主文 原判決を破棄し、第一審判決中上告人敗訴部分を取り消す。 前項の部分に関する被上告人らの請求を棄却する。 訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。 理由 上告代理人末永汎本の上告理由について一原審の適法に確定した事実関係の大要は、次のとおりである。 1 昭和五五年一月にa町長に就任した上告人は、同町の職員の給料が他の地方公共団体の職員の給料に比べて低くなっており、その主たる原因は初任給決定の際に条例等に定められた基準による学歴格付、前歴通算が行われていなかったことにあるとの認識を持ち、右基準にのっとって初任給が決定されていた場合における各職員のあるべき給料額と現実に支給されている額との差額につき、分割して昇給昇格を実施することにより、三年間程度をかけて右あるべき給料額にまで改善を図ることとし、昭和五七年四月一日、同年一〇月一日及び同五八年四月一日の三回にわたって職員をそれぞれ昇給昇格させる旨の特別調整(以下「本件特別調整」という。)を行い、昭和五七年四月以降同五八年六月までの間に、関係職員に対し本件特別調整を前提とする増額給料分合計三五四三万四四〇〇円の支給をした。なお、上告人は、本件特別調整を、いずれも当時のa町一般職の職員の給与に関する条例(以下「改正前の条例」という。)四条二項の普通昇給に関する規定及び同条三項の特別昇給に関する規定に基づくものとして実施したが、本件特別調整は、前記のような給料の改善を目的として行われたものであって、改正前の条例四条二項にいう職員が良好な成績で勤務したとき、同条三項にいう職員の勤務成績が特に良好である場合という昇給要件を考慮してされたものではなかった。 2 昭和五八年七月九日、a町議会において、a町一般職の職員の給与に関する- 成績で勤務したとき、同条三項にいう職員の勤務成績が特に良好である場合という昇給要件を考慮してされたものではなかった。 2 昭和五八年七月九日、a町議会において、a町一般職の職員の給与に関する- 1 -条例の一部を改正する条例(以下「改正条例」という。)が可決されて同月一五日公布され、一部の条項を除き公布の日から施行された。改正条例附則によると、町長は、本件特別調整と同じ目的で、初任給の決定について特別の事情があり昭和五七年四月一日の前日において他の職員と権衡を失していると認められる職員については、採用の日から改正後の条例等を適用しその職員の昇任の経緯により職務の等級を決定したとした場合に得られる右四月一日における給料月額の範囲内で同日における給料月額を決定し、右給料月額と右前日において現実に支給されていた給料月額との差額が多額となる場合には、当該差額に相当する額を右四月一日から同五九年四月一日までの間において分割して昇給させることができるものとし(四項、五項、七項)、かつ、改正後の条例の規定を適用する場合においては、改正前の条例の規定に基づいて支給された給与は、改正後の条例の規定による給与の内払いとみなすものとした(一三項)。 二原審は、右の事実関係に基づき、(一) 上告人のした本件特別調整及びこれに基づく増額給料分の支給は改正前の条例の下では違法であり、(二) 改正条例は、上告人が右増額給料分を現実に支給したこと自体の違法性までをも解消するものではないと判断した上、上告人に対し、a町に対する損害賠償として、本件特別調整による増額給料分の各支給時から改正条例が公布施行された日の前日である昭和五八年七月一四日までの間の年五分の割合による運用利息相当額である合計九七万二三五〇円を支払うべきことを求めた被上告人らの予備的請求を認容した の各支給時から改正条例が公布施行された日の前日である昭和五八年七月一四日までの間の年五分の割合による運用利息相当額である合計九七万二三五〇円を支払うべきことを求めた被上告人らの予備的請求を認容した。 三しかしながら、前項(二)の点に関する原審の判断は是認することができない。 すなわち、改正条例が、昭和五七年四月一日にさかのぼって本件特別調整と同じ目的で昇給の特例措置を採る権限を町長に付与するとともに、改正前の条例の規定に基づいて支給された給与を改正後の条例の規定による給与の内払いとみなすものとしていることからすれば、a町議会は、改正条例の制定によって、上告人のした本- 2 -件特別調整及びこれに基づく増額給料分の支給の各行為自体を是認し、これをさかのぼって適法なものとしたものと解するのが相当である。そうすると、右改正条例が制定、施行された後においても、なお上告人について、増額給料分の各支給時から改正条例の公布施行の日の前日までの間の運用利息相当額のa町に対する損害賠償義務があるとすることはできないというべきである。 したがって、原審の前記判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであって、この点をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の適法に確定した前記の事実関係及び右に説示したところによれば、被上告人らの本件予備的請求は理由がないこととなるから、第一審判決中上告人敗訴部分を取り消し、右部分に関する被上告人らの請求を棄却すべきである。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官三好達 九六条、三八六条、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官三好達裁判官大堀誠一裁判官味村治裁判官小野幹雄- 3 -
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