平成26(わ)48 詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
平成29年5月30日 宮崎地方裁判所
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判決文本文38,688 文字)

- 1 -主文被告人Aを懲役3年に,被告人Bを懲役1年6か月に処する。 この裁判確定の日から,被告人Aに対し5年間,被告人Bに対し3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 被告人Cは無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,宮崎県都城市a町b番地cに本店を置く甲株式会社の取締役社長であった者,被告人Bは,同市d町e番地に本店を置く株式会社乙の社員であった者であるが,被告人両名は,乙の常務取締役であったDと共謀の上,平成23年2月2日付けで乙等が所属する丁組合が都城市と締結した新燃岳降灰収集運搬業務委託契約に関し,同組合の降灰収集運搬量を水増しした実績報告書を都城市に提出して受託代金名下に金員を詐取しようと考え,第1 平成23年3月10日頃,宮崎県都城市d町e番地所在の当時の同組合の事務所において,D及び被告人Bが,同年2月分の受託代金支払請求に際し,別表1記載のとおり,同年2月3日から同月28日までの間における同組合の降灰収集運搬量について,合計905.37トン水増しした内容虚偽の実績報告書を作成するなどし,その頃,同市f町g番地所在の都城市環境森林部戊課において,同課職員に上記実績報告書を提出し,同市長らをして,同報告書の記載内容が真正なものと誤信させて,同組合に対する同年2月分の受託代金の支払を決定させ,よって,同年4月1日,同市hi丁目j号k番所在の当時の株式会社銀行⒝支店に開設された組合名義の普通預金口座に1億9329万2171円(うち水増し分1001万676円。なお,被告人Aについては,別表1の番号2に係る株式会社乙(丙)分の水増しの認識があったにとどまる。)を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。 第2 平成23年4月5日頃,第1記載の当時の組合の事務所において,D及び被 - 2 る株式会社乙(丙)分の水増しの認識があったにとどまる。)を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。 第2 平成23年4月5日頃,第1記載の当時の組合の事務所において,D及び被 - 2 -告人Bが,同年3月分の受託代金支払請求に際し,別表2記載のとおり,同年3月1日から同月18日までの間における同組合の降灰収集運搬量について,840.4トン水増しした内容虚偽の実績報告書を作成するなどし,その頃,第1記載の都城市環境森林部戊課において,同課職員に上記実績報告書を提出し,同市長らをして,同報告書の記載内容が真正なものと誤信させて,同組合に対する同年3月分の受託代金の支払を決定させ,よって,同年5月2日,第1記載の同組合名義の普通預金口座に1億3903万7694円(うち水増し分929万2302円)を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。 (証拠の標目)略(事実認定の補足説明)第1 本件事案の概要及び争点 1 本件は,平成23年1月下旬に新燃岳が噴火したことに伴い,宮崎県都城市内で一般家庭ごみ等として降灰が大量に排出されるようになったことから,都城市が,同市内で一般産業廃棄物処理業を営む会社が加入する丁組合(以下「組合」という。)に対し委託した降灰収集運搬業務の受託代金に関する詐欺事件であって,同組合に所属する会社である甲株式会社(以下「甲」という。)取締役社長であった被告人A,同社社員であった被告人C(なお,被告人Cは,平成23年3月分の詐取についてのみ起訴された。)及び株式会社乙(以下「乙」という。)社員で組合の降灰収集運搬業務に関する事務担当者であった被告人Bが,同社常務取締役で組合の降灰収集運搬業務に関する責任者であったDと共謀の上,別表3及び4のとおり,平成23年2月分につき乙,甲,丙の降灰収集運 降灰収集運搬業務に関する事務担当者であった被告人Bが,同社常務取締役で組合の降灰収集運搬業務に関する責任者であったDと共謀の上,別表3及び4のとおり,平成23年2月分につき乙,甲,丙の降灰収集運搬量を合計4145.02トン,4583万1486円分,同年3月分につき甲,丙の降灰収集運搬量を合計2561.89トン,2832万6817円分をそれぞれ水増しした内容虚偽の実績報告書を作成提出して,都城市から,降灰収集運搬業務の受託代金名下に現金を詐取したとして起訴されたもので - 3 -ある。 2 本件各公訴事実につき,被告人3名とその弁護人らは,平成23年2月分及び同年3月分のいずれについても,乙分及び丙分の降灰収集運搬量として報告された数量に水増しがあったことは争わないものの,①甲分の降灰収集運搬量については,検察官が主張する実数値は正確ではなく,実績報告書に記載された降灰収集運搬量に水増しはなかった旨を主張するとともに,②被告人3名は,平成23年2月分及び同年3月分のいずれについても,水増し請求がされているとは知らなかったから,詐欺の故意はなく,共謀もしていない,③都城市は,降灰の収集運搬業務において実際の収集運搬量を厳密かつ正確に把握することは不可能であるとの認識を有しており,実際の降灰収集運搬量が実績報告書で報告された降灰収集運搬量に多少及ばなかったとしても,都城市に錯誤があったとはいえないなどと主張している。 また,被告人Bの弁護人は,④仮に水増しがあったとしても,被告人Bには詐取した受託代金につき不法領得の意思がなかったとも主張している。 したがって,本件争点は,被告人3名に関し,①甲の降灰収集運搬量の水増しの有無(検察官主張の実数値の正確性),②詐欺の故意及び共謀の有無,③都城市の錯誤の有無の点であり,さらに,被告人B ている。 したがって,本件争点は,被告人3名に関し,①甲の降灰収集運搬量の水増しの有無(検察官主張の実数値の正確性),②詐欺の故意及び共謀の有無,③都城市の錯誤の有無の点であり,さらに,被告人Bに関しては,④不法領得の意思の有無の点である。 3 当裁判所は,①平成23年2月分及び同年3月分のいずれについても,甲の降灰収集運搬量の実数値として検察官が主張した数量は正確なものではない疑いがあるから,水増し請求がされたと認定することはできない,他方で,実数値に争いがない乙分及び丙分については,②被告人Aは丙分について,被告人Bは,乙分及び丙分の双方についてそれぞれ水増しの認識があったと認められるから,被告人Aと被告人Bには詐欺の故意があり,共謀もあった,また,③都城市が水増し請求を容認していたなどとも考えられず,同市が錯誤に陥っていたことも明らかである,さらに,④被告人Bの不法領得の意思も十分認め - 4 -られるから,被告人Aと被告人Bには,判示のとおり詐欺罪が成立すると判断した。 他方で,当裁判所は,被告人Cについては,上記のとおり甲分に関する水増し請求があったと認定できない上,同人が乙分及び丙分の水増しに関与していたとは認められないから,無罪となると判断した。 そこで,以下,上記のように判断した理由を補足して説明する。 第2 争点①(甲の降灰収集運搬量の実数値)について 1 関係証拠によれば,甲における降灰収集運搬業務に関し,次の事実が認められる。 (1) 甲が降灰収集運搬業務を開始した経緯ア平成23年1月19日に新燃岳が噴火し,都城市内に大量の灰が降ったため,ごみ集積所や公民館等に降灰が大量に集積され,市民から都城市に対し降灰を早急に除去するように要望が寄せられるようになった。 都城市では,当初,環境森林部戊課 火し,都城市内に大量の灰が降ったため,ごみ集積所や公民館等に降灰が大量に集積され,市民から都城市に対し降灰を早急に除去するように要望が寄せられるようになった。 都城市では,当初,環境森林部戊課(以下「戊課」という。)の現業職員らが,ごみ集積所等での降灰の収集運搬業務に当たったものの,大量の降灰を早期に収集運搬できる見込みが立たなかったため,平成23年1月下旬頃,一般廃棄物の収集運搬を委託していた乙と株式会社己(以下「己」という。)に対し,降灰の収集運搬業務を委託した。 イ乙は,平成23年1月31日から,己は,同年2月2日頃から,それぞれ降灰収集運搬業務を開始した。 その後,都城市は,より早期に降灰を収集するために,乙や己のほか甲も所属する組合に対し降灰収集運搬業務を委託することとしたため,甲は,平成23年2月9日から都城市内の乙の担当地域の一部を引き継いで降灰収集運搬業務を行うことになった。 (2) 降灰収集運搬業務に関する業務委託契約の内容組合所属の会社による作業が開始された当初,都城市と組合との間では降 - 5 -灰収集運搬業務に関する報酬の算定方法が定まっていなかった。そのため,平成23年2月下旬頃に,都城市と組合との間で新燃岳降灰収集運搬業務委託契約(以下「本件契約」という。)が締結され,報酬については降灰収集運搬量1トン当たり1万1057円と定められた。 本件契約では,組合が収集運搬した降灰の重量の算定方法については特に規定されていなかったが,トラックスケールを用いた降灰の収集運搬量の測定を行うと降灰収集運搬業務の迅速な実施に支障を来すおそれがあることから,都城市では,組合に対して,目測でおおよその容積(立米数)を把握した上で,その数値に1.4の係数を乗じたものを重量として扱うことも容認していた。 務の迅速な実施に支障を来すおそれがあることから,都城市では,組合に対して,目測でおおよその容積(立米数)を把握した上で,その数値に1.4の係数を乗じたものを重量として扱うことも容認していた。 (3) 甲による降灰収集運搬業務の状況等ア甲においては,施設管理課に所属する職員や本来一般廃棄物の収集運搬業務に従事していた職員らを降灰収集運搬業務に専従させるなどしていたほか,その他の職員についても,通常業務が終了した後に,専従の職員らの応援として合流させるなどして降灰収集運搬業務に従事させていた。 産業廃棄物の収集運搬等に従事していた運行部所属のトラック運転手らも,遠距離への産業廃棄物の運搬等を終えた後に,被告人Aから指示を受けた現場で降灰の収集運搬業務を応援することがあった。 そして,降灰収集運搬業務の実施に当たっては,同社の営業係長であった被告人Cが,甲の担当区域内のゴミ集積所等を回って降灰の集積状況を把握した上で,翌日の作業工程を検討し,当日朝から降灰収集運搬業務に従事する職員らによる朝礼の際に,班分けや作業場所の指示等を行っていた。しかし,実際には,甲の職員らは,当日の現場の状況に応じて臨機応変に作業場所等を変えており,作業の役割分担も,タイヤショベルを用いたトラックへの降灰の積み込み作業を行う者を除いては決まっておらず,トラックによる運搬は大型免許を持っていて手が空いている者が行って - 6 -いた。また,甲では,日没後の時間帯や日曜日にも降灰収集運搬業務を行うことがあった。 イ甲では,平成23年2月16日頃から,都城市が用意した処分場が一杯になって搬入ができなくなったため,甲の処分場内に降灰を搬入して仮置きするようになった。この間,甲では,同社敷地内の職員駐車場に降灰を搬入して集積した時期もあった。 甲の 市が用意した処分場が一杯になって搬入ができなくなったため,甲の処分場内に降灰を搬入して仮置きするようになった。この間,甲では,同社敷地内の職員駐車場に降灰を搬入して集積した時期もあった。 甲の総務課等の職員らは,平成23年2月16日以降,同社処分場内に降灰を搬入するトラックにつき,同社事務所前に設置されたトラックスケールを操作して降灰の収集運搬量を測定していた。同課職員であったEらは,測定結果を取りまとめて,トラックの種別,運転手,降灰の重量等を記載した一覧表(以下「手書きの一覧表」という。)を作成していた。また,甲常務取締役Fは,Eらが作成した手書きの一覧表に記載された計量数値を転記するなどして,新燃岳火山灰収集運搬計量状況調を作成していた。 なお,同状況調に記録された平成23年2月17日から同月28日分の甲の降灰収集運搬量は,合計1337.85トン,手書きの一覧表に記載された同年3月1日から同月7日までの甲における降灰収集運搬量は,合計277.81トンであった。 ウ甲では,平成23年3月8日頃から,都城市l町内の処分場に収集した降灰を搬入するようになったところ,同処分場にはトラックスケールが設置されていなかったことから,同日頃以降は,トラックの計量は行われなくなった。 被告人Cは,トラック運転手から降灰の収集運搬状況についての報告を受けて,運転手や使用トラックの種別ごとの収集運搬回数等を記載した新燃岳火山灰処理業務日報等を作成していたところ,平成23年3月8日以降は,被告人Cが作成した業務日報に基づき,被告人Bに対する降灰収集 - 7 -運搬量の報告が行われていた。なお,被告人Cが作成した業務日報に記載された同月8日から同月31日までの甲における降灰収集運搬量は,2012.5トン(検察官が計算間違いによると思われ - 7 -運搬量の報告が行われていた。なお,被告人Cが作成した業務日報に記載された同月8日から同月31日までの甲における降灰収集運搬量は,2012.5トン(検察官が計算間違いによると思われる誤記を正したもの)である。 2 当事者の主張及び証拠構造(1) 甲の降灰収集運搬量の実数値につき,検察官は,①平成23年2月17日から同月28日までの間が,新燃岳火山灰収集運搬計量状況調に記載された計量数値である合計1337.85トン,②同年3月1日から同月7日までの間が,Eらが作成した手書きの一覧表に記載された計量数値である合計277.81トン,③同月8日から同月31日までの間が,被告人Cが作成した業務日報記載の立米数に1.4を乗じた数値である合計2012.5トン(検察官が計算間違いによると思われる誤記を正したもの)であると主張するのに対し,弁護人らは,①ないし③の数値のいずれも計量漏れや報告漏れがあるなどとしてその正確性を争っている。 (2) ところで,①及び②の実数値は,甲が収集した降灰を自社の処分場に仮置きしていた時期に,Eら甲の総務課等の職員が,同社処分場内に搬入されたトラックに積載された降灰につきトラックスケールを用いて計量した数値であるところ,Eは,公判廷において,「降灰を収集したすべてのトラックをトラックスケールで計測しており,計量漏れはなかった。」旨を証言している。 また,③の実数値は,被告人Cが降灰を運搬したトラック運転手らから報告を受けた結果に基づき算定したものであるところ,これについても,被告人Cは,捜査段階において,降灰を運搬したトラックの運転手からは漏れなく降灰収集運搬量の報告を受けていた旨を供述している。 したがって,検察官の主張する甲の降灰収集運搬量の実数値の認定の可否は,E証言及び被告人Cの検察官調 降灰を運搬したトラックの運転手からは漏れなく降灰収集運搬量の報告を受けていた旨を供述している。 したがって,検察官の主張する甲の降灰収集運搬量の実数値の認定の可否は,E証言及び被告人Cの検察官調書が信用できるかにかかっている。 3 そこで,まずEの証言の信用性を検討すると,次の事情を指摘できる。 - 8 -(1) Eは,計量漏れがなかったと考える理由については,「計量した数量が,(受託代金の)請求書のもともとのデータになると思っていたので,しっかりやらないといけないというのもあった。漏れがないように,朝のグループ分けで把握していたドライバーに確認したりしてもいたし,被告人Cともしょっちゅう話をしていた。」,「計量をしなければならないということは運転手らも分かっていたと思う。例えば,事務所の人間の手がふさがっていたときには,トラックが計量台のところで待っていたので,抜けることはないと思う。」などと証言している。 なるほど,Eが上記のような点につきあえて虚偽の証言をする動機はない上,甲の他の総務課等の職員らも,それぞれトラックスケールに車両を載せる際に表示される数値をそのまま記載しており,記載された数値は正確なものであると供述していることからも,その信用性は一定程度裏付けられているものといってよい。 しかし,認定事実のとおり,甲においては,降灰収集運搬業務に専従していた職員らのほかにも,通常業務が終了した後に応援の形で合流して作業を行う職員が少なからずおり,そのような応援の職員らがトラックの運転を担当して降灰を運搬して甲の処分場に運び込んでいたこともあったと認められるところ,Eは,「朝,グループ分けをして現場に行った人以外の職員が,後で応援に行ってトラックを運転して甲に降灰を運搬してきていたことは知らなかった。」と証言し 運び込んでいたこともあったと認められるところ,Eは,「朝,グループ分けをして現場に行った人以外の職員が,後で応援に行ってトラックを運転して甲に降灰を運搬してきていたことは知らなかった。」と証言している。そして,Eの証言を前提にしても,甲では,降灰の計量に専従している職員がいたわけではなく,事務所内で手が空いている人がトラックスケールの操作をしており,計量を行うトラックが処分場内に入ってきたかどうかも,事務所内から,トラックの音を聞いたり,トラックが見えたりして気づくにすぎないというのであるから,仮に降灰を運搬するトラック運転手らが計量の必要性を認識していないとすれば,Eらに気づかれないままに降灰を運搬するトラックが甲の処分場内に入ることがあった - 9 -としてもおかしくはないといえる。また,認定事実のとおり,甲では,日没後の時間や日曜日にも降灰収集運搬業務を行うことがあったと認められるところ,これについても,Eは,「日曜日も降灰収集の作業を行っていた。」と証言しつつも,その際の計量がされていない理由については何ら説明をしていない。また,日没後の計量についても,「(Eは,)遅くとも午後9時頃には帰宅していた。他の職員らが終礼を行う前に帰宅することがあった。」などと証言しているから,その証言内容からは,Eらが帰宅した後の時間帯に降灰を搬入したトラックが相当数あったとしてもおかしくはないといえ,そのようなトラックの降灰収集運搬量が計量できていなかった疑いが否定できないといえる(なお,後記のとおり応援の形で降灰収集運搬業務に従事していたGは,日没後に降灰を積んで帰ったところ,事務所の電気が消えて帰っていたのが印象に残っていると証言している。)。さらに,甲では,運搬してきた降灰を職員用の駐車場に搬入,集積した時期もあったというのである ,日没後に降灰を積んで帰ったところ,事務所の電気が消えて帰っていたのが印象に残っていると証言している。)。さらに,甲では,運搬してきた降灰を職員用の駐車場に搬入,集積した時期もあったというのであるが,これについても,Eはそのような集積状況は知らなかったと証言している。 このように,Eは,計量漏れはなかった旨を証言しているものの,その証言内容を子細に見れば,甲における降灰収集運搬業務の状況を十分に把握した上で証言しているわけではないとうかがわれるのであって,Eは自ら把握している限りではすべてのトラックを計量していたと証言しているにすぎないと見るのが相当である。そうだとすれば,そもそもEの証言は,計量漏れが一切なかったと積極的に断定できるだけの内容を備えたものではないといわざるを得ない。 (2) また,降灰の収集運搬業務に携わっていた甲の職員らは,公判廷において,甲の処分場内に降灰を運搬した際に,計量をしていないトラックがあったことをおおむね一致して証言している。 その具体的な証言内容を見ても,HやI,J,K,Lは,時期は異なるものの,ほぼ専従で降灰の収集運搬業務を行っていた者であるが,同人らは, - 10 -公判廷において,「(自分は)計量をするようにという指示を受けてからトラックスケールに載るようにしていたが,運転手の中にはトラックスケールに載っていない者がいると聞いていた。」,「誰からの指示かははっきりとは覚えていないが,載ってくださいという電話連絡があったときは載っていたし,途中で載らなくていいと連絡があったときは載っていない。」,「ほとんど計量していたが,運転手間でもう載らんでいいという合図を受けたときは載っていなかった。」,「(計量しなければならないことを)最初の頃は知らずに運び込んでいたが,前のトラックが計量してい ,「ほとんど計量していたが,運転手間でもう載らんでいいという合図を受けたときは載っていなかった。」,「(計量しなければならないことを)最初の頃は知らずに運び込んでいたが,前のトラックが計量していたのを見て何回か計量をした。すぐにA社長から計量はせんでいいと言われたので,計量をせずに運び込んでいた。」などと計量漏れがあったことを強く疑わせる内容の証言をしている。 また,Mは,主にタイヤショベルを操作してトラックへの降灰の積み込み作業を行っていた者であるところ,同人は,公判廷において,「トラックの運転をした際に計量をすべきかどうかについての指示が明確にはなかったため,取りあえず事務所に行けば何か指示があるだろうと思ったが,事務所に行っても誰も出てこず,計量する様子もなかったので,そのまま荷下ろしして出て行っていた。」旨を証言しているし,一般廃棄物の収集運搬の作業が終わった後に応援の形で降灰収集運搬業務に従事していたGも,「周りがトラックスケールに載っているらしいということを感じて一、二回は載ったが,その後は載っていない。」と証言している。さらに,通常業務が終了後に応援で収集運搬作業を行っていた運行部の職員であるNやOは,公判廷において,「計量器のところを通過しただけで計量をしたことはない。」,「計量をするかどうかの指示は又聞きのような感じで伝わってきていた。一時は計量をしなければならないという指示が伝わってきたが,すぐに載らなくていいと言われて計量しなくなった。」などと証言している。 このような甲の職員らの証言内容は,甲においては,降灰の収集運搬業務に従事していた職員らに対する計量を行うかどうかの指示が徹底されておら - 11 -ず,専従で作業に従事していた職員らの中にはほぼ毎回計量をしていた者もいたとはいえ,応援で作業に入って 運搬業務に従事していた職員らに対する計量を行うかどうかの指示が徹底されておら - 11 -ず,専従で作業に従事していた職員らの中にはほぼ毎回計量をしていた者もいたとはいえ,応援で作業に入っていた相当数のトラック運転手らが計量を行っていない状態にあったことをいうものと理解できる。なるほど,このような甲の職員らの証言については,検察官が指摘するように,Nが一部計量をした記録が残っているのに一切計量をしていない旨を証言していることなどに照らして,社長である被告人Aをかばうために事実を誇張するなどして証言している可能性は否定できない。しかし,上記のとおり,相当量の計量漏れがあったという限りでは,実際に降灰の収集運搬業務に従事して状況を把握していた職員らがほぼ一致して証言しており,検察官の反対尋問によってもほとんど有効な弾劾がされているとはいい難いことから考えても,全くの虚偽のものと断定することはできないというべきである。 (3) むしろ,甲の営業課長であるPは,このように職員らに対する指示が徹底していなかった状況について,「甲の敷地内に仮置きを始めた最初の二,三日は計量をしていなかったようであるが,トラック運転手のHとEが事務所前のトラックスケールのところで計量するしないの口論となり,Eが社長に確認したところ,計量するようにとの指示があったようで,一時期は計量することになったようだ。しかし,その指示も徹底されておらず,そのまま計量をしていない車両があったため,それを知った社長が,仮置きが始まって二,三日後にもう計量しなくてよいと言ったと聞いている。その後もEらが計量結果を記録しているのを知ったため,Eに対し無駄なことをするなと注意をした。」などと説明しているところ,このようなPの証言については,甲の営業課長として降灰収集運搬業務に携 いる。その後もEらが計量結果を記録しているのを知ったため,Eに対し無駄なことをするなと注意をした。」などと説明しているところ,このようなPの証言については,甲の営業課長として降灰収集運搬業務に携わった立場から証言したものである上,Eも,Pから計量をしなくてもよいと注意された旨を認める証言をしていることにも裏付けられており,一概には排斥できない信用性を備えたものということができる。 (4) これに加えて,認定事実のとおり,降灰の収集運搬業務は,新燃岳の噴火 - 12 -に伴い突発的に生じた業務であり,都城市においては市民から早期に降灰の除去を求める要望が寄せられるようになったため,降灰の早期の除去が重要な課題となっていたことから,平成23年2月に都城市が組合に対し降灰収集運搬業務を依頼した当初は,都城市と組合の間で報酬の算定方法が定まっておらず,また,同月下旬に本件契約が締結され,同契約において降灰収集運搬量1トン当たりの報酬額が定められた後も,都城市においては,組合に対して,一定の時間と手間がかかるトラックスケールを用いて重量を計量するという作業を行わなくても,目分量で容積を把握した数値に1.4を乗じて算定した重量を用いて受託代金を請求することも許容していたことが認められる。そうだとすれば,被告人Aにおいて,甲のトラック運転手らに重量の算定をしなくてもよいと指示をし,甲の職員らも,トラックスケールで重量を量る作業をする必要性の認識を欠いていたとしても不自然ではないといえる(なお,Hは,「甲の業務は,産業廃棄物の最終処分場であり,処分場に埋めれば量を把握しないと料金が発生しないが,(降灰収集運搬業務は)荷物を運ぶだけなので頭数と機械代という感覚であり,運搬量で代金が変わるとは思っていなかった。」旨を証言しているところ,このよう に埋めれば量を把握しないと料金が発生しないが,(降灰収集運搬業務は)荷物を運ぶだけなので頭数と機械代という感覚であり,運搬量で代金が変わるとは思っていなかった。」旨を証言しているところ,このような説明はそれなりに了解可能なものといってよく,Hと同様の認識であった甲の職員が相当数いたとしてもおかしくはないと考えられる。)。 (5) これらの事情に照らすと,甲の職員らの上記証言は一概に排斥できない信用性を備えているというべきであるから,降灰収集運搬業務に従事していたトラック運転手の中に重量を計量していなかった者がおり,そのために相当量の計量漏れが生じていた疑いが否定できないというべきである。 4 また,被告人Cの検察官調書の信用性については,次の事情を指摘できる。 (1) 被告人Cは,降灰の収集運搬業務に当たっていたトラック運転手らから口頭で報告を受けたり,渡されたメモを集計したりして業務日報を作成していた状況につき,「私は,前日に現場を回って,どの運転手にどの車でどこを収 - 13 -集させるかを決めていましたので,運転手から報告を受けた時点で,その運転手が10トン車の運転手なのか,4トン車の運転手なのかは当然分かっていまし(た。)」,「甲では,朝夕必ず運転手が事務所に上がってきて,朝は朝礼,夕方は運転日報と作業日報を持ってくるという決まりがありました。このため,私は,運転手が夕方に上がってきた際,必ず,運転手からその日にどこどこに何回行った,量はだいたいこんなだったという報告を受けていましたので,運転手からは,もれなく収集した灰の量について報告を受けていました。」などと供述して,報告漏れがなかったと考えられる旨を供述している。 (2) この点,甲で降灰の収集運搬業務に従事していた職員らの証言を見ると,降灰の収集運搬業務にほ ついて報告を受けていました。」などと供述して,報告漏れがなかったと考えられる旨を供述している。 (2) この点,甲で降灰の収集運搬業務に従事していた職員らの証言を見ると,降灰の収集運搬業務にほぼ専従していたHのほか,応援の形で降灰収集運搬業務に従事していた運行部のOらは,公判廷において,「被告人Cに対し,(トラックの)箱に対して一杯とか,7割方とか8割方とかを報告していた。」,「現場にいた人に伝言を頼んで,被告人Cに台数を伝えてもらうようにしていた。」などと被告人Cにトラックの台数を報告していた旨を証言している。 他方で,降灰収集運搬業務にほぼ専従していた職員の中でも,IやJは,「被告人Cに対しどこどこの現場が終わったという報告はしていたが,何トントラックに乗って何回運んだという報告をした記憶はない。」,「運んだ回数の報告は,タイヤショベルで作業をする人など誰かがしてくれていると思っていた。」などと証言しているし,また,通常業務を終えた後などに応援の形で降灰収集運搬業務に従事していたG,N,M,Kは,「特に被告人Cに対し報告をしていなかった。」,「被告人Cが見回りをしていたので,運んだ量は分かっていると思っていた。」などとトラックによる運搬回数の報告を十分に行っていなかった旨を証言している。 このような甲の職員らの証言については,前記のとおり,被告人Aをかばって事実関係を誇張するなどして証言している可能性は否定できないとはい - 14 -え,相当量の報告漏れがあったという限度では,実際に降灰の収集運搬業務に従事してその状況を把握していた職員らがおおむね一致して証言したものであって,検察官の反対尋問等によってもほとんど揺らいでいないということができるから,一概にその信用性は否定できないといえる。 (3) なるほど,被告人Cは, た職員らがおおむね一致して証言したものであって,検察官の反対尋問等によってもほとんど揺らいでいないということができるから,一概にその信用性は否定できないといえる。 (3) なるほど,被告人Cは,検察官調書で述べているように,降灰収集運搬業務に専従していた職員を始め朝礼に出席していた職員らに対しては,自らが検討した班分けや作業場所を指示して作業を行わせていたのであるから,それらの職員らが運行するトラックによる降灰収集運搬状況をある程度把握できていたものと考えられる。しかし,認定事実のとおり,実際には,甲では,当日の現場の状況に応じて臨機応変に作業場所を変えるなどしていたというのであるし,上記のとおり甲においては,通常業務の終了後に降灰の収集運搬業務に応援として参加していた職員らが相当数おり,特に産業廃棄物の収集運搬業務に当たっていた運行部のトラック運転手らは,通常業務の終了後に,被告人Aなどから直接電話を受けてどの現場に行くかの指示を受けていたというのであるから,被告人Cがそのような降灰収集運搬の状況をすべて逐一把握できていなかったとしても特に不思議ではないといえる。 実際に,甲の総務課の職員であるLは,通常は被告人Aの乗車する自動車の運転手としての業務に従事しており,降灰収集運搬業務についてはトラックによる運搬作業も含めて全般的に関与していた者であるところ,公判廷において,トラック運転手らの被告人Cに対する報告に漏れがあったことが判明した状況について,「平成23年3月24日頃,(自動車を運転して)被告人Aを送っていくときに,被告人Aから,「現場はどうだ。」と聞かれたので,「ばんばん運んでいます。」と答えたところ,「報告しとるのか。」と聞かれ,「報告していません。」と話すと,被告人Aの機嫌が悪くなった。被告人Aは,翌朝の朝礼の前 ,「現場はどうだ。」と聞かれたので,「ばんばん運んでいます。」と答えたところ,「報告しとるのか。」と聞かれ,「報告していません。」と話すと,被告人Aの機嫌が悪くなった。被告人Aは,翌朝の朝礼の前に,事務所の中か事務所の近くで,被告人Cに対し,「お前がしっかり管理せんとみんなの仕事が無駄になる。」と報告漏れを怒っていた。 - 15 -それを見て,(Lも)手帳で運搬回数を記録して報告するようになった。」旨を証言している。 このようなLの証言内容は,相当具体的なものということができるから,全くの作り話をしたものとは直ちには考え難い。なるほど,Lは,検察官が指摘するとおり,同人が被告人Cに運搬回数を報告するようになった後も,運搬した量について報告をしていなかったと証言している点で,被告人Cが作成した業務日報に詳細な収集運搬量が記載されていることとそぐわない部分があることは否定できないものの,上記のとおり,被告人Cが被告人Aから取りまとめが上手くいっていないと叱られたという事実経過については,L以外の複数の甲の職員らが同様の証言をしていることに裏付けられているから,一概に排斥できない信用性を備えている。そして,Lが証言するような経緯があったことは,被告人Cが降灰収集運搬に当たったトラックの運行台数をすべて把握することができておらず,また,降灰を収集運搬したトラック運転手らも被告人Cに運搬した台数などを報告する必要性を認識していなかった可能性があることを具体的に示しているといえる。このような事情は,被告人Cが検察官調書において報告漏れがなかったと供述している点の信用性を大きく減殺するものといってよい。 (4) なお,検察官は,Iは,上記のように,被告人Aが被告人Cに対し,「チャラになっているぞ。」,「運転手が運搬したことが無駄になってい 供述している点の信用性を大きく減殺するものといってよい。 (4) なお,検察官は,Iは,上記のように,被告人Aが被告人Cに対し,「チャラになっているぞ。」,「運転手が運搬したことが無駄になっているぞ。」などと怒っているのを聞いたと証言しているところ,そのようなことを聞いても,被告人Cに運行回数を報告しようとはせず,周囲にも計量に関する指示を確認することはしなかったというのは不自然であるなどとも主張する。しかし,上記のとおり,Iは,運行回数までは報告していなかったにせよ,被告人Cに現場が終わったことは報告していたというのであるし,Lの証言によれば,被告人Cが被告人Aに怒られていた時期は平成23年3月24日頃のことであったと認められるところ,その頃には甲ではl町の処分場内に降灰を運搬 - 16 -しており,計量は行われていなかったから,検察官の主張は前提を欠くものである。 (5) 以上によれば,被告人Cの検察官調書は信用できず,被告人Cの業務日報については相当の報告漏れがあった可能性が否定できないといえる。 (なお,被告人Cは,公判廷において,降灰の収集はボランティアであり,委託料のことは全く考えておらず,被告人Aに報告漏れがあると怒られた後に作成したワードの報告書に記載された数値が正確な降灰収集運搬量であるなどと弁解しているが,被告人Cは,甲の営業係長であり,組合に対する降灰収集運搬量の報告を業務としていたのに,その結果が都城市からの報酬の算定の根拠になることを認識していなかったとは到底考え難い上,上記ワードの報告書も,被告人Aに報告漏れを指摘された後に,被告人Cがさしたる根拠もなく数値を増加させる修正をしたものにすぎないから,同報告書に記載された数値が正確なものと考える根拠もないといえる。ただし,被告人Cの弁解が信用 に報告漏れを指摘された後に,被告人Cがさしたる根拠もなく数値を増加させる修正をしたものにすぎないから,同報告書に記載された数値が正確なものと考える根拠もないといえる。ただし,被告人Cの弁解が信用できないとしても,前記のとおり被告人Cの検察官調書の信用性が低く,報告漏れがあった可能性があるとの認定は左右されるものではないといえる。)。 5 以上のとおり,Fが作成した新燃岳火山灰収集運搬計量状況調やEらが作成した手書きの一覧表,被告人Cが作成した業務日報といった書面には計量漏れや報告漏れがあった可能性が否定できないから,これらの書面に記載された降灰収集運搬量に基づき検察官が主張する実数値が,甲の真実の降灰収集運搬量であったとの認定はできないというべきである。 6 ところで,検察官の主張する実数値と都城市に対する実績報告書に記載された重量を比較すると,平成23年2月分につき1337.85トンから4577.5トンと3倍以上に増加し,同年3月分についても2290.31トンから4011.8トンと大幅に増加している。また,降灰の収集運搬量を日ごとに見ても,例えば,同年2月分については,多い日では10倍を超える数値に - 17 -増加していることも認められる。このような実績報告書の記載内容からすれば,甲の降灰収集運搬量が正確に認定できないとしても,何らかの水増しがあった疑いは濃厚といわざるを得ない。この点,本件においては,都城市に提出された実績報告書には組合に所属する各社ごとに降灰収集運搬量が記載されていて,都城市としても,各社ごとの降灰収集運搬量が適正に記載されていることを前提に代金の支払を決定したものと考えられるから,詐欺罪の成立に関しては組合に所属する各社ごとに水増しの有無を検討するのが相当であり,当事者の主張立証も,そのような理解を 適正に記載されていることを前提に代金の支払を決定したものと考えられるから,詐欺罪の成立に関しては組合に所属する各社ごとに水増しの有無を検討するのが相当であり,当事者の主張立証も,そのような理解を前提として,本来乙とは別に被告人Aの依頼で降灰収集運搬業務を行っていた丙分については乙分と別異に取り扱うことにしたものと考えられる。しかし,他方で,上記のような各社ごとの降灰収集運搬量の水増しがあったと認定できた場合に,その水増し量がどの程度であったかについては,実質的な被害の程度を表す重要な情状事実ではあっても,訴因の特定に必要な事項ではないと解される。そうだとすれば,甲の降灰収集運搬量につき計量漏れ等があることから水増し量を具体的に特定することまではできないにしても,何らかの水増しがあったという限度での概括的な認定ができないかは更に慎重に検討する必要がある(なお,被告人Aの弁護人による降灰収集運搬量の推定については,実験に用いた降灰の状態が適切なものかどうかといった点も定かではない上,不確かな前提に基づき推測を積み重ねて算定されたものといわざるを得ないから,このような報告書があることをもって甲の降灰収集運搬量が実績報告書の数値を超える数量に至っていたと考えることはできない。)。 しかし,甲における降灰の収集運搬業務につき報告漏れがあったと考えられる部分としては,前記のとおり,日曜日や日没後の時間帯に収集運搬された分につき相当量の計量が漏れていると考えられるほか,甲の職員駐車場に一時集積されたことで,計量がされていない分についても相当量に上る可能性がある。 そして,前記のとおり甲の職員らの証言内容によれば,複数のトラック運転手 - 18 -らがトラックスケールによる計量をしておらず,また,被告人Cに対する運行回数の報告もしていなかった 性がある。 そして,前記のとおり甲の職員らの証言内容によれば,複数のトラック運転手 - 18 -らがトラックスケールによる計量をしておらず,また,被告人Cに対する運行回数の報告もしていなかった可能性が否定できないから,日常の降灰収集運搬業務における報告漏れ,計量漏れも相当量に上る可能性が否定できないというべきである。そして,検察官の主張立証の構造が,Eの証言や被告人Cの検察官調書といった供述に基づいて,Eの作成した手書き一覧表や被告人Cが作成した業務日報に報告漏れや計量漏れが一切なかったことを前提としたものになっており,当時の降灰収集運搬業務の状況を踏まえて,何らかの報告漏れ等があり得ることを前提に,その報告漏れがあった量をおおまかにでも推測できるような特段の主張立証はされていないから,本件の証拠関係に基づいて検討する限り,概括的なものであっても甲分につき降灰収集運搬量に水増しがあったと認定することは困難といわざるを得ない。 以上の事情を踏まえると,弁護人らが指摘する都城市が予算措置のために甲に仮置きされた降灰を見積もった量に関するメールの記載の信用性を子細に検討するまでもなく,本件において,甲の降灰収集運搬量として実績報告書に記載して報告された数値が実際に収集運搬されていた可能性が否定できないというべきである。したがって,平成23年2月分及び同年3月分の各実績報告書記載の甲分の降灰収集運搬量の数値が実数値から水増しされたものであると認めるには合理的な疑いを差し挟む余地があるというべきである。 第3 争点②(詐欺の故意及び共謀の有無の点)について 1 当事者の主張被告人Aの弁護人は,都城市に提出された実績報告書に記載された降灰収集運搬量は,Dが独断で調整したものであって,被告人Aは水増しがされた認識はなかったから, )について 1 当事者の主張被告人Aの弁護人は,都城市に提出された実績報告書に記載された降灰収集運搬量は,Dが独断で調整したものであって,被告人Aは水増しがされた認識はなかったから,詐欺の故意も共謀も成立しないと主張している。また,被告人Bの弁護人は,被告人Bは,Dから指示されるままに上記実績報告書に記載された降灰収集運搬量の修正を行っただけで水増しをしている認識はなかったから,被告人Bには詐欺の故意も共謀も成立しないと主張している。さらに, - 19 -被告人Cの弁護人は,被告人Cは,平成23年3月8日から同月31日までの間の甲分の降灰収集運搬量の取りまとめに関与しただけであるから,乙と丙分の降灰収集運搬量の水増しについて詐欺の故意も共謀も成立しない旨主張している。 2 この点,被告人Aや被告人Bの公判供述を含む関係証拠によれば,上記争点に関し,次の事実が認められる。なお,Dの証言内容と被告人Aや被告人Bの供述内容は,実績報告書の修正の経緯に関する重要部分等で大きく食い違っているところ,後述するとおりD証言の信用性は直ちには肯認できないから,以下の認定事実においては,D証言と被告人Aや被告人Bの供述が食い違う部分については,被告人Aや被告人Bが自認する限りで認定することにした。 (1) 乙,丙の降灰収集運搬状況ア前記のとおり,乙では,甲に先立ち降灰の収集運搬業務を行っていたところ,乙の職員らは,パッカー車等を用いて収集運搬した降灰を乙の施設である庚に運搬し,同所にある計量器を使用して降灰の収集運搬量を計量していた。平成23年2月3日から同月8日までの間の乙による降灰収集運搬量(起訴された分に限る。)は,合計692.81トンであった。 イ被告人Aは,平成23年2月中に,知人であるQとR,Sに,下請けとして 平成23年2月3日から同月8日までの間の乙による降灰収集運搬量(起訴された分に限る。)は,合計692.81トンであった。 イ被告人Aは,平成23年2月中に,知人であるQとR,Sに,下請けとして軽トラックなどを用いて大型トラックが通りにくい道などでの降灰の収集運搬業務を行うことを依頼した。 これを受けて,QとRは,自ら雇った作業員に指示するなどして,平成23年2月22日から同月28日までの間(同月24日を除く。)に合計300.63トン,同年3月1日から同月18日までの間に合計1246. 74トンの降灰を収集して庚に運搬した。 また,Sは,平成23年2月14日に単独で,同月15日から同年4月18日までの間,丙の屋号で雇った作業員らを率いて,降灰収集運搬業務に従事していたところ,同年2月19日から同月28日までの間(同月2 - 20 -4日を除く。)に合計741.1トン,同年3月1日から同月18日までの間に合計2014.7トンの降灰を収集し,甲の処分場内に運搬した。 Sは,トラックの種別と運搬回数等を記載した業務日報を作成し,作業状況を撮影した写真と共に,被告人Aないし被告人C等に提出していたところ,被告人Bは,被告人CないしEを介して同業務日報を受け取って実績報告書に取りまとめていた。 (2) 平成23年2月分の修正状況ア Dは,平成23年3月2日頃,被告人Bと共に甲事務所社長室を訪れ,被告人Aに都城市に提出する実績報告書を見せたところ,被告人Aは,Dらに対し,甲の降灰収集運搬量につき計上漏れがあることを指摘してその増加を求めるとともに,丙分の降灰収集運搬量についても,Sに甲のアルバイトとして早くから降灰の収集を手伝わせていた分の計上が漏れていることなどを挙げて降灰収集運搬量の増加を求めた。この際,被告人Aは, を求めるとともに,丙分の降灰収集運搬量についても,Sに甲のアルバイトとして早くから降灰の収集を手伝わせていた分の計上が漏れていることなどを挙げて降灰収集運搬量の増加を求めた。この際,被告人Aは,Dらに対し,計上漏れとして修正を求めた数量に関する具体的な資料等を示すことはなかった。 被告人Bは,組合の事務所に戻った後,翌3日にかけて,Dの指示により,パソコンのエクセルシートを用いて実績報告書の修正作業を行い,丙分の降灰収集運搬量についても,Sが丙として降灰の収集運搬業務を行っていなかったはずの期間である平成23年2月9日から同月14日の間の降灰収集運搬分につき合計375トンを増加させるとともに,同月15日以降の降灰収集運搬量についても,Sが作成した業務日報に基づきトラックの車種ごとに運行回数を手入力して丙分の降灰収集運搬量を計算したにもかかわらず,増加の根拠となる特段の資料の確認もしないまま,日ごとの最終的な増加分を手入力した上で,それに合うようにトラックの運行回数を増加させるなどの修正作業を行い,合計192.4トンを水増しした。 その結果,同月分全体で丙分の降灰収集運搬量は合計567.4トン増加 - 21 -した。 被告人Bは,同年3月3日,上記のとおり修正した同年2月分の実績報告書を都城市に対して提出した。 イ Dは,平成23年3月10日,被告人Bと共に,上記実績報告書のコピーを持参して,甲事務所の社長室で,被告人Aに見せたところ,被告人Aは,甲の処分場にストックしていた分につき計上漏れがあることなどを伝えて,実績報告書の更なる修正を求めた。この際,被告人Aは,Dらに対し,計上漏れとして修正を求めた数量に関する具体的な資料等を示すことはなかった。 これを受けた被告人Bは,組合事務所に戻った後,翌11日にかけて, 更なる修正を求めた。この際,被告人Aは,Dらに対し,計上漏れとして修正を求めた数量に関する具体的な資料等を示すことはなかった。 これを受けた被告人Bは,組合事務所に戻った後,翌11日にかけて,同じくパソコンのエクセルシートを用いて実績報告書の修正作業を行った。 被告人Bは,Dの指示に従い,それまで甲の降灰収集運搬量に加算していた丙分の降灰収集運搬量につき,甲の処分場のストック分合計777トン,QやRによる降灰収集運搬量合計363.49トンを合算した上で,乙の降灰収集運搬量として計上し,さらに,平成23年2月3日分から同月8日までの乙の降灰収集運搬量として227トンを増加させる修正を行った(なお,以上のような増加修正された丙分の降灰収集運搬量のうち,水増し分として起訴されたものは,平成23年2月19日から同月28日までの間の合計678.37トンである。)。 被告人Bは,同年3月11日頃,上記のように修正した2月分の実績報告書を市に提出した。 (3) 平成23年3月分の修正状況平成23年3月分の実績報告書は,Dないし被告人Bにおいて,同月15日,同月24日頃,同年4月5日の3回に分けて都城市に提出されたところ,同実績報告書の作成過程において,被告人Bは,丙分の降灰収集運搬量については,Dの指示により,同年2月分と同様に,Sが作成した業務日報に基 - 22 -づきトラックの車種ごとに運行回数を手入力して丙分の降灰収集運搬量を計算したにもかかわらず,増加の根拠となる特段の資料も確認しないまま,平成23年3月1日から7日までの分を1日当たり一律39.9トン,同年3月8日から18日までの分を1日当たり一律60.1トン増加させ,同月1日から18日までの降灰収集運搬量2014.7トンに合計840.4トンを増加させた。 被告 を1日当たり一律39.9トン,同年3月8日から18日までの分を1日当たり一律60.1トン増加させ,同月1日から18日までの降灰収集運搬量2014.7トンに合計840.4トンを増加させた。 被告人Aは,平成23年3月後半に,Dに対し,甲のトラック運転手の中には運搬回数を報告していない者がいることが分かったことから,甲分の降灰収集運搬量を増加させる修正をするように求めた上で,さらに,同年4月に,Dが同年3月分の実績報告書を持参した際にその内容を確認した。このほか,被告人Aは,時期までは明確に述べていないが,Dに対し,Sが軽トラックに多量の降灰を積んで運搬していたことを理由に,丙分の降灰収集運搬量を増加させる調整をするよう求めていたことを自認している。 (4) 丙分の降灰収集運搬業務の受託代金の分配状況ア被告人Aは,Sから,平成23年2月分の委託料を前払するよう依頼を受けたことから,Dに対し,乙において丙,Q及びRの降灰収集運搬業務に関する報酬を立替払するように依頼した。 このため,乙は,同年3月16日,丙名義の口座に3113万983円を振り込んだところ,Sは,同月17日,被告人Aと共に⒞銀行⒟支店に行き,3100万円を引き出した上で,被告人Aからその一部である226万3000円を報酬として受領するとともに,別途200万円を経費などとして受け取った。 イ乙は,平成23年5月9日,同年3月分の報酬として,丙名義の口座に5918万7071円を振り込んだ(なお,この振込額については,本件契約に基づく収集運搬分に加え,平成23年3月19日付けで都城市と組合との間で締結された道路脇集積分の降灰収集運搬等に関する業務委託契約に基 - 23 -づく収集運搬分に対する報酬額も含まれている。)。 Sは,平成23年5月9日 3年3月19日付けで都城市と組合との間で締結された道路脇集積分の降灰収集運搬等に関する業務委託契約に基 - 23 -づく収集運搬分に対する報酬額も含まれている。)。 Sは,平成23年5月9日,被告人Aと共に⒞銀行⒟支店へ行き,5900万円を引き出した上で,被告人Aからその一部である647万6400円を報酬として受領した。 ウ被告人Aは,上記アイのとおり丙名義の口座に振り込まれた金額からSに対する報酬を支払った残額につき,被告人Aの自宅において,Dと共に,QやRに対して支払う報酬の金額を計算し,平成23年2月分につき,Qに対して89万5880円,Rに対して260万を支払うなどした上で,その余の金額をDとの間で分配した(なお,被告人AとDとの間で分配された利得の額に関して食い違いがある点については,後に検討する。)。 (5) 補足説明(S証言の信用性について)ア認定事実に関し,Sは,公判廷において,降灰収集運搬業務の報酬の単価につき,「被告人Aとの間では,軽トラック2000円,1トン車4000円,2トン車8000円と定められていた。」旨を証言するとともに,被告人Aから平成23年2月分の報酬を受け取った際の状況については,「スーパーの駐車場で待ち合わせをして社長と会い,Sの車で銀行まで行った上で,Sが一人で銀行まで行って3100万円を引き出したところ,社長から「お前の請求幾らやったかいな。」と言われたので,請求書のコピーを見てもらいながら「この金額です。」と言うと,お釣りを持っているかを聞かれ,社長から渡された1万円をスーパーでたばこを買うなどして両替をして渡したところ,社長は,請求金額を見ながら226万3800円を端数もきっちりくれた。(それまでの付き合いから)勝手に端数よりちょっと多めにもらえるかと期待し スーパーでたばこを買うなどして両替をして渡したところ,社長は,請求金額を見ながら226万3800円を端数もきっちりくれた。(それまでの付き合いから)勝手に端数よりちょっと多めにもらえるかと期待していたので,社長にしてはちょっと珍しいな,ちょっとけちっぽいなと思っていたら,その瞬間に「金に困っとろう。」,「経費ももうないんやろう。」,「この100万円はお前にやっちゃる。経費で使え。」などと言われて100万円をもらった。その後またすぐに,社長は,「お前,もう - 24 -け幾らや。」などと聞いてきたので,大体4分の1程度と答えると,「たったそんだけしかもうからんとや。お前,幾らでやらしとっとや。」,「それもいいたい,その代わり頑張れよ。この100万円はお前が困ってるやろうから,これも付け足すから,その代わり頑張れ。」ということで,更に100万円を受け取った。」などと証言している。 また,Sは,平成23年3月分の報酬を受領した際の状況についても,「647万6400円の請求書を見せると,社長は,ちょっと驚かれたような感じで,「こんなやと。こんな,お前,あったや。」などという言い方だったので,事前に社長の方に渡していた請求書があったのに見てくれてなかったのかなと思った。」,「社長は,このときは端数を切り上げたような金額で648万円をくれた。ちょっとむっとした顔になっていたのだと思うが,社長は「何や,お前のその顔は。」「S,お前,勘違いしとらんや。俺が一人でこれ,ぼろもうけしてる金やと思っとらんや。」「お前,絶対そんなこと思うなよ。」などと言われた。」などと証言している。 イ Sの上記証言は,被告人から報酬を受け取った際の状況につき当時の心境も含めて具体的に証言したものであって,その証言内容にも特に不自然というべき点はない。また,本件 れた。」などと証言している。 イ Sの上記証言は,被告人から報酬を受け取った際の状況につき当時の心境も含めて具体的に証言したものであって,その証言内容にも特に不自然というべき点はない。また,本件による捜査の結果,被告人Aの自宅からは,平成23年4月分の丙名義の請求書が発見されたところ,同請求書は,軽トラック1台あたり2000円,1トン車1台あたり4000円などと車種ごとに定められた単価に収集運搬に当たったトラックの台数を掛けて報酬金額を算出した内容になっていることから,Sの上記証言内容とよく整合するものといってよく,その信用性を強く裏付けている。更にいえば,Sは,本件につき被疑者として捜査を受けており,その過程で被告人Aに責任を押し付けられそうになったと感じたことはあったにせよ,関係証拠を子細に検討しても,水増し請求自体に関与した形跡は認められないから,自らの刑事責任を軽減するために殊更に被告人Aを陥れる虚偽の証言をする動機までは - 25 -見出し難い。したがって,Sの上記証言の信用性は高いといえる。 ウこれに対し,被告人Aは,公判廷において,「Sとの間では,当初軽トラック1台につき2000円の約束であったが,1トン当たり1万1000円という都城市からの報酬額が決まった後,降灰収集運搬量1トン当たり4000円の単価で報酬を約束しており,そのほかにもガソリン代や作業服のリース代など何度もお金を渡しており,それらを含めると,Dから聞いた丙分の降灰収集運搬量1トンにつき5000円は渡していたと思うが,何度も渡したので総額ははっきりとは覚えていない。丙名義の請求書は,QやRの分も合わせて都城市に請求する必要があるため,ひな形として使う目的で受け取っただけである。」などと弁解している。 しかし,被告人Aの弁解内容は,結局,Sに対す えていない。丙名義の請求書は,QやRの分も合わせて都城市に請求する必要があるため,ひな形として使う目的で受け取っただけである。」などと弁解している。 しかし,被告人Aの弁解内容は,結局,Sに対する報酬として総額幾ら渡したのかについても,「1800万円がすぐに返せていた。」,「Sの分はどんどんどんどん上げています。」,「(平成23年3月分は)分からない。」などと曖昧な内容の供述に終始しているのであって,確かな記憶に基づき真実を供述している者の供述内容としては不自然との感は否めない。また,被告人AがSから受け取った請求書はひな形として使用する目的であったと弁解している点についても,前記のとおり被告人Aの自宅から発見された丙の請求書が平成23年4月分のものになっており,同月分を請求する段階になってなお丙の請求書のひな形が必要であったとは考え難い上,請求書の内容も,実際に降灰の収集運搬を行ったトラックの種類や台数が記載されているからひな形として渡されたものとは考えにくいことからすると,被告人Aの弁解にそぐわないものということができる。これらの点につき被告人Aは,検察官の反対尋問において,なぜそのような形式になっているかを確認する質問をされても何ら合理的な説明ができているとは認め難い。これらは,被告人Aの弁解の信用性を大きく減殺させる事情といってよい。 エなお,被告人Aの弁護人は,被告人Aは,QとRにつき報酬を増額してい - 26 -ることから,Sに対する報酬も同様に増額したと見るのが合理的である旨を主張している。しかし,Sは,平成23年2月分の報酬を受領した後に,被告人Aに対し,自分以外の軽トラックで降灰を収集運搬している部隊について尋ねたところ,「被告人Aは,QやRの名前を出しながら,「お前が集めてるというのも,RやQには言わん 分の報酬を受領した後に,被告人Aに対し,自分以外の軽トラックで降灰を収集運搬している部隊について尋ねたところ,「被告人Aは,QやRの名前を出しながら,「お前が集めてるというのも,RやQには言わんけん,知らないことにしとけ。」などと言っていた。」旨証言している。このような証言内容からすると,被告人Aが,Sとは別個にQやRに降灰の収集運搬業務を依頼しており,報酬額についても異なる約束をしていたために,相互に連絡を取らないように仕向けたものと理解することも可能であり,このような被告人Aの言動からすれば,SとQやRとで報酬額も別に定めていたとしても特におかしくはないといえる。 被告人Aの弁護人の主張は採用できない。 オ以上によれば,S証言は信用性が高く,被告人Aの供述のうちSの証言に反する部分は信用できないといえる。そこで,前記認定事実においては,被告人AがSに実際に支払った金額等については,Sの証言から認定した。 3 判断(1) そこで,以上の認定事実を前提に,被告人Aと被告人Bの詐欺の故意及び共謀の有無につき検討する。 アまず,被告人AとD,被告人Bによる実績報告書の修正状況に関する事実経過を見ると,認定事実のとおり,平成23年2月分については,被告人Aは,同年3月2日及び同月10日の2回にわたって,都城市に提出した実績報告書を確認した上で,D及び被告人Bに対し,その根拠となる資料を示すことなく丙分の降灰収集運搬量を大幅に増加させるよう求め,これを受けたDや被告人Bが,直ちにその内容に沿うように実績報告書の修正作業を行っている。 また,平成23年3月分についても,認定事実のとおり,被告人Aは,Dに対し,甲分の降灰収集運搬量につき報告漏れがあったことからその分 - 27 -を増加させるように求め,実績報告書を確認するとと また,平成23年3月分についても,認定事実のとおり,被告人Aは,Dに対し,甲分の降灰収集運搬量につき報告漏れがあったことからその分 - 27 -を増加させるように求め,実績報告書を確認するとともに,丙分の降灰収集運搬量についても,Dに対し,Sが軽トラックに大量に降灰を積んで運搬していた分を調整するように要請していたことを認めているところ,実際に,被告人Bは,Dの指示により,平成23年3月分の丙分の降灰収集運搬量につき1日ごとに一律の分量を増加させる修正を行っているから,これも,Dと被告人Bが被告人Aの意向を受けて修正を行ったものと見るのが自然で合理的である。 このような実績報告書の修正状況からすると,平成23年2月分及び同年3月分のいずれについても,被告人Aが,何らの資料も示さないままDや被告人Bに対し実績報告書を増加する修正を求め,これを受けたDや被告人Bも,被告人Aの意向に沿うように実績報告書の修正を行ったものということができる。したがって,実際に実績報告書の修正作業を行った被告人Bはもとより,増加を求めた被告人Aについても,Dや被告人Bが客観的な降灰収集運搬量を上回る数値を水増しする可能性があることを十分に認識していなかったとは考えられず,上記のような実績報告書の修正状況は,被告人Aと被告人Bの詐欺の故意があったことを強く推認させる事情ということができる。また,このように,被告人AやD,被告人Bが実績報告書の修正に深く関わっていたことは,それ自体被告人AとD,被告人Bが互いに意を通じて水増し請求を行ったことを端的に示すものといって差し支えないというべきである。 実際に,被告人Aの自宅からは,被告人Bが作成した「S(判決原本はカタカナで表記されている。)運行分3月」なるファイルから印刷した書面が発見されているところ て差し支えないというべきである。 実際に,被告人Aの自宅からは,被告人Bが作成した「S(判決原本はカタカナで表記されている。)運行分3月」なるファイルから印刷した書面が発見されているところ,同書面は,丙の平成23年3月分の降灰収集運搬量につき,Sらが実際に収集運搬した数量を「実量」,被告人Bが修正作業を行って増加させた数量を「加算分」などと区分して記載したものになっている。被告人Bが,事後的にせよ,このように水増し状況の詳細が明 - 28 -らかとなる書面を作成し,被告人AがDを介するなどしてこれを受領して所持していたことは,翻って,被告人Aや被告人Bに丙分につき詐欺の故意があったことや共謀が成立していたことを強く裏付ける事情といってよい(なお,検察官は,後記メモにQやRが収集運搬した降灰の数量を「実数」と「調整分」に分けていると思われる記載があることをもって,被告人Aが水増しを認識していたとの認定の根拠となるかのように主張しているが,一方で,検察官は,平成23年2月分については,Q,Rの水増し後の数値を実数として特定しているから,検察官の主張は相互に矛盾するものといわざるを得ない。)。 イそして,被告人Aは,被告人BやDに対し,丙分の降灰収集運搬量の水増しを求めて犯行を主導した上で,丙分の降灰収集運搬量に対する報酬額からQやR,Sの報酬として支払った金額を除いた残額につき,Dとの間で分配して,水増し分から多額の個人的な利得を得たものであるから,被告人Aに共同正犯が成立することは明らかである。また,被告人Bについても,特段の個人的な利得を得たと認めるに足りる証拠はないものの,自ら実績報告書の修正作業を行って,犯行の実現に不可欠の役割を果たしたものであるから,やはり共同正犯としての責任を免れるものではないといえる。 個人的な利得を得たと認めるに足りる証拠はないものの,自ら実績報告書の修正作業を行って,犯行の実現に不可欠の役割を果たしたものであるから,やはり共同正犯としての責任を免れるものではないといえる。 (2) 被告人Aの弁解についてアこれに対し,被告人Aは,公判廷において,「Dに対し,甲は,己の倍は集めているなどと言ったことはあるが,Dに水増しを指示してはいない。 Dは,「任せておいてください。」などと常々述べていたので,被告人Aの歓心を得るために被告人Aが知らないうちに勝手に水増しをしたものだと思う。」などと弁解している。 イしかし,Dが水増しをした動機が被告人Aの歓心を得るためであったとすれば,被告人Aが分からないように水増しをしたという弁解内容はそれ - 29 -自体不自然というほかない上,Dや被告人Bは,組合の事務担当者等として,都城市に対する組合に所属する各社の降灰収集運搬量を取りまとめるなどしていたにすぎず,被告人Aを介することなく直接受託代金を受領して利得を得る立場にはなかったから,同人らが被告人Aの了解を得ることもないまま,丙分の降灰収集運搬量を大幅に増加させるような修正を行うとも考え難いところである。 むしろ,被告人Aは,上記のとおり水増しについては知らなかったと述べる一方で,Dから組合の実績報告書の確認を求められると,Sが丙として降灰収集運搬業務に従事するようになる前に単独で作業を行ったのは1日だけであるのに,特に資料も示さないままに,同人が甲のアルバイトとして早くから降灰の収集運搬を手伝っていた分の計上漏れがあるなどとして殊更丙分の降灰収集運搬量の増加を求めたことを認めているし,Dに対し,Sがトラックに多量の降灰を積んでいたなどという理由で,丙分の降灰収集運搬量を増加させる調整を行うよう求めたことも認 るなどとして殊更丙分の降灰収集運搬量の増加を求めたことを認めているし,Dに対し,Sがトラックに多量の降灰を積んでいたなどという理由で,丙分の降灰収集運搬量を増加させる調整を行うよう求めたことも認めている。 このように被告人Aの弁解内容を子細に見れば,被告人Aは,根拠となる資料なども示さないまま調整などと称して丙分の降灰収集運搬量を増加させるように求めていたことを認めているのであって,実質的には丙分につき水増しがされていることを知っていたことを自認したものと見て差し支えない。 他方で,乙分の降灰収集運搬量の水増しについては,被告人Aが,Dや被告人Bが実績報告書を修正した際に直接関与したことを示す証拠はない上,Dから水増し量を知らされたことを示す客観的な証拠も見当たらないことから,丙分の降灰収集運搬量の水増しと同様に被告人Aにつき水増しの認識があったと考えることはできない。なるほど,Dは,被告人Aから甲と差が出ないように乙分も調整しておくように指示を受けたと証言しているものの,後記のとおり,Dは被告人Aに責任を押し付ける証言を - 30 -している疑いがあるから,この点についてのみ,Dの証言を信用することはできないというべきである。 ウ以上によれば,被告人Aについては,丙分の降灰収集運搬量の水増しの認識があったというにとどまり,乙分の降灰収集運搬量の水増しにつき被告人Aが認識していたとの認定はできないと判断した。 (3) 被告人Bの弁解についてア被告人Bは,公判廷において,Dの指示を受けて自らが実績報告書の修正をしたことは認めつつも,「被告人AがDに修正内容の説明をしていた際には話に加わっておらず,Dから指示を受けるままに修正しただけであるから,水増しがあるとは思っていなかった。また,後から日報が追加で提出されると めつつも,「被告人AがDに修正内容の説明をしていた際には話に加わっておらず,Dから指示を受けるままに修正しただけであるから,水増しがあるとは思っていなかった。また,後から日報が追加で提出されると思っていた。」旨を弁解している。 イしかし,認定事実のとおり,被告人Bは,Sが作成した業務日報に基づきトラックの車種ごとに運行回数を手入力して降灰収集運搬量を計算するなどして,丙分の降灰収集運搬業務の状況を把握し,Sが業務日報としてトラックの運行状況を報告していることも認識していたはずであるのに,特段の資料も確認することもないまま,Dから指示をされるままに増加修正を行っている上,実際に,被告人Bが,丙分の降灰収集運搬量について増加する修正を行った内容を見ても,被告人Bは,Sが丙として降灰収集運搬業務を行っていなかったはずの期間に収集運搬をしていたかのような修正をしたり,日ごとの最終的な増加分を手入力した上で,それに合うようにトラックの運行回数を増加させたり,あるいは,1日当たりの降灰収集運搬量を一律に増加させるといった修正も行っており,その修正内容は,後に業務日報が追加で提出されることを予定して行っていたとは容易に考え難いものとなっている。以上のような事情に照らすと,被告人Bが,被告人Aからの指示内容を直接聞いていたかどうかにかかわらず,Dの指示が実態を伴わない水増しではないと思っていたとは到底考えら - 31 -れない。 また,被告人Bは,乙分の降灰収集運搬量については,計量がされていることを認識しておらず,Dから運行台数1台当たり1トンの誤差が出ると聞かされてそれを信じたものである旨も弁解している。しかし,乙分の降灰収集運搬量は十キロ単位の細かい数値で集計されており,それ自体目分量で測定しているとは考え難いものであるところ, ンの誤差が出ると聞かされてそれを信じたものである旨も弁解している。しかし,乙分の降灰収集運搬量は十キロ単位の細かい数値で集計されており,それ自体目分量で測定しているとは考え難いものであるところ,被告人Bは,組合の事務担当者として降灰収集運搬量の取りまとめを行うに当たり,乙分も含めて数量の報告を受けて自らエクセルファイルに打ち込んでいたのであるから,乙において重量を計量していたことを認識していなかったとは考えられない。また,被告人Bは,Dから乙分につき,丙分と同時期に,同じように特段の資料を示されることもないまま修正の指示を受けたものであって,乙分のみ実態を伴う修正であると信じたというのも容易に納得できるものではない。そうすると,被告人Bが,Dの運行台数1台当たり誤差が生じるという説明をそのままうのみにしていたという弁解は信用できないというべきである。 ウ以上によれば,被告人Bの弁解は信用できず,被告人Bについても,少なくとも水増し請求に当たるかもしれないという認識があったことは十分に認められ,詐欺の未必的な故意は優に認定できるのであって,「T明細」と題するエクセルファイルなどの被告人Bが実数値と水増し分とを分けて作成した文書が,本件犯行後相当期間経過して作成されたものであり,実績報告書の作成時の認識を直接証明するものとはいえないことを踏まえても,この認定は揺るがない。 (4) 被告人Cの詐欺の故意及び共謀について検察官は,被告人Cが作成した業務日報の数値が甲の実数値であることを前提として,被告人Cには,同業務日報の数値から大幅に増加させた数値を被告人Bに報告していることから,詐欺の故意が認められる旨を主張してい - 32 -る。しかし,前記のとおり,そもそも甲の降灰収集運搬量が水増しされているとは認められず,その他 増加させた数値を被告人Bに報告していることから,詐欺の故意が認められる旨を主張してい - 32 -る。しかし,前記のとおり,そもそも甲の降灰収集運搬量が水増しされているとは認められず,その他の関係証拠を子細に見ても,被告人Cが,乙分や丙分の降灰収集運搬量の水増しについて関与した形跡はないから,被告人Cに詐欺の故意や共謀があったとは認めることはできない。検察官の主張は採用できない。 4 D証言の信用性について(1) Dは,公判廷において,被告人Aから降灰収集運搬量を水増しするように指示を受けて,被告人Bと共に実績報告書を修正する作業を行った状況につき証言しているところ,検察官は,このDの証言が信用できることを根拠に,被告人Aや被告人Bの詐欺の故意や共謀も認定できると主張している。 すなわち,Dは,公判廷において,被告人Aや被告人Bとの間での水増しをした経緯等について,「平成23年2月16日頃に,被告人Bと一緒に都城市の担当者であるU課長に挨拶に行った際に,同課長から,「なめてもよかかいな。」などと微量の誤差には目をつぶるという意味の言葉が出たので,事務所に帰る途中で,被告人Bに対し,「1日10トンくらい大丈夫じゃないか。」などと水増しの話をした。その当日か,翌日に,被告人Bと一緒に甲の事務所に行ったところ,被告人Aからは,「天から金が降ってくるような話やもんな。」,「儲けよう。」などという話になったことから,水増しのことだと思った。」,「平成23年3月10日頃,被告人Bと共に,甲を訪れて実績報告書を確認してもらった際,被告人Aから,甲分の降灰収集運搬量について「己でこれくらいやったら,うちは倍はやっている。」,「いや倍まではいかんやろうけど。」などと言い,何千トンという単位で甲の水増し後の降灰収集運搬量の大枠を伝えられ, ,甲分の降灰収集運搬量について「己でこれくらいやったら,うちは倍はやっている。」,「いや倍まではいかんやろうけど。」などと言い,何千トンという単位で甲の水増し後の降灰収集運搬量の大枠を伝えられ,丙分の降灰収集運搬量についても,「ばれんように。」などと言って水増しを指示された。また,被告人Aからは,甲分の降灰収集運搬量と差がありすぎるとおかしいやろと言われ,乙分の降灰収集運搬量についても水増しするように指示を受けた。組合の事務所に戻ってから被告人Bが, - 33 -被告人Aの指示に従って水増しの作業をして,作業をした後の数値を見せてもらって,被告人Aの指示に足りない部分を増やすように指示をした。」,「平成23年3月14日に,同月7日までの分の報告書を持って行くと,被告人Aから,細かいトン数などは覚えていないが,甲分を前回と同じような感じで水増しをするように指示されたので,被告人Bが水増しの作業を行った。 被告人Bは,車両台数と回転数を報告する書式になっていたので調整が難しいと言っていた。」,「(同月下旬に,)同月19日までの分が入った報告書を被告人Aに見せると,被告人Aから「ばれん程度に。」と言われ,大枠のトン数を指示され,甲分よりも丙分に重きを置いて増やすように言ってきた。事務所に戻って修正作業を行ったが,その際も,被告人Bは,「回数が実際にやるのもう無理ですよ。もうこれ怖いですよ。」などと言っていた。」などと証言している。 (2) しかし,このD証言の信用性については,次の事情を指摘できる。 ア Dの述べる事実経過によれば,被告人Aから降灰収集運搬量の水増しの指示を受けたのは,平成23年3月10日頃であり,その回数も1回ということになるところ,被告人Bが組合の降灰収集運搬量を増加させる修正作業を行ったエクセルデータの内容や, ら降灰収集運搬量の水増しの指示を受けたのは,平成23年3月10日頃であり,その回数も1回ということになるところ,被告人Bが組合の降灰収集運搬量を増加させる修正作業を行ったエクセルデータの内容や,戊課のVに同月3日に報告された数値を見ると,被告人Bは,同月10日より前に降灰収集運搬量を水増しさせる修正をしていたことが認められ,これは,Dの証言する事実経過と明らかに食い違うものということができる。そして,Dが被告人Aから水増しの指示を受けた状況に関する証言部分は,被告人Aや被告人Bとの共謀があったことを証明する上で最も重要な部分であるから,そのような供述の核心部分につき客観的証拠に明らかに反する証言をしていることは,Dの証言の信用性を大きく減殺させるものといわざるを得ない。この点に関し,Dは,公判廷において,上記のような客観的な証拠との矛盾点を踏まえて改めて事実関係を確認する質問をされると,それまでに供述をして - 34 -いなかった被告人Bが被告人Aから直接指示を受けて増加させた可能性があるなどという新たな事実関係を証言するに至っているが,そのような供述状況自体不可解というべきである上,被告人Bが被告人Aから直接水増しの指示を受けたとすれば,被告人BがDにその修正内容の報告をしないのは不自然であることや,被告人AとDとは本件当時毎日のように会っていたというのに,被告人AがDをあえて外して被告人Bに指示をしたというのも不自然であることなどが指摘できるから,容易に信用できるものではない。 イなるほど,Dは,被告人Aや被告人Bの発言内容も含めてそれなりに具体的に供述したものであるから,全くの虚偽の内容を証言したものとも思われないが,他方で,被告人Aに具体的な水増しの指示をされた時期やその内容に関する証言内容は非常にあいまいなもの 含めてそれなりに具体的に供述したものであるから,全くの虚偽の内容を証言したものとも思われないが,他方で,被告人Aに具体的な水増しの指示をされた時期やその内容に関する証言内容は非常にあいまいなものにとどまっており,質問がされてから証言がされるまでに相当の時間を要している場面も目立つものとなっている。このような証言態度は,仮にDが真実を述べているのだとすれば,法廷で証言するまでに記憶が減退するなどした可能性があることを踏まえても不自然との感は否めない。また,Dは,捜査段階から第9回公判期日までは,被告人Bが水増し請求に関連して被告人Aから報酬を受け取っていたなどという供述はしていなかったのに,第10回公判期日に至って,突然,被告人Aが被告人Bに対し何十万円という単位の金額を渡していたなどと証言を始めたものであるが,このような供述状況については,Dが捜査機関側に迎合して新たなエピソードを付け加えて証言したという見方もあながち排斥できないように思われる。 ウもとより,Dは,本件各犯行の共犯者として起訴されて有罪判決を受けた者であって,同判決は現在では確定しているとはいえ,被告人Aらが主導的に水増しを指示した旨の供述をすることによって,自己の刑事責任が軽減される関係にあったということができる。したがって,Dには被告人 - 35 -Aらとの共謀状況に関し,被告人Aらにとって不利な虚偽の証言をする動機が認められる。 (3) 以上によれば,Dの証言は,全くの虚偽の事実経過を述べたものではないにせよ,被告人Aに対し責任を押し付けて自己の責任を軽減させようとしている可能性は否定できず,特に水増しの指示に関する重要な事実経過として証言する部分につき,客観的な証拠から認められる水増し修正の状況と齟齬が生じていることからすると,D証言につき,本件 せようとしている可能性は否定できず,特に水増しの指示に関する重要な事実経過として証言する部分につき,客観的な証拠から認められる水増し修正の状況と齟齬が生じていることからすると,D証言につき,本件争点である詐欺の故意や共謀の点に関する決定的な証拠として用いるだけの証拠価値を認めることは困難といえる。 (4) なお,Dは,降灰収集運搬業務に関して被告人Aから受け取った金銭に関しては,「被告人Aから,何回かに分けて,二百二、三十万円程度受け取ったにすぎない。」旨を証言しているのに対し,被告人Aは,「Dは,乙の担当地域の一部を甲に担当してもらう代わりにバックマージンを受け取りたいと考えていたことが分かった。そのため,Q,RやSを乙の下請けとして使うことにして,その報酬については,丙分の降灰収集運搬量に関しては,Sに渡す金額を差し引いた額をDと折半し,QとRの収集運搬分に関しては,同人らに報酬を渡した残額をDに手数料として渡す約束であった。そして,実際に,Sの口座に金が振り込まれた後,丙分については被告人Aが6,Dが4の割合で分け,Q・R分の手数料はDに全て渡した。」旨を弁解している。 そこで検討すると,関係証拠によれば,被告人Aの自宅からは,封筒にQやRの報酬等を計算したものと考えられるメモ(以下「メモ」という。)が発見されていることが認められる。そして,被告人AもDも,被告人AがDの面前でメモを記載したものであることは一致して供述しているところ,その記載内容を見ると,QやRが降灰を収集運搬した分の受託代金から,QやRに渡す報酬額を差し引いた残額も計算していることが分かる。しかし,仮にDが証言するようにQやRへの報酬を支払った残額をすべて被告人Aが取り - 36 -分として取得したのだとすれば,Dの面前で上記のような計算をする必要は 額も計算していることが分かる。しかし,仮にDが証言するようにQやRへの報酬を支払った残額をすべて被告人Aが取り - 36 -分として取得したのだとすれば,Dの面前で上記のような計算をする必要はないようにも思われる。したがって,メモの記載内容は,Q,Rの降灰収集運搬分に対する受託代金から同人らに対する報酬を差し引いた金額をDに手数料として支払ったという被告人Aの弁解内容により合致するものと見ることができるから,被告人Aの弁解は一概に排斥できない信用性を備えているといってよい。 他方で,丙の降灰収集運搬分の受託代金については,上記のメモのように被告人AとDの間で分配をした状況を示す客観的な書面等は残されていない。 また,被告人Aの弁解を子細に検討しても,丙分については,QやRが乙の処分場である庚に降灰を運搬していたのとは異なり,甲の処分場に降灰を運搬していたというのであるから,乙の下請けとして降灰収集運搬業務に当たっていたとは認め難く,都城市に対する実績報告書において乙分として降灰収集運搬量を計上したにすぎないというべきであるから,丙分の受託代金につきDがなぜ4割もの手数料を受領することになるのかという疑問がある。 したがって,丙分については,Q,R分とは別に考える余地もないではない。 しかし,前記のとおり,Dが,全体として自らの刑事責任を軽減するために被告人Aに不利な虚偽の証言をしている可能性が否定できない上,Dは,都城市から本件に関する民事訴訟を提起されており,本件犯行による利得額についても少しでも自らの取得分を小さくする証言をしたいと考えたとしても不自然とはいえないことも踏まえると,丙の報酬の分配額についてもやはりD証言の信用性を肯認することはできず,被告人Aの弁解の信用性は直ちには排斥できないというべきである。 5 結論 たとしても不自然とはいえないことも踏まえると,丙の報酬の分配額についてもやはりD証言の信用性を肯認することはできず,被告人Aの弁解の信用性は直ちには排斥できないというべきである。 5 結論以上のとおり,被告人A及び被告人Bについては,詐欺の故意及び共謀は優に認定できるのに対し,被告人Cについては,詐欺の故意も共謀も認められないと判断した。 - 37 -第4 争点③(市長の錯誤の有無)について 1 被告人Aの弁護人らは,都城市の関係者は,当時の緊急事態の下では実数値を厳密,正確に把握することなど不可能であるという認識を有していたのであるから,最終決裁権者である都城市長が錯誤に陥っていたとの評価は成り立ち難い旨主張する。 2 なるほど,本件契約においては,収集運搬した降灰を計量した数値に基づいて受託代金を請求すべきことまでは定められておらず,都城市としては,収集運搬した降灰のおおよその立米数に1.4を乗じて算出した数値をその重量として扱うことも許容していたことが認められる。しかし,都城市は,本件当時の緊急事態の下では降灰の収集運搬が最優先課題であって,収集運搬した降灰の計量まで組合に要求すると降灰収集運搬業務の迅速な実施に支障を来すおそれがあることから,計量による降灰収集運搬量の正確な算出に代わるものとしてそのような取扱いを容認していたにすぎないと理解できるのであり,このような取扱いに加えて,さしたる根拠となる資料もないまま,水増し分を加えた数値による受託代金を請求することまで容認していたわけではないのは明らかである。そして,本件では,D及び被告人Bは,乙分や丙分の降灰収集運搬量を大幅に増加させて水増しした数値を平成23年2月分及び同年3月分の実績報告書に記載しており,都城市の担当者らも多少の誤差はあるにせよ, そして,本件では,D及び被告人Bは,乙分や丙分の降灰収集運搬量を大幅に増加させて水増しした数値を平成23年2月分及び同年3月分の実績報告書に記載しており,都城市の担当者らも多少の誤差はあるにせよ,根拠もなく大幅に水増しがされているなどとは考えないまま当時の都城市長までの決裁を経て代金の支払を行ったものと考えられるから,都城市の側に錯誤があったことは十分に認定できる(前記のとおり,Dは,都城市の戊課のU課長が降灰収集運搬業務に関し「なめてもよかかいな。」などと発言したことで水増しを考えるようになった旨証言しているが,仮にU課長がそのような発言をしたことがあったとしても,それは,上記のような目測による計量によれば一定の誤差が生じることを是認した趣旨にすぎず,もとより本件のような大幅な水増しを許容する趣旨ではないと見るのが相当である。)。 - 38 -この点,都城市の副市長であるWは,公判廷において,「予算の財源は市民国民の税金であって,いささかも不適正な支出をすることは認められるものではない。仮に報告漏れなどがあれば,本件契約に基づき都城市との間で十分な協議の上で対応されるべきものである。都城市と委託した業者との間には信頼関係があったので,不正が行われているとは思っていなかった。」などと証言しているところ,この証言の信用性に疑問を差し挟むべき事情は認められない。 以上によれば,都城市長自身の証人尋問が実施されていないことなど弁護人らの主張を踏まえても,都城市においては,最終決裁権者である市長まで水増し分も実数値であると誤信して錯誤に陥り,その錯誤に基づいて,水増し分を含む各実績報告書記載の数値に対応する受託代金を組合に支払う旨決裁したものであることは十分認定できる。 第5 争点④(被告人Bに不法領得の意思があったか否か)について その錯誤に基づいて,水増し分を含む各実績報告書記載の数値に対応する受託代金を組合に支払う旨決裁したものであることは十分認定できる。 第5 争点④(被告人Bに不法領得の意思があったか否か)について被告人Bの弁護人は,被告人Bが自らに水増し分に対応する受託代金を自らに帰属させる意思がなかったし,乙や甲等から経済的利益を得る以外の恩典を与えられることも想定されていなかった上,乙,甲,丙,D,被告人Aに帰属させる意思もなかったことなどを指摘して,被告人Bには不法領得の意思が認められない旨主張する。しかし,被告人Bが個人的な利得を取得したかどうかにかかわらず,本件水増し請求による利得である現金は,本来の権利者である都城市から支払われて,共犯者である被告人AやDのほか,被告人Bが所属する乙においても取得され,現金として利用処分されている。被告人Bは,被告人AとDとの利得の分配に関する謀議には加わっていなかったとはいえ,少なくとも水増し請求された現金が乙や丙に支払われた後現金として利用処分されることを承知していなかったとは考えられない。したがって,被告人Bに他人の物を自己の所有物と同様その経済的用法に従って利用処分する意思,すなわち不法領得の意思があったことは優に認定できる。被告人Bの弁護人の主張は採用できない。 - 39 -第6 結論以上のとおり,被告人A及び被告人Bには判示第1,第2のとおり詐欺罪が成立するが,他方で,被告人Cに対しては,犯罪の証明がなされていないというべきであるから,刑事訴訟法336条により無罪の言渡しをする。 (法令の適用)略(量刑の理由) 1 本件は,新燃岳の噴火により一般家庭等に大量の灰が降り積もる事態が生じたことから,都城市において,組合の各社に対し降灰の収集運搬業務を委託した る。 (法令の適用)略(量刑の理由) 1 本件は,新燃岳の噴火により一般家庭等に大量の灰が降り積もる事態が生じたことから,都城市において,組合の各社に対し降灰の収集運搬業務を委託したところ,組合に所属する会社の関係者である被告人Aと被告人Bが共犯者と共謀して,降灰収集運搬業務に関する受託代金を水増し請求してだまし取ったという詐欺2件の事案である。 2(1) 本件の犯行態様を見ると,都城市において,市民生活を正常に復帰すべくできるだけ早期に降灰を収集,除去することが緊急の課題として位置づけられていたことから,組合に所属する会社に対する信頼関係に基づき,降灰収集運搬量を目分量で計測することを許容する取扱いがされていたのをよいことに,裏付けとなる資料もないまま降灰収集運搬量を大幅に水増しした内容虚偽の実績報告書を提出して受託代金をだまし取っており,都城市の側の混乱に乗じてその信頼を裏切る形で行われた大胆で卑劣な犯行といえる。 本件犯行による被害金額は,平成23年2月分及び同年3月分の合計3億円余りと多額であり,また,実質的な被害額というべき水増し金額も合計約1930万円に及ぶものであって,被害結果は重いといわざるを得ない。 (2) 各被告人が果たした役割を個別的に見ても,被告人Aは,D及び被告人Bに対し,何ら資料のないまま丙分の降灰収集運搬量を増加させるように要求するなど,主導的な立場で犯行に関与し,実際に個人的に多額の利得を得るなどしたものであるから,まことに厳しい非難を免れないというべきである。 - 40 -また,被告人Bは,乙の従業員として,上司であるDの指示に従って犯行に及んでおり,犯行による個人的な利得も得ておらず,従属的な関与にとどまる部分があることは否定できないとはいえ,実際に実績報告書を水増しする作業 Bは,乙の従業員として,上司であるDの指示に従って犯行に及んでおり,犯行による個人的な利得も得ておらず,従属的な関与にとどまる部分があることは否定できないとはいえ,実際に実績報告書を水増しする作業を行って犯行実現のために不可欠の役割を果たしているから,その責任が軽いなどとはいえない。 3 以上のような犯罪事実に関するものを中心とする事情を考慮すると,本件は同種事案の中で決して軽い部類に属する事案ではないということができる。これに加えて,犯情以外の点で,いずれの被告人についても,責任逃れのための不自然不合理な弁解に終始しており,真摯に反省している様子は見られないことも,刑を決める上では軽視できない。そうすると,従属的な関与であった被告人Bはともかく,犯行に主導的な役割を果たした被告人Aについては,相当期間の実刑に処することも十分考えられる。 もっとも,他方で,上記の点に加えて,犯情以外の点で,被告人Aについては,都城市に対し被害弁償を行った乙に対して,丙分の降灰収集運搬量の水増し分に相当する2000万円を支払うことで,同社との間で示談が成立しており,これにより,被告人Aが個人的に取得した利得のうち,証拠上認定できる水増しによる取得分の全額を実質的に返還したといえること,被告人Aには約30年前の罰金前科を除き前科がなく,被告人Bには前科前歴がないことなどの事情も認められる。これらの事情も考慮すると,被告人Aについても直ちに実刑に処するのは躊躇されるというべきであるから,各被告人に対しては,それぞれ主文の懲役刑及び猶予期間を定めた上で,その刑の執行を猶予し,社会内での更生の機会を与えるのが相当と判断した。 (求刑被告人Aにつき懲役6年,被告人Bにつき懲役2年,被告人Cにつき懲役1年6月)平成29年6月2日宮崎地方 執行を猶予し,社会内での更生の機会を与えるのが相当と判断した。 (求刑被告人Aにつき懲役6年,被告人Bにつき懲役2年,被告人Cにつき懲役1年6月)平成29年6月2日宮崎地方裁判所刑事部 - 41 -裁判長裁判官岡 﨑 忠之裁判官織川逸平裁判官藤田一真 別表1番号期間(いずれも平成23年2月)水増し報告分に係る組合所属の会社名水増し量(トン)水増し額(円・端数切り捨て) 3日から8日株式会社乙 250万9939円 19日から23日25日から28日株式会社乙(丙)678.37750万0737円905.371001万0676円別表2番号期間水増し報告分に係る組合所属の会社名水増し量(トン)水増し額(円・端数切り捨て) 平成23年3月1日から同月18日株式会社乙(丙)840.4929万2302円合計‐42‐別表3番号期間(いずれも平成23年2月)水増し報告分に係る組合所属の会社名水増し量(トン)水増し額(円・端数切り捨て) 3日から8日株式会社乙 250万9939円 17日から28日甲株式会社3239.653582万0810円 19日から23日25日から28日株式会社乙(丙)678.37750万0737円4145.024583万1486円別表4番号期間(いずれも平成23年3月)水増し報告分に係る組合所属の会社名水増し量(トン)水増し額(円・端数切り捨て) 1日から31日甲株式会社1721.491903万4515円 1日から18日 3年3月)水増し報告分に係る組合所属の会社名水増し量(トン)水増し額(円・端数切り捨て) 1日から31日甲株式会社1721.491903万4515円 1日から18日株式会社乙(丙)840.4929万2302円2561.892832万6817円合計合計‐43‐

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