令和2(ネ)78 小松基地戦闘機離着陸差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年3月16日 名古屋高等裁判所 金沢支部 金沢地方裁判所 平成20(ワ)847
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判決文本文56,718 文字)

1 主 文 1 一審原告ら(ただし、原告番号2118ないし2122の5名を除く。)の 控訴並びに一審被告の控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更 する。 ⑴ 本件訴訟のうち、別紙死亡原告目録記載の者の航空機の離着陸等の差止 め及び音量規制の請求に関する部分は、同目録の「死亡年月日」欄の日の 同人らの死亡によりいずれも終了した。 ⑵ 本件各訴え(⑴に係る部分を除く。)のうち、次の各部分をいずれも却下 する。 ア 自衛隊が使用する航空機の離着陸等の差止め及び音量規制の請求に関す る部分 イ 令和4年3月1日以降に生ずべき損害(慰謝料)の賠償請求に関する部 分 ⑶ 一審被告は、一審原告ら各自(ただし、原告番号2118ないし2122 の5名を除く。)に対し、次の各金員を支払え。 ア 別紙認容額一覧の各一審原告に対応する「⑬慰謝料総額(円)(A期 間)」欄及び「⑭弁護士費用(円)(A期間)」欄記載の各金員並びにこ れらに対する一審原告ら(第1事件)についてはいずれも平成21年3月 31日から、一審原告ら(第2事件)についてはいずれも同年5月9日か ら各支払済みまで年5分の割合による金員 イ 別紙認容額一覧の各一審原告に対応する「⑲慰謝料総額(円)(B期 間)」欄記載の金員並びに「⑮B期間の初月」欄記載の月から「⑯B期間 の末月」欄記載の月までの各歴月に対応する「⑩調整後慰謝料月額(円)」 欄記載の金額に対するその各翌月1日から各支払済みまで、令和2年3月 までの歴月分については年5分の、令和2年4月以降の歴月分については 年3%の各割合による金員 2 ⑷ 一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 2 原告番号2118、同2119、同2120、同2 ついては年5分の、令和2年4月以降の歴月分については 年3%の各割合による金員 2 ⑷ 一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 2 原告番号2118、同2119、同2120、同2121及び同2122の 一審原告らの控訴をいずれも棄却する。 3 一審原告らの当審における拡張請求のうち、令和4年3月1日以降に生ずべ き損害(弁護士費用)の賠償請求に関する部分をいずれも却下する。 4 一審被告は、一審原告ら各自(ただし、原告番号2118ないし2122の 5名を除く。)に対し、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する「㉑弁護士 費用(円)(B期間)」欄記載の金員並びに「⑮B期間の初月」欄記載の月 から「⑯B期間の末月」欄記載の月までの各歴月に対応する「⑳弁護士費用 月額(円)」欄記載の金額に対するその各翌月1日から各支払済みまで、令 和2年3月までの歴月分については年5分の、令和2年4月以降の歴月分に ついては年3%の各割合による金員をそれぞれ支払え。 5 一審原告らのその余の当審における拡張請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用については、原告番号2118、同2119、同2120、同21 21及び同2122の各一審原告に生じた費用は、第1、2審を通じて、同 一審原告らの負担とし、その余の一審原告らに生じた費用は、第1、2審を 通じてこれを10分し、その9を同一審原告らの負担とし、その余を一審被 告の負担とし、一審被告に生じた費用は、第1、2審を通じてこれを20分 し、その9を一審原告らの負担とし、その余を一審被告の負担とする。 7 この判決の1項⑶及び4項は、この判決が一審被告に送達された日から14 日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、一審被告が、一 審原告に対し、別紙認容額一覧の同一審原告に対応する「㉓担保額(円)」 欄記 ⑶及び4項は、この判決が一審被告に送達された日から14 日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、一審被告が、一 審原告に対し、別紙認容額一覧の同一審原告に対応する「㉓担保額(円)」 欄記載の金額の担保を供するときは、一審被告は、その仮執行を免れること ができる。 事 実 及 び 理 由 第1 当事者の求めた裁判 3 1 一審原告らの控訴の趣旨 ⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 差止請求 ア 一審被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、一審原告らのために、 小松飛行場において、毎日午後0時から同2時及び毎日午後6時から翌日 午前7時までの間、一切の軍用機を離発着させたり、そのエンジンを作動 させたりしてはならない。 イ 一審被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、一審原告らのために、 小松飛行場の使用により、毎日午前7時から午後0時及び毎日午後2時か ら午後6時までの間、一審原告らの居住地に対し70ホン(A)を超える一 切の軍用機の発する騒音を到達させてはならない。 ⑶ 損害賠償請求 一審被告は、一審原告ら各自に対し、次の各金員を支払え。 ア 120万円及びこれに対する第1事件原告らについては平成21年3月 31日から、第2事件原告らについては同年5月9日から各支払済みまで 年5分の割合による金員 イ 第1事件原告らについては平成21年3月31日から、第2事件原告ら については同年5月9日から、一審被告が自ら又はアメリカ合衆国軍隊を して一審原告らのために上記⑵のア及びイの各措置をなし又はなさしめる までの間、毎月末日限り、各5万円及びこれに対するそれぞれ発生月の翌 月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員 ウ 第1事件原 審原告らのために上記⑵のア及びイの各措置をなし又はなさしめる までの間、毎月末日限り、各5万円及びこれに対するそれぞれ発生月の翌 月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員 ウ 第1事件原告らについては平成21年3月31日から、第2事件原告ら については同年5月9日から、一審被告が自ら又はアメリカ合衆国軍隊を して一審原告らのために上記⑵のア及びイの各措置をなし又はなさしめる までの間、毎月末日限り、各1万円及びこれに対するそれぞれ発生月の翌 月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員(当審における拡張請 4 求) 2 一審被告の求めた裁判 ⑴ 控訴の趣旨 ア 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 イ 上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 ⑵ 附帯控訴の趣旨 ア 原判決中、本件訴えのうち、令和元年6月18日から事実審口頭弁論終 結日までの損害賠償金の支払を求める訴えをいずれも却下した部分を取り 消す。 イ 上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(以下、特に断らない限り、略称は原判決の例による。ただし、 原判決別紙「略称等一覧」の151頁末行の「平成25年防衛省令第4号」 を「平成25年防衛省令第5号」に改める。) 1 本件は、一審被告が航空自衛隊の基地として設置、管理する小松飛行場(本 件飛行場)の周辺に居住し又は居住していた者(その相続人を含む。)である 一審原告らが、本件飛行場に離着陸する自衛隊の航空機(自衛隊機)及びアメ リカ合衆国軍隊(米軍)の航空機(米軍機)の発する騒音等によって被害を受 けているとして、一審被告に対し、次の請求をした事案である。 ⑴ 本件各差止請求 一審原告らの平和的生存権、人格権、環境権又は昭和50年10月 機(米軍機)の発する騒音等によって被害を受 けているとして、一審被告に対し、次の請求をした事案である。 ⑴ 本件各差止請求 一審原告らの平和的生存権、人格権、環境権又は昭和50年10月4日に 防衛施設庁長官が石川県知事及び本件飛行場周辺8市町村長との間で取り交 わした本件基本協定書並びに同日に名古屋防衛施設局長が小松市長及び加賀 市長との間で取り交わした本件協定書(併せて、10・4協定)に基づき、 ①毎日午後0時から同2時の間及び毎日午後6時から翌日午前7時までの間 については、自衛隊機及び米軍機(自衛隊機等)の離着陸及びエンジンの作 動(離着陸等)全ての差止めを、②その余の時間帯については、一審原告ら 5 の居住地に対し70ホン(A)(70dB(A))を超える自衛隊機等の発 する騒音を到達させることの差止め(音量規制)をそれぞれ求める請求 ⑵ 本件損害賠償請求 一審被告による本件飛行場の設置、管理に瑕疵があるとして、国家賠償法 2条1項に基づき、一審原告ら各自につき、①本件各訴え提起の3年前の日 から本件各訴状送達日までの期間(A期間)に係る損害金として合計120 万円(慰謝料100万円と弁護士費用20万円)及びこれに対する本件各訴 状送達日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民 法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払、②本件各訴状送達日の翌日から上記⑴の差止めがされるまでの間(B 期間)の損害金として、毎月末日限り、慰謝料5万円及びこれに対する当該 月の翌月1日から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延 損害金の支払を求める請求 2 原審は、本件各差止請求につき、本訴提起後に死亡した原判決別紙死亡原告 目録記載の者に関する部分の当然終了を宣言し(原判決主文1 改正前民法所定の年5分の割合による遅延 損害金の支払を求める請求 2 原審は、本件各差止請求につき、本訴提起後に死亡した原判決別紙死亡原告 目録記載の者に関する部分の当然終了を宣言し(原判決主文1項)、その余の 訴えのうち自衛隊機の運航等の差止請求は不適法であるとして却下し(原判決 主文2項⑴)、米軍機の運航等の差止請求を棄却し(原判決主文4項)、また、 本件損害賠償請求につき、原審口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害(将 来分)に係る訴えは不適法であるとして却下し(原判決主文2項⑵)、原審口 頭弁論終結日までに生じた損害(過去分)に関しては、一部の者を除いて原判 決主文3項の限度で認容し(原判決主文3項)、その余の請求をいずれも棄却 した(原判決主文4項)。 これに対し、一審原告ら及び一審被告がそれぞれの敗訴部分を不服として 控訴した。当審において、一審原告らは、B期間の損害として月額1万円の 弁護士費用及びこれに対する遅延損害金の支払請求を追加し、他方で、一審 被告は、原審が却下した原審の口頭弁論終結の日の翌日から当審の口頭弁論 6 終結の日までに発生した損害賠償請求の棄却を求めて附帯控訴をした。なお、 当審において、一審原告らのうち49名(当事者の死亡に伴う訴訟承継前の 人数。原告番号82~85、141、213、214、244~248、3 16、352、468、469、639、739、857、858、881 ~886、1009、1080、1081、1180、1181、1194 ~1199、1243~1246、1571~1574、1745、185 4、2117、2128)は訴えを全部取り下げた。 3 本件の前提事実、一審原告らの主張の要旨及び一審被告の主張の要旨は、次 のとおり補正し、4及び5のとおり、当審における当事者の主張を付加するほ かは、原判決 、2128)は訴えを全部取り下げた。 3 本件の前提事実、一審原告らの主張の要旨及び一審被告の主張の要旨は、次 のとおり補正し、4及び5のとおり、当審における当事者の主張を付加するほ かは、原判決「事実及び理由」欄の第2章の第2、第3章及び第4章(原判決 9頁冒頭から137頁5行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用す る。 (原判決の補正) ⑴ 原判決9頁14行目から15行目にかけての「土地約160㎡」を「土地 約160万㎡」に改める。 ⑵ 原判決10頁21行目の「飛行場整備工事」を「飛行場施設整備工事」に 改める。 ⑶ 原判決13頁3行目の「提供すること」の次に「、米軍がこれらの施設を 使用している期間中は、地位協定の関連ある条項が適用されること」を加え る。 ⑷ 原判決14頁1行目の「小松地方刑務隊」を「小松地方警務隊」に改める。 ⑸ 原判決23頁2行目の「三種区域」を「第三種区域」に改め、6行目の 「及び」を「並びに」に改める。 ⑹ 原判決23頁10行目の「前記6⑹」を「前記5⑺」に改め、11行目か ら12行目にかけての「平成25年防衛省令第4号」を「平成25年防衛省 令第5号」に改める。 7 ⑺ 原判決25頁22行目の「別紙原告ら居住歴一覧表」を「本判決別紙原告 ら居住歴一覧表(以下「居住歴一覧表」という。)」に改め、24行目の 「(令和元年6月17日)」を削り、同26頁1行目末尾の次に「なお、 「請求の始期」又は「請求の終期」が年月のみで表示されている場合の「請 求の始期」は当月1日を、「請求の終期」は当月末日をいう。」を加える。 ⑻ 原判決26頁2行目の「別紙死亡原告目録」を「本判決別紙死亡原告目録」 に改める。 ⑼ 原判決26頁4行目冒頭から10行目末尾までを以下のとおり改める。 月末日をいう。」を加える。 ⑻ 原判決26頁2行目の「別紙死亡原告目録」を「本判決別紙死亡原告目録」 に改める。 ⑼ 原判決26頁4行目冒頭から10行目末尾までを以下のとおり改める。 「⑶ 一審被告は、当審において、就学、就職、転勤等のために住民票上の 住所と実際の居住地が一致しない事例が見られるから、住民票の提出の みでは居住実態を正確に確認することができないとして、一審原告ら訴 訟代理人弁護士らに対して、聞き取り調査やアンケート調査による居住 実態の確認を求めたところ(一審被告作成の令和3年7月14日付け事 務連絡参照)、一審原告ら訴訟代理人弁護士において、世帯毎に一審原 告に対するアンケート調査を実施した。実施されたアンケート調査の内 容は、世帯全員(一審原告)の住民票上の居住歴を記載した回答書を送 付し、世帯の代表者から、上記の住民票上の居住歴と実際の居住地との 異同の有無並びに住民票上の居住歴と異なる場合には実際の居住地の場 所、期間及び理由が記入された回答書の返送を受けるというものであっ た。 上記アンケート調査の内容によれば、一審原告らの上記⑴の請求の始 期から現在までの住民票等の住所及び異動の履歴は、おおむね居住歴一 覧表の「住所」欄及び「転居日」欄に記載のとおりであり(一部には、 住民票等の記載内容と異なる上記アンケート調査に係る回答書の記載内 容が記載されているものもある。)、また、住所地の告示W値は、居住 歴一覧表の「W」欄記載のとおりである(なお、「外」は告示コンター 8 の範囲外をいう。)。(以上につき、居住歴一覧表掲記の証拠、弁論の 全趣旨)」 ⑽ 原判決41頁3行目の「怒鳴りあり」を「怒鳴り合い」に改める。 ⑾ 原判決82頁7行目の「別紙原告別住宅防音実績表」を「別紙一審原告別 住宅防音実績表(以下「住宅 拠、弁論の 全趣旨)」 ⑽ 原判決41頁3行目の「怒鳴りあり」を「怒鳴り合い」に改める。 ⑾ 原判決82頁7行目の「別紙原告別住宅防音実績表」を「別紙一審原告別 住宅防音実績表(以下「住宅防音実績表」という。)」に改める。 ⑿ 原判決122頁7行目の「別紙原告別住宅防音実績表」から9行目の「記 載のとおりである。)。」までを「住宅防音実績表(備考欄の記載を除く。) 記載のとおりである。」に改め、同行目の「別紙原告別住宅防音実績表」を 「住宅防音実績表」に改める。 ⒀ 原判決128頁15行目の「本件飛行場に転入した」を「本件飛行場周辺 に転入した」に改める。 ⒁ 原判決129頁3行目の「居住を介するに至った」を「居住を開始するに 至った」に改める。 ⒂ 原判決129頁18行目の次行に以下を加える。 「 上記の類型A、類型B1、類型B2、類型B3に該当する一審原告らは、 別紙「危険接近一覧」に記載のとおりである。」 4 当審における一審原告らの主張 ⑴ 自衛隊機の運航等の差止請求に係る訴えの適否について ア 原審は、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限は、周辺住民への影響 にも「配慮」されるべきものであるから、騒音等について周辺住民に「受 忍」を義務付けるので、民事訴訟による差止請求は不適法であるとするが、 誤りである。 これは根拠もなく周辺住民への影響に対する配慮を組み込み、一方的に 周辺住民に騒音受忍義務を課すもので、極めて不当であり、法的正当性は 全くない。このような周辺住民への配慮と周辺住民に騒音受忍を義務付け る明文の規定がないからこそ、自衛隊機の運航は、内部的には「職務命令 9 とそれに基づく実行」であり、外部的である周辺住民との関係では、「単 なる事実行為」に当たると評価されるのである。 イ また 規定がないからこそ、自衛隊機の運航は、内部的には「職務命令 9 とそれに基づく実行」であり、外部的である周辺住民との関係では、「単 なる事実行為」に当たると評価されるのである。 イ また、原審は、昭和62年日本原演習場訴訟最判の事案は、本件とは事 案を異にするとするが、誤りである。 自衛隊の実弾射撃訓練と自衛隊機の運航とは法的な性格を同じくするも のであり、実弾射撃訓練及び演習場への立入禁止措置が公有物である演習 場の公物管理権を基礎するという論理は、公有物である自衛隊機の運航に ついても妥当し、自衛隊機の公物管理権を根拠として所期の目的を達成す ることが十分可能であり、周辺住民の受忍の義務付けという論理は必要な い。自衛隊機の運航は「権力的な権能」だから受忍を義務付けると考えて いるのであれば、明文の義務付け規定が必要であることは「法の支配」の 原理及び「法律による行政」の原則の下では、当然のことである。 ウ さらに、原審は、民事上の訴えとして不適法であるとしても、行訴法3 7条7項の差止めの訴えにより争う余地があるから、裁判を受ける権利を 侵害しないとするが、不合理である。行政訴訟が可能であるかは平成28 年厚木基地行政訴訟最判まで不明であり、その不明な期間に本件が提訴さ れているから、一審原告らの差止請求の請求方法の選択は救済されるべき である。先行する第1・2次訴訟の一審判決も第3・4次訴訟一審判決も、 民事差止請求を適法とする正当な判断をしている。 エ 原審は、自衛隊機の違憲性について判断していないが、原判決の論理が 当てはまるのは合憲・適法の自衛隊機の運航による場合に限られ、違憲・ 違法の自衛隊機の運航についての防衛大臣の権限が周辺住民に対して一方 的に騒音受忍を義務付けることはできない。 ⑵ 米軍機の運航等の差止 るのは合憲・適法の自衛隊機の運航による場合に限られ、違憲・ 違法の自衛隊機の運航についての防衛大臣の権限が周辺住民に対して一方 的に騒音受忍を義務付けることはできない。 ⑵ 米軍機の運航等の差止請求の当否について ア 原審は、米軍機の運航等の差止めを求める請求は、一審被告に対してそ の支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものであるとして否定 10 したが、誤りである。 一審被告が米軍機の運航等を規制、制限できるかは、米軍機の運航等に 関して日本の国内法が適用できるかという問題と同じである。当該国が自 ら同意しない限り主権が制限されることはないという「領域主権」は国際 法上確立した原則であり、受入国が条約等で別段の合意をしない限りは、 領域主権の原則に立ち返って国内法が適用されなければならない。日本の 排他的管轄権を日米地位協定(地位協定)が例外的に制限しているから、 本件飛行場の使用権を地位協定により付与する場合にその付与が包括的で あることは許されず、個別に国内法の適用排除の合意がない限りは国内法 の適用があるというべきである。このような理解は駐留外国軍隊に関する 国際法上共通のものであり、ベルギーやイギリスでは、NATO軍ないし 米軍について国内法の適用があるとする当事国間の協定がなくても、当然 に国内法が適用されている。 そして、差止請求については、地位協定18条5項の「請求権」から何 ら除外されていないから、地位協定18条5項の「請求権」には差止請求 も含まれると考えるのが妥当である。 イ 原審は、違憲無効の安保条約の効力を前提としていること自体が誤りで ある。安保条約及び同条約によって日本国内で活動する在日米軍は日本国 憲法前文及び第9条に反することは明らかである。在日米軍機の運航等は 安保条約を根拠とす 保条約の効力を前提としていること自体が誤りで ある。安保条約及び同条約によって日本国内で活動する在日米軍は日本国 憲法前文及び第9条に反することは明らかである。在日米軍機の運航等は 安保条約を根拠とするから、安保条約が違憲無効であれば、領域主権の原 則に従って日本が排他的管轄権を有する結果、国内法が適用され、一審被 告において米軍機の運航等を規制し、制限することができることは明白で ある。 ⑶ 侵害行為の態様及び侵害の程度等の判断の誤り ア 飛行教導群の移駐による騒音状況の悪化 原審は、平成28年6月の飛行教導群(いわゆるアグレッサー)の移駐 11 によって騒音状況の悪化を生じさせていないとするが、誤りである。 飛行教導群の移駐前の4年間(2012年度から2015年度)の管制 回数の平均は1万7020回であるのに対し、移駐後の2016年度は1 万9008回、2017年度は1万8454回、2018年度は1万76 12回といずれの年度も移駐前に比べて増加している。 また、当審で提出した、前回報告書以降の騒音状況の分析結果をまとめ た騒音調査報告書Ⅶ(甲E170)のとおり、①上記移駐後の平成28年 度以降のa町の「修正機数の年平均値」や「1日の平均騒音発生回数」が 急激に増加し、「騒音レベルの年平均値(パワー平均)」も90以上の高 止まりしていること(同資料①)、②小松市b町の「修正機数の年平均値」 も上昇していること(同資料③)、③a町と加賀市c町の騒音発生回数は、 上記移駐した平成28年7月以降から飛躍的に増大しており、同月から平 成31年3月までの騒音発生回数の平均は、上記移駐前の平成23年4月 から平成28年6月までの騒音発生回数の平均より増加している(同資料 ④)。 したがって、平成28年の騒音状況の悪化は一時的なものではなく、 3月までの騒音発生回数の平均は、上記移駐前の平成23年4月 から平成28年6月までの騒音発生回数の平均より増加している(同資料 ④)。 したがって、平成28年の騒音状況の悪化は一時的なものではなく、平 成29年度以降も、騒音発生回数や騒音発生時間が増加した状態が一貫し て継続しており、平成28年の飛行教導群移駐によって騒音状況は質的に 異なるステージに上がったというべきである。 イ 地上音、爆発及び墜落の危険性は独立の侵害行為であること 原審は、本件飛行場から生じる地上音は測定結果に反映されているなど として地上音を飛行騒音と区別した独立の侵害行為とすることはできない とするが、誤りである。 本件飛行場で飛行騒音以外に地上音が生じていることは明らかである。 本件飛行場近辺に居住等している一審原告らが日常的に受けている地上音 を正しく評価するためには、地上音を独立の侵害行為として評価し、W値 12 を基準とした損害額とは別の損害を認める必要がある。 また、原審は、爆発及び墜落の危険性は一審原告らの不安はいまだ抽象 的な危惧感にとどまるとして、独立の侵害行為とはいえないとするが、誤 りである。 本件飛行場周辺では軍用機の墜落事故や燃料タンク等の落下事故が現実 に複数回起きており、近時も部品の落下事故が続いている。落下物は住民 の生命身体に重大な危険をもたらすものであり、これによる特別の精神的 負荷は本件飛行場周辺に居住等する住民に共通する被害であり、単なる不 安感ではない。 ウ 平和的生存権が侵害されていること 原審は、「平和的生存権」の具体的権利性を否定するが、誤りである。 「平和的生存権」は裁判規範として十分な内容を持つ具体的な権利であ る。憲法9条に違反する実態を持つ自衛隊及び 原審は、「平和的生存権」の具体的権利性を否定するが、誤りである。 「平和的生存権」は裁判規範として十分な内容を持つ具体的な権利であ る。憲法9条に違反する実態を持つ自衛隊及び在日米軍の軍事行動とこれ に付随して発生する事故等が周辺住民の「平和的生存権」を侵害すること は明らかである。違法性判断においては、一審原告らの「平和的生存権」 の侵害を十分考慮しなければならない。 ⑷ 共通被害である身体的被害(健康被害)が認定されるべきこと ア 共通被害の発生を立証していること 原審は、一審原告らが便宜上行った症状等の区分①から⑨の分類に従い、 小分けした症状ごとに共通損害たる健康被害かどうかを検討して健康被害 の現実の発生の立証がないとするが、誤りである。 一審原告らが主張する「共通被害」は、「心身相関」の考え方に基づき、 精神的苦痛や生活妨害にとどまらず、身体的被害(健康被害)をも含むも のであり、健康な生活の破壊につながる被害のすべてにわたって広く認め られ、「共通被害」としての身体的被害(健康被害)は、具体的な疾患・ 疾病やその程度に至って見られる生理的・心理的現象ではなく、身体障害 13 に連なる危険性のある生理的・心理的現象である。騒音というストレス作 因による具体的な生理的・心理的現象の外部への現れ方ないし態様は各人 によって異なる面があり、妊婦であれば胎児の発育阻害の形で、夜勤者で あれば昼間の睡眠妨害の形で発現するが、騒音によって各種身体的障害に 連なる危険性のある生理的・心理的現象が生じているという限度では一審 原告ら全員に共通し、これに伴う精神的苦痛の性質及び程度において差は なく、被害の共通性は優に認められる。その先にある可能性ないし危険性 としての睡眠障害や高血圧、低出生体重等の具体的疾患の同一性まで 原告ら全員に共通し、これに伴う精神的苦痛の性質及び程度において差は なく、被害の共通性は優に認められる。その先にある可能性ないし危険性 としての睡眠障害や高血圧、低出生体重等の具体的疾患の同一性までは求 められていない。 また、原審は、非特異的な疾病や身体症状の場合は疫学調査によっては 個別的検討を待たずして現実の被害を立証することができないとするが、 共通被害論を理解しないものである。 騒音ばく露集団に健康被害が生じていることの立証は、疫学的因果関係 の立証で足りるというべきである。なぜなら、当該集団につき、騒音から 健康被害が生じるとの疫学的因果関係があることは、騒音加害と騒音ばく 露集団内に生じている健康被害との間に、科学的に証明された事実的因果 関係が存在することを意味することに他ならない。共通損害という集団に 生じている損害賠償の場面では、当該集団に被害が生じているか否かが直 接問題になり、当該集団についての疫学的因果関係は、当該集団について の個別的因果関係そのものである。 そして、非特異的疾患であっても集団的な因果関係の認定を超えて個別 的な因果関係の存在を強く推認することが可能である。 疫学における「寄与危険割合」((相対危険度(=ばく露群の累積り患 率(=累積発生率)と非ばく露群の累積り患率の比)-1)÷(相対危険 度))は、当該身体的被害等のうち騒音によって生じた確率を示すもので あって、当該非特異的疾患が騒音で生じた可能性を定量的に示すものであ 14 る。寄与危険割合を算出する際に必要となる累積り患率(累積発生率)は 得られていないが、横断研究(断面調査)で得られる存在率(有病率)は、 当該病気等で死亡したり対象集団外に移動したりしないとみなせる場合に は、累積発生率に近い値となる(甲C78)。その可能性が低 )は 得られていないが、横断研究(断面調査)で得られる存在率(有病率)は、 当該病気等で死亡したり対象集団外に移動したりしないとみなせる場合に は、累積発生率に近い値となる(甲C78)。その可能性が低い慢性疾患 の場合は、有病率をもって危険度を把握することもある(甲C8)。20 11年調査で明らかになっている各種騒音被害の存在率(服部医師は「粗 割合」と呼ぶ。)から求めたみなし寄与危険割合をもって、非特異的疾患 についても因果関係の程度を把握することができる。これによれば、例え ば、2011年調査の非特異性の被害である「腰が痛い」という訴えのみ なし寄与危険割合は29.6%であり、騒音地区の住民の「腰が痛い」と いう身体症状の少なくとも約3割が戦闘機騒音によって引き起こされたと いえる。 イ 健康被害が生じる相当程度の可能性が立証されていること 原審は、昭和56年大阪国際空港訴訟最判が認めた被害類型に加えて、 「健康被害が生じる相当程度の可能性」をも保護法益と認めて救済を厚く したが、その立証がないとした点は不当である。 原審は、2011年調査のうち、子どもの問題行動調査で用いられたC BCLの質問項目にはいずれを選択すべきか一義的に明らかとはいえない ものも多数含まれており、回答者の主観的評価のばらつきが混入し得ると し、また、睡眠障害で用いられたアテネ不眠症尺度や精神疾患で用いられ たGHQについても同様に、主観的評価のばらつきの混入を理由に各調査 結果の証拠力に一定の限界があるとしたが、誤りである。 CBCLもアテネ不眠症尺度もGHQも、各調査対象者の主観的評価に 基づき回答する質問紙調査でありながら、主観的評価であることの影響は なく定量的にそれぞれの健康度を把握できるものとして、世界的評価が確 立しているのである。 GHQも、各調査対象者の主観的評価に 基づき回答する質問紙調査でありながら、主観的評価であることの影響は なく定量的にそれぞれの健康度を把握できるものとして、世界的評価が確 立しているのである。 15 また、原審は、子どもの問題行動調査において、小松基地の戦闘機騒音 による健康影響を調査するものであることが明示されていたことを問題視 するが、同様に小松基地の戦闘機騒音による影響を調査するものであるこ とが明示されていた生活妨害や精神的苦痛の調査結果の信用性を肯認して いるから、子どもの問題行動調査等で調査目的を明示することの問題性も 同様に無視できるほど小さいというべきである。 さらに、原審は、疫学、特にオッズ比等の統計数値に対する理解不足と 思われる判断が散見される。例えば、原審は、オッズ比は相対的危険度よ り大きな値となるためオッズ比をもって、ばく露群と対照群のリスクの比 とみることはできないことに留意する必要があるとするが、原審のいう留 意点は、存在に時間的前後という要素も加わる1次元の事象を扱うケース コントロール研究で求めたオッズ比を、同じ1次元の指標である相対的危 険度の代用として用いる場合に妥当するが、一時点における存在というゼ ロ次元の事象を扱う横断研究(2011年調査)で求めたオッズ比という 指標を、次元の異なる一次元の指標である相対危険度の代用として用いる ことはできないのである。また、オッズ比と割合とは別の概念であり、オ ッズ比から割合の大小を導くことはできず、影響の大小も比較できない。 ⑸ 本件飛行場の公共性及び公益上の必要性に関する判断の誤り 原審は、本件飛行場の供用ないし本件飛行場における航空機の運航が受忍 限度の判断において考慮されるべき一定の公共性と公益上の必要を有するこ とは否定できない、この点 の必要性に関する判断の誤り 原審は、本件飛行場の供用ないし本件飛行場における航空機の運航が受忍 限度の判断において考慮されるべき一定の公共性と公益上の必要を有するこ とは否定できない、この点は、自衛隊又は自衛隊機等の運航等が憲法9条に 反するか否かによって左右されないとするが、立憲主義憲法の規範構造や憲 法の最高法規性の意味を全く理解しておらず、明らかに誤っている。 憲法は、国民の権利、自由を確保するための最高法規であり、憲法規範に 違反する国家行為は国法秩序において一切容認される余地はない。憲法規範 が国法秩序からの排除を求めるものについて、国賠法の解釈適用において 16 「公の利益」、「公共性」、「公の必要」等の名称を付して国民の利益とし て考慮することが許されないことは憲法上当然のことである。 また、原審は、行政法規を例に挙げ、個人の権利利益の保護とは直接関連 しない場合の行政法規の違反の有無や程度は、受忍限度の判断において考慮 の対象とならず、この理は、公権力の行使に当たる行為の根拠規定自体が憲 法に違反する場合にも妥当するとするが、論理的に誤っている。 全ての憲法規範は人権保障のために存在し個人の権利利益に直接関連する。 また、違法性判断の場において、単なる行政法規違反と憲法違反とを全く同 一視し、同一次元のレベルで考える思考は、立憲主義憲法の本質や憲法の最 高法規性の本質を全く理解していない。憲法規範に違反する国家行為は当然 に強度の違法性を持つ。一審被告は、憲法9条に違反する自衛隊機及び在日 米軍機の小松基地の使用によって一審原告らの「平和的生存権」を侵害し、 一審原告らに被害を発生させ続けており、国法秩序において強度の違法性が 認められる。 ⑹ 一審原告らの居住実態について(下記5⑹に対する反論) って一審原告らの「平和的生存権」を侵害し、 一審原告らに被害を発生させ続けており、国法秩序において強度の違法性が 認められる。 ⑹ 一審原告らの居住実態について(下記5⑹に対する反論) 一審被告は、アンケート調査(補正後の前提事実8⑶)に回答しない一審 原告らについては、請求原因事実の立証がない旨を主張するが、アンケート の回答書からも明らかなとおり、圧倒的多数の一審原告らは、住民票上の住 所と居住実態が一致しており、住民票上の住所と居住実態が一致しない者は 僅か35名にすぎないから、アンケート調査に回答しない一審原告らについ ても、住民票上の住所に居住していると認めることに何ら支障はなく、請求 原因事実の立証としては十分である。 なお、一審原告A1(原告番号251)は、令和3年4月から、小松市d 町e丁目f番地gで生活しているが、住民票上の住所(七尾市h町i部j番 地)を変更していないのは、平日に仕事を休むことができず、変更の手続を とることができないからである。 17 ⑺ 損害額の判断の誤り ア 基準となる慰謝料額が不当に低額であること 原審は、侵害行為の状況や健康被害の状況について誤った認定に基づき、 慰謝料額を不当に低額に認定している。原審が、一審原告らが主張した考 慮要素のほとんどについて言及していないことも慰謝料額の不当な低額認 定の原因となっている。 また、原審は、慰謝料の増額幅をW80区域とW75区域では4000 円とするのに対し、W85区域とW80区域、W90区域とW85区域で は各3000円と不当に低額な増額幅にとどめている。全国各地の近時の 騒音基地訴訟の例に照らしても、過去の小松基地訴訟の判決に照らしても、 告示コンターの騒音レベルが増加するにつれて、慰謝料増額幅が減少され るとい 円と不当に低額な増額幅にとどめている。全国各地の近時の 騒音基地訴訟の例に照らしても、過去の小松基地訴訟の判決に照らしても、 告示コンターの騒音レベルが増加するにつれて、慰謝料増額幅が減少され るという判断が示されたことはなく、原判決の判断は異例であり、社会通 念に反する認定である。深刻な騒音レベルが更に少しでも増加することは、 比較的レベルの低い騒音区域に生活する者よりも、更に耐え難い精神的苦 痛を伴うことは容易に想定し得る点からも、誤りである。 さらに、原審は、告示コンター内の居住期間が歴月の一部にとどまる日 数分については、その歴月の損害を一律に損害額算定の対象から除外する が、誤りである。 告示コンター内に居住する事実から損害の発生が認められるにもかかわ らず、その損害額の立証の困難や算定の煩雑さから、その一部を一律に損 害額の算定対象から除外することは許されない。歴月の一部にとどまる日 数分の損害額の評価が一律「0」円というのであれば、自由心証主義の範 囲を逸脱した判断である。 イ 住宅防音工事による減額の不当性 原審は、住宅騒音測定の結果が概ね仕方書記載の防音効果を有している として、住宅防音工事は航空機騒音による被害の軽減に寄与しているもの 18 と認められ、慰謝料額を算定する際にも考慮されるとするが、誤りである。 屋内の騒音は、航空機の飛行状況や機種、家屋の構造、天候等の諸事情 により様々であり、防音効果の現れ方も様々であって、仕方書どおりの施 工がされたからといって防音工事済み住宅の全てが一審被告の定める計画 防音量を達成しているとはいえない。一審被告は、防音工事完了後に防音 量の測定は一切行っていない。また、住宅には、そもそも遮音の効果があ り、これを差し引いた純粋な防音工事による防音効果につ 定める計画 防音量を達成しているとはいえない。一審被告は、防音工事完了後に防音 量の測定は一切行っていない。また、住宅には、そもそも遮音の効果があ り、これを差し引いた純粋な防音工事による防音効果については検証され ていない。さらに、住宅防音工事が機能を発揮するためには、防音区画を 密閉しなければならないところ、それでは家族のコミュニケーションが阻 害され、外気の自然な導入も困難となり、息苦しさや閉塞感を与えること になるから、実際に一日中開口部を密閉した状態で生活することは非現実 的であり、住宅防音工事が航空機騒音の被害の軽減に寄与しているとは認 められない。 また、原審は、防音工事が施された部屋が一室増えるごとに慰謝料減額 率を増加させているが、その具体的根拠が示されていない。上記の点から すれば、仮に住宅防音工事による減額を認めるとしても、その割合は極め て限定的で、居室数や工事内容に関わらず、一律に10%程度に抑えるべ きである。 ウ 弁護士費用について(当審における拡張請求) 原審は、A期間に生じた慰謝料額の10%に相当する金額についてのみ 弁護士費用を認定し、B期間の弁護士費用を請求していないと誤解した可 能性があるが、一審原告らは、B期間も含めた慰謝料総額の20%に相当 する弁護士費用を請求している。 この点を明白にするために、一審原告らは、当審において、請求原因の 追加として、本件各訴状送達の日の翌日から、一審原告らの控訴の趣旨⑵ ア及びイの各措置をなし又はなさしめるまでの間、一審原告らに毎月発生 19 する慰謝料相当額の20%に当たる金額も弁護士費用として本件不法行為 による損害の一部として請求を追加した。 また、原審が弁護士費用の算出方法を慰謝料額の10%としたのは不当 に低額である。本件のよ 料相当額の20%に当たる金額も弁護士費用として本件不法行為 による損害の一部として請求を追加した。 また、原審が弁護士費用の算出方法を慰謝料額の10%としたのは不当 に低額である。本件のような基地騒音訴訟においては、多岐にわたる専門 知識や相当の時間と費用等が必要であり、非常に難易度の高い事件類型で ある。本件訴訟では、全国に類を見ない大規模疫学調査を実施してきたと いう事情もある。第3・4次訴訟控訴審判決では、慰謝料総額の15%に 相当する弁護士費用が認められた。 ⑻ 本件損害賠償請求(将来分)が認められるべきこと 原審が本件損害賠償請求(将来分)に係る訴えを不適法として却下したの は、民訴法135条の解釈及び適用を誤っている。 原審が指摘する昭和56年大阪国際空港訴訟最判等は、「航空機騒音の騒 音被害一般」についての将来分の損害賠償請求を不適法としたものではなく、 個別事件における事例判断にすぎないから、原審は、判例の射程を見誤り過 度な一般化をして、実質的に判例違反を犯している。 昭和56年大阪国際空港訴訟最判は、航空機騒音による被害を取り扱った 先例的な事案に対する判断であったが、その後の全国各地の自衛隊基地等の 航空機騒音に関する訴訟での判断手法は確立している。現在の司法判断の下 では、不動産の不法占有に関する損害賠償請求事案と航空機騒音事案との間 に差異はなく、昭和56年大阪国際空港訴訟最判のいう「一義的に明確」と いう要件は厳格に過ぎるというべきである。 一審被告の小松基地周辺住民に対する爆音発生行為は、①約半世紀にも及 ぶ間断のない一貫した同種の違法行為であり、②裁判所からこれまでに4件 もの当該行為の違法性を前提とした賠償を命じる判決が出され、③現在に至 っても爆音発生行為を停止させるか又は違法性がなくなる にも及 ぶ間断のない一貫した同種の違法行為であり、②裁判所からこれまでに4件 もの当該行為の違法性を前提とした賠償を命じる判決が出され、③現在に至 っても爆音発生行為を停止させるか又は違法性がなくなる程度に抑制すると いう具体的な見通しが皆無であり、④その意思もないという事情がある。こ 20 れらの事情からすれば、本請求は、請求権の基礎となるべき事実関係及び法 律関係が既に存在しその継続が予測されるという要件を十分満たすものであ る。 また、一審被告に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動は、 一審被告による爆音発生行為の停止抑制と一審原告らの当該居住地からの離 脱の2点であり、あらかじめ明確に予測し得る。加害者である一審被告は、 自らの行為をコントロールできる立場にあり、人的・継続的資源も一審原告 らに比し膨大であるから、請求異議の訴えによりその発生を証明し執行を阻 止しうるという負担を一審被告に課しても格別不当とはいえない。 したがって、民訴法135条の要件を満たすから、本件損害賠償請求(将 来分)は認められるべきである。 ⑼ 移転の補償等は考慮要素とならないこと(下記5⑵に対する反論) 一審被告は、移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した者については、 違法性が否定される旨を主張するが、移転の補償等を受けることは、居住地 を移転する住民らに認められた正当な利益である一方、これを受ける際には 騒音の危険を認識して一審被告の責任を減免することに同意するなどの条件 は一切付されていない。定められた制度を利用したに過ぎない住民らにおい て、その後に加害者である一審被告に対して損害賠償請求するという正当な 権利行使が信義則違反や権利濫用に該当することを基礎付けるような特段の 事情も存在しない。 また、一審被告は、移転の補償等 て、その後に加害者である一審被告に対して損害賠償請求するという正当な 権利行使が信義則違反や権利濫用に該当することを基礎付けるような特段の 事情も存在しない。 また、一審被告は、移転の補償等を受けた者の損害賠償請求は信義則に違 反するなどと主張するが、移転の補償等と、その後に生じる騒音に伴う被害 とは無関係である。危険への接近の法理を適用する余地のない本件において、 他に騒音被害を負っている住民らがその正当な権利行使として損害賠償請求 を行うことを信義則上禁止するような特段の事情も存在しない。 さらに、一審被告は、移転の補償等を受けたことは、少なくとも慰謝料額 21 の減額要素になる旨を主張するが、移転の補償等は、飽くまでも移転に要す る費用に関する補償であって、騒音に伴う被害・損害の 補などではないか ら、慰謝料が減額されるべき理由も存在しない。 5 当審における一審被告の主張 ⑴ 少なくとも告示W値75の地域のうち、加賀市k町、能美市l町、n町o、 小松市p町及びこれら以遠の地域については、損害賠償の対象から除外すべ きであること ア 原審は、騒音実態を認定するに当たって、環境庁方式と施設庁方式との W値の算出方法の相違を踏まえ、①機数の補正、②継続時間の補正、③ジ ェット機の着陸時の補正をすれば、施設庁方式のW値は、日WECPNL の80%レンジ上端値よりも大きな値と推認できるとするが、そのような 認定は誤りである。 上記①については、三者共同測定において「複数機による編隊飛行等の 際にも1として数えられる」ことは施設庁方式でW値を算出する場合でも 同様であるから、原判決の判示は的外れである。上記②については、原審 は、実際の騒音の継続時間が環境庁方式の場合の20秒(固定値)を上回 ることを前提とするが、原告騒音 設庁方式でW値を算出する場合でも 同様であるから、原判決の判示は的外れである。上記②については、原審 は、実際の騒音の継続時間が環境庁方式の場合の20秒(固定値)を上回 ることを前提とするが、原告騒音調査報告書Ⅵ(甲E167の資料51、 53頁参照)によれば、平成23年度から平成28年度までの小松市b町 及び同市q町の騒音の継続時間の平均値はいずれも20秒を下回っており、 むしろ継続時間の補正を行うと、算出されるW値が小さくなる可能性があ る。また原審が依拠する甲C第2号証は、「環境庁方式では騒音の継続時 間の違いを評価できず、エンジン調整やヘリコプターの騒音のように長い 騒音を過少評価する可能性が高」く、「滑走路から離れた地点で過大評価 となる」(同201頁)としており、滑走路から相当距離があり、エンジ ン調整音が問題とならない告示W値75の地域における施設庁方式による W値が、継続時間の補正をした日WECPNLの80%レンジ上端値より 22 大きくなるとはいえず、むしろ小さくなる可能性があるといえる。上記③ についても、着陸音のみの補正(2dBの加算)であり、僅か2%程度の 増加があるにすぎない。そうすると、上記②③の補正をしても三者共同測 定地点における施設庁方式のW値が、日WECPNLの80%レンジ上端 値を上回るかは必ずしも明らかではなく、告示W値を大きく下回る三者共 同測定の結果を補正することにより告示W値との差が埋まることが確実で あるとはいえない。 イ 原審は、三者共同測定の結果を踏まえても、W75区域の騒音状況は、 少なくとも昭和57年度調査の際に近い水準にあり、これが大きく改善し ているとはいえないとするが、三者共同測定の結果を正当に評価しておら ず誤りである。 三者共同測定の結果による日WECPNLの80%レンジ上端値をみ ると、 に近い水準にあり、これが大きく改善し ているとはいえないとするが、三者共同測定の結果を正当に評価しておら ず誤りである。 三者共同測定の結果による日WECPNLの80%レンジ上端値をみ ると、原判決が損害賠償の対象期間とした平成18年度以降(平成30 年度まで)のW値の平均値は、加賀市k町で66.46、能美市l町で 66.54、n町oで65.69、小松市p町で71.92であり、告 示W値を大きく下回っており(9.31~3.08)、第3・4次訴訟 の損害賠償対象期間(平成7年度から平成17年度)の平均値(順に、 ①73.22、②70.44、③71.67、④75.78)と比較し ても下回っている(6.76~3.86)。加賀市k町、能美市l町及 びn町o並びにこれら以遠の地域については、昭和57年度調査当時は もとより、第3・4次訴訟当時と比べても騒音状況が大きく改善してい ることは明らかである。人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上 で維持されることが望ましい基準として定められた環境基準のW70以 下であるのに、受忍限度を超える騒音状況であるというのは背理である。 また、小松市p町及び同町以遠の地域についても、同様に騒音状況が改 善し、もはや告示W値75に相当する騒音実態はない。 23 ウ したがって、別紙原告別居住歴表【75W(加賀市k町・小松市p町 及び同町以遠(l町・m町を含む)・85W加賀市c町抽出分】に記載 のとおり、これらの地域に居住期間がある一審原告らについては、同期 間を損害賠償の対象から除外するのが相当である。 ⑵ 移転の補償等を受けて第一種区域に転居した者の損害賠償請求は認められ ないこと ア 一審原告らのうち、少なくとも移転の補償等を受けて居住地を変更した にもかかわらず、引き続き第一種区域(告示W値75以上の区域)内に居 住 第一種区域に転居した者の損害賠償請求は認められ ないこと ア 一審原告らのうち、少なくとも移転の補償等を受けて居住地を変更した にもかかわらず、引き続き第一種区域(告示W値75以上の区域)内に居 住し、その上で本件訴えを提起した者2名及びその関係者である7名の合 計9名(別紙「原告別居住歴表【移転措置関係者】」参照。なお、原告番 号468及び同469は訴えを取り下げた。)については、利益衡量上、 本件飛行場の供用に伴い発生する航空機騒音等の侵害行為が社会通念上受 忍すべき限度を超える被害をもたらしているとはいえず、違法性が否定さ れるべきである。 移転の補償等は、防衛大臣が指定する移転対象区域(第二種区域ないし みなし第二種区域)に当該指定の際現に所在する建物等の所有者及び当該 建物等に関する所有者以外の権利を有する者に対する、当該建物等を同区 域外に移転し又は除却する場合に当該移転又は除却により通常生ずべき損 失の補償、建物等の所有者に対する、移転先に所在する土地の買入れ並び に地方公共団体その他の者に対する、移転先の道路、水道、排水施設その 他の公共施設の整備費用の助成を行うというものであって、移転の補償等 を受ける者に対して、航空機騒音等の影響を抜本的に解消する効果をもた らすものであるといえる。 上記の者については、航空機騒音等による影響の程度を具体的に認識し ながら、移転先におけるその影響と生活上・経済上の便益その他一切の事 情を十分に吟味した上で、航空機騒音等による影響を抜本的に解決するこ 24 とができるという移転等補償措置が本来有している効果を全面的に受ける ことを自ら放棄し、指定区域外を含めた非常に広範な選択肢の中から、あ えて引き続き航空機騒音等による影響のある第一種区域内に居住すること を選択したのであるから、航空機騒音 している効果を全面的に受ける ことを自ら放棄し、指定区域外を含めた非常に広範な選択肢の中から、あ えて引き続き航空機騒音等による影響のある第一種区域内に居住すること を選択したのであるから、航空機騒音等の影響を受けることを甘受したと いうべきである。移転の補償等を受ける者は、建物の現在価値額や取壊費 用等の建物移転費だけでなく、移転先地の選定費、住民登録等の手続費用 等の移転雑費や、その他種々の費用等を合算した建物等の移転補償額を支 給されての移転である。実際に、一審被告が移転の補償等の措置を講じた 671戸のうち、上記の者以外のほとんどが第一種区域外に転居している。 なお、移転先の建物に後から居住するようになった原告番号151や移 転後に生まれた原告番号152及び153についても、利益衡量上、違法 性が否定されるべきことは同様である。 イ 仮に、上記の者との関係で違法であるとしても、上記の者については、 上記アのとおり、自らの判断により、一審被告の負担において多額の費用 を要する移転の補償等を受け、航空機騒音等による影響を解消する機会を 得ながら、第一種区域内に転居することを選択しており、自らの判断によ り甘受した航空機騒音による影響等を理由として、一審被告に対し、損害 賠償請求することは、実質的にみて、二重に補償を求めているに等しいも のといえ、一審被告から受けた移転の補償等の規模に鑑みても、信義則に 反し許されないというべきである。 ウ 少なくとも、多額の移転補償を受けたという事実それ自体が慰謝料額の 算定に係る減額事情といえるから、これを十分に考慮した上で慰謝料額の 算定が行われるべきである。移転の補償等を受けていない他の一審原告ら の慰謝料額と同様に算定することは、公平の観念に反し、また、住宅防音 工事の実施を減額事由として考慮している に考慮した上で慰謝料額の 算定が行われるべきである。移転の補償等を受けていない他の一審原告ら の慰謝料額と同様に算定することは、公平の観念に反し、また、住宅防音 工事の実施を減額事由として考慮していることとの対比においても、減額 事由とされるべきことは明らかである。 25 ⑶ 航空機騒音による被害についての誤り ア 原審は、「健康被害が生じる相当程度の危険が生じている」ことも「不 法行為法上保護されるべき利益」であり、昭和56年大阪国際空港訴訟最 判もこれを許容しているとするが、誤りである。 上記最判は、慰謝料請求権の発生原因たる被害と認めたのは、身体障害 に連なる可能性を有するストレス等の生理的・心理的影響であって、身体 被害の発生の危険性そのもの否定していると解され、原審のいう「健康被 害が生じる相当程度の危険が生じている」ことが慰謝料請求権の発生原因 事実となることを許容しているとは解されない。また、原審は、最高裁平 成12年9月22日判決及び最高裁平成15年11月11日判決を参照と して引用するが、これらは、他の一般の不法行為ないし債務不履行とは異 なる特殊な面が存する医療過誤訴訟における判断であり、健康被害全般に ついては、その被害が生じなかった可能性を法的に保護することが困難で あるとするものであるから、原審の判断は、上記各判決に反するものであ る。 イ 原審は、共通被害として睡眠妨害が生じているとするが、睡眠妨害を共 通損害として認定すべきではない。 夜間の航空機騒音の発生状況は、本件飛行場における自衛隊機による訓 練は、午後9時30分から翌日午前7時までの時間帯では基本的に行われ ておらず、緊急発進等やむを得ない場合を除いて発生しない。実際に午後 10時から翌日午前7時までの時間帯における自衛隊機の管制回数 訓 練は、午後9時30分から翌日午前7時までの時間帯では基本的に行われ ておらず、緊急発進等やむを得ない場合を除いて発生しない。実際に午後 10時から翌日午前7時までの時間帯における自衛隊機の管制回数は平成 25年度から平成29年度の1か月平均では1.05回にすぎない。常時 測定点である小松市a町及び加賀市c町における同時間帯の1年間の70 dB以上騒音発生回数は、平成28年度から平成30年度では1回から5 回(最大で15回)にすぎない。そもそも昼間を睡眠時間帯として日常的 に航空機騒音にばく露している一審原告らは少数にとどまっており、また、 26 実際に航空機騒音を原因とする睡眠妨害が生じている者は極めて少数にと どまるから、睡眠妨害は一審原告らに共通して生ずる損害として認められ るような性質・程度のものとは認められない。第3・4次訴訟控訴審判決 では、睡眠妨害を共通する被害と認めるのは困難としているところ、その 認定に当たり基礎とした事実関係に比べて、原判決が基礎とした事実関係 が悪化ないし増悪したとは認められない。 ⑷ 本件飛行場の公共性及び公益上の必要性等についての誤り 原審は、本件飛行場の公共性・公益性について肯定的評価をしながらも、 受忍限度の判断において、総合評価としては殊更重視できないとして不当に 低い評価をする点で誤りがある。 本件飛行場は、民間航空との共同使用により国内線及び国際線が就航して いるから、周辺住民も直接的に利益を享受しており、このような利益と本件 飛行場の存在によって被る被害との間に彼此相補の関係が成り立つ。また、 災害派遣や防災活動の拠点として、周辺住民は迅速な対応を受けることがで きる利益を享受し得る点も同様に彼此相補の関係が成り立つ。さらに、本件 飛行場の存在は企業誘致等に有用で、地域の活性化につながり 、 災害派遣や防災活動の拠点として、周辺住民は迅速な対応を受けることがで きる利益を享受し得る点も同様に彼此相補の関係が成り立つ。さらに、本件 飛行場の存在は企業誘致等に有用で、地域の活性化につながり、その恩恵は、 本件飛行場の周辺住民があまねく享受している。 ⑸ 住宅防音工事その他の周辺対策の効果についての誤り 原審は、一審被告による住宅防音工事については、航空機騒音による被害 を十分に解消・低減するものとはいえず、本件飛行場の供用の違法性(受忍 限度)の判断及び慰謝料額の算定における影響は限定的なものにとどまると するが、住宅防音工事の効果を不当に過小評価するものである。 開口部の密閉性を高めることにより防音効果が高まることは明らかであり、 また、開口部を密閉しても換気装置による外気の取入れが可能であり、一つ の部屋で家族が団らんすることもできる。そして、夏季・冬季に空調機器を 使用するのが通常であるところ、住宅防音工事による家屋の気密性の向上は、 27 むしろ節電につながる側面もある。さらに、一審被告は、地域の騒音状況に 相応した周辺対策を実施している。 しかも、一審被告は、原審でも主張したとおりの巨額の費用をかけた周辺 対策を継続して実施しており、これにより本件飛行場周辺地域の住民の騒音 源に対する否定的評価を和らげ、騒音によって受ける精神的不快感を解消な いし軽減する効果がある。 ⑹ 一審原告らの居住実態について ア 当審において実施されたアンケート調査(上記補正後の前提事実8⑶) に回答した一審原告らのうち、別紙「居住実態区域外原告ら一覧」記載の 者については、住民票等とは異なる居住実態があり、指定区域内に居住し ていなかったとする期間があり、その間は騒音被害の発生を観念すること ができないから、その期間について、損害賠償請求 告ら一覧」記載の 者については、住民票等とは異なる居住実態があり、指定区域内に居住し ていなかったとする期間があり、その間は騒音被害の発生を観念すること ができないから、その期間について、損害賠償請求が認められる余地はな い。 イ 上記アのアンケート調査に回答しない別紙「調査未回答原告ら一覧」記 載の一審原告らについては、容易に回答し得るアンケート調査に合理的な 理由もなく回答していないから、原判決の判示する「住民票に記載された 住所及びその異動の履歴(中略)と異なる事実を認めるべき特段の事情」 があるというべきである。本件飛行場周辺の特定の住所地における居住事 実は、一審原告らが立証責任を負うものであり、また、アンケート調査に 回答して自己に不利な事実を述べた上記アの一審原告らとの取扱いの公正 を図るという観点からも、実際の居住場所について更なる立証が必要であ ることは明らかであるところ、回答期限(令和3年8月6日)を経過した 令和4年2月9日現在においても回答しないものであり、更なる立証がさ れる見込みはない。 したがって、上記のアンケート調査に回答しない一審原告らについては、 請求原因事実の立証がないといわざるを得ないから、その損害賠償請求が 28 認められる余地はない。 ⑺ 損害額の算定の誤り ア 慰謝料額を第3・4次訴訟控訴審判決より増額させるのが相当といえる 事情は存在しないこと 上記⑸の事情を適切に評価して慰謝料額を算定すべきである。 また、本件の慰謝料の算定においては、公平の観念に従い、前次訴訟の 確定判決である第3・4次訴訟控訴審判決を比較対象とすべきところ、従 来の慰謝料月額から3割以上の増額を相当といえる事情は見当たらない。 むしろ、三者共同測定の結果によれば、上記⑴のとおり、加賀市k町、能 美市l町、n町o 4次訴訟控訴審判決を比較対象とすべきところ、従 来の慰謝料月額から3割以上の増額を相当といえる事情は見当たらない。 むしろ、三者共同測定の結果によれば、上記⑴のとおり、加賀市k町、能 美市l町、n町o及び小松市p町における平成18年度以降の日WECP NLの80%レンジ上端値の平均値は、第3・4次訴訟当時の平成7年度 ないし平成17年度の平均値を明らかに下回っているほか、全体的な傾向 として、本件飛行場周辺の騒音状況は上記の判決の当時よりも改善傾向に ある。また、貨幣価値に変動は見られない。このように慰謝料月額を減額 するのが相当といえる事情こそあれ、増額を根拠付けるような事情は見当 たらない。 イ 加賀市c町及び同町以遠の告示W値85の地域については、告示W値8 0の地域と同額の慰謝料額にすべきこと 三者共同測定の結果による日WECPNLの80%レンジ上端値をみ ると、原判決が損害賠償の対象期間とした平成18年度以降のW値の平 均値は80.62であり、告示W値を4.38も下回っており、昭和5 7年度調査当時と比べて、騒音状況が大きく改善し、告示W値85に相 当する騒音実態がなく、せいぜい告示W値80程度の騒音状況にあるに すぎないから、これらの地域の居住期間(別紙原告別居住歴表【75W (加賀市k町・小松市p町及び同町以遠(l町・m町を含む)・85W 加賀市c町抽出分】参照)については告示W値80の地域と同額の賠償 29 額にとどめるべきである。 ウ 住宅防音工事による減額について適切な減額が認められるべきこと 原審は、2室目以降の減額率を下げているが、不当である。2室目以降 であっても防音効果そのものには変わりがなく、一審原告らにおいて効果 が見込める部屋を選択して工事を実施しているのである。 また、原審は、外郭防音 額率を下げているが、不当である。2室目以降 であっても防音効果そのものには変わりがなく、一審原告らにおいて効果 が見込める部屋を選択して工事を実施しているのである。 また、原審は、外郭防音工事を実施した住宅についても通常の防音工事 の場合と同様に減額率を30%としたことは誤りである。外郭防音工事は、 告示W値85以上の区域に所在する住宅を対象に、住宅全体を一つの防音 区画として、その外郭について防音工事を実施するものであり、区画ごと に行われる防音工事とは異なり、屋内全室に防音効果が得られるものであ るから、通常の防音工事と同等の評価をすべきではなく、それを超える減 額割合が認められるべきである。 エ B期間に係る弁護士費用について(当審における拡張請求に対する認否 反論) 一審原告らは、原審がB期間に係る弁護士費用を認容しなかったことが、 不当であるかのような主張をするが、一審原告らは、原審においてこれを 求めていなかったのであり、原審の判断に誤りはない。B期間についても、 A期間について述べたのと同様、一審原告らの主張する弁護士費用の額は 不当に高額である。 ⑻ 原審の口頭弁論終結日の翌日から事実審口頭弁論終結日までの損害賠償請 求は棄却されること(附帯控訴) 原審の口頭弁論終結日の翌日である令和元年6月18日から事実審口頭弁 論終結日までの損害賠償請求は、原審では将来請求として不適法とされたが、 事実審口頭弁論終結日時点においては、現在給付の訴えとして適法となるか ら、原判決中、その損害賠償請求の訴えをいずれも却下した部分を取り消し、 同訴えをいずれも棄却するとの判決を求める。 30 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原審と同じく、本件各差止請求のうち、訴え提起後に死亡した 一審原告らの差止請求は当然に終 取り消し、 同訴えをいずれも棄却するとの判決を求める。 30 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原審と同じく、本件各差止請求のうち、訴え提起後に死亡した 一審原告らの差止請求は当然に終了することを宣言し、自衛隊機の運航等の 差止請求は不適法であるから却下し、米軍機の運航等の差止請求は理由がな いから棄却し、本件損害賠償請求(当審における拡張請求を含む。)につき、 口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害(将来分)に係る訴えは不適法で あるから却下するのが相当であるが、当審の口頭弁論終結日までに生じた損 害(過去分)に関しては、主文1項⑶及び4項の限度で認容し、その余を棄 却するのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおりである。 【本件各差止請求について】 2 死亡原告らの差止請求について 本件訴訟のうち、別紙死亡原告目録記載の者の自衛隊機及び米軍機の離着陸 等の差止め及び音量規制の請求に関する部分は、同人らの死亡により当然に 終了したというべきである。その理由は、原判決「事実及び理由」欄の第5 章の第1の1及び2(原判決137頁8行目から26行目まで)に記載のと おりであるから、これを引用する。ただし、別紙死亡原告目録を本判決別紙 死亡原告目録と読み替えるものとする。その結果、原審において当然に終了 したものとされた一審原告らに加え、原審口頭弁論終結日以後死亡した一審 原告ら及び同日以前に死亡していたことが当審において判明した一審原告ら についても当然に終了したものとなる。 3 自衛隊機の運航等の差止請求に係る訴えの適否について ⑴ 上記2を除く一審原告らの上記差止請求に係る訴えは不適法であると判 断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」 欄の第5章の第2(原判決138頁5行目から同143頁23行目まで) 記2を除く一審原告らの上記差止請求に係る訴えは不適法であると判 断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」 欄の第5章の第2(原判決138頁5行目から同143頁23行目まで) に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) 31 ア 原判決138頁22行目の「同訓令2条6項」を「同訓令2条6号」に 改める。 イ 原判決139頁1行目の「公共の福祉の増進すること」を「公共の福祉 を増進すること」に改め、5行目から6行目にかけての「障害の防止する ため」を「障害の防止を図るため」に改める。 ⑵ これに対し、一審原告らは、周辺住民への配慮や周辺住民の騒音受忍を 義務付ける明文の規定がないことを理由に、周辺住民の騒音の受忍義務を 否定し、自衛隊機の運航は「単なる事実行為」であり公権力の行使に当た らない旨を主張する。 しかしながら、上記⑴で引用した原判決が説示するとおり、自衛隊機の運 航に伴う騒音等の影響は飛行場周辺に広く及ぶことは不可避であるから、自 衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使は、その運航に必然的に伴う騒 音等について周辺住民に受忍を義務付けるものであり、その権限の行使は、 その騒音等により影響を受ける周辺住民との関係において、公権力の行使に 当たる行為に当たるものというべきである。一審原告らが指摘する明文の規 定がないことは上記の判断を左右せず、周辺住民に対する防衛大臣の配慮義 務を根拠として周辺住民の受忍義務が導かれるものでもない。自衛隊機の運 航が公権力の行使に当たらない旨の一審原告らの上記主張は採用することが できない。 また、一審原告らが引用する昭和62年日本原演習場訴訟最判の事案が、 本件とは事案を異にする理由については、上記⑴で引用した原判決141頁 15行目から同142頁1行目に記載 用することが できない。 また、一審原告らが引用する昭和62年日本原演習場訴訟最判の事案が、 本件とは事案を異にする理由については、上記⑴で引用した原判決141頁 15行目から同142頁1行目に記載のとおりであって、自衛隊機に公物管 理権が認められる旨の一審原告らの主張は、上記の判断を左右しない。 さらに、一審原告らは、本件の訴えを提起した時点では、行政訴訟が可能 であるかは不明であったから、救済すべきである旨を主張するが、民事上適 法か否かは、行政訴訟が可能か否かによって決せられるものではないから、 32 原判決を引用して説示したとおり、民事上不適法とされる以上、一審原告ら の同主張は判断を左右しない。 一審原告らは、違憲・違法の自衛隊機の運航によって周辺住民に対して騒 音受忍を義務付けることはできない旨を主張するが、上記⑴で引用した原判 決143頁9行目から23行目に記載のとおり本件において自衛隊の違憲性 についての判断を要するものではないから、一審原告らの上記主張は採用す ることができない。 4 米軍機の運航等の差止請求の当否について ⑴ 上記2を除く一審原告らの上記差止請求は理由がないものと判断する。 その理由は、原判決「事実及び理由」欄の第5章の第3(原判決143頁 25行目から同147頁6行目まで)に記載のとおりであるから、これを 引用する。 ⑵ これに対し、一審原告らは、領域主権の原則からは、本件飛行場の使用 権の付与が包括的であることは許されず、条約等で個別に国内法の適用排 除の合意がない限りは国内法が適用される旨を主張する。 しかしながら、上記第2の3⑶で補正後の前提事実2⑽のとおり、本件 飛行場のうち米軍提供区域については、地位協定2条1項 に基づき、同 条4項⒝の適用ある施設及び区域として米軍に提供すること、米軍がこれ らの施 がら、上記第2の3⑶で補正後の前提事実2⑽のとおり、本件 飛行場のうち米軍提供区域については、地位協定2条1項 に基づき、同 条4項⒝の適用ある施設及び区域として米軍に提供すること、米軍がこれ らの施設を使用している期間中は地位協定の関連ある条項が適用されるこ とについて合意がされたものであって、米国は、地位協定3条1項により、 その運営、管理のため必要なすべての措置を執ることができるものとされ、 米軍に提供された本件飛行場の管理運営の権限は、少なくとも米軍機の運 航等に関しては、すべて米国に委ねられるものと解されるから、一審原告 らの上記主張は採用することができない。 その余の一審原告らの主張に理由がないことは、上記⑴で引用した原判 決で説示したとおりである。 33 【本件損害賠償請求について】 5 本件損害賠償請求(過去分)に係る判断の枠組みについて 上記の判断の枠組みについては、次のとおり補正するほかは、原判決「事実 及び理由」欄の第6章の第1(原判決147頁9行目から同149頁3行目 まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ⑴ 原判決148頁24行目の「必要性と内容と程度」を「必要性の内容と程 度」に改める。 ⑵ 原判決149頁1行目から2行目にかけての「最高裁平成7年7月7日 判決・民集49巻7号1870頁参照」を「平成5年厚木基地訴訟最判、平 成5年横田基地訴訟最判参照」に改める。 6 侵害行為の態様及び侵害の程度等(騒音ばく露の実態等)について ⑴ 侵害行為の態様及び侵害の程度等(騒音ばく露の実態等)についての認定 は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の第6章の第2 (原判決149頁5行目から同197頁2行目まで)に記載のとおりである から、これを引用する。 ( 露の実態等)についての認定 は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の第6章の第2 (原判決149頁5行目から同197頁2行目まで)に記載のとおりである から、これを引用する。 (原判決の補正) ア 原判決149頁23行目の「小松地方刑務隊」を「小松地方警務隊」に 改める。 イ 原判決156頁2行目の「167,」の次に「170、」を加え、24 行目の「飛行教導群が小松基地に移駐した」から同157頁1行目の「全 趣旨)。」までを以下のとおり改める。 「飛行教導群が小松基地に移駐した平成28年度の管制回数は、合計1万 9008回(うち上記移駐後の同年7月から平成29年3月までは1万 4263回)であり、平成29年度の管制回数は1万8454回、平成 30年度の管制回数は1万7612回であった(甲E167、170 34 (資料⑤))。」 ウ 原判決166頁1行目の「204」の次に「、235、288」を加え、 同167頁5行目の「前記期間における」を「平成16年度から令和元年 度までの」に改め、18行目の「平成29年度のW値76(81)」を 「平成29年度ないし令和元年度のW値76(80~81)」に改め、2 5行目冒頭から同168頁5行目末尾までを以下のとおり改める。 「 平成16年度から令和元年度までの年度ごとの年平均W値(なお、 括弧内の値は同年度の日WECPNLの80%レンジ上端値)をみる と、①三者共同測定地No3(k町)では、58(62)(ただし、 平成29年度を除くと61(64))~68(71)の範囲で概ね6 0台前半を、日WECPNLの80%レンジ上端値も平成19年度以 降は70に達することなく概ね60台後半を推移し、②同No5(l 町)では、58(60)(ただし、平成30年度を除くと61(65 ~ ね6 0台前半を、日WECPNLの80%レンジ上端値も平成19年度以 降は70に達することなく概ね60台後半を推移し、②同No5(l 町)では、58(60)(ただし、平成30年度を除くと61(65 ~66))~69(74)の範囲で概ね60台前半を、日WECPN Lの80%レンジ上端値も平成19年度以降は70に達することなく 概ね60台後半を推移し、③同No11(p町)では、61(70) ~71(74~75)の範囲で概ね60台後半を推移し、④同No3 1(n町o)では、60(63~65)~66(70)の範囲で概ね 60ないし63を、日WECPNLの80%レンジ上端値も平成17 年度以降は70に達することなく概ね60台後半を推移している。」 エ 原判決180頁1行目及び5行目の「検証」の前に「原審における」を 加える。 オ 原判決182頁2行目の「平成24年度」から3行目の「程度」までを 「平成24年度から平成30年度までは、年間1万6000回から1万9 000回程度」に改め、6行目の「平成29年度」を「平成30年度」に 改める。 35 カ 原判決186頁14行目の「後記 のとおり」を「上記7⑵エのとおり」 に改める。 キ 原判決187頁16行目の「存在する。」から同188頁5行目の「そ うであるとすれば,」までを「存在するものの、昭和57年度調査に基づ き昭和59年告示による第一種区域等の指定をした後は、現在に至るまで 告示コンターの見直しがされていないこと(前提事実6⑷)をも併せ考え ると、」に改める。 ク 原判決190頁3行目冒頭から26行目末尾までを以下のとおり改める。 「⑷ 飛行教導群の移駐による騒音状況への影響 一審原告らは、平成28年6月の飛行教導群の移駐により航空管制 回数や騒音発生回数等が から26行目末尾までを以下のとおり改める。 「⑷ 飛行教導群の移駐による騒音状況への影響 一審原告らは、平成28年6月の飛行教導群の移駐により航空管制 回数や騒音発生回数等が増加しており、騒音状況が悪化している旨を 主張し、原審における一審原告らの本人尋問の結果中(原告番号18、 同649、同783、同1128及び同1796)には上記移駐後に 騒音状況が悪化した旨を述べる部分があり、また、当審で提出された 騒音調査報告書Ⅶ(甲E170)でも、飛行教導群が移駐した平成2 8年の騒音状況の悪化が一時的なものではなく、平成29年度以降も 騒音発生回数等が増加した状態が継続していることが裏付けられると する。 上記報告書Ⅶ(甲E170)によれば、三者共同測定地点である小 松市a町の「修正機数の年平均値」が上記の移駐後の平成28年度か ら平成30年度にかけて増加傾向にあること、a町と加賀市c町の合 計「騒音発生回数」の上記移駐後の平均値(平成28年7月から平成 31年3月までのもの、平成28年度から平成30年度までのもの) が、上記の移駐前の平均値(平成23年4月から平成28年6月まで のもの、平成23年度から平成27年度までのもの)を上回っている ことが認められる。他方で、上記報告書Ⅶによれば、c町の「修正機 36 数の年平均値」は平成28年度から平成30年度にかけて減少傾向に あること、また、c町自体の「騒音発生回数」は、平成29年度と平 成30年度では減少傾向にある上、いずれの年度の騒音発生回数も平 成24年度ないし平成27年度のそれを下回っていることが認められ る。しかも、告示コンター内に位置する測定地の三者共同測定の結果 を見ても、本件請求対象期間である平成17年度以降において、上記 移駐後の平成28年度以降に最大値が計測され を下回っていることが認められ る。しかも、告示コンター内に位置する測定地の三者共同測定の結果 を見ても、本件請求対象期間である平成17年度以降において、上記 移駐後の平成28年度以降に最大値が計測されたのは、a町(平成2 9年度のW値83)以外にはないことが認められる(乙A288参 照)。 また、航空管制回数については、平成28年度から平成30年度ま での管制回数は、平成24年度から平成27年度までの平均管制回数 1万7020回(甲E170の資料⑤)をいずれも上回った状態にあ ることが認められるものの、平成29年度及び平成30年度の管制回 数それ自体は減少傾向にある上、平成29年度及び平成30年度の管 制回数は、平成24年度の管制回数18226回(甲E170の資料 ⑤)と同水準の状況にあり、本件請求対象期間に含まれる平成17年 度ないし平成21年度の管制回数(甲E146の43、49、50頁) をいずれも下回っていることが認められる。 これらに照らすと、飛行教導群の移駐により騒音状況が、本件損害 賠償請求の内容に影響を及ぼす程度に悪化したものと認めることはで きない。」 ⑵ これに対し、一審原告らは、平成28年6月の飛行教導群の移駐によって 騒音状況が悪化している旨を主張するが、上記⑴クで補正して引用した原判 決で説示したとおりであるから、一審原告らの上記の主張は採用することが できない。 また、一審原告らは、地上音を独立の侵害行為として評価すべき旨を主張 37 するが、社会生活上受忍すべき限度を超える地上音が発生していることを裏 付けるに足りる的確な証拠はない。一審原告らが主張する爆発及び墜落の危 険性について損害賠償請求が認められない理由は、上記⑴で引用した原判決 で説示したとおりである(原判決193頁14行目以下)。 を裏 付けるに足りる的確な証拠はない。一審原告らが主張する爆発及び墜落の危 険性について損害賠償請求が認められない理由は、上記⑴で引用した原判決 で説示したとおりである(原判決193頁14行目以下)。 さらに、一審原告らが主張する平和的生存権に基づく損害賠償請求が認め られない理由は、上記⑴で引用した原判決で説示したとおりである(原判決 195頁26行目以下)。 ⑶ 他方で、一審被告は、少なくともW75区域のうち、加賀市k町、能美市 l町、n町o、小松市p町及びこれら以遠の地域については、告示W値75 に相当する騒音実態にはない旨を主張する。 上記の4地点での三者共同測定の結果については、上記⑴ウで補正して引 用した原判決で認定したとおりであって、日WECPNLの80%レンジ上 端値(この数値は、小松市発行の「基地と小松」や石川県発行の「小松基地 周辺の騒音対策」では、施設庁方式によるW値と、便宜上、ほぼ同等の値を 示すものとされている。甲E169の131頁、乙A235参照)でもW値 70に達しない状況がみられており、施設庁方式によるW値としても75を 下回っている状況にある可能性は否定し切れない。 しかしながら、一審被告の上記主張は、告示コンターが騒音実態を適切に 反映されていないことを前提としたものであるが、そもそも告示コンターは 生活環境整備法が適用される場面において、その適用範囲を画する重要な役 割を有するところ、本件基本協定書では、一審被告は、常時騒音測定の調査 結果に基づいて少なくとも年1回騒音コンターの見直しを行うこととされて いるところ、昭和57年度調査に基づき昭和59年告示による第一種区域等 の指定をした後は、現在に至るまで告示コンターの見直しを行っていない (前提事実2⑻(原判決11頁から12頁)、6⑷(原判決22頁から23 ろ、昭和57年度調査に基づき昭和59年告示による第一種区域等 の指定をした後は、現在に至るまで告示コンターの見直しを行っていない (前提事実2⑻(原判決11頁から12頁)、6⑷(原判決22頁から23 頁))。 38 また、一審原告ら作成の被害状況陳述書(甲F1。枝番を含む。)を見て も、一審被告が上記4地点の以遠に居住すると主張する一審原告らの被害状 況陳述書(ただし、作成された平成21年当時には同所に居住していなかっ た分を除く。)には、睡眠の被害に関する記載がないもの(甲F1の931、 933、935、936、1727、1781)や、k町上空の自衛隊機に よる騒音は低減されたと感じている旨の記載があるもの(甲F1の1852) が見られるものの、それ以外の多くのものは、被害の内容や程度について、 他のW75区域に居住する一審原告らの被害状況陳述書の記載内容と大きな 差異はないものと認められる。 これらに照らすと、告示コンター内のうち、一審被告が主張する上記の4 地点以遠の地域について施設庁方式によるW値75に達しない騒音実態にあ るものと認めることは相当ではないというべきである。これと異なる一審被 告の上記主張は採用することができない。 7 航空機騒音による被害(被侵害利益の性質及び内容並びに被害の程度等)に ついて ⑴ 航空機騒音による被害(被侵害利益の性質及び内容並びに被害の程度等) についての認定は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄 の第6章の第3(原判決197頁4行目から同275頁16行目まで)に記 載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ア 原判決200頁22行目の「健康被害」の前に「疾病又は身体症状とい った」を加え、25行目及び同201頁20行目から21行目にかけての 各「健康被害 これを引用する。 (原判決の補正) ア 原判決200頁22行目の「健康被害」の前に「疾病又は身体症状とい った」を加え、25行目及び同201頁20行目から21行目にかけての 各「健康被害」の前にいずれも「疾病等の」を加える。 イ 原判決222頁16行目の「結果についてはは」を「結果については」 に改める。 ウ 原判決242頁23行目の「⑷イ」を「4⑷イ」に改める。 39 エ 原判決244頁4行目の「当該身体症状の有無等」を「当該自覚症状に 対応する疾病の有無」に改め、7行目の「身体症状等」を「疾病」に改め る。 オ 原判決244頁9行目冒頭から22行目末尾までを以下のとおり改める。 「 また、2011年調査についてみると、告示W値75以上の区域に おいて、①「胸がどきどきする」、②「肩がこる」及び③「腰が痛い」 との項目につき、「かなりある」又は「ひどくある」と回答した者の 割合をみると、①では最大5.5%(W85区域)、②では最大21. 5%(W85区域)、③では最大23.8%(W75区域)であるの に対し、非騒音区域では①につき0.8%、②につき13.8%、③ につき16.4%であり、また、現在の健康状態についても「よくな い」又は「余りよくない」と回答した者の割合は最大19.2%(W 80区域)であるのに対し、非騒音地区では9.3%であって(甲E 147の表5-1-4-1)、本件飛行場周辺において健康状態の不 調を訴えている住民の割合は、生活妨害の場合(上記5⑷ア)に比し て相当小さいものということができる。」 カ 原判決244頁26行目の「というのであって」から同245頁1行目 から2行目にかけての「これらの調査によっても」までを「というのであ り、また、1998年調査の結果及び2011年調査の結果からも」に改 判決244頁26行目の「というのであって」から同245頁1行目 から2行目にかけての「これらの調査によっても」までを「というのであ り、また、1998年調査の結果及び2011年調査の結果からも」に改 める。 キ 原判決254頁1行目冒頭から7行目の「総合的に考慮すると,」まで を「このように出生時体重に影響を及ぼす要因は様々であって、2011 年調査の多要因調整によって適切な調整がされているといえるかについて は疑問が残ることに照らすと、」に改める。 ク 原判決262頁16行目の「⑸」を「5⑸」に改める。 ケ 原判決263頁7行目の「認め得るよう」を「認め得るような」に改め 40 る。 ⑵ これに対し、一審原告らは、その主張する健康被害の内容について、「心 身相関」の考え方に基づき、具体的な疾病・疾患ではなく、身体障害に連な る危険性のある生理的・心理的現象であり、騒音というストレスによる具体 的な生理的・心理的現象の外部への現れ方は各人によって異なるとしても、 騒音によって上記の生理的・心理的現象が生じているという限度では共通し ており、疫学的な調査結果によって上記の内容の健康被害が直接的に立証さ れている旨を主張する。 しかしながら、損害賠償請求の対象となる健康被害は、飽くまでも現実に 発生した疾病や身体症状が基本となるものであって、一審原告らが共通被害 として主張する身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象について は、上記⑴で補正して引用した原判決が説示するとおり、疾病等が生じる相 当程度の危険性があると認められる場合に限って不法行為法上の保護に値す る利益に当たるものと解するのが相当である。一審原告らが健康被害として 主張する、身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象についても、 それによって上記の疾病等が生じる相当程度の危 上の保護に値す る利益に当たるものと解するのが相当である。一審原告らが健康被害として 主張する、身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象についても、 それによって上記の疾病等が生じる相当程度の危険性があると認められる場 合に限って、損害賠償請求権の発生が認められることとなる。本件において は、一審原告らの提出する疫学的な調査結果によっても、上記の疾病等が生 じる相当程度の危険性があるとは認められない。このように解しても昭和5 6年大阪国際空港訴訟最判に抵触するものではない。 もっとも、一審原告らが指摘する「心身相関」の考え方に照らすと、スト レス等といった身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象について は、静穏な日常生活の享受を妨害されたことによる共通被害として認められ る、航空機騒音をうるさく感じ、苛立ちや怒り等による情緒的被害や不快感 等の精神的苦痛によって引き起こされるものともいえるから、静穏な日常生 活の享受を妨害されたことに伴う慰謝料の算定においては、そうした精神的 41 苦痛によるストレス等も十分に考慮されているのであり、仮に、一審原告ら が主張する身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象が認められた としても、そのことから直ちに慰謝料の額に変動を及ぼすものとは解されな い。 また、一審原告らは、非特異的疾病ないし身体症状についても、航空機騒 音によるものであることが疫学的に立証されている旨を主張するが、疫学的 に見て航空機騒音と非特異的疾病等との間に関連性が認められるとしても、 その関連性の程度や度合いは明らかではなく、法的に見て、航空機騒音によ って疾病等が発生する相当程度の危険性があると認めることは困難である。 なお、一審原告らは、「寄与危険割合」によって因果関係の程度を把握する ことができ、それを算出するのに 、法的に見て、航空機騒音によ って疾病等が発生する相当程度の危険性があると認めることは困難である。 なお、一審原告らは、「寄与危険割合」によって因果関係の程度を把握する ことができ、それを算出するのに必要な累積発生率は、慢性疾患の場合には、 横断研究(断面調査)である2011年調査で得られた存在率(有病率)と 近い値になる旨を主張するが、一審原告らが引用する甲C第78号証は、そ のような可能性があることを示唆するにとどまり、本件において、2011 年調査によって得られた存在率をもって累積発生率に近い値であると断定す ることはできない。 そして、疾病等が生じる相当程度の危険性があると認められないことにつ いては、上記⑴で補正して引用した原判決が説示するとおりであって、一審 原告らが種々主張する点を踏まえても、上記の結論は左右されない。 ⑶ 他方で、一審被告は、昭和56年大阪国際空港訴訟最判は、健康被害が生 じる相当程度の危険をもって慰謝料請求権の発生原因とすることを認めてい ない旨を主張するので検討するに、昭和56年大阪国際空港訴訟最判は、身 体的被害の可能性ないし危険性を帯有する生理的・心理的現象を慰謝料請求 権の発生原因たる被害と認めるものであり、原審が慰謝料請求権の発生原因 たる被害とした「健康被害が生じる相当程度の危険が生じていること」とは 文言上差異があることは一審被告の主張するとおりである。また、昭和56 42 年大阪国際空港訴訟最判は、単なる身体的被害発生の可能性ないし危険性そ のものを慰謝料請求権の発生原因たる被害とみることはできない旨を明言す るものであるが、原審のいう「健康被害が生ずる相当程度の危険」というの はこれに一定程度の絞りをかけるものと解され、原審の判断が昭和56年大 阪国際空港訴訟最判に反する違法なものであるとはいえないから、この のであるが、原審のいう「健康被害が生ずる相当程度の危険」というの はこれに一定程度の絞りをかけるものと解され、原審の判断が昭和56年大 阪国際空港訴訟最判に反する違法なものであるとはいえないから、この点に 関する一審被告の主張は上記⑵の判断を左右しないというべきである。 また、一審被告は、睡眠妨害を共通被害として認定することはできない旨 を主張するが、上記⑴で引用した原判決が説示するとおり、本件飛行場に係 る航空機騒音の多くは日中に集中しているために生活妨害の程度としては限 定的なものではあるが、睡眠が必要となるときにそれが妨げられるという点 においては、告示コンター内に居住する一審原告らに共通して、睡眠妨害の 被害が生じているものということができるので、一審被告の上記主張は採用 することができない。 8 本件飛行場の公共性及び公益上の必要性等について ⑴ 本件飛行場の公共性及び公益上の必要性等についての認定は、原判決27 5頁21行目の「小松地方刑務隊」を「小松地方警務隊」に改めるほかは、 原判決「事実及び理由」欄の第6章の第4(原判決275頁18行目から同 281頁16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑵ これに対し、一審原告らは、最高法規である憲法規範に違反する国家行為 は強度の違法性を有するから、「公共性」等を考慮することは許されない旨 を主張する。 しかしながら、憲法が日本国の最高法規であるからといって全ての民事訴 訟事件において憲法適合性の判断が必要となるものではなく、本件における 違法性の有無を判断するに当たって、憲法違反の有無についての判断を要し ないことは上記⑴で引用した原判決で説示したとおりであるから、これと異 なる一審原告らの上記主張は採用することができない。 43 ⑶ 他方で、一審被 って、憲法違反の有無についての判断を要し ないことは上記⑴で引用した原判決で説示したとおりであるから、これと異 なる一審原告らの上記主張は採用することができない。 43 ⑶ 他方で、一審被告は、本件飛行場の周辺住民が享受する利益と本件飛行場 の存在によって被る被害との間は彼此相補の関係が成り立つ旨を主張するが、 そのような関係が認められないことは上記⑴で引用した原判決で説示したと おりであるから、これと異なる一審被告の上記主張は採用することができな い。 9 侵害行為の開始とその後の経過等について 侵害行為の開始とその後の経過等についての認定は、原判決283頁17 行目の「締結当時者」を「締結当事者」に改めるほかは、原判決「事実及び 理由」欄の第6章の第5(原判決281頁18行目から同284頁6行目ま で)に記載のとおりであるから、これを引用する。 10 一審被告による周辺対策及び音源対策等について ⑴ 一審被告による周辺対策及び音源対策等についての認定は、次のとおり補 正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の第6章の第6(原判決284頁 8行目から同303頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用 する。 (原判決の補正) ア 原判決287頁6行目の次行に以下を加える。 「 平成30年度には、上記住宅防音工事として1736世帯に対し合 計で約17億6873万円を助成しており、各種復旧工事を除く住宅 防音工事の1世帯当たりの平均助成額は約375万円であり、外郭防 音工事の1世帯当たりの平均助成額は約765万円であった(乙A2 53)。」 イ 原判決287頁12行目の「外郭工事標準仕方書」を「外郭防音工事標 準仕方書」に、16行目の「告示W値80dB」を「告示W値80」に、 17行目の「告示W値75dB以上」を「 (乙A2 53)。」 イ 原判決287頁12行目の「外郭工事標準仕方書」を「外郭防音工事標 準仕方書」に、16行目の「告示W値80dB」を「告示W値80」に、 17行目の「告示W値75dB以上」を「告示W値75以上」に各改める。 ウ 原判決289頁1行目の「別紙」から3行目の「記載のとおり」までを 44 「住宅防音実績表に記載のとおり」に、9行目の「上記別紙原告別住宅防 音実績表」を「住宅防音実績表」に、20行目の「別紙原告別住宅防音実 績表」を「住宅防音実績表」に各改める。 エ 原判決289頁22行目の末尾に「なお、一審原告A2ら(原告番号3 5・36)の居宅、同A3ら(原告番号188・189・192)の居宅、 同A4ら(原告番号263・264)の居宅、同A5ら(原告番号323 ~326)の居宅、同A6ら(原告番号381・382)の居宅、同A7 ら(原告番号521~524)の居宅及び同A8ら(原告番号1396~ 1398)の居宅については、住宅防音実績表記載のとおり、解体建替後 に住宅防音工事が施工されている。」を加える。 オ 原判決293頁16行目の「226」の次に「、237」を加える。 カ 原判決294頁7行目の「「飛行場等の周辺の移転措置実施に伴う損失 補償基準」を「「飛行場等周辺の移転措置実施に伴う損失補償基準」」に、 8行目の「飛行場周辺」を「「飛行場周辺」に、10行目の「損失基準」 を「損失補償基準」に各改める。 キ 原判決294頁26行目の「平成29年度」を「平成30年度」に、同 295頁1行目の「671戸」を「677戸」に、同行目から2行目にか けての「約97万5000㎡」を「約97万9000㎡」に、同行目の 「約304億8722万円」を「約306億3432万円」に、6行目及 び9行目の各「平成29年度」をいずれも 」に、同行目から2行目にか けての「約97万5000㎡」を「約97万9000㎡」に、同行目の 「約304億8722万円」を「約306億3432万円」に、6行目及 び9行目の各「平成29年度」をいずれも「平成30年度」に各改める。 ク 原判決296頁の4行目の「平成」から5行目の「5000㎡」を「平 成30年度までに約97万9000㎡」に、6行目の「671戸」を「6 77戸」に各改める。 ケ 原判決298頁26行目の次行に「エ 上記の各助成は、平成30年度 においても着実に実施されている(乙A237)。」を加える。 ⑵ これに対し、一審被告は、住宅防音工事その他の周辺対策の効果を強調す 45 るが、一審被告が種々主張する事情を踏まえても、上記⑴の判断は左右され ない。なお、当審において実施した当事者双方からの申出による検証のうち、 一審被告の申出に係る目的の中には、外郭防音工事が施工された住宅の居室 の内外における騒音発生時の状況を検証することが含まれていたが、同住居 での検証の際に、屋外において80dB以上を計測する騒音の発生機会が1 度しかなかったため、外郭防音工事の効果を十分に確認することはできなか った(当審における検証の結果、乙A289)。 11 本件飛行場の供用による違法な権利侵害ないし法益侵害の有無について 本件飛行場を設置・管理する一審被告には、告示W値75以上の区域に居 住する一審原告との関係において、国賠法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」 があるものと認められる。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決 「事実及び理由」欄の第6章の第7(原判決303頁10行目から同306 頁4行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ⑴ 原判決304頁17行目の「有するものと」を「有するもの」に改め の第6章の第7(原判決303頁10行目から同306 頁4行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ⑴ 原判決304頁17行目の「有するものと」を「有するもの」に改める。 ⑵ 原判決305頁9行目の「この間」を「昭和57年度調査に基づき昭和5 9年告示による第一種区域等の指定をしたのを最後に」に改める。 ⑶ 原判決305頁18行目の「というのである。」の次に「そして、移転の 補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原告らとの関係では、移転の補 償等を受けることによって航空機騒音による被害が低減されたといえるもの の、移転の補償等を受けたというだけで、上記の者が移転後に受ける航空機 騒音による被害が受忍限度の範囲内にあるものと評価することはできない。 これに反する一審被告の主張は採用することができない。」を加える。 12 一審原告らの居住歴について 一審原告らの居住歴についての認定は、次のとおり補正するほかは、原判決 「事実及び理由」欄の第6章の第8(原判決306頁6行目から同310頁 46 16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。したがって、 原告番号2118ないし2122の一審原告5名の本件損害賠償請求(過去 分)には理由がない。 (原判決の補正) ⑴ 原判決307頁1行目の「2117,同」を削り、7行目の「(ただし,」 から8行目の「2117-1)」までを削る。 ⑵ 原判決307頁10行目冒頭から14行目末尾までを以下のとおり改める。 「3 他方、上記2の者らを除く一審原告については、居住歴一覧表の「請 求の始期」と「請求の終期」の間の損害賠償を請求しているところ、上 記の一審原告らの住民票等に記載された住所及びその異動の履歴は、お おむね居住歴一覧表に記載のとおりである( いては、居住歴一覧表の「請 求の始期」と「請求の終期」の間の損害賠償を請求しているところ、上 記の一審原告らの住民票等に記載された住所及びその異動の履歴は、お おむね居住歴一覧表に記載のとおりである(補正後の前提事実8⑶のと おり、一部にアンケート調査の回答書の記載内容が記載されているもの もある。)。」 ⑶ 原判決307頁25行目冒頭から同308頁5行目末尾までを以下のとお り改める。 「 そこで、上記の住民票等に記載された住所及びその異動の履歴と異なる 事実を認めるべき特段の事情の有無について検討する。 ⑴ 回答書の記載内容と住民票の記載内容が異なる一審原告について 一審被告は、補正後の前提事実8⑶のアンケートの回答書の記載内容 に基づき、別紙「居住実態区域外原告ら一覧」に記載の一審原告につい ては、住民票に記載された住所とは異なる居住実態があり、実際に居住 していたとする場所が指定区域の外に位置する期間については、上記の 特段の事情がある旨を主張する。 ア 一審原告A9(原告番号160)について 同一審原告(旧姓A10)の父である一審原告A11は、一審原告 A9について、回答書の「実際の居住地」欄に「小松市r町s-t」、 47 「生活期間」欄に「平成12年5月~令和元年11月」、「理由」欄 に「結婚」と記入する(乙A290の158)。 しかしながら、同一審原告(平成8年6月生)の婚姻日は令和元 年11月27日であり、住民票上は同日に「小松市r町s番地t」に 転居しているところ(甲F196の160の1・2)、上記回答書中 の同一審原告の住民票上の居住歴には「小松市u町v番地w」(以下 「従前の住所地」という。)の記載しかなく、現在の住所地が記載さ れていなかったこと(乙A290の158)、住民票上の従前の住所 地への転居日 一審原告の住民票上の居住歴には「小松市u町v番地w」(以下 「従前の住所地」という。)の記載しかなく、現在の住所地が記載さ れていなかったこと(乙A290の158)、住民票上の従前の住所 地への転居日は平成12年4月5日であったこと(甲F193の16 0)が認められるから、上記回答書の「実際の居住地」欄には、同一 審原告の住所地の記載の誤りを訂正する趣旨で現在の住所地が記入さ れ、「生活期間」欄には従前の住所地に実際に居住した期間が記入さ れたものと考えられる。 そうすると、上記回答書の記載内容を踏まえても、上記の特段の 事情があるとはいえないから、同一審原告が従前の住所地に居住して いたのは、住民票等の記載内容のとおり令和元年11月26日までと 認められる。 イ 一審原告A1(原告番号251)について 同一審原告は、住民票等では、平成19年9月12日に小松市d町 e丁目f番地g(W75区域)に転居した後、令和元年12月7日に は石川県七尾市h町(告示コンター外)に転居した(甲F196の2 51)とされているところ、同一審原告は、アンケートの回答書(乙 A290の251)の「生活期間」欄に「2019年5月~2021 年3月頃」、「理由」欄に「仕事のため七尾市内へ」と記入し、また、 小松市d町e丁目f番地gに住民票を移していない理由について、七 尾市に住民票を移したのは、母親を扶養家族に移すためであり、七尾 48 市から小松市に住民票を移していないのは、会社に対する関係で移す 必要性がなかったためと平日休みが取りづらいためである旨を述べて いる(甲F197の41)。 そうすると、同一審原告は、小松市d町e丁目f番地gを生活の 本拠と定めたが、仕事の都合で一時的に石川県七尾市内に居住し、実 際の転居日よりも7か月程度遅れて転入の届出をしてい (甲F197の41)。 そうすると、同一審原告は、小松市d町e丁目f番地gを生活の 本拠と定めたが、仕事の都合で一時的に石川県七尾市内に居住し、実 際の転居日よりも7か月程度遅れて転入の届出をしていることになる から、小松市d町に戻ったものの転居の届出ができていない旨の同一 審原告の上記供述記載部分を信用することができる。したがって、同 一審原告は、平成31年4月30日までと令和3年4月1日以降は小 松市d町e丁目f番地g(W75)に居住しているものと認めるのが 相当である。 ウ 一審原告近A12(原告番号1704)について 上記一審原告と同居していた一審原告A13は、一審原告A12に ついては、住民票等の記載の住所地とは異なり、平成28年4月以降 は金沢市に単身赴任している旨を回答しているから(乙A290の1 702の2)、一審原告A12が住所地(W75)に居住していたの は、同年3月31日までであると認めるのが相当である。 エ 別紙「居住実態区域外原告ら一覧」記載のその余の一審原告ら(た だし、後記⑶の一審原告A14(原告番号1796)を除く。)につ いて一審被告が指摘する点は、いずれも居住歴一覧表記載の「請求の 始期」又は「請求の終期」に正確に反映されており、そのほかには上 記の特段の事情は見当たらないから、上記の一審原告らは、居住歴一 覧表記載の「請求の始期」から「請求の終期」までの間は、居住歴一 覧表に記載の住所地に居住していたものと認められる(なお、年月の 記載しかないものの日は、「請求の始期」につき当月1日、「請求の 終期」につき当月末日である。)。 49 オ 一審原告A16(原告番号182)について 同一審原告は、小松市α町β番地γから千葉県富里市へ転出してい るが、同一審原告はその転出の届出を 末日である。)。 49 オ 一審原告A16(原告番号182)について 同一審原告は、小松市α町β番地γから千葉県富里市へ転出してい るが、同一審原告はその転出の届出をしていないこと(住民票上は令 和2年2月17日に転出確定。甲F196の182)、同一審原告の おばである一審原告A17は、上記の転居につき「転居日不明」と記 載された回答書を前提として回答しており、実際の転居日について回 答していないこと(乙A290の179)、一審原告A16は、平成 30年3月7日に婚姻し、同一審原告につき千葉県成田市を本籍地と する新戸籍が編成されていること(一審原告A18の訴訟手続受継の 申立書の添付資料参照)、以上の事実が認められる。 上記の認定事実によれば、一審原告A16が小松市α町(W80) に居住していたのは平成30年3月6日までであると認めるのが相当 である。 カ 一審原告A19(原告番号741)について 同一審原告の訴訟承継人であるA20は、同一審原告が住所地(小 松市δ町ε番地)と異なり、平成27年4月以降小松市ζ町η-θ所 在の施設に入居していた旨を回答しているから(甲F197の54)、 同年3月31日までは上記の住所地(W80)に居住し、同年4月1 日以降は上記の小松市ζ町(W75)に居住していたものと認めるの が相当である。 キ 一審原告A21、同A22及び同A23(原告番号1089、10 90、1091)について 一審原告A21は、同居の家族を含む上記の一審原告ら3名につい ては、住民票等の記載の住所地とは異なり、平成30年2月以降、母 の介護のため小松市ι町κに居住している旨を回答しているから(乙 A290の1089)、上記の一審原告ら3名が住所地(W80)に 50 、住民票等の記載の住所地とは異なり、平成30年2月以降、母 の介護のため小松市ι町κに居住している旨を回答しているから(乙 A290の1089)、上記の一審原告ら3名が住所地(W80)に 50 居住していたのは同年1月31日までであり、同年2月1日以降は上 記の小松市ι町(W75)に居住しているものと認めるのが相当であ る。 ク 一審原告A24(原告番号1275)について 同一審原告は、住民票等の記載の住所地とは異なり、令和2年10 月以降、小松市ζ町λ-μ所在の施設に入所している旨を回答してい るから(乙A290の1275)、同年9月30日までは住民票等の 記載の住所地(W85)に居住し、同年10月1日以降は上記の小松 市ζ町(W75)に居住しているものと認めるのが相当である。 ケ 一審原告A25(原告番号1553)について 同一審原告と同居していた一審原告A26は、一審原告A25につ いては、住民票等の記載の住所地とは異なり、令和3年3月以降、シ ンガポールに単身赴任している旨を回答しているから(乙A290の 1553)、一審原告A25が住所地(W75)に居住していたのは、 同年2月28日までであると認めるのが相当である。 コ 一審原告A27、同A28、同A29及び同A30(原告番号66 0、721、1648、1995)について 上記の一審原告らは、いずれも住民票等の記載の住所地(なお、一 審原告A29(原告番号1648)の住所地は能美市ν町ξ番地ο) とは異なる場所に居住している旨を主張し、回答書中にもこれに沿う 記載があるものの、これらの居住事実は、上記オないしケとは異なり、 いずれも後記15(損害額)で算定する「調整後慰謝料月額」を増額 する方向に働くものであるところ、上記の居住事実を裏付ける客観的 に沿う 記載があるものの、これらの居住事実は、上記オないしケとは異なり、 いずれも後記15(損害額)で算定する「調整後慰謝料月額」を増額 する方向に働くものであるところ、上記の居住事実を裏付ける客観的 な証拠がないから、上記の主張はいずれも採用することができない。 ⑵ 回答書の提出がない一審原告らについて 一審被告は、アンケート調査に回答しなかった一審原告らについては、 51 上記の特段の事情があるというべきであり、居住事実の立証がない旨を 主張する。 アンケート調査に回答していない者のうち、既に死亡した者に対して はアンケート調査や聞き取り調査を実施することができず、回答するこ とができない上、居住実態の確認を申し入れた一審被告においても、死 亡した者の居住実態の確認についてまで明確に要望していなかったとい う経緯をも考慮すると、既に死亡した者については、上記の特段の事情 があるとまではいえないものとして、「請求の始期」から「請求の終期」 までの居住場所は居住歴一覧表に記載の住所地のとおりであると認める のが相当である(なお、A31(原告番号771)も既に死亡してい る。)。 他方で、アンケート調査の実施方法は、補正後の前提事実8⑶に記載 のとおりであり、住民票に記載の住所地と異なる場所に居住していた事 実がなければ、単に異ならない旨を回答すれば足りるもので容易に回答 可能であることからすると、このような調査に回答しない以上、居住事 実についての立証が尽くされていないものというほかない。 もっとも、原審で提出された被害状況陳述書(F1)は住所地に実際 に居住していることを前提に作成されているものと考えられること、一 審被告によるアンケート調査等の実施の要望は当審になってされたもの であることを考慮すると、上記の特段の事情があるといえるのは 地に実際 に居住していることを前提に作成されているものと考えられること、一 審被告によるアンケート調査等の実施の要望は当審になってされたもの であることを考慮すると、上記の特段の事情があるといえるのは、原審 の口頭弁論終結日の属する令和元年6月以降の部分に限られるものとす るのが相当である。 そうすると、回答書の提出のない一審原告らのうち令和元年6月以降 について損害賠償を求めている7名(原告番号397~399、874、 1399、2178、2180)については、令和元年6月以降に主張 の住所地に居住していた事実を認めることができないものというべきで 52 ある。」 ⑷ 原判決308頁6行目冒頭の「⑴」を「⑶」に改め、8行目の「(令和元 年6月17日)」を削り、11行目の「本人尋問」の前に「原審における」 を加える。 ⑸ 原判決309頁4行目冒頭の「⑵」を「⑷」に改め、5行目冒頭から7行 目末尾までを以下のとおり改め、8行目の「本人尋問」の前に「原審におけ る」を加え、24行目末尾の次に「これに反する上記の回答書(乙A290 の1796)の記載内容は採用することができない。」を加える。 「 一審原告A15(原告番号1798)は、本件損害賠償請求に係る請求 対象期間を平成17年12月24日から令和2年4月7日までとして、同 月8日に野々市市に転居するまでは、住民票等の記載のとおり加賀市x町 y丁目z番地に居住していた旨を主張し、その父である一審原告A14作 成の回答書(乙A290の1796)には同旨の記載がある。」 ⑹ 原判決309頁25行目冒頭の「⑶」を「⑸」に改め、同310頁4行目 の「本人尋問」の前に「原審における」を加える。 ⑺ 原判決310頁16行目の次行に以下を加える。 「⑹ 上記⑴ないし⑸の一審原告ら以外の一審原告ら 冒頭の「⑶」を「⑸」に改め、同310頁4行目 の「本人尋問」の前に「原審における」を加える。 ⑺ 原判決310頁16行目の次行に以下を加える。 「⑹ 上記⑴ないし⑸の一審原告ら以外の一審原告らについては、上記の特 段の事情は見当たらないから、居住歴一覧表の「請求の始期」から「請 求の終期」までの期間は、その住所地に居住していたものと認めるのが 相当である。」 13 危険への接近の法理について 一審被告がいわゆる危険への接近の法理が適用されると主張する一審原告ら については、いずれも上記の法理が適用されないものと判断する。その理由 は、原判決「事実及び理由」欄の第6章の第9(原判決310頁18行目か ら同313頁1行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 14 移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原告らについて 53 一審被告は、移転の補償等を受けて居住地を変更したにもかかわらず、引き 続き第一種区域(告示W値75以上の区域)内に居住し、その上で本件訴え を提起した者2名及びその関係者7名の合計9名(別紙「原告別居住歴表 【移転措置関係者】」。ただし、訴えを取り下げた原告番号468及び同4 69を除く。)については、一審被告の負担において多額の費用を要する移 転の補償等を受け、航空機騒音等による影響を解消する機会を得ながら、自 らの判断により甘受した航空機騒音による影響等を理由として、一審被告に 対し、損害賠償請求することは、信義則に反し許されない旨を主張する。な お、一審被告は、これらの一審原告については違法性が否定されるべき旨を 主張するが同主張が採用し得ないものであることは上記11で原判決を引用 するに際し補正して説示したとおりである。 生活環境整備法では、移転の補償等を受けるのに第一種区域外に転居するこ れるべき旨を 主張するが同主張が採用し得ないものであることは上記11で原判決を引用 するに際し補正して説示したとおりである。 生活環境整備法では、移転の補償等を受けるのに第一種区域外に転居するこ とは求められてはおらず、また、第一種区域内に転居する場合には航空機騒 音に係る損害賠償請求をしない旨の合意もされていない(弁論の全趣旨)。 しかしながら、移転の補償等は、一審被告の負担において移転することによ って第二種区域における航空機騒音等による被害を解消する手段として位置 付けられるものであって、第二種区域内に居住する者にとっては自らが受け ている航空機騒音等の影響や程度等を熟知した上で、移転先を選定したもの といえること、また、その移転に当たっては、建物の移転に要する種々の費 用についても補償を受けられること(上記10⑴で引用した原判決「事実及 び理由」欄の第6章の第6の2⑴(原判決293頁15行目以下)参照)、 実際に、移転の補償等を受けた677戸のほとんどは、告示コンター外に転 居しているところ(弁論の全趣旨)、上記の一審原告らにおいて、告示コン ター外に転居することが困難であった事情は明らかにされていないこと、以 上の事実を指摘することができる。 これらに照らすと、移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原 54 告ら(原告番号148ないし150、1473ないし1475)については、 信義則に照らし、移転後の居住期間についての損害賠償額の3割を減額する のが相当である。したがって、一審被告の上記主張はその限度において理由 があり、移転補償等は考慮要素とならない旨の一審原告らの主張は、上記説 示の限度で理由があり、その余は理由がない。 他方で、上記の移転後になって移転先での居住を開始した一審原告ら(原 告番号151ないし153)については、上記で指 ならない旨の一審原告らの主張は、上記説 示の限度で理由があり、その余は理由がない。 他方で、上記の移転後になって移転先での居住を開始した一審原告ら(原 告番号151ないし153)については、上記で指摘した事情が妥当しない から、損害賠償請求が制限される理由はない。 15 損害額について ⑴ 一審原告ら(ただし、原告番号2118ないし2122の5名を除く。) の一審被告に対する本件損害賠償請求(過去分)については、別紙認容額 一覧のとおりであると認められる。その理由は、次のとおり補正するほか は、原判決「事実及び理由」欄の第6章の第10の1ないし3(原判決3 13頁3行目から同316頁20行目まで)に記載のとおりであるから、 これを引用する。 (原判決の補正) ア 原判決314頁16行目の次行に以下を加える。 「 なお、遅延損害金の利率については、A期間及びB期間のうち令和2 年3月31日までに生じた損害については改正前民法所定の年5分であ り、同年4月1日以降に生じた損害については現行の民法所定の年3% となる。」 イ 原判決314頁26行目末尾の次に「また、本件請求対象期間内に告示 コンター内で転居した場合もこれと同様であって、当該転居の日の属する 歴月については、転居の前後の「調整後慰謝料月額」(後記⑹)を比較し て、より低い金額の限度で損害が発生したものと認めるのが相当である。」 を加える。 55 ウ 原判決316頁12行目の「相当であり」の次に「(告示コンター内で 転居した場合も同様である。)」を加える。 エ 原判決316頁17行目の「A期間」の次に「及びB期間」を加え、1 8行目から19行目にかけての「(ただし、100円未満は四捨五入す る。)」を削り、20行目末尾の次に以下を加える。 「B期間の弁護士費用は、当審 頁17行目の「A期間」の次に「及びB期間」を加え、1 8行目から19行目にかけての「(ただし、100円未満は四捨五入す る。)」を削り、20行目末尾の次に以下を加える。 「B期間の弁護士費用は、当審における一審原告らの拡張請求に基づくも のである。一審原告らは、原審がこれを認容しなかったことが、一審原 告らの弁護士費用の請求がA期間についてのみであると誤解したことに よるものであるかのような主張をするが、B期間について弁護士費用を 求める旨の主張は、原審において一審原告らから提出された書面には一 切記載されていなかったものであり、これを認めなかった原審の判断に 誤りはなく、一審原告らの同主張には理由がない。」 ⑵ これに対し、慰謝料額について、一審原告らは、低額にすぎること、W値 の増大に伴う慰謝料の増額幅が同額でないことの不合理さなどを指摘し、 他方で、一審被告は、第3・4次訴訟控訴審判決の慰謝料額を増額する理 由がないことやその当時と貨幣価値に変動がないことなどを指摘するが、 静穏な日常生活の享受の妨害の程度については、告示W値の上昇に伴って、 必ずしも比例的に増大するわけではなく、増大の仕方が逓減する場合もあ り得ること(原判決236頁21行目ないし25行目、同261頁15行 目ないし18行目参照)、昭和50年に締結された10・4協定では一審 被告において10年以内に速やかに環境基準の達成を期するものとされ、 第1・2次訴訟及び第3・4次訴訟においても本件飛行場の供用の違法性 が繰り返し指摘されてきたにもかかわらず、騒音状況は大きく改善される ことなく継続していること、その他本件において現れた一切の事情を総合 考慮すると、双方が種々主張する事情を考慮してみても、上記⑴の認定判 断は左右されない。 56 ⑶ また、一審原告らは、告示コンター内の居住期間が と、その他本件において現れた一切の事情を総合 考慮すると、双方が種々主張する事情を考慮してみても、上記⑴の認定判 断は左右されない。 56 ⑶ また、一審原告らは、告示コンター内の居住期間が歴月の一部にとどまる 場合に損害額を認めないのは違法である旨を主張する。 しかしながら、本件における航空機騒音については、民間空港におけるも のとは異なり、曜日等によって相当変動するものであって、必ずしも日割計 算になじむものとは言い難い面があること、本件では継続的な相当長期にわ たる損害賠償請求がされていることに照らすと、歴月を単位として損害額を 算定するのが相当であるから、一審原告らの上記主張は採用することができ ない。なお、月の途中に告示コンター内で転居した場合に転居の前後の居住 期間自体は歴月の一部にとどまるが、この場合の転居の当月分について損害 賠償請求が認容されるべきことは上記⑴で原判決を引用するに際し補正して 説示したとおりである。 ⑷ 他方で、一審被告は、加賀市c町及び同町以遠のW85区域の騒音状況は W80区域と同程度であるから、慰謝料額をW80区域と同額にすべき旨 を主張するが、上記6⑶で説示したのと同様に一審被告の上記主張は採用 することができない。 ⑸ さらに、一審原告ら及び一審被告は、住宅防音工事による減額の程度の 大小及び弁護士費用の多寡についても争っているが、双方が種々主張する 事情を踏まえても、上記⑴の認定判断は左右されない。 ⑹ 小括 ア 損害元金額 上記10及び12で補正して引用した原判決(第6章の第6の1⑵及び 第8)において認定した一審原告らが告示コンター内に居住していた期間 や住宅防音工事の実施状況等に係る事実を踏まえ、上記⑴で補正して引用 した原判決の説示したところに従い計算すると、後記イのとおりの別紙認 容額一 いて認定した一審原告らが告示コンター内に居住していた期間 や住宅防音工事の実施状況等に係る事実を踏まえ、上記⑴で補正して引用 した原判決の説示したところに従い計算すると、後記イのとおりの別紙認 容額一覧の各一審原告に対応する「⑬慰謝料総額(円)(A期間)」、 「⑲慰謝料総額(円)(B期間)」、「⑭弁護士費用(円)(A期間)」 57 及び「㉑弁護士費用(円)(B期間)」欄記載の金額を合計した金額であ る「㉒損害合計額(円)」欄記載の金額が、各一審原告が一審被告に賠償を 求めることができる損害元金となる。 イ 別紙認容額一覧について 別紙認容額一覧は、損害賠償請求が認められる一審原告ら(死亡した者 については、氏名の冒頭に「亡」を付し、訴訟承継人がある場合には、枝 番に「1」を付した。)ごとの認容額を記載している。 別紙認容額一覧記載の項目のうち、「①転居日等」欄記載の日には、告 示コンター内に転居した日又は住宅防音工事が完成した日ないし住宅防音 工事済みの建物の解体等の日を記載している(なお、後者の場合は、日付 を斜体で表記し、解体等の日が不明な場合には、解体等された月又は年の 翌月ないし翌年の初日を記載している。上記⑴で引用した原判決第6章第 10の2⑶(原判決316頁6行目以下))。 「③請求の始期」欄と「④請求の終期」欄には、居住歴一覧表で示され た一審原告らが損害賠償を求める期間の始期と終期を記載している(なお、 終期が空欄のものは将来分を請求している。)。 「⑤期間の初月」欄と「⑥期間の末月」欄には、当裁判所が上記12で 認定した一審原告らが告示コンター内に居住した事実に基づいて、上記の 損害賠償請求が認容される期間の始期と終期を記載し、その認容される期 間のうちA期間に区分される月数を「⑪賠償対象歴月(A)」欄に、B期 間に区分される月数を「⑰ ター内に居住した事実に基づいて、上記の 損害賠償請求が認容される期間の始期と終期を記載し、その認容される期 間のうちA期間に区分される月数を「⑪賠償対象歴月(A)」欄に、B期 間に区分される月数を「⑰賠償対象歴月(B)」欄に記載している。 そして、上記の認容される期間に対応する一審原告らの居住地の告示W 値は、「②W値」欄記載のとおりであり、「⑦慰謝料基準月額(円)」は、 当該告示W値に対応する基準となる慰謝料月額(上記⑴で引用した原判決 第6章の第10の1⑴(原判決313頁4行目以下))である。また、 「⑧防音工事室数」は、上記の認容される期間に対応した各一審原告の住 58 居における住宅防音工事実施済居室数であり(ただし、上記⑴で引用した 原判決第6章の第10の2⑴、⑵(原判決315頁2行目以下)において 説示したところを踏まえ、6室以上の場合や、外郭防音工事又は防音区画 改善工事が実施された住宅については、いずれも「5」としている。)、 当該室数に応じた減額割合(同2⑵)は、「⑨減額率」のとおりであり、 「⑦慰謝料基準月額(円)」から同減額をした金額は、「⑩調整後慰謝料 月額(円)」欄の金額となる。なお、上記14で説示した、移転の補償等 を受けて第一種区域内に転居した一審原告ら(原告番号148~150、 1473~1475)の減額割合も「⑨減額率」欄に記載している。 そうすると、上記の認容される期間のうち、A期間に係る慰謝料の総額 が「⑬慰謝料総額(円)(A期間)」欄の金額であり、B期間に係る慰謝 料の総額が「⑲慰謝料総額(円)(B期間)」欄の金額となる。慰謝料額 は、「⑩調整後慰謝料月額(円)」に「⑪賠償対象暦月(A)」及び「⑰ 賠償対象暦月(B)」の月数(なお、B期間の賠償対象歴月の初月と末月 は、「⑮B期間の初月」と「⑯B期間の末月」欄に記載のとおりで 額 は、「⑩調整後慰謝料月額(円)」に「⑪賠償対象暦月(A)」及び「⑰ 賠償対象暦月(B)」の月数(なお、B期間の賠償対象歴月の初月と末月 は、「⑮B期間の初月」と「⑯B期間の末月」欄に記載のとおりである。) を乗じた金額であるが、認容される期間に応じて慰謝料月額が異なったり、 認容される期間が分断されたりする場合があるため、その各期間に応じた 金額を「⑫慰謝料小計「円」(A期間)」又は「⑱慰謝料小計「円」(B 期間)」欄に記載しており、その小計欄の合計金額が上記の総額欄の金額 となる(なお、上記の事情がなければ、1行で記載され、小計欄と総額欄 が同額となる。)。 そして、弁護士費用については、A期間の弁護士費用は、A期間の慰謝 料総額に10%を乗じた「⑭弁護士費用(円)(A期間)」記載の金額 (ただし、100円未満四捨五入)であり、B期間の弁護士費用は、「⑩ 調整後慰謝料月額(円)」欄記載の金額に10%を乗じた「⑳弁護士費用 月額(円)」欄記載の金額にこれに対応する「⑰賠償対象歴月(B)」欄 59 記載の月数(その初月と末月の記載あり)を乗じた金額の合計である「㉑ 弁護士費用(円)(B期間)」記載の金額である。 ウ 認容額 以上によれば、一審原告ら(原告番号2118ないし2122の5名を 除く。)は、一審被告に対し、国賠法2条1項に基づき、各自、次の金員 の支払を求めることができる。 A期間に生じた損害につき、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する 「⑬慰謝料総額(円)(A期間)」欄及び「⑭弁護士費用(円)(A期 間)」欄各記載の各金員並びにこれらに対する訴状送達日(第1事件原 告らにつき平成21年3月30日、第2事件原告らにつき同年5月8日) の各翌日から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延 損害金 B期間に生じた損害に らに対する訴状送達日(第1事件原 告らにつき平成21年3月30日、第2事件原告らにつき同年5月8日) の各翌日から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延 損害金 B期間に生じた損害につき、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する 「⑲慰謝料総額(円)(B期間)」欄記載の金員及び「⑮B期間の初月」 欄記載の月から「⑯B期間の末月」欄記載の月までの各歴月に対応する 「⑩調整後慰謝料月額(円)」欄記載の金額に対するその各翌月1日か ら各支払済みまで、令和2年3月までの歴月分については改正前民法所 定の年5分の、令和2年4月以降の歴月分については現行の民法所定の 年3%の各割合による遅延損害金 一審原告らの当審における拡張請求のうち、B期間に生じた損害に係 る弁護士費用として、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する「㉑弁護 士費用(円)(B期間)」欄各記載の各金員及び「⑮B期間の初月」欄 記載の月から「⑯B期間の末月」欄記載の月までの各歴月に対応する 「⑳弁護士費用月額(円)」欄記載の金額に対するその各翌月1日から 各支払済みまで、令和2年3月までの歴月分については改正前民法所定 の年5分の、令和2年4月以降の歴月分については現行の民法所定の年 60 3%の各割合による遅延損害金 16 本件損害賠償請求(将来分)に係る訴えの適否について ⑴ 本件損害賠償請求のうち、本件口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害 についての損害賠償請求に係る訴えは、いずれも不適法であるから、却下す べきであると判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決 「事実及び理由」欄の第6章の第11(原判決320頁3行目から同321 頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。原審の口頭 弁論終結日の翌日から当審の口頭弁論終結日までの分については、原審にお 理由」欄の第6章の第11(原判決320頁3行目から同321 頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。原審の口頭 弁論終結日の翌日から当審の口頭弁論終結日までの分については、原審にお いては不適法とされたものが当審においては適法となるものの理由がないも のとされるから、この部分についての棄却を求める一審被告の附帯控訴に理 由がある。 (原判決の補正) ア 原判決320頁18行目の「又は」を「かつ、」に改める。 イ 原判決320頁23行目の「昭和56年大阪国際空港訴訟最判」の次に 「、平成5年厚木基地訴訟最判、平成5年横田基地訴訟最判」を加え、2 4行目の「参照」の前に「、最高裁平成28年12月8日第一小法廷判決 ・裁判集民事254号35頁」を加える。 ⑵ これに対し、一審原告らは、原審が参照引用する最高裁判決は、いずれも 事例判断にすぎず、判例の射程を誤って一般化している旨を主張する。 しかしながら、上記⑴で補正して引用した原判決が参照引用する最高裁判 決は、いずれも本件と同じく航空機騒音に係る損害賠償請求の事案について の判断であり、上記の最高裁判決の判断の趣旨は、本件にも同様に妥当する ものであるから、一審原告らの上記主張は採用することができない。その余 の一審原告らの主張を踏まえても、上記⑴の判断は左右されない。 17 結論 以上によれば、本件各差止請求のうち、訴え提起後に死亡した一審原告ら 61 の差止請求は当然に終了することを宣言し(主文1項⑴)、自衛隊機の運航 等の差止請求は不適法であるから却下し(主文1項⑵ア)、米軍機の運航等 の差止請求は理由がないから棄却し(主文1項⑷)、また、本件損害賠償請 求(当審における拡張請求を含む。)のうち、当審の口頭弁論終結日の翌日 以降に生ずべき損害(将来分)に係る訴えは不適 米軍機の運航等 の差止請求は理由がないから棄却し(主文1項⑷)、また、本件損害賠償請 求(当審における拡張請求を含む。)のうち、当審の口頭弁論終結日の翌日 以降に生ずべき損害(将来分)に係る訴えは不適法であるから却下し(主文 1項⑵イ、3項)、当審の口頭弁論終結日までに生じた損害(過去分)につ いては、原告番号2118ないし2122の5名を除く一審原告らの請求は 主文1項⑶及び4項の支払を求める限度で理由があり、一審原告らのその余 の請求はいずれも理由がないこととなる(主文1項⑷、5項)。したがって、 原告番号2118ないし2122の一審原告らの控訴をいずれも棄却し(主 文2項)、その余の一審原告らの控訴並びに一審被告の控訴及び附帯控訴に 基づき、原判決を主文1項のとおり変更し、当審における拡張請求について は主文3項ないし5項のとおりとすべきであるから、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部 裁判長裁判官 蓮 井 俊 治 裁判官 橋 本 修 裁判官 峯 金 容 子 62

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