平成29(ワ)1272 著作権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年3月19日 札幌地方裁判所
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判決文本文13,411 文字)

(別添「楽曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」は添付省略)主文 1 被告は,札幌市i 区南j 条西k 丁目l「C」において,別添「楽曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」に記載の音楽著作物を,オーディオ装置(プレーヤー,携帯音楽プレーヤー,アンプ,スピーカー等の再生装置)を操作して録音物を再生 する方法により利用してはならない。 2 被告は,原告に対し,3万1104円及びこれに対する平成29年8月10日から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要原告は,音楽著作権等管理事業者であるところ,被告が,理容所として経営す る「C」(以下「本件店舗」という。)において,平成26年5月以降,背景音楽(BGM)として,携帯音楽プレーヤー,アンプ,スピーカー等のオーディオ装置(以下これらの装置を「再生装置」という。)を利用して,原告が著作権を管理する楽曲を再生し,原告の管理する著作権(著作権法22条1項の演奏権)を侵害したとして,被告に対し,①原告が著作権を管理すると主張する別添「楽 曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」に記載の楽曲(以下,原告が著作権を管理する楽曲を「原告の管理楽曲」といい,原告が自らの管理楽曲であると主張する別添「楽曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」に記載の楽曲を「本件各楽曲」という。)につき,本件店舗において再生装置を用いて利用することの差止め,並びに②主位的に不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に不当利得に基 づく返還請求として,平成26年5月から平成29年6月30日 き,本件店舗において再生装置を用いて利用することの差止め,並びに②主位的に不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に不当利得に基 づく返還請求として,平成26年5月から平成29年6月30日までの原告の管 理楽曲である楽曲を背景音楽(BGM)として利用したことの使用料相当額である3万1104円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成29年8月10日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 1 前提事実等(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に 認定できる事実) 当事者等ア原告は,著作権等管理事業法に基づき,文化庁長官の登録を受けた音楽著作権等管理事業者であり,著作権者から著作権ないしその支分権(演奏権,録音権,上演権等)の信託を受けてこれを管理し,音楽利用者に音楽著作物 の利用を許諾してその対価を徴収し,これを国内外の著作権者に分配することを主たる目的とする一般社団法人である。 原告は,外国の著作物についても,我が国が締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との間で相互管理契約を締結することにより,あるいは,外国の音楽出版者との間でサブパブリッシング契約を締結した日本 の音楽出版者から信託を受けることにより,著作権の管理を行っている。 イ被告は,平成17年6月28日,札幌市i 区南j 条西k 丁目l に広さ33㎡の理容所である本件店舗を開店し,現在,本件店舗において,理容の業務を行っている(甲5,6の2)。 事実経過等 ア被告は,平成17年6月28日に本件店舗を開店して以降,本件店舗の営業時間中に,本件店舗のBGMとして,再生装置を用いて楽曲を再生していた(甲5,6の2)。 イ原告 経過等 ア被告は,平成17年6月28日に本件店舗を開店して以降,本件店舗の営業時間中に,本件店舗のBGMとして,再生装置を用いて楽曲を再生していた(甲5,6の2)。 イ原告は,平成27年6月10日,札幌簡易裁判所に対し,被告を相手方とする民事調停の申立てを行い,被告が本件店舗のBGMとして原告の管理楽 曲を利用したことについての使用料相当額の支払及び原告の管理楽曲を本 件店舗のBGMとして再生することの差止めを求め,同年7月14日に第1回の調停期日が開かれたものの,同日,調停不成立により終了した(以下「本件調停」という。甲9,11)。 ウ原告の従業員は,平成29年3月24日,同月29日,同年4月25日,同月27日,同年5月29日,同年6月1日,同月28日,同月29日に, それぞれ本件店舗に来店し,原告の従業員であること等を秘して,被告から髪のカット等を受けるとともに,本件店舗で再生されているBGMの楽曲について実態調査を実施したところ(以下,これらの原告の従業員が行った実態調査を併せて,「本件各実態調査」という。),同年3月29日に行った際のBGMとして再生されていた楽曲に,原告の管理楽曲が含まれていることが 判明した(なお,同日以外の本件各実態調査の際にBGMとして利用されていた楽曲に,原告の管理楽曲が含まれていたか否かは,当事者間に争いがある。甲6の1~8)。 2 争点 本件各楽曲が原告の管理楽曲であるか(以下「争点1」という。) 被告が本件店舗で原告の管理楽曲を再生していたか(以下「争点2」という。) 被告の故意又は過失(以下「争点3」という。) 原告の損害又は損失の額(以下「争点4」という。) 3 争点に対する当事者の主張 争点1( 生していたか(以下「争点2」という。) 被告の故意又は過失(以下「争点3」という。) 原告の損害又は損失の額(以下「争点4」という。) 3 争点に対する当事者の主張 争点1(本件各楽曲が原告の管理楽曲であるか)について (原告の主張)本件各楽曲は,原告の管理楽曲から,社交飲食店等において多く利用されている楽曲(別添「楽曲リスト」),並びに本件店舗において実際に利用された楽曲及び今後利用される可能性が高い楽曲(別添「楽曲リスト(追録)」)を,それぞれ原告の作品データベースから抽出し,リスト化したものであり,全て原 告の管理楽曲である。 (被告の主張)ア本件各楽曲が,原告の管理楽曲であることは,否認する。 イ本件各楽曲の一部について,Eのウェブサイト(以下「第三者サイト」という。)上では,著作権行使の対象とはならない旨を表すマーク(パブリックドメイン又はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのマーク。以下「本件 マーク」という。)が付されている。また,本件各楽曲の一部の楽曲がアップロードされてインターネットで全世界に配布されているにもかかわらず,数年間にわたり著作権管理団体から差止めを受けていないことなどからすると,本件各楽曲が原告の管理楽曲であることは疑わしい。 争点2(被告が本件店舗で原告の管理楽曲を再生していたか)について (原告の主張)ア原告が,本件各実態調査の際に,本件店舗のBGMとして再生されていた楽曲の著作権について調査したところ,曲目が判明した全319曲のうち,275曲が原告の管理楽曲であり,平成29年3月29日以外の実態調査の際にも,原告の管理楽曲が多数利用されていた。 イ被告は,平成26年5月22日, 曲目が判明した全319曲のうち,275曲が原告の管理楽曲であり,平成29年3月29日以外の実態調査の際にも,原告の管理楽曲が多数利用されていた。 イ被告は,平成26年5月22日,原告が店舗における音楽の利用状況の調査を委託している株式会社F(現在の商号は,「G株式会社」である。)の電話オペレーターに対し,1930年代から1940年代の音楽を利用している旨を述べている。被告が,本件店舗でBGMとして利用していた楽曲は,主にジャズであったと考えられるところ,本件各実態調査の際に 被告がBGMとして再生していた楽曲のうち,1930年代及び1940年代のジャズの楽曲が245曲あったが,うち208曲が,原告の管理楽曲であった。 また,被告は,平成27年2月24日,原告の従業員に対し,Hの楽曲を利用している旨を述べ,同年4月22日,原告の従業員が本件店舗に訪 問した際に,本件店舗のBGMとしてIの楽曲を再生しており,同年6月 21日付けで,本件調停における答弁書にJの楽曲を利用している旨を記載して,札幌簡易裁判所に提出している。しかし,H,I又はJが,アーティスト名又は著作者として登録されている全楽曲のうち,90%以上が原告の管理楽曲である。 以上によれば,被告は,平成26年5月以降,本件店舗のBGMとして, 一貫して原告の管理楽曲を利用していたというべきである。 (被告の主張)ア被告が,原告の従業員による2回目の実態調査の日である平成29年3月29日に原告の管理楽曲をBGMとして利用していたことは認めるが,これは,店舗用の再生装置をパソコン上で操作していたため,私物の再生装置を 使用していたことに基づくものである。 同日以外の本件各実態調査時に,被告が本件店舗のBGMとして再 ことは認めるが,これは,店舗用の再生装置をパソコン上で操作していたため,私物の再生装置を 使用していたことに基づくものである。 同日以外の本件各実態調査時に,被告が本件店舗のBGMとして再生していた楽曲に原告の管理楽曲が含まれていたことは否認する。被告は,著作権の消滅した楽曲を選定して,本件店舗のBGMとして利用しており,原告の管理楽曲を利用したことはない。 イ被告は,本件店舗で再生するための楽曲を,第三者サイト等の自由に楽曲をダウンロードできるサイトからダウンロードしていたこと,第三者サイトには,著作権が消滅したことを表す本件マークが付されていることなどからすれば,被告が本件店舗のBGMとして利用していた楽曲は,原告の管理楽曲ではない。 争点3(被告の故意又は過失)について(原告の主張)ア原告は,平成26年5月22日以降,被告に対して,原告の管理楽曲を利用していること及び使用料相当額の支払を求め,利用許諾契約の締結を求めていたにもかかわらず,被告は,本件店舗のBGMとして,原告の管理楽曲 を利用し続けていたのであるから,被告には,故意又は過失が認められると いうべきである。 イ被告は,原告に対し,本件店舗のBGMとして利用している楽曲について,著作権の管理状況等の説明を求めたにもかかわらず,原告が何の説明もしなかったと主張するが,原告は,被告から本件店舗のBGMとして再生している楽曲の著作権者について説明を求められた際,ほとんどが原告の管理楽曲 である旨を繰り返し説明している。 (被告の主張)ア争う。 イ被告は,原告に対し,本件店舗のBGMとして利用している楽曲の著作権の管理状況等の説明を求めて話し合いに応じる意思を伝えているにもかか し説明している。 (被告の主張)ア争う。 イ被告は,原告に対し,本件店舗のBGMとして利用している楽曲の著作権の管理状況等の説明を求めて話し合いに応じる意思を伝えているにもかか わらず,原告からは何の説明もなかった。また,被告は,本件調停の期日で,本件店舗のBGMとして利用している楽曲のリスト及び再生装置を持参し,原告の管理楽曲であるか否かの確認を求めたにもかかわらず,原告はこれらの楽曲が原告の管理楽曲であること等の調査をせず,原告の管理楽曲が含まれている旨の説明をしなかった。 このように被告は,本件店舗のBGMとして利用していた楽曲の著作権の管理状況について,原告に説明を求めるなどしているにもかかわらず,原告からは何の説明もなかったのであるから,仮に本件店舗のBGMとして利用していた楽曲に原告の管理楽曲が含まれていたとしても,被告に過失はない。 争点4(原告の損害又は損失の額)について (原告の主張)本件店舗で原告の管理楽曲をBGMとして利用する際に必要な使用料は,平成28年4月30日まで適用される使用料規程(以下「旧規程」という。)によると,年額6000円であり,平成28年5月1日以降に適用される使用料規程(以下「新規程」という。)によると,月額1200円である(なお,新規程 の年額使用料は,無許諾利用者に対しては適用されないため,本件で新規程の 年額使用料を基に使用料相当額を算定するのは相当でない。)。 したがって,原告は,被告が,平成26年5月から平成29年6月30日までの間,本件店舗のBGMとして原告の管理楽曲を利用していたことにより,以下のとおり,合計3万1104円の損害又は損失を被ったというべきである。 ア平成26年5月から 平成29年6月30日までの間,本件店舗のBGMとして原告の管理楽曲を利用していたことにより,以下のとおり,合計3万1104円の損害又は損失を被ったというべきである。 ア平成26年5月から平成28年4月30日までの2年間 6000円(旧規程の年額使用料)×2年×1.08(消費税相当額)=1万2960円イ平成28年5月1日から平成29年6月30日までの14か月1200円(新規程の月額使用料)×14か月×1.08(消費税相当額)=1万8144円 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件各楽曲が原告の管理楽曲であるか)についての判断 原告は,本件各楽曲について,原告の管理楽曲の作品データベースから,社 交場や飲食店等において日常的に反復継続して利用されている主要な楽曲(別添楽曲リスト),並びに被告が本件店舗のBGMとして利用した原告の管理楽曲及びこれを基に他に利用される可能性が高い管理楽曲を抽出したもの(別添楽曲リスト(追録))であると主張し,原告の北海道支部の支部長であるK(Kの陳述書である甲7,13及び証人Kを併せて「K証言」という。)は,これ に沿う証言をしている。 原告が著作権等管理事業法に基づいて文化庁長官の登録を受けた音楽著作権等管理事業者であることなどからすると,本件各楽曲を抽出したという原告の管理楽曲の作品データベースは,一般的に信用性が高いと考えられるのであって,具体的にその信用性を疑わせるような事情が存在しない限り,同データ ベースから抽出された本件各楽曲は,原告の管理楽曲であると認められるとい うべきである。 この点,被告は,本件各楽曲の一部の楽曲について,第三者サ な事情が存在しない限り,同データ ベースから抽出された本件各楽曲は,原告の管理楽曲であると認められるとい うべきである。 この点,被告は,本件各楽曲の一部の楽曲について,第三者サイト上で著作権が消滅したことを表す本件マークが付されていることを理由に,本件各楽曲が原告の管理楽曲であることを争っている。そこで,以下,第三者サイトにおける本件マークの信用性について検討する。 ア第三者サイトは,米国の非営利団体が,音楽等のデータを蓄積し,世界中の人がこれを利用できるようにすることを目的に作成されたデジタルライブラリであるところ,同サイトには,「当サイトのコレクションに投稿されている素材の著作権に関して,厳格な保証を与えることはできません。」,「著作権その他の知的所有権に関するコレクション・ページについて,投稿 されている情報を保証することはできません。」との記載や,「適切な状況において自由裁量により,他者の著作権又はその他の知的所有権の侵害が疑われるコンテンツを削除,又はコンテンツへのアクセスを遮断することができます。」との記載がある(甲19)。すなわち,第三者サイト上に本件マークが付されているとしても,同サイトを運営する非営利団体が,著作権が 消滅し,いわゆるパブリックドメインに属するものであることを,厳密に保証するものではない。 イまた,第三者サイトは,アカウント登録を行えば誰でも楽曲をアップロードすることができ,その際にアップロードした者が本件マークを付する旨の選択を行えば,楽曲に本件マークが付されることとなるものであるから(甲 19),本件マークは,当該楽曲の著作権の消滅の有無を確認することなしに,付される可能性があるものである。 ウさらに,我が国の著作権は,著作者 が付されることとなるものであるから(甲 19),本件マークは,当該楽曲の著作権の消滅の有無を確認することなしに,付される可能性があるものである。 ウさらに,我が国の著作権は,著作者が死亡した日の属する年の翌年から起算して50年を経過するまでの間存続するとされるが(著作権法51条2項,57条),我が国が太平洋戦争中に連合国民の著作権を保護しなかったこと に対する代償措置として,連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律 により,いわゆる戦時加算が定められており,戦争当時に米国民が有していた著作権については,その保護期間が3794日(約10年5か月)延長されることから,著作者の死亡から50年が経過した楽曲であっても,我が国においては,著作権の保護期間はなお満了していない場合があることになる。 被告は,本件各楽曲の一部に,第三者サイト上で本件マークが付されている ものがあるとして,本件各楽曲には原告が著作権の管理を委託されていない楽曲が含まれており,信用できないと主張するが,上記検討したところによれば,むしろ被告の主張に理由がないといわざるを得ず,本件各楽曲は,原告の管理楽曲であると認めるのが相当である。 2 争点2及び争点3について 認定事実前記前提事実,証拠(K証言及び被告本人並びに掲記の証拠。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる。 ア被告の本件店舗における楽曲の再生状況被告は,平成17年6月28日に本件店舗を開店して営業を開始して以降, 主にジャズの楽曲を,本件店舗のBGMとして再生していた。被告は,本件店舗のBGMとして利用する楽曲を,第三者サイト等のウェブサイトから楽曲をダウンロードして店舗用の携帯音楽プレーヤーに取り込み, 主にジャズの楽曲を,本件店舗のBGMとして再生していた。被告は,本件店舗のBGMとして利用する楽曲を,第三者サイト等のウェブサイトから楽曲をダウンロードして店舗用の携帯音楽プレーヤーに取り込み,これをアンプに接続することで再生していた。 原告は,遅くとも平成26年5月時点では,「L」の名称で,原告のウェ ブサイト上に原告の管理楽曲の作品データベースを公開していたが,被告は,本件店舗のBGMとして利用する楽曲の著作権について,同ウェブサイトを利用して調査したことはなく,ダウンロード元のウェブサイト上でダウンロードする楽曲に本件マークが付されているか否かを確認する程度しかしなかった(甲6の1~8)。 イ事実経過等 原告から,店舗における音楽の利用状況の確認業務の委託を受けた株式会社Fが,平成26年5月22日,本件店舗に電話をかけたところ,被告は,著作権が消滅している1930年代から1940年代の音楽を利用しているため,原告との間での利用許諾契約等の手続は必要ない旨を述べた(甲17)。 平成27年2月24日,原告の従業員が本件店舗に電話をして,利用状況を聴取して利用許諾契約の締結を求めたところ,被告は,Hの楽曲を繰り返し流している旨を述べ,原告の従業員が,被告に対し,Hの楽曲が原告の管理楽曲である旨を伝え,原告の管理楽曲を利用するための利用許諾契約を締結することを求めたところ,被告は,今後は著作権の消滅してい る楽曲のみを利用する旨を述べ,利用許諾契約の締結を拒否した(甲17)。 平成27年4月22日,原告の従業員が本件店舗を訪問した際に,本件店舗のBGMとしてIの楽曲が再生されていたため,被告に対し,Iの楽曲のほとんどは,原告の管理楽曲である旨を説明し,原 。 平成27年4月22日,原告の従業員が本件店舗を訪問した際に,本件店舗のBGMとしてIの楽曲が再生されていたため,被告に対し,Iの楽曲のほとんどは,原告の管理楽曲である旨を説明し,原告の管理楽曲を利用するための利用許諾契約の締結を求めたが,被告は,著作権が消滅して いる古い曲もあるなどとして,これを拒否した(甲17)。 原告は,平成27年5月15日,被告に対し,本件店舗で原告の管理楽曲をBGMとして利用しているとして,平成26年6月から平成27年5月までの間,無許諾で原告の管理楽曲を利用した使用料相当額の支払と,原告の管理楽曲の利用許諾契約の締結を求める書面を送付したが,被告は, これに応じなかった(甲8の1)。 原告は,平成27年6月10日,被告に対し,平成26年6月から平成27年5月までの使用料相当額の支払及び本件店舗で原告の管理楽曲をBGMとして利用しないことを求めて,本件調停を申し立てた。被告は,同月23日,札幌簡易裁判所に対し,本件店舗においては,Jなどの著作 権の切れた楽曲を利用しているなどとして,原告の申立てについて一切応 じるつもりがなく,一銭たりとも支払に応じられない旨を記載した答弁書を提出し,同年7月14日,本件調停は,第1回期日で不成立終了となった(甲9~11)。 原告は,平成29年3月16日,同年5月8日及び同年6月15日,被告に対し,被告が原告の管理楽曲を本件店舗のBGMとして利用している として,無許諾で原告の管理楽曲を利用した使用料相当額の支払と原告の管理楽曲の利用許諾契約の締結を求める書面を送付したが,被告はこれに応じなかった(甲8の1,2,甲12)。 a 原告の従業員は,平成29年3月24日,同月29日,同年4月 当額の支払と原告の管理楽曲の利用許諾契約の締結を求める書面を送付したが,被告はこれに応じなかった(甲8の1,2,甲12)。 a 原告の従業員は,平成29年3月24日,同月29日,同年4月25日,同月27日,同年5月29日,同年6月1日,同月28日及び同月 29日,本件店舗に来店し,本件各実態調査を実施した(甲6の1~8)。 b 被告は,平成29年3月29日の原告による実態調査の際,店舗用の再生装置ではなく,私物の再生装置を用いて,主にロックンロールの楽曲をBGMとして再生していたが,同日を除く本件各実態調査の際には,店舗用の再生装置を用いて,主にジャズの楽曲をBGMとして再生して いた(甲6の1~8)。 争点2(被告が本件店舗で原告の管理楽曲を再生したか)についての判断ア原告は,a)の際に,本件店舗のBGMとして再生されていた楽曲には,原告の管理楽曲が含まれていたと主張し,本件各実態調査の際に被告がBGMとして再生していた楽曲の中で,曲目の判明し たもののうち,86.2%が原告の管理楽曲であったとのK作成に係る報告書を提出している(甲17)。 上記の調査結果は,本件店舗のBGMとして再生されていた楽曲を原告の作品データベースと対照させることで,原告の管理楽曲であるか否かを判断したものと解されるところ,原告の作品データベースが信用できるものであ ることは前記1のとおりであるから,本件各実態調査の際にBGMとして利 用されていた楽曲には,原告の管理楽曲が含まれていたことが認められる。 イまた,被告は,平成26年5月22日,株式会社Fの電話オペレーターに対し,1930年代から1940年代の音楽を利用している旨を説明しているところ,本件各実態調査の際に とが認められる。 イまた,被告は,平成26年5月22日,株式会社Fの電話オペレーターに対し,1930年代から1940年代の音楽を利用している旨を説明しているところ,本件各実態調査の際に再生されていた楽曲の中で曲目の判明した全319曲のうち,1930年代及び1940年代の楽曲は 245曲であり,うち原告の管理楽曲は,208曲に及んでいたことが認められる(甲17,K証言)。 また,被告は,平成27年2月24日,原告の従業員に対し,本件店舗のBGMとしてHの楽曲を利用している旨を述べ,同年4月24日には,本件店舗のBGMとしてIの楽曲を再生し,同年 6月23日には,札幌簡易裁判所に対し,本件調停において,Jなどの楽曲を利用している旨を)ところ,H,I及びJが,アーティスト名又は著作者名として登録されている全楽曲661曲のうち,610曲が原告の管理楽曲であると認められる(甲17,K証言)。 さらに,被告は,本件店舗でBGMとして再生する楽曲を,第三者サイト等のウェブサイトからダウンロードしていたところ,第三者サイトに本件マークが付されているからといって,原告の管理楽曲に当たらないといえないことは前記1のとおりであるから,被告は,継続的に原告の管理楽曲を,本件店舗でBGMとして再生していたものと認めるのが相当である。 ウ我が国においては,昭和9年改正の旧著作権法30条1項8号において,レコード等の適法な複製物を用いた演奏は,出所を明示すれば,著作権侵害にならない旨が定められ,昭和45年の著作権法改正の際にも,著作権法附則14条が置かれ,適法に録音された音楽の著作物の演奏の再生については,放送や,音楽を鑑賞させる営業等を除き,当分の間,旧著作権法30条1項 8号は効力を有するとされ 改正の際にも,著作権法附則14条が置かれ,適法に録音された音楽の著作物の演奏の再生については,放送や,音楽を鑑賞させる営業等を除き,当分の間,旧著作権法30条1項 8号は効力を有するとされたため,長年にわたり,一般的な店舗等で,適法 に取得したレコードやCDをBGMとして再生することは,著作権侵害には当たらないとされてきた。 しかしながら,国際的な著作権保護のための条約との整合性の観点から,平成11年の著作権法改正の際に,著作権法附則14条が廃止されたため(平成12年1月1日施行),以後,この問題は,公表された著作物は,営 利を目的とせず,かつ,聴衆又は観衆から料金を受けない場合には,公に演奏等することができるとする現行著作権法38条1項により規律されることになり,同項にいう営利目的には,楽曲の再生により利用者の満足度を高めるなど,間接的に事業を促進する場合も含まれると解されるから,平成12年以降,店舗のBGMとして楽曲を再生する等の行為は,著作者の許諾が なければ,著作者が専有する演奏権(著作権法22条1項)の侵害に当たることとなった(なお,特別な再生装置によらず,通常の家庭用受信装置を用いてラジオ等の放送をそのまま伝達する場合には,同法38条3項後段により,店舗におけるBGM利用であっても,著作権侵害とはならない。)。 エしたがって,平成26年5月以降,被告が,理容業を営む本件店舗のBG Mとして,原告の許諾を得ずに原告の管理楽曲を再生したことは,原告が管理する著作権を侵害したことになる。 争点3(被告の故意又は過失)についての判断ア上記1のとおり,第三者サイトにアップロードされている楽曲が,著作権行使の対象でないことの明確な保証はなく,第三者サイトにもその る。 争点3(被告の故意又は過失)についての判断ア上記1のとおり,第三者サイトにアップロードされている楽曲が,著作権行使の対象でないことの明確な保証はなく,第三者サイトにもその旨明記さ れているにもかかわらず,被告は,原告のウェブサイト等によって本件店舗のBGMとして利用する楽曲の著作権について調査しないまま,本件店舗のBGMとして,原告の管理楽曲を利用したのであるから,被告には,平成26年5月以降,原告の管理する著作権を侵害したことについて,過失があるというべきである。 イ被告は,被告が利用していた楽曲の著作権の管理状況等について,原告に 説明を求めたにもかかわらず,原告から何の説明もなかったとして,被告には過失がない旨を主張するが,前記張を認めることは困難というべきであるし,店舗で楽曲をBGMとして再生する以上,自ら権利関係については調査をしなければならないのであって,仮に原告の説明に不十分な点があったとしても,被告は過失を免れるもので はない。 3 争点4(原告の損害又は損失の額)についての判断 原告の使用料規程の定め原告は,原告の管理する著作物の利用に関して使用料規程を定め,これを著作権等管理事業法13条1項に基づいて文化庁長官に届け出ており,かかる原 告の使用料規程には,店舗におけるBGMの利用に関し,以下のとおりの定めがある。 ア店舗におけるBGMの利用に関し,平成28年4月30日まで適用される使用料規程(旧規程)では,面積が500㎡までの店舗等で,年額使用料が イ店舗におけるBGMとしての楽曲の利用に関し,平成28年5月1日まで適用される使用料括的利用許諾契約を結ぶ場合の使用料として,面積が500㎡までの店 の店舗等で,年額使用料が イ店舗におけるBGMとしての楽曲の利用に関し,平成28年5月1日まで適用される使用料括的利用許諾契約を結ぶ場合の使用料として,面積が500㎡までの店舗等で,年額使用料が600使用料として,面積が500㎡までの店舗等で,月額使用料が1200円とされている(甲4,第2章第12節 1)。 原告の損害ア前記被告は,平成26年5月以降,原告の管理楽曲を本件店舗のBGMとして利用していたことが認められるところ,被告が,原告の管理楽曲を本件店舗のBGMとして利用するためには,原告との間で利用許 諾契約を締結し,原告に対して所定の使用料を支払う必要がある。そして, 原告の定めた使用料規程は,著作権等管理事業法13条1項に基づいて文化庁長官に届けられたものであることなどに照らすと,相当な金額を定めたものと認められるから,被告が,本件店舗において,平成26年5月以降,原告の管理楽曲を許諾なくBGMとして利用していたことにより,原告は,使用料規程に定める使用料相当の損害を負ったというべきである。 イそして,本件店舗は,前記前提事実のとおり,33㎡の広さの店舗であるから,被告が,原告の管理楽曲を本件店舗のBGMとして再生したことによって原告が被った使用料相当損害金の額は,平成26年5月から平成28年4月30日までについては,旧規程に基づき,1万2960円(6000円×2年×1.08(消費税相当額))と認められ,平成28年5月1日から 平成29年6月30日までについては,新規程に基づき,1万8144円(1200円(月額使用料)×14か月×1.08)と認められる(なお,新規程には,年額使用料の定めがあるが,これは年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合にのみ適用 いては,新規程に基づき,1万8144円(1200円(月額使用料)×14か月×1.08)と認められる(なお,新規程には,年額使用料の定めがあるが,これは年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合にのみ適用されるものであり,本件で,原告が被った損害について,新規程における年額使用料を適用するのは相当でない。)。 4 結論前記2,被告は,平成26年5月以降,本件店舗において,再生装置を用いて原告の管理楽曲をBGMとして利用し,原告の管理する著作権を侵害していたことが認められ,被告が,原告との間で利用許諾契約を締結することを拒否し,使用料相当額の支払の求めにも応じないことからすると,今後も, 再生装置を用いることにより,本件店舗のBGMとして本件各楽曲を再生し,原告の著作権を侵害するおそれはあると認められる。したがって,被告に対し,本件店舗で再生装置を使用することによって,本件各楽曲を利用することの差止めを求める原告の請求は,理由がある。 また,上原告の管理楽曲を本件 店舗のBGMとして再生していたことには過失が認められ,これにより,上記3 のとおり,原告に合計3万1104円の損害を与えたと認められるから,被告に対し,不法行為に基づき,3万1104円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年8月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求も,理由がある。 第4 結論 以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官向井宣人 裁判官 訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 主文 札幌地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官向井宣人 裁判官川口寧

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