【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人宮内勉の上告理由について 抵当不動産につき、抵当権者自身を賃借人とする
主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人宮内勉の上告理由について 抵当不動産につき、抵当権者自身を賃借人とする賃貸借契約又は抵当債務の不履 行を停止条件として抵当権者が賃借権を取得することができるとの停止条件付賃貸 借契約が締結され、これを登記原因とする賃借権設定の登記又は仮登記が抵当権設 定登記とその順位を相前後して経由されることは、抵当権設定に際してしばしば行 われるところであるが、このような賃貸借契約及び賃借権設定の登記又は仮登記の 目的は、特段の事情のない限り、専ら、抵当権設定登記以後競売申立に基づく差押 の効力が生ずるまでに対抗要件を具備することによつて抵当権者に対抗することが できる第三者の短期賃借権を排除し、それにより抵当不動産の担保価値の確保をは かることにあると解するのが相当である。したがつて、競売申立に基づく差押の効 力が生ずるまでに対抗要件を具備した第三者の短期賃借権が現われないまま競落人 が競落によつて抵当不動産の所有権を取得したときには、抵当権者の賃借権は右目 的を失つて消滅し、その登記又は仮登記は実体関係を欠くことになるから、賃借権 設定の登記又は仮登記が抵当権設定登記よりも先順位である場合又は右賃借権が短 期賃借権である場合においても、競落人は、競落した抵当不動産の所有権に基づき、 その抹消登記手続を求めることができるものと解するのが、民法三九五条の解釈上 も正当であるといわなければならない。 本件についてみるのに、原審が適法に確定したところによれば、(1)本件土地家 屋は、もと訴外Dの所有するところであつたが、昭和四一年一二月二〇日、上告人 は、Dに対する債権担保のため、同人との間で、本件土地家屋につき、(イ)元本 - 1 - 極度額一〇〇万円の根抵当 本件土地家 屋は、もと訴外Dの所有するところであつたが、昭和四一年一二月二〇日、上告人 は、Dに対する債権担保のため、同人との間で、本件土地家屋につき、(イ)元本 - 1 - 極度額一〇〇万円の根抵当権設定契約、(ロ)Dが抵当債務の履行期を徒過したと きは、上告人は予約を完結したうえ代物弁済として本件土地家屋の所有権を取得す ることができるとの代物弁済予約、(ハ)Dが抵当債務の履行期を徒過したときは、 本件土地家屋につき存続期間を三年とする上告人のための賃借権が発生するとの停 止条件付賃貸借契約を各締結し、右各契約を登記原因とする根抵当権設定登記、所 有権移転請求権仮登記及び賃借権設定仮登記(以下「本件仮登記」という。)を各 経由した、(2)本件土地家屋には、訴外株式会社E相互銀行を権利者とする先順位 の抵当権が設定されていたところ、同銀行は、右抵当権に基づいて本件土地家屋の 競売を申し立て、昭和四二年七月一日その競売手続開始決定があり、昭和四三年一 一月二九日被上告人がこれを競落してその所有権を取得し、同年一二月二〇日所有 権取得登記を経由した、(3)右競売申立当時、Dの上告人に対する抵当債務は少な くとも六五万九二四〇円に達していたが、Dが第三者から差押を受けたときは期限 の利益を失うとの特約に基づき右債務の履行期が到来し、その不履行によつて本件 停止条件付賃貸借契約の条件が成就し、上告人は、本件土地家屋について存続期間 三年の賃借権を取得した、(4)本件仮登記が経由されたのち株式会社E相互銀行の 競売申立に基づく競売開始決定によつて差押の効力が生ずるまでに第三者のために 短期賃借権が設定された事実はない、というのである。このような事実関係のもと においては、上告人とDとの間に締結された本件土地家屋についての停止条件付賃 貸借契約は、特段の事情のない限り、専ら、本件仮登 短期賃借権が設定された事実はない、というのである。このような事実関係のもと においては、上告人とDとの間に締結された本件土地家屋についての停止条件付賃 貸借契約は、特段の事情のない限り、専ら、本件仮登記経由後競売申立に基づく差 押の効力が生ずるまでに第三者が対抗要件を具備した短期賃借権を取得した場合に、 これを排除して本件土地家屋の担保価値を確保する目的に出たものであると解する のが相当である。右特段の事情が認められないとした原審の認定判断は、原判決挙 示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、したがつてまた、上告人 の本件土地家屋に対する賃借権は、第三者の短期賃借権が設定されないまま被上告 - 2 - 人が競落によつて本件土地家屋の所有権を取得したことによつて、その目的を失い 消滅するに至つたものというべく、本件仮登記は実体関係を欠くものであつて抹消 を免れない。原審の認定判断は正当であつて原判決に所論の違法はなく(所論引用 の判例は本件に適切でない。)、論旨は採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主 文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 団 藤 重 光 裁判官 下 田 武 三 裁判官 岸 盛 一 裁判官 岸 上 康 夫 - 3 -
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