平成13年(ネ)第1773号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成12年(ワ)第5352号-A)判決控訴人(1審原告) アンドウケミカル株式会社同訴訟代理人弁護士北方貞男被控訴人(1審被告) 株式会社東海化成被控訴人(1審被告) タキイ種苗株式会社被控訴人(1審被告) 株式会社サカタのタネ被控訴人(1審被告) 有限会社堤製陶所被控訴人(1審被告) 後藤種苗合名会社被控訴人(1審被告) 有限会社空閑園芸被控訴人(1審被告) 株式会社福岡セルトップ被控訴人(1審被告) 有限会社吉田園芸被控訴人ら訴訟代理人弁護士後藤昌弘同川岸弘樹同補佐人弁理士広江武典 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2(1) 被控訴人株式会社東 をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2(1) 被控訴人株式会社東海化成(以下「被控訴人東海化成」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件を生産し,譲渡し,譲渡のために展示してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金5000万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人タキイ種苗株式会社(以下「被控訴人タキイ種苗」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金2500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人株式会社サカタのタネ(以下「被控訴人サカタのタネ」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金1500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人有限会社堤製陶所(以下「被控訴人堤製陶所」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金2000万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 被控訴人後藤種苗合名会社(以下「被控訴人後藤種苗」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件の譲渡及び使用並びに原判決別紙ロ号物件目録記載の物件の使用をしてはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金200万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (6) 被控訴人有限会社空閑園芸(以下「被控訴人空閑園芸」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各物件を使用してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金200万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (7) 被控訴人株式会社福岡セルトップ(以下「被控訴人セルトップ」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録記載の物件の譲渡,譲渡のために展示及び使用をしてはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金100万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (8) 被控訴人有限会社吉田園芸(以下「被控訴人吉田園芸」という。)は, 控訴人に対し,金100万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (8) 被控訴人有限会社吉田園芸(以下「被控訴人吉田園芸」という。)は,ア原判決別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各物件を使用してはならない。 イその事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 ウ控訴人に対し,金100万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 4 この判決は,仮に執行することができる。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,原判決別紙イ号物件目録記載の物件は後記A発明の技術的範囲に属し,これを生産し,譲渡し,譲渡のために展示し,使用する被控訴人らの各行為は後記A特許権を侵害するとして,被控訴人らに対しその差止等と損害賠償を請求し,また,原判決別紙ロ号物件目録記載の物件は後記B発明の技術的範囲に属し,これを生産し,譲渡し,譲渡のために展示する被控訴人東海化成の行為並びにこれを使用する被控訴人後藤種苗,同空閑園芸,同セルトップ及び同吉田園芸の各行為は後記B特許権を侵害するとして,同被控訴人らに対しその差止等を求めた事案である。 原判決は,上記イ号物件目録記載の物件はA発明の技術的範囲に属さず,また,上記ロ号物件目録記載の物件については,被控訴人東海化成及び同セルトップを除くその余の被控訴人らは,いずれも現在ではこれを使用していないとして,上記ロ号物件目録記載の物件に係る被控訴人東海化成及び同セルトップに対する差止め等の請求を除き,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が,これを不服として控訴を提起した。 2 本件の前提と 上記ロ号物件目録記載の物件に係る被控訴人東海化成及び同セルトップに対する差止め等の請求を除き,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が,これを不服として控訴を提起した。 2 本件の前提となる事実(争いのない事実等),争点及び争点に係る当事者の主張は,次に付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」及び「第3 争点に関する当事者の主張」(原判決4頁12行目~7頁23行目,8頁22行目~12頁20行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 原判決の付加,訂正(1) 原判決4頁11行目の次に改行の上,「(当事者間に争いのない事実等)」を加える。 (2) 同5頁7行目の「右無効審判請求を争っている」を「上記無効審判請求について争った」と改め,同頁17行目の次に改行の上,次のとおり加える。 「上記特許無効審判の請求について,特許庁は,平成13年1月9日,上記訂正を認めた上で「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決をしたが,被控訴人タキイ種苗らは,これを不服として東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起した(甲14,15,弁論の全趣旨)。」(3) 当審における付加主張【控訴人】ア A発明における育苗ポット用樹脂成形体の製造のために必要な金型は,その強度を維持するために,金型上端開口縁に一定の肉厚を残さざるを得ないから,このような金型を使用して樹脂材料を真空成形した場合(産業技術上,真空成形以外にはA発明の実施可能な方法はない。),育苗ポットの上端開口部の周縁に上記肉厚に由来する「バリ」が生じる。特許発明は,産業上実施されることを当然の前提とする技術であるから,このように産業技術上不可避的に生じる微差は,クレーム解釈上,技術的には無意味なものとし 周縁に上記肉厚に由来する「バリ」が生じる。特許発明は,産業上実施されることを当然の前提とする技術であるから,このように産業技術上不可避的に生じる微差は,クレーム解釈上,技術的には無意味なものとして無視されなければならない。 イイ号物件の各ポット単体の上端開口部に形成されたフランジ状部も,上記のような意味での「バリ」にすぎず,格別の技術的意味を有さないから,A発明実施上の微差として無視されるべきである。 なお,イ号物件の「バリ」の幅は,控訴人の製品の「バリ」の幅より少し広いが,これは専ら金型技術の差によるものにすぎない。 そして,上記フランジ状部が単なる「バリ」にすぎないことは,①イ号物件に認められるフランジ状部は,その幅が平均1㎜未満であって(甲16にみられるように,控訴人が万能投影機を使用して実測した結果では,イ号物件の各ポット単体相互の間隔は1.959㎜あるいは1.989㎜であったから,その半分。),先願発明における「連結耳部」の作用効果を奏しないこと(乙4の【0009】),②イ号物件は,隣接するポット単体同士をつなぐ部分の適宜の位置で切断すべく構成されており,フランジ状部の幅の確保に格別の関心が払われていないため,切断後のポット単体にはフランジ状部が全くないものも存在すること,③イ号物件を製造する金型上端開口縁の肉厚は1㎜と考えられるが(なお,金型における各ポット単体相互の間隔は2個分であるから2㎜となる。),これは,金型製作技術上,限りなくゼロにすることを目指してようやく達成される肉厚であること,④先願発明にいうような「連結耳部」を設けることは,「連結耳部」を設けると耳の幅だけポットが小さくなり,ポットに入れることのできる土の容量が減る等の欠点があり,現実には有害無益であるから, ること,④先願発明にいうような「連結耳部」を設けることは,「連結耳部」を設けると耳の幅だけポットが小さくなり,ポットに入れることのできる土の容量が減る等の欠点があり,現実には有害無益であるから,イ号物件がそのようなものを意図してフランジ状の部分を設けたとは考えられないことからも明らかというべきである。 ウなお,被控訴人らは,乙6の金型と控訴人の金型とでは基本的に構造が異なると主張しているが,イ号物件が乙6の金型で成形されたものなら,被控訴人らの主張を前提にすると,ポット単体の上端縁の幅は,ポリプロピレンの収縮率17/1000として2.4575㎜なければならないのに,前記イ①のとおり,実際には1.989㎜とか1.959㎜にすぎないこと,イ号物件における隣接ポット単体との連結部分は2点であるのに,乙6の(6)のカッターはこれにより製造されるポット単体同士の連結点が1点であることを示していることなどから,そもそも,乙6の金型はイ号物件を製造した金型とはいえない。 【被控訴人ら】ア控訴人は,A発明の実施上,各ポット単体の上端開口部にフランジ状部が必然的に形成されるとした上,このフランジ状部は産業技術上やむなく生じる「バリ」である旨主張しているが,仮にそうであったとしても,A特許権について,控訴人は,被控訴人タキイ種苗らが申し立てた特許無効審判手続において,特許無効事由を回避するために,敢えてA発明の権利範囲について耳部のあるものを含まない旨強く主張し,その結果,審決においてA特許権が維持された経緯からして,A発明がかかるフランジ状部を含むポットを対象としないことは明らかであるといわざるを得ない。のみならず,A発明の育苗ポット用樹脂成形体の成形法としては,控訴人が前提とする真空成形に限らず,例えば射出成形 明がかかるフランジ状部を含むポットを対象としないことは明らかであるといわざるを得ない。のみならず,A発明の育苗ポット用樹脂成形体の成形法としては,控訴人が前提とする真空成形に限らず,例えば射出成形のような確立された公知の成形法があり,この方法によれば「バリ」を発生させることなく容易にA発明の実施ができることは当業者に周知のところである。したがって,A発明の実施上フランジ状部が必然的に形成されるとして,これを産業上のやむなく生じる微差として無視すべきであるとの控訴人の主張は,失当である。 イ控訴人は,イ号物件のフランジ状部をもって,上記のような「バリ」であると主張するが,合成樹脂を金型に流し込む際にはみ出した部分を「バリ」というのであればまだしも,イ号物件のフランジ状部は,単に余剰の樹脂がはみ出したというものでは全くなく,一定の幅を持つのみならず,ポットの本体部分よりも厚く形成されており,そのために先願明細書にいう補強縁としての作用効果を奏しているのである。 ウまた,控訴人の金型は,単体のポット金型をビスで台金に連設したものであるから,個々のポット金型に一定の強度を維持するために,その上端部に一定以上の厚みを持たせることが必要となり,その結果,控訴人の金型を用いて製造された各ポット単体の相互の間には個々のポット金型の上端部の厚み2個分に相当する間隔が生じることになる。これに対し,被控訴人東海化成の金型は,乙6の写真からも明らかなように,個々のポット金型をビスで台金に連設するものではなく,複数のポット単体の金型を一体的に成型したものを複数組み合わせており,強度の維持も金型の最外部の外周部分が担うため,個々のポット金型で強度を維持する必要はなく,技術的には各ポット金型の上端部の厚みは幾らでも薄くすることが可能であ 成型したものを複数組み合わせており,強度の維持も金型の最外部の外周部分が担うため,個々のポット金型で強度を維持する必要はなく,技術的には各ポット金型の上端部の厚みは幾らでも薄くすることが可能である。被控訴人東海化成は,かかる技術的背景がある上で,敢えて各ポット金型の上端部の厚みを一定の幅に設定して製造しているのである(乙13)。 なお,控訴人は,乙6の金型はイ号物件の製造に用いられるものではないと主張するが,そうでないことは,乙6の金型の底面部の形状を確認すればおのずと明らかである。 エ A特許権に係る訂正明細書の特許請求の範囲において,請求項1には,育苗ポット樹脂成形体が独立請求項として特定されており,請求項2には,育苗ポット樹脂成形体を製造するための装置が独立請求項として特定されているが,請求項2の発明は,A発明(請求項1の発明)と一の願書で特許出願されているから,両発明は,特許法37条3号に規定する関係を満足する関係にあるため,請求項2の発明の装置を使用して製造された「樹脂成形体物」は,A発明の樹脂成形体に包含される一実施の形態であるとせざるを得ない。そうすると,訂正後のA発明は,一見,個々の育苗ポット単体は,上端開口部の周縁にフランジ状部を有しない育苗ポットのみとなったようにみえるものの,請求項2の発明の装置で製造できるのは,上端開口部の全周縁から外方向に張り出したフランジ状部を有する育苗ポットのみであることを考慮すると,A発明の樹脂成形体は,その両者を含む上位概念にて特定されていると解さざるを得ない。 そうすると,A発明の樹脂成形体の個々のポット単体は,上端開口部周縁間が耳部(フランジ状部)を介して連接されているものを含むことになり,結局,先願発明と同一のものとなるから,A発明に そうすると,A発明の樹脂成形体の個々のポット単体は,上端開口部周縁間が耳部(フランジ状部)を介して連接されているものを含むことになり,結局,先願発明と同一のものとなるから,A発明についての特許は特許法29条の2の規定に違反し無効とされるべきものであって,明白な無効理由を有するものというべきであるから,これに基づく控訴人の請求は権利濫用として許されない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は,原判決主文掲記の限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次に付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」(原判決12頁22行目~17頁17行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の訂正等(1) 原判決13頁6行目の「同10年8月18日」の前に「A発明に係る特許出願後の」を加える。 (2) 同15頁6行目の次に改行の上,次のとおり加える。 「オもっとも,イ号物件の連結箇所は,原判決イ号物件目録記載のとおり2か所とされている(この点は当事者間に争いがない。)ところ,乙6の(6)のシート切断用カッターの刃の部分の切れ込みからみて,同カッターによっては連結箇所が1か所しか作製されないことが窺われることからすると,乙6の金型がイ号物件を製造するための金型であるかについては,厳密な意味では,疑問が残るところではあるが,乙4の先願明細書には「例えば,連結耳部(6)の各辺の1個所で連結するほか,間隔をおいて複数個所で連結することができる」(【0022】)と記載されていることや,控訴人自身,原審における平成13年1月10日付準備書面おいてその点の指摘をしていながら,金型自体に争点にかかわるような仕様の変更があった旨の主 とができる」(【0022】)と記載されていることや,控訴人自身,原審における平成13年1月10日付準備書面おいてその点の指摘をしていながら,金型自体に争点にかかわるような仕様の変更があった旨の主張は何らしていないことからみて,カッターの仕様に係る連結箇所の個数の変更の点は格別,上記の事実から直ちに,金型自体の仕様に大きな変化があったとも認めることはできない(なお,甲26(控訴人代表者の陳述書)によれば,被控訴人東海化成が韓国において控訴人の金型を模倣して作らせた金型が使用されているかのような供述記載がなされているが,その根拠とするところは,いずれも伝聞ないし推測にすぎないことが明らかであるから,直ちに上記供述を採用することはできない。また,控訴人は,甲16の測定結果がイ号物件の正確な測定値であることを前提にした主張をしているが,後記3で述べるところに照らし,同数値を正確なものとして,これによることもできない。)」(3) 同15頁15行目の「0029」を「0031」と改める。 (4) 同17頁8行目の「存在するとこと」を「存在すること」と改める。 3 当審における付加主張に対する判断控訴人は,特許発明の実施に当たり,産業技術上不可避的に生じる微差は,クレーム解釈上,技術的には無意味なものとして無視されなければならない旨主張するところ,一般論による限り,当業者の技術常識に照らして,当該部分が,例えば製造技術上の制約等から不可避的に発生するものであることが明らかであり,かつ,当該部分に格別の技術的意味も認められないようなときは,控訴人主張のように,クレーム解釈上,これを無意味なものとして解釈することも許されないではないものと解される。 しかしながら,本件においては,A発明の構成要件①にいう「コップ形状」 ときは,控訴人主張のように,クレーム解釈上,これを無意味なものとして解釈することも許されないではないものと解される。 しかしながら,本件においては,A発明の構成要件①にいう「コップ形状」が,周壁の上端開口部が切りっぱなし状態に形成されたものを意味するもので,切りっぱなし状態にある周壁の上端開口部から外方向に張り出した部分を有するものは含まれないと解すべきことは前記引用に係る原判決13頁21行目から14頁13行目に記載のとおりであり,また,A発明は,フランジ状部を一体形成したものを含まない点においてのみ先願発明と相違し,かつ,被控訴人タキイ種苗らが申し立てた特許無効審判手続において,控訴人は,敢えてA発明の権利範囲について耳部のあるものを含まない旨を強く主張し,その結果,審決においてA特許権が維持された経緯があることが認められること(甲12~14,乙5)からすると,上記「コップ形状」に係るクレーム解釈は厳格になされなければならないものといわなければならない。 しかるところ,控訴人は,イ号物件のフランジ状部も上記のような意味での「バリ」にすぎない旨主張するが,A発明の育苗ポット用樹脂成形体の製造について控訴人主張のように真空成形以外には実施可能な方法がないか否かの点はさて措き,イ号物件も真空成形によっていることは明らかであることから,真空成形によることを前提にするとしても,控訴人主張のように,イ号物件において,その製造に用いる金型製作上の制約から個々のポット単体の間に2㎜程度の間隔が不可避的に生じるものとまで認めるに足りる証拠はなく(甲23も,乙13の記載に照らして直ちには採用できない。),かえって,乙6におけるように(これがイ号物件製造のための金型であるかの点は措く。),単体のポット金型をビスで台金に連設するのでな はなく(甲23も,乙13の記載に照らして直ちには採用できない。),かえって,乙6におけるように(これがイ号物件製造のための金型であるかの点は措く。),単体のポット金型をビスで台金に連設するのでなく,複数のポット単体の金型を一体的に成型したものを用いるとすれば,金型強度との関係で,控訴人主張のような制約を受ける可能性も少なくなり,金型上端開口縁をより薄くすることも不可能ではないことが窺われる。 次に,控訴人は,万能投影機を使用してイ号物件を実測した結果の報告書として甲16を提出しているが,これがイ号物件の測定結果であることを客観的に確認し得る資料や具体的にどの部分を実測したのか等の詳細は提出されていない。また,その測定結果は,イ号物件の各ポット単体相互の間隔が1.959㎜あるいは1.989㎜であるというものであり,先願明細書には,各ポット単体の幅として1㎜から5㎜の範囲(各ポット単体相互の間隔は2㎜から5㎜の範囲)が好適であるとの記載はあるものの,その補強縁としての作用効果やフランジ状部がポット本体部分よりも厚く形成されていることからみて,上記の程度これを下回っただけで,直ちにその作用効果が失われるものとも解しがたい。 また,控訴人は,イ号物件は,隣接するポット単体同士をつなぐ部分の切断につき,フランジ状部の幅の確保に格別の関心が払われていないことから,フランジ状部が全くないものまで存在するとも主張しているが,原判決の理由(原判決16頁16行目~同頁20行目)に加えて,育苗ポットがいわゆる精密部品ではないことをも考慮すると,そのゆえに,イ号物件のフランジ状部をもって「バリ」にすぎないということもできないし,また,先願発明の「連結耳部」が有害無益であると主張する点も,「連結耳部」に補強縁としての作用効果が認められる以上, のゆえに,イ号物件のフランジ状部をもって「バリ」にすぎないということもできないし,また,先願発明の「連結耳部」が有害無益であると主張する点も,「連結耳部」に補強縁としての作用効果が認められる以上,控訴人主張のように被控訴人東海化成が「連結耳部」を設けようとするはずがないと断ずることはできない。 以上によれば,上記の控訴人主張の点を考慮しても,イ号物件の各ポット単体の上端開口部に形成されたフランジ状部が,控訴人主張のような意味での「バリ」にすぎないということはできず,本件全証拠を精査しても,他にこの点に関する控訴人の主張を認めるに足りる証拠はないから,イ号物件の各ポット単体をもって,A発明にいう「コップ形状」の育苗ポットに該当するということはできない。 4 その他,原審及び当審における控訴人提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出,援用された全証拠を精査しても,引用に係る原判決を含め,当審の認定,判断を覆すほどのものはない。 第4 結論以上によると,原判決は相当であるから,本件控訴をいずれも棄却し,控訴費用は控訴人に負担させることとして,主文のとおり判決する。 (平成13年10月30日口頭弁論終結)大阪高等裁判所第8民事部裁判長裁判官竹原俊一裁判官小野洋一裁判官西井和徒
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