平成30(ワ)18573 不当利得返還請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年12月4日 東京地方裁判所
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令和元年12月4日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第18573号不当利得返還請求事件口頭弁論終結日令和元年10月11日判決原告 X 被告株式会社マコメ研究所同訴訟代理人弁護士伊藤真平井佑希丸田憲和 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成30年7月10日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法」 とする特許権を有する原告が,被告は,デジタル式地殻活動総合観測装置に組み込まれた無線ユニットを用いて別紙イ号方法目録記載のデジタル信号伝送方法を実施しており,同行為が原告の特許権を侵害するとともに,仮に同行為が直接侵害に当たらないとしても,被告が上記観測装置を製造,販売する行為が原告の特許権の間接侵害(特許法101条4号又は5号)に該当するとして, 被告に対し,民法703条に基づく不当利得金3000万円及び民法704条 前段所定の法定利息1163万2500円の合計4163万2500円のうち100万円及びこれに対する催告の後である平成30年7月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に うち100万円及びこれに対する催告の後である平成30年7月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ り認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)(1) 当事者原告は,平成20年3月31日に退職するまで,名古屋大学地震火山防災研究センターに所属していた。(弁論の全趣旨) 被告は,磁気センサー,磁気スケール,磁気カードリーダー等,磁気応用機器の開発,製造,販売を目的とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権等ア有限会社テクノ東郷(以下「テクノ東郷」という。)は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。) を有していた(以下,本件特許に係る明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)。なお,本件特許の発明者は原告である。(甲1)登録番号特許第3689879号出願日平成8年10月25日(特願平8-320684)登録日平成17年6月24日(平成27年6月24日存続期間 満了)発明の名称アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法イテクノ東郷は,平成22年11月24日,原告に対し,本件特許権の持分4分の1を無償で譲渡し,さらに,平成29年12月12日,原告に対し,持分4分の3を無償で譲渡するとともに,本件特許権に係る不当利得 返還請求権を譲渡した。(甲2,10) (3) 本件各発明の特許請求の範囲本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである(以下,同各請求項に記載の る不当利得 返還請求権を譲渡した。(甲2,10) (3) 本件各発明の特許請求の範囲本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである(以下,同各請求項に記載の発明を,それぞれ符号の順に「本件発明1」などといい,併せて「本件各発明」という。なお,下線部は手続補正により付加された部分である。)。 ア請求項1(本件発明1)「ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜計よりデジタルデータを地表の受信装置に伝送する方法において, 長い信号線や電源線がボアホール用の歪計や傾斜計と一体となり地表の受信装置と接続されている構成のボアホール用の歪計や傾斜計で,デジタル化した信 号を電波に変換する手段と,落雷によって歪計や傾斜計と一体となっている長い信号線や電源線に生じる誘導電圧から, 歪計や傾斜計内部の電子回路を保護するために, 前記手段により変換した電波を,歪計や傾斜計内部において2~3cmの距離でカップリングさせた同軸ケーブルの先端に付けたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,前記手段により送 出された電波を,ボーリング孔に埋設した歪計や傾斜計と一体となっている長い信号線や電源線と接続されている受信装置で,デジタル信号に変換する手段,を有することを特徴とするアンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.」イ請求項2(本件発明2) 「ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜計より,デジタルデータを地表に設置した受信装置に伝送する方法において,長い同軸ケーブルが信号線と電源線を兼ねていること,を特徴とする請求項1記載のアンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.」ウ請求項3(本件発明3) 「ボーリング孔 方法において,長い同軸ケーブルが信号線と電源線を兼ねていること,を特徴とする請求項1記載のアンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.」ウ請求項3(本件発明3) 「ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜計 より,デジタルデータを地表に設置した受信装置に伝送する方法において,請求項1記載の方法により,地表に設置したデータ送信装置から,ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜計にデジタル信号を送ること,を特徴とするアンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.」 (4) 本件各発明の構成要件本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。 ア本件発明11A ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜計よりデジタルデータを地表の受信装置に伝送する方法において, 1B 長い信号線や電源線がボアホール用の歪計や傾斜計と一体となり地表の受信装置と接続されている構成のボアホール用の歪計や傾斜計で,デジタル化した信号を電波に変換する手段と,1C 落雷によって歪計や傾斜計と一体となっている長い信号線や電源線に生じる誘導電圧から,歪計や傾斜計内部の電子回路を保護するた めに,前記手段により変換した電波を,歪計や傾斜計内部において2~3cmの距離でカップリングさせた同軸ケーブルの先端に付けたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,1D 前記手段により送出された電波を,ボーリング孔に埋設した歪計や傾斜計と一体となっている長い信号線や電源線と接続されている受 信装置で,デジタル信号に変換する手段,を有することを特徴とする1E アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.イ本件発明22A ボーリング 信号線や電源線と接続されている受 信装置で,デジタル信号に変換する手段,を有することを特徴とする1E アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.イ本件発明22A ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜計より,デジタルデータを地表に設置した受信装置に伝送する方法 において, 2B 長い同軸ケーブルが信号線と電源線を兼ねていること,を特徴とする2C 請求項1記載のアンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.ウ本件発明3 3A ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪針や傾斜計より,デジタルデータを地表に設置した受信装置に伝送する方法において,3B 請求項1記載の方法により,地表に設置したデータ送信装置から,ボーリング孔に埋設して長期間使用するボアホール用の歪計や傾斜 計にデジタル信号を送ること,を特徴とする3C アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法.(5) 本件特許の出願経過ア本件特許の出願当時における特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりであった(乙15の1)。 「人が近づけない場所に設置した測定装置より測定データを受信装置に伝送する方法において,デジタル信号を電波に変換する手段と,変換した電波をカップリングさせたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,送出された信号を受信装置でデジタル信号に変換する手段,を有することを特徴とするアンテナカップリング によるデジタル信号伝送方法.」イこれに対し,平成16年9月7日付け拒絶理由通知書が出されたため,原告は,同年11月11日,手続補正書(乙15の2)により,特許請求の範囲のうち,「変換した電波をカップリングさせたアンテ 」イこれに対し,平成16年9月7日付け拒絶理由通知書が出されたため,原告は,同年11月11日,手続補正書(乙15の2)により,特許請求の範囲のうち,「変換した電波をカップリングさせたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,」との部分を,「落雷によ って歪計や傾斜計と一体となっている信号線や電源線に生じる誘導 電圧から,歪計や傾斜計内部の電子回路を保護するために,前記手段により変換した電波を,歪計や傾斜計内部において2~3cmの距離でカップリングさせたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,」と補正した(乙15の2)。 また,同日に原告が提出した意見書には,「同軸ケーブルは,密閉 された測定装置内部で2~3cm離れています.また,落雷に伴う高周波の誘導電圧に対し,図示したコイルは大きなインピィーダンスを持ちます.これらの理由で,落雷による誘導電圧のエネルギーは測定装置内部には進入しにくくなり,結果として,電子回路が保護されます.」との記載がある(乙15の3)。 ウこれに対し,平成17年2月2日付け拒絶理由通知書が発出された。同通知書には,「本願明細書等を参酌してもカップリングの距離を2~3cmとすることによる臨界的意義は認められないから,カップリングの距離を2~3cmとすることは当業者が行なう単なる設計事項にすぎない。」との記載がある(乙15の4)。 これに対し,原告は,平成17年3月16日,2回目の手続補正書により,特許請求の範囲の上記部分を,「落雷によって歪計や傾斜計と一体となっている長い信号線や電源線に生じる誘導電圧から,歪計や傾斜計内部の電子回路を保護するために,前記手段により変換した電波を,(判決注:改行)歪計や傾斜計内部において2~3cmの距 離 一体となっている長い信号線や電源線に生じる誘導電圧から,歪計や傾斜計内部の電子回路を保護するために,前記手段により変換した電波を,(判決注:改行)歪計や傾斜計内部において2~3cmの距 離でカップリングさせた同軸ケーブルの先端に付けたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,」と補正した(乙15の5)。 また,同日に提出された意見書には,「本願発明の対象とするデータ送受信を実施する空域は,ボアホール内に設置する歪計や傾斜計から構成される測定装置の耐圧容器内です.距離を離して大きな空 域を設けると装置全体が大きくなり,耐圧構造を保つために部材を 強化しなければなりません.部材を強化すると測定装置が高価になります.また,測定装置が大きくなると測定装置をボアホール孔に設置することが難しくなり,設置経費が高価になります. ボアホール内で使用する歪計や傾斜計は,直径約10cm程度で,気密性が高い空域に収納しなければなりません.この歪計や傾斜計だ けでなく,歪計や傾斜計の信号を増幅する回路,A/D変換回路,データ送信用の無線回路等も同じ容器内に収納する必要があります.多数の回路を収容する必要があり,アンテナ部分の空域は小さくすることが望まれます.しかし,測定装置を小さくする目的で,アンテナ部分をあまり密結合構造にすると,本来の目的である落雷に伴う誘導電 圧から,測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下します. これらの相反する条件を参酌し,2~3cm離すことが最も適した距離であるといたしました.」との記載がある(乙15の6)。 エ平成17年5月17日,本件各発明は特許査定となった(乙15の7)。 (6) デジタル式地殻活動総合観測装置の設置別紙「利息計算用年数と月数の表」と題す 載がある(乙15の6)。 エ平成17年5月17日,本件各発明は特許査定となった(乙15の7)。 (6) デジタル式地殻活動総合観測装置の設置別紙「利息計算用年数と月数の表」と題する書面の番号1~19の「設置工事日」欄記載の日に「設置場所(観測点名・県名)」欄記載の場所に合計19台のデジタル式地殻活動総合観測装置が設置された(以下,併せて「本件各観測装置」という。) (7) 被告の行為ア被告は,本件各観測装置に使用されるセンサー,基板(電子回路部),観測装置から受信したデータを処理するための地上装置,地下計器のファームウェア及び地上で地下計器とデータのやり取りを行うソフトウェアを製作した上,テクノ菅谷が納品した機構部及びシステム技電が納品した無 線基板と上記基板(電子回路部)との接続作業を行うとともに,各部品の 組立後,完成した本件各観測装置について総合検査並びに地中への設置時及び設置後の観測によるデータの取得を行った。 イ被告は,デジタル式2連地殻活動総合観測装置を製造し,平成19年1月頃,菊川観測点に設置した(以下「菊川観測装置」という。)。(乙7)ウ原告が本件各観測装置の無線ユニット(以下「本件無線ユニット」とい う。)により行われていると主張するデジタル信号伝送方法の構成は,別紙イ号方法目録記載のとおりである(イ号方法の構成については争いがあり,その認定は構成要件充足性の判断によることになるので,ここでは原告の主張する構成を摘示する。)。 (8) 消滅時効の援用 被告は,平成30年11月19日の第1回弁論準備手続期日において,本件各観測装置に係る不当利得返還請求権につき,消滅時効を援用する意思表示をした。 3 争点(1) イ号方法は本件各発明の 被告は,平成30年11月19日の第1回弁論準備手続期日において,本件各観測装置に係る不当利得返還請求権につき,消滅時効を援用する意思表示をした。 3 争点(1) イ号方法は本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1) ア構成要件1Cの充足性(争点1-1)イ均等侵害の成否(争点1-2)(2) 被告による侵害行為の有無(争点2)ア直接侵害の成否(争点2-1)イ間接侵害の成否(争点2-2) (3) 特許権者による無償実施の承諾の有無(争点3)(4) 消滅時効の成否(争点4)(5) 原告の損失額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(構成要件1Cの充足性)について 〔原告の主張〕 本件無線ユニットの使用するデジタル信号伝送方法は,「落雷によって…生じる誘導電圧から…保護するため」,電波を「2~3cmの距離」でカップリングさせた同軸ケーブルの先端に付けた「アンテナを介して」「同軸ケーブル」で送出する手段を備えており,構成要件1Cを充足する。 (1) 「アンテナを介して」いること 本件無線ユニットの基板上のトロイダルトランスは,そのコアに巻かれたコイルから電波(電磁波)が送出されて磁束が変化し,これによって電磁誘導により受信側のコイルに誘導電圧を生じさせ,その電圧変化により通信を行っており,アンテナとしての機能を果たしているから,構成要件1Cの「アンテナを介して」を充足する。 (2) 「2~3cmの距離」にあること被告は,トロイダルトランスを構成する2本の導線(コイル)が2~3cmの距離にないと主張するが,本件無線ユニットにおいて,無線通信で利用している空域の距離は3cmである。すなわち,本件無線ユニットのプ 告は,トロイダルトランスを構成する2本の導線(コイル)が2~3cmの距離にないと主張するが,本件無線ユニットにおいて,無線通信で利用している空域の距離は3cmである。すなわち,本件無線ユニットのプリント基板上の部品をみると,同軸ケーブルの先端を同基板に取り付けた部分か ら最も遠くに位置するのはアレスタを同基板に取り付けた部分であり,その中間にトロイダルトランスがある(甲4の5,乙2の7)。そして,被告の主張を前提とすれば,トロイダルトランスの寸法は12.2mmであるから,これを基準として上記最も離れた二つの取付け部分の距離を求めると,3. 3cm未満となり,これを四捨五入すると3cmとなる。したがって,無線 通信で利用している空域で最も離れた距離が3cmであるから,構成要件1Cの「2~3cmの距離」を充足する。 被告は,無線基板上の水晶振動子がHC-49というサイズのものであることを前提に,同水晶振動子の寸法をもとにトロイダルトランスの2本のコイルが2~3cmの距離にないと主張するが,水晶振動子には多数の種類が あり,本件無線ユニットに使用されている水晶振動子がHC-49であると は限らないから,被告の主張は理由がない。 (3) 「落雷によって…生じる誘導電圧から…保護するため」であること被告は,雷防止用アレスタが落雷からの保護作用を担っているから,トロイダルトランスは落雷からの保護作用を担っていないと主張するが,本件無線ユニットに使われているアレスタ(DSA-301)の直流放電開始電圧 はDC300V(255~345)となっており(甲4の2・3),これは,DC300V程度より高い電圧に対しては,アレスタの作用でDC300V程度に抑えることができるが,それより低い電圧に対しては, はDC300V(255~345)となっており(甲4の2・3),これは,DC300V程度より高い電圧に対しては,アレスタの作用でDC300V程度に抑えることができるが,それより低い電圧に対しては,その電圧が同軸ケーブルを介してトロイダルトランスを構成するコイルに加わることを意味する。つまり,DC300Vより低い電圧に対しては,アレスタは電子回 路の保護機能を有しないのであり,このような低い電圧に対しては,コイルが分離されたトロイダルトランスが,電子回路に過大な誘導電圧が加わらないようにし,保護機能を担っている。 したがって,構成要件1Cの「落雷によって…生じる誘導電圧から…保護するため」を充足する。 (4) 「同軸ケーブル」を用いていること被告は本件各観測装置の一部について,同軸ケーブルではなく光ファイバーを用いていると主張するが,被告の従業員は,別件訴訟の証人尋問において菊川観測装置に本件無線ユニットが使用されていた旨証言しており(甲9),そうであれば,後記3〔原告の主張〕のとおり,菊川観測装置と本件各観測 装置の構造は同一であるから,本件各観測装置のいずれについても「同軸ケーブル」が使用されていると考えられ,構成要件1Cの「同軸ケーブル」を充足する。 〔被告の主張〕以下のとおり,イ号方法は,構成要件1Cを充足しない。 (1) 「アンテナを介して」いないこと 「アンテナ」とは,無線通信やラジオ,テレビ等の送受信を行うため,電磁波エネルギーを空間に発射し,又は空間より受け取る装置をいうところ,トランスは交流電力の電圧を変える装置であり,電磁波エネルギーを発射又は受け取るという役割を果たすものではないから,トロイダルトランス又はこれを構成するコイルは,電 間より受け取る装置をいうところ,トランスは交流電力の電圧を変える装置であり,電磁波エネルギーを発射又は受け取るという役割を果たすものではないから,トロイダルトランス又はこれを構成するコイルは,電波を送出又は受信する「アンテナ」に該当せず, 構成要件1Cを充足しない。 (2) 「2~3cmの距離」にないことデジタル式観測装置の無線通信ユニットが採用するトライダルトランスにおいては,2本の導線は接しているから(乙2の2),この2本の導線は2~3㎝の距離にあるものではない。このことは,プリント基板上の水晶振動 子HC-49(乙2の3)及び8ピンDIP形状のIC(乙2の5・6,20~22)の寸法(乙14,23)に基づきトロイダルトランスの長手方向の実寸を算出すると,12.5mm(乙2の4)又は12.2mm(乙2の7)であるから,トロイダルトランスの長手方向の実寸に照らしても明らかである。したがって,トロイダルトランスを構成する2本の導線(コイル) は,相互に「2~3cmの距離」にはなく,構成要件1Cを充足しない。 (3) 「落雷によって…生じる誘導電圧から…保護するため」ではないこと落雷による瞬間的ではあるが極度の大電流から電子回路を保護するためには相応の大きさと強度を有する装置が必要であり(乙3),そのような過度の負荷がかかる機能をトロイダルトランスの導線(コイル)のような小型 の部品が果たすことはできないから,トロイダルトランスは「落雷によって…生じる誘導電圧から…保護するため」のものとはいえず,構成要件1Cを充足しない。 (4) 「同軸ケーブル」を用いていないこと本件各観測装置のうち,別紙「利息計算用年数と月数の表」と題する書面 の番号9,16~19の観測地点に設置されたものについては 充足しない。 (4) 「同軸ケーブル」を用いていないこと本件各観測装置のうち,別紙「利息計算用年数と月数の表」と題する書面 の番号9,16~19の観測地点に設置されたものについては,同観測装置 と地上との信号伝送経路に同軸ケーブルではなく,光ファイバーを用いている(同番号16の設置場所につき乙4,同19の設置場所につき乙13。)から,構成要件1Cの「同軸ケーブル」を充足しない。 2 争点1-2(均等侵害の成否)について〔原告の主張〕 仮に,構成要件1Cにおける「アンテナを介して」の点及び「2~3cmの距離」の点が充足しないとしても,以下のとおり,本件特許の均等侵害が成立する。 (1) 「アンテナを介して」についてアトロイダルトランスのコイルがアンテナに当たらず,この点が相違点と なるとしても,本件各発明の請求項にはアンテナの形状やその素材を限定する記載はなく,トライダルトランスを除外する理由はない。実際上,本件無線ユニットでは,トライダルトランスを使用してアンテナと同様に電波による双方向通信が行われており,上記相違点は,本件各発明の本質的部分に当たらない(第1要件)。 イアンテナをトロイダルトランスに置き換えた本件各観測装置について,無線ユニットが落雷に伴う誘導電圧で故障した旨の報告はないから,トロイダルトランスであっても本件各発明の目的を達することができるのであり,同一の作用効果を奏する(第2要件)。 ウトロイダルトランスは,電磁エネルギーを効率よく相互交換できる部品 であって,無線ユニット用のプリント基板を小型にするには適した素材であり,電波を利用するデータの送受信に利用できることは,電波に関する技術開発をしている当業者にとって公知の技術 換できる部品 であって,無線ユニット用のプリント基板を小型にするには適した素材であり,電波を利用するデータの送受信に利用できることは,電波に関する技術開発をしている当業者にとって公知の技術であった。そのため,アンテナに代えてトロイダルトランスを用いることは,当業者であれば,本件各観測装置の製造の時点で容易に想到することができた(第3要件)。 (2) 「2~3cmの距離」について ア仮に,トロイダルトランスのコイルの導線が2~3cmの距離にないという点が相違点となるとしても,本件各発明の本質的部分は,デジタル信号の送受信に電波を利用することにあり,地下側無線ユニットの信号線が同軸ケーブルの芯線と分離されているので,落雷に伴う誘導電圧から無線ユニットを含む観測装置の電子回路が保護できるのである。カップリング させたアンテナ相互の距離については,本件各発明と異なる原理が用いられているわけではなく,本件明細書等の【発明の実施の形態】(2頁36~37行目)には「カップリングの距離を短くすれば電界強度はより大きくなって,信号の伝送距離を長くできる」との記載があり,本件無線ユニットによる信号伝送方法はこの記載の範囲に含まれるから,上記相違点は, 本件各発明の本質的部分ではない(第1要件)。 イ被告は,本件特許の出願経過において「2~3cmの距離」との記載が補正により追加されたことから,それ以外の構成を意識的に除外していると主張するが,審査過程において,審査官からアンテナ間の距離の変更に関する示唆はなかったのであるから,この距離を短くすることは審査官が 許容した技術の範囲内であり,「2~3cmの距離」以外の構成が意識的に除外されているとはいえない(第5要件)。 〔被告の主張〕 なかったのであるから,この距離を短くすることは審査官が 許容した技術の範囲内であり,「2~3cmの距離」以外の構成が意識的に除外されているとはいえない(第5要件)。 〔被告の主張〕原告は,構成要件1Cの「アンテナを介して」及び「2~3cmの距離」との各構成について均等侵害を主張するが,以下のとおり,均等侵害は成立しな い。 (1) 相違点について相違点は,「デジタル式観測装置による観測においては,電波を互いに2cmよりも短く,被覆を介して接する程度の距離にあるトロイダルトランスの2つのコイルを介して送出するのに対し,本件各発明においては,落雷に より生じる誘導電圧から歪計や傾斜計内部の電子回路を保護するために電波 を2~3cmの距離でカップリングされたアンテナを介して送出する点」と把握すべきである。 (2) 第1要件本件各発明は,地中に埋設して長時間使用する測定装置のデータ伝送方法に関して,測定装置を落雷から保護する構成であり(本件明細書等の【発明 の属する技術分野】),その技術思想は,カップリングさせたアンテナを相互に2~3cmの距離に置くことによって,その性質上大型化が困難な地中に埋設して長期間使用する測定装置においても測定装置を落雷から保護して電子回路の故障を防止し,測定装置を再設置する経費を削減できるという点にある。アンテナの距離が近すぎる場合,電界強度は大きくなり長距離の信 号伝送に耐え得るが,落雷の影響による誘導電圧が測定装置の電子回路に加わらないようにすることができず,上記効果を奏することができない。 他方で,アンテナの距離が遠すぎる場合,落雷の影響による誘導電圧が測定装置の電子回路に加わらないようになるから,上記効果を奏することができ することができず,上記効果を奏することができない。 他方で,アンテナの距離が遠すぎる場合,落雷の影響による誘導電圧が測定装置の電子回路に加わらないようになるから,上記効果を奏することができるが,測定装置の筐体の大型化により,地中への埋設ができなくなるか, 設置費用が増大してしまう上,十分な電界強度が得られず必要な伝送距離を保つことができない。このように,カップリングされたアンテナの距離は,落雷からの電子回路の保護と測定装置の小型化及び伝送に必要な電界強度の確保という2つの要請につきトレードオフの関係に立つところ,本件各発明はこれらを両立させる適切な距離として「2~3cm」を採用したものであ る。 そうすると,前記(1)の相違点は,本件各発明の本質的部分に係る相違に当たるから,均等の第1要件を充足しない。 (3) 第2要件アンテナの距離を2cmよりも短くした場合,落雷による過大な誘導電圧 の影響を排除できないところ,本件各観測装置は,雷防止用アレスタの実装 (乙3)という本件各発明とは全く別の構成を採用することで,観測装置を落雷から保護するという目的を達成している。仮に,トロイダルトランスがアレスタの放電開始電圧(300V)までの電圧から電子回路を保護することができるとしても,落雷による誘導電圧は数千Vから数万Vという過大なものであり(乙24),このような高い誘導電圧から電子回路を保護するこ とが本件各発明の効果であるから,300V程度の低い電圧から保護する機能を有することをもって,本件各発明と同一の作用効果を奏するとはいうことはできない。そのため,本件各発明を前記(1)の相違する構成に置換しても,本件各発明と同一の作用効果を奏することができないから,均等の第2要件を充足 ,本件各発明と同一の作用効果を奏するとはいうことはできない。そのため,本件各発明を前記(1)の相違する構成に置換しても,本件各発明と同一の作用効果を奏することができないから,均等の第2要件を充足しない。 (4) 第3要件カップリングされたアンテナを用いるのは,単に電波を利用してデータの送受信を行うためではなく,それにより測定装置を落雷から保護するためであるのに対し,トランスは,一般に変圧器と呼ばれ,交流電圧を変更するための部品であるから,これを落雷から電子回路を保護するための部品として 用いることを当業者が容易に想到することができたとはいえず,均等の第3要件を充足しない。 (5) 第5要件本件各発明の当初請求項には,「2~3cmの距離」という記載はなかった(乙15の1)ところ,第1回目の手続補正で同記載が追加され(乙15 の2),カップリングの距離を2~3cmとすることは設計事項にすぎない旨の拒絶理由通知書(乙15の4)に対し,第2回目の手続補正を行い(乙15の5),その際に提出された意見書(乙15の6)では,前記(2)のトレードオフの関係にあることを参酌して,2~3cm離すことが最も適した距離である旨が述べられ,これを受けて,本件各発明は特許査定となった。 このように,本件特許の出願人は,アンテナの距離を2~3cmに限定し たのであり,それ以外の距離,すなわち,2cm未満及び3cmより長い距離については意識的に除外しているから,均等の第5要件を充足しない。 (6) したがって,均等侵害は成立しない。 3 争点2-1(直接侵害の成否)について〔原告の主張〕 被告は,菊川観測装置を製造,販売したことは認めながら,本件各観測装置については,部品を納 したがって,均等侵害は成立しない。 3 争点2-1(直接侵害の成否)について〔原告の主張〕 被告は,菊川観測装置を製造,販売したことは認めながら,本件各観測装置については,部品を納品しただけであり,製造,販売していないと主張する。 しかし,菊川観測装置及び本件各観測装置は,いずれも公益財団法人地震予知総合研究振興会の東濃地震科学研究所により開発されたいわゆる東濃研タイプの観測装置であり(甲3の2),同一の構造を有するものであるから,本件各 観測装置についても被告が製造,販売したというべきである。そして,東濃研タイプの観測装置には本件無線ユニットが組み込まれている(甲4,8)。 被告は,被告工場において,本件無線ユニットを組み込んだ本件各観測装置の総合組立てを行った上で,①自らの作成したソフトウェアを使用して総合検査を行い,②埋設時の観測及び埋設後の連続観測を行い,データが正常に取得 できることの確認を行い,③現在もエンドユーザーと保守契約を締結して定期的に本件各観測装置の点検を実施している(乙8~13)。被告の作成したソフトウェアを使用して本件各観測装置の総合検査及びその後の連続観測を行うには,本件各発明に係る信号伝送方法を使用することが不可欠であるから,被告は本件各発明を実施している。 〔被告の主張〕被告は,本件各観測装置について,センサー及び基板(電子回路部)を製作して納品し,テクノ菅谷がセンサーを取り付けて耐圧容器に入れ,納品した機構部や,システム技電が納品した無線基板を組み立てる作業や,電気的に接続する作業をしたにとどまり,本件各観測装置全体を製造して納品したものでは ない(乙8~13)。そのため,本件各観測装置に本件無線ユニットが組み込 まれているのかについても不知 続する作業をしたにとどまり,本件各観測装置全体を製造して納品したものでは ない(乙8~13)。そのため,本件各観測装置に本件無線ユニットが組み込 まれているのかについても不知である。 また,本件各発明は方法の特許であるところ,被告は測定機器メーカーであり,本件各発明に係る方法を含む何らの測定方法を実施していない。 なお,被告が菊川観測装置全体を製造したのは,同装置が,一つのボーリング孔の異なる深度に複数の観測機器を設置する多段式観測装置という原告独自 の発想に基づく特殊なものであり,原告が従前から指導を行っていた被告が観測装置全体を製造するようにとの原告の強い意向があったためである。菊川観測装置以外の本件各観測装置は,いずれも多段式のものではないから,被告はその部品の製作,納品をしたにすぎない。 4 争点2-2(間接侵害の成否)について 〔原告の主張〕被告は,本件無線ユニットを組み込んだ本件各観測装置の総合組立てを行い,これらを製造,販売した上,総合検査並びに設置時及び設置後のデータ取得を行っている。これらの行為は,特許法101条4号又は5号の間接侵害に当たる。 また,被告の行為は,「業として」するものであって,家庭的,個人的な実施であるということはできない。 〔被告の主張〕被告は,本件各観測装置について,センサー及び基板(電子回路部)を製作して納品したにとどまり,本件各観測装置全体を製造して納品したものではな い。 また,被告による総合検査の実施並びに本件各観測装置の設置時及び設置後のデータの取得は,「業として」する生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(特許法101条4号,5号)に当たらない。 5 争点3(特許権者による無償実施の承諾の有無)について び設置後のデータの取得は,「業として」する生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(特許法101条4号,5号)に当たらない。 5 争点3(特許権者による無償実施の承諾の有無)について 〔被告の主張〕 原告は,被告に対し,菊川観測装置に関して,本件特許権とは異なる特許権の侵害を主張して不当利得の返還を求める訴えを提起したが,その第一審裁判所(東京地裁平成30年7月6日・同29年(ワ)第13005号)は,原告及び当時の特許権者であるテクノ東郷が,被告に対し,菊川観測装置の製造,販売について黙示の許諾をしたとして,原告の請求を棄却した。平成18年1 月付け工事仕様書(乙7)によれば,菊川観測装置には,無線ユニットが搭載されており,原告は,その構成を十分に把握していたと考えられる(乙6)。 このため,本件無線ユニットで使用されているデジタル信号伝送方法が本件各発明の構成要件を充足するとしても,原告は,そのことを十分に認識しながら,黙示に許諾していたということができる。 そして,菊川観測装置の構成は本件各観測装置と同一であるから,本件無線ユニットで使用されている信号伝送方法が本件各発明の構成要件を充足するとしても,原告は,遅くとも平成18年1月には,そのことを十分に認識しつつ,測定の中止や実施料の支払を求めてこなかったということができる。そうすると,原告及びテクノ東郷は,本件各観測装置が本件各発明に係る信号送信方法 を使用することについて黙示に許諾していたといえる。 したがって,本件特許権侵害は成立しない。 〔原告の主張〕平成22年4月22日までは本件特許権の特許権者はテクノ東郷であり,テクノ東郷が,平成18年頃,被告に対し実施料の支払を求めたところ,被告の 当時の社長 は成立しない。 〔原告の主張〕平成22年4月22日までは本件特許権の特許権者はテクノ東郷であり,テクノ東郷が,平成18年頃,被告に対し実施料の支払を求めたところ,被告の 当時の社長及び副社長はこれを支払う旨の回答をした。テクノ東郷は,平成21年1月22日以降,被告に対し,複数回にわたり,本件特許権の侵害に関わる通告をしており,黙示の許諾は認められない。 6 争点4(消滅時効の成否)について〔被告の主張〕 前記5〔被告の主張〕のとおり,原告は,遅くとも平成18年1月には本件 各観測装置による測定が本件各発明の構成要件を充足することを認識しており,不当利得返還請求権を行使することができたから,本件各観測装置のそれぞれの設置の時から消滅時効が進行し,平成20年6月9日以前に設置された観測点に係る不当利得返還請求権については,消滅時効が完成している。 被告は,平成30年11月19日の第1回弁論準備手続期日において,消滅 時効を援用する意思表示をしたので,これにより上記不当利得返還請求権は,時効消滅した。 〔原告の主張〕前記5〔原告の主張〕のとおり,平成18年1月時点の本件特許権の特許権者はテクノ東郷であったから,原告には関係がなく,原告との関係において消 滅時効は成立しない。 7 争点5(原告の損失額)について〔原告の主張〕(1) 被告は,本件特許権の侵害により,以下の利益を不当に利得した。 ア本件各観測装置に実装された本件無線ユニットの数は50セットであり, 1セット当たりの価値は販売価格換算で600万円に相当する(甲5)。 実施料率は,平成19年における精密機械器具の技術分野に係る平均実施料率7.0%を参考とし,これに,本件各発明の特質や寄与度等を 1セット当たりの価値は販売価格換算で600万円に相当する(甲5)。 実施料率は,平成19年における精密機械器具の技術分野に係る平均実施料率7.0%を参考とし,これに,本件各発明の特質や寄与度等を考慮すると,10%が相当である。 そうすると,被告の本件各発明の実施に対し原告が受けるべき金銭の額 は,3000万円(600万円×0.1×50セット)である。 イ原告は,被告に対し催告をした平成21年1月22日から344年と525月(50セットを1セットと換算した場合の期間に相当。甲6)分の民法所定の法定利息1163万2500円の支払を求める。 (計算式) (600万円×0.1×0.05×344年)+(600万円×0.1 ×0.05×525月÷12月)=1032万円+131万2500円=1163万2500円(2) 原告の請求額(一部請求額)原告は,被告に対し,不当利得に基づく返還請求権として3000万円及 びこれに対する法定利息1163万2500円の合計4163万2500円のうち100万円並びにこれに対する平成30年7月10日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 〔被告の主張〕否認又は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の内容(1) 本件明細書等には次の各記載がある(甲1)。 ア発明の属する技術分野「この発明は,人が近づけない場所に設置した測定装置から受信装置に デジタル信号を伝送する方法に関わる.この方法は,特に,地中に埋設して長期間使用する測定装置のデータ伝送方法に関わり,測定装置を落雷から保護する構成であるし,測定装置のケーブルを少なくできる構成である.」【発明の属する技術分 関わる.この方法は,特に,地中に埋設して長期間使用する測定装置のデータ伝送方法に関わり,測定装置を落雷から保護する構成であるし,測定装置のケーブルを少なくできる構成である.」【発明の属する技術分野】イ従来の技術 「地中に埋設したひずみ計や傾斜計の場合,測定装置の信号線や電源線は装置と一体となっており,これらのケーブルは埋設した測定装置と地表の測定装置との間で,直接接続されている.このため,測定装置のケーブルが長くなると重量が増加し測定装置を埋設しにくい.また,この信号線が長くなると誘導電圧の影響で測定結果が乱れるし,落雷によって生じる 高い誘導電圧で,埋設した測定装置の電子回路が故障する.電子回路が故 障した場合,経費をかけて測定装置を再設置せねばならない.」【従来の技術】ウ発明が解決しようとする課題「この発明では,測定装置に信号線を取り付けることなくデジタル信号を受信装置に伝送する方法を提供する.また,測定装置に電力を送る同軸 ケーブルを介して信号を伝送し,ケーブルの重量を減らす方法を提供する.」【発明が解決しようとする課題】エ課題を解決するための手段「人が近づけない場所に設置した測定装置のデジタル信号を受信装置に伝送する方式において,本発明で講じた手段は,図1で示したように測定 装置近傍にカップリングさせたアンテナ100を設け,電波を介して同軸ケーブルで信号を伝送するようにしたことである.」【課題を解決するための手段】 オ発明の実施の形態 「本発明の実施例を図2で示した.図2において,地中に埋設した測定装置200にデジタル値を電波に変換するユニット201を設け,その201にアンテナ202を設ける.この202より電波を送出し,カップリング 明の実施例を図2で示した.図2において,地中に埋設した測定装置200にデジタル値を電波に変換するユニット201を設け,その201にアンテナ202を設ける.この202より電波を送出し,カップリングさせたアンテナ203で受信する.203は地表の受信装置205に取り付けた同軸ケーブル204の先端に設ける.アンテナ202と203 のカップリングは200の内部か近傍で行う.205では伝送された電波による信号をデジタル信号に変換する.201で微弱電波で信号を送出し たとしても202と203を2から3cmの距離でカップリングさせれば電界強度は十分大きく,同軸ケーブルであれば1Km程度の距離まで信号の伝送ができる.カップリングの距離を短くすれば電界強度はより大きくなって,信号の伝送距離を長くできる. 図3は埋設した測定装置の電源線に同軸ケーブルを使用し,この同軸ケー ブルと信号線を兼用する実施例である.図2と同様に,埋設した測定装置300にデジタル信号を電波に変換するユニット301を設け,その301にアンテナ302を設ける.この302とカップリングさせたアンテナ303を,コンデンサー306を介して地表の受信装置305に取り付けた同軸ケーブル304の先端に取り付ける.アンテナのカップリングは3 00の内部か近傍で行う.305の直流電源用の電源線としての304と303を,306を使用して接続しても,インピーダンスをマッチングさせればデータ伝送は可能である.必要であればマッチングに複数の306を使用する. 図4は,図2や図3とは信号の伝送方向が逆になった構成の実施例である. この実施例では,地表の送信装置405より埋設した測定装置の制御信号等のデジタル信号を電波に変換し,その変換された電波を同軸ケーブル404で送 信号の伝送方向が逆になった構成の実施例である. この実施例では,地表の送信装置405より埋設した測定装置の制御信号等のデジタル信号を電波に変換し,その変換された電波を同軸ケーブル404で送信し,カップリングされたアンテナ403,402を介してその電波を受信ユニット401で受信し,埋設した測定装置400でデジタル信号に変換する.405で微弱電波で信号を送出したとしても402と4 03を2から3cmの距離でカップリングさせれば電界強度は十分大きく,同軸ケーブルであれば1Km程度の距離まで信号の伝送ができる.前述の場合と同様に,カップリングの距離を短くすれば電界強度を大きくできるため,信号の伝送距離が長くなる. 図2から図4の実施例で記述した信号の伝送方法は,測定装置を地中に埋 設して使用する場合についてである.測定装置を海底や水中に設置しても 前述した方法で信号の伝送ができるし,人が近づくと危険である地滑り地帯や建造物内部に測定装置を設置した場合でも前記した方法で信号の伝送ができる.」【発明の実施の形態】 カ発明の効果「この発明では,人が近づけない場所に設置した測定装置の信号線をなくする方法を提供した.この方法であれば,1)測定装置は信号線を介して進入する誘導電圧の影響を受けなくなり,測定結果が乱れない.また, 2)故障の原因である落雷の影響による誘導電圧が,設置した測定装置の電子回路に加わらなくなる.電子回路が故障しなければ測定装置を再設置する経費を削減できる.一方,設置した測定装置の電源線と信号線を兼用すれば, 測定装置に取り付けるケーブルの重量を減らすことができ,測定装置を設置しやすくする. ファイバー線を用いて光によってデータの伝送を行えば,上記した1 測定装置の電源線と信号線を兼用すれば, 測定装置に取り付けるケーブルの重量を減らすことができ,測定装置を設置しやすくする. ファイバー線を用いて光によってデータの伝送を行えば,上記した1), 2)の問題は解決できる.けれども,現時点では,ファイバー線をステンレスパイプに入れる必要がある.このため,ケーブルを簡単に曲げることができず,測定装置が設置しにくい.また,光を用いた信号の伝送方法は消費電流が多く,微弱電波により信号を伝送する場合の約10倍になる. したがって,測定装置を離れた地点に設置したり,深い地点に埋設するに は, 電源線による電圧降下が小さい微弱電波による方法が優れている.しかも,周波数の違う電波を使用すれば,同じ同軸ケーブルで複数の地点から,同時に,データ伝送することが可能である.」【発明の効果】(2) 本件各発明の意義本件各発明の特許請求の範囲の記載及び前記(1)によれば,本件各発明は, ①地中に埋設して長期間使用する測定装置のデータ伝送方法に関するものであって,②埋設した測定装置と地表の測定装置を接続する信号線や電源線といったケーブルが長くなると,重量が増加し測定装置を埋設しにくくなり,誘導電圧の影響によって測定結果が乱れ,また,落雷によって生じる高い誘導電圧によって埋設した測定装置の電子回路が故障し,再設置のために経費 がかかるという課題を解決するため,③測定装置近傍に2~3cmの距離でカップリングさせたアンテナを設け,電波を介して同軸ケーブルで信号を伝送する構成(請求項1及び3)及び測定装置に信号線を取り付けることなく,電力を送る同軸ケーブルを介して信号を伝送し,ケーブルの重量を減らす構成(請求項2)を採ることにより,④故障の原因である落雷の影響による誘 求項1及び3)及び測定装置に信号線を取り付けることなく,電力を送る同軸ケーブルを介して信号を伝送し,ケーブルの重量を減らす構成(請求項2)を採ることにより,④故障の原因である落雷の影響による誘 導電圧が測定装置の電子回路に加わらなくなり,故障した際に生じる再設置の経費を削減できるとともに,電源線と信号線の兼用によりケーブルの重量を減らすことで測定装置が設置しやすくなり,さらに,測定装置は信号線を介して侵入する誘導電圧の影響を受けなくなり,測定結果が乱れないという効果を奏するものであると認められる。 2 争点1-1(構成要件1Cの充足性)について (1) 構成要件1Cは,「前記手段により変換した電波を,歪計や傾斜計内部において2~3cmの距離でカップリングさせた同軸ケーブルの先端に付けたアンテナを介して同軸ケーブルで送出する手段と,」というものであり,本件明細書等の段落【発明の実施の形態】には,「201で微弱電波で信号を送出したとしても202と203を2から3cmの距離でカップリングさせ れば電界強度は十分大きく,同軸ケーブルであれば1Km程度の距離まで信号の伝送ができる.」との記載があり,図2はアンテナ202と203との間に空間があることを示している。 上記のような特許請求の範囲及び本件明細書等の記載に照らせば,構成要件1Cは,「同軸ケーブルの先端に付けたアンテナ」が相互に「2~3cm」 の距離にあることを要するものであると認められる。 (2) 本件無線ユニットにおいては,無線基板上のトロイダルトランスを構成する2本の導線が,構成要件1Cの「アンテナ」に相当する。 後掲証拠によれば,菊川観測装置に組み込まれた無線ユニット内の無線基板には,トロイダルトランス及び2回路入りコンパレータ(外形 ランスを構成する2本の導線が,構成要件1Cの「アンテナ」に相当する。 後掲証拠によれば,菊川観測装置に組み込まれた無線ユニット内の無線基板には,トロイダルトランス及び2回路入りコンパレータ(外形:DIP8) があり,同コンパレータの外形寸法は,長手方向に8.8±0.3mm,短手方向に6.4±0.2mmであることが認められ(乙2の1・5・6,20~23),同コンパレータの寸法をもとにトロイダルトランスの長手方向の寸法を計算すると,12.2mmであると認められる(乙2の7)。トロイダルトランスは,2本の導線を束ねて円状のものに巻き付ける構造であり (乙19),2本の導線はほとんど接しているに等しい状態であるから(乙2),トロイダルトランスの長手方向の寸法に照らしても,2本の導線の間の距離は,2cmよりも短いと認められる。 そして,原告の主張によれば,原告菊川観測装置と本件各観測装置は同じタイプの観測装置であり,同じ構造を有するというのであるから,本件各観 測装置に組み込まれた本件無線ユニットについても,2本の導線の距離は, 2cmよりも短いと認めるのが相当である。 (3) これに対して,原告は,甲4の5に示された部品の配置図等に基づき,イ号方法の実施に使用する本件無線ユニットにおいて,無線通信で利用している空域(同軸ケーブルの先端の取付部からアレスタの取付部まで)の距離は3cmであると主張するが,前記判示のとおり,構成要件1Cの「2~3c m」はカップリングさせたアンテナ間の距離であって,「無線通信で利用している空域」の距離ではないので,原告の主張は採用できない。 (4) したがって,本件無線ユニットの使用するデジタル信号伝送方法は,構成要件1Cの「2~3cmの距離」を充足しない。 3 争点1 している空域」の距離ではないので,原告の主張は採用できない。 (4) したがって,本件無線ユニットの使用するデジタル信号伝送方法は,構成要件1Cの「2~3cmの距離」を充足しない。 3 争点1-2(均等侵害の成否)について 原告は,本件無線ユニットの信号伝送方法が,構成要件1Cにおける「2~3cmの距離」との構成を充足しないとしても,この相違点は本件各発明に係る方法と均等なものということができるので,均等侵害が成立すると主張するので,以下検討する。 (1) 第1要件(非本質的部分)について ア前記判示のとおり,本件各発明は,埋設した測定装置と地表の測定装置を接続する信号線等のケーブルが長くなると,誘導電圧の影響によって測定結果が乱れ,また,落雷によって生じる高い誘導電圧によって埋設した測定装置の電子回路が故障するなどの課題を解決するため,測定装置近傍に2~3cmの距離でカップリングさせたアンテナを設け,電波を介して 同軸ケーブルで信号を伝送する構成を採ることにより,上記課題の解決を図るものであると認められる。 そして,カップリングさせたアンテナの距離については,その距離が大きくなりすぎると十分な電界強度が確保できず,信号の伝送に支障が生じる可能性がある一方(本件明細書等の【発明の実施の形態】),その距離 が小さくなりすぎると,落雷に伴う誘導電圧から測定装置内部の電子回路 を保護する能力が低下することから,上記課題の解決が困難になるものと考えられる。本件各発明において,カップリングさせたアンテナ間の距離を「2~3cm」としたのは,この距離が相反する上記の要請をいずれも満たすからであると解するのが相当である。 このことは,前記前提事実(5)記載のとおり,カップリング グさせたアンテナ間の距離を「2~3cm」としたのは,この距離が相反する上記の要請をいずれも満たすからであると解するのが相当である。 このことは,前記前提事実(5)記載のとおり,カップリングの距離を 2~3cmとすることによる臨界的意義は認められないから,当業者が行う単なる設計事項にすぎないとした平成17年2月2日付け拒絶理由通知書(乙15の4)に対し,原告が,同年3月16日付け意見書(乙15の6)において,「ボアホール内で使用する歪計や傾斜計は,直径約10cm程度で,気密性が高い空域に収納しなければなりませ ん.…多数の回路を収容する必要があり,アンテナ部分の空域は小さくすることが望まれます.しかし,測定装置を小さくする目的で,アンテナ部分をあまり密結合構造にすると,本来の目的である落雷に伴う誘導電圧から,測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下します.これらの相反する条件を参酌し,2~3cm離すことが最も適した距離 であるといたしました.」と説明していることからも明らかである。 以上の事実によれば,カップリングされたアンテナ間の距離は,上記の相反する2つの要請を調和させ,本件各発明の効果を奏する上で本質的な部分というべきである。 イこれに対し,原告は,本件明細書等の段落【発明の実施の形態】に「カ ップリングの距離を短くすれば電界強度はより大きくなって,信号の伝送距離を長くできる」との記載があり,これはカップリングの距離を2~3cmよりも短くすることを示唆しているから,上記相違点は,本件各発明の本質的部分に当たらないと主張する。 しかし,原告の指摘する上記記載は,カップリングしたアンテナ間の距 離を2~3cmまで短くすることの技術的意義を説明する記載にすぎず, 本件 的部分に当たらないと主張する。 しかし,原告の指摘する上記記載は,カップリングしたアンテナ間の距 離を2~3cmまで短くすることの技術的意義を説明する記載にすぎず, 本件各発明において,上記距離を2cmより更に短くすると,平成17年3月16日付け意見書(乙15の6)にも記載されているとおり,落雷に伴う誘導電圧から測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下するのであるから,本件明細書等の上記記載が,上記距離を2cmより更に短くすることを示唆しているということはできない。 ウしたがって,本件無線ユニットの信号伝送方法は,均等の第1要件を充足しない。 (2) 第5要件について前記前提事実(5)記載のとおり,原告は,平成16年11月11日付け手続補正書(乙15の2)により,「2~3cmの距離で」との構成を付加し, その理由について,平成17年3月16日付け意見書において,「ボアホール内で使用する歪計や傾斜計は,直径約10cm程度で,気密性が高い空域に収納しなければなりません.…多数の回路を収容する必要があり,アンテナ部分の空域は小さくすることが望まれます.しかし,測定装置を小さくする目的で,アンテナ部分をあまり密結合構造にすると,本来の目的である落 雷に伴う誘導電圧から,測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下します.これらの相反する条件を参酌し,2~3cm離すことが最も適した距離であるといたしました.」と説明していることによれば,原告が,カップリングさせたアンテナ間の距離を2~3cmに限定し,それ以外の距離を意識的に除外したものというべきである。 したがって,本件無線ユニットの信号伝送方法は,均等の第5要件を充足しない。 (3) 以上によれば,本件無線 に限定し,それ以外の距離を意識的に除外したものというべきである。 したがって,本件無線ユニットの信号伝送方法は,均等の第5要件を充足しない。 (3) 以上によれば,本件無線ユニットの信号伝送方法は,均等の第1要件及び第5要件を充足せず,均等侵害は成立しない。 4 結論 以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由が ないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 𠮷 野俊太郎 裁判官 今野智紀 (別紙)イ号方法目録 (請求項1に対応)(a) 地表のデータ処理装置と,ボアホール用のひずみ計や傾斜計が一体となっ た観測装置とは,長い同軸ケーブルで接続されており,観測装置を構成するボアホール用のひずみ計や傾斜計の信号は,観測装置内部においてA/D変換器でデジタル化され,(b) そのデジタル化されたデータは電波に変換する手段で(c) 電波に変換されており, (d) 前記手段で変換された電波は,同軸ケーブルの先端に付けられたアンテナを介して同軸ケーブルで送出される手段で送出され,(e) 前記手段で送出された電波を,(f) 長い同軸ケーブルに接続されたデータ処理装置(受信装置)内で,デジタル値に変換する手段を有した, (g) アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法,である。 電波を,(f) 長い同軸ケーブルに接続されたデータ処理装置(受信装置)内で,デジタル値に変換する手段を有した, (g) アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法,である。 (請求項2に対応)(h) 観測装置の電源はデータ処理装置から同軸ケーブルで供給され,長い同軸ケーブルが,信号線と電源線とを兼ねており,観測装置とデータ処理装置間 で,同軸ケーブルによりデジタルデータが伝送される,デジタル信号伝送方法である。 (請求項3に対応)(i) 地表に設置したデータ処理装置から,観測装置に世界標準時刻に同期した PPS信号(デジタル信号)が伝送される,デジタル信号伝送方法である。

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