判決平成14年6月18日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第242号損害賠償請求事件 主文 一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び争点第一申立一被告は原告に対し,金33万2053円及びこれに対する平成12年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 二仮執行の宣言第二事案の概要本件は,原告が税理士である被告に対し,委任契約上の債務不履行があったとして,損害賠償を求めた事案である。 一争いのない事実等(証拠を摘示しない事実は争いがない。) 1 甲は平成6年12月17日に死亡した。相続人は,妻の乙,長男丙,二女丁,三女の原告及び長女の子戊の5名であった。 2 甲の遺言執行者A株式会社の紹介で,税理士である被告が上記相続人らから依頼を受け,平成7年10月頃相続税申告書を作成した。同年11月17日,相続人5名が被告に対し,各金40万円の報酬費用を支払った。 3 平成12年8月5日に原告が被告に対し資料提出を要求したところ,同月18日被告は資料(証拠番号略)を送付してきた。原告が計算の誤りを指摘したところ,被告は一部訂正した。 4 以後,原告が代理人の己弁護士を介してさらに訂正を要求したが,被告は応じなかった。 5 甲の遺産のうち,神戸市a区b町c丁目d番eの山林275㎡,同番fの山林38㎡,同番gの山林1.81㎡及び同番hの山林1.53㎡の各土地(以下,併せて「本件土地」といい,個々の土地を表示するときには,地番のみで略称する。)について,被告は,いずれも宅地とみなして1㎡あたり19万4157円と評価した。この単価は,平成7年度路線価1㎡あたり25万5000円に,阪神・淡路大震災の被災 するときには,地番のみで略称する。)について,被告は,いずれも宅地とみなして1㎡あたり19万4157円と評価した。この単価は,平成7年度路線価1㎡あたり25万5000円に,阪神・淡路大震災の被災地の土地の評価の調整措置による調整率0.9,不整形地補正率0.9及びがけ地等の補正率0.94を乗じた結果得られた数値である(証拠番号略)。 6 昭和49年11月,d番eの土地の宅地造成が完了し,同年12月24日,d番g及びhの土地が同月18日交換を原因として,甲に所有権移転登記された。昭和50年5月当時,d番g及びhの土地は,斜面であり,d番eの土地との間に高さ1メートルの擁壁があった。隣地所有者は,d番g及びhの土地を含む土地を掘り下げ,新しく宅地及び階段通路を造成した。 7 d番fの土地の一部は原告の車庫の出入口である。 8 平成6年,隣地所有者の庚が甲を債務者として仮処分を申し立て,同年10月14日,神戸地方裁判所は,d番fの土地の一部につき,工作物設置,車両の駐停車等により庚の車両通行を妨害してはならないとの仮処分決定(以下,「本件仮処分」という。)をした(証拠番号略)。甲は本件仮処分に対し,異議を申し立てた(証拠番号略)。 また,甲は庚を被告として,d番g及びhの土地の所有権確認,妨害排除並びに同番fの土地の一部についての通行権不存在確認請求等の訴訟(神戸地方裁判所平成6年(ワ)第471号。以下,「庚に対する訴訟」という。)を提起し,甲死亡後は乙が同訴訟を承継したが,平成10年10月30日,所有権の範囲については乙の主張どおりとし,d番fの土地から分筆された土地1.9㎡につき,乙が庚の引受参加人のために通行地役権を設定することを骨子とする訴訟上の和解が成立した(証拠番号略)。 9 相続税の財産評価基本通達(平成6 りとし,d番fの土地から分筆された土地1.9㎡につき,乙が庚の引受参加人のために通行地役権を設定することを骨子とする訴訟上の和解が成立した(証拠番号略)。 9 相続税の財産評価基本通達(平成6年2月15日改正のもの)24は「私道の用に供されている宅地の価額は11(評価の方式)から21-2(倍率方式による評価)までの定めにより計算した価額の100分の60に相当する価額によって評価する。この場合において,その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは,その私道の価額は評価しない。」と定めている(証拠番号略)。 二争点に関する双方の主張 1 d番g及びhの土地の評価(原告)(1) d番g及びhの土地は,同番eの土地上の擁壁工事が完成した昭和48年6月の後に,甲が当時の隣地所有者から取得した土地であり,登山やジョギングの通り階段通路として,あるいは裏山に抜けるための唯一の通路として,不特定多数の者に利用されていた。ところが,平成5年に庚が隣地所有者となって以降,庚は階段通路を取り壊し,d番g及びhの土地を自己所有地と主張して,柵で囲い込んだため,庚に対する訴訟へと発展した。甲の相続発生時には,d番g及びhの土地は係争中であり,通路としての利用も妨害されていた。 (2) d番g及びhの土地は,原告方建物の擁壁の外にあって,7メートルも低い位置にあり,原告方にとっては利用法がない。 (3) したがって,d番g及びhの土地は,財産評価基本通達24により,不特定多数の者が利用する私道として,評価の対象としない必要があった。 (被告)(1) 財産評価基本通達24の不特定多数の者の通行の用に供されている私道とは,第三者が通行することを容認しなければならず,私道の廃止,変更が制限され,通行妨害行為が禁止され 。 (被告)(1) 財産評価基本通達24の不特定多数の者の通行の用に供されている私道とは,第三者が通行することを容認しなければならず,私道の廃止,変更が制限され,通行妨害行為が禁止されるような利用制限のあるものをいう。 d番g及びhの土地は,そのような利用制限はなく,ハイカーやジョギングをする人がたまたま通っていたというものに過ぎない。これらの土地は,甲の相続開始時において,階段らしきものは既になく,人が通行できる状況でなかったし,現状ではコンクリート擁壁等によって通行は遮断されている。 (2) 原告の主張によっても,甲の相続開始時においては,庚の行為によりd番g及びhの土地の通行は妨害されており,一般人の通行は不可能であった。 (3) 被告は,庚との間の係争は原告からも聞かされておらず,知らなかった。 (4) 被告が本件土地の現地調査をした平成7年6月13日には,原告主張の階段らしきものは取り壊され,代わりにコンクリート製の擁壁が造られており,人が通行できる状態ではなかった。 (5) d番g及びhの土地は,宅地の東側の擁壁を補強するコンクリート製の擁壁となっており,宅地の一部と判断するのが相当である。 2 d番fの土地の評価(原告)(1) d番fの一部の18.21㎡の土地(以下,「本件私道部分」という。)は,原告の車庫への出入口だけでなく,隣地の車庫の出入りにも利用されていた。 また,本件私道部分は,原告の家の前で行き止まりのため,迷った車や近隣住民のUターン場所としても利用されていた。さらに,登山,ジョギングコースの通り道として,不特定多数の者に利用されていた。 (2) 庚は,隣地に自宅を建設し,d番fの土地の一部の自由通行を要求して,甲を債務者として仮処分を申し立て,本件 らに,登山,ジョギングコースの通り道として,不特定多数の者に利用されていた。 (2) 庚は,隣地に自宅を建設し,d番fの土地の一部の自由通行を要求して,甲を債務者として仮処分を申し立て,本件仮処分がなされたものであり,甲の相続開始時において,本件私道部分は宅地として自由に利用できる状況ではなかった。 (3) 平成6年度の固定資産課税台帳上,d番fの土地は評価対象外となっている。 (4) したがって,財産評価基本通達24により,本件私道部分を,私道として利用されている土地として,路線価の自用地評価の60パーセントで評価する必要があった。 (被告)(1) 本件私道部分は,専ら甲のために車庫の出入りに利用されていた土地で,車庫の一部と解すべきものである。原告の主張によっても,甲は,本件私道部分の庚による通行を認めていなかったもので,そのために本件仮処分に至ったものと理解できる。本件仮処分も,庚の通行を妨害することが権利の濫用であるとするもので,庚に本件私道部分の排他的使用を認めたものではない。 (2) 固定資産税評価の対象となっていなかったことをもって,相続税申告においても評価しないこととする相続税法上の根拠はない。 3 被告の債務不履行(原告)(1) 被告は,平成7年6月に本件土地の現地調査をしたが,その際原告は被告に土地の現況や庚との間の紛争について詳しく説明した。 (2) 税理士がその業務を遂行するにあたって求められる注意義務は,一般人に比較して高度かつ広範であり,租税に関する法令に精通していることを前提とした専門的判断を求められるものである。被告は,本件土地の相続税申告の前提として,本件土地に関する必要な情報を原告に質問するなどして収集する義務があり,これを怠った結果,前記1,2の ることを前提とした専門的判断を求められるものである。被告は,本件土地の相続税申告の前提として,本件土地に関する必要な情報を原告に質問するなどして収集する義務があり,これを怠った結果,前記1,2のとおりの土地の評価を誤ったことは,委任契約上の不完全履行にあたるというべきである。 (被告)(1) 一般に,税理士による相続不動産の調査・評価については,不動産登記簿謄本,地積図,公図,固定資産評価証明書等を徴求し,現地で間口,奥行き等を調査し,崖地等を見分し,測量図があればそれを提供してもらうことになる。私道らしい形態があれば質問することもあろう。しかし,人の通行を窺わせる徴憑がなければ,私道について質問する義務はない。また,隣地との境界等に関する紛争についても,現地の調査等から予測されるときには質問することもあろうが,そうでない限り質問する義務はない。本件土地について,私道の存在や隣地との紛争の存在については,原告から説明もなく,現地の状況から予測することは困難であり,被告にこれらについての質問義務はない。 (2) また,原告の庚との間の紛争に関する主張を前提としても,本件土地の評価に影響はなかったのであるから,質問しなかったことが評価に影響を与えたとはいえない。 (3) 甲は本件仮処分を争い,庚に対する訴訟を提起して,d番g及びhについて所有権を主張して妨害排除請求をし,本件私道部分について庚の通行権の不存在を主張していたのであるから,仮に被告が原告に質問しても,私道として他人が通行することを認めないという回答をしたものと考えられ,そうであれば,質問しなかったことが本件土地の評価の誤りを招いたということはできない。 4 原告の請求の内訳(原告)(1) d番g及びhの土地については,正しくは0円と評価さ えられ,そうであれば,質問しなかったことが本件土地の評価の誤りを招いたということはできない。 4 原告の請求の内訳(原告)(1) d番g及びhの土地については,正しくは0円と評価されるべきであったのに,被告は,1㎡あたり19万4157円と評価したため,64万8485円多く計算された。 本件私道部分は,正しくは,路線価25万5000円に前記大震災被災地関係の調整率0.9及び私道としての評価率0.6を乗じた13万7700円を単価とすべきであり,1㎡あたり5万6457円,合計で102万8081円多く計算された。 その結果,原告は,相続税を8万6800円多く納付した。 (2) 相続人らは税額の1パーセントを遺言執行者に報酬として支払ったところ,被告の(1)の評価の誤りのため金額1万6765円を多く支払ったことになり,その5分の1の3353円が原告に生じた損害となる。 (3) 被告に支払われた報酬中,土地評価費用は25万円とされているが,これは0とすべきであり,5分の1の5万円のうち,被告の全報酬への割引率を考慮して,4万1900円が原告の損害となる。 (4) 弁護士費用被告は,自己の土地評価の誤りを認めず,改めなかったため,原告は原告代理人の弁護士に本訴追行を委任せざるを得なくなった。被告の債務不履行と相当因果関係にある弁護士費用相当の損害は,10万円である。 (被告)(1)の計算関係及び(3)の土地評価費用が25万円であったことは認める。 理由 一 d番g及びhの土地の評価 1 証拠(略)によれば,以下の事実が認められる。 (1) d番gの土地は,昭和49年12月16日に同番iの土地から分筆された土地である。d番hの土地は,同日に同番jの d番g及びhの土地の評価 1 証拠(略)によれば,以下の事実が認められる。 (1) d番gの土地は,昭和49年12月16日に同番iの土地から分筆された土地である。d番hの土地は,同日に同番jの土地から分筆された土地である。d番i及びjの土地は,同番g及びhの土地の東側に,これらの土地と接して存在する。 (2) d番g及びhの土地図面によると,この両土地は,同番e及びその南東に接して存在する同番fの土地の東側に,これらの土地と接して存在する南北に細長い形状の土地であり,この両土地は同番hを北に,同番gを南として,一連の道路状の形状の土地となっている。この両土地の東西の幅は,同図面によると22センチメートルである。 (3) 甲は,昭和49年12月18日,d番i,j,g及びhの土地の所有者と,甲所有のd番eの土地から分筆した同番kの土地を交換し,同月24日登記を経由した。d番kの土地は,同番e及びjに接して北側に存在する道路に沿った幅15センチメートルの細長い形状の土地である。 (4) d番g及びhの土地上には,平成5年9月上旬頃までは,甲の隣地(d番i及びjの土地)所有者が設置した階段が存在し,前記(3)の北側道路に通じていたが,同年10月下旬頃までには,庚により階段は撤去され,北側道路には通じなくなった。この状況は,被告が現地調査に訪れた平成7年6月13日時点でも同様であった。 2 上記認定事実によれば,d番g及びhの土地は,平成5年9月頃までは,そこに存在した階段により北側道路に通じていたもので,原告本人(陳述書を含む。(番号略)以下同じ。)が供述するように,ハイカーらがこれらの土地を通行することがあったと推認されるが,甲の相続発生時においては,階段は撤去され,北側道路には通じなくなっていたのであり,不特定多数の者が通路 )以下同じ。)が供述するように,ハイカーらがこれらの土地を通行することがあったと推認されるが,甲の相続発生時においては,階段は撤去され,北側道路には通じなくなっていたのであり,不特定多数の者が通路として利用できるような状況ではなく,その位置,形状及び周辺の状況からして,北側道路への通路でなくなれば,何人も通路として利用することはなかったものと認められる。 したがって,d番g及びhの土地は,財産評価基本通達24の不特定多数の者の通行の用に供される私道であるということはできない。 3 前記争いのない事実等8のとおり,平成6年に甲と庚との間で紛争が発生し,d番g及びhの土地についても庚が所有権を主張していたことが窺われる。階段撤去も庚によりなされたもので,原告としては,このような庚の行為は一時的なものであるので,従前の階段が存在した状況に基づき評価されるべきであると主張するのかもしれない。 しかし,甲の相続発生時点では階段撤去から既に1年以上経過しているし,甲において階段修復を予定していたとの主張・立証もないから,相続発生時の現状に基づき評価するほかないものと解される。 4 以上のとおりであり,d番g及びhの土地の評価に関する原告の主張は理由がない。 二 d番fの土地の評価 1 証拠(略)によれば,以下の事実が認められる。 (1) d番fの土地は,その北西で同番eの土地に,西で同番lの土地に,南で同番mの土地に,東で同番iの土地に接しており,これらの土地に囲まれた台形状の土地で,その南東部分は同番iの土地の南西部分を削り取る形で,南東方向に向かって三角形状に突き出している。 (2) d番lの土地は,原告の母で甲の妻である乙が所有していたが,平成7年8月に売買により原告とその夫辛に各2分の1の持分が移転登記された。同土地は, 方向に向かって三角形状に突き出している。 (2) d番lの土地は,原告の母で甲の妻である乙が所有していたが,平成7年8月に売買により原告とその夫辛に各2分の1の持分が移転登記された。同土地は,原告ら夫婦の自宅敷地となっている。 (3) d番eの土地は,甲と乙夫婦の自宅敷地となっていた。同番fの土地の北側は甲らの自宅の車庫の敷地となっている。同番mの土地は,道路状の土地であるが,平成7年6月13日の時点では,同土地とd番fの土地の境界付近には白線が引かれていた。また,d番fの土地と同番iの土地との境界付近にも,同じく白線が引かれていた。同番mの道路状の土地は,原告ら方前で行き止まりとなっている。 (4) d番iの土地の南側には同土地上の建物の車庫が存在し,同番mの土地との間には,空地部分があって,甲方の車庫と並んだ形になっている。 (5) 本件仮処分は,d番fの土地中甲方の車庫の敷地となっていない空地部分(原告主張の本件私道部分)につき,庚が,合意に基づく車両通行のための通行権を主張したが,これを認めず,紛争の経過を考慮して,権利の濫用を理由に,甲に対し通行妨害禁止を命じたものであるが,甲は仮処分異議の申立てをした。また,前記争いのない事実等8のとおり,庚に対する訴訟は和解により終了したが,d番fの土地中1.9㎡(d番fの土地の東端部分)について庚の引受参加人に通行地役権を設定するとの内容を含む和解であったことからすると,和解成立以前には,隣地(d番i)のために甲が通行権を設定したり,庚の通行を容認したことはなかったものと推認できる。 2 財産評価基本通達24の「私道の用に供されている」宅地とは,特定の者の通行の用に継続的に供されている場合を指すものと解されるところ,本件私道部分のうち,庚に対する訴訟の和解により,通行地役 。 2 財産評価基本通達24の「私道の用に供されている」宅地とは,特定の者の通行の用に継続的に供されている場合を指すものと解されるところ,本件私道部分のうち,庚に対する訴訟の和解により,通行地役権が設定された1.9㎡の土地は,d番fの土地の南東部分が同番iの土地の南西部分に突き出す形となっており,同土地上の車庫の車の出し入れに際して,少なくともこの土地を全く通行しないで車を出し入れすることが非常に不便であるため,このような和解を成立させたものと推認できる。そうすると,この1.9㎡の土地は,d番iの土地上の建物居住者(甲の相続発生時においては庚)が,継続的に車両通行のため利用していたものと推認できる。 3 原告は,本件私道部分について隣地の車両通行のためにも利用されていたと主張し,原告本人もこれに沿う供述をするが,採用できない。前記のとおり,甲は少なくとも庚の通行を容認していなかったと推認できるし,前記1で認定の現場の状況によれば,d番iの土地上の車庫から車を出し入れするについて,本件私道部分全体を通行する必要があるとは認められない。 4 原告は,d番fの土地は,固定資産課税台帳上評価対象外となっていたと主張するが,弁論の全趣旨によれば,本件土地は,財産評価基本通達11の市街地的形態を形成する地域にある宅地とみなされることが認められるから,路線価方式に基づき評価されるべきであると解され,そうとすれば,原告主張事実は本件私道部分全体を同通達24にいう私道として評価すべきことの根拠とはならない。 5 また,原告は,本件私道部分が迷った車や近隣住民のUターン場所として利用されていたと主張し,原告本人もこれに沿う供述をするが,このような状態が甲の相続発生時において常態であったとまでは認められない。さらに,登山,ジョギングコースの通り道とし 民のUターン場所として利用されていたと主張し,原告本人もこれに沿う供述をするが,このような状態が甲の相続発生時において常態であったとまでは認められない。さらに,登山,ジョギングコースの通り道として,不特定多数の者に利用されていたとも主張するが,これは,前記の撤去された階段が存在した時期のことを指すと解され,甲の相続発生時にはそのような状況はなかったものと推認できる。 6 本件仮処分により,本件私道部分の甲による利用が制限されていたということはできるが,これはあくまで仮処分に基づくもので,浮動的なものであり,このことから当然に本件私道部分全体を財産評価基本通達24の私道として評価するべきであるとはいえない。そして,前記の1.9㎡を超える部分が,継続的に庚の通行の用に供されていたとは認められないことは,前記のとおりである。 三被告の債務不履行 1 被告は,原告との間の委任契約上,税理士として,相続税のための財産評価にあたり,財産評価基本通達を含む法令に則り,依頼者のためにできるだけ有利な評価を採用するようにする注意義務があり,そのため必要な質問や調査を尽くすべき義務があるというべきである。 2 原告本人は,甲と庚との間の紛争について,被告に説明したと供述しているが,同供述も,本件仮処分の決定書等の資料を示して説明したとはしておらず,被告が原告の説明だけから庚との紛争の詳細を知ることができたとは認められない。 また,原告本人の供述によっても,d番fの土地の通行に関する争いがあることが被告に明確に伝えられたとは認められない。 前記二1で認定の現場の状況,すなわち,d番i及びfの土地に並ぶような形で車庫が存在すること,両土地の境界付近に白線が引かれていたこと,同番fの土地は南東部が同番iの土地の南西部に突き出すような形になっていたことら 現場の状況,すなわち,d番i及びfの土地に並ぶような形で車庫が存在すること,両土地の境界付近に白線が引かれていたこと,同番fの土地は南東部が同番iの土地の南西部に突き出すような形になっていたことらすると,同番iの土地上の車庫の車の出入りに同番fの土地の一部が使用される可能性があることは,全く想定不可能であったとまではいえないと考えられる。しかし,証拠(略)によれば,d番iの土地上の車庫と同番mの道路状の土地との間には空地部分があり,そのうち同番fではなく同番iに属する土地のみを通行することにより,同番iの土地上の車庫の車の出し入れをすることが不可能であるとまではいえないことが認められる。 そして,前記二のとおり,本件私道部分中1.9㎡の部分は,甲の相続発生時において庚が継続的に車の通行に使用していたと推認できるが,これは,庚に対する訴訟の和解内容を考慮した上での認定であり,しかも,その部分の面積が些少であることを考えれば,被告が現地調査に赴いた際に,現場の状況からこの些少な部分が隣地の車の通行のために使用されていることを想定することは,著しく困難であったと認められる。 したがって,被告が,1.9㎡の部分について,第三者が継続的に通行していることを想定せず,この点に関する情報を原告らを通じて得ようとしなかったことに,過失があるということはできない。原告らを通じて,この通行に関する情報を具体的に得ていなかった被告が,本件私道部分全体が甲方車庫の専用通路と判断した(被告本人)としても,その判断が不合理であるということはできない。 四結論以上の次第で,原告の請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。 神戸地方裁判所第5民事部裁判官前坂光雄 以上の次第で,原告の請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。 神戸地方裁判所第5民事部裁判官 前坂光雄
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