平成18(行コ)85 各所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第47号(以下「第1事件」という。),同第209号(以下「第2事件」という。),平成16年(行ウ)第173号(以下「第3事件」という。),平成17年(行ウ)第341号(以下「第4事件」という。))

裁判年月日・裁判所
平成19年4月25日 東京高等裁判所 租税
ファイル
hanrei-pdf-35257.txt

判決文本文10,700 文字)

- 1 -主文 原判決中(1)品川税務署長が平成12年11月1日付けでした控訴人の平成11年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分についての敗訴部分のうち過少申告加算税額776万円を超える部分(2)被控訴人芝税務署長が平成14年3月13日付けでした控訴人の平成12年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,平成16年5月31日付けで変更決定処分がされた後のもの)についての敗訴部分のうち過少申告加算税額585万3000円を超える部分(3)処分行政庁(芝税務署長)が平成15年12月18日付けでした控訴人の平成13年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分についての敗訴部分のうち過少申告加算税額322万8000円を超える部分をいずれも取り消す。 品川税務署長が平成12年11月1日付けでした控訴人の平成11年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額776万円を超える部分を取り消す。 被控訴人芝税務署長が平成14年3月13日付けでした控訴人の平成12年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,平成16年5月31日付けで変更決定処分がされた後のもの)のうち過少申告加算税額585万3000円を超える部分を取り消す。 処分行政庁(芝税務署長)が平成15年12月18日付けでした控訴人の平成13年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額322万8000円を超える部分を取り消す。 控訴人のその余の控訴を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを70分し,その1を被控訴人国の,その4を被控訴人芝税務署長の,その余を控訴人の負担とする。 - 2 - 事実及び理由 第1控訴の趣旨 主文1(1),(2),(3)と同旨 原判決中,処分 れを70分し,その1を被控訴人国の,その4を被控訴人芝税務署長の,その余を控訴人の負担とする。 - 2 - 事実及び理由 第1控訴の趣旨 主文1(1),(2),(3)と同旨 原判決中,処分行政庁(芝税務署長)が平成15年12月18日付けでした控訴人の平成14年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分についての敗訴部分を取り消す。 主文2,3,4と同旨 処分行政庁(芝税務署長)が平成15年12月18日付けでした控訴人の平成14年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2事案の概要 本件は,控訴人の平成8年分ないし平成10年分(第1事件),平成11年分(第2事件),平成12年分(第3事件),平成13年分及び平成14年分(第4事件)の所得税申告に対し,課税庁が,控訴人に生じたストックオプション(会社が自社又は子会社の従業員,役員等に対して付与する,自社株式を一定の期間内にあらかじめ定められた権利行使価格で購入することができる権利)の権利行使時の当該株式の時価と付与時の時価との差額相当額(権利行使益)及びリストリクテッド・ストック(会社が自社又は子会社の従業員,役員等に対して付与する,一定の制限期間中は譲渡することができないとされた株式)の制限解除時の当該株式の時価と付与時の取得価額(本件では無償取得により0円)との差額相当額の利益(株式取得益)が,いずれも一時所得でなく給与所得に当たるとして更正処分を行う(以下「本件各更正処分」という。)とともに,平成10年分ないし平成14年分の所得税について各過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことから,控訴人が,これらの処分は違法であると主張し,上記各処分のうち,ストックオプションの権利行使益及びリストリク 10年分ないし平成14年分の所得税について各過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことから,控訴人が,これらの処分は違法であると主張し,上記各処分のうち,ストックオプションの権利行使益及びリストリクテッド・ストックの株式取得益を一時所得(付与時又は制限解除時)として算- 3 -定した金額を超える部分及び各過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めたところ,原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却する判決をしたため,控訴人が,控訴人の平成11年分ないし同14年分の所得税に係る各過少申告加算税の賦課決定処分のうち,権利行使益を一時所得として申告した部分を正当な理由に該当するとして算定した各過少申告加算税を超える部分はいずれも取り消されるべきであるとして,本件控訴を提起した事案である。 したがって,当審における争点は,控訴人が平成11年分から平成14年分までの所得税の確定申告又は修正申告において,本件権利行使益を一時所得として申告したことについて,国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるかどうかである(以下,この点を「本件争点」という。)。 関係法令の定め,前提事実及び争点は,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」記載のとおりである(ただし,専ら本件各更正処分の取消請求及び平成10年分の過少申告加算税の賦課決定処分取消請求に係る部分は除く。)から,これらを引用する。 控訴人の当審における補足的主張(1)①外国親会社から日本子会社の従業員等に付与されたストックオプションで得た権利行使益の所得区分については,課税庁が過去10年以上にわたって一時所得とする見解を採用しており,このような見解が著作物や税務署の指導に反映され,控訴人のような納税者に対して表示されていて,控訴人は,当時の課税庁の見解に従い,平成8年分ないし平成10年分 って一時所得とする見解を採用しており,このような見解が著作物や税務署の指導に反映され,控訴人のような納税者に対して表示されていて,控訴人は,当時の課税庁の見解に従い,平成8年分ないし平成10年分の上記権利行使益を一時所得として申告していたこと,②当時においても現在においても同権利行使益の所得区分に関する明確な法律及び通達の規定が存在せず,法解釈を担う司法,特に東京地方裁判所の行政専門部においても数多くの一時所得説に立つ裁判例が存在し,税法学者においても一時所得説に立つ者が非常に多く,一時所得説が相当程度合理的根拠がある有力な見解とみられており,また,控訴人が本件権利行使益を申告した当時,最上級審である最高- 4 -裁判所の判断も下されてはいなかったばかりか,平成11年分ないし平成13年分の所得税申告当時は通達による公的見解すら表示されておらず,また,平成14年分の所得税申告当時は,唯一の司法判断が一時所得とするものであったため,いずれの所得区分が正しいのか極めて不明確であり,納税者が混乱していた状況だったこと,③そもそも,このような混乱状況を作出したのは被控訴人らないし課税庁であること,④本件の所得税申告においては,所得区分について課税庁と解釈が異なっただけであり,事実に基づいた申告自体はされていること,⑤本税について更正処分を受けることで当初から給与所得で申告した者との不公平は是正されるといえること等の諸事情を総合すれば,平成11年分ないし平成14年分の本件権利行使益について,従前の課税庁の見解に従って一時所得として申告・納税した控訴人に対して過少申告加算税を課することは酷に過ぎるものであり,控訴人が一時所得として申告したことには,国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるというべきである。 そうすると,平成11年分ない 人に対して過少申告加算税を課することは酷に過ぎるものであり,控訴人が一時所得として申告したことには,国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるというべきである。 そうすると,平成11年分ないし平成14年分の控訴人の所得税について,本件権利行使益を一時所得として算定した税額に係る部分については過少申告加算税を課することはできないのであるから,この部分について過少申告加算税を賦課した本件各賦課決定処分は違法であり,取り消されるべきである。 (2)最高裁平成18年10月24日第三小法廷判決(以下「最高裁平成18年判決」という。)によれば,ストックオプションの権利行使益につき,課税庁により通達が発せられた場合であっても,納税者がいずれの所得区分で申告すべきかについて,周知・定着状況があったと評価することができず,混乱状況が続いている状況で一時所得で申告がされた場合には,「正当な理由」が認められるべきである。 本件では,平成14年6月に所得税基本通達が改正され,権利行使益の所- 5 -得区分を給与所得とする課税上の取扱いが明記された半年後,東京地裁平成14年11月26日判決がストックオプションの権利行使益を一時所得と判断しており,平成14年分の法定申告期限までには,一時所得とする判決しか存在しておらず,同判決が紹介される刊行物が多く出される状況であり,変更後の取扱いが納税者に周知,定着した状況にあったと評価することはできないから,平成14年分の確定申告も最高裁平成18年判決の射程内である。仮に,平成14年分の確定申告が最高裁平成18年判決の射程外であるとしても,多くの税法学者が一時所得説をとり,裁判所も一時所得説を採用していた当時,納税者としては,唯一の司法判断を正しい法解釈であると信じるのが自然であり,納税者を責めるのは酷である。 程外であるとしても,多くの税法学者が一時所得説をとり,裁判所も一時所得説を採用していた当時,納税者としては,唯一の司法判断を正しい法解釈であると信じるのが自然であり,納税者を責めるのは酷である。 第3当裁判所の判断当裁判所は,本件争点に係る部分の平成11年分ないし平成13年分(以下「本件3か年分」という。)の各過少申告加算税の賦課決定処分は違法であり,取り消すべきものであるが,平成14年分の同処分は適法であると判断する。 過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁判所平成18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁)。 そこで,このような観点に立って本件についてみるに,前記前提事実に加え- 6 -て証拠(各認定事実ごとに末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)控訴人は,平成8年分ないし平成10年分の控訴人の所得税の申告に際し,平成8年中に生じた本件権利行使益,平成9年中に生じた本件株式取得益,平成10年中に生じた本件権利行使益をいずれも一時所得と 1)控訴人は,平成8年分ないし平成10年分の控訴人の所得税の申告に際し,平成8年中に生じた本件権利行使益,平成9年中に生じた本件株式取得益,平成10年中に生じた本件権利行使益をいずれも一時所得とし,これに基づき算定した税額を申告したが,品川税務署長は,平成12年3月10日,これらの本件権利行使益及び本件株式取得益を給与所得とし,これに基づき納付すべき税額について各更正処分をした。控訴人は,その後である同月15日,品川税務署長に対し,本件株式取得益のうち平成11年中に生じた部分を一時所得として納付すべき税額について申告し,次いで,平成12年4月3日,同税務署長に対し,本件権利行使益のうち平成11年中に生じた利益について申告漏れがあったとして,これを一時所得として納付すべき税額について修正申告書を提出した(前記引用にかかる原判決記載の前提事実(5)アないしエ)。 (2)平成11年分ないし平成13年分の各確定申告の当時,親会社から付与されたストックオプションに係る経済的利益に対する課税について,直接具体的に定めた法令又は通達の規定はなく,平成10年政令第104号による改正前の所得税法施行令(昭和40年政令第96号)84条が,自社従業員等に対し,株主総会決議後6か月間に限って有利な発行価額による新株引受権を付与した場合における当該新株引受権に係る収入金額を,原則として当該権利に基づく払込みに係る期日における新株等の価額から当該新株等の発行価額を控除した金額によることとし,平成8年6月18日付け課法8-2ほか1課共同による改正前の基本通達が,発行法人から有利な発行価額により新株等を取得する権利を与えられた場合には,当該権利を行使して新株等についての申込みをしたときに,上記発行価額と権利行使時の新株等の価額との差額に対し,一時所得として課 法人から有利な発行価額により新株等を取得する権利を与えられた場合には,当該権利を行使して新株等についての申込みをしたときに,上記発行価額と権利行使時の新株等の価額との差額に対し,一時所得として課税することとしつつ,当該権利が従業員- 7 -等に対し支給すべきであった給与等又は退職手当等に代えて与えられたと認められる場合には,給与所得又は退職所得とする旨定めていたにとどまる。 そして,外国の親会社から付与されたストックオプションの権利行使に係る所得区分について,東京国税局直税部長監修,同局所得税課長編「回答事例による所得税質疑応答集」(財団法人大蔵財務協会刊行)の昭和60年版から平成6年版までの解説に,「ストックオプションを与えられた場合の課税」の項の回答欄に,「現実に権利を行使した本年分の一時所得として課税されます。」,解説欄に,「(中略)そこで,ストックオプションを与えられたことによる経済的利益については,給与,退職金に代えて与えられている場合を除き,通常,一時所得として課税されます。」と記載され,さらに,昭和63年版から平成6年版までについては,その末尾に「(基達23~35共-6と同旨)」と記載されていたが,この回答及び解説の内容は,控訴人が平成10年分の所得税の確定申告書を提出する以前の平成10年7月1日に発行された平成10年版から,上記所得区分を「給与所得」とする内容に変更された(甲15,乙11の1~9,15,57,弁論の全趣旨)。 (3)課税庁は,平成12年2月に平成8年分ないし同10年分の所得税の調査を実施した際,課税庁の調査担当者から控訴人の担当税理士に対し,上記各年分に係る本件各利益がいずれも給与所得に当たる旨の説明がされ,修正申告をするように勧めており(乙54),さらには,平成11年10月21日,同月22日及び 担当者から控訴人の担当税理士に対し,上記各年分に係る本件各利益がいずれも給与所得に当たる旨の説明がされ,修正申告をするように勧めており(乙54),さらには,平成11年10月21日,同月22日及び同月27日付けの日刊新聞により,A株式会社の従業員等が,同社の親会社(米国法人)から付与されたストックオプションを行使して得た権利行使益について,東京国税局から給与所得として課税するとの指摘を受けたことなどが報道され,平成12年2月8日付けの日刊新聞によっても,東京国税局等が,外資系企業の従業員等に対し,本件のような外国親会社から付与されたストックオプションの権利行使益について税務調査を行い,その所得区分を給与所得とする修正申告を求め,修正申告に応じない- 8 -者に対しては,更正処分を行うこととしたことなどが報道された(乙55の1~5,56)。 (4)課税庁は,平成14年6月24日付け課個2-5ほかによる所得税基本通達23~35共-6の改正により,権利行使益の所得区分を給与所得とする課税上の取扱いを同通達に明記した(甲68)。上記の通達改正がされた事実は,平成14年7月18日までに国税庁のホームページに掲載され(乙96,107~109),また,全国の国税局,各税務署等の窓口においても,上記改正後の所得税基本通達が一般の納税者等に閲覧に供され(乙108,112),さらに各種税務専門誌などに上記通達改正の内容やその解説が掲載された(乙97~105)。 控訴人は,平成15年3月17日,芝税務署長に対し,控訴人の平成14年分の所得税につき確定申告書を提出したが,同申告書において,控訴人は,本件権利行使益のうち同年中に生じた部分を一時所得に該当する旨申告した。 以上認定の事実関係によれば,控訴人の前記補足的主張の①及び②に指摘のとおり,外国法 出したが,同申告書において,控訴人は,本件権利行使益のうち同年中に生じた部分を一時所得に該当する旨申告した。 以上認定の事実関係によれば,控訴人の前記補足的主張の①及び②に指摘のとおり,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていないところ,課税庁においては,上記ストックオプションの権利行使益の所得税法上の所得区分に関して,かつてはこれを一時所得として取扱う例が多かったが,平成10年ころから,その取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったものである。この所得区分に関する所得税法の解釈問題については,一時所得とする見解にも相応の根拠があり,最高裁平成17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁によってこれを給与所得とする最高裁判所の判断が示されるまでは,下級裁判所の判断が分かれていたことは当裁判所に顕著である。このような問題について,課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には,法令の改正によることが望ましく,仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして変更後- 9 -の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。ところが,前記事実関係等によれば,課税庁は,上記のとおり課税上の取扱いを変更したにもかかわらず,その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したのである。そうであるとすれば,少なくともそれまでの間は,納税者において,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されるストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し,その見解にした るとすれば,少なくともそれまでの間は,納税者において,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されるストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し,その見解にしたがって上記権利行使益を一時所得として申告したとしても,それには無理からぬ面があり,それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りに過ぎないものということはできない。 そうすると,前記のように,控訴人が本件各年度の各確定申告に先立ち,課税庁が平成12年2月に平成8年分ないし同10年分の所得税の調査を実施した上,修正申告をするように勧めており,その際,課税庁の調査担当者から控訴人の担当税理士に対し,上記各年分に係る本件各利益がいずれも給与所得に当たる旨の説明がされており,税務職員から本件権利行使益も給与所得に当たる旨の指摘を受けていたことなどの事実関係を考慮しても,本件3か年分の各申告において,控訴人が,本件権利行使益を一時所得として申告し,本件権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎としなかったことについて,真に控訴人の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の制度趣旨に照らしても,なお,控訴人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから,控訴人が,本件3か年分の所得税の確定申告又は修正申告において,本件権利行使益を一時所得として申告したことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである。 しかしながら,前記のとおり,課税庁は,平成14年6月には,前記基本通達の改正により,平成14年分の所得税の確定申告時までに,ストックオプシ- 10 -ョンの行使に係る権利行使益を給与所得として課税するという取扱いをすることを明らかにしてこれを周知さ ,前記基本通達の改正により,平成14年分の所得税の確定申告時までに,ストックオプシ- 10 -ョンの行使に係る権利行使益を給与所得として課税するという取扱いをすることを明らかにしてこれを周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じていたのであるから,控訴人は,課税庁の所得区分に関する見解,取扱いの変更が基本通達の改正により明記され,これが周知されたことを認識しつつ,あえてこれと異なる主観的な法律見解を採用して平成14年分の所得税の確定申告を行ったものであると認められる。そうすると,控訴人には,課税庁により明示された法律見解に従い本件権利行使益について給与所得として申告することに何ら客観的障害があったとはいえず,控訴人は,過少申告加算税を含む国税関係法規を前提に,正当な解釈を司法判断に委ねたものというほかはないから,控訴人の見解が採用されずに更正処分がされたとしても,控訴人の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえず,控訴人に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるとまではいえないから,平成14年分の所得税の確定申告については,本件権利行使益につき適正な申告をしなかったことに「正当な理由」があったということはできない。 この点につき,控訴人は,最高裁平成18年判決によれば,課税庁により通達が発せられた場合であっても,納税者がいずれの所得区分で申告すべきかについて,周知・定着状況があったと評価することができず,混乱状況が続いている状況で一時所得で申告がされた場合には,「正当な理由」が認められるというべきであるところ,本件では,前記基本通達の半年後,東京地裁平成14年11月26日判決が一時所得と判断しており,平成14年分の法定申告期限までには,一時所得とする判決しか存在しておらず,同判決が紹介される刊行物が多く出され ,前記基本通達の半年後,東京地裁平成14年11月26日判決が一時所得と判断しており,平成14年分の法定申告期限までには,一時所得とする判決しか存在しておらず,同判決が紹介される刊行物が多く出される状況であったから,変更後の取扱いが納税者に周知,定着した状況にあったと評価することはできない,と主張する。 しかしながら,最高裁平成18年判決が「通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講ずべきでものである」とする周知,定着の対象は「変更後の取扱い」であり,措置を講ずべき- 11 -主体は課税庁であるところ,前記認定のとおり,課税庁の取扱いが変更,統一され,通達が明示された上で,周知させ,定着するよう必要な措置が講じられているのであるから,控訴人の平成14年分の申告については「正当な理由」があるとはいえないというべきである。ちなみに,控訴人が指摘する東京地裁平成14年11月26日判決は,ストックオプションに関する同年の商法等の改正規定及び通達の改正規定は同判決の事案には適用されないことを前提に判断することを明示しているのであって(当裁判所に顕著な事実),同判決があったことにより「正当な理由」があることにはならない。 なお,控訴人の補足的主張④の点(控訴人は事実に基づく申告自体はしているとの点)については,控訴人の趣旨は,権利行使益の発生を隠すことなく申告し,その所得区分を一時所得にしたものにすぎないとの点にあるものと解せられるが,過少申告加算税の制度趣旨は前記のとおり,申告に係る納付すべき税額が過少であった場合に納税者の公平や円滑な申告納税制度を実現するための制度であって,納税者の悪性に対する制裁ではないから,納税者の悪性は過少申告加算税を賦課するための要件とはならないし,また,納税者の帰責事由 た場合に納税者の公平や円滑な申告納税制度を実現するための制度であって,納税者の悪性に対する制裁ではないから,納税者の悪性は過少申告加算税を賦課するための要件とはならないし,また,納税者の帰責事由や過失は,同様に要件とはならないから,申告の過誤や納税者に悪性がないこと等が直ちに「正当な理由」を根拠付ける事由にはならないのであって,控訴人の前記主張は,過少申告加算税を賦課することの障害とはなり得ないというべきである。したがって,この点に関する控訴人の主張は,理由がない。さらに,控訴人は,前記補足的主張⑤の点(本税で更正処分を受けることにより,当初から給与所得として申告した者との公平が図られるとの点)も挙げるが,この見解は,過少申告加算税の制度趣旨を没却するものであり,この点に関する控訴人の主張も失当である。 そうすると,控訴人の前記補足的主張は理由がなく,採用することはできない。 第4 結論 - 12 -よって,原判決中,本件3か年分の過少申告加算税の賦課決定処分の取消請求を棄却した部分は取り消しを免れず,同処分の取消請求は理由があるから取り消すこととし,平成14年分の過少申告加算税の賦課決定処分は適法であって,その余の本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部裁判長裁判官南敏文裁判官安藤裕子裁判官生野考司

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る