【DRY-RUN】主 文 1 当裁判所が当裁判所昭和二九年(ネ)第一四四七号事件につき昭和 三〇年八月二七日言渡した判決を取消す。 2 右事件における控訴人(本件再審被告)の控訴を棄却する。
主文 1 当裁判所が当裁判所昭和二九年(ネ)第一四四七号事件につき昭和三〇年八月二七日言渡した判決を取消す。 2 右事件における控訴人(本件再審被告)の控訴を棄却する。 3 右事件の控訴費用および本件再審費用はすべて本件再審被告の負担とする。 事実 再審原告らの訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、再審被告の訴訟代理人は、再審の請求を却下する、との判決を求め、本案についての控訴の趣旨は後記第二の一のとおりである。 第一、再審の請求について(再審原告らの訴訟代理人の陳述)一、 当裁判所は、控訴人再審被告、被控訴人再審原告両名間の当裁判所昭和二九年(ネ)第一四四七号土地建物明渡請求控訴事件について、昭和三〇年八月二七日同事件第一審判決を取消し、控訴人の請求を認容する趣旨の判決(以下原判決という)を言渡した。これに対し再審原告らは上告の申立(最高裁判所昭和三〇年(オ)第八六一号)をしたが、昭和三二年七月一九日上告棄却の判決言渡を受け、原判決が確定した。 二、 右事件の当事者双方の主張は後記第二に記載のとおりで、原判決は控訴人たる再審被告の主張事実をすべて真実と認定したものであるところ、原判決は、右事実認定の証拠として、別紙目録記載の土地建物の売渡証二通(甲第一・二号証)および同事件第一審証人A、同事件第二審証人B、同C、同D、同E(第一回)の各証言を採用したが、右の売渡証二通は再審被告の偽造にかかるもので、同被告はこれを登記原因を証する書面として用いて右土地建物につき再審原告Fより再審被告への所有権移転登記申請をしたものであり、また右各証人の証言はいずれも虚偽の陳述で、右証人B、同C、同Dの証言は再審被告から教唆されてしたものであつた。そして再審被告は公正証書原本不実記載 再審被告への所有権移転登記申請をしたものであり、また右各証人の証言はいずれも虚偽の陳述で、右証人B、同C、同Dの証言は再審被告から教唆されてしたものであつた。そして再審被告は公正証書原本不実記載・同行使・偽証教唆等の罪により、Eは偽証の罪により、いずれも東京地方裁判所に起訴され、昭和三四年一一月一〇日同裁判所においてそれぞれ有罪の判決(再審被告は懲役四年、Eは同一年)をうけ、同人らは右判決に対し上訴したが、昭和三八年一二月五日それぞれ上告棄却の判決がなされ、右有罪の判決が同年同月一五日の経過によつて確定した。 三、 東京地方裁判所が言渡した右刑事判決が、罪となるべき事実として認定した事実のうち、本件に関係のある部分を摘示すると、次のとおりである。 甲、 被告人G(以下Gと略称する。)は、(一)、 知人のHより同人に対する債権の弁済を受けられなかつたところから、昭和二十六年十一月中旬頃右HのためIから右Hの長男F所有の東京都大田区ab丁目c番地(七十一番地とあるのは誤記と認める。)所在の土地百坪及び同番地所在の作業場兼居宅一棟十二坪を担保として、約七十万円を借り受けるべくその斡旋をして、右金員中より前記債権の弁済を受けようと考え、右Iに金融を申し込むためHをしてF名義で前記上地及び建物につき各売渡証書の案及び白紙委任状等を作成させたが、右Iより金融を受けることができず、その直後Hが所用のため、前記各書類をFに預けて九州に出張したのを奇貨とし、同人より右書類を入手し、これを利用して虚偽の売渡証書を作成した上、右証書に基づき、前記土地、建物を自己の所有名義とする旨の不実の登記をしようと企て、右Hの実姉Jに対し、七十万円借りてやるからHの土地、建物の書類と実印を持つてくれと申し向け、これを信じた同女を通じ、Fより、前記各書類及び実印等を 自己の所有名義とする旨の不実の登記をしようと企て、右Hの実姉Jに対し、七十万円借りてやるからHの土地、建物の書類と実印を持つてくれと申し向け、これを信じた同女を通じ、Fより、前記各書類及び実印等を入手し、その頃ほしいままに、Fの記名のある前記売渡証書の金額欄に、土地については「十万円」、建物については「六万円」とそれぞれ記入し、年月日欄にいずれも「昭和二十六年十一月十九日」、宛名欄にいずれも「東京都大田区de丁目f番地gG殿」と記入し、あたかもFより同被告人に対する売渡証書であるかのような文書二通を作成した上、(イ)、 同年十二月四日同区hi丁目j番地所在の東京法務局大森出張所において、同所係員に対し、建物に関する右売渡証書等を真正に成立したもののように装つて提出し、右建物は同被告人において同年十一月十九日Fから買い受けた旨虚偽の申立をし、因つて情を知らない右係員をして、公正証書の原本である同出張所備付の該建物に関する登記簿に、右売買に基づき、同被告人のため所有権取得の登記をする旨不実の記載をさせ、即時同所に備え付けさせてこれを行使し、(ロ)、 同年十二月六日右出張所において同所係員に対し、土地に関する右売渡証書等を真正に成立したもののように装つて提出し、右土地は同被告人において同年十一月十九日Fより買い受けた旨虚偽の申立をし、因つて情を知らない右係員をして公正証書の原本である同出張所備付の該土地に関する登記簿に、右売買に基づき、同被告人のために所有権取得の登記をする旨不実の記載をさせ、即時同所に備え付けさせてこれを行使し、(二)、 (イ) 昭和二十七年十一月末頃同被告人の自宅において当時東京地方裁判所に繋属中の原告同被告人。被告H、同Fの土地建物明渡請求事件につき、昭和二十八年二月十一日の口頭弁論期日に証人として呼出を受けた (イ) 昭和二十七年十一月末頃同被告人の自宅において当時東京地方裁判所に繋属中の原告同被告人。被告H、同Fの土地建物明渡請求事件につき、昭和二十八年二月十一日の口頭弁論期日に証人として呼出を受けたAに対し、同人が昭和二十六年十一月二十一日被告人Eと共にH方に赴き、同被告人と前記Fとの問答及び書類等授受の状況を見聞した事実がないのに拘らず、前記口頭弁論期日に証人として証言するに際しては、右日時に、右問答並びに書類等授受の状況を見聞したように虚偽の陳述をして貰いたい旨要請し、右Aにこれを承諾させ、因つて同人をして右期日に東京地方裁判所において前記訴訟事件の証人として宣誓の上、被告人Gの要請に基づく前回趣旨の陳述をさせ、(ロ) 昭和三十年三月二十一日頃同被告人方において、当時東京高等裁判所に繋属中の控訴人同被告人、被控訴人H、同Fの土地建物明渡請求事件につき、同月二十二日の口頭弁論期日に証人として呼出を受けたB及び同人妻Cの両名に対し、昭和二十六年十二月四日頃右BがF及びJから右F所有名義の土地、建物につき、同被告人名義に所有権移転の登記をするために必要な保証人になつて貰いたい旨の依頼を受けたことがないのに拘らず、右両名が前記口頭弁論期日に証人として証言するに際しては、Bが右日時に右F等の依頼に基づき保証人となつたよう虚偽の陳述をして貰いたい旨それぞれ要請し、B及びCにこれを承諾させ、因つて右両名をして、いずれも右期日に東京高等裁判所において、前記訴訟事件の証人として宣誓の上、それぞれ同被告人の要請に基づく前同旨の虚偽の陳述をさせ、(ハ) 昭和三十年五月二十日頃より同月二十七日頃までの間数回に亘り、東京都大田区de丁目k番地D方及び同被告人方において、東京高等裁判所に繋属中の前記訴訟事件につき、同月二十八日の口頭弁論期日に証人として呼 和三十年五月二十日頃より同月二十七日頃までの間数回に亘り、東京都大田区de丁目k番地D方及び同被告人方において、東京高等裁判所に繋属中の前記訴訟事件につき、同月二十八日の口頭弁論期日に証人として呼出を受けた右Dに対し、昭和二十六年十一月頃Fが同被告人より二十万円を借り受け自宅へ帰る途中当時Dが同居していたJ方に立ち寄つた事実及び同月十九日Hが右J方に立ち寄り同人に対し、F所有の土地建物を同被告人に売り渡したと述べた事実がないのに拘らず、右のような事実があり、これをDが見聞したかのような虚偽の陳述をして貰いたい旨要請し、右Dにこれを承諾させ、因つて同女をして、前記期日に東京高等裁判所において、前叙訴訟事件の証人として宣誓の上、同被告人の右要請に基づく前回趣旨の虚偽の陳述をさせ、以つていずれも偽証の教唆をし、乙、 被告人Eは、昭和三十三年三月二十二日東京高等裁判所において、控訴人被告人G、被控訴人H、同Fの土地建物明渡請求事件の証人として宣誓の上証言したが、その際、昭和二十六年十一月二十一日にAと供にH方を訪れ、Fより同人所有の東京都大田区ab丁目c番地(七十一番地とあるのは誤記と認める。)所在の土地、建物に関する売渡証書等の交付を受けた事実がないのに拘らず、右日時にAと同行してH方に致り、右Fより前記証書等の交付を受けた旨虚偽の陳述をして偽証した。 四、 1、右判決は前記売渡証二通(甲第一・二号証)が再審被告の偽造にかかることを明かに判示しているばかりでなく、そこで処罰の対象とされた公正証書原本不実記載、同行使の罪は右文書偽造罪の成立を前提とし、当然これをも含めて処罰の対象としていると解すべきであるから、再審被告の右文書偽造の行為は民事訴訟法第四二〇条第二項前段の「罰スヘキ行為ニ付有罪ノ判決確定シタルトキ」に当り、本件につき再 前提とし、当然これをも含めて処罰の対象としていると解すべきであるから、再審被告の右文書偽造の行為は民事訴訟法第四二〇条第二項前段の「罰スヘキ行為ニ付有罪ノ判決確定シタルトキ」に当り、本件につき再審の事由となる。 仮りに、右文書偽造行為が、同条同項前段の再審の要件を具備したと認められないとしても、前記のように右偽造行為は前記刑事判決中に明かに認定されているのであるから、検察官によつて証拠欠缺外の理由により不起訴処分に付されたものと解すべきで、かかる場合は、同条同項後段の「証拠欠缺外ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決ヲ得ルコト能ハサルトキ」に当り、やはり再審の事由となると解すべきである。 2、 証人A、同B、同C、同Dの偽証行為については、同人らは検察官に対し、この事実を自白し、起訴猶予処分をうけた。しかし、同証人らの証言が虚偽の陳述であることは再審被告に対する右刑事判決中に明かに判示されており、同被告の偽証教唆罪成立の前提とされているのであるから、同証人らの右偽証行為についても同法同条二項前段の「罰スヘキ行為ニ付有罪ノ判決確定シタルトキ」に当るものとして本件につき再審事由となると解すべきである。 仮りに右偽証行為が同条二項前段の再審の要件を具備したと認められないとしても、右事実関係の下においては、少くとも同条二項後段の「証拠欠缺外ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決ヲ得ルコト能ハサルトキ」に当り、本件につき再審の事由となる。 3、 証人Eの偽証行為が、本件につき同法同条二項前段の再審事由に当ることは明かである。 五、 再審原告らは石各再審事由の存在を昭和三八年一二月二〇日以後に知つた。 (再審被告訴訟代理人の陳述)一、 再審原告ら主張の右一の事実は認める。 同二の事実中、再審被告およびEが再審原告ら主張の事実につき有罪の判決をうけ、この判 三八年一二月二〇日以後に知つた。 (再審被告訴訟代理人の陳述)一、 再審原告ら主張の右一の事実は認める。 同二の事実中、再審被告およびEが再審原告ら主張の事実につき有罪の判決をうけ、この判決が同主張の日に確定したことは認めるが、再審被告が再審原告ら主張の売渡証二通を偽造したことおよび証人A、同B、同C、同D、同Eの再審原告ら主張の各証言が、虚偽の陳述であることはいずれも否認する。 同三は認める。 同四の主張はすべて争う。 同五の事実は否認する。再審原告らは、再審被告およびEに対する前記被告事件の判決が確定した昭和三八年一二月一五日頃に、その主張の再審事由の存在を知つた。 二、 1、再審被告に対する右刑事判決は、同被告の公正証書原本不実記載、同行使の罪について処罰したけれども、同被告が本件売渡証二通を偽造したとまでは判示しておらず、右文書偽造行為を罰すべき行為として、これにつき有罪の判決をしたものでもない。したがつて、再審原告主張の右文書偽造行為につき再審事由に該当しない。 2、 再審原告らは、原判決に対する上告審において右売渡証二通が偽造にかかる事実を、上告理由として主張したから、更にこれを本件再審の事由として主張することは許されない。 三、 1、再審原告ら主張の証人A、同B、同C、同Dは別に偽証罪として有罪の判決を受けたわけではなく、単に再審被告が同人らに対する偽証教唆の罪について処罰されたにすぎない。 したがつて、同証人らについて再審事由の存在を言う余地はない。 2、 再審原告らの主張する証人A、同Eの虚偽の陳述は、右両名が昭和二六年一一月二一日再審原告H方に赴き、再審原告Fから、売渡証書などの交付をうけた事実に関するものであるが、原判決はこれらの事実については何らの判断を示しておらず、他の証拠によつて再審被告の が昭和二六年一一月二一日再審原告H方に赴き、再審原告Fから、売渡証書などの交付をうけた事実に関するものであるが、原判決はこれらの事実については何らの判断を示しておらず、他の証拠によつて再審被告の主張事実を十分認定しうると判断したものであるから、同証人らの右陳述が虚偽であつたとしても、再審被告の請求を認容すべきものとした原判決の結論に何らの影響も及ぼさない。 また、原判決はその事実認定について、証人Aの証言を証拠として採用しておらず、したがつてまた証人Eの右証言も証拠として採用されていないことが明らかであるから、同証人らの証言について再審事由は存しない。 3、 原判決が証人Dの証言を証拠として採用したのは、本件売渡証二通が偽造にかかるものであるとの再審原告らの主張を判断するにつき関係のある部分のみで、同証人の証言のうち、前記刑事判決が同証人の虚偽の陳述と認定した部分ではなく、主要事実の認定のため採用されたものでもない。 4、 再審原告らの主張する証人B、同Cの偽証は、同人らが昭和二六年一二月四日再審原告Fおよび訴外Jから、別紙目録記載の土地の所有権移転登記申請をするために必要な保証人になつてもらいたい、との依頼をうけた事実に関するが、原判決はかかる事実について判断をしておらず、右証言は原判決の事実認定に全く関係がない。 5、 なお、証人E、同Dの証言については、再審原告らは、原判決に対する上告の理由として、それがいずれも虚偽の陳述であることを主張したから、更にこれを本件再審の事由として主張することは許されない。 第二、 本案について一、 再審被告(控訴人・以下本案については、再審被告を控訴人といい、再審原告を被控訴人という)の訴訟代理人は「本件第一審判決を取消す。被控訴人らは控訴人に対し別紙目録記載の土地建物を明渡せ。被控訴人 、 再審被告(控訴人・以下本案については、再審被告を控訴人といい、再審原告を被控訴人という)の訴訟代理人は「本件第一審判決を取消す。被控訴人らは控訴人に対し別紙目録記載の土地建物を明渡せ。被控訴人らは控訴人に対し昭和二七年二月一九日から右土地建物の明渡ずみに至るまで一カ月につき金一三四九円の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決と仮執行宣言を求めた。 二、 当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において「本件土地建物の売買代金一六万円は、控訴人が同時に訴外Jから買受けた同人所有の建物の代金一〇万円と併せ、この合計二六万円につき、第一審判決事実摘示の請求原因(一)の(イ)および(ロ)の債権と対当額において合意相殺することによつて完済した」と訂正したほかは、本件第一審判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。 第三、 証拠省略 理由 第一、 再審請求について。 一、 再審原告主張の前記第一の一の事実は、本件記録(東京地方裁判所昭和二七年(ソ)第四九八六号、東京高等裁判所昭和二九年(ネ)第一四四七号、最高裁判所昭和三〇年(オ)第八六一号事件記録)により明かである。 二、 再審原告主張の各再審事由について。 再審被告が公正証書原本不実記載・同行使・偽証教唆などの罪により、Eが偽証の罪により、いずれも昭和三四年一一月一〇日東京地方裁判所において有罪の判決(再審被告が懲役四年、Eが同一年)をうけ、同判決内容のうち本件に関係のある部分が前記第一の三のとおりであること、右両名がこれに対し控訴・上告をしたが、いずれも棄却され(上告審の判決言渡日は昭和三八年一二月五日)、同年一二月一五日の経過によつて右有罪の判決が確定したこと、はすべて当事者間に争がない。 <要旨第一> これに対し控訴・上告をしたが、いずれも棄却され(上告審の判決言渡日は昭和三八年一二月五日)、同年一二月一五日の経過によつて右有罪の判決が確定したこと、はすべて当事者間に争がない。 <要旨第一>1、 甲第一・二号証が偽造にかかるものであるとの点について。</要旨第一>(イ) 本件の本案に関する当事者双方の後記各主張によると、昭和二六年一一月一九日に、売主再審原告F(代理人同H)買主再審被告間において、別紙目録記載の土地建物を対象とする売買契約が成立したか否かの点が本件における唯一の争点になつていると認められるところ、原判決が右の争点の判断について右甲第一・二号証を証拠として採用していることは、同判決書の理由の記載により明かである。そして、右甲第一・二号証の記載内容をみると、それはいずれも右売買契約につき作成された契約書として、売買契約の成立を直接に立証する資料となるものであるから、これらの書証の成立の真否は、原判決の結論に最も重要な影響をおよぼすことが明かである。 (ロ) 再審被告に対する前記刑事判決の甲(一)の記載と右甲第一・二号証の記載とを対照すると、両判決が、再審被告においてほしいままに金額、作成年月日、名宛人の記入をして作成した、と認定した文書二通が、右甲第一・二号証であることが明かである。 (ハ) 再審原告らは、右甲第一・二号証について、民事訴訟法第四二〇条第一項六号、第二項前段により再審事由となる、と主張するが、右刑事判決(成立に争のない新甲第二号証)の前記罪となるべき事実の記載および法令の適用欄の記載ならびに成立に争のない新甲第二五号証(再審被告に対する起訴状)によると、再審被告が右文書二通に関して有罪とされたのは、同被告が昭和二六年一二月四日および同年同月六日東京法務局大森出張所において同所係員に対し右売渡証等 い新甲第二五号証(再審被告に対する起訴状)によると、再審被告が右文書二通に関して有罪とされたのは、同被告が昭和二六年一二月四日および同年同月六日東京法務局大森出張所において同所係員に対し右売渡証等を真正に成立したもののように装つて提出し、同被告が本件土地建物を同年一一月一九日再審原告Fより買受けた旨虚偽の申立をし、よつて情を知らない右係員をして公正証書の原本である同所備付の右土地建物に関する登記簿に同被告のため所有権取得の不実の記載をさせ、即時同所に備え付けさせてこれを行使した、という公正証書原本不実記載・同行使の罪についてであつて、右文書二通を偽造した行為自体は処罰の対象とされていないことが明かである。したがつて、再審被告の右甲第一・二号証の偽造行為は、これについて「有罪ノ判決確定シタルトキ」に当るものとして、本件につき再審事由となる、という再審原告らの主張は採用しえない。 (ニ) しかし、いずれも成立に争のない新甲第三・第四・第六・第七・第八・第一〇・第一一・第一三・第一四・第一五号証の各記載内容および第一審証人J、第二審証人K、再審証人B、同D、同C、同Aの各証言ならびに第一・二審における再審原告F、同Hの各本人尋問の結果を綜合すると、再審被告が前記刑事判決の甲(一)に認定されたようにして、右甲第一・二号証を偽造し、これを用いて虚偽の登記申請をした事実が認められる。甲第五・六号証のH、同Fの著名部分以外の部分の成立に関する第二審証人E(第一回)の証言は採用しえず、前記証拠によると、同号証の同部分はやはり再審被告が再審原告らの意思に基かずして作成したものであることが認められ、新乙第四号証新乙第五号証の二、新乙第六号証の二、新乙第七号証の二、の各記載内容、第一・二審および再審証人E(第二審は第一・二回)、第二審証人B、同C、同D、 して作成したものであることが認められ、新乙第四号証新乙第五号証の二、新乙第六号証の二、新乙第七号証の二、の各記載内容、第一・二審および再審証人E(第二審は第一・二回)、第二審証人B、同C、同D、再審証人Lの各証言および第一・二審ならびに再審における再審被告(第一審は第一・二回)Gの本人尋問の結果は、前記各証拠に照して採用しえず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。 しかるに、右書証の偽造行為が罰すべきものとして起訴されず、したがつてこれについて有罪の判決がえられなかつたのは、起訴便宜主義にもとづく検察官の事件取扱の方針によるものと解せられるが、以上のように、右書証の偽造にかかるものであることが、証拠によつて明確に認定することができ、偽造者の他の犯罪成立の前提行為として、右犯罪についてされた確定判決中に認定されている場合には、右書証の偽造行為は、民事訴訟法第四二〇条二項後段の「証拠欠缺外ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決ヲ得ルコト能ハサルトキ」にあたり、再審の事由となると解すべきである。 <要旨第二>(ホ) そして、本件において、右甲第一・二号証が偽造されたものであることについて、再審の要件を具備する</要旨第二>に至つた日は、同条第二項前段の場合と対比して考えると、再審被告に対する前記刑事判決が確定した昭和三八年一二月一五日と解するのが相当であるところ、再審における再審原告Hの第二回本人尋問の結果によると、再審原告らが右刑事判決確定の事実を知つたのは、同年一二月二〇日頃であることが認められ、記録によれば、本件再審の訴提起の日が、それより三〇日の再審期間の経過前である昭和三九年一月一六日であることが明白である。 2、 第一審証人Aの証言が虚偽の陳述であつた点について。 原判決を仔細に検討しても同判決が右証人の証言を証拠として採用した形跡 再審期間の経過前である昭和三九年一月一六日であることが明白である。 2、 第一審証人Aの証言が虚偽の陳述であつた点について。 原判決を仔細に検討しても同判決が右証人の証言を証拠として採用した形跡が見当らないから、同証言について再審事由の存在をいう再審原告らの主張は採用しえない。 3、 第二審証人B、同C、同Dの各証言が虚偽の陳述であつた点について。 再審被告に対する前記刑事判決が、同被告の偽証教唆罪成立の前提事実として、右証人B、同Cが「昭和二六年一二月四日頃右Bが再審原告F及び訴外Jから右F所有の本件土地建物につき、同被告名義に所有権移転の登記をするために必要な保証人になつて貰い旨の依頼をらけたことがないのに、Bが右依頼に基づいてその保証人となつた」という趣旨の、また右証人Dが「昭和二六年一一月頃再審原告Fが再審被告より二〇万円を借受け自宅に帰る途中当時右Dが同居していたJ方に立ち寄つた事実および同月一九日再審原告Hが右J方に立ち寄り同人に対し、再審原告F所有の本件土地建物を再審被告に売渡したと述べた事実がないのに、右のような事実があり、これを右証人Dが見聞した」という趣旨の、各偽証をした事実を認定していることは、前記のとおりである。そして同証人らが右各偽証の罪について東京地方検察庁検察官から起訴猶予処分を受けたことは当事者間に争がない。 しかし、右B、同Cの証言は、本件の本案における争点である「昭和二六年二月一九日再審原告Fと再審被告間に別紙目録記録の土地建物を対象とする売買契約が成立」したか否かの主要事実に関するものではなく、右主要事実を推認する資料となる間接事実に関するものにすぎず、右の間接事実自体は原判決の認定した事実の中に示されてはいない。そして、原判決が右事実認定について採用した他の証拠を仔細に検討してみると、右両 事実を推認する資料となる間接事実に関するものにすぎず、右の間接事実自体は原判決の認定した事実の中に示されてはいない。そして、原判決が右事実認定について採用した他の証拠を仔細に検討してみると、右両証人の証言が、原判決の心証形成の一資料となつたことはもとより否定しえないけれども、その結論を左右する程の重要性をもつていたとは到底断言することができない。また、原判決が証人Dの証言を証拠として採用したのは、再審原告らの、甲第一・二号証が偽造であるとの主張を排斥する資料として「再審原告らと共に再審被告に対し連帯債務を負担していたJが右債務弁済のため同人所有の家屋を再審被告に売渡し、その登記手続および家屋の明渡をすませていた」との、および「再審被告が昭和二七年二月八日再審原告両名にあて本件土地建物を同年同月一八日正午までに明渡すことを求める書面を作成し、これをDをして再審原告H方に持参せしめたが、Hはこれを受け取らなかつたので同日右趣旨を記載した郵便はがきを再審原告らあてに発送した」との各事実認定をするについてであつて、前者は本件の主要事実の認定に関する」事情(間接事情)にすぎず、原判決の理由の記載を検討してみると、右事実の有無が主要事実の認定について、これを左右する程の重要性を持つていたとは考えられないし、後者は本件の附帯の請求(損害金の請求)に関するものであり、しかも右事実のうちこの請求に関して必要なのは、再審被告が再審原告らに対し、郵便はがきで明渡を求めた事実だけで、これよりさき再審被告が、Dを使として、再審原告らに明渡を求める書面を持参せしめた、との点は右に至る事情にすぎないと考えられるのであるが、証人Dの証言中に、再審被告が郵便はがきで右の明渡を求めた事実の認定の資料となるような部分は見当らない。 されば、右証人B、同C、同Dの証言が との点は右に至る事情にすぎないと考えられるのであるが、証人Dの証言中に、再審被告が郵便はがきで右の明渡を求めた事実の認定の資料となるような部分は見当らない。 されば、右証人B、同C、同Dの証言が虚偽のものであつたことは、この点に関するその余の主張について判断するまでもなく、本件につき再審事由たりえないといわざるをえない。 4、第二審証人(第一回)Eの証言が虚偽の陳述であつた点について。 同証人の証言が虚偽の陳述として有罪となつたのは「昭和二六年一一月二一日にAと共に再審原告H方を訪れ、再審原告Fより同人所有の別紙目録記載の土地建物に関する売渡証書等の交付を受けた事実がないのに拘らず、右日時にAと同行してH方に到り、右Fより前記証書等の交付を受けた旨虚偽の陳述をした」との点に関するものであつて、原判決は甲第一・二号証中の不動産の表示、本文及び再審原告Fの署名部分以外の部分、ならびに甲第五・六号証の署名部分以外の部分の各成立の真正を認定するにつき、唯一の証拠として右Eの証言を採用し、更に本件の請求原因事実を認定するについて、他の証拠とともに、右証言を採用し、その事実認定中に、本件売買契約の締結につき当事者(再審原告Fの代理人の同Hと再審被告)間に合意の成立した事実を認定したのち「両者の間に売渡証等(甲第一・二号証、甲第五・六号証、甲第二七号証)が作成されたが、Hは右書類をFに示したいからと言つて一旦持ち掃えつた。その後再審被告は右書類をFからEを通じて受け取り、これを使用して右売買による所有権移転登記を了した」という趣旨の認定をし、その一部にEの右証言内容をそのまま採用したと思われる事実認定をしている。右甲第一・二号証および甲第五・六号証は、いずれも本件の主要事実の立証につき、直接の最も重要な資料となるものであり、また右証言内容である Eの右証言内容をそのまま採用したと思われる事実認定をしている。右甲第一・二号証および甲第五・六号証は、いずれも本件の主要事実の立証につき、直接の最も重要な資料となるものであり、また右証言内容である、再審原告Fが任意に、前記売渡証などの書類を再審被告の使のEに交付した事実の存在は、再審原告らが右売買契約の締結を承諾していた事実を推認させる重要な間接事実たる意義をもつわけである。 以上のように考えると、証人Eの前記証言が虚偽であつたことは、本件について民事訴訟法第四二〇条第一項七号第二項前段に該当するものとして、再審の事由となると解すべきである。 そして、再審における再審原告Hの第二回本人尋問の結果によると、再審原告らがEに対する前記刑事判決の確定を知つたのは、昭和三八年一二月二〇日頃であることが認められ、本件再審の訴提起の日がそれより三〇日の再審期間の経過前である昭和三九年一月一六日であることが記録上明かである。三、されば再審原告らの本件再審請求は、証人A、同B、同C、同Dの偽証については理由がないが、甲第一・二号証が偽造文書であること、および証人Eの証言が偽証であつたことについて理由があるといわなければならない。 再審被告は、再審原告らが原判決に対する上告審において、右甲第一・二号証が偽造にかかること、および証人Eの右証言が虚偽であることを主張したから、更に再審の訴を提起することは許されない、と主張するが、民事訴訟法第四二〇条第一項の「上訴ニ依リ其ノ事由ヲ主張シタルトキ」とは、単に当事者が上告審で右の程度の主張をしただけでは足りず、再審の要件に該当するすべての事実を主張した場合でなければならないと解すべきところ、前記のとおり、本件において以上認定の再審の要件を具備するに至つたのは、原判決に対する上告審の判決言渡(昭和三二年七月一 要件に該当するすべての事実を主張した場合でなければならないと解すべきところ、前記のとおり、本件において以上認定の再審の要件を具備するに至つたのは、原判決に対する上告審の判決言渡(昭和三二年七月一九日)の後である昭和三八年一二月一五日で、再審原告らは右上告審において右再審事由の主張をすることができなかつたわけである。したがつて、再審被告の右主張は理由がないこと明かである。 第二、 本案について。 本訴の請求原因は、被控訴人Hが同Fの代理人として、昭和二六年一一月一九日控訴人との間に、F所有の別紙目録記載の土地建物を代金一六万円(土地につき一〇万円、建物につき六万円)で控訴人に売渡す旨の売買契約(以下本件売買という)で控訴人に売渡す旨の売買契約(以下本件売買という)を結び、控訴人が請求次第その明渡をする旨約した、というのである。 そこで証拠を検討すると、1、 甲第一・二号証の不動産の表示、本文および被控訴人Fの署名部分ならびに甲第五・六号証の署名部分の各成立はそれぞれ被控訴人らの認めるところであるが、前記認定(この判決の理由第一の二の1の(ニ))のとおり、これらの書類の右の部分は、被控訴人Hが訴外Iから別紙目録記載の土地建物を担保として金七〇万円位の融通をうけるべく、この貸借成立のときに同訴外人に差入れる目的であらかじめ準備しておいたもので、この貸借が成立するに至らなかつたため、そのまま自宅に保管しておいたものであるが、右Hの不在中に、控訴人が、訴外Jを通じ、他から金員を借りてやる、と詐言を用いて被控訴人Fから同人の印鑑などとともに交付をうけ、その頃、勝手に右部分以外の部分の記入をしたものであるから、右甲第一・二号証および甲第五・六号証は、いずれも本件売買の成立を証するものとして採用しえない。 2、 甲第二七号証中の被控訴人Fの うけ、その頃、勝手に右部分以外の部分の記入をしたものであるから、右甲第一・二号証および甲第五・六号証は、いずれも本件売買の成立を証するものとして採用しえない。 2、 甲第二七号証中の被控訴人Fの署名は被控訴人Hが記載したこと、F名下の印影が同人の印によつて顕わされたものであることは、いずれも被控訴人らの認めるところであるが、この判決の理由第一の二の1の(ニ)の事実認定について挙示した証拠によると、右甲第二七号証も前記甲第一・二号証、甲第五・六号証と同一の経過で作成されたものであることが認められる。したがつて右甲第二七号証も本件売買の成立を証するものとして採用することができない。 3、 成立に争のない甲第三・四号証によると、別紙目録記載の土地建物について、本件売買を原因とする、被控訴人Fから控訴人への所有権移転登記がされている事実が認められるが、前記認定(この判決の理由第一の二の1の(ニ))のとおり、この登記も控訴人が被控訴人Fの意思に基づかずして、偽造にかかる前記甲第一・二号証を用いてした虚偽の申請によつてされたものであるから、右の登記も本件売買の成立を推認させるものではない。 4、 いずれも成立に争のない新乙第四号証、新乙第五・六・七号証の各二の記載内容、第一審証人A、第一・二審ならびに再審証人E(第二審は第一回)、第二審証人B、同Cの各証言、第一・二審ならびに再審における控訴人の本人尋問(第一審は第一・二回)の結果のうち、本件売買の成立に関し、あるいはこれを推認させる事実に関する部分は、いずれも、成立に争のない新甲第一・二・三号証、新甲第六ないし第八号証、新甲第一〇・一一号証、新甲第一三・一五号証、新甲第二三号証の各記載内容および再審証人B、同D、同C、同Aの各証言ならびに第一・二審における被控訴人H、同じく被控訴人Fの各本人 第六ないし第八号証、新甲第一〇・一一号証、新甲第一三・一五号証、新甲第二三号証の各記載内容および再審証人B、同D、同C、同Aの各証言ならびに第一・二審における被控訴人H、同じく被控訴人Fの各本人尋問の結果に照し、いずれも採用しえない。 5、 他に本件売買の成立を証するに足る証拠はない。 よつて、以上と同趣旨において、控訴人の本訴請求を棄却した第一審判決は相当であるから、原判決を取消し、本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条第八九条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官小川善吉裁判官松永信和裁判官川口冨男)目録一、東京都大田区ab丁目c番地宅地一〇〇坪(三三〇・五七八五㎡)一、同所同番家屋番号同町c番ノl木造トタン葺平屋建作業場兼居住一棟建坪一二坪(三九・六六九四㎡)実測一五坪(四九・五八六七㎡)
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