達する到達波が7~8分間隔で繰り返し襲来,相馬市の海岸では更に規模の大きな津波が襲来した,津波による海水の遡上が800~1100年に1度発生していると推定され,貞観津波からは11 海岸で最大9mに達する到達波が7~8分間隔で繰り返し襲来,相馬市の海岸では更に規模の大きな津波が襲来した,津波による海水の遡上が800~1100年に1度発生していると推定され,貞観津波からは1100年以上が経過しており,堆積作用の周期性を考慮すれば,大津波が仙台平野を襲う可能性は高い,などとした。(甲B134)オ平成14年 平成14年箕浦・今村ほか「宮城県沖地震モデルによる貞観津波の解析」は,貞観津波をいくつかの仮想断層モデルパターンによってシミュレーション計算したところ,実際に津波が遡上した痕跡との比較により,1978年宮城県沖地震型よりも大規模な断層のずれであったこと,マグニチュード8.2程度であった可能性が高いことなどが判明したとした。(甲B12の6) 3 想定津波に係る知見等決72頁2行目~81頁4行目)のとおりであるから,これを引用する。要約すれば,以下のとおりである。 設置許可時点における想定津波(3.1m)福島第一原発1~4号機は,昭和35年のチリ地震津波におけるO.P.+3.122mの津波を想定可能な最大津波として設計された。 平成6年時点での一審被告東電による想定津波(3.5m)一審被告東電作成に係る平成6年3月報告書「福島第一・第二原子力発電所津波の検討について」では,やはりチリ地震津波を参考に計算し,福島第一原発の護岸前面での最高水位はO.P.+3. 5m程度と想定された。 7省庁手引き平成5年7月の北海道南西沖地震(奥尻島津波)を機に,平成9年3月に7省庁によって作成された「地域防災計画における津波対策強化の手引き」(7省庁手引き)では,津波を伴う地震発生の可能性が指摘されているような沿岸地域については,現在の知見により想定し得る最大規模の地震津波を想 て作成された「地域防災計画における津波対策強化の手引き」(7省庁手引き)では,津波を伴う地震発生の可能性が指摘されているような沿岸地域については,現在の知見により想定し得る最大規模の地震津波を想定し,既往最大津波と比較検討 を行った上で常に安全側の発想から沿岸津波水位のより大きい方を対象津波として設定するものとするとされた。 4省庁報告書ア 4省庁報告書による想定津波(6.4m)平成9年3月,4省庁により「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」(4省庁報告書)が作成され,想定地震の地域区分は地震地体構造論上の知見に基づき設定し,想定地震の発生位置は既往地震を含め太平洋沿岸を網羅するように設定することとされ,福島第一原発が所在する大熊町ないし双葉町の想定地震津波は6.4~7.2mと想定された。 イ電事連による想定津波(8.6m)電事連が平成9年10月15日に一審被告国(通商産業省)に提出した対応方針メモ「7省庁津波に対する問題点及び今後の対応方針」では,福島第一原発に想定される津波は,4省庁報告書による計算値で最大O.P.+8.4~8.6m,事業者シミュレーション結果によれば最高O.P.+4.8m等とされていた。 ウ平成10年時点での一審被告東電による想定津波(4.8m)一審被告東電が,通産省(資源エネルギー庁)に対して報告するため,4省庁報告書に基づき福島第一原発の安全性について検討した結果平成10年6月に作成した書面「津波に対する安全性について(太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査)」では,福島第一原発1~4号機での最高水位はO.P.+4.7~4.8mと想定された。この数値は,4省庁報告書が,既往津波のほかに地震地体構造上想定し得る津波についても検討を行っていることを踏まえ,既往津波 第一原発1~4号機での最高水位はO.P.+4.7~4.8mと想定された。この数値は,4省庁報告書が,既往津波のほかに地震地体構造上想定し得る津波についても検討を行っていることを踏まえ,既往津波のみならず,萩原マップの地震地体構造区分ごとに最大規模のマグニチュードを想定し,津波の数値シミュレ ーションを実施して得られた数値である。(甲B128,乙B387)エ計算値の2倍又は標準偏差分の2倍の津波までの考慮①4省庁報告書では,実測値は計算値の標準偏差分の2倍まで考慮することとされ,②4省庁報告書の調査委員会の委員には,通商産業省の顧問でもある首藤伸夫教授や阿部勝征教授が参加していたが,これらの専門家は津波数値解析の精度は「倍半分」(すなわち,最大2倍の誤差があり得る)と発言し,③通商産業省は,平成9年6月までに,仮に今の数値解析の2倍で津波高さを評価した場合に,その津波により原子力発電所がどうなるか,さらにその対策として何が考えられるかを提示するよう電力会社に要請しており,④電事連は,平成12年2月,想定の1.2倍,1.5倍,2倍の水位で非常用機器が影響を受けるかどうかを分析した津波に対するプラント概略影響評価を作成した。 「津波浸水予測図」国土庁と財産法人日本気象協会が平成11年3月に作成公表した「津波浸水予測図」によれば,津波予報区ごとに気象庁から発表される量的津波予報で予報された津波の高さ2m,4m,6m,8mに対応する浸水状況を予測したところ,このうち6mと8mの場合に,福島第一原発1~4号機のタービン建屋及び原子炉建屋はほぼ建屋の全体において浸水深1~4mで浸水すると予測された。 同予測図では,現実的に発生する可能性が高く,その海岸に最も大きな浸水被害をもたらすと考えられる地震を想定 ービン建屋及び原子炉建屋はほぼ建屋の全体において浸水深1~4mで浸水すると予測された。 同予測図では,現実的に発生する可能性が高く,その海岸に最も大きな浸水被害をもたらすと考えられる地震を想定して作成してあること,海岸域で想定した津波高さは最大10mとしているが,地域によっては10m以上の津波高さになることもあること,格子間隔は100mであり,それ以下の規模の地形は表現されていないこ と,干潮時には浸水の程度が小さいこと,防波堤等の港湾構造物については100m以上の規模を持つもののみ海岸地形として考慮し,標高を0mとしていることから,防波堤等による津波の遮蔽効果は十分には表現されておらず,さらに構造物上の浸水深は過大評価されていること,陸上の土地利用の形態・構造物の高さについては考慮していないため,陸上の摩擦係数は一律の値を用いていることなどの注意書きがされている。 土木学会の「津波評価技術」ア平成14年2月の「津波評価技術」土木学会原子力土木委員会津波評価部会は,平成14年2月,「原子力発電所の津波評価技術」(津波評価技術)を作成した。これは,地震地体構造論の知見に基づき,同じ海域でこれまでに発生した津波の痕跡高を説明できる断層モデルを基準として基準断層モデルを設定し,これに基づいて,波源の不確定性や数値計算上の誤差,地形データ等の誤差を考慮するため,基準断層モデルの諸条件(パラメータ)を合理的範囲内で変化させた数値計算を多数実施し(パラメータスタディ),評価対象地点に対して最も影響が大きくなる断層モデルを選定し,それによる計算結果が既往津波の再現計算結果及び痕跡高を上回ることを確認するといった手法を採っている。 このように,「津波評価技術」は,福島県沖海溝沿い領域には大きな既往津波の記録がな を選定し,それによる計算結果が既往津波の再現計算結果及び痕跡高を上回ることを確認するといった手法を採っている。 このように,「津波評価技術」は,福島県沖海溝沿い領域には大きな既往津波の記録がないことなどから,地震地体構造論の知見に基づき,同海域に波源の設定領域を設けておらず,その海域を波源とする津波を評価できるようにはなっていなかった。また,その作成過程において算定結果に一定の安全率を掛ける方式が検 討されたこともあったが,最終的にこの方式は取り入れられなかった。 イ一審被告東電の対応一審被告東電は,平成14年3月,「津波評価技術」に従った数値シミュレーションを行い,一審被告国に報告したところ,同報告書によれば,1~4号機での設計津波最高水位は,近地津波(福島県沖海溝沿い領域には波源を設定していない。)ではO.P.+5.4~5.5m(5~6号機でO.P.+5.6~5.7m),チリ沖に波源を設定した遠地津波ではO.P.+5.4~5.5m(5~6号機でも同じ)と推計され,既往津波の痕跡高を上回っていることが確認された(平成14年推計)。 一審被告東電は,上記推計結果に基づき,6号機非常用ディーゼル発電機冷却系海水ポンプ用モータのかさ上げや,少なくとも3,4号機のタービン建屋地下1階における海水配管トレンチ,電源ケーブルトレンチの貫通部の浸水防止対策などの対策を実施した。 一審被告東電は,平成21年2月,平成18年に保安院から求められた耐震バックチェックの最終報告に向けて,最新の海底地形と潮位観測データを考慮して「津波評価技術」に基づく想定津波を再評価した結果(福島県沖海溝沿い領域には波源を設定していない。),1~4号機の取水ポンプ位置の津波水位はO.P.+5.4~5.6m(5~6号機でO.P.+6.0~ 津波評価技術」に基づく想定津波を再評価した結果(福島県沖海溝沿い領域には波源を設定していない。),1~4号機の取水ポンプ位置の津波水位はO.P.+5.4~5.6m(5~6号機でO.P.+6.0~6.1m),敷地北側及び敷地南側からは浸水せず,と推計された(平成21年推計)。 一審被告東電は,この再評価に基づき,ポンプ用モータのシール処理等の対策を講じた。 ウ本件事故後の津波評価技術の改訂土木学会は,本件事故後である平成28年9月30日,「津波評価技術」を「原子力発電所の津波評価技術2016」に改訂し,「決定論的津波評価手法」に加え「確率論的津波評価手法」を取り入れるなどし,地震本部の地震・津波に関する評価や,活断層と海溝型地震を対象にした長期評価が参考となるほか,「確率論的津波評価手法」では,震源をあらかじめ特定しにくい地震等に関する評価手法で示されている地震地体構造区分の枠組み等も参考にすることができる旨明記した。もっとも,「決定論的津波評価手法」においては,福島県沖海溝沿い領域には大きな既往津波がないとして,M8規模の津波地震の波源の設定領域を設けていない。 第3 地震調査研究推進本部地震調査委員会による「長期評価」 1 「長期評価」の作成・公表等「長期評価」作成・公表等に係る認定事実は,おおむね原判決第3とおりであるが,当裁判所において追加・補正した上で,以下のとおり認定する。 「長期評価」の作成・公表(平成14年7月)平成7年の阪神・淡路大震災を機に,「地震による災害から国民の生命,身体及び財産を保護するため… … 地震に関する調査研究の推進のための体制の整備等について定めることにより,地震防災対策の強化を図り,もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資すること」を目的として制 び財産を保護するため… … 地震に関する調査研究の推進のための体制の整備等について定めることにより,地震防災対策の強化を図り,もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資すること」を目的として制定された地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)に基づき,文部科学省(平成11年法律102号による改正前は総理府)に地震調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会が設置され,平成11年4月23日付け「地震調査研 究の推進について」に基づき,海溝型地震の発生可能性について,海域ごとに長期的な確率評価を行っている。 平成14年7月31日,地震本部は,日本海溝沿いのうち三陸沖から房総沖にかけての領域を対象とし,長期的な観点での地震発生の可能性,震源域の形態等について評価をし,同委員会長期評価部会海溝型分科会(以下「海溝型分科会」という。),同部会,同委員会での議論を経て,「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(長期評価)を作成,公表した。 「長期評価」の概要「長期評価」は,過去に大きな既往地震の報告がない福島県沖海溝沿い領域を含む,「三陸沖北部から房総沖の海溝寄り」という南北800km程度の巨大な領域を設定し,この領域で,M8クラスのプレート間大地震(津波地震)(プレート境界地震。太平洋プレートの沈み込みに耐え切れなくなった北米プレートがはね上がることで起きる地震)が,17世紀以降,①慶長16年10月28日(1611年12月2日)の津波を引き起こした慶長三陸地震,②延宝5年10月9日(1677年11月4日)の津波を引き起こした延宝房総沖地震,③明治29年(1896年)6月15日の津波を引き起こした明治三陸地震,と約400年で3回発生していることから,この領域全体で約133年に1回の割合で 1月4日)の津波を引き起こした延宝房総沖地震,③明治29年(1896年)6月15日の津波を引き起こした明治三陸地震,と約400年で3回発生していることから,この領域全体で約133年に1回の割合でこのような大地震(津波地震)が発生すると推定し,ポアソン過程という確率推定方法により,今後30年以内のこの領域全体での発生確率は20%程度,今後50年以内の発生確率は30%程度,この領域の中の特定の海域での発生確率については,地震を引き起こすと考えられた断層長(200km程度)と領域全体の長さ(800km程度)の比を考慮して,530年に1回の割合で発生すると推定し,今後30年以内の 発生確率は6%程度,今後50年以内の発生確率は9%程度と推定した(以下「「長期評価」の見解」という。)。また,そこでいう想定地震の規模は,過去に発生した地震のMt等を参考にして,Mt8. 2前後と推定された。 なお,「長期評価」では,冒頭の柱書部分に,なお書きとして,「今回の評価は,現在までに得られている最新の知見を用いて最善と思われる手法により行ったものではあるが,データとして用いる過去地震に関する資料が十分にないこと等による限界があることから,評価結果である地震発生確率や予想される次の地震の規模の数値には誤差を含んでおり,防災対策の検討など評価結果の利用にあたってはこの点に十分留意する必要がある。」と記載されている。(甲B5の2)また,内閣府は,平成14年7月31日,「長期評価」の公表に合わせて,「地震に関する調査研究が推進されることは,地震活動の長期評価も含めて,防災機関としても重要であると考えています。しかし,国の機関として発表する情報については,学会における発表とは異なり,社会からは内容を保証されたものと受け取られ,それに対 活動の長期評価も含めて,防災機関としても重要であると考えています。しかし,国の機関として発表する情報については,学会における発表とは異なり,社会からは内容を保証されたものと受け取られ,それに対する防災対応についても,国,地方公共団体とも無責任ではいられません。情報の性質や信頼度等もあわせて正確に社会に伝わることが,説明責任を果たす上でも重要です。今回の評価では,地震調査研究推進本部の発表文にもあるとおり,現在までに得られている最新の知見を用いて最善と思われる手法により行ったものではありますが,データとして用いる過去地震に関する資料が十分にないこと等による限界があることから,評価結果である地震発生確率や予想される次の地震の規模の数値には誤差を含んでおり,防災対策 の検討など評価結果の利用にあたってはこの点に十分留意する必要があります。」などと公表した。(乙B383)「長期評価」の信頼度の公表(平成15年3月)平成15年3月24日,地震本部地震調査委員会は,「プレートの沈み込みに伴う大地震に関する「長期評価」の信頼度について」(以下「長期評価信頼度」という。)を作成,公表し,その中で,項目別に「長期評価」の信頼度をA(高い),B(中程度),C(やや低い)及びD(低い)の4段階でランク分けし,「三陸北部から房総沖の海評価の信頼度」はC(「想定地震と同様な地震が発生すると考えらえる地域を1つの領域とした場合」に,「想定地震と同様な地震が領域内で1~3回しか発生していないが,今後も領域内のどこかで発生すると考えられる。発生場所を特定できず,地震データも少ないた評価の信頼度」はA(「想定地震と同様な地震が3回以上発生しており,過去の地震から想定規模を推定できる。地震データの数が比較評価の信頼度」はC(「想定地震と 生場所を特定できず,地震データも少ないた評価の信頼度」はA(「想定地震と同様な地震が3回以上発生しており,過去の地震から想定規模を推定できる。地震データの数が比較評価の信頼度」はC(「想定地震と同様な地震が発生すると考えらえる地域を1つの領域とした場合」に,「想定地震と同様な地震は領域内で2~4回と少ないが,地震回数をもとに地震の発生率から発生確率を求めた。発生確率の値の信頼性はやや低い。」ことを意味する。)とした。 この評価内容は,平成21年3月9日の改訂によっても変更はなかった。 地震本部による地震動予測地図の公表(平成17年3月) 地震本部地震調査委員会は,平成17年3月23日,それまでに実施した長期評価(地震学者を主な委員とする長期評価部会で検討したもの)及び強振動評価(地震工学等の専門家を含めた委員からなる地震動評価部会で検討したもの)を総合的に取りまとめて「全国を概観した地震動予測地図」報告書(乙B361の1~3,以下「地震動予測地図」という。)を作成・公表したところ,そこにおいて,「長期評価」の見解は,確率論的手法の基礎資料としてのみ取り扱われ,決定論的手法の基礎資料としては取り扱われなかった。 (乙B361の1・54頁,乙B361の2・55頁,70頁,乙B361の3・174頁,221頁) 2 「長期評価」に対する一審被告らの対応「長期評価」に対する一審被告らの対応に係る認定事実は,おおむのとおりであるが,当裁判所において追加・補正した上で,以下のとおり認定する。 保安院によるヒアリングと一審被告東電の対応(平成14年8月)保安院は,平成14年8月5日までの間に,「長期評価」に対する対応方針等について一審被告東電からヒアリングを行い,その際,先に説明をした東北電力はかなり波源 一審被告東電の対応(平成14年8月)保安院は,平成14年8月5日までの間に,「長期評価」に対する対応方針等について一審被告東電からヒアリングを行い,その際,先に説明をした東北電力はかなり波源を南にずらして女川について検討していると述べた上,一審被告東電も福島沖から茨城沖の領域で津波地震が発生した場合のシミュレーションを行うべきであるとの見解を示した。しかし,一審被告東電担当者は,福島県沖では有史以来津波地震が発生していないし,谷岡・佐竹論文(1996)によると,津波地震はプレート境界面の結合の強さや滑らかさ,沈み込んだ堆積物の状況が異なるなど,特定の領域や特定の条件下でのみ発生する極めて特殊な地震であるという考え方が示されている などとして,同論文を示して約40分間にわたり抵抗したところ,保安院は,一審被告東電に対し,シミュレーションの代わりに地震本部がどのような根拠に基づいて「長期評価」の見解を示したものであるかを委員を務める学者に確認するよう指示して,当日のヒアリングを終えた。(乙B283・2~7頁,資料①)。 一審被告東電の担当者は,「長期評価」が発表された1週間後である平成14年8月7日,谷岡・佐竹論文(1996)の共著者であり,「長期評価」を取りまとめた海溝型分科会委員でもある佐竹健治に対し,「弊社では土木学会の審議結果に基づいて津波の検討を実施しておりますが,推進本部(地震本部)から異なる見解が示されたことから若干困惑しております。」などとするメールを送り,地震本部がこのような「長期評価」を発表した理由を尋ねたのに対し,佐竹健治は,同月7日,メールにて,谷岡・佐竹論文(1996)では,少なくとも日本海溝沿いでは明治三陸地震(1896)タイプの津波地震が発生する場所と通常のプレート間地震が発生 由を尋ねたのに対し,佐竹健治は,同月7日,メールにて,谷岡・佐竹論文(1996)では,少なくとも日本海溝沿いでは明治三陸地震(1896)タイプの津波地震が発生する場所と通常のプレート間地震が発生する場所とは異なると述べたが,これがどこまで一般化できるかについては可能性を述べるにとどめ,今後の研究を待つ旨結論付けた,慶長三陸地震(1611),延宝房総沖地震(1677)の津波地震(ただし,これらについて津波地震とみなすことについては自分も含めて反対意見もあった。)の波源がはっきりしないため,「長期評価」では海溝沿いのどこで起きるか分からないとした,今後の津波地震の発生を考えたときに,典型的なプレート間地震が発生している領域の海溝付近では津波地震が発生しないか否かについて,これを否定する谷岡・佐竹論文(1996)と,肯定する「長期評価」のどちらが正しいかは分からないというのが正直な答えだが,「長期評価」では過去400年間のデータを考慮しているのに対し,谷岡・佐竹論 文(1996)では過去100年間のデータと海底地形のみを考慮したという違いがある旨回答した。(乙B283・8~9頁,資料③~⑤)一審被告東電は,同月下旬頃までに,保安院の担当官に対し,佐竹委員に「長期評価」で日本海溝付近の海溝寄りのどこでも津波地震が起こるとされた理由を聞いたところ,佐竹委員は,分科会で異論を唱えたが,分科会としてはどこでも起こると考えることになった,とのことであった,土木学会手法に基づいて決定論的に検討すれば,福島沖から茨城沖には津波地震は想定しないことになるが,電力共通研究で実施する確率論(津波ハザード解析)ではそこで起こることを分岐として扱うことはできるので,そのように対応したいと伝えたところ,保安院は了承し,「長期評価」をめぐ 定しないことになるが,電力共通研究で実施する確率論(津波ハザード解析)ではそこで起こることを分岐として扱うことはできるので,そのように対応したいと伝えたところ,保安院は了承し,「長期評価」をめぐる取り急ぎの対応としては,ひとまず沙汰止みとなった。(乙B283・9~10頁,資料⑥)以上のやり取りの結果,最終的に,この平成14年時点においては,一審被告東電は,「長期評価」に基づく想定津波への対策を検討することを見送り,一審被告国も,「長期評価」から想定される津波の高さについて一審被告東電に推計を指示したり自ら推計したりすることはなく,「長期評価」から想定される津波についての対策を一審被告東電に指示することはなかった。 平成20年2月16日一審被告東電は,平成19年7月に発生した新潟県中越沖地震を受けて,一審被告東電内部で打合せを行っていたところ,平成20年2月16日の打合せにおける配付資料には,福島県内の原子力発電施設に関わるバックチェックスケジュールが記載されるとともに,「地震随伴事象である「津波」への確実な対応」として,津波高さ の想定変更について,従来の「海溝沿いの震源モデル考慮せず」の「+5.5m」の想定から,「海溝沿い震源モデルを考慮」した「+7.7m以上」への見直し(案)が示され,その備考欄には「詳細評価によってはさらに大きくなる可能性」と記載されていた。 今村文彦見解(平成20年2月26日)一審被告東電は,平成20年2月26日,土木学会の委員である地震学者の今村文彦に意見を求めたところ,中央防災会議においては,福島県沖海溝沿いでの大地震には「繰り返し性がないこと及び切迫性がないことを理由に,結論を出さなかった」が,「私は,福島県沖海溝沿いで大地震が発生することは否定できないので,波 防災会議においては,福島県沖海溝沿いでの大地震には「繰り返し性がないこと及び切迫性がないことを理由に,結論を出さなかった」が,「私は,福島県沖海溝沿いで大地震が発生することは否定できないので,波源として考慮すべきであると考える。」との意見(以下「今村文彦見解」という。)が示された。(乙B394の4・450頁)平成20年試算(平成20年4月18日) の今村文彦見解等を受けて,子会社である東電設計に対して津波評価を委託し,同社は,平成20年4月18日,「新潟県中越沖地震を踏まえた福島第一・第二原子力発電所の津波評価委託第2回打合せ資料資料2 福島第一発電所日本海溝寄りの想定津波の検討Rev.1」を作成し,「長期評価」に基づく試算(平成20年試算)を行った。この平成20年試算においては,「長期評価」に従い,福島県沖海溝沿い領域に明治三陸地震の波源モデル(「津波評価技術」の三陸沖の領域③の波源モデル。Mw8.3)を置き,「津波評価技術」の方法による詳細パラメータスタディを行ったところ,朔望平均満潮位(O.P.+1.490m)時の津波高さは,1~4号機取水ポンプ位置でO.P.+8.310(4号機)~9.244m(2号機),敷地南側(O.P.+10m)でO.P.+15.707m(浸水深5.707m),4号機原 子炉建屋中央付近(O.P.+10m)でO.P.+12.604m(浸水深2.604m),4号機タービン建屋中央付近(O.P.+10m)でO.P.+12.026m(浸水深2.026m)と試算された。これは,敷地をO.P.+10m盤で計算し,建屋の存在を考慮しない前提での試算である。 平成20年6月10日平成20年6月10日,一審被告東電内部で津波評価に関する説明が行われ,担当者が,平成20年試算 O.P.+10m盤で計算し,建屋の存在を考慮しない前提での試算である。 平成20年6月10日平成20年6月10日,一審被告東電内部で津波評価に関する説明が行われ,担当者が,平成20年試算の想定波高の数値,防潮堤を作った場合における波高低減の効果等につき説明をしたところ,a原子力・立地本部副本部長(以下「a副本部長」という。)は,①津波ハザードの検討内容に関する詳細な説明,②福島第一原発における4m盤への津波の遡上高さを低減するための対策の検討,③沖に防潮堤を設置するのに必要な許認可の調査,④機器の対策に対する検討をそれぞれ行うよう指示を出した。(乙B394の4・549頁)一審被告東電内部における「長期評価」対応方針決定(平成20年7月31日)とそれ以降のやり取り平成20年7月31日,一審被告東電内部で,a本部長らに対する津波評価に関する2回目の説明が行われ,①「長期評価」の取扱いについては,評価方法が確定しておらず,直ちに設計に反映させるレベルのものではないと思料されるので,「長期評価」の知見については,電力共通研究として土木学会に検討してもらい,しっかりとした結論を出してもらう,②その結果,対策が必要となれば,きちんとその対策工事等を行う,③耐震バックチェックは,当面,「津波評価技術」に基づいて実施する,④土木学会の委員を務める有識者に上記方針について理解を得る,とすることが一審被告東電の方 針として決定された(以下「一審被告東電方針」という。)。(乙B394の1・110~115頁,乙B394の4・556~569頁,乙B395の2・204~208頁)一審被告東電方針をめぐっては,証拠上,以下のようなやり取りが残されている。 ア平成20年7月31日一審被告東電方針について,他の電力 56~569頁,乙B395の2・204~208頁)一審被告東電方針をめぐっては,証拠上,以下のようなやり取りが残されている。 ア平成20年7月31日一審被告東電方針について,他の電力事業者にも周知し,意見を聴くことになったところ,一審被告東電のbが,日本原子力発電株式会社(以下「日本原電」という。)のcGM及び東北電力のd課長に宛てて送信したメールには,以下のような記載がされている(抜粋)。(乙B394の4・570頁)「推本[裁判所注:地震本部又は「長期評価」を指す。以下同じ。]太平洋側津波評価に関する扱いについて,以下の方針の採用是非について早急に打合せしたく考えております。 ・推本で,三陸・房総の津波地震が宮城沖~茨城沖のエリアのどこで起きるかわからない,としていることは事実であるが,・原子力の設計プラクティスとして,設計・評価方針が確定している訳ではない。 ・今後,電力大として,電共研~土木学会検討を通じて,太平洋側津波地震の扱いをルール化していくこととするが,当面,耐震バックチェックにおいては土木学会津波をベースとする。 ・以上について有識者の理解を得る(決して,今後なんら対応をしない訳ではなく,計画的に検討を進めるが,いくらなんでも,現実問題での推本即採用は時期尚早ではないか,というニュアンス)」 「以上の方針について,関係各社の協調が必要であり,また各社抱えている固有リスクの観点で,一枚岩とならない可能性があると思います。」イ平成20年8月6日上記アのメールを受けて,一審被告東電,日本原電及び東北電力等の各担当者が集まり,打合せを行い,各社は,一審被告東電方針について持ち帰り,社内で確認し,回答することとなった。 一審被告東電方針がまとめられた,取扱注意とされた「推 東電,日本原電及び東北電力等の各担当者が集まり,打合せを行い,各社は,一審被告東電方針について持ち帰り,社内で確認し,回答することとなった。 一審被告東電方針がまとめられた,取扱注意とされた「推本見解に対する今後の対応方針について(案)」には,以下の記載がある(抜粋)。(乙B394の4・572頁)「問題点の抽出・分析□推本見解を否定できるかどうか①NISA合同WGの阿部勝征主査は,推本の地震調査委員会の委員長も務めており,推本見解を否定しないこと,土木学会津波評価部会が実施した津波PSAのアンケートにおいて,上記地震はどこでも起こるとしていること(重みを1. 0で回答)から,推本見解を否定することは不可能。 ②津波研究の第一任者(ママ)であるNISA合同WG委員の今村先生(東北大)も,上記地震はどこでも起こるとの見解を示しており(アンケートでは0.6),津波評価にあたって推本を無視することは困難。 ③推本見解を否定できる地震学的データはない。(三陸沖とそれ以南を差別化することは可能かもしれないが)□評価手法が確立しているかどうか④土木学会「原子力発電所の津波評価技術」発刊時には,推本見解が出されていなかったことから,このような地震に対す る設計・評価方針が確定しておらず,各社の対応が統一されていない。 □対策が短期に取れるかどうか⑤推本見解を採用したとたんに既往評価水位を大幅に上回るため,必要となる対策を短期間に取ることは不可能。」「推本見解を完全否定することは困難であることから,改訂前までに可能な対策を随時進める。」また,その打合せ概要をまとめたメモには,以下の記載がある(抜粋)。(乙B394の4・571頁)「原電は茨城県の津波について,痕跡を再現する一枚モデルを別途作成し に可能な対策を随時進める。」また,その打合せ概要をまとめたメモには,以下の記載がある(抜粋)。(乙B394の4・571頁)「原電は茨城県の津波について,痕跡を再現する一枚モデルを別途作成した上でパラメータスタディを行い評価。このモデルの考慮によって,推本の見解を反映したことにつながる可能性もあると考えている。」「東北電力は貞観津波について,論文に示されたモデルそのものを用いて検討を行っている。」ウ平成20年8月11日上記イの打合せを受けて,日本原電が一審被告東電のeに対して社内での検討結果を伝えたことを,eが一審被告東電内部で直属の上司であるbらに伝える内部メールには,以下のような記載がある(抜粋)。(乙B394の4・573頁)「推本見解に対する東電方針について,原電 cさんから以下の回答がありました。 ・上層部に相談し,東電方針に賛成(口ぶりは積極的賛成ではない感じ)・ただし,12月のバックチェック最終報告時点で,推本見解をバックチェックに取り入れなくてよい理由を具体的にどの ように言うのか,また,12月までに何をするのか見えないので,今後よく調整するよう,上層部に言われている確かに,WGの阿部先生や今村先生等,津波評価部会の首藤先生,佐竹先生等に対する説明内容は思い浮かびますが,世間(自治体,マスコミ・・・)がなるほどと言うような説明がすぐには思いつきません。ちょっと考えたいと思います。」エ平成20年8月14日上記ウのeメールに対してbが返答した内部メールには,以下のような記載がある(抜粋)。(乙B394の4・573頁)「対社会への説明骨子,阿部先生,今村先生,高橋先生他推本,津波関係者への説明骨子,電共研の計画,をペーパ化し,社内の合意形成,3社の合意形成,の後,でき る(抜粋)。(乙B394の4・573頁)「対社会への説明骨子,阿部先生,今村先生,高橋先生他推本,津波関係者への説明骨子,電共研の計画,をペーパ化し,社内の合意形成,3社の合意形成,の後,できるだけ早く有識者説明を開始する必要があると思います。というのは,最終報告前であっても,ちょっとした質問,コメントとして公開の場で,明日以降にいつでも「推本津波」が話題に出る可能性自体はあるわけなので。福島技連等でも。」オ平成20年8月18日一審被告東電内部で,bが,e等に宛てた内部メールには,以下のような記載がある(抜粋)。(乙B394の4・575頁)「推本は,十分な証拠を示さず,「起こることが否定できない」との理由ですから,モデルをしっかり研究していく,でよいと思いますが,上記869年の再評価は津波堆積物調査結果に基づく確実度の高い新知見ではないかと思い,これについて,さらに電共研で時間を稼ぐ,は厳しくないか?」カ平成20年10~12月頃土木学会委員からの意見聴取 一審被告東電は,平成20年10~12月頃,土木学会の委員を務める有識者らを訪ね,一審被告東電方針について理解を求めたところ,有識者からは,特段否定的な意見は出なかった。 もっとも,阿部勝征は,同年12月10日,一審被告東電に対し,「地震本部がそのような見解を出している以上,事業者はどう対応するのか答えなければならない。対策を取るのも一つ。無視するのも一つ。ただし,無視するためには,積極的な証拠が必要。」と述べた。(乙B394の4・589~594,608頁)耐震バックチェック内部説明会(平成20年9月10日)平成20年9月10日,一審被告東電内部で耐震バックチェック説明会(福島第一原発関係)が開催された。席上配布資料には,平成20 08頁)耐震バックチェック内部説明会(平成20年9月10日)平成20年9月10日,一審被告東電内部で耐震バックチェック説明会(福島第一原発関係)が開催された。席上配布資料には,平成20年試算の福島第一最大浸水深図が記載され,敷地南側で津波高さ15.7m(浸水深5.7m)の津波が想定されたことが示されており,「敷地南部の放水口付近から敷地(O.P.+10m)へ遡上する。」,「敷地北部・南部から敷地への遡上及び港内からO.P. 4mへの遡上について対策が必要」,「推本がどこでもおきるとした領域に設定する波源モデルについて,今後2~3年間かけて電共研で検討することとし,「原子力発電所の津波評価技術」を改訂予定。」,「電共研の実施について各社了解後,速やかに学識経験者へ推本の知見の取扱について説明・折衝を行う。」,「改訂された「原子力発電所の津波評価技術」によりバックチェックを実施。」,「ただし,地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると,現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され,津波対策は不可避」などと記載されていた。(乙B394の4・585頁)平成21年2月11日 平成21年2月11日,一審被告東電内部で中越沖地震対応打合せが行われ,原子力設備管理部長が,「土木学会評価でかさ上げが必要となるのは,1F5,6のRHRSポンプ[裁判所注:福島第一原発5,6号機残留熱除去海水系ポンプ]のみであるが,土木学会評価手法の使い方を良く考えて説明しなければならない。もっと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて,前提条件となる津波をどう考えるかそこから整理する必要がある。」との発言をした。 平成21年6月一審被告東 なければならない。もっと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて,前提条件となる津波をどう考えるかそこから整理する必要がある。」との発言をした。 平成21年6月一審被告東電は,平成21年6月,土木学会に対し,「長期評価」の取扱いにつき審議を依頼した。 土木学会では,平成21年度から平成23年度までの期間に,「長期評価」の取扱いを含む波源モデルの構築,数値計算手法の高度化,不確かさの考慮方法の検討(確率論的検討を含む。),津波に伴う波力や砂移動の評価手法の構築等の幅広い分野について審議し,平成24年10月を目途に「津波評価技術」の改訂を行うこととした。 平成21年8月一審被告東電の原子力設備管理部長は,平成21年8月上旬頃,一審被告東電の担当者に対し,平成20年試算の波高の試算結果については,保安院から明示的に試算結果の説明を求められるまでは説明不要と指示した。 平成21年8月28日一審被告東電は,平成21年8月28日,保安院に対し,資料を示して福島第一原発の津波評価の状況を説明したが,その中では,「津波評価技術」に基づく「O.P.+5~6m程度」の想定津波の みを報告し,「長期評価」に基づく平成20年試算によりO.P.+15.7mとの推計結果が得られていることは報告しなかった。 平成22年8月~平成23年2月一審被告東電は,平成22年8月から平成23年2月まで,4回にわたり,福島地点津波対策ワーキングを開催して,平成24年10月を目途に結論が出される予定の土木学会における検討結果いかんによっては福島第一原発・福島第二原発における津波対策として必要となり得る工事の内容につき検討がされた。同ワーキングでは,機器耐震技術グループからは海水ポンプの電動機の水密化が,建築 討結果いかんによっては福島第一原発・福島第二原発における津波対策として必要となり得る工事の内容につき検討がされた。同ワーキングでは,機器耐震技術グループからは海水ポンプの電動機の水密化が,建築耐震グループからはポンプを収容する建物の設置が,土木技術グループからは防波堤のかさ上げ及び発電所内における防潮堤の設置がそれぞれ提案され,さらに,これらの対策工事を組み合わせて対処するのが良いのではないかといった議論がなされた。しかし,一審被告東電は,土木学会による検討結果が出る前に対策工事を行うことは考えておらず,そのため,結果として,本件事故に至るまで,「長期評価」から想定される津波に対する具体的な対策は全く取られなかった。 平成23年3月7日一審被告東電は,平成23年3月7日,保安院に対し,「福島第一・第二原子力発電所の津波評価について」を示して,初めて平成20年試算の結果を報告し,「福島第一原発の津波対策については,平成24年10月を目処に結論が出される予定の土木学会における検討結果いかんでは津波対策工事を検討しているが,同月までに対策工事を完了させるのは無理である」旨を説明した。 一審被告国の対応 一審被告国は,前記⑴のとおり,「長期評価」が公表された直後の平成14年8月の保安院によるヒアリングにおいては,担当官が一審被告東電担当者に対し,福島沖から茨城沖の領域で津波地震が発生した場合のシミュレーションを行うべきであるとの見解を示したものの,その後は,「長期評価」から想定される津波の高さについて一審被告東電に推計を指示したり自ら推計したりすることはなく,「長期評価」から想定される津波についての対策を一審被告東電に指示することもなかった。 第4 おおむね「長期評価」公表以降 1 土木学会の「長期 電に推計を指示したり自ら推計したりすることはなく,「長期評価」から想定される津波についての対策を一審被告東電に指示することもなかった。 第4 おおむね「長期評価」公表以降 1 土木学会の「長期評価」への対応等土木学会の「長期評価」への対応等に係る認定事実は,おおむね原行目)及び原判決129頁4~13行目のとおりであるが,当裁判所において追加・補正した上で,以下のとおり認定する。 土木学会における検討・審議予定等 波評価技術」を公表しているが,その中では,福島県沖海溝沿い領域には大きな既往津波の記録がないとされたため波源の設定領域を設けていなかった。 土木学会では,「長期評価」を受けて,平成15年度から検討することとしていた確率論的な評価手法の中で「長期評価」の見解を取り扱うこととし,平成17年及び平成19年には論文として発表しており,一審被告東電から平成21年6月に審議要請を受けて,(福島県沖海溝沿い領域を含む)太平洋側プレート境界沿いの波源モデルの構築についても平成21年度~平成23年度までの期間に「津 波評価技術」の改訂に向けた審議をし,平成24年10月を目途に結論を出す予定であった。 一審被告東電は,土木学会により従前の想定津波を大きく超える津波が想定された場合に備えて,平成22年8月から平成23年2月まで,4回にわたり,福島地点津波対策ワーキングを開催し,福島第一原発・福島第二原発における津波対策として必要となり得る対策工事の内容につき検討し,機器耐震技術グループからは海水ポンプの電動機の水密化が,建築耐震グループからはポンプを収容する建物の設置が,土木技術グループからは防波堤のかさ上げ及び発電所内における防潮堤の設置がそれぞれ提案され,さらに,これらの対策工事を組み合わせて対処するの が,建築耐震グループからはポンプを収容する建物の設置が,土木技術グループからは防波堤のかさ上げ及び発電所内における防潮堤の設置がそれぞれ提案され,さらに,これらの対策工事を組み合わせて対処するのがよいのではないかといった議論をしていた。なお,そこでは,日本海溝沿い海域はどこでも津波地震は発生することを前提にはされたものの,福島県沖では延宝房総沖地震を参考に津波堆積物調査等を踏まえて検討することとされていた。(甲B412の3,5,乙B394の4・626,640,650,654頁)平成16年度アンケート土木学会津波評価部会は,平成16年頃,確率論的津波ハザード解析に適用するロジックツリーの重みについて,同評価部会の委員及び幹事31人,地震学者5人の合計36人にアンケートを取り(回答者35人),「三陸沖~房総沖海溝寄りの津波地震活動域(JTT1~JTT3)」で「超長期の間にMt8級の地震が発生する可能性」について,0~1の間で項目ごとに合計が1となるよう小数又は分数での重み付けをさせ,地震学者を他の見識者の4倍として全体加重平均をした結果,分岐①「過去に発生例があるJTT1及びJTT3は活動的だが,発生例のないJTT2は活動的でない」とした 重みが「0.50」,地震学者グループの平均で「0.35」,分岐②「JTT1~JTT3は一体の活動域で,活動域内のどこでも津波地震が発生する」とした重みが「0.50」,地震学者グループの平均で「0.65」であり,地震学者グループにおいては,「津波地震は(福島県沖海溝沿い領域を含む)どこでも起きる」とする方が,「福島県沖海溝沿い領域では起きない」とする判断より有力であった。 平成20年度アンケート土木学会津波評価部会は,平成21年2月頃,同評価部会の委員及び幹事3 どこでも起きる」とする方が,「福島県沖海溝沿い領域では起きない」とする判断より有力であった。 平成20年度アンケート土木学会津波評価部会は,平成21年2月頃,同評価部会の委員及び幹事34人並びに外部専門家5人の合計39人(専門家でない土木学会津波評価部会の委員及び幹事も含む。ちなみに,平成13年3月時点の同部会の委員・幹事30人のうち,13人は電力会社,5人は電力関連団体に所属する者であった。)に上記イと同様のアンケートを取り(回答者は10~28人),「三陸沖~房総沖海溝寄りの津波地震活動域(JTT)」で「超長期の間にMt8級の地震が発生する可能性」について重み付けをさせた結果,分岐①「過去に発生例がある三陸沖(1611年,1896年の発生領域)と房総沖(1677年の発生領域)でのみ過去と同様の様式で津波地震が発生する」とした重みが「0.40」,②「活動域内のどこでも津波地震が発生するが,北部領域に比べ南部ではすべり量が小さい」とした重みが「0.35」,③「活動域内のどこでも津波地震(1896年タイプ)が発生し,南部でも北部と同程度のすべり量の津波地震が発生する」とした重みが「0.25」であった(平成20年アンケートについては,地震学者のみの重み付け結果は記載されていない。)。 このように,①が最も有力であったが,福島県沖海溝沿い領域でも津波地震が発生するとする②と③の合計(0.6)は,同領域では津波地震は起きないとする①の重み(0.4)を上回っている。 2 中央防災会議の報告判決107頁17行目~108頁15行目)のとおりであるから,これを引用する。要約すれば,以下のとおりである。 「防災基本計画を作成し,及びその実施を推進すること」(災害対策基本法11条2項1号),「強化地域に係る地震防 8頁15行目)のとおりであるから,これを引用する。要約すれば,以下のとおりである。 「防災基本計画を作成し,及びその実施を推進すること」(災害対策基本法11条2項1号),「強化地域に係る地震防災基本計画を作成し,及びその実施を推進」すること(大規模地震対策特別措置法5条1項),「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画… … を作成し,及びその実施を推進」すること(日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法5条1項)などをつかさどる,内閣府に設置された中央防災会議の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会は,同調査会における議論を経て,平成18年1月25日,「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会報告」(以下「日本海溝・千島海溝報告書」という。)を作成した。同報告書においては,調査対象領域については「長期評価」を基本としつつも,防災対策の検討対象とする地震は,既往の巨大地震が確認されている地域に限ることとして,福島県沖海溝沿い領域を防災対策の検討対象から除外した。 3 福島県の津波想定区域図等福島県の津波想定区域図等に係る認定事実は,原判決第3章第3のるから,これを引用する。要約すれば,以下のとおりである。 福島県の津波想定区域図 福島県は,平成19年,県内の沿岸市町が作成する津波ハザードマップや津波避難計画の作成支援を目的として,津波想定区域図を作成したが,そこでは,福島県沖海溝沿い領域には地震を想定しなかった。 一審被告東電による想定津波(5m)一審被告東電は,平成19年6月,福島県の津波シミュレーション結果を入手し,福島県が想定した津波高さがO.P.+5m程度であり,一審被告東電の「津波評価技術」に基づく想定津波(1~ 波(5m)一審被告東電は,平成19年6月,福島県の津波シミュレーション結果を入手し,福島県が想定した津波高さがO.P.+5m程度であり,一審被告東電の「津波評価技術」に基づく想定津波(1~6号機でO.P.+5.7m)を上回らないことを確認した。 4 茨城県の浸水想定区域図等茨城県の浸水想定区域図等に係る認定事実は,原判決第3章第3のこれを引用する。要約すれば,以下のとおりである。 茨城県の浸水想定区域図の作成茨城県は,茨城県沿岸津波浸水想定検討委員会における議論を経て,平成19年,浸水想定区域図(甲B252)を作成したが,そこでは,福島県沖海溝沿い領域には地震を想定しなかった。 一審被告東電による想定津波(4.7m)一審被告東電は,平成20年3月,茨城県の津波シミュレーション結果を入手し,茨城県が想定した津波高さがO.P.+4.7m程度であり,一審被告東電の「津波評価技術」に基づく想定津波(1~6号機でO.P.+5.7m)を上回らないことを確認した。 5 耐震バックチェック中間報告書の評価についての議論耐震バックチェック中間報告書の評価についての議論に係る認定事 目)のとおりであるが,当裁判所において追加・補正した上で,以下のとおり認定する。 耐震バックチェック指示原子力安全委員会による「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の全面改訂(平成18年9月19日原子力安全委員会決定。 改訂後のものが「平成18年耐震設計審査指針」。乙A8の2)を受けて,保安院は,あらかじめ審議会に諮って確認基準(バックチェックルール)を策定し(乙B377),平成18年9月20日,一審被告東電を含む原子力事業者に対し,既設発電用原子炉施設等について,平成18年耐震設計審査指針に照らした耐震安全性の評価 準(バックチェックルール)を策定し(乙B377),平成18年9月20日,一審被告東電を含む原子力事業者に対し,既設発電用原子炉施設等について,平成18年耐震設計審査指針に照らした耐震安全性の評価を実施し,報告するよう指示した(耐震バックチェック)。 平成18年耐震設計審査指針は,地震随伴事象である津波についても,「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」を要求しており,この津波安全性評価も耐震バックチェックの対象とされていた。すなわち,上記バックチェックルールは,津波に対する安全性の確認基準について,「津波の数値シミュレーションは,想定津波の発生域において,過去に敷地周辺に大きな影響を及ぼしその痕跡高の記録が残されている既往の津波について数値シミュレーションを行ったうえで,想定津波の数値シミュレーションを行う。」とした上で,「想定津波の数値シミュレーションに当たっては,既往の津波の数値シミュレーションを踏まえ,想定津波の断層モデルに係る不確定性を合理的な範囲で考慮したパラメータスタディを行い,これらの想定津波群による水位の中から敷地に最も影響を与える上昇水位及び下降水位を求め,これに潮位を考慮したものを評価用の津波水位とする。」とし ており(丙B42の別添・44~45頁),その内容は,実質的には津波評価技術の考え方を採用したといえるものであった(乙B188,286の1・4,5,39~41頁)。 耐震バックチェック中間報告等一審被告東電は,一審被告国に対し,平成20年3月に福島第一原発5号機の,福島第二原発4号機の,平成21年4月に福島第二原発1~3号機の,同年6月に福島第一原発1~4,6号機の ェック中間報告等一審被告東電は,一審被告国に対し,平成20年3月に福島第一原発5号機の,福島第二原発4号機の,平成21年4月に福島第二原発1~3号機の,同年6月に福島第一原発1~4,6号機の,それぞれ耐震バックチェック中間報告書を提出し,保安院は同年7月21日に,原子力安全委員会は同年11月19日に,代表プラントである福島第一原発5号機,福島第二原発4号機の中間報告の内容を妥当と認めた。また,保安院は,平成22年7月末頃までに,福島第一原発3号機の中間報告の内容を妥当と認めた。 津波安全性の評価については,耐震バックチェックの中間報告においては対象とされておらず,最終報告書での報告対象とされていたが,提出前に本件事故に至った。 平成20年試算一審被告東電は,この耐震バックチェックの過程で,前記第3のいてO.P.+15.707mとの推計結果を得た。 平成21年報告資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会の地震・津波ワーキンググループと地質・地盤ワーキンググループとの合同ワーキンググループ(以下「合同福島第一原発5号機等の耐震バックチェック中間報告書の評価について議論したが,その際,岡村行信委員から,貞観津波を考慮すべ き旨の意見が出された。折しも,同年⑥)が出された直後のことである。 この指摘を踏まえ,保安院は,同年8月上旬頃,一審被告東電に対し,貞観津波等を踏まえた福島第一原発等における津波評価,対策の現況について説明を要請したため,一審被告東電は,同年8月28日及び9月7日頃,保安院に対し,耐震バックチェックには津波評価技術による津波評価で対応すること,最終報告には間に合わないが,電力共通研究,土木学会により合理的に設定された波源を検討し, 8月28日及び9月7日頃,保安院に対し,耐震バックチェックには津波評価技術による津波評価で対応すること,最終報告には間に合わないが,電力共通研究,土木学会により合理的に設定された波源を検討し,これに対して必要な対策を実施していくことなど,前記一も踏まえた試算結果が福島第一原発でO.P.+8.6~8.9mであったことを報告し(以下「平成21年報告」という。),これらの説明に使用した全ての資料を渡した。 その際,保安院からは,「JNESのクロスチェックでは,女川と福島の津波について重点的に実施する予定になっているが,福島の状況に基づきJNESをよくコントロールしたい(無邪気に計算してJNESが大騒ぎすることは避ける)」等の発言がされた。 (甲B1の1・400頁,甲B4・88頁,乙B394の4・621~623頁) 6 おおむね「長期評価」公表以降の関連論文等鶴論文(平成14年)鶴哲郎ほか「日本海溝域におけるプレート境界の弧沿い構造変化:プレート間カップリングの意味」(平成14年)(以下「鶴論文」という。)は,日本海溝の北部海溝軸付近では堆積物が厚く積み上がりプレートに挟まれた部分が楔形を作っているのに対し,南部ではプレート内の奥まで堆積物が薄く拡がり楔形構造がみられないという 地域差があるため,特に10~13km超の深度で南部よりも北部のプレート間カップリングが強く,このカップリングの違いが,日本海溝域でのプレート境界地震発生の地域差(北部で派生したM7. 5超の大規模なプレート境界地震のほぼ全て)を説明できる可能性を示唆している。(乙B149の1・2)松澤・内田論文(平成15年)松澤暢・内田直希「地震観測から見た東北地方太平洋下における津波地震発生の可能性」(平成15年),以下「松澤・内田論 能性を示唆している。(乙B149の1・2)松澤・内田論文(平成15年)松澤暢・内田直希「地震観測から見た東北地方太平洋下における津波地震発生の可能性」(平成15年),以下「松澤・内田論文」という。)は,鶴論文を踏まえた上で,福島県沖の海溝近傍では,三陸沖のような厚い堆積物は見つかっていないため,大規模な低周波地震が起きても大きな津波は引き起こさないかもしれないとしている。 石橋論文(平成15年)石橋克彦「史料地震学で探る1677年延宝房総沖津波地震」(平成15年)(乙B19,以下「石橋論文」という。)は,延宝房総沖地震の規模はM6.5程度かもしれないとして,「長期評価」が同地震をM8クラスとして,慶長三陸地震(1611)や明治三陸地震(1896)と同グループのものとして扱ったことに疑問を呈している。 都司論文(平成15年)都司嘉宣「慶長16年(1611年)三陸津波の特異性」(平成15年)(乙B18,以下「都司論文」という。)は,慶長三陸地震は津波地震ではなく,地震によって誘発された大規模な海底地すべりによるものであった可能性が高いとしている。 今村・佐竹・都司論文(平成19年)今村文彦・佐竹健治・都司嘉宣ら「延宝房総沖地震津波の千葉県沿岸~福島県沿岸での痕跡高調査」(平成19年)(以下「今村・佐竹・都司論文(平成19年)」という。)は,延宝房総沖地震につい て,津波被害を受けた各地の津波浸水高について,福島県沿岸では3.5~7m等と推定し,この推定した津波浸水高を再現できる波源モデルを設定している。(甲B261,乙B372の1,乙B393の1,乙B401)「日本の地震活動」(平成21年3月)地震本部による「日本の地震活動(第2版)」(平成21年3月)(乙B21)は,延 定している。(甲B261,乙B372の1,乙B393の1,乙B401)「日本の地震活動」(平成21年3月)地震本部による「日本の地震活動(第2版)」(平成21年3月)(乙B21)は,延宝房総沖地震について,震源域の詳細や,プレート間地震であったか沈み込むプレート内地震であったかは不明であり,津波地震であった可能性が指摘されているなどとしている。 松澤論文(本件事故後。平成23年11月)松澤暢「なぜ東北日本沈み込み帯でM9の地震が発生しえたのか?― われわれはどこで間違えたのか?」(平成23年11月)(乙B35,以下「松澤論文」という。)は,本件地震の発生により,多くの地震学者の常識や先入観が間違っていたことが明らかになったとして,本件地震のようなM9の地震発生を予見できなかった理由は,本件地震前は,「比較沈み込み学」が展開され,東北地方南部のように1億年以上も経った古いプレートが沈み込んでいる場所では固着が弱くM8の地震すら滅多に起きないと考えられていたこと,1990年代末から2000年代初頭にかけてのGPSデータの解析から,宮城県沖から福島県沖にかけての領域はほぼ100%固着しているという結果が得られていたものの,国土地理院の約100年の測地測量の結果からは,固着によるゆがみエネルギーは100年以内の再来間隔で生じるM7~8弱の地震で解消されると考えられた上,2000年代後半以降のGPSデータからは,宮城県沖から福島県沖にかけての固着状況はかなり緩んでいることが分かっていたことなどによるものとしている。 島崎論文(本件事故後。平成23年5月)島崎邦彦「超巨大地震,貞観の地震と長期評価」(平成23年5月)(乙B162,以下「島崎論文」という。)は,「比較沈み込み学」の見地から,プレ 島崎論文(本件事故後。平成23年5月)島崎邦彦「超巨大地震,貞観の地震と長期評価」(平成23年5月)(乙B162,以下「島崎論文」という。)は,「比較沈み込み学」の見地から,プレートが日本に近づく速度は年間約8cmだが,その全てが地震で解消されるわけではなく,そのずれ残りは地震を起こさずにゆっくりずれて解消されていると考えられてきており,日本海溝でM9の地震が起こるとは考えられてこなかったなどとしている。 7 「長期評価」公表以降の貞観津波に係る知見⑴ 本件地震までの知見ア平成16年平成16年2月19日に実施された中央防災会議「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」の第2回会合において,事務局が,「大地震発生の過去事例がなく,近い将来,地震の発生の恐れがあるとは肯定されないが,ただし可能性を否定もできないというものについては,今後の調査研究の成果を踏まえて,必要な時点で適宜追加と見直しを行うこととしたいという考え方をご提案」したいなどとして,貞観津波は詳細が分かっていないため検討対象から外すと述べたのに対し,各委員からは次々に反論や意見が出された。この中で,島崎邦彦教授は,「例えば1933年の三陸沖というのはプレートが曲がってポリッと折れたわけですから,その隣がまだ折れていなければいつか折れるという,そういう風に考えるのが普通なので,ですから正断層は1933年のむしろ南を考えた方が将来の予防をする意味では意味があると思います。それは津波地震も同様です」と発言した。最終 的には,事務局提案のとおり既往地震に限定し貞観津波等は検討対象から外されることとされた。(甲B7,9の2,26)イ平成17年~平成22年文部科学省委託業務平成17年10月12日,文部科学省は, ,事務局提案のとおり既往地震に限定し貞観津波等は検討対象から外されることとされた。(甲B7,9の2,26)イ平成17年~平成22年文部科学省委託業務平成17年10月12日,文部科学省は,東北大学に対して,宮城県沖地震はおよそ37年の繰り返し間隔で発生すると考えられているところ,前回の1978年宮城県沖地震から既に27年が経過し(平成17年の時点で),次の地震の発生が差し迫りつつあり,その発生時期や規模に関する予測の高精度化が急務であることなどから,「宮城県沖地震重点調査観測」の一環として,地震時に破壊の中心となるアスペリティ(付加体)の固着状況やその周囲のすべり状態のモニタリング等を業務委託した(東北大学から東京大学地震研究所/独立行政法人産業技術総合研究所活断層・地震研究センターへ再委託がされた。)。この委託業務は平成22年3月31日まで4年半にわたり継続された。 (甲B13の1~6,甲B26)上記業務委託の成果として,①平成18年8月岡村行信ほか「仙台平野の堆積物に記録された歴史時代の巨大津波― 1611年慶長津波と869年貞観津波の浸水域― 」,②平成19年7月岡村ほか「ハンディジオスライサーを用いた宮城県仙台平野(仙台市・名取市・岩沼市・亘理町・山元町)における古津波痕跡調査」,③平成19年9月岡村行信(産総研活断層研究センター長)ほか「石巻平野における津波堆積物の分布と年代」,④平成20年5月澤井祐紀ほか「ハンドコアラ― を用いた宮城県仙台平野(仙台市・名取市・岩沼市・亘理町・山元町)における古地震痕跡調査」,⑤平成20年5月「宮城県沖地震における重点的調査観測」(平成19年度成果報告書),⑥平成20年8月佐竹健治ほか「石巻・仙台平 野における869年貞観津波の数値シミュレーション」(以 平成20年5月「宮城県沖地震における重点的調査観測」(平成19年度成果報告書),⑥平成20年8月佐竹健治ほか「石巻・仙台平 野における869年貞観津波の数値シミュレーション」(以下「佐竹論文」という。),⑦平成22年7月澤井「福島県富岡町仏浜周辺の海岸低地における掘削調査」,⑧平成22年8月行谷,佐竹ほか「宮城県石巻・仙台平野および福島県請戸川河口低地における 869 年貞観津波の数値シミュレーション」及び⑨平成22年「平成17-21年度統括成果報告書」等が発表された。それぞれの概要は以下のとおりである。 ① 平成18年8月岡村行信ほか「仙台平野の堆積物に記録された歴史時代の巨大津波― 1611年慶長津波と869年貞観津波の浸水域― 」(甲B14の1)近年における「仙台平野は津波被害が少ない」という認識に反し,歴史記録には巨大な津波が仙台平野を襲ったという記述がある,として,貞観津波を紹介。津波堆積物の調査から,貞観津波は仙台平野南部(山元町・亘理町)において少なくとも2~3kmの遡上距離を持っていたことが分かった,などとした。 ② 平成19年7月岡村行信ほか「ハンディジオスライサーを用いた宮城県仙台平野(仙台市・名取市・岩沼市・亘理町・山元町)における古津波痕跡調査」(甲B14の3)ジオスライサーの調査により貞観津波による砂層を発見した,として,再来間隔はおよそ600~1300年である,などとした。 ③ 平成19年9月岡村行信(産総研活断層研究センター長)ほか「石巻平野における津波堆積物の分布と年代」(甲B14の2)石巻平野において貞観津波を含む5層の津波堆積物を発見し たこと,その再来間隔が500~1000年程度であり,通常の宮城県沖地震の再来間隔よりもはるかに長 」(甲B14の2)石巻平野において貞観津波を含む5層の津波堆積物を発見し たこと,その再来間隔が500~1000年程度であり,通常の宮城県沖地震の再来間隔よりもはるかに長いこと,中でも貞観津波は当時の海岸線から2~3km内陸まで浸水する巨大なものであり,いわゆる連動型地震であった可能性をうかがわせることなどが分かった,などとした。 ④ 平成20年5月澤井祐紀ほか「ハンドコアラ― を用いた宮城県仙台平野(仙台市・名取市・岩沼市・亘理町・山元町)における古地震痕跡調査」(甲B14の4)仙台市におけるイベント砂層の分布を知ることができたが,放射性炭素年代にはばらつきが見られ,貞観以前におけるイベントの詳しい繰り返し間隔を知るためにはさらなる調査が必要である,などとした。 ⑤ 平成20年5月「宮城県沖地震における重点的調査観測」(平成19年度成果報告書)(甲B37)プレート間地震を仮定し,断層幅100km,すべり7m以上の断層モデルでの浸水域の広がりは津波堆積物の分布をほぼ完全に再現できた,福島県常磐海岸北部では,浪江・請戸地区において,これまで松川浦地区などで報告されている貞観津波とみられる堆積物(箕浦1995,菅原ほか2002)を検出し,さらに,それより古い時期のイベント堆積物の採取ができた,貞観津波のような巨大津波が過去4000年の間に繰り返し発生していた,などとした。 ⑥ 平成20年8月(平成21年4月発表)佐竹健治ほか「石巻・仙台平野における869年貞観津波の数値シミュレーション」(佐竹論文)(甲B1の1,甲B14の5,甲B16)貞観津波による石巻平野と仙台平野における津波堆積物の分 布といくつかの断層モデルからのシミュレーション結果とを比較したもので,長さ 文)(甲B1の1,甲B14の5,甲B16)貞観津波による石巻平野と仙台平野における津波堆積物の分 布といくつかの断層モデルからのシミュレーション結果とを比較したもので,長さ200km,幅100km,すべり7m以上のプレート間地震モデルでは浸水域が大きくなり,上記両平野における津波堆積物の分布をほぼ完全に再現できることを確認した,ただし,断層の南北方向の広がり(長さ)を調べるためには,仙台湾より北の岩手県あるいは南の福島県や茨城県での調査が必要である,とした。 ⑦ 平成22年7月澤井「福島県富岡町仏浜周辺の海岸低地における掘削調査」(甲B14の9)宮城沖重点を補完する目的で行われた福島県富岡町における掘削調査の結果報告。砂層を確認したが,年代測定による対比が十分でないためなお調査が必要である,とした。 ⑧ 平成22年8月行谷,佐竹ほか「宮城県石巻・仙台平野および福島県請戸川河口低地における869年貞観津波の数値シミュレーション」(甲B14の8)仙台平野から南に約50kmに位置する請戸地区(福島県双葉郡浪江町)において津波堆積物の調査が行われ,その位置と津波浸水計算による浸水範囲とを比較し,貞観地震の断層モデルについて検討を行ったもの。その結果,断層の長さが200kmのモデルでは全地域で津波堆積物の分布をよく再現することができたが,断層のモデルが100kmのモデルでは計算浸水域が請戸地区における津波堆積物の位置まで到達しなかった,今後は,石巻平野よりも北の三陸海岸や請戸地区よりも南の福島県,茨城県沿岸における津波堆積物の調査が必要である,とした。 ⑨ 平成22年「平成17-21年度統括成果報告書」(甲B3 6)貞観津波は断層の長さ200km,幅100km,すべり量 岸における津波堆積物の調査が必要である,とした。 ⑨ 平成22年「平成17-21年度統括成果報告書」(甲B3 6)貞観津波は断層の長さ200km,幅100km,すべり量7mのプレート境界型地震が励起した津波として説明可能であることが分かった。また,貞観津波のような巨大な津波が,過去4000年間に繰り返し発生していたことも明らかになった。貞観津波の前には280AD~560AD頃と,700BC~460BC頃に巨大津波が襲来していたことが推定され,こうした巨大津波の再来間隔はおおよそ450~800年程度の幅を持っているようであることが分かった。もっとも,年代の決定精度が十分でなく,連動型地震の信頼性の高い発生履歴は十分に解明されていない。 さらに,沿岸域での地質調査は,津波堆積物の検出だけでなく,過去の地殻上下変動に関する情報も含んでおり,本業務においても,貞観津波とその一つ前の巨大津波が襲来した時期に,調査地周辺が沈水したことが推定された。こうした地震前後の沈水現象は地震時の地殻変動が原因である可能性があり,過去の地震の規模や震源域を推定するための重要な情報を持つ,などとした。 ウ平成21年平成21年11月宍倉正展,澤井ほか「沿岸の地形・地質調査から連動型巨大地震を予測する」は,一般に,歴史上マグニチュード8クラスの海溝型地震の繰り返し間隔はおよそ100年程度であるが,地震の規模は常に一定ではなく,隣り合う震源域がまれに連動して巨大化することが近年明らかになっており,これを連動型地震と呼ぶところ,平成16年12月のスマトラ島沖地震(マグニチュード9.1)はまさに連動型巨大地震の典型例であ った,連動型地震は通常の海溝型地震と比べて再来間隔が長いことが特徴であり,また,歴史記 成16年12月のスマトラ島沖地震(マグニチュード9.1)はまさに連動型巨大地震の典型例であ った,連動型地震は通常の海溝型地震と比べて再来間隔が長いことが特徴であり,また,歴史記録には残りにくく,地形・地質学的な調査に基づいた数千年オーダーでの履歴解明が必要である,貞観津波は内陸約1~3kmまで浸水したことが明らかになり,宮城県沖地震よりもはるかに広くすべり量も大きい断層であったと推定された,もっとも,断層の南北の延長に関しては,仙台,石巻平野の津波堆積物データだけではなく,北端の決定には三陸海岸,南端の決定には常磐海岸における浸水域データが必要となる,仙台平野では600~1300年間隔,石巻平野では500~1000年間隔で貞観地震のように平野の奥まで浸水するタイプの津波が発生していたことが津波堆積物の痕跡から推定されるため,次の貞観タイプの地震が非常に切迫した状況である可能性があることからすれば,早急な対応が必要である,などとした。 (甲B14の6)エ平成22年平成22年8月宍倉,澤井,岡村行信ほか「平安の人々が見た巨大津波を再現する― 西暦869年貞観津波― 」は,東北日本の三陸海岸は1896年明治三陸津波や1933年昭和三陸津波によって大きな津波被害が知られているが,宮城県の仙台・石巻平野から福島県にかけての海岸ではそれほど大きな津波に襲われるとは考えられていなかった,しかし,前記イの文部科学省による委託業務に係る研究によれば,堆積層の観察等により,古文書にわずかに記録が残っている巨大津波の実態が明らかになってきた,その研究により,産業技術総合研究所が宮城県と福島県で明らかにした過去の巨大津波像を紹介することとした,などとして,福島県南相馬市小高区では,泥炭層中に3層見られる津波堆積物の なってきた,その研究により,産業技術総合研究所が宮城県と福島県で明らかにした過去の巨大津波像を紹介することとした,などとして,福島県南相馬市小高区では,泥炭層中に3層見られる津波堆積物の うち最上位のものが貞観津波によるものであると推定された結果,貞観津波襲来当時の海岸線の位置が現在とほぼ同じであると仮定するならば,貞観津波の遡上距離は少なくとも1.5kmと推定された,石巻平野から南相馬市小高区にかけて見られる津波堆積物の広域対比を行うと,西暦1500年ころのイベント,貞観津波(869),西暦430年ころのイベント(小高区の結果が基),紀元前390年ころのイベント(山元町の結果が基)が共通して認められ,これらの津波の再来間隔はおよそ450~800年程度の幅を持っていることが調査から明らかになった,近い将来に再び起こる可能性も否定できない,貞観津波は,宮城県から福島県にかけての沖合の日本海溝沿いのプレート境界で,長さ200km程度の断層が動いた可能性が考えられ,マグニチュード8以上の地震であったことが明らかになってきた,などとした。(甲B1の1,甲B14の7)オ平成23年平成23年今村,箕浦ほか「地質学的データを用いた西暦869年貞観津波の復元について」は,貞観津波像を数値シミュレーションにより復元し,波源モデルの推定を行った,堆積物から推定した水理量の分布から判断すると,すべり量6.6mは過大評価であり,5.6mをやや上回る程度であると考えられる,などとした。(乙B168)⑵ 一審被告東電による検討ア佐竹論文による検討佐竹教授は,平成20年10月頃,貞観津波に関する研究成果を年度内に発表できる見込みだとして,後に発表予定であった佐 20年10月18日受理された後のもの。乙 佐竹論文による検討佐竹教授は,平成20年10月頃,貞観津波に関する研究成果を年度内に発表できる見込みだとして,後に発表予定であった佐 20年10月18日受理された後のもの。乙B190の2・8頁)を,一審被告東電に渡した。同年12月,一審被告東電が,同論文に示されていた波源モデルを基に福島第一原発及び福島第二原発における波高を試算したところ,前者でO.P.+8.7(1~4号機)~9.2m(5~6号機)(敷地南側には浸水せず),後者で7.7~8.0mという結果を得た。 一審被告東電がこの結果を保安院に報告した平成23年3月7日付け書面(甲B16)には,「仮に土木学会の断層モデルに採用された場合,不確実性の考慮(パラメータスタディ)のため,2~3割程度,津波水位が大きくなる可能性あり」との記載がある。 イ津波堆積物調査一審被告東電は,「長期評価」や佐竹論文は,津波評価技術に基づく福島第一原発等の安全性評価を覆すものかどうかを判断するため,念のため,電力共通研究として土木学会に検討を依頼することとするとともに,土木学会の委員である阿部勝征から,平成20年12月10日,「地震本部がそのような見解を出している以上,事業者はどう対応するのか答えなければならない。対策を取るのも一つ。無視するのも一つ。ただし,無視するためには,積極的な証拠が必要。福島県沿岸で津波堆積物の調査を実施し,地震本部の見解に対応するような津波が過去に発生していないことを示すことがよいのではないか」旨の意見を受けたこと(前記第調査を実施することとし,平成21年12月から平成22年3月までの間に福島県の太平洋沿岸において津波堆積物調査を実施した(甲B1の1)。その結果,福島県北部(福島第一原発から10km北方に位置する南相馬市小高区浦尻地区 ,平成21年12月から平成22年3月までの間に福島県の太平洋沿岸において津波堆積物調査を実施した(甲B1の1)。その結果,福島県北部(福島第一原発から10km北方に位置する南相馬市小高区浦尻地区)で標高4mまで貞 観地震の津波による津波堆積物を確認したが,一方,富岡町からいわき市にかけての福島県南部では,BC1000年以降の堆積物中に津波堆積物は認められず,標高4~5mを超える津波はなかった可能性が高いとされた。 一審被告東電は,この結果を平成23年1月に論文として投稿し,同論文は本件事故後である平成23年5月25日に発表された(丙B46)。 8 本件地震以前における地震・津波に関する地震学者の考え方前示(前記第2)のおおむね長期評価までの種々の知見を前提にして,本件地震以前における地震・津波に関する地震学者の考え方につ15頁22行目)のとおりであるから,これを引用する。要約すれば,以下のとおりである。 本件地震以前における地震・津波に関する地震学者の考え方は,おおむね以下のとおりであった。 ①日本海溝沿いの震源については,「長期評価」のとおり,沖合の日本海溝寄りの領域と陸寄りの領域に分け,さらに陸寄り領域は震源を幾つかのセグメントに分けて考えていた。 ②まず,日本海溝沿いの領域全般について,M9クラスの地震が起こり得るとは考えられていなかった。M9クラスの超巨大地震は,チリ沖やアラスカ沖のようにプレートが若くて密度がそれほど大きくなく,海溝に沈み始めたばかりで浅い角度で沈み込んでいるところで発生するという「比較沈み込み学」仮説に,多くの地震学者が賛同していた。 ③多くの地震学者から「比較沈み込み学」が受容されるのと同時に,地震は過去に発生したものが繰り返すものであり,過去に発生しなか 較沈み込み学」仮説に,多くの地震学者が賛同していた。 ③多くの地震学者から「比較沈み込み学」が受容されるのと同時に,地震は過去に発生したものが繰り返すものであり,過去に発生しなか った地震は将来にも起こらないとする考え方が一般的であった。そのため,福島県沖で発生する可能性がある地震については,陸寄りの領域においては,平成14年頃の時点では,過去約400年間の記録に基づき,最大でも塩屋崎沖で発生した福島県東方沖地震(昭和13年)のようなM7.5クラスとされていた。平成20年頃からは,貞観地震の波源モデルが徐々に明らかにされつつあったが,依然として福島県沿岸に貞観地震によりどの程度の津波が来襲し,また,地震波源がどこまでの広がりを持つものであったかは必ずしも明確でなかった。 ④一方,沖合の海溝寄りの領域で発生する津波地震については,「長期評価」のように,M8クラスの地震が三陸沖から房総沖にかけてのどこでも起こり得るとする考えと,従前どおり特定領域でしか起こらないとする考えの両論があった。前者を推す島崎邦彦は,歴史記録がないのはわずかな期間の記録しか見ていないためであって津波地震が福島県沖だけ起こらないとする理由がない,また,そもそも津波地震は,固着の弱いところで起こる「ぬるぬる地震」であってプレートの新旧が固着の強弱を支配する比較沈み込み学は適用されないため,三陸沖から房総沖にかけての各領域のプレートの新旧度合いとは関係なくどこでも同規模程度の津波地震が起こり得るという考えであった。 ⑤他方,土木学会においては,この領域での津波地震発生の可能性について両論があったことを踏まえ,三陸沖から房総沖にかけてのどこでも起こるとする場合と特定領域でのみ起こるとする場合の両方の津波発生パターンを考慮に入れたロジックツリーによ の津波地震発生の可能性について両論があったことを踏まえ,三陸沖から房総沖にかけてのどこでも起こるとする場合と特定領域でのみ起こるとする場合の両方の津波発生パターンを考慮に入れたロジックツリーによる確率論的津波ハザード評価の研究を「津波評価技術」の後継研究として進めていた。 第5 溢水事故及び溢水事故対策等に係る知見等 1 総論 本件事故は,前記第2章第2節第3のとおり,本件地震及び本件津波により1~4号機が浸水しいずれも全電源喪失状態になるなどしたことによるものであるところ,本件事故までの溢水事故及び溢水事故対策等に係る知見については,おおむね以下のとおりであった。 2 本件事故前の事例日・福島第一原発溢水事故(平成3年溢水事故)本件事故を起こした福島第一原発は,平成3年10月30日,1号機を定格出力で運転中,タービン建屋地下1階(南側)電動駆動原子炉給水ポンプ付近の床下に埋設されている補機冷却水系海水配管の母管から分岐し原子炉海水ポンプ用空調機へ供給する配管の分岐部近傍に約22mm×40mmの貫通穴があき,同ポンプ周りの床面から海水が湧水したため,原子炉が手動停止されるという事故(発電停止時間1635時間20分(約69日間))が発生した(以下,「平成3年溢水事故」という。)。当時,1号機タービン建屋地下1階には,1号機専用及び1・2号機共通の非常用ディーゼル発電機が2台設置されていたところ,1・2号共通ディーゼル発電機及び機関の一部に浸水が確認された。 一審被告東電は,平成3年溢水事故を機に,地下階に設置された重要機器が内部溢水により被水・浸水して機能を失わないよう,原子炉建屋階段開口部への堰の設置,非常用電気品室エリアの堰のかさ上げ等の他,原子炉最地下階の残留熱除去系機器室等の入口扉,原 設置された重要機器が内部溢水により被水・浸水して機能を失わないよう,原子炉建屋階段開口部への堰の設置,非常用電気品室エリアの堰のかさ上げ等の他,原子炉最地下階の残留熱除去系機器室等の入口扉,原子炉建屋1階電線管貫通部トレンチハッチ及び非常用ディーゼル発電機室入口扉の水密化を実施した。 (甲B181の5の1,甲B190,192~194,乙B26の1,乙B90,丙B41の1・38頁,証人f②30~31頁)。 仏・ルブレイエ原発溢水事故(1999年) フランス・ボルドーの北方,ジロンド河口に位置するルブレイエ原子力発電所は,1999(平成11)年12月27日から28日夜にかけて,強い低気圧による吸い上げと非常に強い突風(約56m/s)による高波により,満潮と重なってジロンド河口に波が押し寄せ,堤防内が氾濫し,ルブレイエ原子力発電所の一部が浸水した(浸入水量約10万㎥)。風と波の方向から,1号機と2号機が洪水の影響を最も受け,扉や開口部を通じて水が広がり,電気室の地下レベル,海水ポンプ室の接続坑道,周辺建屋と燃料建屋の地下レベルに達した結果,冷却系統の一部を喪失し,3号機と4号機は内部に僅かの水が浸水した。送電網にも擾乱が生じ,全号機の225kV補助電源が24時間喪失し,2号機と4号機の400kV送電網が数時間喪失し,INESレベル2が発動された。 ルブレイエ原発は,事故発生後,主要建屋の開口部の閉鎖等の応急措置のほか,ジロンド川に面した防護用堤防のかさ上げ,2.3mのうねり波防護壁の設置等防御ラインの強化対策に加えて,開口部への耐水材の充填,防水性扉の設置など水密化対策を施した。 ルブレイエの事例について,独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)は,国内の全原子力発電所は,海水をヒートシンクとして利用 て,開口部への耐水材の充填,防水性扉の設置など水密化対策を施した。 ルブレイエの事例について,独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)は,国内の全原子力発電所は,海水をヒートシンクとして利用しており,ルブレイエ原発のように河川水をヒートシンクとして用いていないため,ルブレイエ原発溢水事故と同一の事象が発生することはないものの,沿岸立地につき津波に対する備えを十分に行っておくことが重要であるとし,平成17年頃,保安院と共催した安全情報検討会(平成15年設置)において,外部事象(津波)による溢水及び内部溢水の両方に対する施設側の溢水対策(水密構造等)の実態を整理しておく必要がある,とした。 もっとも,一審被告東電によるルブレイエ原発溢水事故に対する対応については,この事故が洪水防止壁が押し流されたことによるものであるとの原因のみに着目し,福島第一原発等日本国内の原発では設置許可申請書において過去に発生した津波ベースでの水位と発電所敷地の標高比較で津波対策評価を実施しているため,ルブレイエ原発の浸水事象はこの津波対策評価に包絡される,とするだけで,溢水により全電源喪失を容易に引き起こすという結果や,実際にどのような対策が施されたかに着目してなかったこと,長時間の全電源喪失が発生する確率が十分に低いという安全審査指針の考えに捕らわれ,福島第一原発等で同様の事態が生じた際の全電源喪失が発生する可能性について自ら再検討するという姿勢が不足していたこと,さらに,①追加対策によるコスト負担の増加,②設計基準を超えた状態が発生する可能性があることを認めることによる設置許可の取消しや長期運転停止の事態,③対策を実施することによる負担増等への懸念から,調査姿勢が消極的であったことなどの問題があったと,一審被告東電自らが本件 る可能性があることを認めることによる設置許可の取消しや長期運転停止の事態,③対策を実施することによる負担増等への懸念から,調査姿勢が消極的であったことなどの問題があったと,一審被告東電自らが本件事故後の「福島原子力事故の総括および原子力安全改革プラン」(甲B17,以下「一審被告東電総括書」という。)において指摘している。 (甲B17・13頁,甲B294,乙B175,429~435,437,証人f①38頁,証人f②42,56~59頁,弁論の全趣旨)台・馬鞍山原発外部電源喪失事故(2001年)台湾の馬鞍山原子力発電所で,2001年(平成13年)3月18日,海からの濃霧等に起因した送電線絶縁劣化により2回線が停止するという外部電源喪失事故が発生した。さらに,非常用DGが2台起動失敗するという事象も重なったが,残った直流電源により 炉心冷却をしながら,共有できるDGを停止した系統につなぎ,2時間で復旧した。 一審被告東電は,上記事故につき,「適切に点検・保守管理を行っていることから,同様の事態が発生する可能性は極めて小さく,また発生しても早期に対応可能」として検討を終了した。 原子力安全委員会及び保安院は,一審被告東電に対し,超高圧送電線の塩害,遮断機の絶縁劣化や非常用DGの励磁制御回路の故障など維持管理等の課題を踏まえ,検討・確認の指示をしたところ,一審被告東電は,上記のように適切に点検・保守管理を行っていることを確認したと報告し,これが了承されたため,更に検討を深めることをしなかった。 一審被告東電による馬鞍山原発外部電源喪失事故に対する対応については,ルブレイエ原発溢水事故に対する対応と同様,事故が生じた原因のみに着目し,全交流電源喪失が発生した場合の影響や,採られた対策等に着目しなかったと る馬鞍山原発外部電源喪失事故に対する対応については,ルブレイエ原発溢水事故に対する対応と同様,事故が生じた原因のみに着目し,全交流電源喪失が発生した場合の影響や,採られた対策等に着目しなかったという問題点があり,調査姿勢が消極的になった要因も,ルブレイエ原発溢水事故に関して指摘した点と同様のことが考えられると,一審被告東電自らが本件事故後一審被告東電総括書において指摘している。 (甲B17,乙B437)印・マドラス原発溢水事故(2004年)インドのマドラス原子力発電所は,2004年(平成16年)12月26日,スマトラ島沖地震によって発生した津波によって海水ポンプが浸水した。海水ポンプを除いてはプラント被害がなく,INESレベル0とされた。 一審被告東電によるマドラス原発溢水事故に対する対応については,その被害の程度が低かったため注目せず検討の対象としなかっ たこと,当時「原子力発電所の津波評価技術」による津波高さの評価結果が十分保守性を有していると考えていたため直ちに対策を実施せず,長期的な対応としてポンプ・モーターの水密化の検討に取り組んでいたのみであったことなどの問題があった,本来は,上記事故については海水ポンプの機能喪失という原因のみへの対策ではなく,最終ヒートシンクの喪失という結果への対策という観点から着目すべき事故であったと,一審被告東電自らが本件事故後一審被告東電総括書において指摘している。 (甲B17,乙B436,437)本件事故後の一審被告東電による振返り一審被告東電は,平成28年,福島第一原発とは別の原発の審査資料として配布した「根本原因分析図」と題するチャート図においの自身の取扱いについて,一審被告東電総括書における前示の指摘に加えて,以下のとおり問題点を整理した。 年,福島第一原発とは別の原発の審査資料として配布した「根本原因分析図」と題するチャート図においの自身の取扱いについて,一審被告東電総括書における前示の指摘に加えて,以下のとおり問題点を整理した。 ルブレイエ原発溢水事故及び馬鞍山原発外部電源喪失事故については,日本では長時間のSBOが発生する確率が十分に低いという安全審査指針の考えに固執していたことに加えて,規制当局の判断に満足していた結果,自ら課題を設定し,解決するという安全意識,技術力が不足していたこと,調査姿勢が消極的だった要因としては,発生原因の分析を重視し有効な対策等に関する結果を踏まえた検討が弱いことや,海外設備は設備故障率が高く,日本の設備の方が優れているとの思い込みがあったことなども挙げられること,マドラス原発溢水事故については,そもそも検討対象として扱わなかった原因として,結果が重大ではなかったことに加えて,担当者の調査件数が多く(年間1000~1500件),作業が滞りがちであり, 十分な検討に至らなかったというマンパワー不足の問題や,内的事象に比べて外的事象に対して深い検討ができておらず,情報の検討手順が教訓を拾い上げにくいプロセスであったという問題も挙げられることなどが指摘できるとして,結局,根源的には,原子力では継続的に安全性を高めることが重要であるとの認識が不足しており重要な経営課題と設定しマネジメントされることがなかったのではないか,と総括されている。 (甲B17,乙B437) 3 本件事故前における各国の原子力発電所における水密化アメリカのブラウンズフェリー原子力発電所やスイスのミューレブルク原子力発電所では,主要建屋や重要機器室の水密化が本件事故前から実施されていた。 4 溢水勉強会溢水勉強会に係る事実については,お メリカのブラウンズフェリー原子力発電所やスイスのミューレブルク原子力発電所では,主要建屋や重要機器室の水密化が本件事故前から実施されていた。 4 溢水勉強会溢水勉強会に係る事実については,おおむね原判決第3章第3の4あり,当裁判所において追加・補正した上で,以下のとおり認定する。 概要 心が高まり,おおむね以下の経緯により溢水勉強会が設置された。 保安院は,平成17年12月14日,一審被告東電の津波ハザード,建屋フラジリティ及びシステム解析の各担当者を呼び,JNES(独立行政法人原子力安全基盤機構)の担当者同席の下,津波評価技術に関して打合せを行った。保安院及びJNESは,一審被告東電担当者に対し,津波によって施設内のポンプ等が浸水した場合にどういう事態になるのか,何か対策をしておくべきなのかに関する説明ができないことについて,保安院上層部は不安感を抱いてい るため,この点を早急に検討したいと考えている旨説明した。これに対し,一審被告東電は,現在,電力共通研究として,津波PSA手法(津波ハザード,建屋フラジリティ及びシステム解析)の整備を進めており,平成20年度までに研究結果をまとめる予定である,この手法を採らずに浸水した場合の事態を想定してシステム解析することはある程度の期間で可能だが,そのような事態になり得る可能性を合わせて評価しなければ対策計画等の判断基準にはならないのではないか,と消極的な反応を示したものの,保安院から,津波PSA手法とは別に,当面の対象として福島第一原発及び福島第二原発を例に取って,設計波高を超えた場合に施設がどうなるのか,その脆弱性を概算で良いので把握したい,保安院,JNES及び電気事業者で集まり,定期的な状況報告会を開いてはどうか,平成18年6月までに保安院内部で進 て,設計波高を超えた場合に施設がどうなるのか,その脆弱性を概算で良いので把握したい,保安院,JNES及び電気事業者で集まり,定期的な状況報告会を開いてはどうか,平成18年6月までに保安院内部で進捗報告できるものをまとめてもらいたいなどと更に伝え,JNESと電気事業者とで連絡を取り合って検討を進めることとされた(乙B412)。 その結果,保安院とJNESは,両者が主体で,電気事業者(一審被告東電を含む。),電事連,原子力技術協会及びメーカーがオブザーバーで参加する形で,「内部溢水,外部溢水勉強会」(溢水勉強会)を発足させることとなり,平成18年1月30日,第1回が開かれ,平成19年3月まで,合計10回にわたる議論を経て,平成19年4月,「溢水勉強会の調査結果について」を取りまとめた。 平成18年5月11日第3回溢水勉強会平成18年5月11日の第3回溢水勉強会において,一審被告東電は,代表プラントとして選定された福島第一原発5号機について,O.P.+14m(5号機の敷地高さO.P.+13.0m+1m)及びO.P.+10m(上記仮定水位O.P.+14mと設計水位 O.P.+5.6mの中間)の津波を仮定し,仮定水位の継続時間は考慮しないで(無限時間継続するものと仮定して)機器影響評価を行ったところ,①O.P.+10m,O.P.+14mの両ケース共に非常用海水ポンプ(敷地レベルよりも低い取水エリアレベル(O. P.+4mの屋外に設置)が津波により使用不能な状態となること,②津波水位O.P.+10mの場合には建屋への浸水はないと考えられることから,建屋内の機器への影響はないが,津波水位O.P. +14mの場合は,タービン建屋大物搬入口,サービス建屋入口から流入すると仮定した場合,タービン建屋の各エリアに浸水し,電源 いと考えられることから,建屋内の機器への影響はないが,津波水位O.P. +14mの場合は,タービン建屋大物搬入口,サービス建屋入口から流入すると仮定した場合,タービン建屋の各エリアに浸水し,電源設備の機能を喪失する可能性があること,③津波水位O.P.+14mのケースでは,浸水による電源の喪失に伴い,原子炉安全停止に関わる電動機,弁等の動的機器が機能を喪失すること,が確認された(甲B11の1,乙B253)。 平成18年5月25日第4回溢水勉強会及びマイアミ論文平成18年5月25日の第4回溢水勉強会において,一審被告東電は,「確率論的津波ハザード解析による試計算について」を報告した。 一審被告東電のbほか4人は,平成18年7月17日から同月20日まで米国フロリダ州マイアミで開催された第14回原子力工学国際会議(ICONE-14)において,上記の第4回溢水勉強会での報告を発展させた「日本における確率論的津波ハザード解析法の開発」(マイアミ論文)を発表した。 マイアミ論文は,既往津波が確認されていない「JTT2」と呼ばれる領域(福島県沖日本海溝沿い領域はここに含まれる。)においても津波地震が発生するという仮定(そこでは,JTT系列はいずれも似通った沈み込み状態に沿って位置しているため,日本海溝沿 いの全てのJTT系列において津波地震が発生すると仮定しても良いのかもしれない,とされている。)と,既往津波のあるJTT1(1896年明治三陸津波),JTT3(1677年延宝房総沖津波)でのみ発生するという仮定(そこでは,JTT2では既往津波が確認されていないことから,津波地震はJTT1とJTT3のみで発生すると仮定しても良いのかもしれない,とされている。)の双方をロジックツリーで考慮し,確率論的津波ハザード解析( TT2では既往津波が確認されていないことから,津波地震はJTT1とJTT3のみで発生すると仮定しても良いのかもしれない,とされている。)の双方をロジックツリーで考慮し,確率論的津波ハザード解析(PTHA)の手法を適用し,例として用いる福島の地点における津波ハザード曲線を評価したところ,不確かさ0.05,0.50では,「長期:近地(東北地方沿岸の主に大津波を起こした歴史的な大地震の断層モデルから区分したJTT系列,JTNR系列,JTS1,JTN2及びJTN3を波源域として考慮。以下同じ。)+遠地(環太平洋の遠地のうち,津波発生時に東北地方沿岸での影響が顕著な地点を区分した,南アメリカ大陸の西海岸の3つの波源域。以下同じ。)」,「長期:近地」及び「長期:遠地」のいずれにおいても津波高さ10.0mの津波の確率は1.0E-07(1000万年に1度)に達せず,不確かさ0.95では,「長期:近地+遠地」及び「長期:近地」でいずれも津波高さ10.0mを超える津波の確率は,1.0E-04(1万年に1度)と1.0E-05(10万年に1度)のほぼ中間,不確かさの平均(全ハザード曲線の期待値)では,「長期:近地+遠地」及び「長期:近地」でいずれも津波高さ10.0mを超える津波の確率は,1.0E-05(10万年に1度)と1.0E-06(100万年に1度)の間でやや前者寄りであった。また,長期の確率レベルと今後50年の確率レベルは,今回例として用いた地点においてはほぼ等しかった。なお,津波高さの中央値は,いずれの場合も5mを超えていない。(甲B10の2) 上記のマイアミ論文の津波ハザード評価の地点は福島第一原発1~4号機のものではないところ,前記b作成に係る平成29年1月付けの意見書によれば,福島第一原発1~4号機における津波ハザ 上記のマイアミ論文の津波ハザード評価の地点は福島第一原発1~4号機のものではないところ,前記b作成に係る平成29年1月付けの意見書によれば,福島第一原発1~4号機における津波ハザード曲線(波源をどこに置いたかは不明である。)によれば,不確かさの平均で,津波高さO.P.+10.0mを超える津波の確率は,1~4号機でいずれも1.0E-05(10万年に1度)と1.0E-06(100万年に1度)の間であるが,前者にほぼ近い数値である。(丙B71)なお,マイアミ論文のロジックツリーの重み設定は,地震・津波の専門家でない土木学会委員・幹事の意見も多く含んで設定されたものであった。 平成19年4月調査結果報告書最終的に平成19年4月に取りまとめられた「溢水勉強会の調査結果について」(甲B11の2)においては,検討事項として,実用発電用原子炉については,設置許可段階では溢水に関する設計基準として安全設計審査指針及び技術基準に規定があるが(もっとも,溢水に対する規制要求を明確化するため,技術基準の該当条項(第8条)に機能要求事項の規定を追加することが必要。),設置許可に続く後段規制(工事計画認可及び使用前検査,保安規定認可,保安検査,定期検査)には規定がないため,溢水に関する安全規制をどの規制手段に当てはめるか,技術基準の解釈(審査基準)及び規制要求として民間規格(溢水対策設計指針)の整備等が必要であるとされた。 そして,耐震設計審査指針の改訂に伴い地震随伴事象として津波評価を行うことから,外部溢水に係る津波の対応は耐震バックチェックに委ねることとしつつ,溢水に対する規制について,保安院, JNES及びオブザーバーとして電気事業者等からなる溢水ワーキングチームを立ち上げ,平成19年4月以降,要 震バックチェックに委ねることとしつつ,溢水に対する規制について,保安院, JNES及びオブザーバーとして電気事業者等からなる溢水ワーキングチームを立ち上げ,平成19年4月以降,要検討事項とされた上記の技術基準解釈案の作成,後段規制の在り方検討,民間規格案作成等について引き続き検討することとされた。 (甲B11の2) 5 衆議院における質疑6行目)までのとおりであり,当裁判所において追加・補正した上で,以下のとおり認定する。 平成18年3月1日の第164回国会衆議院予算委員会第7分科会において,吉井英勝衆議院議員(日本共産党)は,津波のうち,押し波による被害だけではなく,引き波による被害にも注目すべきである,福島第一原発では,基準水面から4m水位が下がると冷却水を取水することができなくなる事態が想定されるのではないか,大規模地震や津波の影響によって冷却ポンプの機能が失われれば崩壊熱が除去できなくなり,炉心溶融,水蒸気爆発,水素爆発といったチェルノブイリ原発事故に近い最悪の事態を想定して対策を採る必要があるのではないか等の趣旨の質問を行った。 また,平成18年10月27日の第165回国会衆議院内閣委員会において,同議員は,原子力安全委員会委員長に対し,日本の原発の約6割が,内部電源についてバックアップ電源の系列が2系列しかないところ,仮に内部電源に事故が発生した場合,ディーゼル発電機等が働かなくなり機器冷却系等が機能しなくなったら崩壊熱除去ができなくなる旨を指摘した上,このような事態についての審査状況等について質問を行った。(甲B138) 6 本件事故後の国内の原発における水密化 本件事故後には,柏崎刈羽原子力発電所,福島第二原発,大飯原子力発電所,東海第二原子力発電所,浜岡原子力 て質問を行った。(甲B138) 6 本件事故後の国内の原発における水密化 本件事故後には,柏崎刈羽原子力発電所,福島第二原発,大飯原子力発電所,東海第二原子力発電所,浜岡原子力発電所等の原子力発電所で,主要建屋や重要機器室の水密化が津波対策として実施されている。 第3節一審被告東電の損害賠償責任第1 一般不法行為に基づく請求の可否について 1 当裁判所の判断当裁判所も,原判決と同様に,本件事故による損害について,民法709条に基づく一般不法行為による損害賠償を求める一審原告の主位的請求は理由がないと判断する。その理由は,後記2のとおり当審における一審原告らの主張に対する判断を加えるほかは,原判決第3章第4の1(144頁2行目~145頁24行目)のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における一審原告らの主張に対する判断一審原告らは,原賠法3条1項に基づく損害賠償請求権と一般不法行為法に基づく損害賠償請求権は,請求権が競合しているにすぎないのだから,どちらの請求権に基づき損害賠償請求するかは被害者の選択に委ねられているとする。そして,仮に被害者が一般不法行為法に基づき損害賠償請求を行ったとしても,原子力事業者には原賠法3条1項に基づく損害賠償責任も発生しているのであるから,当該損害について軽過失しかない第三者に求償することは原賠法5条に基づき許されないと解すべきであり,これが可能となってしまう不都合はない旨主張する。 しかしながら,原賠法5条1項は,「(原賠法)第3条の場合」において,「(原賠法3条の)規定により損害を賠償した原子力事業者は」故意により損害を生じさせた自然人に対して求償権を有すると規定し ているのであるから,一般不法行為法に基づき損害を賠償した原子力事業者 条の)規定により損害を賠償した原子力事業者は」故意により損害を生じさせた自然人に対して求償権を有すると規定し ているのであるから,一般不法行為法に基づき損害を賠償した原子力事業者には適用がなく,その場合は軽過失しかない第三者に求償できることになると読むのが自然な解釈であって,一審原告らの上記主張は失当である。 また,一審原告らは,「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効の特例に関する法律」(平成25年12月11日法律第97号,以下「時効特例法」という。)が対象とする「特定原子力損害」が原賠法3条1項の規定により賠償責任を負う損害を指していることは明らかであるとしつつも,上記の請求権競合の考え方からすれば,一般不法行為法に基づく損害賠償請求権にも時効特例法は適用されると主張するが,同法の文言からは無理のある解釈といわざるを得ない。 一審原告らは,さらに,一般不法行為法に基づいて損害賠償金を支払った加害者が自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)15条に基づく加害者請求をすることができるとされていることや,独占禁止法25条において違反行為者の無過失責任が定められているのに一般不法行為法に基づく損害賠償請求も認められていること(最高裁昭和47年11月16日判決・民集26巻9号157頁)などは,一般不法行為法による損害賠償請求権は私人に当然に付与され,明文の規定なしにその権利を奪うべきではないという私法上の大原則に基づくものであるから,原賠法3条1項の場合も上記各法律と同様に解すべきであると主張する。 しかしながら,一審原告らが参照すべきものとして挙げている自賠法15条に基づく加害者請求は,元々,生命 に基づくものであるから,原賠法3条1項の場合も上記各法律と同様に解すべきであると主張する。 しかしながら,一審原告らが参照すべきものとして挙げている自賠法15条に基づく加害者請求は,元々,生命又は身体を害した場合に限定して認められている自賠法3条による支払をした場合に限られず, 一般不法行為法に基づく損害賠償請求に対して支払をした場合も含めて加害者請求することができることとされている。また,独占禁止法25条による特別な損害賠償請求の制度は,同法による禁止事項の全てに関して設けられているものではないことから,同条に掲げられた禁止事項以外の事項に違反した場合の一般不法行為法に基づく損害賠償請求を排除していない。したがって,上記各法律は,いずれも,一般不法行為法に基づく損害賠償請求をする場面が当然に予定されているといえるのに対し,原賠法の原子力損害賠償責任に係る規定は,原子力事業者にその1次的な賠償責任(無過失責任)を集中させ(3条,4条1項),第三者への求償を制限するなどし(5条),時効特例法も原賠法のみを想定した文言で規定するなどしており,これらの規定を通覧すれば,原賠法は,「原子炉の運転等の際,当該原子炉の運転等により原子力損害を与えた」(3条1項)場合については全て同法へ取り込み,一般不法行為法に基づく損害賠償請求をする場面は全く予定していないと解するのが相当である。 したがって,原賠法3条1項は,一般不法行為法の特則であって,同項が適用される場合には,民法上の不法行為責任の規定は排除されると解するのが相当であるから,一審原告らの主張は理由がない。 もっとも,本訴において,一審原告らは,本件事故は一審被告東電の重大な過失ないし強い非難に値する過失により発生したものであり,そのことは慰謝料の算定に際して十分 ら,一審原告らの主張は理由がない。 もっとも,本訴において,一審原告らは,本件事故は一審被告東電の重大な過失ないし強い非難に値する過失により発生したものであり,そのことは慰謝料の算定に際して十分に考慮されるべきであると主張している上,一審被告国の責任原因として一審原告らが主張している一審被告国の規制権限不行使の違法性を判断するためには,その前提として,一審被告東電に予見義務違反に裏付けられた結果予見可能性及び結果回避可能性を前提とする結果回避義務違反(以下「一審被告 東電の義務違反」という。)があったために本件事故が発生したといえるかどうかが問題となると解される。 したがって,以下では,一審被告東電の義務違反について判断した上で(後記第2),その判断を前提として,一審被告国の国賠法上の責任(後記第4節)及び損害論(後記第5節及び第6節)について判断することとする。 第2 一審被告東電の義務違反 1 総論一審被告東電は,本件事故の一連の経緯により,福島第一原発から放射性物質を大量に大気中に放出させ,放射性物質による汚染水も大量に海洋に放出させたことにより(前記第2章第2節第3の7),後記第6節に認定した一審原告らの損害を発生させているため,「原子炉の運転等の際,当該原子炉の運転等により原子力損害を与えた」というべきであるから,一審原告らに対し,原賠法3条1項の責任を負っている(なお,本件津波は,同項ただし書の「異常に巨大な天変地異」には到底当たらない。)。 もっとも,上記第1のとおり,本訴においては,一審被告東電の義務違反の有無及びその程度を判断する必要があるため,以下,検討することとする。 2 一審被告東電の負っていた義務本件事故当時の一審被告東電に対する規制法令の概要ア原子力基本法本 の義務違反の有無及びその程度を判断する必要があるため,以下,検討することとする。 2 一審被告東電の負っていた義務本件事故当時の一審被告東電に対する規制法令の概要ア原子力基本法本件事故以前,原子力基本法(平成16年法律第155号による改正前の昭和30年法律第186号及び平成24年法律第47号による改正前の昭和30年法律第186号)は,「原子力の研究,開発及び利用を推進することによつて,将来におけるエネルギー 資源を確保し,学術の進歩と産業の振興とを図り,もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与すること」を目的として(1条),「原子力の研究,開発及び利用は,平和の目的に限り,安全の確保を旨として,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとする」(2条)という原子力利用の基本方針を定めていた。 本件事故後,平成24年法律第47号による改正により,2条2項に「前項の安全の確保については,確立された国際的な基準を踏まえ,国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として,行うものとする。」とする規定が追加されたが,上記改正前においても,原子力の利用は「安全の確保」を旨として行うこととされていた以上,国民の生命,健康及び財産の保護は当然に同法の目的とされ,我が国における原子力政策の基本とされていたものといえる。 イ炉規法本件事故以前,原子力発電所の設置については,炉規法(「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」。平成14年法律第178号による改正前の昭和32年法律第166号,平成18年法律第50号による改正前の昭和32年法律第166号及び平成23年法律第74号による改正前の昭和32年法 制に関する法律」。平成14年法律第178号による改正前の昭和32年法律第166号,平成18年法律第50号による改正前の昭和32年法律第166号及び平成23年法律第74号による改正前の昭和32年法律第166号)が,「原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)の精神にのつとり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ,かつ,これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに,これらによる災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制 等を行うほか,原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために,国際規制物資の使用等に関する必要な規制等を行うこと」を目的として(1条。なお,平成19年法律第84号による改正以後は「規制等」が「規制」と改められた。),実用発電用原子炉の設置には経済産業大臣の許可を必要とすること(23条1項1号),経済産業大臣は,実用発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質,核燃料物質によって汚染された物又は同原子炉による災害の防止上支障がないものであることが認められるときでなければ,上記許可をしてはならないこと(24条1項4号),実用発電用原子炉設置者は,保安規定を定め,同原子炉の運転開始前に,経済産業大臣の認可を受けなければならず(37条1項),経済産業大臣は,保安規定が核燃料物質,核燃料物質によって汚染された物又は同原子炉による災害の防止上十分でないと認めるときは,上記認可をしてはならないこと(同条2項)などを定めていた。 本件事故後,平成25年法律第82号による改正により,炉規法の目的が「原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質 めるときは,上記認可をしてはならないこと(同条2項)などを定めていた。 本件事故後,平成25年法律第82号による改正により,炉規法の目的が「原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常な水準で当該原子力施設を設置する工場又は事業所の外へ放出されることその他の核原料物質,核燃料物質及び原子炉による災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関し,大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うほか,原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために,国際規制物資の使用等に関する必要な規制を行い,もつて国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が 国の安全保障に資することを目的とする」(1条)ものであることが明確にされているが,上記改正前においても,原子力災害を防止して「公共の安全を図る」こと,すなわち国民の生命,健康及び財産の保護を図ることは当然に炉規法の目的とされていたものといえる。 ウ電気事業法設置許可がなされた後における電気事業の用に供する原子力発電所の運転については,本件事故当時まで,炉規法(平成25年法律第82号による改正前のもの)73条により同法27条から29条までの適用が除外され,電気事業法(平成24年法律第47号による改正前の昭和39年法律第170号)による規制が行われていた。 電気事業法は,「電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて,電気の使用者の利益を保護し,及び電気事業の健全な発達を図るとともに,電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによつて,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ること」を目的として とによつて,電気の使用者の利益を保護し,及び電気事業の健全な発達を図るとともに,電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによつて,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ること」を目的として(1条),①事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物を経済産業省令(後記省令62号)で定める技術基準に適合するように維持しなければならないこと(39条1項),その技術基準を定める経済産業省令においては,事業用電気工作物は,人体に危害を及ぼし,又は物件に損傷を与えないようにすること(同条2項1号),②経済産業大臣は,事業用電気工作物が同条1項の経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは,事業用電気工作物を設置する者に対し,その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し,改造し,若しくは移転し,若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ, 又はその使用を制限することができること(技術基準適合命令,40条),③経済産業大臣は,事業用電気工作物の設置又は変更の工事に係る認可,同工事終了後使用前の検査,輸入した核燃料物質の検査,発電用ボイラー等公共の安全の確保上特に重要なものについての定期検査等を実施し(47条1項及び2項,49条1項,50条の2第3項,51条1項及び3項,52条3項,54条1項並びに55条4項),四半期ごとにその実施状況等を原子力安全委員会に報告し,必要があると認めるときは,その意見を聴いて,原子力発電工作物に係る保安の確保のために必要な措置を講ずること(107条の3,ただし,平成14年法律第178号による改正後),④経済産業大臣は,技術基準適合命令を発するために必要な限度において,政令で定めるところにより,原子力を原動力とする発電用の電気工作物(原子力発電工作物)を設置する者に 第178号による改正後),④経済産業大臣は,技術基準適合命令を発するために必要な限度において,政令で定めるところにより,原子力を原動力とする発電用の電気工作物(原子力発電工作物)を設置する者に対し,同原子力発電工作物の保安に係る業務の状況に関し報告又は資料の提出をさせたり,経済産業省の職員をして,原子力発電工作物を設置する者等の事業場に立ち入り,原子力発電工作物等の物件を検査させたりすることができること(106条,107条),⑤技術基準適合命令等に違反した者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科すること(116条2号),その場合,法人には3億円以下の罰金に処すること(121条1号,ただし,平成14年法律第178号による改正前は,技術基準適合命令等に違反した者は,300万円以下の罰金(118条7号,法人にも罰金(121条)))などを定めていた。 本件事故後,平成25年法律第82号による改正により,炉規法の73条(適用除外規定)が削除される代わりに,同法内に新 たに発電用原子炉の設置,運転等に関する規制に係る規定が設けられ(第四章第二節),従前電気事業法によって定められていた上記規制のうち,①(技術基準適合維持義務)は炉規法43条の3の14に(ただし,経済産業省令ではなく原子力規制委員会規則(後記平成25年原子力規制委員会規則第6号「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」)で定める技術基準とされた。),②(技術基準適合命令)は同法43条の3の23第1項に(ただし,経済産業大臣ではなく原子力規制委員会の権限とされた上で,「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子 大臣ではなく原子力規制委員会の権限とされた上で,「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」との基本設計に係る安全性について定めた設置許可基準(同法43条の3の6第1項4号)に適合していないと認めるときにも発電用原子炉の使用停止,改造,修理又は移転等の命令を発することができることとされた。),③(認可,定期検査等の実施及び原子力安全委員会への報告等)は同法43条の3の9等に(ただし,認可,定期検査等は経済産業大臣ではなく原子力規制委員会の権限とされた。),④(報告徴収,立入検査等)は同法67条,68条に,⑤(罰則)は同法78条8号の2に(ただし,1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又は併科,法人にも罰金(81条2号)。),それぞれおおむね同様の内容で引き継がれた。 したがって,福島第一原発のような発電用原子炉については,本件事故の前後(平成25年法律第82号による炉規法改正の前後)を通じて,原子力基本法や炉規法が目的として掲げる国民の生命,健康及び財産の保護を図るために,経済産業大臣(上記改 正後は原子力規制委員会)に対し大きな権限を与えて,国民の生命,健康及び財産に対し危害が及ぶことなどがないように厳重に規制するという法的構造であったといえる。 エ省令62号本件事故以前,電気事業法39条1項による委任に基づき,省令62号(昭和40年通商産業省令第62号「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」)4条1項は,技術基準として,平成14年頃においては,「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が 号「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」)4条1項は,技術基準として,平成14年頃においては,「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が地すべり,断層,なだれ,洪水,津波又は高潮,基礎地盤の不同沈下等により損傷を受けるおそれがある場合は,防護施設の設置,基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない。」と(平成15年経済産業省令第102号による改正前),平成18年頃においては,「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が想定される自然現象(地すべり,断層,なだれ,洪水,津波,高潮,基礎地盤の不同沈下等をいう。ただし,地震を除く。)により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合は,防護措置,基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない。」と(平成20年経済産業省令第12号による改正前)定めており,いずれも,発電用原子炉を含む事業用電気工作物について,津波等による損傷によって安全性を損なうことがない技術基準を設定していた。なお,同項の「適切な措置を講じなければならない」とは,供用中における運転管理等の運用上の措置を含むと解釈することとされ,同条は,耐震性の要求は別途されるとして,想定される自然災害又は外部からの人為的災害により原子炉の安全性を損なうおそれのある場合に,適 切な措置を講ずることを求めたものであると解説されていた(甲A6)。 本件事故後,平成23年経済産業省令第53号による改正により,同省令5条の2に「津波による損傷の防止」として,「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が,想定される津波により原子炉の安全性を損なわないよう,防護措置 令5条の2に「津波による損傷の防止」として,「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が,想定される津波により原子炉の安全性を損なわないよう,防護措置その他の適切な措置を講じなければならない。」及び「津波によって交流電源を供給する全ての設備,海水を使用して原子炉施設を冷却する全ての設備及び使用済燃料貯蔵槽を冷却する全ての設備の機能が喪失した場合においても直ちにその機能を復旧できるよう,その機能を代替する設備の確保その他の適切な措置を講じなければならない。」との基準が追加されるなどし,さらに,平成25年6月28日には,津波による損傷の防止のための基準も含んだ技術基準規則(平成25年原子力規制委員会規則第6号「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」)が制定され,前記の平成25年法律第82号による炉規法改正により,以後は,発電用原子炉に適用すべき技術基準の内容は同規則に引き継がれることとなった。 したがって,本件事故の前後を通じて,発電用原子炉について適用されるべき技術基準には,供用中も含めて,津波による損傷を防止する措置を講じるべきことを定めていたといえる。 原子力発電所の有する危険性福島第一原発の採用していた軽水炉は,核分裂の過程において熱エネルギーを放出するウラン235等の核燃料物質を燃料として使用する装置であり(前記第2章第2節第2の2),その稼働により, を発生させるものであって,原子力発電所の安全性が確保されず,ひとたび設備の損傷等により事故が発生すると,人体等に有害な放射性物質が発電所の内外に漏出して,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼすとともに,周辺の環境を放射能によって汚染し,避難等に伴って住民 発生すると,人体等に有害な放射性物質が発電所の内外に漏出して,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼすとともに,周辺の環境を放射能によって汚染し,避難等に伴って住民の生活やコミュニティを破壊するのであり,さらに,放射性物質が極めて長期にわたって漏出した場所に残存することから,生活やコミュニティの再構築を著しく困難にさせるといった,深刻な災害を引き起こすおそれがあるものである。 一審被告東電の義務内容 等を踏まえ,原子力発電所が引き起こすおそれのある重大な事故及びそれによる深刻な災害を万が一にも起こさないようにするためのものであると解されることなどからすれば,原子力事業者である一審被告東電は,福島第一原発を設置,稼働するに当たり,少なくとも,同原発周辺に居住しその事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民との間で,原子力発電所による重大な事故及びそれによる深刻な災害を起こして,当該住民の生命・身体,財産,平穏に生活する権利等を侵害しないようにするべく,原子力発電所の安全性を維持する義務を負っていたというべきである。(最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁[伊方原発訴訟],最高裁判所平成4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁[もんじゅH4訴訟]) 3 津波に対する予見義務 平成14年当時の省令62号4条1項にいう「津波… により損傷を受けるおそれがある」の意義は,設置許可基準である平成13年安全設計審査指針の指針2第2項「安全機能を有する構築物,系統及び機器は,地震以外の想定される自然現象によって原子炉施設の安全性が損なわれない設計であること。重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び 査指針の指針2第2項「安全機能を有する構築物,系統及び機器は,地震以外の想定される自然現象によって原子炉施設の安全性が損なわれない設計であること。重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び機器は,予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件,又は自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を想定した設計であること。」と整合的に解釈されていた。そして,この「自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」とは,「対象となる自然現象に対応して,過去の記録の信頼性を考慮の上,少なくともこれを下回らない苛酷なものであって,かつ,統計的に妥当とみなされるもの」をいうと解釈されていた。 上記のような平成13年安全設計審査指針の指針2の解釈は,省令62号4条1項にいう「津波… により損傷を受けるおそれがある」の解釈としても妥当なものとして是認できるところ,上記解釈によっても,「予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」として想定すべき津波は,既往最大の津波に限られるものではなく,合理的な根拠に基づいて「予想」され,「統計的に妥当とみなされる」津波であれば,既往最大の津波を超える規模の津波であっても「予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」の津波として安全対策が要求されていたものということができる(「少なくともこれを下回らない」との文言も,想定津波が既往最大の津波よりも大きくなり得ることを前提とした文言といえる。)。 したがって,一審被告東電は,「津波により損傷を受けるおそれがある」福島第一原発について,津波に関する科学的知見を継続的に収集し,「予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」として合 理的に想定される津波については,これを予見すべき義務があったというべきである。 4 予見可能性の対象 に収集し,「予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」として合 理的に想定される津波については,これを予見すべき義務があったというべきである。 4 予見可能性の対象一審原告らは,本件において一審被告らの責任を判断する際の予見可能性の対象としては,福島第一原発1~4号機の主要建屋の敷地高さ(O.P.+10m)を超える津波(以下,単に「O.P.+10mを超える津波」ともいう。)の到来という事象で足りると主張するのに対し,一審被告らは,本件津波と同程度の津波の到来についての予見可能性が必要であると主張する。 しかし,本件事故は,前示のとおり,本件津波が,1~4号機の主要建屋敷地高さ(O.P.+10m)を超えて遡上し,1~4号機海側エリア及び主要建屋設置エリアがほぼ全域冠水するなどしたことにより,1~4号機全てにおいて全電源喪失に陥ったというものであるところ(前記第2章第2節第3),予見可能性は,結果回避措置を採ることを法的に求める前提となるものであるから,予見可能性の対象は,このような1~4号機について全電源喪失を招くような津波というべきである。しかるに,前示のとおり1~4号機の主要建屋の敷地高(O. P.+10m),非常用海水ポンプの設置場所(O.P.+4mの屋外),及び配電盤の設置場所(O.P.-0.3m~+10.2m)(前記第2章第2節第2の3)に加え,一審被告東電自身も主張するとおり,当時は外部溢水対策として,ドライサイトの維持が基本的な考え方であったため,津波がO.P.+10mを超えて福島第一原発の敷地内に浸水した場合に備えた水密化等の対策は採られていなかったことなどによれば,福島第一原発に到来する津波がO.P.+10mさえ超えれば,1~4号機について全電源喪失に至る現実的危険性があったし,一 に浸水した場合に備えた水密化等の対策は採られていなかったことなどによれば,福島第一原発に到来する津波がO.P.+10mさえ超えれば,1~4号機について全電源喪失に至る現実的危険性があったし,一審被告東電はそのことを当然に知り得る立場にあったといえる(前 記から,一審被告東電としては,O.P.+10mを超える津波の到来を予見できた場合には,そのような津波が到来しても全電源喪失に至らないような結果回避措置を採るべき法的義務があったというべきである。 したがって,一審被告東電の義務違反を判断する際の予見可能性の対象は,O.P.+10mを超える津波の到来というべきである。 5 一審被告東電の予見可能性前記認定事実(前記第2節)によれば,一審被告東電は,以下の理由により,遅くとも,「長期評価」が公表された平成14年7月31日から相当の期間を経た平成14年末頃までには,O.P.+10mを超える津波の到来を予見することが可能であったというべきである。 「長期評価」が公表された平成14年までには,以下のとおり,津波や,津波地震に係る知見が積み重ねられていた。①プレート間地震による津波は,近代的観測が可能になった以降に限っても,明治三陸地震(1896年),アリューシャン地震(1946年),ニカラグア地震(1992年),ジャワ地震(1994年),ペルー地震(1996年)等が挙げられるところ,東日本に沿うように伸びている日本海溝は,津波地震となる可能性が高いプレート間地震及びプレート内地震(とりわけ巨大地震となり得る正断層地震)が断続的に起きる場所であることが知られていた。②多くの地震学者が「比較沈み込み学」仮説に賛同し,1億2000万年よりも古い海のプレートである太平洋プレートが沈み込んでいるマリアナ海溝などは固着が弱い分 的に起きる場所であることが知られていた。②多くの地震学者が「比較沈み込み学」仮説に賛同し,1億2000万年よりも古い海のプレートである太平洋プレートが沈み込んでいるマリアナ海溝などは固着が弱い分大規模地震が発生しにくいとされ,日本海溝沿いの領域全般について,M9クラスの地震が起こり得るとは考えられておらず,さらに,「比較沈み込み学」を更に進展させたアスペリティモデルの考え方によれば,日本海溝沿い領域のうち,北の宮城沖に比べて福島沖では固着が弱く,大 きな地震は起きないと考えられていたものの,福島県沖海溝沿い領域でM8クラスの津波地震が起きるかどうかについては,福島県沖海溝沿い領域を含む三陸沖北部から房総沖の海溝寄り領域のどこでも起こり得るという考えと,既往地震のあった特定領域でしか起こらないという考えの両説があった状況であり,前者の説が「比較沈み込み学」に反するとは考えられていなかった。③土木学会は,平成14年2月の「津波評価技術」において,「地震は過去に発生したものが繰り返すものであり,過去に発生しなかった地震は将来にも起こらない」とする考え方を採用し,基本的には既往津波の痕跡高を説明できる基準断層モデルを基準とした結果,福島県沖日本海溝沿い領域には波源の設定領域を設けなかったのであるが,本来,ここでいう「過去に発生したもの」というのは,繰り返し間隔が非常に長いこともあるので少なくとも数百年のスパンで考える必要があり,福島県沖海溝沿い領域で津波地震が起きていないというのは東北地方の地震・津波が歴史記録に残っている過去400年程度に限られたものにすぎないのであるから,そのような現状では歴史地震の欠落状況を考慮しなければならず,より安全寄りに既往津波の波源に限らず波源を設定し備えるという考え方も十分に合理性を持 400年程度に限られたものにすぎないのであるから,そのような現状では歴史地震の欠落状況を考慮しなければならず,より安全寄りに既往津波の波源に限らず波源を設定し備えるという考え方も十分に合理性を持っていた状況であった(甲B314)。④現に,日本三大実録を除き正史にはほとんど記録が残されていない貞観津波(896)について,地層の痕跡調査などが多くの専門家によって進められていたところ,平成14年までに,慶長三陸地震(1611)に匹敵するような大津波であったと思われるとする阿部ほか(1990),津波の波源域は福島県北部沿岸沖までと推定され,その後1000年以上もこの海域で津波が発生していないことは注目に値するとする渡邉(平成10年),津波の影響は福島県から宮城県まで70kmの海岸線に及んだことや,M8.5によるシミュレーション結果が史実 の状況に非常に似ているなどとする今村・箕浦ほか(平成12年),大規模津波の再来間隔(800~1100年)からすると,貞観津波のような大津波が仙台平野を襲う可能性は高いなどとする箕浦・今村(平成13年),相馬市の松川浦付近で仙台平野と同様の堆積層を検出したことから,貞観津波の地震の規模はおよそM8.3,堆積作用は局地的ではなく仙台平野から相馬市に及ぶ大規模なもので,海岸部に到達した津波の波高は極めて大きかった可能性があることが明らかになったなどとする菅原・箕浦・今村(平成13年),貞観津波はM8.2程度であった可能性が高いとする箕浦・今村ほか(平成14年)などが現れていたことからすれば,この時点ではまだ貞観津波についての知見は研究途上であったとしても,たかだか400年程度の記録では到底カバーできない過去に大地震や大津波が起きた可能性,ひいては既往津波の波源に限定せずに波源を設定した上で安 はまだ貞観津波についての知見は研究途上であったとしても,たかだか400年程度の記録では到底カバーできない過去に大地震や大津波が起きた可能性,ひいては既往津波の波源に限定せずに波源を設定した上で安全に備える考え方の合理性は,相当程度に高まっていた。⑤平成3年頃以降,津波地震は,沈み込む海のプレートの表面に,プレートと一緒に沈み込むことができずに堆積した厚い付加体が存在する特殊な海底構造を有する領域のみで発生する特殊な地震であるという「付加体モデル」を提唱する専門家も存在したが,一方で,ペルー地震(1960),ニカラグア地震(1992)など,付加体が形成されていない領域でも過去に津波地震が発生していることが今村論文(1993及び2003)等で明らかになっていたから,この時点で付加体の存在が津波地震の発生に必要条件であるとはいえない状況であった。⑥日本海溝沿いの震源については,沖合の日本海溝寄りの領域と陸寄りの領域に分け,さらに陸寄り領域は震源を幾つかの領域に分けていたところ,この領域の分け方において,三陸沖から福島沖までを同一領域に位置付けるか否かや,福島県沖海溝沿い領域でM8クラスの津波地震が発生するか否か等に ついては,地震学者の間でも,これらを肯定する見解が通説となっていたとまでは認められないが,逆に,これを否定する説が通説となっていたとも認められず,地震学者の見解も分かれている状況であった。 ⑦溢水事故により非常用電源を喪失することの危険性について参考とすべき事故として,平成14年までにも,福島第一原発そのものによる平成3年溢水事故,ルブレイエ原発溢水事故(1999年),馬鞍山原発外部電源喪失事故(2001年)等が起きていた。 以上のような津波や津波地震に係る知見,溢水事故の危険性とその対策等に係る知見が積 平成3年溢水事故,ルブレイエ原発溢水事故(1999年),馬鞍山原発外部電源喪失事故(2001年)等が起きていた。 以上のような津波や津波地震に係る知見,溢水事故の危険性とその対策等に係る知見が積み重ねられていた中で,海溝型地震の発生可能性について海域ごとに長期的な確率評価を行うこととされ文部科学省に設置された地震調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会により,日本海溝沿いのうち三陸沖から房総沖にかけての領域を対象とした「長期評価」が公表され,その中で,福島県沖海溝沿い領域を含む「三陸沖北部から房総沖の海溝寄り」という南北800km程度の領域を設定し,M8クラスのプレート間大地震が発生する確率は,この領域で,今後30年以内の発生確率は20%程度,今後50年以内の発生確率は30%と推定し,この領域の中の特定の海域での発生確率については,今後30年以内の発生確率は6%程度,今後50年以内の発生確率は9%程度と推定し,想定地震の規模は,Mt8.2前後と推定したのであって,「津波評価技術」では波源を想定していなかった福島県沖海溝沿い領域についても,今後30年に(特定海域として)6%程度の確率で,Mt8.2前後の地震が起きる可能性があるとしたものであった。 この「長期評価」は,一審被告国が平成7年の阪神・淡路大震災を機に,地震防災対策の強化を図ることを目的として制定された地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)に基づき設置され,海 溝型地震の発生可能性について,海域ごとに長期的な確率評価を行っていた国の公的機関である地震調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会が作成,公表したもので,単なる一専門家の論文等とはその性格や意義において大きく異なるものであったことは明らかであり,そのことは,その発表直後に保安院が一 調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会が作成,公表したもので,単なる一専門家の論文等とはその性格や意義において大きく異なるものであったことは明らかであり,そのことは,その発表直後に保安院が一審被告東電からヒアリングを行い,その際に,福島沖から茨城沖も津波地震をシミュレーションするべきとの見解を示していたこと(前記第2節第3の2⑴)からも十分にうかがわれるところである。 そして,実際には,一審被告東電は,「長期評価」の見解を踏まえた津波地震のシミュレーションをすぐには実施しなかったものの,平成20年2月26日,地震学者の今村文彦から,「福島県沖海溝沿いで大地震が発生することは否定できないので,波源として考慮すべきである」との見解(今村たことを切っ掛けに,子会社(東電設計)に試算を委託し,同年4月18日,「長期評価」の見解を踏まえ,福島県沖海溝沿い領域に明治三陸地震の波源モデル(Mw8.3)を置き,「津波評価技術」の方法による詳細パラメータスタディを行ったところ,最大,敷地南側(O.P. +10m)でO.P.+15.707m(浸水深5.707m)との試算結果(平成20年試算)に接した(前記第2節第3の2⑷)というのであるから,仮に,「長期評価」が公表され,これを認識してから速やかに平成20年試算と同様のシミュレーションを行ったとすれば,遅くとも平成14年末頃までには平成20年試算結果で特定された津波(以下「本件試算津波」ということがある。)と同等の津波が到来する可能性について認識することが可能であったと推認することができる(甲B314・35頁参照)。そして,本訴においては,「長期評価」の見解から想定される津波を直接的・具体的に特定する証拠はないも のの,平成20年試算は,東電設計において「長期評価」の見解を踏 4・35頁参照)。そして,本訴においては,「長期評価」の見解から想定される津波を直接的・具体的に特定する証拠はないも のの,平成20年試算は,東電設計において「長期評価」の見解を踏まえ,福島県沖海溝沿い領域に明治三陸地震の波源モデルを置いて試算されたものであり,そこで代入する波源モデルや波源の設定位置が多少でも異なれば,シミュレーション結果の津波波高の数値や津波が到来する方向に違いが出てくることとなると考えられるから,一審被告東電が結果回避義務を尽くすために検討の対象とすべき想定津波は,本件試算津波そのものではなく,個々のシミュレーションによって生ずる誤差をも考慮した安全裕度を踏まえた,本件試算津波から一定の幅を持った範囲の津波であると解すべきところ,前記4の一審被告東電の義務違反を判断する際の予見可能性の対象であるO.P.+10mを超える津波は,優にそのような範囲内に収まっているということができる。 その安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染し,長期にわたって住民の生活やコミュニティを破壊するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがある,極めて危険性の高いものであって,前記2置,稼働するに当たり,同原発周辺に居住し,その事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民との間で,原子力発電所による重大な事故及びそれによる深刻な災害を起こして,当該住民の生命・身体,財産,平穏に生活する権利等を侵害しないようにするべく,原子力発電所の安全性を維持する義務を負っていたのであるから,上記のとおり重要な意義を有する国の機関である地震本部から「長期評価」が公表された以上,一審被告東電が上記予見可能な内 いようにするべく,原子力発電所の安全性を維持する義務を負っていたのであるから,上記のとおり重要な意義を有する国の機関である地震本部から「長期評価」が公表された以上,一審被告東電が上記予見可能な内容に係る予見義務を負ったとみることは酷とはい えないし,本件においては,現に平成14年8月の時点で,保安院から,福島沖から茨城沖も津波地震をシミュレーションするべきとの見解が示されていたのであるから,一審被告東電が予見義務を免れないことは一層明らかである。 したがって,一審被告東電には,平成14年末頃までに,福島第一原発1~4号機敷地において,O.P.+10mを超える津波の到来について,予見義務に裏付けられた予見可能性があったと認めることが相当である。 6 本件事故発生を防止するために必要であった措置前示(第2章第2節第2の2)のとおり,福島第一原発のような沸騰水型軽水炉では,大地震や大津波に襲われたような非常時において,直ちに核燃料の核分裂反応を抑制することが必要であるが(原子炉停止機能),このように直ちに抑制しても,放射性物質の崩壊による発熱は続くことから,燃料の破損を防止するために炉心の冷却を続けることが必須であり(原子炉冷却機能),仮にこの原子炉冷却機能まで喪失した場合には,燃料が過熱され,水素を発生したり,炉心損傷に至ったりして,放射性物質を施設外へ放出することを防止する機能(格納機能)さえ失い,周辺環境に多大な悪影響を及ぼすことになるのであるから,全ての予測される状態に対して,適切な炉心冷却装置を設ける必要性が極めて高い。 しかるに,福島第一原発1~4号機では,原子炉冷却機能に係る設備として,内部電源及び外部電源を喪失したような非常時に備えて,非常用ディーゼル発電機による非常用電源設備が設置されていたと めて高い。 しかるに,福島第一原発1~4号機では,原子炉冷却機能に係る設備として,内部電源及び外部電源を喪失したような非常時に備えて,非常用ディーゼル発電機による非常用電源設備が設置されていたところ,この非常用電源設備は,上記のように極めて重要な役割を担っており,法令上も,省令62号4条1項により「津波により損傷を受けるおそれ」がないものでなければならなかった上,一審被告東電にお いて上記5のとおり福島第一原発1~4号機敷地においてO.P.+10mを超える津波の到来を予見することができたのであるから,非常用ディーゼル発電機8台の設置場所(O.P.+1.9~10.2m,建屋内)や,そのうち水冷式6台の非常用海水ポンプの設置場所(O.P.+4mの屋外に設置),さらには配電盤の設置場所(O.P.-0.3m~+10.2m,建屋内)にも鑑みれば,津波に浸水することによりこれらの非常用電源設備が機能喪失することを防ぐ措置を採ることが必須であったというべきである。 しかしながら,一審被告東電は,そのような措置を講じることなく,漫然と平成23年3月11日を迎え,本件事故を起こすこととなった。 7 一審被告東電の結果回避可能性⑴ 結果回避可能性に係る主張立証責任等本訴において,予見可能であった津波による被害を回避するための措置の合理性ひいては結果回避可能性を細部まで厳密に検討するためには,福島第一原発の詳細構造及び本件事故の詳細な経緯等に係る資料が必要不可欠であると考えられるところ,これらの資料は原子力事業者である一審被告東電(及びその安全規制者である一審被告国)が専ら保持しているのであるから,結果回避措置の合理性ひいては結果回避可能性について,一審原告らが細部まで厳密に主張立証することはそもそも不可能に近いものである 及びその安全規制者である一審被告国)が専ら保持しているのであるから,結果回避措置の合理性ひいては結果回避可能性について,一審原告らが細部まで厳密に主張立証することはそもそも不可能に近いものである。 また,原子力発電所という高度に専門性があり最先端の知見に基づいて管理運用されるべき設備の瑕疵により損害を被った者が,その賠償を設備の設置・管理者に対して求めるという訴訟類型における主張立証責任の分配については,当事者間の衡平の観点に特に留意する必要が高いというべきである(最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁[伊方原発訴訟]参照)。 そうだとすれば,本件では,予見可能であった(予見義務のある)津波に関しては,原子力事業者である一審被告東電に対し,いかなる結果回避措置が合理的であるかを特定し,当該措置を講じても本件事故が回避不可能であったことを基礎付ける事実等,結果回避可能性がなかったことを基礎付ける事実等を,相当の資料,根拠に基づき主張立証することを求めることが,当事者間の衡平の観点から相当であり,かかる主張立証が尽くされない場合には,結果を回避することが可能であったのに結果回避措置を採らず,それにより本件事故が発生したことが事実上推認されるとみることが相当であるとも考えられるが,仮にそこまではいえないとしても,少なくとも,一審原告らにおいて,一定程度具体的に特定して結果回避措置についての主張立証を果たした場合には,その具体化された措置が実施できなかったこと,又はその措置を講じていても本件事故が回避不可能であったこと等の,結果回避可能性を否定すべき事実を,一審被告東電において,相当の根拠,資料に基づき主張立証する必要があり,一審被告東電がかかる主張立証を尽くさない場合には,結果回 故が回避不可能であったこと等の,結果回避可能性を否定すべき事実を,一審被告東電において,相当の根拠,資料に基づき主張立証する必要があり,一審被告東電がかかる主張立証を尽くさない場合には,結果回避可能性があったことが事実上推認されるものとみることが相当である。 ⑵ 一審被告東電の結果回避可能性本件において,一審原告らは,福島第一原発敷地高さを超える津波に対する代表的な防護措置としては,防潮堤の設置,重要機器室の水密化及びタービン建屋等の水密化があり,これらの措置がいずれも講じられることが求められるが,防潮堤の設置には長期間を要すること,原子炉施設においては万が一にも深刻な災害が起こらないようにする必要があることから,防潮堤の完成に先立ち重要機器室及びタービン建屋等の水密化の措置が講じられるべきであるし, これらの水密化がされた後においても更に防潮堤の設置によって多重の防護が確保されるべきである(なお,重要機器室及びタービン建屋等の水密化の完成までの間は暫定的な措置として使用の一時停止(電気事業法40条参照)が検討されるべきである)と主張しているところ,これは上記の結果回避措置を一定程度具体化した主張に当たるといえ,また,本件訴訟には,かかる主張に沿う証拠も相当程度に提出されているといえるから,一審被告らにおいて,一審原告らが主張する上記各措置が実施できなかったこと,又はこれらの措置を講じていても本件事故が回避不可能であったこと等の,結果回避可能性を否定すべき事実を,相当の根拠,資料に基づき主張立証しない場合には,結果回避可能性があることが事実上推認されるものとみることが相当であるというべきである。 しかるに,一審被告東電は,前示のとおり,平成14年末頃までには,O.P.+10mを超える津波の到来が予見可 結果回避可能性があることが事実上推認されるものとみることが相当であるというべきである。 しかるに,一審被告東電は,前示のとおり,平成14年末頃までには,O.P.+10mを超える津波の到来が予見可能であったにもかかわらず,それから本件事故までの8年以上もの間,適切な結果回避措置を採らなかったものであるところ,結果回避のために合理的な措置を特定した上で当該措置を講じても本件事故という結果を回避することが不可能であったことについて,具体的な主張立証をしていない。また,一審原告らが主張する結果回避措置が実施できなかったこと又は実施しても本件事故が回避不可能であったことについては,一審被告東電は,仮に平成20年試算に基づいて津波対策を講じる場合,当時において唯一合理的であると考えられていたドライサイト理論からは,同試算において津波が遡上するとされた敷地南側及び敷地北側上に防潮堤を設置することによって敷地への浸水を防ぐというのが合理的対策であるところ,そのような対策では福島第一原発の敷地東側から到来した本件津波を防ぎ切れなか ったと主張し,解析結果(丙B51)を提出する。しかし,一審被告東電が主張するような防潮堤を設置することでは結果回避措置として十分なものとはいえないというべきであるから,一審被告東電のかかる主張は失当である(詳細は後に一審被告国の責任の部分にお したがって,一審被告東電に結果回避可能性があったことが推認されるというべきである。 8 一審被告東電の義務違反の有無及び程度以上によれば,一審被告東電には,遅くとも平成14年末頃までには,敷地高さを超える津波が福島第一原発に到来することを予見することが可能であり,かつ,それに対して適切に合理的な回避措置を講じていれば,本件津波による本件事故という結果を とも平成14年末頃までには,敷地高さを超える津波が福島第一原発に到来することを予見することが可能であり,かつ,それに対して適切に合理的な回避措置を講じていれば,本件津波による本件事故という結果を回避することが可能であったのに,それを怠った結果,本件事故が発生したというべきであって,一審被告東電には義務違反が認められる。 そして,この間における一審被告東電の対応をみると,まず,「長期評価」が公表された直後である平成14年8月には,保安院のヒアリングにおいて,担当官から,福島沖から茨城沖も津波地震をシミュレーションするべきとの見解を示されたのに,一審被告東電担当者は,福島県沖では有史以来津波地震が発生していないし,谷岡・佐竹論文(1996)によると,津波地震は特定の領域や特定の条件下でのみ発生する極めて特殊な地震であるという考え方が示されているなどとして,同論文を示して約40分間にわたり抵抗し,担当官から,それでは地震本部がどのような根拠に基づいて「長期評価」の見解を示したのかを確認するようにと指示されると,「長期評価」の策定に関与した学者の中から上記論文の共著者である佐竹健治ただ一人に問い合わせただけで,保安院に対し,佐竹委員に理由を聞いたところ,佐竹委 員は,分科会で異論を唱えたが,分科会としてはどこでも起こると考えることになった,とのことであった,土木学会手法に基づいて決定論的に検討すれば,福島沖から茨城沖には津波地震は想定しないことになるが,電力共通研究で実施する確率論ではそこで起こることを分岐として扱うことはできるので,そのように対応したいと伝え,保安院の了解を得たというのである(前記第2節第3の2⑴)。 しかしながら,かかる一審被告東電の対応は,保安院から求められた「長期評価」の見解の根拠を確認する手 るので,そのように対応したいと伝え,保安院の了解を得たというのである(前記第2節第3の2⑴)。 しかしながら,かかる一審被告東電の対応は,保安院から求められた「長期評価」の見解の根拠を確認する手段として,「長期評価」作成に際して海溝型分科会での議論に加わった,島崎邦彦,阿部勝征,安藤雅孝,海野徳仁,笠原稔,菊地正幸,鷺谷威,佐竹健治,都司嘉宣,野口伸一ら多数の地震学者の中から,上記ヒアリングにおいて「長期評価」の見解に対する「抵抗」の根拠とした論文の共著者である佐竹健治ただ一人に問い合わせただけで,同分科会の主査であった島崎邦彦や「長期評価」においてその論文が引用されている阿部勝征,菊地正幸,鷺谷威,都司嘉宣,野口伸一らには問い合わせなかったということ自体,恣意的で「長期評価」の見解の信頼性を正当に評価するための調査としては適切さに欠けるものであったというべきである。また,このとき問い合わせられた当の佐竹健治の回答は,上記谷岡・佐竹論文がどこまで一般化できるかは分からない,同論文と「長期評価」の見解のどちらが正しいか分からないというのが正直な答えである,などというものであった(前記第2節論を唱えたが,分科会としてはどこでも起こると考えることになった」と報告したのでは,「長期評価」の見解の根拠を確認するようにという本来の指示に応じたものとも佐竹健治の回答を正確に報告したものともいえないし,「土木学会手法に基づいて決定論的に検討すれば,福島沖から茨城沖には津波地震は想定しないことになるが,電力共通研究 で実施する確率論ではそこで起こることを分岐として扱うことはできる」というのも,何故そのようなことになるのかの理由が不明であるといわざるを得ない。そもそも防災対策の要否を検討する際には,問題となる事象が現実化する可能 そこで起こることを分岐として扱うことはできる」というのも,何故そのようなことになるのかの理由が不明であるといわざるを得ない。そもそも防災対策の要否を検討する際には,問題となる事象が現実化する可能性の高さはもとより重要であるが,それとともに当該事象が一旦現実化した場合の危険性がどのようなものであるかを知ることも重要であることは明らかであり,津波地震のシミュレーションは正にその危険性を知るためには不可欠の第一歩であるから,仮に「確率論で分岐として扱う」ことが相当であったとしても,上記シミュレーションを行わないことが正当化されるものではないというべきである。結局,以上のような一審被告東電の対応は,当時の一審被告東電が,ヒアリングの当初から,「長期評価」の見解に基づき福島第一原発に到来する津波について検討させられることをおそれ,保安院担当官から求められたシミュレーションの実施を何としても回避しようとする意図に基づくものであったことが強くうかがわれるといわざるを得ない。 さらに,それから約6年後に,今村文彦見解を受けて平成20年試算が行われその結果が判明した後においてすら,一審被告東電の担当者は,①一審被告東電方針に係る平成20年7月頃の他の原子力事業者に宛てたメールにおいて,「以上について有識者の理解を得る(決して,今後なんら対応をしない訳ではなく,計画的に検討を進めるが,いくらなんでも,現実問題での推本即採用は時期尚早ではないか,と被告東電方針をまとめた取扱注意とされたペーパーでは,「長期評価」の見解を否定する地震学的データはないことなどから否定することは不可能としつつ,「推本見解を採用したとたんに既往評価水位を大幅に上回るため,必要となる対策を短期間に取ることは不可能」などと記 載し(同イ),③一審被告東電の内 ら否定することは不可能としつつ,「推本見解を採用したとたんに既往評価水位を大幅に上回るため,必要となる対策を短期間に取ることは不可能」などと記 載し(同イ),③一審被告東電の内部メールにおいて,日本原電の担当者から,日本原電上層部は,一審被告東電方針に賛成したものの積極的賛成ではない感じであり,平成20年12月のバックチェック最終報告時点で「長期評価」の見解をバックチェックに採り入れなくてよい理由をどのように説明するのかよく調整するよう言われた旨の回答があったと報告した上,「確かに,WGの阿部先生や今村先生等,津波評価部会の首藤先生,佐竹先生等に対する説明内容は思い浮かびますが,世間(自治体,マスコミ・・・)がなるほどと言うような説明がすぐには思いつきません。」と記載し(同ウ),④一審被告東電の内部メールにおいて,「推本は,十分な証拠示さず,「起こることが否定できない」との理由ですから,モデルをしっかり研究していく,でよいと思いますが,上記869年の再評価は津波堆積物調査結果に基づく確実度の高い新知見ではないかと思い,これについて,さらに電共研で時間を稼ぐ,は厳しくないか?」と記載していたこと(同オ)などが認められる。これらの記載からは,「いくらなんでも,現実問題での推本即採用は時期尚早ではないか」という表現に端的に現れているように,一審被告東電が,「長期評価」の見解や貞観津波に係る知見等の,防災対策における不作為が原子炉の重大事故を引き起こす危険性があることを示唆する新たな知見に接した場合に,当該知見を直ちに防災対策に生かそうと動くことがないばかりか,当該知見に科学的・合理的根拠がどの程度存するのかを可及的速やかに確認しようとすることすらせず,単に当該知見がそれまでに前提としていた知見と大きな格差があるこ 策に生かそうと動くことがないばかりか,当該知見に科学的・合理的根拠がどの程度存するのかを可及的速やかに確認しようとすることすらせず,単に当該知見がそれまでに前提としていた知見と大きな格差があることに戸惑い,新たな知見に対応した防災対策を講ずるために求められる負担の大きさを恐れるばかりで,そうした新たな防災対策を極力回避しあるいは先延ばしにしたいとの思惑のみが目立っているといわざるを得ないが,このような一審被告東電の姿勢は,原子力 発電所の安全性を維持すべく,安全寄りに原子力発電所を管理運営すべき原子力事業者としては,あるまじきものであったとの批判を免れないというべきである。 他方において,一審被告東電が前示のとおりの一審被告東電方針を立て,これに従って土木学会に「長期評価」の見解の取扱いの検討を委託していたこと等も認められることに照らせば,一審被告東電に故意又はこれと同視し得る程度の重過失があったとまでいうことはできないが,以上に説示した諸事情に照らせば,本件における一審被告東電の義務違反の程度は,決して軽微といえない程度であったというべきであり,一審原告らに対する慰謝料の算定に当たって考慮すべき要素の一つとなるというべきである。 9 一審被告東電の当審における主張について一審被告東電は,当審において,おおむね以下のとおり主張して(なお,一審被告国の主張と共通する部分も多くあるため,ここでは一審被告東電の主張の概略を摘示し,判断を加えるにとどめ,後に一審被告国の責任を示すところで(後記第4節),一審被告国の主張に対する判断として,一審被告東電の主張と共通する部分に対する判断も示すこととする。),一審被告東電の本件事故当時の対応には,法律上の義務違反はなく,仮にあったとしても,故意又はそれに匹敵する重過失と る判断として,一審被告東電の主張と共通する部分に対する判断も示すこととする。),一審被告東電の本件事故当時の対応には,法律上の義務違反はなく,仮にあったとしても,故意又はそれに匹敵する重過失と呼べるような程度のものではなかったとしている。 すなわち,①法律上求められる結果回避のための措置を講ずる義務の有無や内容については,予見可能性を基礎付ける科学的知見の成熟度や信頼度の程度によって大きく左右されるのであり,本訴で一審原告らが主張しているような結果回避措置を本件事故前の時点で他の優先度のより高い地震対策等に差し置いて実施すべき法律上の義務があったといえるためには,それを基礎付ける予見可能性の程度も具体的 な科学的根拠に基づくものであり,かつ損害発生の危険が具体的であり切迫性を有するものである必要があるところ,「長期評価」の見解は,海溝沿い領域における過去の既往地震の発生個所が特定できない状況下で,既に実際の観測結果によって海溝沿い北部と南部とで地震の発生条件が異なることが確認されていた中で,防災行政上の見地から,三陸沖北部から房総沖までの海溝寄りをまとめて,同範囲においてM8クラスの地震が発生する可能性を否定することができないとして確率計算をしたものであり,それ以上に積極的・科学的な根拠に基づいて示されたものではなかったこと,実際に,地震本部自身によって信頼度が「やや低い」とされたことや,土木学会は,専門的な審議を経ても,本件事故直前の時点において「長期評価」の見解を支持していなかったこと,「長期評価」の見解は政府の中央防災会議でも福島県の防災対策でも採用されなかったこと,「長期評価」の見解について,多くの専門家が,成熟した見解ではなく,専門家の間でコンセンサスが得られた通説ではなかったなどとコメントしてい 中央防災会議でも福島県の防災対策でも採用されなかったこと,「長期評価」の見解について,多くの専門家が,成熟した見解ではなく,専門家の間でコンセンサスが得られた通説ではなかったなどとコメントしていることなどからすれば,「長期評価」の見解は,一義的に確立された科学的知見でも,一審被告東電の結果回避義務を基礎付けるようなものでもなく,損害発生の危険が具体的であり切迫性を有するものであったとはいえない。 また,②地震や津波の予測については,試験や実験をすることができないため,専門家の間でも様々な見解があり得るところ,原子力事業者が投資できる資金や人材等のリソースは有限であり,際限なく想定し得るリスクの全てに資源を費やすことは不可能であって,かつ,闇雲に緊急性の低いリスクに対する対策に注力した結果,緊急性の高いリスクに対する対策が後手に回るといった危険性がある以上,予見可能性の程度が上記の程度ほどに高いものでなかった「長期評価」の見解により予想されるリスクに対する安全対策は施すべき段階には至 っていなかったというべきである。さらに,余計な設備を増やすことによって却って施設全体の安全性に不当なリスクが生じたりする危険もあるため,発表される知見を具体的な安全対策に取り込むためには,少なくとも様々な角度からの批判的検討や検証というプロセスを経ることが必要不可欠であるところ,一審被告東電は,実際には「長期評価」の見解に基づく津波を確定論的津波評価の対象として考慮するかどうかについて土木学会に審議を委託し,その整理を踏まえて適切に対応することとするなどしていたことからすれば,一審被告東電の対応はその時点においては何ら不合理なものとはいえなかった,などというものである。 しかしながら,上記①の主張については,「長期評価」の見解の信 こととするなどしていたことからすれば,一審被告東電の対応はその時点においては何ら不合理なものとはいえなかった,などというものである。 しかしながら,上記①の主張については,「長期評価」の見解の信頼性は,一審被告東電の主張するような信頼性が低いものではなかったというべきである(この点については,後記第4節において一審被告国の損害賠償責任に関して説示するところと同様である。)。 また,一審被告東電は,仮に福島第一原発に敷地高さを超えて重大な事故を発生させるおそれのある津波が到来する可能性があることを示す見解が発表されても,当該知見が,多数の学者による批判的検討や検証に耐え,多数の学者が共通の認識を持つ程度にまで確立していない限り,そのような知見は工学上「Practicallyeliminated」(物理的にあり得ないか,又は,高い信頼性を持って極めて発生しにくいと考えられ,実質的に考慮から排除される状態)なリスクにすぎないのだから,原子力事業者はこの知見に基づく措置を求められるべきではないとも主張し,原子力工学者である山口彰(乙B180)や津波工学者である今村文彦(乙B187)の意見を援用している。しかしながら,かかる主張によるならば,当該リスクが現実化した場合の結果が極めて重大であるような場合であっても,上記程度に知見が確立する までの間は対策を講じなくてもよいこととされ,その間に重大な結果が発生してしまう危険性を排除できないことになるし,原子力発電所の安全性に対する責任を負っている立場にはない第三者にすぎず,一般に新たな知見の提唱に対しては懐疑的・批判的に接することが職業的良心であるともいえる学者の多数が当該知見について共通の認識を持つに至るまでは,上記責任を直接的に負うべき立場にある原子力事業者が当該知 新たな知見の提唱に対しては懐疑的・批判的に接することが職業的良心であるともいえる学者の多数が当該知見について共通の認識を持つに至るまでは,上記責任を直接的に負うべき立場にある原子力事業者が当該知見によって予測される重大事故について何ら対策を講じなくてよいということになるが,このような帰結は是認し難いものというほかないから,上記主張をにわかに採用することはできないというべきである。 次に,上記②の主張については,そもそも複数のリスクのいずれもが直ちに対策を講ずることが必須であるという場合もあり得ることはいうまでもなく,当面は複数のリスクのうち緊急性が最も高いものだけに対応するという方針が直ちに正当化されるものではないし,仮にこの点を一旦措き,上記主張が成り立つとしても,「長期評価」の見解によって予想されるリスクに対する安全対策を講じたとすれば,資金や人材等のリソースが枯渇してより緊急性の高いリスクへの安全対策が後手に回らざるを得なかったことについて,一審被告東電において具体的に主張立証することが必要であるというべきであるが,一審被告東電は,単に一般論として上記の理を述べ,抽象的に,日本では津波よりも地震の被害が圧倒的に多く,当時は平成19年7月16日の新潟中越沖地震が発生するなどしたことから,耐震性の再検討や対策が急務かつ最優先事項であった旨主張するのみで,上記のとおり必要な具体的主張立証をしていない。 また,特定のリスクに対して安全対策を施すと却って施設全体の安全性に別のリスクが生じたりする危険もあるとの点については,一般 論としてはそのような場合があり得るとしても,実際に本訴において,O.P.+10mを超える津波に対する安全対策がどのように施設全体としての安全性能を低下させるのかについて具体的な主張立証をし 論としてはそのような場合があり得るとしても,実際に本訴において,O.P.+10mを超える津波に対する安全対策がどのように施設全体としての安全性能を低下させるのかについて具体的な主張立証をしない以上,上記結論を覆すものとはなり得ないというべきであるところ,一審被告東電が引用する岡本孝司が掲げる例は,本件事故を受けて,大飯原発の事業者が,非常用DGの機能を維持するため大量の燃料を施設内に分散配置するという対策を検討していたが,当該対策は火災対策の観点ではリスクを高めていたというものであるが,かかる対策は,福島第一原発で考えられる結果回避措置(あるいは一審原告らが主張する結果回避措置)とは程遠く,およそ参考とはならないし,他にみるべき主張立証はない。 以上,一審被告東電の反論はいずれも失当であるか理由がないというべきである。 第4節一審被告国の損害賠償責任第1 規制権限不行使の違法性の判断枠組み 1 当裁判所が採用する違法性の判断枠組み規制権限の不行使という不作為が国賠法上違法であるというためには,当該公務員が規制権限を有し,規制権限の行使によって受ける国民の利益が国賠法上法的に保護されるべき利益であることに加えて,同権限の不行使によって損害を受けたと主張する国民との関係において,当該公務員が規制権限を行使すべき義務が認められ,この作為義務に違反することが必要である。そして,規制権限行使の要件が法定され,同要件を満たす場合に権限を行使しなければならないとされているときは,同要件を満たす場合に作為義務が認められることになるのに対し,規制権限行使の要件は定められているものの,権限を行使するか否かについて裁量が認められている場合や,規制権限行使の要 件が具体的に定められていない場合には,①規制権限を定めた に対し,規制権限行使の要件は定められているものの,権限を行使するか否かについて裁量が認められている場合や,規制権限行使の要 件が具体的に定められていない場合には,①規制権限を定めた法が保護する利益の内容及び性質,②被害の重大性及び切迫性,③結果発生の予見可能性,④結果回避可能性,⑤現実に実施された措置の合理性,⑥規制権限行使以外の手段による結果回避困難性(被害者による被害回避可能性),⑦規制権限行使における専門性,裁量性などの諸事情を総合的に検討して,具体的な事情の下において,その不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使は,被害を受けた者との関係において国賠法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁[宅建業者訴訟],最高裁平成7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁[クロロキン薬害訴訟],最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁[筑豊じん肺訴訟],最高裁平成16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁[水俣病関西訴訟],最高裁平成26年10月9日第一小法廷判決・民集68巻8号799頁[大阪泉南アスベスト訴訟])。 済産業大臣は,事業用電気工作物が「技術基準に適合していないと認めるとき」に技術基準適合命令を行うことができると定め,省令62号4条1項は,平成14年当時においては「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が(中略)津波(中略)により損傷を受けるおそれがある場合は,防護施設の設置,基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない」と,平成18年当時においては「原子炉施設並びに一 びその附属設備が(中略)津波(中略)により損傷を受けるおそれがある場合は,防護施設の設置,基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない」と,平成18年当時においては「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が想定される自然現象((中略)津波(中略))により原子炉の安全性を損 なうおそれがある場合は,防護措置,基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない」と,それぞれと定めていたものであるところ,その要件等が一義的に明確に定められていたものではなく,また,対象が原子力発電所であることからすると,その判断には専門技術的判断を要するため,同規定は経済産業大臣に専門技術的裁量を認めたものというべきである。 したがって,本件では,経済産業大臣に専門技術的裁量が認められることを前提として,その規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるかについて判断すべきである。 2 一審被告国の当審における新主張に対する判断ところで,以上に説示したところは,長きにわたる本件訴訟及び同種訴訟の審理において,一審被告国が最近まで主張してきたところとおおむね同旨である(平成30年3月30日付け当審第2準備書面23頁以下等。なお,一審原告らの主張は,以上と異なる限りにおいては採用の限りでない。)が,一審被告国は,当審においては,自然災害による原子力災害発生の予見可能性は,原子力工学はもとより,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づいた将来の予測に係る総合的判断が必要とされるものであるという性質上,具体的審査基準の合理性とその当てはめの合理性によって判断されるものであるから,裁判所が判断代置審査をすることは許されないのであって, 来の予測に係る総合的判断が必要とされるものであるという性質上,具体的審査基準の合理性とその当てはめの合理性によって判断されるものであるから,裁判所が判断代置審査をすることは許されないのであって,いわゆる伊方原発訴訟に係る最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁が示した判断過程審査方式が本件でも妥当し,①判断基準に合理性が認められない場合,又は②判断基準への適合性の判断過程に看過し難い過誤,欠落がある場合に限り,違法と判断されるべきである(2段階審査による判断過程審査),と主張するようになり,令和元年9月13日付け当審第11準備書面 においては,この新主張は,規制権限不行使の違法性の判断枠組みに関する従来の主張を撤回し,新たな判断枠組みを主張するものではない,としたが,当審の口頭弁論終結日に陳述された令和2年1月20日付け当審第15準備書面においては,上記の判断手法ないし判断構造は,規制権限の不行使の違法性が問題となったこれまでの最高裁判決とは全く異なるものであり,一審被告国が控訴審において取り分け強く主張するのはこの点である,と主張するに至った。 しかしながら,かかる新主張は,上記のような訴訟経過に照らしても疑問があるように思われることはしばらく措き,その内容を検討しても,次のとおり,にわかに採用することができない。 そもそも伊方原発訴訟は,原子炉施設の設置許可処分の取消しを求める訴訟であって,1個の行政処分が総体として違法であるかどうかが問われ,その判断のためには津波等の自然災害による事故のリスクにとどまらず,「当該原子炉施設そのものの工学的安全性,平常運転時における従業員,周辺住民及び周辺環境への放射線の影響,事故時における周辺地域への影響等を,原子炉設置予定地の地形,地質,気象 スクにとどまらず,「当該原子炉施設そのものの工学的安全性,平常運転時における従業員,周辺住民及び周辺環境への放射線の影響,事故時における周辺地域への影響等を,原子炉設置予定地の地形,地質,気象等の自然的条件,人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の技術的能力との関連において,多角的,総合的見地から検討する」必要があったものである上,設置許可処分の時点では,設置許可申請書における基本設計が示されているのみで具体的な設計内容を示す詳細設計が明らかにされていない状態で書面審査が求められることとなるために,原子力工学はもとより,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づいた総合的判断が求められたと解されるものである。これに対し,本件においては,現実に設置され稼働している原子炉に係る技術基準適合性が問われているものである上,本件で判断の対象となるのは省令62号4条1項の「想定される津波によ って原子炉施設の安全性を損なうおそれがない」といえるか否かという点に絞られ,具体的な判断対象も,実際上は「長期評価」の見解が示した津波地震の想定に信頼性(規制権限の行使を義務付ける程度の客観的かつ合理的根拠)が認められるか否かという点などであると考えられるから,「原子力工学はもとより,多方面にわたる知見に基づいた総合的判断」が求められるものとはいえない。 また,一審被告国は,本件で求められるのが「将来の予測」に係る判断であることも,規制権限の不行使の違法性が問題となったこれまでの最高裁判決とは異なり,伊方原発訴訟の判断過程審査方式を本件で採用すべき根拠とするようであるが,法令によって規制権限が付与された行政庁がその権限を行使して当該法令が保護する法益の侵害を防止しようとする場合には,(現在のみならず)将来におけ 程審査方式を本件で採用すべき根拠とするようであるが,法令によって規制権限が付与された行政庁がその権限を行使して当該法令が保護する法益の侵害を防止しようとする場合には,(現在のみならず)将来における法益侵害の蓋然性をも予測して規制権限行使の要否を判断することは当然であると解されるから,「将来の予測」に係る判断であることを根拠として,その判断手法ないし判断構造が規制権限の不行使の違法性が問題となったこれまでの最高裁判決とは全く異なり,判断代置審査は許されず判断過程審査が求められるとする一審被告国の主張は,失当というべきである。 したがって,一審被告国の上記主張には理由がなく,本件における規制権限の不行使の違法性の判断手法ないし判断構造を,これが問題となったこれまでの最高裁判決に係る事案と別異に解する根拠はないというべきである。 第2 本件における規制権限不行使の違法性 1 経済産業大臣の規制権限の有無子力発電所について安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の 従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑みると,経済産業大臣は,その基本設計について安全性が審査された上で設置許可処分が行われて稼働を開始した発電用原子炉についても,その後の時の経過により進展した最新の科学的知見等に照らして,技術基準への適合性を通じて不断に安全性を審査する必要があり,審査の結果,原子炉施設が技術基準に適合しないときには,原子炉施設の事故等がもたらす災害により被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を保護するために,技術基準適合命令(電気事業法40条)を適時かつ適切に発して,当該発電用原子炉を「修理し,改造し,若し もたらす災害により被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を保護するために,技術基準適合命令(電気事業法40条)を適時かつ適切に発して,当該発電用原子炉を「修理し,改造し,若しくは移転し,若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ,又はその使用を制限する」(同条)権限が与えられていたものと解される。 これに対し,一審被告国は,一審原告らの主張する津波対策は,いずれも基本設計に関する事項であるから,詳細設計についての規制である省令62号に基づく技術基準適合命令により是正させることはできなかったと主張する。 確かに,炉規法は,原子炉の設置・変更許可(23条~26条の2)のほかに,設計・工事方法の認可(炉規法27条。実用発電用原子炉については,炉規法73条による適用除外の結果,電気事業法47条)等の各規制を定め,これらの規制が段階的に行われることとされているのであるから,設置許可段階においては,専ら当該原子炉の基本設計のみが規制の対象となり,後続の設計・工事方法の認可(炉規法27条,73条,電気事業法47条)の段階で規制の対象とされる当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は規制の対象とならないものと解される(最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集4 6巻7号1174頁[伊方原発訴訟],最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・集民166号509頁[福島第二原発訴訟],最高裁平成17年5月30日第一小法廷判決・民集59巻4号671頁[もんじゅ行政訴訟第二次上告審])。 そして,電気事業法39条及び同条により委任を受けた省令62号で定める技術基準は,上記の段階的規制によれば,基本設計のみが規制対象となる設置許可を経た後である工事計画認可の段階における基準ともされていることから(電気事業法 び同条により委任を受けた省令62号で定める技術基準は,上記の段階的規制によれば,基本設計のみが規制対象となる設置許可を経た後である工事計画認可の段階における基準ともされていることから(電気事業法47条3項1号),その場面においては基本的には詳細設計について規律する基準であると解される(甲A6・1頁,乙A16・1頁参照)。そうすると,経済産業大臣が電気事業法39条及び省令62号で定める技術基準に適合していないと認めるときに発すべきである電気事業法40条所定の技術基準適合命令も,基本的には詳細設計についての技術基準に適合していないと認めるときに発することを想定しているようにも思われる。 炉規法が,実用発電用原子炉の設置・変更許可の申請があった場合における,基本設計の安全性に係る事項について定めた同法24条1項各号所定の基準に適合するかどうかの審査は,原子力の開発及び利用の計画との適合性や原子炉施設の安全性に関する極めて高度な専門技術的判断を伴うものであることから,同条2項において,経済産業大臣が上記許可をする場合には,あらかじめ各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を聴き,これを尊重してしなければならないと定めている(最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁[伊方原発訴訟],最高裁平成17年5月30日第一小法廷判決・民集59巻4号671頁[もんじゅ行政訴訟第二次上告審]参照)のに対して,電気事業法40条は,経済産業大臣が技術基準適合命令を発するに当たって,原子 力委員会又は原子力安全委員会の意見を聴く手続を義務付けていないことも,技術基準適合命令は基本的には詳細設計についての技術基準に適合していないと認めるときに発することを想定していることをうかがわせるも 員会又は原子力安全委員会の意見を聴く手続を義務付けていないことも,技術基準適合命令は基本的には詳細設計についての技術基準に適合していないと認めるときに発することを想定していることをうかがわせるものであるともいえる。 しかしながら,経済産業大臣が,特定の発電用原子炉について,運転供用開始後に,その基本設計の安全性に係る事項について定めた炉規法24条1項各号所定の基準に適合していないと判断した場合に,原子力事業者に対して技術基準適合命令を発することができないと解するのは,以下の理由から,相当ではない。 原審も指摘するとおり,経済産業大臣が,発電用原子炉の設置許可申請がされた時点においては,原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質,核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないものであるという基本設計の安全性に係る事項について定めた炉規法24条1項4号所定の基準に適合すると判断して設置許可を発したところ,その後の地形や気象条件その他の原子炉周辺環境の変化や,上記基本設計基準適合性に係る判断の根拠となった知見の進歩・発展等によって,当該発電用原子炉が,そのままの基本設計では上記基準に適合しないと判断される結果,経済産業大臣が設置許可を発したままであることが不相当である状態に至る(又は不相当であると認識される)事態が生じることは当然に想定し得るところ,そのような,詳細設計における安全性を欠いた発電用原子炉より更に危険ともいうべき基本設計における安全性を欠いた発電用原子炉について,経済産業大臣において,詳細設計の場合に発することができる技術基準適合命令のような命令を発する権限を有さず,より実効性の小さい強制力を有しない行政指導か,さもなければより強力な事実関係の変更に伴う設置許可の取消し(又は撤回)か,という両極 ることができる技術基準適合命令のような命令を発する権限を有さず,より実効性の小さい強制力を有しない行政指導か,さもなければより強力な事実関係の変更に伴う設置許可の取消し(又は撤回)か,という両極端の規 制手段しか行使できないと解するのは,厳重な安全規制によって安全性が確保されることを大前提に原子力発電所の稼動を認めるという,原子力基本法,炉規法,電気事業法等の原子力に係る法制度全体に通底する趣旨・目的に照らし不合理というべきである。 翻って,前記の段階的規制を採った法令を通覧すると,これらは,あくまでも発電用原子炉の設置許可,設計建設,運転供用開始へと進む段階における規制の在り方について定めたものにすぎず,むしろ,運転供用開始後の規制については,基本設計や詳細設計を区別することなく,端的に,当該原子炉を設置した者はこれを「経済産業省令で定める技術基準に適合するよう維持しなければならない」(電気事業法39条1項)と規定するのみであって,そこにいう「経済産業省令で定める技術基準」を詳細設計に限定する趣旨までは読み取ることができない。現に,これを受けた省令62号は,前記のように工事計画認可段階における基準とされているものの(同法47条3項1号),発電用原子炉の運転供用を開始した後においても維持すべき基準として定められたものである(乙A16・1頁参照)上,その技術基準の中には,例えば,原子炉が「津波」等によって「損傷を受けるおそれがある場合」に,「防護施設の設置,基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない」(4条1項),「原子炉施設は,通常運転時において原子核分裂の連鎖反応を安全に持続することができ,かつ,故障時においても原子核分裂の連鎖反応を無制御に継続しないものでなければならない」(8条1項)など, 1項),「原子炉施設は,通常運転時において原子核分裂の連鎖反応を安全に持続することができ,かつ,故障時においても原子核分裂の連鎖反応を無制御に継続しないものでなければならない」(8条1項)など,詳細設計のみならず基本設計にも関わる基準を定めるものが存する。そもそも,基本設計や詳細設計という概念は,法令上明示的に区別されているものではないことに鑑みても,技術基準適合命令を発令する場合の対象においてこの区別を採用し,後者は対象となるが前者は対象とならないと解釈すべき理由はない。 しかも,経済産業大臣において,特定の原子炉について技術基準に適合しない状況を把握した場合に,技術基準に適合させるために必要な措置が詳細設計の変更で足りるのか,基本設計の変更まで要するのかについては,当該原子炉を設置し運営する原子力事業者において具体的に検討しなければ分からない事態も容易に想定されるから,技術基準適合命令を発する段階でそれが基本設計にも及ぶのかという問題提起自体が不適切であるともいい得る。 この点,平成24年法律第47号による改正後の炉規法43条の3の23は,前記のとおり,同改正前の電気事業法40条の規定内容に相当する「発電用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合していないと認めるとき」のほかに,「発電用原子炉施設の位置,構造若しくは設備が第43条の3の6第1項第4号の基準に適合していないと認めるとき」にも発電用原子炉の使用停止等の措置を命ずることができることとして,原子炉施設が省令62号の定める技術基準に適合しない場合に加え,原子炉施設が基本設計に関する設置許可基準に適合しない場合にも,当該原子炉の使用停止等の命令を発し得ることを明文で規定したことから,逆に,平成24年法律第47号による改正までは技術基準適合命 加え,原子炉施設が基本設計に関する設置許可基準に適合しない場合にも,当該原子炉の使用停止等の命令を発し得ることを明文で規定したことから,逆に,平成24年法律第47号による改正までは技術基準適合命令が基本設計に及び得なかったという見方もできなくもない。しかしながら,そのように解することは,前記の,厳重な安全規制によって安全性が確保されることを大前提に原子力発電所の稼動を認めるという原子力に係る法制度全体に通底する趣旨・目的に照らし不合理である。むしろ,立法者の意思としては,前示のとおり,原子炉施設の安全審査の構造として段階的安全規制を採用し,設置許可の段階の安全審査においては,当該原子炉の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とし,それ以外の当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は後続の設計及び工事方法の認可 (炉規法27条)等の段階で規制の対象とすることとし(最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁[伊方原発訴訟]参照),原子炉設置の許可,変更の許可(同法23条から26条の2まで),設計及び工事方法の認可(同法27条),使用前検査(同法28条),保安規定の認可(同法37条),定期検査(同法29条),原子炉の解体の届出(同法38条)等,段階的に許可や認可等を介在させることによって,厳重な安全規制によって安全性が確保されることを大前提に原子力発電所の稼動を認めるという前記の原子力に係る法制度全体に通底する趣旨・目的を実現することを目指しているものと考えられるのであって,段階的安全規制の考え方を根拠にして,技術基準適合命令が基本設計に及び得ないという,その目指すところに反するような解釈をすることは背理であるといわざるを得ない。そうすると,上記の平成24年改正も,原子力法制度全体の趣 方を根拠にして,技術基準適合命令が基本設計に及び得ないという,その目指すところに反するような解釈をすることは背理であるといわざるを得ない。そうすると,上記の平成24年改正も,原子力法制度全体の趣旨・目的に沿った合理的な解釈をすべきであって,あくまでも,本件事故を受けて,従前の規定の仕方では不明確であった技術基準適合命令が基本設計にも及ぶ旨を明確にし,発電用原子炉の安全性について規制する側の権限をより明確にすることにより,規制する側に対し,適時・適切な規制権限を発動することを促す趣旨であったとみるのが相当であり,本件事故前には技術基準適合命令が基本設計に及び得なかったと解すべき根拠とはならないというべきである。 以上より,発電用原子炉の基本設計について,その後の原子炉周辺環境の変化や,基本設計基準適合性に係る判断の根拠となった知見の進歩・発展等によって,省令62号4条1項の技術基準に適合しないと認められる場合には,経済産業大臣は,電気事業法40条の技術基準適合命令を発令することが可能であると解すべきである。 したがって,そもそも,一審原告らの主張する津波対策が基本設計に関する事項であるとの一審被告国の主張は,前記のとおり詳細設計や基本設計といった概念が法令上のものではないことからその外縁が必ずしも明確とはいえないこととの関係で疑問がなくもない上,この点を一旦措き,仮に一審原告らの主張する津波対策が基本設計に関する事項であるとしても,技術基準適合命令が及ばないとする一審被告国の主張は失当である。 2 法令の趣旨・目的と被害法益の性質・重大性上記のとおり,電気事業法40条は,事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは技術基準適合命令を発することができる旨を定め,同法39条2項1号は,事業用電気工 被害法益の性質・重大性上記のとおり,電気事業法40条は,事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは技術基準適合命令を発することができる旨を定め,同法39条2項1号は,事業用電気工作物は人体に危害を及ぼし,又は物件に損傷を与えないようにすることを技術基準に定めることを求め,同条1項は,事業用電気工作物を設置する者に技術基準維持義務を課している。また,炉規法(平成25年法律第82号による改正前のもの。以下本項において「旧炉規法」という。)は,設計及び工事の方法の認可や検査に関する27条から29条までの規定は,電気事業法に基づく検査等を受ける原子炉施設であって実用発電用原子炉に係るものについては適用除外としているが(旧炉規法73条),これに相当する電気事業法に基づく規制が適用され,実用発電用原子炉については炉規法及び電気事業法の規定が矛盾のないように適用されており,原子炉の安全に関する法律として,原子炉の設置後の措置である技術基準適合命令についても炉規法の趣旨は及ぶというべきである。そして,旧炉規法1条は,「原子力基本法の精神にのっとり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ,かつ,これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに,これらによる災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共の安全を 図るために,製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うほか,原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために,国際規制物資の使用等に関する必要な規制等を行うこと」としており,原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど, 資の使用等に関する必要な規制等を行うこと」としており,原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み,上記災害が万が一にも起こらないようにすることを目的としているといえる。これらの規定に照らせば,規制権限を定めた法は,国民の生命,身体,財産等を保護することを目的としているものと認められ,これらの利益は国民が平穏な生活を営む上で必要不可欠な重要な利益といえる。 そして,原子力発電所において一たび事故が発生した場合は,その作業員のみならず,周辺住民らの生命や身体にも被害を及ぼし得るものであり,とりわけ原子力発電所の事故により放射性物質が放出された場合には,広範囲かつ長期間にわたって住民の生命や身体に影響を及ぼすおそれが生じ,放射能汚染の大きい地域には長期間にわたって帰還できず,放射能による健康被害に対する不安を抱えながら生活することを余儀なくされるなどの重大な結果をもたらし得るものであって,このことは,本件事故によって実際に現実化した被害自体からも明らかであるが,本件の一件記録からは,本件事故において全交流電源喪失が生じ,それから複数の原子炉が次々と損傷していく過程においては,福島第一原発の吉田昌郎所長が,「2号機に水が入らず完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出て行ってしまい,その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故となり,1号機,3号機の注水も停止しなければならなくなる」ことまで予期していたように (甲B181の3の4・50頁),本件事故で現実に生じた被害より更に巨大な被害が生ずる可能性すらあったことも認められる。このように,一たび原子力発電所において事故が発 ていたように (甲B181の3の4・50頁),本件事故で現実に生じた被害より更に巨大な被害が生ずる可能性すらあったことも認められる。このように,一たび原子力発電所において事故が発生すれば,その被害は極めて甚大で取り返しのつかないものとなる危険性が高いものである。 3 予見可能性⑴ 予見可能性の対象当裁判所は,一審被告東電の義務違反を判断する際の一審被告東電の予見可能性の対象はO.P.+10mを超える津波の到来というべきであると判断するところ(前記第3節第2の4),一審被告国の予見可能性についても,この判断がそのまま当てはまる。 ⑵ 一審被告国の予見可能性前記認定事実(前記第2節)によれば,一審被告国は,以下のとおり(一審被告東電と重なる部分については要約する。),遅くとも「長期評価」が公表された平成14年7月31日から相当の期間を経た平成14年末頃までには,O.P.+10mを超える津波の到来を予見することが可能であったというべきである。 「長期評価」が公表された平成14年までには,津波や津波地震に係る知見が積み重ねられていた(前記第3節第2の5①~⑦)。これらの知見や溢水事故の危険性とその対策等に係る知見が積み重ねられていた中で,海溝型地震の発生可能性について海域ごとに長期的な確率評価を行うこととされて文部科学省に設置された地震調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会により,日本海溝沿いのうち三陸沖から房総沖にかけての領域を対象とした「長期評価」が公表され,その中で,過去に大きな既往地震の報告がない福島県沖海溝沿い領域を含む,「三陸沖北部から房総沖の海溝寄り」という南北800km程度の巨大な領域を設定し,M8クラスのプレート間 大地震が発生する確率は,この領域 震の報告がない福島県沖海溝沿い領域を含む,「三陸沖北部から房総沖の海溝寄り」という南北800km程度の巨大な領域を設定し,M8クラスのプレート間 大地震が発生する確率は,この領域で,今後30年以内の発生確率は20%程度,今後50年以内の発生確率は30%と推定し,この領域の中の特定の海域での発生確率については,今後30年以内の発生確率は6%程度,今後50年以内の発生確率は9%程度と推定し,想定地震の規模は,Mt8.2前後と推定したのであって,「津波評価技術」で波源を想定していなかった福島県沖海溝沿い領域についても,今後30年に(特定海域として)6%程度の確率で,Mt8.2前後の地震が起きる可能性があるとされたものであるところ,上記のとおり,地震本部は文部科学省に設置された組織であるから,これは当然に一審被告国の知見とすべきものである。 そうすると,一審被告国は,一審被告東電において,「長期評価」の見解を踏まえた試算を開始し,遅くとも平成14年末頃までに,福島第一原発にO.P.+10mを超える津波が到来することを予見することが可能であったとされたものと同じ知見を一審被告東電と同時に認識していたのであるから,経済産業大臣において,一審被告東電に対し,直ちに「長期評価」の見解を踏まえた試算を開始するように指示し,あるいは規制当局として自ら「長期評価」の見解を踏まえた試算をするなどしていれば,遅くとも平成14年末頃までには,福島第一原発にO.P.+10mを超える津波が到来する可能性について認識し得たというべきである(なお,ここで認識し得た津波は,平成20年試算結果で特定された本件試算津波そのものではなく,安全裕度等を踏まえた一定の幅を持った範囲の津波であったと解すべきことについては,一審被告東電に関して前記第3節第 で認識し得た津波は,平成20年試算結果で特定された本件試算津波そのものではなく,安全裕度等を踏まえた一定の幅を持った範囲の津波であったと解すべきことについては,一審被告東電に関して前記第3節第2の5に説示した理と同様である。)。 もっとも,ここで検討されるべき予見可能性は,規制権限不行使の違法性を基礎付ける作為義務の有無及び程度を判断するための考 慮要素と位置付けられるものであるから,経済産業大臣が職務上の法的義務として,そのような予見をすべき立場にあったといえることが必要であるし,また,技術基準適合命令は,当該命令を受けた者に法的義務を課すものであり,これに違反した場合には刑罰が科され得ることにも照らせば,当該者に結果回避義務を課すに足りる程度の予見可能性が必要であると解される。本件において,一審被告国は,「長期評価」の見解の公表を根拠として一審被告国に予見可能性を認めることは不当であるとして争っているところ,その趣旨は,「長期評価」中で示された見解には信頼性の高低に大きな幅があり,本件で一審原告らが引用している部分は,「施設の設定に用いることはできないものの,確率表現をすることにより国民の防災意識の高揚に用いる範囲では有用といえるような精度が高くないもの」に当たるというものであるが,かかる主張も,上記のような意味での予見可能性を争う趣旨と解されるから,以下では,「長期評価」の信頼性に係る一審被告国の主張の当否を判断する形で,更なる検討を進めることとする。 ⑶ 一審被告国の主張に対する判断一審被告国は,当審においては,原判決が,「規制権限行使の必要性を導く前提としての予見可能性の対象となる事項は,規制権限の行使を義務付ける程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であれば足り,(一審被告国 ,当審においては,原判決が,「規制権限行使の必要性を導く前提としての予見可能性の対象となる事項は,規制権限の行使を義務付ける程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であれば足り,(一審被告国が原審で主張した)「学会や研究会での議論を経て,専門的研究者の間で正当な見解であると是認され,通説的見解といえる程度に形成,確立した科学的知見であること」が常に要求されるものではない」旨を説示したことを踏まえ,「長期評価」の見解は「規制権限の行使を義務付ける程度に客観的かつ合理 的根拠を有する科学的知見」に当たらないとして,同見解の信頼性を種々の角度から論難している。 当裁判所も,原判決が説示した上記判断基準自体は相当であると考えるが,この基準のうち「長期評価」の見解の信頼性が「規制権限の行使を義務付ける程度」に至っているかどうかの判断は,実質的に規制権限の不行使に違法性が認められるか否かの判断に近いともいえるから,以下の検討を進める上では,まず,本項において,「長期評価」の見解の信頼性に係る一審被告国の主張の当否を検討することによりその信頼性の程度等を検証し,これを踏まえ,後記7において,一審被告国に「長期評価」の見解を反映した規制権限の行使が義務付けられるべきか否かを判断することとする。 ア 「長期評価」の意義・性格一審被告国は,「長期評価」は,「国民の防災意識の高揚」を図ること等を目的とした全国地震動予測地図の作成を目指していたため,「高度の理学的根拠に裏付けられた知見」から「理学的に否定できない知見」までの様々なレベルの知見を取り入れて策定・公表されたものであって,原子力規制に取り込むだけの客観的かつ合理的根拠を伴っているか否かという点について様々な分野の専門家が審議した結果として策定・公 」までの様々なレベルの知見を取り入れて策定・公表されたものであって,原子力規制に取り込むだけの客観的かつ合理的根拠を伴っているか否かという点について様々な分野の専門家が審議した結果として策定・公表されたものではなく,実際の審議においても,科学的根拠から離れ,専ら防災行政的な警告の観点から結論を導いていると主張している。 しかしながら,地震本部は,前記認定事実のとおり,地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)に基づき,地震防災対策の強化を図ることなどを目的として文部科学省に設置された究の成果を社会に伝え,政府として一元的に推進するために作ら れた組織」(弁論の全趣旨)として,「地震調査研究の成果を地震防災対策に生かす」こと,「地震調査研究の成果は,国民一般や防災関係機関等の具体的な対策に結びつく情報として提示されねばならない」こと,「地震調査研究については,地震防災対策に活用可能なものとなるよう,防災関係機関の意見を十分踏まえるとともに,その成果は,順次,地震防災対策に活用していくことが求められる」ことなどを明示している(甲B246)。したがって,このような目的に沿って,地震学者等の専門家らの審議に付され策定・公表された「長期評価」の性質は,本来的に,一般の社会的・経済的諸要素を踏まえた価値判断的な評価である行政判断ではなく,防災を目的とした災害の原因となる自然現象についての科学的な評価である科学的判定であると解されるのであって(甲B471),一審被告国の主張は,自らが設置した機関の自らが明示している目的や性質を否定するに等しいものとの批判を免れ難く,採用することができない。 イ 「長期評価」の作成過程における異論等海溝型分科会における議論一審被告国は,「長期評価」作成過程の海溝型分 目的や性質を否定するに等しいものとの批判を免れ難く,採用することができない。 イ 「長期評価」の作成過程における異論等海溝型分科会における議論一審被告国は,「長期評価」作成過程の海溝型分科会では数多くの問題点が指摘されていたとして,例えば,「1896年明治三陸地震のタイプは1896年のものしか知られていないし,1933年昭和三陸地震のタイプも1933年のものしか知られていない。1611年の地震と869年の地震は全然分からない。」(甲B272の1・7頁),延宝房総沖地震について,「太平洋ではなく,相模トラフ沿いの地震ともとれる。最近石橋さんが見直した結果では,もっと陸よりにして規模は小さく津波は大きくしたはず。陸に寄せると太平洋プレートの深い地震に なり,浅いとしたらプレート内の浅い地震になる。」(甲B272の2・5頁),「1677[裁判所注:延宝房総沖地震]は日本海溝沿いのプレート間大地震に入れてしまったのか?これには非常に問題がある。それを入れたために400年に3回になっているが,石橋説のように房総沖の地震にしてしまうと400年に2回になってしまう。」(甲B272の3・5頁),「1677年は房総沖ではなくて,房総半島の東のずっと陸地近くでM6クラスの地震かもしれない。『歴史地震』に載っている。」(甲B272の5・4頁),慶長三陸地震について,「相田は波源域が分からないので津波の計算をしたときの根拠は「1933とほぼ同じ場所で発生しているので同様のプレート間正断層型地震とした」と佐藤良輔断層パラメータ本に書いてある。それが正しいとしたら,正断層型地震は2回起きたことになってしまう。要するに江戸時代だから分からないということ。」(甲B272の3・6頁),「1611年は津波があったことは間違いないが, てある。それが正しいとしたら,正断層型地震は2回起きたことになってしまう。要するに江戸時代だから分からないということ。」(甲B272の3・6頁),「1611年は津波があったことは間違いないが,見れば見るほどわけが分からない。」(甲B272の5・4頁),「そもそもこれが三陸沖にはいるのか?千島の可能性だってある。」,「たまたまそこにしか記録がないから仕方ない。」,「千島にものすごく大きなものをおけるだけの証拠があれば,そこにおける,というストーリーなのだが。そういう証拠はあるか」,「逆にそういうものをおかないと津波堆積物の説明がつかない。」(甲B272の5・5頁),「次善の策として三陸に押し付けた。あまり減ると確率が小さくなって警告の意味がなくなって,正しく反映しないのではないか,というおそれもある。」(甲B272の5・5頁,乙B406の3・289頁)などの意見が出されたことや,「長期評価」を公表する際にも,冒頭の 柱書部分に,「データとして用いる過去地震に関する資料が十分でないこと等による限界があることから,評価結果である地震発生確率や予想される次の地震の規模の数値には誤差を含んでおり,防災対策の検討など評価結果の利用にあたってはこの点に十分留意する必要がある。」(甲B5の2・1頁)と付記されたことなどをもって,経済産業大臣において,「長期評価」の見解を認識しながら規制権限を行使しなかったとしても違法とはいえないと主張する。 しかしながら,一審被告国が引用する海溝型分科会の議論における各意見は,確かにそのような発言がされていた事実は認められるものの,同分科会では,こうした意見も受けて議論を経た末に,最終的に,冒頭柱書部分に上記のような一定の留保は付されたものの,「現在までに得られている最新の知見を用い がされていた事実は認められるものの,同分科会では,こうした意見も受けて議論を経た末に,最終的に,冒頭柱書部分に上記のような一定の留保は付されたものの,「現在までに得られている最新の知見を用いて最善と思われる手法により行った」評価であるとして,「長期評価」の見解が公表されることになったものであるから,議論の過程において反対意見が存したからといって直ちに同見解の結論の信頼性が低くなるという関係にはなく,かえって,こうした反対意見も踏まえた議論の結果として「長期評価」の見解が出されたことに鑑みれば,その結論は十分に信頼できるものというべきである。 この点,佐竹健治は,上記議論について,後に,「1611年と1677年については場所がよく分からないと。場所がよく分からないので,どこかで起きたということで,どこでも起きるというよりは,どこかで起きたから一つにまとめるようにしたのが現状です。」,「400年間に3回ということで確率を出したんですけれども,それが例えば2回とか1回だと確率の値は 大きく変わってしまいます。そのように確率あるいは評価というのは,かなりの不確定性があるものだというふうに感じました。」,「津波の数を減らすと確率が小さくなってしまいますので,防災的に警告の意味がなくなってしまうということで,これは科学的というよりは防災行政的な意味の発言だった」などと別件の法廷において供述している(乙B154・38~39頁)。 しかしながら,これは海溝型分科会の委員であった一地震学者による一つの見方にすぎないものであり,前示の地震本部の位置付けや「長期評価」の性格等に鑑みれば,地震学者等の多数の専門家らから構成された国の一機関における公式見解とされたものである以上,およそ科学的根拠がないのに専ら防災行政のため 前示の地震本部の位置付けや「長期評価」の性格等に鑑みれば,地震学者等の多数の専門家らから構成された国の一機関における公式見解とされたものである以上,およそ科学的根拠がないのに専ら防災行政のために発表されたなどとは考え難いところである。慶長三陸地震及び延宝房総沖地震に関する「長期評価」の見解の信頼性については後記エにおいて改めて検討するが,いずれにせよ,防災行政的なものであるから原子力事業者の防災対策を検討する上では考慮対象とするに及ばないとするかのような一審被告国の主張は,採用の限りではない。 公募意見における批判一審被告国は,地震本部による「長期評価」の策定に対しては,その研究目的や方法,成果の活用見通し等に曖昧な点があったことなどから,研究開始当初から防災関係者や研究者等による批判を受けていたとして,例えば,地震本部が「長期評価」の確率計算手法に関する報告書を公表するに当たって平成10年に実施した意見公募に際し,地震工学及びリスク論等を専門とする亀田弘行(京都大学名誉教授)が,地震本部の研究目的が理学的に将来の地震活動度を探ることにあるのか,防災のた めの社会情報を提供することにあるのか曖昧で,このままでは情報の受け手に様々な解釈を生み,混乱を招くとの懸念を示し,防災目的ならば受け手側のニーズの把握はもとより,理学のみならず工学,社会科学といった分野横断的な討議が必須である旨の意見を寄せていた(乙B297・47頁)ことや,地震本部の研究方針等に批判的な意見を含む賛否両論の意見が多数寄せられており(同39~53頁),地震本部が示した調査研究の方針や活用見通し等に対する異論が,本件事故前に実施されていた地震本部による意見公募に際して多数寄せられていたこと(乙B298別紙3・8~13頁)を挙げる。 ~53頁),地震本部が示した調査研究の方針や活用見通し等に対する異論が,本件事故前に実施されていた地震本部による意見公募に際して多数寄せられていたこと(乙B298別紙3・8~13頁)を挙げる。 しかしながら,こうした新たな研究成果の発表に対して異論が寄せられることはむしろ通常のことであり,異論が寄せられていたことから地震本部による「長期評価」の見解の信頼性が低かったとの立論には飛躍があるし,一審被告国が挙げる亀田弘行は,上記意見の中で,「不確定性を伴う将来の地震発生に対して確率表現の方法を開発することは基本的に重要」であり,「今後の活断層調査の進展に伴って増加する断層情報を適切に反映する方法が必要とされるという基本認識は全く妥当」であるとして,地震本部による「長期的な地震発生確率の評価手法及びその適用例について」と題する試案は,こうした努力の重要な一歩であり,大いに評価したい旨,総論的には賛成していたのであり(乙B297),地震本部は,批判的な意見を含む賛否両論の意見を広く募集し,これらを参考にしながら研究活動を進めていたのであって,議論に透明性があるという点では信頼性を高めていたともいえ,一審被告国の主張は,いずれも「長期評価」の見解を考慮に値しないものとする根拠にはならない。 ウ地震地体構造等に係る知見との関係一審被告国は,「長期評価」が公表された平成14年当時,明治三陸地震が発生した三陸沖の海溝寄りと福島県沖の海溝寄りで地震地体構造等が同一であるという知見は皆無であった,三陸沖の海溝寄りの領域は,海底に凹凸があり,へこんでいる部分には堆積物が入る一方で,凸の部分(地塁)には堆積物が溜まらず,陸側のプレートとより強くカップリング(固着)するため,そのような場所では海溝付近でも地震が発 域は,海底に凹凸があり,へこんでいる部分には堆積物が入る一方で,凸の部分(地塁)には堆積物が溜まらず,陸側のプレートとより強くカップリング(固着)するため,そのような場所では海溝付近でも地震が発生し津波地震になるが,海底地形に凹凸がないところでは堆積物が一様に入ってくるので,堆積物の下ではカップリング(固着)が弱くなって地震を起こしにくいという見解が谷岡・佐竹論文(1996)によって示されたことにより,明治三陸地震は既往地震としてメカニズムがある程度特定され,モデルが設定できる地震となっていたし,付加体モデルの考え方が一般化しつつある中で,三陸沖の海溝寄りの領域には付加体がみられるが,福島県の海溝寄りの領域では付加体がみられないことが分かっており,JAMSTECが行った海底深部構造の調査結果や鶴論文によれば,三陸沖の海溝寄りの領域と福島県沖の海溝寄りの領域では,海底の深部構造が異なっていることも判明していたことなどから,三陸沖の海溝寄りの領域と福島県沖の海溝寄りの領域とでは,プレートの固着状況や堆積物の状況等から,同一性,近似性が否定される状況にあり,このことは,本件事故時点まで変わらなかったと主張する。 ヨーロッパ諸国では1940年代頃から主張され始め,日本では,代表的な論文として宮村論文(1962)以降,垣見論文(1983),萩原マップ等が出されてはいたものの,平成14年当時, いまだ確立した知見に至っていたとはいえないし,萩原マップにおいては,日本海溝沿いの岩手県南部沖から房総半島沖までの海域一帯を一つの区分としていたこと(なお,一審被告国は,平成15年には三陸沖と福島県沖を別の区分とした垣見マップが作成・公表されていることから,平成3年に公表された萩原マップは,平成14年当時の知見とし を一つの区分としていたこと(なお,一審被告国は,平成15年には三陸沖と福島県沖を別の区分とした垣見マップが作成・公表されていることから,平成3年に公表された萩原マップは,平成14年当時の知見としては既に古いものとなっていた旨主張するが,平成15年に垣見マップが公表されたからといって,直ちに萩原マップの合理性がなくなるものともいえないし,「津波評価技術」も萩原マップを参照していることなどに照らせば,萩原マップが平成14年当時には参照できないほど合理性を失っていたとはいえない。)などからすれば,一審被告国の上記主張を直ちに採用することはできない。 また,海底の凹凸や付加体の有無等の海底構造の差異については,一審被告国がその根拠として挙げる谷岡・佐竹論文(1996)の執筆者である佐竹健治は,地震本部における「長期評価」策定に向けた議論においては同論文に係る見解に言及しておらず,同論文は「長期評価」の参考文献にも挙げられていない上,そもそも同論文は,津波が生じる必要条件として海溝近くの海底の起伏の大きさ等の特徴を挙げているものではなく,あくまで仮説を立てて「明治三陸地震の発生域で将来マグニチュード7クラスの地震が起きた場合」には津波地震となる可能性が非常に高いとしているにすぎないもので,明治三陸地震の発生域にみられる付加体等の特徴的な海底構造が津波発生の必要条件であり,日本海溝沿いの他の場所では津波は起きないなどと断定したものではなかったし,海溝付近に付加体が形成されていない領域でも過去に津波地震が発生していることは平成14年頃に既に明らかになって 時通説あるいは有力説であったとまでいうことはできず(ちなみに,地震学者の松澤暢は,別件(刑事事件)の証人尋問で,「付加体の議論は私自身は非常にもっともらしい に既に明らかになって 時通説あるいは有力説であったとまでいうことはできず(ちなみに,地震学者の松澤暢は,別件(刑事事件)の証人尋問で,「付加体の議論は私自身は非常にもっともらしいと思いましたけれども,評価として使うレベルまでいっているかといわれると,多分,多くの委員はちゅうちょしたんだろうなというふうに理解しました」と供述している(乙B407の1・86頁)。),三陸沖の海溝寄りの領域と福島県沖の海溝寄りの領域との海底構造の差異を殊更強調して「長期評価」の見解の信頼性が低いと主張することは当を得ていないといわざるを得ない。「長期評価」は,佐竹健治も含めた多数の専門家が加わって議論され,平成14年に作成・公表されたものであることなどにも鑑みると,一審被告国の上記主張は失当というべきである。 エ慶長三陸地震及び延宝房総沖地震一審被告国は,「長期評価」の見解が,過去約400年に3回の津波地震が発生したとしていることについて,明治三陸地震以外の慶長三陸地震及び延宝房総沖地震は,平成14年当時,これらが津波地震であったか否かや,その震源がどこであったのかは明らかではなかったのに,これらをいずれも日本海溝沿いで発生した津波地震であると断定し,その科学的根拠を明示していないことなどから,「長期評価」の記載だけではその見解が審議会等の検証に耐え得る程度に客観的かつ合理的根拠に裏付けられたものであると判断できるものではなかったと主張する。 そして,具体的に,慶長三陸地震は,平成14年当時の科学水準に照らした場合,既往地震としてメカニズムが特定されず,モデルが設定できる地震とはなっていなかったため,慶長三陸地震 が発生した領域と福島県沖の日本海溝沿いの領域との同一性,近似性を議論・検討する以前の状況 してメカニズムが特定されず,モデルが設定できる地震とはなっていなかったため,慶長三陸地震 が発生した領域と福島県沖の日本海溝沿いの領域との同一性,近似性を議論・検討する以前の状況にあり,このことは,本件事故時点においても変わらなかったと主張する。 しかしながら,一審被告国の上記主張に沿うような意見は,平成14年当時の長期評価部会海溝型分科会においても委員から出ていたものであるが,同分科会では,それらの意見が出されながらも,多数の地震学者らの議論を経て,最終的に「最新の知見を用いて最善と思われる手法により行った」ものとして「長期評価」の見解がまとめられ,一審被告国の一機関である地震本部から公表されたのであるから,そのこと自体に照らしても,「長期評価」の見解が客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であることを否定することはできないというべきである。また,「長期評価」の見解における知見が「規制権限の行使を義務付ける程度」に至っているかどうかという観点から重要なのは,福島県沖にも津波地震が起きると考えるべきかどうかであって,その地震が起こるメカニズムの詳細ではないというべきところ,平成16年度及び平成20年度に土木学会津波評価部会において実施されたアンケートの結果に照らしても,地震学者の間では,福島県沖海溝領域では津波地震は起きないという見解より同領域を含むどこでも起きるとする見解の方が有力だったと認められる(前記第2節第4ののであるから,過去の地震の詳細が不明であることを理由に,「福島県沖にも津波地震が起きる」と考える「長期評価」の見解を防災対策において考慮しないとすることが正当化されるものではないというべきである。 また,一審被告国は,延宝房総沖地震について,平成14年当時,震源域や規模のほか,これ る「長期評価」の見解を防災対策において考慮しないとすることが正当化されるものではないというべきである。 また,一審被告国は,延宝房総沖地震について,平成14年当時,震源域や規模のほか,これが津波地震であるかどうかについ てすら明らかになっておらず,モデル化の前提となる知見としては羽鳥論文(1975)(甲B6の3・2~30頁)くらいしかなく,既往地震としてのメカニズムと領域が十分に特定されていない状況であった,その後,今村・佐竹・都司論文(平成19年)により茨城県沖波源モデルが設定されるなど,既往地震としてのメカニズムや発生領域がある程度特定され,波源モデルとしてモデル化できる地震となりつつあったが,同論文においても,波源モデルの設定に関する課題もあるとされていたから,同地震が発生した領域と福島県沖の日本海溝沿いの領域とを比較検討した場合,プレートの固着状況等の同一性や近似性を認めるには足りない状況であったと主張する。 しかしながら,延宝房総沖地震は,平成14年の「津波評価技術」においても,上記羽鳥論文の図を引用しながら,延宝房総沖地震は「海溝付近で津波地震と考えられる1677年地震津波が発生している」としているのであるから,今村・佐竹・都司論文(平成19年)が出る前の段階で「長期評価」において取り上げたことが「長期評価」の見解の信頼性を損なうようなものであったとはいえない。まして,同論文が発表された以降は,既往地震としてのメカニズムや発生領域がある程度特定され,波源モデルとしてモデル化できる地震となったというべきであるから,同地震が津波地震であるとの前提で作成された「長期評価」の見解の信頼性は更に高まったといえ,そのことは,論文執筆者(今村文彦)による,同論文による茨城県波源モデルは延宝房総沖地震 うべきであるから,同地震が津波地震であるとの前提で作成された「長期評価」の見解の信頼性は更に高まったといえ,そのことは,論文執筆者(今村文彦)による,同論文による茨城県波源モデルは延宝房総沖地震が二つの異なる性質を持つ地震であったことを示すモデルであって,下側の断層については,太平洋プレートとフィリピン海プレートの沈み込みに伴う影響を受けたと考えられるものであったとの別 件訴訟における証言(乙B372の1,乙B393の1・21~24頁)を考慮しても,左右されるものではない。 オ 「長期評価」公表後の専門家らによる異論等原子力安全委員会における議論等一審被告国は,「長期評価」の公表以降,原子力安全委員会における審議の過程で,様々な委員から,「長期評価」の見解一般を規制判断を行う際の前提として取り扱うことへの異論が出されたなどと主張する。 しかしながら,一審被告国が指摘する委員の異論が出されたのは,原子力安全委員会の一分科会における1回の審議の中でのことにすぎない(乙B379)。また,原子力安全委員会に寄せられた国民からの意見に対し,「長期評価」は目的・評価方法・データが異なることから,原子力安全委員会が直接それらを取り入れることはない旨の回答をしたこと(乙B381,382)は,それ自体としては当然の内容であって,「長期評価」の見解に対する原子力安全委員会の評価を示すものとはいえない。 垣見マップ一審被告国は,「長期評価」の公表後である平成15年に公表された垣見マップは,「長期評価」における領域区分とは異なるもので,「長期評価」を参考文献に掲げておらず,これを新たな地震地体構造論上の知見とみなしていないと主張する。 しかしながら,そもそも垣見マップは「長期評価」が公表される以前に投稿され は異なるもので,「長期評価」を参考文献に掲げておらず,これを新たな地震地体構造論上の知見とみなしていないと主張する。 しかしながら,そもそも垣見マップは「長期評価」が公表される以前に投稿されたものなのであるから(第2節第2の1⑵り,そのことが「長期評価」の見解の信頼性の評価を左右するものではない。また,垣見マップの領域区分が「長期評価」の それよりも詳細な区分を採用し,福島県沖の領域(8A3)を,明治三陸地震の震源域がある三陸沖(8A2)や延宝房総沖地震の震源域である可能性のある房総沖(8A4)とは異なる区分としたこと(乙B163)が,地震地体構造論としての最新の見解であったといえるとしても,そもそも地震地体構造論自体が一つの仮説にすぎず確立された見解とはいえないものであったから,「長期評価」の見解がそれ以前の地震地体構造論を参照して作成されたのだとしても,その信頼性が直ちに失われるとまではいえないし,仮に一審被告国が主張するように,「長期評価」の「同じ構造をもつプレート境界の海溝付近に,同様に発生する可能性があるとし,場所は特定できないとした」(19頁)との記載が,三陸沖北部から房総沖にかけての海溝寄りの領域を地震地体構造上一体であることを認める意味を含まず,海溝軸から陸寄りに向けてどこでも徐々に沈み込んでいるという大局的な構造や海溝軸からの距離を示すものにすぎないのだとすれば(乙B190の2・3頁),「長期評価」は,当時の地震地体構造論を参照しつつも,必ずしも地震地体構造論に全面的に依拠して策定されたものではないといえるから,なおのこと地震地体構造論の新たな見解が公表されたからといって,「長期評価」の見解の前提が崩れることにはならない。 鶴論文,松澤・内田論文,石橋論文及び都司論文「長期評 ないといえるから,なおのこと地震地体構造論の新たな見解が公表されたからといって,「長期評価」の見解の前提が崩れることにはならない。 鶴論文,松澤・内田論文,石橋論文及び都司論文「長期評価」公表後に公表された鶴論文は,谷岡・佐竹論文(1996)やJAMSTECによる構造探査結果を前提に,北部の海溝軸付近と南部の海溝軸付近とでは地域差がみられるとして,このことが日本海溝域でのプレート境界地震発生の地域差を説明できる可能性があると示唆しているところ(前記第 の見解の前提となっている明治三陸地震クラスの津波地震が福島県沖でも発生する可能性について否定的に働くものであったと主張する。また,平成15年に公表された松澤・内田論文(前海溝近傍では,三陸沖のような厚い堆積物は見つかっていないため,大規模な低周波地震が起きても大きな津波は引き起こさないかもしれないとしているところ,一審被告国は,この松澤・内田論文は,福島県沖で明治三陸地震クラスの津波地震が発生する可能性が低い旨を指摘しているのであるから,「長期評価」の見解と整合しないものであったと主張する。さらに,同年に公表された石橋論文は,延宝房総沖地震の規模はM6.5程度かもしれないとして,「長期評価」が同地震をM8クラスとして,慶長三陸地震(1611年)や明治三陸地震(1896年)と同グループのものとして扱ったことに疑問を呈しているところ,一審被告国は,これは「長期評価」の見解が延宝房総沖地震を取り込んだことについて異論を述べたものであると主張する。加えて,同年に公表された都司論文慶長三陸地震は津波地震ではなく,地震によって誘発された大規模な海底地すべりによるものであった可能性が高いとしているところ,一審被告国は,これは「長期評価」の見解と異なるもので 表された都司論文慶長三陸地震は津波地震ではなく,地震によって誘発された大規模な海底地すべりによるものであった可能性が高いとしているところ,一審被告国は,これは「長期評価」の見解と異なるものであると主張する。 確かに,前2者は,日本海溝沿いについて,北部の海溝軸付近と南部の海溝軸付近とに違いを見いだし,南部である福島県沖に津波地震が発生する可能性が北部である三陸沖よりも相対的に低い可能性を理学的に示唆した論文であったといえる。ま た,後2者は,「長期評価」が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)として過去400年間に3回発生したとして挙げた延宝房総沖地震と慶長三陸地震を,それぞれそこに挙げることに正面から異論を呈したり(石橋論文),あるいは異なる見解を示したり(都司論文)するものであったといえる。 しかしながら,これらはあくまでも学者による個人的な論文にすぎず,「長期評価」公表後1年程度以内にこれらが発表されたからといって,一審被告国の一機関に多数の専門家が集まって議論した末に作成・公表された「長期評価」の信頼性を直ちに揺らがせるものであるとはいえない。 地震学会会長兼調査委員会委員長の異論「長期評価」公表直後である平成14年8月8日,当時地震学会会長兼調査委員会委員長であった大竹政和(東北大学名誉教授)が,当時の地震本部地震調査委員会委員長であった津村建四朗に対し,概略,①「長期評価」が慶長三陸地震(1611年)を正断層型の地震ではなく津波地震であると判断した根拠等を問いただし,②「長期評価」は宮城県沖地震及び南海トラフ地震に係る長期評価に比べて格段に高い不確実性を持つことを明記するよう求めるなどしたこと,これに対する対応として,地震本部は,①については「長期評価」 し,②「長期評価」は宮城県沖地震及び南海トラフ地震に係る長期評価に比べて格段に高い不確実性を持つことを明記するよう求めるなどしたこと,これに対する対応として,地震本部は,①については「長期評価」の記載の一部を修正することとし,②については今後検討するなどとした事実が認められるところ(乙B370),一審被告国は,この事実をもって,「長期評価」の見解が当時多くの専門家から受け入れられない内容であったと主張している。 しかしながら,大竹政和の異論も,学者による個人的な見解にすぎず,「長期評価」の見解の信頼性の判断に際して相応の資料価値を有するとはいえるものの,直ちに同見解の信頼性を揺あり,そのことは上記①及び②の地震本部の対応を踏まえても特に異なるものではない。 「地震動予測地図」との関係地震本部地震調査委員会は,平成17年3月23日,「全国を概観した地震動予測地図」報告書(地震動予測地図)を作成・公表したが,そこでは「長期評価」の見解を,確率論的手法の基礎資料としてのみ取り扱い,決定論的手法の基礎資料として告国は,これは,地震本部自身も,「長期評価」の見解は決定論的に取り扱うまでの十分な科学的根拠を伴っている知見ではなく,科学的根拠が乏しく理学的に否定できない知見にすぎないとして取り扱っていたものであると主張する。 しかしながら,地震動予測地図は,「ある特定の震源断層に着目し,そこで地震が発生した場合に周辺の地域がどの程度の強い揺れに見舞われるかを示した地図」(乙B361の1・2頁)であり,地震動による揺れの評価が対象であって,津波の影響は評価対象ではない。津波地震とは,地震動に対して異常に大きな津波を発生させる地震を指すのであるから(前記第2の目的が異なるものである。したが あり,地震動による揺れの評価が対象であって,津波の影響は評価対象ではない。津波地震とは,地震動に対して異常に大きな津波を発生させる地震を指すのであるから(前記第2の目的が異なるものである。したがって,かかる地震動予測地図の内容を形式的に参照して「長期評価」の見解の信頼性を問題とする一審被告国の主張は失当である。 また,この点を措いたとしても,地震動予測地図のうち,確率論的手法に基づく地図については,「全国で発生する様々な地震について,長期的な地震発生の可能性を考慮し,将来見舞われるおそれのある強い揺れの可能性を地域毎に評価した結果を地図上に示すもの」(同3頁)であり,全国を対象として起こり得る地震動をくまなく評価する観点から,発生可能性のある地震を網羅することとされているため,「長期評価」の見解に基づく津波地震も考慮対象としているのに対し,決定論的手法に基づく地図については,「特定の一つの地震に対して,震源断層のずれ動き方などのシナリオを想定し,その地震が発生したときに評価対象地域がどのような強い揺れに見舞われるかを示すもの」(同3頁)であるため,対象地域を特定した上で,発生確率や周辺地域への影響の大きさ,強震動予測手法の高度化の観点から,そこで対象とする地震を選び出したとされており,その選抜の過程で,上記目的達成の観点から対象とする地震を絞っていると推認されるから,そこで選抜されなかったとしても,「長期評価」の見解の信頼性を評価するに当たって大きな意味を持つものとはいえない。 さらに,地震動予測地図は,「長期評価」を検討した地震学者を主な委員とする長期評価部会のメンバーに加え,地震工学等の専門家を含めた委員からなる地震動評価部会で検討された強震動評価を総合的に取りまとめて作成・ 震動予測地図は,「長期評価」を検討した地震学者を主な委員とする長期評価部会のメンバーに加え,地震工学等の専門家を含めた委員からなる地震動評価部会で検討された強震動評価を総合的に取りまとめて作成・公表されたものであるから,地震学に係る専門性が長期評価部会よりも薄められた母体における議論の結果ともいえるのであって,そこでの取扱いをもって,より地震学の度合いの濃い長期評価部会作成に係る「長期評価」の見解の信頼性を低めるものとはいえない。 中央防災会議の報告内閣府に設置された中央防災会議の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会は,平成18年1月25日,日本海溝・千島海溝報告書を作成し,同報告書において,調査対象領域については「長期評価」を基本としつつも,防災対策の検討対象とする地震は,既往の巨大地震が確認されている地域に限ることとして,福島県沖海溝沿い領域を防災対策の検討対象から除外した(前記第2節第4の2)ところ,一審被告国は,この結論に至るまでの議論は,「長期評価」公表後に示された海底地形及び海溝軸付近の堆積物の形状等に関する最新の調査結果などを踏まえたものであったが(甲B1・307頁,乙B270・15,16頁,乙B275・8~10頁),その結果,平成18年時点においても,「長期評価」の見解は地震地体構造の知見として客観的かつ合理的根拠を伴うものではないと判断されていたと主張する。 しかしながら,中央防災会議は,我が国の全ての地域及び住民と全ての施設を対象とする広域的かつ一般的な防災対策を対象とするものであって,地方公共団体に防災対策を法令上義務付けることとなり,時間的・財政的制約を考慮せざるを得ない性質のものであるから,既往地震が確認されている領域のみを検討対象とすることとし,福島県 するものであって,地方公共団体に防災対策を法令上義務付けることとなり,時間的・財政的制約を考慮せざるを得ない性質のものであるから,既往地震が確認されている領域のみを検討対象とすることとし,福島県沖海溝沿い領域を検討対象から除外したのであって(もっとも,貞観地震(869),慶長三陸地震(1611),延宝房総沖地震(1677),昭和三陸(1933)の4つの地震については,防災対策の検討対象とはしないものの,それぞれ大津波が襲来したとされていることなどに留意すべきとされ,慶長三陸地震(1611)については, 明治三陸地震の断層モデルの津波による防災対策と重なる領域もあるが,陸前高田市以南さらに福島県北部沿岸において津波が大きかったという史料があるのでこの点に留意すべきとされている(乙B16・15頁)。)。このことから,極めて高度な安全性が求められる施設である原子力発電所の津波対策においても福島県沖海溝沿い領域の地震を想定しなくてもよいということになるものではない。前示したとおり,「長期評価」の見解は科学的判定というべき性質のものであって(前記ア),これが一般の社会的・経済的諸要素を踏まえた価値判断的な評価である行政判断をすべき中央防災会議で採用されなかったからといって,その科学的信頼性が低下することにはならない。したがって,中央防災会議の報告によって「長期評価」の見解の信頼性が否定されるものではない。 なお,一審被告国の当審第16準備書面97頁中の,「長期評価」が設定した波源と日本海溝・千島海溝報告書が設定した波源とを対比させるために一審被告国が作成した図表(図表11)では,後者の波源域図の中に前者の波源域のエリアが一部位記されている(赤い点線で囲んでいる部分)ところ,前者の波源域のエリアが実際よりも東側にず 対比させるために一審被告国が作成した図表(図表11)では,後者の波源域図の中に前者の波源域のエリアが一部位記されている(赤い点線で囲んでいる部分)ところ,前者の波源域のエリアが実際よりも東側にずらして位記され,その結果として両者がほとんど重ならないような図となっているが,ミスリーディングで不適切なものといわざるを得ない。 土木学会の第4期津波評価部会一審被告国は,本件事故直前である平成21年度から平成23年度にかけて開催された第4期土木学会原子力土木委員会津波評価部会では,一審被告東電の委託を受けて津波評価技術の改訂に向けた議論をしていたところ,「長期評価」の見解がその まま規制に取り込める程度に客観的かつ合理的根拠に裏付けられた科学的知見であるとは判断されなかったと主張する。 しかしながら,土木学会は土木工学に関する民間の学会である社団法人にすぎず,その津波評価部会は平成13年3月時点において委員及び幹事30人のうち過半数を電力会社又はその関連団体に所属する者が占めるような部会であった(前記第2,原子力事業者を適正に監督・規制するための見解を策定するには不向きな団体であるといわざるを得ず,そのような津波評価部会が,採用すれば原子力事業者に重い負担を強いる結果となりかねない「長期評価」の見解を採用しなかったとしても,その意義はおのずから限界があるというべきであって,一審被告国の予見可能性に係る前記判断を左右するものとはいえない。 カ 「長期評価」公表後の改訂等長期評価信頼度の公表一審被告国は,平成15年3月に地震本部地震調査委員会が公表した長期評価信頼度において,「三陸北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)」について,発生領域及び発生確率の各評価の信頼度がいずれも4段階中 15年3月に地震本部地震調査委員会が公表した長期評価信頼度において,「三陸北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)」について,発生領域及び発生確率の各評価の信頼度がいずれも4段階中C(やや低い)ら一審被告国の予見可能性ないし予見義務を導くことは不適当であると主張する。 しかしながら,長期評価信頼度の記述によれば,同分類においては,「発生領域の評価の信頼度」は,「想定地震と同様な地震が領域内で1~3回しか発生していないが,今後も領域内のどこかで発生すると考えられる。発生場所を特定できず,地震 データも少ないため,発生領域の信頼性はやや低い。」ものがC評価と,4回以上発生しているものがB評価とされており,「発生確率の評価の信頼度」は,「想定地震と同様な地震が領域内で2~4回と少ないが,地震回数をもとに地震の発生率から発生確率を求めた。発生確率の値の信頼性はやや低い。」ものがC評価と,5~9回発生しているものがB評価と,10回以上発生しているものがA評価とされているのであるから,これらの評価は,いずれも領域内での過去の地震の発生回数を基準として機械的に付されたにすぎないものであって,このランク分けが防災対策を検討する上で決定的な意義の相違をもたらすものとは考え難い。すなわち,過去の地震については,それぞれの領域ごとに発生回数等の地震に関するデータが残されている期間が異なるところ,例えば,400年間に3回発生した領域と800年間に6回発生した領域を比較すると,発生確率は等しくなるが信頼性は上記評価方法によれば前者が低く後者が高いとされることとなり,「三陸北部から房総沖の海溝寄り」については,地震データが400年程度に限られていることからC評価となったものであって,このように対象データが少ないために 前者が低く後者が高いとされることとなり,「三陸北部から房総沖の海溝寄り」については,地震データが400年程度に限られていることからC評価となったものであって,このように対象データが少ないために不確実性が紛れ込まざるを得ない見解であっても,防災対策の策定に当たってこれを考慮しなくてよいということに直ちにならないことは,むしろ明らかというべきである。 平成21年3月の「長期評価」の一部改訂地震本部は,平成21年3月,「長期評価」の一部改訂を行ったが,「長期評価」の見解に係る記載はほぼ同一であり,発生確率の更新も行われなかった(丙B50)ところ,一審被告国は,このことは,三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域を一体と みなす「長期評価」の見解について,平成14年以降,地震地体構造上,客観的かつ合理的根拠を与えるような新たな科学的知見が公表されていない状況であったことの証左であるとして,「長期評価」の見解が,平成21年時点においてもなお「理学的に否定できない知見」のままであったと主張する。 しかしながら,一審被告国が「長期評価」公表後に現れた異論等としてるる主張する事実がありながら,なお,地震本部が上記改訂においても「長期評価」の見解に修正を加えなかったことは,むしろ,一審被告国が主張する事実は地震本部による「長期評価」の見解を揺るがせるものではなく,地震本部は「長期評価」公表後の新たな知見等を踏まえてもなお「長期評価」の見解が合理性を失っていないと判断したからこそ改訂時に修正しなかったとみることが相当というべきであって,一審被告国の主張は失当である。 キ本件事故後に証拠化された専門家の供述以上のほか,一審被告国は,本件事故後に本件訴訟や同種訴訟等のために証拠化された地震研究又は津波研究に係る専門家( って,一審被告国の主張は失当である。 キ本件事故後に証拠化された専門家の供述以上のほか,一審被告国は,本件事故後に本件訴訟や同種訴訟等のために証拠化された地震研究又は津波研究に係る専門家(津村博士(地震学者),松澤教授(地震学者),今村教授(津波工学者),首藤名誉教授(津波工学),谷岡教授(地震学者),笠原名誉教授(地震学者),佐竹教授(地震学者))らの回顧的供述を援用して,これら専門家は,「長期評価」の見解は単に「理学的に否定できない知見」という趣旨で公表されたものであって,それ以上の具体的根拠を有するものではなかった旨の見解を示していると主張する。 しかしながら,そもそも上記の各供述は,「長期評価」が公表された当時に一審被告国(保安院等)や一審被告東電が聴取したも のではなく,当時の一審被告国がこうした専門家の意見を踏まえて規制権限を行使しなかったという関係にないことは明らかである。一審被告国がその当時に実際に行った対応は,一審被告東電に対するヒアリングを実施し,一旦は「長期評価」の見解を踏まえたシミュレーションをするよう指示したのに,一審被告東電担当者から強く抵抗されると,「長期評価」の見解の根拠を確認するようにと指示を変え,これに対し,一審被告東電は,自らが抵抗の根拠とした論文の共著者である委員に問い合わせただけで,その報告内容も「長期評価」の見解の根拠を確認するという指示に応えたものではなかったのに,これをそのまま受け入れてしまったものであることは,前示(前記第2節第3の2⑴)のとおりであって,後日重大事故が発生した後になって,「長期評価」の見解の信頼性に当時から疑問を抱いていた旨の供述をどれほど集めたところで,それらが当時の一審被告国の不作為に対する違法性の判断にいかなる意義を有する 後日重大事故が発生した後になって,「長期評価」の見解の信頼性に当時から疑問を抱いていた旨の供述をどれほど集めたところで,それらが当時の一審被告国の不作為に対する違法性の判断にいかなる意義を有するか自体が不明確であるといわざるを得ない。これが仮に,一審被告国が「長期評価」が公表された当時にその信頼性等について自ら適切に調査しあるいは一審被告東電をして適切に調査させていたとしても,上記のとおり「理学的に否定できない知見という以上の具体的根拠を有するものではない」といった意見が聴取され,「長期評価」の見解を基にして福島第一原発の安全性を一審被告国が再検討する必要や一審被告東電をして再検討させる必要はないと正当に判断していたであろうから,現実には何もしていなかったとしても,その不作為が国賠法上違法と評価されることはない,という趣旨のものであるとしても,そもそもこれらの供述者が「長期評価」が公表された当時に尋ねられていたとすれば,本件事故後に本件訴訟や同種訴訟等の ために求められて供述したのと同様の意見を述べたはずであると直ちに推認することはできないから,かかる主張を採用することはできないというべきである。 このように考えるべきことは,例えば,現在,地震本部地震調査委員会津波評価部会部会長を務めている今村文彦(津波工学者)が,平成28年12月19日付け意見書(乙B187)においては,「津波地震については三陸沖と福島沖・茨城沖との違いを示唆する理学的知見が存在したことから,既往地震について考慮する以外に,日本海溝沿いのどの地域でも発生すると取り扱うべきとはとても考えられなかった。」旨を述べているものの,本件事故前の平成20年2月26日には,一審被告東電に対し,「福島県沖海溝沿いで大地震が発生することは否定できないの 域でも発生すると取り扱うべきとはとても考えられなかった。」旨を述べているものの,本件事故前の平成20年2月26日には,一審被告東電に対し,「福島県沖海溝沿いで大地震が発生することは否定できないので,波源として考慮すべきであると考える。」との意見(今村文彦見解)を述べ,その結果として一審被告東電が子会社に平成20年試算をさせるに至っていたという証拠上明らかな事実(前記第2節第3の2⑶及び⑷)も一つの証左となる。本件における現実の事実経過は,本件事故前に「長期評価」等の重大事故の危険性を示唆する情報が公表されていたのに,その情報に係る警告が防災に役立てられないまま未曾有の大災害に至ったというものであるところ,かかる事実経過に関与してしまった専門家の多くにとっては,自らが関与しながら,結果的に本件事故を防ぐことができなかった原因を「長期評価」の見解の信頼性の低さや未成熟性に求めることによって,自らの当時の対応を正当化し自らを納得させたいという無意識のバイアスがかかると考えられるから,本件事故前に一審被告らがこれらの専門家に意見を求めたとしても,本件事故後に したのと同じ供述がされたはずであると推認することはできないとみることが相当というべきである。 ク小括以上によれば,「長期評価」の見解の信頼性を論難する一審被告国の主張は,いずれもそのまま採用することはできないといわざるを得ず,これらの主張を踏まえても,「長期評価」の見解は,一審被告国自らが地震に関する調査等のために設置し多数の専門学者が参加した機関である地震本部が公表したものとして,個々の学者や民間団体の一見解とはその意義において格段に異なる重要な見解であり,相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かし難く,少なくとも,これを防災 公表したものとして,個々の学者や民間団体の一見解とはその意義において格段に異なる重要な見解であり,相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かし難く,少なくとも,これを防災対策の策定において考慮に値しないなどということは到底できなかったというべきである。 4 結果回避可能性⑴ 一審被告国の結果回避可能性の位置付け前記第1のとおり,結果回避可能性は,本件における経済産業大臣の規制権限不行使の違法性を検討する際の考慮要素となると解されるが,それとともに,国賠法上の責任を認めるためには,規制権限を行使すれば現実に生じた損害の発生を防止することができたかどうかという,作為と結果回避との間の因果関係の要件でも必要であると解されるところ,本件では,本件事故により実際に発生した本件津波は「長期評価」の見解から予見可能であった想定津波より巨大なものであったから,予見可能な結果に係る回避行為を尽くしても実際の結果発生が不可避であったのではないかという形で,結果回避可能性の有無が争点となっている。 この点に関し,上記のとおり二つの場面で問題となる「結果回避可能性」の相互関係については,両者をいずれも本件事故という結果の回避可能性であって実質的に重なるものと解する立場のほか,前者の場面である,特定の時点において公務員が権限を行使しなかったことが国賠法上の違法性を有するかどうかは,その時点において権限を行使したとすれば同時点で予見される結果を回避することができたといえるかどうかという問題であると捉え,当該権限行使により(本件津波ではなく)想定津波の到来による被害を回避することができたかどうかについて判断すべきであって,仮に想定津波は回避できたが本件津波は回避できなかったと認められるとす 捉え,当該権限行使により(本件津波ではなく)想定津波の到来による被害を回避することができたかどうかについて判断すべきであって,仮に想定津波は回避できたが本件津波は回避できなかったと認められるとすれば,その場合には規制権限不行使の違法性は肯定されるものの不作為と結果発生との因果関係は否定されるために,結果として国賠法上の責任を負わないこととなる,すなわち,上記争点は,規制権限不行使の違法性ではなく因果関係の場面において問題となるものであると理解する立場もあり得る。しかし,上記いずれの立場であっても,作為義務を果たした(規制権限を行使した)場合に本件事故という結果を回避することができたかどうかの検討が不可欠であり,これが一審被告国の責任の成否を左右することとなることには変わりがないから,以下では,本件事故という結果の回避可能性について,検討を進めることとする。 ⑵ 結果回避可能性を基礎付ける事実の主張立証責任本件における一審被告国の規制権限の行為は技術基準適合命令の発令とされているから,一審被告国の結果回避可能性の有無は,経済産業大臣において技術基準適合命令を発した場合に,本件事故の発生を回避することができたといえるかどうかによるところ,この場合の技術基準適合命令の内容は,経済産業大臣が炉規法24条1 項4号所定の基準適合性が失われていると判断した理由を具体的に記載することが必要であり,その結果,命令を受けた者においていかなる点を改善すべきであるかが明示されることとなると解されるが,更に進んで,その改善のためにいかなる具体的措置をとるべきかまでを技術基準適合命令中において特定する必要はなく,その点は命令を受けた者である一審被告東電において,具体的措置を検討し適宜の方法を選択すべきこととなると解される。 いかなる具体的措置をとるべきかまでを技術基準適合命令中において特定する必要はなく,その点は命令を受けた者である一審被告東電において,具体的措置を検討し適宜の方法を選択すべきこととなると解される。 において説示したところに加え,このような理解を前提とすると,本件における一審被告国の結果回避可能性において説示した一審被告東電の場合と同様,予見可能であった(予見義務のある)津波に関して,一審原告らにおいて,一定程度具体的に特定して結果回避措置についての主張・立証を果たした場合には,一審被告国において,当該措置が実施できなかったこと又は当該措置を講じていても本件事故が回避不可能であったこと等の結果回避可能性を否定すべき事実を相当の根拠・資料に基づき主張・立証する必要があり,一審被告国がかかる主張・立証を尽くさない場合には,結果回避可能性があったことが事実上推認されるものとみることが相当であり,本件において一審原告らは上記の主張・立証を果たしているといえるから,一審被告国において,一審原告らが主張する上記各措置が実施できなかったこと,又はこれらの措置を講じていても本件事故が回避不可能であったこと等の,結果回避可能性を否定すべき事実を,相当の根拠,資料に基づき主張・立証しない場合には,結果回避可能性及び因果関係があることが事実上推認されるとみることが相当である。 そこで,以下では,かかる考え方に基づき,一審原告らが主張する防潮堤の設置並びに重要機器室及びタービン建屋等の水密化による結果回避可能性について,順次検討することとする。 ⑶ 防潮堤の設置について証拠(乙B175・14頁,乙B180・6頁,乙B186・44頁,乙B187・38頁,乙B188・20頁,乙B347・120頁,乙B393の1・9 こととする。 ⑶ 防潮堤の設置について証拠(乙B175・14頁,乙B180・6頁,乙B186・44頁,乙B187・38頁,乙B188・20頁,乙B347・120頁,乙B393の1・96頁,乙B402・43頁,乙B426の1,2)によれば,少なくとも本件事故当時までは,津波対策としては,ドライサイトコンセプト,すなわち,安全上重要な全ての機器が設計基準津波の水位より高い場所に設置されることなどによって,それらの機器が津波で浸水するのを防ぎ,津波による被害の発生を防ぐという考え方が主流であり,我が国においては,仮に設計基準津波が敷地に浸入することが想定された場合には,防潮堤・防波堤等の設置により津波の敷地への浸入を防止してドライサイトを維持することが津波対策の基本的な考え方であったことが認められる。したがって,一審被告国(経済産業大臣)から技術基準適合命令が発せられた場合に一審被告東電が検討する結果回避措置としては,第1次的には,津波に備えた防潮堤を設置することが考えられたであろうといえる(乙B175,185,186,188,丙B51)。 もっとも,一審被告らは,本件事故後に平成20年試算に基づく本件試算津波に対して対応することができる防潮堤を設置した場合のシミュレーションを行ったところ,本件試算津波は福島第一原発から南東方向の沖合に置かれた波源からの津波であったことから,福島第一原発の敷地南側からが大きなものとなり,主要建屋が存在する10m盤に津波が流入してくるのは敷地南側からのみであるた め,仮に本件試算津波を本件事故前に予想でき,高い波高が予測される場所(南側)にそれに応じた高い防潮堤を設置していたとしても,これでは敷地の北側,東側及び南側の全ての方向から到来した本件津波による浸水を回 本件試算津波を本件事故前に予想でき,高い波高が予測される場所(南側)にそれに応じた高い防潮堤を設置していたとしても,これでは敷地の北側,東側及び南側の全ての方向から到来した本件津波による浸水を回避できなかったと主張する。 しかしながら,一審被告らが援用する証拠(丙B51)は,本件試算津波を基に鉛直壁を設定して波高を確認した上で,高い波高が予測される場所に防潮堤を設置するという,正に本件試算津波のためのオーダーメイドの防潮堤を設置すると仮定したものであるところ,そのような局所的な防潮堤に対しては疑問を呈する専門家の意見も存するところである(甲B465・25頁)。さらに,そもそも「長期評価」の見解は,福島県沖の日本海溝寄りの海域のどこでも津波地震が発生する可能性があるというものであったが,平成20年試算は,東電設計において福島県沖海溝沿い領域に明治三陸地震の波源モデルを置いて実施されたものであり,代入する波源モデルや波源の設定位置が多少でも異なれば,シミュレーション結果の津波波高の数値や津波が到来する方向に違いが出てくることとなるから,一審被告らが結果回避義務を尽くすために被害の防止を検討する際の対象とすべき想定津波は,本件試算津波のようなピンポイントで特定される津波ではなく,個々のシミュレーションによって生ずる誤差をも考慮した安全裕度を踏まえた,本件試算津波から一定の幅を持った範囲の津波であったというべきであるから(前記第3節第2の5),南側からの津波のみに対して防潮堤を設置すれば足りることにはならないというべきである。南側の防潮堤のみを高くすることが合理的であるとして一審被告国が援用する専門家の見解のうち,今村文彦(乙B187・38頁)は,あくまでも試算津波が波源の位置を含めて信頼できるという前提条件を加えた質問に対 潮堤のみを高くすることが合理的であるとして一審被告国が援用する専門家の見解のうち,今村文彦(乙B187・38頁)は,あくまでも試算津波が波源の位置を含めて信頼できるという前提条件を加えた質問に対す る回答であることなどから,一審被告国の主張を裏付けるものとしては失当であるし,岡本孝司(乙B175・14頁)や山口彰(乙B180・6頁)の意見は,原子力発電所の安全対策に投入できる資源や資金に限りがあること(リソース有限論)を主な理由とする点において疑問があるばかりでなく,上記の観点からもにわかに首肯し難いといわざるを得ない。 したがって,一審被告らの上記主張を採用することはできない。 そして,仮に本件において,「長期評価」の見解等に照らし,福島第一原発において省令62号4条1項の技術基準に適合しない点が認められるとして,経済産業大臣から技術基準適合命令が発せられ,一審被告東電が上記見解を基に安全裕度を踏まえて本件試算津波から一定の幅を持った範囲の津波を想定して防潮堤を築く結果回避措置を採ったとすれば,それにもかかわらず本件事故という結果の回避が不可能であったことについての的確な主張立証はない。 なお,一審原告らも自認するように,防潮堤の設置には相当の期間が必要となると考えられるから,経済産業大臣の技術基準適合命令を受けた一審被告東電が防潮堤を築くという対策を採った場合には,本件津波が到来するまでにそれが完成していたといえるかどうかが結果回避可能性(権限不行使と結果との因果関係)の点において問題とはなり得る。 しかしながら,そもそも本件では,一審被告らにおいて,結果回避手段として防潮堤の設置を選択したとしても本件事故までにその完成が間に合わなかったから結果発生を避けることができなか なり得る。 しかしながら,そもそも本件では,一審被告らにおいて,結果回避手段として防潮堤の設置を選択したとしても本件事故までにその完成が間に合わなかったから結果発生を避けることができなかったということについては,的確な主張・立証がされていない。加えて,一件記録上,東海第二原子力発電所における防護壁の設置に3年5か月又は6年4か月を要したという例もみられるものの(甲B25 3・2頁,乙B187・46頁),これはそれぞれ福島県が浸水区域図を公表した時点,スマトラ島沖地震発生時点から本件津波が起きるまでの期間であり,工事期間として参照するには不正確であること,専門家の見解の中には3年間で足りるとするものも見受けられること(甲B465・33頁)などにも鑑みれば,「非常に長い年月が必要であり」,「施設がもう近くにございますので,工事の施工自体も難しいかなと考えます。」との今村文彦の別件刑事事件における証言(乙B442・18頁)を考慮しても,防潮堤の設置による結果回避可能性は否定されないというべきである。 ⑷ 重要機器室及びタービン建屋等の水密化について一審原告らは,結果回避措置として,津波が福島第一原発の敷地に浸入したとしても本件事故を防ぐことができるような,重要機器室及びタービン建屋等の水密化が可能であったと主張し,これに対し,一審被告国は,津波が敷地に浸入することを容認した上で建屋等の全部の水密化を行うことは合理性・信頼性のある対策とはいえず,規制機関がそのような対策を是認することはあり得ず,そのような対策を命じる規制権限の行使が義務付けられることもないなどと反論している。 しかしながら,一審被告国の上記反論のうち,「規制機関が水密化という対策を是認することはあり得ず,そのような対策を命じる規制権限の る規制権限の行使が義務付けられることもないなどと反論している。 しかしながら,一審被告国の上記反論のうち,「規制機関が水密化という対策を是認することはあり得ず,そのような対策を命じる規制権限の行使が義務付けられることもない」との部分は,ここで検討されるべきなのは(規制権限行使が義務付けられるかどうかを判断するための前提として)水密化という対策により結果回避可能性が認められるかどうかであるし,経済産業大臣が発する技術基準適合命令の内容に水密化をせよなどという具体的対策の内容まで特定することが必要であるとは考え難いことは前示(前記⑵)のとお りであるから,上記反論は二重の意味で的外れであるといわざるを得ない。また,上記反論は,一審原告らのいう「水密化」とは,「津波が敷地に浸入することを容認した上で建屋等の全部の水密化を行うこと」であると解されるという前提(令和元年9月13日付け当審第12準備書面10頁)に立っているが,これ自体について,一審原告らから,かかる整理は正確性を欠き,そのような誤解を前提とする論述は的外れであると批判された(令和元年12月3日付け控訴審準備書面⒄104頁)のに,当審の弁論終結に至るまで,同様の主張に終始したものである(令和2年1月20日付け当審第15準備書面162頁)。この点についても,一審原告らにおいては,防潮堤の設置を求めず津波が敷地に浸入することを容認した上で水密化を求めているわけではないし,水密化の対象は重要機器室及びタービン建屋等の双方としているのであって,これを「建屋等の全部」とすることは不正確であるといわざるを得ないのに,水密化によっては結果回避が不可能であったとする1審被告国の主張はこれを前提としたものなのであるから,にわかに採用することができないというほかはない。 ことは不正確であるといわざるを得ないのに,水密化によっては結果回避が不可能であったとする1審被告国の主張はこれを前提としたものなのであるから,にわかに採用することができないというほかはない。 もっとも,「水密化」自体に関しては,本件事故当時までは,津波対策としては,ドライサイトコンセプトという考え方が主流であったことは前示(前記⑶)のとおりである。しかし,本件で結果回避可能性を判断するため,津波対策として具体的にいかなる措置が想定されたかを検討するには,その対策の立案が求められる場面が,新たな原子力発電所の建設に際してどのような津波対策を採用するかという場面ではなく,既に稼働中の原子力発電所において,敷地の高さを超える津波が到来し,その結果として重大事故が生ずるという危険が存することが明らかとなったとして,経済産業大臣によ り技術基準適合命令が発せられたという場面であることに留意する必要がある。そして,津波そのものに対応するためのものではなく通常の浸水又は溢水に対応するための水密化という技術自体は新しいものではなく(乙B181),現に国内では東海第二原発や敦賀原子力発電所等の他の原子力発電所においては本件事故前に建屋の水密化工事が行われ(甲B435),国外でも主要建屋や重要機器室の水密化を実施していた原子力発電所も存在していた(前記第2節第5の3)し,平成22年8月から平成23年2月までに開催された福島地点津波対策ワーキングにおいても,防波堤のかさ上げ等と共に(海水ポンプの)電動機の水密化が提案され,こうした対策工事を組み合わせて対処するのがよいのではないかとの議論がされていた(前記第2節第3の2⑿)というのであるから,仮に,経済産業大臣から炉規法24条1項4号所定の基準適合性が失われていることが具体的に 事を組み合わせて対処するのがよいのではないかとの議論がされていた(前記第2節第3の2⑿)というのであるから,仮に,経済産業大臣から炉規法24条1項4号所定の基準適合性が失われていることが具体的に記載された技術基準適合命令が発せられ,最悪の場合は福島第一原発の「使用を一時停止」しなければならない(電気事業法40条)状況に置かれた一審被告東電において,基準適合性を回復させるために考え得る対策をあらゆる方面から検討したとすれば,防潮堤の設置と共に,それでも防ぎ切れない浸水に対応するための重要機器室及びタービン建屋等の水密化についても検討の対象となったであろうと推認することが相当であるというべきである。したがって,一審被告国の上記主張が,「防潮堤・防波堤の設置によりドライサイトであることを維持するという以外の結果回避措置は考えられなかった」という趣旨であるとしても,これを採用することはできないし,上記のような意味における重要機器室及びタービン建屋等の水密化では本件事故という結果発生を避けることが できなかったことについて的確な主張・立証がされていないというべきである。 ⑸ 小括以上によれば,一審原告らが主張する結果回避措置が実施できなかった又は実施していても本件事故が回避不可能であった旨の一審被告国の主張は採用できないから,結果回避可能性及び因果関係があることが事実上推認されるというべきである。 5 規制権限の性質及び被害者による被害回避可能性前記第1のとおり,技術基準適合命令の発令については経済産業大臣に専門技術的裁量が認められるのであるが,その裁量は飽くまで技術基準適合命令の発令には科学的,専門技術的知見に基づく総合判断を要することから認められるものであって,そうした根拠から離れた広範な裁量が許容さ 術的裁量が認められるのであるが,その裁量は飽くまで技術基準適合命令の発令には科学的,専門技術的知見に基づく総合判断を要することから認められるものであって,そうした根拠から離れた広範な裁量が許容されるものではない。そもそも経済産業大臣に規制権限が与えられている趣旨は,原子力事業者が利益追求のために安全性をないがしろにするようなことがあった場合に,同権限を行使して原子力災害を防止し公共の安全を確保することにあるのであって,仮に,原子炉施設において全交流電源喪失のような事態が発生する危険性が生じているのに原子力事業者においてそのような事態の発生を防止すべく適切な対応をとっていない場合には,当該施設の周辺の住民らが自ら被害を回避することは実際上不可能であって,経済産業大臣の権限行使によってしか安全性を確保することができないものである。加えて,我が国が,原子力基本法を始めとする関係法令,関与機関,賠償制度,交付金制度等を整備し,エネルギー政策として,原子力発電所の設置を推進してきたという経緯にも鑑みれば,原子炉施設周辺の住民のように何らの専門技術的知見を持たない一般人が,専門技術的知見を有しており,かつ知見を収集することが可能である経済 産業大臣の権限行使を期待し,それしか期待できないとするのも当然のことであったといえる。 そうだとすれば,福島第一原発の原子炉施設が技術基準に適合し安全性を具備している状態を確保するために一審被告東電を規制する立場にある経済産業大臣としては,一審被告東電が津波対策等の防災対策を適切に講じているか否かについて厳格に判断することが期待されていたというべきである。 6 「長期評価」の見解に対する一審被告国の対応⑴ 平成14年8月の一審被告東電に対するヒアリング等一審被告国は,「長 かについて厳格に判断することが期待されていたというべきである。 6 「長期評価」の見解に対する一審被告国の対応⑴ 平成14年8月の一審被告東電に対するヒアリング等一審被告国は,「長期評価」の見解が将来の地震発生可能性を確率によって示すという新しい考え方に基づく知見であり,福島第一原発の津波に対する安全性の基準該当性に係る従前の評価を覆し得る知見であったことは認めつつ,原子力規制機関においては,かかる知見の科学的根拠の有無・程度を検討することなく原子力規制に取り込むことはできないと認識されていたために,保安院においては,「長期評価」の見解が客観的かつ合理的根拠に裏付けられた知見であるのか否かについて調査する必要が生じたが,平成14年8月に一審被告東電から「長期評価」の見解の科学的根拠についてヒアリングをした結果,同見解が客観的かつ合理的根拠に裏付けられたものとは認められないと判断し,これを決定論的安全評価には取り入れず,確率論的安全評価の中で取り入れていくとの一審被告東電の方針を了解したものであり,「長期評価」の見解を裏付ける科学的根拠がなかったことを踏まえると,この時点における調査を十分に行ったと評価されるべきであると主張する。 しかしながら,前示(前記第2節第3の2⑴)のとおり,平成14年8月5日に行われた一審被告東電に対するヒアリングにおいて は,保安院は,当初,福島から茨城沖も津波地震をシミュレーションすべきとの見解を示したのに,一審被告東電担当者から,福島県沖では有史以来津波地震が発生していないし,谷岡・佐竹論文(1996)によると,津波地震は特定の領域や特定の条件下でのみ発生する極めて特殊な地震であるという考え方が示されているなどとして,同論文を示して約40分間にわたり抵抗されると,シ ,谷岡・佐竹論文(1996)によると,津波地震は特定の領域や特定の条件下でのみ発生する極めて特殊な地震であるという考え方が示されているなどとして,同論文を示して約40分間にわたり抵抗されると,シミュレーションすべきとの上記見解を一旦撤回して,地震本部がどのような根拠に基づいて「長期評価」の見解を示したのかを確認するよう指示したというのであり,さらに,この指示に対し,一審被告東電は,海溝型分科会の委員ではあるものの,上記の「抵抗」に際して用いた論文の共著者である佐竹健治ただ一人に問い合わせただけで,保安院に対し,佐竹委員に理由を聞いたところ,佐竹委員は,分科会で異論を唱えたが,分科会としてはどこでも起こると考えることになったとのことであった,土木学会手法に基づいて決定論的に検討すれば,福島沖から茨城沖には津波地震は想定しないことになるが,電力共通研究で実施する確率論ではそこで起こることを分岐として扱うことはできるので,そのように対応したいと保安院担当官に伝えたところ,保安院担当官は,それ以上の調査を一審被告東電に求めることもなく,一審被告東電の上記方針を了解したというのである。 上記事実によれば,当時の一審被告東電は,当初のヒアリングの段階から一貫して,「長期評価」の見解に基づき福島沖等に津波地震をシミュレーションさせられることを何としても回避したいと考えていたことが優に推認されるところ,そのような一審被告東電の考え方あるいは姿勢は,当日のやり取り自体から,保安院の担当官においても十分に認識できたはずであるといえる。そして,一審被告 東電が「長期評価」の見解の根拠を確認する対象者を自らの抵抗の根拠とした論文の共著者である佐竹健治ただ一人としたことの不適切さも保安院担当官において当然に認識し得たといえるし,当の 東電が「長期評価」の見解の根拠を確認する対象者を自らの抵抗の根拠とした論文の共著者である佐竹健治ただ一人としたことの不適切さも保安院担当官において当然に認識し得たといえるし,当の佐竹健治の回答内容に係る報告内容が正確で適切なものであるかについても,上記のような一審被告東電の不適切な対応を認識し得た保安院担当官としては,一審被告東電の報告を鵜呑みにするのではなく,自らにおいて確かめることが望まれたといえる。さらに,「決定論的に検討すれば津波地震は想定しないことになるが,確率論では分岐として扱うことはできる」という一審被告東電から示された考え方についても,そもそもこのときの報告自体からは,何故にそのような考え方が相当であるのかについての説明が尽くされていたとは認め難いし,確率論として扱うにせよ,問題となる事象が一旦現実化した場合にその危険性がどのようなものであるかを知ることに意義があることは同様であることは前示(前記第3節第2の8)のとおりであるから,かかる方針が示されたからといって,当初一審被告東電に津波地震のシミュレーションを求めた保安院担当官がその要請を撤回する合理的理由になるとは考え難いのであって,同担当官は,一審被告東電に対し,少なくとも海溝型分科会の主査である島崎邦彦や他の「長期評価」の見解の結論に賛成した委員に問い合わせさせるべきであったといえるし,上記のとおりシミュレーションの意義を否定すべき根拠が示されたとはいえず,むしろ一審被告東電の対応はいかにも都合の悪い情報を隠そうとしていることが疑われるようなものであったから,シミュレーションの要請を撤回する理由はなく,そのような方針変更が適切であったとはいえない。 しかも,津波の確率論的安全評価の手法(津波PSA)は,この平成14年当時のみならず本件事 のであったから,シミュレーションの要請を撤回する理由はなく,そのような方針変更が適切であったとはいえない。 しかも,津波の確率論的安全評価の手法(津波PSA)は,この平成14年当時のみならず本件事故時においてもなお,実際に施設に 適用するのに不可欠なフラジリティデータが不足していたことなどの理由により,いまだ既存の施設に適用できるレベルに達していなかったものであることは,一審被告国が自認するところである(令和2年1月20日当審第16準備書面122頁)から,少なくとも当面の安全対策には何ら資するものでなかったのであり,したがって,確率論的安全評価において「長期評価」の見解を考慮するという,平成14年8月に一審被告東電が一審被告国に対して示した方針は,それによって福島第一原発に係る喫緊の安全性確保の要請を満たし得るものでなかったことは明らかで,そのことは規制機関である保安院の担当官においても当然に認識し得たものであったというべきである。 結局,この時点の保安院の対応は,結果としては,国の一機関に多数の専門分野の学者が集まり議論して作成・公表した「長期評価」の見解について,その一構成員で反対趣旨の論文を発表していた一人の学者のみに問い合わせて同見解の信頼性を極めて限定的に捉えるという,一審被告東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり,規制当局に期待される役割を果たさなかったものといわざるを得ない。一般に営利企業たる原子力事業者においては,利益を重視するあまりややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから,規制当局としては,原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ,安全寄りの指導・規制をしていくことが期待されていたという 怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから,規制当局としては,原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ,安全寄りの指導・規制をしていくことが期待されていたというべきであって,上記対応は,規制当局の姿勢として不十分なものであったとの批判を免れない。 ⑵ 保安院によるその後の調査一審被告国は,保安院は,上記⑴のとおり,一審被告東電に対し てヒアリング等を行い,ひとまず一審被告東電の対応案を了解した以降も,以下のとおり地震及び津波について科学的知見を収集する仕組みを設けていたものの,「長期評価」の見解の正当性を裏付ける科学的知見や科学的根拠が発表されていない状況であったため,そのような知見の収集の仕組みの中で「長期評価」の見解が規制に取り入れられるべき科学的知見として取り上げられることはなかったのであるから,保安院の「長期評価」の見解についての調査が不十分であったとはいえないと主張する。 すなわち,①保安院が財団法人原子力発電技術機構(以下「NUPEC」という。)に委託していた地震及び津波に関する新たな知見の収集検討事業は,平成15年11月以降はJNESの事業となったため,保安院とJNESと連携した「安全情報検討会」を立ち上げ,新知見について調査を行うこととしたところ,保安院は,マドラス原発溢水事故(平成16年)を受け,安全情報検討会において平成17年6月以降外部溢水問題について本格的な検討を開始し,情報収集に努めていたが,これらのNUPECや安全情報検討会を通じた情報収集において,「長期評価」の見解が取り上げられることはなかった。②保安院は,原子力事業者に働きかけて平成18年1月に「溢水勉強会」を立ち上げたが,平成19年4月に報告がまとめられるまでの間に「長期 集において,「長期評価」の見解が取り上げられることはなかった。②保安院は,原子力事業者に働きかけて平成18年1月に「溢水勉強会」を立ち上げたが,平成19年4月に報告がまとめられるまでの間に「長期評価」の見解が取り上げられることはなかった。③平成18年9月に改訂された耐震設計審査指針に津波に対する安全性評価が盛り込まれたのに伴い,溢水勉強会では,外部溢水に係る津波の対応については耐震バックチェックに委ねることとされたが,女川原発の耐震バックチェックにおいて,JNES及び東北電力は波源モデルの位置を検討するに当たって「長期評価」の見解に拠る領域区分を採用しなかったし,福島第一原発の耐震バ ックチェックにおいても,専門家から「長期評価」の見解に基づいて津波の解析・評価をする必要があるとの意見が表明されることはなかった。④保安院は,平成22年12月16日付けで「原子力施設の耐震安全性に係る新たな科学的・技術的知見の継続的な収集及び評価への反映等のための取組について(平成21年度)」と題する報告書(乙B199)を取りまとめたところ,そこでは地震本部の全国地震動予測地図は専門家の審議を踏まえて「新知見情報」ではなく「新知見関連情報」と位置付けられ,平成21年3月に改訂された「長期評価」に至っては「参考情報」に位置付けられるにとどまり,「長期評価」の見解を規制に直ちに反映する必要があるとは判断されなかった。これらの保安院の調査態勢及び調査状況によれば,「長期評価」の見解に対する調査が不十分であったとはいえない,というのである。 しかしながら,仮に平成14年8月頃の一審被告国の「長期評価」の見解の信頼性に関する調査がその時点で適切なものであったと評価できるのであれば,その後の一審被告国の規制権限不行使の違法性は,その後の しかしながら,仮に平成14年8月頃の一審被告国の「長期評価」の見解の信頼性に関する調査がその時点で適切なものであったと評価できるのであれば,その後の一審被告国の規制権限不行使の違法性は,その後の知見の進展等により一審被告国に新たな調査義務が生じたかどうか,また,生じたとすれば一審被告国において同義務を果たしたと評価できるかどうかという観点から検討されるべきこととなり,その後に「長期評価」の見解の正当性を裏付ける科学的知見や科学的根拠が発表されていなかったとの一審被告国の主張は,新たな調査義務を生じさせる出来事がなかったとの趣旨で意味があることとなろうが,本件においては,前示のとおり,そもそも平成14年8月頃の一審被告国の調査が不適切であったというほかないのであるから,仮にその後に新たな調査義務を生じさせる出来事が なかったとしても,当初の不適切な対応が直ちに正当化されるものではないというべきである。 さらに,上記各主張の内容自体を検討しても,上記①及び②のNUPEC及び安全情報検討会によるマドラス原発溢水事故を受けた外部溢水問題についての検討過程や溢水勉強会において「長期評価」の見解が取り上げられなかったとの点については,そこでの検討対象の中心は外部溢水があったと仮定した場合の問題点や対策であっために,外部溢水があるか否かに関わる「長期評価」の見解は取り上げられなかったものと解されるから,そのことが一審被告国の調査が不十分であったとの評価を妨げるものとはならない。それどころか,マドラス原発溢水事故は,最終ヒートシンクの喪失という結果への対策という観点から着目すべき事故であったところ,同事故の発生により津波に対する原子力発電所の脆弱性が顕在化し溢水事故に対する関心が高まったことから,保安院主導で平成18年1月 喪失という結果への対策という観点から着目すべき事故であったところ,同事故の発生により津波に対する原子力発電所の脆弱性が顕在化し溢水事故に対する関心が高まったことから,保安院主導で平成18年1月までに溢水勉強会が立ち上げられ,平成19年3月まで合計10回にわたる議論が行われた上で,同年4月に報告書が取りまとめられたものであり,取り分け,平成18年5月11日に開かれた第3回溢水勉強会においては,一審被告東電から,O.P.+14mの津波を仮定して福島第一原発5号機の機器影響評価を行ったところ,電源設備の機能を喪失する可能性があり,それに伴い原子炉安全停止に関わる電動機,弁等の動的機器が機能を喪失することが確認された旨の報告を受けた(前記第2節第5の4⑵)のであるから,この時点では,一審被告国においても,敷地高さを超える津波が到来すれば福島第一原発が重大事故を起こす危険性が高いことを現実に認識したと認められるところである。そうすると,これらの事実は「長期評価」の見解に対する平成14年の不適切な対応を見直し, 改めて適切な対応をとる契機とすべき重要なものであったといえるが,それにもかかわらず,一審被告国が格別の対応をとらなかったことは,一層不適切なものであったといわざるを得ない。 上記③の耐震バックチェックの対応についても,一審被告国も主張する平成18年9月の耐震設計審査指針の改訂により,「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」が要求されるようになり,保安院が,これに基づいた耐震バックチェックを一審被告東電を含む原子力事業者に対し指示したことは,津波による浸水が原子炉施設の重大事故に発展し得ることについての がないこと」が要求されるようになり,保安院が,これに基づいた耐震バックチェックを一審被告東電を含む原子力事業者に対し指示したことは,津波による浸水が原子炉施設の重大事故に発展し得ることについての知見の集積が反映されたものといえるのに,当時の耐震バックチェックの手続においては「津波評価技術」の地震想定及び数値シミュレーションの手法によって行われることが事実上前提とされていた(甲B1の1・389頁,甲B275・6頁)ために,一審被告国が主張する対応となったものであり,かえって,保安院によるバックチェックが,原子力事業者において評価した数値が正しいかを同じ視点からチェックする程度の機能しか果たしていなかったとの指摘をせざるを得ないところである。また,東北電力の耐震バックチェックにおける保安院に対する最終報告書及びJNESによるクロスチェックにおいて,断層位置を津波評価技術の領域区分の「領域3」の最南端を波源モデルとして選択したことについては,女川原発の立地からすれば当然であり(乙B390・付録4頁等参照),「長期評価」の見解を採用するか否かはそこではほとんど影響がなかったといえるから,福島第一原発について福島県沖の海溝寄りを震源域として想定すべきであったかどうかという観点で「長期評価」の見解を採用するか否かが重要である本件の判断 を左右するものではないというべきである(なお,この点,一審被告国は,「領域3」を津波評価技術の領域を超えてさらに南方にずらし,女川原発に沖合で正対するような位置に設定した場合は,上記波源モデルによる想定津波を更に上回る最大津波水位が推計される可能性が否定できなかったと主張するが,その当時具体的にそのような推計値があったにもかかわらず東北電力がそれを選択しなかったものではなく,あくまでも可能 想定津波を更に上回る最大津波水位が推計される可能性が否定できなかったと主張するが,その当時具体的にそのような推計値があったにもかかわらず東北電力がそれを選択しなかったものではなく,あくまでも可能性を基礎とした事後的な主張にすぎないし,この点を一旦措き,波源をより南方にずらせば更に高い最大津波水位が推計されたと仮定したとしても,東北電力による最終報告書の内容が問題となり得ることはともかく,このことから,福島第一原発において「長期評価」の見解を採用しなかったことが正当化されることにはならず,いずれにせよ一審被告国の主張は失当であるといわざるを得ない。)。 上記④の,保安院が平成22年12月16日付けで作成した上記報告書において,「長期評価」の見解を「新知見情報」にも「新知見関連情報」にも位置付けなかったことについては,保安院を含めた経済産業大臣による規制権限の不行使が問題とされている本訴において,その不行使を正当化する根拠とはなり得ず,主張自体失当というべきである。この点を一旦措いたとしても,同報告書では一応「津波」の部門も設けてはいるものの,その主たる対象は,その表題や「新知見情報」等の定義に照らし,あくまでも耐震安全性及び耐震裕度に係る評価であって,津波地震や津波等に係る安全評価ではないと考えられる上,同報告書の評価対象は主に平成21年度に発表された文献等であって,「長期評価」は対象外であったともいえるから(乙B199・1,3頁),同報告書に取り上げられなかったことはさして大きな意味を持つものではないというべきである。 以上のとおり,一審被告国の上記主張はいずれも採用することができず,かえって,前示のとおり,「長期評価」公表後も,マドラス原発溢水事故(平成16年)が発生し,これを契機に溢水事故に対する関心 以上のとおり,一審被告国の上記主張はいずれも採用することができず,かえって,前示のとおり,「長期評価」公表後も,マドラス原発溢水事故(平成16年)が発生し,これを契機に溢水事故に対する関心が高まって溢水勉強会が立ち上げられ,その中では津波の到来により原子炉安全停止にかかわる動的機器が機能喪失に至ることが判明したこと,耐震設計審査が「極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波」によっても施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないことを求めるに至ったこと,さらには,平成18年3月や10月に,国会の衆議院の委員会質疑において,福島第一原発を含む我が国の原子力発電所の電源設備の津波等に対する脆弱性が深刻な重大事故につながり得ることを前提とした質問がされることもあったこと(前記第2節第5の5)等の事実に鑑みれば,「長期評価」が公表された以降も,津波による浸水により福島第一原発の電源設備がダメージを受ければ重大事故に発展し得ることについての知見が積み重ねられており,それについて経済産業大臣において認識し得たというべきであるから,平成14年末頃までにO.P.+10mを超える津波あるいは本件試算津波から安全裕度等を踏まえた一定の幅を持った範囲の津波が福島第一原発に到来することについて認識し得た経済産業大臣による技術基準適合命令の発令という規制権限行使に対する期待は一層高まっていたというべきである。 なお,原子力規制に関するこの間の保安院の姿勢をうかがわせる本件の証拠関係に現れたエピソードとして,例えば,平成21年8月28日及び同年9月7日に保安院で行われた一審被告東電からのヒアリング(平成21年報告)において,保安院審査官が,「JNESによる浜岡原子力発電所に係る津波クロスチェックで東海,東南 月28日及び同年9月7日に保安院で行われた一審被告東電からのヒアリング(平成21年報告)において,保安院審査官が,「JNESによる浜岡原子力発電所に係る津波クロスチェックで東海,東南 海,南海の3地震の連動を考慮したシミュレーションをしたところ,津波の大きさは中部電力の評価結果を大きく上回る結果となったが,この扱いはバックチェックとは切り離し,余裕を考慮した津波への対処として中部電力が自主的に設備対策をするということで落ち着いた。」,「十分検討されていないモデル[裁判所注:「長期評価」の見解を指すものと解される。]による結果で運転中プラントが止まってしまう等という不合理なことを考える人はいないと思う。ただし,先生方がどう言うかだが… 。バックチェックでまともに扱うべきとの意見は暴論だと思うが,他方で,全く触れないということで通るかどうかは議論があるかもしれない。」などと話した上,「JNESのクロスチェックでは女川と福島の津波について重点的に実施する予定になっているが,福島の状況に基づきJNESをよくコントロールしたい。無邪気に計算してJNESが大騒ぎすることは避ける。」などと発言していたこと(乙B394の4・621~623頁,前)が挙げられる。かかる発言からは,津波の浸水により原子力発電所が重大事故を起こす危険性があるという情報が積み重ねられてきた平成21年8月ないし9月という時期において,保安院の審査官が,福島第一原発について「長期評価」の見解に基づいた津波の試算を行った場合には,「JNESが大騒ぎする」ような結果が出ることを濃厚に予測していたことが推認されるといえるが,さらに,同審査官が,規制の対象者たる原子力事業者である一審被告東電の担当者の面前で,「福島の状況に基づきJNESをよくコントロールしたい 出ることを濃厚に予測していたことが推認されるといえるが,さらに,同審査官が,規制の対象者たる原子力事業者である一審被告東電の担当者の面前で,「福島の状況に基づきJNESをよくコントロールしたい。無邪気に計算してJNESが大騒ぎすることは避ける。」などと発言していたというのであるから,これでは原子力規制機関であるはずの保安院が,原子力事業者である一審被告東電の側に立ち,むしろ原子力事業者と一体化して,「原子力施設 及び原子炉施設の設計に関する安全性の解析及び評価等を行うことにより,原子力の安全の確保のための基盤の整備を図ることを目的とする」(平成25年法律第82号による廃止前の独立行政法人原子力安全基盤機構法4条)独立行政法人であるJNESによる安全性のチェックを阻止しようとしていたとの批判すら免れず,原子力規制機関の担当官としては誠にあるまじき言動であったといわざるを得ない。 ⑶ 「津波評価技術」の考え方との関係一審被告国は,原子力規制機関は,設置許可処分時だけでなく同処分後も,原子炉施設が相対的安全性を確保できているか否かの判断について専門技術的裁量を有していると解されるから,裁判所が使用開始後の原子炉施設に関する原子力規制機関の規制権限不行使の適否を審理するに当たっては,その審理判断は,その当時の科学技術水準に照らし,①使用開始後の原子炉施設に関して用いられた安全性の審査又は判断の基準に不合理な点があるか否か,②当該原子炉施設がその基準に適合するとした原子力規制機関の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か,という2段階で行われるべきであり,設定した審査基準等の内容が不合理であるか,又はその基準への適合性の判断が不合理であるといえない限り,規制権限の不行使が裁量を逸脱したものとして国賠 があるか否か,という2段階で行われるべきであり,設定した審査基準等の内容が不合理であるか,又はその基準への適合性の判断が不合理であるといえない限り,規制権限の不行使が裁量を逸脱したものとして国賠法上の違法性が認められる余地はないとした上,本件事故当時,保安院等の原子力規制機関は,想定津波に対する波源設定の安全性の審査又は判断の基準として,事実上「津波評価技術」と同様の考え方を採用していたところ,「津波評価技術」の考え方は科学的な合理性を有するものであったから,これに基づく経済産業大臣による規制権限不行使も違法ではなかったと主張する。 しかしながら,そもそも上記主張が前提とする2段階審査の判断枠組みをいう一審被告国の主張が採用できないことは,前記第1の2において説示したとおりである。また,設置許可処分は,規制行政庁である内閣総理大臣においてあらかじめ各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を聴き,これを尊重してしなければならないと定められているのに対し,経済産業大臣が技術基準適合命令を発するに当たっては,そのような意見聴取の手続が定められているわけではない。実質的にも,設置許可処分の際には,仮に安全性に欠ける原子炉施設の設置を許可すれば,それまでには全くなかった重大な危険性を周辺地域に生じさせることになってしまうのであるから,専門分野の学識経験者らの意見を聴く等の重く慎重な手続を経させることは安全性を重視した必要かつ合理的なものであるといえるのに対し,既に稼働している原子炉施設に危険性が存することが発覚した場合には,設置の際と同様の重い手続を経なければ危険性を解消できないというのは明らかに不合理であるから,上記のような規定の相違にはむしろ合理的根拠があるといえ 子炉施設に危険性が存することが発覚した場合には,設置の際と同様の重い手続を経なければ危険性を解消できないというのは明らかに不合理であるから,上記のような規定の相違にはむしろ合理的根拠があるといえる。 もっとも,設置許可処分に際して上記のような意見聴取手続が定められている趣旨に鑑みれば,一旦は炉規法24条1項4号所定の基準適合性があると認められ設置許可がされた発電用原子炉について,その後の科学的,専門技術的知見の進歩により,同号所定の基準適合性が失われたことを理由に技術基準適合命令の発令が問題になるような場合にも,何らかの形で科学的,専門技術的知見に基づく意見を聴取する手続を踏むこと自体は適切であると考えられるが,本件においては,そもそもそのような手続がとられた事実は認められない。 この点,一審被告国は,原子力規制機関は,想定津波に対する波源設定の安全性の審査又は判断の基準として,事実上「津波評価技術」と同様の基準を採用していたのであるから,裁判所はこの事実上の審査基準の合理性とその具体的な適合性の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があったか否かによって審査すべきであると主張する。 しかしながら,上記主張のうち2段階審査の判断枠組みに係る部分が採用できないことは前示(前記第1の2)のとおりである上,そもそも「津波評価技術」は,一審被告国も自認するとおり,保安院等の当時の原子力規制機関が「事実上」基準として用いていたにすぎないものであるし,これを作成した土木学会原子力土木委員会津波評価部会は,土木工学に関する民間の学会である土木学会に設置され,平成13年3月時点において委員及び幹事30人のうち過半数を電力会社又はその関連団体に所属する者が占めるような部会であったから,原子力事業者を適正 木工学に関する民間の学会である土木学会に設置され,平成13年3月時点において委員及び幹事30人のうち過半数を電力会社又はその関連団体に所属する者が占めるような部会であったから,原子力事業者を適正に監督・規制するための見解を策定するには不向きな団体であるといわざるを得ないことは前示(前記3⑶オ)のとおりであって,同部会や同部会が作成した「津波評価技術」をもって,原子炉設置許可処分の取消訴訟において裁判所が尊重すべき,法令上「原子力の研究,開発及び利用に関する行政の民主的な運営を図るため」(原子力委員会及び原子力安全委員会設置法(平成24年法律第47号による改正前の昭和30年法律第188号)1条)に設置された原子力安全委員会や原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議や判断と同列に扱うことはできないというべきである。 また,前記認定事実のとおり,土木学会津波評価部会で実施された平成16年度アンケートでは,地震学者グループによる「JTT 1~JTT3は一体の活動域で,活動域内のどこでも津波地震が発生する」とした重みが平均で「0.65」であり,津波地震は福島県沖日本海溝沿い領域も含めどこでも起こるとする判断の方が,福島県沖日本海溝沿い領域では起きないとする判断よりも有力であった地震活動域(JTT)」で「超長期の間にMt8級の地震が発生する可能性」について重み付けをさせた平成20年アンケートでは,地震学者のみの回答結果は記されていないものの,「活動域内のどこでも津波地震が発生するが,北部領域に比べ南部ではすべり量が小さい」とした重みが「0.35」,「活動域内のどこでも津波地震(1896年タイプ)が発生し,南部でも北部と同程度のすべり量の津波地震が発生する」とした重みが「0.25」であり,その和(0.6)は 小さい」とした重みが「0.35」,「活動域内のどこでも津波地震(1896年タイプ)が発生し,南部でも北部と同程度のすべり量の津波地震が発生する」とした重みが「0.25」であり,その和(0.6)は,「過去に発生例がある三陸沖(1611年,1896年の発生領域)と房総沖(1677年の発生領域)でのみ過去と同様の様式で津波地震が発生する」とした重み(0.4)を上回って電力会社やその関連団体に所属する者が多数加わっている土木学会においても,「長期評価」の見解の信頼性を否定するような見解が一般的であったわけではなく,むしろ,地震学者の間では,津波地震は福島県沖日本海溝沿い領域も含めどこでも起こるとする判断の方が,福島県沖日本海溝沿い領域では起きないとする判断よりも有力であったといえるから,一審被告国の主張はこの意味でも失当である。 この点,佐竹健治は,当審において,「津波評価技術」が,既往津波の発生履歴が確認できない領域を含めて,地震地体構造の知見に基づいて波源を設定するとの考え方を採用していたことは,安全寄りに波源を設定する上で合理的な方法であり,地震地体構造の知見 を十分検討せずして,既往津波の発生履歴が確認できない領域に合理的な波源を設定する方法はないと考えられる旨の意見書(乙B392)を提出しているが,これは,本件地震が発生した時点までに地震地体構造の見解が確立していたとはいえないにもかかわらず,当時においても地震地体構造に拠って波源設定をすることのみが合理的であったとする一学者の見解にすぎず,上記の土木学会津波評価部会におけるアンケート結果のほか,例えば,平成18年に一審においてすら,「JTT系列はいずれも似通った沈み込み状態に沿って位置しているため,日本海溝沿いの全てのJTT系列において津波地震 評価部会におけるアンケート結果のほか,例えば,平成18年に一審においてすら,「JTT系列はいずれも似通った沈み込み状態に沿って位置しているため,日本海溝沿いの全てのJTT系列において津波地震が発生すると仮定しても良いのかもしれない」と述べられていることや,佐竹健治自身,別件訴訟における反対尋問においては,「津波評価技術」と「長期評価」とは作成の目的が異なるものであり,「津波評価技術」は起こった地震から津波を計算する技術としては当時の最高度の技術を集約したものではあるが,過去の地震についての詳細な検討はしていないから,将来どこでどういう地震や津波が起きるかについての詳細な検討はできず,それを正にメインテーマとして行ったのが「長期評価」であって,どこでどんな地震が起きるかに関しては,「長期評価」の方が優れた知見であるということでよいかと問われて,そうである旨を証言していたこと(乙B156・59頁)等に照らし,上記意見書の記載は本件の判断を左右するものとはいえない(なお,佐竹健治は,上記意見書において,上記証言は,「津波評価技術」と「長期評価」とは目的・役割が異なり,「長期評価」は防災に役立つ情報を広く国民に向けて提供するため,信頼性の高い情報も低い情報も併せて同様に評価の基礎に置いていることなどを述べたものである旨も記載しているが,かかる記 載は,上記証言の趣旨から明らかにかけ離れているといわざるを得ない上,その内容自体が採用できないことは,前記3⑶アに説示したところと同様である。)。 7 総合的検討⑴ 規制権限不行使の違法性以上に認定説示した諸事情のほか,本件においては,規制権限を行使した場合に生ずる不利益は特定の企業たる原子力事業者の財産的負担にとどまり,例えば,薬剤の承認取消し措置を講ずれ 行使の違法性以上に認定説示した諸事情のほか,本件においては,規制権限を行使した場合に生ずる不利益は特定の企業たる原子力事業者の財産的負担にとどまり,例えば,薬剤の承認取消し措置を講ずれば当該薬剤を必要とする患者の治療を受ける機会を奪いかねないといった事情が存するケース(最高裁平成7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁[クロロキン薬害訴訟])とは異なること,また,前示(前記3⑵)のとおり,経済産業大臣においては,遅くとも平成14年末頃までには,福島第一原発にO.P.+10mを超える津波が到来する可能性について認識し得たというべきであるところ,敷地高さを超える津波が到来すれば福島第一原発が重大事故を起こす危険性が高いことは,この時点でも認識することが期待されたところではあるが,平成18年5月の溢水勉強会における一審被告東電の報告(前記第2節第5の4⑵)により,一審被告国としてこれを現実に認識したと認められること,さらに,同年9月には,耐震設計審査指針が全面改訂されて既存の原子炉施設に対する耐震バックチェックが始まり,改訂された審査指針には,「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」が加えられて,この津波安全性評価も耐震バックチェックの対象とされるに至ったこと(前記第2節第4の5)などが指摘できるところである。 これら本件において現れた全ての事情を総合考慮すると,本件における経済産業大臣による技術基準適合命令に係る規制権限の不行使は,経済産業大臣に専門技術的裁量が認められることを考慮しても,遅くとも平成18年末までには,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くに至ったものと認め よる技術基準適合命令に係る規制権限の不行使は,経済産業大臣に専門技術的裁量が認められることを考慮しても,遅くとも平成18年末までには,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くに至ったものと認めることが相当であり,一審原告らとの関係において,国賠法1条1項の適用上違法となるものというべきである。 ⑵ 一審被告国の主張に対する判断これに対し,一審被告国は,原子力基本法及び炉規法が想定する原子力発電所の安全性は,いわゆる相対的安全性(何らかの事故発生等の危険性の程度が,科学技術の利用により得られる利益の大きさとの対比において,社会通念上容認できる水準であると一般に考えられる場合に,これをもって安全と評価するという意味での安全性)を意味し,原子力規制機関は,設置許可処分時だけでなく同処分後も,原子力発電所が相対的安全性を備えているか否かの判断について専門技術的裁量を有しているから,裁判所が,使用開始後の原子炉施設に関する原子力規制機関の規制権限の不行使が国賠法上違法となるか否かを判断するに当たっては,規制権限の不行使が問題とされる当時の科学技術水準に照らし,①使用開始後の原子炉施設に関して用いられた安全性の審査又は判断の基準に不合理な点があるか否か,②当該原子炉施設がその基準に適合するとした原子力規制機関の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か,という2段階の観点から行われるべきであり,設定した審査基準等の内容が不合理であるか,又はその基準への適合性の判断が不合理であるといえない限り,規制権限の不行使が裁量を逸脱したものとして国賠法上の違法性が問題となる余地はないのであって,控訴審にお いて取り分け強く主張するのはこの点であるとする(令和2年1月20日付け当審第15準備書面181頁)。 上記主張のうち, 賠法上の違法性が問題となる余地はないのであって,控訴審にお いて取り分け強く主張するのはこの点であるとする(令和2年1月20日付け当審第15準備書面181頁)。 上記主張のうち,2段階審査の判断枠組みをいう一審被告国の主張が採用できないことは,前記第1の2において説示したとおりであるが,他方,原子炉施設に求められる安全性が,一審被告国が主張するところのいわゆる相対的安全性であることは,当裁判所もこれを否定するものではなく,本件においては,「長期評価」の見解に代表される本件事故までに積み重ねられていた知見によれば,重大な原子炉事故が発生する危険性の程度が,「科学技術の利用により得られる利益の大きさとの対比において,社会通念上容認できる水準であると一般に考えられる」程度を超えていたのではないかが問題の核心であって,一審被告国の多岐にわたる主張も,かかる観点から考慮すべきものであると解される。そして,本件当時において上記危険性の程度が「社会通念上容認できる水準」を超えていたかどうかを判断するに当たっては,結果の重大性に影響された先入観をもって過去を振り返ることはもとより慎むべきであるが,他方において,結果の発生を防止し得なかった関係者が,自己の不作為を無意識的にでも正当化するために当時の認識を潤色して記憶を喚起するおそれもあるのであるから,関係者の回顧的供述ではなく当時客観的に実際に存した事実関係や言動等が重視されるべきであって,以上の当裁判所の検討は,かかる観点を踏まえて進めてきた上で,たとえ今後30年に(特定海域として)6%程度の確率でMt8. 2前後の地震が起きる可能性にすぎないとしても(前記第2節第3そのような地震が引き起こし得る(前記第3節第2の4等)本件事故のような極めて甚大で取り返しのつかない重大な )6%程度の確率でMt8. 2前後の地震が起きる可能性にすぎないとしても(前記第2節第3そのような地震が引き起こし得る(前記第3節第2の4等)本件事故のような極めて甚大で取り返しのつかない重大な原子炉事故(前記第2の2等)が発生する危険性の程 度は,「科学技術の利用により得られる利益の大きさとの対比において,社会通念上容認できる水準であると一般に考えられる」程度を超えていたと判断したものである。 なお,本件証拠関係によれば,一審被告東電に関する事実として,①一審被告東電が,平成14年8月に保安院担当官から「長期評価」の見解に基づく津波地震のシミュレーションを求められたのに強く抵抗し,「長期評価」の見解の根拠に関する調査についても,同見解に反する論文の著者である委員一人のみに問い合わせ,調査の趣旨に沿わない不適切な報告をしただけで,シミュレーションを行わないままで済ませたこと(前記第2節第3の2⑴),②平成20年8ないし9月頃の一審被告東電内部における平成20年試算の結果への対応の検討においては,「長期評価」の見解を否定できる地震学的データはなく,津波評価に当たり同見解を無視することは困難であって,現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定されるから,津波対策は不可避である旨の情報が共有されていたこと(「津波評価にあたって推本を無視することは困難」,「推本見解を完全否定することは困難」,「世間(自治体,マスコミ・・・)がなるほどと言うような説明がすぐには思いつきません」,「最終報告前であっても,ちょっとした質問,コメントとして公開の場で,明日以降にいつでも「推本津波」が話題に出る可能性自体はある」等の一審被告東電内部文書等における記載,「地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全 メントとして公開の場で,明日以降にいつでも「推本津波」が話題に出る可能性自体はある」等の一審被告東電内部文書等における記載,「地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると,現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され,津波対策は不可避」等の一審被告東電内部における耐震バックチェック説明会における配布資料の記載等。 わらず,平成21年8月には,一審被告東電の原子力設備管理部長 が,部下に対し,平成20年試算による波高の結果は保安院から明示的に説明を求められるまでは説明不要であると指示していたこと(同⑽)等が認められるのであって,これらの事実によれば,当時の一審被告東電が,「長期評価」の見解に基づく試算結果が公になれば津波対策を迫られることが確実であり,その要請を拒絶することは不可能であると認識していたことが認められる。そして,かかる事実からは,当時の一審被告東電が,「仮に「長期評価」の見解が正しいとすれば重大な原子炉事故が発生する危険性があるとしても,同見解は客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見ではないから,現時点においては何ら対策を講じなくてよい」などという説明が社会通念上容認されるとは,およそ考えていなかったことが優に推認されるというべきである。 また,一審被告国の規制機関たる保安院の担当官についても,前記6⑵の,平成21年8月及び9月に行われた一審被告東電からのヒアリングにおける「福島の状況に基づきJNESをよくコントロールしたい。無邪気に計算してJNESが大騒ぎすることは避ける。」などの発言からは,福島第一原発について「長期評価」の見解に基づいて到来する津波の試算を行った場合には,同原発の安全性に重大な問題が発覚したとJNESが大騒ぎ てJNESが大騒ぎすることは避ける。」などの発言からは,福島第一原発について「長期評価」の見解に基づいて到来する津波の試算を行った場合には,同原発の安全性に重大な問題が発覚したとJNESが大騒ぎし,一審被告らがその対応に苦慮することとなるような結果が出ることを濃厚に予測していたことが推認されるのであって,かかる事実からは,同担当官においても,「仮に「長期評価」の見解が正しいとすれば重大な原子炉事故が発生する危険性があるとしても,同見解は客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見ではないから,現時点においては何ら対策を講じなくてよい」などという説明が社会通念上容認されるとは,およそ考えていなかったことが優に推認されるというべきである。 以上のような本件における現実の事実経過は,「長期評価」の見解等当時の知見によれば,重大な原子炉事故が発生する危険性の程度が,「科学技術の利用により得られる利益の大きさとの対比において,社会通念上容認できる水準であると一般に考えられる」程度を超えていたことについて,一審被告らにおいても認識していたことの証左であるというべきであって,そのいずれもが,福島第一原発について「長期評価」の見解による想定津波の試算が行われれば,喫緊の対策措置を講じなければならなくなる可能性を認識しながら,そうなった場合の影響(主として一審被告東電の経済的負担)の大きさを恐れる余り,そのような試算自体を避けようとし,あるいはそのような試算結果が公になることを避けようとしていたものと認めざるを得ないというべきである。 なお,一審被告国は,当審において,原子力規制実務では,審議会(原子炉安全専門審査会等)において,自然科学に限らない様々な分野の専門家が,当該科学的知見が原子力規制に取り込むだけの客観的かつ合理的 なお,一審被告国は,当審において,原子力規制実務では,審議会(原子炉安全専門審査会等)において,自然科学に限らない様々な分野の専門家が,当該科学的知見が原子力規制に取り込むだけの客観的かつ合理的根拠を伴っているかという点について審議をした上で,当該科学的知見を規制に取り入れるかどうかを判断していることから,規制権限の行使を正当化するだけの客観的かつ合理的根拠が伴っている科学的知見というためには,少なくとも,そのような様々な分野の専門家(審議会等)の検証に耐え得る程度の客観的かつ合理的根拠が伴っていなければならず,単に国の機関が発表した見解や意見であるというだけでは足りないというべきである,とも主張するに至っている。 しかしながら,既に認定説示してきたところに照らせば,「長期評価」の見解が公表された平成14年に,一審被告国が「様々な分野の専門家から成る審議会等」による検証を行っていないことはもと より,そのような検証を行う必要があるかどうかを検討したことすらなかったに等しいといわざるを得ないのであって,これを当時においてそのような「検証に耐え得る程度の客観的かつ合理的根拠」がないと判断したかのようにいうことは,現に何も行っていなかったことを後付けで合理化しようとする主張であるとの批判を免れ難い。 以上のとおり,一審被告国の主張はいずれも理由がないというべきである。 第3 一審被告国の損害賠償責任とその範囲 1 一審被告国の損害賠償責任の成否以上によれば,本件における経済産業大臣の技術基準適合命令に係る規制権限の不行使は,遅くとも平成18年末までには国賠法1条1項の適用上違法となったというべきであり,かつ,この時点においては経済産業大臣の過失も認められ,上記不行使と本件事故との因果関係も認められるか 限の不行使は,遅くとも平成18年末までには国賠法1条1項の適用上違法となったというべきであり,かつ,この時点においては経済産業大臣の過失も認められ,上記不行使と本件事故との因果関係も認められるから,一審被告国は,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を免れないというべきである。 2 一審被告国の損害賠償責任の範囲一審被告国は,仮に一審被告らが損害賠償責任を負うとしても,本件において一次的かつ最終的な責任を負うのは福島第一原発の設置・運営に当たっていた一審被告東電であり,一審被告国の規制権限不行使の責任は二次的かつ補完的なものにとどまるから,一審被告国の損害賠償責任は,一審被告東電の損害賠償責任よりも限定された範囲にとどまると主張する。 しかしながら,確かに,福島第一原発の安全管理について一次的に責任を負うのは,事業者である一審被告東電であり,一審被告国の責任は二次的・後見的なものであるということはできるものの,そのこ とは,一審被告ら間における内部的な責任負担割合を決める事情としては考慮されるとしても,一審原告らに対する損害賠償責任を限定する法律上の根拠に直ちになるわけではない。むしろ,原子力発電所の設置・運営は,原子力の利用の一環として国家のエネルギー政策に深く関わる問題であり,我が国においては,一審被告国がその推進政策を採用し,原子力発電所に高い安全性を求めることを明示しつつ,自らの責任において,一審被告東電に福島第一原発の設置を許可し,その後も許可を維持してきたものであった。このような原子力発電所に特有の事情を含む本件に現れた諸事情を総合考慮するならば,本件事故によって損害を被った者との対外的な関係において,一審被告国の立場が二次的・補完的であることを根拠として,その責任の範囲を発生した損害 有の事情を含む本件に現れた諸事情を総合考慮するならば,本件事故によって損害を被った者との対外的な関係において,一審被告国の立場が二次的・補完的であることを根拠として,その責任の範囲を発生した損害の一部のみに限定することは,相当でないというべきである。 したがって,一審被告国の上記主張を採用することはできず,一審被告東電及び一審被告国は一審原告らに係る損害全体についての損害賠償債務を負い,これらは不真正連帯債務の関係に立つものと解することが相当である。 第5節損害論(総論)第1 一審原告らの請求の整理 1 提訴後損害分として請求している部分について一審原告らは,平穏生活権侵害による請求を,①本件事故日から第1,第3,第4又は第5事件の各提訴日の前日まで1か月5万5000円(ただし,承継一審原告らについては各自の承継分に応じた金額。 以下,この段落において同じ。)の割合による金員及びこれに対する本件事故日である平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた上,これに加えて,②上記各提訴日から口頭弁論終結日まで1か月5万5000円の割合による金員の支払を求め(一審原告らは,当審において,口頭弁論終結日の翌日から原判決別紙2原告目録の各「旧居住地」欄記載の居住地において空間線量率が1時間当たり0.04μ Sv以下となるまで1か月5万5000円の割合による金員の支払を求める部分に係る訴えを取り下げ,一審被告らはこれに同意した。),さらに,当審における追加請求として,③上記提訴日から口頭弁論終結日まで1か月5万5000円の割合による金員に対する本件事故日である平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 原審においては,上 提訴日から口頭弁論終結日まで1か月5万5000円の割合による金員に対する本件事故日である平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 原審においては,上記②の請求(上記の当審における一部取下げ前のもの)に係る訴えについて,一審被告らから,そのうち口頭弁論終結日の翌日以降のものについては将来の給付を求める訴えとなるところ,その要件を欠くため不適法であるとの本案前の答弁がされ,原判決も,口頭弁論終結日の翌日以降の金員の支払を求める部分は,将来請求としての適格性を欠き不適法である旨判断し(原判決52頁2行目から53頁12行目まで,及び146頁8行目から14行目まで),この請求部分に係る訴えを却下した。 当裁判所は,一審原告らの上記部分に係る請求は,いわゆる継続的不法行為に基づき発生すべき将来の損害の賠償請求ではなく,あくまでも過去の一回的事象(本件事故)によって即時に発生した損害を請求するものであって,ただその損害額の算定を不確定な将来の事象(各「旧居住地」欄記載の居住地において空間線量率が1時間当たり0. 04μ Sv以下となること)にかからしめた損害賠償請求にすぎないと解すべきであるから,将来の給付を求める訴えとしての適格性は問題とはならないと解するものの,上記のとおり,一審原告らは当審において,上記②の訴えの一部を取り下げ,一審被告らの同意を得たため,いずれにせよ,この問題は解消されることとなった。 2 平穏生活権侵害に係る損害賠償請求の整理上記1を前提として,当裁判所は,一審原告らの平穏生活権侵害に係る損害賠償請求を,提訴日の前日までの期間に基づき請求している部分と,提訴後口頭弁論終結日までの期間に基づき請求している部分を一体のものとして(もとより訴訟物は,一 ,一審原告らの平穏生活権侵害に係る損害賠償請求を,提訴日の前日までの期間に基づき請求している部分と,提訴後口頭弁論終結日までの期間に基づき請求している部分を一体のものとして(もとより訴訟物は,一審被告東電に対するものは民法709条,710条又は原賠法3条1項に基づく請求,一審被告国に対するものは国賠法1条1項等に基づく請求であり,提訴日の前日までの分と提訴後の分はいずれも同一である。),それらが認められるかどうかを判断することとする。 具体的には,当審における口頭弁論終結日が令和2年2月20日であるため,承継一審原告を除く一審原告らの請求は,一審被告ら各自に対し,本件事故日である平成23年3月11日から口頭弁論終結日である令和2年2月20日まで1か月5万5000円の割合による金員(すなわち590万3965円)及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めるものであり,承継一審原告らの請求は,本件事故日である平成23年3月 11日から各被承継人たる死亡一審原告らの死亡日まで1か月5万5000円の割合による金員(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄記載の金額)に各自の承継分を乗じた金額の支払を求めるものとなる。 3 訴訟物の整理本訴における訴訟物について,原判決が整理しているところ(原判決150頁19行目から152頁2行目まで,及び288頁7行目から289頁13行目まで),本訴においては,一部の一審原告らが別途「ふるさと喪失」損害に基づく損害賠償請求に係る訴えを提起しているため,平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求とこの「ふるさと喪失」損害に基づく損害賠償請求との関係が問題となるが,この点についての原審の判断は相当とはいえない。したがって,原判決を一部補正した上で るため,平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求とこの「ふるさと喪失」損害に基づく損害賠償請求との関係が問題となるが,この点についての原審の判断は相当とはいえない。したがって,原判決を一部補正した上で,本訴における訴訟物を整理すると,以下のとおりとなる。 平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求一審原告らは,平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求に関し,「全ての一審原告に共通する精神的な損害の一部(内金)として,一律に,月額金5万円の慰謝料を請求するものである。」として,本件が一部請求であることを明示し(原審訴状82頁),また,一審原告らの請求する平穏生活権侵害による損害は中間指針等とは重なり合わず,仮に重なり合う部分があったとしても中間指針等により賠償が認められている部分は本訴の訴訟物としない旨主張している(一審原告ら原審準備書面(被害総論10),原審における一審原告ら最終準備書面(第4分冊)35頁,弁論の全趣旨)。 そうすると,平穏生活権侵害による損害賠償として本訴の訴訟物を構成するのは,①本件事故に基づき一審原告ら(ただし,承継一審原告らを除き,死亡一審原告らを加える。以下,本節及び第6節 において本件事故で被害を被った主体を指すときは同じ。)が被った精神的損害であって,財産的損害,生命・身体的損害を含まず,②「中間指針等による賠償額」を含まず,③これらを控除した損害額が請求金額を超えるときは,請求金額の範囲であると解するのが相当である。 なお,一審原告らは,当審において,原判決が一審原告らの主張のうち上記①について「本件事故に基づき原告らが被った精神的損害であって,積極損害,消極損害,生命・身体的損害やそれらに伴う精神的損害を含ま」ないとして,交通事故に基づく損害賠償請求訴訟等で用いられるいわゆる個別損 て「本件事故に基づき原告らが被った精神的損害であって,積極損害,消極損害,生命・身体的損害やそれらに伴う精神的損害を含ま」ないとして,交通事故に基づく損害賠償請求訴訟等で用いられるいわゆる個別損害項目積算方式を基に主張しているかのように整理したことは不相当である,一審原告らは,いわゆる公害訴訟等(スモン事件に係る福岡地判昭53・11・14判時910.33,西淀川大気汚染訴訟(第一次)に係る大阪地判平3・3・29判時1383.22等)で用いられる,損害を個別ではなく包括的・総体的にかつ総合的に把握するいわゆる包括請求方式を採用し,本件事故によって一審原告らが被った「人の全人格的な生活」全般に関わる有形無形の全ての損害について,「包括的生活利益としての人格権」の侵害に基づく損害を構成するものとして包括的に請求しているのであり,「中間指針等による賠償額」(中間指針等が定める慰謝料自体はもちろん,明示的に慰謝料とは独立した項目とされた生命・身体的損害,営業損害,財物等の喪失又は減少等,就労不能等による損害,その他検査費用,避難費用等)及び一審被告東電による既払金(中間指針等が定める慰謝料を超えて支払われた分)を除外するという限度において部分的ではあるものの,それ以外の部分は包括一律請求として慰謝料請求するものであると主張する(控訴理由書69頁以下等)。当裁判所は,原判決が一審原告ら の主張を正解せず,そのため一審原告らの主張を正解した場合に比して慰謝料の認定額が低くなったとの一審原告らの論旨は,原判決が,平穏生活権侵害に基づく損害賠償における被侵害法益(平穏生活権)の内実を,人が「その選択した生活の本拠において平穏な生活を営む権利を有し,社会通念上受忍すべき限度を超えた大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈 損害賠償における被侵害法益(平穏生活権)の内実を,人が「その選択した生活の本拠において平穏な生活を営む権利を有し,社会通念上受忍すべき限度を超えた大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈下,悪臭によってその平穏な生活を妨げられないのと同様,社会通念上受忍すべき限度を超えた放射性物質による居住地の汚染によってその平穏な生活を妨げられない利益」であるとした上で,ここにいう「平穏な生活には,生活の本拠において生まれ,育ち,職業を選択して生業(なりわい)を営み,家族,生活環境,地域コミュニティとの関わりにおいて人格を形成し,幸福を追求してゆくという,人の全人格的な生活(原告らのいう「日常の幸福追求による自己実現」)が広く含まれる」と広く捉えていること(原判決152頁),平穏生活権侵害の成否を判断する際の考慮要素の一つである「被侵害利益の性質と内容」については,「政府による避難指示等により居住及び移転の自由が法的に制約されたか否かは重要な要素となるが,それだけで平穏生活権侵害の成否が決まるものではなく,本件事故により原告らの生活に影響した社会的事実を広く参照して決するべきである」としていること(原判決153頁)などに鑑みると,必ずしも原判決の思考過程を正解していないと考えるものの,原判決の説示は,特に一審原告らの主張を整理する部分において若干不明確といえなくもないため,改めて,少なくとも当審においては,平穏生活権侵害による損害賠償に係る本訴の訴訟物についての一審原告らの主張を,上記①から③までのとおり整理することとした上で,そのうち①については,あくまでも一審原告らは上記のいわゆる包括請求方式を採用しこれ に基づき主張していることを前提として判断することを明確にしておく。 「ふるさと喪失」損害の賠償請求 については,あくまでも一審原告らは上記のいわゆる包括請求方式を採用しこれ に基づき主張していることを前提として判断することを明確にしておく。 「ふるさと喪失」損害の賠償請求旧居住地が帰還困難区域,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域である提訴時一審原告らのうち40人(「ふるさと喪失」一審原告。前注参照)は,原状回復及び平穏生活権侵害に基づく損害賠償を求める訴え(第1事件及び第3ないし第5事件)と別個に「ふるさと喪失」損害に基づく損害賠償を求める訴え(第2又は第6事件)を提起している。 一審原告らは,平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求と「ふるさと喪失」損害に基づく損害賠償請求の関係について,本件事故によって「包括的生活利益としての人格権」が侵害されたことにより,①「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損(生存と人格形成の基盤の法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害と,②「日常的な幸福追求による自己実現」の阻害(幸福追求・価値を選択しながら普通の日常生活を営む法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害の2つの類型の被害が現れていることに基づき,これを基礎として包括慰謝料請求を2つに区分して請求しているものであるとした上で(一審原告ら控訴理由書166頁以下等),全ての提訴時一審原告らについて,中間指針等が認める損害を除いて一律に月額5万円の平穏生活権侵害に基づく慰謝料(弁護士費用を除く。)を請求するとともに,そのうち40人(「ふるさと喪失」一審原告)は,上記①の損害の賠償を特に取り出してこれを上記①に係る損害として別に訴えを提起していたものであるから,これらの一審原告らについては,平穏生活権侵害に基づく損害賠償としては上記②に係る損害のみを請求していることになるものの,「ふるさと喪失」一審原告 損害として別に訴えを提起していたものであるから,これらの一審原告らについては,平穏生活権侵害に基づく損害賠償としては上記②に係る損害のみを請求していることになるものの,「ふるさと喪失」一審原告 ら以外の帰還困難区域,居住制限区域又は避難指示解除準備区域を旧居住地とする一審原告らは,上記①に係る損害が生じていることは同様であるにもかかわらずその損害の賠償を特に取り出して別に訴えを提起していない以上,これらの一審原告らの関係では,平穏生活権侵害に基づく損害賠償として,上記②に係る損害に加えて,上記①の損害も合わせてその中で請求する趣旨である旨主張している(一審原告ら控訴理由書205頁以下,控訴審準備書面(被害3)16頁以下)。 一審原告らの主張は,一つの「平穏生活権侵害に基づく損害」という言葉を,「ふるさと喪失」一審原告らについては上記②のみを指すものとして使い,それ以外の一審原告らについては上記①及び②の双方を指すものとして使っており,若干分かりづらい面があることは否めないものの,主張それ自体が不合理であるとか失当であるとかいうことはできない以上,当裁判所は,一審原告らの主張が上記の趣旨であるものとして判断すべきであると考える。したがって,原判決が,この点,一審原告らの主張を合理的に意思解釈したとして,一審原告らは,本件事故により,継続的に発生する性質の損害を「平穏生活権」侵害による損害として,継続的でなく,一回的に発生する性質の損害を「ふるさと喪失」による損害として,それぞれ他方の請求を明示的に除外して請求しているものと解した上で,「ふるさと喪失」一審原告以外の一審原告らについてはこの前者のみを請求しているものと整理している点は相当ではない。 以上の前提を踏まえ,本判決においては,一審原告らの主張する ものと解した上で,「ふるさと喪失」一審原告以外の一審原告らについてはこの前者のみを請求しているものと整理している点は相当ではない。 以上の前提を踏まえ,本判決においては,一審原告らの主張する上記①の「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損(生存と人格形成の基盤の法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害を「ふるさと喪失」損害と呼称することとし,これは,請求の趣旨第3項(控 訴の趣旨第4項)の損害賠償請求(弁護士費用相当額部分を除く,600万円の損害賠償請求)の被侵害法益として審理の対象となる権利利益の侵害であるだけでなく,同請求に係る訴えを提起していない「ふるさと喪失」一審原告以外の一審原告らについても,請求の趣旨第2項(控訴の趣旨第3項)の損害賠償請求(弁護士費用相当額部分を除く,月額5万円の平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求)の被侵害法益として審理の対象となる権利利益の侵害であると整理した上で,これらの侵害が認められるかを判断することとする。 中間指針等の月額10万円等の慰謝料の性格一審原告らは,原賠審による中間指針等が後掲のとおり一人月額10万円又はこれに加えて1000万円の慰謝料を認めている点の「日常的な幸福追求による自己実現」の阻害による損害のみを賠償の対象としており,①の「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損による損害はその対象としていないと主張しているところ(控訴理由書189頁以下,控訴審準備書面(被害3)18頁以下),仮にこの主張が,中間指針等で定められた月額10万円等の慰謝料では評価されていない他の損害項目(上記①の損害等)も存在するのであるから中間指針等の慰謝料額を超える額が裁判により認められることも不合理ではない旨の主張であるならば格別,そうではなく,本判決によって認められる「ふる 他の損害項目(上記①の損害等)も存在するのであるから中間指針等の慰謝料額を超える額が裁判により認められることも不合理ではない旨の主張であるならば格別,そうではなく,本判決によって認められる「ふるさと喪失」損害に基づく損害賠償の額から中間指針の慰謝料額を控除することは認められるべきではない旨の主張であるとすれば,採用することができない。なんとなれば,一審原告らの整理する上記①の損害も②の損害もいずれも本件事故という原因事実及びこれによって生じた精神的損害という被侵害利益を共通にするものであるから,これらに基づく損害賠償請求 権は同一の訴訟物であると解すべきところ(最高裁昭和48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419頁参照),中間指針等では,本件事故と相当因果関係のある損害であれば「原子力損害」(原賠法3条)に該当するから生命・身体的損害を伴わない精神的損害(慰謝料)についても相当因果関係が認められる限り賠償すべき損害というべきであるとした上で,上記の月額10万円等の慰謝料を目安とするとしており,精神的損害(慰謝料)の中で特に上記②のみを対象とするような趣旨や,上記①を対象から外すような趣旨は読み取れないから,中間指針等で定めた慰謝料は,本訴における訴訟物と同一の被侵害利益に係る賠償義務というべきだからである。 したがって,当裁判所は,本判決において,一審原告らが主張する上記①及び②の損害いずれであっても,「中間指針等による賠償額」を超える部分に限って請求を認容することとする。 上記「ふるさと喪失」損害も,これを除いた平穏生活権侵害に基づく損害(以下,「平穏生活権侵害に基づく損害」は,「ふるさと喪失」損害を含む場合において用いることも,同損害を含まない場合において用いることもあるが,その区別が必 ,これを除いた平穏生活権侵害に基づく損害(以下,「平穏生活権侵害に基づく損害」は,「ふるさと喪失」損害を含む場合において用いることも,同損害を含まない場合において用いることもあるが,その区別が必要な場合には,当該箇所においてその旨を明示することとする。)も,いずれも訴訟物は異ならないと考えられるため,本判決においては,以下,「ふるさと喪失」一審原告らについては,請求金額に一律600万円(弁護士費用を除く。)を上乗せしていることを除いては,旧居住地が帰還困難区域,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域である全ての一審原告らにおいて,「ふるさと喪失」損害もこれを除いた平穏生活権侵害に基づく損害も主張しているという点においては変わらないことを前提に,それぞれこれらの損害が認められるか,認められると してその額をいくらと評価するべきかを判断していくこととする。 そして,当裁判所は,一審原告らがいわゆる包括請求方式を採用していることを前提として,証拠上認められる全ての要素を考慮して精神的損害の賠償額を認定し,①それが「中間指針等による賠償額」を超えるか否かを判断し(一審原告らが一審被告東電から現に受領し又は将来受領する賠償金は,それが「中間指針等による賠償額」の範囲内であれば,本訴請求債権から除外されているから,現に受領したか否かを問わず,本件では考慮しない。),②既払額が「中間指針等による賠償額」を超える場合には,ADRにおいて「中間指針等による賠償額」を超えて支払われた賠償金等による弁済の抗弁について判断し(後記第5),③残った認定損害額を請求金額の範囲内において全部又は一部認容し,④認定損害額が「中間指針等による賠償額」及び上記②の「中間指針等による賠償額」を超える部分に係る既払額を超えない場合には,請求を全部棄 った認定損害額を請求金額の範囲内において全部又は一部認容し,④認定損害額が「中間指針等による賠償額」及び上記②の「中間指針等による賠償額」を超える部分に係る既払額を超えない場合には,請求を全部棄却することになる。 なお,中間指針等の位置付けについては後に判示するところであるが(後記第6節第2の6),個別の事情によって,そこで示されている賠償額と異なる損害を認定することは当然に許容されているところである。 一律請求について一律請求に係る考え方は原判決と同様である。すなわち,本件は4000人近くの一審原告らによる大規模集団訴訟であり,一審原告らは,全員に共通する損害を主張している(一律請求)。これは,結局,一審原告らが本件事故に基づいて被った精神的苦痛を一定の限度で全員に共通するものとして捉え,その賠償を請求するものと理解することができる。もとよりそのような被害であっても,一審原告ら各自の生活環境,生活実態や身体的条件等の相違に応じてそ の内容及び程度を異にし得るものではあるが,他方,そこには,全員について同一に存在が認められるものや,また,その具体的内容において若干の差異はあっても,平穏生活権が侵害されているという点においては同様であって,これに伴う精神的苦痛の性質及び程度において差異がないと認められるものも存在し得るのであり,このような観点から同一と認められる性質・程度の被害を一審原告ら全員に共通する損害として捉えて,各自につき一律にその賠償を求めることは許されるというべきであり,裁判所が,一定の指標に基づいて一審原告らを適切なグループに区分し,そのグループごとに共通する慰謝料の要素を抽出して共通被害を認定することも許されるというべきである(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号 いて一審原告らを適切なグループに区分し,そのグループごとに共通する慰謝料の要素を抽出して共通被害を認定することも許されるというべきである(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁[大阪国際空港事件],最高裁昭和63年(オ)第612号平成5年2月25日第一小法廷判決・訟月40巻3号452頁[横田基地第5次~第7次訴訟],最高裁平成6年1月20日第一小法廷判決・訟月41巻4号532頁[福岡空港訴訟],最高裁平成7年7月7日第二小法廷判決・民集49巻7号1870頁[国道43号線訴訟]等参照)。 本訴では,一審原告らの旧居住地によって一審原告らをグループ分けして共通被害を認定するのが相当であるから,後記第6節第4のとおり,一審原告らを,その旧居住地に基づいて,①帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域,②旧居住制限区域,③旧避難指示解除準備区域,④旧緊急時避難準備区域,⑤旧特定避難勧奨地点,⑥旧一時避難要請区域,⑦自主的避難等対象区域,⑧県南地域及び宮城県丸森町,⑨これらの区域外,の9グループに分け(このうち⑨についてはさらに地域ごと に検討する。),それぞれのグループごとに,「中間指針等による賠償額」を超える共通損害が認められるか否かを判断することとする。 第2 損害の有無及び損害額の判断の在り方 1 一審原告らの主張の整理 て「包括的生活利益としての人格権」が侵害されたことにより,①「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損(生存と人格形成の基盤の法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害と,②「日常的な幸福追求による自己実現」の阻害(幸福追求・価値を選択しながら普通の日常生活を営む法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害の2つの類型の被害が生じて 損傷を受けたこと)による損害と,②「日常的な幸福追求による自己実現」の阻害(幸福追求・価値を選択しながら普通の日常生活を営む法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害の2つの類型の被害が生じているとした上で,「ふるさと喪失」一審原告らについては,上記①が「ふるさと喪失」損害に,上記②が「平穏生活権侵害に基づく損害」に当たると主張し,それ以外の一審原告らについては,上記①及び②の双方が「平穏生活権侵害に基づく損害」に含まれるものと主張している。 そして,一審原告らの主張を全体を通してみれば,上記②に係る被侵害法益の内実は,人が,生活の本拠において生まれ,育ち,職業を選択して生業(なりわい)を営み,家族,生活環境,地域コミュニティとの関わりにおいて人格を形成し,幸福を追求してゆくという,全人格的な生活(一審原告らのいう「日常的な幸福追求による自己実現」)が広く含まれ,上記①に係る被侵害法益の内実は,そのように,人が人格を形成し幸福を追求していくべき全人格的な生活の本拠そのもの(一審原告らのいう「生存と人格形成の基盤」)が広く含まれると主張しているものと解するのが相当であるから,当裁判所は,これらが破壊・毀損ないし阻害されたかを判断することとする。 2 損害の判断の在り方 原判決(原判決152頁20行目から154頁20行目まで)は,上記②の損害の成否の判断枠組みとして,本件事故によって拡散された放射性物質によって居住地の汚染が社会通念上受忍すべき限度を超えた平穏生活権侵害となるか否かという判断枠組みを用いているが,本訴において一審原告らが受けたと主張する被害は,福島第一原発の正常な稼働によって生じたものではなく,前示(前記第3節及び第4節)のとおり一審被告東電の義務違反及び一審被告国の違法な規制権限不行使 本訴において一審原告らが受けたと主張する被害は,福島第一原発の正常な稼働によって生じたものではなく,前示(前記第3節及び第4節)のとおり一審被告東電の義務違反及び一審被告国の違法な規制権限不行使の結果として福島第一原発が本件事故を起こしたことによるものであって,社会にとって公共性ないし公益上の必要性がある施設等の正常な運用・供用等による侵害行為が生じているという場合ではないから,上記判断枠組みは本訴において妥当するものであるとはいえない。したがって,原判決の用いた上記判断枠組みが相当でないとの一審原告らの論旨(控訴理由書145頁以下)は理由があるというべきである。 当裁判所は,本件事故により一審原告らが主張する上記①及び②の損害が生じたか,生じたとして損害額をいくらと評価すべきかについては,端的に,各一審原告について,本件事故と相当因果関係のある損害の有無及び額を認定していくこととする。 3 損害の判断において考慮すべき要素当裁判所が,本件事故と相当因果関係のある損害の有無及び額を判断するに当たり考慮に入れるべき要素としては,以下のものが考えられる。 本件事故により侵害された事柄本件事故により,放射性物質が放出され広範に飛散したことによって,どのような事柄が侵害されたかについては,一審原告らが,旧居住地において,本件事故前に享受していた事柄全般を考慮対象 に入れてその侵害の有無や程度を把握する必要がある。そのような事柄として主な要素は,以下のア~カのように分類して挙げることが可能である。なお,以下の要素は,必ずしもそれぞれが独立しているものではなく,互いに重なり合ったり,関連したりして,有機的に一体の事柄を形成している関係にもあるものであるから,後記の損害論(各論)において必ずしも取り出して触 は,必ずしもそれぞれが独立しているものではなく,互いに重なり合ったり,関連したりして,有機的に一体の事柄を形成している関係にもあるものであるから,後記の損害論(各論)において必ずしも取り出して触れていない事柄であっても,考慮の対象外に置いているものではない。また,以下の要素の中には,財産的な側面を有するものも多く含まれており,これらの一部について,一審原告らの中には,別途一審被告東電から財産的損害に対する賠償として金銭の支払を受けている者もいるが,後に判示するとおり(後記第6節第5の3),一審被告東電による財産的損害に対する賠償は,本訴における精神的損害に対する慰謝料額には充当されないと解すべきであるから,逆に,慰謝料額の評価においても,財産的損害自体については除外して考慮することとする。もっとも,こうした要素の多くが,一口に各人の財産的損害として評価され得ないものも多い上に,一審被告東電からそうした財産的損害に対する賠償を受けていない者も多くいること,本件で一審原告らが被ったと主張する精神的損害には,①「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損(生存と人格形成の基盤の法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害と,②「日常的な幸福追求による自己実現」の阻害(幸福追求・価値を選択しながら普通の日常生活を営む法益が破壊ないし損傷を受けたこと)による損害の2つが含まれていることは前示のとおりであるところ,以下の要素は,全体として人が生存と人格形成をする基盤であると共に,日常的な幸福追求をする上で欠かせない日常生活そのものでもあり,いずれも,財産的な価値だけでなく,それらが破壊・毀損されることによって上 記①ないし②の精神的損害を受けたと評価すべき側面も有しているというべきであるから,本訴における慰謝料額の評価においても 産的な価値だけでなく,それらが破壊・毀損されることによって上 記①ないし②の精神的損害を受けたと評価すべき側面も有しているというべきであるから,本訴における慰謝料額の評価においても,その限度では考慮に入れることとする。 ア基本的な社会インフラ(例)電気・水道・ガス等のインフラ医療・警察・消防等の施設学校・教育・育児等の学習環境,成育環境道路・鉄道等の交通インフラ電波・電話網・光ケーブル等の通信インフライ生活の糧を取得する手段(例)第1次産業:農業・林業・水産業等第2次産業:鉱工業・製造業・建設業等第3次産業:観光業も含めた地元企業・大手企業の出先機関・自営業(美容院や自動車整備工場,商店等)等ウ家庭・地域コミュニティを育む物理的・社会的諸要素(例)親戚・家族や近所付き合いの拠点となるべき自宅・住まい等職場・学校等を起点とした人的つながり趣味・会議所・社交場・運動場・温泉・娯楽施設・公園等冠婚葬祭施設,墓地等祭り・イベント・風物詩等エ周囲の環境・自然(例)大気・水質・土壌・気候等 山・湖沼・川・海等家庭菜園・山菜・キノコ採集・魚釣り等オ帰るべき地・心の拠り所となる地・想い出の地等としての「ふるさと」(例)実家・母校・行きつけの店・駅等想い出の場所・景色等地元の評判・観光地としての価値等カその他(例)避難・移住・生活再建等のために支出した諸々の経済的な負担被曝者・被災者としてのレッテル・いじめ等被曝により将来的に健康被害が生じるのではないかという恐怖ないし不安侵害態様・程度侵害態様としては,一審被告らの故意又は過失の有無,程度も重要であるところ,前示のとおり,一審被 じめ等被曝により将来的に健康被害が生じるのではないかという恐怖ないし不安侵害態様・程度侵害態様としては,一審被告らの故意又は過失の有無,程度も重要であるところ,前示のとおり,一審被告らに本件事故について故意又は重大な過失までは認めることはできないものの,本件における一審被告東電の義務違反の程度は,決して軽微とはいえない程度であったというべきであるから,これを前提に損害額を算定することとする。 より,どの程度放射能汚染されたか(空間線量率等が指標となる。),又は侵害されたかが重要な要素となる。なお,後記第6節第3の3の被曝を予防するために定められたものではあるが,本件事故当時の炉規法,実用炉規則及び線量限度告示では,周 辺監視区域外の線量が1mSv/y以下となるように放射線源を管理することが求められており,法令上,1mSv/yを超える公衆の被曝は許容されていなかったということができるため,これも考慮要素の一つとすべきである。 また,政府による避難指示等により居住及び移転の自由が法的に制約されたか否かも重要な指標の一つであるが,仮に法的に制約されなかったからといって,直ちに侵害がなかったとすべきではなく,本件事故により一審原告らの生活に影響した社会的事実や,福島第一原発からの距離等に応じて一審原告らが感じた恐怖・不安等も広く考慮に入れて,本件事故との相当因果関係を判断すべきである。 なお,避難の合理性(旧居住地から避難した場合に,避難と本件事故との間に相当因果関係が認められるか)と平穏生活権侵害の成否は,考慮要素を共通にするため,結果的にほとんどの場合に結論は一致すると考えられるが,平穏生活権侵害の成否を考えるに当たっては,必ずしも後者が前者の前提となるものではなく,境界的な事例においては, は,考慮要素を共通にするため,結果的にほとんどの場合に結論は一致すると考えられるが,平穏生活権侵害の成否を考えるに当たっては,必ずしも後者が前者の前提となるものではなく,境界的な事例においては,旧居住地の汚染は平穏生活権侵害として賠償に値する程度に至らないが避難の合理性は認められるという場合も想定され得る。 本件事故後の経緯・現状新たな放射性物質の放出を抑制する措置が取られたか否か(各原子炉の冷温停止状態が達成されたか否か),社会インフラ等の復帰状況,除染の進展状況及び空間線量率の推移,それらに要した期間,居住人口・帰還率の推移等は重要な考慮要素となる。 第6節損害論(各論)第1 政府による避難指示等 1 概要 政府による避難指示等については,原審口頭弁論終結までの状況はおおむね原判決が摘示したとおり(原判決156頁冒頭行から158頁12行目まで)であるが,当審において一部補正し,原判決口頭弁論終結日以降当審の口頭弁論終結日までの状況を加え,以下のとおり判示する。 2 避難区域等の設定等内閣総理大臣は,3月11日,原災法(平成24年法律第41号による改正前のもの)15条に基づき,福島第一原発から半径3km圏内を避難区域に,半径3~10km圏内を屋内退避区域に設定し,また,同法16条1項に基づき,福島第一原発に係る原災本部を設置した。 内閣総理大臣は,3月12日,原災法15条に基づき,福島第一原発から半径20km圏内及び前日に原子炉除熱機能が喪失した旨の通報がされるなどしていた福島第二原発から半径10km圏内を避難区域に設定し,福島第二原発に係る原災本部を設置の上福島第一原発に係る原災本部に統合した。 内閣総理大臣は,3月15日,原災法15条に基づき,福島第一原発から半径20~3 半径10km圏内を避難区域に設定し,福島第二原発に係る原災本部を設置の上福島第一原発に係る原災本部に統合した。 内閣総理大臣は,3月15日,原災法15条に基づき,福島第一原発から半径20~30km圏内を屋内退避区域に設定した。 原災本部長である内閣総理大臣は,4月21日,原災法20条に基づき,福島第二原発に係る避難区域を半径8km圏内に変更するとともに,同月22日,福島第一原発から半径20km圏内を,原災法28条2項において読み替えて適用される災害対策基本法63条1項に基づく警戒区域に設定し,緊急事態応急対策に従事する者以外の者に対して,市町村長が一時的な立入りを認める場合を除き,当該区域への立入りを禁止し,又は当該区域からの退去を命ずることとした。 原災本部長である内閣総理大臣は,4月22日,原災法20条に基 づき,福島第一原発から20~30km圏内の屋内退避区域の設定を解除するとともに,葛尾村,浪江町,飯舘村,川俣町の一部及び南相馬市の一部であって避難区域を除く区域を,原則としておおむね1か月程度の間に順次当該区域外へ退避のための立ち退きを行うこととされる計画的避難区域に,広野町,楢葉町,川内村,田村市の一部及び南相馬市の一部であって避難区域及び計画的避難区域を除く区域を,常に緊急時に避難のための立退き又は屋内への退避が可能な準備を行うこと,引き続き自主的避難をし,特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は当該区域内に入らないようにすること,当該区域においては,保育所,幼稚園,小中学校及び高等学校は,休所,休園又は休校とすること,勤務等のやむを得ない用務等を果たすために当該区域内に入ることは妨げられないが,その場合において常に避難のために立退き又は屋内への退避を自力で行えるようにしておくこととされる緊急 は休校とすること,勤務等のやむを得ない用務等を果たすために当該区域内に入ることは妨げられないが,その場合において常に避難のために立退き又は屋内への退避を自力で行えるようにしておくこととされる緊急時避難準備区域に,それぞれ設定した。 緊急時避難準備区域の設定は,9月30日に一括解除されたことにより,緊急時避難準備区域は全て解除となった(丙C353)。 3 一時避難要請区域の設定等南相馬市は,3月16日,市民の生活の安全確保等を理由として,その独自の判断に基づいて,南相馬市の全住民に対して一時避難を要請した(丙C538)。その後,南相馬市が,4月22日,上記2のとおり屋内退避区域の設定が解除されるのに合わせて,一時避難要請区域から避難していた住民に対して,自宅での生活が可能な者の帰宅を許容する旨の見解を示したことにより,一時避難要請区域は全て解除となった。 4 特定避難勧奨地点の設定等原災本部は,警戒区域及び計画的避難区域の外であって,計画的避 難区域とするほどの地域的な広がりがみられないものの,事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される空間線量率が続いている複数の地点について,6月16日,特定避難推奨地点とする方針を策定し,以後順次住居単位で特定避難勧奨地点を設定した。 具体的には,6月30日ないし11月25日の間に,伊達市霊山町の103地点112世帯,同市月舘町の6地点6世帯,同市保原町の8地点10世帯,7月21日ないし11月25日の間に,南相馬市鹿島区の4地点5世帯,同市原町区の138地点149世帯,9月30日までに川内村下川内地区の1地点1世帯が,それぞれ特定避難勧奨地点に設定された。 伊達市及び川内村の特定避難勧奨地点は平成24年12月14日に,南相馬市の特定避難勧奨 地点149世帯,9月30日までに川内村下川内地区の1地点1世帯が,それぞれ特定避難勧奨地点に設定された。 伊達市及び川内村の特定避難勧奨地点は平成24年12月14日に,南相馬市の特定避難勧奨地点は平成26年12月28日に,それぞれ解除されたことにより,特定避難勧奨地点は全て解除となった。 5 収束宣言等原災本部は,7月19日,本件事故の収束に向けた道筋の進捗状況を公表し,ステップ1の目標である「放射線量が着実に減少傾向となっている」について,福島第一原発の敷地境界における被曝線量評価が最大でも年間1.7mSv(暫定値)であり,本件事故当初と比較して十分に減少しているとして目標達成とし,次なるステップ2の目標である「放射性物質の放出が管理され,放射線量が大幅に抑えられている」状態を目指すべく,福島第一原発について冷温停止状態(①圧力容器底部の温度がおおむね100℃以下になっていること,②格納容器からの放射性物質の放出を管理し,追加的放出による公衆被曝線量を大幅に抑制していること,の2条件であると定義)に持ち込むことなどを実現し,今後3~6か月でステップ2の目標を達成する計画であるなどとした(丙C327,328,342,352)。 原災本部は,12月16日,福島第一原発の原子炉は冷温停止状態に達し,格納容器からの放射性物質の放出による敷地境界における被曝線量は0.1mSv/yと,目標とする年間1mSvを下回り(もっとも,既に放出された放射性物質の影響を含めた敷地境界における空間線量率は年間1mSvを大きく上回っていた。),循環注水冷却システムの中期的安全が確保されているなど,不測の事態が発生した場合も敷地境界における被曝線量が十分低い状態を維持することができるようになったとして,ステップ2の目標達成と ていた。),循環注水冷却システムの中期的安全が確保されているなど,不測の事態が発生した場合も敷地境界における被曝線量が十分低い状態を維持することができるようになったとして,ステップ2の目標達成と完了を確認したと公表した。当時の野田佳彦総理大臣は,同日,記者会見で,福島第一原発の「原子炉は冷温停止状態に達し,事故そのものが収束に至ったと確認された」と述べた(収束宣言,甲C248)。 もっとも,本来は圧力容器内の水温を正確に計測し放射性物質の放出を管理することができる状態が「冷温停止」の定義であるところ,上記収束宣言では「冷温停止状態」という独自の言葉を用いていること,国会に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は,12月18日,福島第一原発などを視察した上,同委員会委員長が,記者会見で,収束宣言について「納得がいかない。国民と受け止め方にギャップがあるのではないか」「何をもって完了と判断したのか疑問だ」などと発言したこと,原子力安全委員会の当時の班目委員長が,同月19日の記者会見で,収束宣言は「安全宣言」とは異なることを強調するなどしたことなどから,収束宣言に疑問符も多く出される状況が続き,平成24年1月13日には,収束宣言をした当時の野田総理大臣自らが「事故を収束させ,新たな戦いに向かってさまざまな取り組みを強化する」と収束宣言を軌道修正する事態となった(甲C248)。 本件事故から9年近くが経った現在においてもなお1~3号機の燃 料デブリを取り出す目途さえ決まらない状況である(弁論の全趣旨)。 福島第二原発については原子炉冷却機能が復旧したことにより原子炉の冷温停止が維持できる状態にあることなどから,福島第二原発から8km圏内に設定されていた避難区域の設定は,12月26日に解除されたが,同 第二原発については原子炉冷却機能が復旧したことにより原子炉の冷温停止が維持できる状態にあることなどから,福島第二原発から8km圏内に設定されていた避難区域の設定は,12月26日に解除されたが,同区域は全て福島第一原発から20km圏内の警戒区域となっていた。 6 避難区域等の再編平成24年4月1日から平成25年8月8日にかけて,上記2の避難区域,警戒区域,計画的避難区域は,以下の三つの区域に再編された。 帰還困難区域放射性物質による汚染レベルが極めて高く,避難指示の解除までに要する期間が長期にならざるを得ない地域に設定。この地域では除染の効果が限定的であり,また周辺線量の高さから作業員の被曝防護の必要性が高く,インフラ復旧についても広範かつ大規模な作業が困難である可能性が高い。また,立ち入った際の被曝管理及び放射性物質の汚染拡散防止の観点から,その境界において一定の物理的防護措置を講じざるを得ず,住民の立入りを厳しく制約せざるを得ない可能性が高い。この区域は,関連する市町村や住民と緊密な意見交換を行いながら,長期化する避難生活や生活再建の在り方,自治体機能の維持などについて,国として責任を持って対応していくこととされた。 居住制限区域再編時点からの年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり,住民の被曝線量を低減する観点から引き続き避難を継続することを求める地域に設定。この区域では,将来的に住民が帰還し,コミュ ニティを再建することを目指し,除染やインフラ復旧などを計画的に実施することとされた。 避難指示解除準備区域年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域に設定。 順次,田村市の一部(平成24年4月1日再編),川内村の一部(同日再編),南相馬市の 避難指示解除準備区域年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域に設定。 順次,田村市の一部(平成24年4月1日再編),川内村の一部(同日再編),南相馬市の一部(同月16日再編),飯舘村の一部(同年7月17日再編),楢葉町の一部(同年8月10日再編),大熊町の一部(同年12月10日再編),葛尾村の一部(平成25年3月22日再編),富岡町の一部(同年3月25日再編),浪江町の一部(同年4月1日再編),双葉町の一部(同年5月28日再編),川俣町の一部(同年8月8日再編)に設定された(丙C28,159)。 この区域では,当面引き続き避難指示が継続されることになるが,除染,インフラ復旧,雇用対策など復旧・復興のための支援策を迅速に実施し,住民の一日でも早い帰還を目指すこととされた。 7 避難指示の解除等避難指示解除の要件避難指示解除の要件については,「「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂(平成27年6月12日原子力災害対策本部決定)」及び「特定復興再生拠点区域の避難指示解除と帰還・居住に向けて(平成30年12月21日原子力災害対策本部決定)」によって定められているところ,これによれば,その要件は,①空間線量率で推定された年間積算線量が20mSv以下になることが確実であること,②電気,ガス,上下水道,主要交通網,通信など日常生活に必須なインフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧すること,子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に 進捗すること,③県,市町村,住民との十分な協議,の3つである(丙C539)。 避難指示等解除の推移平成26年4月1日,田村市都路地区の避難指示解除準備区域が解除された。 平成26年10月1日,川内村の避 市町村,住民との十分な協議,の3つである(丙C539)。 避難指示等解除の推移平成26年4月1日,田村市都路地区の避難指示解除準備区域が解除された。 平成26年10月1日,川内村の避難指示解除準備区域が解除され,川内村の居住制限区域が新たに避難指示解除準備区域に再編された。 平成27年9月5日から平成28年7月12日にかけて,楢葉町,葛尾村,川内村,南相馬市の居住制限区域,避難指示解除準備区域が順次解除された(丙C603)。 平成29年3月31日から4月1日にかけて,飯舘村,浪江町,川俣町,富岡町の居住制限区域,避難指示解除準備区域が解除された(丙C604,605)。これにより,大熊町・双葉町を除く避難指示解除準備区域は全て解除となった。 平成31年4月10日,大熊町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域が解除された(丙C487)。これにより,居住制限区域は全て解除となった。 現時点でなお残っている避難指示区域は,帰還困難区域(設定された時点と変わらず,南相馬市の一部・飯舘村の一部・大熊町の過半・葛尾村の一部・富岡町の一部・浪江町の過半・双葉町の大半がその区域内にある。)及び双葉町の避難指示解除準備区域である。 当審弁論終結後には,双葉町の避難指示解除準備区域全て及び帰還困難区域の一部の区域が令和2年3月4日午前0時に,大熊町の帰還困難区域の一部の区域が同月5日午前0時に,富岡町の帰還困難区域の一部の区域が同月10日午前6時に,それぞれ解除される 予定である(なお,全町避難が続いている双葉町の避難指示解除は初めてであり,また帰還困難区域が含まれる避難指示解除も初めてである。もっとも,解除の対象は,3町ともJRの駅や駅周辺道路にとどまっている。丙C539~543)。また,この解除に伴い 避難指示解除は初めてであり,また帰還困難区域が含まれる避難指示解除も初めてである。もっとも,解除の対象は,3町ともJRの駅や駅周辺道路にとどまっている。丙C539~543)。また,この解除に伴い,同月14日,富岡駅から浪江駅までの区間で運転見合わせとなっていたJR常磐線が全線で運転を再開し,この間の双葉駅,大野駅,夜ノ森駅も再開され,同日から,普通列車のほか,仙台と上野・品川間を直通で結ぶ特急「ひたち」が運転を開始する予定である(丙C543,544)。 8 特定復興再生拠点区域双葉町は平成29年9月15日付けで約555ha(居住人口目標:約2000人)が(丙C498),大熊町は同年11月10日付けで約860ha(居住人口目標:約2600人)が(丙C488),浪江町は同年12月22日付けで約661ha(居住人口目標:約1500人)が(丙C499),富岡町は平成30年3月9日付けで約390ha(居住人口目標:約1600人)が(丙C491),飯舘村は同年4月20日付けで約186ha(居住人口目標:約180人)が(丙C503),葛尾村は同年5月11日付けで約95ha(居住人口目標:約80人)が(丙C502),それぞれ,福島復興再生特別措置法17条の2に基づき,「特定復興再生拠点区域復興再生計画」について内閣総理大臣による認定を受け,これにより,帰還困難区域の一部に特定復興再生拠点区域(除染により放射線量がおおむね5年以内に避難指示解除に支障がない基準以下に低減することが見込まれるなどの基準を満たし,避難指示を解除して居住を可能と定めることが可能となった区域であり,復興再生の拠点とされるもの)が設けられ,同区域において,道路,上下水道等のインフラ復旧や除染,家屋解体等 を一体的・集中的に進め,避難指示解除を目指す とが可能となった区域であり,復興再生の拠点とされるもの)が設けられ,同区域において,道路,上下水道等のインフラ復旧や除染,家屋解体等 を一体的・集中的に進め,避難指示解除を目指すこととされた。(甲C309,丙C490)第2 中間指針等による賠償の枠組み 1 中間指針中間指針の策定原賠審は,原賠法18条2項2号に基づき,第1回~第13回原賠審における議論を経て,4月28日に「東京電力(株)福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針」,5月31日に「東京電力(株)福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針」をそれぞれ策定した後,これらを取り込んだものとして,8月5日,中間指針(「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」)を策定した。 避難指示等対象区域中間指針は,以下の地域を「避難指示等対象区域」と定義している(各区域の設定の経緯は第1の2に前示したとおりである。)。 ア避難区域福島第一原発から半径20km圏内(4月22日,警戒区域に設定)と,福島第二原発から半径10km圏内(4月21日,半径8km圏内に縮小)。 イ屋内退避区域3月25日に自主避難の促進等が発表され,4月22日,後記ウ及びエの設定に伴い,解除された区域。 ウ計画的避難区域 福島第一原発から半径20km以遠の周辺地域のうち,本件事故発生から1年内に積算線量が20mSvに達するおそれのある区域であり,おおむね1か月程度の間に,同区域外に計画的に避難することが求められる区域。 エ緊急時避難準備区域福島第一原発から半径20~30km圏内の区域から上記ウの区域を除いた それのある区域であり,おおむね1か月程度の間に,同区域外に計画的に避難することが求められる区域。 エ緊急時避難準備区域福島第一原発から半径20~30km圏内の区域から上記ウの区域を除いた区域のうち,常に緊急時に避難のための立退き又は屋内への退避が可能な準備をすることが求められ,引き続き自主避難をすること及び特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は立ち入らないこと等が求められる区域。 オ特定避難勧奨地点上記ウ及びエ以外の場所であって,地域的な広がりが見られない本件事故発生から1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される空間線量率が続いている地点であり,政府が住居単位で設定した上,そこに居住する住民に対する注意喚起,自主避難の支援・促進を行うことを表明した地点。 カ一時避難要請区域(南相馬市)南相馬市全域から上記ア~エに設定された区域を除いた区域(南相馬市は同市内に居住する全住民に対して一時避難を要請した(前記第1の3)。)。 避難等対象者中間指針は,避難指示等により避難等を余儀なくされた者であって,以下のアないしウに該当する者を「避難等対象者」として定義している。なお,屋内退避区域を除く避難指示等対象区域に滞在した者は,この中間指針にいう「避難等対象者」には含まれないが, 後記の一審被告東電による自主賠償基準においては,滞在した者も避難した者と同等の賠償を受けることとしている。 ア本件事故が発生した後に避難指示等対象区域内から同区域外に避難及びこれに引き続く同区域外での滞在(対象区域外滞在)を余儀なくされた者。ただし,6月20日以降に緊急時避難準備区域(特定避難勧奨地点を除く。)から避難した者のうち,子供,妊婦,要介護者,入院患者等以外の者を除く。 イ本件事故発生時に避難指示 )を余儀なくされた者。ただし,6月20日以降に緊急時避難準備区域(特定避難勧奨地点を除く。)から避難した者のうち,子供,妊婦,要介護者,入院患者等以外の者を除く。 イ本件事故発生時に避難指示等対象区域外におり,同区域内に生活の本拠としての住居があるものの引き続き同区域外滞在を余儀なくされた者。 ウ屋内退避区域内で屋内退避を余儀なくされた者。 避難等対象者への賠償額の目安中間指針は,避難等対象者が受けた損害を,検査費用(人),避難費用,一時立入費用,帰宅費用,生命・身体的損害,精神的損害,営業損害,就労不能等に伴う損害,検査費用(物)及び財物価値の喪失又は減少等に項目を分けているところ,このうち精神的損害については,なくされ,正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛(「生命・身体的損害」を伴わないものに限る。以下同じ。)を余儀なくされ,正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛を賠償の対象とし,その損害額については,上記「避難費用」のうち生活費の増加費用と合算した一定の金額とすることとした上で,その対象となる期間を3期に分け,具体的な賠償額の目安を以下のとおりとしている。 ア本件事故発生日から6か月間(第1期) 月額10万円。ただし,避難所,体育館,公民館等における避難生活等を余儀なくされた者については,1人月額12万円。 ただし,避難指示等の解除等から相当期間経過後は,特段の事情がある場合を除き,賠償の対象とはならない。 なお,始期は,原則として本件事故発生日である3月11日とするが,緊急時避難準備区域内に住居がある子供,妊婦,要介護者,入院患者等であって,6月20日以降に避難した者及び特定避難勧奨地点から避 なお,始期は,原則として本件事故発生日である3月11日とするが,緊急時避難準備区域内に住居がある子供,妊婦,要介護者,入院患者等であって,6月20日以降に避難した者及び特定避難勧奨地点から避難した者については,当該者が実際に避難した日を始期とする。また,終期については,特段の事情がある場合を除き,避難指示等の解除等から相当期間経過後までとする。 賠償額は月単位で算定され,基本的には日割りを想定していないことから,一審被告東電は,3月11日から3月31日までを平成23年3月の1か月分とし,第1期の終期を平成23年8月31日としている。 イ第1期終了から6か月間(第2期)月額5万円。 第2期の期間は6か月間とされたが,「但し,警戒区域等が見直される等の場合には,必要に応じて見直す。」とされ,後記3の中間指針第二次追補において,避難指示区域見直しの時点まで延長された。 ウ第2期終了から終期までの期間(第3期)今後の本件事故の収束状況等を踏まえ,改めて損害額の算定方法を検討するとされ,後記3の中間指針第二次追補において損害額の算定方法が示された。 エ 屋内退避区域の設定が解除されるまでの間,同区域において屋内退避をしていた者設定が変わった後に避難した者を除く。)に対し,10万円。 備考中間指針は,本件事故が収束せず被害の拡大がみられる状況下,賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示したものであるから,中間指針で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく,個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る,とされた。 2 中間指針第一次追補中間指針第一次追補の策定原賠審は,第13回~第18回原賠審に のではなく,個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る,とされた。 2 中間指針第一次追補中間指針第一次追補の策定原賠審は,第13回~第18回原賠審における議論を経て,関係者へのヒアリングを含め調査・検討を行った結果,避難指示等対象区域の周辺地域では自主的避難をした者が相当数存在していることを確認したため,こうした者に対する賠償の目安について一定の範囲を示すべく,12月6日,中間指針第一次追補(「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」)を策定した。 自主的避難等対象区域中間指針第一次追補は,以下の23市町村のうち避難指示等対象区域を除いた区域を,「自主的避難等対象区域」と定義している。 ア県北地域福島市,二本松市,伊達市,本宮市,桑折町,国見町,川俣町,大玉村 イ県中地域郡山市,須賀川市,田村市,鏡石町,天栄村,石川町,玉川村,平田村,浅川町,古殿町,三春町,小野町ウ相双地域相馬市,新地町エいわき地域いわき市自主的避難等対象者中間指針第一次追補は,以下の者を「自主的避難等対象者」と定義している。 本件事故発生時に自主的避難等対象区域内に生活の本拠としての住居があった者(本件事故発生後に当該住居から自主的避難を行ったか,自主的避難等対象区域外から同区域外に引き続き滞在したか,当該住居に滞在を続けたか等を問わない。)。 なお,本件事故発生時には避難指示等対象区域内に住居があった者についても,中間指針において精神的損害の賠償対象とされていない期間(例えば,4月22日の緊急時避難準備区域の設定以降,同区域から避難せずに滞在し 事故発生時には避難指示等対象区域内に住居があった者についても,中間指針において精神的損害の賠償対象とされていない期間(例えば,4月22日の緊急時避難準備区域の設定以降,同区域から避難せずに滞在した期間や,同区域設定解除後に帰還した後の期間等)及びうち子供・妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間(本件事故発生当初の時期を除く。)については賠償対象とする。 自主的避難等対象者の賠償額の目安中間指針第一次追補は,自主的避難等対象者が受けた損害のうち,①放射線被曝への恐怖・不安により自主的避難等対象区域内の住居から自主的避難を行った場合(区域外滞在者も含む。)における,ⅰ)生活費の増加費用,ⅱ)正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻 害されたために生じた精神的苦痛,ⅲ)避難及び帰宅に要した移動費用を,②放射線被曝への恐怖・不安を抱きながら自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合における,ⅰ)放射線被曝への恐怖・不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,ⅱ)放射線被曝への恐怖・不安,これに伴う行動の自由の制限等により生活費が増加した分があればその増加費用を,それぞれ合算した額を,①の場合も②の場合も同額として算定することとして,その賠償額の目安を以下のとおりとしている。 ア子供及び妊婦自主的避難等対象者のうち子供(対象期間において満18歳以下の者)及び妊婦(対象期間に妊娠していた者)については,本件事故発生から平成23年12月末までの損害として40万円。 本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者について,中間指針で対象とされていない期間については,上記40万円のうち当該期間に応じた金額を,子供・妊婦が自主的避難等対 損害として40万円。 本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者について,中間指針で対象とされていない期間については,上記40万円のうち当該期間に応じた金額を,子供・妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間については,本件事故発生から12月末までの損害として1人20万円を目安としつつ,当該期間に応じた金額を,それぞれ目安とする。 平成24年1月以降に関しては,今後,必要に応じて検討することとされ,後記3の中間指針第二次追補において,「少なくとも子供及び妊婦については,個別の事例又は類型毎に,放射線量に関する客観的情報,避難指示区域との近接性等を勘案して,放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱き,また,その危険を回避するために自主的避難を行うような心理が,平均的・一般的な人を基準としつつ,合理性を有していると認められる場合には,賠 償の対象となる。」,「賠償すべき損害及びその損害額の算定方法は,原則として第一次追補第2の[損害項目]で示したとおりとする。 具体的な損害額については,同追補の趣旨を踏まえ,かつ,当該損害の内容に応じて,合理的に算定するものとする。」とされた。 イその他の者その他の自主的避難等対象者については,本件事故発生当初の時期(おおむね本件事故発生から4月22日頃まで)の損害として8万円。 備考 象と認められ得る旨が明記されている。 3 中間指針第二次追補中間指針第二次追補の策定原賠審は,第19回~第26回原賠審における議論を経て,政府が,9月30日,緊急時避難準備区域を解除し,平成24年3月末を一つの目途に新たな避難指示区域を設定することを予定していることを踏まえて,中間指針及び中間指針第一次追補において今後の検討事項とされていたこと等について 時避難準備区域を解除し,平成24年3月末を一つの目途に新たな避難指示区域を設定することを予定していることを踏まえて,中間指針及び中間指針第一次追補において今後の検討事項とされていたこと等について可能な範囲で考え方を示すこととして,平成24年3月16日,中間指針第二次追補(「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第二次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」)を策定した。 第2期の終期変更中間指針第二次追補は,第1期終了から6か月間としていた中間指針の「第2期」を平成24年3月末を一つの目途とする避難指示 区域見直しの時点まで延長し,当該時点から終期までの期間を「第3期」とした。 第3期の賠償額の目安中間指針第二次追補は,中間指針において対象区域としていた避難区域のうち,第一原発から半径20km圏内(4月22日,警戒区域に設定)及び計画的避難区域について,平成24年3月末を一つの目途に,避難指示解除準備区域,居住制限区域及び帰還困難区域という新たな避難指示区域が設定されることから,第3期における精神的損害の賠償額の目安を以下のとおりとした。以下においては,いつ自宅に戻れるか分からないという不安な状態が続くことによる精神的苦痛の増大等が考慮された。 ア避難指示解除準備区域月額10万円。 イ居住制限区域月額10万円とした上,おおむね2年分をまとめて240万円の請求をすることができるものとする。ただし,避難指示解除までの期間が長期化した場合は,賠償の対象となる期間に応じて追加するが,その場合,最大でも帰還困難区域における損害額までをおおむねの目安とすることが考えられるとされた。 ウ帰還困難区域長年住み慣れた住居 長期化した場合は,賠償の対象となる期間に応じて追加するが,その場合,最大でも帰還困難区域における損害額までをおおむねの目安とすることが考えられるとされた。 ウ帰還困難区域長年住み慣れた住居及び地域における生活の断念を余儀なくされたために生じた精神的苦痛に対する賠償として,600万円。 なお,今後5年以上帰還できない状態が続くと見込まれることから,こうした長期にわたって帰還できないことによる損害額を一括して実際の避難指示解除までの期間を問わず一律に算定することとしたが,この額はあくまでも目安であり,帰還できない期間 が長期化する等の個別具体的な事情によりこれを上回る額が認められ得るとした。 エ旧緊急時避難準備区域9月30日に解除されたこと等を踏まえ,同区域の第2期は中間指針で決められたとおり第1期終了から6か月間とし,第3期は平成24年3月11日から終期までとすることとした上で,月額10万円。 終期の「避難指示等の解除から相当期間経過後」は,この区域におけるインフラ復旧が平成24年3月末までにおおむね完了する見通しであること,同年度2学期が始まる同年9月までには関係市町村において学校通学できる環境が整う予定であること,一方で避難者が従前の住居に戻る準備には一定期間が必要であることなどを考慮して,同年8月末までを目安とするが,楢葉町の旧緊急時避難準備区域については,同町の区域のほとんどが避難指示区域であることを踏まえ,その避難指示区域の設定解除後相当期間(今後の状況を踏まえて判断)が経過した時点までとする。 オ特定避難勧奨地点解除に向けた検討が開始されていること等を踏まえ,同地点の第2期は中間指針で決められたとおり第1期終了から6か月間とし,第3期は平成24年3月11日から終期までとすることとし オ特定避難勧奨地点解除に向けた検討が開始されていること等を踏まえ,同地点の第2期は中間指針で決められたとおり第1期終了から6か月間とし,第3期は平成24年3月11日から終期までとすることとした上で,月額10万円。 「避難指示等の解除から相当期間経過後」は,特定避難勧奨地点の解除から3か月間を当面の目安とする。 カ自主的避難等対象区域中間指針第一次追補においては,12月末までを対象期間とし,平成24年1月以降については今後必要に応じて賠償の範囲等に ついて検討することとされたところ,①中間指針第一次追補の時点とは対象期間における状況が全般的に異なること,②他方,少なくとも子供・妊婦の場合は放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていると考えられること等から,中間指針第一次追補の内容をそのまま適用することはしないが,個別の事例又は類型によってこれらの者が放射線被曝への相当程度の恐怖・不安を抱き,その危険を回避するために自主的避難を行うような心理が合理性を有していると認められる場合には賠償の対象とすることとされた。 備考中間指針,中間指針第一次追補及び中間指針第二次追補で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく,個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得るとして,一審被告東電に対しては,個別の事例ごとに,上記中間指針等の趣旨を踏まえてその全部または一定の範囲を賠償の対象とする等の合理的かつ柔軟な対応が求められるとしている。 4 中間指針第四次追補中間指針第四次追補等の策定原賠審は,第27回~第39回原賠審における議論を経て,平成25年1月30日に「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の 指針第四次追補中間指針第四次追補等の策定原賠審は,第27回~第39回原賠審における議論を経て,平成25年1月30日に「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第三次追補(農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害について)」を(弁論の全趣旨),平成25年12月26日に中間指針第四次追補(「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第四次追補(避 難指示の長期化等に係る損害について)」)を,それぞれ策定した(以下,中間指針,中間指針第一次追補,中間指針第二次追補及び中間指針第四次追補を合わせて「全中間指針」という(「中間指針等」から「自主賠償基準」を除いたもの)。)。 中間指針第四次追補では,この間,平成25年8月には全ての避難指示区域の見直しが完了し,帰還困難区域,居住制限区域及び避難指示解除準備区域の3つとされたところ,このうち後2者については,区域内への自由な立入りが可能となったほか,除染実施計画やインフラ復旧工程表に基づき除染やインフラ復旧等が進められると共に,企業の営業活動も一部再開されるなど,避難指示の解除に向けた検討が始まっている一方,帰還困難区域については,将来にわたって居住を制限することが原則とされ,区域内への立入りは制限され,本格的な除染やインフラ復旧等はされておらず,現段階では避難指示解除までの見通しすら立っていない状況であり,避難指示が長期化することが想定されることを前提に,こうした区域の住民からは,なお避難指示解除の見通しがつかず事故後6年を大きく超える長期避難が見込まれ,将来の生活の見通しが立たないことに対する精神的損害等に係る賠償の考え方を示すことが求められているとして の住民からは,なお避難指示解除の見通しがつかず事故後6年を大きく超える長期避難が見込まれ,将来の生活の見通しが立たないことに対する精神的損害等に係る賠償の考え方を示すことが求められているとして,本指針により,これまで示してきた指針等に加え,避難指示が長期化した場合に賠償の対象となる範囲等について現時点で可能な範囲でこれらの目安を示すこととしている。 第3期の賠償額の目安中間指針第四次追補は,第3期における精神的損害の賠償額の目安を以下のとおりとした。 ア帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域ないし避難指示解除準備区域 中間指針第二次追補の600万円に1000万円を加算し,上記600万円を月額に換算した場合の将来分(平成26年3月以降)の合計額(ただし,通常の範囲の生活費の増加費用を除く。)を控除した金額を目安とする。具体的には,第3期の始期が平成24年6月の場合は,本指針に基づく損害賠償請求が可能になることが見込まれる平成26年3月時点における状況を見て判断し,本指針を定めた時点から除染計画やインフラ復旧計画等に状況の変化がないときは,その時点からの将来分を控除した後の加算額は700万円とする。 イそれ以外の地域引き続き月額10万円。「避難指示等の解除等から相当期間経過後」の「相当期間」は,避難指示区域については1年間を当面の目安とし,例えば帰還に際して従前の住居の修繕等を要する者に関しては業者の選定や修繕等の工事に実際に要する期間,工事等のサービスの需給状況等を考慮する等,個別具体的な事情を踏まえ柔軟に判断するものとする。 備考なお,中間指針第四次追補では,本指針において示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく,個別具体的な事情に応じて相当因 事情を踏まえ柔軟に判断するものとする。 備考なお,中間指針第四次追補では,本指針において示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく,個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められるものは,指針で示されていないものも賠償の対象となるし,本指針で示す損害額の算定方法が他の合理的な算定方法の採用を排除するものでもないと明記され,一審被告東電には,被害者からの賠償請求を真摯に受け止め,合理的かつ柔軟な対応と同時に被害者の心情にも配慮した誠実な対応が認められるなどと付言している。 5 自主賠償基準 一審被告東電は,全中間指針を踏まえた上で,全中間指針で対象とされた者に県南地域及び宮城県丸森町旧居住者も加えた者を対象として,以下のとおり自主賠償基準を策定し,これに基づき,精神的損害の賠償を行っている。 帰還困難区域,大熊町,双葉町旧居住者①3月11日から平成24年5月まで月額10万円(避難所等加算別途。平成23年3月分は1か月分として計算。)の15か月分150万円,②平成24年6月から平成29年5月まで5年分600万円,③帰還困難慰謝料700万円の合計1450万円。 居住制限区域,避難指示解除準備区域(旧居住制限区域,旧避難指示解除準備区域を含み,大熊町,双葉町を除く。)旧居住者3月11日から平成30年3月31日まで85か月分850万円。 旧特定避難勧奨地点(南相馬市)旧居住者避難の有無を問わず,3月11日から平成27年3月31日まで月額10万円の49か月分490万円。 旧特定避難勧奨地点(川内村,伊達市)旧居住者避難の有無を問わず,3月11日から平成25年3月31日まで月額10万円の25か月分250万円。 旧緊急時避難準備区域旧居住者避 万円。 旧特定避難勧奨地点(川内村,伊達市)旧居住者避難の有無を問わず,3月11日から平成25年3月31日まで月額10万円の25か月分250万円。 旧緊急時避難準備区域旧居住者避難の有無を問わず,3月11日から平成24年8月31日まで月額10万円の18か月分180万円。平成24年9月1日時点で高校生以下であった者に対しては,これに加えて平成24年9月から平成25年3月31日まで月額5万円の7か月分35万円を追加賠償。 旧一時避難要請区域,旧屋内退避区域旧居住者 避難の有無を問わず,3月11日から9月30日まで,月額10万円の7か月分70万円。 自主的避難等対象区域旧居住者①3月11日~12月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~12月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~12月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず40万円(以下自主的避難等対象区域旧居住者との関係で「1期賠償」という。)。②平成24年1月1日~8月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成5年1月2日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年8月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成24年1月1日~8月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず8万円(以下自主的避難等対象区域旧居住者との関係で「2期賠償」という。)。 ③それ以外の者に対しては,避難の有無を問わず,3月11日~4月22日頃の損害と 間がある者)に対し,避難の有無を問わず8万円(以下自主的避難等対象区域旧居住者との関係で「2期賠償」という。)。 ③それ以外の者に対しては,避難の有無を問わず,3月11日~4月22日頃の損害として8万円。 (丙C21,24)県南地域及び宮城県丸森町旧居住者①3月11日~12月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に県南地域又は宮城県丸森町旧居住者であった者から平成23年3月12日~12月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~12月31日の間に妊娠 していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず20万円(以下県南地域及び宮城県丸森町旧居住者との関係で「1期賠償」という。)。②平成24年1月1日~8月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成5年1月2日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に県南地域又は宮城県丸森町旧居住者であった者から平成23年3月12日~8月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成24年1月1日~8月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず4万円(以下県南地域及び宮城県丸森町旧居住者との関係で「2期賠償」という。)。 (丙C24) 6 全中間指針の位置付け等全中間指針について原賠法は,文部科学省に,原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合に,和解の仲介のほか,「当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針」の策定に係る事務を行わせるため,原賠審を置くことができる旨定めている(同法18条1項)。これを受けて,本件事故に関しても,法学者及び放射線の専門家等の委員からなる原賠審が設置された。 中間指針を巡 に係る事務を行わせるため,原賠審を置くことができる旨定めている(同法18条1項)。これを受けて,本件事故に関しても,法学者及び放射線の専門家等の委員からなる原賠審が設置された。 中間指針を巡る原賠審における議論原賠審においては,中間指針を策定する過程で,証拠上認定できる限りで,概要,以下のような議論がされた。 ア中間指針策定まで中間指針は,前示のとおり,第1回~第13回原賠審における議論を経て,策定された。そこでは,おおむね,以下のような議論がなされた。(甲A20,21,丙A9,11,13~16,21) 第4回(5月16日)損害が非常に多岐にわたる分野に及んでいるが,どの分野においても,基本的に相当因果関係の範囲内で損害賠償すべきである。そして,精神的損害については,避難等を余儀なくされたことに伴い,正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたため生じたものは相当因果関係のある損害と認めることができると考えられる。生活費の増額分は比較的僅少かつ個人差も余りないと考えられるため精神的損害と合わせて算定することも検討する。 精神的損害については,避難場所によって類型化しても良いのではないかということ,ここで議論している精神的損害はあくまで避難をしていることで非常に不便な生活を強いられていることに対するものであり,これとは異なるタイプの精神的損害についても当然あり得るが,それについては引き続き検討することとする。 第7回(6月9日)精神的損害額算定方法に関する論点ペーパーが配布され議論がされた。同ペーパーでは,精神的損害額を検討するに当たって考慮すべき事項として,①平穏な日常生活の喪失,②自宅に帰れない苦痛,③避難生活の不便さ,④先の見通しがつかない不安などが考 配布され議論がされた。同ペーパーでは,精神的損害額を検討するに当たって考慮すべき事項として,①平穏な日常生活の喪失,②自宅に帰れない苦痛,③避難生活の不便さ,④先の見通しがつかない不安などが考えられると記載されている。 精神的損害額について,従来の裁判例などをある程度調べて議論した方が良いが,日常生活の維持・継続が阻害されているケースを探すのは困難であろう。過去の長期避難を強いられた例としては地滑りによって数年にわたり自宅に戻れないという状況が続いたときの精神的損害賠償が問題となった裁判例も参 考にはなるが,その例と本件事故の異同を意識すべきであって,直ちにこれに依拠することは不適当だろう。 交通事故との違いを意識しながらいわゆる赤本や自賠責基準を参照することも有意義ではないか。もっとも,怪我をして自由に動けない状態で入院している者と比べて,不自由な生活で避難しているとはいえ行動自体は一応自由である本件事故の被害者の慰謝料額は低くても良いのではないか。実際にいくら支出したかということと損害賠償は切り分け,相当な損害額を支払うという考え方もあるだろう。生活費の増加について精神的損害の中に含めると本来的な慰謝料よりも包括的慰謝料の性質を帯びるのではないか。事故が収束してから慰謝料を払うということであれば一時金で対応すれば足りるが,事故が収束しておらず事態が進行中である場合に慰謝料を払う必要があるとすると,時期を段階的に分けた上で定期金的に賠償していくという手段も考えざるを得ないのではないか。 この指針は,あくまでも現段階における考え方であって,将来的に事態が推移し,例えば不安定な状態が非常に長期に継続した場合には先の見通しがつかない不安という要素が大きな割合を占め,この点の慰謝料が大きくなるなど,また でも現段階における考え方であって,将来的に事態が推移し,例えば不安定な状態が非常に長期に継続した場合には先の見通しがつかない不安という要素が大きな割合を占め,この点の慰謝料が大きくなるなど,また別の枠組みを検討する必要が生じる可能性もあるという整理である。 損害の終期については,自宅に戻ることが可能となった日が一つの基準にはなり得るところ,戻れるか否かについてある程度見通しが立った段階で,慰謝料についてはもう一度見直す必要があり,仮に戻る見通しが立たないということになれば,慰謝料を毎月賠償していくという建付けは不適当となり,交通事 故の症状固定の考え方のように,一時金の額を検討する必要が生じることもあり得るのではないか。 乳幼児についても大人と同額で良いのかという論点もあるところ,乳幼児の苦痛が大人より少ないとしても,その分親の負担は大きいかもしれないことを考えれば,平均して同額としても良いのではないか。 純粋に精神的損害のてん補という整理であれば,避難場所による差異は余り付けなくても良いのではないか。 世帯単位か個人単位かについて,仮に1人10万円の慰謝料とした場合に,例えば一家8人の家族では世帯全体で80万円と多額になるが,本当にこれで良いのか検討を要する。世帯で基準を下げるということになると個々の行動に変なインセンティブを与える可能性もあるので,個々の判断を妨げない個人に対する支払で良いのではないか。世帯単位で考えた場合,住民票の所帯が実際の生活単位とは一致していない場合があるなど,その認定が非常に困難であり,個人単位で均一とすべきではないか。精神的損害というのは余り財産と関係がない人格的な利益の問題なので,世帯という考え方は採り難いのではないか。 純粋に精神的な損害に対する慰謝料という整理 困難であり,個人単位で均一とすべきではないか。精神的損害というのは余り財産と関係がない人格的な利益の問題なので,世帯という考え方は採り難いのではないか。 純粋に精神的な損害に対する慰謝料という整理であれば,世帯ごとよりも個人ごとに考えた方が良いだろう。 第8回(6月20日)慰謝料に関する参考と題し,慰謝料を算定するに当たって参考となりそうな裁判例を,身体的損害があるケースとないケースとで分けて整理した一覧表が配られ,議論された。 事務局からはおおむね以下のとおり指針案の説明がされた上で議論がされ,第1期(本件事故発生から6か月間),第2期(第 1期終了から6か月間)及び第3期(第2期以降,終期までの期間)に分けた上で,第1期については1人月額10万円を目安にし,避難所等にいた期間は2万円上積みして12万円を目安にすること,第2期については1人月額5万円を目安にするという案で第二次指針追補を決定することとされた。 損害額の算定は月単位で行うのが合理的と認められるが,これはあくまでも目安であるから,具体的な賠償に当たって柔軟な対応を妨げるものではない。 損害発生の始期については,個々の対象者が避難等をした日にかかわらず,原則として本件事故発生時である平成23年3月11日とする。 損害発生の終期としては基本的には対象者が対象区域内の住居に戻ることが可能となった日とすることが合理的であるが,対象者の具体的な帰宅の時期等を現時点で見通すことは困難であるため,なお引き続き検討する。 第12回(7月29日)区域外であっても,避難区域のすぐそばに住んでいる住民に子供がいるなどした場合に,避難した方が良いという気持ちは非常に分かるので,そこをどう扱うかという問題がある。 20mSv/yで切って,そ 区域外であっても,避難区域のすぐそばに住んでいる住民に子供がいるなどした場合に,避難した方が良いという気持ちは非常に分かるので,そこをどう扱うかという問題がある。 20mSv/yで切って,そのすぐそばの人は全く何も支払わないとすると,水俣病の救済において問題を長引かせたことの再現にならないか危惧する。もっとも,どこまで広げれば良いというものではなく,たとえば20mSv/yの範囲の外にもう少し広い範囲を決めてその部分については例えば全額ではなく一定額を賠償するという方向性の議論が必要ではないか。 微妙なところまで全部決まらないと指針が出せないということになると,この指針に沿った迅速な救済というものが実現できない。したがって,この指針に書かれていないものは賠償しないという宣言をしているという読まれ方をされては困るというのが大前提である。今後の様々な調査や知見の集積によって,類型的に基準を定めることができるものについては指針を追加すれば良いし,そこまでは類型化できず,非常に個別的な判断に依拠せざるを得ないものについては,原賠審による和解の仲介等において個別的な判断をしながら対応をしていき,そういった事例を積み上げていく中で,また一定の類型的な指針ができれば指針を追加する,という考え方で,できる限り,明確化できるものは逐次明確化して迅速な解決を目指すべきだろう。 自主避難については全く個別事情の問題ではなく一定の基準があるのではないか。政府の決めた20mSv/y以下でも,避難した者は賠償対象に入るべきだという主張に対して一定の基準で答える必要があるのではないか。では,10mSv/yなのか,5mSv/yなのかという点について原賠審が基準を決めるということは難しく,やはり政府が責任を持って考えるべき問題では 対して一定の基準で答える必要があるのではないか。では,10mSv/yなのか,5mSv/yなのかという点について原賠審が基準を決めるということは難しく,やはり政府が責任を持って考えるべき問題ではないか。ただ,指針のどこかに付記する形等により,原賠審としての考え方は示すこととしたい。 第13回(8月5日)前回の議論を踏まえ,「自主避難に関する論点」としてまとめられたペーパーが資料3として配布された。そこでは,中間指針では,「政府の避難指示等の有無を基準として,避難をする合理性が認められるものを指針の対象と」しているが,「一方,これ以外にも,避難等の対象区域外に住居があって放射能の危険 を懸念して自主的に避難している者が多数いると考えられ,これらの者の避難費用等が賠償すべき損害と認められるか否かの問題がある」ところ,一般論として,このような対象区域外の者についても「被曝の危険を回避するための避難行動が社会通念上合理的であると認められる場合には,その避難費用等は,賠償すべき損害となり得る」として,その基準は,例えば本件事故直後については第一原発からの「距離等」を,その後については「避難を開始する地点の放射線量等」が,それぞれ考えられるが,こういった20mSv/yを下回る地域について自主的な避難に合理性が認められるかは風評被害に類似しており,避難指示等が解除された区域との整合性なども考慮すべきであって,適切な基準が建てられるか問題となる,などとしている。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 自主的避難者のコアとなる問題は,不安に感じて避難した者をどう扱うかというものであるが,単に不安を感じているから直ちに賠償するというのではなく,ある程度合理性が必要となるだろう。 された。 自主的避難者のコアとなる問題は,不安に感じて避難した者をどう扱うかというものであるが,単に不安を感じているから直ちに賠償するというのではなく,ある程度合理性が必要となるだろう。 自主的避難者の基準の一つとして,実際に住民が日々有している情報は,20mSv/yというものではなく,その時点時点の線量率がどの程度かというものであるから,これは1つの基準になるだろう。また,水素爆発があったことや,子供がいる場合に不安に感じた,こういったことをファクターとして,何らかの基準を決めていくことになるだろう。 放射線量が1~20mSv/yの間であっても,おそらく単なる不安の問題ではなくて,ある種の健康の危険というものが あるけれどもそれがどの程度のものか分からないという状況下での不安は,廃棄物処分場のそばで井戸水を飲んでいる者の不安とは質が違うのではないか。例えば10mSv/yでも,10年間では100mSvであり,一般的には癌の発生する有意な数値といわれているのだとすれば,ある程度長期的なスパンを考えて現在の放射線量を考えるべきではないか。 本件事故直後,おそらく3月20日過ぎくらいまでは,住民は,実際に空間の線量率が分からない状態で避難しているのだろうし,20mSv/yを超えるとして計画的避難区域が設定されたのが4月22日だとすると,国の基準が正確に住民に伝わったのは早くともそれ以降であることなど,その時点で避難することが合理的であったかを考慮する必要があるのではないか。特に子供についての不安はいまだに消えていない。 100mSv/yだと0.5%癌の発症率が上がるということで,それ以下ではよく分かっていない現状で,不法行為の世界で法的に健康への危険があるかといい切れるかというと難しい。そうすると いない。 100mSv/yだと0.5%癌の発症率が上がるということで,それ以下ではよく分かっていない現状で,不法行為の世界で法的に健康への危険があるかといい切れるかというと難しい。そうするとやはり不安を法的にどう取り上げるかということを考えざるを得ないと思う。 不法行為の世界では,過去の自主避難について,どこまでが相当因果関係の範囲内といえるか,合理的な回避行動として認められるのか,というのが基準となろう。そうすると,その時点その時点の時期,場所,幼児・妊婦等の人の属性等で考えていくことになろう。 ここで賠償の対象とするのは,あくまでも原子力損害というカテゴリーのものであり,相当因果関係の範囲内のものということなので,当然,自ら限度がある。もっとも,人の健康その ものに対する被害のおそれがあるので避難した者については,難しい問題があるので,今後もっと十分に資料を集めて議論する必要があるだろう。一定範囲の自主的避難に係る損害につき原則として相当因果関係が認められる類型として指針で明示することが可能か否か,原賠審において引き続き検討を行う。 なお,同日,中間指針が決定・公表された。 イ中間指針第一次追補策定まで中間指針第一次追補は,前示のとおり,第13回~第18回原賠審における議論を経て,策定された。そこでは,おおむね以下のような議論がされた。 (甲A20,22~25,丙A21~29)第14回(9月21日)「福島県における避難の概況」と題して事務局が作成したペーパーが資料1として,前回までの議論を踏まえ「自主的避難に関する主な論点」としてまとめられたペーパーが資料2として,「避難等対象区域外の空間線量率の推移」等が参考資料2として配布され,引き続き自主的避難者に対する賠償基準等につい を踏まえ「自主的避難に関する主な論点」としてまとめられたペーパーが資料2として,「避難等対象区域外の空間線量率の推移」等が参考資料2として配布され,引き続き自主的避難者に対する賠償基準等について議論がされた。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 本件事故直後の混乱時期は,どの程度汚染されているかが分からないことと合わせて,事故がこの先どういうふうに展開していくのかが分からないことも大きな要素であり,例えば,20mSv/yなら安全だとか,それに従った避難指示が出たりした段階で,事故の先行きがこれ以上悪化しないということがまだ明確になっていないとすると,自主的に避難した者が避難 指示区域外であるからといって合理的でない避難であったという判断はしづらいのではないか。 当時原子力がもうコントロール可能になったというふうに政府が認めた時期がいつかということが重要になろうか。そうだとすると,4月22日に解除されたことをみると,この時点である程度目途がついたということがいえるのだろうか。 20mSv/yというのは,たまたま作業者の基準では5年間を平均した時に1年当たり20mSv,5年間で100mSvを超えないというものがあるので,これを基準としているようだが,これが余りにも高すぎるのではないかという我々の感覚というのはそれなりに理解されるだろう。ただ,それをどこまで下げるかというのも困難だが,そこでは地域性(コミュニティ自体が成り立つのか,ホットスポットが近くにあるのか等)が一つの要素となるのではないか。 自主的避難者の議論では,科学的な放射線量の危険性というものが議論の基礎にあるので,どうしても科学的な基準を議論してしまいがちだが,原賠審で議論すべきなのは,科学的に安 素となるのではないか。 自主的避難者の議論では,科学的な放射線量の危険性というものが議論の基礎にあるので,どうしても科学的な基準を議論してしまいがちだが,原賠審で議論すべきなのは,科学的に安全かどうかの基準そのものではなく,安全に関する基準がどこにあるかということを念頭に置きながら,住民が危険性を感じて避難することに合理性があるかどうかということであって,この点は注意して議論する必要がある。特に本件事故後初期の段階は,公的に公表されたデータも問題だが,同時に様々な情報が飛び交っている状況なので,住民の不安感がどこまで合理的かと判定するときの素材として,そういう非公式に流布していたものも考慮に入れないといけないのかもしれない。 第15回(10月20日) 自主的避難に係る賠償を検討するに当たって参考とすべく,いわき市の弁護士や実際に自主的避難をした者も含め,関係者からのヒアリングが行われた。 第16回(11月10日)参考資料として「自主的避難関連データ」と題する事務局作成のペーパーが資料2として配布され,議論された。 議論では,自主的避難者について,本件事故直後(第一期)とそれ以降(第二期)を区別するべきか,終期をどこに置くか,実際に避難した者と避難せず滞在した者を区別するべきか,避難指示対象区域外の者を対象とするとして,空間線量率で線を引くのか,第一原発からの距離で線を引くのか,それ以外の要素も考えるのか,どこで線を引くのが妥当か,住民の属性(妊婦・子供・子供の親等)をどう考慮するか,等々について議論がされた。 第17回(11月25日)自主的避難者に対する慰謝料について検討するための参考資料として「中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)」と題するペーパーが資料 論がされた。 第17回(11月25日)自主的避難者に対する慰謝料について検討するための参考資料として「中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)」と題するペーパーが資料1として,「慰謝料の金額に係る裁判例について」と題する事務局作成のペーパーが資料2として配布された。資料1では,対象区域について,少なくとも自主的避難等対象区域においては住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり,それに基づき自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面があるとして,一定の自主的避難等対象区域の設定をすることとしつつ,同区域以外の地域についても個別具体的な事情に応じて賠償の対象となる場合を排除するものではない,とされて いる。資料2は,事務局の方で,本件に比較的近いと思われる例として,空港・基地周辺の騒音,道路の騒音・排気ガス,地下鉄工事騒音,マンション工事騒音,スーパーマーケット室外機騒音,解体工事騒音,犬の騒音・悪臭,下水悪臭,産業廃棄物悪臭,豚舎悪臭,工場悪臭,養鶏場虫害,日照被害,産業廃棄物火災に係る訴訟の裁判例を19件挙げたものである。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 避難区域以外の一定範囲の住民が一定の状態,すなわち事故によって自主的避難をすることが相当であると認められる程度の恐怖・不安を抱かざるを得なかったという状態に置かれたことをもって,損害と考えるべきであり,その点で,自主的避難をした住民も,その地域にとどまり続けた住民も,同じ損害を被ったものと考えるべきである。 追加指針において対象地域内の全住民に共通して認められるべき賠償項目と金額を示すこととし,これを超える損害の賠償を認めるべき特段の事情がある場合 民も,同じ損害を被ったものと考えるべきである。 追加指針において対象地域内の全住民に共通して認められるべき賠償項目と金額を示すこととし,これを超える損害の賠償を認めるべき特段の事情がある場合には,これを個別の請求に委ねることとせざるを得ない。 賠償額は,避難費用等も含めた包括的慰謝料とし,自主的避難も滞在者も一律の額として示した上で,特段の事情のある場合には個別の請求を許容するものとすることが妥当である。 対象時期については,損害賠償の基本的な考え方に照らせば,過去のある時点について,その時々の状況に照らして,対象区域に滞在することに著しい恐怖・不安を抱くことが原発事故と相当因果関係のある損害と認められるか否かを評価するのが原 則であり,将来についても損害賠償を認めるか否かは,この状態が続くことに高度の蓋然性がある場合に限られる。 終期について,自主的避難は,国が緊急時避難準備区域を解除した9月末よりも後にいつまでも伸ばすと復興に向けての動きを遅らせることになるし,国が出した緊急時避難準備区域の解除という判断は放射線に対する不安・恐怖を打ち切る1つの参考になると考えられるので,9月末から若干準備期間を置いた9月末プラスアルファを終期とするというのも一つの考え方ではないか。 避難指示対象区域から自主的避難等対象区域へ避難した者に対して二重に賠償対象とすべきか,については,すべきであるという意見と,既に中間指針による賠償の範囲内に包摂されており,すべきではない,とする意見の双方が出された。 子供や妊婦については,同伴者も子供と一緒に避難している以上,生活費の増加分等があるので,それを考慮すると,賠償額を増やした方が良いのではないか,という意見に対し,子供等については同伴者が着いているのが通常な ついては,同伴者も子供と一緒に避難している以上,生活費の増加分等があるので,それを考慮すると,賠償額を増やした方が良いのではないか,という意見に対し,子供等については同伴者が着いているのが通常なので,子供の賠償の中にその部分も含めて増額した上で,子供一人分についての賠償額を決めれば良いのではないかという意見も出された。 第18回(12月6日)中間指針第一次追補の案がペーパーとして配布され,議論された。同ペーパーでは,今回の指針の対象となる区域として,既に中間指針で賠償の対象となっている区域と,今回新たに「自主的避難等対象区域」として設定する区域の2つに分け,前者については中間指針で賠償対象となっていなかった時期等を賠償対象とする内容,後者については,避難したか滞在したかを 問わず,子供・妊婦については12月末までの分,それ以外の者については本件事故発生当初の時期の分を今回の賠償の対象とする内容となっている。考え方として,第一に,本件事故に起因して自主的避難等対象区域から自主的避難を行った者については,主として生活費の増加費用並びに避難及び帰宅に要した移動費用が生じ,合わせてこうした避難生活によって一定の精神的苦痛を被っていると考えられることから,少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念できること,一方,滞在者については,主として放射線被曝への恐怖・不安やこれに伴う行動の自由の制限等を余儀なくされることによる精神的苦痛が生じ,合わせて生活費の増加費用も生じている場合が考えられることから,少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念できること,第二に,自主的避難は避難指示等により余儀なくされた避難とは異なることから,避難指示等の場合と賠償額を同じ扱いにすることは必ずしも公平かつ合理的とはいえな ついては賠償すべき損害と観念できること,第二に,自主的避難は避難指示等により余儀なくされた避難とは異なることから,避難指示等の場合と賠償額を同じ扱いにすることは必ずしも公平かつ合理的とはいえないこと,第三に,自主的避難者か滞在者かの違いにより賠償額に差を設けることは,①いずれも自主的避難等対象区域内の住居に滞在することに伴う放射線被曝への恐怖・不安に起因して発生したものであること,②滞在に伴う精神的苦痛は自主的避難によって解消されるが,新たに避難生活に伴う生活費増加等が生じるという相関関係があること,③自主的避難等対象区域内の住民の中には諸般の事情により滞在を余儀なくされた者もいるであろうこと,④広範囲に居住する多数の自主的避難等対象者について自主的避難者と滞在者を区別し個別に自主的避難の有無及び期間等を認定することは実際上極めて困難であり,これをしようとすると早期の救済が妨げられるおそれがあるこ と等を考慮すると,公平かつ合理的とはいい難いことから,精神的損害と生活費の増加費用等を一括して一定額を算定すると共に,自主的避難者と滞在者の賠償額を同額とすることが妥当と判断したとされている。対象者の属性と賠償対象期間については,本件事故発生当初においては大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖・不安を抱くことは年齢等を問わず一定の合理性を認めることができ,その後においては,少なくとも子供・妊婦の場合は放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていること等から,比較的低線量とはいえ通常時より相当程度高い放射線量による放射線被曝への恐怖・不安を抱くことについては人口移動により推測される自主的避難の実態からも一定の合理性を認めることができるため,自主的避難等対象者のうち子供・妊婦については本件事故 放射線量による放射線被曝への恐怖・不安を抱くことについては人口移動により推測される自主的避難の実態からも一定の合理性を認めることができるため,自主的避難等対象者のうち子供・妊婦については本件事故発生から12月末までの分を,その他の自主的避難等対象者については本件事故発生当初の時期の分を,それぞれ賠償対象期間として算定することが妥当と判断したとされている。損害額の算定に当たっては身体的損害を伴わない慰謝料に関する裁判例等を参考にした上で,精神的苦痛及び子供・妊婦の場合の同伴者や保護者分も含めた生活費増加費用等について一定程度勘案することとしたとされている。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 自主的避難等対象区域は,市町村単位で示すこととし,福島第一原発からの距離,避難指示区域との近接性,放射線量についての情報,避難の状況など様々な要素を総合考慮して確定することとして,福島県の県北地域の全市町村,県中地域の全市 町村,相双地域のうち避難指示等対象区域に設定された10市町村を除いた相馬市及び新地町,並びにいわき地域のいわき市とすることが相当である。 中間指針の精神的損害の根拠は主に「避難先の不便」に重点が置かれ,他方,中間指針第一次追補の損害の根拠は「低線量被曝の健康への不安」に重点が置かれており,両者は性質が異なると整理することができるため,中間指針で既に精神的損害を賠償されている者について,中間指針第一次追補の賠償対象者にも該当する場合は,重複賠償を認めるべきである。 終期について,実質的に本件事故から1年後の平成24年3月までという案が良いと思っていたが,12月までという意見が多数であればこだわらない。ただ,平成24年1月以降についても,きちんと状況に応じて 終期について,実質的に本件事故から1年後の平成24年3月までという案が良いと思っていたが,12月までという意見が多数であればこだわらない。ただ,平成24年1月以降についても,きちんと状況に応じて支払う旨の明記をしてもらいたい。 平成24年3月までで良いかなと思っている部分もあるが,最高裁の口頭弁論終結時までという判例を参考にすると,中間指針第一次追補との関係では12月末がだいたいそれに近いので,12月末とした上で,それ以降については検討する旨をはっきり書いてもらいたい。 平成24年1月以降の分に関して「必要に応じて検討する」という趣旨は,状況が変わらなければ少なくとも検討はするということという意味であり,12月末で切ってしまうと受け取られないために,「必要に応じて賠償の範囲について検討する」という文言とすべきではないか。 子供・妊婦に対する賠償額について,避難指示対象区域の避難者は中間指針では9月以降毎月5万円であり,仮に自主的避 難等対象区域に対する賠償額を50万円とすると上記の10か月分ということになるが,これはバランスが悪いのではないか,そうすると,原賠審の委員全員が合意できる金額というのは30万円プラスアルファ程度ではないか,子供・妊婦については同伴者の増加費用も考慮に入れるべきであるから,50万円に近い額とすべきではないか等々の意見を集約し,40万円と決定された。また,それ以外の者に対する賠償額については,中間指針で屋内退避を4月22日まで指示された屋内退避区域の者に対して10万円と定められたことを参考にし,同額ではバランスが悪いがなるべく近い数字ということで8万円と決定された。 ウ中間指針第二次追補策定まで中間指針第二次追補は,前示のとおり,第19回~第26回原賠審における議論 を参考にし,同額ではバランスが悪いがなるべく近い数字ということで8万円と決定された。 ウ中間指針第二次追補策定まで中間指針第二次追補は,前示のとおり,第19回~第26回原賠審における議論を経て,策定された。そこでは,おおむね,以下のような議論がなされた。(甲A11,12,19,丙A30,31,46,47)第19回(12月21日)(丙A46,47)中間指針第一次追補の公表を経て,対象区域や賠償額について種々の批判や意見が寄せられたため,自主的避難等対象区域に対する賠償について主に議論することとされた。議論の前提として,自主的避難等対象区域に含まれなかった地域について賠償が認められないと考えているわけではなく,個別的な賠償が認められ得ることが強調された。自主的避難等対象区域に設定しなかった市町村は,放射能汚染されている地域に一定の広がりがみられず限定されているため,市町村単位で設定することを考えると全体を設定することは不適当であり,むしろ放射 線量が高いところについてはスポット的に個別的な対応をすることが適当だと考えられたためであるとの説明がされた上で,区域の線引きについて議論がされた。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 自主的避難等対象区域外の者について,個別的な対応をするとして,ではどういう要素があれば賠償の対象となるかというのはなかなか難しい問題だが,自主的避難等対象区域は少なくとも一定範囲においては比較的高い放射線量が認められるのであるから,そこにおける放射線量というのは一つの参考値になるだろう。 中間指針第一次追補で自主的避難等対象区域に設定した区域内の市町村においては,ほぼ全てにおいて3月に行政がヨウ素剤を配布しており,これを受けて不安 放射線量というのは一つの参考値になるだろう。 中間指針第一次追補で自主的避難等対象区域に設定した区域内の市町村においては,ほぼ全てにおいて3月に行政がヨウ素剤を配布しており,これを受けて不安を感じて自主的避難をした者も一定数いたと考えられることからすれば,合理的な設定であったと思う。 原賠審では,中間指針第一次追補で設定した自主的避難等対象区域はそれなりに合理性のあるものであったと判断した上で,区域外の住民も,自分の住んでいる場所において放射線量が高ければ個別的に賠償の対象になることを改めて強調することとしたい。 第21回(平成24年1月27日)政府による避難指示区域の見直しの方針を受けて,今後,原賠審において今後の賠償の在り方を議論していくことを前提とし,各避難指示区域に関係する地方公共団体(双葉地域8町村)等の関係者からのヒアリングを行うなどした上で議論がされた。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 指針は一審被告東電を縛るものではなく,あくまでも一審被告東電が自主的に指針に基づいて賠償するものだから,結局,一審被告東電がどうしても嫌だといわれてしまうと動かなくなってしまう,一審被告東電側としても合理的に考えれば納得するか反対しにくい賠償というものを決めていくというのが指針の役割であると思っている。したがって,ただ金額を多くすれば良いというものではないだろう。 第23回(平成24年2月17日)原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)の室長から活動状況についての報告がされ,一審被告東電が,個々の事案の折衝において,中間指針に具体的に書いていないことについて賠償すると中間指針に反することになるため,賠償できない,といって硬直な交渉姿勢に出る事 況についての報告がされ,一審被告東電が,個々の事案の折衝において,中間指針に具体的に書いていないことについて賠償すると中間指針に反することになるため,賠償できない,といって硬直な交渉姿勢に出る事案の報告が多数寄せられていることなどが紹介された。 第24回(平成24年2月23日)賠償額の目安を議論するに当たっては,損害賠償として説明できるかということが重要である旨の能見会長の発言があった。 第25回(平成24年3月8日)原賠審の定める指針は,損害賠償の一般法理に照らして説明できないことをそのときの勢いで,あるいは政策的に決められたと事後的に評価され,指針全体の信頼性を揺るがすことのないようにすべきであり,それなりに理論的な説明は付けた方が良い旨の発言があった。 エ中間指針第四次追補策定まで 中間指針第四次追補は,前示のとおり,第27回~第39回原賠審における議論を経て,策定された。そこでは,おおむね,以下のような議論がなされた。(丙A17~20,32,43,44)第34回(平成25年9月10日)避難指示解除後の賠償の考え方が議論され,帰還困難区域においては,原則として少なくとも本件事故後6年間は避難指示が解除されず住民の立入りが制限され,本格的な除染が実施されていないなど,現段階では避難指示解除までの見通しを立てることが困難な状況があり,かつ,避難指示が事故後6年を大きく超えて長期化する可能性がある地域も存在すると考えられるため,こういう地域については,もう戻れないということを前提として一括で慰謝料を賠償するという考え方についても議論がされ,大方の賛同を得られた。その上で,今まで毎月払ってきた慰謝料との関係を理論的に整理する必要があるとされ,具体的には,今までの毎月のものに上乗せ 括で慰謝料を賠償するという考え方についても議論がされ,大方の賛同を得られた。その上で,今まで毎月払ってきた慰謝料との関係を理論的に整理する必要があるとされ,具体的には,今までの毎月のものに上乗せして故郷に戻れないということについての一括の慰謝料の賠償を考えることとするが,6年分を前払いしているものとのオーバーラップを調整する必要性が頭出しされた。 第35回(平成25年10月1日)避難指示の長期化に伴う賠償を議論する前提として,内閣府の担当官から帰還困難区域についての現状が報告された。その中で,他の地域を先行する必要があるなどの事情により,帰還困難区域についてはまだ除染が実施されていないこと,全ての人が365日,8時間は外で生活し,16時間は遮蔽率の低い家の中で生活したと仮定すると,大体3.8μ Sv/hが20mSv/yと同値であるとされていること,富岡町,浪江町, 大熊町といった線量が非常に高い地域については,環境省による除染のモデル事業を実施してもそこまで線量が低下しなかったこと,今後も環境省の方で除染技術を開発しながらモデル事業を継続していく予定であること,避難指示解除の必要条件としては20mSv/yを下回らなければならないところ,そのほかに,インフラの復旧状況,生活関連サービスや除染の状況等を踏まえ,地元と協議した上で避難指示解除していくというのが政府の方針であることなどが報告された。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 避難指示が長期化している区域においては,①長期間の避難の後,最終的に帰還するか否かを賠償がなされる時点で判別することは困難であること,②一般的には帰還が可能な場合の精神的損害よりも帰還が不可能な場合の精神的損害の方が大きいと考えられる 長期間の避難の後,最終的に帰還するか否かを賠償がなされる時点で判別することは困難であること,②一般的には帰還が可能な場合の精神的損害よりも帰還が不可能な場合の精神的損害の方が大きいと考えられること,③現在も自由に立入りができず,除染計画やインフラ復旧計画がなく帰還の見通しが立たない状況においては,仮に長期間経過後に帰還が可能となったとしても,移住を余儀なくされたものと同様に扱うことも合理的と考えられることなどから,最終的に帰還するか否かを問わずに,「長年住み慣れた住居及び地域における生活の断念を余儀なくされた精神的苦痛等」を賠償することとしてはどうか。 中間指針第二次追補の一括600万円と,長期化していわばふるさとをなくしてしまった場合の損害賠償と,多少オーバーラップするところ,これをどう考えるか。 いつ自宅に戻れる分からない不安な状態が続くことによる精神的苦痛に関しての賠償をしてきたところ,ふるさとの喪失や 故郷の喪失のような損害に転換すると考えて良いのか,仮に良いとしていつ転換するのか,理論的に問題となりそうだ。 仮に今の時点で故郷を失うことによる慰謝料を出すと,その中には自宅に戻れないことによる不安の状態が続くことによる慰謝料が含まれると考えられるのではないか。 今回の故郷を失ったことによる慰謝料は,死亡慰謝料とは性質が違うので,後者の場合の慰謝料金額は参考にならないのではないか。むしろ,後遺症の方が近いとも思われる。 解除後の相当期間としては,慎重に1年程度は標準的な区切りとして必要ではないか。 第36回(平成25年10月25日)ADRにおける個別事案における検討状況が室長から報告された。その上で,前回に引き続き,避難指示の長期化に伴う賠償の考え方について議論がされた。 原 第36回(平成25年10月25日)ADRにおける個別事案における検討状況が室長から報告された。その上で,前回に引き続き,避難指示の長期化に伴う賠償の考え方について議論がされた。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 帰還困難区域の精神的損害額について,事務局として判例や世の中の基準を調べているけれども,参照すべき適当な裁判例や基準がなかなか見当たらない。 例えば,一般に慰謝料の類型として最も高額であり遺族間で配分される死亡慰謝料を参考とし得るかどうかについて・一家の支柱が死亡した慰謝料を,本件のように家族全員が同じ状況にあり対象となる場合にもそのままスライドして全員が賠償を受けるというのは適当ではないのではないか。 ・死亡慰謝料が上限となるのではないか。 ・死亡慰謝料は相続され相続人の頭数で割ることになるのだから,その金額を基準にすることもあり得るのではないか。 既に支払われた6年分の慰謝料との調整は,今回,故郷を失ったということでその慰謝料が支払われると,今までの毎月の分はその中に入ってしまうので,期間が経過していない約3年分については調整が必要となるのではないか。 解除後の相当期間について,以下のように色々な意見が出されたが,1年を当面の目安とする案が比較的多数を占めた。 ・例えば家の修繕に必要な期間一つ取って考えてみても,大工不足が予測されることからすれば,1年では短過ぎるのではないか。 ・まず相当期間が例えば1年なら1年と決まれば,それを前提にして政府が住民と協議して解除時期を決めるに当たって考慮されるのではないか。そういう意味では,余りに短過ぎては例外的な場合が多くなり現実的ではないが,対象となる避難者の大部分が包摂され得る期間であれ て政府が住民と協議して解除時期を決めるに当たって考慮されるのではないか。そういう意味では,余りに短過ぎては例外的な場合が多くなり現実的ではないが,対象となる避難者の大部分が包摂され得る期間であれば良いので,1年という案も一応原則としてはあり得るのではないか。 ・解除時期が住民のインフラの復旧状況等をかなり考慮に入れて決められるとすれば,復興の遅れを促進するような長い相当期間を定めるよりも,特段の事情のない限り1年というのは合理的ではないか。 第37回(平成25年11月22日)避難指示が長期化した場合の精神的損害の賠償について,原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 帰還困難区域以外の区域で,例えば,避難指示解除が当初の5~6年というものよりも遅れ,7年後に解除されたと仮定した場合,解除の1年後まで月額10万円の賠償がされることになるため,960万円の慰謝料が賠償されることになるところ,こういった仮定の数字とのバランスも,帰還困難区域に対する慰謝料額を算定する際には考慮する必要があるのではないか。 長期化に基づく慰謝料の判断基準時は,既に支払われている600万円の将来分を控除する必要から,一時点に決める必要があるところ,一審被告東電による賠償が支払われる時点とすること自体はそれで良いとも思われるが,実際に支払われる時点を基準時とすると,基準時を意図的にずらすことが可能になり不適当だろう。また,600万円の中に含まれている生活費増加費用分については控除しないとしたときに,ではその額はいくらなのかという難しい問題に直面することになるので,むしろ,600万円は精神的損害の額を考慮する要素として生活費増加費用を考えているという理解をした上で,将来分を控除する際に生活費増 その額はいくらなのかという難しい問題に直面することになるので,むしろ,600万円は精神的損害の額を考慮する要素として生活費増加費用を考えているという理解をした上で,将来分を控除する際に生活費増加費用分を控除する必要はないという割り切りもあるのではないか。 第39回(平成25年12月26日)中間指針第四次追補の案が説明され,それについて議論がされた。 まず,事務局からは,以下のような案の説明があった。 一括の精神的損害額の算定の考え方として,過去の裁判例及び死亡慰謝料の基準等も参考にした上で,避難指示が事故後10年を超えた場合の避難に伴う精神的損害額の合計額を十分に上回る金額とした。 第二次追補において,長年にわたって帰還できないことによる損害額を5年分の避難に伴う慰謝料として一律に600万円と算定していることから,このうち,被害者が一審被告東電に対し本指針に基づき損害賠償請求が可能になると見込まれる平成26年3月以降に相当する部分は「長年住み慣れた住居及び地域が見通しのつかない長期間にわたって帰還不能となり,そこでの生活の断念を余儀なくされた精神的苦痛等」に包含されると考えられるため,その分を加算額から控除することとした。 一括慰謝料の具体的な1000万円という数字については,原賠審の各委員から適当だと思われる数字を聴取し集約した金額であり,これを下回る意見も,上回る意見も出されたが,その平均額を意識しながら合理的な金額と思われる数字を仮に設定した。 原賠審の委員等からはおおむね以下のような発言等があり,議論がされた。 遺族間で配分される死亡慰謝料の場合,世帯の人数が平均3人であることを前提に仮に一家の父親が死亡した場合の家族の受取額は950万円なので,それよりも若干上回る金額 発言等があり,議論がされた。 遺族間で配分される死亡慰謝料の場合,世帯の人数が平均3人であることを前提に仮に一家の父親が死亡した場合の家族の受取額は950万円なので,それよりも若干上回る金額ということで1000万円という数字は適当ではないか。 各委員の意見の集約の結果が1000万円であればこれに従いたい。なお,具体的な事情によってはこれを上回る金額もあり得るということで,故郷を喪失することについての精神的苦痛には相当の開きがあるため,ADRにおいて検討される慰謝料の範囲には相当の幅があるものになるだろうし,和解によって決着する慰謝料額にも本指針で示される金額からは相当程度外れたものになることもあり得ることは了解されたい。 慰謝料というものは本来それぞれの精神的な苦痛ということで簡単に一律に判断できるものではないが,原賠審の役割として,全てが個別的な判断に任されてはなかなか賠償が進まないことから,指針を示すことによって早期の賠償を促進するという観点から,平均的,あるいは最低ラインとしての慰謝料額を示したものである。 生活費や慰謝料を含めて月額いくらという形で慰謝料額を定めてきたのだが,もう戻れないということで,故郷を喪失する者についての純粋な精神的苦痛の慰謝料を決めることとしたもので,故郷を喪失したという段階でどれだけの精神的苦痛があるかということを理論的に計算できるため,その段階で一律の金額を定めることにしているものであり,これはむしろ従来の裁判所の判例の考え方に沿うものである。だから慰謝料の打ち切りではないかといわれているが,むしろ精神的な慰謝料は一括で決められるものだろう。 全中間指針の位置付け うな議論の経過によれば,個別具体的な事情に応じた本件事故と相当因果関係のある損害は別 ではないかといわれているが,むしろ精神的な慰謝料は一括で決められるものだろう。 全中間指針の位置付け うな議論の経過によれば,個別具体的な事情に応じた本件事故と相当因果関係のある損害は別途あり得るので,それは全中間指針で定める基準の外で損害賠償がされるべきであるという前提で,全中間指針は,本件事故と相当因果関係のある,日常生活の阻害や故郷の喪失による精神的損害(比較的僅少で個人差が余りないと考えられる生活費の増額分も含む。)に対する損害賠償額を,簡易迅速な損害回復を旨とするため支払う側の当事者である一審被告東電も納得し支払を拒否しないような金額として妥当な額を基準として打ち出したものであるということができる。そして,その額を定める議論においては,交通事故損害賠償訴訟における基準や参考 となり得る判例が参照されたが,本件事故と類似の事例は見つからなかったため,最終的には,交通事故や参考裁判例の事例との違いを意識しながら,法学者及び放射線の専門家等から構成された原賠審の委員から出された意見の平均的な額を基準にするなどして,全中間指針における賠償の基準額は定められた。20mSv/yを下回る低線量の地域住民については,単なる根拠のない不安を損害とみなすものではなく,低線量被曝は健康被害があるけれどもそれがどの程度のものか分からないという知見を基にしつつ,取り分け本件事故直後には,公的に公表されたデータ以外に非公式に様々な情報が飛び交っていた状況を考慮に入れ,本件事故により住民が危険性や恐怖・不安を覚えて自主的に避難することに合理性があるかという観点から相当因果関係の有無を検討する必要があるとされた。 以上によれば,全中間指針において定められた額は,指針策定当時までの事情を基に,個別事情を捨象して当該地域に居 ことに合理性があるかという観点から相当因果関係の有無を検討する必要があるとされた。 以上によれば,全中間指針において定められた額は,指針策定当時までの事情を基に,個別事情を捨象して当該地域に居住していた全住民に共通する損害項目を考慮に入れながら,一審被告東電側も任意の支払を拒否することのないように合理的と考えられる額として定められたものと解されるから,任意の支払を念頭に置いた和解金的な色彩があることは否定できないところである。そうすると,本訴において,口頭弁論終結時までの事情を基に,一審被告東電による任意の支払を期待するという要素を考慮に入れずに,本件事故と相当因果関係のある損害額を定める場合に,全中間指針における基準額よりも高い額となることは,ある意味では自然な結果であるともいえる。 第3 相当因果関係(総論) 1 放射線に関する知見放射線に関する基礎的な知見 放射線とは,電磁波や各種粒子線の総称であり,電磁波には,電波,超短波,赤外線,可視光線,紫外線,X線,γ 線が,粒子線には,α 線,β 線,陽子線,中性子線,重陽子線,重粒子線,中間子線がある。放射線を出す性質や能力のことを放射能といい,放射線を出す物質を放射性物質という。ある放射性物質が有する放射能の大きさは「ベクレル(Bq)」(1秒間に1個原子核が壊変する量),放射線被曝線量は「シーベルト(Sv)」という単位を用いる。 放射性物質は原子核がエネルギー的に不安定であり,その安定を取るためにエネルギーをα 線,β 線,γ 線等の放射線という形で放出する。これを放射性壊変という。放射性物質の原子核が放射性壊変により変化し,エネルギー的に安定すれば放射線を出さなくなるが,放射性物質の中には安定するまで放射性壊変を複数回繰り返すものもある 放出する。これを放射性壊変という。放射性物質の原子核が放射性壊変により変化し,エネルギー的に安定すれば放射線を出さなくなるが,放射性物質の中には安定するまで放射性壊変を複数回繰り返すものもある。例えば,ウラン238はα 線を放出してトリウム234という放射性物質に,トリウム234は更にβ 線を放出してプロトアクチニウム234という放射性物質に変化し,鉛206になって安定するまでに十数回も壊変するといった具合である。放射性壊変を繰り返し,放射能が弱まって初めの半分になるまでの時間を物理学的半減期と呼ぶ。例えば,福島第一原発で燃料として使用されていたウラン235の半減期は7億年,同じくウラン238の半減期は45億年(なお地球の年齢は約46億年)である。 (乙C3の1,丙C338)放射線による被曝α 線は生体組織に対する透過力が弱く(紙1枚で止まる),皮膚の角質層を透過できないため,α 線による外部被曝は問題にならないものの,α 線を放出する放射性物質が後記のような原因で体内に入り体内から被曝する内部被曝は,組織内で局所的に高密度の電離を 起こし集中的にエネルギーを与えるため,DNAに大きな損傷を与え,生物への強い影響を引き起こす。β 線は生物に及ぼす影響力はα 線ほど強くないが,透過力は弱いもののα 線よりは強いため(エネルギーにもよるが,空気中で数m飛び,プラスチック1cm,アルミ板2~4mm程度で止まる。),皮膚を透過することから(透過距離はおよそ数mm),線量が相当高い場合には熱傷のような症状を引き起こすなど,体外からの被曝により皮膚や皮下組織に影響を与える可能性がある。もっとも,身体の奥深くまで届くことはない。 γ 線やX線は透過力が強く(エネルギーにもよるが,空気中で数十mから数百m飛び,密度 など,体外からの被曝により皮膚や皮下組織に影響を与える可能性がある。もっとも,身体の奥深くまで届くことはない。 γ 線やX線は透過力が強く(エネルギーにもよるが,空気中で数十mから数百m飛び,密度の高い鉛や鉄の厚い板で止まる。),深部の臓器・組織にまで到達するが,生物への影響力はα 線ほど強くはなく,β 線と同程度である。以上のことから,外部被曝では,α 線やβ 線は身体の奥深くまで届くことはなく,β 線の線量が高い場合に熱傷のような症状を引き起こす程度だが,γ 線は身体の奥の臓器にまで到達するため,外部被曝で問題になるのは主にγ 線である。そこで,空間線量率は,空間中のγ 線量を測定したものである。一方,内部被曝では,α 線,β 線,γ 線のいずれもこれを放出する放射性物質が体内の細胞に影響を及ぼす可能性がある。また,ウラン等放射性物質の種類によっては,それが体内に取り込まれた場合,内部被曝の影響だけでなく,科学的な金属毒性等の影響を受ける場合もある。(乙C3の1)外部被曝は地表や空気中にある放射性物質,あるいは衣服や体表面に付いた放射性物質等から放射線を受けることにより起こる。一方,内部被曝は,①食事等により飲食物中の放射性物質を体内に取り込んだ場合(経口摂取),②呼吸により空気中の放射性物質を体内に吸い込んだ場合(吸入摂取),③皮膚から吸収された場合(経皮吸 収),④傷口から取り込んだ場合(創傷浸入),又は⑤診療のための放射性物質を含む放射性医薬品を体内に投与した場合に起こる。一旦放射性物質が体内に入ると,排泄物と一緒に体外に排泄され,時間の経過と共に放射能が弱まるまで,身体は放射線を受けることになる。このように代謝により体内の放射性物質が半減する時間を生物学的半減期と呼び,上記の物理学的半減期と合わ 物と一緒に体外に排泄され,時間の経過と共に放射能が弱まるまで,身体は放射線を受けることになる。このように代謝により体内の放射性物質が半減する時間を生物学的半減期と呼び,上記の物理学的半減期と合わせて体内の放射性物質が半減するまでの時間を実効半減期と呼ぶ。(乙C3の1)人は,常に自然界からの外部被曝として,大地からの放射線と宇宙からの宇宙線を主とする自然放射線を受けている。また,食物や空気中のラドン等,自然由来の放射性物質の摂取による内部被曝も日常生活では避けられない。例えば我が国に住む人の場合,平均して,1年間で,宇宙からは0.3mSv,大地からは0.33mSvの外部被曝を,空気中のラドンやトロンから0.48mSv,食物から0.99mSvの内部被曝を受けており,合計すると年間で2. 1mSvになる(世界平均は年間2.4mSv)。また,我が国では放射線検査等で受ける医療被曝の割合が大きいことが知られており,例えばCT検査では1回当たり2.4~12.9mSv,胸部X線検査では1回当たり0.06mSvの人口放射線を被曝することになる。 (乙C3の1,丙C338等)放射線による健康被害放射線の影響は,放射線を受けた本人に出る「身体的影響」と,子供や孫等子孫に出る「遺伝性影響」とに分けられる。また,被曝してから症状が出るまでの時間によって,比較的早く症状が出る「急性影響(早期影響)」と数か月後以降に現れる「晩発影響」(特にがんが発症するには数年から数十年の時間を要するとされる。)とに分 けられる。さらに,放射線の影響が生じるメカニズムの違いにより「確定的影響」と「確率的影響」とに分けられ,前者は放射線により臓器や組織を構成する細胞が多数死んだり,変性したりすることで起こる症状であって,しきい線量が存在する 響が生じるメカニズムの違いにより「確定的影響」と「確率的影響」とに分けられ,前者は放射線により臓器や組織を構成する細胞が多数死んだり,変性したりすることで起こる症状であって,しきい線量が存在するのに対し,後者はがんや遺伝性影響といった細胞の遺伝子が変異することで起こる影響であり,個々の突然変異が病気につながる可能性は低いものの,理論的にはがんや遺伝性影響の原因となる可能性が全くないとはいえないため,がんや遺伝性影響については,しきい線量がないものと仮定して管理が行われている。この低線量被曝に関する知見については,項を改めて後述(後記3)する。(乙C3の1)人体が放射線を受けたことによりどのような影響を受けるかは,どこにどれだけ放射線を受けたかによって異なる。臓器によって放射線に対する感受性が異なるため,局所被曝では,被曝した箇所に放射線感受性の高い臓器が含まれているかどうかで影響の生じ方が大きく異なってくることになる。内部被曝の場合は,放射性物質が蓄積しやすい臓器・組織の被曝線量が高くなるため,この部分の臓器・組織の放射線感受性が高い場合,放射線による影響が出る可能性が高くなる。内部被曝の場合にどれだれ放射線を受けるかは,上記の実効半減期によって決まるため,特に問題になるのは,この実効半減期が長く,組織に与える影響力が強いα 線を出す放射性物質ということになる。例えば,プルトニウムは,呼吸と共に肺から取り込まると,血管に入り血流によって移動して,骨や肝臓に沈着し,そこでα 線を出すため,肺がん・白血病・骨腫瘍・肝がんを引き起こす可能性がある。 また,放射線の人体への影響においては,年齢によっても差があり,胎児期は放射線感受性が高く,また影響の出方に時期特異性が あることが分かっている。加えて,妊婦が被 可能性がある。 また,放射線の人体への影響においては,年齢によっても差があり,胎児期は放射線感受性が高く,また影響の出方に時期特異性が あることが分かっている。加えて,妊婦が被曝した場合,妊婦のごく初期(着床前期)に一定以上被曝すると流産が起こることがある上,この時期を過ぎてからの被曝では流産の可能性は低くなるものの,子宮内を放射線が通過したり,放射性物質が子宮内に移行したりすれば胎児も被曝し,胎児の体が形成される時期(期間形成期)に一定以上被曝すると,器官形成異常(奇形)が起こることがあり,大脳が活発に発育している時期(胎児前期)に一定以上被曝すると精神発達遅滞の可能性があるなど,胎児のリスクは大人に比べて相対的に高い。 以上の理から,例えば,チェルノブイリ原発事故後に,ベラルーシやウクライナの子供の甲状腺がんの発症数が増えたが,これは,事故により放出された放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積しやすく,子供の甲状腺が大人よりも放射線感受性が高いことの両方がその原因と考えられている。 (乙C3の1) 2 本件事故と放射性物質の放出福島第一原発に使用されていた軽水炉型原発は,前示のとおり,濃縮してウラン235含有率を3~5%まで高めたウラン238を燃料として使用するところ,その運転による核分裂により,ヨウ素131,セシウム134,セシウム137,ストロンチウム90,プルトニウム239等の放射性物質が生成される。原子炉が正常に働いている限りはこれらの核分裂生成物は燃料棒の中にとどまり原子炉から外へは漏れないが,本件事故により,生成物は気体状(核燃料の融点は2850℃であり,核燃料が溶解しているということはそれ以上の温度に達していたということである。そして,例えば,セシウム137の沸点は678℃であるため,その により,生成物は気体状(核燃料の融点は2850℃であり,核燃料が溶解しているということはそれ以上の温度に達していたということである。そして,例えば,セシウム137の沸点は678℃であるため,その時点では気体状となっていた。)とな り原子炉から漏れ,放射性雲(プルーム)と呼ばれる状態で大気中を流れた。この放射性雲には,放射性希ガス,放射性ヨウ素及び放射性セシウム等のエアロゾル(微小な液滴や粒子)が含まれており(例えば,大気中で冷やされ液化したセシウム137の凝固点は28℃であり,更に冷やされこれ以下の温度になると,液体から微小な粒子へ形を変える。),これは軽いため,風に乗って遠くまで拡散した。そのため,これが上空を通過した付近の地では,放射性物質からの放射線により外部被曝を受けることとなる。また,雲中の放射性物質を吸入等した者は内部被曝を受けるところ,このうち放射性希ガス(クリプトン,キセノン)は体内に取り込まれても留まることはないが,放射性ヨウ素や放射性セシウムのエアロゾルは,放射性雲が通過する間に少しずつ地表に落ちてきて地表面や植物等に沈着するため,通過後も外部被曝が続くほか,汚染された飲料水や食物を摂取することで内部被曝を受けることとなる。(乙C3の1)国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA)は,国際原子力事象評価尺度(INES)を定めている。同尺度によれば,原子力施設等の異常事象や事故は,その深刻度に応じて7つのカテゴリーに分類されるところ,本件事故は,これにより放射性物質が77京ベクレル(暫定値)放出されたため(なお,チェルノブイリ原発事故は520京ベクレル。),最も深刻な事故であることを示すレベル7と判断された。(乙C3の1)本件事故により環境中に放出され が77京ベクレル(暫定値)放出されたため(なお,チェルノブイリ原発事故は520京ベクレル。),最も深刻な事故であることを示すレベル7と判断された。(乙C3の1)本件事故により環境中に放出された放射性物質のうち,人体の健康や環境への影響において主に問題になるのが,ヨウ素131,セシウム134,セシウム137,ストロンチウム90の4種類である(トリチウムやプルトニウム239等その他の様々な放射性物質は,この4種類に比べれば半減期が短いか,本件事故による放出量が少なかっ た。)。ヨウ素131は物理学的半減期が8日と短いものの,体内に入ると10~30%は甲状腺に蓄積され,しばらくの間甲状腺はβ 線とγ 線に被曝することになる。いずれもβ 線とγ 線を出すセシウム134は実効半減期が64~88日,セシウム137は実効半減期が70~99日といずれも長く,化学的性質がカリウムとよく似ているおり体内に入った後はカリウム同様全身に分布するため,人体に及ぼす影響は大きい。また,セシウム137は物理学的半減期が30年に及ぶため,環境汚染が長く続くことになる。β 線を出すストロンチウム90は物理学的半減期が29年に及ぶ上,化学的性質がカルシウムに似ているため体内に入ると骨に蓄積する。また,γ 線を出さないため,どこにどれだけ蓄積されているかセシウム134やセシウム137ほど簡単に調べることができない。(乙C3の1)外部被曝においては,仮に放射性物質が1か所にある場合(点線源),放射性物質(線源)からの距離の2乗に反比例して線量率は低くなる関係にあり,線量率が一定であれば,その線量率に放射線を浴びていた時間を乗じることで被曝量を計算することができる。 空間線量率は,空間中のγ 線(事故由来の放射線だけでなく,大地からの放射線 る関係にあり,線量率が一定であれば,その線量率に放射線を浴びていた時間を乗じることで被曝量を計算することができる。 空間線量率は,空間中のγ 線(事故由来の放射線だけでなく,大地からの放射線や宇宙線などの自然放射線も検出される。)を測定したもので,1時間当たりのマイクロシーベルトで表示される。 3 低線量被曝に関する知見等低線量被曝に関する知見等については,おおむね原判決の「事実及び理由」中第3章第5の4(165頁9行目~183頁1行目)が説示するとおりであり,当審において一部追加・補正した上で,以下のとおり説示する。 低線量被曝に関する科学的知見 る限界線量(しきい値)を超えると初めて影響が現れる確定的影響と,受ける線量に応じて影響の出る確率が高まる確率的影響とがある。急性障害,白血球減少,白内障などは確定的影響とされ,100mSv以下の領域では確定的影響は生じないとされている(しきい値が存在する。)。一方,がんの発生は確率的影響とされ,100mSvを超える領域では,被曝線量に比例して発がんのリスクが増加することが確認されているが,100mSv以下の被曝線量では,他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため,放射線による発がんリスクの明らかな増加を疫学的に証明することは極めて難しい。例えば,主に広島・長崎の原爆被爆者集団の疫学調査の結果によれば,放射線被曝がおよそ150mSv以上ではほぼ直線的に線量と共にリスクが上昇することが分かっているが,150mSvより低い線量では直線的にリスクが上昇(低下)するか明らかではない。そのため,低線量域においても放射線量と発がんリスクは比例関係にあるのか,それとも実質的なしきい値が存在するのか,あるいは別の相関があるのかについては,研究者 クが上昇(低下)するか明らかではない。そのため,低線量域においても放射線量と発がんリスクは比例関係にあるのか,それとも実質的なしきい値が存在するのか,あるいは別の相関があるのかについては,研究者の間でも結論が出ていない。確率的影響についてもしきい値がある(しきい値あり直線モデル)との説,放射線は複数通らないと影響は出ない(低線量では直線よりも影響は出にくい)との説,100mSv以下の領域においてもリスクは直線的に増加する(LNTモデル)との説,低線量ではむしろ身体に益がある(放射線ホルミシス)との説,長時間の低線量被曝は短時間の高線量被曝よりもむしろ危険である(ペトカウ効果)との説(ただし,後記の実験結果)など様々な説が唱えられている。 国際法放射線防護委員会(ICRP)をはじめとする国際機関では,LNTモデルを採用し,100mSv以下の領域においても確率的影響のリスクは直線的に増加するものとして放射線防護を図ることとされている。例えば,ICRPは,低線量域でも線量に依存して影響(直線的な線量反応)があると仮定した上で,上記疫学調査でのデータを基にリスクを推定し,大人も子供の含めた集団では100mSv当たり0.5%がん死亡の確率が増加するとして,放射線防護の基準を定めている。この仮定に基づけば,理論上いかに低い線量でも影響が発生する確率はゼロではないことになる。 なお,国立がん研究センターが発表した,放射線の瞬間的被曝線量によってがんの相対リスクがどの程度高くなるかについての数値は,100mSv未満は検出困難,100~200mSvは1.08倍,200~500mSvは1.19倍,500~1000mSvは1.4倍,1000~2000mSvは1.8倍(1000mSv当たり1.5倍と推計)となっている。一方, 100~200mSvは1.08倍,200~500mSvは1.19倍,500~1000mSvは1.4倍,1000~2000mSvは1.8倍(1000mSv当たり1.5倍と推計)となっている。一方,同センターが発表した,生活習慣によるがんの相対リスクは,受動喫煙(非喫煙女性)は1.02~1.03倍,野菜不足は1.06倍,運動不足は1.15~1.19倍,大量飲酒は1.4~1.6倍,喫煙は1.6倍などとされている。 動物実験や培養細胞実験の研究により,原爆のように短い時間に高い線量を受ける場合に対して,低い線量を長時間にわたって受ける場合(低線量率の被曝)の方が,被曝した総線量が同じでも影響のリスクは低くなる傾向があることが明らかになっている。 (乙C3の1)ICRPの勧告ア 1990年勧告 ICRPの1990年勧告は,放射線防護体系として,①放射線被曝を伴うどんな行為も,その行為によって被曝する個人又は社会に対して,それが引き起こす放射線損害を相殺するのに十分な便益を生むのでなければ,採用すべきでない(行為の正当化),②ある行為内のどんな特定の線源に関しても,個人線量の大きさ,被曝する人の数,及び,受けることが確かでない被曝の起こる可能性,の3つ全てを,経済的及び社会的要因を考慮に加えた上,合理的に達成できる限り低く(AsLowAsReasonablyAchievable)保つべきである(防護の最適化,ALARAの原則),③関連する行為全ての複合の結果生ずる個人の被曝は線量限度に従うべきであり,また潜在被曝の場合にはリスクの何らかの管理に従うべきである(個人線量限度・個人リスク限度),という3つの基本原則を勧告している。 職業被曝に関する線量限度は,いかなる1年間にも実効線量は50mSvを 在被曝の場合にはリスクの何らかの管理に従うべきである(個人線量限度・個人リスク限度),という3つの基本原則を勧告している。 職業被曝に関する線量限度は,いかなる1年間にも実効線量は50mSvを超えるべきでないという付加条件付きで,5年間の平均値が20mSv/y(5年間に100mSv)という実効線量限度を勧告している。 公衆被曝に関する線量限度は1mSv/yとし,特殊な状況においては,5年間にわたる平均が1mSv/yを超えなければ,単一年にこれよりも高い実効線量が許されることもあり得るとしている。 イ 2007年勧告ICRPの2007年勧告は,放射線防護の3つの基本原則(正当化,最適化,線量限度の適用)を引き続き維持し,職業被曝の線量限度,公衆被曝の線量限度についても1990年勧告の基準を維持している。 2007年勧告は,被曝状況を①緊急時被曝状況,②現存被曝状況,③計画被曝状況の3つのタイプに分類し,計画被曝状況に対しては線量拘束値を,現存被曝状況及び緊急時被曝状況に対しては参考レベルを,それぞれ設定することを勧告している。 「緊急時被曝状況」とは,ある行為(放射線被曝又はそのリスクの増加を生じさせる活動。例えば,原子力発電所の運転など)を実施中に発生し,至急の対策を要する不測の状況(例えば,原子力発電所事故発生後の状況)である。緊急時被曝状況に対しては,急性又は年間で20~100mSvの参考レベルを設定すべきとされる。 「参考レベル」とは,緊急時又は現存被曝状況において,それを上回る被曝の発生を許す計画の策定は不適切であると判断され,それより下では防護の最適化を履行すべき線量のレベルであり,参考レベルに選定される値は,考慮されている被曝状況の一般的な事情によって決まるとされる。 「現存被曝状 の策定は不適切であると判断され,それより下では防護の最適化を履行すべき線量のレベルであり,参考レベルに選定される値は,考慮されている被曝状況の一般的な事情によって決まるとされる。 「現存被曝状況」とは,管理についての決定をしなければならない時に既に存在する,緊急事態の後の長期被曝状況を含む被曝状況(例えば,原子力発電所事故後の汚染された土地における生活)である。現存被曝状況に対しては,1~20mSv/yの参考レベルを設定し,個人線量を参考レベルより下に引き下げることを目的として最適化プロセスを履行すべきであるとされる。 「計画被曝状況」とは,被曝が生じる前に放射線防護を前もって計画することができ,被曝の大きさと範囲を合理的に予測できるような状況(例えば,原子力発電所の通常操業中の状況)である。計画被曝状況に対しては,1mSv/y以下の線量拘束値を設定すべきであるとされる。 「線量拘束値」とは,これを超えれば,防護が最適化されているとはいえず,ほとんどいつも対策を取らなければならない線量レベルであるとされる。 政府は,少なくとも平成26年以降,福島県内の状況は現存被曝状況におおむね移行しているものとし,参考レベルは設定していないとしている。 本件事故当時の国内法令の定め本件事故当時,放射線障害の防止のための基準は,放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年法律第162号。平成24年法律第47号による改正前のもの)により,「放射線を発生する物を取り扱う従業者及び一般国民の受ける放射線の線量をこれらの者に障害を及ぼすおそれのない線量以下とする」との基本方針(3条)の下,文部科学省に置かれた放射線審議会の審議に基づいて決定されていた(6条)。 本件事故当時,ICRPの1990年勧告は国内法令 者に障害を及ぼすおそれのない線量以下とする」との基本方針(3条)の下,文部科学省に置かれた放射線審議会の審議に基づいて決定されていた(6条)。 本件事故当時,ICRPの1990年勧告は国内法令に取り入れられていたが,2007年勧告の国内法令への取入れは,放射線審議会において審議中であった。 本件事故当時,炉規法(平成24年法律第47号による改正前のもの)35条1項の委任に基づく実用炉規則8条により,原子炉設置者は,管理区域,保全区域及び周辺監視区域を定め,それぞれ立入制限,居住制限等の措置を講じなければならないものとしていた。 「管理区域」とは,炉室,使用済燃料の貯蔵施設,放射性廃棄物の廃棄施設等の場所であって,その場所における外部放射線に係る線量が3か月につき実効線量1.3mSv(5.2mSv/y相当)を超えるおそれのあるものをいう(実用炉規則1条2項4号,線量限度告示2条1項1号)。 「保全区域」とは,原子炉施設の保全のために特に管理を必要とする場所であって,管理区域以外のものをいい(実用炉規則1条2項5号),線量基準は設けられていない。 「周辺監視区域」とは,管理区域の周辺の区域であって,当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量が実効線量1mSv/y(経済産業大臣が認めた場合には5mSv/y)を超えるおそれのないものをいう(実用炉規則1条2項6号,線量限度告示3条1項1号,2項)。 すなわち,実効線量が1mSv/yを超えるおそれがある区域は周辺監視区域として,さらに,5.2mSv/yを超えるおそれのある区域は管理区域として,立入等を厳しく制限されることとなっていた。 また,原子炉設置者は,放射線業務従事者の線量が,5年間につき100mSv,1年間につき50mSv Sv/yを超えるおそれのある区域は管理区域として,立入等を厳しく制限されることとなっていた。 また,原子炉設置者は,放射線業務従事者の線量が,5年間につき100mSv,1年間につき50mSvを超えないようにする措置を講じなければならないとされていた(実用炉規則9条,線量限度告示6条)。 さらに,実用発電用原子炉以外の他の放射線源を取り扱う場合にも,それぞれの規制法令により,同様に,管理区域を(放射線源によっては保全区域や周辺監視区域も)定め,放射線業務従事者の線量を管理することとされていた。 本件事故当時,公衆被曝限度を直接定める法令は存在しなかったが,上記のとおり,周辺監視区域外の線量が1mSv/y以下となるよう放射線源を管理することが求められていたことからすると,実質的には,1990年勧告の定めるとおり,1mSv/yを超える公衆の被曝は許容されていなかったものということができる(もっとも,そのことを直接的に規制する法令の規定はなかった。)。 健康調査等福島県では,本件事故後,指定医療機関において無料で受診することができる以下の健康調査を行ったところ,その結果はそれぞれ以下のとおりである。 ア基本調査本件事故当時福島県に居住していた者等約205万名を対象に行った,問診票による外部被曝実効線量推計の結果(平成27年12月30日における回答率27.4%,放射線業務従事経験者を除く線量推計者45万9620人),99.8%が5mSv未満であり,最大値は25mSv(相双地区旧居住者),平均値は0. 8mSv,県北地区の平均値は1.4mSv,県中地区の平均値は1.0mSv,県南地区の平均値は0.6mSv,会津地区の平均値は0.2mSv,南会津地区の平均値は0.1mSv,相双地区の平均値は0. 8mSv,県北地区の平均値は1.4mSv,県中地区の平均値は1.0mSv,県南地区の平均値は0.6mSv,会津地区の平均値は0.2mSv,南会津地区の平均値は0.1mSv,相双地区の平均値は0.8mSv,いわき地区の平均値は0.3mSvであった。 イ甲状腺検査平成4年4月2日から平成23年4月1日までに県内で出生した約37万名(受診者約30万名)を対象に,平成23年度から平成25年度までに行った甲状腺先行検査(1回目)の結果,A判定(A1:囊胞や結節は認められなかったもの。A2:5.0mm以下の結節や20.0mm以下の囊胞が認められたもの)が29万8182人(99.2%),B判定(B:5.1mm以上の結節や20.1mm以上の囊胞が認められた者)が2293人(0. 8%),C判定(甲状腺の状態から判断して,直ちに二次検査を要するもの)が1人(0.0%)であった。B,C判定対象者の二次 検査の結果,悪性ないし悪性疑いは116人(5.1%)であった。 平成4年4月2日から平成24年4月1日までに県内59市町村で出生した38万1282人を対象に,平成26年度から平成27年度に行った甲状腺本格検査(2回目)の結果(平成28年9月30日までの受診者27万0431人),一次検査でA判定が26万8209人(99.2%),B判定が2222人(0.8%),C判定が0人(0%)であった。B判定対象者2222人を対象に行った甲状腺二次検査の結果(平成28年9月30日までの受診者1685人,結果確定者1553人),A判定が378人(24.3%),通常診療(保険診療)を必要とする者が1175人(75.7%)であり,「悪性ないし悪性疑い」と判定された者は68人(4.4%)であった。 平成4年4月2日から平成24年4月1日までに県内 .3%),通常診療(保険診療)を必要とする者が1175人(75.7%)であり,「悪性ないし悪性疑い」と判定された者は68人(4.4%)であった。 平成4年4月2日から平成24年4月1日までに県内59市町村で出生した33万6609人を対象に,平成28年度から平成29年度に行った甲状腺本格検査(3回目)の結果(平成28年9月30日までの受診者4万9387人,検査結果確定者3万0253人),一次検査でA判定が3万0042人(99.3%),B判定が211人(0.7%),C判定が0人(0%)であった。 B判定対象者211人の二次検査は,平成28年10月から開始された。 なお,この検査における「囊胞」とは,中に液体がたまった袋状のもので(囊胞内結節・充実部分を含む囊胞を含まない。),細胞がないため,がん化することはない。また,この検査における「結節」とは,甲状腺の細胞が変化したもの(囊胞内結節・充実 部分を含む囊胞を含む。)で,良性のものと悪性のもの(がん)があるが,多くは良性である。 甲状腺がんの90%以上は乳頭がんであるが,乳頭がんは発育が遅く,穏やかな性質で,命に関わることは非常にまれであるとされる。 このほか,市町村により,独自の甲状腺検査が行われている。 ウ健康診査旧警戒区域,旧計画的避難区域,旧緊急時避難準備区域が所在する12市町村(田村市,南相馬市,川俣町,広野町,楢葉町,富岡町,川内村,大熊町,双葉町,浪江町,葛尾村,飯舘村)の全域及び伊達市の旧特定避難勧奨地点が所在する区域の旧居住者並びに基本調査の結果必要と認められた者約21万名を対象に,指定医療機関での集団検診及び個別検診を実施している。 その結果,肥満,耐糖能異常,肝機能異常,高血圧の割合が増加した,などとされる。 エこころ 結果必要と認められた者約21万名を対象に,指定医療機関での集団検診及び個別検診を実施している。 その結果,肥満,耐糖能異常,肝機能異常,高血圧の割合が増加した,などとされる。 エこころの健康度・生活習慣に関する調査旧警戒区域,旧計画的避難区域,旧緊急時避難準備区域が所在する12市町村の全域及び伊達市の旧特定避難勧奨地点が所在する区域の旧居住者約21万名を対象にアンケート調査を行った結果,16歳以上で「気分の落ち込みや不安に関して支援が必要と考えられる人」は,平成23年度で14.6%,平成24年度で11.7%,平成25年度で9.7%等であった。 オ妊産婦に関する調査 年度ごとに,県内で母子健康手帳を交付された者,調査期間内に県外で母子手帳を交付され,県内で分娩した者にアンケート調査を行い,支援が必要と思われる者には電話やメールによる相談対応等を行っている。 平成23年度の調査結果(平成23年度対象数1万6001人,回答率58.2%)では,早産率は4.75%(全国平均5.7%),低出生体重児率は8.9%(全国平均9.6%),先天奇形・先天異常発生率は2.85%(一般的発生率3~5%)と,全国平均や一般的に報告されているデータとの差はほとんどなく,平成24~26年度も同様であった。 カ内部被曝検査このほか,福島県では,希望者に対し,ホールボディーカウンター(WBC)による内部被曝の検査を行っており(平成23年6月~平成28年11月の検査人数31万2269人),預託実効線量(体内から受けると思われる内部被曝線量について,成人で50年間,子供で70歳までの累積線量を表したもの)1mSv未満が31万2243人,1mSvが14人,2mSvが10人,3mSvが2人であった。 このほか,市町村が る内部被曝線量について,成人で50年間,子供で70歳までの累積線量を表したもの)1mSv未満が31万2243人,1mSvが14人,2mSvが10人,3mSvが2人であった。 このほか,市町村が独自の内部被曝検査を行っている。 UNSCEARの報告ア 2013年福島報告書UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は,平成25年(2013年)10月25日第68回国際連合総会第4委員会において第60回年次会合の活動報告を行い,平成26年4月2日,その報告の基盤となっている科学的附属書A「2 011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被曝のレベルと影響」(2013年福島報告書)を発表した。 その内容は,概要以下のとおりである。 滞在者の実効線量避難が行われなかった福島県の市町村(避難指示のあった双葉町,広野町,浪江町,楢葉町,大熊町,富岡町,飯舘村,川俣町,南相馬市,田村市,川内村,葛尾村の12市町村以外の市町村。グループ2)の住民の,本件事故から1年間の実効線量(外部被曝,吸入による内部被曝,経口摂取による内部被曝の合計。自然放射線源によるバックグラウンド線量への上乗せ分)は,成人で1.0~4.3mSv,10歳児で1.2~5.9mSv,1歳児で2.0~7.5mSvと推定される。 グループ3(福島県に隣接する宮城県,群馬県,栃木県,茨城県及び福島県に近い千葉県,岩手県)の住民の本件事故から1年間の実効線量は,成人で0.2~1.4mSv,10歳児で0.2~2.0mSv,1歳児で0.3~2.5mSvと推定される。 避難者の実効線量予防的避難地区(双葉町,大熊町,富岡町,楢葉町,広野町,南相馬市,浪江町,田村市の一部,川内村,葛尾村の一部)から避難した者の本件事故から1年間 5mSvと推定される。 避難者の実効線量予防的避難地区(双葉町,大熊町,富岡町,楢葉町,広野町,南相馬市,浪江町,田村市の一部,川内村,葛尾村の一部)から避難した者の本件事故から1年間の実効線量は,成人で1.1~5.7mSv,10歳児で1.3~7.3mSv,1歳児で1.6~9.3mSvと推定される。 計画的避難地区(飯舘村,南相馬市,浪江町,川俣町,葛尾村の一部)から避難した者の本件事故から1年間の実効線量は, 成人で4.8~9.3mSv,10歳児で5.4~10mSv,1歳児で7.1~13mSvと推定される。 公衆における健康影響本件事故による被曝は確定的影響のしきい値を大きく下回っている。これは,放射線被曝を原因として生じる急性の健康影響(急性放射線症や他の確定的影響)が報告されていないこととも一致している。 精神的な健康の問題と平穏な生活が破壊されたことが,本件事故後に観察された主要な健康影響を引き起こした。これは,地震,津波,原発事故の多大な影響,及び放射線被曝に対する恐怖や屈辱感への当然の反応の結果であった。公衆においては,うつ症状やPTSD症状などの心理的な影響が観察されており,今後健康に深刻な影響が出てくる可能性がある。 日本の一般住民における固形がんの基準生涯リスク(事故に起因する放射線被曝がない場合の固形がんの生涯リスク)は通常約35%であるところ,10mSvの実効線量に被曝した後の固形がんの推定相対リスクは約35.13/35≒1.004であり,放射線被曝によるがんの生涯リスクは識別可能な疾患発生率の上昇につながらないかもしれないが,一部のがんと年齢層のリスクが増加した可能性は残る。 推定された甲状腺吸収線量のほとんどは,疫学的な研究で甲状腺がんの過剰な発生率が クは識別可能な疾患発生率の上昇につながらないかもしれないが,一部のがんと年齢層のリスクが増加した可能性は残る。 推定された甲状腺吸収線量のほとんどは,疫学的な研究で甲状腺がんの過剰な発生率が観測されない範囲内だった。しかし,線量が範囲上限に近い場合は,十分に大きな集団では個人のリスク上昇により放射線被曝による甲状腺がんの発生率が識別できるほどに上昇する可能性があることが示唆される。線量分布に関する情報が不十分なので,UNSCEARとしては幼少期 及び小児期により高い甲状腺線量を被曝した人について識別可能な程度に甲状腺がんの発生率が上昇する可能性があるかどうか確固たる結論を導くことはできない。 小児白血病患者の有意な増加はないと予想される。また,乳がん発生率の有意な上昇もないと予想される。本件事故による胎児被曝が原因で,自然流産や流産,周産期死亡率,先天的な影響又は認知障害の発生率が上昇することもないと予想される。 リスクのいかなる増加も,小児白血病又は他の小児がんの発生率の有意な上昇にはつながらないと予測されている。 イ 2015年報告書UNSCEARは,平成24年10月末までに開示又は公表された情報に基づき2013年福島報告書を作成した後,その後の知見の進展を踏まえ,平成27年10月頃,「東日本大震災後の原子力事故による放射線被曝のレベルと影響に関するUNSCEAR2013年報告書刊行後の進展」(2015年報告書)を発表した。 審査された新たな情報源79編のうち,半数以上が2013年福島報告書の主要な仮定の1つ又は複数を確証するものであり,実質的に2013年福島報告書の主要な知見に影響を及ぼしたり,その主要な仮定に異議を唱えたりするものはなかったが,12編についてはさらなる解析又はさらに質の 仮定の1つ又は複数を確証するものであり,実質的に2013年福島報告書の主要な知見に影響を及ぼしたり,その主要な仮定に異議を唱えたりするものはなかったが,12編についてはさらなる解析又はさらに質の高い調査で確認することにより,2013年福島報告書の仮定や知見のいずれかに異議を唱える可能性があると判定された。 ウ 2016年報告書 UNSCEARは,平成28年,2015年報告書以降の知見の進展を踏まえ,平成28年頃,「東日本大震災後の原子力事故による放射線被曝のレベルと影響に関するUNSCEAR2013年報告書刊行後の進展国連科学委員会による今後の作業計画を指し示す2016年白書」(2016年報告書)を発表した。 審査された新たな情報源のうち,大部分が2013年福島報告書の主要な仮定の1つ又は複数を追認するものであり,実質的に2013年福島報告書の主要な知見に影響を及ぼしたり,その主要な仮定に異議を唱えたりするものはなかったが,一部については,さらなる分析やより質の高い調査での確認が必要であるなどとされた。 社会心理学的知見アリスク認知の2因子モデル一般人のリスク認知においては,集団を対象に専門家が行うリスク評価のようにある事象(ハザード)の生じる確率にその事象によって生じる影響被害の程度を掛け合わせて評価している(頻度説)わけではなく,その事象(ハザード)を主観的・直感的に認識してその事象を避けたり受け入れたりしている(主観説)とされる。 一般人のリスク認知に影響する因子は,大きく「恐ろしさ因子」と「未知性因子」に分けられ(リスク認知の2因子モデル),「恐ろしさ因子」の要素としては,①制御可能性(そのリスクにさらされているとき,死を免れるように制御できるかどうか),②恐ろしさ(冷静に考えて 「未知性因子」に分けられ(リスク認知の2因子モデル),「恐ろしさ因子」の要素としては,①制御可能性(そのリスクにさらされているとき,死を免れるように制御できるかどうか),②恐ろしさ(冷静に考えて対処できるリスクか,ひどく恐ろしいと感情的な反応を招くリスクか),③世界的な惨事(世界的な惨事の脅威となるリスクかどうか),④致死的帰結(被害が現実のものとなっ たとき,その帰結は致死的なものかどうか),⑤平等性(リスクと引き換えになるベネフィットは平等に人々に分配されるかどうか),⑥カタストロフ(一度に1人が死ぬリスクか,それとも一度に多くの命が奪われるリスクか),⑦将来世代への影響(将来世代を脅かすものかどうか),⑧削減可能性(そのリスクは簡単に削減できるものなのかどうか),⑨増大か減少か(そのリスクは増大しているのか,減少しているのか),⑩自発性(人はそのリスク状況に自発的に入っていくのかどうか)の10要素が,「未知性因子」の要素としては,⑪観察可能性(それによる被害の発生プロセスは観察できるかどうか),⑫さらされていることの理解(リスクにさらされている人が正確にそのことを理解できるかどうか),⑬影響の晩発性(それによる死は即時的か,それとも後になってからか),⑭新しさ(新しく新奇なリスクか,それとも古くてなじみのあるリスクか),⑮科学的理解(科学的に理解されているリスクかどうか),の5要素があるとされている。 イ災害によるPTSDに係る知見PTSDの発症率は,自然災害が約4~60%なのに対し,人為災害では15~75%と,自然災害よりも人為災害の方が高いという研究がある(NeriaY,2007)。世界的に最もPTSD発症率が高かった人為災害として知られている北海パイパー・アルファ油田事故(1998)の事故 %と,自然災害よりも人為災害の方が高いという研究がある(NeriaY,2007)。世界的に最もPTSD発症率が高かった人為災害として知られている北海パイパー・アルファ油田事故(1998)の事故調査では,安全システムの欠落が原因とされたにもかかわらず企業の法的責任が問われなかった点など,人為災害における心理社会的な複合ストレスがPTSDの発症率を高めた要因である可能性が指摘されている(HullAM,2002)。また,同じく極めて高いPTSD発症率が報告されているエストニア号事件(1994)の研究者が,PTSD の遷延化には被害者に対する救済が行われずに不透明な状況が長引いていることが関係している可能性があると考察している(AnbergFK,2011)。これらに加えて,事故の中でも特に原発事故について,典型的な心理的ショックでありトラウマ体験であり,取り分け,事故に関する的確な情報が与えられなかったことや,政府機関に対する不信感,そして長期にわたる放射線障害発症の恐怖にさらされていることがトラウマ要因として挙げられるとする,チェルノブイリ原発事故に係る研究(Weisaeth,2000)や,沈黙の災害(Silentdisaster)であり放射線被曝に伴うストレス影響は広範囲に発展し長期にわたりやすいとの指摘(丸山,2011)などもみられる。 アンケート調査に基づく実証的研究も,本件事故を対象に,原発事故がストレス症状に及ぼす影響を明らかにするために行われたものである。 (甲C375~377)ウ原発事故のリスク認知1987年(昭和62年)までにスロヴィックがアメリカ人を対象に行った調査によれば,「原子炉事故」は,恐ろしさ因子,未知性因子とも高いものとされている。なお,調査の正確な日時は不明 のリスク認知1987年(昭和62年)までにスロヴィックがアメリカ人を対象に行った調査によれば,「原子炉事故」は,恐ろしさ因子,未知性因子とも高いものとされている。なお,調査の正確な日時は不明であるが,1979年(昭和54年)のスリーマイルアイランド原発事故の際には,数日以内に原子炉で水素爆発が起きる危険性があるとか,大量の放射性物質が大気中に放出される可能性があるといった憶測を含んだセンセーショナルな報道が周辺住民や世界中の人々の恐怖心を煽り,1986年(昭和61年)のチェルノブイリ原発事故の際も,「死者数千人!」といった見出しによって原発事故による壊滅的な被害の記憶を人々に鮮明に焼き付 け,原子力に対するリスク認知を高めたとされており,このようなスリーマイルアイランド原発事故,チェルノブイリ原発事故の報道が,恐ろしさ因子を高めた可能性がある。 1991年(平成3年)までに別の研究者が日本人を対象に行った調査によれば,「原子炉事故」は,恐ろしさ因子は高いが,未知性因子は低い(「自動車事故」よりは高いが,「鉄道事故」よりも低い)ものとされている。 本件事故後に,本件事故のリスク認知に関する調査が行われているわけではないが,心理学者である中谷内一也は,本件事故後のリスク認知にとって影響が大きいのは低線量被曝のリスクであるが,恐ろしさ因子,未知性因子とも高いものとしている。 このことは,一審原告らが被曝した追加被曝線量が客観的にみればそれほど高くなく,健康影響に与えるリスクが小さいとしても,だからといって直ちに,一審原告らの不安が不合理なものであるとか,およそ賠償に値しない単なる不安感であるとかいうことはできないことを示している。 ストレス調査等ア 「震災を踏まえた子育て環境に関する調査研究」福島県 告らの不安が不合理なものであるとか,およそ賠償に値しない単なる不安感であるとかいうことはできないことを示している。 ストレス調査等ア 「震災を踏まえた子育て環境に関する調査研究」福島県が,平成25年11月から平成26年1月にかけて,福島県に住民票を置く,①18歳未満の子供がいない20~70歳未満の者1800人,②就学前児童を持つ世帯の保護者1800人,③小学校児童を持つ世帯の保護者1800人の合計5400人を対象にアンケート調査を行ったところ(回答者数1805人),震災による子供への影響に対する心配として,「放射線による健康被害」を挙げた者が61.7%,「外遊び・自然体験の不足」を挙げた者が57.9%,「運動不足」を挙げた者が35.3%,「震災 体験が子どもの心に与える影響」を挙げた者が29.1%,「放射線に不安を感じることによるストレス」を挙げた者が24.6%,上記のうち,子供のいる世帯の保護者に対するアンケートにおいて,子育てで不安を感じることとして「環境汚染や食品の安全性への心配(放射線の影響などを含む)」を挙げた者が36.2%等であった。 福島県が,県内の小学5年生1380人,中学2年生1380人,高校2年生500人の合計3260人を対象に行ったアンケート調査の結果(回答数1372人),震災後,「不安を感じることが多くなった」者が21.9%等であった。 イ 「福島子ども健康プロジェクト」中京大学教授成元哲らが組織する「福島子ども健康プロジェクト」が,平成25年1月(第1回調査),平成26年1月(第2回調査),平成27年1月(第3回調査),平成28年1月(第4回調査)に,福島県中通り9市町村(福島市,郡山市,二本松市,伊達市,桑折町,国見町,大玉村,三春町,本宮市)に住民票を置く平 月(第2回調査),平成27年1月(第3回調査),平成28年1月(第4回調査)に,福島県中通り9市町村(福島市,郡山市,二本松市,伊達市,桑折町,国見町,大玉村,三春町,本宮市)に住民票を置く平成20年度出生児の保護者6191人を対象にアンケート調査方式で第1回調査を行い(回答数2628人),その後,第1回調査回答者を対象とした第2回調査(回答数1605人),第2回調査回答者を対象とした第3回調査(回答数1207人),第3回調査回答者に第1回調査回答者のうち第3回調査未回答者を加えた第4回調査(回答数1015人) を行った。その結果,「放射能の健康影響についての不安が大きい」に「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」と回答した者は,第1回アンケート時点で「原発事故直後」を振り返って95.2%,「事故半年後」を振 り返って91.3%,「この1ヶ月間」(平成25年1月回答時点,本件事故約2年後)で79.5%,平成26年1月時点(約3年後)で63.7%,平成27年1月時点(約4年後)で58.5%,平成28年1月時点(約5年後)で51.4%等であった。 母親(回答者のうち,母親以外の者,震災時に対象市町村に不在であった者,調査時点で対象市町村に居住していない者を除いた者。)の精神的健康度をK6(ケスラーが一般人口中の精神疾患のスクリーニング尺度として開発した6項目の指標)を用いて評価した結果,精神的に不良であるとされる9点以上の者は,本件事故直後で68.6%,半年後で48.1%,2年後で18.0%であり,SQD(ScreeningQuestionnaireforDisasterMentalHealth。12項目からなる災害精神保健に関するスクリーニング質問票)を用いて評価した結果,うつ症状(医学概念と異 eningQuestionnaireforDisasterMentalHealth。12項目からなる災害精神保健に関するスクリーニング質問票)を用いて評価した結果,うつ症状(医学概念と異なり,専らSQDの12項目の回答から判定されたもの)を示した者は,本件事故直後で52.0%,半年後で41.3%,2年後で28. 5%(第3回調査回答者中では25.7%),3年後で28.5%,4年後で26.0%であり,PTSD症状(PostTraumaticStressDisorder,心的外傷後ストレス障害。医学概念と異なり,専らSQDの12項目の回答から判定されたもの)を示した者は,本件事故直後で51.2%,半年後で39.4%,2年後で25.7%(第3回調査回答者中では23.3%),3年後で15.5%,4年後で13.9%等であった。 また,子供の問題行動をSDQ(StrengthsandDifficultiesQuestionnaire。子供の社会性の発達や行動を25項目の質問で評価するための国際的標準の尺度)を用いて評価した結果,「支援の必要性が高い」児童は,総合得点で,2年後(4歳児,年少)で1 6.7%,3年後(5歳児,年中)で15.5%,4年後(6歳児,年長)で14.4%(4~12歳児日本標準値9.5%),「行為」のみでみると,2年後で21.9%,3年後で18.8%,4年後で15.6%(日本標準値7.1%)等であり,子供の「行為」と,母親の「うつ症状」との間には有意な関連があるとされた。 ウいわき市民調査いわき明星大学の高木竜輔らが,平成26年1月にいわき市平地区,小名浜地区の681人(対象数1500人,回答数681人)に行った調査の結果,「放射能の健康影響への不安がある」と回答した者は4 査いわき明星大学の高木竜輔らが,平成26年1月にいわき市平地区,小名浜地区の681人(対象数1500人,回答数681人)に行った調査の結果,「放射能の健康影響への不安がある」と回答した者は46.7%等であった。 エ福島市民調査中京大学の松谷満らが,平成26年3月に福島市民3510人を対象に行った調査の結果(回答数1354人),「放射能の健康影響に対する不安が大きい」と回答した者は44.9%等であった。 オ子供ストレス調査福島大学教授筒井雄二らが組織する,福島大学子どもの心のストレスアセスメントチーム(平成26年4月から福島大学災害心理研究所。)が,平成23年6月中旬から7月下旬にかけて,福島市,郡山市の小学校(1210人),幼稚園・保育園(660人)に通学・通園する合計1870人を対象にアンケート調査を行った結果(回答数1322人)によると,①児童・園児の保護者では,子供が小さいほど放射線に対する不安が強く,放射線に対する知識と情報獲得に熱心である,父親に比べ,母親の方が放射線に対する不安が強い,②児童・園児の保護者では,子供が小さい ほど精神的ストレスが強い,父親に比べ,母親の方がストレスが強い,③子供のストレスは,年齢が低いほど強い,④母親のストレスの強さと子供のストレスの強さに関連性があるなどとされた。 その後の福島大学災害心理研究所の調査結果によると,福島県で生活している母親の放射線に対する不安や心理的ストレスは,平成23年の震災直後が最も高く,時間経過とともに減弱しつつあるが,福島県以外に居住する母親と比較すると,平成27年1月段階でも不安やストレスが明らかに高い状態が続いており,近年では不安やストレスの低下が鈍りつつあり,平成26年から平成27年にかけて不安やストレスはほとんど低 住する母親と比較すると,平成27年1月段階でも不安やストレスが明らかに高い状態が続いており,近年では不安やストレスの低下が鈍りつつあり,平成26年から平成27年にかけて不安やストレスはほとんど低下していない,3歳児から小学6年生までの子供も,他県と比べて高いストレスが震災直後から現れ,母親と同様,時間経過とともに減弱しつつあるが,他県との差はいまだに大きいなどとされた。 カ NHK/WIMAアンケート調査に基づく実証的研究日本放送協会(NHK)仙台放送局と早稲田大学災害復興医療人類学研究所(WIMA)が共同で,平成27年1~3月,福島県の主に仮設住宅,みなし仮設住宅居住者1万6686世帯(他に,宮城県2万7271世帯,岩手県1万2187世帯の合計5万6144世帯)を対象にアンケートを行い(福島県の回収数2862世帯,全体では1万1377世帯),その回答結果から人間科学的な調査研究を行った。この調査研究では,対象を5グループに分けて,改訂出来事インパクト尺度(IES-R,ImpactofEventScale-Revised)でストレス度を評価した結果,平均得点(高いほどストレスが高く,自己評価式の質問紙のためPTSDとの診断をすることはできないが,合計点が25点以上であるとストレス反応が非常に強いと判断され,PTSDと診断される可能性 が高くなるとされる数値)は,①帰還困難・居住制限区域グループで25.9点,②避難指示解除準備区域グループで22.9点,③旧緊急時避難準備区域グループで19.8点,④区域外避難(自主避難)グループで24.9点,⑤地震・津波などの原発事故以外の理由による避難グループで21.1点であり,多重比較を行った結果,グループ①と③,①と⑤,③と④の間に有意な差が認められるとされ(なお 主避難)グループで24.9点,⑤地震・津波などの原発事故以外の理由による避難グループで21.1点であり,多重比較を行った結果,グループ①と③,①と⑤,③と④の間に有意な差が認められるとされ(なお,本アンケートの手法上,上記④グループには,津波等本件事故とは別の理由により区域外に避難した者も含まれ得る。),帰還の見通しが立たないグループ①と,いわゆる自主避難のグループ④が共に統計学的に有意にストレス度が高いことが示された。なお,本調査の研究者らが行った別の本件事故後3年目までの調査データでは避難指示区域別のストレス度に統計学的な有意差は認められなかったことから,事故後4年目(本調査)にして,区域による差が顕在化してきたと考えられる。区域の違いは賠償金の格差も生んでおり,区域の境界線として設定された住宅街の細い道を挟んで地域住民の分断が引き起こされているとの指摘もされる。 ここで,上記IES-Rの点数を押し上げる要因として挙げられたのは,本件事故発生当初1週間に「死の恐怖」を感じたこと,福島県の「地元(ふるさと)を喪失」した辛さ,地域の人との関わりの中で避難者であることによって「嫌な経験」をしたこと,悩み・気がかり,困ったことを「相談できる人がいない」こと,「家族との関係」が現在うまくいっていないこと,「不動産の心配」や「生活費の心配」があること,の7つであった。 また,本調査研究では,強制避難者については,科学リテラシーの低い者(放射線と放射能が「同じものである」,「まったくわ からない」と回答した者)のストレス度が高く,科学リテラシーの高い者(「違っており明確に区別できる」と回答した者)のストレス度が低かったのに対し,自主的避難者においては科学リテラシーの高低とストレス度との関連は見いだせなかった。 (甲 く,科学リテラシーの高い者(「違っており明確に区別できる」と回答した者)のストレス度が低かったのに対し,自主的避難者においては科学リテラシーの高低とストレス度との関連は見いだせなかった。 (甲C375~377)キ放射能に関する福島市民意識調査福島市が,平成24年5月,平成26年5月に福島市民及び福島市外へ避難している者(第1回調査対象数5500人,第2回調査対象数3500人)にアンケート調査を行った結果(第1回調査回答数2972人,第2回調査回答数1507人),本人の外部被曝による健康不安が「大いに不安である」,「やや不安である」と回答した者は,1年後(第1回調査)で81.1%,3年後(第2回調査)で70.7%,家族の外部被曝による健康不安を感じる者は,1年後で89.4%,3年後で80.5%,本人の内部被曝による健康不安を感じる者は,1年後で83.3%,3年後で70.5%,家族の内部被曝による健康不安を感じる者は,1年後で90.9%,3年後で81.1%等であった。 ク双葉8か町村災害復興実態調査福島大学災害復興研究所が,平成23年9~10月に,双葉8町村(浪江町,双葉町,大熊町,富岡町,楢葉町,広野町,葛尾村,川内村)の全2万8184世帯にアンケート調査を行った結果(回答数1万3576世帯),現在の生活困難として「放射能の影響が心配」と回答した者は57.8%,今後の生活上の困難として,「避難の期間がわからない」と回答した者は57.8%,「放射能の影響が不安」と回答した者は47.4%等であった。 第4 相当因果関係(各論) 1 一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況等前示(第5える上では,基本となる社会インフラの状況,生活の糧を取得する手段としての産業,家庭・地域コミュニティを育む物理 論) 1 一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況等前示(第5える上では,基本となる社会インフラの状況,生活の糧を取得する手段としての産業,家庭・地域コミュニティを育む物理的・社会的諸要素,周囲の環境・自然の状況,有形・無形の諸要素からなる「ふるさと」の状況,いじめや風評被害等の状況,健康被害への恐怖感又は不安感等の中心的対象である空間線量率等が重要な要素となるところ,これらの要素に関する社会的事実等については,おおむね原判決の「事実及び理由」中第3章第5の5(183頁2行目~192頁9行目)が説示するとおりであり,当審において一部追加・補正した上で,以下のとおり説示する。 水の状況本件事故による水源の汚染により,福島市の水道水から,3月16日に放射性ヨウ素177Bq/kg,放射性セシウム58Bq/kgが,3月19日に放射性ヨウ素33Bq/kgが,3月21日に放射性ヨウ素23Bq/kgが,それぞれ検出された。福島県災害対策本部及び厚生労働省健康局水道課は,原子力安全委員会の定める飲料水の暫定指標値である放射性ヨウ素300Bq/kg,放射性セシウム200Bq/kgを下回っており,摂取制限が必要なレベルではないなどとしていた。 飯舘村(4月22日に計画的避難区域に設定されるまで,30km圏外には避難指示は出ていなかった。)の水道水から,3月20日に,暫定指標値を超える放射性ヨウ素965Bq/kg,3月21日に放射性ヨウ素492Bq/kgが検出され,3月21日から4月1日まで水道水の摂取が制限された。 厚生労働省は,3月21日,水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合には乳児による摂取を控えるよう求め,100Bq/kgを超える放射性ヨウ素が検出された飯舘村(3月21日 厚生労働省は,3月21日,水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合には乳児による摂取を控えるよう求め,100Bq/kgを超える放射性ヨウ素が検出された飯舘村(3月21日から5月10日まで。965Bq/kg),伊達市(3月22日から3月26日まで,3月27日から4月1日まで。120Bq/kg),川俣町(3月22日から3月25日まで。3月17日308Bq/kg,3月18日293Bq/kg,3月21日130Bq/kg),郡山市(3月22日から3月25日まで。150Bq/kg),南相馬市(3月22日から3月30日まで。220Bq/kg),田村市(3月22日から3月23日まで,3月26日から3月28日まで。 3月17日348Bq/kg,3月19日161Bq/kg,3月24日107Bq/kg),いわき市(3月23日から3月31日まで。103Bq/kg),茨城県(3月23日から3月27日まで。 188.7Bq/kg),千葉県(3月23日から3月27日まで。 130Bq/kg),東京都(3月23日から3月24日まで。210Bq/kg),栃木県(3月25日から3月26日まで。110Bq/kg)の,それぞれ対象水道地域や周辺地域の乳児に対する摂取制限が行われた(甲C380)。これに対して,放射性セシウムが200Bq/kgを超過したことはなく,また,飯舘村を除き,成人に対する摂取制限が行われたことはない。 厚生労働省は,平成24年4月1日以降,水道水の放射性セシウムの管理目標値を,それまでの暫定規制値である200Bq/kg(なお,本件事故直後は300Bq/kgとしていた。)から新たに10Bq/kgと設定し,放射性ヨウ素については,半減期が短く(前記第3の2のとおり物理的半減期は8日),周辺環境においても 検 件事故直後は300Bq/kgとしていた。)から新たに10Bq/kgと設定し,放射性ヨウ素については,半減期が短く(前記第3の2のとおり物理的半減期は8日),周辺環境においても 検出されていないことから,新たな目標を設定する必要はないとした。 最近の状況としては,南相馬市の井戸水について,平成25年10月1日,平成27年1月5日,平成28年1月5日及び平成29年2月1日に実施された採水検査では,いずれも,プルトニウムは検出限界値未満であり,ストロンチウム90は検出されたものの数値は微量で全国データ分布の範囲内であり,WHOの飲料水水質基準を大きく下回っていた。また,南相馬市小高区,原町区及び鹿島区で平成28年5月16日~平成29年2月28日に行われた井戸水の放射能測定では,いずれも放射性物質(ヨウ素131,セシウム134及びセシウム137)が不検出であった。さらに,南相馬市(原町区及び小高区)の水道水について,平成29年12月に実施された水道水の採水検査では,実施された3回とも,放射性セシウム及び放射性ヨウ素いずれも検出限界値未満であった。(丙C375,376)このように,水道水の汚染は,成人の健康に影響を及ぼすようなレベルではなく,成人に対する摂取制限のなされた飯舘村及び摂取制限の対象となった乳児のいる家庭を除けば,独立して賠償の対象となるような権利侵害(水質汚濁)とまではいえないにしても,一審原告らは,人の生活に不可欠な水道水にまで放射能汚染が及んでいることを知り,本件事故による放射線被曝に対する不安を一層強めることになった。 食品の状況ア国,地方自治体等による規制等基準値等 厚生労働省は,3月17日,原子力安全委員会の定めた暫定規制値(放射性ヨウ素については,飲 めることになった。 食品の状況ア国,地方自治体等による規制等基準値等 厚生労働省は,3月17日,原子力安全委員会の定めた暫定規制値(放射性ヨウ素については,飲料水,牛乳・乳製品につき300Bq/kg,野菜類(根菜,芋類を除く。)につき2000Bq/kg,放射性セシウムについては,飲料水,牛乳・乳製品につき200Bq/kg,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他につき500Bq/kgなど。)を上回る食品について食品衛生法6条2号に当たるものとして対応するよう,各自治体に通知した。 その後,農林水産省は,平成24年2月3日,牛用飼料の放射性セシウムの暫定許容値を300Bq/kgから100Bq/kgへ引き下げた。 また,厚生労働省は,同年4月1日,年間線量の上限を5mSv/yとして設定されていた放射性セシウムの暫定規制値(飲料水,牛乳・乳製品につき200Bq/kg,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他につき500Bq/kg)を,国際規格の指標に合わせて年間線量の上限を1mSv/yとした基準値(飲料水につき10Bq/kg,牛乳につき50Bq/kg,一般食品につき100Bq/kg,乳児用食品につき50Bq/kg)に改定した。 検査結果,出荷制限等厚生労働省による通知を受けるなどした自治体が,それぞれ検査を実施したところ,複数の自治体の食品から,暫定規制値を上回る放射能が検出された。 3月19日には,福島県が依頼する前にモニタリング検査した川俣町の乳牛の原乳から暫定規制値を超える放射性ヨウ素が検出されたため,同日中に,川俣町の原乳の出荷自粛を要請し た。翌20日には,福島県の乳牛の原乳から,最大5200Bq/kgの放射性ヨウ素が検出されたため,県は,同日,県内の全酪農家に対 れたため,同日中に,川俣町の原乳の出荷自粛を要請し た。翌20日には,福島県の乳牛の原乳から,最大5200Bq/kgの放射性ヨウ素が検出されたため,県は,同日,県内の全酪農家に対し,原乳の出荷自粛を要請した。 また,一部の葉菜類から規制値を超えたという検査結果が出るなどしたこともあり,出荷自粛要請などの措置が取られ,3月21日には,規制値を超える値が出た具体的品目に対し規制をかける旨の出荷制限指示が出された。 原災本部は,原災法20条3項に基づき,3月21日,福島県,茨城県,栃木県及び群馬県において産出されたホウレンソウ及びカキナについて出荷制限を行い,その後も,多数の品目について出荷制限が行われた。10月14日には,福島市及び南相馬市産の柿を原料とする乾燥果実(あんぽ柿及び干し柿)から暫定規制値を超える放射性セシウム(500Bq/kg)が検出され,加工・出荷自粛の要請がされた。その後,県北地方4市町(福島市,伊達市,桑折町及び国見町)で採れた柿を原料とする乾燥果実については,毎年加工自粛とされてきたところ,平成30年度についても食品衛生法の基準値(100Bq/kg)を超える放射性セシウムが検出されたため,同年度もなお加工自粛とされた。また,牛肉については,高濃度の放射性セシウムを含む稲わらが給与されるなどした肉用牛が出荷流通していたことや,出荷された複数の牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムが相次いで検出されたことが明らかになったため,7月19日,福島県全域の全ての肉用牛について,原災本部長指示による出荷制限が指示された。平成28年12月26日時点においても,牛肉等については会津地域を含む全 域で出荷が制限されている(一定の要件を満たせば出荷は可能である。)。 このほか,青森 制限が指示された。平成28年12月26日時点においても,牛肉等については会津地域を含む全 域で出荷が制限されている(一定の要件を満たせば出荷は可能である。)。 このほか,青森県,岩手県,宮城県,山形県,茨城県等各県において摂取・出荷・収穫等自粛の要請が行われた。 本件事故後に検査対象自治体(青森県,岩手県,秋田県,宮城県,山形県,福島県,茨城県,栃木県,群馬県,千葉県,埼玉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,長野県,静岡県)から出荷された食品については,地方自治体により放射性物質検査が行われ,の暫定規制値を超えて汚染された食品が流通しないための措置が講じられたり,各県において摂取・出荷・収穫等自粛の要請が行われたりした。 (甲C248番号33,34,47,59,63,73,83,107,108,113~116等,甲C342~348,392)イ米に係る規制3月25日,福島県は,県内農用地における放射性物質による汚染実態が不明であることから,農家に対し,予定している農作業を延期し様子見をし,放射性物質が地表面に存在している状態と思われることから,これ以上拡散させないために当面耕転作業を見送ること,水稲については,播種時期及び移植時期をそれぞれ半月程度ずつ通常よりも遅らせ,耕転作業も遅らせること,摂取や出荷を差し控えるよう指示されている野菜については,放射性物質の拡散を避けるため,すき込みや焼却を行わないことなどを要請した。 福島県は,3月末から4月中旬にかけて,2回にわたり,県内を10kmメッシュに分けた上で,各地点について農用地の土壌 調査を実施し,その評価結果に基づき,今後の農作業の進め方について,様子見をするよう指示している県内農家に対し,4月6日及び同月1 メッシュに分けた上で,各地点について農用地の土壌 調査を実施し,その評価結果に基づき,今後の農作業の進め方について,様子見をするよう指示している県内農家に対し,4月6日及び同月12日,避難指示等対象区域以外において稲の作付制限は行わないこと,避難指示等対象区域についてはなお国等と調整を進めていくことなどを通知した。 原災本部は,4月8日,稲の作付けについて,今後水田土壌の調査結果を踏まえて,国と各関係自治体が協議して,作付制限を行うところについて決定する予定である旨などの考え方を公表し,同月22日,県内の避難指示等対象区域について,平成23年産の稲の作付けをしないよう要請するよう指示した。これを受けて,福島県は,避難指示等対象区域の関係市町村長に対し,同区域内の農家(約6800戸,約8500ha)については平成23年産の稲の作付けを行わないよう要請した。 福島県は,8月5日,本件事故を受けて,県内の米について,収穫前の予備調査と収穫後の本調査の二段階で放射性物質調査を実施し,この結果が出るまでは市町村全域における米を出荷しないよう依頼することとした。12月27日,農水省は,平成24年の稲の作付けについて,平成23年米について食品衛生法の暫定基準値(500Bq/kg)を超過した地区については作付制限を行うこと,平成23年米について食品衛生法の新基準値(100Bq/kg)を超過した地区については作付制限を行うかどうかを十分検討することなどを公表した。 平成24年3月9日,農水省は,平成24年産稲の作付制限区域の設定について公表した。 福島県は,県産米の放射性物質の全量(全袋)検査を生産・流通業者が実施する体制を平成24年産米の出荷から整えることとした。 農林水産省は,平成24年3月29日, いて公表した。 福島県は,県産米の放射性物質の全量(全袋)検査を生産・流通業者が実施する体制を平成24年産米の出荷から整えることとした。 農林水産省は,平成24年3月29日,出荷制限が課された地域等の県産の平成23年産の米(対象数量は最大3万7000t程度)について市場流通から隔離する方針を発表した。 福島県内の平成24年産玄米の全量全袋検査で,検査点数約1035万点中放射性セシウムが基準値(100Bq/kg)を超えたものは71点あった。 おおむね以上のような経過を経て,米については,前年の調査において検出された放射性セシウム濃度に応じて,以下のような段階的な作付けの制限が行われている。 ・作付制限立入りが制限されており,作付け・営農は不可。 ・農地保全・試験栽培営農が制限されており,除染後の農地の保全管理や市町村の管理の下で試験栽培を実施。 ・作付再開準備管理計画を策定し,作付再開に向けた実証栽培等を実施。 ・全量生産出荷管理管理計画を策定し,全ての圃場で吸収抑制対策等を実施,もれなく検査(全量管理・全袋検査)し,順次出荷。 本件事故後,上記の制限が下の段階の制限へと段階的に弱められる地域が拡大していき,平成31年産米からは,帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町以外における制限はされていない。 (甲C248番号26,27,31,32,45,46,48,51~53,56,64~66,70~72,74~77,79,80,97,111,112等,甲C349,353,355~359,361~364,丙C527の1~4) ウ内水面の規制等本件事故により,福島県内の数多くの河川や湖沼が放射性物質によって汚染され,さらに,山林の除染が後回しにされたため,放射性物質により汚染 C527の1~4) ウ内水面の規制等本件事故により,福島県内の数多くの河川や湖沼が放射性物質によって汚染され,さらに,山林の除染が後回しにされたため,放射性物質により汚染された山林を通った雨水が河川に流れ込むことにより,河川や湖沼の汚染が常態化することとなり,一時期,内水面に係る魚の出荷制限が数多く指示され,渓流釣り等を楽しみとする多くの人の趣味を奪うなどの結果をもたらした。(甲C159,弁論の全趣旨)令和元年8月28日時点で,採捕自粛要請や摂取制限指示がなお続いている河川,出荷制限指示のある魚種,河川・湖沼及び関係漁協等はまだ複数ある(甲C248番号121,382)。 エ住民の受けた影響土壌・内水面そのものや農作物・動植物等の汚染により,農業や畜産業等を生業としていた地域住民は大きな打撃を被った。また,それ以外の地域住民も,これまで地域周辺の豊かな自然から享受してきた農作物,果樹,きのこ,山菜,川魚,野生鳥獣などの収穫・摂取等に,不安等精神的な影響も含め大小の制限を受けることとなった。さらに,本件事故以後,福島県産の農作物等を中心に,産地が福島等であること自体による販売量や価格の低下(いわゆる風評被害)を招き,生産農家等のみならず,住民としても,地元県産であることによるブランド力を一気に失う結果となった。 本件事故前に福島県産の農作物等を売りに誘客してきた旅館・ホテルは多数に上るため,ブランド力が失墜したことにより,福島県の観光業に大きな影響を及ぼしている。 (上記ア~ウに掲げた各証拠,弁論の全趣旨)海の状況 ア出荷制限等本件事故及びその後の廃炉作業に伴う汚染水の海洋放出等により,福島県沖及び周辺海域が放射性物質により汚染され,多くの海産物も出荷制限を受 全趣旨)海の状況 ア出荷制限等本件事故及びその後の廃炉作業に伴う汚染水の海洋放出等により,福島県沖及び周辺海域が放射性物質により汚染され,多くの海産物も出荷制限を受けることとなった。 福島県内の全ての沿岸漁業,底引き網漁業は3月12日以降の操業を自粛し,この操業自粛は,試験操業を除き当審口頭弁論終結時点においてもなお継続している。 平成24年6月から,放射能が基準値以下であったミズダコ,ヤナギダコ,シライトマキバイについて,福島第一原発から20km圏内を除く福島県沖で試験操業が実施され,その後,少しずつ試験操業対象の魚種は増えているが,平成29年2月8日時点で97魚種にとどまっており(例えば,本件事故前に福島県相馬市に所在する相馬原釜漁港に水揚げされていた魚種は約120~170魚種であった。),その漁業規模も本件事故前の規模にはるかに及ばない現状にある(平成30年の漁獲高は4010トンで,震災前の10年比で15.5%にとどまっている。)。 (甲C248番号36,89,109,110,弁論の全趣旨)イ住民の受けた影響漁業や海産物販売を生業としていた地域住民は,海洋そのものや海産物等の汚染により大きな打撃を被った。それ以外の地域住民も,これまで福島県内の豊かな漁場から享受してきた魚介類を従前のように食べることができなくなった。また,本件事故以後,福島県産の海産物を中心に,産地が福島等であること自体による販売量や価格の低下(いわゆる風評被害)を招き,漁業者や水産加工業者等のみならず,住民としても,地元県産であることによるブランド力を一気に失う結果となった。本件事故前に福島県産 の海産物を売りに誘客してきた旅館・ホテルは多数に上るため,ブランド力が失墜したことにより,福 も,地元県産であることによるブランド力を一気に失う結果となった。本件事故前に福島県産 の海産物を売りに誘客してきた旅館・ホテルは多数に上るため,ブランド力が失墜したことにより,福島県の観光業に大きな影響を及ぼしている。 (上記アに掲げた各証拠,弁論の全趣旨)除染の状況原災本部は,8月26日,「除染に関する緊急実施基本方針」を策定・公表し,避難指示の対象地域では国が除染を実施すること,現存被ばく状況(20mSv/y以下の地域)においては長期的な目標として追加被ばく線量を1mSv/y以下とすること,国が市町村の除染計画の作成・実施に対して技術的・財政的な支援を行うことなどを示した。 環境省は,9月28日,年間5mSv未満の地域については基本的に面的除染の対象とせず,除染費用を国の財政支援の対象外とするとの方針を示したところ,これに対し,各自治体が猛反発し,福島市長会が原災本部宛には抗議文を,福島県知事に対しては要望書をそれぞれ提出するなど,同方針の撤回を求めた。環境省は,10月10日,上記方針を転換し,1mSv/y以上の地域について国が財政措置をして除染する基本方針を固め,12月19日,汚染廃棄物対策地域及び除染特別地域を指定すると共に(避難指示区域に対して指定された。),8県102市町村を対象として汚染状況重点調査地域(その地域及びその周辺の地域において検出された放射線量等からみて,その地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染状態が「汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令」(平成23年環境省令第34号)4条で定める0.23μ Sv/h未満であるという要件に適合しない,又はそのおそれが著しいと認められ,汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域。福 島 省令第34号)4条で定める0.23μ Sv/h未満であるという要件に適合しない,又はそのおそれが著しいと認められ,汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域。福 島県に加え,岩手県,宮城県,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県にわたる104市町村が指定され,平成27年9月までに5市町村の,平成30年3月頃までに15市町村の指定が解除されている。)の指定を行うことを公表した。 以上の経緯により,一審被告国は除染特別地域の(除染特措法25条,30条),市町村は汚染状況重点調査地域の(同法32条,35条,38条),それぞれ除染を行うこととされ,それぞれの実施主体の定めた除染実施計画に基づき,除染が実施されてきた。環境省によれば,平成30年3月19日までに,帰還困難区域を除く全ての面的除染が完了したとされる。 福島県では,平成30年3月頃までに会津坂下町,湯川村,昭和村,会津美里町,三島町,矢祭町,塙町,柳津町の8町村が汚染状況重点調査地域の指定を解除され,その時点で福島市,郡山市,いわき市,白河市,須賀川市,相馬市,二本松市,伊達市,本宮市,桑折町,国見町,大玉村,鏡石町,天栄村,西郷村,泉崎村,中島村,矢吹町,棚倉町,鮫川村,石川町,玉川村,平田村,浅川町,古殿町,三春町,小野町,広野町,新地町,田村市,南相馬市,川俣町,川内村の33市町村が指定されている。 宮城県では,平成30年3月頃までに石巻市が汚染状況重点調査地域の指定を解除され,その時点で白石市,角田市,栗原市,七ヶ宿町,大河原町,丸森町,亘理町,山元町の8市町が汚染状況重点調査地域に指定されている。 茨城県では,平成30年3月頃までに鉾田市が汚染状況重点調査地域の指定を解除され,その時点で日立市,土浦市,龍ケ崎市,常総市,常 亘理町,山元町の8市町が汚染状況重点調査地域に指定されている。 茨城県では,平成30年3月頃までに鉾田市が汚染状況重点調査地域の指定を解除され,その時点で日立市,土浦市,龍ケ崎市,常総市,常陸太田市,高萩市,北茨城市,取手市,牛久市,つくば市, ひたちなか市,鹿嶋市,守谷市,稲敷市,つくばみらい市,東海村,美浦村,阿見町,利根町の19市町村が指定されている。 栃木県では,佐野市が汚染状況重点調査地域の指定を解除され,その時点で鹿沼市,日光市,大田原市,矢板市,那須塩原市,塩谷町,那須町の7市町が指定されている。 これらの除染特措法に基づき実施した除染の費用は,原子力損害として,実施主体から,あるいは,復興予算として一審被告国が負担した後,一審被告国から一審被告東電に求償されることになる(除染特措法44条,45条)。 一方,除染特別地域として対象とされている,楢葉町,富岡町,大熊町,双葉町,浪江町,葛尾村,飯舘村並びに田村市,南相馬市,川俣町及び川内村の旧警戒区域又は旧計画的避難区域であった地域では,国が直轄して除染実施計画に基づく除染を実施したが,前7町村では,除染実施割合は総土地面積の約4~40%にとどまっている。 なお,福島県知事は,子供の放射線防護に対する強い危機意識から,7月8日,「「ふくしま」の子どもを守る緊急宣言」を発し,県が「ふくしまの子どもを守る緊急プロジェクト事業」を総額358億円で立ち上げて校庭や公園の表土除去や線量計を配布するなどの手立てを講じる計画を立てるなど,政府の対応を待たずに自主的避難者の帰還等を促している。 (甲C283~296,338~341,354,355,378,379)教育施設の状況ア各教育施設の対応等 福島県は,4月5日 に自主的避難者の帰還等を促している。 (甲C283~296,338~341,354,355,378,379)教育施設の状況ア各教育施設の対応等 福島県は,4月5日から4月7日までに,福島第一原発から20km圏外の福島県内1648の小中学校,幼稚園,保育園等の空間線量率を調査し,福島市,本宮市,二本松市,伊達市,郡山市,相馬市の52校で3.7μ Sv/h(19.3mSv/y相当)以上の空間線量率(地上1m)が計測された。 文部科学省は,4月14日に,4月5日~4月7日の調査で3. 7μ Sv/h以上であった52校を対象に再調査を実施し,福島市,郡山市,伊達市の13校で3.8μ Sv/h(20mSv/y相当)の空間線量率(地上1m)が計測された。 文部科学省は,4月19日,「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」を発出し,再調査により校庭等で3.8μ Sv/h(幼稚園,小学校,特別支援学校については50cm高さ,中学校については1m高さ)以上の空間線量率が測定された学校については,当面,校庭等での活動を1日当たり1時間程度にするなど,学校内外での屋外活動をなるべく制限することが適当である,3.8μ Sv/h未満の空間線量率が測定された学校については,校舎・校庭等を平常どおり利用して差し支えないなどとし,保育所等(認可外保育施設を含む。)を管轄する厚生労働省も,同日,同旨の通知を発出した。 これに基づき,上記13校につき屋外活動の制限が行われ,他の教育施設においても,それぞれの自治体や施設運営主体による独自の措置として,屋外活動の制限などの被曝回避措置が取られた(例えば,西白河郡の西郷村の小学校では,本件事故後3月31日まで1日4時間の屋外活動制限措置が取られていた。制 治体や施設運営主体による独自の措置として,屋外活動の制限などの被曝回避措置が取られた(例えば,西白河郡の西郷村の小学校では,本件事故後3月31日まで1日4時間の屋外活動制限措置が取られていた。制限解除後も草むしりや花壇の手入れをするときはゴム手袋やマスクを して活動するなど,放射線被曝回避措置を講じた学校生活が続いた。甲C406)。 文部科学省は,5月27日,「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」を発出し,平成23年度,学校において児童生徒等が受ける線量について,当面,1mSv/y以下を目指す,校庭等の空間線量率が1μ Sv/h以上の学校について,設置者に対し放射線量の低減策を講じるための財政的支援を実施する,などとし,6月20日には,福島県外においても,校庭等の空間線量率が1μ Sv/h以上の学校には福島県内と同様に財政的支援を実施することとした。 その頃から8月頃にかけて,各自治体において校庭等の除染が行われた(例えば,福島市では,空間線量率が3.8μ Sv/h以上であった26施設の除染を6月末までに,市立小中学校全72校の除染を8月末までに実施した。)。その結果,5月12日以降,3.8μ Sv/h以上の空間線量率が計測された教育施設はなく,8月25日の測定の最大値は0.8μ Sv/hであった。 文部科学省は,福島県内全ての学校等(第1回(6月1日~30日)は1641校園,第2回(7月1日~31日)の調査対象は1659校園。)における簡易型積算線量計によるモニタリングを実施したところ,教職員が受けた積算線量(時間平均)は,2回を通じて,0~0.7μ Sv/hで推移しており,全体平均は0.1μ Sv/hであった。仮に学校滞在時間を1日8時間,年間200日 ングを実施したところ,教職員が受けた積算線量(時間平均)は,2回を通じて,0~0.7μ Sv/hで推移しており,全体平均は0.1μ Sv/hであった。仮に学校滞在時間を1日8時間,年間200日と仮定すると,年間0~1.1mSv,全体平均では年間約0.2mSvとなる。(甲C405) 文部科学省は,8月26日,「福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について(通知)」を発出し,夏季休業終了後,学校において児童生徒等が受ける線量については原則1mSv/y以下とし,これを達成するため,校庭等の空間線量率については,児童生徒等の行動パターンを考慮し,1μ Sv/h未満を目安とする,学校内において比較的線量が高いと考えられる場所については,校内を測定して当該場所を特定し,除染したり,除染されるまでの間近づかないように措置したりすることが重要と考えられる,などとした。 福島県内の18歳未満の住民の避難者数は,平成24年4月1日時点から漸減してはいるものの,平成29年3月1日時点でなお県内避難者数が1万0286人,県外避難者数が8624人となっている(甲C358)。 イ避難指示区域における学校の状況等避難指示区域における学校の状況避難指示が出された小中学校は,本件事故後休校を余儀なくされていたが,その後,避難指示の解除に伴って,徐々に再開してきている。平成30年までに田村市,南相馬市,広野町,楢葉町,川内村の5市町村において小中学校が再開しており,平成30年度からは,新たに5町村(富岡町,浪江町,川俣町,葛尾村,飯舘村)の小中学校が再開された。 もっとも,浪江町において,再開に向けて平成29年6月に実施された意向調査によれば,現在のところ再開したとしても町内の小中学校に通学させる考えがないとする割合が, 舘村)の小中学校が再開された。 もっとも,浪江町において,再開に向けて平成29年6月に実施された意向調査によれば,現在のところ再開したとしても町内の小中学校に通学させる考えがないとする割合が,回答世帯のうち約95.2%に上った。また,平成29年8月31日 の報道によれば,再開予定の富岡町の小中学校に「戻れない」とする割合が回答世帯の約86.8%に上ったとされる。 実際,平成30年3月1日時点の報道では,再開した小中学校に通学予定の子供の数は,先に再開済みの市町村と合わせて,本件事故前の8.6%,531人にとどまるとされる。また,各自治体は,通学する子供が少ないため,複数の学校を1つの校舎に集約させて(例えば2階に小学校,3階に中学校を置くなどの工夫をして),事実上「1自治体1校」の状態で再開した。 さらに,多くの子供が越境通学を余儀なくされる飯舘村や葛尾村などでは,福島市などから峠道などを1時間以上バスに揺られて通学することになるため,取り分け低学年の児童には大きな負担となっている。 他方で,ほぼ全町的に避難指示が続いている大熊町や双葉町では,依然町内の学校再開の目途は立っておらず,避難先での学校教育を余儀なくされている。 平成30年3月12日時点の報道によれば,福島県内の12市町村の小中学校の児童生徒数は,本件事故直後(平成23年5月)に1421人まで減少し,その後も,避難生活の長期化や全国的な少子化の流れを背景に児童生徒数の減少傾向は続き,平成29年5月時点で929人と,本件事故前(平成22年)8388人の約11%にまで減少した。震災から7年が経ち,避難先で学ばせることを選択する保護者も少なくないとされている。 (甲C263,264,266,267,297,304,305,丙C386) 人の約11%にまで減少した。震災から7年が経ち,避難先で学ばせることを選択する保護者も少なくないとされている。(甲C263,264,266,267,297,304,305,丙C386) 小中学校の校数及び児童数の変遷 県内11市町村の小学校の校数及び児童数の変遷は,以下のとおりである(甲C298~300)。小学校の校数(単位:校)及び児童数(単位:人) 平成22年 平成26年 平成29年 校数 児童数 校数 児童数 校数 児童数 南相馬市 40 28 21 32 21 58 田村市 22 99 18 50 17 22 葛尾村 川内村 川俣町 楢葉町 飯舘村 浪江町 11 62 富岡町 大熊町 双葉町 また,県内11市町村の中学校の校数及び生徒数の変遷は,以下のとおりである(甲C301~303)。中学校の校数(単位:校)及び生徒数(単位:人) 平成22年 平成26年 平成29年 校数 生徒数 校数 生徒数 校数 生徒数 南相馬市 19 85 13 31 12 66 田村市 12 36 11 45 葛尾村 川内村 市 1985 1331 1266田村市 葛尾村 川内村 川俣町 楢葉町 飯舘村 浪江町 富岡町 大熊町 双葉町 令和元年5月27日時点における富岡町小中学校の状況等福島第一原発から南方約9.3kmに位置する富岡町小中学校(双葉郡富岡町大字小浜字中央237の2所在)は,平成30年4月に再開し,令和元年5月27日時点で再開後2年目を迎えた。富岡町内には小学校及び中学校が各2つずつあったが,本件事故による町民避難のためこの4校は3月14日以降いずれも臨時休校した。その後,9月1日,富岡第一小学校校舎において富岡町小中学校の三春校として再開し,さらに,平成30年4月,富岡第一中学校校舎において富岡町小中学校の富岡校として再開した。現在でも小学校(富岡第二小学校)及び中学校(富岡第二中学校)の校舎は閉鎖されている。富岡町では,本件事故当時,上記4校合計約1500人の児童生徒が在籍していたが,本件事故後,上記三春校で再開時に82人(約5%)まで激減し,富岡校が再開した後である平成31年度でも,4校(三春校及び富岡校)合計で40人(3%未満)にとどまっている。上記時点における富岡校では,小学1,2年生,小学3,4年生,小学5,6年生,中学2, 岡校が再開した後である平成31年度でも,4校(三春校及び富岡校)合計で40人(3%未満)にとどまっている。 上記時点における富岡校では,小学1,2年生,小学3,4年生,小学5,6年生,中学2,3年生を,それぞれ1人の教員が受 け持ち,1つの教室で異なる内容の授業をする複式授業を実施しており,また教員数不足から,三春校とライブ中継をして授業する工夫も採り入れざるを得ない状況である。 本件事故前,取り分け富岡第一中学校は体育系の部活動が盛んで,バトミントンの強豪校であり,g選手等の出身校で知られたが,富岡校再開後,中学校の部活動は,卓球部(部員3人)と,美術や音楽に取り組む総合文化部(部員1人)があるのみである。 平成31年度(令和元年度)からは特別陸上部を新設したが,生徒数が少ないことから個人種目に限られている。 (甲C313,丙C461~464,弁論の全趣旨)エ住民の受けた影響以上によれば,本件事故に由来する放射性物質による教育施設そのものや周辺地域の汚染等により,福島県やその周辺県内の教育施設に通学していた地域住民は,未成年者は成人に比して放射線感受性が強いとされることもあり,放射線被曝に対する大きな不安を感じ,通学や学習に制限を受けるなどの影響を受けたり,自由な外遊びができなくなるなど,本件事故前に比して,学習環境,生育環境を制限された。 医療・介護施設の状況ア医療施設等福島県全体福島県全体では,医師数が平成22年12月31日の時点から平成24年12月31日時点までに約200人減少したが,その後漸増し,平成28年12月31日時点では平成22年時点と同数程度まで回復した(もっとも,全国の医師数は,平成22年から平成28年にかけて約2万4000人増加してい 少したが,その後漸増し,平成28年12月31日時点では平成22年時点と同数程度まで回復した(もっとも,全国の医師数は,平成22年から平成28年にかけて約2万4000人増加してい る。)。病院の常勤医数としては,3月1日時点と比較して,平成24年12月1日時点では64人減少したが,平成27年12月1日時点で38人増となっている。しかし,エリア別にみると,浜通り地方の医師不足は依然として深刻な状況であり,病院が稼働していながら医師数・看護職員数の減少が大きい相双医療圏の旧緊急時避難準備区域内の病院においては非常に厳しい状況が続いている。 平成29年12月時点における県内避難地域12市町村における病院,診療所及び歯科診療所の再開率は,避難指示解除から数年が経過している市町村においては87.5%,避難指示解除から1年程度が経過している市町村においては19.5%,帰還困難区域が大部分を占める市町村においては9.0%となっており,薬局の再開率は,それぞれ20.0%,10.0%,9.7%となっている。例えば富岡町(後記の「福島県ふたば医療センター附属病院」の所在地)では,本件事故前は病院1,診療所13,歯科診療所6,薬局6であったが,平成29年12月現在では,病院0,診療所2(平成29年4月に富岡中央医院が再開)にとどまっている。その後,平成30年4月福島県ふたば医療センター附属病院」が開院した。 県内11市町村の病院,診療所,歯科診療所及び薬局の数の変遷は以下のとおりである(甲C306)。 医療機関等の数の変遷 H23.3.1現在 H29.12現在南相馬市(小高区) 病院 診療所 歯科診療所 薬局 田村市(都路地区) H23.3.1現在 H29.12現在南相馬市(小高区) 病院 診療所 歯科診療所 薬局 田村市(都路地区) 病院 診療所 歯科診療所 薬局 楢葉町 病院 診療所 歯科診療所 薬局 富岡町 病院 診療所 歯科診療所 薬局 川内村 病院 診療所 歯科診療所 薬局 大熊町 病院 診療所 歯科診療所 薬局 双葉町 病院 診療所 歯科診療所 薬局 浪江町 病院 診療所 歯科診療所 薬局 葛尾村 病院 診療所 歯科診療所 薬局 飯舘村 病院 診療所 歯科診療所 薬局 川俣町 病院 診療所 歯科診療所 薬局 合計 相馬エリア住民の避難が続く中,旧緊急時避難準備区域を中心に,医療従事者は流出している。3月1日時点で81人だった常勤医数は,12月1日時点で55人まで減少したが,平成24年12月1日時点で73人,平成25年12月1日時点で75人,平成27年12月1日時点で89人と している。 3月1日時点で81人だった常勤医数は,12月1日時点で55人まで減少したが,平成24年12月1日時点で73人,平成25年12月1日時点で75人,平成27年12月1日時点で89人と持ち直した。一方,3月1日時点で719人だった看護職員数は,平成25年1月1日時点で618人まで減少し,その後平成26年1月1日時点では641人まで回復したが,平成28年1月1日時点では619人と減少に転じている。 このように,厳しい医療従事者不足の状況下,一部の病院ではいまだ入院を再開できておらず,再開している病院でもその多くが一部の稼働にとどまっている。なお,南相馬市では,原町区のみならず,小高区及び鹿島区においても,平成30年3月時点までに各4か所の医療機関が再開している。 双葉エリア旧警戒区域等の設定に伴い,医療施設の建物被害状況の把握は困難な状態が続いている。旧警戒区域内の5病院が休止しており,平成28年8月現在稼働しているのは広野町の高野病院のみ(その後平成30年4月に後記のとおり「福島県ふたば医療センター附属病院」が富岡町に開院した。)である。 3月1日時点で39人だった常勤医数は,平成24年12月1日時点で3人,平成25年12月1日時点で2人,平成27年12月1日時点では1人と,減少の一途をたどっている。看護職員数も,3月1日時点で397人だったが,平成25年1月1日時点で108人まで減少し,その後も,平成26年1月1日時点で106人,平成28年1月1日時点で88人と,減少の一途をたどっている。 福島県ふたば医療センター附属病院(上記の双葉エリア内)本件事故後,福島県は数次にわたり医療計画を立て,双葉郡における医療再生に向けて努力しているが,避難指示解除後も医療機関の再開は容易 福島県ふたば医療センター附属病院(上記の双葉エリア内)本件事故後,福島県は数次にわたり医療計画を立て,双葉郡における医療再生に向けて努力しているが,避難指示解除後も医療機関の再開は容易でなく,特に本件事故前には多かった民間病院については再開は厳しい状況にある。そのような中,県が構想を推進したのが「福島県ふたば医療センター附属病院」であり,平成30年4月23日,365日24時間稼働する救急科を標榜し,中等症患者(一般病棟入院患者)に対する救急医療を担う二次救急指定病院として開院した。ベッド数は30床あり,救急科と内科を擁している。また,双葉郡内の同病院から半径16km以内の住民からは訪問看護サービスも受け付けたり,同年10月からは多目的医療用ヘリの運航を開始したりしている。同病院の受診者数は,平成30年5月が156人,同年7月が262人と増え,開院から7月末までの受診者数合計は622人である。 もっとも,同病院は二次指定救急病院であるため,地元住民が日常的に利用してきた病院の再開が困難な状況下ではその果たし得る役割は限定されたものであり,令和元年5月27日時 点では,専ら廃炉や除染等従事者や関係企業向けの医療機関となっている。 いわきエリア3月1日時点で261人だった常勤医数は,平成24年12月1日時点で260人,平成25年12月1日時点で256人と減少したものの,平成27年12月1日時点で262人と震災前の数まで回復した。一方,3月1日時点で2460人だった看護職員数は,平成26年1月1日時点では2555人,平成28年1月1日時点では2586人と増加傾向にある。 いわき市の現住人口は減少しているものの,被災住民の受け入れにより,実際にいわきエリアで暮らしている住民は増えており,医療 は2555人,平成28年1月1日時点では2586人と増加傾向にある。 いわき市の現住人口は減少しているものの,被災住民の受け入れにより,実際にいわきエリアで暮らしている住民は増えており,医療需要の増大が見込まれている。 (甲C268~271,311,丙C380,454~457,537,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)イ介護施設等平成29年における双葉郡地域の介護事業の状況は,全体的に,避難により世帯が分離され,若者の帰村・帰町が進まないことにより高齢者世帯が増えたため,介護サービスのニーズは増えている一方,本件事故後から廃止中の施設も多く,また,介護職員不足等により在宅介護サービスが不足しており,そのことが自宅で生活することの不安要因となっている。 平成29年10月14日の報道によれば,富岡町,浪江町,飯舘村,川俣町山木屋地区の4町村など,解除済みを含む避難区域にあった特別養護老人ホームと介護老人保健施設の計11施設のうち,地元で再開したのは3施設にとどまり,浪江町の特別養護老人ホームのようにいわき市など避難先に移転したままの施設も あるとされる。浪江町の担当課長は,「帰還者が少ないため利用が見込みにくいということもあり,赤字覚悟で再開してもらうのは難しい。どう支援するかが重要だ。」と指摘する。職員不足も深刻であり,飯舘村では特別養護老人ホームの職員不足が顕在化しており,同村の担当課長は「デイサービスなど通所や訪問型の事業は十分に対応できず,村外の施設に協力を依頼する方向で考えている。」と話す。今後,高齢の帰還者が増えれば要介護者の受入れ施設不足が深刻化する恐れがあるともされる。 南相馬市には,高齢者施設として養護老人ホーム(高松ホーム:定員100名)が,あったところ,7月 。」と話す。今後,高齢の帰還者が増えれば要介護者の受入れ施設不足が深刻化する恐れがあるともされる。 南相馬市には,高齢者施設として養護老人ホーム(高松ホーム:定員100名)が,あったところ,7月11日時点で,施設ごと市外に避難したため,閉鎖していた。また,介護施設として鹿島区内に介護老人保健施設及び特別養護老人ホームが各1施設ずつあり,本件事故直後はそれぞれ一旦同系列の別の施設に避難したが,4月13日ないし6月10日に元の場所で再開した。また,同区内のグループホームは2施設あったところ,1施設は本件事故直後も開いており,もう1施設は本件事故直後は一旦同系列の別の施設に避難したが,6月10日に元の場所で再開した。ただし,上記4施設はいずれも7月11日時点で満床である。また,小高区,原町区内の特別養護老人ホーム,老人保健施設,認知症高齢者グループホームなどの入所施設は,7月11日時点で,警戒区域や緊急時避難準備区域内にあるため,全て閉鎖していた。 (甲C258,272,丙C330の2,丙C331)民間事業等の状況ア概観福島県内において,平成19年時点と比べると,平成24年時点における福島県内卸売業は,事業所数,従業者数,年間商品販 売額のいずれについても25%以上減少し,県内小売業は,事業所数及び従業者数において30%以上減少し,年間商品販売額及び売場面積は15%から20%近く減少した。取り分け相双地区については減少が著しく,卸売業に係る上記3指数はいずれも50%を超える減少幅であり,小売業に係る上記4指数も45%から60%を超える減少幅である。 また,福島県の被災12市町村では,平成30年2月現在,商工会会員事業所の半数を超える1750事業所(64.7%)が再開したが,うち地元で再開した 4指数も45%から60%を超える減少幅である。 また,福島県の被災12市町村では,平成30年2月現在,商工会会員事業所の半数を超える1750事業所(64.7%)が再開したが,うち地元で再開した事業所は774事業所(28. 6%)にとどまっている。 (丙C307~309)イ 「さくらモールとみおか」平成29年3月30日に全面開業した富岡町が整備を進めた「さくらモールとみおか」(福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央416番地所在)は,同年4月1日の富岡町の避難指示解除に先立って,JR常磐線富岡駅から約1km(徒歩10分程度)の場所に開設された公設民営型複合商業施設であり,スーパーマーケット,ドラッグストア及びホームセンターと,フードコートに出店する飲食店が3店舗からなり,営業時間はフードコートを除き午前中から午後7時までである(令和元年5月27日の当審における現地進行協議期日の時点)。 近隣に大型の商業施設がほとんどないため,富岡町及び周辺自治体住民にとって,いわき市まで出掛けずに食品や日用品等を入手することができる本施設は便利である。 もっとも,本施設の周辺には建物の取壊しも行われないまま放置されている飲食店や娯楽施設等が点在するなど,近隣の状況とのギャップが目立つ現状である(同期日の時点)。 平成30年6月24日,来場者数が100万人を突破した。 (甲C312,丙C458~460,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)健康調査等福島県が実施した県民健康調査における,放射線業務従事経験者を除く累計約46万500人に係る本件事故後約4か月間の外部被ばく線量推計結果は,県北地区では約87%,県中地区では約92%が2mSv未満となり(1mSv未満はそれぞれ約20%,約5 従事経験者を除く累計約46万500人に係る本件事故後約4か月間の外部被ばく線量推計結果は,県北地区では約87%,県中地区では約92%が2mSv未満となり(1mSv未満はそれぞれ約20%,約51%),県南地区は約88%,会津・南会津地区は99%以上,相双地区は約77%,いわき地区は約99%以上が1mSv未満となった。この結果を踏まえて,県は,平成30年3月31日,これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていないことから,4か月間の外部被ばく線量推計値ではあるが,「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価した。 福島県が平成30年7月に実施したホールボディカウンターの検査結果によれば,1378人全員について,預託実効線量(体内から受けると思われる内部被曝線量について,成人で50年間,子供で70歳までの累積線量を表したもの)は,健康に影響が及ぶ数値ではないとされた。 福島県では,本件事故を踏まえ,子供たちの健康を長期的に見守るため,3月11日時点で0歳から18歳までであった県民を対象に甲状腺(超音波)検査を実施している。 (丙C367,368,486) 避難及び帰還の状況福島県の推計によれば,3月15日時点で,県内からの避難者総数(強制避難者,自主的避難者の双方を含み,県内への避難,県外への避難の双方を含むが,自主的避難者数は主に県内避難所へ避難した人数。)は10万2648人,うち避難指示等対象区域からの強制避難者が6万2392人,福島県内の避難指示等対象区域外からの自主的避難者(本件地震・本件津波による避難者を含む。)が4万0256人(39.1%)であった。その時点で,人口に占める自主的避難者の割合が高かったのは,相馬市の11.8%(4457人),国見 の自主的避難者(本件地震・本件津波による避難者を含む。)が4万0256人(39.1%)であった。その時点で,人口に占める自主的避難者の割合が高かったのは,相馬市の11.8%(4457人),国見町の9.8%(986人),いわき市の4.5%(1万5377人)等であり,自主的避難者の人数が多かったのは,いわき市の1万5377人(人口比4.5%),郡山市の5068人(人口比1. 5%),福島市の3234人(人口比1.1%)等であった。 自主的避難者の数は,3月15日から4月22日にかけては一旦減少を示したものの,その後また増加に転じ,9月22日時点で最大5万0327人であった。 福島県内からの避難者総数は,平成24年5月の16万4865人をピークとして,その後減少を続け,平成28年11月時点で8万4289人となっている。 平成28年10月24日時点で,強制避難者を除く福島県内からの自主的避難者は約2万9000人程度である。 避難指示が解除された旧避難指示等対象区域については,順次,帰還者の受入れが進んでいるが,いまだ多数の者が引き続き避難を継続している。 その一部が旧緊急時避難準備区域(9月30日解除)である広野町では,3月11日時点での人口5490人(1989世帯)に対 して,平成29年1月5日時点での帰還者は2897人(52.8%),令和元年5月31日時点の町民居住人口は4197人(約4分の3)にとどまっている。(甲C316の1,2)村の一部が旧居住制限区域(平成26年10月1日避難指示解除準備区域に再編,平成28年6月14日解除),旧避難指示解除準備区域(平成26年10月1日解除),大半が旧緊急時避難準備区域(9月30日解除)である川内村では,3月11日時点での人口3038人に対して,平成29 ,平成28年6月14日解除),旧避難指示解除準備区域(平成26年10月1日解除),大半が旧緊急時避難準備区域(9月30日解除)である川内村では,3月11日時点での人口3038人に対して,平成29年1月1日時点で31.38%の者がなお避難しており,帰還者は1878人(61.8%)にとどまっている。(甲C281-3,4)市の一部(福島第一原発から20km圏内)が旧避難指示解除準備区域(平成26年4月1日解除),一部が旧緊急時避難準備区域(9月30日解除),その余は自主的避難等対象区域である田村市では,3月11日時点での人口4万1662人(うち旧避難指示解除準備区域人口380人,旧緊急時避難準備区域人口4117人)に対して,平成28年12月31日時点での避難者は874人,平成30年10月31日時点での避難者は313人であり,旧避難指示解除準備区域内でみると,同日時点で,帰還率は79.9%と8割弱にとどまっている。(甲C273)市の一部が帰還困難区域,一部が旧居住制限区域,旧避難指示解除準備区域(平成28年7月12日解除),一部が旧緊急時避難準備区域(9月30日解除),その余が旧一時避難要請区域(4月22日解除)である南相馬市では,3月11日時点での人口7万1561人(小高区1万2842人,原町区4万7116人,鹿島区1万1603人)に対し,平成24年11月22日時点で4万8872人(うち鹿島区は1万3775人と増加しているが,これは,同年5 月28日以降,同区内に建設された仮設住宅への入居が開始されるなど,他の地域からの避難者が含まれていることが要因と考えられている。)と減少し,その後,平成29年3月2日時点で5万6512人(小高区1198人(帰還率9.3%。帰還困難区域旧居住者含む。),原町区4万31 域からの避難者が含まれていることが要因と考えられている。)と減少し,その後,平成29年3月2日時点で5万6512人(小高区1198人(帰還率9.3%。帰還困難区域旧居住者含む。),原町区4万3120人(帰還率91.5%。小高区などからの避難者受入れ等を含む。),鹿島区1万2194人(帰還率105.1%。小高区,原町区などからの避難者受入れ等を含む。))と若干持ち直したが,平成30年10月31日時点でも帰還率は約90%(人口は本件事故時点との比較で約84%)にとどまっている。 小高区及び原町区の旧避難指示区域内でみると,平成28年7月12日に解除されるまで0人だった小高区及び原町区の居住人口は,解除以降徐々に増えていき,平成30年12月31日時点では,小高区の居住人口は3076人(居住率約38%),原町区の居住人口は490人(居住率約65%)となった。 (丙C274,330の1,374,404,519)町の大半が旧避難指示解除準備区域(平成27年9月5日解除)である楢葉町では,3月11日時点での人口8011人に対して,平成27年4月30日時点での居住人口は人口の0.2%の15人にすぎなかった。その後徐々に帰還者は増えているが,平成29年1月4日時点での帰還者は767人(帰還率10.42%),平成30年10月31日時点の町内居住率は約50.9%に当たる3560人(1809世帯)まで回復したにすぎない。(甲C276の1,2,丙C231)村の一部が帰還困難区域,一部が旧居住制限区域(平成28年6月12日解除),大半が旧避難指示解除準備区域(平成28年6月12日解除)である葛尾村では,3月11日時点での人口1567人 に対して,平成28年12月1日時点での帰還者は102人(帰還率6.5%),平成30年12月1日 区域(平成28年6月12日解除)である葛尾村では,3月11日時点での人口1567人 に対して,平成28年12月1日時点での帰還者は102人(帰還率6.5%),平成30年12月1日時点(人口1418人)での帰還者は265人(県内外の避難者数は1079人)にとどまっている。(甲C261,279)町の一部が帰還困難区域,一部が旧居住制限区域(平成29年4月1日解除),一部が旧避難指示解除準備区域(同日解除)である富岡町では,3月11日時点での人口1万5960人に対して,平成29年10月14日の報道によれば,帰還率は2.6%(避難指示解除対象者中)とされ,平成30年12月1日時点で,町内居住者は826人(586世帯)にとどまっている一方,県内外への避難者はなお1万2240人(6036世帯)に及んでいる。富岡町にはイの商業施設「さくらモールとみおか」があるところ,平成29年8月30日の新聞報道によれば,平日は除染や原発の作業員らで賑わうものの,土曜日の昼は人がまばらであるとされる。一般にこうした施設のフードコートは周辺住民で賑わう週末に混雑するが,この施設では,除染や解体事業等に携わる作業員等により賑わう平日のランチタイムが繁忙時間となっている(令和元年5月27日の当審における現地進行協議期日の時点)。(甲C257,258,277の2,312,丙C492)町の過半が帰還困難区域,一部が旧居住制限区域(平成29年3月31日解除),一部が旧避難指示解除準備区域(同日解除)である浪江町では,3月11日時点での人口2万1542人(7766世帯)に対して,平成29年5月31日時点の人口は1万8256人(6950世帯)であり,同時点の居住人口は234人(165世帯)にすぎない。その後,居住人口は徐々に増加しているものの 2人(7766世帯)に対して,平成29年5月31日時点の人口は1万8256人(6950世帯)であり,同時点の居住人口は234人(165世帯)にすぎない。その後,居住人口は徐々に増加しているものの,平成29年10月14日の報道によれば,帰還率は2.4%(避難 指示解除対象者中)とされ,平成30年10月末時点で人口1万7699人(6894世帯)中,居住人口は853人(561世帯)にとどまっており,平成30年10月31日時点で,避難者数は県内外を合計して,なお2万0535人に上り,帰還率は4.2%(853名)にすぎない。(甲C258,278の1~3)富岡町と浪江町は,いずれも,平成29年3月,4月に居住制限区域及び避難指示解除準備区域が解除されたものの,6年半の間に避難先で家を買ったり,就職したり,子供が進学したり等様々な理由で,若い世代を中心に帰還率は上がらないと分析されている(甲C257)。 村の一部が帰還困難区域,過半が旧居住制限区域(平成29年3月31日解除),一部が旧避難指示解除準備区域(同日解除)である飯舘村では,3月11日時点での人口6509人に対して,10月1日時点で避難者数が6164人に上り,平成27年時点では人口41人,平成29年10月14日の報道によれば,帰還率は8.5%(避難指示解除対象者中)とされ,平成30年11月1日時点で避難者はなお4775人,村内居住者は937人にとどまっている(甲C258,262,280の1,2,295,丙C504,510)。 川俣町では,3月11日時点での人口1252人に対して,平成29年10月14日時点で,旧居住制限区域の山木屋地区の帰還率は24.5%であり,平成30年11月1日時点での避難者は,山木屋地区で714人,それ以外で198人,合計912人で 52人に対して,平成29年10月14日時点で,旧居住制限区域の山木屋地区の帰還率は24.5%であり,平成30年11月1日時点での避難者は,山木屋地区で714人,それ以外で198人,合計912人である(甲C254,258,275,278の2,3)。 2 グループごとの検討前記第1の7のとおり,原審口頭弁論終結日(平成29年3月21日)以降,避難指示区域のうち,平成29年3月31日から4月1日 にかけて,飯舘村,浪江町,川俣町,富岡町の居住制限区域,避難指示解除準備区域の設定が解除され,平成31年4月10日,大熊町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域の設定が解除された。また,当審口頭弁論終結後である令和2年3月4日には双葉町の避難指示解除準備区域全て及び帰還困難区域の一部が,同月5日には大熊町の,同月10日には富岡町の,いずれも帰還困難区域の一部が,それぞれ解除予定である。 以上を前提にすると,当審における一律請求についても,原審と同様に,政府による避難指示区域等に沿って分類可能な,①帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域,②旧居住制限区域(大熊町を除く。),③旧避難指示解除準備区域(大熊町,双葉町を除く。),④旧特定避難勧奨地点,⑤旧緊急時避難準備区域及び⑥旧一時避難要請区域の六つ(なお,本件訴訟には,旧居住地が旧屋内退避区域(解除後に緊急時避難準備区域に設定された地域を除く。)である一審原告はいない。),中間指針等に沿って分類可能な,⑦自主的避難等対象区域及び⑧県南地域及び宮城県丸森町の二つ,並びに⑨上記以外の地域の合計九つのグループ(このうち⑨については更に地域ごとに検討する。)に分類して判断するのが相当である。 以下,この各グループごとに,本件事故と相当因果関係のあ 丸森町の二つ,並びに⑨上記以外の地域の合計九つのグループ(このうち⑨については更に地域ごとに検討する。)に分類して判断するのが相当である。 以下,この各グループごとに,本件事故と相当因果関係のある損害について検討する。 なお,一審被告らの予見可能性や結果回避可能性等を判断する際に後知恵バイアスを排除することが重要であることと同様に,一審原告らの受けた損害を検討する際に後知恵バイアスを排除することも重要であるから,ある地点の空間線量率等が事後的に判明し,それによって健康被害を受ける可能性や程度等が明らかとなったからといって,直ちに,当時同地点に居住していた一審原告がそれらの情報に基づく 客観的なリスクを認識できたはずであるという前提に立つことは相当でない。以下,各グループごとに,各地点における当時の空間線量率を摘示するものの,これは,あくまでも,上記のような意味での後知恵バイアスを排除して損害額を評価する際の一事情としているにすぎない。 3 旧居住地が帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域(以下「帰還困難区域等」という。)である一審原告らについて認定事実ア帰還困難区域の概要帰還困難区域は,旧避難区域及び旧計画的避難区域のうち,長期間,具体的には5年間を経過してもなお,年間積算線量が20mSvを下回らないおそれのある,平成23年12月26日時点で年間積算線量が50mSv超の地域であり,南相馬市の一部(平成24年4月16日再編),飯舘村の一部(平成24年7月17日再編),大熊町の過半(平成24年12月10日再編),葛尾村の一部(平成25年3月22日再編),富岡町の一部(平成25年3月25日再編),浪江町の過半(平成25年4月1日再編),双葉町の大半(平成25年5月 熊町の過半(平成24年12月10日再編),葛尾村の一部(平成25年3月22日再編),富岡町の一部(平成25年3月25日再編),浪江町の過半(平成25年4月1日再編),双葉町の大半(平成25年5月28日再編)が設定されている。 帰還困難区域については,本件事故からおよそ9年間を経た現時点まで避難指示が解除されたことはなく,令和2年3月4日ないし10日に解除が予定されている双葉町,大熊町及び富岡町の一部区域も,JR常磐線の線路,双葉駅(双葉町),大野駅(大熊町)及び夜ノ森駅(富岡町)の駅舎並びに周辺の道路等に限定されている(丙C539~542)。 帰還困難区域には依然避難指示解除の見通しが立っていない区域も多く,「復興五輪」との位置付けがされている2020年東京オリンピックの聖火リレーが,平成31年4月20日に再開したナショナルトレーニングセンターである「Jヴィレッジ」をスタート地点とし,上記解除予定のJR常磐線の各駅周辺がルートの一部として設定されてはいるものの,なお「復興五輪」という言葉に実感が湧かない旧居住者も多いのが現状である(丙C545,当裁判所に顕著な事実,弁論の全趣旨)。 イ大熊町の旧居住制限区域並びに大熊町の旧避難指示解除準備区域及び双葉町の避難指示解除準備区域の概要大熊町及び双葉町は,町の大半(人口の96%の居住していた区域)が帰還困難区域であって,人口,主要インフラ及び生活関連サービスの拠点が帰還困難区域に集中していたため,大熊町の旧居住制限区域及び旧避難指示解除準備区域がいずれも解除済みであり,双葉町の避難指示解除準備区域が令和2年3月4日に解除予定であっても,帰還困難区域の避難指示が解除されない限り住民の帰還は現実的に困難である。中間指針第四次追補においても帰還困難区域と同様に り,双葉町の避難指示解除準備区域が令和2年3月4日に解除予定であっても,帰還困難区域の避難指示が解除されない限り住民の帰還は現実的に困難である。中間指針第四次追補においても帰還困難区域と同様に扱われており(前記第,自主賠償基準においても同様である(前記第2の5。 したがって,これらの地域は帰還困難区域と同様に扱うのが相当である。 ウ帰還困難区域等旧居住者の受けた被害帰還困難区域等を旧居住地とする一審原告らについて,各一審原告の受けた被害はそれぞれの状況に応じて様々であるが,おおむね,次のような被害を被っていると認められる。 居住・移転の自由の制限帰還困難区域においては,区域境界に物理的な防護措置が実施され,基本的には立入りが禁止されており,一時立入りを実施する場合には,スクリーニングを確実に実施し,個人線量管理や防護装備の着用が徹底されるなど,様々な制限がある(原判決が引用する証拠のほか,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)。 帰還困難区域等の大半は旧警戒区域であり,そうでない区域も避難区域又は計画的避難区域であった区域であって,強制避難の対象であったため,この区域の一審原告らの多くは,本件事故が起きた3月11日頃に取るものも取り敢えず避難したまま自宅に帰ることができていなかったり,自宅を避難した当時のまま放置せざるを得なかったりといった状況が続いている(一審原告H-111,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)。 原災法20条3項に基づいて設定された避難区域,計画的避難区域,避難指示区域への立入りには罰則はないが,原災法(平成24年法律第47号による改正前のもの)28条2項,災害対策基本法63条1項に基づいて設定された警戒区域への立入りは,10万円以下の罰金 難区域,避難指示区域への立入りには罰則はないが,原災法(平成24年法律第47号による改正前のもの)28条2項,災害対策基本法63条1項に基づいて設定された警戒区域への立入りは,10万円以下の罰金又は拘留という刑事罰をもって禁止されていた(災害対策基本法116条2号)。 このように,帰還困難区域等に生活の本拠を有していた一審原告らは,罰則の有無にかかわらず,生活の本拠において居住を継続する権利(居住及び移転の自由)を制約されたものである。 旧居住地の汚染 帰還困難区域は,平成23年12月26日時点において空間線量率が50mSv/yを超える地域であり,社会システム工学者である沢野伸浩が平成25年11月19日第8次航空機モニタリングの結果を計算処理した結果によれば,平成25年11月19日時点においても,双葉町において最大42.23μSv/h(年間追加被曝線量は222.05mSv/y相当。 μ Sv/hの数値から0.04を引いて0.19で割り,小数点以下3桁を四捨五入する簡易な換算方式(1日のうち屋外に8時間,屋内(遮蔽効果(0.4倍)のある木造家屋)に16時間滞在するという生活パターンを仮定。甲B97参照)で計算したもの。以下,同様の換算方式による年間追加被曝線量相当値を括弧内に表記する。),浪江町において最大約39.96μSv/h(210.11mSv/y相当),大熊町において最大約37.04μ Sv/h(194.74mSv/y相当)といった,100mSv/yを超える空間線量率が現れていた。 このような放射性物質による旧居住地の汚染は,単に旧居住地の土地建物の経済的価値を毀損しているだけでなく,旧居住地への帰還を困難にさせて,帰還困難区域旧居住者に多大な精神的苦痛を与え続けているものというべきである。 質による旧居住地の汚染は,単に旧居住地の土地建物の経済的価値を毀損しているだけでなく,旧居住地への帰還を困難にさせて,帰還困難区域旧居住者に多大な精神的苦痛を与え続けているものというべきである。 日常生活の阻害帰還困難区域等に居住していた一審原告らは全員が避難を強いられたところ,自宅以外での生活を長期間余儀なくされ,正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害された。 一審原告らの中には,いまだ仮設住宅等における避難生活を強いられている者もいるほか,新たに住居を構えた一審原告らにおいても,生活の糧となる生業の変更を余儀なくされるなど, 避難前と同様の日常生活が回復できているとはいえず,原告らの属性にかかわらず,日常生活の阻害は長期化しているものといえる。 長期間の設定による今後の生活の見通しに対する不安,帰還困難による不安本件事故から6か月が経過した後の平成23年10月1日時点においても,避難区域・警戒区域(飯舘村及び南相馬市の一部の帰還困難区域においては計画的避難区域)が解除されず,避難指示区域の見直しまで今後の生活の見通しが立たない不安が増大する状況にあり,平成23年12月16日から平成25年8月8日までの間に避難指示区域が見直された後も,帰還困難区域等として長期間にわたり帰還が不可能な状況となったことによる不安が継続した。そして,本件事故から約9年間が経過した今なお,JR常磐線の沿線のごく一部の地域を除き帰還困難区域の避難指示の解除がいつされるか不透明な状況であり,帰還できる日を待ち望む者もいれば,もはや帰還することに期待を寄せられる状況ではなくなった者もいるなど,不安定な状況を強いられている。一審原告らの被った精神的苦痛は,時の経過によっても容易に癒やされず,将来的な見通しが 者もいれば,もはや帰還することに期待を寄せられる状況ではなくなった者もいるなど,不安定な状況を強いられている。一審原告らの被った精神的苦痛は,時の経過によっても容易に癒やされず,将来的な見通しが立たず人生設計の建てようがない状況が長期化することによって,むしろ増大した側面もあるというべきである。 生活費の増加また,帰還困難区域等からの避難者は,避難生活によって多かれ少なかれ生活費が増加したと推認されるところ,個別に相当因果関係の立証が可能なものについては積極損害として別途賠償されるべきであり,現に一審被告東電により賠償がされて いるものの,個別に相当因果関係の立証が困難なものも多数発生していると推認される。したがって,このことは慰謝料の増額要素として考慮するのが相当である。なお,原賠審による全中間指針作成に係る議論においても,生活費の増加については精神的損害に対する賠償額を算定する際に加味することとされたことについては前示(前記第2の6)のとおりである。 ふるさとの喪失一個人にとって,その居住地は,単にそこで生活をするというだけではなく,その地において様々な事や物を享受したり,コミュニティにおける他人との交流を深めたりしながら,人格を形成していく基盤でもあるというべきであって,第5節第2の3にも前示したとおり,基本的な社会的インフラや生活の糧を取得する手段にとどまらず,家庭・地域コミュニティを育む物理的・社会的諸要素,周囲の環境・自然,帰るべき地・心の拠り所となる地・思い出の地等としての「ふるさと」としての居住地の持つ意味合いなどを考慮に入れて,一審原告らの受けた精神的損害を評価すべきである。 そうすると,帰還困難区域等の一審原告らにおいては,極めて限定された区域を除き,本件事故から9年 しての居住地の持つ意味合いなどを考慮に入れて,一審原告らの受けた精神的損害を評価すべきである。 そうすると,帰還困難区域等の一審原告らにおいては,極めて限定された区域を除き,本件事故から9年を経ようとする今もなお帰還困難区域の指示解除の目途さえ立っていない状況であること(なお,一審原告H-65,518は,平成25年10月31日に帰還困難区域に設定された旧居住地所在の旧自宅に測定に来た放射線測定士から「ここには100年帰れません。」と言われた旨陳述している(甲H65の1の3)。)に鑑みて,「生存と人格形成の基盤」を一個人の人生のスパンで見ればほぼ不可逆的に破壊・毀損されたというべきである。 検討ア評価(損害額)のとおり,帰還困難区域等を旧居住地とする一審原告らは,生活の本拠であった旧居住地から強制的に転居させられ,長期にわたる不自由な避難生活の継続を余儀なくされるとともに,旧居住地の状況把握さえままならないままこれを放置せざるを得ない状況が続き,本件事故から9年間近くを経た今なお旧居住地が元どおりになることに対して期待を寄せることができない状況でいるのであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①強制的に転居させられた点について150万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについて月額10万円,③「ふるさと喪失」について600万円と評価すべきである。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,後記のとおり,旧居住地が旧居住制限区域及び旧避難指示解除準備区域であった一審原告らについて ,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,後記のとおり,旧居住地が旧居住制限区域及び旧避難指示解除準備区域であった一審原告らについては,遅くとも平成30年3月31日まで避難生活の継続が強いられていたとみるべきであることに鑑みて,同日が属する月である平成30年3月とし,その翌月以降は,さらに避難生活の継続が強いられており,ごく一部の区域を除いて指示の解除の目途さえ立っていない状況であることから,もはや帰るべき「ふるさと」を喪失したとみて「ふるさと喪失」損害に係る慰謝料において考慮することが相当である。したがって,避難生活の継続が強いられていた期間は,平成23年3月か ら平成30年3月までの85か月間であり,その点についての慰謝料額は850万円と評価すべきである。 上記③の「ふるさと喪失」損害については,前記(第5節第1「ふるさと喪失」一審原告らに限らず,それ以外の一審原告らにおいても,「平穏生活権侵害に基づく損害」に含まれるものとして「ふるさと喪失」損害を主張しているものと整理すべきであるところ,「ふるさと喪失」一審原告らについてみれば,一審原告H-6,一審原告H-88,89,一審原告H-383~388の旧居住地は双葉町の,一審原告H-126の旧居住地は大熊町の,一審原告H-111の旧居住地は富岡町の,一審原告H-65,518の旧居住地は浪江町の,それぞれ帰還困難区域である。また,その他の一審原告らは,上記4町のほか,南相馬市小高区及び飯舘村の各帰還困難区域(双葉町の避難指示解除準備区域である一審原告1人((H-122))を含む。)を旧居住地とする。 帰還困難区域では,上記一個人の人生のスパンで見ればほぼ不可逆的に「生存と人格形成の基盤」を破壊 (双葉町の避難指示解除準備区域である一審原告1人((H-122))を含む。)を旧居住地とする。 帰還困難区域では,上記一個人の人生のスパンで見ればほぼ不可逆的に「生存と人格形成の基盤」を破壊・毀損されたというべきであって,その損害は非常に重大であるというべきところ,前記1に認定した各事実,原審に現れた関係各証拠に,当審に現れた関係各証拠(甲C274,285~292,295,296,310,314,315,323~326,丙C329~331,371,372,374,377~385,390~402,404,450~453,461,479~483,492~495,497,499~501,504~508,510~512,514,518,519,538(いずれも枝番を含む。),甲H65の1の3,甲H111の1の3,一審原告H- 65,518(当審),一審原告H-111(当審),当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)も合わせて認定することができる,一審原告らの旧居住地である双葉町,大熊町,富岡町,浪江町,南相馬市小高区及び飯舘村の状況や,一審原告らがほぼ不可逆的に帰還ができない状態に置かれたことによる様々な被害等を考慮した上で,積極損害(避難費用など),消極損害(営業損害など),生命・身体的損害(本件事故に起因する疾病・自死による損害など),財物損害(不動産の損害など)は別途賠償されること,「生存と人格形成の基盤」が破壊・毀損されたことによって平成30年3月まで避難継続を余儀なくされたことについての慰謝料は上記②で評価されていること,他方で,同年4月以降,「生存と人格形成の基盤」が破壊・毀損されたことによる避難生活の継続についてはこの「ふるさと喪失」損害によって評価すべきであること,一審被告東電の義務違反の 価されていること,他方で,同年4月以降,「生存と人格形成の基盤」が破壊・毀損されたことによる避難生活の継続についてはこの「ふるさと喪失」損害によって評価すべきであること,一審被告東電の義務違反の程度は著しいこと(前記第3節第2の8),その他,一切の事情を総合的に考慮して,「ふるさと喪失」一審原告らに限られず,このグループに属する全ての一審原告らについて,「ふるさと喪失」損害としては上記のとおり600万円を認めるのが相当である。 イ一審原告らに対する具体的な認容額全般上記アによれば,旧居住地が帰還困難区域等である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として合計1600万円の支払がなされるべきであるところ,「中間指針等による賠償額」である合計1450万円(自主賠償基準)を超える150万円が本訴において認容すべき額となる(承継一審原告らについては,各死亡一審原告(別紙7理由一覧表の「死亡年月日」欄に 年月日の記載がある者)に認容すべき額に同表の各「承継割合」欄記載の数値を乗じた額となる。以下の他グループの承継一審原告らについても同じである。)。 なお,原判決は,平穏生活権侵害と「ふるさと喪失」損害を区別してそれぞれについて認めるべき額を定め,「中間指針等による賠償額」もその両者を区別して定めているものとして,それぞれ個別に中間指針等を超える額を算出しているが(原判決196頁4行目から198頁23行目まで),前示(第5節第1の3「訴訟物の整理」)のとおり,平穏生活権侵害による損害賠償請求権も「ふるさと喪失」損害に係る賠償請求権も訴訟物及び精神的損害に対する慰謝料である点は同一であり,当事者間において精神的損害の中でこれらを特に区別して取り扱うことが明示ないし黙示に合意されていたような事実はうかが 」損害に係る賠償請求権も訴訟物及び精神的損害に対する慰謝料である点は同一であり,当事者間において精神的損害の中でこれらを特に区別して取り扱うことが明示ないし黙示に合意されていたような事実はうかがわれないから,上記のとおり,名目にかかわらずそれらを一体のものとして「中間指針等による賠償額」を超える額を算出すべきである(以下同じ。)。 旧居住地が帰還困難区域等である提訴時一審原告は,別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「帰還困難区域」,「双葉町」又は「大熊町」と記載のある61人(うち,旧居住地が双葉町の避難指示解除準備区域である者は1人,大熊町の旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域である者は1人。),そこから取下一審原告を除いた一審原告は54人であり,その中の死亡一審原告を承継した承継一審原告は,同表の当該死亡一審原告の行の下に続けて同人の原告番号に枝番を付した番号で表示した者である(承継一審原告については,以下の他グループにおいても同表に上記の要領で記載する。)。 一審原告H-201について一審原告H-201の旧居住地について,一審原告らは,浪江町の帰還困難区域であると主張するのに対し,一審被告東電は,同一審原告が一審被告東電に対し,裁判外の直接請求において,被災時の住所を「(住所省略)」と自ら記載していることなどから,同一審原告の旧居住地は南相馬市原町区であり避難指示区分は旧緊急時避難準備区域であると主張している。 この点,原判決は,同一審原告の住民票所在地は浪江町であり(甲H201の2),その陳述書(甲H201の1)でも,旧居住地は浪江町であり(1頁),「自宅又は家族が一軒家を所有」しており(4頁。なお,上記南相馬市の住所はアパート(以下「本件アパート」という。)である。),旧「 の陳述書(甲H201の1)でも,旧居住地は浪江町であり(1頁),「自宅又は家族が一軒家を所有」しており(4頁。なお,上記南相馬市の住所はアパート(以下「本件アパート」という。)である。),旧「警戒区域」,現「帰還困難区域」である(6頁),「自宅は井戸水だった」(11頁),「帰還困難区域なので,帰れないんだろうと思う。不安」(19頁)などと記載していること,「仕事の都合で南相馬市でアパートを借り,実家のある浪江町と行き来して生活していた」と陳述したこと(平成29年3月21日原審第23回口頭弁論調書)などから,同一審原告の旧居住地は浪江町の帰還困難区域であったとしている(原判決199頁16行目から200頁9行目まで)。 しかしながら,同一審原告は,過去に自ら旧居住地を南相馬市と記入して一審被告東電に賠償請求をしたことがあるのに加え(丙H201の1),本件アパートを賃借したのは平成11年2月16日(賃貸期間は同月18日から2年間)のことであって(丙H201の2),その後2年ごとに更新を繰り返し本件事故までに12年以上が経過していたこと,本件事故前の平成2 3年1~2月の本件アパートに係る電話料金は両月とも5625円,ガス料金は1月分7941円,2月分1万0888円,電気料金は1月分4357円(使用量205kWh),2月分4175円(使用量197kWh)であって,同一審原告はこれらをそれぞれ支払い,その請求書をいずれも本件アパートで受領していたこと(丙H201の3~5,弁論の全趣旨)などによれば,同一審原告の生活の本拠は本件アパートであったというべきである。 したがって,一審原告(H-201)の旧居住地は,浪江町の帰還困難区域ではなく,本件アパートの所在地となるため,避難指示区分は旧緊急時避難準備区域(後 は本件アパートであったというべきである。 したがって,一審原告(H-201)の旧居住地は,浪江町の帰還困難区域ではなく,本件アパートの所在地となるため,避難指示区分は旧緊急時避難準備区域(後記6)と認める(丙C8,弁論の全趣旨)。 一審原告(亡)(T-1370)について原判決は,旧居住地が富岡町の帰還困難区域である一審原告(亡)(T-1370)について,同人は平成25年5月16日に死亡したため,平成26年3~4月分の「中間指針等による賠償額」を超える損害は発生していないとしている。しかしながら,前示(前記第2章第2節第3)のとおり,避難生活の継続を余儀なくされたことに係る損害は,当審においても月額10万円とした上で算定しているものの,その都度発生する継続的不法行為による損害ではなく,あくまでも過去の一回的事象(本件事故)によって,そのような期間避難生活の継続を余儀なくされたという損害であって,本件事故によって直ちに発生していたものとみるべきであるから,同損害の算定上終期とした平成30年3月よりも前に死亡したとしても,その分を減額すべきではない。したがって,同人の損害についても,合計1 600万円と認め,「中間指針等による賠償額」である合計1450万円(自主賠償基準)を超える150万円が本訴において認容すべき額となる(なお,一審被告東電は,一審原告(亡)T-1370に関して,同人の死亡を考慮に入れず,中間指針等に従って算出される賠償額全額の支払をしていることが認められる(丙C548)。)。 もっとも,一審原告(亡)T-1370は平成25年5月16日に死亡している関係で,その請求額は(弁護士費用を含めて)144万0645円であるため(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄参照),実際の認容額は同 審原告(亡)T-1370は平成25年5月16日に死亡している関係で,その請求額は(弁護士費用を含めて)144万0645円であるため(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄参照),実際の認容額は同額となる。 4 旧居住地が旧居住制限区域である一審原告ら(旧居住地が大熊町の旧居住制限区域である一審原告らを除く。以下,本項において同じ。)について認定事実ア旧居住制限区域の概要旧居住制限区域は,旧避難区域及び旧計画的避難区域のうち,年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり,住民の被曝線量を低減する観点から引き続き避難を継続することが求められる地域であり,除染や放射性物質の自然減衰などによって,年間積算線量が20mSv以下であることが確実であることが確認された場合には避難指示解除準備区域に移行することが予定されていた。 旧居住制限区域においては,住民の一時帰宅(ただし,宿泊は禁止されている。),主要道路における通過交通,公共目的の立入りなどは可能であったが,同区域内での宿泊,同区域外からの集客を主とする事業(宿泊業,観光業など),同区域内での宿泊者の 存在を前提に実施される事業は原則として禁止され,不要不急の立入りは控え,用事が終わったら速やかに退出することが求められていた(丙C34)。 早いところでは平成27年9月5日に川内村の居住制限区域が解除され(もっとも,同区域は避難指示解除準備区域に設定された。),遅くとも平成29年3月31日から4月1日にかけて,飯舘村,浪江町,川俣町,富岡町の居住制限区域がそれぞれ解除されたため(なお,大熊町の居住制限区域は平成31年4月10日に解除になっている。),当審口頭弁論終結時(令和2年2月20日)までに,居住制限区域は全て解除となっている。 一審原告H- れぞれ解除されたため(なお,大熊町の居住制限区域は平成31年4月10日に解除になっている。),当審口頭弁論終結時(令和2年2月20日)までに,居住制限区域は全て解除となっている。 一審原告H-2の旧居住地((住所省略))は居住制限区域に設定され,平成29年3月31日に解除となったところ,令和元年5月27日の時点で,空間線量率は,場所によって0.2~1. 2μ Sv/h(0.84~6.11mSv/y相当)程度で推移している。本件事故前には毎年2000kg程度の収穫があった旧居住地の田には水入れをすることができず,ただ農地が痛まないように耕されるのみの状態の田畑が広がっている。立野地区は春の筍が良く採れ,漁業が盛んな請戸地区の住民にも好評だったが,解除後の今なお食べられない。浪江町には1000人弱しか帰還しておらず(平成30年10月31日時点での帰還率は4. 2%(853名)),JR浪江駅周辺の町内は,本件事故前はショッピングセンターを中心に賑わいを見せていたが,令和元年5月27日の時点では,上記ショッピングセンターの再開の見通しは立っておらず,駅前商店街も開いている店はほとんどない。町役場に隣接する仮設のマルシェが開いて約10店舗が入っているほ かは,コンビニ等が点在するのみで,かつての賑わいからは程遠い。毎年恒例の夏祭りや町民による手作りイベント「十日市」も,本件事故以降,避難指示が解除された平成29年に7年ぶりに開催されるまでの間,浪江町での開催はできなくなった。このような町の状況から,一審原告H-2は,本件事故前に営んでいた自動車修理工場の営業をしようにも成り立たず,食材を売る店もほとんどないため,旧居住地に帰還できておらず,帰還の目途も立っていない。(甲C310,丙C480,481,当審における現地進行 んでいた自動車修理工場の営業をしようにも成り立たず,食材を売る店もほとんどないため,旧居住地に帰還できておらず,帰還の目途も立っていない。(甲C310,丙C480,481,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)一審原告H-18の旧居住地((住所省略))は居住制限区域に設定され,平成29年4月1日に解除となったが,約250m以東及び約330m以北は帰還困難区域に位置し,帰還困難区域と居住制限区域を分かつ境界線上のガードレール等のバリケードが物々しい。同一審原告のように,居住地が居住制限区域に設定されていた間に窃盗や獣などにより荒れ放題となった自宅を止む無く取り壊した者は,その隣人等にも多くいるため,令和元年5月27日の時点で,その旧居住地周辺は広大な空き地に民家が点在し,本件事故後の集約により使われなくなった町立富岡第二中学校(前記・荒涼とした風景が広がっている。居住制限区域内にあった墓地(夜ノ森共同墓地)にあった一審原告H-18の夫等の墓は,平成28年に既に現居住地である群馬県高崎市に移しており,同一審原告は,夜ノ森に生まれ育ち骨を埋めるつもりであった夜ノ森という地から離れることを余儀なくされた人生に言いようのない無念さを抱いている。(甲C315,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨) 旧居住地((住所省略),居住制限区域)の旧自宅から歩いて数分のところに大熊町の帰還困難区域との境界のバリケードがある一審原告H-94は,避難指示解除後も近隣住民は殆ど帰っておらず,自らもまだ帰還していないものの(令和元年7月22日の当審における本人尋問の時点),生まれ育った地にいつかは戻りたいという気持ちを持ち続けており,自分が死んだら子供や孫たちはお参りに来てくれないかもしれないという諦めと共に, の(令和元年7月22日の当審における本人尋問の時点),生まれ育った地にいつかは戻りたいという気持ちを持ち続けており,自分が死んだら子供や孫たちはお参りに来てくれないかもしれないという諦めと共に,それでも旧自宅近くにある墓に入るつもりであるなどと,その心中の葛藤を吐露する。(甲H94の1の3,一審原告H-94(当審))イ旧居住制限区域旧居住者の受けた被害旧居住制限区域を旧居住地とする一審原告らについて,各一審原告の受けた被害はそれぞれの状況に応じて様々であるが,帰還困難区域と同様,おおむね,次のような被害を被っていると認められる。 旧居住制限区域においては,上記アのとおり,住民の一時帰宅などは可能であったが,宿泊は禁止され,同区域内への不要不急の立入りは控え,用事が終わったら速やかに退出することが求められるなど,様々な制限があった。 前示のとおり,早い地域では平成27年9月5日に,遅い地域でも平成29年4月1日に,大熊町を除く旧居住制限区域は設定が解除されているものの,避難を余儀なくされた平成23年3月以降,設定がされていた決して短いとはいえない期間に,既に生活の本拠を別の地へ移し,もはやふるさとに戻ることは考えようがない者が多いことは,上記アに認定した各事実,取り分け,設定解除後もなかなか帰還率が上がっていないことや,実際にそこ に旧居住地を有していた一審原告H-2,同H-18,同H-94らの状況を勘案すれば,推認するに難くない。 このように,旧居住制限区域に生活の本拠を有していた一審原告らは,現時点までに既に設定の全てが解除されているとしても,生活の本拠において居住を継続する権利(居住及び移転の自由)を大きく制約された。また,避難生活の継続によって正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく 既に設定の全てが解除されているとしても,生活の本拠において居住を継続する権利(居住及び移転の自由)を大きく制約された。また,避難生活の継続によって正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害され,本件事故以降,今後の生活の見通しが立たない不安が増大する状況にあり,避難指示区域が見直された後も,いつ自宅に戻れるか分からないという不安な状態が継続したこと,空間線量率も安心して居住できるほど低くはないこと,生活費が増加していること,「ふるさと」の少なくとも一部が破壊・毀損されたこと等については,帰還困難区域と同等又はそれに準じるものである。 なお,原判決は,旧居住制限区域に係る「ふるさと喪失」損害について,継続的賠償とは別途の確定的,不可逆的損害が発生しているとは認められないとしてこれを否定している(原判決291頁11行目から293頁9行目まで)。これは,原判決が,「ふるさと喪失」損害を,帰還が社会通念上不能となった時点において,平穏生活権侵害による継続的損害の賠償を終了させ,確定的,不可逆的な損害を定額に包括評価して賠償を終了させることが許されると解した上で,そのような確定的,不可逆的な損害を「ふるさと喪失」損害と位置付けていることから来るものでもあると解されるところ(原判決288頁7行目から289頁13行目まで),当裁判所は,「ふるさと喪失」損害をそのような確定的,不可逆的な損害に限る必然性はなく,あくまでも,一審原告ら主張に係る「ふるさと喪失」損害は,本件事故と相当因果関係のある 「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損であると捉えるべきであると考えるものである(前記第5節第2の1及び2)。したがって,より端的に,そのような意味における「ふるさと喪失」損害が旧居住制限区域について発生しているかを判断す 破壊・毀損であると捉えるべきであると考えるものである(前記第5節第2の1及び2)。したがって,より端的に,そのような意味における「ふるさと喪失」損害が旧居住制限区域について発生しているかを判断すると,前記1で認定した一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況等や,上記アの認定事実等に鑑みれば,旧居住制限区域の一審原告らにおいては,既に全ての避難指示が解除されており,帰還困難区域等よりはその程度が低いとはいえるものの,本件事故から9年を経ようとする今もなお様々な社会インフラ等の状況は本件事故前の状態とは程遠く,帰還率も上がっていない状況であると認められ,一個人の人生のスパンで見れば,「生存と人格形成の基盤」を相当程度破壊・毀損されたというべきである(したがって,ここで生じている「ふるさと喪失」損害は,帰還困難区域等の居住者と同一のものというわけではなく,「ふるさと変容」損害などの呼称がより適切とも考えられないではないが,本件訴訟における一審原告らの主張に鑑み,上記のような理解の下で「ふるさと喪失」損害として取り扱うこととする。この点は後記の旧避難指示解除準備区域についても同様である。)。 検討ア評価(損害額)は,生活の本拠であった旧居住地から強制的に転居させられ,長期にわたる不自由な避難生活の継続を余儀なくされるとともに,一時帰宅は可能であったとしても,空間線量率の高い地域に帰宅することは精神的に容易ではないため,事実上旧居住地の状況把握さえままならず放置せざるを得ない状況が,本件事故から短く ても4年半余り,長いところでは6年余りの間継続した結果,解除から約3年ないし4年半経った現在もなお旧居住地への帰還に踏み切ることができなかったり,既に諦めたりしている者も少なくない状況でいるのであるから,一審原 長いところでは6年余りの間継続した結果,解除から約3年ないし4年半経った現在もなお旧居住地への帰還に踏み切ることができなかったり,既に諦めたりしている者も少なくない状況でいるのであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①強制的に転居させられた点については帰還困難区域と同額である150万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについてやはり帰還困難区域と同額である月額10万円,③「ふるさと喪失」については,150万円と評価すべきである。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,旧居住制限区域の多くが平成29年3月31日から4月1日になってようやく解除されていること,解除後少なくとも1年間は,住民側が帰還するための準備や,当該地域における社会インフラの整備等住民を受け入れる側の準備などが必要であるといえること,中間指針第四次追補は「避難指示等の解除等から相当期間経過後」の「相当期間」を,避難指示区域については1年間を当面の目安としつつ,個別具体的な事情を踏まえ柔軟に判断するものとされイ),一審被告東電による自主賠償基準においては居住制限区域について月額10万円を平成30年3月31日までからすれば,平成30年3月とするのが相当である。したがって,避難生活の継続が強いられていた期間は,平成23年3月から平 成30年3月までの85か月間であり,その点についての慰謝料額は850万円と評価すべきである。 上記③の「ふるさと喪失」損害については,帰還困難区域等のグループと同様,前記(第5喪失」一審原告らに限 0年3月までの85か月間であり,その点についての慰謝料額は850万円と評価すべきである。 上記③の「ふるさと喪失」損害については,帰還困難区域等のグループと同様,前記(第5喪失」一審原告らに限らず,それ以外の一審原告らにおいても,「平穏生活権侵害に基づく損害」に含まれるものとして「ふるさと喪失」損害を主張しているものと整理すべきであるところ,「ふるさと喪失」一審原告らについてみれば,一審原告H-2,236,237,H-82,200,254の旧居住地は浪江町の,一審原告H-18,同H-346,一審原告H-94,433,434,一審原告H-442の旧居住地は富岡町の,それぞれ旧居住制限区域である。また,「ふるさと喪失」一審原告以外の一審原告らは,上記2町の他,南相馬市小高区及び飯舘村の各旧居住制限区域を旧居住地とする。 旧居住制限区域では,ンで見れば相当程度「生存と人格形成の基盤」を破壊・毀損されたというべきであって,その損害は重大であるというべきところ,前記1に認定した,一審原告らの旧居住地である浪江町,富岡町,南相馬市小高区及び飯舘村の各状況,一審原告らが避難指示が解除された今なお帰還することが困難な状況が続いていることなど様々な被害(甲H2の1の4,5,甲H94の1の3,甲H442の1の3,一審原告H-2(当審),一審原告H-94(当審),一審原告H-442(当審),当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)等を考慮した上で,積極損害(避難費用など),消極損害(営業損害など),生命・身体的損害(本件事故に起因する疾病・自死による損害など),財物損害(不動産の損害など)は別 途賠償されること,「生存と人格形成の基盤」が破壊・毀損されたことによって平成30年3月まで避難継続を余儀なくされたことについて による損害など),財物損害(不動産の損害など)は別 途賠償されること,「生存と人格形成の基盤」が破壊・毀損されたことによって平成30年3月まで避難継続を余儀なくされたことについての慰謝料は上記②で評価されていること,他方で,避難指示が解除されて最低でも1年間が経過した同年4月以降もなお「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損が残存していることによる避難生活の継続又は帰還後の生活における諸々の不便・困難さについてはこの「ふるさと喪失」損害によって評価すべきであること,一審被告東電の義務違反の程度は著しいこと(前記第3節第2の8),その他,一切の事情を総合的に考慮して,「ふるさと喪失」一審原告らに限られず,このグループに属する全ての一審原告らについて,「ふるさと喪失」損害として上記のとおり150万円を認めるのが相当である。 イ一審原告らに対する具体的な損害額全般上記アによれば,旧居住地が旧居住制限区域である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として合計1150万円の支払がなされるべきであるところ,「中間指針等による賠償額」である合計850万円(自主賠償基準)を超える300万円が本訴において認容すべき額となる。 旧居住地が旧居住制限区域である提訴時一審原告は,別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「旧居住制限区域」と記載のある58人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は52人である。 一審原告(亡)H-0120について一審原告(亡)H-0120は平成28年2月13日に死亡している関係で,その請求額は325万0689円であるため(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄参照),実際の認容 額は同額となるのとおり300万円が認容すべき額であるところ,後記第6の弁護士費用を加算 は325万0689円であるため(別紙7理由一覧表の「減縮部分請求額」欄参照),実際の認容 額は同額となるのとおり300万円が認容すべき額であるところ,後記第6の弁護士費用を加算した額は330万円であり,一審原告(亡)H-0120の請求額を超える。)。 5 旧居住地が旧避難指示解除準備区域である一審原告ら(旧居住地が大熊町,双葉町の旧避難指示解除準備区域である一審原告らを除く。 以下,本項において同じ。)について認定事実ア旧避難指示解除準備区域の概要旧避難指示解除準備区域は,旧避難区域及び旧計画的避難区域のうち,年間積算線量20mSv以下となることが確実であることが確認された地域である。電気,ガス,上下水道,主要交通網,通信など日常生活に必須なインフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧し,子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗した段階で,県,市町村,住民との十分な協議を踏まえ,避難指示を解除することが予定されていた。 旧避難指示解除準備区域においても,旧居住制限区域とほぼ同様,住民の一時帰宅(ただし,宿泊は禁止されている。),主要道路における通過交通,公共目的の立入りなどは可能であったが,同区域内での宿泊,同区域外からの集客を主とする事業(宿泊業,観光業など),同区域内での宿泊者の存在を前提に実施される事業は原則として禁止されていた。製造業など居住者を対象としない事業や営農・営林については,それぞれ個別の規制に従う必要はあるものの,旧避難指示解除準備区域であることによる制限はされていなかった点等が旧居住制限区域とは異なる。(丙C34) 前示(前記第1の6及び7)のとおり,田村市の一部(平成24年4月1日再編),川内村の一部(同日再編),南相馬市の一部 れていなかった点等が旧居住制限区域とは異なる。(丙C34) 前示(前記第1の6及び7)のとおり,田村市の一部(平成24年4月1日再編),川内村の一部(同日再編),南相馬市の一部(同月16日再編),飯舘村の一部(同年7月17日再編),楢葉町の一部(同年8月10日再編),大熊町の一部(同年12月10日再編),葛尾村の一部(平成25年3月22日再編),富岡町の一部(同年3月25日再編),浪江町の一部(同年4月1日再編),双葉町の一部(同年5月28日再編),川俣町の一部(同年8月8日再編)に設定されていたが,早いところでは平成26年4月1日に田村市都路地区の避難指示解除準備区域が解除され,遅くとも平成29年3月31日から4月1日にかけて,飯舘村,浪江町,川俣町,富岡町の避難指示解除準備区域がそれぞれ解除されたため(なお,大熊町の避難指示解除準備区域は平成31年4月10日に解除になっている。双葉町の避難指示解除準備区域は,令和2年3月4日に解除予定である。),当審口頭弁論終結時(令和2年2月20日)までに,避難指示解除準備区域は,双葉町を除き全て解除となっている。 イ旧避難指示解除準備区域旧居住者の受けた被害旧避難指示解除準備区域を旧居住地とする一審原告らについて,各一審原告の受けた被害はそれぞれの状況に応じて様々であるが,旧居住制限区域と同様,おおむね次のような被害を被っていると認められる。 旧避難指示解除準備区域においては,上記アのとおり,住民の一時帰宅などは可能であったが,区域内での宿泊や,区域外からの集客を主とする事業,区域内での宿泊者の存在を前提に実施される事業等が禁止されるなど,様々な制限があった。 前示のとおり,早い地域では平成26年4月1日に,遅い地域でも平成29年4月1日に する事業,区域内での宿泊者の存在を前提に実施される事業等が禁止されるなど,様々な制限があった。 前示のとおり,早い地域では平成26年4月1日に,遅い地域でも平成29年4月1日に,大熊町及び双葉町を除く旧避難指示解除準備区域は設定が解除されているものの,避難を余儀なくされた平成23年3月以降,設定がされていた決して短いとはいえない期間に,既に生活の本拠を別の地へ移し,もはやふるさとに戻ることは考えようがない者が多いことは,上記1に認定した各事実,取り分け,最初に設定が解除された田村市の都路地区(福島第一原発から20km圏内)でも,その帰還率は,平成30年10月31日時点で79.9%と8割弱にとどまっているなど,設定解除後もなかなか帰還率が上がっていないことや,実際にそこに旧居住地を有していた一審原告らも帰還することに不安や困難を感じて帰還しない者も多く,また,帰還した者においてもとても本件事故前の状況に戻ったというにはほど遠い現状を痛感する生活を送っている(甲H25の1の2,甲H90の1の3,甲H95の1の3,甲H95の2~4,16,24,25,甲H303の1の3,甲H395の1の2,3,一審原告H-25(当審),一審原告H-90(当審),一審原告H-95(当審),一審原告H-303(当審),一審原告H-395(当審))。 このように,旧居住制限区域に生活の本拠を有していた一審原告らは,現時点までに既に設定の全て(双葉町を除く。)が解除されているとしても,生活の本拠において居住を継続する権利(居住及び移転の自由)を大きく制約された。また,避難生活の継続によって正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害され,本件事故以降,今後の生活の見通しが立たない不安が増大する状況にあり,避難指示区域が見直された きく制約された。また,避難生活の継続によって正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害され,本件事故以降,今後の生活の見通しが立たない不安が増大する状況にあり,避難指示区域が見直された後も,いつ自宅に戻れるか分からないという不安な状態が継続したこと,生活費が 増加していること,「ふるさと」の少なくとも一部が破壊・毀損されたこと等については,旧居住制限区域に準じるものである。 なお,原判決は,旧避難指示解除準備区域に係る「ふるさと喪失」損害について,継続的賠償とは別途の確定的,不可逆的損害が発生しているとは認められないとしてこれを否定している(原判決291頁11行目から293頁9行目まで)が,旧居住制限あくまでも,一審原告ら主張に係る「ふるさと喪失」損害は,本件事故と相当因果関係のある「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損であるところ,前記1で認定した一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況等に鑑みれば,旧避難指示解除準備区域の一審原告らにおいては,既に全ての避難指示が解除されており(双葉町を除く。),帰還困難区域等よりはその程度が低いとはいえるものの,本件事故から9年を経ようとする今もなお様々な社会インフラ等は本件事故前の状態までには復帰しておらず,帰還率も上がっていない状況であることなどに鑑みて,「生存と人格形成の基盤」を一個人の人生のスパンで見れば相当程度破壊・毀損されたというべきである。 検討ア評価(損害額)審原告らは,生活の本拠であった旧居住地から強制的に転居させられ,長期にわたる不自由な避難生活の継続を余儀なくされるとともに,一時帰宅は可能であったとしても,空間線量率の高い地域に帰宅することは精神的に容易ではないため,事実上旧居住地の状況把握さえままならず放置せざるを得ない状況が 難生活の継続を余儀なくされるとともに,一時帰宅は可能であったとしても,空間線量率の高い地域に帰宅することは精神的に容易ではないため,事実上旧居住地の状況把握さえままならず放置せざるを得ない状況が,本件事故から短くても3年余り,長いところでは6年余りの間継続した結 果,解除から約3年ないし6年経った現在もなお旧居住地への帰還に踏み切ることができなかったり,既に諦めたりしている者も少なくない状況でいるのであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①強制的に転居させられた点については帰還困難区域と同額である150万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについてやはり帰還困難区域と同額である月額10万円,③「ふるさと喪失」については,100万円と評価すべきである。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,旧避難指示解除準備区域の半分近くが平成29年3月31日から4月1日になってようやく解除されていること,解除後少なくとも1年間は,住民側が帰還するための準備や,当該地域における社会インフラの整備等住民を受け入れる側の準備などが必要であるといえること,全中間指針においても自主賠償基準においても,精神的損害に対する賠償額の算定において,避難指示解除準備区域を居住制限区域と全く同様の扱いとしていることなどからすれば,平成30年3月とするのが相当である。したがって,避難生活の継続が強いられていた期間は,平成23年3月から平成30年3月までの85か月間であり,その点についての慰謝料額は850万円と評価すべきである。 30年3月とするのが相当である。したがって,避難生活の継続が強いられていた期間は,平成23年3月から平成30年3月までの85か月間であり,その点についての慰謝料額は850万円と評価すべきである。 上記③の「ふるさと喪失」損害については,帰還困難区域等のグループと同様,前記(第5喪失」一審原告らに限らず,それ以外の一審原告らにおいても, 「平穏生活権侵害に基づく損害」に含まれるものとして「ふるさと喪失」損害を主張しているものと整理すべきであるところ,「ふるさと喪失」一審原告らについてみれば,「ふるさと喪失」損害を請求している一審原告らのうち,一審原告H-90,一審原告H-202,一審原告H-220及び同H-393の旧居住地は浪江町の,一審原告H-95及び同人が承継した被承継人である亡H-376,一審原告H-149,一審原告H-336の旧居住地は楢葉町の,一審原告H-100が承継した被承継人である亡H-101の旧居住地,一審原告H-302,同H-303,同H-304及び同H-305の旧居住地は南相馬市小高区の,一審原告H-395の旧居住地は葛尾村の,それぞれ旧避難指示解除準備区域である。また,他の一審原告らは,上記4市町村のほか,南相馬市原町区及び田村市都路町の各旧避難指示解除準備区域を旧居住地とする。 旧避難指示解除準備区域生のスパンで見れば相当程度「生存と人格形成の基盤」を破壊・毀損されたというべきであって,その損害は重大であるというべきところ,前記1に認定した,一審原告らの旧居住地である浪江町,楢葉町,南相馬市小高区及び原町区,田村市都路町並びに葛尾村の各状況,一審原告らが避難指示が解除された今なお帰還すに掲記の各証拠,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)等を考慮した上で,積極損害(避難費用 小高区及び原町区,田村市都路町並びに葛尾村の各状況,一審原告らが避難指示が解除された今なお帰還すに掲記の各証拠,当審における現地進行協議等による弁論の全趣旨)等を考慮した上で,積極損害(避難費用など),消極損害(営業損害など),生命・身体的損害(本件事故に起因する疾病・自死による損害など),財物損害(不動産の損害など)は別途賠償されること,「生存と人格形成の基盤」が破壊・毀損されたことによっ て平成30年3月まで避難継続を余儀なくされたことについての慰謝料は上記②で評価されていること,他方で,避難指示が解除されて最低でも1年間が経過した同年4月以降もなお「生存と人格形成の基盤」の破壊・毀損が残存していることによる避難生活の継続又は帰還後の生活における諸々の不便・困難さについてはこの「ふるさと喪失」損害によって評価すべきであること,一審被告東電の義務違反の程度は著しいこと(前記第3節第2の8),その他,一切の事情を総合的に考慮して,「ふるさと喪失」一審原告らに限られず,このグループに属する全ての一審原告らについて,「ふるさと喪失」損害として上記のとおり100万円を認めるのが相当である。 イ一審原告らに対する具体的な損害額上記アによれば,旧居住地が旧避難指示解除準備区域である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として合計1100万円の支払がなされるべきであるところ,「中間指針等による賠償額」である合計850万円(自主賠償基準)を超える250万円が本訴において認容すべき額となる。 旧居住地が旧避難指示解除準備区域である提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「旧避難指示解除準備区域」と記載のある117人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は103人である。 6 旧居住地が旧緊急時 区域である提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「旧避難指示解除準備区域」と記載のある117人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は103人である。 6 旧居住地が旧緊急時避難準備区域である一審原告らについて認定事実ア旧緊急時避難準備区域の概要旧緊急時避難準備区域は,本件事故以降,福島第一原発から20~30km圏内に設定されていた屋内退避区域の解除に伴い, 同区域から避難区域及び計画的避難区域を除いた区域を主として,4月22日以降,常に緊急時に避難のための立退き又は屋内退避が可能な準備を行うこと,自主的避難をし,特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は同区域内に入らないようにすることが引き続き求められていた区域であり,広野町,楢葉町,川内村,田村市の一部及び南相馬市の一部に設定されていた。同区域においては,保育所,幼稚園,小中学校及び高等学校は休所,休園又は休校とすること,勤務等のやむを得ない用務等を果たすために同区域内に入ることは妨げられないが,その場合も常に緊急的に屋内への退避や自力での避難ができるようにしておくこととされていた。緊急時避難準備区域は,9月30日に一括して解除された。 (前記第1の2)イ旧緊急時避難準備区域旧居住者の受けた被害旧緊急時避難準備区域においては,上記アのとおり,避難が強制されるようなものではなかったものの,自主的避難が求められ,特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は同区域内に入らないようにすることが求められており,保育所,幼稚園,小中学校及び高等学校は休所,休園又は休校とされるなどしていた区域であること,同区域は9月30日に一括して解除されたものの,その大半は福島第一原発から20~30km圏内のエリアであり,20km圏内に設定された当時 学校は休所,休園又は休校とされるなどしていた区域であること,同区域は9月30日に一括して解除されたものの,その大半は福島第一原発から20~30km圏内のエリアであり,20km圏内に設定された当時の警戒区域(避難指示再編後でいえば旧避難指示解除準備区域(上記5のグループ))と接していたり,あるいは20km圏外でさらに30km圏外へも広がりを見せる当時の計画的避難区域(避難指示再編後でいえば旧居住制限区域(上記4のグループ)又は旧避難指示解除準備区域)と接していたりする位置関係にあったこと(丙C27,28),原子力発電所 の水素爆発,炉心溶融という今まで誰も経験したことがないような本件事故が起きて半年以内という期間であったことなどに鑑みれば,実質的には,同区域内の旧居住者は,同区域からの避難を余儀なくされ,同区域が設定されていた広野町,楢葉町,川内村,田村市の一部及び南相馬市の一部に係る,以下のような本件事故後の状況に鑑みれば,少なくともでの間,避難の継続を余儀なくされたというべきである。 広野町の状況広野町は,政府による避難指示等(3月12日福島第二原発10km圏内である町北端の一部に避難区域,3月15日町全域に屋内退避区域,4月22日町全域に緊急時避難準備区域)とは別に,3月12日,町全域の住民に対し自主的な避難を要請し,同月13日には独自の避難指示を出し,町役場を,同月15日には小野町に,4月15日にはいわき市に移転していたところ,平成24年3月1日には町役場を元の場所で再開し,同月31日には独自の避難指示も解除し,広野町の公共サービス,生活関連サービスは,同年9月までにはおおむね復旧していたと認められる。もっとも,同時点における町内居住者の数は447人にとどまっていたこと(甲C316の1の2)か も解除し,広野町の公共サービス,生活関連サービスは,同年9月までにはおおむね復旧していたと認められる。もっとも,同時点における町内居住者の数は447人にとどまっていたこと(甲C316の1の2)からすれば,この頃までに町が本件事故前の状況に戻っていたとはいい難い状態であった。 広野町は全域が旧緊急時避難準備区域であったところ,町役場を含む町内18箇所の平成25年4月1日の空間線量率は,0.11~0.22μ Sv/h(0.37~0.95mSv/y相当)であり,いずれも追加被曝線量1mSv/y相当値を下回っている。 平成24年12月28日第6次モニタリングから平成25年11月19日第8次モニタリングまでの結果から計算した同期間の広野町内の空間線量率は0.05~1.80μ Sv/h(0. 05~9.26mSv/y相当),平均0.51~0.58μ Sv/h(2.47~2.84mSv/y相当)であったが,これは,非生活圏である山林なども含めての数値である。 広野町の人口は,本件事故時点では5490人(1989世帯)であり,本件事故直後は200人台に落ち込んだものの,その後徐々に回復し,町内居住者は,平成25年6月に1000人を,平成27年4月に2000人を,平成29年3月に3000人を突破したが,令和元年5月31日時点の町民居住人口は4197人と,本件事故時点の約4分の3にとどまっている(甲C316の1,2)。 川内村の状況(本訴において旧居住地が川内村である一審原告はいない。)川内村大字下川内字貝ノ坂,字萩の区域は旧居住制限区域(前記4)であり,平成26年10月1日に旧避難指示解除準備区域(前記5)に再編され,平成28年6月14日に避難指示が解除された。川内村大字下川内(以下「下川内」ともいう。)の 区域は旧居住制限区域(前記4)であり,平成26年10月1日に旧避難指示解除準備区域(前記5)に再編され,平成28年6月14日に避難指示が解除された。川内村大字下川内(以下「下川内」ともいう。)の一部(20km圏内)及び同上川内(以下「上川内」という。)のごく一部は旧避難指示解除準備区域(前記5)であり(丙C30の1),平成26年10月1日に避難指示が解除された。下川内には特定避難勧奨地点があり,平成24年12月14日に解除された(後記7)。そして,川内村のその余の地域が,9月30日まで,旧緊急時避難準備区域であった。 また,川内村は,以上の政府による避難指示等とは別に,3月16日には村全域に独自の避難指示を出し,郡山市に役場機能を移転していたところ,平成24年3月26日までにはこの独自の避難指示も解除して川内村役場を再開し,川内村の公共サービス,生活関連サービスは,平成24年9月までにはおおむね復旧していたと認められる。もっとも,後記の,より後の時点における帰還率や避難率に鑑みれば,同月時点における帰還率は低迷していたものと優に推認される。 福島第一原発から20km圏内であるいわなの郷,保健福祉医療複合施設ゆふね,下川内坂シ内付近,村営バス停留所(貝ノ坂地区),五枚沢集会所,毛戸集会所,割山トンネルの電波時計脇を除いた,川内村役場を含む川内村内8箇所の平成25年4月1日の空間線量率は,0.09~0.52μ Sv/h(0. 26~2.53mSv/y相当)であり,川内村大字下川内字小田代付近と下川内地区農業集落排水処理施設で5mSv/y相当値を,それ以外の6箇所ではいずれも1mSv/y相当値を,それぞれ下回っている。 川内村の帰還率は,平成26年12月1日時点においても全体で57.45%にとどまってお 処理施設で5mSv/y相当値を,それ以外の6箇所ではいずれも1mSv/y相当値を,それぞれ下回っている。 川内村の帰還率は,平成26年12月1日時点においても全体で57.45%にとどまっており,その殆ど全域が旧避難指示解除準備区域に設定されずに旧緊急時避難準備区域であった上川内に限っても同日時点で避難率は約31~42%と高かったところ,その後徐々に改善されたものの,平成29年1月1日時点においても,全体の帰還率は68.62%にとどまり,上川内に限っても避難率は約21~35%と依然高い状況であった(甲C281の4,弁論の全趣旨)。 田村市の状況 田村市のうち,福島第一原発から20km圏内である都路町古道の一部は避難指示解除準備区域(前記5)に設定されており,おおむね30km圏内である都路町,船引町横道,常葉町堀田及び常葉町山根(20km圏内の上記旧避難指示解除準備区域を除く。)が,9月30日まで,旧緊急時避難準備区域に設定されていた(丙C8,27)。なお,その余の区域は,政府による避難指示等はなく,中間指針第一次追補で自主的避難等対象区域(後記9)とされた。 田村市の福島第一原発から20~30km圏内の,田村市都路行政局を含む8箇所の平成25年4月1日の空間線量率は0. 09~0.48μ Sv/h(0.26~2.32mSv/y相当)であり,いずれも5mSv/y相当値を下回っている。 平成24年12月28日第6次モニタリングから平成25年11月19日第8次モニタリングまでの結果から計算した同期間の田村市内の空間線量率は0.06~1.70μ Sv/h(0. 11~8.74mSv/y相当),平均0.38~0.44μ Sv/h(1.79~2.11mSv/y相当)であったが,これは20km圏内の旧避難指示 の空間線量率は0.06~1.70μ Sv/h(0. 11~8.74mSv/y相当),平均0.38~0.44μ Sv/h(1.79~2.11mSv/y相当)であったが,これは20km圏内の旧避難指示解除準備区域及び30km圏外の自主的避難等対象区域を含んだ数値である。 田村市の公共サービス,生活関連サービスは,平成24年9月までにはおおむね復旧していたと認められる。もっとも,以下のとおり,帰還率は順調には上がらなかった。 田村市のうち,旧緊急時避難準備区域における帰還率は,平成30年10月31日時点においてこそ約92.2%まで回復したものの,平成26年3月31日時点では約55.6%,平成27年3月31日時点では約64.8%,平成28年3月3 1日時点では約73.2%と低迷が続き,90%を初めて超えたのは平成29年3月31日の調査であった(甲C273)。 南相馬市の状況南相馬市のうち,小高区の一部は帰還困難区域(前記3),小高区,原町区の一部は旧居住制限区域(前記4),小高区,原町区の一部は旧避難指示解除準備区域(前記5)であった。南相馬市のうち,福島第一原発から20~30km圏内である鹿島区の一部と原町区の大半が,9月30日まで旧緊急時避難準備区域に設定された。その余の原町区の一部と鹿島区の大半は,中間指針において一時避難要請区域(後記8)とされた区域である。なお,鹿島区橲原,原町区大谷,大原,高倉,押釜,片倉,馬場の一部は特定避難勧奨地点(後記7)に設定されていた。 南相馬市の旧緊急時避難準備区域の,非生活圏である高倉ダム(高倉ダム管理事務所),高の倉ダム助常観測所,鉄山ダム,南相馬市横山ダムを除いた,南相馬市役所(福島第一原発から約26km)を含む7箇所の平成25年4月1日の空間線量率は, 生活圏である高倉ダム(高倉ダム管理事務所),高の倉ダム助常観測所,鉄山ダム,南相馬市横山ダムを除いた,南相馬市役所(福島第一原発から約26km)を含む7箇所の平成25年4月1日の空間線量率は,0.12~0.91μ Sv/h(0.42~4.58mSv/y相当)であり,いずれも5mSv/y相当値を下回っている。南相馬市の旧緊急時避難準備区域を旧居住地とする一審原告らは相当数いる(うち1人が南相馬市鹿島区であり,その余は全員南相馬市原町区)。平成24年12月28日第6次モニタリングから平成25年11月19日第8次モニタリングまでの結果から計算した同期間の南相馬市の空間線量率は0.05~17.00μ Sv/h(0.05~89.26mSv/y相当),平均1.51~1.70μ Sv/h(7.74~8.74mSv /y相当)であるが,これは,小高区の帰還困難区域等及び鹿島区の旧一時避難要請区域を含んだ数値である。 避難指示区域を除いた南相馬市原町区の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと推認される。もっとも,南相馬市原町区は,西側に,福島第一原発から20km圏外まで突き出るように設定された旧帰還困難区域,旧居住制限区域及び旧避難指示解除準備区域と隣接ないし近接しているような位置関係であり(丙C28,159),以下のとおり,避難指示区域を除く部分だけをみても,本件事故をきっかけに減少した人口はなかなか戻らなかった。 南相馬市原町区の旧帰還困難区域,旧居住制限区域,旧避難指示解除準備区域に設定された区域を除く本件事故当時の住民登録人口は4万5677人(1万6401世帯)であったが,平成28年7月31日時点では4万1748人(1万6714世帯),平成30年10月31日時点では4万13 定された区域を除く本件事故当時の住民登録人口は4万5677人(1万6401世帯)であったが,平成28年7月31日時点では4万1748人(1万6714世帯),平成30年10月31日時点では4万1349人にとどまっている(もっとも,同日時点の世帯数は1万7062世帯と本件事故当時を上回っているが,これは,仮設住宅等へ入居した他の地域からの避難者も相当数いることや,本件事故前と比べて,一人世帯等,より少人数の世帯に取って代わられていることを示している。なお,世帯員が異なる場所に避難をしているケースもあるため,住民登録世帯数と実際の居住世帯数は異なることが前提の数字である。甲C274)。 楢葉町の状況(本訴において旧居住地が楢葉町の旧緊急時避難準備区域である一審原告はいない。)楢葉町のうち,福島第一原発から20km圏内(町の大半)は平成24年8月10日に旧避難指示解除準備区域(前記5) に設定され,平成27年9月5日に解除された。そして,楢葉町のその余の地域(一部)が,9月30日まで,旧緊急時避難準備区域であった。(丙C27~29,32,157,159,230,603)楢葉町の復興は,おおむね以下のような経緯をたどった。平成27年9月5日に楢葉町の役場(本庁舎)が再開し,平成28年2月,県立ふたば医療センター附属ふたば復興診療所が開設,同年3月24日には大手民間企業の子会社が工場を竣工,同年4月には国立研究機関が外部利用を開始するなどした。平成25年以降試験作付けが実施されていた稲作は,平成28年3月に米の出荷制限が解除され,同年,6年ぶりに稲作が本格的に再開された。また,平成29年4月,あおぞらこども園や,楢葉小学校・中学校が小中連携型として再開した。さらに,復興のための災害公営住宅140戸と商業交 制限が解除され,同年,6年ぶりに稲作が本格的に再開された。また,平成29年4月,あおぞらこども園や,楢葉小学校・中学校が小中連携型として再開した。さらに,復興のための災害公営住宅140戸と商業交流ゾーン,医療福祉ゾーンからなるコンパクトタウン「笑ふるタウンならは」が設置され,平成29年から平成30年頃にかけて分譲が実施され,同年6月26日には同タウン内にスーパー,ホームセンター,飲食店,理容店,コインランドリー等を備える商業施設が開設した。そして,平成31年4月20日には,本件事故以降,廃炉作業などの拠点として使用され一時休止していた日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンターである「Jヴィレッジ」(楢葉町・広野町にまたがる施設)が全面再開するなどした。 (丙C217,218,234,322,521~523,525,526)楢葉町の帰還率は,平成28年8月4日時点で8.1%(641人361世帯),同年10月31日時点で9.75%(71 8人396世帯),同年11月30日時点で10.01%(737人405世帯),平成29年1月4日時点で10.42%(767人419世帯)と漸増し,平成30年10月31日時点で町内居住率約50.9%まで回復しているものの,全体的に低迷している。 (丙C157,178,231,233)以上によれば,福島第一原発から20km圏外の旧緊急時避難準備区域にある女平地区集会所の空間線量率が,平成25年4月1日時点で0.25μ Sv/h(1.11mSv/y相当)と5mSv/y相当値を下回っており,平成26年4月1日時点で0.15μ Sv/h(0.58mSv/y相当)と1mSv/y相当値を下回っていた(丙C71の4,5)ことを考慮しても,福島第一原発から20km圏内の地域が大半 回っており,平成26年4月1日時点で0.15μ Sv/h(0.58mSv/y相当)と1mSv/y相当値を下回っていた(丙C71の4,5)ことを考慮しても,福島第一原発から20km圏内の地域が大半を占める楢葉町の旧緊急時避難準備区域(20km圏外)について,公共サービス,生活関連サービス共に平成24年9月までに復旧していたとはいい難い状況であったというべきである。 検討ア評価(損害額)旧緊急時避難準備区域を旧居住地とする一審原告らは,生活の本拠であった旧居住地から実質的に避難を余儀なくされ避難の継続を余儀なくされたのであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる(なお,仮に実際には避難しなかったとしても,実質的に避難を余儀なくされるような状況下に置かれたことに変わりはないから,避難した者と同額の損害を負ったというべきである。また,設定が解除される前に死亡した者についても,前示のとおり,本件は本件事故という一回的行為 により全ての損害がその時点で発生している事案とみるべきであるから(前記第2章第2節第3。),損害額は他の者と同額と評価すべきである。)。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①実質的に強制的に転居させられた点については100万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについては帰還困難区域と同額である月額10万円(避難の有無を問わない。)と評価すべきである。なお,旧居住地が帰還困難区域等,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし 限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,旧緊急時避難準備区域の設定解除(9月30日)から少なくとも1年間は住民側が帰還するための準備などに必要な期間であるというべきであり,中間指針第二次追補(前記エ)においても自主賠償基準(前記第2の5)においても終期を平成24年8月末としていること,その中間指針第二次追補では,終期の「避難指示等の解除から相当期間経過後」について,この区域におけるインフラ復旧が平成24年3月末までにおおむね完了する見通しであること,同年度2学期が始まる同年9月までには関係市町村において学校通学できる環境が整う予定であること,一方で避難者が従前の住居に戻る準備には一定期間が必要であることなどを考慮して,同年8月末までを目安とするが,楢葉町の旧緊急時避難準備区域については,同町の区域のほとんどが避難指示区域であることを踏まえ,その避難指示区域の設定解除後相当期間(今後の状況を踏まえて判断)が経過した時点までとする,と具体的 に考慮要素が挙げられていたことなどからすれば,平成24年8月とするのが相当である。したがって,避難生活の継続が強いられていた期間は,平成23年3月から平成24年8月までの18か月間であり,その点についての慰謝料額は180万円と評価すべきである(実際の避難期間を問わない。)。 なお,旧緊急時避難準備区域については,前示のとおり,特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は同区域内に入らないようにすることが引き続き求められていた区域であることなどから,一審被告東電の自主賠償基準においては,平成24年9月1日時点で高校 とおり,特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は同区域内に入らないようにすることが引き続き求められていた区域であることなどから,一審被告東電の自主賠償基準においては,平成24年9月1日時点で高校生以下であった者には特別に同月から平成25年3月31日まで月額5万円の7か月分35万円を追加賠償することとされているところ,上記①ないし③の損害は,子供や妊婦等の属性に関係なく認められる損害であるというべきであるから,当裁判所は,本グループについては,これらの者の属性によって損害額に差を設けるべきではないと考える。 イ一審原告らに対する具体的な損害額全般上記アによれば,旧居住地が旧緊急時避難準備区域である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として合計280万円の支払がなされるべきであるところ,「中間指針等による賠償額」である,平成24年9月1日時点で高校生以下であった者については215万円(自主賠償基準)を超える65万円が,それ以外の者については180万円(自主賠償基準)を超える100万円が,それぞれ本訴において認容すべき額となる。 旧居住地が旧緊急時避難準備区域である提訴時一審原告は,別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「旧緊急時避難準 備区域」と記載のある214人H-201を含む。),そこから取下一審原告を除いた一審原告は202人(なお,うち6人は,訴えを取り下げたものの一審被告らによる同意が得られなかった一審原告らである(後記第8節の1参照)。)である。 一審原告H-201について一審原告H-201については,おり,旧居住地は旧緊急時避難準備区域と認めるべきであるところ,仮に,一審被告東電から帰還困難区域における自主賠償基準に基づく賠償を既に受領している場合は過払状態となる 審原告H-201については,おり,旧居住地は旧緊急時避難準備区域と認めるべきであるところ,仮に,一審被告東電から帰還困難区域における自主賠償基準に基づく賠償を既に受領している場合は過払状態となるが,ここでは,あくまでも,賠償は未受領であることを前提として,当グループに係る自主賠償基準を超える額を認容することとする。 7 旧居住地が旧特定避難勧奨地点である一審原告らについて認定事実ア旧特定避難勧奨地点の概要旧特定避難勧奨地点は,警戒区域及び計画的避難区域の外であって,計画的避難区域とするほどの地域的な広がりはみられないものの,本件事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される特定の地点である。政府として一律に避難を指示したり,産業活動を規制したりするような状況ではないものの,生活形態によっては年間20mSvを超える可能性も否定できないため,同地点内の住民に対し,住居単位で,注意喚起,自主的な避難の支援・促進を行うこととされ,6月30日ないし11月25日の間に,伊達市霊山町,月舘町,保原町の117地点128世帯が,7月21日ないし11月25日の間に,南相馬市鹿島区 橲原,原町区大谷,大原,高倉,押釜,片倉,馬場の142地点153世帯が,9月30日までに川内村下川内の1地点1世帯が設定されていた。伊達市及び川内村の特定避難勧奨地点は平成24年12月14日に,南相馬市の特定避難勧奨地点は平成26年12月28日に,それぞれ解除された。(前記第1の4)イ旧特定避難勧奨地点旧居住者の受けた被害旧特定避難勧奨地点においては,上記アのとおり,避難が強制されたわけではなかったものの,本件事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定されるとして住居単位で設定されたものである以上,当該住居 定避難勧奨地点においては,上記アのとおり,避難が強制されたわけではなかったものの,本件事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定されるとして住居単位で設定されたものである以上,当該住居に居住する世帯としては,余程の事情等がない限り避難をすることを選択せざるを得なかったものと推認され,実質的には,同地点からの避難を余儀なくされ,少なくとも後記の終期とすべき時点までの間,避難の継続を余儀なくされたというべきである。 検討ア評価(損害額)旧特定避難勧奨地点として設定された各住居を旧居住地とする一審原告らは,生活の本拠であった旧居住地から実質的に避難を余儀なくされ,避難の継続を余儀なくされたのであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる(なお,仮に実際には避難しなかったとしても,実質的に避難を余儀なくされるような状況下に置かれたことに変わりはないから,避難した者と同額の損害を負ったと解すべきである。また,解除前に死亡した者についても,本件は本件事故という一回的行為によ り全ての損害がその時点で発生している事案とみるべきであるから(),損害額は他の者と同額と評価すべきである。)。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①実質的に強制的に転居させられた点については50万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについては帰還困難区域等と同額である月額10万円と評価すべきである(避難の有無を問わない。)。なお,旧居住地が帰還困難区域等,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 そして,上記②の避難生活の継続は,特定避難勧奨地点が設定されたの ,旧居住地が帰還困難区域等,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 そして,上記②の避難生活の継続は,特定避難勧奨地点が設定されたのは上記のとおり6月30日ないし11月25日の間であったものの,これは,政府方針が決まり放射線量のモニタリング結果が出た時期によるものであって,あくまでも地点設定の根拠となるべき状況は本件事故直後から存在していたものと推認できるから,3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,特定避難勧奨地点の設定解除から少なくとも3か月間は住民側が帰還するための準備などに必要な期間であるというべきであり,中間指針第二次追補(前記においても自主賠償基準(前記及びにおいても,終期を特定避難勧奨地点の各解除から3か月間としていることなどから,川内村及び伊達市については平成25年3月,南相馬市については平成27年3月とするのが相当である。したがって,避難生活の継続が強いられていた期間は,川内村及び伊達市については平成23年3月から平成25年3月までの25か月間,南相馬市については平成23年3月から平成27年3月までの49か月間であり, その点についての慰謝料額はそれぞれ250万円,490万円と評価すべきである(実際の避難期間を問わない。)。 イ一審原告らに対する具体的な損害額全般上記アによれば,旧居住地が旧特定避難勧奨地点である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として,川内村及び伊達市については合計300万円,南相馬市については合計540万円の支払がなされるべきであるところ,旧居住地が川内村又は伊達市の旧特定避難勧奨地点であった一審原告はおらず,旧居住地が南相馬市の旧特定避難勧奨地点であった一審原告 ,南相馬市については合計540万円の支払がなされるべきであるところ,旧居住地が川内村又は伊達市の旧特定避難勧奨地点であった一審原告はおらず,旧居住地が南相馬市の旧特定避難勧奨地点であった一審原告は,別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「旧特定避難勧奨地点」と記載のある9人であり,同人らに対しては,「中間指針等による賠償額」である合計490万円(自主賠償基準)を超える50万円が本訴において認容すべき額となる。 一審原告(亡)T-1529について旧居住地が南相馬市原町区片倉の特定避難勧奨地点であった一審原告(亡)T-1529は,特定避難勧奨地点設定中の平成25年11月12日に死亡しているものの,上記アのとおり,その損害額は他の者と同額であるとみるべきである。 旧緊急時避難準備区域と重なる一審原告らについて本グループに属する一審原告らの中には,同時に,旧居住地が旧緊急時避難準備区域(前記6)である者も存在する。 一審原告H-362,一審原告H-363,一審原告H-364,一審原告H-365,一審原告兼亡T-1529承継人T-1528,亡T-1529承継人T-1529-1及び一審原告兼亡T-1529承継人T-1530は,いずれもその 旧居住地又は被承継人の旧居住地が南相馬市原町区片倉であり,旧緊急時避難準備区域に属する。 これらの者については,請求原因を選択的に主張しているものと解すべきであるから,慰謝料額の大きい方のグループに属するものとして請求認容すべきであるところ,以上に判示するところによれば,本グループの南相馬市の旧特定避難勧奨地点に属する者に対する慰謝料額の方が大きいため,これらの一審原告らについては,本グループに属するものとして請求を認容することとする(なお,最終的な認容額は旧緊 本グループの南相馬市の旧特定避難勧奨地点に属する者に対する慰謝料額の方が大きいため,これらの一審原告らについては,本グループに属するものとして請求を認容することとする(なお,最終的な認容額は旧緊急時避難準備区域のグループよりも少なくなるが,それは本グループの方が「中間指針等による賠償額」が大きいことによるものである。)。 8 旧居住地が旧一時避難要請区域である一審原告らについて認定事実ア旧一時避難要請区域の概況南相馬市は,平成23年3月16日,市民の生活の安全確保等を理由として,その独自の判断に基づいて,南相馬市の住民に対して一時避難を要請し,4月22日,一時避難要請区域から避難していた住民に対して,自宅での生活が可能な者の帰宅を許容する旨の見解を示した(前記第1の3)。 中間指針は,南相馬市全域から,避難指示区域及び緊急時避難準備区域を除いた区域を一時避難要請区域として分類しているところ,南相馬市のうち,その過半である福島第一原発から30km圏内は帰還困難区域,旧居住制限区域,旧避難指示解除準備区域又は旧緊急時避難準備区域であるため,旧一時避難要請区域は,30km圏外であるその余の区域(鹿島区の大半,原町区の一部)である。なお,30km圏外のうち鹿島 区橲原地区及び原町区大原地区の一部の住居は旧特定避難勧奨地点となっている。 南相馬市が測定した,鹿島区役所を含む鹿島区内17箇所の9月29日から9月30日までの空間線量率(地上1m)は0.08~2.89μ Sv/h(0.21~15.00mSv/y相当),鹿島区役所を含む鹿島区内13箇所の平成24年3月17日から5月23日までの空間線量率(地上1m)は,0.18~2.53μ Sv/h(0.74~13.11mSv/y相当)であった。また,旧一時 ,鹿島区役所を含む鹿島区内13箇所の平成24年3月17日から5月23日までの空間線量率(地上1m)は,0.18~2.53μ Sv/h(0.74~13.11mSv/y相当)であった。また,旧一時避難要請区域内にある,南相馬市役所鹿島区役所(福島第一原発から約32km)及び鹿島公民館橲原分館(同約32km)の6月30日から9月30日までの空間線量率は0.27~1.91μ Sv/h(1.21~9.84mSv/y相当),10月31日から12月31日までの空間線量率は,0.28~1. 8μ Sv/h(1.26~9.3mSv/y相当),平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.28~1.7μ Sv/h(1.26~8.7mSv/y相当),平成25年4月1日の空間線量率は,0.25~0.37μ Sv/h(1.11~1.74mSv/y相当)であった(丙C91)。 南相馬市鹿島区の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 イ旧一時避難要請区域旧居住者の受けた被害旧一時避難要請区域においては,政府による避難指示等の対象にはされず,南相馬市によっても避難が強制されたわけではなかったものの,上記アのとおり,南相馬市は,その過半が福島第一原発から30km圏内であり,いまだに帰還困難区域に設定されている区域もあるような立地にあって,本件事故のような未曽有 の原発事故への対応として市が全住民に対して一時避難を要請したものである以上,市内に居住する住民としては,相応の事情等がない限り避難をすることを選択せざるを得なかったものというべきであって,実質的には,南相馬市からの避難を余儀なくされ,余儀なくされたというべきである。 検討ア評価(損害額)告らは,生活の本拠で 避難をすることを選択せざるを得なかったものというべきであって,実質的には,南相馬市からの避難を余儀なくされ,余儀なくされたというべきである。 検討ア評価(損害額)告らは,生活の本拠であった旧居住地から実質的に避難を余儀なくされ,避難の継続を余儀なくされたのであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる(なお,仮に実際には避難しなかったとしても,実質的に避難を余儀なくされるような状況下に置かれたことに変わりはないから,避難した者と同額の損害を負ったと解すべきである。)。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①実質的に避難を余儀なくされた点については20万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについては月額5万円と評価すべきである(避難の有無を問わない。)。なお,旧居住地が帰還困難区域等,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,終期は,旧一時避難要請区域が南相馬市のうち帰還困難区域,旧居住制限区域, 旧避難指示解除準備区域及び旧緊急時避難準備区域を除いたわずかな区域にすぎず,旧一時避難要請区域のすぐ福島第一原発寄りである20~30km圏内に設定された緊急時避難準備区域の設定が解除されたのが9月30日であって,旧一時避難要請区域の旧居住者としては,少なくとも同日までは旧居住地に帰還することに躊躇を覚えたとしても不合理とはいえないこと,住民側が帰還するための準備などには相当期間が必要であるというべきであることに加え,収束宣言により福島第一原発 なくとも同日までは旧居住地に帰還することに躊躇を覚えたとしても不合理とはいえないこと,住民側が帰還するための準備などには相当期間が必要であるというべきであることに加え,収束宣言により福島第一原発の冷温停止状態の達成が確認されたのは12月16日であること(前記第1の5)などに鑑みて,平成24年2月とするのが相当である。したがって,避難生活の継続を余儀なくされた期間は,平成23年3月から平成24年2月までの12か月間であり,その点についての慰謝料額は60万円と評価すべきである(実際の避難期間を問わない。)。 イ一審原告らに対する具体的な損害額全般上記アによれば,旧居住地が旧一時避難要請区域である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として,合計80万円の支払がなされるべきであるところ,「中間指針等による賠償額」である70万円(自主賠償基準)を超える10万円が,本訴において認容すべき額となる。 旧居住地が旧一時避難要請区域である提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「旧一時避難要請区域」と記載のある47人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は39人である。 旧特定避難勧奨地点を旧居住地とする一審原告らについて 一審原告H-142及び一審原告H-143は,旧特定避難勧奨地点を旧居住地とするが,同時に,本グループである旧一時避難要請区域にも属すると思われるため,同一審原告らについては,請求原因を選択的に主張しているものと解すべきであるから,慰謝料額の大きい方のグループに属するものとして請求認容すべきであるところ,旧特定避難勧奨地点旧居住者の慰謝料額の方が高いため,同一審原告らについては,旧特定避難勧奨地点旧居住者(前記7)のグループに属するものとして請求を認容すること として請求認容すべきであるところ,旧特定避難勧奨地点旧居住者の慰謝料額の方が高いため,同一審原告らについては,旧特定避難勧奨地点旧居住者(前記7)のグループに属するものとして請求を認容することとする(なお,最終的な認容額は本グループよりも少なくなるが,それは旧特定避難勧奨地点のグループの方が「中間指針等による賠償額」が大きいことによるものである。)。 9 旧居住地が自主的避難等対象区域である一審原告らについて認定事実ア自主的避難等対象区域の概況中間指針第一次追補は,おおむね福島第一原発から100km圏内に位置し奥羽山脈により隔てられていない福島県内の自治体のうち,県北地域,県中地域,相双地域,いわき地域の23市町村(避難指示等対象区域を除く。したがって,いずれも福島第一原発から30km圏外である。)を自主的避難等対象区域と定義している()。 一審被告東電の自主賠償基準は,避難の有無を問わず,自主的避難等対象区域に居住していた,①3月11日~12月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~1 2月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~平成23年12月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず40万円(1期賠償)を,②平成24年1月1日~同年8月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成5年1月2日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年8月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成24年1月1日~8月3 成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年8月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成24年1月1日~8月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず8万円(2期賠償)を,③それ以外の者に対しては,避難の有無を問わず,3月11日~4月22日頃の損害として8万円(これも1期賠償であるが,上記①の1期賠償と区別するため,以下,本項において「1期賠償」とは上記①のみを指すこととする。)を,それぞれ支払うこととしている()。 なお,子供及び妊婦で実際に避難した者には上記に加えて20万円を,平成24年1月1日から8月31日までの追加的費用等につき4万円を,それぞれ賠償することとしているところ,一審被告東電は,これらを精神的損害等に対する慰謝料とは別の項目として支払う旨,自らのホームページにおいて整理していることなどから,これらについては精神的損害に対する賠償には当たらないとした原判決は相当である。 そうすると,本グループを旧居住地とする者のうち,①1期賠償の対象たる子供・妊婦については40万円の,②2期賠償の対象たる子供・妊婦については8万円(うち妊婦は後記「③それ以外の者」としての8万円と合計して16万円)の,①1期賠償及び②2期賠償の双方の対象たる子供・妊婦については48万円の, ③それ以外の者については8万円の,それぞれ賠償が一審被告東電からなされている(なされる予定である)ことを前提として以下検討する。 イ各地域の状況福島市a 平成23年3月福島市御山町に所在する県北保健福祉事務所事務局では,3月15日に24.24μ Sv/h(127.37mSv/y相当)という,年間追加被曝線量100m 域の状況福島市a 平成23年3月福島市御山町に所在する県北保健福祉事務所事務局では,3月15日に24.24μ Sv/h(127.37mSv/y相当)という,年間追加被曝線量100mSv相当値を超える空間線量率が計測され,3月21日時点で7.34μ Sv/h(38.42mSv/y相当),3月27日時点で3. 61μ Sv/h(18.79mSv/y相当)に達していた。 3月15日に計測された上記放射線量は,2号機から放出された放射性物質を含む蒸気雲(プルーム)が風に乗って北北西の方向に流れたためと考えられるが,そのような情報は事前に住民に伝えられなかったため,福島市民が適切な放射線被曝回避措置を取ることは困難であった。3月17日から3月31日までにも,福島市杉妻町で2.0~8.0μ Sv/h(10.3~41.9mSv/y相当),福島市大波字滝ノ入で4.0~18.3μ Sv/h(20.8~96.1mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測され,福島市荒井字原宿でも0.5~1.0μ Sv/h(2.4~5.1mSv/y相当)の空間線量率が計測されていた。福島市五老内町に所在する福島市役所(福島第一原発から約62km)の3月31日の空間線量率は2.61μ Sv/h(13.53mSv/y相当),農業総合センタ ー果樹研究所,福島西インターチェンジ,ふくしま自治研修センターの同日の空間線量率は0.64~1.93μ Sv/h(3.16~9.95mSv/y相当)であった。 福島市では,本件地震により,14万7000戸の停電,市内全域の断水,大規模な電話の不通,2726戸のガス供給停止などが発生したが,平成23年4月頃までには,福島市内の公共サービス,生活関連サービスはおおむね復旧して より,14万7000戸の停電,市内全域の断水,大規模な電話の不通,2726戸のガス供給停止などが発生したが,平成23年4月頃までには,福島市内の公共サービス,生活関連サービスはおおむね復旧していたものと認められる。 b 平成23年4月福島市役所,農業総合センター果樹研究所,福島西インターチェンジ,ふくしま自治研修センターの4箇所の4月1日から4月9日までの空間線量率は0.62~2.31μ Sv/h(3.05~11.95mSv/y相当),福島市役所で1.53~2.31μ Sv/h(7.84~11.95mSv/y相当)であり,平成23年4月時点では,福島市役所のような市街地においても,10mSv/y相当値を超える線量が計測されていた。上記4箇所に県北保健福祉事務所事務局を加えた5箇所の4月12日から4月14日までの空間線量率は,0.49~1.83μ Sv/h(2.37~9.42mSv/y相当)であった。福島市杉妻町,大波字滝ノ入,荒井字原宿の4月1日から4月29日までの空間線量率は,0. 1~3.8μ Sv/h(0.3~19.8mSv/y相当)であった。福島市役所の4月30日の空間線量率は1.49μSv/h(7.63mSv/y相当)であった。4月6日から4月29日にかけて第1次航空機モニタリングが実施され, 福島市にも1.9~3.8μ Sv/h(10~20mSv/y相当)の区域が分布していることが確認された。 c 平成23年5~12月福島市が測定した,福島市役所を含む18箇所の5月2日から5月11日までの空間線量率は,0.20~2.87μSv/h(0.84~14.89mSv/y相当),県北保健福祉事務所事務局の5月12日の空間線量率は1.45μ Sv/h(7.42mSv/y相当)であった。 福島 線量率は,0.20~2.87μSv/h(0.84~14.89mSv/y相当),県北保健福祉事務所事務局の5月12日の空間線量率は1.45μ Sv/h(7.42mSv/y相当)であった。 福島市役所の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.93~1.36μ Sv/h(4.68~6.95mSv/y相当)であった(丙C91)。 福島市が6月17日から6月20日までに行った全市一斉放射線量測定の結果,1118地点中,0.5μ Sv/h未満が93件,0.5~1.0μ Sv/h未満が214件,1. 0~1.5μ Sv/h未満が321件,1.5~2.0μ Sv/h未満が309件,2.0~2.5μ Sv/h未満が134件,2.5~3.0μ Sv/h未満が33件,3.0~3. 4μ Sv/h未満が8件,3.4μ Sv/h以上が6件,市内19地区の平均空間線量率は0.26~2.24μ Sv/h(1.16~11.58mSv/y相当),全市平均で1. 33μ Sv/h(6.79mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した福島市内の空間線量率は0.05~3.10μ Sv/h(0.05~16. 11mSv/y相当),平均0.58~0.79μ Sv/h(2. 84~3.95mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月福島市役所の平成24年1月31日から2月16日までの空間線量率は,1.06~1.08μ Sv/h(5.37~5.47mSv/y相当)であった。 福島市が平成24年3月8日から3月23日に行った市内2916地点の全市一斉放射線量測定の結果,783区画中,0.23μ Sv/h未満が29件,0.23~0.5μ Sv/h未満が14 あった。 福島市が平成24年3月8日から3月23日に行った市内2916地点の全市一斉放射線量測定の結果,783区画中,0.23μ Sv/h未満が29件,0.23~0.5μ Sv/h未満が144件,0.5~0.75μ Sv/h未満が212件,0.75~1.0μ Sv/h未満が178件,1.0~1.25μ Sv/h未満が146件,1.25~1.5μ Sv/h未満が39件,1.5~1.75μ Sv/h未満が23件,1.75~2.0μ Sv/h未満が10件,2.0~2. 25μ Sv/h未満が2件,平均0.77μ Sv/h(3.8mSv/y相当)で,全体の71.9%が1μ Sv/h未満であり,2μ Sv/h以上の区画が存在するのは大波地区と渡利地区であった。 福島市内22箇所の平成24年4月1日の空間線量率は,0.04~1.39μ Sv/h(0~7.11mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングから計算した福島市内の空間線量率は0.05~1.90μ Sv/h(0.05~9.79mSv/y相当),平均0.47μ Sv/h(2.26mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降の状況福島市が平成25年3月1日から3月15日までに行った全市一斉放射線量測定の結果,916区画中,0.23μ S v/h未満が48件,0.23~0.5μ Sv/h未満が389件,0.5~0.75μ Sv/h未満が258件,0.75~1.0μ Sv/h未満が175件,1.0~1.25μ Sv/h未満が34件,1.25~1.5μ Sv/h未満が9件,1.5~1.75μ Sv/h未満が3件,平均0.56μSv/h(2.74mSv/y相当)であり,95.0%が1.0μ Sv/h未満であった。 平成25 1.25~1.5μ Sv/h未満が9件,1.5~1.75μ Sv/h未満が3件,平均0.56μSv/h(2.74mSv/y相当)であり,95.0%が1.0μ Sv/h未満であった。 平成25年4月1日から平成29年3月2日までの福島市内22箇所の空間線量率は,0.04~0.63μ Sv/h(0~3.11mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した福島市内の空間線量率は,0.05~1.50μ Sv/h(0.05~7.68mSv/y相当),平均0. 33~0.41μ Sv/h(1.53~1.95mSv/y相当)であった。 f 福島市民の追加被曝線量福島市内の積算線量は,3月12日から4月5日までの積算で0.4~2.1mSv,3月12日から平成24年3月11日までの1年間の積算線量推定値(4月6日以降は4月5日の測定値が継続すると仮定した数値として公表されたもの)で2.4~16.8mSvであり,福島市民の実際の追加被曝線量は20mSv/yを超えるものではなかった。 二本松市a 平成23年3月 二本松市太田では,3月17日から3月31日までに,1. 1~5.2μ Sv/h(5.6~27.2mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていた。 二本松市による測定では,平成23年3月,二本松市岩代支所で10μ Sv/h(52mSv/y相当),二本松市役所本庁(福島第一原発から約56km)でも8μ Sv/h以上(42mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を大きく上回る空間線量率が測定されていた。 二本松市役所,二本松市役所東和支所の3月31日の空間線量率は 約56km)でも8μ Sv/h以上(42mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を大きく上回る空間線量率が測定されていた。 二本松市役所,二本松市役所東和支所の3月31日の空間線量率は1.64~3.3μ Sv/h(8.42~17.2mSv/y相当)であった。 二本松市の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 b 平成23年4月二本松市役所,二本松市役所東和支所の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.77~2.93μ Sv/h(3.63~15.21mSv/y相当)であった。 二本松市の測定では,二本松市役所本庁,安達支所,岩代支所,東和支所の4月1日から4月15日までの空間線量率は,0.78~3.11μ Sv/h(3.89~16.16mSv/y相当)であった。 二本松市太田の4月3日から4月20日までの空間線量率は,0.8~2.2μ Sv/h(4.0~11.4mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月 二本松市役所東和支所,二本松市田沢集会場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.4~0.64μSv/h(1.9~3.16mSv/y相当)であった。 二本松市が測定した,二本松市役所本庁,安達支所,岩代支所,東和支所の5月1日から5月15日までの空間線量率は,0.59~1.89μ Sv/h(2.89~9.74mSv/y相当)であった。 福島県や二本松市が測定した,二本松市役所東和支所,二本松市田沢集会場,二本松市役所安達支所,二本松市役所岩代支所の6月1日から10月1日までの空間線量率は0.38~1.67μ Sv/h(1.79~8.58mSv/y相当),原子力災害対策現地本部及び福島県が測定した,二 松市役所安達支所,二本松市役所岩代支所の6月1日から10月1日までの空間線量率は0.38~1.67μ Sv/h(1.79~8.58mSv/y相当),原子力災害対策現地本部及び福島県が測定した,二本松市沼ヶ作,坊主滝,針道の7月19日の空間線量率は0.21~3.52μ Sv/h(0.89~18.32mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した二本松市内の空間線量率は0.05~3.50μ Sv/h(0.05~18.21mSv/y相当),平均0.96~1.27μ Sv/h(4.84~6.47mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月二本松市内の2~17箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.22~0.87μ Sv/h(0.95~4.37mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した二本松市内の空間線量率は0.12~1.90μ Sv/h(0.42~10.21mSv/y相当),平均0. 89μ Sv/h(4.47mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降二本松市内の18箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.07~0.76Sv/h(0.16~3.79mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した二本松市内の空間線量率は,0.05~1.90μ Sv/h(0.05~9.79mSv/y相当)であった。 伊達市a 伊達市の概況伊達市のうち,霊山町上小国,下小国,石田,月舘町月舘,保原町富沢には特定避難勧奨地点( 05~1.90μ Sv/h(0.05~9.79mSv/y相当)であった。 伊達市a 伊達市の概況伊達市のうち,霊山町上小国,下小国,石田,月舘町月舘,保原町富沢には特定避難勧奨地点(前記7のグループ)に設定された地点があり,平成24年12月14日に解除された。 その余の地域は自主的避難等対象区域である。 b 平成23年3月伊達市保原町舟橋に所在する伊達市役所保原本庁舎(福島第一原発から約61km)の3月31日の空間線量率は,2. 25μ Sv/h(11.63mSv/y相当)であった。 伊達市霊山町では,3月17日から3月30日までに,3. 6~14.0μ Sv/h(18.7~73.5mSv/y)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていた。 伊達市の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 c 平成23年4月伊達市役所保原本庁舎の4月1日から4月30日までの空間線量率は,1.21~2.09μ Sv/h(6.16~10.79mSv/y相当)であった。 伊達市霊山町では,4月1日から4月29日までに,2. 1~4.0μ Sv/h(10.8~20.8mSv/y)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていた。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した伊達市内の空間線量率は0.37~6.30μ Sv/h(1. 74~32.94mSv/y相当),平均1.32μ Sv/h(6.74mSv/y相当)であったが,これは,伊達市内の特定避難勧奨地点を含んだ数値である。 d 平成23年5~12月伊達市役所保原本庁舎の5月31日の空間線量率は1.06μ Sv/h(5.37mSv/y相当),小国ふ ったが,これは,伊達市内の特定避難勧奨地点を含んだ数値である。 d 平成23年5~12月伊達市役所保原本庁舎の5月31日の空間線量率は1.06μ Sv/h(5.37mSv/y相当),小国ふれあいセンター,下小国中央集会所,霊山パーキング,月舘相葭公民館の6月30日から12月31日までの空間線量率は0.84~2.18μ Sv/h(4.21~11.26mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した伊達市内の空間線量率は0.23~6.80μ Sv/h(1.00~30. 32mSv/y相当),平均0.80~1.43μ Sv/h(4. 00~7.32mSv/y相当)であったが,これは,伊達市内の特定避難勧奨地点を含んだ数値である。 e 平成24年1~8月伊達市役所保原本庁舎を含む,伊達市内の4~14箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.17~1.59μ Sv/h(0.68~8.16mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した伊達市内の空間線量率は,0.29~3.90μSv/h(1.32~20.32mSv/y相当),平均0. 92μ Sv/h(4.63mSv/y相当)であったが,これは,伊達市内の特定避難勧奨地点を含んだ数値である。 f 平成24年9月以降伊達市役所保原本庁舎を含む,伊達市内の14~15箇所のモニタリング地点の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.58μ Sv/h(0.05~2.84mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタ 2日までの空間線量率は,0.05~0.58μ Sv/h(0.05~2.84mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した伊達市内の空間線量率は,0.15~3.00μ Sv/h(0.58~15.58mSv/y相当),平均0. 58~0.71μ Sv/h(2.84~3.53mSv/y相当)であったが,これは,伊達市内の特定避難勧奨地点を含んだ数値である。 本宮市a 平成23年3月 本宮市役所(福島第一原発から約57km)の3月31日の空間線量率は,2.11μ Sv/h(10.89mSv/y相当)であった。 本宮市の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月本宮市役所の4月1日から4月30日までの空間線量率は,1.06~2.09μ Sv/h(5.37~10.79mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリング結果から計算した本宮市内の空間線量率は0.61~2.20μ Sv/h(3.00~11.37mSv/y相当),平均1.24μ Sv/h(6. 32mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月本宮市役所,白沢総合支所,旧白沢総合支所の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.52~0.9μSv/h(2.53~4.5mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した本宮市内の空間線量率は0.55~3.10μ Sv/h(2.68~16. 11mSv/y相当),平均1.02~1.44μ Sv/h(5. 16~7 月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した本宮市内の空間線量率は0.55~3.10μ Sv/h(2.68~16. 11mSv/y相当),平均1.02~1.44μ Sv/h(5. 16~7.37mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月 本宮市の2~7箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.18~0.65μ Sv/h(0. 74~3.21mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した本宮市内の空間線量率は0.48~1.90μ Sv/h(2.32~9.79mSv/y相当),平均0.98μ Sv/h(4.95mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降本宮市の7箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.07~0.26μ Sv/h(0. 16~1.53mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した本宮市内の空間線量率は0.30~1.30μSv/h(1.37~6.63mSv/y相当),平均0.58~0.73μ Sv/h(2.84~3.63mSv/y相当)であった。 桑折町a 平成23年3月桑折町(測定場所不詳)においては,3月20日から3月22日までに,3.98~6.33μ Sv/h(20.74~33.11mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていた。 福島北警察署桑折分庁舎(福島第一原発から約66km)の3月31日の空間線量率は2.1μ Sv/h(10.8mSv/y相当)であった。 桑折町の公共サービス,生活関連サービ 福島北警察署桑折分庁舎(福島第一原発から約66km)の3月31日の空間線量率は2.1μ Sv/h(10.8mSv/y相当)であった。 桑折町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 b 平成23年4月福島北警察署桑折分庁舎の4月1日から4月30日までの空間線量率は1.18~2.02μ Sv/h(6.00~10.42mSv/y相当),桑折町が測定した桑折町内4箇所(桑折公民館,睦合公民館,伊達崎公民館,半田公民館)の4月22日から4月30日までの空間線量率は0.74~1. 02μ Sv/h(3.68~5.16mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した桑折町内の空間線量率は,0.20~1.70μ Sv/h(0. 84~8.74mSv/y相当),平均1.07μ Sv/h(5. 42mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月福島北警察署桑折分庁舎の5月31日から12月31日までの空間線量率は0.67~0.98μ Sv/h(3.32~4.95mSv/y相当)であった。 桑折町が測定した,桑折町内4~5箇所の5月1日から12月28日までの空間線量率は0.44~0.97μ Sv/h(2.11~4.89mSv/y相当),町民運動場,桑折テニスコート,ふれあい公園,桑折町内11の児童館,保育所,幼稚園,小中学校の,6月1日から6月14日までの空間線量率(地上50cm)は,0.65~3.28μ Sv/h(3.21~17.05mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した桑折町内の空間線量率は0.17~1.90μ S .05mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した桑折町内の空間線量率は0.17~1.90μ Sv/h(0.68~9.79mSv/y相当),平均0.71~1.05μ Sv/h(3. 53~5.32mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月桑折町の1~4箇所のモニタリング地点の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.19~0. 71μ Sv/h(0.79~3.53mSv/y相当)であった。 桑折町が測定した5箇所の平成24年1月4日から8月31日までの空間線量率は,0.33~0.72μ Sv/h(1. 53~3.58mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した桑折町内の空間線量率は0.19~1.20μ Sv/h(0.79~6.11mSv/y相当),平均0.68μ Sv/h(3.37mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降桑折町の4箇所のモニタリング地点の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は0.05~0. 34μ Sv/h(0.05~1.58mSv/y相当),桑折町が測定した5箇所の平成24年9月3日から平成28年7月22日までの空間線量率は0.08~0.53μ Sv/h(0.21~2.58mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果 から計算した桑折町内の空間線量率は0.10~1.02μSv/h(0.32~5.16mSv/y相当),平均0.39~0.55μ Sv/h(1.84~2.68mSv/y相当)であった から計算した桑折町内の空間線量率は0.10~1.02μSv/h(0.32~5.16mSv/y相当),平均0.39~0.55μ Sv/h(1.84~2.68mSv/y相当)であった。 国見町a 平成23年3月国見町役場(福島第一原発から約66km)の3月31日の空間線量率は1.15μ Sv/h(5.84mSv/y相当)であった。 国見町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月国見町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.69~1.21μ Sv/h(3.42~6.16mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した国見町内の空間線量率は,0.47~1.50μ Sv/h(2. 26~7.68mSv/y相当),平均0.99μ Sv/h(5. 00mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月国見町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.39~0.55μ Sv/h(1.84~2.68mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した国見町内の空 間線量率は0.32~1.40μ Sv/h(1.47~7.16mSv/y相当),平均0.61~0.96μ Sv/h(3. 00~4.84mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月国見町役場の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.23~0.35μ Sv/h(1.00~1.63mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した国見町内の 1日から4月12日までの空間線量率は,0.23~0.35μ Sv/h(1.00~1.63mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した国見町内の空間線量率は0.35~1.20μ Sv/h(1.63~6.11mSv/y相当),平均0.63μ Sv/h(3.11mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降国見町役場の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.22μ Sv/h(0.05~0.95mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した国見町内の空間線量率は0.20~0.84μSv/h(0.84~4.21mSv/y相当),平均0.36~0.48μ Sv/h(1.68~2.32mSv/y相当)であった。 川俣町a 川俣町の概況川俣町のうち,山木屋地区の一部は居住制限区域,避難指示解除準備区域(平成29年3月31日に解除された。)であり,その余は自主的避難等対象区域である。 b 平成23年3月川俣町役場(福島第一原発から約47km)の3月31日の空間線量率は1.7μ Sv/h(8.7mSv/y相当)であった。 川俣町の自主的避難等対象区域(福島第一原発から約47km)において,3月17日から3月29日までに,1.6~6.7μ Sv/h(8.2~35.1mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていた。 川俣町の自主的避難等対象区域の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 c 平成23年4月川俣町役場の4 空間線量率が計測されていた。 川俣町の自主的避難等対象区域の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 c 平成23年4月川俣町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.74~1.65μ Sv/h(3.7~8.47mSv/y相当)であった。 川俣町の自主的避難等対象区域では,4月4日から4月29日までに,0.6~2.3μ Sv/h(2.9~11.9mSv/y相当)の空間線量率が計測されていた。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した川俣町内の空間線量率は0.79~12.00μ Sv/h(3. 95~62.95mSv/y相当),平均2.17μ Sv/h(11.21mSv/y相当)であるが,これは,山木屋地区の居住制限区域,避難指示解除準備区域を含んだ数値である。 d 平成23年5~12月 川俣町役場の5月31日から12年31日までの空間線量率は0.53~0.72μ Sv/h(2.58~3.58mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した川俣町内の空間線量率は0.51~13.00μ Sv/h(2.47~68.21mSv/y相当),平均1.61~2.13μ Sv/h(8.26~11.00mSv/y相当)であるが,これは,山木屋地区の居住制限区域,避難指示解除準備区域を含んだ数値である。 e 平成24年1~8月山木屋地区を除く,川俣町の自主的避難等対象区域の1~4箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.21~0.57μ Sv/h(0.89~2.79mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モ 対象区域の1~4箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.21~0.57μ Sv/h(0.89~2.79mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した川俣町内の空間線量率は0.47~6.60μ Sv/h(2.26~34.53mSv/y相当),平均1.39μ Sv/h(7.11mSv/y相当)であるが,これは,山木屋地区の居住制限区域,避難指示解除準備区域を含んだ数値である。 f 平成24年9月以降の状況山木屋地区を除く,川俣町の自主的避難等対象区域の4箇所のモニタリング地点の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.04~0.28μ Sv/h(0~1.26mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した川俣町内の空間線量率は0.29~4.40μ Sv/h(1.32~22.95mSv/y相当),平均0.88~0.98μ Sv/h(4.42~4.95mSv/y相当)であるが,これは,山木屋地区の居住制限区域,避難指示解除準備区域を含んだ数値である。 大玉村a 平成23年3月大玉村役場(福島第一原発から約60km)の3月31日の空間線量率は1.63μ Sv/h(8.37mSv/y相当)であった。 大玉村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月大玉村役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.68~1.58μ Sv/h(3.37~8.11mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリン b 平成23年4月大玉村役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.68~1.58μ Sv/h(3.37~8.11mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した大玉村内の空間線量率は0.05~1.70μ Sv/h(0. 05~8.74mSv/y相当),平均0.60μ Sv/h(2. 95mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月 大玉村役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.47~0.62μ Sv/h(2.26~3.05mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した大玉村内の空間線量率は0.05~2.10μ Sv/h(0.05~10. 84mSv/y相当),平均0.52~0.71μ Sv/h(2. 53~3.53mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月大玉村の1~3箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.14~0.42μ Sv/h(0. 53~2.00mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した大玉村内の空間線量率は0.15~1.60μ Sv/h(0.58~8.21mSv/y相当),平均0.47μ Sv/h(2.26mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降大玉村の2~3箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.06~0.31μ Sv/h(0.11~1.42mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した大玉村内の空間線量 /h(0.11~1.42mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した大玉村内の空間線量率は0.08~1.20μSv/h(0.21~6.11mSv/y相当),平均0.30~0.36μ Sv/h(1.37~1.68mSv/y相当)であった。 郡山市a 平成23年3月郡山市に所在する福島県郡山合同庁舎では,3月15日に8.26μ Sv/h(43.26mSv/y相当),3月24日に4.05μ Sv/h(21.11mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間放射線量が計測されていた。 郡山市大槻町の3月26日から3月30日までの空間線量率は,1.3~2.2μ Sv/h(6.6~11.4mSv/y)であった。 郡山市役所(福島第一原発から約60km)を含む5箇所の3月31日の空間線量率は,1~2.12μ Sv/h(5~10.95mSv/y相当)であった。 郡山市では,本件地震により,約3万7000戸の断水,約3万6000戸の停電,836戸のガス供給停止などが発生したが,平成23年4月頃までには,郡山市内の公共サービス,生活関連サービスはおおむね復旧していたものと認められる。 b 平成23年4月郡山市役所を含む5箇所の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.3~2.14μ Sv/h(1.4~11. 05mSv/y相当)であった。 郡山市大槻町の4月1日から4月29日までの空間線量率は,0.4~1.4mSv/y(1.9~7.2mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した郡山市内の空間線量率は0.05~1.80 間線量率は,0.4~1.4mSv/y(1.9~7.2mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した郡山市内の空間線量率は0.05~1.80μ Sv/h(0. 05~9.26mSv/y相当),平均0.55μ Sv/h(2. 68mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月郡山市内4~5箇所の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.2~1.36μ Sv/h(0.8~6.95mSv/y相当)であった。 郡山市が測定した,市内14箇所の行政センターの駐車場中央及び建物入口の7月14日の空間線量率(地上1m)は,0.21~1.07μ Sv/h(0.89~5.42mSv/y相当)であった。 一審被告国,福島県,郡山市が合同で平成23年7月下旬に測定した郡山市内の道路上の空間放射線量は,0.13~2.81μ Sv/h(0.47~14.58mSv/y相当)であった。 郡山市池ノ台に所在する荒池西公園は,平成23年7月26日の放射線量調査で,地上50cmで平均3.5μ Sv/h(18.2mSv/y相当),部分的に4.2μ Sv/h(21.9mSv/y相当)といった20mSv/yを超える空間線量率が計測されたため,公園の利用が制限され,郡山市において除染実証実験が行われた。 郡山市が測定した,市内の道路1077箇所の平成23年8月の空間線量率は,0.13~0.95μ Sv/h(0.47~4.79mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した郡山市内の空間線量率は0.05~1.80μ Sv/h(0.05~9.26mSv/y相当),平均0.47~0.62μ Sv 機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した郡山市内の空間線量率は0.05~1.80μ Sv/h(0.05~9.26mSv/y相当),平均0.47~0.62μ Sv/h(2. 26~3.05mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月郡山市内4~28箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.06~1.32μ Sv/h(0. 11~6.74mSv/y相当),郡山市が測定した,市内の道路1077箇所の平成24年8月の空間線量率は,0.10~0.48μ Sv/h(0.32~2.32mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した郡山市内の空間線量率は0.05~1.40μ Sv/h(0.05~7.16mSv/y相当),平均0.39μ Sv/h(1.84mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降郡山市内28箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.04~0.94μ Sv/h(0~4.74mSv/y相当), 郡山市が測定した,市内の道路1077箇所の平成25年8月の空間線量率は0.10~0.34μ Sv/h(0.32~1.58mSv/y相当),平成26年6~12月の空間線量率は0.10~0.27μ Sv/h(0.32~1.21mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した郡山市内の空間線量率は0.05~0.97μSv/h(0.05~4.89mSv/y相当),平均0.27~0.32μ Sv/h(1.21~1.47mSv/y相当)であった。 須賀川市a 平成 郡山市内の空間線量率は0.05~0.97μSv/h(0.05~4.89mSv/y相当),平均0.27~0.32μ Sv/h(1.21~1.47mSv/y相当)であった。 須賀川市a 平成23年3月須賀川市役所(福島第一原発から約60km)の3月20日から3月31日までの空間線量率(須賀川市による簡易測定参考値を含む。)は,0.24~1.90μ Sv/h(1. 05~9.79mSv/y相当)であった。 須賀川市役所は,一時,須賀川市体育館に機能を移転していたが,公共サービス,生活関連サービスの提供はおおむね継続されていたものと認められる。 b 平成23年4月須賀川市役所の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.3~0.42μ Sv/h(1.4~2.00mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した須賀川市内の空間線量率は0.12~1.40μ Sv/h(0. 42~7.16mSv/y相当),平均0.60μ Sv/h(2. 95mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月福島県や須賀川市が測定した,須賀川市役所本庁,長沼支所,岩瀬支所の5月1日から12月31日までの空間線量率 は,0.22~1.61μ Sv/h(0.95~8.26mSv/y相当),須賀川市が測定した,市内多数箇所の7月6日から9月20日までの空間線量率は,0.11~2.18μSv/h(0.37~11.26mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した須賀川市内の空間線量率は0.10~1.90μ Sv/h(0.32~9. 79mSv/y相当),平均0.54~0.74μ Sv/h(2. 63~3.68mS 次航空機モニタリングまでの結果から計算した須賀川市内の空間線量率は0.10~1.90μ Sv/h(0.32~9. 79mSv/y相当),平均0.54~0.74μ Sv/h(2. 63~3.68mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月須賀川市内2~11箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.11~0.79μ Sv/h(0.37~3.95mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した須賀川市内の空間線量率は0.13~1.30μSv/h(0.47~6.63mSv/y相当),平均0.51μ Sv/h(2.47mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降須賀川市内11箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は0.06~0.34μ Sv/h(0.11~1.58mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した須賀川市内の空間線量率は0.09~1.02μ Sv/h(0.26~5.16mSv/y相当),平均0. 31~0.38μ Sv/h(1.42~1.79mSv/y相当)であった。 田村市a 田村市の概況20km圏内である田村市都路町古道の一部は避難指示解除準備区域(平成26年4月1日解除)に設定され,おおむね30km圏内である都路町,船引町横道,常葉町堀田及び常葉町山根(20km圏内の旧避難指示解除準備区域を除く。)は,緊急時避難準備区域(9月30日解除)に設定されていた。 その余の区域は,自主的避難等対象区域である。 b 平成23年3~12月田村市の30km圏外のモニタリング地点 備区域を除く。)は,緊急時避難準備区域(9月30日解除)に設定されていた。 その余の区域は,自主的避難等対象区域である。 b 平成23年3~12月田村市の30km圏外のモニタリング地点の平成23年3~12月の空間線量率は,証拠上明らかでない。 田村市の30km圏外の平成23年12月28日から平成24年1月6日の空間線量率は,0.2~0.7μ Sv/h(0.8~3.5mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した田村市内の空間線量率は,0.15~9.50μ Sv/h(0.58~49.79mSv/y相当),平均0.78~1.25μ Sv/h(3.89~6.37mSv/y相当)であったが,これは,田村市内の旧避難指示解除準備区域,旧緊急時避難準備区域を含んだ数値である。 田村市役所は田村市船引町船引字馬場(福島第一原発から約41km)の自主的避難等対象区域に所在し,平成26年 10月に田村市船引町船引字畑添の新庁舎に移転したが,田村市の自主的避難等対象区域の公共サービス,生活関連サービスは,平成23年3月時点でもおおむね継続されていたものと認められる。 c 平成24年1~8月旧田村市役所駐車場(現田村市図書館)を含む田村市の30km圏外12箇所の平成24年4月1日から同月12日までの空間線量率は,0.08~0.50μ Sv/h(0.21~2.42mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した田村市内の空間線量率は,0.13~2.60μSv/h(0.47~13.47mSv/y相当),平均0. 58μ Sv/h(2.84mSv/y相当)であったが,これは,田村市内の旧避難 果から計算した田村市内の空間線量率は,0.13~2.60μSv/h(0.47~13.47mSv/y相当),平均0. 58μ Sv/h(2.84mSv/y相当)であったが,これは,田村市内の旧避難指示解除準備区域,旧緊急時避難準備区域を含んだ数値である。 d 平成24年9月以降田村市の30km圏外12箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.39μ Sv/h(0~1.84mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した田村市内の空間線量率は0.06~1.70μSv/h(0.11~8.74mSv/y相当),平均0.38~0.44μ Sv/h(1.79~2.11mSv/y相当)であったが,これは,田村市内の旧避難指示解除準備区域,旧緊急時避難準備区域を含んだ数値である。 鏡石町a 平成23年3月鏡石町役場(福島第一原発から約64km)の3月31日の空間線量率は0.49μ Sv/h(2.37mSv/y相当)であった。 鏡石町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月鏡石町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.34~0.46μ Sv/h(1.58~2.21mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した鏡石町内の空間線量率は0.26~0.63μ Sv/h(1. 16~3.11mSv/y相当),平均0.40μ Sv/h(1. 89mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月鏡石町役場の5月31日から12月3 0.26~0.63μ Sv/h(1. 16~3.11mSv/y相当),平均0.40μ Sv/h(1. 89mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月鏡石町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.2~0.29μ Sv/h(0.8~1.32mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した鏡石町内の空間線量率は0.15~0.66μ Sv/h(0.58~3.26mSv/y相当),平均0.26~0.39μ Sv/h(1. 16~1.84mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月 鏡石町役場の平成24年1月31日から同年4月12日までの空間線量率は,0.15~0.19μ Sv/h(0.58~0.79mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した鏡石町内の空間線量率は0.17~0.40μ Sv/h(0.68~1.89mSv/y相当),平均0.26μ Sv/h(1.16mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降の状況鏡石町役場の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.07~0.13μ Sv/h(0.16~0.47mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した鏡石町内の空間線量率は0.10~0.30μSv/h(0.32~1.37mSv/y相当),平均0.15~0.20μ Sv/h(0.58~0.84mSv/y相当)であった。 天栄村a 平成23年3月天栄村役場(福島第一原発から約72km)の3月31日の空間 Sv/y相当),平均0.15~0.20μ Sv/h(0.58~0.84mSv/y相当)であった。 天栄村a 平成23年3月天栄村役場(福島第一原発から約72km)の3月31日の空間線量率は1.72μ Sv/h(8.84mSv/y相当)であった。 天栄村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月 天栄村役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,1.26~1.78μ Sv/h(6.42~9.16mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した天栄村内の空間線量率は,0.33~1.70μ Sv/h(1. 53~8.74mSv/y相当),平均0.82μ Sv/h(4. 11mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月天栄村役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.67~1μ Sv/h(3.32~5.05mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した天栄村内の空間線量率は,0.05~2.00μ Sv/h(0.05~10.32mSv/y相当),平均0.32~1.09μ Sv/h(1.47~5.53mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月天栄村役場を含む1~8箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.03~0.54μ Sv/h(0~2.63mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した天栄村内の空間線量率は0.05~1.20μ Sv/h(0.05~6.11mSv/y相当),平均0.35μ /y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した天栄村内の空間線量率は0.05~1.20μ Sv/h(0.05~6.11mSv/y相当),平均0.35μ Sv/h(1.63mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降 天栄村内7~8箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.03~0.30μ Sv/h(0~1.37mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した天栄村内の空間線量率は0.05~0.99μSv/h(0.05~5.00mSv/y相当),平均0.27~0.53μ Sv/h(1.21~2.58mSv/y相当)であった。 石川町a 平成23年3月石川町役場(福島第一原発から約60km)の平成23年3月31日の空間線量率は0.21μ Sv/h(0.89mSv/y相当),石川町による3月18日から3月31日までの放射能測定結果(測定場所不詳)は,0.19~0.75μSv/h(0.79~3.74mSv/y相当)であった。 石川町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 b 平成23年4月石川町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は0.15~0.22μ Sv/h(0.58~0.95mSv/y相当),石川町による4月1日から4月13日までの放射能測定結果(測定場所不詳)は,0.16~0.22μ Sv/h(0.63~0.95mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した石川町内の空間線量率は0.12~0.51μ Sv/h 不詳)は,0.16~0.22μ Sv/h(0.63~0.95mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した石川町内の空間線量率は0.12~0.51μ Sv/h(0. 42~2.47mSv/y相当),平均0.27μ Sv/h(1. 21mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月石川町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.1~0.14μ Sv/h(0.3~0.53mSv/y相当),石川町が測定した,町内506箇所の7月20日から8月15日までの空間線量率は,0.10~0.27μSv/h(0.32~1.21mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した石川町内の空間線量率は0.10~0.54μ Sv/h(0.32~2.63mSv/y相当),平均0.18~0.26μ Sv/h(0. 74~1.16mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月石川町役場を含む石川町内1~3箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.15~0.19μ Sv/h(0.58~0.79mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した石川町内の空間線量率は0.11~0.26μ Sv/h(0.37~1.16mSv/y相当),平均0.18μ Sv/h(0.74mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降石川町内3箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.10μ Sv/h(0. 05~0.32mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリ 5年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.10μ Sv/h(0. 05~0.32mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した石川町内の空間線量率は0.05~0.26μSv/h(0.05~1.16mSv/y相当),平均0.12~0.14μ Sv/h(0.42~0.53mSv/y相当)であった。 玉川村a 平成23年3月玉川村役場(福島第一原発から約60km)の3月31日の空間線量率は0.28μ Sv/h(1.26mSv/y相当),福島県が測定した,玉川村に所在する福島空港の3月25日から3月31日の空間線量率は0.19~0.65μ Sv/h(0.79~3.21mSv/y相当)であった。 玉川村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月玉川村役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は0.2~0.26μ Sv/h(0.8~1.16mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した玉川村内の空間線量率は,0.14~0.59μ Sv/h(0. 53~2.89mSv/y相当),平均0.30μ Sv/h(1. 37mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月 玉川村役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.16~0.2μ Sv/h(0.63~0.84mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した玉川村内の空間線量率は,0.11~ μ Sv/h(0.63~0.84mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した玉川村内の空間線量率は,0.11~0.73μ Sv/h(0.37~3. 63mSv/y相当),平均0.21~0.28μ Sv/h(0. 89~1.26mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月玉川村役場を含む玉川村内1~4箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.07~0.15μ Sv/h(0.16~0.58mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した玉川村内の空間線量率は0.13~0.53μ Sv/h(0.47~2.58mSv/y相当),平均0.22μ Sv/h(0.95mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降玉川村内4箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.13μ Sv/h(0. 05~0.47mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した玉川村内の空間線量率は,0.08~0.44μ Sv/h(0.21~2.11mSv/y相当),平均0. 15~0.18μ Sv/h(0.58~0.74mSv/y相当)であった。 平田村a 平成23年3月平田村役場(福島第一原発から約47km)の3月31日の空間線量率は0.23μ Sv/h(1.00mSv/y相当)であった。 平田村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月 μ Sv/h(1.00mSv/y相当)であった。 平田村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月平田村役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.18~0.23μ Sv/h(0.74~1.00mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した平田村内の空間線量率は0.11~0.86μ Sv/h(0. 37~4.32mSv/y相当),平均0.34μ Sv/h(1. 58mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月平田村役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.15~0.22μ Sv/h(0.58~0.95mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した平田村内の空間線量率は0.12~0.91μ Sv/h(0.42~4.5 8mSv/y相当),平均0.23~0.33μ Sv/h(1. 00~1.53mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月平田村役場を含む平田村内1~6箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.09~0.15μ Sv/h(0.26~0.58mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した平田村内の空間線量率は0.15~0.60μ Sv/h(0.58~2.95mSv/y相当),平均0.22μ Sv/h(0.95mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降平田村内6箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.06~0.12μ Sv/h(0. μ Sv/h(0.95mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降平田村内6箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.06~0.12μ Sv/h(0. 11~0.42mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した平田村内の空間線量率は0.10~0.46μSv/h(0.32~2.21mSv/y相当),平均0.15~0.17μ Sv/h(0.58~0.68mSv/y相当)であった。 浅川町a 平成23年3月浅川町役場(福島第一原発から約67km)の3月31日の空間線量率は0.24μ Sv/h(1.05mSv/y相当)であった。 浅川町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月浅川町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.20~0.25μ Sv/h(0.84~1.11mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した浅川町内の空間線量率は,0.20~0.58μ Sv/h(0. 84~2.84mSv/y相当),平均0.42μ Sv/h(2. 00mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月浅川町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.15~0.2μ Sv/h(0.58~0.8mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した浅川町内の空間線量率は,0.17~0.61μ Sv/h(0.68~3. 00mSv/y相当),平 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した浅川町内の空間線量率は,0.17~0.61μ Sv/h(0.68~3. 00mSv/y相当),平均0.22~0.41μ Sv/h(0. 95~1.95mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月浅川町役場を含む浅川町内1~4箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.08~0.14μ Sv/h(0.21~0.53mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した浅川町内の空間線量率は,0.14~0.27μSv/h(0.53~1.21mSv/y相当),平均0.20μ Sv/h(0.84mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降浅川町内4箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.04~0.11μ Sv/h(0~0.37mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した浅川町内の空間線量率は,0.11~0.22μ Sv/h(0.37~0.95mSv/y相当),平均0. 14~0.17μ Sv/h(0.53~0.68mSv/y相当)であった。 古殿町a 平成23年3月古殿町役場(福島第一原発から約56km)の3月31日の空間線量率は0.24μ Sv/h(1.05mSv/y相当)であった。 古殿町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月古殿町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.17~0. ービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月古殿町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.17~0.23μ Sv/h(0.68~1.00mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した古殿町内の空間線量率は0.17~1.30μ Sv/h(0. 68~6.63mSv/y相当),平均0.47μ Sv/h(2. 26mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月古殿町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.15~0.2μ Sv/h(0.58~0.8mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した古殿町内の空間線量率は,0.05~1.00μ Sv/h(0.05~5. 05mSv/y相当),平均0.28~0.45μ Sv/h(1. 26~2.16mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月古殿町役場を含む古殿町内1~7箇所のモニタリング地点の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.07~0.23μ Sv/h(0.16~1.00mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した古殿町内の空間線量率は,0.15~0.68μSv/h(0.58~3.37mSv/y相当),平均0.26μ Sv/h(1.16mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降古殿町内7箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.18μ Sv/h(0. 05~0.74mSv/y相当)であった。 平成24年9月以降古殿町内7箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.18μ Sv/h(0. 05~0.74mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した古殿町内の空間線量率は,0.08~0.57μ Sv/h(0.21~2.79mSv/y相当),平均0. 18~0.20μ Sv/h(0.63~0.84mSv/y相当)であった。 三春町a 平成23年3月三春町役場(福島第一原発から約48km)の3月31日の空間線量率は0.53μ Sv/h(2.58mSv/y相当)であった。 三春町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月三春町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は0.39~0.51μ Sv/h(1.84~2.47mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した三春町内の空間線量率は,0.15~1.10μ Sv/h(0. 58~5.58mSv/y相当),平均0.52μ Sv/h(2. 53mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月三春町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.27~0.84μ Sv/h(1.21~4.21mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した三春町内の空間線量率は,0.14~1.20μ Sv/h(0.53~6. 11mSv/y相当),平均0.45~0.64μ Sv/h(2. ら11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した三春町内の空間線量率は,0.14~1.20μ Sv/h(0.53~6. 11mSv/y相当),平均0.45~0.64μ Sv/h(2. 16~3.16mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月三春町役場を含む三春町内1~5箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.15~0.39μ Sv/h(0.58~1.84mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した三春町内の空間線量率は,0.14~0.92μSv/h(0.53~4.63mSv/y相当),平均0.45μ Sv/h(2.16mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降三春町内5箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.07~0.32μ Sv/h(0. 16~1.47mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した三春町内の空間線量率は,0.10~0.73μ Sv/h(0.32~3.63mSv/y相当),平均0. 28~0.35μ Sv/h(1.26~1.63mSv/y相当)であった。 小野町a 平成23年3月 小野町役場(福島第一原発から約39km)の3月31日の空間線量率は0.19μ Sv/h(0.79mSv/y相当)であった。 小野町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月小野町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.14~0.18μ Sv/h(0.53~0 件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月小野町役場の4月1日から4月30日までの空間線量率は,0.14~0.18μ Sv/h(0.53~0.74mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した小野町内の空間線量率は,0.23~0.65μ Sv/h(1. 00~3.21mSv/y相当),平均0.35μ Sv/h(1. 63mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月小野町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.1~0.13μ Sv/h(0.3~0.47mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した小野町内の空間線量率は0.13~0.72μ Sv/h(0.47~3.58mSv/y相当),平均0.27~0.34μ Sv/h(1. 21~1.58mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月小野町役場を含む小野町の1~5箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.08~0.1 5μ Sv/h(0.21~0.58mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した小野町内の空間線量率は0.15~0.42μ Sv/h(0.58~2.00mSv/y相当),平均0.22μ Sv/h(0.95mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降小野町内5箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.13μ Sv/h(0. 05~0.47mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25 年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.13μ Sv/h(0. 05~0.47mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した小野町内の空間線量率は0.10~0.34μSv/h(0.32~1.58mSv/y相当),平均0.15~0.16μ Sv/h(0.58~0.63mSv/y相当)であった。 相馬市a 平成23年3月相馬市中野寺前(福島第一原発から約42km)の3月17日から3月31日までの空間線量率は,0.7~3.5μSv/h(3.5~18.2mSv/y相当)であった。 相馬市役所(福島第一原発から約42km)の3月31日の空間線量率は0.65μ Sv/h(3.21mSv/y相当)であった。 相馬市役所南側庁舎が地震により使用不能となるなどしたものの,相馬市の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 b 平成23年4月相馬市中野寺前の4月1日から4月29日までの空間線量率は,0.3~1.1μ Sv/h(1.4~5.6mSv/y相当),相馬市役所の4月30日の空間線量率は0.4μ Sv/h(1.9mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した相馬市内の空間線量率は0.05~4.00μ Sv/h(0. 05~20.84mSv/y相当),平均1.00μ Sv/h(5.05mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月相馬市内1~4箇所の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.15~1.39μ Sv/h(0.58~7.11mSv/y相当),相馬市内15箇所 )であった。 c 平成23年5~12月相馬市内1~4箇所の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.15~1.39μ Sv/h(0.58~7.11mSv/y相当),相馬市内15箇所の7月15日の空間線量率は,0.136~0.767μ Sv/h(0.51~3.83mSv/y相当),相馬市が測定した,市内応急仮設住宅6箇所,災害廃棄物仮置場3箇所の7月13日の空間線量率は,0.09~0.17μ Sv/h(0.26~0.68mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した相馬市内の空間線量率は0.05~3.90μ Sv/h(0.05~20. 32mSv/y相当),平均0.88~0.96μ Sv/h(4. 42~4.84mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月相馬市内4~14箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.12~0.90μ Sv/h(0. 42~4.53mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した相馬市内の空間線量率は0.05~2.10μ Sv/h(0.05~10.84mSv/y相当),平均0.57μ Sv/h(2.79mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降相馬市内4~14箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.58μ Sv/h(0.05~2.84mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した相馬市内の空間線量率は0.05~1.50μSv/h(0.05~7.68mSv/y相当) 12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した相馬市内の空間線量率は0.05~1.50μSv/h(0.05~7.68mSv/y相当),平均0.36~0.45μ Sv/h(1.68~2.16mSv/y相当)であった。 新地町a 平成23年3月新地町役場(福島第一原発から約52km)の3月31日の空間線量率は0.45μ Sv/h(2.16mSv/y相当)であった。 新地町の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(弁論の全趣旨)。 b 平成23年4月新地町役場の4月30日の空間線量率は0.29μ Sv/h(1.32mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した新地町内の空間線量率は0.17~0.57μ Sv/h(0. 68~2.79mSv/y相当),平均0.31μ Sv/h(1. 42mSv/y相当)であった。 c 平成23年5~12月新地町役場の5月31日から12月31日までの空間線量率は,0.17~0.21μ Sv/h(0.68~0.89mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した新地町内の空間線量率は0.05~0.63μ Sv/h(0.05~3.11mSv/y相当),平均0.30~0.41μ Sv/h(1. 37~1.95mSv/y相当)であった。 d 平成24年1~8月新地町役場を含む新地町の1~2箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.16~0.20μ Sv/h(0.63~0.84mSv/y相当)であった。 平成2 1~8月新地町役場を含む新地町の1~2箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.16~0.20μ Sv/h(0.63~0.84mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した新地町内の空間線量率は0.05~0.44μ Sv/h(0.05~2.11mSv/y相当),平均0.26μ Sv/h(1.16mSv/y相当)であった。 e 平成24年9月以降 新地町内2箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.06~0.15μ Sv/h(0. 11~2.2mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した新地町内の空間線量率は,0.05~0.35μ Sv/h(0.05~1.63mSv/y相当),平均0. 17~0.21μ Sv/h(0.68~0.89mSv/y相当)であった。 いわき市a いわき市の概況いわき市のうち,福島第一原発から30km圏内の区域(久之浜町,大久町,小川町,川前町の一部)は,3月15日,屋内退避区域(なお,本件訴訟には,旧居住地が旧屋内退避区域(解除後に緊急時避難準備区域に設定された地域を除く。)である一審原告はいない。)に設定された。 いわき市長は,3月11日,市内沿岸部全域に避難指示を出し,3月13日,30km圏内である久之浜・大久地区,小川・川前地区の一部の住民に対し,自主的な避難を要請した。 3月25日には,屋内退避区域において物流が止まるなどし,社会生活の維持継続が困難となりつつあり,また,今後の事態の推移によっては,放射線量が増大し,避難指示を出す可能性も否定できないとし した。 3月25日には,屋内退避区域において物流が止まるなどし,社会生活の維持継続が困難となりつつあり,また,今後の事態の推移によっては,放射線量が増大し,避難指示を出す可能性も否定できないとして,政府(官房長官)からも屋内退避区域の住民に対し自主的な避難を要請した。 いわき市の30km圏内の屋内退避区域の設定は,4月22日に解除され,同区域は緊急時避難準備区域には設定されなかった。 いわき市の30km圏外の区域は,自主的避難等対象区域である。 b 平成23年3月30km圏外のいわき市平字梅本に所在する福島県いわき合同庁舎駐車場では,3月15日に23.72μ Sv/h(124.63mSv/y相当),3月21日に6.00μ Sv/h(31.37mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されている。 いわき市の30km圏外8箇所の3月31日の空間線量率は,0.39~1.46μ Sv/h(1.84~7.47mSv/y相当)であった。 いわき市では,本件地震により,市内ほぼ全域での断水,2万0670戸の停電,1万5309戸でのガス供給停止などが発生し,さらに,4月11日の余震により市内ほぼ全域の19万9731戸が停電するなどしたが,いわき市の30km圏外での公共サービス,生活関連サービスは,平成23年4月頃までにはおおむね復旧していたものと認められる。 c 平成23年4月福島県いわき合同庁舎駐車場の4月1日の空間線量率は,0.69μ Sv/h(3.42mSv/y相当),いわき市の30km圏外8箇所の4月30日の空間線量率は,0.11~0.62μ Sv/h(0.37~3.05mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結 いわき市の30km圏外8箇所の4月30日の空間線量率は,0.11~0.62μ Sv/h(0.37~3.05mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算したいわき市内の空間線量率は0.05~4.50μ Sv/h(0. 05~23.47mSv/y相当),平均0.68μ Sv/h(3.37mSv/y相当)であるが,これは,30km圏内の旧屋内退避区域を含んだ数値である。 d 平成23年5~12月福島県いわき合同庁舎駐車場の5月1日から12月1日までの空間線量率は,0.17~0.28μ Sv/h(0.68~1.26mSv/y相当),いわき市の30km圏外9箇所の5月31日から12年31日までの空間線量率は,0.09~0.59μ Sv/h(0.26~2.89mSv/y相当),いわき市が測定した,いわき市役所久之浜・大久支所を除く30km圏外の,いわき市役所本庁舎(福島第一原発から約43km)・支所合計12箇所の6月19日から8月18日の空間線量率(地上1m)は,0.08~0.41μ Sv/h(0.21~1.95mSv/y相当),福島県いわき合同庁舎駐車場で0.19~0.24μ Sv/h(0.79~1. 05mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算したいわき市内の空間線量率は0.05~4.70μ Sv/h(0.05~24.53mSv/y相当),平均0.48~0.66μ Sv/h(2.32~3.26mSv/y相当)であるが,これは,30km圏内の旧屋内退避区域を含んだ数値である。 e 平成24年1~8月 いわき市の30km圏外8箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線 当)であるが,これは,30km圏内の旧屋内退避区域を含んだ数値である。 e 平成24年1~8月 いわき市の30km圏外8箇所の平成24年1月31日から4月12日までの空間線量率は,0.21~0.57μ Sv/h(0.89~2.79mSv/y相当),いわき市が測定した,30km圏内を含む市内876地点の平成24年1月26日から2月9日までの空間線量率は,全て0.99μSv/h(5.00mSv/y相当)未満,いわき市役所久之浜・大久支所を除く30km圏外15箇所の平成24年8月21日の空間線量率(地上1m)は,0.08~0.22μ Sv/h(0.21~0.95mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算したいわき市内の空間線量率は0.05~3.20μSv/h(0.05~16.63mSv/y相当),平均0. 36μ Sv/h(1.68mSv/y相当)であるが,これは,30km圏内の旧屋内退避区域を含んだ数値である。 f 平成24年9月以降30km圏内のいわき市末続集会所,志田名集会所,旧戸渡分校,いわき市海竜の里センターを除く,いわき市の30km圏外51箇所の平成25年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.03~0.31μ Sv/h(0~1.42mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算したいわき市内の空間線量率は0.03~2.65μ Sv/h(0~13.74mSv/y相当),平均0.25~0.27μ Sv/h(1.11~1.21mSv/y相当) であるが,これは,30km圏内の旧屋内退避区域を含んだ数値である。 ウ各 ~13.74mSv/y相当),平均0.25~0.27μ Sv/h(1.11~1.21mSv/y相当) であるが,これは,30km圏内の旧屋内退避区域を含んだ数値である。 ウ各地域の自主的避難者数自主的避難等対象区域の市町村における平成23年3月15日時点の自主的避難者の人数及び割合は,以下のとおりである(丙A26,47)。 H23.3.15時点の自主的避難者数H23.3.15時点の自主的避難者数が人口に占める割合福島市3,234人1.1%二本松市647人1.1%伊達市14人0.0%本宮市133人0.4%桑折町40人0.3%国見町986人9.8%川俣町1人0.0%大玉村7人0.1%郡山市5,068人1.5%須賀川市1,138人1.4%田村市※39人0.1%鏡石町108人0.8%天栄村56人0.9%石川町16人0.1%玉川村14人0.2%平田村0人0.0% H23.3.15時点の自主的避難者数H23.3.15時点の自主的避難者数が人口に占める割合浅川町0人0.0%古殿町0人0.0%三春町0人0.0%小野町9人0.1%相馬市4,457人11.8%新地町0人0.0%いわき市15,377人4.5%(※ 田村市については,避難指示等対象区域を含んだ数字である。)もっとも,福島県全体の自主的避難者の数は,本件事故発生直後から一度減少したものの,4月末以降はおおむね増加傾向にあるとされており,3月15日の自主 ては,避難指示等対象区域を含んだ数字である。)もっとも,福島県全体の自主的避難者の数は,本件事故発生直後から一度減少したものの,4月末以降はおおむね増加傾向にあるとされており,3月15日の自主的避難者数4万0256人に対して,3月25日2万3659人,4月22日2万2315人,5月22日3万6184人,6月30日3万4093人,7月28日4万1377人,8月25日4万7786人,9月22日5万0327人と推移した(丙A26,47)。 エ自主的避難等対象区域旧居住者の受けた被害自主的避難等対象区域においては,上記アのとおり,避難が強制ないし要請されたものではなく,いずれも福島第一原発から30km圏外であったことなどから,実質的に避難を余儀なくされたとまでいうことはできない。現に,上記ウのとおり,実際に自主的に避難した者は,3月15日の時点で,おおむね1%を下回っており,多い地域でも10%前後にとどまっている。しかしながら,前記第3の3の低線量被曝に関する知見等,前記1の一審 原告らの旧居住地ないし居住地の状況,上記イの各地域の概要等によれば,未曽有の事故である本件事故の発生当初に,福島第一原発の状況が安定しておらず,今後どのようにその被害が拡大するか不明で,自らが置かれた状況について十分な情報がない状況下にあって,自主的避難等対象区域旧居住者が,放射線被曝に対する恐怖や不安を感じ,これらの恐怖・不安から一時的に自主的に避難を選択することには合理性が認められるというべきである。 取り分け感受性が高く,また妊婦には流産の危険があるなどの知見があり,子供・妊婦については,低線量被曝等の健康に対する不安や今後の本件事故の進展に対する不安がそれ以外の者に比して大きかったというべきであることを総合すると,この地域に 産の危険があるなどの知見があり,子供・妊婦については,低線量被曝等の健康に対する不安や今後の本件事故の進展に対する不安がそれ以外の者に比して大きかったというべきであることを総合すると,この地域に居住していた子供・妊婦としては,自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていたということができる。 検討ア評価(損害額)自主的避難等対象区域を旧居住地とする一審原告らは,生活の本拠であった旧居住地から自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚え,取り分け子供・妊婦については自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていたというべきであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる(なお,自主的に避難しなかった者についても,自主的に避難することが合理的な状況ないし自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていた点については自主的避難者と 同様であるから,避難した者と同額の損害を負ったと解すべきである。)。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①子供・妊婦は自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれた点について15万円,それ以外の者は自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えた点について5万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについては,妊婦・子供は月額3万円,それ以外の者は月額1万円と評価すべきである(避難の有無を問わない。)。なお,旧居住地が帰還困難区域等,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 なお,上記②の月額については,年3月時点で,福島市,桑折町,川俣町,郡山市,いわき市といった地域の放射 区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 なお,上記②の月額については,年3月時点で,福島市,桑折町,川俣町,郡山市,いわき市といった地域の放射線モニタリング地点で20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていたこと,平成23年4月時点においても,福島市,二本松市,伊達市,本宮市,桑折町,川俣町,郡山市といった地域において,20mSv/y相当値は下回るものの10mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていたことなどからすると,本件事故発生当初の時期(平成23年3~4月)における自主的避難等対象区域旧居住者の抱いた放射線被曝に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安は,一律に当該地域からの避難や屋内退避を必要とするほどのものではなかったとしても,旧緊急時避難準備区域(前記6),旧特定避難勧奨地点(前記7)といった必ずしも避難が強制されるものでない区域の旧居住者の抱いた不安と本質的に異なるものではなく,避難の必要性や可能性を検討し,自主的に避難する状況に追い込まれていたと いうべきであり,様々な事情により避難を選択しなかった旧居住者についても,そのような選択をすること自体に困難を強いられ,避難せずにそのまま居住することに対して恐怖・不安等を覚えたといえるのであって,これらの事情に鑑みれば,平成23年3月,4月の2か月については,より高額の慰謝料が認められるべきであるとも解されないではないが,当裁判所は,上記のような諸事情も考慮に入れた上で,以下の終期を定め,その期間中の額を均等にならして全体の損害額を算定するのを相当と認め,一律に,子供・妊婦については月額3万円,それ以外の者については月額1万円と評価すべきであると考える。 そして,上記②の避難生活 の期間中の額を均等にならして全体の損害額を算定するのを相当と認め,一律に,子供・妊婦については月額3万円,それ以外の者については月額1万円と評価すべきであると考える。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし(なお,本件事故後に子供・妊婦となった者についても同様とすることについて,後記のとおり。),終期は,平成23年5~12月時点においても,福島市,二本松市,伊達市,桑折町といった相当の人口,面積を有する範囲において,20mSv/y相当値は下回るものの,10mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていたこと,収束宣言により福島第一原発の冷温停止状態の達成が確認されたのが12月16日であること(前記第1の5)に,前記1の一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況等,取り分け,平成24年3月以降,おおむね空間線量率が5mSv/yを下回るようになったものの,なお福島市内,二本松市内,伊達市内,本宮市内,桑折町内,国見町内,大玉村内,郡山市内,須賀川市内,天栄村内,相馬市内等において5mSv/yを超える空間線量率が計測されることもあったことなどに鑑み,引き続き放射線被曝に対する恐怖・不安を抱いていた者が少なくないとうかがわれ,その恐怖・ 不安は合理的であるというべきであること,一審被告東電の自主賠償基準では,平成24年1~8月分の賠償をすることとされていること(前記第2の5)などを考え合わせると,本件事故から少なくとも1年間(平成24年2月まで)は,自主的避難等対象区域旧居住者の抱いた放射線被曝に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安は,引き続き賠償に値するものというべきであることから,終期は平成24年2月とするのが相当である。 したがって,避難生 象区域旧居住者の抱いた放射線被曝に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安は,引き続き賠償に値するものというべきであることから,終期は平成24年2月とするのが相当である。 したがって,避難生活の継続が合理的であると解される期間は,平成23年3月から平成24年2月までの12か月間であり,子供・妊婦についての慰謝料額は51万円,それ以外の者についての慰謝料額は17万円と評価すべきである(避難の有無,実際の避難期間を問わない。)。 ここで,本判決において,本グループの子供・妊婦とは,本件事故日から約1年後の平成24年2月29日までの間に18歳以下の子供であった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に妊娠していた期間がある者)を指すものとする(本件事故後である平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生して子供となった者又は妊娠して妊婦となった者も含まれるところ,これらの者ないしその世帯についても,出産又は妊娠以前から本件事故による影響が他の者や世帯に比して大きかったといえるため,損害額算定上の始期は一律に平成23年3月11日とする。)。 なお,一審被告東電は,科学的知見に基づけば,空間線量率が20mSv/yの被曝の健康リスクは,他の発がん要因によるリスクと比べても十分低い水準にあるのであるから,20mSv/yを大きく下回る地域の旧居住者には,放射線被曝による健康被害の現実の危険性が生じていたということはできない以上,低線量被曝の健康リスクの有無が広く周知され,自主的避難等対象区域旧居住者らが自ら yを大きく下回る地域の旧居住者には,放射線被曝による健康被害の現実の危険性が生じていたということはできない以上,低線量被曝の健康リスクの有無が広く周知され,自主的避難等対象区域旧居住者らが自らが置かれている状況が認識し得る状況に至った後は,もはや一審原告らの法的に保護された権利利益が本件事故によって侵害されていると評価することはできず,それ以降は本件事故を根拠とする慰謝料を認めることは相当ではないと主張する。 しかしながら,一審被告東電の指摘する低線量被曝の健康リスクに係る知見は,原子力発電所を設置・運営する一審被告東電や,それに関わる周辺業務従事者であればいざしらず,たまたま原子力発電所の事故の影響を受ける周辺地域に住んでいる一住民が本件事故前に知っていてしかるべき知見ではなく,さりとて,本件事故後に,様々なバイアスがかかった情報が飛び交う状況で,原子力発電所は安全であると喧伝してきた一審被告東電や電力会社側の情報や,同じく原子力発電所の安全性を担保し適切に監督してきたはずの一審被告国が主導した情報等が公表されたとしても,未曽有の事故に巻き込まれた状況で何を信用して良いか分からない心境にあったと推認される大多数の一審原告らにおいて,それらの情報の中から冷静に低線量被曝に係る正確な情報を取捨選択してこれを的確に把握することは,少なくとも本件事故後の相当の期間は困難を極める状況であったと優に認めることができる。 福島県内の自主的避難者の数が,本件事故後一旦減少したものの, 4月末以降は再び増加に転じ,9月22日の時点で3月15日時点の自主的避難者数を約1万人も上回っているという現象(前記告らを含む避難指示等を受けなかった地域の住民の避難行動に混乱を来たしていたことが見て取れるというべきである。 以上を踏まえ 3月15日時点の自主的避難者数を約1万人も上回っているという現象(前記告らを含む避難指示等を受けなかった地域の住民の避難行動に混乱を来たしていたことが見て取れるというべきである。 以上を踏まえると,一審被告東電のいう,低線量被曝の健康リスクの有無が広く周知され,自主的避難等対象区域旧居住者らが自らが置かれている状況が認識し得る状況に至るには,本件事故から最低でも1年は必要であったというべきであるから,上記判示に係る平成24年2月という終期の判断を覆さない。一審被告東電らの上記主張は失当である。 イ一審原告らに対する具体的な損害額全般上記アによれば,旧居住地が自主的避難等対象区域である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として,子供・妊婦については合計51万円,それ以外の者については合計17万円の支払がされるべきであるところ,「中間指針等による賠償額」(自主賠償基準)では,前記のとおり,1期賠償の対象者は40万円,2期賠償の対象者は8万円(うち妊婦は後記「それ以外の者」としての8万円と合計して16万円),双方の対象者は48万円,それ以外の者は8万円とされているため,各一審原告らは,これらの賠償額を超える部分が,それぞれ本訴において認容すべき額となる。 旧居住地が自主的避難等対象区域である提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「自主的避難等対象区域」と記載のある2821人,そこから取下一審原告を除い た一審原告は2673人であり,そのうち子供として提訴している者は同表の「子供・妊婦」欄に「○」と記載のある212人及び同欄に「◎」と記載のある一審原告T-3184,妊婦として提訴している者は同欄に「●」と記載のある21人及び一審原告T-3184である。したがって,子供又は 妊婦」欄に「○」と記載のある212人及び同欄に「◎」と記載のある一審原告T-3184,妊婦として提訴している者は同欄に「●」と記載のある21人及び一審原告T-3184である。したがって,子供又は妊婦として提訴している者を除いた一審原告ら2439人については,自主賠償基準の8万円を超える9万円が認容額となる。 一審原告T-3184について一審原告T-3184については,平成23年3月11日当時,子供であり(平成7年3月21日生)かつ妊婦であった(平成23年4月28日出産)ため,子供かつ妊婦として提訴しているところ,当裁判所は,同一審原告を妊婦としてのみ扱うこととする(同一審原告については,一審被告東電は,1期賠償においては妊婦と,2期賠償においては子供として扱い,48万円賠償することとしているため,同一審原告については,1期賠償及び2期賠償の合計48万円を超える3万円が認容額となる。)。 子供であった者として扱うべき一審原告について本グループにおいて子供であった者とは,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に18歳以下の子供であった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に自主的避難等対象区域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)をいうところ(上記ア),平成4年12月31日以前に出生した一審原告ら7人(一審原告T-1151,同T-3180,同T-2435,同T-0155,同T-1072, 同T-0782及び同T-1222)は,自主賠償基準によれば1期賠償のみの40万円の対象者であるから,同額を超える11万円が認容額となり,平成24年1月18日に出生した一審原告T-1857は,自主賠償基準によれば2期賠償のみの 2)は,自主賠償基準によれば1期賠償のみの40万円の対象者であるから,同額を超える11万円が認容額となり,平成24年1月18日に出生した一審原告T-1857は,自主賠償基準によれば2期賠償のみの8万円の対象者であるから,同額を超える43万円が認容額となり,平成24年3月1日以降に出生した一審原告ら7人(一審原告H-295,同H-298,同H-495,同T-497,同T-1095,同T-1566及び一審原告T-2731)については子供であった者に当たらない上に,本グループのそれ以外の者にも該当しないため,賠償すべき損害は認められない。そして,前記212人からこれらの15人を除いた197人については,いずれも,自主賠償基準によれば1期賠償及び2期賠償の合計48万円の対象者であるから,同額を超える3万円が認容額となる。 妊婦であった者として扱うべき一審原告について本グループにおいて妊婦であった者とは,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に妊娠していた期間がある者をいうところ(上記ア),まず,別紙7理由一覧表の「出産日」欄の日付がこの間である一審原告ら13人は,妊婦であった者となる。そして,そのうち,平成24年1月18日に出産した一審原告T-1856以外の12人は平成23年3月11日~同年12月31日の間に出産しているため,自主賠償基準によれば,いずれも1期賠償のみの40万円の対象者であるから,これらの一審原告らについては,40万円を超える11万円が認容額となり(ただし,一審原告T-3184については前記一審原告T-2509については後記のとおり, いずれも認容額は3万円となる。),一審原告T-1856は,自主賠償基準によれば,1期賠償及び2期賠償の合計48万円の対象者であるから,同額を超える3 09については後記のとおり, いずれも認容額は3万円となる。),一審原告T-1856は,自主賠償基準によれば,1期賠償及び2期賠償の合計48万円の対象者であるから,同額を超える3万円が認容額となる。 次に,平成24年3月1日以降に出産した一審原告は,出産日順に,平成24年3月2日出産の一審原告T-0495,同年5月7日出産の一審原告H-0350,同年9月19日出産の一審原告T-0656,平成25年2月3日出産の一審原告T-1565,同年3月18日出産の一審原告T-1515,同年6月20日出産の一審原告H-0074,平成26年3月14日出産の一審原告H-0492,同月15日出産の一審原告T-0046,平成27年5月13日出産の一審原告H-0343の9人であるところ(なお,一審原告T-2509及び同T-3154の2人はそれぞれ,平成25年2月24日,平成26年5月12日に出産しているが,いずれも,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間にも出産しているため,ここでは数に入れず,上記平成23年3月11日~同年12月31日の間に出産した12人の中に入れている。もっとも,一審原告T-2509については,一審被告東電は,2期賠償の対象ともしているため,同一審原告については,1期賠償及び2期賠償の合計48万円を超える3万円が認容額となる。),このうち,一審原告T-0495,一審原告H-0350及び一審原告T-0656の3人は,平成24年2月29日までに妊娠していた期間があるものと推認できるため,妊婦であった者として扱い,その余の6人は子供・妊婦以外の者として扱うこととする。そして,妊婦であった者として扱う上記の3人は,自主賠償基準によれば,いずれも1期賠償及び2期賠償の合計 48万円の対象者であ その余の6人は子供・妊婦以外の者として扱うこととする。そして,妊婦であった者として扱う上記の3人は,自主賠償基準によれば,いずれも1期賠償及び2期賠償の合計 48万円の対象者であるから,同額を超える3万円が認容額となる。一方,妊婦であった者として扱えない上記の6人のうち,一審原告T-1565,同T-1515,同H-0074の3人は,自主賠償基準によれば,いずれも2期賠償及び子供・妊婦以外の大人への賠償の合計16万円の対象者であるから,これらの一審原告らについては,16万円を超える1万円が認容額となり,残りの一審原告H-0492,同T-0046,同H-0343の3人は,自主賠償基準によれば子供・妊婦以外の大人への賠償のみの8万円の対象者であるから,これらの一審原告らについては,子供又は妊婦として提訴しなかった一審原告らと同様に,8万円を超える9万円が認容額となる。 旧居住地が県南地域及び宮城県丸森町である一審原告らについて認定事実ア県南地域及び宮城県丸森町の概要福島県の県南地域(白河市,西郷村,泉崎村,中島村,矢吹町,棚倉町,矢祭町,塙町,鮫川村)は,福島第一原発からおよそ南西方面におおむね60~100km圏内に位置し,間に阿武隈高地を挟むものの奥羽山脈により隔てられていない9市町村であり(丙A47の1),宮城県丸森町は,福島第一原発からおよそ北北西方面におおむね45~70km圏内に位置し,福島第一原発からの距離はおおむね隣接する伊達市(前記7又は9のグループ)と等しい。 中間指針等では,これらの地域は賠償の対象とされていないが,一審被告東電の自主賠償基準では,上記10市町村に居住していた,①3月11日~12月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成4年3月12日~平成2 地域は賠償の対象とされていないが,一審被告東電の自主賠償基準では,上記10市町村に居住していた,①3月11日~12月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日 の者及び本件事故発生時に上記10市町村の旧居住者であった者から平成23年3月12日~12月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~平成23年12月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず20万円(1期賠償)を,②平成24年1月1日~同年8月31日の間に18歳以下である期間があった者(誕生日が平成5年1月2日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に上記10市町村の旧居住者であった者から平成23年3月12日~8月31日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成24年1月1日~8月31日の間に妊娠していた期間がある者)に対し,避難の有無を問わず4万円(2期賠償)を,それぞれ賠償することとしている。これに対して,上記①及び②以外の者は賠償の対象としていない。 なお,一審被告東電は,子供・妊婦か否かを問わず,追加的費用等として4万円を賠償することとしているところ(丙C24),一審被告東電は,これらを精神的損害等に対する慰謝料とは別の項目として支払う旨,自らのホームページにおいて整理していることなどから,これらについては精神的損害に対する賠償には当たらない。 イ各地域の状況平成23年3月県南地域及び宮城県丸森町の市町村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(丙C470,471,弁論の全趣旨)。 白河市に所在する県南合同庁舎の3月11日から同月14日までの空間線量率は0.06~0.09μ S は,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる(丙C470,471,弁論の全趣旨)。 白河市に所在する県南合同庁舎の3月11日から同月14日までの空間線量率は0.06~0.09μ Sv/h(0.11 ~0.26mSv/y相当)であったが,同月15日には7. 56μ Sv/h(39.58mSv/y相当),同月16日には4.1μ Sv/h(21.4mSv/y相当)といった,20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていた。さらに,同月17日~31日までは0.80~3.7μ Sv/h(4. 00~19.3mSv/y相当)であった。 宮城県丸森町(測定場所不明)で3月21日に測定された空間線量率は,1.48μ Sv/h(7.58mSv/y相当)であった(丙C466の2)。3月24日及び28日に町内で採取した水・農産物・原乳の放射能測定結果は,いずれも,ヨウ素・セシウム共に基準値を下回ったが,ホウレンソウは基準値(原子力施設等の防災対策に係る指針における摂取制限指標値)の約半分程度の数値が測定された(丙C466の3)。 平成23年4月県南合同庁舎の4月1日~19日までの空間線量率は0.67~0.78μ Sv/h(3.32~3.89mSv/y相当)であった。 鮫川村役場,西郷村役場,泉崎村役場,中島村役場,矢吹町役場,棚倉町役場,矢祭町役場,塙町役場の4月11日の空間線量率は,0.15~0.81μ Sv/h(0.58~4.05mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングの結果から計算した県南地域の空間線量率は0.05~1.40μ Sv/h(0.05~7.16mSv/y相当),平均0.13~0.81μ Sv/h(0.47~4.05mSv/y相当)であったが,これは,非生活 算した県南地域の空間線量率は0.05~1.40μ Sv/h(0.05~7.16mSv/y相当),平均0.13~0.81μ Sv/h(0.47~4.05mSv/y相当)であったが,これは,非生活圏である山林などを含んだ数値である。 宮城県丸森町では,4月24日~28日に町役場前ないし大内まちづくりセンターで測定した空間線量率は0.23~0. 28μ Sv/h(1~1.05mSv/y相当)であった(甲C381の1)。 平成23年5~12月西郷村が測定した,西郷村役場の5月23日~6月13日の空間線量率は0.58~0.65μ Sv/h(2.84~3.21mSv/y相当)であった。 白河市表郷庁舎,白河市大信庁舎,白河市東庁舎,矢吹町役場,西郷村役場,泉崎村役場,中島村役場,棚倉町役場,塙町役場,矢祭町役場,鮫川村役場の6月9日から12月28日までの空間線量率は0.10~0.91μ Sv/h(0.32~3. 21mSv/y相当)であった。別の資料では,平成23年8月17日~9月7日の間に,白河市内で1.2μ Sv/h(6. 11mSv/y相当)が記録された地点もあるとされる(丙A47の6)。 5月26日第2次航空機モニタリングから11月5日第4次航空機モニタリングまでの結果から計算した県南地域の空間線量率は0.05~1.80μ Sv/h(0.05~9.26mSv/y相当),平均0.11~0.95μ Sv/h(0.37~4.79mSv/y相当)であった。 宮城県丸森町では,町役場前の5月12日の空間線量率は0. 23μ Sv/h(1mSv/y相当),6月14日は0.18μSv/h(0.74mSv/y相当),庁内各地域32地点の6月22日の測定値は0.23~0.79(1~3.95mSv/y相当)であった 23μ Sv/h(1mSv/y相当),6月14日は0.18μSv/h(0.74mSv/y相当),庁内各地域32地点の6月22日の測定値は0.23~0.79(1~3.95mSv/y相当)であった。また,保育所・児童館及び各小中学校等 (小学校等はグラウンドから50cm,中学校はグラウンドから100cmで測定)における5月12日の測定結果は0.5~1.33μ Sv/h(2.42~6.89mSv/y相当),6月2~23日は0.36~1.2μ Sv/h(1.74~6. 11mSv/y相当)であった。その後,11月25~29日の町内37地点における測定値は,0.19~0.95(0.79~4.79mSv/y相当),宮城県が12月31日に測定した空間線量率は0.23μ Sv/h(1.00mSv/y相当)であった。町内の土壌検査では4月の時点でも上限値以下であり,4~11月に行われた町産の農林水産物の採取調査では,放射性セシウムが検出されるもいずれも基準値内であり,年末にかけて漸減した。(甲C381,丙C466)平成24年1~8月白河市表郷庁舎,白河市大信庁舎,白河市東庁舎,矢吹町役場,西郷村役場,泉崎村役場,中島村役場,棚倉町役場,塙町役場,矢祭町役場,鮫川村役場の平成24年1月4日の空間線量率は,0.10~0.61μ Sv/h(0.32~3.00mSv/y相当)であった。 白河市役所本庁,大信庁舎,表郷庁舎,東庁舎の平成24年4月1日から平成28年2月1日までの空間線量率は,0.048~0.301μ Sv/h(0.04~1.37mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した県南地域の空間線量率は0.05~1.10μ Sv/h(0.05~5.58mSv/y相当 04~1.37mSv/y相当)であった。 平成24年6月28日第5次航空機モニタリングの結果から計算した県南地域の空間線量率は0.05~1.10μ Sv/h(0.05~5.58mSv/y相当),平均0.14~0. 47μ Sv/h(0.53~2.26mSv/y相当)であった。 平成24年9月以降県南地域50箇所の平成24年9月3日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.05~0.44μ Sv/h(0. 05~2.11mSv/y相当)であった。 平成24年12月28日第6次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した県南地域の空間線量率は0.05~0.88μ Sv/h(0.05~4.42mSv/y相当),平均0.10~0. 48μ Sv/h(0.32~2.32mSv/y相当)であった。 平成23年4月29日第1次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した丸森町内の空間線量率は0.09~2.20μ Sv/h(0.26~11.37mSv/y相当),平均0.27~0. 65μ Sv/h(1.21~3.21mSv/y相当)であった。もっとも,これは非生活圏である山林などを含んだ数値である。 ウ各地域の自主的避難者数県南地域及び宮城県丸森町の各市町村における平成23年3月15日時点の自主的避難者の人数及び割合は,以下のとおりである(丙A26,47)。 市町村名H23.3.15 時点の自主的避難者数※H23.3.15 時点の自主的避難者数が人口に占める割合白河市 522 人0.8%西郷村 92 人0.5%泉崎村人0.9%中島村 主的避難者数※H23.3.15 時点の自主的避難者数が人口に占める割合白河市 522 人0.8%西郷村 92 人0.5%泉崎村人0.9%中島村 9 人0.2%矢吹町 365 人2.0%棚倉町 14 人0.1%矢祭町 0 人0%塙町 0 人0%鮫川村 0 人0%※ 避難者数には,地震又は津波による避難者を含む。 もっとも,福島県全体の自主的避難者の数は,本件事故発生直後から一度減少したものの,4月末以降はおおむね増加傾向にあるとされており,3月15日の自主的避難者数4万0256人に対して,3月25日2万3659人,4月22日2万2315人,5月22日3万6184人,6月30日3万4093人,7月28日4万1377人,8月25日4万7786人,9月22日5万0327人と推移した(丙A26,47)。 エ県南地域及び宮城県丸森町旧居住者の受けた被害県南地域及び宮城県丸森町においては,上記アのとおり,避難が強制ないし要請されたものではなく,いずれも福島第一原発から30km圏外であったことなどから,実質的に避難を余儀なくされたとまでいうことはできない。 もっとも,県南地域は,福島第一原発がある福島県内の自治体であり,しかも福島第一原発からおよそ南西方面におおむね60~100km圏内の奥羽山脈により隔てられていない位置に存し ていること,宮城県丸森町は,福島県外ではあるものの,福島県に食い込むような形で隣接した自治体であり,福島第一原発からおよそ北北西方面におおむね45~70km圏内に位置し,特定避難勧奨地点が市内に存在し自主的避難等対象区域でもある伊達市や,同じく自主的避難等対象区域である新地町とおおむね隣接し 福島第一原発からおよそ北北西方面におおむね45~70km圏内に位置し,特定避難勧奨地点が市内に存在し自主的避難等対象区域でもある伊達市や,同じく自主的避難等対象区域である新地町とおおむね隣接していることなどから,いずれも,福島第一原発との近接性という意味において自主的避難等対象区域と立地的にほぼ同等であるといえる。加えて,前記第3の3の低線量被曝に関する知見等,前記1の一審原告らの旧居住地ないし居住地の状況,上記イの各地域の概要等によれば,未曽有の事故である本件事故の発生当初に,福島第一原発の状況が安定しておらず,今後どのようにその被害が拡大するか不明で,自らが置かれた状況について十分な情報がない状況下にあって,県南地域及び宮城県丸森町旧居住者が,放射線被曝に対する恐怖や不安を感じ,これらの恐怖・不安から一時的に自主的に避難をすることには合理性が認められるというべきである。取り分け,胎児や子供は放射線感受性が高く,また妊婦には流産の危険があるなどの知見があり,子供・妊婦については,低線量被曝等の健康に対する不安や今後の本件事故の進展に対する不安がそれ以外の者に比して大きかったというべきであることを総合すると,自主的避難等対象区域と同様に,県南地域及び宮城県丸森町に居住していた子供・妊婦としては,自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていたということができる。 検討ア評価(損害額) ,県南地域又は宮城県丸森町を旧居住地とする一審原告らは,生活の本拠であった旧居住地から自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚え,取り分け子供・妊婦については自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていたというべきであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値 いえる程度の恐怖・不安を覚え,取り分け子供・妊婦については自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていたというべきであるから,一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる(なお,自主的に避難しなかった者についても,自主的に避難することが合理的な状況ないし自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれていた点については自主的避難者と同様であるから,避難した者と同額の損害を負ったと解すべきである。)。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①子供・妊婦は自主的に避難するのも無理はない状況に追い込まれた点について10万円,それ以外の者は自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えた点について3万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについては,妊婦・子供は月額2万円,それ以外の者は月額1万円と評価すべきである(避難の有無を問わない。)。なお,旧居住地が帰還困難区域等,旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域以外の一審原告らは,「ふるさと喪失」損害を主張していない。 そして,上記②の避難生活の継続は,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし(なお,本件事故後に子供・妊婦となった者についても同様とすることについて,後記のとおり。),点で白河市において少なくとも2日間にわたり20mSv/y相当値を超える空間線量率が計測されていたところ,本グループの 中で西郷村以外の町村は福島第一原発からの距離が白河市とおおむね同等かより近い場所に位置すること,平成23年4~12月においても,5mSv/y相当値前後の空間線量率が計測される地点が数か所存在していたこと,収束宣言により福島第一原発の冷温 が白河市とおおむね同等かより近い場所に位置すること,平成23年4~12月においても,5mSv/y相当値前後の空間線量率が計測される地点が数か所存在していたこと,収束宣言により福島第一原発の冷温停止状態の達成が確認されたのが12月16日であること(前記第1の5),平成24年になってもなお5mSv/y相当を超える空間線量率が計測される地点もあったこと,他方で,原賠審は,12月6日に公表した中間指針第一次追補において,政府等による避難指示等対象区域外については,上記9の自主的避難等対象区域として23市町村を選別した上で,この区域の居住者に対する賠償基準を定め,それ以外の区域については一律の賠償基準は定めなかったことなどを総合的に考慮すると,平成23年12月までは,県南地域及び宮城県丸森町旧居住者の抱いた放射線被曝に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安は,引き続き賠償に値するものというべきであることから,子供・妊婦以外の者については,平成23年12月とすべきである。また,子供・妊婦については,前記のとおり,それ以外の者に比して低線量被曝等の健康に対する不安や今後の本件事故の進展に対する不安が大きかったというべきであるところ,県南地域及び宮城県丸森町は,平成24年1月以降,おおむね空間線量率が5mSv/yを下回るようになったものの,なお航空機モニタリングでは5mSv/yを超える空間線量率が計測されることもあったことなどに鑑み,引き続き放射線被曝に対する恐怖・不安を抱いていた子供・妊婦が少なくないとうかがわれ,その恐怖・不安は合理的であるというべきであること,一審被告東電の自主賠償基準では,平成24年1~8月分の賠償をすることとされていること(前 記第2の5)などを考慮すれば,終期は平成24年2月とするのが あるというべきであること,一審被告東電の自主賠償基準では,平成24年1~8月分の賠償をすることとされていること(前 記第2の5)などを考慮すれば,終期は平成24年2月とするのが相当である(終期以前に子供又は妊婦ではなくなった者についても,上記恐怖・不安ないしその影響は継続したものと考えられるため,同様とする。)。したがって,避難生活の継続が合理的であると解される期間は,子供・妊婦については,平成23年3月から平成24年2月までの12か月間であり,その点についての慰謝料額は24万円,それ以外の者については,平成23年3月から同年12月までの10か月間であり,その点についての慰謝料額は10万円と評価すべきである(避難の有無,実際の避難期間を問わない。)。 ここで,本判決において,本グループの子供・妊婦とは,自主的避難等対象区域のグループと同様,本件事故日から約1年後の平成24年2月29日までの間に18歳以下の子供であった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に県南地域又は宮城県丸森町旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に妊娠していた期間がある者)を指すものとする(本件事故後である平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生して子供となった者又は妊娠して妊婦となった者も含まれるところ,これらの者ないしその世帯についても,出産又は妊娠以前から本件事故による影響が他の者や世帯に比して大きかったといえるため,損害額算定上の始期は一律に平成23年3月11日とすることとする。)。 なお,一審被告東電は,県南地域及び宮城県丸森町が福島第一原発から離れており,基本的に避 世帯に比して大きかったといえるため,損害額算定上の始期は一律に平成23年3月11日とすることとする。)。 なお,一審被告東電は,県南地域及び宮城県丸森町が福島第一原発から離れており,基本的に避難指示等対象区域に近接してい ないという立地的な観点や,科学的知見に基づけば,空間線量率が20mSv/yの被曝の健康リスクは,他の発がん要因によるリスクと比べても十分低い水準にあるところ,県南地域及び宮城県丸森町では,一時的にも20mSv/y相当値を観測した地点はなく,遅くとも4月3日以降は1μ Sv/hを下回っていたこと,この地域の大部分の住民が避難をせずに滞在していたこと(上故直後からおおむね復旧していたこと(上,放射線やその健康被害に関する情報提供は本件事故直後から新聞等により連日報道され,生活には支障がなく,冷静に対応すべきであることなどが広く情報提供されていたことなどからすれば,県南地域及び宮城県丸森町に居住していた住民については,本件事故の放射線の影響によって法律上保護された利益が侵害されたという状況にはないと主張する。 しかしながら,県南地域は福島第一原発からの距離がおおむね60~100km圏内に位置しているところ,これは,やはり同様に100km圏内に位置する自主的避難等対象区域の23市町村と立地的には同等といえるし,宮城県丸森町に至っては,隣接県ではあるものの,福島第一原発からおおむね45~70km圏内と,より福島第一原発に近接しているのであるから,本グループの区域に居住する住民の心理的には,自主的避難等対象区域と同等程度に福島第一原発による影響を考えざるを得なかったといえる。また,一審被告東電の指摘する低線量被曝の健康リスクに係る知見に関しては,一審原告らにおいて,数ある情報の中から冷静に低線量 区域と同等程度に福島第一原発による影響を考えざるを得なかったといえる。また,一審被告東電の指摘する低線量被曝の健康リスクに係る知見に関しては,一審原告らにおいて,数ある情報の中から冷静に低線量被曝に係る正確な情報を取捨選択してこれを的確に把握することが少なくとも本件事故後数年間は困難を極める状況 であったと優に認めることができる点は,自主的避難等対象区域グループの項(前記9)で説示したところと同様であって,福島県内の自主的避難者の数が,本件事故後一旦減少したものの,4月末以降は再び増加に転じ,9月22日の時点で3月15日時点の自主的避難者数を約1万人も上回っているという現象(上ウ)からも,本件事故後の情報が錯綜し,本グループの一審原告らを含む避難指示等を受けなかった地域の住民の避難行動に混乱を来たしていたことが見て取れるというべきである。もっとも,本グループの空間線量率は,自主的避難等対象区域よりは低かったことも事実である。 以上によれば,一審被告東電らの上記主張を踏まえても,自主的避難等対象区域より終期を早くしつつ,避難中の損害額についても若干低廉なものとした上で,県南地域及び宮城県丸森町について賠償すべき損害を認めた前記判断を覆さない。 イ一審原告らに対する具体的な損害額全般上記アによれば,旧居住地が県南地域及び宮城県丸森町である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として,妊婦・子供については合計34万円,それ以外の者については合計13万円の支払がされるべきであるところ,「中間指針等による賠象者は20万円,2期賠償の対象者は4万円,双方の対象者は24万円,それ以外の者は0円とされているため,各一審原告らは,これらの賠償額を超える部分が,それぞれ本訴において認容すべき額となる。 象者は20万円,2期賠償の対象者は4万円,双方の対象者は24万円,それ以外の者は0円とされているため,各一審原告らは,これらの賠償額を超える部分が,それぞれ本訴において認容すべき額となる。 旧居住地が県南地域又は宮城県丸森町である提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「県南地域」又は「宮城県丸森町」と記載のある277人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は270人(うち子供として提訴している者は同表の「子供・妊婦」欄に「○」と記載のある45人,妊婦として提訴している者は同欄に「●」と記載されている3人)である。したがって,子供又は妊婦として提訴している者を除いた一審原告ら222人については,自主賠償基準の0円を超える13万円が認容額となる。 子供であった者として扱うべき一審原告について本グループにおいて子供であった者とは,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に18歳以下の子供であった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に県南地域又は宮城県丸森町旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)をいうところ(上記ア),本訴において本グループの子供として提訴している一審原告らは,いずれも上記に該当する。 そして,平成4年12月31日以前に出生した一審原告T-2208及び同T-2797は,自主賠償基準によれば1期賠償のみの20万円の対象者であるから,同額を超える14万円が認容額となり,本グループの子供として提訴しているその余の一審原告ら43人(平成23年3月12日以降に生まれた,一審原告T-3257(平成23年6月7日出生)及び一審原告H-0215(平成23年12月1日出生)も含む。)は,自主賠償 訴しているその余の一審原告ら43人(平成23年3月12日以降に生まれた,一審原告T-3257(平成23年6月7日出生)及び一審原告H-0215(平成23年12月1日出生)も含む。)は,自主賠償基準によれば,いずれも1期賠償及び2期賠償の合計2 4万円の対象者であるから,同額を超える10万円が認容額となる。 妊婦であった者として扱うべき一審原告について本グループにおいて妊婦であった者とは,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に妊娠していた期間がある者をいうところ(上記ア),本訴における本グループの妊婦として提訴している一審原告H-0213,一審原告T-2229及び一審原告T-3148の3名はいずれも上記に該当する。 なお,一審原告H-0213は平成23年12月1日に,一審原告T-3148は平成23年6月7日に,それぞれ出産し,一審原告T-2229は出産しなかったところ,自主賠償基準によれば,いずれも1期賠償のみの20万円の対象者であるから,これらの一審原告らについては,20万円を超える14万円が認容額となる。 11 旧居住地が上記3~10以外の地域である一審原告らについて会津地域ア認定事実会津地域の概要福島県は,南から北へ連なる阿武隈高地と奥羽山脈によって,東から,阿武隈高地以東の浜通り,阿武隈高地と奥羽山脈に挟まれた中通り,奥羽山脈以西の会津の3つに分けられるところ,会津(会津地域(会津若松市,喜多方市,北塩原村,西会津町,磐梯町,猪苗代町,会津坂下町,湯川村,柳津町,三島町,金山町,昭和村,会津美里村の13市町村)及び南会津地域(下郷町,檜枝岐村,只見町,南会津町の4町村)に分けられる。以下合わせて「会津地域」という。)は,福島第一原発からおよそ8 ,金山町,昭和村,会津美里村の13市町村)及び南会津地域(下郷町,檜枝岐村,只見町,南会津町の4町村)に分けられる。以下合わせて「会津地域」という。)は,福島第一原発からおよそ8 0~140km圏内にあり,その間には阿武隈高地及び奥羽山脈が南北に走っている(乙A47の1)。会津地域を旧居住地とする提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「区域外(会津地域)」と記載のある204人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は184人(うち子供として提訴している者は同表の「子供・妊婦」欄に「○」と記載のある20人,妊婦として提訴している者は同欄に「●」と記載のある5人)である。 会津地域は,全中間指針によっても,自主賠償基準によっても,一律の賠償の基準は定められていない。 会津地域の状況会津若松市に所在する会津合同庁舎,南会津町に所在する南会津合同庁舎の空間線量率は,3月15日には1.08~1. 18μ Sv/h(5.47~6.00mSv/y相当)であったが,3月16日には0.09~0.44μ Sv/h(0.26~2.11mSv/y相当)に落ち着いた。 南会津町役場南郷総合支所,伊南総合支所,舘総合支所,下郷町役場,只見町役場,檜枝岐村役場の6月1日から10月11日までの空間線量率は,0.05~0.17μ Sv/h(0. 05~0.68mSv/y相当)であった。 会津地域のモニタリング地点の平成24年4月1日から平成29年3月2日までの空間線量率は,0.02~0.19μ Sv/h(0~0.79mSv/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した会津地域の空間線量率は0.04~0.74μ Sv/h(0~3. v/y相当)であった。 4月29日第1次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した会津地域の空間線量率は0.04~0.74μ Sv/h(0~3. 68mSv/y相当),平均0.06~0.28μ Sv/h(0. 11~1.26mSv/y相当)であった。 会津地域の市町村の公共サービス,生活関連サービスは,本件事故直後からおおむね復旧していたものと認められる。 会津地域の自主的避難者数会津地域の各市町村における平成23年3月15日時点の自主的避難者の人数及び割合は,以下のとおりである。 市町村名H23.3.15 時点の自主的避難者数※H23.3.15 時点の自主的避難者数が人口に占める割合会津若松市 99 人0.1%猪苗代町 3 人0.0%その他 0 人0%※ 避難者数には,地震又は津波による避難者を含む。 なお,同日時点で,避難区域からの避難者を,会津若松市は247人,猪苗代町は473人,喜多方市は2900人,会津坂下町は19人をそれぞれ受け入れている。 (丙A26,47)イ一審原告らの損害会津地域旧居住者の損害会津地域の空間線量率が,3月15日の最も高かったときでも5mSv/y相当値をわずかに上回る程度であり,その後はおおむね5mSv/y相当値を下回っていたことなどからすると,会津地域旧居住者が被曝による健康影響に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安,被曝回避措置による生活上の支障などを感じていたとしても,賠償すべき損害があるとは認められない。 他方,成人よりも放射線感受性が強いとされる子供・妊婦については,会津地域が福島第一原発と同一の福島県の一地域で どを感じていたとしても,賠償すべき損害があるとは認められない。 他方,成人よりも放射線感受性が強いとされる子供・妊婦については,会津地域が福島第一原発と同一の福島県の一地域であること,一旦でも5mSv/y相当値を上回るような放射線が観測された地域の子供・妊婦が,その後の見通しも分からない中で恐怖・不安を覚えて自主的に避難すること自体は合理性があり,本件事故と相当因果関係があるというべきである。もっとも,会津地域は立地的に福島第一原発とは相当離れているその後の放射線値),自主的避難者はごくわずかであり,他方で避難者の受入人数は相当数に上っている月以上にわたる避難継続は本件事故と相当因果関係があるということはできない。 ここで,本判決において,本グループの子供・妊婦とは,自主的避難等対象区域等のグループと同様,本件事故日から約1年後の平成24年2月29日までの間に18歳以下の子供であった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者及び本件事故発生時に会津地域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)及び妊婦であった者(平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に妊娠していた期間がある者)を指すものとする(本件事故後である平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生して子供となった者又は妊娠して妊婦となった者も含まれるところ,これらの者ないしその世帯についても,出産又は妊娠以前から本件事故による影響が他の者や世帯に比して 大きかったといえるため,損害額算定上の始期は一律に平成23年3月11日とすることとする。)。 一審原告らに対する具体的な損害額 ち,子供・妊婦については自主的に避難することが合理的といえる程度の たといえるため,損害額算定上の始期は一律に平成23年3月11日とすることとする。)。 一審原告らに対する具体的な損害額 ち,子供・妊婦については自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えていたというべきであるから,これらの一審原告らが平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められ(なお,自主的に避難しなかった子供・妊婦についても,自主的に避難することが合理的な状況であった点については自主的避難者と同様であるから,避難者した者と同額の損害を負ったと解すべきである。),その額は,①子供・妊婦が自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えた点について5万円,②避難生活1か月相当分として1万円と評価すべきである(避難の有無を問わない。)。 以上によれば旧居住地が会津地域である一審原告らに対しては,精神的損害に係る賠償として,子供・妊婦について,合計6万円の支払がなされるべきであるところ,これらの者に対する「中間指針等による賠償額」は0円であるため,上記6万円が,本訴において認容すべき額となる。 会津地域を旧居住地とするその他の一審原告らには,賠償すべき損害は生じておらず,請求は認められない。 子供であった者として扱うべき一審原告について本グループにおいて子供であった者とは,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に18歳以下の子供であった者(誕生日が平成4年3月12日~平成23年3月11日の者 及び本件事故発生時に会津地域旧居住者であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)をいうところ(上記),本訴において本グループの子供として提訴している一審原告らのうち,一審原告T-1553,同T- であった者から平成23年3月12日~平成24年2月29日の間に出生した者)をいうところ(上記),本訴において本グループの子供として提訴している一審原告らのうち,一審原告T-1553,同T-1885,同T-1995,同T-2668の4人は,いずれも平成24年3月1日以降に出生した者であるため,本グループにいう「子供」には当たらず,請求は認められない。 妊婦であった者として扱うべき一審原告について本グループにおいて妊婦であった者とは,平成23年3月11日~平成24年2月29日の間に妊娠していた期間がある者をいうところまず,この間に出産した一審原告2人(一審原告T-1887及び同T-1592)は妊婦であった者となる。次に,平成24年3月1日以降に出産した一審原告は,出産日順に,平成24年11月20日出産の一審原告T-2667,平成25年2月20日出産の同T-1002,同年5月7日出産の同T-1993の3人いるところ,このうち,一審原告T-2667は平成24年2月29日までに妊娠していた期間があるものと推認できるため,妊婦であった者として扱い,その余の2人は本グループにいう「妊婦」には当たらず,請求は認められない。 宮城県(丸森町を除く。)ア認定事実宮城県(丸森町を除く。)の概要宮城県は,福島県の北方,福島原発からおよそ45~95km離れた地点において福島県と接している。このうち,福島第一原発から最も近い丸森町は県南地域及び宮城県丸森町のグル ープ(前記10)に入っているため,本グループにおいては,宮城県のうち丸森町以外(以下本グループの説示においては単に「宮城県」という。)を旧居住地とする者を対象とする。宮城県を旧居住地とする提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に は,宮城県のうち丸森町以外(以下本グループの説示においては単に「宮城県」という。)を旧居住地とする者を対象とする。宮城県を旧居住地とする提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「区域外(宮城県)」と記載のある38人,そこから取下一審原告を除いた一審原告は28人(うち子供として提訴している者は同表の「子供・妊婦」欄に「○」と記載のある3人,妊婦として提訴している者はいない。)であり,その地域と人数の内訳は以下のとおりである。 牡鹿郡女川町1人塩竈市 2人仙台市9人(うち子供として提訴した者3人)多賀城市 1人名取市閖上 2人白石市11人柴田郡大河原町2人宮城県は,全中間指針によっても,自主賠償基準によっても,一律の賠償の基準は定められていない。 宮城県の状況宮城県仙台市における空間線量率は,平成23年3月11日から平成24年10月31日まで,1mSv/y相当値(0. 23μ Sv/h)を下回っている。 宮城県の測定した,丸森町を除く宮城県各市町村の平成23年12月1日の空間線量率は,0.06~0.17μ Sv/h(0.11~0.68mSv/y相当)であった。 宮城県白石市内147箇所の3月9日から平成24年5月1日までの空間線量率は,0.09~0.67μ Sv/h(0.26~3.32mSv/y相当)であった。白石市内168箇所の空間線量率は,平成24年に0.09~0.70μ Sv/h(0.26~3.47mSv/y相当),平成25年に0.06~0.44μ Sv/h(0.11~2.11mSv/y相当),平成26年に0.06~0.27μ Sv/h(0.11~1.21mSv/y相当),平成27年に0.05~ /y相当),平成25年に0.06~0.44μ Sv/h(0.11~2.11mSv/y相当),平成26年に0.06~0.27μ Sv/h(0.11~1.21mSv/y相当),平成27年に0.05~0.25μ Sv/h(0.05~1.11mSv/y相当)であった。 平成23年4月29日第1次航空機モニタリングから平成25年11月19日第8次航空機モニタリングまでの結果から計算した宮城県内の空間線量率は0.04~1.30μ Sv/h(0~6.6mSv/y相当),平均0.05~0.39μ Sv/h(0.05~1.84mSv/y相当)であった。 宮城県各市町村の公共サービス,生活関連サービスは,本件地震及び本件津波の影響は措くと,本件事故による影響は軽微なものにとどまっていた。 宮城県内における本件事故関係の報道本件事故のあった3月11日から4月10日までの1か月間に宮城県内において報道された新聞(河北新報)記事の概要(主に見出しの抜粋)は以下のとおりである(甲C389)。 3月14日「福島第1 建屋爆発」「初の炉心溶融」「放射能漏れ半径20キロ避難指示」「原子力信用失墜」「女川で放射線測定値上昇」「8万人の避難本格化」「福島第一原発の半径20キロ圏内と,第2原発の半径1 0キロ圏内に暮らす住民の避難が13日,本格化した」3月15日「3号機水素爆発2人被ばく」「メルトダウン危機放射能拡散の懸念」「福島第1・第2原発事態深刻化 「冷温停止」不調続く」「福島第1燃料露出「祈るしかない」相次ぐ危機に住民緊迫」3月16日「高濃度放射能漏出」「福島第1 2号機格納容器損傷4号機火災」「半径30キロ屋内退避」「安全の「壁」次々崩壊底なし止まらぬ事故」「放射能漏れ関東にも」「郡山で130倍検出」 3月16日「高濃度放射能漏出」「福島第1 2号機格納容器損傷4号機火災」「半径30キロ屋内退避」「安全の「壁」次々崩壊底なし止まらぬ事故」「放射能漏れ関東にも」「郡山で130倍検出」3月17日「福島市水道水に微量放射性物質」「放射線量宮城4倍過去最大比」「事故評価最悪「レベル7」も米シンクタンクなど指摘」「「安心の地」求め浪江から新潟へ」3月18日「水の効果専門家は疑問符」「一時的な対処療法」「福島市高い放射線量」「中通り地方,降雪が影響か」「食品に放射能基準値」「新潟・埼玉大量受け入れ」3月19日「福島・原発危機正念場」「燃料冷却「対症療法」には限界」「福島中通り放射線量依然高い値」3月20日「福島・双葉町「自治体疎開」」「さいたま市へ役場機能ごと1500人」「福島・放射線量浪江,飯館で高い数値」「保安院「長時間外にいないで」」「福島の原乳放射性物質茨城県産ホウレンソウも市場には出回らず」 3月21日「福島原発付近今日から東の風」「放射性物質陸側に」「南東の風と雨影響北西60キロ福島市で放射線高濃度」「放射性物質7都県検出」「大河原0.81マイクロシーベルト宮城県の放射線量」3月22日「福島第1 危機脱却足踏み 3号機発煙作業中断」「「灰色の煙」慌てる社員」「出荷自粛農家凍る」「福島,茨城,栃木,群馬のホウレンソウ,カキナ福島の原乳政府が出荷停止」「飯館「水道飲用控えて」福島放射性物質を検出」「大河原町で0.65マイクロシーベルト宮城県の放射線量」3月23日「自粛区域特定を会津若松市長県などに申し入れ」「伊達など福島5市町水道水の利用乳児は控えて厚労省要請」「岩手と秋田でも放射性物質検出」「首都圏でやや上昇全国の放射線量」 3月23日「自粛区域特定を会津若松市長県などに申し入れ」「伊達など福島5市町水道水の利用乳児は控えて厚労省要請」「岩手と秋田でも放射性物質検出」「首都圏でやや上昇全国の放射線量」「最大値は0. 57マイクロシーベルト女川除く宮城県内」3月24日「首相福島産野菜など摂取制限放射性物質基準超す」「濃度予想以上」「30キロ圏外の一部100ミリシーベルトの可能性官房長官が試算を公表」「東京でも乳児の基準越え水道水のヨウ素,1ヵ所」「最大値は0.50マイクロシーベルト女川除く宮城県内」「放射線量少なく健康被害小さい福島原発事故米医師が見解」3月25日「水道水東京,乳児の制限解除埼玉千葉など基準値越え」「最大値は山元0.56マイクロシーベルト女川除く宮城県内」 3月26日「宮城県知事「飲料水は安全」原乳も乳幼児摂取基準下回る」「最大値は0.42マイクロシーベルト女川除く宮城県内」「山形と米沢の水道放射性物質を検出国基準値は下回る」「国が放射性ヨウ素拡散試算北西南南西に高線量 30キロ圏外100ミリシーベルト超も」「原発周辺北西の風」3月27日「福島第1 放水口海水1250倍ヨウ素」「「危険な水」が障害」「水道水の乳児摂取制限郡山など3市町解除」3月28日「福島第1 2号機,1000ミリシーベルト以上建屋地下水たまり排出作業の妨げに」「福島苦渋の「疎開」 原発周辺の自治体避難生活長期化必至」「乳児の水道水摂取伊達市が再び制限」3月29日「福島第1 建屋外にも汚染水 2号機毎時1000ミリシーベルト超」3月30日「福島第1敷地プルトニウム微量検出保安院「燃料の損傷深刻」」「福島市13日ぶり3.00マイクロシーベルトを下回る 島第1 建屋外にも汚染水 2号機毎時1000ミリシーベルト超」3月30日「福島第1敷地プルトニウム微量検出保安院「燃料の損傷深刻」」「福島市13日ぶり3.00マイクロシーベルトを下回る福島県の放射線量」「福島7市町村の鶏卵からヨウ素規制値は下回る」「農水産物放射性物質検出されず千葉など4県」4月3日「福島第1 汚染水海へ流出 2号機保守管理穴に亀裂」「福島風評被害温泉地も悲鳴原発から遠い場所でもキャンセル次々」4月5日「福島第1 汚染水海に放出環境基準の500倍東電異例の措置」 4月6日「福島・飯舘村妊婦と乳幼児村外避難 1か月程度希望者を募集」4月10日「原発事故見えぬ将来 “ 漂流”続く福島の避難者双葉→県内転々→埼玉難しい「地域」の維持」イ一審原告らの損害宮城県旧居住者の損害宮城県内の空間線量率はおおむね5mSv/y相当値を下回っていたこと,福島第一原発とは異なる県で同原発からおおむね60km以上離れており,物理的かつ心理的な距離という観らに離れていると認められることなどを考慮すると,宮城県(丸森町を除く。)旧居住者が被曝による健康影響に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安,被曝回避措置による生活上の支障などを感じていたとしても,賠償すべき損害があるとは認められない。 なお,宮城県内における本件事故後1か月間の報道の概要はの中には,本件事故当時に吹いていた南東の風に放射性物質が乗ったため,福島第一原発の北西方向に高い空間線量率の地域が拡がっていることや,宮城県よりも遠方の岩手県や秋田県でも放射性物質が検出されたり首都圏の放射線量がやや上昇したりしたことなど,宮城県民にとっても少なからず本件事故による影響が及ぶ危 線量率の地域が拡がっていることや,宮城県よりも遠方の岩手県や秋田県でも放射性物質が検出されたり首都圏の放射線量がやや上昇したりしたことなど,宮城県民にとっても少なからず本件事故による影響が及ぶ危険に対する恐怖・不安を覚えるような内容もあったものの,他方で,宮城県内の空間線量率は毎日のように報道され,その値も福島県内と比べて一貫して低く,日を追うにつれて漸減していることや,県内の飲料水が安全であることなど,宮城県民に対しては本件 事故による影響はほぼないことも合わせて報道されていたといえるのであって,上記のような福島第一原発からの物理的・心理的距離等も総合的に考慮すれば,宮城県旧居住者には,本件事故の放射線の影響によって法律上保護された利益が侵害されたということはできない。 そして,成人よりも放射線感受性が強いとされる子供・妊婦については,上記のような報道に敏感であり,本件事故による放射線の影響に対して抱いた恐怖・不安はより具体的であったというべきではあるものの,なお,本訴における宮城県仙台市の子供として提訴した一審原告ら3人については,本件事故の放射線の影響によって法律上保護された利益が侵害されたとまではいえない。 一審原告らに対する具体的な損害額 宮城県を旧居住者とする一審原告らには,賠償すべき損害は生じておらず,請求は認められない。 茨城県ア認定事実茨城県の概要茨城県は福島県の南方,福島原発からおよそ65~85km離れた地点において福島県と接している。茨城県を旧居住地とする提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「区域外(茨城県)」と記載のある11人,そこから取下一審原告を除いた一審原告(死亡一審原告はいない。)は10人(うち子供として提訴している者は同表 審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「区域外(茨城県)」と記載のある11人,そこから取下一審原告を除いた一審原告(死亡一審原告はいない。)は10人(うち子供として提訴している者は同表の「子供・妊婦」欄に「○」と記載のある2人,妊婦として提訴している者はいない。)であり,その地域と人数の内訳は以下のとおりである。 日立市 1人水戸市 1人 つくば市 2人牛久市 6人(うち子供として提訴した者2人)上記各市村の福島第一原発からの最短距離は,近い順に,日立市はおよそ90km,水戸市はおよそ120km,つくば市はおよそ150km,牛久市はおよそ180kmである。 茨城県は,全中間指針によっても,自主賠償基準によっても,一律の賠償の基準は定められていない。 茨城県の状況茨城県北茨城市の空間線量率は,3月15日に5.58μ Sv/h(29.16mSv/y相当),3月16日に15.8μSv/h(82.9mSv/y相当),3月18日には1.0μSv/h(5.1mSv/y相当),3月19日には0.956μ Sv/h(4.82mSv/y相当)という経過をたどった。 茨城県高萩市では,3月15日午前4時40分~午前8時40分に1.90μ Sv/h(10mSv/y相当)を超える高い空間線量率が計測され,午前6時には最高値4.470μ Sv/h(23.32mSv/y相当)が計測された。同日午前8時50分以降は1.90μ Sv/h(10mSv/y相当)を下回り,漸減した。(甲C391)茨城県那珂郡東海村では,3月15日に5μ Sv/h(26mSv/y相当)が計測された。 茨城県水戸市に所在する大場固定観測局(地上3.5m)で測定された空間線量率は,3月15 甲C391)茨城県那珂郡東海村では,3月15日に5μ Sv/h(26mSv/y相当)が計測された。 茨城県水戸市に所在する大場固定観測局(地上3.5m)で測定された空間線量率は,3月15日に3.63μ Sv/h(18.9mSv/y相当),3月21日に1.59μ Sv/h(8. 16mSv/y相当)という経過をたどり,5月16日以降は0.16μ Sv/h(0.63mSv/y相当)を下回った。 茨城県大洗町,茨城町,水戸市,東海村のいずれにおいても,3月15~16日の2日間のうち,3月15日午前7時30分前後に空間線量率が優位に高くなった(最高値は3.90μ Sv/h)。(甲C336)茨城県が測定した,固定放射線測定局のある水戸市,日立市,常陸太田市,高萩市,北茨城市,ひたちなか市,常陸大宮市,那珂市,鉾田市,茨城町,大洗町,東海村,大子町の,5月11日から7月27日までの空間線量率は,0.070~0.205μ Sv/h(0.16~0.87mSv/y相当),牛久市,つくば市を含む他の市町村のモニタリングカーによる同期間の空間線量率は,0.052~0.297μ Sv/h(0.06~1.35mSv/y相当)であった。 8月30日,放射性物質汚染対処特措法が公布され(平成24年1月1日に全面施行),12月28日,関東では茨城県で20市町,栃木県で8市町,群馬県で10市町,千葉県で9市,埼玉県で2市が,汚染状況重点調査地域(その地域内の本件事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域)として設定された。また,8月30日,文科省は,7月26日から8月2日まで茨城県で実施した航空機モニタリング調査の結果を発表した。 (甲C404)平成24年6月28日第5次航空 とが必要な地域)として設定された。また,8月30日,文科省は,7月26日から8月2日まで茨城県で実施した航空機モニタリング調査の結果を発表した。 (甲C404)平成24年6月28日第5次航空機モニタリングから平成24年12月28日第6次航空機モニタリングまでの結果から計算した牛久市の空間線量率は0.11~0.30μ Sv/h(0. 37~1.37mSv/y相当),平均0.19~0.24μ Sv/h(0.79~1.05mSv/y相当)であった。 茨城県各市町村の公共サービス,生活関連サービスは,本件地震及び本件津波の影響はともかく,本件事故の影響は軽微なものにとどまっていた(甲C386,丙C476~478)。もっとも,茨城県内では,本件事故直後(3月19日~3月24日)から水道水の汚染状況についての調査・分析がなされ,放射性セシウムが検出されたものは少なく数値も比較的低かったが,放射性ヨウ素については,3月20日頃から高くなり,東海村の水道水では3月23日に188.7ベクレル/kgが検出された(水道水の放射性ヨウ素が100ベクレル/kgを超える場合には,乳児による摂取を控えることとされている。)(甲C398)。 茨城県においては,本件事故直後から,北茨城市役所に可搬型モニタリングポストを設置し,その測定結果を定期的に公表すると共に,健康に影響があるレベルではない旨を周知していた(丙C475の1,2)。 茨城県牛久市,つくば市,東海村,北茨城市,高萩市で甲状腺検査や内部被ばく検査が実施された。また,茨城県常総市,我孫子市では甲状腺検査費用の一部助成が行われた。 (甲C400~403)3月17日,厚生労働省が「飲食物摂取制限に関する指標」を食品衛生法上の暫定規制値とし,これを上回る食品は食用に 総市,我孫子市では甲状腺検査費用の一部助成が行われた。 (甲C400~403)3月17日,厚生労働省が「飲食物摂取制限に関する指標」を食品衛生法上の暫定規制値とし,これを上回る食品は食用に供されることがないような対応を各自治体に要請したことを受けて,茨城県では,農林水産物の放射性物質検査を3月18日から本格的に開始し,暫定規制値を超える放射性物質が検出さ れた農林水産物については出荷・販売の自粛を要請した。平成24年3月15日,厚生労働省が,長期的な観点から食品の新基準値を設定し,同年4月1日に施行されたことから,県では,これに向けて,同年3月中から検査を実施し,100ベクレル/kgを超えた農林水産物については出荷自粛を要請すると共に,海産魚種については,沿海漁協において50ベクレル/kgを超えるものについては予め生産自粛を要請するなど,基準値を超えたものが市場に出回らないよう措置を講じた。平成25年3月31日時点で,特用林産物7品目,魚介類14品目,農畜産物1品目,野生鳥獣の肉類1品目の計23品目について,令和元年10月10日時点で,特用林産物6品目,魚介類2品目,野生鳥獣の肉類1品目の合計9品目について,国の出荷制限指示又は茨城県の出荷自粛要請が出されている。 (甲C392,393)イ一審原告らの損害茨城県水戸市及び日立市旧居住者の損害上記アのとおり,茨城県では,本件事故直後に,福島第一原発に最も近い北茨城市(福島第一原発からの最短距離はおよそ70km)で20mSv/y相当値を大きく超える空間線量率が計測されたり,高萩市や東海村において20mSv/y相当値を超える空間線量率が,水戸市において20mSv/y相当値に近い空間線量率が,それぞれ計測されたりした事実は認められるものの,こ 間線量率が計測されたり,高萩市や東海村において20mSv/y相当値を超える空間線量率が,水戸市において20mSv/y相当値に近い空間線量率が,それぞれ計測されたりした事実は認められるものの,これらの空間線量率はごく一時的なものであり,その後はすぐに低減していること,福島第一原発からの物理的・心理的な距離は県南地域及び宮城県丸森町のグループ(前記10)と比較しても遠いと認められることなどからすると,茨城県に おける農林水産物の出荷自粛等本件事故による様々な影響(上を最大限考慮してもなお,日立市及び水戸市を旧居住地とする一審原告らについては,成人よりも放射線感受性が強いとされる子供・妊婦であれば格別,それ以外の者が被曝により健康影響に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安,被曝回避措置による生活上の支障などを感じていたとしても,賠償すべき損害があるとまでは認められない(なお,上記のとおり,本訴においては,日立市又は水戸市を旧居住地とする子供・妊婦としての提訴者は一審原告らの中にいない。)。 茨城県つくば市及び牛久市旧居住者の損害茨城県牛久市及びつくば市については,本件事故直後の時期の空間線量率を認めるに足りる証拠はなく,立地的に,よりも福島第一原発からさらに遠く150km以上離れていることなどによれば,てもなお,子供・妊婦も含め,賠償すべき損害があるとは認められない。 一審原告らに対する具体的な損害額 のとおり,茨城県を旧居住者とする一審原告らには,賠償すべき損害は生じておらず,請求は認められない。 栃木県ア認定事実栃木県の概要栃木県は福島県の南方,福島第一原発からおよそ80~160km離れた地点において福島県と接している。栃木県を旧居住地とする提訴時一審原告は別紙 い。 栃木県ア認定事実栃木県の概要栃木県は福島県の南方,福島第一原発からおよそ80~160km離れた地点において福島県と接している。栃木県を旧居住地とする提訴時一審原告は別紙7理由一覧表の「避難指示区分等」欄に「区域外(栃木県)」と記載のある7人(うち子供と して提訴している者は同表の「子供・妊婦」欄に「○」と記載のある1人)であり(死亡一審原告及び取下一審原告はいない。),その地域と人数の内訳は以下のとおりである。 那須町 4人(うち子供として提訴した者1人)那須塩原市 1人宇都宮市 2人上記各市町の福島第一原発からの最短距離は,近い順に,那須町はおよそ80km,那須塩原市はおよそ90km,宇都宮市はおよそ130kmである。 栃木県は全中間指針によっても,自主賠償基準によっても,一律の賠償の基準は定められていない。 栃木県の状況栃木県における空間線量率は,3月15日に1.68μ Sv/h(8.63mSv/y相当),3月16日に0.337μ Sv/h(1.56mSv/y相当),3月18日に0.182μSv/h(0.75mSv/y)という経過をたどった。3月15~18日の那須町役場(4階建屋上サーベイメータ)で計測された空間線量率の最大測定値は3月15日の1.75μ Sv/h(9mSv/y相当),3月12~18日の宇都宮市所在の栃木県保健環境センター(地上から20mのモニタリングポスト)で計測された空間線量率の最大測定値は3月15日の1. 318μ Sv/h(6.73mSv/y相当)であった(甲C413)。 栃木県が測定した,宇都宮市(保健環境センター。地上50cm),那須町(那須町立図書館),日光市(今市健康福祉センター),真岡市(芳賀庁舎 h(6.73mSv/y相当)であった(甲C413)。 栃木県が測定した,宇都宮市(保健環境センター。地上50cm),那須町(那須町立図書館),日光市(今市健康福祉センター),真岡市(芳賀庁舎),小山市(小山庁舎),那珂川町(山 村開発センター),佐野市(安蘇庁舎)の,5月13日から6月1日までの空間線量率は,0.05~0.45μ Sv/h(0. 05~2.16mSv/y相当)であった。 5月26日第2次航空機モニタリングから平成24年12月28日第6次航空機モニタリングまでの結果から計算した栃木県内の空間線量率は0.05~0.87μ Sv/h(0.05~4.37mSv/y相当),平均0.05~0.38μ Sv/h(0.05~1.79mSv/y相当)であった。 栃木県各市町村の公共サービス,生活関連サービスは,本件地震及び本件津波の影響はともかく,本件事故の影響は軽微なものにとどまっていた。もっとも,県内の全ての学校等(小中高校,幼稚園及び保育所)において5月13~19日に実施された放射線量調査の結果,1.0μ Sv/h(5.05mSv/y相当)以上が測定された学校等が31施設あったところ,この31施設はいずれも那須塩原市と那須町の学校等であり,6月20~21日に実施された調査においても0.75~1. 22μ Sv/h(3.74~6.21mSv/y相当)という計測値であった(甲C412)。 栃木県においては,本件事故後,放射能の影響調査等として,環境放射能の調査,水道水の放射能影響調査,教育機関等における放射線量調査,農林水産物の放射能モニタリング調査等,種々の施策を取った。また,落ち込んだ評判を回復させるための風評被害対策として,観光誘客活動,農産物の安全性PR活動の実施・支援等の施策を取った(甲C 量調査,農林水産物の放射能モニタリング調査等,種々の施策を取った。また,落ち込んだ評判を回復させるための風評被害対策として,観光誘客活動,農産物の安全性PR活動の実施・支援等の施策を取った(甲C413)。 県内において放射性物質の県産農林水産物への影響を確認するためのサンプリング調査が実施され,本件事故直後はホウレ ンソウやカキナ等の葉物野菜が,その後は茶葉やキノコ類,そして山菜類等多数の農林水産物について出荷制限措置が取られた(甲C411)。 県では,平成24年度以降,学校給食一食まるごと事後検査を実施してきたが,国の方針に基づき,平成27年度をもって終了した。なお,この検査により基準値を超える数値が検出されたことはなかった。 那須町では,本件事故などの影響により観光客が激減し,農畜産物等への風評被害の影響を大きく受けた。平成23年度の集計値では,年間の観光客入込み客数が約514万人から約390万人,宿泊客数が約167万人から約126万人とそれぞれ約25%の減少であった。これによる経済的損失は100億円以上とみられている。(甲C410)イ一審原告らの損害栃木県旧居住者の損害栃木県の空間線量率は,比較的高かった那須町でも最大測定値が9mSv/y相当と,10mSv/y相当にも届かない値であり,その翌日にはすぐに大きく低減していること,立地的にも,福島第一原発から一番近くてもおよそ80km離れていることなどを考慮すると,栃木県旧居住者が被曝による健康影響に対する不安,今後の本件事故の進展に対する不安,被曝回避措置による生活上の支障などを感じていたとしても,賠償すべき損害があるとは認められない。 他方,成人よりも放射線感受性が強いとされる子供・妊婦については,一旦でも5mSv/y相当 安,被曝回避措置による生活上の支障などを感じていたとしても,賠償すべき損害があるとは認められない。 他方,成人よりも放射線感受性が強いとされる子供・妊婦については,一旦でも5mSv/y相当値を上回るような放射線が観測された地域の子供・妊婦が,その後の見通しも分からな い中で恐怖・不安を覚えて自主的に避難すること自体は合理性があり,取り分け,本訴において栃木県旧居住者である子供・妊婦は本件事故当時子供(18歳以下)であった一審原告(T-2341)(平成7年7月21日出生)のみであるところ,同一審原告の旧居住地である那須町は,栃木県の自治体の中でも福島第一原発から最も近い約80km地点で福島県と接しており,同町の学校等では6月に実施された調査においても約5mSv/y相当の放射線が計測されたことなどに鑑みると,自主的に避難すること自体には合理性があり,本件事故と相当因果関係があるというべきである。 一審原告T-2341に対する具体的な損害額 T-2341については自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えていたというべきであるから,同一審原告が平穏生活権を侵害されたことは明らかであり,賠償に値する精神的苦痛を被ったものと認められる(なお,自主的に避難しなかったとしても,自主的に避難することが合理的な状況であった点については自主的避難者と同様であるから,避難者した者と同額の損害を負ったと解すべきである。)。 以上を前提に,平穏生活権侵害に基づく慰謝料の額を算定すると,その額は,①自主的に避難することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えた点について5万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについて,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,した状況等に することが合理的といえる程度の恐怖・不安を覚えた点について5万円,②避難生活の継続を余儀なくされたことについて,本件事故があった3月11日が属する月である平成23年3月を始期とし,した状況等に鑑みて,同年8月を終期として,月額1万円と評価すべきである(避難の有無を問わない。)。 以上によれば,那須町を旧居住地とする子供であった一審原告T-2341について,精神的損害に係る賠償として,合計11万円の支払がなされるべきであるところ,この者に対する「中間指針等による賠償額」は0円であるため,上記11万円が,本訴において認容すべき額となる。 栃木県を旧居住地とするその他の一審原告らには,賠償すべき損害は生じておらず,請求は認められない。 上記3~10以外の旧居住者の損害についてのまとめ以上によれば,「中間指針等による賠償額」を超える損害として,会津地域旧居住者のうち子供・妊婦19人については6万円を,栃木県那須町旧居住者の子供である一審原告T-2341には11万円を,それぞれ認める。 それ以外の者については,「中間指針等による賠償額」を超える損害があるとは認められない。 第5 弁済の抗弁 1 追加賠償項目一審被告東電は,「中間指針等による賠償額」を超える損害は認められないとしつつ,仮に認められるとしても,その少なくとも一部については弁済の抗弁が成立するとして,①ADR手続における個別事情に基づく賠償,②要介護等による精神的損害の賠償,③透析患者に対する精神的損害の賠償及び④避難に伴うペット喪失に係る精神的損害の賠償の4つの追加賠償項目について,弁済の抗弁を主張している。 原判決は,弁済の抗弁のうち,上記①について認め,②~④は認めなかったところ,当裁判所は,原判決と同様に,上記①については弁済 神的損害の賠償の4つの追加賠償項目について,弁済の抗弁を主張している。 原判決は,弁済の抗弁のうち,上記①について認め,②~④は認めなかったところ,当裁判所は,原判決と同様に,上記①については弁済の抗弁を認めるべきであり,②及び③については弁済の抗弁を認めるべきでないと考えるが,④については原判決と異なり弁済の抗弁を認 めるべきであると考える。 その理由は,それぞれ以下のとおりである。 ADR等増額賠償ADRにより「中間指針等による賠償額」を超えて支払われた精神的損害に対する賠償額は,当事者の合理的意思解釈により,本訴請求債権の元金に充当されると解するのが相当である(ADR手続による和解契約後に同種事由の継続による追加賠償がされた場合はその額も含む。)。 したがって,ADR等増額賠償を受けている一審原告らは,以下のとおりの認容額(単位:円)となる。 原告番号一審原告氏名子妊区域ADR等増額賠償認容額H-111 帰還困難300,0001,200,000H-483 帰還困難2,130,000 H-0096 居住制限2,220,000780,000H-0221 居住制限300,0002,700,000H-0109 解除準備2,550,000 H-0110 解除準備2,550,000 H-0312 解除準備200,0002,300,000H-0359 解除準備1,000,0001,500,000H-0436 解除準備900,0001,600,000H-0459 解除準備100,000 解除準備1,000,000 解除準備1,500,000 解除準備900,000 解除準備1,600,000 解除準備100,000 解除準備2,400,000 解除準備1,320,000 解除準備1,180,000 緊急時避難910,000 緊急時避難90,000 緊急時避難2,000,000 緊急時避難2,000,000 緊急時避難4,180,000 緊急時避難120,000 緊急時避難880,000 緊急時避難120,000 緊急時避難880,000 緊急時避難1,292,000 緊急時避難540,000 緊急時避難460,000 緊急時避難390,000 緊急時避難610,000 緊急時避難1,110,000 緊急時避難180,000 緊急時避難820,000 緊急時避難180,000 緊急時避難470,000 緊急時避難180,000 緊急時避難470,000 緊急時避難2,100,000 緊急時避難3,142,000 緊急時避難2,500,000 緊急時避難2,500,000 緊急時避難1,900,000 緊急時避難1,900,000 緊急時避難1,900,000 2,500,000 H-0431 緊急時避難1,900,000 H-0432 緊急時避難1,900,000 H-0435 緊急時避難1,900,000 H-0450 緊急時避難540,000460,000 H-0451 緊急時避難540,000460,000 H-0457 緊急時避難2,700,000 H-0458 緊急時避難3,600,000 H-0468 緊急時避難540,000460,000 H-0519 緊急時避難4,530,000 T-0132 緊急時避難40,000960,000 T-0135 緊急時避難140,000860,000 T-0139 緊急時避難3,100,000 T-0143 緊急時避難90,000910,000 T-0144 緊急時避難180,000820,000 T-0763 緊急時避難100,000900,000 T-0765 緊急時避難3,100,000 T-0766 緊急時避難3,100,000 T-0768 緊急時避難480,000520,000 T-0773 緊急時避難120,000880,000 T-0787 緊急時避難150,000850,000 T-0788 緊急時避難150,000850,000 T-0843 緊急時避難500,000500,000 T-1483 緊急時避難3,100,000 緊急時避難150,000850,000 緊急時避難500,000500,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難210,000790,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難180,000820,000 緊急時避難1,900,000 緊急時避難390,000610,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難90,000910,000 緊急時避難6,700,000 緊急時避難48,000952,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難3,100,000 緊急時避難930,000 緊急時避難3,100,000 一時避難144,000 一時避難900,000 一時避難100,000 自主的避難 一時避難144,000 T-842 ○一時避難900,000 T-2149 一時避難100,000 H-133 自主的避難980,000 H-0234 ○自主的避難100,000 H-370 自主的避難100,000 T-2115 自主的避難60,00030,000T-2119 自主的避難80,00010,000T-2841 自主的避難1,540,000 T-2842 自主的避難840,000 要介護者増額賠償一審被告東電は,一審原告H-34ら,避難指示等対象区域内に生活の本拠を有し,要介護状態等の事情がある者及び要介護者を介護している者に対して支払った追加賠償につき,弁済の抗弁を主張している。 ところで,中間指針等の性質は,前示の全中間指針策定に至る議論の経過(前記第2の6)にも現れているように,対象地域内の全住民におおむね共通して認められるべき賠償項目を考慮に入れた上で金額を決め,一律に当該基準に従って賠償することとした上で, 全住民に共通しない個別の事情については,それを具体的に特定した上で個別請求をすることも否定しないというものである。そして,本訴においても,一審原告らをグループ化し,当該グループの一審原告らに共通する損害項目を考慮に入れた上で損害額を一律に決めることとしているため,上記の中間指針等の性質と同質のものであって,そうであるからこそ,当裁判所が認めた損害額が「中間指針等による賠償額」を超える場合は,一律に当該グループの一審原告らの認容額とすべき理となる。そうすると,一審被告東電が,特定 質のものであって,そうであるからこそ,当裁判所が認めた損害額が「中間指針等による賠償額」を超える場合は,一律に当該グループの一審原告らの認容額とすべき理となる。そうすると,一審被告東電が,特定の一審原告について,全住民におおむね共通しない個別の事情を考慮して,これについて自主賠償基準を超える追加の賠償をしている場合は,特定の地域内の全住民に共通する損害の外側にある損害について一審被告東電が自主的に賠償を行ったものというべきであって,「中間指針等による賠償額」及び当裁判所が認めたグループごとの損害額が同一線上にあるのに対して,個別の事情に対する追加の賠償はこれとは別の線上にある事柄であるから,本訴における個別の認容額を定めるに当たって,その内側に属するものとして充当することは相当でないというべきである。 しかるに,一審被告東電が充当すべきであると主張している要介護者増額については,一審被告東電自身,その趣旨を,要介護状態等の事情がある者等に対し,避難等によって被った精神的苦痛が通常の避難者と比べて大きいことに係る損害の賠償であり,要介護状態等の個別の事情に基づき追加賠償したものであるとしていること(丙C183,弁論の全趣旨),要介護状態等の事情がある者等は全住民の中でおおむね共通しているとまではいえないことなどに照らすと,これは,全住民に共通する損害の外側にある損害というべき であるから,これに係る賠償額について,本訴における損害額に充当することは認めるべきではない。 したがって,自主賠償基準の要介護者等に対する増額賠償について,一審被告東電による弁済の抗弁は失当である。 透析賠償一審被告東電は,一審原告T-1732に対し,所定の要件を満たす透析患者に対する追加賠償として支払った4万円について,弁 額賠償について,一審被告東電による弁済の抗弁は失当である。 透析賠償一審被告東電は,一審原告T-1732に対し,所定の要件を満たす透析患者に対する追加賠償として支払った4万円について,弁済の抗弁を主張している。 しかしながら,この透析患者に対する追加賠償は,一審被告東電自身,その趣旨を,本件事故を原因として,透析患者が通常受けている頻度,及び時間の人工透析を十分に受けられない状況に置かれたことにより,生命の危険を伴うほど健康状態が悪化することへの恐怖と不安を抱き,日常生活の維持・継続が著しく阻害されたために生じた精神的損害に対する追加賠償したものであるとしていること(弁論の全趣旨),透析患者である者は全住民の中で一般的とまでいえないことなどに照らすと,これは,全住民に共通する損害の外側にある損害というべきであるから,これに係る賠償額について,本訴における損害額に充当することは認めるべきではない。 したがって,自主賠償基準の透析患者に対する増額賠償について,一審被告東電による弁済の抗弁は失当である。 ペット賠償一審被告東電は,一審原告H-53等,所定の要件を満たすペットと離別・死別した者に支払った追加賠償について,弁済の抗弁を主張している。 一審被告東電は,本件事故当時に避難指示区域に居住し,避難生活を余儀なくされたことにより,哺乳類(犬や猫等)や鳥類のペッ トと離別又は死別した者に対し,ペットの財産的価値と別個に,精神的損害の追加賠償を行っているところ(丙C184),住民がそれぞれ大事にしていた様々な日用品,趣味の物,思い出の物・自宅・庭,動物(ペットや家畜等)や植物等との離別は,個別にみれば各住民によって具体的な対象物は異なるものの,殆どの住民が等しく直面した事態であって,全住民に た様々な日用品,趣味の物,思い出の物・自宅・庭,動物(ペットや家畜等)や植物等との離別は,個別にみれば各住民によって具体的な対象物は異なるものの,殆どの住民が等しく直面した事態であって,全住民におおむね共通して生じた本件事故と相当因果関係のある損害であり,これによる精神的損害は,中間指針等や本訴における平穏生活権侵害による精神的損害と同一線上のものであるというべきであるところ,一審被告東電において上記のうちペットを取り上げて自主的に追加賠償をしているものというべきであるから,本訴において当裁判所が認めた損害に充当すべきである。 したがって,ペット賠償については,一審被告東電による弁済の抗弁は認められる。もっとも,後記2のとおり,世帯内融通は認めるべきではない。 以上を前提にすると,一審被告東電が別途賠償による弁済の抗弁を主張している一審原告らについての認容額は,以下のとおりとなる。 原告番号一審原告氏名区域ペット賠償認容額H-0053帰還困難100,0001,400,000H-0088帰還困難100,0001,400,000H-0091帰還困難100,0001,400,000H-0190帰還困難100,0001,400,000H-0233帰還困難100,0001,400,000H-0273 帰還困難100,0001,400,000 H-0485帰還困難100,0001,400,000H-0087居住制限100,0002,900,000H-0333居住制限100,0002,900,000H-0090解除準備100,0002,400,000 2 世帯内融 居住制限100,0002,900,000H-0333居住制限100,0002,900,000H-0090解除準備100,0002,400,000 2 世帯内融通について一審被告東電は,当審において,①一審被告東電による自主賠償は,世帯に属する被害者については,その世帯の代表者から世帯の構成員全員に支払われるべき賠償金を一括して請求を受け,これに対して一括して構成員全員分をまとめて支払っており,このような実態に鑑みれば,世帯の代表者は請求においても弁済の受領においても,権限をもって世帯の他の構成員を代理しているといえることから,形式上・外観上は世帯の代表者に対してのみ賠償金の支払がなされており,世帯の他の構成員に対しては特段支払がなされていないとしても,代表者に対する賠償金の支払は当該世帯の構成員全員に発生した損害を填補するものであること,②1審被告東京電力が自主賠償基準に基づいて支払っている賠償金の中には,生計基盤をなす財産的損害の賠償や,慰謝料のうちの生活費増加分等,世帯の構成員に共通する経済的利益の填補に充てられるべきものがあり,それらは支払の性質上も個々の被害者に対する損害の賠償に向けられたものではなく世帯の構成員全員に対して向けられたものであるため,こうした性質を有する自主賠償基準に基づく賠償金の支払については,個々の被害者に対する賠償金ではなく世帯全員に対する賠償金として認められなければならないこと,③取り分け自主的避難等対象区域においては,中間指針等による賠償の対象でありながらも被害の程度が小さいため,精神的損害と,世帯構成員全員に共通する部分がある損害(生活費増加分等)を明確に区別することが困難であって,賠償額の大部分が世帯構成員全員に 共通すると考えられ の程度が小さいため,精神的損害と,世帯構成員全員に共通する部分がある損害(生活費増加分等)を明確に区別することが困難であって,賠償額の大部分が世帯構成員全員に 共通すると考えられる場合の弁済については,一審被告東電による賠償は世帯内部で通算の上弁済に充当されなければならないことなどから,名目上は1人の一審原告に対してなされた支払であったとしても,世帯内部における構成員同士の弁済の融通が認められるべきであると主張する。 しかしながら,①一審被告東電が主張する自主賠償の手続は,一審被告東電が一審被告東電や被害者の便宜のために請求や賠償金受領等の窓口を世帯ごとに一本化した結果にすぎず,あくまでもそこで支払われている賠償金は個々人の被害項目を積算したものというべきである。また,②仮に世帯の構成員に共通する経済的利益の填補に充てられるべき費目があり,支払の性質上1世帯当たりいくらといった形で決められた慰謝料を,これを受領した者の属する世帯の他の構成員に係る本訴請求の一部弁済として充当すべきものも理論上あり得ると考えられるとしても,一審被告東電は,具体的に一審原告の誰が受領したどの慰謝料がそのような費目であるかについて主張していない。さらに,③自主的避難等対象区域は,「中間指針等による賠償額」は小さいとしても,被害の程度が小さいとは必ずしもいえず,一審被告東電が主張するような,精神的損害と世帯構成員全員に共通する部分がある損害(生活費増加分等)を明確に区別することが困難であって賠償額の大部分が世帯構成員全員に共通するとは考えられないし,この点を措いたとしても,前示の全中間指針策定の経過における議論等によれば(前記第2の6),生活費増加分など世帯構成員全員に共通する部分がある損害についても,各自の賠償基準を決める際の考慮 ないし,この点を措いたとしても,前示の全中間指針策定の経過における議論等によれば(前記第2の6),生活費増加分など世帯構成員全員に共通する部分がある損害についても,各自の賠償基準を決める際の考慮要素とされた上で「中間指針等による賠償額」が定められていることからすれば,このような損害は元々各自への賠償に割り振られているべきものであって,世帯構成員の一人に代表して支払われることが想定さ れているものではないから,一審被告東電による賠償を世帯内部で通算の上弁済に充当されなければならない性質のものとはいえない。 したがって,一審被告東電の上記主張は,いずれの理由においても失当である。 3 精神的損害以外の項目(費目間の融通)について一審被告東電は,①1個の加害行為による損害項目が複数にわたる場合でも,それらは実体法上同一の請求権の中の細目に過ぎず,訴訟物としても1個としてみるべきものと解されているため,そのような請求権に対する弁済が便宜上損害項目ごとに弁済額を示してなされている場合であっても,法的な効果としては,実体法上一つの請求権の総額に対して充当されるものとみるべきであること,②弁済の当事者の意思としても,1個の事故による損害について,法的に損害として認められる金額よりも多くの金額を弁済として支払った(過大に弁済した)費目がある一方,弁済が不足する他の費目がある場合,過大に弁済した費目の超過支払額を不当利得として返還を求めた上で,再度不足する費目に対する弁済として支払うことを意図しているとは考えられないため,訴訟物や請求権の個数の評価にかかわらず,費目間の融通が認められるべきであることなどから,本訴において,財産上の損害に対する賠償として,本来損害として認められる範囲を超えて賠償を行った部分(例えば「住居 や請求権の個数の評価にかかわらず,費目間の融通が認められるべきであることなどから,本訴において,財産上の損害に対する賠償として,本来損害として認められる範囲を超えて賠償を行った部分(例えば「住居確保損害」に対する賠償)については,慰謝料の支払に充当されるべきであると主張し,それを前提とすると,精神的損害以外の賠償項目も含めた全体の賠償状況を審理しなければ審理不尽の違法があると主張する。 しかしながら,1個の加害行為による損害項目が複数にわたる事案であって,被害者からの請求に対する弁済が便宜上損害項目ごとに弁済額を示してなされている場合に,当事者としては,当該弁済はそこ で示された損害項目に係るものに限定した上で,それ以外の項目に係る損害の有無や額,支払方法等については別途合意形成をするなり民事訴訟において解決をするなりの方法により解決を図ることを前提にして,取りあえず合意形成が可能な一部の項目のみを他の項目に先立って解決を図ることは往々にして行われることであって,かつ不合理とはいえない。現に,本件事故に係る損害賠償においても,大量に被害者からの請求を受けなければならない一審被告東電において,取りあえず,比較的損害の有無や額を確定しやすい項目である財産上の損害についての弁済を優先させ,被害者もその方針に応じたという実態があるものと優に推認することができる。したがって,①一審被告東電の主張するように,実体法上一つの請求権であり訴訟物としても1個とみるべきことから直ちに費目間の融通を行うべきであるとはいえず(なお,訴訟物の関係では,一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合に,同一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないとされ(最高裁昭和37年8月10日第二小法 関係では,一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合に,同一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないとされ(最高裁昭和37年8月10日第二小法廷判決・民集16巻8号1720頁),この場合,必ずしも主張上一部請求である旨の明示がされていなくても,前訴において残部についても併せてこれを請求することが期待し難かったといった事情があり,相手方としても残部について改めて訴訟を提起されることを想定できる事情を認識していたことなどの事情があれば,一部請求である旨の明示があると解すべきであると解される(最高裁平成20年7月10日第一小法廷判決・集民228号463頁参照)ところ,これは,実体法上も,そのときの事情や当事者の意思によっては,損害項目の一部について他の項目に先立って解決を図ることができることを前提としていると解される。),②現に本件事故に係る一審被告東電と被害者との間の自主賠償において,当事者 の意思としては,財産的損害に限定して精神的損害に先立って解決を図ろうとしたものと推認すべきであるから(したがって,財産的損害について過大に弁済した分について仮に被害者が返還義務を負うとしても,それについては精神的損害に係る賠償とは切り分けて別途行うこととしたものと推認される。),仮に本来損害として認められる範囲を超えて賠償を行った部分があったとしても,本訴における慰謝料の支払に充当されるべきであるとはいえないし,精神的損害以外の賠償項目も含めた全体の賠償状況を審理しなければ審理不尽の違法があるともいえない。 したがって,一審被告東電の上記主張は,いずれの理由においても失当である。 第6 弁護士費用等 1 弁護士費用弁護士費用としては,以上により算出された(弁護士費 法があるともいえない。 したがって,一審被告東電の上記主張は,いずれの理由においても失当である。 第6 弁護士費用等 1 弁護士費用弁護士費用としては,以上により算出された(弁護士費用を除く)認容額の10%相当を本件事故と相当因果関係のある損害の基準額と認めるが,事案の性質,困難さ,本件訴訟の規模等に鑑み,上記基準額を加えた認容額に1万円未満の端数が出る一審原告については,1万円未満の端数を切り上げ,その増額分を上記基準額に加算した額を弁護士費用として認めるのが相当である(承継一審原告については,まず,死亡一審原告に本来認容すべきであった額を基に上記計算方法により弁護士費用を計算した後に,各承継分を乗じて算出することとする。)。 2 端数の取扱い承継一審原告の認容額に1円未満の端数が生じる場合,1円未満の端数は切り捨てた(一審被告国について「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」(昭和25年法律第61号)2条1項参照)。 3 遅延損害金前記前提事実(前記第2章第2節第3)のとおり,本件事故は,平成23年3月11日の本件津波に端を発し,同日中には福島第一原発が不正常な状態となり,その後の時間経過を経て順次拡大していったものであるから,全ての一審原告らとの関係で,損害は同日に生じたものというべきである。したがって,遅延損害金については,一審原告らに対するそれぞれの認容額に対する本件事故の日である平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を認めるのが相当である。 この点,一審被告国は,第1,第3,第4及び第5事件の一審原告らが,「提訴後損害分」として,各提訴日から当審口頭弁論終結日までの損害金等の支払(主たる請求)に加えて,附帯請求として,これらに対する平成23年3 被告国は,第1,第3,第4及び第5事件の一審原告らが,「提訴後損害分」として,各提訴日から当審口頭弁論終結日までの損害金等の支払(主たる請求)に加えて,附帯請求として,これらに対する平成23年3月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている点について,上記主たる請求は各提訴日以降の損害を求めるものであるから,本件事故日から各提訴日の前日までの遅延損害金等については論理的にあり得ないとして,主張自体失当であると主張する。しかしながら,一審原告らの上記主たる請求は,いわゆる継続的不法行為に基づき発生すべき将来の損害の賠償請求ではなく,本件事故という一回的事象によって即時に生じた損害を求めているものであって,請求を「提訴後損害分」とし「各提訴日から当審口頭弁論終結日まで1か月5万円の割合」による金員としているのは,損害額の算定方法として特定したものにすぎないと解するのが相当である(したがって,当裁判所は,当審において訴えの一部取下げがされる前の請求についても,そもそも将来の給付を求める訴えとしての適格性は問題とならなかったと判断する点について,前記第5節第1の1参照。)から,一審被告国の上記主張は失当である。 なお,請求を認容すべき一審原告らの中には,本件事故後に出生した一審原告も数名いるところ,これらの者については各出生日からの分に限って遅延損害金を認めるのが相当である。 第7節相互の保証について(一審被告国関係)第1 総論一審原告T-1972,一審原告T-1114及び一審原告T-1117並びに一審原告T-3036は自主的避難等対象区域の,一審原告T-2229は県南地域の,それぞれ旧居住者であるところ,前記第6節第4の9及び10に判示したとおり,これらの一審原告らには賠 117並びに一審原告T-3036は自主的避難等対象区域の,一審原告T-2229は県南地域の,それぞれ旧居住者であるところ,前記第6節第4の9及び10に判示したとおり,これらの一審原告らには賠償されるべき損害が認められる。 ところで,一審被告国に対する請求は国賠法1条1項に基づくものであるところ,同法6条は,「この法律は,外国人が被害者である場合には,相互の保証があるときに限り,これを適用する。」と定めているが,上記一審原告らは,大韓民国籍,中華人民共和国籍,フィリピン共和国籍又はウクライナ国籍であるため,これらの国について,同条の定める「相互の保証」が認められるかが問題となる。 原判決は,上記いずれの国についても「相互の保証」が認められるとしたところ,当裁判所もその判断が妥当であると考える。その理由は,原判決に補正を加え,当裁判所の補足的判断を加えた上,以下のとおり判示する。 第2 「相互の保証」の主張立証責任国賠法1条1項は,内・外国人の別を問わず「他人」に損害を加えたときに国等が賠償する責任を負う旨規定し,別途,国賠法6条で,同法は「外国人が被害者である場合」には「相互の保証があるときに限り」適用する旨定めていること,我が国と法制度の異なる外国の法制度の内容を把握し主張するに当たっては,単なる法律の規定の文言 だけでなく現実の運用も問題となり得,特にいわゆる判例法国ではこの傾向が著しいというべきであって,請求する者が当該国の国民であるからといってこれが一般的に可能かつ容易とは考えられず,むしろ,請求を受ける側である国の方が在外公館を通じた調査等によりこのような資料を入手しやすい立場にあること,さらに,外国法について相互の保証を問題とすることによる損害賠償責任を免れるという利益は国側に帰属することな 側である国の方が在外公館を通じた調査等によりこのような資料を入手しやすい立場にあること,さらに,外国法について相互の保証を問題とすることによる損害賠償責任を免れるという利益は国側に帰属することなどを考慮すると,外国人が国賠法1条1項に基づき国家賠償請求する場合は,当該外国との関係で相互の保証がないことを国側において抗弁として主張立証すべきと解するのが相当である。 第3 「相互の保証」の内容国賠法6条は,我が国の国民に国家賠償による救済を与えない国の国民に対し,我が国が積極的に救済を与える必要はないという衡平の観念に基づくものであるところ,渉外生活関係が著しく発展拡大している今日,我が国の国民に外国に対する国家賠償による権利救済を図る必要や,外国人に我が国に対する国家賠償による権利救済を図る必要が増大している一方,各国の法制度は多様であり,我が国と法制度の異なる外国の法制度との同一性を厳密に要求することは,権利救済が認められる範囲を不当に制限することとなりかねず,また,同一性を厳密に要求できないことから仮に我が国より寛大な制度であることを要求することとすると,我が国より寛大な国家賠償制度を採用する外国が相互の保証を要求する場合,我が国はその外国からみればより厳格な制度を採用していることになるため当該国は我が国の国民からの国家賠償を認めないこととなり,その結果,我が国にとっても相互の保証を欠く結果となるという論理的破綻(いわゆる「両すくみ」)を来たすため,これを防ぐ必要があることなどからすれば,相互の保証 がないというためには,我が国と当該国の国家賠償請求に係る制度(要件及び効果等)が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって国賠法6条の依拠する上記のような衡平の観念に反することとなることに ためには,我が国と当該国の国家賠償請求に係る制度(要件及び効果等)が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって国賠法6条の依拠する上記のような衡平の観念に反することとなることについて立証を要すると解するのが相当である。 第4 一審原告らについての検討 1 韓国について一審原告T-1972の国籍は韓国(大韓民国)であるところ,韓国には国家賠償法が存在し,公務員等が職務を執行するについて故意または過失により法令に違反して損害を加えたときは,その損害を賠償しなければならないと定められていること,同国の判例上,公務員の不作為に対しても国家賠償が認められること,外国人が被害者の場合には相互の保証があるときに限り適用することとされ,同国の判例上,我が国との間では相互の保証があるとされていることなどが認められるから,韓国との間には相互の保証があると認められる(最高裁昭和59年11月29日第一小法廷判決・民集38巻11号1260頁,最高裁平成19年11月1日第一小法廷判決・民集61巻8号2733頁等参照)。 2 中国について一審原告T-1114及び同T-1117の国籍は中国(中華人民共和国)である。 中国には中華人民共和国国家賠償法(以下この項において「中国国賠法」という。)が存在し,行政機関又はその職員が,傷害又は死亡の結果をもたらす違法な行為等や財産に損害を与える違法な行為等により人身権又は財産権を侵害されたときは,当該行政機関又は職員の故意・過失にかかわりなく(主観的要件は定められていない),侵害の内容ごとに定められた算定方法(重大な結果を伴う人身権の侵害に限 り慰謝料請求も可能)により算出された金員の賠償を受けることができると定められ,原則として外国人についても中国国賠法の規定が適用さ られた算定方法(重大な結果を伴う人身権の侵害に限 り慰謝料請求も可能)により算出された金員の賠償を受けることができると定められ,原則として外国人についても中国国賠法の規定が適用され,その場合,相互保証主義を採用すること,中国国賠法の対象とならない行政行為についても,中国の民法通則や中華人民共和国権利侵害責任法により国の責任が認められる可能性があること,これらの規定について外国人には適用がないことについて立証がされていないことなどから,我が国の国家賠償請求に係る制度と比較して重要な点において同一ではなく相互の保証を認めることによって衡平の観念に反することとなるとはいえず,中国との間には相互の保証がないとは認められない。 これに対し,一審被告国は,本件のような場合について,中国国賠法による賠償の対象に含まれるとは同法の文言上認め難く,中国の民法通則等の一般私法の枠内でも賠償の対象となるか全く明らかではないなどとして,我が国の制度と実質的に同等の要件が定められているとは認められず,相互の保証は否定すべきであると主張する。しかしながら,前示のとおり,相互の保証は,我が国の制度と当該国の制度が重要な点において同一であるか否かによって判断すべきであって,仮に本件の賠償請求が中国の法制度下では結論として否定されるとしても,そのことだけで我が国と中国との間に相互の保証がないということはできないし,この点を措いたとしても,前示のとおり,相互の保証がないことについては一審被告国に立証責任があるというべきであるところ,一審被告国は,中国国賠法や中国の一般私法で本件のような賠償が認められるか明らかではないと主張するのみで,我が国と中国の国家賠償請求に係る制度が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって衡平の観念に 賠法や中国の一般私法で本件のような賠償が認められるか明らかではないと主張するのみで,我が国と中国の国家賠償請求に係る制度が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって衡平の観念に反することとなることについて立証を尽くしているとはいえないから,いずれにせよ,一審被 告国の主張は失当であり,前記判断を覆さない。 3 フィリピンについて一審原告T-3036の国籍はフィリピン(フィリピン共和国)である。 フィリピンにおいては,我が国の国賠法に相当する特別の法律は存在せず,国については主権免責が適用されるものの,国が訴えられることを許可することが特別法又は一般法に明示されていれば,特別機関(特定の作業を行うために特別に委託されなければならない機関)が公的な権能を行使する際に故意または過失で行った作為又は不作為により損害が生じたときにはフィリピン民法により損害賠償請求が可能とされていること,その場合,慰謝料等の請求も可能とされていること,フィリピン民法は外国人にも適用があることが認められるから,フィリピンとの間には相互の保証がないとは認められない。 一審被告国は,上記のような制度の建付けを有するフィリピンにおいて,原子力発電所に対する規制権限の不行使が上記の特別機関の不作為に当たり,本件と同様の賠償請求を日本人がフィリピンを相手に行った場合にフィリピンがその同意の有無にかかわらず賠償責任を負うことになるのかが不明である以上,相互の保証があるとは認められないと主張する。しかしながら,前示のとおり,相互の保証は,我が国の制度と当該国の制度が重要な点において同一であるか否かによって判断すべきであって,仮に本件の賠償請求がフィリピンの法制度下では結論として否定されるとしても,そのことだけで我が国とフィリ は,我が国の制度と当該国の制度が重要な点において同一であるか否かによって判断すべきであって,仮に本件の賠償請求がフィリピンの法制度下では結論として否定されるとしても,そのことだけで我が国とフィリピンとの間に相互の保証がないということはできないし,この点を措いたとしても,前示のとおり,相互の保証がないことについては一審被告国に立証責任があるというべきであるところ,一審被告国は,フィリピン民法で本件のような賠償が認められるか明らかではないと主 張するのみで,我が国とフィリピンの国家賠償請求に係る制度が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって衡平の観念に反することとなることについて立証を尽くしているとはいえないから,いずれにせよ,一審被告国の主張は失当であり,前記判断を覆さない。 4 ウクライナについて一審原告T-2229の国籍はウクライナである。 ウクライナには,外国人に対する国家賠償に関する法令として,まず,ウクライナ憲法56条に,各人は,国家権力機関及び地方自治機関並びにそれらの役職者・職員がその権限を遂行するに際しての違法な決定や行為及び不作為により与えられた物的被害及び精神的被害を国家又は地方自治体機関によって補償される権利を有する旨が定められている上に,ウクライナ憲法26条に,憲法や法律,国際合意によって定められた例外を除き,ウクライナに滞在している外国人及び無国籍者は,法的根拠に基づき,ウクライナ国民と同等の権利及び自由を認められ,ウクライナ国民と同等の義務を負う旨定められている。 また,これを受けた2003年(平成15年)1月16日採択の「市民保護に関する法律」(ウクライナ民法)や,2015年(平成27年)12月10日採択の「国家公務に関する法律」は,国家権力機関等が,そ また,これを受けた2003年(平成15年)1月16日採択の「市民保護に関する法律」(ウクライナ民法)や,2015年(平成27年)12月10日採択の「国家公務に関する法律」は,国家権力機関等が,その権限を遂行するに際しての不法な決定や行為,不作為により個人又は法人に対して与えられた損害に対して,国家賠償が認められる旨,ウクライナ民法26条1項は,全ての個人は民法上の権利及び義務を持つ能力において同等である旨規定していること,ウクライナのオンライン法務コンサルティングのコメンタールには,ウクライナに滞在する外国籍の者がウクライナ民法が定める国家賠償請求権を有することについて何らかの法的制限が存在するとの解説がないこと などによれば,ウクライナとの間には相互の保証がないとは認められない。 この点,一審被告国は,ウクライナ民法や上記の「国家公務に関する法律」 には外国人に関する根拠条文はないこと,両法律共に相互保証主義について定めがないことなどから,ウクライナ民法等の国家賠償に関する規定が外国人に適用されるとまで認めることができないと主張するが,ウクライナ憲法26条の規定の仕方に鑑みると,各法に根拠条文がないことのみでは外国人にウクライナ国民と同等の権利等が認められないことにはならないと考えるのが相当であるし,相互保証主義はむしろ外国人にどこまで自国民と同等の権利等を与えるかの上限を画するための仕組みであるから,これを定めていない国が外国人に対し自国民と同等の権利等を与えないとするものであるとは直ちにはいえない。したがって,一審被告国が主張する上記の諸点に鑑みても,なお,我が国とウクライナの国家賠償請求に係る制度が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって衡平の観念に反することとなることについて一 一審被告国が主張する上記の諸点に鑑みても,なお,我が国とウクライナの国家賠償請求に係る制度が重要な点において同一ではなく,相互の保証を認めることによって衡平の観念に反することとなることについて一審被告国が立証を尽くしているとはいえないから,一審被告国の主張は失当であり,前記判断を覆さない。 5 相互の保証についてのまとめ以上によれば,外国人である一審原告らのいずれの国との関係でも相互の保証が認められる。 第8節訴えを取り下げた一審原告らの扱いについて当審の口頭弁論終結までに訴えを取り下げた一審原告らのうち,一審被告ら双方による同意が得られた一審原告(取下一審原告)については,別紙2一審原告等目録の「分類」欄に「○」(原審における取下一審原告)又は「●」(当審における取下一審原告)を付して特定する こととしている。これらの者については,初めから訴訟が係属していなかったものとみなされる(民訴法262条1項)。一方,一審被告東電又は一審被告らにおいて上記訴えの取下げに同意しなかった一審原告らについては,以下のとおりとなる。 1 二重訴訟一審原告一審原告H-0456,同H-0519並びに同H-0414~0417は,いずれも旧緊急時避難準備区域旧居住者であるところ,当審係属中に訴えの取下げをしたが,一審被告らいずれの同意も得られなかった。 したがって,上記一審原告らについては,訴えの取下げの効力を生じない(民訴法261条2項)。 ところで,上記一審原告らは,本訴を提起するよりも前の段階である平成25年7月23日,本訴と同一の訴訟物につき,同一の請求原因に基づいて,一審被告東電及び一審被告国に対して慰謝料の支払を76号損害賠償請求事件。以下「新潟訴訟」という。)。同事件は,現時点においても係属中である。 ,本訴と同一の訴訟物につき,同一の請求原因に基づいて,一審被告東電及び一審被告国に対して慰謝料の支払を76号損害賠償請求事件。以下「新潟訴訟」という。)。同事件は,現時点においても係属中である。(弁論の全趣旨)このように訴訟物が同一又は重複する複数の訴訟を提起することは,法律により禁止されているところ(民訴法142条),その趣旨は,仮にこれを許すと,相手方当事者にとっては同一請求について二重の応訴という不合理な負担を課されることになるし,また,裁判所にとっても二重の審理を余儀なくされ,さらに判決内容に矛盾抵触のおそれを生じさせることになり,唯一,より有利な判決がされた方の事件を残しその余の事件を取り下げることにより重複起訴した者のみを不当に利することになるところ,これは訴訟経済や衡平の観点から相当ではないという点に求められる。 このような法の趣旨に鑑みると,上記一審原告らについても,自己により有利な判決を選択することを許すべきではないから,本来,判決内容にかかわらず,形式的に提訴の先後関係によって適法不適法を判断すべきであるとも考えられ,してみると,本件では,先に提訴した新潟訴訟のみが適法であって,後行事件となる本訴の提起が不適法であると判断すべきであるとも考えられる。 しかしながら,本件のように,当事者が非常に多数に及んでおり,しかも先行事件と異なる裁判所に重複起訴がされたような場合には,稀に,相手方当事者も裁判所も重複起訴に気付かないままどちらの訴訟も進行していくことが考えられるところ,そのようなレアケースにおいて,仮に後行事件の方が先に終局判決にまで至り,先行事件については終局判決に至らないような時点に重複起訴が発覚した場合においては,終局判決がされた後行事件を適法とし,終局判決に至らない先行事件 おいて,仮に後行事件の方が先に終局判決にまで至り,先行事件については終局判決に至らないような時点に重複起訴が発覚した場合においては,終局判決がされた後行事件を適法とし,終局判決に至らない先行事件を不適法とすることが,前示の重複起訴を禁ずる趣旨である訴訟経済の観点から妥当であるし,また,重複起訴をした者においてより有利な判決を選択することを可能にすることで同人を不当に利する結果を防ぐことにもつながるため,適切というべきである。 本件でも,後行事件である本訴について既に終局判決がされている(しかも控訴審においても弁論終結に至っている。)のに対し,先行事件である新潟訴訟はいまだ終局判決がされていないのであるから,この場合,本訴は適法であって,少なくとも本訴について訴え取下げの効力が生じていない以上は新潟訴訟が不適法であると判断すべきである。 したがって,当裁判所は,上記一審原告らについても,本訴の提起が適法であって,一審被告ら両名との間で訴え取下げの効力が生じていないことを前提に,判断をすることとする。 2 一審被告国のみが取下げに同意した一審原告一審原告H-142及び同H-143は,当審において訴えを取り下げたところ,一審被告国の同意は得たが,一審被告東電の同意は得られなかった。 したがって,これらの一審原告らについては,一審被告国との関係では訴え取下げの効力が生じているが,一審被告東電との関係では訴え取下げの効力が生じていない。これらの一審原告らについては,別紙2一審原告等目録の「分類」欄に「⑦」を付して特定することとする(一審原告ら⑦)。 第9節結論以上の次第で,一審原告らの請求(当審における追加請求を含む。)のうち,原状回復請求に係る訴えは不適法であるから却下すべ ととする(一審原告ら⑦)。 第9節結論以上の次第で,一審原告らの請求(当審における追加請求を含む。)のうち,原状回復請求に係る訴えは不適法であるから却下すべきであるが,その余の訴え(当審における一部訴え取下げ後のもの)は,全体につき適法な訴えであって,そのうち一審被告東電に対する主位的損害賠償請求(一般不法行為に基づく請求)は,理由がないから棄却すべきであり,原賠法(一審被告東電に対する請求)又は国賠法(一審原告国に対する請求)に基づく損害賠償請求は,一審原告ら③及び④については全て理由があるから認容すべきであり,一審原告ら①,②,⑤,⑥,⑧ないし⑩については,一審被告らに対し,連帯して別紙6主文一覧表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から(同表の「始期」欄に日付の記載のある者については,当該日から)支払済みまで年5分の割合の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容すべきであり,その余は理由がないから棄却すべきであり,一審原告ら⑦については,一審被告東電に対し,同表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容すべきであり,その余は理由がないから棄却すべきであり,一審原告ら⑪及び⑫については,全て理由がないから棄却すべきである。これに対し,原判決は,一審原告らの請求のうち,原状回復請求に係る訴え及び損害賠償請求のうち平成29年3月22日以降の損害賠償金の支払を求める訴えを却下し(原判決主文第1項及び第2項),その余の一審被告東電に対する主位的損害賠償請求(一般不法行為に基づく請求)を棄却するとともに,原賠法又は国賠法に基づく損害賠償請求は,一審原告ら①ないし④ を却下し(原判決主文第1項及び第2項),その余の一審被告東電に対する主位的損害賠償請求(一般不法行為に基づく請求)を棄却するとともに,原賠法又は国賠法に基づく損害賠償請求は,一審原告ら①ないし④,⑦及び⑫については全部棄却し,一審原告ら⑤,⑥,⑧ないし⑪については一部認容して いるところ,当審においても請求の一部を認容した一審原告らにつきそれぞれの認容額を比較すると,一審原告ら⑤及び⑥についてはいずれの一審被告に対しても当審が,一審原告ら⑧については一審被告東電に対しては原審が,一審被告国に対しては当審が,一審原告ら⑩についてはいずれの一審被告に対しても原審が,それぞれ高額となっており,一審原告ら⑨については一審被告東電に対しては原審が高額となっているが,一審被告国に対しては同額となっている。 したがって,以上と同旨の原判決主文第1項及び第3項は相当であるから,一審原告らの控訴のうち原判決主文第1項及び第3項に係る部分はいずれも棄却するが,原判決中同判決主文第2項に係る訴え(当審における一部訴え取下げ後のもの)を却下した部分は相当でないから,一審被告らの附帯控訴に基づき,これを取り消し,更に弁論をする必要は認められないから,当裁判所において自判することとし(民訴法307条ただし書),当裁判所が認める認容額は原判決が適法な請求であるとした範囲の請求額を超えないから,上記取消部分に係る一審原告らの請求はいずれも棄却する(以上につき,本判決主文第1項)。 次に,原判決主文第4ないし7項に係る控訴については,本判決主文第2項のとおり,各当事者の控訴のうち,全部理由がない控訴を棄却し,全部又は一部理由がある控訴に基づき,一審原告ら①については同項⑴イ及びウ,一審原告ら②については同項⑵イ及びウ,一審原告ら③について 項のとおり,各当事者の控訴のうち,全部理由がない控訴を棄却し,全部又は一部理由がある控訴に基づき,一審原告ら①については同項⑴イ及びウ,一審原告ら②については同項⑵イ及びウ,一審原告ら③については同項⑶イ,一審原告ら④については同項⑷イ,一審原告ら⑤については同項⑸ウ及びエ,一審原告ら⑥については同項⑹ウ及びエ,一審原告ら⑦については同項⑺イ及びウ,一審原告ら⑧については同項⑻ウ及びエ,一審原告ら⑨については同項⑼ウ及びエ,一審原告ら⑩については同項⑽ウ及びエのとおり原判決を変更し,一審原告ら⑪については,一審被告ら敗訴部分を取り消して同部分に係る 一審原告ら⑪の請求をいずれも棄却し,一審原告ら⑫については,控訴をいずれも棄却することとする。さらに,当審における追加請求は,一審原告ら④については全て理由があるから認容し,一審原告ら①及び⑤については,そのうち別紙6主文一覧表の「追加元金」欄記載の各金員(同表の「認容額」欄記載の金額から「原審元金」欄記載の金額を減じたものである。)に対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,その余の一審原告ら(ただし,一審原告ら③を除く。)については,全て理由がないから棄却する(本判決主文第3項)。 大規模集団訴訟である本件訴訟の特殊性にも鑑み,訴訟費用については,本判決主文第4項のとおり負担させることとし,仮執行宣言については,本判決主文第5項のとおり,これを付した上,一審被告らの申立てにより,担保を立てさせて仮執行免脱の宣言を付することとして,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官上田 哲 裁判官 てにより,担保を立てさせて仮執行免脱の宣言を付することとして,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官上田哲 裁判官島田英一郎 裁判官渡邉明子 別紙1 当事者目録 別紙2 一審原告等目録 別紙3 一審原告ら代理人目録 別紙4 一審被告東電代理人目録 別紙5 一審被告国代理人目録 別紙8 一審原告ら主張整理 別紙9 一審被告東京電力の主張の要旨 別紙10 弁済の抗弁(精神的損害の追加賠償金額)および既払い賠償金額一覧表 別紙11 一審被告国の主張の要旨(いずれも省略)
▼ クリックして全文を表示