平成13(ワ)73 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月18日 長崎地方裁判所
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判決文本文18,476 文字)

主文 被告は,原告Aに対し,金1600 万0891 円及びこれに対する平成12 年7 月23 日から支払済みまで年5 パーセントの割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,金1600 万0891 円及びこれに対する平成12 年7 月23 日から支払済みまで年5 パーセントの割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をそれぞれ棄却する。 訴訟費用は5 分し,その3 を被告の,その余を原告らの負担とする。 この判決は,第1 項及び第2 項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 被告は,原告Aに対し,金2657 万7406 円及びこれに対する平成12 年7 月23 日から支払済みまで年5 パーセントの割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,金2657 万7406 円及びこれに対する平成12 年7 月23 日から支払済みまで年5 パーセントの割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,被告が運営するホテルに設置されたプールで溺死した幼児の両親である原告らが,被告に対し,民法709 条,715 条,717 条に基づき,同児の死亡による損害の賠償を求める事案である。 当事者に争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は争いがない。)(1)当事者被告は,ホテル,旅館その他観光施設の経営を目的とする会社であり,長崎市a町において「シティリゾートホテル・X」(以下「本件ホテル」という。)を経営する。 原告らは,D(平成7 年12 月12 日生)の実父母である。 (2)本件ホテルの施設概要本件ホテルは,厚生労働省認定の健康増進施設で,天然温泉大浴場(1 階・以下,本項の施設名称は,本件ホテルのパンフレット(乙9)の表記を用いる。),レストルーム(2 (2)本件ホテルの施設概要本件ホテルは,厚生労働省認定の健康増進施設で,天然温泉大浴場(1 階・以下,本項の施設名称は,本件ホテルのパンフレット(乙9)の表記を用いる。),レストルーム(2 階),流水温泉プール,カラオケミュージアム,ゲームコーナー,フィットネス&マシーントレーニングジム,ヘルスフロント(以下「本件フロント」という。)等(3階),プレイルーム(4 階),割烹,喫茶等(5 階),大宴会場,中宴会場,小宴会場(6 階)を備えた,地下1 階地上8 階の建物である(乙9)。 (3)原告らが本件ホテルに赴いた事情等原告らと,その子であるE(平成4 年10 月11 日生),D及びF(平成10 年6 月19日生。さらに,以下,原告ら,E,D及びFをあわせて「原告ら一家」といい,E,D及びFをあわせて「Dら三名」という。)は,平成12 年7 月23 日,原告ら一家が在住する町内の子供会(以下「本件子供会」という。)の行事に参加して本件ホテルに赴き,午前10 時すぎころ,同所に到着した。午前中,原告Bは,Dら三名を本件ホテルの屋内プール(以下「本件屋内プール」という。)に連れて行き,同所で遊ばせた(原告B本人)。 (4)本件屋内プールの構造本件屋内プールは,二つの深さのプールがつながった屋内プールである。すなわち,本件プールには,プールサイドを基準として,深さ35 センチメートルの部分(以下「本件第1 プール」という。)と,深さ85 センチメートルの部分(以下「本件第2プール」という。)が,存在し,両者は,ジャグジーバスと称する部分(深さ66 センチメートル,以下「本件ジャグジーバス」という。)とホットタブと称する部分及びその両者を結ぶ弧の形状の柵(以下「本件第1 柵」という。)で区切られている。そして,本件第2 プールには 深さ66 センチメートル,以下「本件ジャグジーバス」という。)とホットタブと称する部分及びその両者を結ぶ弧の形状の柵(以下「本件第1 柵」という。)で区切られている。そして,本件第2 プールには,さらに弧の形状の柵(以下「本件第2 柵」という。)が設置され,噴出される水により,水が流れている流水プール(以下「本件流水プール」という。)と,展望アクアヘルスプールと称する部分(以下「本件アクアヘルスプール」という。)とに分けられていた。なお,本件第2 柵は,その両端と,その各延長線上にある本件第2 プールの端との間にそれぞれ2 メートル以上の通り道が確保され,本件プール利用者は,本件第2 プールに入ったまま,本件流水プールと本件アクアヘルスプールの間を行き来できる構造となっている。さらに,プールの水の回流の関係から,本件アクアヘルスプールにおいても,本件流水プールに接する部分では,本件流水プールと逆の方向へ水が流れていた(争いのない事実,乙2,乙4,証人G,弁論の全趣旨)。 (5)水難事故(以下「本件事故」という。)の発生発生日時平成12 年7 月23 日午後1 時ころ発生場所本件流水プールの部分事故態様Dの溺死(なお,死亡診断書によると,Dの死亡時刻は,平成12 年 7 月23 日午後4 時25 分,病名は溺死である。甲3)(6)監視員の有無本件流水プール付近に監視員は配置されていなかった。 原告らの主張(1)本件事故前後の原告ら一家の行動ア概略原告Bは,Dら三名を本件屋内プールに連れて行き,同所で遊ばせた後,昼食をはさんで,午後から再度Dら三名を本件屋内プールに連れて行った。 原告Bは,DとFと3 人で本件第1 プールにいたが,Fがプールサイドを歩き出したので,原告BがFを追いかけてDから一瞬目を離した際に,Dが,本件 午後から再度Dら三名を本件屋内プールに連れて行った。 原告Bは,DとFと3 人で本件第1 プールにいたが,Fがプールサイドを歩き出したので,原告BがFを追いかけてDから一瞬目を離した際に,Dが,本件流水プールで溺れた。 イ本件事故前後の原告らの行動(ア)原告Aについて原告Aは,本件ホテルの6 階控え室にいたが,同所を12 時50 分ころに出て, 13 時から開演予定の催事を見るためにフロントのある3 階へ階段で降りていった。その際に,フロントの方から女性の「Dちゃんが,Dちゃんが・・・」などという声が聞こえたため,本件事故の発生を知った。 (イ)原告Bについて昼食後,原告BがDら三名を本件屋内プールに連れて行った際,EとDは本件第1 プールに入り,Fは浅いプールに足をつけるなどして遊んでおり,原告Bは子供らを見守っていた。しばらくした後,Fはプールからあがり,プールサイドで遊んでいたが,原告Bがふと気づくと,Fがいなくなっており,周囲を見回したところ,ドアの向こうにFの姿が見えたので,EとDの2 人を残して,あわててFを追いかけた。Fは,フロント横のゲームセンターの方に走っていったので,原告BはFを追いかけた。その直後,「Dちゃんが,Dちゃんが・・・」という声が聞こえ,声の感じからかなり緊迫した樣子だったので,原告BはFを追うのをやめ,フロント横に駆け付けたところ,プール着の男性がDを抱きかかえているのが見えた。すぐにDの様子が異常であることが分かったので,その場で泣きながら「救急車を呼んで,救急車を呼んで」と大きな声を出し,その後は原告Aが人工呼吸しているのを見守っていた。 (2)被告の注意義務違反本件事故は,以下の事実が原因となっており,被告の過失によるものといえるから,被告は本件事故により発生した全損害について,民法709 条 が人工呼吸しているのを見守っていた。 (2)被告の注意義務違反本件事故は,以下の事実が原因となっており,被告の過失によるものといえるから,被告は本件事故により発生した全損害について,民法709 条,715 条,717 条により賠償責任を負う。 ア監視員の不配置本件プールには,監視員が配置されていなかったため,本件事故の早期発見及びその後の救助活動が,適時に行われなかった。 本件プールに監視員がいなかったことは,以下の事情により,被告の重過失,ないしは本件プールの瑕疵を示すといえる。 (ア)本件プールは専ら幼児が利用する本件第1プールに隣接して本件流水プールを備えた本件第2 プールが設置されている。このため,幼児は本件第1 柵を乗り越えて容易に本件流水プールに入り込むことができるし(本件第1 柵は,水面よりも10 センチメートル程度高いだけで,柵の下側には足を掛けることができ,幼児でも乗り越えることが可能な形状である。),また,本件第1 プールから出てプールサイドを歩行した際にも誤って本件流水プールに流されることもありうる。このような位置関係からすると,被告が監視員を配置する必要性は高い。 (イ)本件流水プールは,未就学児の背丈では立つことが困難な深さであるうえ,本件流水プールには,水を激しい勢いで噴出する噴出口が設けられ,そこからの水流はかなり激しいので,極めて危険である。また,吸入口からは,かなりの圧力で水が吸い込まれている。 (ウ)本件プールのプールサイドには監視員のための監視台が常設されており,監視員さえ配置すれば容易に監視が可能であった。また,本件事故発生日は夏休み初日の日曜日であり,通常の日よりも遊泳客が多く,なかんずく児童・幼児の割合が高かったのであるから,監視員を配置する必要性が高かった。 イ救命体制の不備本件事 あった。また,本件事故発生日は夏休み初日の日曜日であり,通常の日よりも遊泳客が多く,なかんずく児童・幼児の割合が高かったのであるから,監視員を配置する必要性が高かった。 イ救命体制の不備本件事故発生当時,被告には,人工呼吸等の正規の救命措置をとることができる者はいなかったし,本件事故発生後も,適切な事後処理を行う体制が整えられていなかった。 (ア)本件事故の発生時刻は,12 時55 分ころから13 時ころまでである。 (イ)Dを発見したGは,プールに来ていた客であり,被告の関係者ではない。 (ウ)GからDを託された客は,Dを抱きかかえ,フロントの前まで連れてきて,Dを床に下ろして寝かせた。その直後,原告Aは,「Aさん,Dちゃんが」と叫ぶ女性の声を聞き,本件事故が発生したことを知り,Dのもとへ駆けつけた。 しかし,その時点まで被告のフロント従業員は,Dに対して何らの措置もしておらず,新規のプール入場者の対応にあたっていた。そこで,原告Aは自ら人工呼吸(専らマウス・トゥー・マウスの方法によったが,一部心臓マッサージの方法も用いた。原告Aの人工呼吸については以下同。)の措置をとった。 (エ)原告Aが人工呼吸を始めてから,かなりの時間が経過してから(少なくとも10分以上経過してから),被告の救護員の女性がDのもとに到着し,同女はDの脈を確認した後,2~3 分人工呼吸をしていた。その際,その場にいた本件子供会の人が,心臓マッサージを施していた。 (オ)その後,原告Aが交代して人工呼吸を行い,プールの客と思われる人が心臓マッサージを手伝った。 (カ)このような状況が継続した後に,Dのもとに救急車が到着して,Dは救助隊員により搬出された。 ウ通報の遅延被告による救急車出動要請の通報 思われる人が心臓マッサージを手伝った。 (カ)このような状況が継続した後に,Dのもとに救急車が到着して,Dは救助隊員により搬出された。 ウ通報の遅延被告による救急車出動要請の通報も著しく遅延した。本件ホテルに救急車が到着したのは,本件事故発生が明らかになってから,少なくとも30 分以上経過した後であった。 エイ及びウにおける被告の注意義務違反被告においては利用者の水難事故のような業務上想定しうるケースに関して危機管理の体制がとられていなかった。 (ア)被告には,水難事故等を想定したマニュアル等が存在せず,Hをはじめとする被告のフロント従業員は,救護の経験がないばかりか,その指導さえ受けたことがなかった。 (イ)被告が看護要員としてあげるIは食堂の従業員として雇用されており,たまたま同人が准看護士の資格を有していたにすぎず,看護関係のために勤務していたわけではない(なお,Iが医療実務を離れてからは相当の年月が経過していた。)。また,Iは緊急事態に備えて待機していたわけではなく,事故発生後, 1 階食堂から3 階フロントまで駆け付けたのであり,相当程度の移動時間を要した。 (ウ)被告は水難事故に備えた救命器具を準備しておらず,被告が有していたのは聴診器,血圧計,包帯程度で,Dの救命に直接役立つものはなかった。また,Dの口内の異物をとりだすために用いられたものも,Iの指示により,Hがその場で空気入れのチューブを切って作ったもので,救命用具とはいえない。プールを設置して営業に供する者として,被告には水難事故に備えて救命器具を常備するなど最善の策を講ずるべき義務があった。 (エ)その他,被告従業員はDがフロントに運び込まれた後も他の客の受付業務を行っており,被告従業員が一致して危機感をもった対応をしていたとはいえない。 備するなど最善の策を講ずるべき義務があった。 (エ)その他,被告従業員はDがフロントに運び込まれた後も他の客の受付業務を行っており,被告従業員が一致して危機感をもった対応をしていたとはいえない。 以上のように,被告には,水難事故に対する適切な人的・物的措置が備えられていなかったため,Dに対する応急措置が遅れた。 (3)監視員の不配置とD死亡との因果関係について溺れたDの第一発見者であるGは,たまたま本件プールからあがってプールサイドに立った際に,足下をよぎる影のようなものを発見した(結果的にはこの影のようなものがDであった。)。 GはDを助けようとして本件第2 プールに飛び込んだものの,水流が早いために,流れていくDに直ちに追いつくことができなかった。そのため,Gは,プールを逆回りしてDを確保したものの,同人を容易にプールから引き揚げることができず,近くの男性客の協力を得て,ようやくDをプールから引き揚げた。この間には,相当の時間が経過したものと推測される。 Dはプールサイドに引き揚げられたものの,Gには人工呼吸等の経験が無く,その場でDに救命措置がなされることはなかった。Dはその後別の男性客によって,本件フロントまで運ばれたが,プールサイドから本件フロントまではかなりの距離があり,子供を抱えて運ぶのには相当の時間が経過したと推測される。 監視員がいなかった結果として,饒溺れたDの発見が遅れ,饌Dをプールから引き揚げることに時間を要し,饕引き揚げられたDに直ちに人工呼吸を施せなかった。 もし監視員がいれば,幼児が異常な状態で流水プールを周回しているのを直ちに発見できた可能性が高いし,それ以前にDが水面で助けを求めたのであれば,その段階で救出できた可能性もある。少なくとも,Gが発見した時間よりは早期に発見することができたはずである。また, るのを直ちに発見できた可能性が高いし,それ以前にDが水面で助けを求めたのであれば,その段階で救出できた可能性もある。少なくとも,Gが発見した時間よりは早期に発見することができたはずである。また,流水プールの状況を十分に把握し,泳力に長けた監視員がDの元へ直行していれば,より早くDをプールサイドに引き揚げることができた。さらに,監視員により速やかな人工呼吸が行われれば,Dの命が救われた可能性は高い。 よって,本件プールに監視員が配置されていれば,Dの死亡が回避できた蓋然性は高いといえ,監視員の不存在とDの死亡との間に因果関係は存在する。 (4)損害本件事故でDが死亡したことにより発生した損害は以下のとおりである。 ア逸失利益金2247 万0618 円平成12 年度の賃金センサスによる女子全年齢平均年収は金349 万8200 円である。Dは事故時4 歳で,就労始期の満18 歳までは14 年,就労終期の満67 歳までは63 年である。それぞれの期間に対応するライプニッツ係数は,9.8986 及び19. 0750 で,生活費控除割合は30 パーセントとする。 3,498,200×0.7×(19.0750-9.8986)=2247 万0618 円イ慰謝料金2500 万円(D本人金2000 万円,原告ら各自金250 万円)被害者自身の苦痛,幼い愛娘を失った原告らの精神的苦痛その他の事情に鑑みれば,D死亡による慰謝料は,D自身の慰謝料が2000 万円,原告ら固有の慰謝料はそれぞれ金250 万円を下らない。 ウ葬儀費用金120 万円エ弁護費用金500 万円以上合計金5367 万0618 円(5)被告の過失本件事故の発生は,(2)の各措置をとるべき義務を怠った被告の過失によるものであり,被告は(4)の各損害について,民法709 条, 500 万円以上合計金5367 万0618 円(5)被告の過失本件事故の発生は,(2)の各措置をとるべき義務を怠った被告の過失によるものであり,被告は(4)の各損害について,民法709 条,715 条,717 条により損害賠償責任を負う。 (6)相続Dの死亡により,Dの両親である原告らが,Dの財産をそれぞれ2 分の1 ずつ相続した。 (7)損害額の合計原告らが相続した損害賠償請求権の額及び原告ら固有の損害賠償請求権の額を合計すると,それぞれ,2683 万530 円である。 (8)よって,原告らは,被告に対し,不法行為に基づき,それぞれ損害の一部である金 2657 万7406 円及びこれに対する本件事故発生の日である平成12 年7 月23 日から支払済みまで民法所定の年5 パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。 被告の主張(1)本件事故発生後の状況ア本件事故発生日の午後1 時ころ,本件プールで遊泳していた男性客が,本件プールからDを抱きかかえて本件フロントに来た。これを見たHが,Dの意識がないことを確認してDを床に寝させ,心臓マッサージをして胸を押すと,口から水と食物が出てきた。 イHは,Dの顔を横向きにして口から食物等をかき出しながら胸を押し続けた。 ウアの1 ないし2 分後,原告Aと思われる男性が来て,Dの口から食物等を出しながら人工呼吸を始め,他の客が心臓マッサージを替わってくれたので,Hは被告従業員Jに救急車の手配と,Iへの連絡を指示した。 エJは,被告管理課長Kに救急車の手配を依頼するとともに,Iへの連絡を行った。KとHは,119 番通報を行って救急車の出動を要請し,午後1 時3 分には,長崎市北消防署が救急車出動要請を受理した。 オIは,連絡を受けて,直ちに血圧計,聴診器を用意してフロン の連絡を行った。KとHは,119 番通報を行って救急車の出動を要請し,午後1 時3 分には,長崎市北消防署が救急車出動要請を受理した。 オIは,連絡を受けて,直ちに血圧計,聴診器を用意してフロントに駆けつけた。 男性がDに人工呼吸を行っていたが,Dは顔色が変わっており,全身から力が抜け,意識はなく,呼びかけたり頬をたたいても反応はなかった。脈拍や心音は聞き取れず,血圧の測定もできなかった。救急車が来るまでの間,Iは代用吸引器を使いながら心臓マッサージを行い続けた。 なお,人工呼吸は原告Aと思われる男性が続けていた。 (2)本件事故の発生原因本件事故は,原告らが監視員の配置のないプールであることを知りながら,被告から要請された自らの子供の危険防止のための監視を怠ったために生じたものであるから,その責任は原告らにある。また,仮に監視員がいたとしても監視員任せでよいわけではない。幼児を自己の責任で監視するのが親の責任で,原告らがDの監視を怠ったことが本件事故の原因であるから,被告に過失はない。 アプールにおける父母の注意義務一般に,4 歳程度の幼児をプール等で遊ばせる際,プールに監視員がついていた場合であっても,自己の子供の危険を防止するため父母は子の側について監視することが必要である。プールに監視員が存在する場合でも,その役割はあくまでも補助的なものにすぎず,父母にその子供を監視する第一義的責任がある。監視員が存在しない場合には,父母にはより重い監視責任がある。 特に,本件ホテルは,学校や幼稚園のような,親にかわる保護責任者の監視が期待される場所ではないから,あくまでも保護者である原告らが子供の監視につき責任を負うべきである。 イ被告の注意喚起(ア)本件プールでは,プールの監視が十分にされうる態勢がとられていなかったから,一般 る場所ではないから,あくまでも保護者である原告らが子供の監視につき責任を負うべきである。 イ被告の注意喚起(ア)本件プールでは,プールの監視が十分にされうる態勢がとられていなかったから,一般に子供会の利用の際には,あらかじめ「子供会御一行様」と題する書面(以下「本件書面」という。)を配布し,その書面上「小さいお子様には父兄同伴で願います。」と明記し,保護者の同伴と子供への監視を要請していたし,ホテル利用開始にあたり,担当者から同旨の要請を口頭で行っていた。本件子供会に対しても,これらの対応を行った。 被告従業員の口頭による説明は,原告ら幼児同伴の父兄は本件書面を事前に閲読し,かつ,本件プールに監視員のいないことを知っていることを前提として行われているから,説明も詳細なものではなかった。しかし,本件書面が本件子供会に交付された段階で,その写し等を各利用者の父兄に交付するのは本件子供会の役割であり,仮に原告らにその交付がなかったとすれば,原告らが被告と本件ホテルの利用についての交渉を依頼した本件子供会の責任であるから,その不利益は利用者である原告らの側で負担すべきである。 (イ)さらに,被告は,本件プールの入口に,本件書面と同旨の掲示をして,本件プールの利用者に再度注意を促していた。 すなわち,本件ホテルのプール入口には,「プールを御利用される方へ」と題した掲示が行われ,その中で「小さいお子様は保護者の方が付添い監視して下さい。」などと注意喚起がなされていたから,原告らに対する注意は十分になされていた。 (ウ)原告ら父母としては,被告から(ア),(イ)のような要求がない場合であっても,幼児を遊泳させる際の当然の責務として自己の子供の安全を図るべきであり,特にプールの監視員のいない場合は,そのことにより,父母はより重い責任を負う。さ ア),(イ)のような要求がない場合であっても,幼児を遊泳させる際の当然の責務として自己の子供の安全を図るべきであり,特にプールの監視員のいない場合は,そのことにより,父母はより重い責任を負う。さらに,本件のようにプール設置者から幼児の監視の要求があった場合には,より慎重な監視を行わなければならない。原告らは監視員が存在しないことを知っていたし,知らなかったのであれば,そのことに重大な過失があり,原告らが監視義務を怠り,それにより損害が発生した場合には,原告らの責任はより一層重くなるというべきである。 (エ)原告らの監視義務違反a被告は,(ア),(イ)で述べたとおり,父母による幼児の監視を繰返し要請し,注意喚起していた。そして,被告の注意喚起は,通常人の注意能力をもってすれば,気づきうるものであった。にもかかわらず,原告らは,本件事故当時,Dの遊泳について監視を全く行っていなかった。原告らがDの遊泳をプールサイドで監視していれば,事故の発生は回避された。 b原告らは,子供会の行事で子供のプール遊びに同伴してきたのであるが,プール遊びに主たる目的があり,近隣住民との交流は付随的な目的にすぎない。しかも,原告らは,泳げない3 人の幼児を連れてきており,原告Bひとりで三人の子らを監視できないのは当然予想できたことであるから,被告が飲食等を提供し,原告Aがそれを享受していたとしても,同人の監視義務が免除されるものではない。 c原告Bは,プールサイドでDやFを見守ってはいなかった。 また,原告らはFが本件プールから本件フロントの方へ向かったので,原告Bがこれを追いかけた旨を主張するが,Fの向かった方向は,プールのような危険な場所でなく,被告Bとしては,むしろDを監視するか,Dを同伴してFを追うべきであった。 もし,Dを残してFを追いかける 告Bがこれを追いかけた旨を主張するが,Fの向かった方向は,プールのような危険な場所でなく,被告Bとしては,むしろDを監視するか,Dを同伴してFを追うべきであった。 もし,Dを残してFを追いかけるのであれば,Dに,大人用のプールの方へ行かないよう強く注意し,またはEや知り合いの子供らにDの監視を頼むべきであった。 原告Bは,相当長時間Dを一人の状態にしていたが,Fに追いついた後は,すみやかにDのもとにもどるべきであった。 (3)監視員の不配置とDの溺死との因果関係の不存在Dは,溺れていたところをGに発見され,他の遊泳客により本件フロントへ搬入されたが,仮に監視員が配置されていたとしてもより早期に発見されたか否か不明であり,監視員が配置されていても,本件事故によるDの死亡は回避できなかった(GがDを最初に発見した際,Dは本件プールの水中に沈んだ状態で流水に流されており,浮き沈みを繰返すような状態ではなかった。)。 (4)救命措置の実施Dに対する人工呼吸等に関しては,原告Aが行う前にHをはじめ被告従業員等が心臓マッサージ等の措置を行っていたし,また准看護婦の資格を持つIも措置を行った。 被告従業員が混乱することはなく,適切な対応を行った。 (5)救急車出動の要請救急車の出動要請が遅滞したことはなく,すみやかに行った。 (6)本件プールの構造等について本件プールは,大人や泳げる者を対象とするプール(本件第2 プール)と,泳げない児童や幼児対象のプール(本件第1 プール)とを,パイプ製の柵(本件第1 柵)により明確に区分していた。そしてかかる区分や付き添い保護者への注意により,児童や幼児が本件流水プールを含む大人用のプールに進入することを回避する措置が執られていた。 (7)過失相殺の主張仮に,被告に責任があるとしても,上述の事情, る区分や付き添い保護者への注意により,児童や幼児が本件流水プールを含む大人用のプールに進入することを回避する措置が執られていた。 (7)過失相殺の主張仮に,被告に責任があるとしても,上述の事情,特に原告らが,プールに監視員が配置されていないことを知りながら,Dの遊泳の際,側に付くなどして危険の発生を未然に防止するための行動をとらなかった(監視員が配置されていないことを知らなかったとしても,その点につき原告らには重過失がある),饌原告らがDを一人で遊泳させた時間が相当長時間であったこと,を考慮すると,被告の責任は原告らの責任よりも小さい。 被告の主張に対する原告の反論(1)そもそも,幼児も利用するプールに監視員がいないこと自体が,プールが具有すべき性能(安全性)を欠く瑕疵である。 特に,本件ホテルのプールは,幼児用の本件第1 プールと本件流水プールがつながった構造になっているため,幼児は容易に本件流水プールに入ることができる状況であるから,なおさら監視員の必要性は高い。本件事故発生時に,仮に監視員が配置されていれば,事故の発生を防止できた蓋然性は高いと思われる。したがって,本件の事故前に被告側から何らかの説明があったとしても被告の責任を否定することはできない。 (2)被告は,監視員がいないことを原告ら利用者に注意喚起していたと主張するが,下記のとおり,その内容は不十分であった。 ア本件書面は現実の利用者である原告ら一家に対し直接交付・説明されたものではない(少なくとも,原告らは,事前に本件書面に目を通したことはない。)。またその内容の大部分は施設の利用料金や利用方法に関するもので,安全性に関する事項は「小さいお子様には父兄同伴願います」の一文のみである。 イまた,口頭の説明についても,書面の交付等を伴わず,本件プールの利用 容の大部分は施設の利用料金や利用方法に関するもので,安全性に関する事項は「小さいお子様には父兄同伴願います」の一文のみである。 イまた,口頭の説明についても,書面の交付等を伴わず,本件プールの利用について厳重な注意がなされた形跡はない。 せいぜい「小さいお子様からは目を離さないでください」というような,マニュアルに基づく説明があった程度で,「監視員はいません。危険ですので注意して泳いで下さい」などの注意がなされたわけではない。 ウさらに,プール入口の掲示板については,「小さいお子様は保護者の付添い監視して下さい。」との一文があるが,形状等において,原告ら利用客の注意を喚起するだけの配慮が為されていない。よって,被告は,監視員の不存在,流水プールの危険性,子供用のプールと流水プールが隣接していることなど実質的な説明を何ら行っておらず,本件プールで発生した事故の責任を原告ら利用者に転嫁することはできない。 (3)原告らの責任ア原告Bについて原告Bは監視員がいないことを知らなかったし,(2)の事情を考慮すると,この点につき原告Bに過失があるとはいえない。 原告Bは,Fがプールの出口からフロント方面に走り出した際,これを追いかけ,一時Dのもとを離れはしたが,基本的には,Dが泳いでいた際,その側に付いて監視し,危険防止の措置をとっていたものであり,Dを一人で泳がせていたわけではない。 また,一人の保護者が同時に複数の子供の監督をしなければならない状況は通常起こりうるものであり,その保護者がやむをえず一時的に子供の元をはなれざるをえない場合もあり,そのことをもってただちに当該保護者の過失とはいえない。むしろ,そのような場合を想定して,プール設置者の方が監視員を置くべきであるといえる。 被告は,原告BがDの側を離れたのが相当長時間である旨主張 そのことをもってただちに当該保護者の過失とはいえない。むしろ,そのような場合を想定して,プール設置者の方が監視員を置くべきであるといえる。 被告は,原告BがDの側を離れたのが相当長時間である旨主張するが,原告BがFを追いかけた時間はわずかであり,被告の主張は正確な根拠を欠くものである(なお,わずかな時間であっても,流水プールにおいて水難事故に遭遇する危険性は否定できない。)。 イ原告Aについて原告Aをはじめ,本件子供会の一行各員は,被告から本件プールの危険性や監視員がいない事実を周知徹底されていなかったのであるから,幼児についての監視の必要性の高さを認識できなかった。 また,本件ホテルは,宴会場,レストラン,カラオケルーム,ゲームセンター,温泉その他を有するレジャー施設であり,被告は,プールの利用だけでなく,飲食,観劇,遊技等の娯楽を客に提供して営利活動を営んでいる。そして,Aはその客の一人として本件ホテルを利用し,休憩していたのであるから,被告はAの監督責任を主張しうる立場にはない。 さらに,本件のような子供会主催の行事の趣旨には,地域住民の交流という側面もあり,水泳をする予定のないAが近所の人々と飲食をしながら談話していたとしても,その行動を非難できるものではない。 争点 (1)被告の注意義務違反の有無(2)被告の注意義務違反とDの死亡との因果関係(3)原告らの過失の程度第3争点に対する判断等 本件各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1)本件子供会は,本件ホテルで平成12 年7月23 日に親睦行事を行うことを計画し,大人37 名,子供(幼児を除く)21 名,幼児3 名が参加する予定であった(乙5)。原告ら一家は本件子供会の構成員としてこの行事に参加し,平成12 年7 月23 日 日に親睦行事を行うことを計画し,大人37 名,子供(幼児を除く)21 名,幼児3 名が参加する予定であった(乙5)。原告ら一家は本件子供会の構成員としてこの行事に参加し,平成12 年7 月23 日に,本件ホテルに赴いた(原告B本人,原告A本人)。 (2)同日,午前10 時30 分ころ,本件ホテル6 階大広間(以下「本件大広間」という。)で,本件プールをはじめ,本件ホテルの利用に関する説明会が開かれ,それまでに,被告は本件書面を本件子供会の者に交付したが,原告らはこれに目をとおしたことはなかった(原告B本人,原告A本人,乙6,弁論の全趣旨)。 (3)同日の午前と午後,Dら三名が本件プールを利用し,原告Bがその付添をしたが,原告Aは,本件大広間で雑談等をしており,本件プールに赴くことはなかった(原告B本人,原告A本人)。 (4)同日午後,原告Bは,Dら三名を本件ジャグジーバス付近で遊ばせていたところ,Fがプールサイドからプールの出口の方へ走っていった。そこで,原告Bは,Fを追いかけていき,本件フロント付近でFに追いついた。さらにその南西に位置するゲームセンター付近で,原告Bは本件大広間から3 階に降りてきた原告Aと偶然会い,立ち話をした。原告らが立ち話をしていたところ,女性客の「Dちゃんが」という声が聞こえたので,原告らがフロントの方に行くと,男性客がDを抱えて来ており,その男性客が,Dをフロント横に寝かせた(原告B本人,原告A本人)。 (5)(4)で原告がFを追いかけた後,Dは本件第2 プールで溺れ(弁論の全趣旨),本件流水プールと本件アクアヘルスプールの西側境目付近から,本件アクアヘルスプールの東側へ,沈んで流れていった。これを発見したGは,本件アクアヘルスプールに飛び込んで,歩いて追いかけようとしたが,水の流れが速く追いつけなかっ ヘルスプールの西側境目付近から,本件アクアヘルスプールの東側へ,沈んで流れていった。これを発見したGは,本件アクアヘルスプールに飛び込んで,歩いて追いかけようとしたが,水の流れが速く追いつけなかったので,Dが本件流水プールの方へ回流してくるのを待ち受けて引き揚げようと考え,本件流水プールの東寄りの部分で,Dを確保し,他の客の協力を得て,プールサイドに引き揚げた(証人G)。 (6)なお,被告は,原告BがDを監視していなかった旨の主張をするが,本件全証拠によっても,Fがプールサイドから走り出すまでの間も,原告BがDを監視していなかったとは認められず,被告の主張は採用できない。 被告の注意義務違反の有無 1 で認定した事実及び第2 の2 の各事実によると,本件流水プールは幼児にとって,その生命に危険を及ぼす可能性をもつ施設であると評価でき,その設置者である被告もこのことを十分認識し得た。また,被告は本件プールを営業に用いており,さらに事前に幼児が本件ホテルを利用することを認識していたのであるから,本件プールを幼児が利用することも想定し,監視員を置き,水難事故を回避すべき義務があったと評価しうる。 よって,少なくとも,被告に注意義務違反が全くないとの被告の主張は採用できない。 被告の注意義務違反とDの死亡との因果関係被告は,Gが発見した際に,既にDは沈んだ状態であり,仮に監視員が配置されていても,早期発見できたかどうかは不明であり,監視員の配置によってもDの溺死を回避できなかったと主張する。しかし,民法上の不法行為において因果関係が存在すると評価するには,不法行為者に被害者の損害を賠償せしめるに値すると評価しうる関係が存在すれば足りると解されるところ,被告が本件流水プール付近のプールサイドに監視員を設置しておけば,Dが本件流水プール( 評価するには,不法行為者に被害者の損害を賠償せしめるに値すると評価しうる関係が存在すれば足りると解されるところ,被告が本件流水プール付近のプールサイドに監視員を設置しておけば,Dが本件流水プール(あるいは本件第2 プール)に近づいた時点で,その危険といわざるをえない行動に気づいた可能性が高いし,一般的に溺れる際にはもがくなどの行為があったと推認されるところ,自己と関わりのない幼児・児童に注意をそそいでいるわけではないGをはじめとする一般客ではDがもがくなどしたことを見落とすことがあっても,プールでの安全を確保することが職務である監視員であれば,Dがもがくなどしたことを発見できた可能性が高い。これらの事情を考慮すると,監視員の配置により,被告にDの死亡を賠償せしめるに値すると評価しうる程度には,Dの救命可能性があったと評価できるから,被告が監視員を配置しなかったことと,Dの死亡との間には,不法行為上の因果関係が存在すると解される。 原告らの過失の存否及び過失相殺の割合(1)原告らの過失の存否原告らは,Dの両親であるから,もし原告らに過失が存し,Dの死亡という結果に寄与したのであれば,原告らの被告に対する損害賠償請求にあたり,その過失を斟酌すべきである。 そこで,本件で原告らに過失があったかどうかを検討するに,幼児がプールで溺死した場合,例えば,両親が全く付き添わない形式で催される幼児・児童の水泳教室のように,子の安全を全てプール運営者に委託するような場合でない限り,幼児のプールにおける遊泳に際して,両親に子供を監視する義務が全くなくなるとはいえない。原告らは,少なくとも,Dが溺れたとき,Dを監視していなかったのであるから,原告らにDの死亡につき全く過失がないとは評価し得ない(その他本件にあらわれた全事情を考慮しても,上記評価を覆 はいえない。原告らは,少なくとも,Dが溺れたとき,Dを監視していなかったのであるから,原告らにDの死亡につき全く過失がないとは評価し得ない(その他本件にあらわれた全事情を考慮しても,上記評価を覆すに足りず,原告らが無過失である旨の,原告らの主張は採用できない。)。よって,原告らの請求額のうち,公平の観点から相当額を減額する必要があるから,原告ら及び被告の過失の割合について,以下検討する。 (2)過失の割合についてア(1)で述べたとおり,原告らには,Dを監視すべき義務があったにもかかわらず, 1 で認定した事実及び第2 の2 の各事実その他本件各証拠によると,原告Aは本件プールに赴くことさえせず,本件大広間で雑談していた。そして,Dら三名(このうち,D(本件事故当時4 歳)とF(同2 歳),特にFについては,年齢からして幼児用プールであるか否かをとわず,ある程度の水の深さがある場所で水遊びをさせるには,細心の注意が必要と解される)を原告Bが一人で世話する状態であった。 さらに,Dは,その年齢からして,口頭で注意しただけでは指示どおりその場で動かずじっとしていることが難しいことが予想されるところ,原告Bは,Eその他の人物にDの世話を依頼したりするなど,何らかの策をとることなく,「動かないで」と口頭で注意しただけで(原告B本人)Dのもとを離れ,Fに追いついてからも即座にDのもとには戻らなかった。 これらの点を考慮すると,原告らが親として果たすべき義務を尽くしていたとは評価できず,本件事故について,原告らの過失割合は大きいといわざるをえない。 イ他方,2 で述べたとおり,被告にも,監視員を置き,水難事故を回避すべき義務があったが,1 で認定した事実及び第2 の2 の各事実その他本件各証拠によると,被告は,子供会を対象として(しかも,参加者 他方,2 で述べたとおり,被告にも,監視員を置き,水難事故を回避すべき義務があったが,1 で認定した事実及び第2 の2 の各事実その他本件各証拠によると,被告は,子供会を対象として(しかも,参加者の中に幼児が含まれることも想定して)本件ホテルの利用プランを用意しており(乙6),事前に,大人,子供,幼児が何人程度来場するかを把握していた(乙5)。 そして,本件ホテルには,温泉,ゲームセンター,プール等の遊戯施設のほか,フィットネスクラブのような運動施設も存在し,さらには,本件事故当日には,なんらかの催物が開催され,昼食時から酒類も提供され(原告A本人),また,被告は本件子供会の構成員を宴会客として受け入れていたのであるから(乙5),被告には原告ら団体客が,それぞれの施設等に分散することは十分予想できたし,乙9によると,被告はこのように多くの種類のサービスを提供することを宣伝して,集客を図っていたこともうかがわれる。 とすると,被告には本件子供会の構成員が団体客として来た場合,保護者や本件子供会の大人だけでは十分に子供・幼児の監督が行き届かない場合も容易に想定できたはずである。 次に,本件プールは,湯治施設(ないしはクアハウス)における浴場のような,温水(ないしは水)につかることを目的とする場ではなく,GがDに追いつかなかったことからもうかがえるように,圧水ノズルにより,かなり強い回流を人工的に作り出し,泳げるようになっていたのであり,本件第2 プールの深さも考慮すると,被告は幼児が誤って本件第2 プールに入った場合,溺れることも十分予想ができたはずである。 にもかかわらず,被告は,監視員を配置していないばかりか,本件プール室内には被告の職員もいなかった。営利目的の一環として,本件プールを設置する以上,被告は,上述の危険を想定した上で,最低 ずである。 にもかかわらず,被告は,監視員を配置していないばかりか,本件プール室内には被告の職員もいなかった。営利目的の一環として,本件プールを設置する以上,被告は,上述の危険を想定した上で,最低限監視員を置くなどして,本件プールの安全性を確保すべきであったといえる。 ウ被告は,監視員が存在しないことにより,かえって,原告らの注意義務が重くなると主張する。確かに,監視員がいない場合,子と保護者である親との二者の関係では,親の,保護者として自己の子供を守る責務が重くなるといえる。しかし,それは,子供との関係で子に対する親の全うすべき責務が重くなるだけであって,そのことにより,プール設置者の責任が減少したり,プール設置者との関係において,親の過失の度合いが増加し,プール設置者の責任が減少するものとは評価し得ない。 また,被告は,原告らプール利用客に十分に注意喚起していたというが,イで述べた本件の状況下では,来場者に対し,被告が主張する程度の注意をなして自己責任を求めても,その責任が減少するものとは評価できない。 エ以上の事実を総合勘案すると,本件の損害の公平な分担を図るには,原告らの過失を4 割,被告の過失を6 割と評価するのが相当である。 損害原告らが本件事故により被り,あるいはDから相続した結果,被告に対し賠償請求できる損害の金額は以下のとおりである。 (1)逸失利益金2247 万0618 円平成12 年度の賃金センサスによる女子全年齢平均年収は金349万8200 円である。 Dは事故時4 歳で,就労始期の満18 歳までの年数は14 年,就労終期の満67 歳までの年数は63 年である。それぞれの年数に対応するライプニッツ係数は,9.899 及び19.075 で,Dの生活費控除率は30 パーセントと評価すべきであるから,Dの死亡 ,就労終期の満67 歳までの年数は63 年である。それぞれの年数に対応するライプニッツ係数は,9.899 及び19.075 で,Dの生活費控除率は30 パーセントと評価すべきであるから,Dの死亡による逸失利益は以下のとおり2246 万9638 円となる。 3,498,200×(1-0.3)×(19.075-9.899)=2246 万9638 円(四捨五入)(2)慰謝料Dの慰謝料金2000 万円原告ら固有の慰謝料各金250 万円D自身の苦痛,幼い愛娘を失った原告らの精神的苦痛その他本件証拠上認められる一切の事情を考慮すると,D死亡による慰謝料は,D自身の慰謝料が金2000 万円,原告ら固有の慰謝料はそれぞれ金250 万円と評価するのが相当である。 (3)葬儀費用金120 万円(弁論の全趣旨,なお,葬儀費用は原告らが2 分の1 ずつ負担したものと認められる。)(4)これをもとに,4 エの過失割合により計算すると,原告らの請求できる金額は,それぞれ1460 万0891 円となる。 (22,469,638÷2+20,000,000÷2+2,500,000+1,200,000÷2)×0.6=14,600,891(四捨五入)(5)弁護費用それぞれ金140 万円が相当である。 よって,原告らの請求は,民法709 条に基づき,それぞれ1600 万0891 円を求める限度で理由があるから,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成14 年9 月9 日)長崎地方裁判所民事部裁判官平野淳

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