令和7年6月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和7年(ワ)第70003号損害賠償請求権不存在確認請求事件口頭弁論終結日令和7年4月23日判決 原告フィリップ・モリス・ジャパン合同会社(以下「原告PMJ」という。) 同訴訟代理人弁護士古城春実堀籠佳典平井佑希岡田健太郎 原告双日株式会社(以下「原告双日」という。) 同訴訟代理人弁護士吉田和彦高石秀樹 被告FutureTechnology株式会社 同訴訟代理人弁護士溝田宗司郡佑太高橋雄一郎金森毅同訴訟代理人弁理士徳永肇 主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が、原告PMJに対し、別紙物件目録1及び2に記載の製品の譲渡及び譲渡の申出について、特許第7583387号の特許権に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認する。 2 被告が、原告双日に対し、別紙物件目録1及び2に記載の製品の輸入、譲渡及び譲渡の申出について、特許第7583387号の特許権に基づ 許権に基づく損害賠償請求 権を有しないことを確認する。 2 被告が、原告双日に対し、別紙物件目録1及び2に記載の製品の輸入、譲渡及び譲渡の申出について、特許第7583387号の特許権に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認する。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、原告らが、原告PMJが開発した別紙物件目録1及び2記載の各製品(以下、これらを併せて「本件製品」という。)は、発明の名称を「喫煙具用カートリッジ」とする特許第7583387号の特許(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属 するものではないと主張して、本件特許に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である被告に対し、原告PMJによる本件製品の譲渡及び譲渡の申出、並びに原告双日による本件製品の輸入、譲渡及び譲渡の申出について、被告が本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)を有しないことの確認を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、枝番を含む。) 及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者原告PMJは、日本国内において、本件製品の宣伝・広告等の販促活動を行い、その一環として本件製品の譲渡を行う合同会社である。 原告双日は、原告PMJとの間の販売契約に基づき、本件製品の日本国内 への輸入及び日本国内での販売等を行う株式会社である。 被告は、茶葉を主原料とする茶葉スティックの製造販売を行う株式会社である。 ⑵ 本件特許被告は、以下の本件特許を有する。(甲1、2) 特許番号特許第7583387号発明の名称 茶葉スティックの製造販売を行う株式会社である。 ⑵ 本件特許被告は、以下の本件特許を有する。(甲1、2) 特許番号特許第7583387号発明の名称喫煙具用カートリッジ出願日令和6年8月16日出願番号特願2024-137009分割の表示特願2020-143605の分割 原出願日令和2年8月27日登録日令和6年11月6日⑶ 本件特許に係る特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。 タバコ植物または非タバコ植物を原料とするエアロゾル形成基材と、前記 エアロゾル形成基材と同軸上に配置されるマウスピースと、前記エアロゾル形成基材と前記マウスピースとの間に配置される支持部材と、を備えた喫煙具用カートリッジであって、前記支持部材は、第一の円盤状に形成され、前記エアロゾル形成基材と対面する位置に配置 され、前記エアロゾル形成基材が加熱されることで生成されるエアロゾルが 流れる第1の流路を有する第1の壁部と、第二の円盤状に形成され、前記マウスピースと対面するように設けられ、前記エアロゾルが流れる第2の流路を有する第2の壁部を含み、前記第1の流路は、前記第1の壁部を貫通する第1の貫通孔であり、前記第2の流路は、前記第2の壁部を貫通する第2の貫通孔であり、 前記第2の貫通孔のサイズは、前記第1の貫通孔のサイズより大きいことを特徴とする喫煙具用カートリッジ。 ⑷ 本件各訴え提起に至る経緯ア被告は、令和6年11月、東京税関に対し、本件製品が本件発明の技術 的範囲に属する侵 のサイズより大きいことを特徴とする喫煙具用カートリッジ。 ⑷ 本件各訴え提起に至る経緯ア被告は、令和6年11月、東京税関に対し、本件製品が本件発明の技術 的範囲に属する侵害品であると主張して、本件製品の輸入差止申立て(以下「本件輸入差止申立て」という。)を行った。(甲3)原告PMJは、本件輸入差止申立ての結果について利害関係を有するとして、本件製品が侵害品ではない旨の意見書を東京税関に提出した。(甲4) イ被告は、令和6年7月以降、原告双日に対し、本件製品が本件特許権とは異なる被告の特許権を侵害するとして、損害賠償請求訴訟を9件提起した(以下、これら9件の訴訟を併せて「別件訴訟」という。)。 ウ原告らは、令和7年1月9日、被告に対し、本件損害賠償請求権の不存在確認請求に係る各訴え(以下「本件各訴え」という。)を提起した。 ⑸ 本件各訴え提起後の経過ア被告は、令和7年2月27日、原告らに対し、本件製品を含む原告らの製品について、その生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡し)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む)に関し、本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を放棄し、同請求権を行使しない旨通知 した。(乙1) イ被告は、令和7年4月23日、本件第2回口頭弁論期日において、本件損害賠償請求権を放棄し、訴訟内外を問わず、撤回、取消し又は無効の主張を行わないと陳述した。 3 本案前の争点及びこれに関する当事者の主張本件の本案前の争点は、本件各訴えに訴えの利益があるかである。 ⑴ 原告らの主張ア被告は、本件損害賠償請求権を放棄したが、本件製品について、本件発明の技術的範囲に属する侵害品であると主張して提起した の争点は、本件各訴えに訴えの利益があるかである。 ⑴ 原告らの主張ア被告は、本件損害賠償請求権を放棄したが、本件製品について、本件発明の技術的範囲に属する侵害品であると主張して提起した本件輸入差止申立てや、他の特許権侵害を主張して損害賠償を求めた別件訴訟はいずれも取り下げず、本件製品について強固な権利行使の意思を有している。被告 が本件損害賠償請求権を放棄したのは、本件輸入差止申立て手続に対する影響を排除したいという意図に基づくものにすぎない。そうすると、今後、被告が、錯誤による放棄の意思表示の取消し等、何らかの理由を主張して、再び損害賠償請求をする可能性がないとはいえず、原告らの権利又は法的地位には依然として大きな危険や不安がある。 イまた、特許法は、特定の製品の販売等が特定の特許権を侵害するときに当該製品に対する差止請求権と侵害による損害賠償請求権とが同時に成立するという建付けになっているから、特許権侵害が成立しないという裁判所の判断があれば、差止請求権及び損害賠償請求権の両方につき、その存否が一挙に決する構造になっているし、将来生じる可能性の高い紛争(本 件特許権に基づく差止請求の本案訴訟、仮処分申立て、被告の損害賠償請求権放棄の効力に関わる争点等)も一挙に解決されることになる。 しかも、別件訴訟は、本件特許とは異なる特許を根拠としているものの、いずれも本件製品を侵害品としており、本件損害賠償請求権の存否は、別件訴訟における損害賠償請求権の存否等に影響を及ぼす可能性がある。 したがって、原告らには、本件特許権の侵害に基づく本件損害賠償請求 権が存在しないことを既判力によって確定させる利益があり、本案判決を得ることこそが原告らの権利又は法的地位の安定に資する。 ウさ て、原告らには、本件特許権の侵害に基づく本件損害賠償請求 権が存在しないことを既判力によって確定させる利益があり、本案判決を得ることこそが原告らの権利又は法的地位の安定に資する。 ウさらに、被告は、本件製品に対する差止請求訴訟を起こさず、別件訴訟のように損害賠償の一部請求訴訟を提起すれば、低額な印紙代で本件製品が本件特許権を侵害するか否かの判断を得ることができる。これに対し、 本件のように損害賠償請求権不存在確認訴訟が係属した後に損害賠償請求権が放棄された場合、本件特許権の侵害がないことを確認するためには、原告らにおいて新たに差止請求権の不存在確認訴訟を提起しなければならず、訴額が算定不能と判断されない限り、著しく多額の印紙代の負担を余儀なくされる。 このように、一方の当事者には低額な印紙代の負担で特許権侵害の有無についての判断を得る機会があり、他方の当事者は多額の印紙代を負担することによってしか、侵害の有無についての判断を得る機会が与えられないとすれば、著しく不公平であって正義に反するから、本件は、公平の見地から、本案の判断を行うべきである。 ⑵ 被告の主張ア本件各訴えの訴訟物である本件損害賠償請求権は、被告の原告らに対する放棄の意思表示により存在しない。 本件各訴えにおいて、既に行使の可能性がない本件損害賠償請求権について、存在しない旨の確認判決を得ても、原告らの権利又は法的地位への 危険又は不安を除去することにはならないため、本件各訴えに即時確定の利益は認められず、本件各訴えは確認の利益を欠く。 イまた、確認の利益は、訴訟物との関係で判断すべきものであるところ、原告らの主張する本件輸入差止申立てや別件訴訟などの事情は、本件各訴えの訴訟物である本件損害賠 各訴えは確認の利益を欠く。 イまた、確認の利益は、訴訟物との関係で判断すべきものであるところ、原告らの主張する本件輸入差止申立てや別件訴訟などの事情は、本件各訴えの訴訟物である本件損害賠償請求権とは関係がなく、本件各訴えに係る 確認の利益に関する判断を左右するものではない。 第3 当裁判所の判断 1 本件各訴えに係る確認の利益の有無について確認の訴えにおける確認の利益は、即時確定の利益がある場合、すなわち、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、現に当事者の有する権利又は法律上の地位の不安、危険を除 去するために必要かつ適切である場合に限り認められる(最高裁昭和27年(オ)第683号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁、最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)。 これを本件についてみると、前提事実⑸で認定したとおり、被告は、本件各 訴え提起後の令和7年2月27日、原告らに対し、本件損害賠償請求権を放棄し、同請求権を行使しない旨通知し、また、同年4月23日に行われた本件第2回口頭弁論期日において、本件損害賠償請求権を放棄し、訴訟内外を問わず、撤回、取消し又は無効の主張を行わないと陳述したことが認められる。 以上によれば、被告の原告らに対する本件損害賠償請求権が存在しないこと は被告の自認するところであり、この点について、現に当事者間に紛争が存在し、原告らの有する権利又は法律上の地位の不安、危険が存在しているとはいえず、即時確定の利益があるとは認められない。 2 原告らの主張について⑴ 原告らは、被告は本件製品について強固な権利行使の意思を有しているか 権利又は法律上の地位の不安、危険が存在しているとはいえず、即時確定の利益があるとは認められない。 2 原告らの主張について⑴ 原告らは、被告は本件製品について強固な権利行使の意思を有しているか ら、今後、被告が錯誤による放棄の意思表示の取消し等、何らかの理由を主張して、再び損害賠償請求をする可能性がないとはいえず、原告らの権利又は法的地位に依然として大きな危険や不安があると主張する。 しかしながら、被告が本件損害賠償請求権を放棄した前提事実⑸の本件各訴え提起後の経過に照らせば、原告ら主張の再訴のおそれは抽象的なものと いわざるを得ず、現に原告らの有する権利又は法律上の地位の不安、危険が 存在しているということはできない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑵ また、原告らは、特許権侵害訴訟における判断構造や別件訴訟の内容に照らせば、本件においては、既判力を伴った裁判所の判断によって、本件製品についての被告と原告らとの間の紛争が一挙に解決されることになるなどと して、原告らには、本件特許権の侵害に基づく本件損害賠償請求権が存在しないことを確定させる利益がある旨主張する。 しかしながら、本件各訴えは、本件損害賠償請求権の不存在の確認を求める訴えであって、たとえこれを認容する判決が確定したとしても、本件特許権の侵害の有無に係る理由中の判断が既判力をもって確定されるものではな いから、被告が原告らに対し本件特許権に基づく差止請求権や別件訴訟に係る請求権を行使することは妨げられない。かえって、原告らは、被告による本件特許権の侵害に基づく本件製品についての差止請求権を争うためには、端的に当該差止請求権の不存在確認請求訴訟を提起することができるのであるから、本件損害賠償請求 い。かえって、原告らは、被告による本件特許権の侵害に基づく本件製品についての差止請求権を争うためには、端的に当該差止請求権の不存在確認請求訴訟を提起することができるのであるから、本件損害賠償請求権が存在しない旨の確認判決を得ることが、原告らの権利又は法的地位への危険又は不安を除去するために必要かつ適切であるということはできない。なお、原告らは、被告が損害賠償の一部請求訴訟を提起する場合と原告らが差止請求権の不存在確認請求訴訟を提起する場合とで印紙代の負担に差異があるなどとも主張するが、かかる事情は即時確定の利益に直ちに影響を与えるものではなく、上記判断を左右するものではない。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 第4 結論 以上によれば、本件各訴えはいずれも訴えの利益を欠くものであるから却下することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 澁谷勝海 裁判官 本井修平 裁判官 浅川浩輝 (別紙)物件目録 1 テリアレギュラー 2 テリアハイブリッドパールグリーンフルーツ 3 テリアハイブリッドパールスムースミント 4 テリアサンパール 5 テリ のたばこスティック 1 テリアレギュラー 2 テリアハイブリッドパールグリーンフルーツ 3 テリアハイブリッドパールスムースミント 4 テリアサンパール 5 テリアオアシスパール 6 テリアリッチレギュラー 7 テリアスムースレギュラー 8 テリアバランスドレギュラー 9 テリアウォームレギュラー 10 テリアルビーレギュラー 11 テリアブラックメンソール 12 テリアメンソール 13 テリアミント 14 テリアブラックパープルメンソール 15 テリアパープルメンソール 16 フュージョンメンソール 17 テリアブラックルビーメンソール 18 テリアブラックイエローメンソール 19 テリアイエロメンソール 20 テリアブラックトロピカルメンソール 21 テリアトロピカルメンソール 22 テリアブライトメンソール 23 テリアブラックサンシャインメンソール 以上 (別紙)物件目録2以下の各銘柄のタバコスティック 1 センティアフロストグリーン 2 センティアジューシーレッド 3 センティアディープブロンズ 4 センティアピュアティーク 5 センティアバランスドゴールド 6 センティアバランスドイエロー 7 センティアスムースゴールド 8 クリアシルバー 9 センティアアイシーブラック 10 センティアクールジェイド 11 センティアフレッシュエメラルド 12 センティアアイシーパープル 13 センティアフレッシュパープル 14 センティアシトラスグ センティアクールジェイド センティアフレッシュエメラルド センティアアイシーパープル センティアフレッシュパープル センティアシトラスグリーン センティアトロピカルイエロー以上
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