- 1 -主文被告人を懲役4年6月に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1平成20年7月31日午後5時12分ころ,愛媛県東温市a番地付近道路において,酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,普通乗用自動車(以下「被告人車」という)。 を運転した第2前記日時ころ,前同所において,被告人車を運転中,被告人車をA運転の大型貨物自動車(以下「A車」という)に追突させ,A車の後部リヤバンパー。 等を損壊(損害額11万1263円相当)する交通事故を起こしたのに,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった第3前記第2の交通事故現場から松山市方面に向かい逃走しようと企て,同日午後5時13分ころ,被告人車を運転し,愛媛県東温市b番地先の片側車線の車道幅員約3メートルの道路において,B運転の普通乗用自動車(以下「B車」という)等4台の先行車両を認めるとともに,対向して進行してくるV運転。 の普通乗用自動車(軽四(以下「V車」という)を前方約153.8メー)。 トルの地点に認めたが,V車の通行を妨害する目的で,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約80キロメートル以上の速度で対向車線上にはみ出,,して先行車両の追越しを始め対向してくるV車に被告人車を著しく接近させ道路左端に避譲しようとしたB車右側面に被告人車左前部を衝突させて対向車線上に進出し,そのまま被告人車前部をV車前部に正面衝突させ,Vに心破裂の傷害を負わせ,よって,同日午後6時33分ころ,同市c番地d病院におい- 2 -て,同人を同傷害により死亡させたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第 突させ,Vに心破裂の傷害を負わせ,よって,同日午後6時33分ころ,同市c番地d病院におい- 2 -て,同人を同傷害により死亡させたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 争点 判示第3の危険運転致死罪の成否(被告人にV車の通行を妨害する目的があったか否か)第2 判断 関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 ( )被告人は,酒気を帯びた状態で被告人車を運転し(判示第1,西条市 )方面から松山市方面に向かう途中,A車の後部に追突する交通事故(判示第2の交通事故)を起こしたが,停止することなく運転を継続した。 ( )上記追突により,被告人車の左前輪タイヤがパンクしたため,車体がふ らついたり,車体が左に流れるようになるなど,走行が不安定となり,進路左側の縁石に前輪を接触させたり,進路右側の対向車線に進出して右側ガードレールに車両を衝突させるなどした。 ( )被告人は,遅くとも,縁石に前輪が接触した後,車両の走行が安定しな いことに気付いていたが,そのまま車両の運転を継続し,ガードレール衝突後も再び車両を走行させ,速度を上げて自車走行車線を走行する先行車両に追い付いた。 ( )被告人の前方には,4台の先行車両があり,先頭から2台目がB車であ った。これらの車両は,いずれも相応の車間距離をとり,時速約50キロメートルないし約55キロメートルで走行していた。 ,,,( )被告人は先行車両に追い付いた後その台数が四五台であると認識し さらに,前方約153.8メートルの地点に対向走行するV車を認めたが,- 3 -先行車両を追い越すため,中央線をまたぐようにして車両の一部を対向車線上にはみ出し,時速約80キロメートル以上の速度で走行した。 ( )そして,被告人車がB車の横を追い抜こうと めたが,- 3 -先行車両を追い越すため,中央線をまたぐようにして車両の一部を対向車線上にはみ出し,時速約80キロメートル以上の速度で走行した。 ( )そして,被告人車がB車の横を追い抜こうとした際,同車の右側面に接 触して対向車線に車体を完全に進出させ,対向進行してきたV車と正面衝突した。 ( )追越しを開始した現場の道路は,最高速度50キロメートル毎時に制限 された片側一車線の道路で,片側車線の車道幅員は約3メートル,路側帯の幅員は約0.8メートル,道路全体の幅は,約7.6メートルであり,中央線上に,追越しのための右側部分はみ出し禁止の規制がなされていた。 ( )被告人は,現場の道路を何度か通行した経験があり,道路の形状及び交 通規制の内容をよく認識していた。 ( )各車両の車幅は,被告人車が1.90メートル,V車が1.47メート ル,B車が1.69メートルであった。 以上の事実関係によると,被告人は,比較的近接した地点で対向進行してく,,るV車を認めたにもかかわらず自車走行車線に先行車両が4台連なる状況で反対車線にはみ出し,時速約80キロメートルもの高速度で追越しを開始したのであり,その行為は,客観的に認められる道路状況からして,V車に対し,急制動や急転把などの被告人車との衝突の危険を回避する措置をとらせることを余儀なくさせるものであり,V車の自由かつ安全な通行を妨げるものであることは明らかである(この点は,弁護人が指摘する路側帯を含めた道路幅全体と各車両の幅員の合計を対比したとしても揺るがない。 。)被告人は,このような状況をよく理解しており,それにもかかわらず,あえて先行車両の追越しを開始している。そして,A車への追突からV車との衝突までの被告人車の走行状況,すなわち,A車への追突後,縁石に接触した ,このような状況をよく理解しており,それにもかかわらず,あえて先行車両の追越しを開始している。そして,A車への追突からV車との衝突までの被告人車の走行状況,すなわち,A車への追突後,縁石に接触したり,反対車線のガードレールに衝突し,走行が不安定であるのを自覚してもなお停止することなく運転を継続し,速度を上げて先行車両に追いつき,更にはそれ- 4 -を追い越そうとしたことをみれば,その追越し行為は,被告人が,飲酒運転による交通事故の発覚をおそれ,その場から何とかして逃走しようとしてしたものであることは明らかである。 そうすると,被告人は,V車との衝突を意図していたものではないにせよ,自らの走行が,V車の自由かつ安全な通行をおびやかす危険なものになることを十分理解しながら,逃走目的を達成するためあえてその行為に及んだのであって,結局,V車の通行を妨害する積極的な意図を有していたものと認められる。 以上のように,被告人がV車を前方に認めながら,反対車線にはみ出して先行車両の追越しを開始した時点で,V車の通行を妨害する目的を有しており,その目的の下,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約80キロメートル以上の速度で進行し,対向してくるV車に著しく接近し,最終的には先行車両に接触して対向車線に自車を完全に進出させてV車と正面衝突し,Vを死亡させたのであるから,被告人には危険運転致死罪が成立することとなる。 (法令の適用)判示所為判示第1道路交通法117条の2の2第1号,65条1項,道路交通法施行令44条の3判示第2道路交通法119条1項10号,72条1項後段判示第3刑法208条の2第2項前段(1項前段の致死の場合)刑種の選択判示第1及び第2いずれも懲役刑を選択併合罪加重刑法45条前段,47条本 19条1項10号,72条1項後段判示第3刑法208条の2第2項前段(1項前段の致死の場合)刑種の選択判示第1及び第2いずれも懲役刑を選択併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条(量刑の理由)- 5 -本件は,被告人による道路交通法違反(酒気帯び,事故不申告,及び通行妨害)目的による危険運転致死の各事案である。 ,,,,,まず酒気帯び運転については被告人は当日空港まで妻を迎えに行くため自動車を運転する予定であったにもかかわらず,朝から2度にわたり飲酒し,その酔いを自覚しながら安易に運転行為に及んだものであって,その走行経路が長いことにかんがみても,現に追突事故を起こす危険な走行に及んだということにかんがみても,犯情悪質である。 そして,追突事故を起こしながら,自己保身から,その場から逃走しようとしたことは,立場ある社会人としてあるまじき行為であって,厳しい非難に値する。 もとより,危険運転致死については,無謀ともいえる運転行為により重大事故を惹起し,何ら落ち度のない,将来のある被害者を死亡させるという悲惨な結果を生じさせているのであって,被害者遺族が被告人に対する厳重な処罰を求めるのも当然である。 以上からすると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 そうすると,危険運転致死については,先行車両への接触によって対向車線に完全に進出してしまった結果,被害が大きくなった経過があること(ただし,その原因は,車両前輪のパンクが影響したと考えられ,被告人は走行が不安定になったことを知っていたのであるから,この点を過度に有利に考慮できない,被告人が。)道路交通法違反の各事実を認めるとともに,自 因は,車両前輪のパンクが影響したと考えられ,被告人は走行が不安定になったことを知っていたのであるから,この点を過度に有利に考慮できない,被告人が。)道路交通法違反の各事実を認めるとともに,自らの軽率な行動により重大事故を生じさせた点について,反省と謝罪の弁を述べていること,被告人車に付された任意保険により既に101万円余りが支払われており,今後相応の賠償がなされる見込みがあること,被告人側においてこれとは別に弁護人に200万円を託し,見舞金として被害者遺族に渡す意向を示していること,被告人の長男が被告人の監督を誓約していること,自業自得とはいえ,本件犯行により医療法人の理事職を解任されるなど,相応の社会的制裁も受けていること,これまで処罰されることなく過ごしてきたことなどの被告人のために酌むべき事情を総合考慮しても,被告人を主文の- 6 -刑に処することはやむを得ないというべきである。 (求刑・懲役6年)平成20年12月11日松山地方裁判所刑事部村越一浩裁判長裁判官西前征志裁判官渡辺健一裁判官
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