【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第一点について。 所論は、本件物件につ
主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第一点について。 所論は、本件物件につき上告会社および被上告人間に売買契約が成立したと認定 した原判決には、公知の事実を無視し、条理に反して事実を認定した違法があると いう。しかし、本件物件の売買交渉に関し、原判決(引用の一審判決を含む。)の 確定したところによれば、被上告人国(海軍省)の契約事務を事実上担当していた 同省艦政本部係官が、契約担当官同省経理局長の意図の下に、昭和二〇年五月一八 日上告会社に対し税込代金四〇一万円で本件物件の売却方(被上告人国側からみれ ば買受方を意味するものと解される。)を申し込んだところ、代金額について合意 が成立せず、同日付で売買契約が成立するには至らなかつたが、同省経理局長は、 さらに同年八月一八日頃経理局員海軍主計少佐Dをして上告会社に対し、契約成立 の日を同年七月二八日、代金額税込四〇一万円で売却(前同)の意思表示を表明さ せたところ、上告会社代理人橋本豊次はその申込を承諾し、同少佐に対してその旨 同省経理局長への伝達を依頼すべく原判示売買契約書その他の関係書類を作成して 同少佐に交付し、一方、海軍省艦政本部会計部においては、通常は代金支払請求書 が提出されると契約原簿と対照して、これに合致する請求書は関係係官の決済を経 て支払事務担当者に引き継がれるが、合致しないものについては契約者に直ちに返 却していたものであるところ、上告会社が昭和二〇年一〇月二三日に提出した代金 四〇一万円の支払請求書は艦政本部会計課に受理され、関係係官の決済を経て代金 四〇一万円の支払措置がとられた(しかし、右代金はその後臨時資金調整法に基づ く政府特殊借入金として処理された。)というのであり、右 万円の支払請求書は艦政本部会計課に受理され、関係係官の決済を経て代金 四〇一万円の支払措置がとられた(しかし、右代金はその後臨時資金調整法に基づ く政府特殊借入金として処理された。)というのであり、右認定事実に照らせば、 - 1 - 本件売買契約については、被上告人国のした本件物件買受の申込を上告会社が承諾 したものであつて、その承諾の意思表示は昭和二〇年一〇月二三日以前に被上告人 国の契約担当官である海軍省経理局長に到達了知し得たものである旨の原審の判断 は、是認し得られ、従つて、右昭和二〇年一〇月二三日以前に被上告人国と上告会 社との間に本件物件について売買契約が成立した旨の原審の判断は、相当であり、 右認定判断の過程に所論のような経験則に違反する点は認められない。従つて、論 旨は採用できない。 同第二点について。 本件売買契約がなされた当時施行の旧会計法(大正一〇年法律四二号)および会 計規則(大正一元年勅令一号)のもとにおいては、国と私人間の私法上の契約につ いても、特別の定めもしくは特段の事情のないかぎり、双方の合意によつてこれが 成立するものと解すべきであり、従つて、本件売買契約について、被上告人国およ び上告会社間に契約書が作成されなかつたとしても、これを以て契約の成立を妨げ ることにはならないとする原審の判断は相当である。論旨は、独自の見解に立つて、 原審の適法にした判断を非難するに帰するものであつて、採用できない。 同第三点について。 原判決は、所論のように上告会社および被上告人国間の本件売買契約が終戦前に 成立したものと認定しているわけではなく、売買契約は終戦後に成立したものであ つても、すでに目的物件が戦争中に引渡を了している以上、たとえその代金額の決 定が終戦後になつても、臨時資金調整法施行令九条の六前段により右売買代金とし て支払われるべき 契約は終戦後に成立したものであ つても、すでに目的物件が戦争中に引渡を了している以上、たとえその代金額の決 定が終戦後になつても、臨時資金調整法施行令九条の六前段により右売買代金とし て支払われるべき金額につき政府特殊借入金が設定されたことは違法とはいえない と判示しているのであつて、原判示事実関係を同法の立法趣旨に照らして考察すれ ば、右判断は正当として肯認するに足りる。 さらに、本件売買代金について右のように政府特殊借入金が設定されたことが上 - 2 - 告会社に通知されたことは、原判決の確定したところであり、右通知がなされてい る以上、上告会社としては政府特殊借入金証書が交付されなかつたとしても戦時補 償特別措置法一四条一項により所定申告書を所定期間内に提出すべき義務を負うも のというべきであり、これと同趣旨に出た原判決の判断もまた相当である。従つて、 所論違憲の主張も前提を欠くに帰するから、論旨は採用できない。 上告代理人新家猛、同坂野滋、同瀬尾信雄の上告理由第一点について。 所論の理由のないことは、前記上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第二点 の主張について説示したとおりであつて、所論引用の当裁判所第三小法廷の判決は 国が当事者となり売買等の契約を競争入札の方法によつて締結する場合に関するも のであつて、本件とは事案を異にし適切ではない。従つて、所論は採用できない、 同第二点について。 原判決の確定した事実関係に照らせば、上告会社および被上告人国間の本件売買 契約がおそくとも昭和二〇年一〇月二三日以前に成立したものである旨の原審の判 断が首肯するに足りることは、前記上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第一 点に対する判断に説示したとおりであり、所論契約原簿に仮に契約書が編綴されて いなかつたとしても、右結論に影響するものとは認められない。論旨は、る ことは、前記上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第一 点に対する判断に説示したとおりであり、所論契約原簿に仮に契約書が編綴されて いなかつたとしても、右結論に影響するものとは認められない。論旨は、るる述べ るけれども、ひつきょうするに、原審の認定しない事実を主張して、原審の適法に した事実認定判断を非難するに帰するものであつて、採用できない。 同第三点について。 被上告人国において上告会社から本件売買契約の目的物件を上告会社の意に反し て強奪したことは原審の認定しないところであり、原判決によれば、上告会社は昭 和二〇年五月一八日被上告人国に対して右物件を売り渡すことを代金額の決定を除 いて一応了承し、右売買契約の完結を予期して同年同月二〇日右物件の引取が行な われ、その後代金額について両者間に交渉が継続された結果、代金額を金四〇一万 - 3 - 円と定めて、おそくとも昭和二〇年一〇月二三日までに売買契約が成立したという のであつて、右認定判断は原判決(引用の一審判決を含む。)挙示の証拠関係に照 らして、首肯しうるところである。そして、このように終戦後に成立した売買契約 であつても、すでに代金額の点を除き当事者間に売買交渉が一応まとまつてその完 結を予期して戦時中に売却物件の引渡を完了している場合には、右売買代金につき 政府特殊借入金を設定することは臨時資金調整法の立法趣旨に照らして違法とはい えないことは、前記上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第三点に対する判断 に説示したとおりである。従つて論旨は採用できない。 同第四点について。 論旨は、原判決が戦時補償特別措置法を適用したことを以て憲法二九条、三〇条 に違反するというが、その趣旨は、要するに、本件売買代金債権をなんらの補償な くして消滅させたことについてこれを違憲というにあるところ、本件売買代金債権 は、 置法を適用したことを以て憲法二九条、三〇条 に違反するというが、その趣旨は、要するに、本件売買代金債権をなんらの補償な くして消滅させたことについてこれを違憲というにあるところ、本件売買代金債権 は、原判示のように、戦時補償特別措置法一四条一項所定の申告がされなかつたた め、同法の適用上当然に右申告期限の経過した時、すなわち新憲法施行の日(昭和 二二年五月三日)前に消滅したものというべきであつて、このように、一定の法律 上の効果が旧憲法に基づく法律の適用上当然に旧憲法施行当時においてすでに消滅 し、新憲法施行後にわたつてまでその効果が存続せしめられない場合にあつては、 右消滅を規定する法律自体が新憲法に違背するか否かを判断する必要のないことは、 当裁判所の判例(昭和三四年(オ)第八二号同三七年一一月六日第三小法廷判決、 民集一六巻一一号二一九七頁参照)とするところである。 なお、論旨は、本件戦時補償特別税の課税処分時を云為するが、右主張にかかる 事実は原審においてなんら主張判断を経ないところであり、仮に右課税処分の手続 のなされた時が所論のとおり新憲法施行後であつたとしても、右課税ならびに徴収 処分の手続は、すでに戦時補償特別措置法によつて消滅している本件売買代金債権 - 4 - について、いわば事後処理として賦課徴収手続がなされたにすぎないものというべ く、戦時補償特別措置法が右代金債権を消滅させたことについてこれを違憲となし 得ない以上、右消滅した代金債権についての事後処理の手続を違憲となすことはで きない。従つて、論旨は採用できない。 同第五点について。 論旨は、戦時補償特別措置法は旧憲法二七条に違反するものであり、従つて右法 律を適用した原判決もまた旧憲法二七条に違反するものであるという。しかし、旧 憲法下において制定施行された法律が旧憲法に違反するかを実質的 時補償特別措置法は旧憲法二七条に違反するものであり、従つて右法 律を適用した原判決もまた旧憲法二七条に違反するものであるという。しかし、旧 憲法下において制定施行された法律が旧憲法に違反するかを実質的に審査する権限 は憲法八一条によつても裁判所に認められていないものと解すべきことは、当裁判 所の判例(昭和二六年(オ)第七九九号同三四年七月八日大法廷判決、民集一三巻 七号九一一頁参照)とするところであり、右判例の趣旨に従えば、戦時補償特別措 置法が所論旧憲法二七条に違反するかどうかは当裁判所において判断をなし得ない ところである。従つて、戦時補償特別措置法を適用した原判決を以て旧憲法に違反 する旨の論旨の理由のないことは、明らかなところである。論旨は、これと異なる 独自の見解にすぎないから、採用するに足りない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の とおり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 松 田 二 郎 裁判官 岩 田 誠 - 5 -
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