平成26(ワ)22625 不正競争防止法および共有著作物の無断利用事件

裁判年月日・裁判所
平成27年9月3日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-85305.txt

キーワード

判決文本文5,994 文字)

- 1 -平成27年9月3日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第22625号不正競争防止法および共有著作物の無断利用事件口頭弁論終結日平成27年6月9日判決川崎市<以下略>原告株式会社明日香特殊検査研究所東京都千代田区<以下略>被告ウシオ電機株式会社同訴訟代理人弁護士服部秀一 秋山健人 長野孝昭主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告に対し,7100万円及びこれに対する平成26年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,別紙1の1~4記載の各文書(以下「本件文書1」と総称する。)及びこれらに基づいて被告が作成又は改変した文書並びに別紙2の1~9記載の各文書(以下「本件文書2」と総称する。)及びこれらに基づいて被告が作成又は改変した文書を返還し,かつ,被告の社内キャビネット内又は被告の担当従業員が使用するパソコン内からこれらの文書を消去せよ。 3 被告は,原告に対し,別紙3の1~3記載の各文書(以下「本件文書3」と総称する。)を返還せよ。 - 2 - 4 被告は,本件文書3を使用して同種の薬品類を製造販売してはならない。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,①被告による本件文書1(甲31の1~4),同2(甲32の1~9)及び同3(甲36~38)の持ち出し及び使用行為が債務不履行又は不正競争に当たると主張して,民法415条又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償金7100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合 履行又は不正競争に当たると主張して,民法415条又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償金7100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに本件文書1及び2の返還等を,②原告が本件文書3の所有権を有すると主張して,所有権に基づき,本件文書3の返還及び本件文書3を使用した薬品類の製造販売の禁止を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者ア原告は,人や動物の血液検査の受託,体外診断用医薬品の開発等を業とする株式会社である。(甲1)原告は,医薬品製造業及び医薬品製造販売業の許可を受けており,体外診断用医薬品であるポイントストリップフェリチン500等の製造販売の届出をしている。 イ被告は,光応用製品事業,医薬品の製造販売等を業とする株式会社である。(甲12,29)原告と被告の間の業務委託契約ア原告と被告は,平成24年9月1日,被告が金コロイドイムノクロマト法を用いるPOCT(PointReader)機器及びその専用試薬を商品化し販売を促進していく事業(以下「本件事業」という。)のために,被告が原告に対し,本件事業に関するコンサルタント,原告が保有するノウハウの提供等の業務を委託する旨の業務委託契約(以下「本件契約」- 3 -という。)を締結した。この契約は,平成23年6月1日に締結した業務委託契約を一部変更したものであった。(甲10,11)イ被告の従業員は,上記アの各業務委託契約に基づいて,原告の事業所においてポイントストリップフェリチン500等に関する実験や製造に携わった。 ウ本件契約の有効期間は,平成25年8月31日までとするが 告の従業員は,上記アの各業務委託契約に基づいて,原告の事業所においてポイントストリップフェリチン500等に関する実験や製造に携わった。 ウ本件契約の有効期間は,平成25年8月31日までとするが,いずれかの当事者が60日前までに更新しない旨の通知をしない限り1年ごとに更新するものとされていた。被告は原告に対して平成26年6月24日付けで本件契約を更新しない旨通知し,同年8月31日の経過をもって本件契約は終了した。(甲11,18)被告による許可申請等ア被告は,平成25年12月26日付けで医薬品(人用)製造業の,平成26年1月20日付けで医薬品(動物用)製造業の,同年5月30日付けで医薬品(人用)製造販売業の許可申請(以下「本件各申請」と総称する。)をそれぞれ行った。そして,同年1月21日付けで医薬品(人用)製造業の,同年2月24日付けで医薬品(動物用)製造業の,同年8月18日付けで医薬品(人用)製造販売業の許可をそれぞれ受けた。 イ被告は,平成26年2月頃に神奈川県川崎市内に事業所を新たに開設し,同年12月に体外診断用医薬品について製造販売の届出をして,同所においてこれを製造している(以下,この製造行為を「本件製造」という。)。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 債務不履行又は不正競争の有無(原告の主張)被告は,原告から本件文書1~3を持ち出し,本件文書1及び2を使用して本件各申請を行い,本件文書3を使用して本件製造を行った。 これらの行為は,本件契約の2条2項(本件事業の遂行に当たり,原告は- 4 -機器及び試薬の製造等を,被告はその販売等を担当する旨の規定)及び9条2項(原告及び被告は相手方から入手した秘密情報を本件事業を遂行する目的以外に使用してはならない旨の規定)に違反するものであり, 機器及び試薬の製造等を,被告はその販売等を担当する旨の規定)及び9条2項(原告及び被告は相手方から入手した秘密情報を本件事業を遂行する目的以外に使用してはならない旨の規定)に違反するものであり,また,原告の営業秘密を不正に取得し,使用するものであって,不正競争防止法2条1項4~9号所定の不正競争に当たる。 (被告の主張)否認する。 本件各申請の際に提出した書類は東京都等が作成し,公開しているサンプルの書類を基にして作成したものであって,被告は本件各申請において本件文書1及び2を使用していない。また,被告は,本件製造においては被告の川崎事業所で行った実験のデータ等を用いており,本件文書3を使用していない。 損害の有無及びその額(原告の主張)原告は,被告の債務不履行又は不正競争によって,原告の経営が立ちいかなくなったことにつき少なくとも6100万円,原告の財産である本件文書3の対価相当額として少なくとも1000万円の合計7100万円の損害を被った。 (被告の主張)争う。 本件文書3の所有権の帰属(原告の主張)本件文書3は被告から原告の事業所に派遣された労働者らが作成に関与したものであるが,この労働者らは原告の指揮命令下にあったから,本件文書3の所有権は原告に帰属する。また,本件契約は請負契約であり,その成果物である本件文書3の所有権は原告に帰属する。 - 5 -(被告の主張)争う。 本件文書3に記載されている実験データは原告の事業所において行われた実験によって得られたものであるが,この実験は同事業所で作業していた被告の従業員が被告所有の設備を用いて被告の指揮命令に基づいて行ったものであるから,本件文書3の所有権は被告に帰属する。 第3 当裁判所の判断 (債務不履行又は不 は同事業所で作業していた被告の従業員が被告所有の設備を用いて被告の指揮命令に基づいて行ったものであるから,本件文書3の所有権は被告に帰属する。 第3 当裁判所の判断 (債務不履行又は不正競争の有無)について原告は,被告が,①原告から本件文書1及び2を持ち出したこと,②本件文書1及び2を使用して本件各申請を行ったこと,③本件文書3を使用して本件製造をしたことが本件契約に違反し,不正競争(不正競争防止法2条1項4~9号)に当たる旨主張するので,以下,検討する。 ア上記①(本件文書1~3の持ち出し)について証拠(甲11,31,32,36~38。なお,書証の枝番の記載は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,本件文書1~3の標目等はそれぞれ別紙1の1~4,2の1~9及び3の1~3に各記載のとおりであり,いずれも本件契約の下で本件事業を行うため,すなわち,原告が有するポイントストリップフェリチン500等の体外診断用医薬品の製造業及び製造販売業の許可に基づき,原告が上記医薬品の製造並びにそれに付帯する申請,管理及び諸手続を担当し,被告が総販売元としてその販売を担当するため(本件契約2条2項参照)に必要な書類として作成されたものであること,本件文書2は平成25年1月~5月の間に原告の従業員から被告の従業員宛に電子メールで送信されたことが認められ,本件文書1及び3についてもその前後に原告から被告に交付されたものと推認される。そうすると,被告は,本件事業の遂行過程で本件文書1~3を入手したとみるべきものであって,被告による違法な持ち出し行為があったと認めるこ- 6 -とはできない。 イ上記②(本件文書1及び2の使用)について原告は被告が本件文書1及び2を使用して本件各申請を行ったと主張するが,そのような事実をうかがわ 為があったと認めるこ- 6 -とはできない。 イ上記②(本件文書1及び2の使用)について原告は被告が本件文書1及び2を使用して本件各申請を行ったと主張するが,そのような事実をうかがわせる証拠はない。 かえって,証拠(甲26,27,53~55,乙6,9)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告は,本件契約を締結して本件事業を遂行する一方,平成24年11月6日に業務提携,資本提携等の企業提携の可能性を検討する旨の覚書を取り交わし,平成25年6月頃まで同覚書に沿って協議を続けたこと,原告が企業提携に消極的な姿勢を示したため,被告は,協議を打ち切るとともに,本件契約を期間満了により終了させた上,自ら医薬品の製造業及び製造販売業の許可を得て,被告の事業所において体外診断用医薬品の製造を行うとの方針を採ったこと,被告は,同許可を得るために同年12月以降本件各申請を行ったものであるが,申請書類を作成するに当たっては,東京都や大阪府が作成して公開しているサンプルの書類を参考にしたこと,被告が本件各申請に用いたものであるとして本件の弁論準備手続期日の席で原告に開示した書類は,原告が医薬品製造業等の許可申請をした際の書類とは内容が異なっていたことが認められる。 上記事実関係及び前記アに認定したところによれば,本件文書1及び2は原告の事業所におけるポイントストリップフェリチン500の製造等に係る書類であるのに対し,本件各申請は被告がその事業所で医薬品を製造することの許可に関するものであるから,本件文書1及び2をそのまま本件各申請に使用することは困難と考えられる。そして,上記の経過に照らせば,被告は,本件文書1及び2に依拠することなく本件各申請に必要な書類を作成することができたと解することが可能である。 そうすると,被告が本件契約の有効期 難と考えられる。そして,上記の経過に照らせば,被告は,本件文書1及び2に依拠することなく本件各申請に必要な書類を作成することができたと解することが可能である。 そうすると,被告が本件契約の有効期間中に本件各申請を行ったことの当否はさておき,被告がそのために本件文書1及び2を使用したと認めら- 7 -れない以上,被告の行為が本件契約に違反し,又は原告の営業秘密の不正使用等に当たるとする原告の主張を採用することはできない。 ウ上記③(本件文書3の使用)について証拠(甲11,36~38)及び弁論の全趣旨によれば,本件文書3は本件契約の下で原告が製造し,被告が販売するとされていたポイントストリップフェリチン500の製造手順書等であるところ,被告は,前記前提のとおり,本件契約が平成26年8月末日をもって終了した後の同年12月に上記医薬品と同種の体外診断用医薬品の製造販売の届出をしたことが認められる一方,被告が上記届出又は本件製造をするに当たり本件文書3を使用したことをうかがわせる証拠はない。これに対し,原告は,被告の川崎事業所における実験のみでは製品の安定性データを採るにはその期間が十分でないから,本件製造には本件文書3が使用されたなどと主張するが,イのとおり,被告の川崎事業所の開設から被告による体外診断用医薬品についての製造販売の届出まで約10か月の期間があり,この期間がデータの採取にとって不十分であったことを裏付ける証拠はないから,原告の上記主張を採用することはできない。 原告の損害賠償請求及び本件文書1及び2の返還等の請求は理由がない。 (本件文書3の所有権の帰属)について原告は,本件文書3の所有権を有すると主張して,被告に対しその返還等を求める。 そこで判断するに,本件文書3は本件契約に基づいて 請求は理由がない。 (本件文書3の所有権の帰属)について原告は,本件文書3の所有権を有すると主張して,被告に対しその返還等を求める。 そこで判断するに,本件文書3は本件契約に基づいて被告の従業員が原告の事業所において関与した実験のデータや製造の方法が記載されたポイントストリップフェリチン500等に関する製造手順書ないし製品標準書であり,本件契約の下で上記医薬品を原告が製造し,被告が販売するために必要な書類であるところ(甲36~38,弁論の全趣旨),本件契約上(甲1- 8 -1),実験データや製造ノウハウが原告のみに帰属する旨の約定はなく,かえって,特許,実用新案登録等を受ける権利及びこれらに基づき取得する特許権等は原告と被告の共有とされていること(8条1項)に照らすと,実験データや製造ノウハウが原告のみに帰属するとは考え難い。また,本件契約は本件事業に関して原告が被告に対しコンサルタント,ノウハウの提供等の業務を委託したものであり(甲11),本件契約による成果物が原告に帰属する請負契約とみることもできない。したがって,これら実験データ等ないしこれが記載された本件文書3の所有権が原告に帰属するとは認められない。 以上によれば,原告が本件文書3の所有権を有することを前提とする本件文書3の返還請求及び本件文書3を使用した製品の製造販売の禁止請求は理由がない。 3 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川 浩 二 裁判官清野正彦 - 9 -裁判官中嶋邦人 谷川浩二 裁判官清野正彦 裁判官中嶋邦人

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る