平成13(ワ)4809 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年8月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文64,677 文字)

主文 1 被告株式会社エイエム三井は,原告Aに対し,1588万0970円及びこれに対する平成13年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告株式会社エイエム三井は,原告Bに対し,418万1778円及びこれに対する平成13年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告株式会社エイエム三井は,原告Cに対し,4361万7024円及びこれに対する平成13年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株式会社エイエム三井は,原告Dに対し,1843万5289円及びこれに対する平成13年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告株式会社エイエム三井は,原告Eに対し,2548万8533円及びこれに対する平成13年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 原告A,原告B,原告C,原告Dの被告株式会社エイエム三井に対するその余の請求並びに原告らの被告株式会社エフエムエス及び被告株式会社アートメーキング三井に対する請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は,原告Aに生じた費用の5分の1,被告株式会社エフエムエスに生じた費用の5分の1,被告株式会社アートメーキング三井に生じた費用の5分の1,被告株式会社エイエム三井に生じた費用の20分の1を原告Aの負担とし,原告Bに生じた費用の5分の3,被告株式会社エフエムエスに生じた費用の5分の1,被告株式会社アートメーキング三井に生じた費用の5分の1,被告株式会社エイエム三井に生じた費用の20分の1を原告Bの負担とし,原告Cに生じた費用の10分の1,被告株式会社エフエムエスに生じた費用の5分の1,被告株式会社アートメーキング三井に生じた費用の5分の1,被告株式会社エイエム三井に生じた費用の20分の1を原告Cの負担と Cに生じた費用の10分の1,被告株式会社エフエムエスに生じた費用の5分の1,被告株式会社アートメーキング三井に生じた費用の5分の1,被告株式会社エイエム三井に生じた費用の20分の1を原告Cの負担とし,原告Dに生じた費用の7分の1,被告株式会社エフエムエスに生じた費用の5分の1,被告株式会社アートメーキング三井に生じた費用の5分の1,被告株式会社エイエム三井に生じた費用の20分の1を原告Dの負担とし,被告株式会社エフエムエスに生じた費用の5分の1,被告株式会社アートメーキング三井に生じた費用の5分の1を原告Eの負担とし,原告Aに生じた費用の5分の4,原告Bに生じた費用の5分の2,原告Cに生じた費用の10分の9,原告Dに生じた費用の7分の6,原告Eに生じた費用,被告株式会社エイエム三井に生じた費用の5分の4を被告株式会社エイエム三井の負担とする。 8 この判決は,第1項ないし第5項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,各自2008万6588円及びこれに対する平成4年3月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,各自1072万7061円及びこれに対する平成4年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告Cに対し,各自4849万2327円及びこれに対する平成4年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告Dに対し,各自2180万1156円及びこれに対する平成4年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告らは,原告Eに対し,各自2548万8533円及びこれに対する平成4年4月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが, 合による金員を支払え。 5 被告らは,原告Eに対し,各自2548万8533円及びこれに対する平成4年4月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,F眼科において,F医師から,近視矯正手術であるRK手術を受けたことにより,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害を負ったが,被告株式会社アートメーキング三井(以下「被告アートメーキング三井」という。)及び被告株式会社エイエム三井(以下「被告エイエム三井」という。)は,F眼科の経営者で,原告らと診療契約を締結した契約当事者であるとともに,F医師の使用者であるとし,さらに,被告株式会社エフエムエス(以下「被告エフエムエス」という。)は,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の事業を受け継いだことから,同被告らと同様の責任を負うとして,被告らに対し,選択的に,使用者責任(民法715条)又は債務不履行に基づく損害賠償請求として,原告Aは2008万6588円,原告Bは1072万7061円,原告Cは4849万2327円,原告Dは2180万1156円,原告Eは2548万8533円及び上記各金員に対するRK手術の日の翌日(原告Aにつき平成4年3月22日,原告Bにつき平成4年1月25日,原告Cにつき平成4年5月25日,原告Dにつき平成4年1月14日,原告Eにつき平成4年4月30日)から各支払済みまでいずれも民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者被告アートメーキング三井は,Gが,アートメーク(刺青美容施術)を中心としたエステティックサロンの事業(以下「アートメーク事業」という。)を行うために設立した会社である。 被告エイエム三井は,被告アートメーキング三井と類似商号を使用する同 ーク(刺青美容施術)を中心としたエステティックサロンの事業(以下「アートメーク事業」という。)を行うために設立した会社である。 被告エイエム三井は,被告アートメーキング三井と類似商号を使用する同種業者が増加したため,被告アートメーキング三井の事業を承継させる目的で,Gが設立した会社である。 被告エフエムエスは,Gが出資して設立した株式会社エイエムリース(以下「エイエムリース」とい。)を,Gの死後にHが商号変更した会社である。 (2) RK手術RK手術とは,角膜に放射状の切開を入れて,角膜の屈折率を緩和させることによって,近視を矯正する手術である。 (3) 眼科診療所I眼科は,平成2年春ころ開設された眼科診療所であり,大阪市a区bc丁目(以下略)所在の同診療所では,RK手術が実施されていた。 平成4年1月14日,I眼科に代わり,F医師を開設者とするF眼科が同所に開設され,同眼科でもRK手術が実施されていた。その後,F眼科は,平成4年3月17日に大阪市a区bd丁目(以下略)に移設された。 (4) 原告CへのRK手術原告Cは,平成4年5月24日,F眼科において,F医師からRK手術を受けた。 (5) G死亡後の経緯ア Gは,被告アートメーキング三井,被告エイエム三井等多数の会社法人を設立して,アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業に関与していたが,平成4年9月16日に死亡した。 イ G死亡後間もなく,F眼科につき廃止届が出され,大阪市e区fにJ眼科が開設された。 同眼科では,F眼科においてRK手術を受けた患者らに対する術後検診が実施された。J眼科の診療所施設の賃借人名義は,当初被告アートメーキング三井であったが,平成4年12月22日には被告エフエムエスに変更された。 ウ被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は, が実施された。J眼科の診療所施設の賃借人名義は,当初被告アートメーキング三井であったが,平成4年12月22日には被告エフエムエスに変更された。 ウ被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は,平成4年10月29日の株主総会で解散決議をして解散した。 (6) 消滅時効の援用被告らは,原告らに対し,平成14年1月22日の第5回弁論準備手続期日において,不法行為に基づく本訴請求債権について消滅時効を援用するとの意思表示をするとともに,債務不履行に基づく本訴請求債権について商事消滅時効を援用するとの意思表示をした。 2 争点(1) 原告Cを除く原告らは,F医師から,RK手術を受けたか。 (原告Cを除く原告らの主張)原告Aは平成4年3月21日に,原告Bは同年1月24日に,原告Dは同年1月13日に,原告Eは同年4月29日に,それぞれF眼科において,F医師からRK手術を受けた。 (被告らの主張)原告Cを除いては,原告らがF眼科においてF医師からRK手術を受けたことについての証拠がない。 (2) 原告らの視力障害の有無(原告らの主張)ア原告らの視力障害は,別紙被害状況一覧表のとおりである。 なお,原告らは,術前においては,いずれも1.0以上の矯正視力を得ていた。 イ原告Aは,遠方矯正視力が右眼0.8,左眼0.9,近方矯正視力が左右とも0.7である。 また,原告Bの右眼の矯正視力は,遠方が1.2,近方が1.0であるが,これらは病院内の検査室での良好な室内光のある状況下で,かつ,安静にしていた状態での検査結果であり,このような矯正視力の状態が日常生活におけるあらゆる場面における視力の状況を示すものではない。特に,原告Bの場合は,両眼の視力に著しい差がある不同視の状態であり,これを矯正することは技術的に不可能であるから,データとしての矯 日常生活におけるあらゆる場面における視力の状況を示すものではない。特に,原告Bの場合は,両眼の視力に著しい差がある不同視の状態であり,これを矯正することは技術的に不可能であるから,データとしての矯正視力は,日常生活上の不都合を正確に反映しているとはいえない。 (被告らの主張)ア原告Aについて原告Aは,RK手術によって視力を10倍程度改善しており,術後に生じたとする視力障害については,真実であるか極めて疑わしい。 なお,術前の視力については不知であるが,強いて争うものではない。ただし,術前にどのように矯正していたかは明らかでない。 イ原告Bについて原告Bの近方視力が,RK手術によって低下したことを示す客観的証拠はない。また,原告Bの右眼に実施されたRK手術には,何ら問題がなかったのであるから,原告Bに視力障害が生じているとは考え難い。 術前の視力については特に争うものではないが,右眼が軽度の近視であったとの点は否認する。また,術前にどのように矯正していたかは明らかでない。 ウ原告Cについて原告Cの遠方裸眼視力は,RK手術を受ける前には両眼とも0.03であったのが,RK手術を受けたことにより,右眼0.5,左眼0.3にまで改善したのであり(現在では右眼0.4,左眼0.6になっている。),視力障害は認められない。 また,RK手術を受けた後も近方視力に問題がなかったことは,RK手術の1年後である平成5年5月15日のカルテ(甲A3)に「手元細かい字が見づらいことはない。日常ラガンでO.K.」との記載があることから明らかである。 エ原告Dについて原告Dの遠方裸眼視力は,RK手術を受ける前には右眼0.05であったのが,RK手術によって,両眼とも0.6にまで改善しており,日常生活で普通に生活するには眼鏡は不要な状態であるから,この点 ついて原告Dの遠方裸眼視力は,RK手術を受ける前には右眼0.05であったのが,RK手術によって,両眼とも0.6にまで改善しており,日常生活で普通に生活するには眼鏡は不要な状態であるから,この点において視力障害は生じていない。 オ原告Eについて原告Eの遠方裸眼視力は,RK手術を受ける前には右眼0.06,左眼0.05であったのが,現在では右眼0.2,左眼0.5となっており,RK手術によって視力は改善している。切開の瘢痕化等があることは認めるが,RK手術後にグレア,コントラスト感度低下が生じたとの点は不知。夜間視力が低下した等の点は,裏付けを欠く安易な決めつけである。 (3) F医師の過失又は債務不履行(原告らの主張)ア原告A(ア) 適正手術義務違反F医師は,原告AにRK手術を実施するに当たり,①オプティカルゾーンを直径3(ないし3.2)ミリメートル未満とした場合には,瞳孔領内に及んだ切開によって,矯正視力の低下,コントラスト感度低下,グレア,スターバースト,夜間視力の低下,角膜の不正乱視等の合併症が生じる危険があるから,オプティカルゾーン(RK手術において,角膜中央部で切開しないで残す領域で,切開の端をつなぎ合わせて円になる部分)の直径を3(ないし3.2)ミリメートル以上にすべき注意義務があったし,②RK手術における角膜への切開は,可能な限り直線にし,かつ,幅を狭くしなければ,切開痕の修復が遅れ,瘢痕の形成,炎症・白濁などの発生を招くおそれがあるから,切開を可能な限り直線にし,かつ,幅を狭くすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,右眼のオプティカルゾーンを1.8ミリメートル,左眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとし,左眼に湾曲した切開を入れた。 また,F医師は,原告Aが必要とする矯正量に応じた適切な手術計画 を怠り,右眼のオプティカルゾーンを1.8ミリメートル,左眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとし,左眼に湾曲した切開を入れた。 また,F医師は,原告Aが必要とする矯正量に応じた適切な手術計画を立てた上,その手術計画に従った適切な部位に切開を入れるべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,不正確な手術計画を立てた上,切開を中心側に偏位させ,角膜輪部周辺にまで切開を伸ばさなかった。 (イ) 説明義務違反原告らがRK手術を受けた平成4年1月ないし4月当時,RK手術は,①眼鏡やコンタクトレンズのように安定した矯正量を得ることができず,②角膜の瞳孔領に切開が入るような手術を行うと,角膜の屈折曲率は変化するものの,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害を合併する危険があり,③手術後の視力が相当長期間にわたって変動し,安定しないなどとされており,日本眼科学会でも,同手術を,確立した近視矯正方法とは評価していなかった。 そのため,F医師は,原告Aに対し,RK手術を実施するに先立ち,RK手術が不適切に実施された場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のあること等を説明すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,その旨の説明をしなかったのみならず,「RK手術をすれば,視力は10倍くらいよくなるので1.0になる。眼鏡やコンタクトレンズを使用しなくても不自由はない。見えなくなるような心配はない。」と説明し,眼鏡と同程度の微妙な視力矯正が可能な手術であり,かつ,合併症の発生する危険が皆無の手術であるかのような虚偽の説明をして勧誘した上,F眼科はRK手術の予約が一杯で,この機会を逃せばRK手術を受けることが相当期間不可能になるかのように装い,「今日は予約がキャンセルになったので,今す 術であるかのような虚偽の説明をして勧誘した上,F眼科はRK手術の予約が一杯で,この機会を逃せばRK手術を受けることが相当期間不可能になるかのように装い,「今日は予約がキャンセルになったので,今すぐ手術ができる。もし,今日手術をしなければ,予約が入るのは6か月以上先になる。」と,原告Aが手術を受けるか否かを冷静に判断することのできないような言葉を用いて,RK手術を受けるよう勧誘した。 イ原告B(ア) 適正手術義務違反F医師は,原告BにRK手術を実施するに当たり,原告Bが必要とする矯正量に応じた適切な手術計画を立てた上,その矯正量に応じた適切な本数の切開を入れるべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,不正確な手術計画を立てた上,原告Bにとっては多すぎる8本の切開を原告Bの右眼に入れたものである。 (イ) 説明義務違反F医師は,原告Bに対し,RK手術を実施するに先立ち,RK手術が不適切に実施された場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のあること等を説明すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,その旨の説明をしなかったのみならず,「RK手術をすれば,不同視も矯正できる。左右の視力を調整できる。心配はない。」と説明し,眼鏡と同程度の微妙な視力矯正が可能な手術であり,かつ,合併症の発生する危険が皆無の手術であるかのような虚偽の説明をして勧誘した上,F眼科はRK手術の予約が一杯で,この機会を逃せばRK手術を受けることが相当期間不可能になるかのように装い,「今日は予約がキャンセルになったので,今すぐ手術ができる。もし,今日手術をしなければ,予約が入るのは6か月以上先になる。」と,原告Bが手術を受けるか否かを冷静に判断することのできないような言葉を用いて,RK手術を受けるよう勧誘した。 ウ ぐ手術ができる。もし,今日手術をしなければ,予約が入るのは6か月以上先になる。」と,原告Bが手術を受けるか否かを冷静に判断することのできないような言葉を用いて,RK手術を受けるよう勧誘した。 ウ原告C(ア) 手術適応の有無原告Cは,強度の近視のため,RK手術による矯正では正視にならない状態であった一方,眼鏡やコンタクトレンズにより正視の矯正視力を得ていたのであるから,RK手術の適応はなかった。 (イ) 適正手術義務違反F医師は,原告CにRK手術を実施するに当たり,オプティカルゾーンの直径を3(ないし3.2)ミリメートル以上にすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,両眼ともオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとし,瞳孔領の中心部に非常に近い部位まで切開を入れた。 また,F医師は,原告Cが必要とする矯正量に応じた適切な手術計画を立てるべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,不正確な手術計画を立てた。 (ウ) 説明義務違反F医師は,原告Cに対し,RK手術を実施するに先立ち,原告CにはRK手術の適応がないと考えられること,RK手術が不適切に実施された場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のあること等を説明すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,その旨の説明をしなかったのみならず,「RK手術をすれば,視力は10倍くらいよくなるので1.0になる。眼鏡やコンタクトレンズを使用しなくても不自由はない。見えなくなるような心配はない。」と説明し,眼鏡と同程度の微妙な視力矯正が可能な手術であり,かつ,合併症の発生する危険が皆無の手術であるかのような虚偽の説明をして勧誘した上,F眼科はRK手術の予約が一杯で,この機会を逃せばRK手術を受けることが相当期間不可能になるかのよう な手術であり,かつ,合併症の発生する危険が皆無の手術であるかのような虚偽の説明をして勧誘した上,F眼科はRK手術の予約が一杯で,この機会を逃せばRK手術を受けることが相当期間不可能になるかのように装い,「今日は予約がキャンセルになったので,今すぐ手術ができる。 もし,今日手術をしなければ,予約が入るのは6か月以上先になる。」と,原告Cが手術を受けるか否かを冷静に判断することのできないような言葉を用いて,RK手術を受けるよう勧誘した。 エ原告D(ア) 手術適応の有無原告Dは,強度の近視のため,RK手術による矯正では正視にならない状態であった一方,眼鏡やコンタクトレンズにより正視の矯正視力を得ていたのであるから,RK手術の適応はなかった。 (イ) 適正手術義務違反F医師は,原告DにRK手術を実施するに当たり,オプティカルゾーンの直径を3(ないし3.2)ミリメートル以上にした上,切開を可能な限り直線にし,かつ,幅を狭くすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,両眼ともオプティカルゾーンを2.5ミリメートルとして瞳孔領の中心部に非常に近い部位まで切開を入れた上,右眼に湾曲した切開を入れた。 また,F医師は,原告DにRK手術を実施するに当たり,原告Dの必要とする矯正量に応じた適切な手術計画を立てた上,その矯正量に応じた適切な本数の切開を入れるべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,不正確な手術計画を立てた上,原告Dにとっては多すぎる8本の切開を両眼のそれぞれに入れた。 (ウ) 説明義務違反F医師及びF眼科従業員は,原告Dに対し,RK手術を実施するに先立ち,原告DにはRK手術の適応がないと考えられること,RK手術が不適切に実施された場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のある に対し,RK手術を実施するに先立ち,原告DにはRK手術の適応がないと考えられること,RK手術が不適切に実施された場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のあること等を説明すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,その旨の説明をしなかったのみならず,F眼科女性従業員が,「RK手術は魔法のような手術で,視力は10倍以上よくなるので,1.0になる。眼鏡やコンタクトレンズを使用しなくても不自由はない。スターバーストやグレアの心配はない。」と説明し,眼鏡と同程度の微妙な視力矯正が可能な手術であり,かつ,合併症の発生する危険が皆無の手術であるかのような虚偽の説明をして勧誘した上,F眼科はRK手術の予約が一杯で,この機会を逃せばRK手術を受けることが相当期間不可能になるかのように装い,「今日は予約がキャンセルになったので,今すぐ手術ができる。もし,今日手術をしなければ,予約が入るのは6か月以上先になる。」と,原告Dが手術を受けるか否かを冷静に判断することのできないような言葉を用いて,RK手術を受けるよう勧誘した。 オ原告E(ア) 手術適応の有無原告Eは,強度の近視のため,RK手術による矯正では0.6以上の視力にはならない状態であった一方,眼鏡やコンタクトレンズにより正視の矯正視力を得ていたのであるから,RK手術の適応はなかった。 (イ) 適正手術義務違反F医師は,原告EにRK手術を実施するに当たり,オプティカルゾーンの直径を3(ないし3.2)ミリメートル以上にすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,両眼ともオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとして瞳孔領の中心部に非常に近い部位まで切開を入れた。 また,F医師は,原告EにRK手術を実施するに当たり,原告Eの必要とする矯正量に応じた適 り,両眼ともオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとして瞳孔領の中心部に非常に近い部位まで切開を入れた。 また,F医師は,原告EにRK手術を実施するに当たり,原告Eの必要とする矯正量に応じた適切な手術計画を立てるべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,不正確な手術計画を立てた。 (ウ) 説明義務違反F医師は,原告Eに対し,RK手術を実施するに先立ち,原告EにはRK手術の適応がないと考えられること,RK手術が不適切に実施された場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のあること等を説明すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,その旨の説明をしなかったのみならず,「RK手術をすれば,視力は10倍以上よくなるので,0.6以上になる。眼鏡やコンタクトレンズを使用しなくても不自由はない。手術後6か月経てばボクシングのプロ選手としてやっていける。見えなくなるような心配はない。」と説明し,眼鏡と同程度の微妙な視力矯正が可能な手術であり,かつ,合併症の発生する危険が皆無の手術であるかのような虚偽の説明をした。 (被告らの主張)原告C,原告D及び原告EについてRK手術の適応がなかったとの点は不知ないし争う。 F医師に,オプティカルゾーンの直径を3(ないし3.2)ミリメートル以上にすべき注意義務があったとの点は争う。 ア原告A(ア) 適正手術義務違反F医師の原告Aに対するRK手術は適切に行われたものであり,これは,原告AがRK手術を受けたことにより,視力が10倍程度改善していることから明らかである。 左眼の切開の一部が湾曲しているとの点は不知であるが,仮に湾曲が生じていたとしても,原告Aは,平成5年3月20日に,K医師から再手術を受けているのであるから,これがF医師の手技による切開である 左眼の切開の一部が湾曲しているとの点は不知であるが,仮に湾曲が生じていたとしても,原告Aは,平成5年3月20日に,K医師から再手術を受けているのであるから,これがF医師の手技による切開であるかは明らかでない。 (イ) 説明義務違反F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘があったとは認められない。 すなわち,原告Aは,グレア,スターバースト等の合併症について自ら研究しており,F眼科を受診する前からRK手術を受けることを決意していた。原告AにRK手術が実施されることになったのは,原告A自身の強い要請によるものである。また,原告Aは,F眼科において,「術後の症状についてのご注意」と題する書面を見せられ,それら症状が生じ得ることを確認した上でRK手術を受けている。 したがって,F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘はなかったというべきであるし,説明義務違反や不適切な勧誘によって,原告AがRK手術を受けることになったものでもない。 イ原告Bについて(ア) 適正手術義務違反切開の本数を8本としたことが,原告Bにとって多すぎたとの点は争う。 F医師は,原告Bに対して,RK手術を適正に実施したものであり,このことは,L大学医学部附属病院眼科M医師による検査報告書(甲B全4)の2枚目には,原告Bに実施されたRK手術について「比較的きれいなRKがやってある。」と記載されていること,原告Bは,右眼についてRK手術を受けた後,半年間程度は,右眼の視力は0.7程度に回復し,問題は生じていなかったことから明らかである。 (イ) 説明義務違反F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘があったとは認められない。 すなわち,眼にメスを入れるという手術法は,通常の感覚からすれば極めて強い恐怖を感じるものであるところ, 説明義務違反F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘があったとは認められない。 すなわち,眼にメスを入れるという手術法は,通常の感覚からすれば極めて強い恐怖を感じるものであるところ,事前に十分な知識を習得しているか,医師から納得のいくような説明を受けない限り,RK手術を受けるとの決断はできないから,原告Bは,F眼科を受診する前から,RK手術を受けることを決意していたというべきである。 したがって,F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘はなかったというべきであるし,説明義務違反や不適切な勧誘によって,原告BがRK手術を受けることになったものでもない。 ウ原告Cについて(ア) 適正手術義務違反手術内容自体については認める。 F医師は,原告Cに対し,RK手術を適正に実施したものであり,このことは,原告Cの遠方裸眼視力が,RK手術前には両眼とも0.03であったのが,RK手術を受けた後には,左眼0.3,右眼0.5にまで改善したことより明らかである。 (イ) 説明義務違反F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘があったとは認められない。 すなわち,F医師及びF眼科の従業員は,原告Cに対し,「手術承諾書」及び「術後の症状のご注意」と題する各書面を手渡し,これに署名押印をしてもらっており,RK手術の合併症についての十分な説明を行っていた。また,RK手術を受けるには手術日の1週間前からコンタクトレンズを外す必要があるが,原告Cは,手術日の1週間前からコンタクトレンズを外していたのであり,F眼科を受診する前から,RK手術を受けることを決意していたことがうかがえる。 したがって,F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘はなかったというべきであるし,説明義務違反や不適切な勧誘によって,原告CがRK手術を受 を受けることを決意していたことがうかがえる。 したがって,F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘はなかったというべきであるし,説明義務違反や不適切な勧誘によって,原告CがRK手術を受けることになったものでもない。 エ原告Dについて(ア) 適正手術義務違反切開が瞳孔領の中心部に非常に近い部位までなされていたとの評価は争う。 F医師は,原告Dに対し,RK手術を適正に実施したものであり,このことは原告Dの遠方裸眼視力が,RK手術前は両眼ともに0.05であったのが,RK手術を受けた後には両眼ともに0.6にまで改善していることから明らかである。 (イ) 説明義務違反F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘があったとは認められない。 すなわち,F医師及びF眼科の従業員は,原告Dに対し,「手術承諾書」及び「術後の症状のご注意」と題する各書面を手渡し,これに署名押印をしてもらっており,RK手術の合併症についての十分な説明を行っていた。また,原告Dは,RK手術の危険性を十二分に認識した上で,F眼科を訪れている。 したがって,F医師やF眼科の従業員に説明義務違反や不適切な勧誘はなかったというべきであるし,説明義務違反や不適切な勧誘によって原告DがRK手術を受けることになったものでもない。 オ原告Eについて(ア) 適正手術義務違反F医師によるRK手術の実施状況が不明であり,原告Eは,適正手術義務違反についての立証責任を果たしていない。 (イ) 説明義務違反F医師は,F眼科の従業員であったNをして,原告Eに対して,40分にもわたって,RK手術についての説明をさせたのであるから,F医師に説明義務違反はない。 (4) 因果関係(原告らの主張)ア原告A原告Aがコントラスト感度の低下等の視力障害を負ったのは,F医師がR たって,RK手術についての説明をさせたのであるから,F医師に説明義務違反はない。 (4) 因果関係(原告らの主張)ア原告A原告Aがコントラスト感度の低下等の視力障害を負ったのは,F医師がRK手術において,右眼のオプティカルゾーンを1.8ミリメートル,左眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとし,左眼における切開を一部湾曲させたためである。 また,原告Aの遠方裸眼視力が1.0にならなかったのは,F医師の手術計画が不正確であった上,F医師が切開を中心側に偏位させ,角膜輪部周辺にまで切開を伸ばさなかったためである。 イ原告B原告Bの右眼が過矯正となったのは,F医師の手術計画が不正確であった上,原告Bにとっては多すぎる8本もの切開を入れたためである。 また,スターバースト,グレア等の視力障害が生じたのは,8本の切開の一部が瞳孔領に及んでいるためである。 ウ原告C原告Cが矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害を負ったのは,F医師が,両眼ともオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとして瞳孔領の中心部に非常に近い部位まで切開を入れたためである。 また,原告Cの遠方裸眼視力が1.0にならなかったのは,F医師の手術計画が不正確であったためである。 エ原告D原告Dが矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害を負ったのは,F医師が,両眼のオプティカルゾーンを2.5ミリメートルとし,右眼に湾曲した切開を入れたためである。 また,過矯正となったのは,F医師の手術計画が不正確であった上,8本もの切開を矯正効果の高い瞳孔領に及ぼしたためでもある。 オ原告E原告Eが矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害を負ったのは,F医師が,両眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとしたためである。 また,過矯 に及ぼしたためでもある。 オ原告E原告Eが矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害を負ったのは,F医師が,両眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとしたためである。 また,過矯正となったのは,F医師の手術計画が不正確であった上,4本の切開を矯正効果の高い瞳孔領に及ぼしたためでもある。 (被告らの主張)アオプティカルゾーンの不足,切開の湾曲,切開本数等が視力障害を生じさせたとする点は不知。 イ(ア) 原告A原告Aは,平成5年3月20日に,K医師から,右眼について再手術を受けており,原告Aの視力障害のうち,どれがF医師の実施したRK手術によって生じたものであるか明らかでない。 (イ) 原告B原告Bは,右眼についてRK手術を受けた後半年間程度は,右眼の視力は0.7程度に回復し,問題は生じていなかったのであるから,原告Bの視力障害は,RK手術以外の他要因によって生じたものである。 また,原告Bの不同視は,RK手術を受けなかった左眼の視力が悪化したために生じたものであるから,RK手術との間に因果関係は認められない。 (ウ) 原告C原告Cの視力障害とRK手術との間に因果関係は認められない。 すなわち,①原告Cには,RK手術を受ける前から,既にコンタクトレンズの長時間使用により角膜に傷があったこと,②原告Cは,常時摂氏40度の過酷な状況で,1時間に1200本のペットボトルを目視検査する等眼を酷使する仕事に従事していたこと,③仕事場ではペットボトルの処理に伴い,ダイオキシンが発生していたこと,④RK手術前に原告Cの視力が低下し始めたのは,その仕事場で働き始めた後のことであること,⑤手術前から日常的にサングラスを使用しており,もともと太陽光線に対して弱い眼であったこと,⑥原告Cについて,視力が急に低下したのは手術から5年以 めたのは,その仕事場で働き始めた後のことであること,⑤手術前から日常的にサングラスを使用しており,もともと太陽光線に対して弱い眼であったこと,⑥原告Cについて,視力が急に低下したのは手術から5年以上たった平成9年10月のことであることなどからして,原告Cの視力障害は,RK手術以外の他要因によって生じたものである。 (エ) 原告D原告Dは,平成6年ころ,K医師から,左眼について再手術を受けており,原告Dの視力障害のうち,どれがF医師の実施したRK手術によって生じたものであるか明らかでない。 また,原告Dは,RK手術を受ける前から強い乱視があったのであるから,夜間視力の低下や夜間コントラスト感度の低下等が,RK手術によって生じたものとは認められない。 (オ) 原告E原告Eの視力障害とRK手術との間に因果関係は認められない。 すなわち,①原告Eの眼の状態について,平成11年5月28日の検査記録が存在するが,RK手術を受けた平成4年からそれまでの8年の間に,どのような経過をたどったのかが明らかでないし,②原告Eはその間にボクシングを続け,顔面にパンチを受けたこともあるから,これによって視力障害が発生した可能性もあり,③原告Eは,平成5年,K医師から,左眼について再手術を受けているところ,原告Eの視力障害が,F医師とK医師のどちらが実施したRK手術によって生じたものであるか区別することはできないから,原告Eの視力障害とRK手術との間に因果関係を認めることはできない。 (5) 被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は,F眼科の経営者か。 (原告らの主張)F眼科の経営者は,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井であった。 すなわち,F眼科においては,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井が賃借建物,従業員,預金等を管理していた。 張)F眼科の経営者は,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井であった。 すなわち,F眼科においては,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井が賃借建物,従業員,預金等を管理していた。また,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は,Gを唯一の実質的経営者として,法人相互間及び個人を含め,明確に区別し得ない状態で一体として運営されていたものであるから,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の法人格は,両者の関係及びGとの関係において,いずれも形骸化していた。これらの事実からすれば,F眼科の経営者は,G並びに同人と一体である被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井であった。 したがって,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は,原告らに対し,F医師の使用者として使用者責任(民法715条)を負うし,診療契約の契約当事者として債務不履行責任も負う。 (被告らの主張)F眼科の開設者兼経営者はF医師であり,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は,F眼科の経営に関与していない。 また,Gの経営する会社が複数存在したとしても,それらは独立した法人であり,財産の混同,法人格の形骸化はなかったから,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の法人格が,両者の関係及びGとの関係において,いずれも形骸化していたなどということはない。 (6) 被告エフエムエスの責任(原告らの主張)ア事業の同一性被告エフエムエスは,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井が経営していた美容外科の事業をそのままの形で引き継いでおり,外形上,事業者の名称が変更したに過ぎないから,その実質には何らの変化もなく,被告エフエムエスの事業と被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の事業との間には「事業の同一性」が認められる。し り,外形上,事業者の名称が変更したに過ぎないから,その実質には何らの変化もなく,被告エフエムエスの事業と被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の事業との間には「事業の同一性」が認められる。したがって,被告らは,すべて同一の事業を営んでいる同一の法人として評価されるべきであるから,被告エフエムエスは,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井と同様に,原告らに対する損害賠償義務を負うものである。 イ法人格否認の法理被告エフエムエスは,Gが経営していた多数の法人の中の1つであり(当時の商号は株式会社エイエムリース),他の法人との関係及びG個人との関係において法人格が形骸化していたのであるから,法人格否認の法理が適用され,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井と同様に,原告らに対する損害賠償義務を負うものである。 (被告らの主張)事業の同一性について原告らの主張は,理論的根拠を欠くものである。 また,Gの経営する会社が複数存在したとしても,それらは独立した法人であり,財産の混同,法人格の形骸化はなかった。 (7) 和解契約の効果が被告らに及ぶか。 (被告らの主張)原告らの主張は,被告らや有限会社アールケイ大阪(以下「アールケー大阪」という。)を含んだ法人グループ及びGが,実質的に同一であることを理由とするものと解されるが,その主張を前提とするなら,原告らがアールケー大阪等と締結した和解契約の効果が,原告らと被告らとの間にも及ぶため,原告らは,被告らに対して,RK手術に関する損害賠償を請求することはできないと解される。 すなわち,原告らは,平成11年4月19日,F医師,アールケー大阪及びO(Gの子)との間で,F医師が原告らに対して実施したRK手術について,F医師が原告らに対し,解決金として合計200万円を支払い,アールケー 原告らは,平成11年4月19日,F医師,アールケー大阪及びO(Gの子)との間で,F医師が原告らに対して実施したRK手術について,F医師が原告らに対し,解決金として合計200万円を支払い,アールケー大阪及びOが原告らに対し,解決金として連帯して合計100万円を支払うこと,原告らは,F医師,アールケー大阪及びOに対して,その他裁判上・裁判外の請求をしないこと等を内容とする和解契約を締結しているが,請求権を放棄する旨の合意の効果が,原告及びアールケー大阪等と同一である被告らとの間にも及ぶため,原告らは,被告らに対して,RK手術に関する損害賠償を請求することはできない。 (原告らの主張)責任を負うべきである人が複数いる場合,その一部と和解契約を締結しても,その効果が他の者に及ぶものではない。 (8) 本件において,被告らが商事消滅時効(5年間)を援用できるか。 (被告らの主張)被告らはいずれも株式会社であり,その行為には商行為の規定が準用される(商法523条)ため,原告らの被告らに対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は5年間(商法522条)である。 原告らの主張によれば,原告らに手術がなされたのは,平成4年1月ないし5月のことであるから,債務不履行に基づく損害賠償請求権は(当然のことながら,不法行為に基づく損害賠償請求権も),いずれも消滅時効期間が経過している。 (原告らの主張)医療契約上の債務不履行責任の消滅時効期間は10年間である。 また,医療法は,営利法人が診療所その他の医療機関を経営することを予定していないから,Gが法人相互間及び個人を明確に区別しない状態で経営をしたために,損害賠償義務を負担すべき主体に会社が含まれるとしても,原告らの損害賠償請求権の消滅時効の期間が5年間に短縮されるいわれはない。 (9) 損害 相互間及び個人を明確に区別しない状態で経営をしたために,損害賠償義務を負担すべき主体に会社が含まれるとしても,原告らの損害賠償請求権の消滅時効の期間が5年間に短縮されるいわれはない。 (9) 損害(原告らの主張)ア原告らの被った損害は,別紙損害内訳一覧表のとおりである。 イ視力障害について後遺障害等級を評価するに際しては,遠方矯正視力にとどまらず,近方矯正視力をも検討し,両者のうちで矯正視力が低い方の数値をもって評価すべきである。また,コントラスト感度の低下,グレア,夜間視力の低下等の症状については,調整機能麻痺に準じて評価すべきである。 不同視や視力の変動(長期変動ないし日内変動)等RK手術による視力障害は,矯正視力の数値だけからは日常生活の不都合を評価することはできないから,それぞれの症状の特徴を十分に検討した上で,総合的に視力障害の程度を評価すべきである。 ウ原告らに,現実には収入の減少がないとしても,それは原告らがRK手術に起因する視力障害があることを職場に秘匿した上で,RK手術前と同様の仕事を行っていくために格段の努力を重ねたためであるから,その場合でも逸失利益を認めるべきである。 (被告らの主張)ア原告らに損害が生じていたとしても,原告らは,F医師等から和解金として1人当たり60万円の支払を受けており,損害は補填済みである。 イ(ア) 原告A原告Aは,RK手術の後も,従来の仕事を継続し,引き続き安定した収入を得ているから,原告Aに財産的損害は生じていない。 (イ) 原告B原告Bの財産的損害について,具体的な立証はなされていない。 (ウ) 原告C原告Cは,RK手術の後も,9年間は仕事を継続していたし,また,平成13年に仕事を辞めたのは,自らの意思によるものであるから,原告Cが仕事を辞めたことと原告Cの なされていない。 (ウ) 原告C原告Cは,RK手術の後も,9年間は仕事を継続していたし,また,平成13年に仕事を辞めたのは,自らの意思によるものであるから,原告Cが仕事を辞めたことと原告Cの視力障害とは無関係である。 (エ) 原告D原告Dが精神分裂病に罹患していることや就職できていないことと原告Dの視力障害とは無関係である。 (オ) 原告E原告Eが仕事に支障を来したことと原告Eの視力障害とは無関係である。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告Cを除く原告らは,F医師から,RK手術を受けたか。)について(1) 原告Cを除く原告らも,F眼科において,F医師からRK手術をされた旨述べており(各原告本人,甲C1ないし5),その供述に不自然な点は見当たらないこと,同原告らがF医師,アールケー大阪及びOとの間で,同原告らがF医師からRK手術を受けたことを前提とした和解契約を締結していること(甲C全4),同原告らの眼にはRK手術による切開が存在すること(甲B全3,4,6,7)によれば,原告Aは平成4年3月21日に,原告Bは同年1月24日に,原告Dは同年1月13日に,原告Eは同年4月29日に,それぞれF眼科において,F医師からRK手術を受けたものと認められる。 (2) なお,原告Cを除く原告については,F眼科での診療録等が証拠として提出されていないが,F眼科は,平成4年に閉鎖されている(争いのない事実)のであるから,それから長期間経過した現在において診療録等が発見できないとしても不自然ではなく,上記認定を妨げるものではない。 2 前記争いのない事実,証拠(甲B全2,9,10,C全101,102)及び弁論の全趣旨によれば,RK手術について,以下の医学的知見が認められる。 (1) 定義RK手術とは,角膜に放射状の切開(RK切開) 争いのない事実,証拠(甲B全2,9,10,C全101,102)及び弁論の全趣旨によれば,RK手術について,以下の医学的知見が認められる。 (1) 定義RK手術とは,角膜に放射状の切開(RK切開)を入れ,角膜の屈折率を緩和させることにより,近視を矯正する手術のことである。 乱視矯正角膜切開(T切開)とは,乱視の強い軸に対して,強主径線を横断するように切開を入れて,乱視を矯正する手術のことである。 (以下において,特にことわりがない限り,「切開」は,「RK切開」を意味するものとして用いる。)(2) RK手術による近視矯正の効果RK手術による矯正量が,誤差プラスマイナス1D(ジオプター)の範囲内で予測値に入る可能性は,60ないし70パーセントであるとされている。矯正量が6D以下の場合には,予測値と術後の値とがおおむね一致していたが,矯正量が増加するにつれて誤差が大きくなり,角膜の混濁も増強する傾向があるとの報告もされている。 また,RK手術は,1970年代ないし80年代から盛んに行われ始めた手術であるため,長期予後は不明である。 (3) RK手術の適応ア RK手術の適応があるのは,以下の場合であるとされている。 (ア) 2Dを超える不同視(イ) 2Dを超える角膜乱視(ウ) 3Dを超える屈折度の安定した近視イ強度近視のため,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満にしたり,本数を16本よりも多くしなければ,矯正効果が得られないと予想される場合は,原則として,RK手術の適応外である(その理由は,後記のとおりである。)。 ウ RK手術の禁忌は,感染症やアレルギーによる外眼部の炎症,ドライアイ,円錐角膜,緑内障,白内障,ブドウ膜炎(眼内の炎症),創傷治癒過程に問題があるような疾患等である。 屈折度の安定していない眼については適応がな ,感染症やアレルギーによる外眼部の炎症,ドライアイ,円錐角膜,緑内障,白内障,ブドウ膜炎(眼内の炎症),創傷治癒過程に問題があるような疾患等である。 屈折度の安定していない眼については適応がなく,20歳未満の患者は,一般に屈折度が安定していない場合が多いこと等から禁忌とされている。 (4) RK手術の実施方法ア術前検査RK手術を実施するに当たっては,RK手術の適応を判断し,適切な手術計画を立てるため,術前に,屈折度,矯正視力・裸眼視力,眼圧,角膜の厚み,角膜の形状,禁忌疾患の有無,視軸の位置等を検査する。これらの術前検査をすべて行うには,1時間程度の時間を要する。 イ手術計画術前検査で得られたデータを基に,どのように切開を入れるかという手術計画を立てる。 手術計画を立てるに当たっては,術前の屈折度が一番重要なデータであるが,他に,年齢,性別,眼圧も考慮することになる。 矯正量の調整は,切開の本数とオプティカルゾーンの幅によって行う。 切開の本数は,多いほど矯正量が大きくなるが,切開の本数が多くなるほど角膜の強度が下がってしまうため,切開の本数は,16本が限界であるとされている。また,切開は,これを上下左右対称にしなければ,不正乱視を誘発しやすくなるため,乱視が強い場合でない限り,切開の本数は,4本,8本,16本のいずれかにすべきである。 オプティカルゾーンは,これを狭くするほど矯正量が大きくなる。しかし,一般に角膜の中央部に切開を加えると,それだけで強い視力障害を起こしやすく,RK手術においても,オプティカルゾーンの直径を3ミリメートル未満にした場合には,コントラスト感度の低下,グレア障害,不正乱視等の視力障害が生じやすい。また,不正乱視の程度によっては,矯正視力が低下することもある。そのため,術者がRK手術に熟練して リメートル未満にした場合には,コントラスト感度の低下,グレア障害,不正乱視等の視力障害が生じやすい。また,不正乱視の程度によっては,矯正視力が低下することもある。そのため,術者がRK手術に熟練している等,特段の事情がない限り,オプティカルゾーンは3ミリメートル以上確保すべきであるとされている(3ミリメートルという数値は,通常の明所における瞳孔径と一致するものである。)。 ウ手術の実施(切開の入れ方)角膜上に視軸及びオプティカルゾーンをマーキングした上で,手術計画に従った切開をメスによって入れる。 手術実施者は,具体的な切開の入れ方について,次のような点等を注意しなければならないとされている。 (ア) オプティカルゾーンを3ミリメートル以上確保する。 その一方,十分な矯正効果を得るために,切開は,角膜輪部(角膜と鞏膜の境界部分)近くにまで伸ばす。ただし,角膜輪部には血管があるので,切開は,角膜輪部より0.5ミリメートルほど内側までで止める。 (イ) 切開の深さ・長さ等が不規則だと,矯正量が予測値からずれたり,コントラスト感度の低下,不正乱視を起こす原因になり,矯正視力の低下をもたらすこともあるから,まっすぐとした切開を入れる。 (ウ) 矯正効果を得るために,切開の深さは,角膜厚の80パーセントから90パーセントくらいとする。 (エ) 切開の幅は,広くするほど矯正量は大きくなるが,その一方で,広くするほど術後の創傷治癒が遅れたり,角膜の強度が落ちたりすることがあるので,広くしすぎないようにする(切開の幅は,通常RK手術に用いるダイヤモンドメスの幅で決まる。)。 (オ) T切開を行う場合には,これとRK切開とを交差させると,その部分で切開が広がったり,強い斑紋収縮を惹起することがあるので,T切開とRK切開とは交差させない。 (5) 合併症 幅で決まる。)。 (オ) T切開を行う場合には,これとRK切開とを交差させると,その部分で切開が広がったり,強い斑紋収縮を惹起することがあるので,T切開とRK切開とは交差させない。 (5) 合併症とその原因等RK手術の主な合併症及びその原因は,以下のとおりである。 ア過矯正手術によって得られた矯正量が,患者の必要とする矯正量より多すぎた場合のことである。 手術計画が不正確であったり,手術計画が正確であっても,これに従った切開の入れ方(オプティカルゾーン,切開の深さ等)をしていない場合には,過矯正となる。 イ不正乱視不正乱視とは,乱視の中でも,角膜の形状が不正な状態にある場合のことである。これが生じると,グレア,コントラスト感度の低下の原因にもなるし,不正乱視の程度によっては,矯正視力の低下を招くこともある。 不正乱視は,切開の深さや形状が不規則であったり,オプティカルゾーンが狭かったりした場合に生じやすいとされている。 ウ矯正視力の低下矯正視力の低下とは,眼鏡等によって得ることのできる最良の視力が低下することであり,不正乱視(角膜の形状が不正な状態)が原因である場合が多い。 不正乱視が,切開の深さや形状が不規則であったり,オプティカルゾーンが狭かったりした場合に生じやすいことについては前記のとおりである。 エコントラスト感度の低下コントラスト感度とは,白と黒の境界を識別する能力のことである。RK手術後にコントラスト感度が低下した場合でも,RK手術から1年を経過すれば相当程度回復することが多いが,夜間におけるコントラスト感度の低下は回復しない場合が多いとされている。 切開の深さや形状が不規則であったり,オプティカルゾーンが狭かったりした場合に生じやすいとされている。 オグレア光を非常にまぶしく,又は,見づら 感度の低下は回復しない場合が多いとされている。 切開の深さや形状が不規則であったり,オプティカルゾーンが狭かったりした場合に生じやすいとされている。 オグレア光を非常にまぶしく,又は,見づらく感じることである。角膜に加えた切開により光が乱反射することで生じる現象である。 角膜に部分的な濁りがあったり,白内障であったり等,眼内に光が入る部分に濁りがあることを原因とする場合がある一方,角膜の表面に不正があったり,傷があったりした場合にも生じることがある。 RK手術においては,オプティカルゾーンが狭い場合,切開本数の多い場合に生じやすいとされている。 カスターバースト夜間に車のヘッドライトなどの光が,放射状に散乱して見える現象であり,オプティカルゾーンを狭くした場合に生じやすいとされている。 キ不同視左右の視力に大きな差が生じることである。 ク視力変動(ア) 視力日内変動1日の中で,昼間と夜間とで視力が変動することである。 その機序について,いくつかの説(①眼内圧が1日の中で変動しているので,それによって角膜の形状が変わり,屈折度が変わる,②夜間まぶたを閉じておくと,角膜の浮腫ができ,これによって屈折の状態が変わる等)があり,はっきりとしたことは分かっていないが,RK切開をしない人に視力日内変動が生じることはあまりない。 (イ) 視力の長期的,持続的な変動視力が,長期間にわたって変動を起こすことである。 角膜の実質部分の創傷治癒は非常に遅く,数か月,場合によっては1年以上たっても治癒過程が続いていることがあるため,切開した部分の生理学的な強度が長期間にわたって変化し,屈折度が変わってしまうものと考えられている。 ケ夜間視力の低下夜間の視力は,通常でも昼間の視力より低下するが,低下の程度が通常より大きい状態 部分の生理学的な強度が長期間にわたって変化し,屈折度が変わってしまうものと考えられている。 ケ夜間視力の低下夜間の視力は,通常でも昼間の視力より低下するが,低下の程度が通常より大きい状態のことである。 RK手術においては,切開が瞳孔領に及んだ場合に,これが眼内に入る光の量を減らし,夜間視力低下の原因になる。 コ角膜穿孔角膜に穿孔が生じることである。 切開の深さは,角膜厚の80パーセントから90パーセントにするのが通常であるが,刃の先端が角膜のデスメ膜(裏側)に達して,前房に切開が及ぶことがある。小穿孔なら問題はないが,大穿孔だと,目の中の水が漏れ出て手術の継続が困難になるし,刃先が水晶体や虹彩に当たったりして,眼内の組織を傷つけるおそれがある。また,角膜内皮細胞を傷つける可能性もあり,その場合には,水疱性角膜症を起こす原因になり得る。 (6) 眼科学会におけるRK手術の評価日本眼科学会では,佐藤医師が1940年代から1950年代にかけて行った角膜全方面切開術によって,水疱性角膜症のような強い合併症が現われたという経験から,角膜に切開を入れる手術は行わない方がよいという暗黙の了解があった。ただし,近年では,アメリカを中心に,RK手術に肯定的な症例報告が数多くされるようになったことから,次第に近視矯正方法の1つとして認められつつあるという状況にある。 一方,RK手術の合併症等の問題については,1980年代前半ころから,学会誌等に発表されていた。 (7) RK手術による合併症の有無,程度についての検査ア矯正視力を測定するに際しては,球面レンズと円柱レンズが用いられる。 球面レンズは,遠視又は近視を矯正するレンズである。そのうち凸レンズは遠視を矯正するレンズであり,検査数値上はプラスとして表記される。凹レンズは近視を矯正 ては,球面レンズと円柱レンズが用いられる。 球面レンズは,遠視又は近視を矯正するレンズである。そのうち凸レンズは遠視を矯正するレンズであり,検査数値上はプラスとして表記される。凹レンズは近視を矯正するレンズであり,検査数値上はマイナスとして表記される。レンズの度数の単位は,D(ジオプター)である。 円柱レンズは,乱視を矯正するレンズであり,球面レンズと同様,凸レンズと凹レンズがある。 被検査者の視力を矯正するために用いたレンズの種類,度数により,被検査者の遠視や近視の有無・程度,乱視の有無・程度,強主径線が表される。また,屈折値の他覚検査においても,検査結果は同様の方法で表される。 イ SRI(球面不正指数)は,角膜表面曲率の不正を示す指標,SAI(球面均整指数)・非対称性を示す指標であり,これらによって不正乱視の有無,程度を知ることができるし,これら指標と矯正視力の低下との間には相関関係がある。正常眼での値は,SRI0~0.75,SAI0~0.53である。 ウ原告らは,L大学医学部附属病院眼科において,眼の検査を受けたが,コントラスト感度及びグレアについては,昼間コントラスト感度,昼間周辺グレア下(視界の周辺に電球をつけた状態のこと)でのコントラスト感度,夜間コントラスト感度,夜間中心グレア下(視界の中心に電球をつけた状態のこと)でのコントラスト感度の測定により検査された。各条件下において,1.5,3,6,12,18(単位はcycle/deg)の5つの周波数でコントラスト感度が測定され,正常範囲より1段階低下しているものは軽度低下,2段階低下しているものは中等度低下,3段階以上低下しているものは高度低下と判定された。 3 争点(2)(原告らの視力障害の有無)について(1) 原告A原告Aは,F医師からRK手術を受ける前,遠方視力 低下しているものは中等度低下,3段階以上低下しているものは高度低下と判定された。 3 争点(2)(原告らの視力障害の有無)について(1) 原告A原告Aは,F医師からRK手術を受ける前,遠方視力が右眼0.07ないし0.08,左眼0. 1ないし0.15であったが,矯正すれば,両眼とも1.0の視力を得ることができており,乱視はなかった。また,近方視力は正常な範囲にあったし,コントラスト感度の低下,グレア等の障害は生じていなかった(甲C1,原告A本人,弁論の全趣旨)。 一方,甲B全3,C1及び原告A本人によれば,平成8年1月4日時点での視力,視力障害等は以下のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼視力0.7,矯正視力0.8(円柱レンズの度マイナス1.25D,軸の方向45度),左眼の裸眼視力0.8,矯正視力0.9(円柱レンズの度マイナス0.75,軸の方向130度),近方視力は,右眼の裸眼視力0.4,矯正視力0.7(円柱レンズの度マイナス1.25D,軸の方向45度),左眼の裸眼視力0.6,矯正視力0.7(円柱レンズの度マイナス0.75,軸の方向130度)であり,自動他覚屈折・角膜計による屈折値は,右眼が球面レンズの度プラス1.25D,円柱レンズの度マイナス1.25D,軸の方向45度,左眼が球面レンズの度プラス1.75D,円柱レンズの度マイナス0.75D,軸の方向130度であった。 イ自覚症状として,グレア,スターバーストがあった。 ウ ①昼間コントラスト感度は,右眼が1.5,18で高度低下,3,6,12で軽度低下,左眼が1.5,18で高度低下,3,6で中等度低下,②昼間周辺グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,18で高度低下,3,6,12で軽度低下,左眼が全周波数で軽度低下,③夜間中心グレアでのコントラスト感度は,右眼が1. 低下,3,6で中等度低下,②昼間周辺グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,18で高度低下,3,6,12で軽度低下,左眼が全周波数で軽度低下,③夜間中心グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,18で高度低下,3,6,12で軽度低下,左眼が1.5,12,18で高度低下,3,6で軽度低下であった。 エ SRIは右眼0.95,左眼0.86,SAIは右眼0.86,左眼0.55であった。 オ総合評価両眼とも軽度近視の状態であり,矯正視力は,遠方・近方ともにやや低い。乱視も生じているが,その程度は軽度である。 コントラスト感度の低下,グレア及びスターバーストといった視力障害が生じている。 (2) 原告B原告Bは,F医師から右眼についてRK手術を受ける前,遠方視力が右眼0.2,左眼1. 0であり,コンタクトレンズや眼鏡で矯正すれば,右眼においても1.0の視力を得ることができており,乱視はなかった。また,近方視力は正常な範囲にあったし,コントラスト感度の低下,グレア等の障害は生じていなかった(甲C2,原告B本人,弁論の全趣旨)。 一方,甲B全4及び原告B本人によれば,平成11年3月6日時点での視力,視力障害等は以下のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼視力0.6,矯正視力1.2(球面レンズの度プラス1.5D,円柱レンズの度マイナス0.5D,軸の方向110度),左眼の裸眼視力0.1,矯正視力1.5(球面レンズの度マイナス2.25D),近方視力は,右眼の裸眼視力0.2,矯正視力1.0(球面レンズの度プラス3.5D,円柱レンズの度マイナス0.5D,軸の方向110度),左眼の裸眼視力1.0,矯正視力1.5(球面レンズの度マイナス0.5D)であり,自動他覚屈折・角膜計による屈折値は,右眼が球面レンズの度プラス2.5D,円柱レンズの度マ 0.5D,軸の方向110度),左眼の裸眼視力1.0,矯正視力1.5(球面レンズの度マイナス0.5D)であり,自動他覚屈折・角膜計による屈折値は,右眼が球面レンズの度プラス2.5D,円柱レンズの度マイナス0.75D,軸の方向109度,左眼が球面レンズの度マイナス2.5D,円柱レンズの度マイナス0.25D,軸の方向161度であった。 イ自覚症状として,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動があった。 ウ ①昼間コントラスト感度は,右眼が6,12で高度低下,1.5,18で中等度低下,3で軽度低下,②昼間周辺グレアでのコントラスト感度は,右眼が6,12,18で軽度低下,③夜間コントラスト感度は,右眼が6で高度低下,1.5,3,12で中等度低下,18で軽度低下,④夜間中心グレアでのコントラスト感度は,右眼が3で高度低下,1.5,6,12で中等度低下,18で軽度低下であった。 エ SRIは右眼3.55,左眼0.42,SAIは右眼0.67,左眼0.39であった。 オ総合評価原告Bは,右眼が遠視性乱視であり,左眼が近視である。右眼の近方視力も,左眼の遠方視力も,矯正視力は1.0を超えている。 コントラスト感度の低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動といった視力障害が生じている。 (3) 原告C原告Cは,RK手術を受ける前は,遠方視力が両眼ともに0.03であり,乱視も少しあったが,コンタクトレンズをすれば,1.2程度の視力を得ることができていた。また,近方視力は正常な範囲にあったし,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害は生じていなかった(甲C3,原告C本人,弁論の全趣旨)。 一方,甲B全5及び原告C本人によれば,平成11年3月6日時点での視力,視力障害等は以下のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼 いなかった(甲C3,原告C本人,弁論の全趣旨)。 一方,甲B全5及び原告C本人によれば,平成11年3月6日時点での視力,視力障害等は以下のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼視力0.4,矯正視力0.5(円柱レンズの度マイナス2.0D,軸の方向30度),左眼の裸眼視力0.6で矯正不能,近方視力は,右眼の裸眼視力0.2,矯正視力0.4(球面レンズの度プラス2.0),左眼の裸眼視力0.1,矯正視力0.4(球面レンズの度プラス2.0D)であり,自動他覚屈折・角膜計による屈折値は,右眼が球面レンズの度プラス3.25D,円柱レンズの度マイナス3.5D,軸の方向32度,左眼が球面レンズの度マイナス1.5D,円柱レンズの度マイナス1.5D,軸の方向174度であった。 イ自覚症状として,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動があった。 ウ ①昼間コントラスト感度は,右眼が1.5,3,6,12で高度低下,18で中等度低下,左眼が1.5,3,6,12で高度低下,18で中等度低下,②昼間周辺グレアでのコントラスト感度は,右眼が6,12で高度低下,1.5,3,18で軽度低下,左眼が6,12で高度低下,1. 5,3,18で軽度低下,③夜間コントラスト感度は,右眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,左眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,④夜間中心グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,左眼が1.5,6で高度低下,3,12で中等度低下,18で軽度低下であった。 エ SRIは右眼3.15,左眼1.62,SAIは右眼1.87,左眼2.09であった。 オ総合評価遠方近方の矯正視力は,ともに低下が大きく,乱視も術前より強くなった。 コントラ 度低下であった。 エ SRIは右眼3.15,左眼1.62,SAIは右眼1.87,左眼2.09であった。 オ総合評価遠方近方の矯正視力は,ともに低下が大きく,乱視も術前より強くなった。 コントラスト感度低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下,視力変動といった視力障害が生じている。 (4) 原告D原告Dは,F医師からRK手術を受ける前,遠方視力が両眼ともに0.05の近視であり,コンタクトレンズや眼鏡で矯正すれば,両眼とも1.0の視力を得ることができていた。また,近方視力は正常な範囲にあったし,コントラスト感度の低下,グレア等の障害は生じていなかったが,強い乱視があった(甲C4,原告D本人,弁論の全趣旨)。 一方,甲B全6及び原告D本人によれば,平成11年3月6日時点での視力,視力障害等は以下のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼視力0.6,矯正視力1.2(球面レンズの度プラス5.5D,円柱レンズの度マイナス0.75D,軸の方向90度),左眼の裸眼視力0.6,矯正視力1.2(球面レンズの度プラス8.0D,円柱レンズの度マイナス3.50D,軸の方向30度),近方視力は,右眼の裸眼視力0.2,矯正視力0.5(球面レンズの度プラス5.5D,円柱レンズの度マイナス0.75D,軸の方向90度),左眼の裸眼視力0.1,矯正視力0.3(球面レンズの度プラス8.0D,円柱レンズの度マイナス3.50D,軸の方向30度)であり,自動他覚屈折・角膜計による屈折値は,左右とも測定不能であった。 イ自覚症状として,グレア,スターバースト及び夜間視力低下があった。 ウ ①昼間コントラスト感度は,右眼が1.5,12で高度低下,3,6,18で中等度低下,左眼が3,18で軽度低下,6,12で中等度低下,1.5で高度低下,②昼間周辺グレアでのコント 力低下があった。 ウ ①昼間コントラスト感度は,右眼が1.5,12で高度低下,3,6,18で中等度低下,左眼が3,18で軽度低下,6,12で中等度低下,1.5で高度低下,②昼間周辺グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,6,12で軽度低下,左眼が12で中等度低下,6で軽度低下,③夜間コントラスト感度は,右眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,左眼が1.5,3で高度低下,6,12で中等度低下,18で軽度低下,④夜間中心グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,3で高度低下,6,12で中等度低下,18で軽度低下,左眼が1.5,3で高度低下,6で中等度低下,12,18で軽度低下であった。 エ SRIは右眼1.66,左眼5.81,SAIは右眼2.38,左眼2.79であった。 オ総合評価原告Dは,遠方視力こそ,裸眼・矯正ともに正常な範囲にあるが,両眼とも遠視性乱視な上,遠視の程度は強度であり,近方矯正視力も低い。 コントラスト感度の低下,グレア,スターバースト及び夜間視力低下といった視力障害が生じている。 (5) 原告E原告Eは,F医師からRK手術を受ける前,遠方視力が右眼0.06,左眼0.05であったが,眼鏡やコンタクトレンズで矯正すれば,両眼とも1.5の視力を得ることができており,乱視はなかった。また,近方視力は正常な範囲にあったし,コントラスト感度の低下,グレア等の障害は生じていなかった(甲C5,原告E本人,弁論の全趣旨)。 一方,甲B全7及び原告E本人によれば,平成11年5月28日時点での視力,視力障害等は以下のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼視力0.2,矯正視力1.0(球面レンズの度プラス2.5D,円柱レンズの度マイナス3.0,軸の方向85度),左眼の裸眼視力0.5,矯正視力1. のとおりであったと認められる。 ア遠方視力は,右眼の裸眼視力0.2,矯正視力1.0(球面レンズの度プラス2.5D,円柱レンズの度マイナス3.0,軸の方向85度),左眼の裸眼視力0.5,矯正視力1.0(球面レンズの度プラス0.5,円柱レンズの度マイナス0.5,軸の方向40度),近方視力は,右眼の裸眼視力0.2,矯正視力0.3(球面レンズの度3.0,円柱レンズの度マイナス3. 0D,軸の方向85度),左眼の裸眼視力0.3,矯正視力0.3(球面レンズの度プラス0.5D,円柱レンズの度マイナス0.5,軸の方向40度)であり,自動他覚屈折・角膜計による屈折値は,右眼が球面レンズの度プラス0.5D,円柱レンズの度マイナス1.25D,軸の方向58度,左眼が球面レンズの度マイナス0.75Dであった。 イ自覚症状として,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動があった。 ウ ①昼間コントラスト感度は,右眼が1.5,3,6,12で高度低下,18で中等度低下,左眼が3,6で高度低下,1.5,12,18で中等度低下,②昼間周辺グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,12で高度低下,6で中等度低下,3,18で軽度低下,左眼が1.5,6,18で軽度低下,③夜間コントラスト感度は,右眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,左眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,④夜間中心グレアでのコントラスト感度は,右眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下,左眼が1.5,3,6で高度低下,12で中等度低下,18で軽度低下であった。 エ SRIは右眼1.10,左眼0.95,SAIは右眼0.90,左眼0.86であった。 オ総合評価遠方視力,近方視力ともに裸眼視力は低いが,遠方視力については両眼ともに矯正 で軽度低下であった。 エ SRIは右眼1.10,左眼0.95,SAIは右眼0.90,左眼0.86であった。 オ総合評価遠方視力,近方視力ともに裸眼視力は低いが,遠方視力については両眼ともに矯正視力が1.0あるのに対して,近方視力は両眼ともに矯正視力は0.3しか得られていないし,乱視も生じた。 コントラスト感度の低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動といった視力障害が生じている。 4 争点(3)(F医師の過失又は債務不履行)について(1) 争点(3)ア(ア)(原告Aに対する適正手術義務違反)についてア原告Aの右眼には4本のRK切開が入れられているほか,3本のT切開が入れられており,左眼には4本のRK切開が入れられている(甲B全3)。 この点,原告Aは,F医師からRK手術を受けた後,平成5年3月20日に,K医師から,右眼について再び手術を受けているが,これは当時既に生じていた乱視を矯正するために行われたものであること(甲C全105,原告A本人),前記認定の医学的知見のとおり,乱視矯正のために実施される切開はT切開であることからすれば,K医師が行った切開は,右眼に存在している3本のT切開であると認められる。 したがって,F医師が行った切開は,両眼のそれぞれに4本ずつ存在するRK切開であることが認められる。そして,証拠(甲B全3)によれば,このRK切開においては,オプティカルゾーンが右眼1.8ミリメートル,左眼2.0ミリメートルしか確保されていない上,左眼の切開線の一部は湾曲していることが認めらる。 イアを前提として,F医師の適正手術義務違反を検討する。 前記認定の医学的知見のとおり,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満とした場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じる危険が大き 師の適正手術義務違反を検討する。 前記認定の医学的知見のとおり,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満とした場合には,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じる危険が大きいから,F医師は,RK手術を実施するに当たり,オプティカルゾーンを3ミリメートル以上確保すべき注意義務を負っていた(F眼科におけるRK手術の記録用紙も,オプティカルゾーンを何ミリメートルとしたかについて,3.0,3.25,3.5,4.0のいずれかを書き込むような様式になっており,オプティカルゾーンを3.0ミリメートル未満にすることは想定されていない(甲A3))ものであり,また,切開にゆがみがあると,矯正量が予測値からずれたり,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下といった視力障害が生じやすくなるから,切開を直線に入れるべき注意義務も負っていたものというべきである。 したがって,原告Aに対し,オプティカルゾーンを3ミリメートル以下とし,かつ,湾曲した切開を行った点において,F医師に上記注意義務違反があったことは明らかである。 (2) 争点(3)イ(ア)(原告Bに対する適正手術義務違反)についてア原告Bは,F医師が不正確な手術計画を立てた上,原告Bにとっては多すぎる8本の切開を右眼に入れた旨主張する。 前記認定のとおり,原告Bは不同視の状態であり,その右眼にはコントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じている。また,RK手術を受ける前には右眼の遠方裸眼視力は0.2であった一方,近方裸眼視力は正常な範囲にあったにもかかわらず,現在においては,近方裸眼視力が0.2にまで低下しており,RK手術によって,原告Bの右眼が遠視化した可能性がある。 イしかし,原告Bの右眼の遠方裸眼視力は,RK手術によって0.6にまで改善しているし,証拠(甲B全4)に 眼視力が0.2にまで低下しており,RK手術によって,原告Bの右眼が遠視化した可能性がある。 イしかし,原告Bの右眼の遠方裸眼視力は,RK手術によって0.6にまで改善しているし,証拠(甲B全4)によれば,F医師は,原告Bの右眼にRK手術を実施するにおいて,オプティカルゾーンを3.5ミリメートル確保した上,まっすぐの比較的きれいな切開線を8本入れており,その創口もきれいであることが認められる。また,原告Bは,遠視化した右眼においても近方矯正視力は1.0を得ている。 これらの事実からすれば,前記医学的知見に照らしても,F医師が不正確な手術計画を立てたとも,切開の本数を8本としたことが原告Bにとって多すぎたとも認められず,その他F医師の実施したRK手術に不適正な点があったとは認められない。 ウしたがって,F医師に適正手術義務違反があったとする原告Bの主張は採用できない。 (3) 争点(3)イ(イ)(原告Bに対する説明義務違反)についてア証拠(甲A3,C2,C全106,原告B)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告Bは,従前,遠方裸眼視力が右眼0.2,左眼1.0の不同視であったため,これに不便さを感じていたが,F眼科において近視矯正手術であるRK手術が行われていることを新聞の折り込み広告で知り,F眼科に電話し,女性従業員に「不同視も矯正できるのですか。」と尋ねたところ,その従業員から,「調整できます。来てください。」と返答されたため,平成4年1月24日,F眼科を訪れた。 F眼科の従業員は,F眼科を訪れた原告Bに対し,RK手術について,「不同視も調整できます。」「大丈夫です。」と説明し,F医師は,原告Bからの「後遺症はないですか。」「過去に失敗例はないですか。」の質問に対し,「ロシアでもたくさんの人がRK手術を受けて 術について,「不同視も調整できます。」「大丈夫です。」と説明し,F医師は,原告Bからの「後遺症はないですか。」「過去に失敗例はないですか。」の質問に対し,「ロシアでもたくさんの人がRK手術を受けて,障害のある人は1人もいない。」「視力は1.0くらいになる。」と説明し,続いて,F眼科の従業員は,「予約のキャンセルがあったので,今日なら手術できます。今日でなければ6か月先になります。」と言った。 原告Bは,F医師やF眼科の従業員から,RK手術の矯正効果を保証するような発言をされ,また,後遺症の生じる危険はない旨の説明を受けたことに加え,当日RK手術を受けなければ,6か月も手術を受けることができないと言われたため,手術を受ける決心をした。 (イ) F医師は,原告Bに対し,RK手術を実施するに先立ち,「手術承諾書」及び「術後の症状のご注意」と題する書面を手渡し,それぞれに署名押印をさせた。「術後の症状のご注意」と題する書面には,次の記載がされていた。 「1. 約3ケ月位まで昼間と夜間の視力の変動。 (特に,夜間視力が低下する事があります。)2. スターバースト(特に夜間,角膜ラインがにじんで見える)3. 術後1~2週間は近くの物が見ずらくなる事があります。 4. 過剰矯正・・・10人に1人位,遠視気味になる場合があります。 5. 乱視の強い人の場合は完全な乱視矯正は困難な場合があります。又,3カ月以降に再手術が必要な事もあります。 6. 医師の指示に従わなかったり,目が不潔な状態にさらされた場合まれですが感染症を起こす事があります。 7. 術後角膜の形状が変化する為,人によってはコンタクトレンズが装着しにくくなる事があります。 8. 強度近視で,術後正視に至らなかった人の場合,術後3カ月位仮の眼鏡が必要となる事があります。 9. 左右の視力に多少 が変化する為,人によってはコンタクトレンズが装着しにくくなる事があります。 8. 強度近視で,術後正視に至らなかった人の場合,術後3カ月位仮の眼鏡が必要となる事があります。 9. 左右の視力に多少の差の出る事があります。 以上の事項をよく理解し,詳しく説明を受けた事を認めます。」イ前記認定の医学的知見のとおり,RK手術は,矯正量が誤差プラスマイナス1Dの範囲内で予測値に入る可能性が60ないし70パーセントであることに加え,長期予後が不明な近視矯正方法であるだけでなく,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の合併症が生じる危険のある手術である(眼科医師の間でも,これが適切な近視矯正方法といえるかについて疑問視する声が多かった。)。しかも,遠方視力の矯正は,眼鏡やコンタクトレンズによっても可能であるから,RK手術は,職種等の事情により,眼鏡やコンタクトレンズを利用することが困難である等特段の事情がない限り,緊急性,必要性が乏しい手術といえる。 したがって,RK手術を実施しようとする医師は,手術実施に先立ち,患者に対して,RK手術による矯正が必ずしも確実であるとは限らないだけでなく,RK手術に伴い,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の合併症が生じる危険のあることを,患者がRK手術を受けるか否かを十分に検討・吟味した上で判断できる程度に,十分かつ具体的に説明すべき義務を負っているというべきである。 ウところが,前記認定のとおり,F医師やその診療を補助する従業員は,原告Bに対して,RK手術による矯正効果が必ずしも確実でないことや合併症の危険があることを説明しなかったばかりか,逆に,RK手術による矯正効果は確実であり,合併症が生じる危険はまったくない旨のRK手術の効用のみを強調する説明を行った上,「キャンセルがあったので,今日な 危険があることを説明しなかったばかりか,逆に,RK手術による矯正効果は確実であり,合併症が生じる危険はまったくない旨のRK手術の効用のみを強調する説明を行った上,「キャンセルがあったので,今日なら手術できます。今日でなければ6か月先になります。」と,RK手術を受けるか否かを冷静に判断することができなくさせるような言葉を用いて,急いでRK手術を受けるよう勧誘したのであるから,F医師が,RK手術を実施するに当たっての説明義務を履行していないことは明らかである。 もっとも,原告Bは,新聞紙の折り込み広告などにより,ある程度はRK手術に関する情報を収集しており,これに興味を持ってF眼科を訪れたことがうかがえるが,そうであるからといって,専門家でもない単なる団体職員である原告Bが,医師と同様の意味で,RK手術の内容について理解していたことにはならない。また,F眼科から手渡された上記「術後の症状のご注意」と題する書面には,RK手術の不確実性や合併症について一定の説明が記載されているが,前記医学的知見に照らすと,RK手術についての十分かつ具体的な説明とみることはできない。しかも,患者としては,このような書面よりも,医師やその補助者の発言に重きを置くのが通常であるから,口頭で上記のようなRK手術の効用性のみを強調する説明を行いながら,同時に合併症等を記載した書面を手渡したというだけでは,説明義務を履行したと評価することはできず,また,上記認定のように,当日でなければRK手術が受けられないとのせき立てられるような勧誘を受けた場合,たとえ合併症等を記載した書面が手渡されたとしても,原告Bがその内容を冷静に検討した上で本件手術を受けたとはいえないことは明らかである。 エ以上によれば,F医師は,原告Bに対し,RK手術を実施するに当たっての説明義務を履行しな 手渡されたとしても,原告Bがその内容を冷静に検討した上で本件手術を受けたとはいえないことは明らかである。 エ以上によれば,F医師は,原告Bに対し,RK手術を実施するに当たっての説明義務を履行しなかったというべきである。 (4) 争点(3)ウ(イ)(原告Cに対する適正手術義務違反)について証拠(甲B全5)によれば,原告CのRK手術切開線は,オプティカルゾーンが両眼とも2. 0ミリメートルしか確保されていないことが認められる。そして,前記認定のとおり,F医師は,原告CにRK手術を実施するに当たり,オプティカルゾーンを3ミリメートル以上確保すべき注意義務を負っていたというべきであるから,この点においてF医師に適正手術義務違反があったことは明らかである。 (5) 争点(3)エ(イ)(原告Dに対する適正手術義務違反)についてア原告Dの右眼には,8本のRK切開が入れられているが,左眼には,8本のRK切開が入れられていることに加え,2本のT切開が入れられている(甲B全6)。 原告Dは,F医師からRK手術を受けた後,平成6年ころ,K医師から左眼の再手術を受けているところ,これは当時既に生じていた乱視を矯正するために行ったものである(原告D本人)こと,前記認定の医学的知見のとおり,乱視矯正のために実施される切開はT切開であることからすれば,K医師が行った切開は,左眼に存在している2本のT切開であり,F医師が行った切開は,両眼に各8本存在するRK切開であることが認められる。 イアを前提として,F医師の適正手術義務違反を検討するに,証拠(甲B全6)によれば,原告Dに対する上記8本のRK切開においては,オプティカルゾーンが両眼とも2.5ミリメートルしか確保されておらず,切開線が瞳孔領に及んでおり,右眼の切開線は8本のほとんどが湾曲していて,うち2本は切開線 Dに対する上記8本のRK切開においては,オプティカルゾーンが両眼とも2.5ミリメートルしか確保されておらず,切開線が瞳孔領に及んでおり,右眼の切開線は8本のほとんどが湾曲していて,うち2本は切開線が輪郭に及んでいることが認められる。 したがって,この点においてF医師が前記2(4)ウ(ア)及び(イ)で認定したオプティカルゾーンを3ミリメートル以上確保し,切開を直線的に行うべき注意義務に違反したことは明らかである。 (6) 争点(3)オ(イ)(原告Eに対する適正手術義務違反)についてア原告Eの右眼には,4本のRK切開が入れられているほか4本のT切開が入れられており,左眼には,4本のRK切開が入れられているほか2本のT切開が入れられている(甲B全7)が,原告E本人によれば,原告Eは,F医師からRK手術を受けた後,平成5年ころ,K医師から乱視矯正のT切開手術を受けていることが認められるから右眼に4本,左眼に2本存在するT切開はK医師によるものであり,F医師が行った切開は,両眼に各4本存在するRK切開であることが認められる。 イアを前提として,F医師の適正手術義務違反を検討するに,証拠(甲B全7)によれば,原告Eに対する上記切開においては,オプティカルゾーンが両眼とも2.0ミリメートルしか確保されていないことが認められるから,この点においてF医師が前記のとおりオプティカルゾーンを3ミリメートル以上確保すべき注意義務に違反したことは明らかである。 5 争点(4)(因果関係)について(1) 原告Aア前記認定のとおり,原告Aには,RK手術前,遠方視力が右眼0.07,左眼0.1の近視であったものの,矯正すれば1.0の視力を得ることができており,乱視もなく,近方視力は正常な範囲にあり,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害は生じていなかっ が右眼0.07,左眼0.1の近視であったものの,矯正すれば1.0の視力を得ることができており,乱視もなく,近方視力は正常な範囲にあり,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害は生じていなかった。 ところが,平成8年1月4日の時点では,遠方の裸眼視力がRK手術前より改善されているとはいえ,矯正視力が遠方・近方ともにやや低く,乱視も生じており,また,コントラスト感度の低下,グレア,スターバーストといった視力障害が生じている。 イ原告Aの眼の状態がこのように変化していること,RK手術以外にそのような変化を生じさせる原因は見出し難いことに加えて,前記認定の医学的知見のとおり,RK手術において,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満にしたり,湾曲した切開を入れると,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じやすくなることを考え合わせると,原告Aにおける矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害は,F医師がオプティカルゾーンを右眼1.8ミリメートル,左眼2.0ミリメートルとし,左眼に湾曲した切開を数本入れたことによって生じたものであると推認される。 ウ被告らは,原告Aの右眼については,K医師も手術を行っているから,原告Aの視力障害のうち,どれがF医師の実施したRK手術によって生じたものであるか明らかでない旨主張する。 しかし,原告Aにおいて,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下といった視力障害は,K医師が手術を行っていない左眼にも同様に生じていること,K医師から手術を受ける前から原告Aには乱視が生じていたこと(原告A本人),平成8年1月4日に原告Aの視力及び視力障害等について検査を実施したL大学医学部附属病院P医師は,RK切開のオプティカルゾーンが狭いことを問題視しながら,T切開についてはこれを問題視してい A本人),平成8年1月4日に原告Aの視力及び視力障害等について検査を実施したL大学医学部附属病院P医師は,RK切開のオプティカルゾーンが狭いことを問題視しながら,T切開についてはこれを問題視していないこと(甲B全3)からすれば,原告Aに生じた視力障害は,K医師の実施したT切開によるものではなく,F医師の実施したRK手術によって生じたものというべきである。 したがって,被告らの主張は採用できない。 (2) 原告Bア前記認定のとおり,原告Bには,RK手術を受けた後,RK手術前にはなかったコントラスト感度の低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動といった視力障害が生じている。 前記認定の医学的知見のとおり,これらはRK手術に伴う典型的な合併症である上,RK手術以外にそのような変化を生じさせる原因は見出し難いことからすれば,これらの視力障害は,F医師が実施したRK手術によって生じたものであると認められる。 そして,原告Bは,RK手術を受ける前,右眼裸眼視力が低かったとはいえ,コンタクトレンズによって十分に矯正することができていたのであり,RK手術により視力を矯正しなければならないような緊急性,必要性が大きかったわけではないから,F医師が,原告Bに対し,RK手術の不確実性や危険性等について十分かつ具体的な説明を行っていれば,原告BがRK手術を受けなかったであろう蓋然性は高いというべきである。 したがって,原告Bに生じたコントラスト感度の低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力変動といった視力障害と,F医師の説明義務違反との間には因果関係があると認めるのが相当である。 イ次に不同視と説明義務違反との因果関係を検討する。 原告Bは,RK手術を受ける以前から不同視であり,右眼の遠方視力が0.2の近視,左眼が1 との間には因果関係があると認めるのが相当である。 イ次に不同視と説明義務違反との因果関係を検討する。 原告Bは,RK手術を受ける以前から不同視であり,右眼の遠方視力が0.2の近視,左眼が1.0の正視であった。F医師によるRK手術の結果,前記認定のとおり,原告Bの右眼の裸眼視力は遠方が0.6(矯正視力1.2),近方が0.2(矯正視力1.0)となっており,RK手術により不同視が発生したとは認め難い。 なお,前記認定のとおり,現在,原告Bの左眼の裸眼視力は遠方が0.1(矯正視力1. 5),近方が1.0(矯正視力1.5)と強度の近視となっており,このために不同視となっているが,左眼は非手術眼であるから,RK手術とは無関係である。 したがって,原告Bの不同視がF医師の説明義務違反によって生じたとは認め難い。 (3) 原告Cア前記認定のとおり,原告Cは,RK手術前,遠方視力が両眼とも0. 03であり,乱視も少しあったが,コンタクトレンズをすれば1.2程度の矯正視力を得ることができていたし,近方視力は正常な範囲にあり,また,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害は生じていなかった。 ところが,RK手術を受けた後は,遠方の裸眼視力が右眼0.4,左眼0.6にまで改善したものの,近方視力が大きく低下した上,矯正視力が遠方近方とも0.6以下となり,乱視も術前より強くなり,また,コントラスト感度低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下,視力変動といった視力障害も生じた。 イ原告Cの眼の状態がこのように変化したこと及びRK手術以外にそのような変化を生じさせる原因は見出し難いことに加えて,前記認定の医学的知見のとおり,RK手術において,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満にすると,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が じさせる原因は見出し難いことに加えて,前記認定の医学的知見のとおり,RK手術において,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満にすると,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じやすくなること,平成11年3月6日に原告Cの視力,視力障害等について検査を実施したM医師が,グレア,スターバースト及び暗所での視力低下の原因について,切開線が瞳孔領内に大きく及んでいるためであるとの見解を示していること(甲B全5)を考え合わせると,原告Cにおける矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害は,F医師が,両眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとしたことによって生じたものであると推認される。 ウ被告らは,①原告Cには,RK手術を受ける前から,既にコンタクトレンズの長時間使用により角膜に傷があったこと,②原告Cは,常時摂氏40度の過酷な状況で,1時間に1200本のペットボトルを目視検査する等,眼を酷使する仕事に従事していたこと,③仕事場ではペットボトルの処理に伴い,ダイオキシンが発生していたこと,④RK手術前に原告Cの視力が低下し始めたのは,そのような仕事場で働き始めた後のことであること,⑤手術前から日常的にサングラスを使用しており,もともと太陽光線に対して弱い眼であったこと,⑥原告Cについて,視力が急に低下したのは手術から5年以上たった平成9年10月のことであることなどからすれば,原告Cの視力障害は,RK手術以外の別要因によって生じたものであり,F医師のRK手術との間に因果関係はない旨主張する。 確かに,原告Cは,RK手術前,コンタクトレンズの長期使用によって角膜に傷をつけたことがあった(甲A3)し,RK手術を受けた後,摂氏40度の状況で1時間に1200本のペットボトルを目視検査するという眼に対する負担の大きい 手術前,コンタクトレンズの長期使用によって角膜に傷をつけたことがあった(甲A3)し,RK手術を受けた後,摂氏40度の状況で1時間に1200本のペットボトルを目視検査するという眼に対する負担の大きい仕事をしていた(原告C本人)。そして,原告Cの遠方視力は,RK手術によって回復した上,平成5年5月15日の時点でも近方視力はそれほど低下しておらず,また,遠方矯正視力も平成4年12月13日の時点で右眼0.9,左眼0.8を得ていた(甲A3)。 しかしながら,前記認定の医学的知見のとおり,RK手術の典型的な合併症として,視力が長期間にわたって変動することがあり得ることからすれば,本件でもその可能性があり,視力の低下が手術後相当期間経過後生じたことから,RK手術と視力低下との因果関係が直ちに否定されるものではない。また,角膜をRK手術前に傷つけたことがあったことや眼の負担が大きい仕事を継続していたことは,RK手術と原告Cに生じた視力低下や視力障害との因果関係を左右するほど重大な事実とはいい難い。 したがって,被告らの主張は採用できない。 (4) 原告Dア前記認定のとおり,原告Dは,術前,遠方視力が両眼ともに0.05の近視であったが,コンタクトレンズや眼鏡で矯正すれば,両眼とも1.0の視力を得ることができ,近方視力は正常な範囲にあり,また,コントラスト感度の低下,グレア等の障害は生じていなかった。 ところが,平成11年3月6日の時点では,遠方視力こそ,裸眼・矯正ともに正常な範囲にあるが,両眼とも遠視性乱視である上,遠視の程度は強度で,近方矯正視力も低くなり,また,コントラスト感度の低下,グレア障害,スターバースト及び夜間視力低下といった視力障害が生じている。 イ原告Dの眼の状態がこのように変化したこと及びRK手術以外にそのような変化を生じ 低くなり,また,コントラスト感度の低下,グレア障害,スターバースト及び夜間視力低下といった視力障害が生じている。 イ原告Dの眼の状態がこのように変化したこと及びRK手術以外にそのような変化を生じさせる原因は見出し難いことに加えて,前記認定の医学的知見のとおり,RK手術において,オプティカルゾーンを狭くするほど矯正効果は大きくなること,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満にしたり,湾曲した切開を入れると,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じやすくなること,平成11年3月6日に原告Dの視力,視力障害等について検査を実施したM医師が,グレア,スターバースト及び暗所での視力低下の原因について,切開線が瞳孔領内に及んでいるためであるとの見解を示していること(甲B全6)を考え合わせると,原告Dにおける強度の遠視,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害は,F医師が,両眼のオプティカルゾーンをそれぞれ2.5ミリメートルとした上,右眼に湾曲した切開を数本入れたことによって生じたものであると推認される。 ウ被告らは,原告Dの左眼については,K医師も手術を行っているから,原告Dの視力障害のうち,どれがF医師の実施したRK手術によって生じたものであるか明らかでない旨主張する。 前記認定のとおり,K医師が行った切開は,左眼のT切開2本であるが,このT切開のうち1本は,放射状切開の1本と交差しており(甲B全6),前記認定の医学的知見のとおり,T切開と放射状切開が交差している場合には,交差部分において,切開が広がったり,強い斑紋収縮を惹起することがあるとされている。 しかしながら,原告Dの視力障害が,そのような交差によって生じるとの医学的知見を示す証拠はない上,原告Dにおいて,強度の遠視,矯正視力の低下,その他の視 斑紋収縮を惹起することがあるとされている。 しかしながら,原告Dの視力障害が,そのような交差によって生じるとの医学的知見を示す証拠はない上,原告Dにおいて,強度の遠視,矯正視力の低下,その他の視力障害は,K医師が手術を行っていない右眼にも同様に生じていること,K医師から手術を受ける前から原告Dの左眼には強度の乱視が生じていたこと(原告D本人),M医師は,原告Dの視力障害の原因について,T切開と放射状切開とが交差していることを問題視していないこと(甲B全6)を考え合わせれば,T切開と放射状切開との交差は,原告の視力低下や視力障害の原因にはなっていないというべきである。 よって,被告らの上記主張は,採用できない。 エまた,被告らは,原告Dは,RK手術を受ける前から強い乱視があったから,夜間視力の低下等がRK手術によって生じたものとは認められない旨主張する。 確かに,原告Dには,RK手術を受ける前から,強い乱視があった(原告D本人)から,原告Dの現症状のうち,乱視については,RK手術との因果関係を認めることはできない。 しかし,このことは,夜間視力やその他の視力障害に関するRK手術との因果関係を否定するものではない。 (5) 原告Eア前記認定のとおり,原告Eは,RK手術前,遠方視力が右眼0.06,左眼0.05であったが,眼鏡やコンタクトレンズをすれば両眼とも1.5の矯正視力を得ることができていたし,乱視はなかった。また,近方視力は正常な範囲にあり,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害は生じていなかった。 ところが,RK手術を受けた後は,遠方の裸眼視力が右眼0.2,左眼0.5にまで改善したものの,近方裸眼視力が右眼0.2,左眼0.3にまで低下した上,近方矯正視力が0.3しか得られなくなり,乱視も生じ,また,コントラスト感度低下 は,遠方の裸眼視力が右眼0.2,左眼0.5にまで改善したものの,近方裸眼視力が右眼0.2,左眼0.3にまで低下した上,近方矯正視力が0.3しか得られなくなり,乱視も生じ,また,コントラスト感度低下,グレア,スターバースト,夜間視力低下,視力変動といった視力障害も生じた。 イ原告Eの眼の状態がこのように変化したこと及びRK手術以外にそのような変化を生じさせる原因は見出し難いことに加えて,前記認定の医学的知見のとおり,RK手術において,オプティカルゾーンを狭くするほど矯正効果は大きくなること,オプティカルゾーンを3ミリメートル未満にすると矯正視力の低下,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害が生じやすくなること,平成11年5月28日に原告Cの視力,視力障害等について検査を実施したM医師が,グレア,スターバースト及び暗所での視力低下の原因について,切開が瞳孔領内に及んでいるためであるとの見解を示していること(甲B全7)を考え合わせると,原告Eにおける近方視力の低下,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下等の視力障害は,F医師が両眼のオプティカルゾーンを2.0ミリメートルとしたことによって生じたものであると推認される。 ウ被告らは,原告EはK医師からも手術を受けているから,原告Eの視力障害のうち,どれがF医師の実施したRK手術によって生じたものであるか明らかでない旨主張する。 前記認定のとおり,K医師が行った切開は,右眼のT切開4本と左眼のT切開2本であるが,このうち右眼のT切開1本が,放射状切開の1本と交差しており(甲B全7),前記認定の医学的知見のとおり,T切開と放射状切開が交差している場合には,交差部分において,切開が広がったり,強い斑紋収縮を惹起することがあるとされている。 しかしながら,原告Eの視力障害が,そのような交差によ 的知見のとおり,T切開と放射状切開が交差している場合には,交差部分において,切開が広がったり,強い斑紋収縮を惹起することがあるとされている。 しかしながら,原告Eの視力障害が,そのような交差によって生じるとの医学的知見を示す証拠はない上,原告Eにおいて,矯正視力の低下,コントラスト感度の低下といった視力障害は,T切開と放射状切開が交差していない左眼にも同様に生じていること,K医師から手術を受ける前から原告Eの右眼には乱視が生じていたこと(原告E本人),M医師は,原告Eの視力障害の原因について,T切開と放射状切開とが交差していることを問題視していないこと(甲B全7)を考え合わせれば,T切開と放射状切開との交差は,原告の視力低下及び視力障害の原因にはなっていないというべきである。 よって,被告らの上記主張は,採用できない。 エ次に,被告らは,原告EがRK手術を受けた後もボクシングを継続しており,顔面にパンチを受けたこともあるのであるから,これによって視力障害が生じた可能性がある旨主張する。確かに,原告E本人によれば,原告EがRK手術を受けた後,ボクシングを行い,顔面にパンチを受けたことがあることが認められるが,上記のとおりRK手術と原告Eの視力障害の関係についての合理的説明が付く以上,原告Eがボクシングを継続し,顔面にパンチを受けたことがあったとしても,RK手術との間の因果関係を左右するものとはいい難い。 よって,被告らの主張は採用できない。 6 争点(5)(被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井は,F眼科の経営者か。)について(1) 前記争いのない事実,証拠(甲C全7ないし37,40ないし44,46ないし50,53ないし92,94,95,104,110)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められるア Gが支配した3 (1) 前記争いのない事実,証拠(甲C全7ないし37,40ないし44,46ないし50,53ないし92,94,95,104,110)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められるア Gが支配した3事業の概要(ア) Gは,昭和61年,美容用品・化粧品の販売,健康機器の販売,日用雑貨品の販売等を目的とした株式会社である被告アートメーキング三井を設立(出資割合は,Gが95パーセント,Hが5パーセント。)し,同会社の事業として,アートメーク事業を開始した。 アートメーク事業は次第に拡大していき,直営店及び代理店が順調に増加していった。 しかし,被告アートメーキング三井は,商号の中に「アートメーク」という文字が入っていたことから,他のアートメーク事業者と間違われることが多く,平成2年ころから,他のアートメーク事業者に対する苦情が,誤って被告アートメーキング三井に寄せられるようになった。 そこで,Gは,平成2年7月9日,被告エイエム三井を新たに設立(出資割合は,Gが95パーセント,Hが5パーセント。)し,被告アートメーキング三井が行っていた事業(アートメーク事業だけでなく,形成外科事業及びRK手術事業も含むことは後記のとおりである。)をすべて被告エイエム三井に受け継がせた。それ以来,被告アートメーキング三井は,何の事業も行わなくなり,事実上休眠会社になった。 Gは,そのころ,有限会社エイエム三井京都,有限会社エイエム三井関東等有限会社エイエム三井各社を順次設立し,アートメーク事業の直営店については,これらの会社が従業員の雇用,給料の支給並びに税金及び雇用保険等の手続を行うようになった。 一方,Gは,美容外科事業も開始し,いくつもの美容外科診療所を開設した。Gは,平成3年4月ころには,各美容外科診療所に対応させて,有限会社ケイセイ東京,有限 び雇用保険等の手続を行うようになった。 一方,Gは,美容外科事業も開始し,いくつもの美容外科診療所を開設した。Gは,平成3年4月ころには,各美容外科診療所に対応させて,有限会社ケイセイ東京,有限会社ケイセイ関東,有限会社ケイセイ中部,有限会社ケイセイ関西,有限会社ケイセイ九州を設立(いずれもGが100パーセント出資)し,美容外科の設備等をこれらの会社に譲渡した。Gは,Qを美容外科事業の責任者としていた。 Gは,平成2年ころ,RK手術事業も開始した。Gは,R医師,K医師,S医師,F医師らをRK手術を担当する医師とし,各医師を開設者として,眼科診療所を各地に開設した。K医師及びF医師は,RK手術を担当する前は,上記美容外科事業において,美容外科医師として勤務していた。 Gは,平成3年11月ころ,各眼科診療所に対応させる形で,アールケー大阪を始めとする有限会社アールケー各社を設立し,各眼科診療所における雇用,税金,雇用保険の手続等を行わせるようになった。 (イ) アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業のいずれにおいても,店舗又は診療所の医院建物の賃借人は,被告アートメーキング三井又は被告エイエム三井であった。 Gは,アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業のいずれにおいても,経営方針・人事等について,各会社の取締役会を開くことなく,自らこれらを決定していた。 被告エイエム三井は,「株式会社エイエム三井T」「株式会社アートメーキング三井G」「エイエム三井熊本店G」名義の預金通帳等を管理していたほか,「アートメーキング三井美容外科江坂K医師」「有限会社ケイセイG」名義等の美容外科事業に関する預金通帳及び「アールケー大阪G」「有限会社アールケー大阪G」名義等のRK手術事業に関する預金通帳等もすべて管理していた。 美容外科江坂K医師」「有限会社ケイセイG」名義等の美容外科事業に関する預金通帳及び「アールケー大阪G」「有限会社アールケー大阪G」名義等のRK手術事業に関する預金通帳等もすべて管理していた。 Gは,これらの預金を,その使途が会社のためであるか個人のためであるかに関係なく,自由に出金していた。 イ F眼科経営の概要(ア) 人員F医師は,当初はGによる美容外科事業において,美容外科の医師として勤務していたが,Gの指示によって,RK手術を担当することになり,平成4年1月14日から,F眼科を開設し,同診療所において,RK手術を実施するようになった。 Nは,平成元年9月に被告アートメーキング三井に就職して以来,美容外科診療所で勤務していたが,平成3年4月ころから,RK手術事業全体の責任者となり,R眼科及びF眼科において,カウンセリング等の業務に従事しており,平成3年4月以降,アートメーク事業,美容外科事業には関与していなかった。 Tは,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井のいずれにおいても,取締役副社長の地位にあり,アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業において,営業関係,人事管理を担当しており,RK手術事業においては,責任者であるNを広告等の面で指導していた。 Oは,平成元年10月以来被告アートメーキング三井の従業員として,美容外科診療所で勤務していたが,平成3年9月ころから,Gの指示によって,RK手術を実施する眼科診療所でも勤務するようになった。 (イ) 賃借建物F眼科の医院建物は,被告エイエム三井が賃借したものであった。その賃料,敷金等は,「F眼科G」「G」名義の口座から支払われた。 (ウ) 診療報酬F眼科において,患者から支払われた診療報酬等は,すべて「F眼科G」「G」名義の口座に入金された。分割払や た。その賃料,敷金等は,「F眼科G」「G」名義の口座から支払われた。 (ウ) 診療報酬F眼科において,患者から支払われた診療報酬等は,すべて「F眼科G」「G」名義の口座に入金された。分割払やカード払を希望する患者については,被告エイエム三井が,代金の回収を行っていた(カード払の場合は,被告アートメーキング三井が契約していたカード代理店契約を利用していた。)。被告エイエム三井は,患者から受け取った金員を被告エイエム三井の売上げとしては勘定せず,預り金として勘定した上で,上記口座に入金する等していた。 (エ) 雇用・給料・税務F医師,N及びOに対する給料は,当初被告アートメーキング三井から,被告エイエム三井が設立されてからは被告エイエム三井から支給されていた。平成4年2月ころ以降は,アールケー大阪から給料が支給されるようになった。 Tに対する報酬も,当初は被告アートメーキング三井から,そして被告エイエム三井が設立されてからは被告エイエム三井から支給されていた。平成4年2月以降は,被告エイエム三井から基本給が支給されるとともに,RK手当としてアールケー大阪から給料が支給されるようになった。 F眼科での税務申告は,F医師が行っていた。 ウ被告エフエムエス(旧商号株式会社エイエムリース)の設立とHへの株式譲渡GとHは,平成2年7月9日,被告エフエムエス(当時の商号は株式会社エイエムリース)を設立した(資本金500万円中,50万円はHが出資し,その余はGが出資した。)。同被告設立の目的は,金融業を行うことであったが,金融業の許可を得ることができず,結局事業を行わないまま事実上休眠状態になっていた。 Hは,平成4年,Gに対し,計算センターのようなものを作りたいと希望したところ,Gは,被告エフエムエスの株式をすべてHに譲渡し,Hが ができず,結局事業を行わないまま事実上休眠状態になっていた。 Hは,平成4年,Gに対し,計算センターのようなものを作りたいと希望したところ,Gは,被告エフエムエスの株式をすべてHに譲渡し,Hが被告エフエムエスを自由に支配することを認めた。 エ経営権の委譲書Gは,平成3年1月19日,Hに対し,被告エイエム三井代表取締役の肩書きで,Gが不慮の事故等により落命及び会社の経営が不能になった場合には,現状維持を条件として,現在経営しているアートメーキング三井全店,三井美容整形外科全院の管理経営とアートメーキング三井全代理店の管理に関する全権限を委譲する旨の「経営権の委譲」と題する書面(甲C全20)を作成し,交付した。 オ Gの死亡とその後の事業方針の決定Gは,平成4年9月16日に死亡した。Oは,Gの財産を相続したが,上記経営権の委譲書と題する書面に従い,Gが行ってきたアートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業の経営をすべてHに任せることにした。 Hは,各事業を受け持っていた医師や,Q,T等との協議を重ねた。同年9月ころ,RK手術事業について,F医師のRK手術により視力障害が生じた等の苦情が多発したことから,この事業を直ちに停止するとともに,被害者への対応をQに担当させることにした。そして,同年10月19日,アートメーク事業をTに任せること,美容外科事業はHが行うことを決定した。 カ被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の解散被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井では,平成4年9月23日に定時株主総会が開催され,両社において,T,O,Q,Uが取締役に選任され,同日,両社それぞれの取締役会でTが両社の代表取締役に選任された。 Tは,同年10月29日,被告エイエム三井において管理していた「アートメーキング三 両社において,T,O,Q,Uが取締役に選任され,同日,両社それぞれの取締役会でTが両社の代表取締役に選任された。 Tは,同年10月29日,被告エイエム三井において管理していた「アートメーキング三井美容外科代表V」「AMファイナンス代表T」「株式会社エイエム三井クレジット代表取締役T」「H」「株式会社アートメーキング三井」「アートメーキング三井美容外科江坂代表K」「アートメーキング三井美容外科上野代表W」名義の預金を出金した。 Hとしては,それらの預金は被告エイエム三井に帰属するものであると考えており,Tが更に預金の出金を行うことを防がなければならないと考えた。また,当時被告エイエム三井及びその従業員は,アートメーク事業で行っていた麻酔の使用が,医師法に違反するとの容疑で,捜査を受けていた。Hは,Tによる預金の出金と医師法違反による捜査の双方を防ぐ手段として,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井を解散することにした。同日,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井の臨時株主総会が開催され,両社の株主総会において,Tら取締役全員が解任され,H,X及びYが取締役に選任された上,両社それぞれの取締役会においてXが両社の代表取締役に選任された。そして,引き続き行われた両社の株主総会において,両社の解散が決議された上,両社それぞれの清算人会議において,Xが両社の代表清算人に選任された。 キ RK手術被害者への対応Hは,RK手術の被害者への対応をQに任せていたが,そのため,被告エイエム三井が管理していたG個人名義の預金から1億ないし3億円をQに渡し,被害弁償の資金とさせた。 H及びQは,当初RK手術の被害者が何百人にもなるとは予想していなかったが,Qが被害者対応を進めていくうちに,F医師のRK手術による被害者が200人以上であ をQに渡し,被害弁償の資金とさせた。 H及びQは,当初RK手術の被害者が何百人にもなるとは予想していなかったが,Qが被害者対応を進めていくうちに,F医師のRK手術による被害者が200人以上であることが判明していった。Qは,平成8年8月ころまで,RK手術被害者への対応を続けた。Qは,この間被告エフエムエスの従業員だった。 Gの死亡後間もなくして,F眼科につき廃止届が出されたが,Qは,J医師の名義を借りて,大阪市e区fにJ眼科を開設し,F眼科においてRK手術を受けた患者らに対する術後検診を実施した。J眼科の診療所施設の賃借人は,当初被告アートメーキング三井であった。 ク被告エフエムエスによる美容外科事業Hは,平成4年10月19日,株式会社エイエムリースの商号を株式会社エフエムエスに変更し,以後被告エフエムエスを中心として,Gから受け継いだ美容外科事業を行うことにした。 被告エフエムエスは,同年12月,有限会社ケイセイ各社から,美容外科の設備を合計4800万円で買い取り,同じ美容外科で診療に当たる医師個人にそれらの設備をリースした。また,被告エフエムエスは,診療所医院建物の賃借人を各医師個人名義にするほか,医師ら数人との間では診療所経営についてのコンサルタント契約を締結した。 このように被告エフエムエスは,各美容外科診療所に設備をリースしたり,経営コンサルタントをしているだけで,各美容外科診療所の経営者ではないかのような形式を整えた。 しかし,被告エフエムエスが設備をリース等していた各美容外科診療所間では医師の異動があり,これを決定していたのは被告エフエムエスであったし,美容外科診療所の新設・廃止を決定していたのも被告エフエムエスであった。 Hは,有限会社エイエム三井各社の商号を有限会社エフエムエス金沢等と変更させた上, していたのは被告エフエムエスであったし,美容外科診療所の新設・廃止を決定していたのも被告エフエムエスであった。 Hは,有限会社エイエム三井各社の商号を有限会社エフエムエス金沢等と変更させた上,各美容外科診療所の看護婦,従業員等の雇用,給料の支給並びに税金及び雇用保険等の手続をさせた。しかし,有限会社エフエムエス各社は,賃借テナント,電話及び常駐事務員1人がいる程度で経営主体としての実体はなく,節税目的で利用されているだけであった。 美容外科診療所のひとつであるZクリニックにおいては,平成7年ころから,売上げは,有限会社エフエムエス金沢名義の預金口座に入金された。Zクリニック従業員への給与,雇用保険料等は同口座から支払われていたが,同口座からは毎月700万ないし1000万円が被告エフエムエスに送金されていた。 (2) 前記(1)で認定した各事実によれば,Gは,アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業を行うに際し,それぞれの事業ごと並びにそれぞれの店舗及び診療所ごとに異なる会社(アートメーク事業については被告アートメーキング三井,被告エイエム三井及び有限会社エイエム三井各社,美容外科事業については有限会社ケイセイ各社,RK手術事業については有限会社アールケー各社)を設立し,従業員の雇用,給料の支給並びに税金及び雇用保険等の手続等を各会社に行わせており,F眼科においても,平成4年2月以降,従業員の雇用,給料の支給並びに税金及び雇用保険等の手続をアールケー大阪に行わせていたものと認められる。 しかし,F医師は,平成4年1月以前は,被告エイエム三井から給料の支給を受けていたのであり,RK事業に専属していたNにおいても同様であった。しかも,被告エフエムエスの美容外科事業において,各美容外科診療所の雇用,給料の支給並びに税金及び雇用 イエム三井から給料の支給を受けていたのであり,RK事業に専属していたNにおいても同様であった。しかも,被告エフエムエスの美容外科事業において,各美容外科診療所の雇用,給料の支給並びに税金及び雇用保険等の手続を各診療所に対応する有限会社エフエムエス各社が行っていたのが節税目的でしかなく,経営主体としての実体がなかったことなどからすれば,Gが,各店舗及び診療所に対応させて設立した有限会社エイエム三井各社,有限会社ケイセイ各社及び有限会社アールケー各社は節税目的の法人に過ぎず,経営の実体はなかったことがうかがえる。その上,店舗及び診療所の医院建物の賃借及び預金の保管管理は,有限会社エイエム三井各社,有限会社ケイセイ各社及び有限会社アールケー各社が設立された以後も,被告アートメーキング三井又は被告エイエム三井が行っており,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井で取締役副社長の地位にあったTは,Gが死亡するまで,アールケー大阪等が設立されていることを知らず,RK手術を含むいずれの事業も被告エイエム三井が行っているものと認識し(甲C全50,76),Gの子であるOも,F眼科の経営者は被告アートメーキング三井ないし被告エイエム三井であると認識していた(甲C全73)ことが認められる。また,各事業の人事,経営方針等については,有限会社エイエム三井各社,有限会社ケイセイ各社及び有限会社アールケー各社はもちろん,被告アートメーキング三井及び被告エイエム三井もこれを行っておらず,Gがすべての決定権限を掌握していた(もともと美容外科を担当していたF医師,K医師,O等が,RK手術を行うようになったのも,Gの決定によるものであった。)上,Gは,被告エイエム三井が管理していた各事業の預金のいずれについても,会社のためであるか個人のためであるかに関係なく自由に出金 等が,RK手術を行うようになったのも,Gの決定によるものであった。)上,Gは,被告エイエム三井が管理していた各事業の預金のいずれについても,会社のためであるか個人のためであるかに関係なく自由に出金していた。 これらの事実を総合すれば,原告らがF医師からRK手術を受けた当時,アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業の実質的経営者は,G及びGとの間で財産が混同し,法人格が形骸化していた被告エイエム三井であり,F眼科においても,G及びGとの関係で法人格が形骸化していた被告エイエム三井が,実質的経営者であったものと認められる。 (3) 被告アートメーキング三井については,被告エイエム三井に事業が承継される平成2年7月ころまでは,GとともにRK手術事業の実質的経営者であったことが認められるものの,それ以降は,事業のすべてを被告エイエム三井に移転し,事実上の休眠状態にあったのであるから,原告らがRK手術を受けた時点において,F眼科の実質的経営者であったと認めることはできない。 (4) 原告らは,被告アートメーキング三井もF眼科の経営者であった旨主張し,その根拠として,被告アートメーキング三井が被告エイエム三井及びGとの間で法人格が形骸化していたとする。 確かに,被告アートメーキング三井と被告エイエム三井の株主構成及び取締役は共通しているほか,被告エイエム三井は,被告アートメーキング三井名義の預金を自己のものとして使用し,また,被告アートメーキング三井が締結していたカード代理店契約を利用している。 しかし,前記のとおり,被告エイエム三井は,被告アートメーキング三井から事業を受け継いでいるのであるから,預金やカード代理店契約の名義を変更せず,そのままの名義で使用していたに過ぎないとも解し得るのであって,このことから,直ちに両社が別個の 被告アートメーキング三井から事業を受け継いでいるのであるから,預金やカード代理店契約の名義を変更せず,そのままの名義で使用していたに過ぎないとも解し得るのであって,このことから,直ちに両社が別個の法人としての実体を有しなかったと認めることはできない。むしろ,前記認定のとおり,被告アートメーキング三井は,被告エイエム三井が設立されて以降は事実上休眠状態となって,アートメーク事業,美容外科事業及びRK手術事業には関与しなくなったのであり,被告アートメーキング三井が管理していた財産は被告エイエム三井がこれをすべて受け継ぎ,管理するようになったのであるから,被告アートメーキング三井と被告エイエム三井との間で法人格が形骸化していたとはいえない。 また,被告アートメーキング三井とGの関係についても,被告アートメーキング三井から被告エイエム三井に事業が受け継がれる前には,財産が混同していたことがうかがえるが,被告エイエム三井が事業を受け継いだ後においては,事業に関係する財産は,もっぱら被告エイエム三井が管理していたのであるから,被告アートメーキング三井とGとの間で財産の混同があったともいえず,被告アートメイキング三井とGとの間で法人格が形骸化していたとはいえない。 したがって,原告らの主張は採用できない。 (5) 被告エイエム三井は,F眼科の経営者はF医師であり,被告エイエム三井はF眼科の経営に関与していない旨主張する。 しかし,前記認定の事実に照らせば,F眼科における人,預金及び賃借建物を管理していたのはF医師ではなく,被告エイエム三井であったことが明らかである。F眼科の開設者がF医師であること,F眼科での税務申告をF医師が行っていたことは,医師以外の者が診療所を開設することが医療法上厳しく制限されていることから,そのような形式が取られて とが明らかである。F眼科の開設者がF医師であること,F眼科での税務申告をF医師が行っていたことは,医師以外の者が診療所を開設することが医療法上厳しく制限されていることから,そのような形式が取られていたことによるものであり,このことから,F医師がF眼科の経営者であったということはできない。 したがって,被告エイエム三井の主張は採用できない。 (6) 以上によれば,原告らは,RK手術の実施等を内容とする診療契約をF眼科の実質的経営者であるG及び被告エイエム三井との間で締結したものと認められるから,被告エイエム三井に対して,債務不履行に基づく損害賠償請求権を有している。 しかしながら,原告らの被告アートメーキング三井に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 7 争点(6)(被告エフエムエスの責任)について(1) 争点(6)ア(事業の同一性)について原告らは,被告エフエムエスは,被告エイエム三井が経営していた美容外科の事業を引き継いでおり,外形上,事業者の名称が変わったに過ぎず,被告エフエムエスと被告エイエム三井との間には事業の同一性が認められるから,同一の法人として評価されるべきであり,被告エフエムエスも,被告エイエム三井と同様に原告に対する損害賠償義務を負う旨主張する。 原告らは,その前提として,事業の同一性の法理につき,法人格否認の法理とは別個に認められるべきである旨主張するが,同一事業を営んでいるからといって当然に同一の法主体となるものではなく,被告エフエムエスと被告エイエム三井とは,独立した別法人であるから,基本的には,権利義務の帰属も別個とみるべきであり,これを同一の法主体として評価するためには,そのための適用要件の主張を要するが,原告らの主張を見ても,この点が十分であるとはいえない。 また, ,基本的には,権利義務の帰属も別個とみるべきであり,これを同一の法主体として評価するためには,そのための適用要件の主張を要するが,原告らの主張を見ても,この点が十分であるとはいえない。 また,事業の引継ぎの点に着目するとしても,それにより当然に同一の法主体と評価できるものではない。法人格を別個とする法人の場合,営業の譲受人は,営業の譲渡人の債務を当然に引き受けるわけではなく,譲渡人の債務について,譲渡人と同じ責任を負うことになるのは,その債務を含めて営業を譲り受けた場合のほかは,商号を続用するときや債務を引き受けた旨の広告をしたときに限られている(商法26条,28条)から,事業が同一であるということのみから,営業の譲受人が譲渡人と同じ責任を負うことになるとは解し難い。 したがって,原告らの上記主張はそれ自体失当である。 (2) 争点(6)イ(法人格否認の法理)についてアまた,原告らは,被告エフエムエスの法人格が被告エイエム三井との間で形骸化していたから,被告エフエムエスは,法人格否認の法理の適用により,原告らに対する損害賠償義務を負うとも主張するが,前記認定のとおり,被告エイエム三井が前記事業を行っている間,被告エフエムエスは休眠状態であったのであるから,両社間に財産の混同,法人格の形骸化があったとは認められず,原告らの主張はその前提を欠き,採用できない。 イ(ア) もっとも,「株式会社が商法の規定に準拠して比較的容易に設立されうることに乗じ,取引の相手方からの債務履行請求手続を誤らせ時間と費用とを浪費させる手段として,旧会社の営業財産をそのまま流用し,商号,代表取締役,営業目的,従業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には,形式的には新会社の設立登記がなされていても,新旧両会社の実質は前後同一であり,新会社 産をそのまま流用し,商号,代表取締役,営業目的,従業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には,形式的には新会社の設立登記がなされていても,新旧両会社の実質は前後同一であり,新会社の設立は旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であって,このような場合,会社は右取引の相手方に対し,信義則上,新旧両会社が別人格であることを主張できず,相手方は新旧両会社のいずれに対しても右債務についてその責任を追及することができる」(最高裁判所昭和48年10月26日判決・民集27巻9号1240頁)ところ,原告らの主張は,その趣旨と解することもできるため,この点について更に検討する(なお,被告エフエムエスは,新たに設立された会社ではないが,休眠状態であった会社であるから,新たに会社が設立された場合と同視できるとする余地がある。)。 (イ) 被告エフエムエスが,被告エイエム三井が経営していた美容外科の設備を有限会社ケイセイ各社から買い取った上,これを各美容外科医師にリースしたことに加え,被告エフエムエスは,それら美容外科診療所について,人事,診療所の新設・廃止等の決定権限を有し,売上金の送金を受けていたとの前記認定の事実からすれば,被告エフエムエスは,被告エイエム三井の美容外科事業を受け継ぎ,美容外科診療所の経営を行ったことが認められる。また,被告エフエムエスの従業員であるQが,平成8年8月ころまで,RK手術被害者への対応を続けたこと,その際,被告エイエム三井が管理していたG名義の預金から被害弁償の資金が捻出されたこと,F眼科でRK手術を受けた患者に対する術後検診を行ったJ眼科の医院建物は,平成4年12月22日以降被告エフエムエスが賃借していたことからすれば,被告エフエムエスは,F眼科で実施されていたRK手術の事業については,事業 けた患者に対する術後検診を行ったJ眼科の医院建物は,平成4年12月22日以降被告エフエムエスが賃借していたことからすれば,被告エフエムエスは,F眼科で実施されていたRK手術の事業については,事業目的を,F眼科でRK手術を受けた患者に対する術後の診療及び苦情対応に限定した形で,これを受け継いだものと見ることも可能である。 (ウ) Oは,Hとともに,被告エイエム三井の管理していた預金を解約し,それらをすべてHに渡した旨述べていること(甲C全74,75),Hは,Gが行ってきた美容外科事業を引き継いでいること,Hは,被告エイエム三井の有していた資産及び負債額並びにその処理について明確な説明を行っていないこと(甲C全10,11)などからすれば,Hは,被告エイエム三井が管理していた預金を出金し,これを被告エフエムエスの事業資金としたことが推認される。 また,前記認定のとおり,被告エイエム三井は,平成4年12月,有限会社エイエム各社から,美容外科の設備を買い取っている。 (エ) 被告エイエム三井は,Gの死後,Tが代表取締役であった時期もあったが,GがHに対して経営権の委譲書と題する書面を作成,交付し,Oもこの書面に従い,事業についてすべてHに任せたこと,Hが主導してTを代表取締役から解任していることからすれば,Gの死後における被告エイエム三井の実質的支配者は,被告エフエムエスの代表取締役でもあるHであったと認められる。 (オ) 以上のとおり,被告エフエムエスが被告エイエム三井から,美容外科事業等を引き継ぐに際し,被告エイエム三井の資産を受け継いでいること,両社間で実質的支配者が同一であることからすれば,Hが休眠会社であった被告エフエムエスに被告エイエム三井の事業を引き継がせたのは,原告らに対する損害賠償債務を免れるためであったと疑う余地がないで ,両社間で実質的支配者が同一であることからすれば,Hが休眠会社であった被告エフエムエスに被告エイエム三井の事業を引き継がせたのは,原告らに対する損害賠償債務を免れるためであったと疑う余地がないでもない。 しかし,前記認定のとおり,被告エイエム三井が解散されたのは,Tによる被告エイエム三井の管理する預金の出金を防ぐとともに,医師法違反による捜査の継続を防ぐためであったこと,また,Hは,被告エイエム三井を解散した当時,RK手術の被害者が200人以上にもなることは予想しておらず,しかも,RK手術の被害者に対する被害弁償資金として1億ないし3億円を用意しており,被害弁償を行う意思を有していたものであることからすれば,Hが,被告エイエム三井から被告エフエムエスに事業を引き継がせるに際し,原告らに対する損害賠償債務を免れる目的を有していたとはいい難い。 (カ) そうすると,原告らの主張を前記のとおり善解したとしても,やはり被告エフエムエスが原告らに対する損害賠償債務を負うものとはいえない。 (3) 以上によれば,原告らの被告エフエムエスに対する請求は理由がない。 8 争点(7)(和解契約の効果が被告らに及ぶか。)について被告エイエム三井は,原告らがアールケー大阪等と締結した和解契約の効果は,原告らと被告エイエム三井との間にも及ぶから,原告らは,被告エイエム三井に対する損害賠償請求権も放棄したものである旨主張する。 確かに,原告らは,平成11年4月19日,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師が原告らに対して実施したRK手術について,F医師が原告らに対し,解決金として合計200万円を支払い,アールケー大阪及びOが原告らに対し,解決金として連帯して合計100万円を支払うこと,原告らは,F医師,アールケー大阪及びOに対して,その他裁判上・裁判外 対し,解決金として合計200万円を支払い,アールケー大阪及びOが原告らに対し,解決金として連帯して合計100万円を支払うこと,原告らは,F医師,アールケー大阪及びOに対して,その他裁判上・裁判外の請求をしないこと等を内容とする和解契約を締結している(甲C全4)が,その効果が,F医師,アールケー大阪及びOとは人格を異にする被告エイエム三井に及ぶと解すべき根拠はない。 したがって,被告エイエム三井の上記主張は採用できない。 9 争点(8)(本件において,被告らが商事消滅時効(5年間)を援用できるか。)について(1) 被告エイエム三井は,原告らの被告エイエム三井に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は5年間であると主張する。 これに対し,原告らは,医療契約上の債務不履行責任の消滅時効期間は10年間である旨主張するところ,この主張は,診療契約については,商法523条の適用が排除されるべきであるという趣旨であると解される。 しかし,商法523条は,行為の内容,性質にかかわらず,民事会社の行為について一律的に商行為法の規定を準用する旨の規定であり,行為の内容が医療契約であるという一事のみから,同条の適用が排除されるとは解し得ないし,同条は,文言上,行為の相手方の主観面によって準用の可否を定める旨の規定にはなっていないから,たとえ民事会社の行為の相手方が会社との間の行為であることを知らなかった場合であっても,同条の適用が排除されるものではない。 したがって,本件において,原告らと被告エイエム三井との間の診療契約の締結は,「民事会社の行為」(商法523条)に当たり,商法522条の商事消滅時効の規定が準用されると解さざるを得ず,消滅時効期間は5年間というべきである。 (2) もっとも,医療行為は,営利性を目的とすべきものではないこ 行為」(商法523条)に当たり,商法522条の商事消滅時効の規定が準用されると解さざるを得ず,消滅時効期間は5年間というべきである。 (2) もっとも,医療行為は,営利性を目的とすべきものではないことから,弁護士の業務等と並んで非商行為の典型として成書に掲げられてきた上,医療行為を医療法人以外の民事会社が行うことが制度上基本的には予定されていないわが国において,診療所の経営者が民事会社であるということは,通常,一般人の予想し難い事実である。 しかも,医療法上,医師又は歯科医師以外の者が診療所を開設するに当たっては,都道府県知事の許可を得なければならないところ,営利を目的として診療所を開設しようとする者に対しては,その許可を与えないこともできるとされており,「営利を目的とする法人が医療機関を開設することは,専ら当該法人の職員の福利厚生を目的とするものを除き,認められない」とされている(「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」(昭和62年6月26日総第26号通知))。このように,会社が医療機関を経営することは,法人の職員の福利厚生を目的とする場合を除いて予定されていないのであり,被告エイエム三井は,このような制限を当然知っていたものと認められる(弁論の全趣旨)。 また,被告エイエム三井は,本訴において,自らがF眼科の経営者であったことを一貫して否定しており,原告らがRK手術を受けた当時,F眼科の経営者が会社(被告エイエム三井)であることを外部から知ることは困難であったと推認される。 上記のとおり,被告エイエム三井は,株式会社であるにもかかわらず,脱法的に診療所の経営を行い,これを原告らに対して明らかにしていなかったものであり,このような同被告が,原告らから債務不履行に基づく損害賠償を請求されるや,自らが会社であることを利用し かかわらず,脱法的に診療所の経営を行い,これを原告らに対して明らかにしていなかったものであり,このような同被告が,原告らから債務不履行に基づく損害賠償を請求されるや,自らが会社であることを利用し,商事消滅時効を援用することは,被告エイエム三井が診療契約の相手方であることを原告らが知った(原告らが本訴の原告訴訟代理人に相談をした時であり,原告Aは平成7年1月5月15日ころ,原告Bは平成10年10月14日ころ,原告Cは同年4月18日ころ,原告Dは同年6月30日ころ,原告Eは平成8年7月12日ころである(甲C1ないし5))後に,直ちに訴えを提起しなかったことを勘案しても,なお,信義則(民法1条2項)に反し,許されないというべきである。 (3) したがって,被告エイエム三井の商事消滅時効の抗弁は理由がない。 10 争点(9)(損害)について(1) 視力障害の後遺障害等級の認定基準についてア労働者災害補償保険法施行規則別表第1及び自動車損害賠償保障法施行令別表は,いずれも視力障害による障害の等級を定めているが,遠方矯正視力に基づいて認定されることを前提としており,遠方矯正視力に障害はなく,近方矯正視力のみに視力障害がある場合については,特段の障害等級の規定はない。しかし,労働者災害補償保険法施行規則14条4項及び自動車損害賠償保障法施行令別表備考5は,いずれも,それら別表に掲げるもの以外の障害については,その障害の程度に応じ,別表に準じて障害等級を定めるものとする旨規定していることからすれば,上記のとおり,近方矯正視力のみに障害がある場合においても,そのような障害を適正に斟酌すべきである。 そこで,遠方矯正視力が正常で,近方矯正視力のみが低下した場合の障害等級を考えるに,遠方矯正視力においては,0.6以下であることが視力障害として認定され ,そのような障害を適正に斟酌すべきである。 そこで,遠方矯正視力が正常で,近方矯正視力のみが低下した場合の障害等級を考えるに,遠方矯正視力においては,0.6以下であることが視力障害として認定される基準であるが,近方矯正視力においても,一般論として,新聞の本文を読むのに0.7前後が必要とされていること(甲C全102),近方矯正視力が0.5ないし0.6の場合,日常生活に支障が出る可能性があり,0.4であれば,作業にもよるが,至近距離の作業を主にする仕事では支障が出る可能性が高いこと(甲C全101),さらには,日常生活に及ぼす可能性の程度には幅があり得ることを考慮すれば,近方矯正視力が0.4以下になった場合には,障害等級に該当する視力障害があるものと認めるのが相当というべきである。 もっとも,具体的な等級の準用方法としては,例えば遠方矯正視力が0.7に達しなければ,第一種普通自動車免許の取得に一定の支障が生じる(道路交通法施行規則23条)のに対し,近方矯正視力が0.4以下であっても遠方矯正視力が0.7以上であれば,そのような支障はないこと,上記各別表においても視力障害は遠方矯正視力に基づいて認定することを前提としていることなどからすれば,近方視力障害を遠方視力障害と同じ障害等級にまで位置付けることはできず,直近下級に位置付けるのが相当である。 イ上記別表は,コントラスト感度の低下,グレア等の視力障害につき,その障害等級を規定していないが,これについてもやはり,視力障害の程度に応じて,適切に斟酌すべきであるところ,コントラスト感度が中等度以上に低下した状態が昼夜を通じて発生している場合には,労働者災害補償保険や自動車損害賠償責任保険関係の認定基準では,正面視で複視を生じる場合に,両眼視することによって高度の頭痛,めまい等を生じ,労働に著し した状態が昼夜を通じて発生している場合には,労働者災害補償保険や自動車損害賠償責任保険関係の認定基準では,正面視で複視を生じる場合に,両眼視することによって高度の頭痛,めまい等を生じ,労働に著しく支障を来すものとして12級を準用するものとされている例にならい,上記各保険関係の障害等級でいうところの12級の障害と認めるのが相当であるし,夜間など一定の条件の下でコントラスト感度が中等度以上に低下した状態が出る場合については,労働に著しい支障を来すとまではいえないものの,神経症状があるものとして上記障害等級でいうところの14級の障害と認めるのが相当であり,その他の視力障害が併存している場合は,その程度に応じて,これを斟酌した障害等級を認定するのが相当である。 (2) 原告Aア後遺障害等級原告Aは,RK手術を受けた後においても,遠方矯正視力,近方矯正視力ともに両眼ともそれぞれ0.7以上あるから,この点について障害等級に該当するような視力障害があるとは認められない。 他方,原告Aは,コントラスト感度が中等度以上低下した状態が,昼夜を通じて発生しているほか,グレア,スターバーストといった視力障害があるところ,これらの視力障害は,障害等級12級に当たると認定するのが相当である。 イ逸失利益原告Aは,昭和40年12月5日生まれ(甲C1)で,F医師からRK手術を受けた平成4年3月21日当時26歳であり,証拠(甲C全105,原告A本人),弁論の全趣旨によれば,原告Aの上記後遺障害は,そのころ症状固定したと認められる。 したがって,平成4年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による高卒男子労働者(25ないし29歳)の平均年収(399万2700円)を基礎とした上,労働能力喪失率14パーセント(障害等級12級)を乗じ,就労可能年数41年 サス第1巻第1表の産業計・企業規模計による高卒男子労働者(25ないし29歳)の平均年収(399万2700円)を基礎とした上,労働能力喪失率14パーセント(障害等級12級)を乗じ,就労可能年数41年に相当する新ホフマン係数21.9704を乗じて,原告Aの逸失利益を算定すると,次のとおり,1228万0970円(小数点以下切捨て,以下同じ。)となる。 399万2700円×0.14×21.9704=1228万0970円ウ後遺障害慰謝料原告Aの後遺障害は,障害等級12級に当たるところ,後遺障害慰謝料としては,220万円が相当である。 エ手術費用F眼科において両眼にRK手術を受けた原告らは,いずれも手術費用は70万円であったと供述していること(甲C1及び3ないし5)からすれば,原告AがF医師からRK手術を受けるに当たって支払った手術費用は70万円であることが認められる。 オ既払金甲C1によれば,原告Aは,Qから,F医師の実施したRK手術に関する損害賠償として15万円の支払を受けたことが認められる。 また,甲C全4によれば,原告Aは,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師の実施したRK手術について和解契約を締結し,60万円の支払を受けたことが認められる。 よって,原告AがF医師のRK手術によって被った損害から,上記の合計75万円を控除すべきである。 カ弁護士費用145万円の限度で,本件と相当因果関係がある損害と認める。 キ合計額以上より,原告Aの被った損害の残額は,1588万0970円となる。 (3) 原告Bア後遺障害等級原告Bは,遠方及び近方の矯正視力が,両眼とも1.0以上あり,この点について障害等級に該当する視力障害は認められない。 他方,原告Bは,右眼のコントラスト感度が中等度以上低下した状態 遺障害等級原告Bは,遠方及び近方の矯正視力が,両眼とも1.0以上あり,この点について障害等級に該当する視力障害は認められない。 他方,原告Bは,右眼のコントラスト感度が中等度以上低下した状態が昼夜を通じて発生しているほか,右眼についてグレア,スターバースト,夜間視力低下,視力変動といった視力障害があるところ,これらの視力障害は,障害等級14級に当たると認定するのが相当である。 イ逸失利益原告Bは,昭和36年7月30日生まれ(甲C2)で,F医師からRK手術を受けた平成4年1月24日当時30歳であり,証拠(甲C全106,原告B本人),弁論の全趣旨によれば,原告Bの上記後遺障害は,その約半年後(当時31歳)に固定したと認められる。 したがって,平成4年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による高卒女子労働者(30ないし34歳)の平均年収(313万8700円)を基礎とした上,労働能力喪失率5パーセント(障害等級14級)を乗じ,就労可能年数36年に相当する新ホフマン係数20.2745を乗じて,原告Bの逸失利益を算定すると,次のとおり,318万1778円となる。 313万8700円×0.05×20.2745=318万1778円ウ後遺障害慰謝料原告Bの後遺障害は,障害等級14級に当たるところ,後遺障害慰謝料としては,80万円が相当である。 エ手術費用原告Bは,F眼科で右眼についてRK手術を受けた際の手術費用は40万円であったと供述しているところ(甲C2),この金額は,F眼科において両眼にRK手術を受けた原告らが,前記のとおりいずれも手術費用は70万円であったと供述していることに照らすと,合理的であり,信用できる。 したがって,原告BがF医師からRK手術を受けるに当たって支払った手術費用は40万円であると認められ おりいずれも手術費用は70万円であったと供述していることに照らすと,合理的であり,信用できる。 したがって,原告BがF医師からRK手術を受けるに当たって支払った手術費用は40万円であると認められる。 オ既払金甲C全4によれば,原告Bは,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師の実施したRK手術について和解契約を締結し,60万円の支払を受けたことが認められる。 よって,原告BがF医師のRK手術によって被った損害から60万円を控除すべきである。 カ弁護士費用40万円の限度で,本件と相当因果関係がある損害と認める。 キ合計額以上より,原告Bの被った損害の残額は,418万1778円となる。 (4) 原告Cア後遺障害等級原告Cは,RK手術を受ける前は,遠方矯正視力が両眼ともに1.2程度であったのが,RK手術を受けた後は,遠方矯正視力が両眼ともに0.6以下となったから,障害等級9級に当たる。 また,原告Cは,コントラスト感度が中等度以上低下した状態が昼夜を通じて発生しているほか,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力日内変動といった視力障害があるところ,これらの視力障害は,障害等級12級に当たる。 しかし,原告Cの視力障害と障害等級8級に規定する視力障害の内容,程度を比較すると,本件では,等級を繰り上げることは相当でないから,結局のところ,原告Cの視力障害は,重い障害等級9級に当たると認定するのが相当である。 イ逸失利益原告Cは,昭和35年3月25日生まれ(甲C3)であるところ,術後相当期間が経過した平成9年10月ころに急に視力が低下している(甲A3)から,上記後遺障害が症状固定したのは,平成9年ころ(37歳)であると推認される。 したがって,平成9年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による高卒 ころに急に視力が低下している(甲A3)から,上記後遺障害が症状固定したのは,平成9年ころ(37歳)であると推認される。 したがって,平成9年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による高卒男子労働者(35ないし39歳)の平均年収(540万6600円)を基礎とした上,労働能力喪失率35パーセント(障害等級9級)を乗じ,就労可能年数30年に相当する新ホフマン係数18.0293を乗じて,原告Cの逸失利益を算定すると,次のとおり,3411万7024円となる。 540万6600円×0.35×18.0293=3411万7024円ウ後遺障害慰謝料原告Cの後遺障害は,障害等級9級に当たるところ,後遺障害慰謝料としては,550万円が相当である。 エ手術費用前記(2)エで原告Aについて判断したのと同様に,原告Cの手術費用も70万円であると認められる。 オ既払金甲C3によれば,原告Cは,Qから,F医師の実施したRK手術に関する損害賠償として10万円の支払を受けたことが認められる。 また,甲C全4によれば,原告Cは,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師の実施したRK手術について和解契約を締結し,60万円の支払を受けたことが認められる。 よって,原告CがF医師のRK手術によって被った損害から,上記の合計70万円を控除すべきである。 カ弁護士費用400万円の限度で,本件と相当因果関係がある損害と認める。 キ合計額以上より,原告Cの被った損害の残額は,4361万7024円となる。 (5) 原告Dア後遺障害等級原告Dの近方矯正視力は,右眼0.5,左眼0.3であるところ,1眼の視力が0.6以下になったときの直近下級である障害等級14級に当たる。 また,原告Dのコントラスト感度は,昼夜を問わず,ほぼすべての周波数 の近方矯正視力は,右眼0.5,左眼0.3であるところ,1眼の視力が0.6以下になったときの直近下級である障害等級14級に当たる。 また,原告Dのコントラスト感度は,昼夜を問わず,ほぼすべての周波数で中等度以上低下しているほか,グレア,スターバースト及び夜間視力低下といった障害が生じているところ,これらの視力障害は障害等級12級に当たる。 以上によれば,原告Dの視力障害は,全体として障害等級11級に当たると認定するのが相当である。 イ逸失利益原告Dは,昭和47年8月3日生まれ(甲C4)で,F医師からRK手術を受けた平成4年1月13日当時19歳であり,証拠(甲C全108,原告D本人),弁論の全趣旨によれば,原告Dの上記後遺障害は,そのころ症状固定したと認められる。 したがって,平成4年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による大卒男子労働者(20ないし24歳の平均年収(319万8200円)を基礎とした上,労働能力喪失率20パーセント(障害等級11級)を乗じ,就労可能年数48年に相当するホフマン係数を乗じて原告Dの逸失利益を算定すると,次のとおり,1368万5289円となる。 319万8200円×0.20×(24.1263-2.7310)=1368万5289円ウ後遺障害慰謝料原告Dの後遺障害は,障害等級11級に当たるところ,後遺障害慰謝料としては,330万円が相当である。 エ手術費用前記(2)エで原告Aについて判断したのと同様に,原告Dの手術費用も70万円であると認められる。 オ既払金甲C4によれば,原告Dは,Qから,F医師の実施したRK手術に関する損害賠償として35万円の支払を受けたことが認められる。 また,甲C全4によれば,原告Dは,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師の実施したRK手術 ,Qから,F医師の実施したRK手術に関する損害賠償として35万円の支払を受けたことが認められる。 また,甲C全4によれば,原告Dは,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師の実施したRK手術について和解契約を締結し,60万円の支払を受けたことが認められる。 よって,原告DがF医師のRK手術によって被った損害から,上記の合計95万円を控除すべきである。 カ弁護士費用170万円の限度で,本件と相当因果関係がある損害と認める。 キ合計額以上より,原告Dの被った損害の残額は,1843万5289円である。 (6) 原告Eア後遺障害等級原告Eの近方矯正視力は,両眼とも0.3であるところ,両眼の近方・矯正視力が0.4以下になったものであるから,両眼の遠方矯正視力が0.6以下になったときの直近下級である障害等級10級に当たる。 また,原告Eは,コントラスト感度が,中等度以上低下した状態が,昼夜を通じて発生しているほか,グレア,スターバースト,夜間視力低下及び視力日内変動といった視力障害があるところ,これらの視力障害は,障害等級12級に当たる。 しかし,原告Eの視力障害と障害等級9級に規定する視力障害の内容,程度を比較すると,本件では,等級を繰り上げることは相当でないから,結局のところ,原告Eの視力障害は,重い障害等級10級に当たると認定するのが相当である。 イ逸失利益原告Eは,昭和43年9月26日生まれ(甲C5)で,F医師からRK手術を受けた平成4年4月29日当時23歳であり,証拠(甲C全109,原告E本人),弁論の全趣旨によれば,原告Eの上記後遺障害は,そのころ固定したと認められる。 したがって,平成4年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による大卒男子労働者(20ないし23歳)の平均年収(319万8200円)を 告Eの上記後遺障害は,そのころ固定したと認められる。 したがって,平成4年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計による大卒男子労働者(20ないし23歳)の平均年収(319万8200円)を基礎とした上,労働能力喪失率27パーセント(障害等級10級)を乗じ,就労可能年数44年に相当するホフマン係数22.9230を乗じて原告Eの逸失利益を算定すると,次のとおり,1979万4331円となる。 319万8200円×0.27×22.9230=1979万4331円ウ後遺障害慰謝料原告Eの後遺障害は,障害等級10級に当たるところ,後遺障害慰謝料としては,440万円が相当である。 エ手術費用前記(2)エで原告Aについて判断したのと同様に,原告Eの手術費用も70万円であると認められる。 オ既払金甲C全4によれば,原告Eは,F医師,アールケー大阪及びOとの間で,F医師の実施したRK手術について和解契約を締結し,60万円の支払を受けたことが認められる。 よって,原告EがF医師のRK手術によって被った損害から60万円を控除すべきである。 カ弁護士費用240万円の限度で,本件と相当因果関係がある損害と認める。 キ合計額以上より,原告Eの被った損害の残額は,2669万4331円(請求額は2548万8533円)となる。 11 結論以上によれば,原告らの被告エイエム三井に対する請求は,債務不履行に基づく損害賠償として,原告Aにつき1588万0970円,原告Bにつき418万1778円,原告Cにつき4361万7024円,原告Dにつき1843万5289円,原告Eにつき2548万8533円(請求額の限度)及びこれらに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成13年5月22日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅 43万5289円,原告Eにつき2548万8533円(請求額の限度)及びこれらに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成13年5月22日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(原告Eは全部理由がある。)から,これを認容し,原告A,原告B,原告C,原告Dのその余の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし,被告エフエムエス及び被告アートメーキング三井に対する請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとする。 大阪地方裁判所第17民事部裁判長裁判官中本敏嗣裁判官橋本都月裁判官松川充康(別紙省略)

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