- 1 -令和元年9月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(行ウ)第287号難民不認定処分取消等請求事件口頭弁論終結日令和元年7月9日判決 主文 1 法務大臣が平成24年10月25日付けで原告に対してした難民の認定をしない旨の処分を取り消す。 2 法務大臣は,原告に対し,出入国管理及び難民認定法61条の2第1項の規定による難民の認定をせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 本件は,イラン・イスラム共和国(以下「イラン」という。)の国籍を有 する外国人の男性である原告が,法務大臣に対し,難民の認定の申請(以下「本件難民認定申請」という。)をしたところ,法務大臣から,難民の認定をしない旨の処分(以下「本件難民不認定処分」という。)を受けたことから,原告は,①イスラム教からキリスト教への改宗者であり,イランにおいて迫害を受けるおそれが高いこと及び②2007年(平成19年)6月にテ ヘランにおいてガソリンの配給制に反対する抗議デモに参加したことなどの事情からすれば,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)2条3号の2並びに難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)1条及び難民の地位に関する議定書(以下「難民議定書」という。)1条にいう「難民」であると主張して,本件難民不認定処分の取消し及び原告を難民 と認定することの義務付け(以下「本件義務付けの訴え」という。)を求め - 2 -る事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実か,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 原告の身分事項等ア 」という。)を求め - 2 -る事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実か,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 原告の身分事項等ア原告は,●年(昭和●年)●月●日,イランにおいて出生したイラン の国籍を有する外国人の男性である(乙1)。 イ A(以下「原告妻」という。)は,原告の妻であり,イランのテヘランに居住していたが,平成26年3月に本邦に入国し,以後は原告と同居して生活している(甲29,30)。 ⑵ 原告の入国及び在留の状況 ア原告は,平成19年7月18日,関西国際空港に到着し,大阪入国管理局関西空港支局入国審査官から,在留資格を「短期滞在」とし,在留期間を「30日」とする上陸許可を受けて本邦に上陸した(乙1)。 イ原告は,同年10月17日,在留資格を「特定活動」とし,在留期間を「3月」とする在留資格変更許可を受け,以後,平成30年3月28 日まで在留期間の更新又は在留資格の変更をし続けていたが,同年7月20日に在留期間更新許可申請をしたものの,同年9月26日に不許可処分を受け,同日以後も本邦に残留している(乙1)。 ⑶ 1回目の難民認定申請についてア原告は,平成19年8月21日,法務大臣に対し,①政府のガソリン 政策に反対して人々が抗議運動を行った際に自分もその抗議運動に参加したこと及び②本邦でキリスト教の教会に出入りし教会で改宗したことを迫害を受ける具体的な理由又は根拠として挙げ,難民の認定の申請(以下「1回目の難民認定申請」という。)をした(乙15)。 イ法務大臣は,平成21年7月28日,1回目の難民認定申請につき, 難民の認定をしない旨の処分(以下「1回目の難民不認定処分」とい - 3 -う。) 請」という。)をした(乙15)。 イ法務大臣は,平成21年7月28日,1回目の難民認定申請につき, 難民の認定をしない旨の処分(以下「1回目の難民不認定処分」とい - 3 -う。)をし,同年8月6日,原告に対し,その旨を通知した(乙17)。 ウ原告は,同年8月6日,法務大臣に対し,1回目の難民不認定処分に不服があるとして,異議申立て(平成26年法律第69号による改正前の入管法61条の2の9によるもの。以下同じ。)をしたが,法務大臣は,平成23年5月12日,異議申立てを棄却する旨の決定(以下「1 回目の異議棄却決定」という。)をし,同月23日,原告に対し,その旨を通知した(乙18,21)。 エ原告は,1回目の異議棄却決定に不服があるとして1回目の難民不認定処分の取消し及び1回目の異議棄却決定の取消しを求める訴えを提起したが,東京地方裁判所は,平成24年10月3日,要旨,一般的にみ て,イランにおいて,イスラム教から改宗したキリスト教徒の全てが,改宗したことのみを理由に,イラン当局によって逮捕,訴追等がされる蓋然性が高いとまでは認められず,原告は,イランにおいても本邦においても,他者に対し,自らの信仰を積極的に示したり,布教や入信の勧誘をしたことがないのであって,イランにおけるイスラム教からキリス ト教に改宗した者に係る一般的状況を前提とすれば,原告が,イランにおいて,本邦でイスラム教からキリスト教に改宗したことのみを理由に,イラン当局によって逮捕,訴追等がされる蓋然性が高いとまでは認め難いこと及び原告はガソリン配給制反対のデモにおいて,大勢の中の一人としてデモに参加したにとどまるというべきであり,原告がデモに参加 したこと自体により,イラン当局が殊更に原告に関心を寄せるとまでは認め難いこと ソリン配給制反対のデモにおいて,大勢の中の一人としてデモに参加したにとどまるというべきであり,原告がデモに参加 したこと自体により,イラン当局が殊更に原告に関心を寄せるとまでは認め難いことなどを理由に,原告が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような客観的事情が存するとまでは認め難いとして,原告の請求をいずれも棄却する旨の判決(以下「前回地裁判決」という。)をした(乙11)。 オ原告は,前回地裁判決を不服として控訴したが,東京高等裁判所は, - 4 -平成25年4月24日,控訴を棄却する旨の判決(以下「前回高裁判決」といい,前回地裁判決と併せて「前回判決」という。)をした(乙12)。 カ原告は,前回高裁判決を不服として上告及び上告受理申立てをしたが,最高裁判所は,同年9月12日,上告を棄却するとともに,上告審とし て受理しない旨の決定をした(乙13)。 ⑷ 2回目の難民認定申請(本件難民認定申請)についてア原告は,平成24年4月24日,法務大臣に対し,①イラン政府の政治体制に反対しており,ガソリンの高騰に反対する抗議運動に参加し,ガソリンスタンドに火をつけたところをビデオに撮られ,当局に訴追さ れていること及び②本邦でキリスト教プロテスタントの信仰を持つようになり洗礼を受け,イランでアフマドネジャード大統領がキリスト教に対する迫害を行っていることを迫害を受ける具体的な理由又は根拠として挙げ,難民の認定の申請(本件難民認定申請)をした(乙2)。 イ法務大臣は,同年10月25日,本件難民認定申請につき,難民の認 定をしない旨の処分(本件難民不認定処分)をし,平成25年2月28日,原告に対し,その旨を通知した(乙4)。 ウ原告は,法務大臣に対し,同年3月4日 本件難民認定申請につき,難民の認 定をしない旨の処分(本件難民不認定処分)をし,平成25年2月28日,原告に対し,その旨を通知した(乙4)。 ウ原告は,法務大臣に対し,同年3月4日,本件難民不認定処分に不服があるとして,異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をしたが,法務大臣は,平成30年5月31日,本件異議申立てを棄却する旨 の決定(以下「本件決定」という。)をし,同年6月15日,原告に対し,その旨を通知した(乙5,10)。 ⑸ 本件訴訟の提起原告は,平成30年7月19日,本件難民不認定処分の取消し及び原告を難民と認定することの義務付けを求めて本件訴訟を提起した(当裁判所 に顕著)。 - 5 -⑹ 3回目の難民認定申請について原告は,平成30年7月20日,法務大臣に対し,難民の認定の申請をした(弁論の全趣旨)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,原告が難民に該当するか否かであり,争点に関する当事者 の主張の要旨は以下のとおりである。 (原告の主張の要旨)⑴ 難民の解釈についてア難民条約の前文の文言からすれば,難民条約は,難民の受入れの負担が特定の国に集中しないよう条約加盟国が平等に難民を受け入れること を求めているのであり,特定の国が他の加盟国と比べて各段に厳しい解釈を採用することは難民条約の前文の理念に反することとなる。このことは,難民条約が国際条約であることから当然の帰結であって,難民の定義の解釈において,本邦の裁判例のみを参考とすることは狭きに失するのであり,他の加盟国の解釈基準や条約適用の監督機関である国際連 合難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)の意見等を踏まえ,他の加盟国と協調した認定基準を採用しなければ きに失するのであり,他の加盟国の解釈基準や条約適用の監督機関である国際連 合難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)の意見等を踏まえ,他の加盟国と協調した認定基準を採用しなければならない。 イまた,難民は,受入国の認定手続を経ることによって難民となるのではなく,難民条約1条の実体的要件を満たせば直ちに難民となるのであって,どの加盟国に入国して庇護を求めるかにかかわらず,難民として 保護がなされなければならない。 ⑵ 「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」について「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」について,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いている主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くよう な客観的な事情が存在していることが必要ではあるが,UNHCR駐日事 - 6 -務所発行の「難民認定基準ハンドブック-難民の地位の認定の基準及び手続に関する手引き-(改訂版)」(以下「ハンドブック」という。)の記載や諸外国の裁判例からすれば,「単に迫害を受けるおそれがあるという抽象的な可能性が存するにすぎないといった事情では足りず,当該申請者について迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような個別かつ具体 的な事情が存することが必要」であるとはいえず,客観的な状況が証拠により裏付けられることによる合理的な可能性があれば足りると解すべきである。 ⑶ 立証の程度についてア難民該当性についての立証の程度は,迫害を受ける恐れがあるという 十分に理由のある恐怖について「合理的な可能性」があれば足りるというべきであり,合理的な疑いを容れることができないほどの高度の蓋然性があるものでなければならないと解すべき る恐れがあるという 十分に理由のある恐怖について「合理的な可能性」があれば足りるというべきであり,合理的な疑いを容れることができないほどの高度の蓋然性があるものでなければならないと解すべきではない。難民認定手続においては,難民の生命・身体の自由など極めて重要な法益が保護法益となっており,仮に誤判が起きて本国に送還された場合に侵害される保護 法益は重大かつ回復不可能なものである。この点で,損害の事後回復を求める訴訟とは立証の程度は異なるというべきである。 イハンドブック及びUNHCRが平成16年に東京弁護士会に対して提出した「難民の定義の解釈に関する国際連合難民高等弁務官事務所の助言的意見」においても,難民申請者の抱く恐怖は,出身国に戻るならば 耐え難くなるであろうことを申請人が合理的な程度に立証すれば十分に根拠があるとみなされるべきと記載されており,諸外国の裁判例も合理的な疑いを超える立証を求めているとはいえない。 ⑷ 原告の難民該当性についてア原告が誠実なキリスト教改宗者であること 原告は,テヘランにおいてタクシー運転手として稼働していたとこ - 7 -ろ,平成18年頃,韓国人の乗客からペルシャ語で書かれた聖書を渡され,これを自宅で隠れて読むうちにキリストの教えに興味を持ち,キリスト教を信仰するようになった。 原告は,平成19年7月18日に本邦に上陸したが,同年9月頃から自宅近くにあるB教会の礼拝へ通うようになり,キリスト教を学ぶ 入門プログラムを半年ほど受け,平成20年3月23日にB教会で洗礼を受けた。また,原告は,洗礼を受けた後も,B教会で毎週日曜日に行われる礼拝に通い,礼拝参加者同士が行う祈る会や教会の掃除などの奉仕活動をしたほか,クリ ほど受け,平成20年3月23日にB教会で洗礼を受けた。また,原告は,洗礼を受けた後も,B教会で毎週日曜日に行われる礼拝に通い,礼拝参加者同士が行う祈る会や教会の掃除などの奉仕活動をしたほか,クリスマス礼拝,牧師宅での集い,信徒の結婚式などの特別な行事に参加し,B教会の上部団体であるC教会の 信徒大会にも出席しており,来日してから11年以上B教会に通っている。 原告は,イランで大学講師の経験を持ち,ペルシャ語が堪能である「D」という教会のE牧師と知り合い,平成23年頃から1年程度E牧師と聖書の研究を行うようになり,その後は「D」にも通うように なった。また,原告は,原告妻が来日した後は同人を教会に連れていくようになったほか,知人であるイラン人をB教会に連れて行ったり,E牧師に紹介したりしたことがあり,B教会の教会員と共に,クリスマスに老人ホームを訪問して讃美歌を歌ったりするなどの活動に参加し,教会に通うのみならず,第三者に対しても教会やキリスト教を広 める行為をしてきた。 以上のとおり,原告は誠実なキリスト教への改宗者であり,現在に至るまで勤勉かつ熱心にキリスト教を信仰してきたといえる。 イイランにおけるキリスト教改宗者への迫害状況 総論 イランは,憲法でイスラム教を国教とすることを定めており,それ - 8 -以外の宗教に対しては不寛容な政策を採っている。もっとも,イランの憲法は,イスラム教のほか,ゾロアスター教,ユダヤ教及びキリスト教を適法な宗教として認めているが,適法とされるのは,元々キリスト教を信仰する民族であるアルメニア系及びアッシリア系のキリスト教徒に対してだけであり,それらの者も,逮捕,裁判等の迫害の対 象とはならないが, として認めているが,適法とされるのは,元々キリスト教を信仰する民族であるアルメニア系及びアッシリア系のキリスト教徒に対してだけであり,それらの者も,逮捕,裁判等の迫害の対 象とはならないが,マイノリティとして雇用,教育及び住宅取得などにおいて差別を受けている。 イスラム教からキリスト教への改宗者イスラム法(シャリーア法)の下では,イスラム教徒が改宗する権利はなく,キリスト教徒に改宗した者は,背教者とみなされ,刑事犯 罪(死刑)の対象とされるため,国家当局による危害の危険にさらされる。その理由は,背教行為が宗教上最も重い違反に当たることのほか,イランがシーア派イスラム教を支配の根幹においているため,イスラム教の棄教が国家体制への反逆に当たることにある。したがって,改宗自体が政府への反逆・不服従であり,改宗者は,イランにおいて 存在してはならず,表立って布教活動をするかどうかにかかわらず迫害の対象とされる。 改宗者に対する迫害は,穏健派のロウハニ大統領の下でも厳しく行われており,同大統領の上級顧問であるアリ・ヨウネシ氏も報道機関の取材に対し,「異教への改宗は違法である。」と宣言した上で,福 音主義は違法であると述べている。そして,実際に同大統領が就任した平成25年以降も改宗者や家の教会に対する迫害が頻発していることからすれば,同大統領が改宗者に対して厳しい態度で臨んでいるといえる。また,改宗者に対する迫害については実例が多数報告されているが,資料においては,牧師やリーダーのみ迫害されるとの記述は なく,一般の信徒も迫害の対象に含まれている。 - 9 - 他者へ布教するキリスト教徒元々のキリスト教徒であるか,改宗したキリスト教徒であるかを問わず,他の者に対して布教を行 なく,一般の信徒も迫害の対象に含まれている。 - 9 - 他者へ布教するキリスト教徒元々のキリスト教徒であるか,改宗したキリスト教徒であるかを問わず,他の者に対して布教を行うキリスト教徒は迫害される。布教者に対する迫害についても実例が多数報告されているほか,イラン政府は福音派キリスト教の活動を監視し,イスラム教徒に対する伝道活動 を行わないことなどを誓約させ,教会外部に監視カメラを設置し,キリスト教徒以外の者が礼拝に参加しないことを確認している。 家の教会が迫害されていること家の教会とは,正式な建造物としての教会ではなく,民家で人が集まってキリスト教信仰を行う場所をいう。 イラン政府は,元々イランに存在する建物としての教会については,これを把握し,新たな教会の建設を許さず,キリスト教徒以外の者が参加していないかを監視している。そして,これらの教会に行く者は全て政府に登録しなければならないとされている。 ところが,家の教会についてはそのような監視をすることができず, 教会としての場所の届出,信者としての登録制度から逸脱しているため,違法なものとしてイラン政府から取締りを受けている。また,イラン政府は,逮捕した家の教会のメンバーを,敵国の支援を受けているとか,国家安全保障の脅威とみなしており,家の教会について,スパイ活動及び反政府活動の拠点として関心を寄せているほか,家の教 会に対する捜索をし,家の教会に集まっていた者を逮捕している。 英国内務省報告書について2009年(平成21年)8月6日付け英国内務省出身国情報報告書(以下「2009年英国内務省報告書」という。)においては,「キリスト教への改宗」の項目において,一般的な改宗者に対する迫 害危険性 09年(平成21年)8月6日付け英国内務省出身国情報報告書(以下「2009年英国内務省報告書」という。)においては,「キリスト教への改宗」の項目において,一般的な改宗者に対する迫 害危険性はなく,活気ある家の教会や公の教会に通うことができ,目 - 10 -立たないようにしていれば迫害されることはない旨の記載がされていた。 しかし,2013年(平成25年)9月26日付け英国内務省出身国情報報告書(以下「2013年英国内務省報告書」という。)においては,2009年英国内務省報告書の「キリスト教への改宗」の項 目は一新され,改宗者や家の教会の信者が訴追・逮捕されている旨記載されている。そして,2015年(平成27年)12月英国内務省国別情報及びガイダンス(以下「2015年英国内務省報告書」という。)においては,家の教会の信者であること及び改宗者であることをもって,迫害の可能性が認められると記載され,改宗者に目立たな いように振る舞うことを推奨する2009年英国内務省報告書の記載を否定している。 1回目の異議棄却決定及び前回判決においては,2009年英国内務省報告書の記載が重視され,宗教活動を私的な領域にとどめていれば当局に注目されることなくある程度までは信仰を実践することが可 能であり,教会のリーダー層しか迫害の危険性はないとの理由で原告の難民性が否定されたが,2013年英国内務省報告書では,2009年英国内務省報告書における「リーダー層のみが迫害の対象となる」との記載が削除され,2015年英国内務省報告書では,リーダーであるか否かを問わず,家の教会の信者,改宗者及び布教者は,迫害の 真の危険にさらされており,庇護を要する旨記載されている。 ニュージーランドにおける出身国情報について ーダーであるか否かを問わず,家の教会の信者,改宗者及び布教者は,迫害の 真の危険にさらされており,庇護を要する旨記載されている。 ニュージーランドにおける出身国情報についてニュージーランド移民保護審判所においては,2012年(平成24年)の判決において,イランにつき,布教・改宗活動の有無によって改宗者のリスクが異なるという従前の出身国情報が無効とされ,公 然と布教活動を行いたいとの希望がなくとも,他のキリスト教徒と共 - 11 -に自由に集いたいという者の難民該当性が認められ,その後の判決でもイラン政府による迫害状況は変化していないと判示されている。上記ニュージーランド移民保護審判所の判断は,英国内務省報告書の記載の変化と合致しており,1回目の難民認定申請時以後にイランにおけるキリスト教改宗者への迫害が強まったことが複数の資料で裏付け られている。 その他の資料等についてa 国連専門家による共同声明国連の人権専門家5名によって2018年(平成30年)2月2日に出された共同声明では,3人のキリスト教徒の訴追について懸 念を表明するとともに,キリスト教少数派のメンバーが,人々を改宗させたり,家の教会に出席したりしたことを理由に訴追され,重い刑罰を受けたという複数の報告を認識している旨が述べられており,イランにおいては,宗教的な指導者のみならず,家の教会に出席したり,改宗したことを理由に訴追される例が複数あることが明 らかになっている。 b アムネスティ・インターナショナルによる報道国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルによると,2018年(平成30年)8月26日時点で4名のキリスト教徒が「治安を乱す会を結成した罪」により訴追され インターナショナルによる報道国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルによると,2018年(平成30年)8月26日時点で4名のキリスト教徒が「治安を乱す会を結成した罪」により訴追されており,そのう ち2名は牧師ではない改宗者であるとのことである。それらの者は,クリスマスの集いの開催や参加,自宅での信仰行為,国外のキリスト教関係者のセミナー参加などに違法性があるとされ,治安の脅威関連の罪で実刑判決を受けたとされている。2009年英国内務省報告書では私的な領域にとどまるとされていた上記活動であっても, 遅くとも平成30年時点ではそれを理由としてイラン当局から訴追 - 12 -され有罪判決を受ける事例が存在する。 c クリスチャントゥデイの記事2015年(平成27年)8月27日付けのクリスチャントゥデイの記事では,家の教会での礼拝中に,キリスト教に改宗した信者少なくとも8人が警察により暴行を受け,逮捕されたなどとされて おり,家の教会を対象とする摘発がなされ,改宗者を無差別に拘束していたことが分かる。 2016年(平成28年)10月4日付けのクリスチャントゥデイの記事では,治安当局が複数の家の教会の家宅捜索を行い,それぞれ複数のキリスト教徒を逮捕したとされているが,1つの家の教 会に複数の指導者がいるとは考え難いことからすれば,教会指導者でなく一般の改宗者も逮捕されていることを示している。 d 他の加盟国の裁判例欧州人権裁判所,オーストラリアの行政不服審判所,カナダの移民・難民委員会,ニュージーランドの移民審判所及び韓国の行政裁 判所では,教会の指導者やリーダーではなく,布教活動をしていないキリスト教改宗者について,帰国時の迫害可能性を認めている裁判例が複数存 民委員会,ニュージーランドの移民審判所及び韓国の行政裁 判所では,教会の指導者やリーダーではなく,布教活動をしていないキリスト教改宗者について,帰国時の迫害可能性を認めている裁判例が複数存在する。 小括以上からすれば,本件難民認定申請時から現在に至るまで,キリス ト教改宗者は,牧師やリーダー等の指導者的な立場になく,布教活動をしていなくても,キリスト教に改宗し,礼拝等の宗教行為をしていることのみをもって,迫害の対象になることが認められる。 ウ原告が帰国した場合に迫害対象となること原告がキリスト教に改宗したことがイラン政府に知られている可能 性があること - 13 -原告は,2009年(平成21年),テヘランに居住していた原告妻に原告が洗礼を受けている写真を送付したが,原告妻がその写真を自宅に置いておいたところ,叔母にその写真を見られてしまい,叔母の親戚にバシジ(政府のために情報収集を行っている民兵組織)のメンバーがいたことから,その者を通じて原告がキリスト教に改宗した 事実がイラン政府に伝わった可能性が高い。 また,原告は,原告妻の親戚であるイラン人のFをB教会に連れて行ったことがあるが,原告とFはその後仲違いしたため,Fがイランにいる同人の親戚に対し原告がキリスト教に改宗したことや難民認定申請をしていることを伝えている可能性が高い。さらに,原告がキリ スト教に改宗したことや裁判の事実が駐日本イラン大使館(以下「イラン大使館」という。)等を通じて情報収集されている可能性もある。 パスポートの失効及び長期間の出国によって帰国時に改宗が発覚するリスクが高いこと原告が来日してから11年以上が経過しているところ,原告はイラ ン る可能性もある。 パスポートの失効及び長期間の出国によって帰国時に改宗が発覚するリスクが高いこと原告が来日してから11年以上が経過しているところ,原告はイラ ンから長期出国した状態であって,本邦で難民認定申請をしていることからイラン大使館においてパスポートの更新手続をしておらず,原告のパスポートは平成24年に失効している。にもかかわらず,原告は,特定活動の在留資格で,その期間を更新して適法に本邦に在留しており,イラン政府からすれば原告の本邦における在留状況は不自然 である。 原告が仮にイランに帰国しようとすれば,イラン大使館において,パスポートを再発行してもらうか,帰国のために必要な書類を発行してもらう必要があるが,その際,本邦での在留について聞かれる可能性があり,イラン政府がインターネット等で情報収集していることを 踏まえれば,難民認定申請のために特定活動の在留資格によって本邦 - 14 -に在留してきたことが発覚し,キリスト教への改宗が発覚する可能性がある。 長期出国者はイラン政府のちょう報活動の対象となる可能性が高いから,仮に原告がイランに帰国した時点ではキリスト教への改宗がイラン政府に知られなくても,帰国後に監視が継続され,インターネッ ト等で情報収集がされ改宗が発覚する可能性がある。本件異議申立ての手続において難民該当性を認めた難民審査参与員も,原告が長期出国者であることから帰国時にイラン政府に注目されるリスクが高いことについて言及している。 帰国後に家の教会に通うなどして改宗が発覚する可能性があること 原告がイランへの帰国時にイラン政府の注目を集めることがなかったとしても,本邦において行っていたキリスト教徒としての活動と同様の 国後に家の教会に通うなどして改宗が発覚する可能性があること 原告がイランへの帰国時にイラン政府の注目を集めることがなかったとしても,本邦において行っていたキリスト教徒としての活動と同様の活動をイランにおいて行った場合,すなわち,キリスト教の信仰を続け,聖書を読み,家の教会に毎週通うとすれば,原告が改宗したことがイラン政府に発覚する可能性は十分にある。改宗者が家の教会 に集まっている際に逮捕される実例があることについては多数の報告があるし,家の教会に行くことについてイラン政府に知られなかったとしても,原告がイランに帰国した後に地元のモスクに行かないことや,キリスト教を信仰しているらしいとの近隣からの情報提供がされることにより,家宅捜索の対象となった場合,居宅で聖書等のキリス ト教に関する証拠が発見され,逮捕・拘禁される可能性がある。 小括原告は誠実なキリスト教改宗者であるところ,前記イのとおり,イランにおいては,牧師や指導者だけでなく,一般のキリスト教改宗者も迫害の対象となっている。そして,原告が改宗した事実は既にイラ ン政府に知られている可能性があり,そうでなかったとしても,パス - 15 -ポート再発行時や帰国時に注目され,帰国後も,イラン政府による内偵や監視により改宗が知られる可能性や家の教会に通うことにより改宗者であることが知られる可能性があり,逮捕,拘禁及び訴追による処罰などの迫害を受けることとなる。 したがって,原告は宗教を理由とする条約上の難民に該当する。 エ政治的意見による迫害可能性について原告は,2007年(平成19年)6月26日,テヘランにおいてガソリン配給制に対する反政府抗議デモ(以下「本件デモ」という。)に参加し,その様子を警察に撮影されている 意見による迫害可能性について原告は,2007年(平成19年)6月26日,テヘランにおいてガソリン配給制に対する反政府抗議デモ(以下「本件デモ」という。)に参加し,その様子を警察に撮影されているところ,その後,原告の三男が警察に連れていかれたり,原告妻が警察から呼出状を手渡されたりす るなど,イラン政府は原告の居場所を注視しており,原告が帰国した場合には捜査記録と照合され,空港等で逮捕される可能性があり,政治的意見による迫害のおそれがある。仮に政治的意見のみをもって迫害可能性が認められないとしても,本件デモへの参加に関する記録や原告のイランからの出国経緯が明らかになることにより,キリスト教への改宗及 びキリスト教者としての活動が発覚する可能性があり,キリスト教への改宗と併せて,迫害の危険性が高まる要素として考慮すべきである。 ⑸ 小括以上からすれば,原告は条約上の難民に該当するから,本件難民不認定処分は取り消されるべきである。また,難民に対する難民認定は法律上の 義務であるから,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号,37条の3第1項2号及び同条第5項により,本件義務付けの訴えにつき,難民と認定するよう命じる判決をするべきである。 (被告の主張の要旨)⑴ 難民の意義 入管法に定める難民とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集 - 16 -団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であつて,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であつて,当該常居所を有していた国に その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であつて,当該常居所を有していた国に 帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいう。 そして,その「迫害」とは,「通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧」を意味し,また,上記のように「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由 のある恐怖を有する」というためには,当該人が,迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要である。 ⑵ 「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」について 「難民」と認定されるための要件である「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」とは,単に迫害を受けるおそれがあるという抽象的な可能性が存するにすぎないといった事情では足りず,当該申請者について迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような個別かつ具体的な事情が存することが必要である。すなわち,前記⑴のような客観的事 情が存在しているといえるためには,ある国の政府によって民族浄化が図られていることが明らかであるような場合はともかく,そうでなければ,当該政府が特に当該人を迫害の対象としていることが明らかになるような個別的で具体的な事情があることを要するものと解される。 ⑶ 難民該当性の立証責任 ア立証責任の所在 - 17 -我が国における難民の認定に関する手続は,入管法61条の2以下が定めて 具体的な事情があることを要するものと解される。 ⑶ 難民該当性の立証責任 ア立証責任の所在 - 17 -我が国における難民の認定に関する手続は,入管法61条の2以下が定めているところ,①入管法61条の2第1項を受けて設けられた出入国管理及び難民認定法施行規則55条1項は,難民の認定を申請しようとする外国人が自ら難民に該当することを証する資料を提出しなければならないと定めていること,②難民の認定は,当該外国人が一定の法的 利益を付与されるべき地位にあることを確認(公証)する性質を有する処分であり,難民認定を受けることが他の利益的扱いを受けるための法律上の要件となっている(入管法61条の2の3,61条の2の11及び61条の2の12参照)ことからすれば,難民認定処分は授益処分としての性質を有するものと解されること及び③難民該当性を基礎づける 事情は申請者において正確に申告することが容易であることなどに照らすと,難民の認定をしない処分の取消しの訴えにおいては,難民認定の申請者である原告が,自ら「難民」に当たることを立証しなければならないと解される。 イ立証責任の程度 民事訴訟における「証明」とは,裁判官が事実の存否について確信を得た状態をいい,合理的な疑いを容れることができないほど高度の蓋然性があるものでなければならず,通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信が必要である。民事訴訟における事実の証明の程度は,特別の定めがないにもかかわらず,軽減することは許されな いところ,難民条約及び難民議定書には難民認定に関する立証責任や立証の程度についての規定は設けられておらず,入管法等にも立証責任を緩和する規定は存在しない。 以上からすれば,難民認定の申請者であ いところ,難民条約及び難民議定書には難民認定に関する立証責任や立証の程度についての規定は設けられておらず,入管法等にも立証責任を緩和する規定は存在しない。 以上からすれば,難民認定の申請者である原告が,自己が難民であることについて「合理的な疑いを容れない程度の証明」をしなければなら ない。 - 18 -⑷ 原告の難民該当性についてアイスラム教からキリスト教に改宗した者がイランに帰国した場合,直ちにその生命及び身体に危害を加えられるとはいえないこと2013年(平成25年)米国国務省報告書(以下「2013年米国国務省報告書」という。)及び2015年英国内務省報告書には,イラ ン政府がイスラム教からの改宗を死刑に値する背信行為とみなしていることなどが記載されているものの,イランにおけるキリスト教徒がいかなる境遇にあるのか具体的に明らかにされているとはいえないし,原告と同様の立場にある者がいかなる境遇にあるのかについても具体的に明らかにされているとはいえない。 かえって,2013年米国国務省報告書や2015年英国内務省報告書によれば,イラン政府が福音派キリスト教教会の指導者に圧力をかけたとする一方で,逮捕されたキリスト教徒の一部が逮捕直後に釈放されたとするもののほか,キリスト教がイラン全土に根付きつつあるとか,改宗運動は活発かつ広範囲に進んでいると報告されており,イラン政府 が指導者以外のキリスト教信者に対して圧力をかけていないことがうかがわれる記載がある。 また,2015年英国内務省報告書及び2017年(平成29年)2月英国内務省報告書(以下「2017年英国内務省報告書」という。)では,最近は個人が背教者として刑罰を受けた裁判所の判例はない,通 常の改宗者 年英国内務省報告書及び2017年(平成29年)2月英国内務省報告書(以下「2017年英国内務省報告書」という。)では,最近は個人が背教者として刑罰を受けた裁判所の判例はない,通 常の改宗者に関してはイランへの帰国時にリスクはあるが,重大な危害をもたらす真のリスクではない,渡航中に改宗した後にイランに帰国し,活発に改宗活動をしない人々は,目立たないようにキリスト教の宗教活動を継続できると報告されている。 以上からすれば,本件難民不認定処分時において,イラン国籍を有す る者が,イスラム教からキリスト教に改宗し,キリスト教徒として活動 - 19 -したとしても,直ちにイラン政府によってその生命又は身体の自由を侵害され,又は抑圧されるとは認められない。 イ原告の本邦における宗教活動はイラン政府から殊更に関心を寄せられるようなものではないこと原告のキリスト教徒としての活動は,一般的なキリスト教徒としての 活動にとどまるものであり,本邦において指導者やリーダーなどの立場にあったわけではなく,殊更にイラン政府から関心を寄せられ,宗教的迫害を受けるような活動には携わっていない。 ウ原告が本邦において改宗した事実がイラン政府に知られている可能性が高いとはいえないこと 原告がイスラム教からキリスト教に改宗したとしても,直ちにイラン政府によってその生命又は身体の自由を侵害され,又は抑圧されるとは認め難いことは前記アで述べたとおりであるし,原告はイランに帰国した際も布教活動を行う可能性はないと認められるため,原告について,イラン政府により生命又は身体の自由を侵害等されるという客観的な具 体的事情は認められない。 エ本件デモに参加した者がイランにおける迫害の恐怖を抱くような個別かつ具体的な事情は立証されてい イラン政府により生命又は身体の自由を侵害等されるという客観的な具 体的事情は認められない。 エ本件デモに参加した者がイランにおける迫害の恐怖を抱くような個別かつ具体的な事情は立証されていないこと本件デモは全国的な広がりの中で行われたものであり,相当多数の参加者があったものと推認されるところ,本件デモに参加した者がすべて 迫害の対象になっているとは認め難く,原告が供述する本件デモにおける原告の行動を前提としたとしても,原告が本件デモに参加したことを理由にイラン政府が殊更原告に関心を寄せるとは言い難く,原告が迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有することを基礎付ける個別,具体的な事情が立証されているとはいえない。 オ原告の難民該当性を否定するその他の事情 - 20 - 原告がイラン大使館を訪ね,難民認定申請をした旨申し出たこと原告は,過去にイラン大使館を訪ね自ら難民認定申請をしている旨申し出たことがあると述べているところ,イラン大使館はイラン政府の出先機関であるから,イラン政府から迫害を受けるおそれがあると主張する者がそのような行動をすることは考え難いことであり,その ような行動をしたことは,原告がイラン政府から迫害を受けるおそれがあるとの恐怖を抱いていなかったことの証左である。 自己名義旅券により,正規の手続で本国を出国したこと原告は,1回目の難民認定申請の手続において,自己名義の真正な旅券により問題なくイランを出国したと述べているところ,旅券は, 当該国政府が,その所持人の国籍及び身分を公証し,かつ,渡航先の外国官憲にその所持人に対する保護と旅行の便宜供与を依頼し,その者の引取りを保証する文書であることからすれば,原告が自己名義の旅券の 当該国政府が,その所持人の国籍及び身分を公証し,かつ,渡航先の外国官憲にその所持人に対する保護と旅行の便宜供与を依頼し,その者の引取りを保証する文書であることからすれば,原告が自己名義の旅券の発給を受け,正規の手続で本国を出国できたということは,イラン政府が原告を迫害の対象としていなかったこと,その当時原告自 身もイラン政府から迫害を受けるという恐怖心を主観的にも抱いていなかったことを推認させる事情というべきである。 原告が本邦に入国した直後に庇護を求めたり,難民認定申請をしたりしていないこと原告は,上陸審査において提出した外国人出入国記録カードに難民 認定申請を行うことをうかがわせる記載をしておらず,平成19年8月13日に東京入国管理局において在留期間更新許可申請をした際にも難民認定申請について言及しておらず,かえって,イランに帰国する旨誓約していた。原告がイラン政府からの迫害を逃れ,難民認定申請をするために本邦に入国したというのであれば,早期に本邦に庇護 を求めていたはずであるから,原告の行動は,イラン政府の迫害を逃 - 21 -れてきた者の行動として不自然である。 ⑸ 小括以上のとおり,原告に,個別,具体的な迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような客観的な事情が存することが立証されているということはできず,かつ,原告の主観においても,イランにおいて迫害を受ける おそれがあるという恐怖を抱いていると認めることはできない。 したがって,原告を難民と認定することはできない。 また,本件義務付けの訴えは,行訴法3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えであるところ,申請型の義務付けの訴えが適法となるためには,同法37条の3第1項2号所定の訴訟要件を満たす必要がある 義務付けの訴えは,行訴法3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えであるところ,申請型の義務付けの訴えが適法となるためには,同法37条の3第1項2号所定の訴訟要件を満たす必要がある が,本件難民不認定処分は,取り消されるべきものでもなければ,無効でも不存在でもない。 したがって,本件義務付けの訴えは,訴訟要件を欠き不適法であるから,却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 難民及び迫害の定義並びに立証の程度入管法2条3号の2は,入管法における「難民」の意義について,難民条約1条の規定又は難民議定書1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうと規定している。したがって,入管法にいう難民とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に 迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するため に当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいうと解するの - 22 -が相当である。 そして,上記の「迫害」とは,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味するものと解するのが相当であり(難民条約33条1項参照),また,上記にいう「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」とい うためには,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常 項参照),また,上記にいう「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」とい うためには,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要であると解され,上記の意味で「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことは,入管法61条の2第1項等の規定に照らし,原告において立証 する必要があると解される。 原告は,上記と異なる主張をするが,原告主張のように解すべき我が国の法令上の根拠等も格別見出し難いから,この点に係る原告の主張は理由がない。 2 認定事実 前提事実,文中掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ イランにおけるイスラム教からキリスト教への改宗者に係る一般的な情勢についてアイランでは,パフラヴィー王政が始まった1925年(大正14年) 以降にプロテスタント宣教師の入国を許可し,プロテスタント教会が建てられるなどしたが,1979年(昭和54年)のイラン革命以降,宣教師は追放され,イスラム教徒がキリスト教へ改宗することが許されなくなった。いわゆるイスラム法(シャリーア法)においては,イスラム教徒が他の宗教へ改宗することは背教罪とされ,同罪により死刑が科さ れる可能性もあるところ,1990年(平成2年)頃以降,イランにお - 23 -いては,実際に,キリスト教の牧師に対し,背教の罪について有罪の言渡しをする判決が宣告された事例があった。(以上につき,甲11・3頁,甲12・4頁,甲18・3及び4頁,乙23・1ないし4頁,証人E・3及び4頁)イ 2008年(平成20年)初頭に,イランの国会は,イスラム教 が宣告された事例があった。(以上につき,甲11・3頁,甲12・4頁,甲18・3及び4頁,乙23・1ないし4頁,証人E・3及び4頁)イ 2008年(平成20年)初頭に,イランの国会は,イスラム教から の改宗者に対して死刑を含む厳しい罰を課す新しい法律の検討を始め,同年9月,イラン国会の委員会は,背教に関する改訂法案を承認した。 その後,当該法律は成文化していないものの,背教は死刑に値する犯罪と考えられている。(以上につき,甲13・3枚目,甲14・19.18及び19.21)。 ウ 2014年(平成26年)10月,ロウハニ大統領の上級顧問であるアリ・ヨウネシ氏は,報道機関に対し,異教への改宗は違法であると宣言した(甲12・21頁)。 ⑵ 各種報告書の記載についてア 2009年英国内務省報告書について(甲13) 2009年英国内務省報告書では,「キリスト教徒」との項目の下に,「Landinfo報告書2009が述べるところによれば,「当局との間の問題は,主に,イスラム教徒に向けられた福音活動との関連で起きる。イスラム教徒への福音活動を行ったり,例えば,キリスト教の出版物を手渡したキリスト教徒(キリスト教徒として生まれた者も,改宗者も)は, 職場や地域社会において問題を抱える危険がある。そのことが報告されれば,その人は,深刻な罪を問われる危険がある。教会指導者によれば,一般の信者が,就職や,大学への入学許可,パスポートの取得に際して,問題となることは非常に稀である。経験によれば,当局が,注視するのは福音派教会のリーダー層であり,当局が寛容でなくなるのは,大っぴ らな福音活動や,場合によっては,聖職授与式などである。」」(甲1 - 24 -3・19.32)と記載されている。また,「キリスト教へ のリーダー層であり,当局が寛容でなくなるのは,大っぴ らな福音活動や,場合によっては,聖職授与式などである。」」(甲1 - 24 -3・19.32)と記載されている。また,「キリスト教への改宗」との項目の下に,「ChristianSolidarityWorldwide(CSW)の2008年7月版「イランの宗教の自由プロファイル」が述べるところによれば,「イスラム教からキリスト教への改宗者は,イランのキリスト教共同体の中で,最も攻撃されやすい。しかし,死刑は適用されず,主に改宗者 で構成された,活気のある家庭教会や公の教会がある。改宗者は,信仰を続けることができ,他人と会うこともできるが,幹部だったり,キリスト教省につながっている者は,拘束や脅迫,投獄,超法規の暴力などの危険に直面する」」(甲13・19.33),「Landinfo報告書2009は次のように述べている。「キリスト教に改宗したイラン人イスラ ム教徒の多くは,実際には,キリスト教徒の両親に生まれたキリスト教徒と同様な暮らし方をしている。改宗者は,目立たないように振る舞うことが,問題を避けるための必要条件であり,宗教儀式は,宗教共同体の境界内で行うこととし,又,信仰は,私的なものとして扱うことであり,そして,これは,ほとんどの人たちが行っていることである。」」 (甲13・19.35)と記載されている。 イ 2013年英国内務省報告書について(甲14)2013年英国内務省報告書では,「背教者の告訴」との項目の下に,「背教者の告訴に関してLandinfoレポート2011は,「実際には,背教の罪で有罪宣告されることは極めてまれにしかない」と述べている。 (中略)しかし,同じ情報源は以下のように続ける。「背教の改宗者を罪に問うことは,より一 oレポート2011は,「実際には,背教の罪で有罪宣告されることは極めてまれにしかない」と述べている。 (中略)しかし,同じ情報源は以下のように続ける。「背教の改宗者を罪に問うことは,より一般的になったようである。・・・改宗者に対する背教の正式な告訴はイランには比較的まれにしか存在しなかったものの,そのような罪の脅威は,彼らが後悔して,イスラム教に戻ることを望むと宣言するよう改宗者に強いる手段として裁判の場に持ち込まれて いる。多くの場合,法廷は,いかなる罪にも問わずに改宗者を釈放する - 25 -と決めるか,違法なハウスチャーチへの参加または外国のメディアとの接触を持つことなどの罪状を持ち出している。」」(甲14・19.23)と記載されている。また,「キリスト教徒」との項目の下に,「当局は,福音派グループの信者を含めて,数百人のキリスト教徒を逮捕したということである。これらのケースの多くの状態は年末の時点でもわ かっていなかった。当局はほぼすぐに何人かのキリスト教徒を釈放したものの,その他については弁護士への接触を許さず秘密の場所に拘留した。(中略)〔2012年〕9月に,当局はFars州で4軒のハウスチャーチを強制捜査し,「イスラム政権の敵国と接触している」および「家庭内でのキリスト教礼拝の継続」の容疑で,40人のキリスト教徒を逮 捕したということである。これらのケースの状態は年末時点でもわかっていなかった。NGOの報告によると,そのうち何人かが,かなりの額の保釈金を支払って釈放された。情報省は,少なくとも10人の個人を拘留し続けたと言われる。」(甲14・19.40)と記載されている。 さらに,「イスラム教徒のキリスト教への改宗」との項目の下に,「2 012年6月のCSWレポートには以下の記載がある の個人を拘留し続けたと言われる。」(甲14・19.40)と記載されている。 さらに,「イスラム教徒のキリスト教への改宗」との項目の下に,「2 012年6月のCSWレポートには以下の記載がある。「2012年の初め以来イラン全国の様々な都市で,テヘラン,ケルマーンシャー(Kermanshah),イスファハン(Esfahan),およびシーラーズ(Shiraz)の個人とグループの特定の取り締まりもあって,キリスト教への改宗者に対する嫌がらせ,逮捕,裁判,および懲役が目立って増加している。こ れらの拘留者の何人かは,キリスト教の会合に出席することを防止する文書に署名するように要求された後で釈放されたものの,他の多くは,女性と年配者も含めて,拘留され続けている。2012年2月には逮捕の特定の高まりがあり,3月まで続いた。拘留されているキリスト教徒の一時的な釈放を確保するために,再び,過大な保釈金の支払いが要求 されている。」」(甲14・19.53)と記載されている。 - 26 -ウ 2015年英国内務省報告書(甲12)について2015年英国内務省報告書では,「PolicySummary」との項目の下に,「福音派教会及び家庭教会の信者及び他者が福音派になるよう積極的に活動し,布教活動に従事する者は,イラン国内で迫害の真の危険に晒され,庇護の付与が適切であると思われる。」(甲12・3.1. 3),「シャリーア法の下では,イスラム教徒が改宗する権利は認められていない。イスラム教徒の改宗はイランでは違法である。イスラム教からキリスト教に改宗した者は,イランにおいて迫害の真の危険に晒され,庇護の付与が適切だと思われる。」(甲12・3.1.4)と記載されている。また,「キリスト教徒」との項目の下に,「ガーディアン キリスト教に改宗した者は,イランにおいて迫害の真の危険に晒され,庇護の付与が適切だと思われる。」(甲12・3.1.4)と記載されている。また,「キリスト教徒」との項目の下に,「ガーディアン 紙(Guardian)の2014年5月の報道によれば,「(中略)亡命者に見られるイスラム教徒からキリスト教徒への改宗及び海外のキリスト教徒と祖国との距離の縮小によって,キリスト教はこれまでにない数でイラン全土に根付きつつある。キリスト教改宗運動の秘密性により,正確な人数を測定するのは不可能になっている。推計値は情報源によって3 00,000人から500,000人までばらつきがある。この統計データを独自に検証するのは不可能だが,国内外の改宗者及び司祭によれば,改宗運動は活発且つ広範囲に進んでいる。」」(甲12・5.1. 6)と記載されている。さらに,「イスラム教からキリスト教への改宗者」との項目の下に,「以下は第18条における援護担当官,マンスー ル・ブルジー(MansourBorji)がデンマーク移民局の事実調査委員会にインタビューされた内容である。「あなたがイスラム教徒に生まれ,キリスト教徒に改宗した場合,背教者とみなされる。しかし,最近は個人が背教者として刑罰を受けた裁判所の判例はない。マンスール・ブルジーは長期間にわたり投獄されていた女性のキリスト改宗者の判例に言及 した。情報筋によると,シーア派の聖職者による何等かの宗教規定に基 - 27 -づき,この女性には2つの選択肢しかなかった。信仰を改めるか,監獄で死ぬか」」(甲12・6.1.5)と記載されている。 エ 2017年英国内務省報告書(乙24)について2017年英国内務省報告書では,「キリスト教改宗者」との項目の下に,「SZandJM(Chris (甲12・6.1.5)と記載されている。 エ 2017年英国内務省報告書(乙24)について2017年英国内務省報告書では,「キリスト教改宗者」との項目の下に,「SZandJM(Christians-FSconfirmed)IranCG〔2008〕UKAIT 00082の国別ガイダンス事例(2008年5月13~15日付の報告,2008年11月12日付で発表)では,上級裁判所(UpperTribunal)は,サクラメントベースの教会の改宗者の状況により,彼らのイランへの帰国は合理的に不可能であると判断した(145段落)。(活発な伝道者でない)「通常の」改宗者に関しては,イランへの帰国時にリスク はあるが,重大な危害をもたらす真のリスクではないと裁判所は結論付けた。」(乙24・2.2.6),「この国別ガイダンス事例は8年以上前に聞いたものだが,入手した国別情報は,判明事項が未だに妥当であることを示している。」(乙24・2.2.7),「渡航中に改宗した後にイランに帰国し,活発に改宗活動をしない人々は,目立たないよ うにキリスト教の宗教活動を継続できる。」(乙24・2.2.10)と記載されている。 オ 2013年米国国務省報告書(甲11)について2013年米国国務省報告書では,「イラン政府は,キリスト教徒に対する信教の自由の否定を精力的に推進した。キリスト教徒,特に福音 派は,多大な嫌がらせと綿密な監視を受け続けている。人権活動家によると,イラン当局は,福音派を含むキリスト教徒を,その人口に不均衡な高い割合で逮捕している。こうした事例のその後の状況は,2013年末時点で明らかになっていない。イラン当局は,一部のキリスト教徒をほぼ逮捕直後に釈放しているが,残りの逮捕者を拘束している場所を 明 合で逮捕している。こうした事例のその後の状況は,2013年末時点で明らかになっていない。イラン当局は,一部のキリスト教徒をほぼ逮捕直後に釈放しているが,残りの逮捕者を拘束している場所を 明らかにせず,弁護士との接見も許可していない。」(甲11・11 - 28 -頁),「公式報告とメディアは,引き続き,キリスト教家庭教会を「違法ネットワーク」及び「シオン主義者のプロパガンダ機関」と定義付けている。家庭教会の逮捕されたメンバーは,敵国の支援を受けていると非難されることが多い。」(甲11・14頁)と記載されている。 ⑵ 原告の身上関係 ア原告は,●年(昭和●年)●月●日,テヘランで出生したが,その後間もなく両親が離婚したことから,祖父母に養育され,高校卒業後は,叔父の店を手伝うほか,兵役に就くなどしていた(甲29,乙16・4及び5頁)。 イ原告は,1993年(平成5年)頃から,テヘランでタクシー運転手 として稼働していたところ,その頃,原告妻と婚姻し,原告妻の連れ子であり三男のGとテヘランで生活していた(甲29,乙16・5及び6頁)。 ⑷ ガソリンの配給制に反対するデモに参加した状況等ア 2007年(平成19年)6月26日,イラン政府はそれまで政府車 両に限られていた燃料配給制度の対象を一般車とタクシーにも拡大すると発表し,これを受けて各地で抗議活動が起こり,テヘランでも抗議活動(本件デモ)が行われた(甲6)。 イ原告は,本件デモが発生した際,ガソリンを給油するために赴いたガソリンスタンドにおいて,デモに参加し,「なぜガソリンを値上げする のか。」,「なぜガソリンスタンドを閉鎖するのか。」などとシュプレヒコールを上げたものの,放火行為等の暴動に加わることはなかった。 原告は,本件デモに デモに参加し,「なぜガソリンを値上げする のか。」,「なぜガソリンスタンドを閉鎖するのか。」などとシュプレヒコールを上げたものの,放火行為等の暴動に加わることはなかった。 原告は,本件デモにおいて警察等のイラン当局がビデオ撮影等をしていることに気がつき,その場から逃げたが,原告が本件デモに参加している場面が撮影等されており,それを基にして警察等が逮捕しに来るので はないかと考え,イランから出国することを考えるようになった。(以 - 29 -上につき,甲6,甲29,乙3・17ないし19,36ないし40頁,乙16・6及び7頁,乙22・4及び5頁,原告本人2,3及び12ないし14頁)⑸ イランからの出国及び本件難民認定申請に至る経緯等ア原告は,空手をやっている近所の友人から,スポーツ団体でビザを取 れば早く簡単にビザが取れると聞いていたところ,本件デモの後,イランから早期に出国したいと考えていたため,当該友人から空手団体(以下「本件空手団体」という。)のリーダーを紹介してもらい,同人に,イランを出国したい旨の依頼をし,同人に多額の金銭を支払って真正な旅券及び査証を取得した(甲29,乙3・19頁,乙16・7ないし1 0頁,乙22・5ないし7頁)。 イ原告は,平成19年7月17日,本件空手団体の一員という名目で,正規の手続によりテヘランの空港からイランを出国し,同月18日,関西国際空港に到着して,在留資格を短期滞在とし,在留期間を30日とする上陸許可を受けて,本邦に上陸した(甲29,乙1,乙16・10 及び11頁,乙22・5ないし7頁)。 ウ原告は,本邦に上陸した後,秋田県大仙市aや千葉県我孫子市で開かれた空手教室への参加又は見学をし,約10日後に東京に戻った際に,本件空手団体とは別行動をとるこ 11頁,乙22・5ないし7頁)。 ウ原告は,本邦に上陸した後,秋田県大仙市aや千葉県我孫子市で開かれた空手教室への参加又は見学をし,約10日後に東京に戻った際に,本件空手団体とは別行動をとることとなった。原告は,同年8月13日,在留期間更新許可(30日)を受け,特定非営利活動法人難民支援協会 を訪れて難民認定申請について相談をするなどした後,同月21日,東京入国管理局において,難民認定の申請(1回目の難民認定申請)をした。(以上につき,甲29,乙1,乙16・11ないし14頁,乙22・7及び8頁,前提事実⑶ア,弁論の全趣旨)エ原告は,本邦に上陸した後,車を売るための委任状を作成するためイ ラン大使館に赴き,その際,イラン大使館の職員に対し,難民認定申請 - 30 -をしている旨述べた(乙3・9頁,乙8・9及び10頁,乙20・5及び6頁)。 ⑹ 原告によるキリスト教の信仰状況等ア原告は,生まれたときからイスラム教徒であったが,平成18年頃,タクシーの乗客であった韓国人から,ペルシャ語で書かれた聖書をもら い,聖書を読むうちにその内容に興味を持ち,キリスト教を信仰するようになった(甲29,乙22・8及び9頁,原告本人・1頁)。 イ原告は,本邦に入国した後,千葉県成田市内にある教会に行ったものの,同教会においては,ポルトガル語が使用されていて内容を理解することができなかった。その後,原告は,埼玉県川口市内に居住するよう になったことから,平成19年9月16日,b駅近くの交番等で教会について尋ね,B教会を訪れた。(以上につき,甲29,乙16・20頁,乙22・10頁,原告本人・3及び4頁)ウ原告は,平成19年9月にB教会を訪れた後,現在まで,B教会で毎週日曜日に行われる礼拝等にほぼ毎回参加し,平 れた。(以上につき,甲29,乙16・20頁,乙22・10頁,原告本人・3及び4頁)ウ原告は,平成19年9月にB教会を訪れた後,現在まで,B教会で毎週日曜日に行われる礼拝等にほぼ毎回参加し,平成20年1月に茨城県 結城市に転居してから平成30年6月に現在の居住地に転居するまでは片道1時間半以上かけて通っていた。原告は,上記礼拝等において清掃担当や献金担当等として奉仕活動を行っているほか,イースターやクリスマスの礼拝で行われるキリストの生誕劇,老人ホームへの慰問,B教会の上部団体であるC教会で月1回行われる賛美集会及び同教会で年1 回行われる信徒大会に参加するなどしている。また,原告は,B教会を訪れてから間もなくしてキリスト教を学ぶ入門プログラムを受講し,平成20年3月23日,B教会で洗礼を受け,平成27年頃には,B教会の役員会の候補者となった。(以上につき,甲17,23ないし27,29,乙1,乙3・46頁,乙16・20頁,乙22・10及び11頁, 証人H・1,2,8及び9頁,弁論の全趣旨) - 31 -エ原告は,B教会を訪れた後,ペルシャ語で聖書を勉強したいと考え,平成23年10月頃,B教会の牧師からペルシャ語が話せるE牧師を紹介してもらい,約1年間,E牧師と聖書の研究を行い,その後も,年に2,3回程度,E牧師が牧師を務めている「D」にも通うようになった(甲18,甲29,乙23・1及び2頁,証人E1及び2頁,原告本人 ・4及び5頁)。 オ原告は,イランにおいては教会に行ったことはなく,本邦においても街頭でキリスト教の布教活動を行ったりすることはないものの,本邦において前記ウ及びエの活動をしているほか,数人の知り合いにキリスト教を勧めたり,B教会に連れて行ったことがある(甲29,乙3 おいても街頭でキリスト教の布教活動を行ったりすることはないものの,本邦において前記ウ及びエの活動をしているほか,数人の知り合いにキリスト教を勧めたり,B教会に連れて行ったことがある(甲29,乙3・46 及び47頁,乙22・16頁,証人H・3頁,原告本人・1,2及び5頁)。 3 原告の難民該当性について⑴ 本件デモへの参加についてア認定事実⑷のとおり,原告は,2007年(平成19年)6月,テヘ ランにおいて,本件デモに参加しているものの,原告は,「なぜガソリンを値上げするのか。」,「なぜガソリンスタンドを閉鎖するのか。」などと声を上げただけであり,放火等の暴動に加わることはなかったというのであって,これらの事実を踏まえると,原告は,本件デモに大勢の参加者のうちの一人として参加したにすぎず,原告が本件デモに参加 したことにより,イラン当局が殊更に原告に関心を寄せるとまでは認め難いというべきである。 イ原告は,原告が本邦に入国した後,Gがイランの警察から呼出しを受けたり,原告妻がイランの警察から呼出状を手渡されたりしたことがあり,原告の居場所がイラン政府から注視されていたから,原告が帰国し た場合には,空港等において捜査記録と照合され,逮捕される危険性が - 32 -あり,政治的意見による迫害のおそれがあると主張する。 しかし,原告の主張する上記事実を裏付ける客観的証拠はない。仮に上記事実が認められたとしても,原告に係る本件デモへの参加の態様等の事情を前提とすれば,上記事実は,本件デモの状況等に係る当局としての一般的な関心の域を出るものであるとまで認め難いというべきであ り,他に,原告が本件デモに参加したことについて,イラン当局が殊更に原告に関心を寄せていたことをうかがわせる事情は見 る当局としての一般的な関心の域を出るものであるとまで認め難いというべきであ り,他に,原告が本件デモに参加したことについて,イラン当局が殊更に原告に関心を寄せていたことをうかがわせる事情は見当たらない。 したがって,本件難民不認定処分がされた時点において,原告につき,本件デモに参加したことをもって,前記1に述べた意味における迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存するとまでは認め難いというべきであ る。 ⑵ イスラム教からキリスト教への改宗についてアイランにおけるイスラム教からキリスト教へ改宗した者の状況について認定事実⑴ア及び同イのとおり,イランにおいては,実際に,キリ スト教の牧師に対し,背教の罪について有罪の言渡しをする判決の宣告がされた事例があり,平成20年9月にはイスラム教からの改宗者に対して死刑を含む厳しい刑罰を課す法律が国会の委員会で承認された。 もっとも,認定事実⑵アのとおり,平成21年に作成された200 9年英国内務省報告書においては,イラン政府から注視されるのは,イスラム教徒に対して福音活動を行った場合であり,福音派教会のリーダー層は身柄拘束等の危険があるものの,一般の信者は目立たないように振る舞っていれば,信仰を続けることができ,イラン政府との間で問題は起こらない旨記載されていることからすれば,平成21年 当時のイランにおいては,イスラム教からキリスト教へ改宗した者が, - 33 -改宗したことのみを理由にしてイラン政府から逮捕,訴追等される蓋然性が高いとまでは認められない状況にあったと認められ,前回判決もそのような事実関係を前提にしてなされたものであるといえる。 しかし,認定事実⑵イのとおり,本件難民不認定処分の約1年後に出された2013年英国内務省報告書では 状況にあったと認められ,前回判決もそのような事実関係を前提にしてなされたものであるといえる。 しかし,認定事実⑵イのとおり,本件難民不認定処分の約1年後に出された2013年英国内務省報告書では,前記の2009年英国 内務省報告書で記載されている内容とは異なり,イスラム教からキリスト教に改宗した者を罪に問うことはより一般的になっている旨,2012年(平成24年)の初め以来,イラン全国の様々な都市で嫌がらせ,身柄拘束等が目立って増加している旨,イラン政府が数百人のキリスト教徒を逮捕し,同年9月には家の教会を意味すると思われる 「ハウスチャーチ」を強制捜査し,40人のキリスト教徒を逮捕した旨及び裁判所が,家の教会を意味すると思われる「違法なハウスチャーチ」への参加を罪状としており,キリスト教へ改宗したことを理由として身柄拘束を受けた者がイラン政府からキリスト教の会合に参加することを防止する文書に署名するよう要求され,身柄拘束を受けて いるキリスト教徒について一時的に身柄を釈放してもらうため過大な保釈金の支払が要求されている旨が記載されている。また,認定事実⑵オのとおり,本件難民不認定処分の約1年後に出された2013年米国国務省報告書では,イラン当局はキリスト教徒につき,人口に不均衡な割合で逮捕しており,イランの公式報告とメディアは,家の教 会を意味すると思われる「キリスト教家庭教会」を違法ネットワークと定義付け,家庭教会の逮捕されたメンバーは敵国の支援を受けていると非難されることが多い旨記載されている。さらに,認定事実⑵ウのとおり,2015年英国内務省報告書によれば,端的に,福音派教会及び家庭教会の信者は,イラン国内で迫害の真の危険にさらされる と記載されている。 - 34 -以上の報告書の記 実⑵ウのとおり,2015年英国内務省報告書によれば,端的に,福音派教会及び家庭教会の信者は,イラン国内で迫害の真の危険にさらされる と記載されている。 - 34 -以上の報告書の記載からすれば,平成24年(2012年)時点においては,平成21年(2009年)時点と異なり,イスラム教からキリスト教に改宗した者が民家に集まりキリスト教信仰を行うこと(家の教会)について,イラン政府から逮捕・訴追されて身柄拘束を受けることが一般化しており,イラン政府から迫害を受ける蓋然性が 高まっていたと認められる。 以上を踏まえると,本件難民不認定処分がなされた平成24年10月25日時点では,イランにおいて,イスラム教からキリスト教に改宗した者については,改宗したことのみを理由にイラン政府によって逮捕,訴追等される蓋然性が高いとは認め難いものの,民家に集まっ てキリスト教信仰を行っている改宗者については,教会のリーダー層に限らず,一般の信者であっても,イラン政府によって逮捕,訴追等される蓋然性が高かったと認められる。 被告は,①2013年米国国務省報告書及び2015年英国内務省報告書によれば,逮捕されたキリスト教徒の一部が逮捕直後に釈放さ れた旨(甲11・11頁)や,イランにおいてキリスト教の改宗運動が活発に行われている旨(甲12・5.1.6)など,イラン政府が指導者以外のキリスト教信者に圧力をかけていないことをうかがわせる記載があること,②2015年英国内務省報告書及び2017年英国内務省報告書においては,最近は個人が背教者として刑罰を受けた 裁判所の判例はないとの記載(甲12・6.1.5)や通常の改宗者に関してはイランへの帰国時にリスクはあるが重大な危害をもたらす真のリスクではなく,活発に改宗活動をしな 教者として刑罰を受けた 裁判所の判例はないとの記載(甲12・6.1.5)や通常の改宗者に関してはイランへの帰国時にリスクはあるが重大な危害をもたらす真のリスクではなく,活発に改宗活動をしない人々は,目立たないようにキリスト教の宗教活動を継続できるとの記載(乙24・2.2. 6及び同2.2.10)があること及び③ノルウェー出身国情報セン ター報告書には,特定の裁判官以外の裁判官は起訴されたキリスト教 - 35 -改宗者に対して無罪を言い渡す傾向が強い(乙29・訳文5頁)と記載されていることなどからすれば,本件難民不認定処分時において,イスラム教からキリスト教に改宗し,キリスト教徒として活動しても,直ちにイラン政府から生命又は身体の自由を侵害され,又は抑圧されるとは認め難いと主張する。 しかし,①認定事実⑵オのとおり,2013年米国国務省報告書のうち被告の指摘する部分については,「イラン当局は,一部のキリスト教徒をほぼ逮捕直後に釈放しているが,残りの逮捕者を拘束している場所を明らかにせず,弁護士との接見も許可していない。イランの人権に関する国連特別報告官は,2013年7月時点でイラン当局が 少なくとも20人以上のキリスト教徒を拘束しているという報告書を提出した。」と記載されており(甲11・11頁),釈放された逮捕者以外に釈放されていない逮捕者がいることが記載されているし,2015年英国内務省報告書のうち被告の指摘する部分については,イラン政府がイスラム教からキリスト教への改宗者に対して圧力をかけ ていたとしても,社会状況等によっては,キリスト教の改宗運動が活発に行われることはあり得るから(なお,認定事実⑵ウのとおり,2015年英国内務省報告書のうち被告の指摘する部分では,「亡命者に見られるイスラム ても,社会状況等によっては,キリスト教の改宗運動が活発に行われることはあり得るから(なお,認定事実⑵ウのとおり,2015年英国内務省報告書のうち被告の指摘する部分では,「亡命者に見られるイスラム教徒からキリスト教徒への改宗及び海外のキリスト教徒と祖国との距離の縮小によって,キリスト教はこれまでにない 数でイラン全土に根付きつつある。」と記載されており(甲12・5. 1.6),キリスト教改宗者に対するイラン政府の対応については特段記載されていない。),イランにおいてキリスト教への改宗が多く行われていたとしても,そのことからイラン政府が指導者以外のキリスト教改宗者に圧力をかけていないと直ちに評価することはできない。 また,②認定事実⑵ウのとおり,2015年英国内務省報告書では, - 36 -最近は個人が背教者として刑罰を受けた判例はないとの記載に続いて,「マンスール・ブルジーは長期間にわたり投獄されていた女性のキリスト教改宗者の判例に言及した。」として,キリスト教改宗者が長期間投獄されていた判例についての記載がある(甲12・6.1.5)ことからすれば,被告の指摘する記載から改宗者が処罰されないとは いえないし,認定事実⑵エのとおり,被告の指摘する2017年英国内務省報告書の記載は,2008年(平成20年)の事例に基づくものであるところ,当該記載は,2017年(平成29年)時点において当該事例が妥当であることの根拠について何ら具体的な理由を述べていないことからすれば,被告の指摘する各報告書の記載をもって, 前記の判断が左右されるものではない。 さらに,③前記1の説示からすれば,イスラム教からキリスト教に改宗したことを理由に逮捕・訴追されることをもって「迫害」に該当するといえるから,無罪判決がなされること 判断が左右されるものではない。 さらに,③前記1の説示からすれば,イスラム教からキリスト教に改宗したことを理由に逮捕・訴追されることをもって「迫害」に該当するといえるから,無罪判決がなされることが多いとしても,身柄拘束がなされるとすれば「迫害」に該当するといえるし,特定の裁判官 と比較してその他の裁判官がキリスト教改宗者を無罪にする傾向が強いとしても,特定の裁判官によって審理されれば有罪判決を受ける蓋然性が相当程度あることに変わりはなく,当該記載をもってイラン政府によって生命又は身体の自由を侵害され,又は抑圧されるとは認め難いことが裏付けられているとはいえない。 以上からすれば,この点に係る被告の主張は理由がない。 イ原告のキリスト教徒としての活動について認定事実⑹ウないしオのとおり,原告は,イランにおいては,教会に行ったことはなく,聖書を読むのみであったが,本邦に入国した直後から現在までの11年以上の長期間にわたりB教会に通い続け,毎 週日曜日に行われる礼拝等にほぼ毎回参加し,奉仕活動等を行ってい - 37 -るだけでなく,聖書の内容をより理解するため,ペルシャ語が話せるE牧師を紹介してもらい,約1年間聖書の研究を行ったり,知り合いをB教会に連れてきたりしたことがあることなどからすれば,本件難民不認定処分時における原告のキリスト教に対する信仰は真摯なものであったということができる。 そして,上記のとおり,原告のキリスト教徒としての長期間にわたる教会等での活動からすれば,仮に原告がイランに帰国した場合には,本邦におけるキリスト教徒としての活動と同様,自宅で聖書を読むだけでなく,教会や民家などにおいて,定期的に他のキリスト教徒と礼拝や集会等を行うことが見込まれるところ,前記⑵で説示した た場合には,本邦におけるキリスト教徒としての活動と同様,自宅で聖書を読むだけでなく,教会や民家などにおいて,定期的に他のキリスト教徒と礼拝や集会等を行うことが見込まれるところ,前記⑵で説示したイ ランにおけるイスラム教からキリスト教に改宗した者に対するイラン政府の迫害状況を前提とすると,本件難民不認定処分当時,原告が,上記活動をすることによってイラン政府から逮捕,訴追等がされる蓋然性は高かったと認められる。 被告は,①原告は本邦において他の一般的なキリスト教徒と同様の 活動をしていただけであって,指導者やリーダーなどの立場にあったわけでなく,殊更にイラン政府から関心を寄せられ,宗教的迫害を受けるような活動には携わっていないこと,②原告が本邦において改宗した事実がイラン政府において知られている可能性が高いとはいえないことからすれば,原告が本邦でイスラム教からキリスト教に改宗し たとしても,原告がイラン政府から迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような個別かつ具体的な事情に当たるとはいえないと主張する。 しかし,原告が本邦において指導者やリーダーなどの立場になく,また,イスラム教からキリスト教に改宗した事実がイラン政府に知ら れていないなどの事情により,原告がイラン政府から関心を寄せられ - 38 -ていなくとも,前記で説示したとおり,原告がイランに帰国した後も本邦におけるキリスト教徒としての活動と同様の活動をすることを前提とすると,そのことを把握したイラン政府によって,逮捕,訴追等がされる蓋然性が高かったと認められるのであるから,通常人が当該人の立場に置かれた場合に迫害を受けるおそれがあるという恐怖を 抱くような客観的事情が存在していたといえる。 以上からすれば,この点に係 高かったと認められるのであるから,通常人が当該人の立場に置かれた場合に迫害を受けるおそれがあるという恐怖を 抱くような客観的事情が存在していたといえる。 以上からすれば,この点に係る被告の主張は理由がない。 ウその他の事情について被告は,①原告が本邦に入国後,イラン大使館を訪ね,難民認定申請をした旨申し出たこと,②原告が自己名義の真正な旅券によりイラ ンを出国していること及び③原告が本邦に入国した直後に庇護を求めたり,難民認定申請をしたりしていないことからすれば,原告につき迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような事情があったとは認められないと主張する。 しかし,①原告の供述によれば,原告は,イラン大使館において, 難民認定申請をしていると述べたものの,イラン大使館の職員から住所や電話番号を聞かれ写真を提出するよう言われ,連絡先を教えず,写真も提出せずに帰ったというのであるから(乙20・5及び6頁),原告がイラン大使館を訪ね,難民認定申請をしている旨を告げたことをもって,原告が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いていな かったとはいえない。 また,②及び③については,1回目の難民認定申請前の事情であるところ,当時のイランにおけるイスラム教徒からキリスト教徒に改宗した者に対するイラン政府の迫害状況を前提として,原告がイラン政府によっ て逮捕,訴追等がされる蓋然性が高かったと判断しているものであり, - 39 -仮に1回目の難民認定申請前において原告がイラン政府から迫害を受けるという恐怖を抱いていなかったとしても,本件難民不認定処分時において原告がイラン政府から迫害を受けるという恐怖を抱いていることと矛盾するものではない。 その点を措くとしても,前記⑴アで説示した けるという恐怖を抱いていなかったとしても,本件難民不認定処分時において原告がイラン政府から迫害を受けるという恐怖を抱いていることと矛盾するものではない。 その点を措くとしても,前記⑴アで説示したとおり,原告が本件デ モに参加したことによりイラン当局が殊更に原告に関心を寄せるとまでは認め難いこと及び認定事実⑹オのとおり,原告は,本邦に入国する前は,自宅で聖書を読んでいたものの,教会等に行ったことはないことからすれば,原告がイランを出国した平成19年当時においては,イラン政府は原告を迫害の対象としていたとはいえず,イラン政府が 原告につき旅券を発給したとしても原告の難民該当性を左右する事情になるとはいえない。 さらに,③認定事実⑸イ及びウのとおり,原告が本件難民認定申請をしたのは本邦に入国してから約1か月後であり,当該期間のみを見ても原告が速やかに難民認定申請を行っていないとまでは評価できず, 当該期間中も,原告は,本件空手団体の一員として入国した経緯から,同団体に同行していたのであり,同団体と別行動をとるようになった後も,特定非営利活動法人難民支援協会を訪れて難民認定申請について相談をするなどしていたことからすれば,原告が本邦に入国した直後に難民認定申請をしていなかったとしても,原告につき迫害を受け るおそれがあるという恐怖を抱くような事情がなかったとは評価できない,したがって,この点に係る被告の主張は理由がない。 エ小括以上からすれば,原告は,宗教を理由とする難民に該当すると認められ るから,原告が難民に該当しないとした本件難民不認定処分は違法であり, - 40 -同処分の取消しを求める原告の請求には理由がある。 4 本件義務付けの訴えについて難民認定は,本邦にある外国人から法務省 が難民に該当しないとした本件難民不認定処分は違法であり, - 40 -同処分の取消しを求める原告の請求には理由がある。 4 本件義務付けの訴えについて難民認定は,本邦にある外国人から法務省令で定める手続により申請があった場合に法務大臣又は法務大臣から委任を受けた地方入国管理局長(ただし,平成30年法律第102号による改正後の入管法においては出入国在留 管理庁長官)が認定することとされているから(入管法61条の2第1項,69条の2),本件義務付けの訴えは,いわゆる申請型の義務付けの訴えであるところ(行訴法3条6項2号),前記3⑵のとおり,本件難民不認定処分は違法であり取り消されるべきであるから,本件義務付けの訴えは,行訴法37条の3第1項2号の要件を満たし,適法である。 そして,前記3⑵のとおり,原告は宗教を理由とする難民に該当するから,入管法の規定からすれば,本件難民認定申請につき,行政庁が原告に対して難民認定処分をすべきことは明らかである(行訴法37条の3第5項)。 したがって,本件義務付けの訴えに係る原告の請求には理由がある。 第4 結論 よって,原告の請求は理由があるから,これらをいずれも認容することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官鎌野真敬 裁判官網田圭亮 - 41 - 裁判官野村昌也 - 42 -(別紙)指定代理人目録は記載を省略 裁判官野村昌也 主文 理由 事実 争点 判断 指定代理人目録は記載を省略
▼ クリックして全文を表示