平成17年4月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ワ)第20828号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成17年2月10日判決原告 A同訴訟代理人弁護士高崎良一同片岡清三同繁礼子被告株式会社ゼェビアス被告株式会社リバーソン上記両名訴訟代理人弁護士永島孝明同伊藤晴國同明石幸二郎同補佐人弁理士中尾俊輔同伊藤高英同畑中芳実同大倉奈緒子同玉利房枝同鈴木健之同磯田志郎 利房枝同鈴木健之同磯田志郎被告株式会社貴仙同訴訟代理人弁護士渡辺潤同補佐人弁理士北野健 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告株式会社ゼェビアスは、別紙商品目録記載番号1ないし3の商品を輸入し、販売し、貸し渡し、販売若しくは貸渡しのために展示してはならない。 2 被告ゼェビアスは、同番号1ないし3の商品を廃棄せよ。 3 被告株式会社リバーソンは、同番号3の商品を製造し、輸入し、貸し渡し、販売若しくは貸渡しのために展示してはならない。 4 被告リバーソンは、同番号3の商品を廃棄せよ。 5 被告株式会社貴仙は、同番号2の商品を製造し、輸入し、販売し、貸し渡し、販売若しくは貸渡しのために展示してはならない。 6 被告貴仙は、同番号2の商品を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 争いのない事実等(1) 当事者被告株式会社ゼェビアス(以下「被告ゼェビアス」という。)は、宝石、貴金属の卸し、小売及び輸入業を営む会社である。被告株式会社リバーソン(以下「被告リバーソン」という。)は、貴金属、装身具の製造及び販売を営む会社である。被告株式会社貴仙(以下「被告貴仙」という。)は、貴金属の加工 る。 被告株式会社リバーソン(以下「被告リバーソン」という。)は,貴金属,装身具の製造及び販売を営む会社である。 被告株式会社貴仙(以下「被告貴仙」という。)は,貴金属の加工及び卸売業を営む会社である。 (2) 特許権Bは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲記載の特許発明を「本件発明」という。また,本件特許に係る明細書(別紙特許公報参照)を「本件明細書」という。)を有している。 特許番号第2602178号発明の名称樹脂出願日平成6年11月21日出願番号特願平6-312719公開日平成8年6月4日公開番号特開平8-143703登録日平成9年1月29日特許請求の範囲「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石を配合したことを特徴とする樹脂。」(3) 専用実施権原告は,本件特許権について,次の内容の専用実施権を有している(甲2)。 専用実施権者原告登録年月日平成16年5月28日範囲地域日本国内全域期間本特許存続期間中内容発明に基づく製造及び販売(4) 被告らの行為被告ゼェビアスは,遅くとも平成15年2月ころから,業として,別紙商品目録記載番号1の商品(なお,同(2)②については争いがある。以下,同目録の番号に従って,それぞれを「被告製品1」などといい,被告製品1ないし3を併せて「被告製品」という。)を販売している。 被告リバーソンは,遅くとも平成15年2月ころ いがある。以下,同目録の番号に従って,それぞれを「被告製品1」などといい,被告製品1ないし3を併せて「被告製品」という。)を販売している。 被告リバーソンは,遅くとも平成15年2月ころから,業として,被告製品3を製造,販売している。 被告貴仙は,遅くとも平成15年2月ころから,業として,被告製品2を製造,販売している。 2 本件は,原告が,被告らによる被告製品の製造販売行為が本件特許権を侵害すると主張して,被告らに対し,特許法100条に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄を請求する事案である。 3 争点(1) 被告ゼェビアスが販売しているのは被告製品のうちどれか。 (2) 被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか。 (3) 本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(販売製品)について〔原告の主張〕被告ゼェビアスは,被告製品1ないし3を販売している。 〔被告ゼェビアスの主張〕被告ゼェビアスが,被告製品1(2)②(ブリリアン)と被告製品2を販売していることは否認する。被告製品3については,そのうちの何点かについて1年ほど前に販売したことはあるが,現在は販売していない。 2 争点(2)(充足性)について〔原告の主張〕被告製品1ないし3は,別紙商品説明書記載のとおり,黒鉛珪石(ブラックシリカ)を微粉末にして,ポリエステル樹脂に配合したもので,遠赤外線を放射する効果がある。 したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する。 〔被告ゼェビアス及びリバーソンの主張〕(1) 被告製品1(1)リングについて,黒鉛珪石(ブラックシリカ)が配合されていることは認め たがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する。 〔被告ゼェビアス及びリバーソンの主張〕(1) 被告製品1(1)リングについて,黒鉛珪石(ブラックシリカ)が配合されていることは認めるが,「樹脂」が配置されていることは知らない。 (2)ア被告製品1(2)ネックレス(ペンダント)について,①(エスポワール)及び②(ブリリアン)の構成は知らない。 イ同③(BSシルバーネックレススティック型)及び④(BSシルバーネックレスプレート型)について,黒鉛珪石が配合されていることは認めるが,「樹脂」が配置されていることは知らない。 (3) 被告製品1(3)ブレスレットについて,黒鉛珪石が配合されていることは認めるが,「樹脂」が配置されていること及び「樹脂」によってブレスレットの本体部分が形成されていることは知らない。 (4) 被告製品2の構成はいずれも知らない。 〔被告貴仙の主張〕(1) 被告製品2(1)リングは,ポリエステル樹脂を配合したものではない。 (2) 被告製品2(2)ネックレスの構成については知らない。 3 争点(3)(無効理由)について〔被告ゼェビアス及びリバーソンの主張〕(1) 無効理由1本件発明では,「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」と記載されているが,遠赤外線放射機能は黒鉛珪石に固有の性質である。したがって,遠赤外線放射機能は黒鉛珪石を特定するものとはいえず,「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」とは「黒鉛珪石」そのものを意味する。 本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平5-85863号公報(乙1,丙2。以下「引用例1」という。)には,黒鉛硅石を配合した樹脂が開示されている。引用例1の「黒鉛硅石」が遠赤外線放射機能 本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平5-85863号公報(乙1,丙2。以下「引用例1」という。)には,黒鉛硅石を配合した樹脂が開示されている。引用例1の「黒鉛硅石」が遠赤外線放射機能を有することは明らかであり,本件発明の「黒鉛珪石」に相当するから,本件発明は,引用例1に記載された発明である。 したがって,本件特許は,特許法29条1項3号により特許を受けることができない。 (2) 無効理由2本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平5-86710号公報(乙2,丙1。以下「引用例2」という。)には,黒鉛硅石を配合した樹脂が開示されている。引用例2の「黒鉛硅石」が遠赤外線放射機能を有することは明らかであり,本件発明の「黒鉛珪石」に相当するから,本件発明は,引用例2に記載された発明である。 したがって,本件発明は,特許法29条1項3号により特許を受けることができない。 (3) 無効理由3本件特許出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3003078号公報(乙3。以下「引用例3」という。)には,遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石を配合した接着塗料(樹脂)が開示されている。接着剤として樹脂を使用することは,周知・慣用技術であり,引用例3の「接着ボンドとしての接着塗料」として「樹脂」を用いることは,引用例3に記載されているに等しい事項である。よって,引用例3の「接着塗料」が本件発明の「樹脂」に相当するから,本件発明は,引用例3に記載された発明である。 したがって,本件発明は,特許法29条1項3号により特許を受けることができない。 (4) 無効理由4仮に,本件発明の「樹脂」と引用例3の「接着塗料」とが相違するとしても,本件特 たがって,本件発明は,特許法29条1項3号により特許を受けることができない。 (4) 無効理由4仮に,本件発明の「樹脂」と引用例3の「接着塗料」とが相違するとしても,本件特許出願時において接着剤として樹脂を使用することは,周知・慣用技術であったので,引用例3の「接着塗料」として「樹脂」を使用して黒鉛珪石を樹脂に配合することは,当業者にとって容易に想到し得ることである。 したがって,本件発明は,特許法29条2項により特許を受けることができない。 (5) 無効理由5本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平3-199125号公報(乙4。以下「引用例4」という。)には,遠赤外線放射物体用組成物を配合した樹脂が開示されている。 引用例4では,「遠赤外線放射物体用組成物」を樹脂に配合しているのに対し,本件発明では,「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」を樹脂に配合している点において相違するが,引用例3には黒鉛珪石が遠赤外線放射機能(効果)を有することが開示されているので,引用例4の「遠赤外線放射物体用組成物」として,同じ機能を有する公知の材料である「黒鉛珪石」を採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。 したがって,本件発明は,特許法29条2項により特許を受けることができない。 (6) 無効理由6本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平3-225787号公報(乙5。以下「引用例5」という。)には,遠赤外線放射材料を配合した樹脂が開示されている。 引用例5では,「遠赤外線放射材料」を樹脂に配合しているのに対し,本件発明では,「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」を樹脂に配合している点において相違するが,引用例3には されている。 引用例5では,「遠赤外線放射材料」を樹脂に配合しているのに対し,本件発明では,「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」を樹脂に配合している点において相違するが,引用例3には黒鉛珪石が遠赤外線放射機能(効果)を有することが開示されているので,引用例5の「遠赤外線放射材料」として,同じ機能を有する公知の材料である「黒鉛珪石」を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。 したがって,本件発明は,特許法29条2項により特許を受けることができない。 〔被告貴仙の主張〕(1) 無効理由1前記〔被告ゼェビアス及びリバーソンの主張〕(1)と同じ。 (2) 無効理由2前記〔被告ゼェビアス及びリバーソンの主張〕(2)と同じ。 (3) 無効理由7本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平2-97566号公報(丙4。以下「引用例6」という。)には,「耐摩耗材および接着性樹脂組成物よりなる耐摩耗組成物中,遠赤外線放射物質を必須有効成分とした遠赤外線放射性耐摩耗組成物」が記載されている。そして,遠赤外線放射物質の一例として,シリカを主体としたものが挙げられている。したがって,引用例6には,シリカを主体とした遠赤外線放射性物質を配合したことを特徴とする樹脂が記載されている。 黒鉛珪石は,シリカを主体とする鉱石である。また,黒鉛珪石が遠赤外線を放出することは,「月刊さっぽろ経済1993年11月号」(丙3)に明記されている。 したがって,本件発明は,当業者が引用例6及び丙第3号証に記載された発明に基づいて容易に想到することができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができない。 (4) 無効理由8 って,本件発明は,当業者が引用例6及び丙第3号証に記載された発明に基づいて容易に想到することができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができない。 (4) 無効理由8本件特許出願前に出願され,本件特許出願後に公開された特開平7-224471号公報(丙5。以下「引用例7」という。)は,丙第3号証を理由として,特許法30条1項による新規性喪失の例外規定の適用を申請したものである。 引用例7には,「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石とゴムチップ又は木材砕片とを結合材で結合したことを特徴とする板」が記載されている。そして,結合材としては,イソシアネート/ポリオールを主成分とする合成樹脂が記載されている。すなわち,引用例7には,本件発明と同一の発明が記載されている。 したがって,本件発明は,本件特許出願前の他の特許出願であって,本件特許出願の後に公開された特許出願の明細書に記載された発明と同一であり,特許法29条の2により特許を受けることができない。 〔原告の主張〕(1) 無効理由1について本件発明は,引用例1に記載された発明と同一ではない。 (2) 無効理由2について本件発明は,引用例2に記載された発明と同一ではない。 (3) 無効理由3について被告らは,引用例3において,黒鉛珪石を配合するのは,「接着ボンドとしての接着塗料」であると主張するが,「接着ボンド」,「接着塗料」という技術用語は,市販の辞典,書籍等には見当たらず,意味不明である。このような意味不明の技術用語が,乙第6号証の「接着剤」と同一であることを前提としての被告らの主張は失当である。 (4) 無効理由4について前記(3)と同様 ,意味不明である。このような意味不明の技術用語が,乙第6号証の「接着剤」と同一であることを前提としての被告らの主張は失当である。 (4) 無効理由4について前記(3)と同様,意味不明な「接着ボンドとしての接着塗料」,「接着塗料」が,乙第6号証の「接着剤」と同一であることを前提とする被告らの主張は失当である。 (5) 無効理由5について引用例4には,2FeO・SiO2とFe3O4を主成分とする40℃以上の温度で遠赤外線を放射するという遠赤外線放射物体用組成物を樹脂に配合した遠赤外線放射物体が記載されているが,本件発明で必須の遠赤外線放射機能を有する天然黒鉛珪石は,このような炭素を含まず酸化鉄を主成分とする化合物ではなく,常温で遠赤外線放射機能を有する点で,遠赤外線放射物体用組成物とは相違する。 引用例3には,遠赤外線を放射するシリカブラック粒子を含む塗料が記載されているが,この塗料が樹脂からなるとは記載されていない。 したがって,引用例4の遠赤外線放射物体において,遠赤外線放射物体用組成物の代わりに引用例3に記載された遠赤外線を放射するシリカブラック粒子を使用することは,当業者であっても容易に想到するものではない。また,本件発明は,常温で遠赤外線放射機能を有する天然黒鉛珪石を配合した樹脂に関するものであるから,引用例4と引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (6) 無効理由6について引用例5には,Al2O3,SiO2,ZrO2,TiO2又はガラスを含有する40ないし250℃の温度で遠赤外線を放射する遠赤外放射材料,あるいはFe,Co,Ni,Cr,Zn,Snからなる遷移金属の酸化物の少なくとも一種以上を含有した ZrO2,TiO2又はガラスを含有する40ないし250℃の温度で遠赤外線を放射する遠赤外放射材料,あるいはFe,Co,Ni,Cr,Zn,Snからなる遷移金属の酸化物の少なくとも一種以上を含有した複合酸化物であり,40ないし250℃の温度で遠赤外線を放射するという遠赤外放射材料と,耐熱性樹脂とで構成された遠赤外線放射複合材が記載されているが,本件発明で必須の遠赤外線放射機能を有する天然黒鉛珪石は炭素を必須成分とする化合物であり,常温で遠赤外線放射機能を有する点で,この遠赤外放射材料とは全く相違している。 引用例3には,遠赤外線を放射するシリカブラック粒子を含む塗料が記載されているが,この塗料が樹脂からなるとは記載されていない。 したがって,引用例5の遠赤外線放射複合材において,遠赤外放射材料の代わりに引用例3に記載された遠赤外線を放射するシリカブラック粒子を使用することは当業者であっても容易に思いつくものではない。また,本件発明は,常温で遠赤外線放射機能を有する天然黒鉛珪石を配合した樹脂に関するものであるから,引用例5と引用例3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(3)(無効理由)について(1) 本件発明の技術的範囲ア 「樹脂」について(ア) 本件明細書には,次のとおり,記載されている(甲1)。 a 「この発明は新規な樹脂に関し,樹脂成形,塗料の材料,接着剤の材料,その他一般的な樹脂と同様に使用されるものである。」(1欄6ないし8行)b 「従来から,多数の合成樹脂および天然樹脂が知られている。これらの樹脂は塑性変形を利用した成形品として,日常生活のあらゆる分野で使用され るものである。」(1欄6ないし8行)b 「従来から,多数の合成樹脂および天然樹脂が知られている。これらの樹脂は塑性変形を利用した成形品として,日常生活のあらゆる分野で使用されている。」(1欄10ないし13行)c 「この樹脂を使用すれば,常温において,樹脂成形品,塗料,接着剤,その他樹脂の一般的な使用態様において簡易に遠赤外線の効能を享受することができる。」(4欄10ないし13行)(イ) 上記(ア)の各記載からすれば,本件発明にいう「樹脂」とは,合成樹脂および天然樹脂を含む樹脂一般を広く指すものであり,樹脂成形品のみならず,塗料,接着剤,その他樹脂の一般的な使用態様の樹脂を含むものと解される。 イ 「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」について(ア) 本件明細書には,次のとおり記載されている(甲1)。 a 「前記課題を達成するために,発明者らは,天然物の黒鉛珪石が,常温で遠赤外線を放射するという事実に鑑みて,この発明を完成した。」(2欄7ないし9行)b 「この発明に係る樹脂は上記のように構成されているため,黒鉛珪石の遠赤外線放射機能によって,樹脂全体から,常温で遠赤外線を放射するものである。」(3欄2ないし4行)c 「この発明に使用される黒鉛珪石は天然に産し,」(3欄6ないし7行)d 「この発明に係る樹脂は,常温で遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石を配合したため,黒鉛珪石の遠赤外線放射機能によって樹脂全体から常温で遠赤外線が放射されるものである。」(4欄6ないし9行)(イ) 上記(ア)の記載によれば,本件発明は,天然の黒鉛珪石が常温で遠赤外線を放射するという 射機能によって樹脂全体から常温で遠赤外線が放射されるものである。」(4欄6ないし9行)(イ) 上記(ア)の記載によれば,本件発明は,天然の黒鉛珪石が常温で遠赤外線を放射するという機能を有することを利用したものであり,本件明細書には,他に黒鉛珪石に何らかの処理,加工等を施して遠赤外線放射機能を有するようにしたとの記載もない。 したがって,本件発明における「遠赤外線放射機能」とは,単に天然の黒鉛珪石が有する属性であると解され,結果として「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」とは,単なる「黒鉛珪石」を意味することになる。 ウそうすると,本件発明の「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石を配合したことを特徴とする樹脂」とは,種々の用途に用いられる樹脂一般に対して,黒鉛珪石を配合したものを意味することになる。 (2) 無効理由1についてア引用例1には,次のとおりの記載がある(乙1,丙2)。 (ア) 「天然黒鉛硅石を熱硬化性樹脂に混合してコンクリートブロック本体の表面に塗装したコンクリートブロック。」(特許請求の範囲請求項1)(イ) 「熱硬化性樹脂(特に藻のつきやすいようにPHが6.0~6.5位に調整製造された不飽和ポリエステル樹脂)100部にナフテン酸コバルト0. 5部とメチルエチルケトンパーオキサイド1部とを加えて十分混合し,その混合物に,北海道上ノ国町で算出される黒鉛硅石(通称シリカブラック,組成・・・略・・・)30部を200メッシュ以下に粉砕して配合し,十分混合した。」(2欄20ないし29行)イ上記アのとおり,引用例1には,天然黒鉛硅石を熱硬化性樹脂に混合して得た天然黒鉛硅石配合樹脂が記載されているから,本件発明は,引用例1に記載さ 混合した。」(2欄20ないし29行)イ上記アのとおり,引用例1には,天然黒鉛硅石を熱硬化性樹脂に混合して得た天然黒鉛硅石配合樹脂が記載されているから,本件発明は,引用例1に記載された発明と同一である。 ウ引用例1には,遠赤外線放射機能を有するかどうかについては記載がない。しかし,前記(1)イで検討したとおり,遠赤外線放射機能は,単に天然黒鉛珪石が有する属性であるから,本件発明の構成とはいえない。また,証拠(甲4ないし8,乙3,7,丙3)によれば,天然の黒鉛珪石は,それ自体遠赤外線機能を有するものであることが認められ,引用例1に記載された黒鉛硅石も,遠赤外線放射機能を有するものであることは明らかである。したがって,引用例1にこの点の記載がなくても,本件発明は,引用例1に記載された発明であるということができる。 エしたがって,本件発明は,特許法29条1項3号の規定に違反し,無効理由が存在することが明らかである。 (3) 無効理由2についてア引用例2には,次のとおりの記載がある(乙2,丙1)。 (ア) 「天然黒鉛硅石を熱硬化性樹脂で固化した人工大理石。」(特許請求の範囲請求項1)(イ) 「北海道上ノ国町で産出される黒鉛硅石(通称シリカブラック,組成・・・略・・・)を3㎜以下に粉砕した粉末1,200gを熱硬化性樹脂(レジンコンクリートグレードの不飽和ポリエステル樹脂,促進剤としてナフテン酸コバルト1.0g,過酸化物としてメチルエチルケトンパーオキサイト2.0gを含む)200gに徐々に加えて十分撹拌した。この混合物を30㎝×30㎝×7㎜の型枠にキャスティングして固化した後,重量1,300gの黒色系人工大理石1枚をつくった。」(1欄44行ないし2欄10 gを含む)200gに徐々に加えて十分撹拌した。この混合物を30㎝×30㎝×7㎜の型枠にキャスティングして固化した後,重量1,300gの黒色系人工大理石1枚をつくった。」(1欄44行ないし2欄10行)イ上記アのとおり,引用例2には,天然黒鉛硅石を熱硬化性樹脂に混合して得た天然黒鉛硅石配合樹脂が記載されているから,本件発明は,引用例2に記載された発明と同一である。 ウ引用例2には,遠赤外線放射機能を有するかどうかについては記載がない。しかし,前記(2)ウと同様,遠赤外線放射機能は,本件発明の構成とはいえず,また,引用例2に記載された黒鉛硅石も,遠赤外線放射機能を有するものであることが明らかであるから,引用例2にこの点の記載がなくても,本件発明は,引用例2に記載された発明であるということができる。 エしたがって,本件発明は,特許法29条1項3号の規定に違反し,無効理由が存在することが明らかである。 2 結論以上のとおり,本件特許は,特許法29条1項3号の規定に違反し,無効理由が存在することが明らかであるから,原告は,専用実施権に基づき,その権利を行使することはできない。 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官高部眞規子 裁判官東海林保裁判官瀬戸さやかは,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官高部眞 裁判官東海林保裁判官瀬戸さやかは,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官高部眞規子(別紙)商品目録商品説明書図1図2、図3図4、図5図6
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