【DRY-RUN】主 文 原判決中被告人Aに対する麻薬所持罪の点を除きその余の部分を破棄す る。 被告人Bを懲役六月に、被告人A、同Cを各同四月に処する。 但被告人三名に対し本判決確
主文原判決中被告人Aに対する麻薬所持罪の点を除きその余の部分を破棄する。 被告人Bを懲役六月に、被告人A、同Cを各同四月に処する。 但被告人三名に対し本判決確定の日から各三年間何れも右刑の執行を猶予する。 本件控訴中被告人Aの麻薬所持に対する部分を棄却する。 理由検察官が陳述した控訴の趣意は原審検察官米野操作成の同趣意書に記載の通りであり、これに対する被告人A、同Cの弁護人下尾栄の答弁は何れも同人等提出の答弁書に記載の通りであるから、ここにこれを引用する。 原判決には被告人等に対し、無罪の言渡をした理由に付、詳細な説明はないが記録を精査すると原裁判当時本件薬品は既に存在せず(従つて鑑定を命ずること不能)その鑑定書すらもない為、それが果して麻薬取締法規所定の麻薬に該当するかどうか科学的に確定し得ないことを主たる理由とするものであることを推測し得る。 よつて先ず麻薬事犯にあつては麻薬である旨の鑑定を待つにあらざれば常に有罪の認定をなし得ないか否かの点に付按ずるに、麻薬事犯においては当該薬品が該取締法規所定の麻薬に該当することが核心であり先決問題であること勿論である。しかるに麻薬なりや否やは専門的知識を待つて始めて判明し素人の推断を許さない科学上の問題である故原則的には専門家の鑑定によるべきこと、また当然と云わねばならない。しかしながらこれはどこまでも原則であつて如何なる場合にも例外を認めないと云う訳ではない。例えば非現行犯であつて検挙当時既に現品が存在しない場合は勿論、検挙当時現品は存在していたがその後滅失し或は稀少であるか変質した為鑑定不能の如き場合にまで右の原則を貫こうとすれば麻薬事犯の如きはその一半の検挙又は処罰を不能ならしめる不合理に陥るであろう。 <要 検挙当時現品は存在していたがその後滅失し或は稀少であるか変質した為鑑定不能の如き場合にまで右の原則を貫こうとすれば麻薬事犯の如きはその一半の検挙又は処罰を不能ならしめる不合理に陥るであろう。 <要旨>かがる場合には右原則の例外として鑑定以外の証拠によりその麻薬であるか否かを判定するを許し、唯々こ</要旨>の場合事柄の性質に鑑みその証拠は特に厳格なる実験則に照らし高度の信憑性を客観的に有するものに限るとなすを最も条理に適した解決と信ずる。 本件に付いて検討すると本件の薬品は検挙当時既に存在せず従つて裁判所においては勿論捜査官においてもまたその鑑定を嘱託するに由なかつたこと記録によりこれを看取し得る。かかる事情にある一方被告人中Bは薬剤師(薬麻取扱者)他の被告人両名は何れも医師(被告人Cは麻薬取扱者、被告人Aは昭和二十二年八月まで同上)であつて何れも麻薬に関し相当の知識と経験とを併せ有するものであるところ自己が被告人である本件において検察官の取調に際しては勿論差戻前の第一審公判においても何れも本件薬品が全部塩酸モルヒネであることを素直に認め(尤被告人等は差戻後の第一審公判においては右薬品が塩酸モルヒネであつたかどうか判らないと述べているが記録を精読すると該陳述は何等か為にするものと認められ到底信用できない)なお被告人A及B(同被告人は同人が被告人Cから買受けた二〇瓦を小分けしてDに分譲)から右薬品を入手服用した原審相被告人Dは麻薬中毒者(本件薬品服用後中毒者となつたか以前から中毒者であつたかはこの場合論外)であること記録によつて洵に明白である、かかる事情の下における本件においては正に前示原則に対する例外として検察官所論の被告人等の各供述及Dの供述により該薬品が塩酸モルヒネであることを表裏から認定するも何等実体法並訴訟法に違背するもので かかる事情の下における本件においては正に前示原則に対する例外として検察官所論の被告人等の各供述及Dの供述により該薬品が塩酸モルヒネであることを表裏から認定するも何等実体法並訴訟法に違背するものでないと云うべきである。果してそうだとすれば冒頭記載の如き理由により被告人等に無罪の言渡をした原判決(但被告人Aに対する麻薬所持罪の点を除く)には所論の違法がある。従つて原判決中右除外部分を除くその余の部分に対する本件控訴は理由がある。 本件控訴中右除外部分に対する分は右公訴事実に対する証明がないのでその理由がない。 よつて刑事訴訟法第三百九十七条により原判決(但前示除外部分を除く)を破棄し同法第四百条但書に則り次の通り自判し、本件控訴中右除外部分に対する部分はその理由がないので同法第三百九十六条に従いこれを棄却する。 第一、被告人Bは薬剤師であつて麻薬取扱者(麻薬小売業者及家庭麻薬小売業者)の免許を有する者であるがその業務の目的以外のために、(一) 昭和二十三年九月下旬頃肩書自宅において被告人Cから塩酸モルヒネ二〇瓦を代金二万八千円で譲り受け、(二) 同二十四年二月下旬右自宅においてDに対し、塩酸モルヒネ〇、二瓦を代金五百円で譲り渡し、第二、被告人Aは医師ではあるが麻薬取扱者の免許を有していないに拘らず昭和二十三年六月二十五日と同月二十八日頃の二回に小倉市a町のD方で同人に対し、塩酸モルヒネ各一瓦宛を代金合計金四千四百巴で販売し、第三、被告人Cは医師であつて麻薬取扱者の免許を有していたものであるがその業務目的のためではなく同二十三年九月下旬頃被告人Bの前示自宅で同人に対し、塩酸モルヒネ二〇瓦を代金二万八千円で譲り渡し、たものである。 右の事実中第一の(一)、第三の点は一、原審第二回公判調書(差戻前)中被告人B、C 年九月下旬頃被告人Bの前示自宅で同人に対し、塩酸モルヒネ二〇瓦を代金二万八千円で譲り渡し、たものである。 右の事実中第一の(一)、第三の点は一、原審第二回公判調書(差戻前)中被告人B、Cの各供述記載一、検事富田正己作成に係る被告人Bの第一回供述調書一、同検事作成に係る被告人Cの供述調書一、福岡県知事の麻薬取扱業務停止処分命令書第一の(二)の点は一、原審第五回公判調書(差戻後)中訴因及罰条変更請求書の記載に対し被告人Bの事実は相違ない旨の陳述(訴因及罰条の変更請求書記録四〇二丁)一、前顕検事作成に係る原審相被告人Dの第二回供述調書第二の点は一、原審第一回公判調書(前同)中被告人Aの陳述一、同第四回公判調書(前同)中同被告人の供述(但数量の点を除く)一、前出検事作成に係る前同Dの第二回供述調書(但数量並回数の点を除く)一、同第一回公判調書(差戻前)中被告人Aの昭和二十二年八月麻薬取扱者の認可証を返納した旨の供述記載を綜合し、本件薬品が何れも塩酸モルヒネである点に付いては右の外なお被告人等及前出Dの差戻前第一審第二回公判における起訴状並進起訴状記載の公訴事実は相違ない旨の各陳述及Dの検事に対する前顕供述書の記載によつて明な同女は麻薬中毒者であり本件譲受けの薬品は全部その為自己に使用した事実をも綜合し判示事実全部を認定する。 法律に照らすと、被告人Bの判示第一の(一)(二)の点は何れも昭和二十八年法律第十四号麻薬取締法附則第16同二十三年法律第百二十三号麻薬取締法第三条第二項第一項本文第五十七条第一項に該当するところ右は刑法第四十五条前段の併合罪であるから所定刑中懲役刑を選択し、同法第四十七条第十条により犯情の重い第一の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役六月 十七条第一項に該当するところ右は刑法第四十五条前段の併合罪であるから所定刑中懲役刑を選択し、同法第四十七条第十条により犯情の重い第一の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役六月に処し、被告人Cの判示第三の点は昭和二十八年法律第十四号麻薬取締法附則第16同二十三年法律第百二十三号麻薬取締法第三条第二項第一項本文第五十七条第一項に該当するところ所定刑中懲役刑を選択しその刑期範囲内で同被告人を懲役四月に処し、被告人Aの判示第二の点は昭和二十三年法律第百二十三号麻薬取締法附則第七十四号同二十一年厚生省令第二十五号麻薬取締規則第二十三条第五十六条第一項第一号に該当するところ所定刑中懲役刑を選択しその刑期範囲内で同被告人を懲役四月に処し、なお刑法第二十五条を適用し被告人三名に対し本裁判確定の日から三年間何れも右刑の執行を猶予すべきものとする。 よつて主文の通り判決する。 (裁判長判事下川久市判事青木亮忠判事鈴木進)
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