主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(略記等は,原判決に従う。) 1 本件は,川崎市が,川崎市土地開発公社から土地の取得を予定していることに関し,市の住民及び市内に事務所を有する社団である被控訴人らが,控訴人に対し,上記予定に係る取得行為は控訴人の裁量権を逸脱,濫用する違法な行為であるとして,上記取得に関する契約締結の差止めを求めた住民訴訟である。 原審は,被控訴人らの請求をいずれも認容した。 当裁判所も,原判決と同様の理由により,被控訴人らの請求をいずれも認容すべきものと判断した。 2 前提となる事実は,原判決の事実及び理由の「第2 事案の内容」欄2(原判決3頁6行目から同6頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及び争点に関する当事者の主張は,次項に当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決の事実及び理由の「第2 事案の内容」欄3及び4(原判決6頁23行目から同18頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 当審における控訴人の主張(1)議会の議決についてア地自法242条の2第1項1号に基づく差止め請求は,地方公共団体の長又は職員が違法な財務会計上の行為をすることが相当な確実性をもって予測されるときに限って認容され,当該財務会計上の行為が同法上議会の議決を経てされる以上,議会の議決がされることを踏まえて当該行為が違法となるか否かの判断をすべきである。 イ地自法96条1項8号の議決は普通地方公共団体の団体意思を決定するもので,同議決により普通地方公共団体の団体意思が決定された場合,長又は職員は,その議決を執行するこ 否かの判断をすべきである。 イ地自法96条1項8号の議決は普通地方公共団体の団体意思を決定するもので,同議決により普通地方公共団体の団体意思が決定された場合,長又は職員は,その議決を執行することができるだけで,当該財務会計上の行為をするかどうか,またその内容をいかにするかについて裁量の余地がない。本件の場合,川崎市議会において同条1項8号に基づき本件土地を公社から公社購入価格に利息及び事務費を加算した価格で取得する旨の議決がされた場合に限って,控訴人は,公社との間で公社購入価格で本件土地を取得する旨の契約を締結することになるが,議決がされた以上,当該財務会計上の行為をなすことは控訴人の義務であり,それが川崎市に対する職務上の義務に違反すると評価される余地はない。 ウ控訴人において本件土地を公社購入価格に利息及び事務費を加算した価格で取得する旨の契約を締結することが違法となるのは,川崎市議会の同契約について将来される議決に重大かつ明白な瑕疵があると認められる場合に限られるところ,原審(原判決12頁,13頁)において主張したとおり,本件について,当該議決に重大かつ明白な瑕疵が生ずることはあり得ない。 (2)市民保養所設置の必要性についてア既設保養所のうち,箱根市民保養所及び東伊豆市民保養所は,平成5年度以降も,客室利用率(部屋稼働率)はほぼ100パーセントを維持し,応募倍率に至っては約3倍であり,八ヶ岳市民休暇村の応募倍率は,平成8年度以降0.9倍から0.8倍である。これらの数値からすると,既設保養所の需要の減少傾向が著しいとはいえず,依然として保養所を利用したいとする市民の希望に対応できていない状況が明らかで,保養所そのものの数が不足しており,新たな保養所設置の必要性は,十分にある。また,既設保養所の利用人数は僅かな減少傾向が見 然として保養所を利用したいとする市民の希望に対応できていない状況が明らかで,保養所そのものの数が不足しており,新たな保養所設置の必要性は,十分にある。また,既設保養所の利用人数は僅かな減少傾向が見られるものの,部屋稼働率は,ほぼ100パーセント近くを維持している。このことは保養所の利用形態が多人数から少人数単位の利用に変化してきていることを示すもので,このような傾向は,川崎市の保養所だけでなく一般の宿泊観光施設にも同様に見られる。したがって,利用者数の減少をもって既設保養所に対する需要の減少傾向が顕著であるとはいえない。 イ原判決は,川崎市内から本件土地までの往復に,車を利用した場合8時間程度,電車・バスを利用した場合6時間以上かかり,市からやや離れた場所に存在するとし,公社が本件土地を取得する必要性があったかどうかについて疑問が生じるとするが,本来,土地の必要性について,目的地までの距離や所要時間の長短が絶対的な判断基準となることはない。現に,本件土地の近くにある既設保養所のα「あかがわ荘」は,川崎市内から往復,車で7時間程度,電車で5時間程度であるにもかかわらず,常に多くの市民に利用されている。一方,八ヶ岳市民休暇村は,川崎市内からの距離や所要時間が「あかがわ荘」と同程度で高速道路での利便がよいにもかかわらず,利用状況は他の2つの保養所よりもやや少ない。このことからも,目的地までの距離や所要時間の長短が土地の必要性についての絶対的な判断基準とはならないことが明らかである。 ウ川崎市における既設保養所設置の構想は,川崎市特有の公害問題を経験した歴史的な背景から生まれたものであるが,その後,社会情勢は高齢化,情報化の進展,産業構造の転換など厳しい変化を続けており,特に高齢化への対応は自治体に課せられた緊急の課題である。今後の川崎 経験した歴史的な背景から生まれたものであるが,その後,社会情勢は高齢化,情報化の進展,産業構造の転換など厳しい変化を続けており,特に高齢化への対応は自治体に課せられた緊急の課題である。今後の川崎市の高齢化率(65歳以上の者の総人口に占める割合)は,平成16年度で14.4%となる見込みである。こうした高齢者の人口推計の中,既設保養所の箱根市民保養所及び東伊豆市民保養所は,60歳以上の利用者が全体の5割から6割を占めており,以前から同様な傾向が続いている。このように,高齢者の人口が将来的に増加し,将来にわたり保養所の利用がさらに高まるものと推測でき,保養所の必要性もさらに高まる。第4保養所設置の構想のもととなった長寿保養所構想は,既設保養所設置の歴史的背景に加えて,健康な高齢者の増大に対応した健康の維持とゆとりある豊かな老後生活を支援していくという「豊かな長寿社会」や「生涯現役社会」の構築を目指す川崎市の総合的な施策の一環として考えられたものである。 エ以上のとおり,川崎市は従来から市民保養所の設置を一貫して重要施策として位置づけてきており,第4保養所の設置は,従来の市民保養所以上の積極的な機能を果たす重要な施策であり,そのための用地である本件土地を取得する必要性は高い。 (3) P1鑑定についてア国道接面による格差(プラス5%)認定について(ア) 国道に接面する土地は,国道との高低差が問題となり,一般的に,高低差は出入に不便を生じるため,とくに商業地においては減価の要因とされているが,景観,眺望を要する旅館,店舗を中心とする地域等においては減価要因とならない場合もあり,また,住宅地においても街路より高いことは,排水,景観などの面において有利なため,高い評価を受けることがある。下部平坦地の接面する国道及び当該地域の状況のほか,P1 は減価要因とならない場合もあり,また,住宅地においても街路より高いことは,排水,景観などの面において有利なため,高い評価を受けることがある。下部平坦地の接面する国道及び当該地域の状況のほか,P1鑑定が本件土地の最有効使用をリゾート施設敷地としていることを考慮すると,下部東側平坦地について,国道との高低差が1ないし2mあるからといって,P1鑑定及びこれに基づく原判決のように,国道接面によるプラス20%の増価をしないのは相当でなく,むしろ,西側平坦地同様プラス20%の補正をすべきである。 (イ) P1鑑定は,用途的地域を国道に接面する商業地(実際の用途も店舗敷地)とする取引事例Gと,用途的地域を国道背後の住宅地とする標準画地を比較するにあたって,標準画地に対して取引事例Gの環境条件にプラス15%の格差をつけている。ところが,P1鑑定は,標準画地と国道に接面する下部平坦地の比較にあたって,用途的地域が異なるにもかかわらず,環境条件について考慮しておらず,原判決も同様である。しかしながら,当該地域においては,国道に接面するか否かでその用途的地域を異にし,自ずと土地価格に差異が生じるから,標準画地と下部平坦地の比較にあたっては,環境条件による増価をすべきである。 (ウ) 下部東側平坦地の国道との高低差及び環境条件を考慮した国道接面による本件平坦地の増価率は,プラス13%となる。 イ分割利用による格差(マイナス5%)認定について(ア) P1鑑定は,上記アのとおり,本件平坦地の最有効使用を平坦部分を一体的に使用するリゾート施設敷地とし,その利用形態として,大型のリゾートホテル,大企業の社員向け保養所あるいは学校法人の野外施設が上げられ,各平坦地には宿泊施設,運動施設,緑地,散策路,園芸施設等を適宜配置していくとしている。 (イ) リゾート施設は ,大型のリゾートホテル,大企業の社員向け保養所あるいは学校法人の野外施設が上げられ,各平坦地には宿泊施設,運動施設,緑地,散策路,園芸施設等を適宜配置していくとしている。 (イ) リゾート施設は,通常,自然環境の良好な地域に,その地形,眺望及び景観等の自然環境を生かして計画されるものであることは周知の事実であり,完成後の景観も効用増につながる。したがって,連続する一つの平坦地に建物その他の施設が配置されるよりも,適当な傾斜がある宅地に建物その他の施設を配置した方が全体としての景観も良好となり,平坦地以上の効用を発揮する場合もある。以上を考慮すると,本件平坦地は,3区分されているため分割利用せざるを得ないが,上部及び下部平坦地の間に高低差が存在するので,リゾート施設敷地としては連続する平坦地よりも眺望,景観等において効用が発揮されることが予想され,本件平坦地が3区分されていることは,増価要因とはなっても,減価要因となることはない。 (ウ) 原判決(39頁以下)は,まとまって存在する土地と分散して存在する土地とを比較した場合,後者の方が土地の利用方法が限定されるとしてP1鑑定を支持するが,区分されていても,より高度の効用を発揮することがあり,本件平坦地は,まさにこれにあたる。したがって,P1鑑定が,本件平坦地の最有効使用をリゾート施設敷地としながら,本件平坦地が3区分されているため分割利用せざるを得ないことによる減価をしたのは矛盾しており,これを是認した原判決も,不当である。 ウ下部東側平坦地の崩壊の危険による格差(マイナス2%)認定についてP1鑑定は,下部東側平坦地の崩壊の危険と上部平坦地についての取付道路の安全性等の異なる要因を含めて土地利用限定として20%の減価としたうえ,これを本件平坦地全体に対する両平坦地の面積割合に従って P1鑑定は,下部東側平坦地の崩壊の危険と上部平坦地についての取付道路の安全性等の異なる要因を含めて土地利用限定として20%の減価としたうえ,これを本件平坦地全体に対する両平坦地の面積割合に従って,これらの要因による本件土地全体についての減価率を15%とし,さらに,これを両平坦地の面積割合で下部東側平坦地に2%(下部東側平坦地の崩壊の危険による減価率),上部平坦地に13%と配分した。ところが,P1鑑定の個別評価(3号評価)における同様の減価率は,マイナス50%とされており,これを本件平坦地全体の減価率にした場合はマイナス6%となり,一体評価の場合の上記マイナス2%と,個別評価の場合のマイナス6%との間に著しい開差が生じ,当該減価率2%は正当でなく,これを是認した原判決も不当である。 エ本件通路が開発基準を充足しないことによる格差(マイナス13%)についてP1鑑定は,上記ウのとおり,本件通路が開発基準を充足しないことによる格差として,上部平坦地にマイナス13%とした。ところが,P1鑑定の個別評価(2号評価)における同様の減価率は,マイナス40%とされており,これを本件平坦地全体の減価率にした場合はマイナス25%となり,一体評価の場合の上記13%と,個別評価の場合の25%との間に著しい開差が生じ,当該減価率13%は正当でなく,これを是認した原判決も不当である。 オ造成費の考量による格差(マイナス10%)認定について(ア) P1鑑定は,本件平坦地が現況雑種地であり,宅地とするための造成費を考量して減価10%とし,この減価率は開発基準を満たすような造成工事費として全体として7000万円と見積り,うち4700万円は防災工事であるとする。 (イ) このうち,下部東側平坦地について,P1鑑定は,一体評価では造成費を考慮せず,個別評価では宅地とす な造成工事費として全体として7000万円と見積り,うち4700万円は防災工事であるとする。 (イ) このうち,下部東側平坦地について,P1鑑定は,一体評価では造成費を考慮せず,個別評価では宅地とするための造成費の考量からマイナス10%の格差を設定し,一体評価と個別評価で異なる格差率を採用し,異なる扱いをしたことについて,何ら合理的説明をしておらず妥当でない。すなわち,P1鑑定は,一体評価では建物敷地として利用しないことがあるかもしれないとして造成費を考慮せず,個別評価では建物敷地としての利用を前提として造成費を考慮したことになり,一体評価であろうが,個別評価であろうが,その土地のもつ個別性に変わりはなく,両評価の間で減価率を異にするのは誤りであり,これを是認した原判決も不当である。 カ面大による格差(マイナス15%)認定について(ア) 本件土地は標準画地と比較すると面大地(地積過大地)であるが,面大地であるからといって,市場性等の減価を必ず必要とするのではない。面大地は,その利用方法について,一体利用と分割利用が考えられ,両者の選択は対象地の存する地域の土地利用の状況及び公法上の規制等を考慮して判定するものである。 (イ) βは,風光明媚な観光保養地域であり,町内には温泉観光旅館をはじめ,寮,保養所等が平成10年12月31日現在398軒存在しており,下賀茂地区においても,比較的規模の大きい旅館,ホテル等が存在する。P1鑑定は,本件平坦地の最有効使用の方法を平坦地を一体的に使用するリゾート施設敷地と判定しており,これは当該地域における本件平坦地のリゾート施設敷地としての需要の存在を当然の前提とし,一体利用を合理的と判断したものである。したがって,本件平坦地については,標準画地と比較して面積が過大であっても,リゾート施設敷地としての一体 のリゾート施設敷地としての需要の存在を当然の前提とし,一体利用を合理的と判断したものである。したがって,本件平坦地については,標準画地と比較して面積が過大であっても,リゾート施設敷地としての一体利用が市場の需給関係等を勘案して合理的と認められる以上,地積過大による減価を行なう必要はない。P1鑑定の面大による上記減価は不要であり,これを是認した原判決も不当である。 キ有効宅地化率の考慮による格差(マイナス10%)認定について(ア) 防災排水施設は,P1鑑定では山林部分に含まれ,平坦地部分に存しないことは明らかであり,かつ,そのほかに平坦地部分について特別の防災排水施設を必要とする具体的根拠はなく,上記減価は妥当でない。 (イ) 防災排水施設を敷地内に設置した場合,建物の建ぺい率及び容積率等の基準となる敷地面積から当該施設の面積は控除されず,当該施設の面積も敷地面積として有効に利用することが可能である。原判決が,防災排水施設に利用されている土地は有効に利用することができないとして,その分を減価したことは不当である。 ク上部平坦地の眺望について(ア) 本件土地が自然公園法第二種特別地域に指定されていることにより,普通地域に比較して各種の規制が存し,土地利用が制限され,これについて考慮する必要があるが,これは,行政的条件であって,P1鑑定が,環境条件である眺望とを混同して相殺したことは誤りであり,これを是認した原判決も不当である。 (イ) P1鑑定は,標準画地を自然公園法上の普通地域に存在するとし,標準画地の評価に際し,同法第二種特別地域に存する事例を2事例(事例G及びH)採用しているところ,地域要因比較にあたって,両事例が第二種特別地域に存在するにもかかわらず,行政的要因による比較をしておらず,また,同鑑定書に両事例に関し自然公園法の 事例を2事例(事例G及びH)採用しているところ,地域要因比較にあたって,両事例が第二種特別地域に存在するにもかかわらず,行政的要因による比較をしておらず,また,同鑑定書に両事例に関し自然公園法の地域の記載すらしていない。 (ウ) 以上のとおり,P1鑑定は,上部平坦地について眺望が良好である点を看過し,他方、事例G及びHについて第二種特別地域に存在することを把握せずに評価しており,これを是認した原判決も不当である。 ケ上部準平坦地の評価について(ア) 上部準平坦地は,宅地ではないものの,立木等が生育していないほぼ平坦なまとまった土地で,狭い山道により本件通路に接続しており,背後の急傾斜の山林と比較して,宅地等としての造成工事の容易な土地である。一般的に宅地見込地として利用可能な土地というのは,傾斜地であったり,高低差のある土地であったりするのが通常であり,また,接道については道路に接していれば優れる方で,接面道路はないが道路に近接し,道路の取付けが物理的,経済的に可能な土地は宅地見込地としてはやや優れるか普通という評価をされる。また,控訴人においても,本件準平坦地について,当初よりスポーツ・レクリエーション野外活動ゾーンとして位置付けており,背後の山林とは異なった土地利用を検討していた。 (イ) したがって,本件準平坦地を熟成度のやや低い宅地見込地と評価したP2鑑定を排斥した原判決(50頁)の判断は,経験則に反する違法なものである。 コ本件通路の評価について本件通路は,認定外公道を含めて巾員約5m,延長約280mの道路であり,旧来から存した認定外道路の付替えにより,自己所有地の有効活用のため整備された宅地内の専用道路で,本件通路の利用上の価値を増価したものであり,その評価については,一般的な道路の評価方法を採用すべきである。道路の評 認定外道路の付替えにより,自己所有地の有効活用のため整備された宅地内の専用道路で,本件通路の利用上の価値を増価したものであり,その評価については,一般的な道路の評価方法を採用すべきである。道路の評価は,更地価格に道路の種類等による減価割合を乗じた額を控除して算出すべきである。P1鑑定が本件通路を林地等傾斜地と同等のものとして評価したことは,不当である。 サ既存防災工事部分(その他のり地部分)の評価について(ア)防災工事施工法面は,現況上,上部平坦地の南側保護面(上部平坦地と一体となった土地)となっており,山林とは位置も異なり,また山林と全く効用を異にする土地である。それにもかかわらず,P1鑑定が山林として評価したことは,効用を無視した不適切な評価であり,これを是認した原判決は,当該評価について合理的理由を欠いた誤ったものというほかない。本件土地の防災工事は,平成3年に1億0670万円,同4年に1億5000万円をかけて行われており,当該防災工事の施工部分が倒壊して存在しないなどの特段の事情がない以上,上記防災工事費について残存耐用年数に応じた価値が残存しているというべきところ,P1鑑定はこの事実を全く無視し,何ら合理的な根拠なく同部分を山林の2倍の効用を有するとして評価し,原判決もこれを是認しており,いずれも経験則に著しく反する。 (イ) その他のり地部分のような大規模な宅地見込地における崖地の評価については,一般的には,崖地に接する土地の更地価格について,崖地の方位,傾斜等の要因を考慮した崖地格差率を乗じた評価とされている。その他のり地部分は,上部平坦地の南側に面しており,平坦地を100とした場合の格差率は50から80となる。平坦地に接するのり地は,平坦地と一体になる一つの土地と考えるべきであり,P1鑑定は,このような大規模な宅地 は,上部平坦地の南側に面しており,平坦地を100とした場合の格差率は50から80となる。平坦地に接するのり地は,平坦地と一体になる一つの土地と考えるべきであり,P1鑑定は,このような大規模な宅地見込地における崖地の評価を誤ったもので,これによった原判決も不当である。 第3 当裁判所の判断 1 本件土地取得の適否についての判断基準原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄1(原判決18頁16行目から同21頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。これによれば,当審における控訴人の主張(1)(議会の議決)は,理由がない。 2 本件土地の取得の適否(1) 当裁判所も,第4保養所の設置の必要性は高いとはいえないものの,同保養所の設置自体は控訴人の裁量の範囲内であって,控訴人が本件土地の取得を公社に依頼してこれを取得しようとしていることがその裁量権を濫用した違法なものとはいえないと判断する。その理由は,原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄2(原判決21頁16行目から同23頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 当審における控訴人の主張(2)についてア東京圏の住民が宿泊を伴う旅行を希望する地域を調査した結果によると,伊豆は,北海道,九州に次いで高い率を維持しており,観光旅行の主な目的として,温泉に入ることが最も多い。(乙26)一方,高齢化現象が進むなかで,既設保養所の箱根市民保養所及び東伊豆市民保養所について,60歳以上の利用者が全体の60%を占め,年々その率が増加している。(乙30)温泉を活用した保健事業を行っている市町村の老人医療費の伸びが,これをしていない市町村のそれに比較し低いとの研究報告が平成12年に国民健康保険中央会によりされ,保健事業に温泉を活用することが提唱 温泉を活用した保健事業を行っている市町村の老人医療費の伸びが,これをしていない市町村のそれに比較し低いとの研究報告が平成12年に国民健康保険中央会によりされ,保健事業に温泉を活用することが提唱されている。(乙32)イしかしながら,原判決(原判決22頁23行目から同23頁24行目まで)が判示するとおり,既設保養所の需要自体減少傾向が顕著であることに照らすと,第4保養所の設置の必要性及び合理性に疑問があるほか,本件土地が川崎市からの往復に不便であるとの交通事情や,本件土地自体の安全性についても問題があることを考慮すると,上記アを斟酌しても,本件土地に第4保養所を設置する必要性が高いとはいえない。 3 本件土地における開発行為等の許可の要否等原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄3(原判決23頁25行目から同26頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 公社購入価格の過大の有無(1) 当裁判所も,本件土地の平成8年12月9日時点での適正な価格は,一体的な評価によるP1評価額(3億9410万円)と認めるのが相当であり,市が公社から同適正価格を基礎とした金額(同金額並びにこれに対する平成8年12月9日から市取得時までの利息及び事務費)を超える金額で取得することは,控訴人の裁量権を逸脱,濫用する違法をもたらし,差止めを認めるのが相当であると判断する。その理由は,原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄4及び5(原判決26頁7行目から同57頁9行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 当審における控訴人の主張(3)についてア同アについて(ア) 同(ア)についてa 下部東側平坦地と前面の国道との間には,1ないし2mの段差があって,その部分には石積みがある程度であり,同平坦地を園地 おける控訴人の主張(3)についてア同アについて(ア) 同(ア)についてa 下部東側平坦地と前面の国道との間には,1ないし2mの段差があって,その部分には石積みがある程度であり,同平坦地を園地,園芸地や駐車場として使用するに際しては,造成工事を行う必要がある(P1鑑定書〔18頁の3号評価〕,原審証人P1の証言)。 b この事実によれば,下部東側平坦地と前面の国道との間に上記高低差があることは,造成を要することにより減価要因となり,本件全証拠によっても,排水,景観などの面で上記高低差が増価要因となるとすべき事情を認めるに足りない。原判決(38頁20行目から同39頁15行目まで)が,国道接面による増価を下部西側平坦地に限って認めた点に違法はない。 (イ) 同(イ)についてaP1鑑定が使用した取引事例Gは,本件土地の東方に所在し,北東側で国道に接面する土地であり,周囲に神社,ホテル,公園がある。これに対し,同鑑定が想定する標準画地(国道背後の幅員4mの舗装された公道に接面する。)と下部平坦地は,その南側に国道が通じる互いに近接する土地であるが,周囲に上記のような施設等はなく,土地利用の状況等の環境条件について差異がない。(P1鑑定,乙35)b この事実によれば,P1鑑定が環境条件において取引事例Gに15%の格差を認めたのは相応の根拠のあることで,同鑑定が想定する標準画地(国道背後の幅員4mの舗装された公道に接面する。)と下部平坦地は,用途的地域が異なるとしても,環境条件において,下部平坦地に増価を認めるべきほどの事情はない。 イ同イについて(ア) 本件平坦地は,3つに別れ,下部平坦地と上部平坦地との高低差が約40mあり,平均勾配14%,全長約280mの本件通路で互いに結ばれていて,分割利用せざるを得ない(原判決4頁,5頁)。 ( て(ア) 本件平坦地は,3つに別れ,下部平坦地と上部平坦地との高低差が約40mあり,平均勾配14%,全長約280mの本件通路で互いに結ばれていて,分割利用せざるを得ない(原判決4頁,5頁)。 (イ) 以上の対象地の現況からすると,本件平坦地は,その最有効利用がリゾート施設敷地として一体的に使用することであるものの,原判決(39頁16行目から同40頁2行目まで)が,3区分されているため分割利用せざるを得ないことは,減価要因となると判断したことに違法はなく,控訴人主張のように増価要因とすべき裏付けに欠ける。 ウ同ウからオについて(ア) aP1鑑定は,本件土地を一体のものとして評価した場合(1号評価)の評価額のほか,そのうち上部平坦地,下部東側平坦地及び下部西側平坦地を単独で評価(それぞれ2号評価から4号評価)した場合の評価額を算定している。(P1鑑定)bP1鑑定は,その1号評価において,下部東側平坦地の崩壊の危険による格差マイナス2%を認めているが,その3号評価において,同様の減価率をマイナス50%(同減価率を本件平坦地全体の面積で除した上,下部東側平坦地の面積を乗ずると,約マイナス6%となる。)としており(P1鑑定),両者間に,開差が認められる。 cP1鑑定は,その1号評価において,本件通路が開発基準を充足しないことによる格差マイナス13%を認めているが,その2号評価において,同様の減価率をマイナス40%(同減価率を本件平坦地全体の面積で除した上,上部平坦地の面積を乗ずると,約マイナス25%となる。)としており(P1鑑定),両者間に,開差が認められる。 dP1鑑定は,その1号評価において,本件平坦地について都市計画法上の開発基準をクリアするための造成費の考量からの減価をマイナス10%とし,具体的には,同造成工事費として70 開差が認められる。 dP1鑑定は,その1号評価において,本件平坦地について都市計画法上の開発基準をクリアするための造成費の考量からの減価をマイナス10%とし,具体的には,同造成工事費として7000万円を要し,うち4700万円が雨水対策費であるとするものの(原判決41頁以下),このうち,下部東側平坦地については,造成費を考慮しないとする(原審証人P1の証言)にもかかわらず,その3号評価においては,宅地とするための造成費の考量からマイナス10%の格差を認めている(P1鑑定)。 (イ) この事実によれば,P1鑑定における1号評価と2号評価及び3号評価とを比較すると,①下部東側平坦地の崩壊の危険による格差,②本件通路が開発基準を充足しないことによる格差,③造成費の考量による格差の各認定について,控訴人主張の疑問点がなくはない。しかしながら,P1鑑定は,1号評価と2号から4号評価とでは前提条件が上記のとおり異なっており,本件土地の評価について結論として一体評価(1号評価)を妥当としており,個別評価を採用していない(原審証人P1の証言)のであるし,個別評価における上記格差率を採用すれば,本件土地の適正価格はより低額となり,1号評価と2号評価及び3号評価との間に,上記開差等があることは,上記(1)の判断の妨げとならない。 エ同カについて原判決(42頁18行目から同43頁20行目まで)が判示するとおり,本件土地自体過去頻繁に取引された土地でなく,本件土地が需給関係がひっ迫している地域の土地であるともいえず,本件平坦地をリゾート施設敷地として一体利用することが市場の需給関係等を勘案して合理的と認めるにも足りず,P1鑑定が面大による格差を認めたのが不当とはいえない。 オ同キについて(ア) 同(ア)について原判決(43頁21行目から同44頁1 ことが市場の需給関係等を勘案して合理的と認めるにも足りず,P1鑑定が面大による格差を認めたのが不当とはいえない。 オ同キについて(ア) 同(ア)について原判決(43頁21行目から同44頁15行目まで)が判示するとおり,P1鑑定は,防災排水施設(調整池,U字側溝)の設置に要する面積を積算し,当該面積が本件平坦地(雑種地)の約10%になり,防災排水施設に要する土地は有効に利用することができないとして減価しており,このような減価を不相当とすべき事由は見当たらない。 (イ) 同(イ)について防災排水施設を敷地内に設置した場合に,建物の建ぺい率及び容積率等の基準となる敷地面積から当該施設の面積が控除されないとしても,上記(ア)のとおり,当該設置部分の土地の利用が限定され,防災排水施設に要する土地は有効に利用することができないとして,原判決(同上)が評価額を減額したことについて不相当とすべき理由はない。 カ同クについて(ア) 同(ア)についてaP1鑑定は,上部平坦地の眺望が優れているとしながらも,同平坦地が自然公園法の第二種特別地域に指定され,これに基づく規制があることにより相殺されるとして,眺望が優れていることによる格差を認めなかった。(P1鑑定,原審証人P1の証言)b 控訴人主張のとおり,眺望の良さは環境条件に,自然公園法の第二種特別地域に指定されていることは行政的条件にそれぞれ当たるとしても,P1鑑定が,上部平坦地の眺望が優れていることについて,上記aの理由により格差を認めなかったことは,なお鑑定人の裁量の範囲内ということができ,誤りとまではいえない。 (イ) 同(イ)についてP1鑑定は,行政的条件を含めて,標準画地と各取引事例との地域要因を比較しており(原判決別紙5),各取引事例について当該土地が自然公園法の普通地域と 誤りとまではいえない。 (イ) 同(イ)についてP1鑑定は,行政的条件を含めて,標準画地と各取引事例との地域要因を比較しており(原判決別紙5),各取引事例について当該土地が自然公園法の普通地域と第二種特別地域とのいずれに所在するかの記載がないことをもって,P1鑑定が行政的条件を考慮していないとはいえない。(原審証人P1の証言)キ同ケについて当裁判所も,上部準平坦地は山林の一部として評価するのが相当であり,宅地見込地として評価すべきでないと判断する。その理由は,原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄4(6)イ(ア)(原判決44頁17行目から同45頁14行目まで)及び同4(8)ウ(原判決50頁11行目から同25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。原判決の判断は,違法とはいえない。 ク同コについて本件通路は,本件平坦地外の山林等傾斜地に所在し,宅地内の道路とは異なるというべきであり(原判決別紙1),原判決(45頁15行目から同46頁4行目まで)が判示するとおり,P1鑑定が,山林等傾斜地に本件通路及び防災工事の実施されたのり面が存在することにより,合計20%の増価をしたことは,相当と認められる(P2鑑定〔原判決48頁〕が,本件通路について,平坦地C部分の想定画地の更地価格を標準として評価したことは相当でない。)。P1鑑定が本件通路を林地等傾斜地と同等のものとして評価したことをもって不当とはいえない。 ケ同サについて(ア) 同(ア)についてa 当裁判所も,その他のり地部分を宅地見込地として評価すべきでないと判断する。その理由は,原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄4(8)エ(原判決50頁末行から同52頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 b 防災工事の施工により,防災 断する。その理由は,原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄4(8)エ(原判決50頁末行から同52頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 b 防災工事の施工により,防災工事施工法面が上部平坦地の南側保護面となっていると認められるものの(原審における釈明処分の結果),上記aのとおり,その他のり地部分を宅地見込地として評価すべきでなく,上記クのとおり,本件通路及び防災工事がされたその他のり面について,林地等傾斜地の標準画地の2倍の効用があるとした上で,20%の増価を認めたP1鑑定が相当である。 (イ) 同(イ)について上記(ア)aのとおり,その他のり地部分を宅地見込地として評価すべきでない以上,P1鑑定及びこれに従った原判決の判断に違法な点は見当たらない。 第4 結論以上によれば,原判決は相当であり,控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第1民事部裁判長裁判官江見弘武裁判官岩田眞裁判官原啓一郎
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