主文 1 被告は,原告に対し,1億4589万1926円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,それぞれを各自の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,3億円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,600万円を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,原告がパチンコ店を経営していた建物が火災にり災したことから,原告が,同建物の設備及び什器等について被告との間で締結していた店舗総合保険契約に基づき,被告に保険金3億円の支払を請求したところ,上記火災に原告代表者が関与している疑いが払拭できないことを理由に被告がその支払を拒否したため,原告が,被告に対し,上記保険契約に基づく保険金3億円,及びこれに対する原告が被告に上記保険金の支払を催告した期限の日の翌日である平成12年4月1日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,並びに上記保険契約の債務不履行に基づく損害賠償として弁護士費用600万円の支払をそれぞれ請求した事案である。 1 前提となる事実当事者間に争いのない事実のほか,摘示した各証拠及び弁論の全趣旨によると以下のとおり認めることができる。 (1) 原告は,食堂,喫茶,ホテル,遊技場の経営等を目的とする資本金1000万円の有限会社であり,岐阜県高山市a町bにおいてホテルA(以下「高山のホテル」という。)を,同市c町において焼肉屋Bをそれぞれ経営している(甲15号証)。 原告代表者Cは,新潟県でパチンコ店を経営している実弟を通 あり,岐阜県高山市a町bにおいてホテルA(以下「高山のホテル」という。)を,同市c町において焼肉屋Bをそれぞれ経営している(甲15号証)。 原告代表者Cは,新潟県でパチンコ店を経営している実弟を通じて,愛知県額田郡d町e所在の建物(以下「本件建物」という。)を所有している有限会社Dの代表者と知り合い,平成10年5月,原告は,同社から,本件建物を賃借して,パチンコ店の営業権等を7000万円で購入し,更に7000万円余りをかけて本件建物の改修工事を行った上で,同年7月,本件建物の1階においてパチンコ店E(以下「本件パチンコ店」という。)を開店した。本件建物の2階は,本件パチンコ店の従業員寮として使用されていた(甲15,100ないし102号証)。 (2) 原告は,本件パチンコ店の開店後,被告との間で,保険期間を平成10年7月30日から平成11年7月30日,保険金額を建物1億円,設備1億円,月額保険料を7万7550円とする店舗総合保険契約(以下「先行契約」という。)を締結した。しかし,その後,銀行預金の残高が不足し,保険料の口座振替が不能となったことから,平成11年3月,被告は同契約を解除した(乙14号証の1ないし5)。 (3) 本件建物には,Dを根抵当権設定者,F信用組合を根抵当権者,極度額を1億5000万円とする根抵当権が設定されていたところ,平成11年4月27日,本件建物について上記根抵当権に基づく競売開始決定がされた(名古屋地方裁判所岡崎支部平成11年(ケ)第○○○○号。乙38号証の3)。 (4) 平成11年8月末,原告は本件パチンコ店を閉店した。同年9月中旬ころまでに本件パチンコ店の全従業員が本件建物内にある従業員寮を退去し,Cも高山に戻ったため,以後,本件建物は無人の状態となった。 (5) 原告は,中部電力株式会社(以下「中部電力」と 。同年9月中旬ころまでに本件パチンコ店の全従業員が本件建物内にある従業員寮を退去し,Cも高山に戻ったため,以後,本件建物は無人の状態となった。 (5) 原告は,中部電力株式会社(以下「中部電力」という。)に対する本件建物についての平成11年7月分ないし9月分の電気料金の支払を遅滞しており,中部電力からの督促を受け,上記電気料金の一部を返済するものの,その余については支払延期の申出を繰り返していた(乙5号証)。 (6) 平成11年10月22日,原告は,被告との間で,保険の目的を本件建物内の設備及び什器等,保険金額を3億円,保険料を月額6万0640円,保険期間を平成11年10月22日午後10時から同12年10月22日午後4時までとするガラス損害担保特約付きの店舗総合保険契約(以下「本件契約」という。)を締結した(甲1号証)。 本件契約に係る約款(店舗総合保険普通保険約款。乙2号証及び49号証(平成7年2月1日版))1条1項には「火災によって保険の目的について生じた損害に対して,損害保険金を支払う。」旨規定され,また,同2条1項(1)には「保険契約者,被保険者又はこれらの者の法定代理人の故意若しくは重大な過失又は法令違反によって生じた損害に対しては,保険金を支払わない。」旨が規定されている。 (7) 原告は,本件建物について,G株式会社との間で警備契約(以下「本件警備契約」という。)を締結していたが,平成11年11月4日午前10時56分に,同契約に基づく警備システム(以下「本件警備システム」という。)の3時間おきの定時通報がGに送信されなかったことから,本件建物が放火されていたこと(以下「先行火災」という。)が発覚した(乙4号証)。なお,発覚時点では,既に鎮火してしばらくたった状態であった。 同日午前11時20分ころ,Gの担当者らは,Cに連絡を ,本件建物が放火されていたこと(以下「先行火災」という。)が発覚した(乙4号証)。なお,発覚時点では,既に鎮火してしばらくたった状態であった。 同日午前11時20分ころ,Gの担当者らは,Cに連絡をとり,先行火災の発生を告げた。 (8) 平成11年11月5日午前5時45分ころ,本件建物内で火災が発生した(以下「本件火災」という。)。本件火災は,火源2か所が床面に近い部分であったこと,本件建物の構造及び出火時に本件建物が無人であったこと等から放火によるものと推定された。本件火災に際し,物品の盗難や室内が荒らされた形跡はなかった。 (9) 被告は,平成12年3月2日付けの書面により,原告に対し,本件火災にCが関与している強い疑念があることを理由に,本件契約に基づく保険金の支払には応じられない旨を通知した。平成12年3月10日,原告は,被告に対し,同月末日までに上記保険金を支払うよう催告したが,被告は再度支払を拒絶した(甲5ないし7,34号証)。 (10) 平成12年10月11日,本件パチンコ店のコイン約5万枚が盗難にあったこと(以下「本件盗難事件」という。)が発覚した(甲9号証)。 2 争点(1) 本件火災は原告が故意に招致したものか。 (被告の主張)本件火災は原告が故意に招致したものである。 なお,商法629条が偶然な事故であることを損害保険契約に基づく保険金支払の発生要件としていること,保険金の不正取得の防止及び立証責任の分配の原則の観点からすれば,保険金請求者である原告が本件火災は偶然な事故であることについての主張立証責任を負うと解すべきである。 ア先行火災の連絡を受けた際のCの言動の不合理性(ア) Cの具体的言動本件火災の前日の平成11年11月4日に,Gの警備士Hが先行火災を発見し,Cにこれを連絡したところ,Cはあまり驚いた様子も 。 ア先行火災の連絡を受けた際のCの言動の不合理性(ア) Cの具体的言動本件火災の前日の平成11年11月4日に,Gの警備士Hが先行火災を発見し,Cにこれを連絡したところ,Cはあまり驚いた様子もなく,火災の状況を尋ねた。その後,Gの警備司令IがCに連絡をとり,本件建物の1階南側出入口(以下「通用口」という。)のドアが壊されていること,階段下の焼損状況がひどいこと等を告げるとともに,これらの状況から放火であることが明らかなので,警察に通報するよう促した。ところが,Cは,本件パチンコ店は売ることになっており,翌日,現地に行く予定が入っているからその際に先行火災の現場を見て通報を考える旨告げて,Iに対し,警察には通報しなくてよいと指示をした。そのため,Gとしては,先行火災について警察へ通報せず,先行火災は警察及び消防署に事後覚知のものとなった。 (イ) Cの上記言動の不合理性先行火災についての連絡を受けた際,Cが高山にいたとしても,警察への通報自体は電話でなし得るものであり,Iらに状況説明をさせるよう指示すれば済むことである。警察や消防署への通報の遅れは,初動捜査を遅れさせるだけであり,原告にとってマイナスとなる行動であるから,高山にいて現場を見ていないから通報できないとのCの対応は著しく合理性を欠く。また,自ら高額の費用をかけて完成させたパチンコ店が火災にり災し,放火の疑いが濃厚であるとの報告を受けているのに,直ちに状況確認に現場に急行しないCの態度は,経営者の態度としては極めて不可解である。 Iらから階段下の焼損状況がひどいことを告げられているのに何ら驚きの様子を見せないCの態度からすれば,Cが先行火災の発生を具体的に予想していた可能性は極めて高い。 イ原告の当時の経済状態(ア) 本件パチンコ店の経営難原告は,平成10年3月末に るのに何ら驚きの様子を見せないCの態度からすれば,Cが先行火災の発生を具体的に予想していた可能性は極めて高い。 イ原告の当時の経済状態(ア) 本件パチンコ店の経営難原告は,平成10年3月末には多額の債務を負担しており,本件パチンコ店の開店時には実質的に経営破綻していた。本件パチンコ店は,開店後3か月から4か月で客足が衰え,経営難に陥り閉店となった。 原告の経営状態は,本件パチンコ店の開店以前から悪化していたが,本件パチンコ店を開店して大赤字となったために,更に一挙に悪化した。 (イ) 中部電力からの支払督促原告は,平成11年8月31日以降,中部電力から未納電気料金について極めて厳しい督促を受け,本件火災の直前の段階では,早急に支払資金を手配する必要性に迫られ,経済的に極めてひっ迫していた。なお,本件火災の発生以降,Cは,中部電力に対し,火災保険金を未納電気料金の支払に充てる旨を再三にわたり申し出ている。 (ウ) 本件パチンコ店の売却の可能性本件建物はその敷地の地主が5名存在して権利関係が複雑であること,原告が買手を探していたが見つからなかったこと,及び,競売手続でも買受人がなかったことからすれば,原告が主張する,本件パチンコ店の2億円近い価格での売却計画は,およそ非現実的なものであり,上記売却計画に関する有限会社Jの代表者Kの供述等は信ぴょう性がない。 (エ) 以上のとおり,本件火災前の時点において,原告は,経済的にひっ迫して,本件パチンコ店の売却の話も暗礁に乗り上げ,切羽詰まった状況であったから,本件火災は原告が故意に招致したものである疑いが濃厚というべきである。 ウ本件契約の締結経緯の不自然性原告が先行契約の平成10年11月分以降の保険料を支払わず,被告の再三の催告にも応じなかったため,平成11年3月末で被告は同契約を解除し 疑いが濃厚というべきである。 ウ本件契約の締結経緯の不自然性原告が先行契約の平成10年11月分以降の保険料を支払わず,被告の再三の催告にも応じなかったため,平成11年3月末で被告は同契約を解除した。ところが,原告は,平成11年10月中旬ころ,本件建物に関する保険料等を被告に問い合わせ,同月22日には,別の保険契約の更新手続のため原告を訪問した被告の担当者に対し,本件建物に関する保険契約の締結を早急にするように迫った。被告の担当者は,平成11年11月4日から本件建物の競売手続が開始されるため,保険契約の申込みを受けるか否かの返答を留保したが,Cの執拗な要求を受けて本件契約を締結したものである。 原告は,平成11年8月末で本件パチンコ店を閉店したのであるから,本件建物における火災発生の危険性は少なく,また,遠からず他に売却するのであるから,自己において保険契約を締結する必要性はなかった。しかるに,上記のように,原告側からの積極的かつ執拗な申入れにより,本件契約が締結され,その保険金額も,対象となる設備及び什器等の価値が先行契約時より増加したという事情もないのに,Cの申告により,先行契約時の1億円から3億円に増額され,しかも,本件契約締結後,わずか13日目に本件火災が発生している。 以上の契約締結経緯の不自然性及び異常性は,原告の故意による本件火災招致を強く推認させる事情である。 エ内部犯の可能性本件火災の放火犯は,警備対象外の通用口から侵入し,警備対象外の2階の従業員寮に放火しているから,本件警備システムを熟知していたものと推測される。また,愉快犯による放火であれば,建物外部に放火すれば足りるから,危険を冒して建物内に侵入する必要はない。そして,パチンコ店を閉店して空き家状態にあった本件建物の従業員寮部分に放火しても,深刻なダメージを 愉快犯による放火であれば,建物外部に放火すれば足りるから,危険を冒して建物内に侵入する必要はない。そして,パチンコ店を閉店して空き家状態にあった本件建物の従業員寮部分に放火しても,深刻なダメージを与えることにはならないから,怨恨による放火の可能性も全く考えられない。そうすると,本件火災は,本件建物の内部の事情に詳しい者の犯行であるといわざるを得ず,原告が故意に招致したものであることが推認される。 オ本件盗難事件の不自然性本件盗難事件は,侵入窃盗の目的が理解できないこと,侵入口とされるドアはアルミ製で強固にできており,これを破壊するには高い金属音がすることなどによるとその破壊方法が極めて不自然であること,Cは,盗難の危険性を感じていたとしながら簡単な防犯対策すらしていなかったこと,被害品とされるコインの総重量が275kgにも及ぶことなどからすれば,本件盗難事件は,第三者の犯行とするには極めて不自然であり,C又はCの意を受けた者によって偽装されたものと推認できる。 カ以上の各事情を総合すれば,本件火災は原告が故意に招致したものであると推認することができる。 (原告の主張)被告の主張はすべて否認する。本件火災は,原告が故意に招致したものではない。 ア先行火災の連絡を受けた際のCの言動について平成11年8月末に本件パチンコ店を閉店し,本件建物が無人になることはGにも連絡しており,Cは,無人になっても何かあるといけないと思い,本件警備契約を継続していた。 Cは,先行火災の連絡を受けて当然驚いたが,寝起きだったこともあり,単に大声で驚きの気持ちを出さなかっただけにすぎないし,Iからの電話は既にHからの連絡を受けた後であったため,驚かなかったものである。仮にCが先行火災を工作したのであれば,逆に大げさに驚いてみせる演技が必要であり,直ちに警察 さなかっただけにすぎないし,Iからの電話は既にHからの連絡を受けた後であったため,驚かなかったものである。仮にCが先行火災を工作したのであれば,逆に大げさに驚いてみせる演技が必要であり,直ちに警察に火災の通報をするはずである。 Cは,先行火災が2,3日前のぼやで終わっていたこと,及び,通用口の火災であって本件パチンコ店のホールには被害がないことを確認した上で,警察に自ら直ちに通報すべき重大なことではないと判断し,翌日現地へ出向いた際に自分の目で被害状況を確認してから通報しようと考えたのである。その言動は,一般人として少しも不自然,不可解なものではない。 また,Cは,Iらに警察へ通報しなくてよいとの指示は出していない。なお,消防法24条は,火災発見者の通知義務を規定しているから,第一発見者のGの関係者が先行火災について通報するのは当然のことであり,火災の被害者の承諾は必要ではない。 イ原告の当時の経済状態について(ア) 原告が経営難により本件パチンコ店を閉店したことは事実であるが,Cは,前科前歴もなく,これまでまじめに生きてきたのであり,経済的に困窮したからといって保険金をねらって放火をするようなさもしい人物ではない。 (イ) 中部電力との交渉についてCが,中部電力に「保険金が支払われれば返済できる。」と回答したのは,本件火災発生後の平成12年11月25日のことであり,火災発生後に保険金を当てにするのは当然である。なお,中部電力には,その後,分割払で電気料金の支払をしており,高山のホテルへの電気の供給が止められたことはない。 (ウ) 本件パチンコ店の売却の可能性について原告は,本件パチンコ店の閉店後,本件火災が発生するまで,有限会社JのK及び本件建物の敷地の地主らを交えて,数回にわたって同店の売却について話し合っていたものであり,実際 コ店の売却の可能性について原告は,本件パチンコ店の閉店後,本件火災が発生するまで,有限会社JのK及び本件建物の敷地の地主らを交えて,数回にわたって同店の売却について話し合っていたものであり,実際に,1億8000万円程度の値段であれば,買手の候補が数名存在していた。 ウ本件契約の締結経緯について(ア) 先行契約の解除の経緯先行契約が解除となったのは,原告の事務担当者が平成10年12月分の保険料を支払口座に入金しなかったため,保険料が引き落とされなかったことが原因にすぎない。借地代月額100万円,電気料金月額約100万円,本件建物の賃料月額18万5000円及びその他の経費に比較すれば,先行契約の保険料月額7万7500円は大した金額ではなく,原告は,平成10年7月分ないし同年11月分まで,毎月保険料を支払ってきた。 (イ) 本件契約の締結に至る経緯先行契約の解除後も,本件パチンコ店には昼夜を通して従業員がおり,本件警備契約も継続していたから,火災が発生する危険性は大してなかったこと,及び,当時,Cが競売や共同経営等の問題に追われていたことから,Cは,直ちに保険契約を締結し直すことまでしなかったものである。 平成11年8月に本件パチンコ店を閉店し,同年9月14日に本件建物が無人の状態になった後も,本件警備契約は継続していたから,Cとしては,Gがしっかり警備してくれるであろうと考えていた。しかし,同年10月初めころ,Cは,テレビドラマで無人の建物が放火される場面を見て,早急に保険契約を締結しなければならないと考えるようになり,同月15日過ぎに被告に保険契約を申し込み,同月22日に本件契約を締結したのである。 なお,Cは,電話料金を滞納すれば自動的に通話が停止されると聞いたために電話料金を滞納していたものであり,本件警備システムが電話回線を利 保険契約を申し込み,同月22日に本件契約を締結したのである。 なお,Cは,電話料金を滞納すれば自動的に通話が停止されると聞いたために電話料金を滞納していたものであり,本件警備システムが電話回線を利用していることを知っていれば策を講じていた。 (ウ) 保険金の増額について原告が本件契約の保険金を3億円に増額したのは,被告から3億円で契約できるとの回答があったからであり,原告が被告をだまして3億円という枠を設定したのではない。先行契約の保険料以下の保険料でより高額な保険金額の契約を締結できるならば,締結したいと考えるのは当然のことである。 (エ) わずか1回の保険料6万円余りを支払っただけで,その10日後に放火をして,それが失敗するや,警察による警戒が厳しくなることが予想されるにもかかわらず,その数日後に再び同じ場所に放火して多額の保険金をだまし取ることを企てるなどという「みえみえのこと」は,詐欺の常習者等であってもするはずがない。 エ内部犯の可能性について(ア) 放火状況からの検討保険金目的での計画的放火であれば,全焼を狙って人の寝静まったもっと早い時間に敢行したり,物取り犯に見せかけるための何らかの作為等を考えたりするのが通常である。また,Gの従業員に先行火災が発覚した以上,警戒が厳重になることが予想されるのに,これを承知で,先行火災の発覚の翌日に再び放火をするなどということは,犯行発覚を恐れなくてはならない保険金目的の放火犯の仕業とは考え難い。 先行火災及び本件火災のいずれも,灯油をまきちらす等の大がかりな放火でないこと,連続放火であるものの,先行火災後は警戒のため逮捕されるおそれが強いのにあえて放火していること,通用口には本件警備システムのセンサーは設置されていなかったこと,先行火災の際に通用口のドアが壊されており,そこから侵入 のの,先行火災後は警戒のため逮捕されるおそれが強いのにあえて放火していること,通用口には本件警備システムのセンサーは設置されていなかったこと,先行火災の際に通用口のドアが壊されており,そこから侵入できる状況であったこと等からすれば,たまたま通用口から侵入した不審者が放火したというだけのことであり,また,同一犯でない可能性もある。 (イ) アリバイ等について本件火災の現場とCの住む高山市とは,車で片道4時間はかかる距離である。Cは,平成11年11月4日から翌5日午前2時ころまで,妹夫婦らとともに高山の自宅で過ごし,午前3時半ころ就寝して,午前6時すぎに本件火災の発生を知らせる電話で起こされたのである。 原告の関係者のうち,本件火災に関与しているのではないかとの疑いで警察から取調べを受けている者は全くおらず,また,Cには,依頼を受けて放火行為を行うというような怪しげな人物とのつきあいも一切ない。 (ウ) 被告の調査の不当性被告の依頼を受けた株式会社Lによる調査は,初めから「Cとその意を受けた人物が保険金目当てに火災保険をかけて放火をした。」との前提で開始され,終始その方向に向け,録音テープの隠しどりをしながら,だまし討ち的,誘導的な調査をしており,第三者による放火の可能性という観点からの調査手法は全くとられていない。調査員の真意を知らないCは,誘導尋問とも知らずに対応し,決算書などの書類も言われるままに提供し,関係者も調査員の誘導にのせられて,その場にいないCの悪口を引き出される結果となった。被告の推測及び見解は,この一方的な思いこみ及び推測に基づく不当な調査の報告によっているにすぎない。 オ本件盗難事件についてCが本件盗難事件を工作することはあり得ない。被告は,ドアを壊すのに高い金属音がすると主張するが,Cがやっても同じことであり,窃 づく不当な調査の報告によっているにすぎない。 オ本件盗難事件についてCが本件盗難事件を工作することはあり得ない。被告は,ドアを壊すのに高い金属音がすると主張するが,Cがやっても同じことであり,窃盗の偽装工作をするなら,発覚の危険をおそれて,もっと人目につかない方法でやるはずである。コインは,他のパチンコ店なら使えるものであり,どのような目的で大量のコインを盗んだかは犯人しかわからない。 (2) 本件火災の発生について原告に重過失が認められるか。 (被告の主張)本件火災の前日に,IらがCに,先行火災の発生及び自動火災報知設備の電源が切れていること等を告げて,警察への通報を促したにもかかわらず,Cは,翌日現地に行く予定になっているという理由で,自ら警察に通報しなかっただけでなく,Iらにも通報しなくてよいと指示をした。本件パチンコ店は平成11年8月末に閉鎖し,同年9月10日ころ以降は無人状態であったこと,先行火災の出火場所は全く火気のない場所であったこと等の状況からすれば,放火犯が全焼させられなかった本件建物に再度放火するおそれがあったのに,Cが,上記のようにこれを放置しただけでなく,警備会社の従業員に対して警察に通報しなくてよいと指示したことは,本件火災の発生に関する重大な過失に該当する。 (原告の主張)被告の主張は争う。 (3) 本件契約が公序良俗に反して無効であるか。 (被告の主張)保険契約者が保険金を不正に取得する目的で保険契約を締結した場合は,同契約は,公序良俗に反して無効であると解すべきである。 本件契約の締結経緯が不自然であること,本件契約の締結時における本件建物並びに設備及び什器等の合計価格は3346万円と解されるところ,本件契約においては,設備及び什器等の保険金額がその10倍以上に設定されていること,本件契約の締結日と本 件契約の締結時における本件建物並びに設備及び什器等の合計価格は3346万円と解されるところ,本件契約においては,設備及び什器等の保険金額がその10倍以上に設定されていること,本件契約の締結日と本件火災の発生日が接近していること,原告が実質的には経営破綻の状態にあったこと,Cが本件火災に関与している疑いが強いこと等の事情を総合すると,本件契約は原告が保険金の不正取得を目的として締結したものと認められるから,本件契約は公序良俗に反して無効である。 (原告の主張)被告の主張は争う。 (4) 本件火災による原告の損害(原告の主張)ア本件火災により,原告には以下のとおり合計3億3288万3615円の損害が発生した。 (ア) 玉他関係備品一式2206万6800円(イ) テレビカメラ及び関連一式2938万5600円(ウ) 島(パチンコ台が設置されている機械装置)及び補給装置一式1億2418万9170円(エ) 2階可動備品一式671万5300円(オ) 2階内装工事(及び事務所)一式6500万円(カ) 電気配線及び照明他一式3900万円(キ) 空調設備,換気一式2450万円(ク) 消防関係一式439万0845円(ケ) ユニットバス(給排水・衛生)一式688万円(コ) 天井1階80%一式1075万5900円イ原告は,平成10年5月,有限会社Dから,本件建物の内装部分,什器及び備品一切を7000万円で購入し,その後,約7000万円をかけて改装工事を行った。したがって,本件契約の目的である設備及び什器等は,原告の所有に属する。 (被告の主張)原告の損害についての主張は否認する。 ア本件契約は,再取得価格を保険価額とするものではないから,本件火災による原告の損害額は,本件火災発生当時の保険の目的である設備及び什器等の時価,すなわち,取得価格か 害についての主張は否認する。 ア本件契約は,再取得価格を保険価額とするものではないから,本件火災による原告の損害額は,本件火災発生当時の保険の目的である設備及び什器等の時価,すなわち,取得価格から減価額を控除した額である。原告が主張している損害額は再取得価格に相当するものである。 イパチンコ機及びパチスロ機の損害について本件パチンコ店内にあったパチンコ機及びパチスロ機の一部はリース物件であったから,原告所有のパチンコ機は168台,同パチスロ機は20台である。そして,リース物件であるパチンコ機及びパチスロ機について,その保険会社が認定した損害率は全体で46.57パーセントであったから,原告所有の上記パチンコ機及びパチスロ機の損害率も同様に考えるべきである。本件火災による原告所有のパチンコ機及びパチスロ機の損害額の合計は524万3782円である。 ウ設備及び造作一式の損害について原告が本件パチンコ店の開業に当たって行った店舗内の改装工事は,既存の設備及び造作に対して修繕を施しただけであるから,店舗内の設備及び造作は,本件建物の所有者であるDの所有に属する。したがって,本件契約のうち,設備及び造作を対象とする部分は,第三者のためにする契約としての性質を有するものであるから,本件火災によって設備及び造作に損害が発生したとしても,原告は,保険金を請求する法律上の資格を有しない。 (5) 債務不履行に基づく損害(原告の主張)被告が本件契約に基づく保険金の支払を拒否したために,原告は,本件訴訟を遂行するための弁護士費用として600万円の支払を余儀なくされた。上記弁護士費用600万円は,保険金の支払を拒否した被告の債務不履行と相当因果関係のある損害である。 (被告の主張)弁護士費用として原告に600万円の損害が発生したことは不知。 本件におけ された。上記弁護士費用600万円は,保険金の支払を拒否した被告の債務不履行と相当因果関係のある損害である。 (被告の主張)弁護士費用として原告に600万円の損害が発生したことは不知。 本件における原告の被告に対する請求は保険金請求であるから,弁護士費用の請求は認められない。 第3 争点に対する判断 1 当事者間に争いのない事実,甲1ないし3,8,9,15,35,41,43,46ないし52,54,56,62,77,81,83,87ないし89,91,94,97,99ないし102号証,105号証の1及び2,乙1号証の1ないし4,1号証の5の1ないし6,3ないし5号証,14号証の1ないし5,15,31,33,36,37号証,38号証の1ないし4,40及び41号証の各1,58号証,62号証の1及び2,66,72号証,証人I,同Kの各証言及びCの尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 本件建物は,その所有者であるDが,平成2年に2億5500万円程度の費用をかけて増改築工事を行い,パチンコ店として使用していた。 平成10年5月6日,原告は,Dから,本件建物を賃料月額18万5000円,期間7年間との約定で借り受け,さらに,同月12日には,本件建物の機械及び設備一式並びに営業権を7000万円で買い受けた。その後,原告は,7000万円余りをかけて本件建物の改修工事を行い,平成10年7月15日,本件パチンコ店を開店した。なお,Cは,本件パチンコ店の開業資金として,原告の総務部長Mから合計5600万円,取引先等から合計4300万円,兄弟等の親族から1000万円をそれぞれ借りていた。 また,原告は,本件建物をDから借り受けると同時に,Gとの間で,警備料月額3万8000円とする本件警備契約を締結した。ただ,本件建物の南側1階の ,兄弟等の親族から1000万円をそれぞれ借りていた。 また,原告は,本件建物をDから借り受けると同時に,Gとの間で,警備料月額3万8000円とする本件警備契約を締結した。ただ,本件建物の南側1階の通用口から階段の踊り場にかけての部分及び従業員寮となっている2階部分は,深夜でも人の出入りがあることから警備対象外とした。 本件警備システムは,機械警備であり,警備セットからリセットまでの間,通常の防犯としては,3時間ごとにGに定時信号が入る仕組みになっており,また,本件建物の要所に取り付けられたセンサーが異常を感知した場合は,Gに異常を知らせる信号が送信されるようになっていた。本件警備システムは,NTTの電話回線を利用して作動するようになっており,本件建物内に設置された自動火災報知設備もこれと連動するようになっていたが,同設備は,Dが本件建物でパチンコ店を経営していた時に設置されたものであった。 (2) 平成10年7月30日,原告は被告との間で先行契約を締結した。しかし,5回目の保険料支払分から口座振替が不能となり,被告の担当者が原告の担当者に連絡をしても入金されなかったため,平成11年3月,被告は先行契約を解除し,同年4月,原告あてにその旨を通知した。 その後,Cの妻及びMから被告の中京支店岐阜支社高山支部(以下「高山支部」という。)に対し何度か問い合わせがあり,保険契約を復活できないかという相談もあったため,高山支部長のNは,「新しく保険に入った方がよい」と助言をするなどの対応をしていた。しかし,そのころから,Cは,本件建物の競売の問題,パチンコ台の入替えの問題,共同経営の問題等の対応に忙しくなったため,Gとの間での本件警備契約が継続していることや,C及び従業員が常時本件建物内に居住していること等の事情を考慮して,結局,新たに保険契約を締 台の入替えの問題,共同経営の問題等の対応に忙しくなったため,Gとの間での本件警備契約が継続していることや,C及び従業員が常時本件建物内に居住していること等の事情を考慮して,結局,新たに保険契約を締結するのは見合わせることとした。 (3) Cは,本件パチンコ店の開店後は,2階の従業員寮に住み込んで同店の経営に当たっていた。開店後しばらくの間は,本件パチンコ店の経営は比較的順調であったが,平成11年6月ころから売上げが落ち,加えて,当時持ち上がっていた共同経営の話がとん挫し,経営難に陥ったことから,Cは,同店を閉店することを決意し,同年8月31日,閉店した。 (4) 平成11年9月1日,有限会社JのOが,閉店したパチンコ店があるとの情報を入手して本件パチンコ店を訪れたので,Cは,2億円前後での同店の売却の仲介を依頼した。その後,JのKも本件パチンコ店に来店して同店の売却についてCと打合せを行った。 (5) 平成11年9月7日,中部電力の岡崎営業所料金課副長のPらが本件パチンコ店を訪れた。Cは,未納となっていた平成11年7月分の電気料金90万8965円を手形で支払い,同年8月分の電気料金106万4974円については支払期日を確約できないと答えたところ,Pらから,同年10月7日までに支払ができない場合は,高山のホテル等の電気も供給停止になると告げられた。また,Cは,従業員の退去後も,売却先に見学させるための店舗の照明及び警備のための電源は必要であると考えていたが,Pらから,業務用電力での契約では無駄が多いこと,警備の電源のみであれば架設電源で対応できること等の説明を受けて,店舗の照明はあきらめて警備の電源のみを残すこととした。 Cは,直ちに電気工事会社に電話をし,来店した担当者に対し,「パチンコ店は閉店するが,店が売れるまでは警備を続けていなけ こと等の説明を受けて,店舗の照明はあきらめて警備の電源のみを残すこととした。 Cは,直ちに電気工事会社に電話をし,来店した担当者に対し,「パチンコ店は閉店するが,店が売れるまでは警備を続けていなければ,店を荒らされたりするから電気の架設工事をしたい。」と説明して工事を依頼し,同月14日にこれを行う予定とした。 (6) 平成11年9月10日,本件パチンコ店の全従業員に対し給料が支払われ,同月12日までに全従業員が本件建物内の従業員寮から退去した。同月10日ころ,GのQが,本件警備契約を解除するか否かを確認するために本件パチンコ店を訪れたので,Cは,「パチンコ店を閉店しても店内のパチンコ台はそのままなので,警備は継続してもらいたい。」と話した。その際,Qは,Cに,警備を継続するためには電源が必要であることは説明したが,本件警備システムが電話回線を利用していること及び自動火災報知設備については説明しなかった。 また,Cは,本件建物内の電話が不要となったことから,電話回線の契約についてNTTに問い合わせたところ,NTTの担当者から,契約を解除するには1台当たり合計4000円の費用が必要だが,電話料金を未納にすれば自動的に通話停止になるとの説明を受けたため,NTTとの契約はそのままにして電話料金を未納にしておくこととした。 (7) 平成11年9月14日,C立会いの下,本件建物の電気を業務用電力から一般家庭用電力へ切り替える工事が行われた。また,同日,PはCに電話をして,平成11年8月分の電気料金106万4974円及び同年9月14日までの日割の電気料金73万1827円の支払を請求し,期限内の支払が無理であれば分割払について検討してほしいと話した。 (8) Cは,平成11年9月14日に高山に戻り,以後,主に高山のホテルでフロント業務を担当するようにな 万1827円の支払を請求し,期限内の支払が無理であれば分割払について検討してほしいと話した。 (8) Cは,平成11年9月14日に高山に戻り,以後,主に高山のホテルでフロント業務を担当するようになり,ほぼ毎日,午後8時から翌日の午前4時ころまで勤務し,その後昼ころまで寝るという生活を送っていた。 Cは,無人の本件建物にいたずら等をされないように,本件パチンコ店の駐車場に軽トラックを置いて,人がいるように見せかけていたが,その後,Cが本件パチンコ店の様子を見に行ったところ,道路工事のために駐車場の出入口から車が出入りできない状況になっており,軽トラックを置いておく意味がなくなっていた。 (9) 平成11年9月22日,名古屋地方裁判所岡崎支部において,本件建物に対する売却実施命令が出された。売却方法は期間入札,入札期間は平成11年11月4日から同月11日午後5時まで,開札期日は同月17日午前10時,売却決定期日は同月24日午前10時,最低売却価額金は2220万円と定められ,同月24日ころ,原告あてに,上記内容が記載された通知書が送達された。 (10) Cは,本件パチンコ店の売却の話がすぐにまとまるであろうとの見通しを持っていたが,Kから「買い手がいても銀行が金を貸さないからすぐには話がまとまらない。」,「本件建物の競売の結果がわかるまでは売買の話は難しいかもしれない。」などと言われて,売却の話が成立するまで本件建物の無人の状態が長引く可能性も高いと考え,不安に思うようになった。そして,平成11年10月上旬ころに,Cは,テレビドラマで無人の建物が放火される場面を見たことから,「本件建物も無人だから,放火されたら大変だ。」と考え,以前より不安になり,再度保険契約を締結しようと考え,同月10日ころから高山支部と交渉を始めた。 高山支部のNは,Mからの る場面を見たことから,「本件建物も無人だから,放火されたら大変だ。」と考え,以前より不安になり,再度保険契約を締結しようと考え,同月10日ころから高山支部と交渉を始めた。 高山支部のNは,Mからの保険料の問い合わせに対し,建物が無人であれば保険料の割増の必要はないと答え,保険料を算定した上で,同月20日,建物の保険金額を2億円,設備の保険金額を1億円,1回分の保険料を6万8260円とする算定結果を原告あてにファックスで送信した。また,Nは,高山のホテルの保険契約を担当している被告のR代理店に対し,「平成11年10月23日満期の高山のホテルの契約更新時に,本件建物の保険契約の話が出ると思うので,契約になるときはR代理店扱いでお願いします。」と伝えた。 同月22日,R代理店が高山のホテルを訪れ,同ホテルの保険契約の更新手続を行った際,Cが本件建物についても保険契約を締結したいと申し出たため,競売物件について保険契約を締結できるか,保険金額をいくらに設定すべきか等の問題を検討し,名古屋地方裁判所岡崎支部の書記官に問い合わせをしたり,高山支部のNに電話で相談したりしながら,最終的に,建物設備(ガラス含む)に1億5000万円,什器備品に1億5000万円の合計3億円の保険金額で本件契約を締結することとなった。Cは,本件契約の締結と同時に,第1回分の保険料として6万0640円をR代理店に支払った。 (11) 中部電力に対する原告の未納電気料金については,平成11年10月7日に,CとPとの間で,同月12日に原告が未納電気料金のうち10万円を中部電力に支払い,併せてCが連帯保証する旨の証書を差し入れることで話がついていたが,同月12日に,Cが「本件建物を競売で落札して営業権も含めて他へ転売する予定であり,平成11年11月末には支払ができるから連帯保証はし せてCが連帯保証する旨の証書を差し入れることで話がついていたが,同月12日に,Cが「本件建物を競売で落札して営業権も含めて他へ転売する予定であり,平成11年11月末には支払ができるから連帯保証はしない。」と言い出したことから,C及びPは,再度話し合い,その結果,支払確約書を差し入れること及び不履行の場合は高山のホテルへの電気の供給を停止することとの条件で合意し,同日,原告は中部電力に未納電気料金の一部として10万円を支払った。 (12) 平成11年9月以降,Cは,主に電話でKらと本件パチンコ店の売却の話をし,同年10月25日を始め数日は,同店でKらと直接会って売却の相談をしていた。Cは,Kから1億8000万円程度でなければ買手がつかないと言われ,競売で自ら落札するか,最低競売価額が下がるのを待つかで相当悩んでいた。 同年11月4日の午前10時ころ,OからCに,「本件パチンコ店の内部を見たいという人がいるので鍵を借りたい。」との連絡があったため,Cは同月5日の午後1時に本件パチンコ店で鍵の受渡しをすることを約束した。 (13) 平成11年11月4日,原告が本件建物の電話料金を滞納していたことから,本件建物への電話回線が利用停止となり,そのため,本件警備システムによる午前10時56分の定時通報がGに入らなかった。Gでは,その3分後に行った検査でもエラーが出たことから,Hに本件建物の確認に出向かせたところ,本件建物の1階南側の通用口が壊され,1階の階段下付近が焼損していたこと(先行火災)が発覚した。Hは,すぐにGに連絡するとともに,緊急連絡先とされているCの携帯電話に電話をかけた。Cは,上記(12)のOからの電話に応対した後に再度就寝したところで,面識のないHからの電話を受け,先行火災の発生を告げられて驚いたが,本件パチンコ店には被害がないこと Cの携帯電話に電話をかけた。Cは,上記(12)のOからの電話に応対した後に再度就寝したところで,面識のないHからの電話を受け,先行火災の発生を告げられて驚いたが,本件パチンコ店には被害がないことを確認して一安心した。 GのIは,Hからの連絡を受けて,状況確認のため現場に駆けつけた。通用口のドアは,その下側のアルミ部分にとがったもので押されたような傷が残っており,一部が外れ,鍵もかかっていない状態であった。1階から2階へ上がる階段付近は焼けてすすが落ち,壁も熱で焼けていたが,既に煙や熱は全くなかったため,Iは,火が消えてからかなりの時間が経過しているものと判断した。また,本件建物内の自動火災報知設備は,その集中盤に電気が通じておらず作動していない状態であった。Iは,Cの携帯電話に電話をかけ,被害の状況,本件警備システムが作動しない状態であること及び自動火災報知設備の電源が切れていることを報告し,警察へ通報した方がよいと話した。しかし,Cは,本件パチンコ店には一切被害がないことを確認した上で,「翌日現地に行く予定があるので,その際に現場を見てから警察に連絡する。」と答えた。Iは,火災のあった部分が本件警備契約の警備対象外の部分であり,また,既に鎮火した状態であって,Cが翌日現地に来ると言っていたことから,先行火災について警察及び消防署へ通報せずに,通用口のドアを原状に近い状態に手で直した上で施錠して帰った。なお,先行火災は消防署には事後覚知であったが,消防記録(乙1号証の2)には,「通用口のドアが壊されていることから外部の者による放火の可能性は考えられるが,盗難された物品や室内に荒らされた形跡がないことからすれば,内部関係者によるものか、外部の者によるものかについての特定は困難である。」旨記載されている。 その後,Cは,Kから,競売への 考えられるが,盗難された物品や室内に荒らされた形跡がないことからすれば,内部関係者によるものか、外部の者によるものかについての特定は困難である。」旨記載されている。 その後,Cは,Kから,競売への対応に関する問い合わせの電話を受けたが,翌日本件パチンコ店まで行く用事があるとのみ伝え,その際に直接会って話をすることとした。 (14) 平成11年11月5日,午前5時45分ころ,本件建物から出火した。同6時7分に消防署が上記出火を覚知し,同6時14分ころから消防車による放水が開始され,同7時20分に鎮火した(本件火災)。本件火災の出火原因については,消防署による調査及び判定の結果,何者かが裏口のアルミ製のドアを壊して侵入し,2階の寮室2号室の中央付近及び洗面所西側廊下のゴミ袋に,何らかの火源を用いて放火したものと推定された。本件火災による焼損面積は58.37平方メートル,放水量は合計3万リットルであった。 本件建物の東隣でプチレストラン「S」を経営していたTは,本件火災の発生をCに知らせるために,午前6時30分ころ,Cの携帯電話に電話をした。就寝中であったCは,Tからの電話で飛び起き,火災の状況を確認するなどしたが,頭の中が混乱し,電話を切った後もベッドの上で「大変なことになった。」と考え込んでいた。すると,高山のホテルのフロントで電話番をしていたCの妻が,本件火災発生の連絡を受けたと言ってCの部屋に駆けつけてきた。Cは,とにかく現地へ行くこととし,高山のホテルの業務の引継ぎ等を済ませて,午前9時ころ,Cの妻とともに車で本件パチンコ店へ向かった。途中,Cの携帯電話にKから電話があったため,Cは事情を説明し,Kと現地で落ち合うこととした。Cらが現地に到着した午後1時ころには,既に警察による現場検証は終わっていたが,Cは,午後2時ころから1時間 ,Cの携帯電話にKから電話があったため,Cは事情を説明し,Kと現地で落ち合うこととした。Cらが現地に到着した午後1時ころには,既に警察による現場検証は終わっていたが,Cは,午後2時ころから1時間程度,警察からの事情聴取を受けた。 Cは,Kとともに本件パチンコ店内の様子を確認したが,Kから,「水濡れで本件パチンコ店の価値はなくなった。」と言われ,「本当に困った。」と相当なショックを受けた様子であった。 (15) 平成11年11月6日,被告の損害調査部のU,株式会社V鑑定事務所のV,Lの調査員らが本件建物の被害状況の検証に訪れたため,C及びKがこれに立ち会った。その後,同月12日及び同月17日にも被告の損害調査部による本件建物の損害調査が行われた。 (16) 平成11年11月16日,中部電力のPから競売の状況確認のためCに電話があった。Cは本件火災の発生について報告して,「競売価格が見直しされることになったため,競売が先送りになり資金繰りが苦しくなった。買手も見つけていた状況での出来事であり,このようなことがなければ言い訳はしない。11月末の支払に向けて努力する。」と話した。同月25日,Cは,Pとの面談で,「不慮の事故により11月末の支払の約束が果たせなくなった。保険金が支払われれば一括支払できるので待っていてほしい。」旨支払延期を申し出たが,Pから「保険金の支払を当てにして待つわけにいかない。」と言われたため,11月末に20万円を支払い,以後,一括支払ができるまで,毎月20万円以上の分割払を確約すると提案した。翌26日,原告及び中部電力は,原告が上記のとおり未納電気料金の支払を履行し,不履行の場合は高山のホテルの電気の供給を停止するとの条件で合意するに至った。その後,原告は,平成12年8月31日までに未納電気料金を完済したが,その間に 告が上記のとおり未納電気料金の支払を履行し,不履行の場合は高山のホテルの電気の供給を停止するとの条件で合意するに至った。その後,原告は,平成12年8月31日までに未納電気料金を完済したが,その間に高山のホテルの電気の供給が停止されることはなかった。 2 争点(1)(本件火災は原告が故意に招致したものか。)について(1) 被告は,商法629条が偶然な事故であることを保険金支払の発生要件としていること,保険金の不正取得の防止及び立証責任の分配の原則からすれば,保険金請求者側である原告が,本件火災が偶然な事故であることの主張立証責任を負うと解すべきである旨主張する。 ところで,本件約款においては,「保険金を支払う場合」として,1条1項に「火災,落雷等の事故によって保険の目的について生じた損害に対して損害保険金を支払う。」旨の規定が置かれ,「保険金を支払わない場合」の事由の一つとして,2条1項(1)に,「保険契約者,被保険者又はこれらの法定代理人の故意若しくは重大な過失又は法令違反によって生じた損害に対しては保険金を支払わない。」旨の規定が置かれているのである。そこで,本件約款の上記各規定を検討するに,1条1項は,保険会社は,同項(1)から(3)に規定する事故によって生じた損害に対して損害保険金を支払う旨の規定であるところ,2条は,「保険金を支払わない場合」について4項にわたって規定し,そのうちの1項において「次に掲げる事由によって生じた損害に対しては,保険金を支払わない。」とし,具体的に(1)ないし(8)の事由を規定している。このような各規定に用いられている文言及びその構成にかんがみると,本件約款上,保険金を支払わない場合の一事由として規定されている保険契約者等の故意又は重大な過失は,1条に規定する事故によって損害が生じたことを理由とする保 られている文言及びその構成にかんがみると,本件約款上,保険金を支払わない場合の一事由として規定されている保険契約者等の故意又は重大な過失は,1条に規定する事故によって損害が生じたことを理由とする保険金請求権の滅却をきたす場合として,保険者側が主張立証責任を負うべき事由と位置づけられているものと解することができる。 確かに,商法629条は,損害保険契約は偶然の事故によって生ずる損害を担保する契約である旨定めているが,同641条では,保険契約者又は被保険者の悪意又は重大なる過失によって生じた損害については保険者は免責される旨を定めており,また,同665条では,その本文において火災によって生じた損害はその火災の原因いかんを問わず保険者がこれをてん補する責任を負う旨規定し,そのただし書において上記641条の場合は除外する旨を規定している。加えて,保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失により,火災,爆発,盗難等の保険事故が発生するのは,一般的には例外的な場合であると解されるから,同629条の前記規定が,保険金を請求する側に,偶然の事故であることの主張立証責任まで負わせる趣旨を含むものと直ちに解することはできない。実際,被告の主張に従うと,放火により火災が発生した場合には,放火犯が保険契約者等と関係のないことを保険金請求者側において明らかにできない以上,保険金の支払を受けることができないことになりかねず,失火の場合と比較しても保険金請求者側に酷な結果をもたらすことになるといわざるを得ない。 したがって,原告が本件契約に基づき保険金を請求する場合においては,原告は,本件火災が発生したことを主張立証すれば足り,保険者である被告が,本件火災は原告の故意又は重大な過失によって生じたものであることについて主張立証責任を負うと解すべきである。よって,被 ては,原告は,本件火災が発生したことを主張立証すれば足り,保険者である被告が,本件火災は原告の故意又は重大な過失によって生じたものであることについて主張立証責任を負うと解すべきである。よって,被告の前記主張は採用できない。 (2) 先行火災の連絡を受けた際のCの言動について被告は,先行火災の連絡を受けた際のCの言動の不合理性からすれば,Cが先行火災の発生を予想していた可能性が高いと主張する。 ア乙6号証の1,証人Iの証言によれば,GのH及びIは,平成11年11月4日にCに電話をして先行火災の発生を知らせた際,Cがあまり驚いた様子ではなかったと感じたことが認められる。 しかし,上記は,あくまでもH及びIが電話を通して受けた印象にすぎず,H自身も「電話でのやり取りであるから実際の雰囲気は分からない。電話をした際に不審に思った点は特にない。」旨述べている(甲48号証,乙6号証の1)。前示のとおり,Cは,JのOからの電話に応対した後,再度就寝したところで,全く面識のなかったHからの電話を受けて応答したものであるから,先行火災の発生を告げられても直ちに反応できず,電話の相手方であるHに,あまり驚いていないような印象を与えたことも考えられ,また,Iからの電話は,既にHからの第一報を受けた後であったから,Cが驚いた反応を示さなかったのは必ずしも不自然なものではないともいえる。したがって,H及びIが,Cにはあまり驚いた様子がなかったと感じたからといって,直ちに,Cが先行火災の報告を受けても驚かなかったものと認めることはできない。乙6号証の1及び証人Iの証言によれば,Cは,Hからの連絡を受けた際,焼損の状況を尋ねて本件パチンコ店のホールには異常がないことを確認しており(乙6号証の1),Iからの連絡の際にも,同ホールの被害を心配している様子であったこ によれば,Cは,Hからの連絡を受けた際,焼損の状況を尋ねて本件パチンコ店のホールには異常がないことを確認しており(乙6号証の1),Iからの連絡の際にも,同ホールの被害を心配している様子であったことが認められることによれば,むしろ,Cは,先行火災の発生を告げられ,相当程度驚いていたものと認められる。 イ被告は,Cが,Iから,通用口のドアがこじ開けられていること,自動火災報知設備の電源が切れていること,及び,電話回線を復旧しないと警備のセンサーが作動しないことを告げられて,警察への通報を勧められていたにもかかわらず,「翌日現地に行く予定があるから,先行火災の現場を見てから警察に通報する。」旨答えて,直ちに警察に通報しなかったことについて,経営者の態度として極めて不合理である旨主張する。 しかし,前示のとおり,IらがCに先行火災の発生を連絡した時点では,先行火災は既に鎮火してしばらく経過した状況であって,本件パチンコ店のホールには一切被害が発生していなかったのであり,C自身も,Iらからの報告により上記の状況を認識していたのである。また,Cは,本件警備システムについては,電源が必要である旨の説明を事前に受けただけであり,自動火災報知設備の設置にも関与していなかったから,前記のようにIから本件警備システムの不具合を指摘されても,直ちに理解できなかったものと考えられる。そもそも,先行火災の第一発見者は,Gであるところ,Cの尋問の結果によれば,Cは,第一発見者が警備のプロであったから,その段階での警察への対応は,第一発見者であるGに任せておけばよいと考えたことが認められる。 以上の各事情を考慮すると,ドアがこじ開けられていたことや本件警備システムが作動しないこと等を聞いていながら,直ちに現場へ駆けつけたり,警察への通報をしなかったCの前記対応が たことが認められる。 以上の各事情を考慮すると,ドアがこじ開けられていたことや本件警備システムが作動しないこと等を聞いていながら,直ちに現場へ駆けつけたり,警察への通報をしなかったCの前記対応が,先行火災の発生を知った者のとる行動として通常あり得ないものとまでいうことはできず,被告の前記主張は採用できない。 ウそして,甲56号証並びに証人I及び同Wの各証言によれば,Cは,Iに対して「警察に届けなくていい。」との指示をしておらず,Iは,Cが翌日現地に来る予定であり,先行火災が既に鎮火している状況であったこと等を考慮して,自らの判断で警察に通報しなかったものと認めることができる。 エ以上によれば,先行火災の連絡を受けた際のCの言動に,格別,不自然,不合理な点を認めることはできない。したがって,Cの上記言動から,Cが先行火災の発生を予期していたとも,本件火災を発生させることを予定していたとも推認することはできず,この点に関する被告の主張は採用できない。 (3) 原告の当時の経済状態について被告は,当時の原告のひっ迫した経済状態からすれば,本件火災は原告が故意に招致した疑いが強いと主張する。 ア乙52号証の1によれば,平成11年3月時点で,原告には,4500万円余りの短期借入金と4億9000万円余りの長期借入金があったことが認められ,また,前示のとおり,平成10年7月に開店した本件パチンコ店も経営難のために平成11年8月末日で閉店せざるを得なくなり,同年9月以降は,中部電力の岡崎営業所から,未納電気料金の支払をたびたび督促され,支払がない場合には高山のホテルへの電気の供給を停止するとも予告されていたから,当時の原告は,経済的に相当苦しい状況であったものと認めることができる。 イしかし,甲15号証及びCの尋問の結果によれば,原告は,本件火災 山のホテルへの電気の供給を停止するとも予告されていたから,当時の原告は,経済的に相当苦しい状況であったものと認めることができる。 イしかし,甲15号証及びCの尋問の結果によれば,原告は,本件火災当時,高山のホテルでは月額650万円程度の売上げを,焼肉屋Bでは月額300万円程度の売上げをそれぞれ上げており,現在に至るまでこれらの経営を継続していることが認められる。本件建物の電気料金については,平成11年7月分までは多少の遅れはあっても各月分ごとに一括して中部電力に支払っており(乙5号証),同年8月分以降の未納分は,前示のとおり,平成12年8月31日までに完納しているのであり,また,平成11年1月7日に原告とX株式会社との間で締結したパチンコ機等のリース契約に基づく月額127万0500円のリース料金については,原告が本件パチンコ店を閉店する平成11年8月分までは毎月支払っており(乙12号証),同年9月分以降の未納分は,裁判上の和解により解決して,これに従い毎月の支払を履行しているのである(甲82,94号証)。また,原告は,本件パチンコ店の閉店に際して,パチンコ店の全従業員に約束通りの給料を支払っており,本件火災発生までの間に,原告が中部電力以外のものから支払の督促を受けていたことをうかがわせる事情は認められない。 ウ中部電力からの未納電気料金の督促に対しては,前示のとおり,Cは,本件火災の発生前においては,本件パチンコ店の売却益で一括支払をすることを念頭に,一部支払をしつつ支払猶予の交渉をしていたものであり,本件火災の発生後においては,まず,「本件火災により競売が先送りになったため,約束通りの支払は難しくなったが努力する。」と交渉し,2度目の交渉で初めて「保険金が支払われれば一括支払できるので待ってもらいたい。」旨の申出をしたものの ,「本件火災により競売が先送りになったため,約束通りの支払は難しくなったが努力する。」と交渉し,2度目の交渉で初めて「保険金が支払われれば一括支払できるので待ってもらいたい。」旨の申出をしたものの,「保険金を当てにして支払を待つわけにいかない。」と拒否されたために,結局,その翌日に,毎月20万円以上を分割払することで合意して,平成12年8月31日までにこれを完納したのであって,その間に高山のホテルへの電気の供給が止められたことは一度もなかったのである。 以上の経緯からすると,本件火災発生前の中部電力からの支払の督促が,当時の原告の経済状態では対応できないほど厳しいものであったとまでは認められないというべきである。 エ本件パチンコ店の売却の可能性について被告は,原告の主張する本件パチンコ店の売却計画は非現実的であり,本件火災発生前には,同店の売却計画は暗礁に乗り上げていた旨主張する。 しかし,前示のとおり,本件パチンコ店の閉店後,Cが,中部電力のPら及び電気工事の担当者等に対し,同店の売却を前提とする言動をとっていたこと,同店の売却をJに依頼し,Kらと売却の条件等についてしばしば相談しながら買手を探していたこと,Kは,2社程度を相手に本件パチンコ店の売却の話を具体的に進めており,本件火災発生前の時点では,1億7000万円から1億8000万円で売れるであろうと見込んでいたこと(証人K),Cは,本件火災の連絡を受けて現地に駆けつけた際に,競売に関する書類を持参しており(乙37号証),Kから「水濡れのために店の価値はなくなった。」と言われて,相当のショックを受けた様子を示していたこと,本件火災後も,C及びKは,本件パチンコ店の売却先を探し,具体的に買手の候補者を見つけて地主らとの打合せも行っていたこと(甲12,77号証,証人K,C)等の ショックを受けた様子を示していたこと,本件火災後も,C及びKは,本件パチンコ店の売却先を探し,具体的に買手の候補者を見つけて地主らとの打合せも行っていたこと(甲12,77号証,証人K,C)等の事情を総合すると,本件パチンコ店の閉店後,本件火災の発生までの間に,同店の売却の話は,Kらの関係者を交えて実現可能性のあるものとして具体的に進められていたものと認めるのが相当であり,被告の前記主張は採用できない。 なお,Cは,本件建物を自ら競売で落札することも考えていたところ,競売手続開始後である本件火災の発生時点においても,最低売却価額の2220万円を調達しておらず(甲83号証,乙37号証,証人K,C),これについてCは,借りる当てはあった旨供述するのみであるが,Cが,Mらから本件パチンコ店の開店資金等を実際に借りていたことなどの事情を考慮すると,Cの上記供述が根拠のないものとは直ちに認め難く,Cが上記の落札資金を調達していなかったことにより前記認定は左右されないというべきである。 オ以上の各事情を総合すれば,本件火災の発生当時,原告が経済的に相当苦しい状況であったとしても,放火をして火災保険金を取得することを計画せざるを得ないほどひっ迫した状況であったとまで認めることはできない。 (4) 本件契約の締結経緯について被告は,本件契約の締結に至る経緯の不自然性,異常性は,原告が故意に本件火災を招致したことを推認させる重大な事情であると主張する。 ア本件契約の締結時期について(ア) 前記認定事実によれば,本件契約は,先行契約が解除された後,半年以上経過してから再び締結されたものであり,原告が被告との交渉を始めてから本件契約締結に至るまでは約10日間,契約締結から本件火災の発生までは約2週間であることが認められる。 (イ) しかし,前示のとおり, してから再び締結されたものであり,原告が被告との交渉を始めてから本件契約締結に至るまでは約10日間,契約締結から本件火災の発生までは約2週間であることが認められる。 (イ) しかし,前示のとおり,Cの妻及びMは,先行契約の解除後,同契約の復活又は再契約について,高山支部のNに何度か相談していたのであり,また,甲81号証,Cの尋問の結果によれば,Cは,平成11年4月ころに先行契約の解除を知り,再契約をした方がいいと思いながらも,パチンコ台の入替えや共同経営等の問題の対応に追われるようになったため,C及び従業員が常に本件建物に居住していること並びに本件警備契約を締結していることから,早急に再契約をする必要までもないと判断したものと認められる。このような当時の具体的状況を考慮すると,先行契約の解除を知った後に,すぐに再契約をしなかったCの対応を不合理であるとまで評価することはできない。 (ウ) そして,前示のとおり,Cは,本件建物を退去する際,警備用の電源を残すための架設工事を行った上で本件警備契約を継続し,また,本件パチンコ店の駐車場に軽トラックを止めて人がいるように見せかけるなどしていたから,無人の本件建物の防犯には相当気を配っていたものと認めることができる。 加えて,Cは,Kらの協力を得ながら本件パチンコ店の売却の話を具体的に進めていたが,直ちに契約成立までには至らない見通しとなったために,無人の状態がCの予想以上に長引く可能性が高くなり不安が大きくなったこと,本件パチンコ店の周辺で道路工事が始まったため,駐車場に軽トラックを止めておいても防犯上の意味がなくなったこと,無人の建物が放火される場面をテレビドラマで見たことから,無人の本件建物も放火されたら大変であると更に不安を感じるようになったこと等の各状況を考慮すると,Cが,できる限り早 の意味がなくなったこと,無人の建物が放火される場面をテレビドラマで見たことから,無人の本件建物も放火されたら大変であると更に不安を感じるようになったこと等の各状況を考慮すると,Cが,できる限り早く保険に入りたいと考えて,被告と交渉を始めてから約10日後の平成11年10月22日(金)に,高山のホテルの契約更新手続と併せて本件契約を締結したことが,格別不自然で不合理であるとまで評価することはできないというべきである。なお,前記認定事実によれば,事前に原告から相談を受けていた高山支部のNは,高山のホテルの契約更新時に,本件建物に関する保険契約も締結に至る可能性があることをある程度認識していたものと解することができる。 (エ) また,保険契約を締結した後間もないうちに,保険の目的の建物が全く無関係の第三者に放火されることはあり得ないことではないから,本件契約締結後2週間足らずのうちに,本件火災が発生したことから,直ちに原告が故意に本件火災を招致した事実を推認することはできない。 イ保険金額の増額について(ア) 前記認定事実のとおり,原告は,先行契約では,設備及び什器等を目的とする保険金額を1億円と設定していたところ,本件契約ではこれを3億円に増額している。 しかし,資産評価について専門的な知識を有しているものとはうかがわれないCが精密な評価を行った上で保険金額を設定することは困難であり,C自身,「先行契約では,保険についてよく理解していないまま,これでよいと思って契約した。」旨述べている(甲83号証)。また,パチンコ店の建物及び内装を100件程度手がけ,被告の損害調査部からも工事費用の概算等の依頼を受けていたK(甲47,97号証)が,「本件パチンコ店に3億円の保険金がかけられていたと聞いても特に高いと思わなかった。」,「パチンコ店の売却 手がけ,被告の損害調査部からも工事費用の概算等の依頼を受けていたK(甲47,97号証)が,「本件パチンコ店に3億円の保険金がかけられていたと聞いても特に高いと思わなかった。」,「パチンコ店の売却に際しては,パチンコ台が設置されている機械装置である通称『島』が使えるか否かが一番問題であり,パチンコ台の機械装置に関する設備をまともに作ると2億円はかかり,本件パチンコ店と同規模の店を新築すれば少なくとも6億円はかかる。」などと述べていること(甲23ないし32号証,乙37号証,証人K)も考慮すると,先行契約における保険金額の方が本件契約におけるそれよりも適正であるとは直ちに認め難い。加えて,そもそも,被告自身が,建物設備1億5000万円及び什器備品1億5000万円との保険金額を了承して本件契約を締結している以上,被告としても,本件契約の締結時においては,本件建物の設備及び什器備品に3億円程度の価値があるものと認めていたことが推認されるから,本件契約の保険金額が不相当に高額であるとまで認めることはできないというべきである。 (イ) また,乙14号証の1によれば,本件契約における保険金額は,Cが電話でNに相談し,これを受けたNが,「パチンコ台等に大きな価値があるということであれば,1億から1億5000万円でどうですか。」,「ガラス保険を別に付けると保険料がかなり高くなります。」と助言するなど,両者による話合いの結果,設定されたものであり,Cが一方的に要求したものではないと認めることができる。 (ウ) そして,前示のとおり,原告は,当時,経済的に相当苦しい状況ではあったが,本件契約の保険料は月額6万0640円であって,先行契約と比べて月額1万6910円安くなっており,加えて,本件パチンコ店の閉店後もGに対する月額3万8000円の警備料は支払ってい 状況ではあったが,本件契約の保険料は月額6万0640円であって,先行契約と比べて月額1万6910円安くなっており,加えて,本件パチンコ店の閉店後もGに対する月額3万8000円の警備料は支払っていたこと(証人I),未納電気料金については本件パチンコ店の売却益により一括支払する予定でいたこと等の事情も考慮すると,原告に,本件パチンコ店を売却するまでの間,月額6万0640円の保険料を支払う経済的余裕がなかったとまで認めることはできない。 ウ以上のとおり,本件契約の締結に至るまでの具体的事情等を考慮すれば,本件契約の締結経緯に関し,原告が保険金目的で本件契約を締結して故意に本件火災を招致したことを強く推認させるほどの不自然な点を認めることはできないから,この点に関する被告の主張は採用できない。 (5) 内部犯の可能性についてア被告は,本件火災の放火犯は,警備対象外の裏口から侵入し,警備対象外の2階の従業員寮に放火しているから,本件警備システムを熟知している内部犯と推測され,怨恨や愉快犯による放火の可能性は全く考えられないと主張する。 しかし,本件火災の際には,既に本件警備システムは作動していなかったから,放火犯が実際に警備対象となっている部分を避けて行動していたかどうかは必ずしも明らかでない。また,乙1号証の2によれば,本件建物の4か所の出入口のうち,先行火災及び本件火災において侵入口となった通用口は,最も人目につきにくく侵入しやすい場所であったと認められるのであり,しかも,通用口のドアは,先行火災の際にいったん壊されていたものをIが手で直したにすぎない状態であったから,本件火災の放火犯が侵入する際には,これを壊すことはより容易であったと解される。 また,警察及び消防署は,本件火災の発生以前に先行火災の発生を覚知していなかったから,警察等 ぎない状態であったから,本件火災の放火犯が侵入する際には,これを壊すことはより容易であったと解される。 また,警察及び消防署は,本件火災の発生以前に先行火災の発生を覚知していなかったから,警察等による警戒が特に厳しく行われることもなかったものと考えられ,本件建物2階の従業員寮には布団やベッドもある(乙8号証の1)から,本件火災が発生した時期も考慮すると,寒さしのぎのために何者かが本件建物に侵入したことも考えられないではない。そして,乙1号証の5の2によれば,本件火災の2か所の出火場所には,特段の工作等がなされた形跡はなかったものと認められる。 以上によれば,原告に無関係な第三者が,外部から本件建物に侵入し放火した可能性も十分あるというべきであり,放火犯の侵入経路及び放火場所が警備対象外であったことから,直ちに本件警備システムを熟知した者がこれを避けて放火したものと推測することはできない。よって,被告の前記主張は採用できない。 イ Cは,被告からの資料提出の要求に応じて,本件パチンコ店の売上額を被告に提示したり,納税申告用のものと銀行提出用のものとを混在させたまま原告の決算書を提出したりしており(甲84号証,乙40号証の1),また,Cの妻は,本件パチンコ店の元従業員であるYに対し,本件火災に関する株式会社Lの聞き取り調査では知っていることを何でも話すように促している(乙8号証の1)ことによると,Cらは,本件火災に関する被告の調査に対し,全く警戒することなく協力していたものと解される。 そして,前示のとおり,原告が,当時,保険金をだまし取ることを計画せざるを得ないほど経済的にひっ迫した状況にあったとも,保険金を取得する目的で本件契約を締結したとも認めることはできないのであり,Cは,Kらの協力を得ながら本件パチンコ店の売却の話を具体的に進め 画せざるを得ないほど経済的にひっ迫した状況にあったとも,保険金を取得する目的で本件契約を締結したとも認めることはできないのであり,Cは,Kらの協力を得ながら本件パチンコ店の売却の話を具体的に進めていたものであって,平成11年11月5日の午後1時に同店で売却の相談や鍵の受渡しをすることを予定して,本件火災が発生した同日午前5時45分ころは高山にいたのである。加えて,本件火災の発生に関して原告招致の火災と考えなければ説明できないような事情は認められないこと,原告が本件火災までに取得した保険金は,平成10年9月22日の台風の被害に対し支払われた52万1942円の保険金のみであること(乙31号証,乙40号証の1,乙64号証の1ないし5)等の事情をも考慮すると,本件全証拠によっても,C又はCの意を受けた者が本件火災を発生させたものと推認することはできないというべきである。 なお,被告は,平成12年10月11日に発生した本件盗難事件についても,CないしCの意を受けた者によって偽装されたものと推認できると主張するが,Cが本件盗難事件に関与していた事実を認めるに足りる証拠はなく,被告の主張は採用できない。 (6) 以上のとおりであって,原告が本件火災を故意に招致した事実を推認することはできないから,争点(1)に関する被告の主張は採用できない。 3 争点(2)(本件火災の発生について原告に重過失が認められるか。)について被告は,Cが,I及びHから先行火災の連絡を受けていたのに直ちにこれに対する対策をとらず,Iらに警察に通報しなくてよいと指示したことが本件火災の発生に関する原告の重過失に当たる旨主張する。 しかし,前述したように,先行火災の連絡を受けた後のCの対応が,火災の発生を知った者のとる行動として通常あり得ないものとまでは認められず,また,Cは, 発生に関する原告の重過失に当たる旨主張する。 しかし,前述したように,先行火災の連絡を受けた後のCの対応が,火災の発生を知った者のとる行動として通常あり得ないものとまでは認められず,また,Cは,Iらに警察へ通報しなくてもよいとの指示をしていないから,本件火災の発生に関し,原告に,本件約款上の免責事由である重大な過失に相当する落ち度があったものと認めることはできない。よって,被告の主張は採用できない。 4 争点(3)(本件契約が公序良俗に反して無効であるか。)について被告は,本件契約は原告が保険金の不正取得を目的として締結したものであるから,公序良俗に反して無効である旨主張する。しかし,前示のとおり,本件契約の締結経緯から原告が保険金を不正に取得する目的で本件契約を締結したものと推認することはできず,また,他にこれを認めるに足りる証拠はない。よって,被告の主張は採用できない。 5 争点(4)(本件火災による原告の損害)について(1) 原告は,本件火災によって発生した損害は合計3億3288万3615円であると主張するが,甲4,23ないし32,97号証,乙37号証,証人Kの証言によれば,上記金額は,本件火災により使用不能になったものと原告が主張している設備及び什器等の取替えに要する費用であると認められる。損害保険契約において,不動産その他の使用財産に保険を付した場合には,再取得価格を保険価額とする旨の特約等がない限り,取得価格から減損額を控除した額を保険価額とすべきであるから,原告が主張する上記金額の全額を,本件契約に基づき原告が支払を受けるべき損害額と解することはできない。 (2) 被告は,原告は本件パチンコ店の開業にあたって既存の店舗の設備及び造作を修繕したにすぎないから,設備及び造作は本件建物の所有者である有限会社Dの所有に属すると主 害額と解することはできない。 (2) 被告は,原告は本件パチンコ店の開業にあたって既存の店舗の設備及び造作を修繕したにすぎないから,設備及び造作は本件建物の所有者である有限会社Dの所有に属すると主張する。しかし,被告は,当初,「原告は平成10年5月ころDから本件建物内設備備品(営業権)を7000万円で購入した。」旨主張していたのであり,また,甲103,104号証,乙66号証によれば,被告の損害調査部のUは,本件建物の設備等に関する売買の経緯やDから原告への所有権移転を確認し得る資料の存否について,平成11年12月27日にC及びDの社長から説明を受けた事実が認められるところ,その際に,Dの社長から,原告に所有権が移転していない設備等が存在する旨の説明があったことをうかがわせる事情は何ら認められない。確かに,本件建物の賃貸借契約書(甲101号証)には,Dが本件建物内の設備等を所有していることをうかがわせる記載も認められ,また,Dから原告あての7000万円の領収証(平成10年5月12日付け。甲100号証)のただし書には,「店舗の機械・設備一式及び営業権の売買」と記載されているが,上記の売買は本件建物の賃貸借契約の締結後に行われていること,及び,前述のとおり,Dが本件建物内の設備等に関して自己の所有権を主張した事情はうかがわれないことを考慮すると,原告は,本件パチンコ店の開店に先立ち,Dから,本件建物内の機械及び設備一式並びに営業権を7000万円で購入したものと認めるのが相当であり,被告の前記主張は採用できない。 なお,乙12号証によれば,本件火災時に本件パチンコ店内にあったパチンコ機及びパチスロ機のうち,パチンコ機68台及びパチスロ機30台(別紙図面の赤色部分)はX株式会社とのリース契約によるリース物件であると認められるから,上記の遊技機 に本件パチンコ店内にあったパチンコ機及びパチスロ機のうち,パチンコ機68台及びパチスロ機30台(別紙図面の赤色部分)はX株式会社とのリース契約によるリース物件であると認められるから,上記の遊技機の損害分は,原告の損害には含まれないものと解すべきである。 (3)アまた,被告は,前記のリース契約の対象となったパチンコ機及びパチスロ機について,その保険会社が認定した損害率は46.57パーセントであるから,原告所有のパチンコ機及びパチスロ機の損害率も同様に考えるべきであると主張する。 しかし,前示のとおり,本件火災により,本件建物は合計3万リットルの放水を受けたのであり,乙1号証の5の1添付の3平面図及び乙67号証によれば,原告が所有するパチンコ機及びパチスロ機のうちの少なくとも7割近くは,上記放水により水に濡れたものと認めることができ,また,甲97号証,乙37号証,証人Kの証言によれば,水に濡れたパチンコ機及びパチスロ機は,ほとんど使い物にならないものと解される。加えて,平成5年4月から被告の損害調査部において勤務しているUは,平成11年11月6日,同月12日及び同月17日の3回にわたり,本件火災の現場において被害状況の検証を行った上で,パチンコ台及びコンピュータ等の機械設備について,「全面的に冠水しており全損」との外観上の判断をしている(甲46,47,87号証,105号証の1及び2,乙66号証)のであり,また,Uとともに本件火災の現場において被害状況を調査したV鑑定人は,平成14年3月13日作成の鑑定書(乙53号証)では,パチンコ機の損害率を全体で77.5パーセント,パチスロ機の損害率を全体で50パーセントと判断し,平成14年11月6日に再作成した鑑定書(乙70号証)においては,パチンコ機の損害率を全体で79.28パーセント,パチスロ 体で77.5パーセント,パチスロ機の損害率を全体で50パーセントと判断し,平成14年11月6日に再作成した鑑定書(乙70号証)においては,パチンコ機の損害率を全体で79.28パーセント,パチスロ機の損害率を全体で50パーセントと判断しているのである。 以上を総合すると,本件火災による原告所有のパチンコ機及びパチスロ機の損害率が,全体で50パーセント以下であると認めることはできず,被告の主張は採用できない。 イさらに,被告は,V鑑定人作成の鑑定書(乙53号証)に記載されたパチンコ機及びパチスロ機の評価額は,パチンコ遊技機についての専門家による鑑定結果ではないから相当でなく,株式会社Zの「遊技機評価額に関する調査」(乙55号証の1)における評価によるべきであると主張する。しかし,再作成された鑑定書(乙70号証)においても,パチンコ機及びパチスロ機の評価額は,当初の鑑定書(乙53号証)と同額とされていること等を考え併せると,上記の「遊技機評価額に関する調査」における評価額の方が適正であるとは直ちに認め難く,被告の主張は採用できない。 (4) 以上の各事情に,乙1号証の5の1,53,67,70号証を総合すると,本件火災により原告が被った損害は,造作設備一式(消費税及び取片付費用を含む。)7083万5894円,什器備品一式(取片付費用を含む。)7005万6032円及び臨時費用500万円の合計1億4589万1926円と解するのが相当である。なお,上記損害額の内訳は,別紙損害額一覧表記載のとおりであり,同表の保険価額欄記載の各金額は,造作設備一式に関しては乙53号証の鑑定書の保険価額欄記載の各金額に0.7を乗じたもの,什器備品一式に関しては同欄記載の各金額によったものであるが,同表の①及び②の各欄記載の金額については,乙70号証の鑑定書の結果を は乙53号証の鑑定書の保険価額欄記載の各金額に0.7を乗じたもの,什器備品一式に関しては同欄記載の各金額によったものであるが,同表の①及び②の各欄記載の金額については,乙70号証の鑑定書の結果を考慮して算定したものである。また,同表の損害率欄記載の各数値は,乙53号証の鑑定書の損害率欄記載の各数値によっているが,同表の③,④,⑤及び⑥の各欄記載の数値については,乙1号証の5の1添付の3平面図及び乙67号証から水に濡れたと推測できる範囲,並びに乙70号証の鑑定書の結果を総合して算定したものであり,同表の取片付費用は,乙53号証の鑑定の結果によるものであるが,同表の⑦及び⑧の各欄記載の金額については,乙70号証の鑑定書の結果を考慮して算定したものである。 6 争点(5)(債務不履行に基づく損害)について原告は,本件訴訟に要した弁護士費用600万円は,本件契約に基づく保険金の支払を拒否した被告の債務不履行と相当因果関係のある損害であると主張する。しかし,一般的に,債権者が債務者の債務不履行を理由とする請求を弁護士に委任した上で訴えをもってする場合に,その弁護士費用を債務の不履行によって通常生じる損害と解することは困難である。ただし,不法行為に基づく損害賠償を求めるための訴訟遂行を弁護士に委任した場合と対比して考えると,債務不履行が著しく反社会的,反倫理的なものに当たる場合や,債務者が故意又は過失によって債権者の請求に対し違法に抗争したことが認められる場合などにおいて,債権者が自己の権利を擁護するために訴えを提起することを余儀なくされたときの訴訟遂行の委任に要した弁護士費用は,特別の事情によって生じた損害として債権者が債務者に対して賠償を請求することができると解する余地があるものというべきである。 これを本件についてみると,前記認定事実及 行の委任に要した弁護士費用は,特別の事情によって生じた損害として債権者が債務者に対して賠償を請求することができると解する余地があるものというべきである。 これを本件についてみると,前記認定事実及び本件全証拠を総合しても,被告の本件契約上の債務の不履行が著しく反社会的又は反倫理的な行為に該当するものとまでは認められず,また,原告の保険金支払請求に対する被告の本件抗争が,被告の故意又は過失による違法な行為であるとも認めることはできない。したがって,原告が本件訴訟に要した弁護士費用を請求することはできないものというべきである。よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の主張は採用することができない。 7 結論以上のとおりであって,原告の被告に対する本訴請求は,1億4589万1926円,及び,これに対する,被告が原告から保険金の支払の請求を受けた後であることが明らかな平成12年4月1日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条を,仮執行宣言に付き同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官佐久間邦夫裁判官佐藤真弘裁判官松田敦子
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