- 1 - 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴提起以後に生じた訴訟費用はすべて控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が控訴人に対して平成17年3月4日付けでした控訴人の平成14年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額255万6850円,納付すべき税額6万3200円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,山形県が施行する土地収用法3条1号所定の道路事業の用地としてその所有地を同県に売却し,同県から地上建物の移転補償金(以下「本件建物移転補償金」という。)の支払を受けた控訴人が,本件建物移転補償金につき,これを租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)33条3項2号所定の補償金として同条1項の適用を受けることを選択して所得税の申告をしたところ,山形税務署長から,本件建物移転補償金には上記規定の適用がなく,その金額を当該年分の一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであることを前提として,その旨の更正処分(以下「本件処分」という。)を受けたことに関し,控訴人が,被控訴人に対し,本件処分には措置法の上記規定及び所得税法44条の解釈適用を誤った違法及び理由を付記しなかった違憲,違法があると主張して,本件処分のうちその申告に係る税額等を超える部分の取消しを求めた事案である。 原判決は,本件建物移転補償金の対象となった地上建物は,第三者に譲渡された後,当該第三者によって曳行移転され,取り壊されずに現存しているから,本件建物移転補償金につき措置法33条3項2号による同条1項の適用を受けることは認められず,所得税法44条の適用の前提を欠くから,その全額を一- 2 -時所得の金額の計算上総 に現存しているから,本件建物移転補償金につき措置法33条3項2号による同条1項の適用を受けることは認められず,所得税法44条の適用の前提を欠くから,その全額を一- 2 -時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであるとし,本件処分に理由付記がないことが違憲,違法とはいえないとして,控訴人の請求を棄却し,控訴人が控訴したものの,差戻し前の控訴審判決(当裁判所平成▲年(行コ)第▲号)も,原審の判断を支持して控訴人の控訴を棄却した。 これに対し,控訴人が上告受理申立てをしたところ,最高裁判所は,理由付記がないことの違憲,違法をいう部分を排除した上でこれを受理し,上告審判決(同裁判所平成▲年(行ヒ)第▲号同22年3月30日第三小法廷判決)は,建物移転補償金の対象となった建物が曳行移転された場合であっても,①建物移転補償金中取壊し工事費に相当する部分のうち,上記曳行移転の費用に充てられた部分があれば,当該部分は,所得税法44条の適用を受け,また,②控訴人が主張するように当該建物が曳行移転に際して無償で第三者に譲渡されたのであれば,これにより控訴人には当該建物の取壊しに準ずる損失が生じたものということができ,控訴人は,建物移転補償金の交付の目的に従い,これをもって上記の損失を補填するとともに移転先として当該建物に代わる建物を建築して取得したということができるから,同条又は措置法33条1項の適用を受ける部分があり得るとし,これらの点について更に審理を尽くす必要があるとして,上記控訴審判決を破棄し,本件を当審に差し戻した。 以上の次第で,当審における争点は,本件建物移転補償金について所得税法44条ないし措置法33条の適用を受ける部分があるか否かに絞られている。 2 関係法令の定め(1) 措置法33条1項は,資産が土地収用法等の規定に基づい 争点は,本件建物移転補償金について所得税法44条ないし措置法33条の適用を受ける部分があるか否かに絞られている。 2 関係法令の定め(1) 措置法33条1項は,資産が土地収用法等の規定に基づいて収用され,補償金を取得する場合(1号),資産について買取りの申出を拒むときは同法等の規定に基づいて収用されることとなる場合において,当該資産が買い取られ,対価を取得するとき(2号)など,個人の有する資産で同項各号に規定するものが当該各号に掲げる場合に該当することとなったときにおいて,当該個人が当該各号に規定する補償金等の額の全部又は一部に相当する金額- 3 -をもって当該各号に規定する収用等により譲渡した資産に代わるべき資産の取得をしたときは,当該個人については,その選択により,当該収用等により取得した補償金等の額が当該代替資産の取得価額以下である場合にあっては,当該譲渡資産の譲渡がなかったものとし,当該補償金等の額が当該取得価額を超える場合にあっては,当該譲渡資産のうちその超える金額に相当する部分について譲渡があったものとして,措置法及び所得税法における譲渡所得に関する規定を適用することができる旨を定めている。 措置法33条3項2号は,土地等が同条1項1号,2号等の規定に該当することとなったことに伴い,その土地の上にある資産につき取壊し又は除去をしなければならなくなった場合において,その資産の損失に対する補償金で政令で定めるものを取得するときは,同条1項の規定の適用については,その資産について収用等による譲渡があったものとみなし,その補償金の額をもって同項に規定する補償金等の額とみなす旨を定めている。そして,租税特別措置法施行令(平成16年政令第105号による改正前のもの)22条16項2号は,上記の政令で定める補償金として,当該資産 額をもって同項に規定する補償金等の額とみなす旨を定めている。そして,租税特別措置法施行令(平成16年政令第105号による改正前のもの)22条16項2号は,上記の政令で定める補償金として,当該資産の損失につき土地収用法88条等の規定により受けた補償金その他これに相当する補償金を定めている。 (2) 所得税法44条は,その本文において,居住者が,土地収用法の規定による収用その他政令で定めるやむを得ない事由の発生に伴いその者の資産の移転等の費用に充てるための金額の交付を受けた場合において,その交付を受けた金額をその交付の目的に従って上記の費用に充てたときは,その費用に充てた金額は,その者の各種所得の金額の計算上,総収入金額に算入しない旨を定め,ただし書において,その費用に充てた金額のうち各種所得の金額の計算上必要経費に算入され又は譲渡に要した費用とされる部分の金額に相当する金額については,この限りでない旨を定めている。そして,所得税法施行令(平成16年政令第100号による改正前のもの)93条は,上記の- 4 -政令で定めるやむを得ない事由として,措置法33条3項2号に規定する事由に基づく同号に規定する資産の取壊し又は除去を定めている。 3 前提事実(証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)(1) 控訴人の平成14年分所得税に係る課税経過は,別紙「課税経過一覧表」記載のとおりである。 (2) 控訴人は,昭和58年,山形県東村山郡α町β×番の土地909.81平方メートル(以下「控訴人所有地」という。)を取得し,その後,同土地上に居宅(以下「本件居宅」という。)及びその附属建物である物置・車庫(以下「本件物置・車庫」という。)を新築して,同所に居住していた。 (3) 山形県は,その施行する土地収用法3条1号所定の事業である一般 (以下「本件居宅」という。)及びその附属建物である物置・車庫(以下「本件物置・車庫」という。)を新築して,同所に居住していた。 (3) 山形県は,その施行する土地収用法3条1号所定の事業である一般県道整備事業の用に供するため控訴人所有地のうち171.93平方メートル(以下「本件土地」という。)を必要としたことから,平成13年11月30日,控訴人に対し,本件土地の買取りと地上物件の移転の申出をした。 控訴人は,これに応じ,同年12月7日,同県との間で,控訴人が本件土地を代金481万4040円で同県に売却するとともに,その上に存する物件を移転し,同県がその移転及び損失の補償として控訴人に対し建物移転補償金6624万1000円(本件建物移転補償金)を含む合計8324万3600円の補償金(以下「本件各補償金」という。)を支払う旨の契約(以下「本件補償契約」という。)を締結し,平成14年9月26日までに同県からその支払を受けた。なお,本件各補償金の内訳は,本件建物移転補償金のほか,立木移転補償金217万7000円,工作物移転補償金1082万8900円,動産移転補償金67万3600円及び移転雑費補償金332万3100円(以下,順次「本件立木移転補償金」,「本件工作物移転補償金」,「本件動産移転補償金」,「本件移転雑費補償金」という。)である。(本件補償契約の内容につき乙10)(4) 控訴人は,本件土地等の代替資産として,平成13年12月7日,α町内- 5 -の別の土地を取得し,平成14年3月5日,その代金として3615万3682円を支払い,また,その土地上に居宅を新築し,その対価として平成15年11月30日までに4267万7315円(上記土地の代金と合計して7783万0997円)を支払った。 他方で,控訴人は,平成14年5月22日,A及 その土地上に居宅を新築し,その対価として平成15年11月30日までに4267万7315円(上記土地の代金と合計して7783万0997円)を支払った。 他方で,控訴人は,平成14年5月22日,A及びB(以下,この両名を併せて「Aら」という。)に対し,控訴人所有地から本件土地を除いた残地の一部330.58平方メートル(以下「本件残地」という。)を本件居宅と共に代金1200万円で売却する旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,同年7月30日までにその代金の支払を受けた。Aらは,本件土地と本件残地にまたがって存在していた本件居宅を,同年8月5日,本件残地の上に曳行移転した。本件居宅は,現在まで取り壊されずに本件残地の上に存在し,本件居宅から分割登記された本件物置・車庫も,控訴人の所有物として,現在まで取り壊されずに存在している。 (5) 控訴人は,不動産仲介業,農業及び不動産貸付業を営んでいたところ,控訴人の平成14年分の事業所得の金額は50万6609円の損失であり,不動産所得の金額は0円で,雑所得の金額は4万6096円である。また,同年分の控訴人の所得控除の額は合計176万6600円である。 (6) 控訴人は,平成14年分の所得税の申告において,本件土地の売却代金に加え,本件建物移転補償金を含む本件各補償金のうち合計8188万3940円について措置法33条1項2号,3項2号の適用を受けることを選択し,平成16年3月26日,山形税務署長に対し,総所得金額255万6850円,分離長期譲渡所得の金額0円,納付すべき税額6万3200円とする修正申告書を提出した(別紙「課税経過一覧表」記載の「修正申告②」)。 これに対し,山形税務署長は,本件建物移転補償金には措置法33条3項2号の適用がなく,その全額6624万1000円を一時所得 る修正申告書を提出した(別紙「課税経過一覧表」記載の「修正申告②」)。 これに対し,山形税務署長は,本件建物移転補償金には措置法33条3項2号の適用がなく,その全額6624万1000円を一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであることを前提として,平成17年3月4日,- 6 -総所得金額3562万4425円,分離長期譲渡所得の金額0円,納付すべき税額978万7000円とする更正処分(本件処分)をした。 (7) 山形県においては,「山形県土木部に属する公共事業に必要な用地の取得または事業の施行に伴う損失補償基準及び同細則」と題する訓令(昭和39年2月28日訓第2477号。乙37。以下,平成11年4月1日訓用第1号による改正後の同訓令を「山形県補償基準」という。)を制定し,任意買収における損失補償についてもこれに基づいて補償額を算出している。 (8) 山形県補償基準28条1項は,取得する土地に取得しない建物等があるときは,当該建物等の通常妥当と認められる移転先に,通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償する旨を定めている。 そして,山形県補償基準の細則によれば,建物の通常妥当と認められる移転方法として,再築工法,曳家工法,改造工法,復元工法が掲げられ,これら各移転工法及び除却工法毎に建物の移転費用相当の補償金の算定方法が示されているところ,うち再築工法による補償においては,建物の現在価額,運用益損失額及び取壊し工事費の合計額から発生廃材の価額を差し引いた金額をもって補償金の額とすべきものとされている。(乙37)(9) 本件建物移転補償金は,再築工法により建物を移転するものとしてその金額が算出されている。(乙39) 4 争点及び当事者の主張本件における主要な争点は,本件建物移転補償金につき措置法3 (9) 本件建物移転補償金は,再築工法により建物を移転するものとしてその金額が算出されている。(乙39) 4 争点及び当事者の主張本件における主要な争点は,本件建物移転補償金につき措置法33条1項,3項又は所得税法44条の適用を受ける部分があるか否かであり,この点に関する当事者双方の主張は次のとおりである。 なお,原審及び差戻し前の控訴審において争点の一つとされていた,本件処分に理由付記のないことが適正手続の保障(憲法31条)や財産権の保障(同法29条)の趣旨に反し,又は行政手続法14条に違反するか否かは,控訴人の上告受理の申立てを最高裁判所が受理するに当たって,この点に係る上告受- 7 -理申立事由が排除されたので,当審における争点とはなっていない。 (1) 被控訴人の主張ア本件居宅の曳行移転費用は,全額Aらが負担し,控訴人の負担部分はないから,本件建物移転補償金のうち曳行移転費用に充てられた金額は0円であり,取壊し工事費用に準ずるものとして所得税法44条の適用を受ける部分はない。 イ控訴人とAらとの本件売買契約に係る契約書(乙12)には,代金の内訳として本件居宅が200万円,本件残地が1000万円である旨の記載がある。本件居宅は,この契約書(以下「本件売買契約書」という。)に記載のとおり,Aらに代金200万円で有償譲渡されたものであり,この点は,買主の一人であるAも認めている。そうすると,本件居宅につき取壊しに準ずる損失が控訴人に生じていたということはできないから,本件建物移転補償金につき,所得税法44条や措置法33条が適用される余地はない。 ウしたがって,本件建物移転補償金について所得税法44条や措置法33条が適用される部分はないから,本件建物移転補償金の全額を一時所得の計算上総収入金額に算入すべきで 条が適用される余地はない。 ウしたがって,本件建物移転補償金について所得税法44条や措置法33条が適用される部分はないから,本件建物移転補償金の全額を一時所得の計算上総収入金額に算入すべきであることを前提とする本件処分は適法である。 (2) 控訴人の主張ア本件居宅の曳行移転費用につき,全額Aらが負担して,控訴人の負担部分がないことは認める。 イ控訴人は,当初,Aらには本件残地のみを売り渡し,本件居宅は控訴人において取り壊す予定で,Aらとの間で,本件残地の代金額を1200万円(1坪当たり12万円)と合意した。その後,Aらから,本件残地の購入資金をC労働金庫(現在のD労働金庫。以下「労働金庫」という。)から借り入れるに当たって,買受人が居住する地上建物が存在することが融- 8 -資の条件とされているので,本件居宅も形式的に売買物件に加えて値段をつけてほしいと要望され,控訴人は,この要望に応えて本件売買契約書を作成したが,代金額は1200万円のままとした。以上の経緯で,控訴人は,本件売買契約書の記載にかかわらず,実際には本件残地のみを1200万円で有償譲渡し,本件居宅は対価を受けずに無償譲渡したものであるから,本件居宅の取壊しに準ずる損失を生じたものということができる。 ウしたがって,本件建物移転補償金の少なくとも一部については所得税法44条又は措置法33条の適用が受けられるから,本件建物移転補償金の全額を一時所得の金額の計算上総収入に算入すべきであることを前提とする本件処分は違法であり,上記各法条が適用される金額の範囲で取り消されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(本件建物移転補償金についての所得税法44条ないし措置法33条の適用の有無)について(1) 上記第2の3の前提事実(以下,単に「前提事実 消されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(本件建物移転補償金についての所得税法44条ないし措置法33条の適用の有無)について(1) 上記第2の3の前提事実(以下,単に「前提事実」という。)のとおり,控訴人は,山形県が施行する土地収用法3条1号所定の事業である一般県道整備事業の用地として,その所有する本件土地を山形県に売り渡したことに伴い,同県に対し,本件土地上に存する本件居宅及びその附属建物であった本件物置・車庫を移転することを約し,その移転及び損失の補償として,同県から本件建物移転補償金の支払を受けたものであるところ,かかる本件建物移転補償金は,本来,控訴人の一時所得の収入金額と見るべきものである。 (2) もっとも,上記物件のうち,少なくとも本件居宅については,控訴人はAらにこれを譲渡し,本件土地上から本件残地上に曳行移転させることにより,上記移転義務を果たしたものということができるから,仮に,控訴人において,上記曳行移転の費用の全部又は一部を負担したものとすれば,その負担した金額は,本件建物移転補償金のうちからその交付の目的に従って移転等- 9 -の費用に充てた金額として,所得税法44条の適用を受けるべきものとなる。 しかしながら,控訴人が本件居宅の曳行移転費用を負担していないことは,当事者間に争いがないから,本件建物移転補償金のうち,移転等の費用に充てた金額として,所得税法44条の適用を受けるべき部分は結局存在しないことになる。 (3)アまた,前提事実のとおり,本件建物移転補償金は,山形県補償基準(細則を含む。)が定める建物の通常妥当と認められる移転方法のうち,再築工法により建物を移転するものとしてその金額が算出されており,その算出方法は,建物の現在価額,運用益損失額及び取壊し工事費の合計額から発 む。)が定める建物の通常妥当と認められる移転方法のうち,再築工法により建物を移転するものとしてその金額が算出されており,その算出方法は,建物の現在価額,運用益損失額及び取壊し工事費の合計額から発生廃材の価額を差し引いた金額をもって補償金の額とするものであるところ,証拠(乙39)及び弁論の全趣旨によれば,本件建物移転補償金のうち本件居宅に係る部分についての具体的な算出過程及び補償金の額は次のとおりである。 建物の現在価額 3947万6795円運用益損失額 1178万0811円取壊し工事費 354万5179円発生廃材の価額 0円差引補償金額 5480万2785円イしかるところ,仮に,控訴人の主張するとおり,控訴人がAらに対し,本件居宅をその対価を受けずに無償で譲渡したものであるとすれば,本件居宅は,取り壊されてはいないものの,個人であるAらに無償で譲渡され,本件土地上から移転されたことになるから,これにより控訴人には本件居宅の取壊しに準ずる損失が生じたものということができ,控訴人は,本件建物移転補償金の交付の目的に従い,これをもって上記損失を補填するとともに,移転先として本件居宅に代わる建物を建築して取得したということができる。そうとすれば,本件建物移転補償金のうち本件居宅に係る5- 10 -480万2785円については,①従前の建物(本件居宅)の現在価額から発生廃材の価額を差し引いた3947万6795円はその全額について,②運用益損失額1178万0811円は,代替建物の建築費用の額と従前の建物の現在価額との差額に係る従前建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する部分について,③取壊し工事費354万5179円は,そのうちに本件居宅の曳行移転の費用に充てられた部分 建築費用の額と従前の建物の現在価額との差額に係る従前建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する部分について,③取壊し工事費354万5179円は,そのうちに本件居宅の曳行移転の費用に充てられた部分があるときは,当該部分について(ただし,上記(2)のとおり,控訴人は本件居宅の曳行移転費用を負担しておらず,取壊し工事費のうち本件居宅の曳行移転の費用に充てられた部分は現実には存在しない。),実質的に補償金交付の目的に従って支出されたものとして,所得税法44条の適用を受け,上記①の部分は,更に,従前の建物の対価に相当するものとして,措置法33条3項2号所定の補償金に該当し,同条1項の適用を受けることとなる。 ウそこで,控訴人からAらへの本件居宅の譲渡が有償であったか無償であったかという点について検討する。 証拠(乙12,38)によれば,①本件売買契約書には本件売買契約の対象物件を本件残地及び本件居宅とした上,売買代金を1200万円とし,そのうち本件残地分は1000万円(坪当たり10万円),本件居宅分は200万円とする旨が記載されていること,②控訴人とAらとの間では,本件売買契約に関して,本件売買契約書のほかに,これと異なる内容の別の売買契約書(以下「本件別契約書」という。)が作成されているところ,本件別契約書は,売買代金を2200万円とし,そのうち本件残地分は1200万円(坪当たり12万円),本件居宅分は1000万円とする点において,本件売買契約書と異なっており(他の部分は本件売買契約とほぼ同じ内容である。),Aらが労働金庫から融資を受けるに当たって労働金庫に提出したのは本件別契約書であることが認められる。 しかるところ,被控訴人は,本件売買契約書の記載どおり控訴人は本件- 11 -居宅を代金200万円でAらに売却したものと主張する たって労働金庫に提出したのは本件別契約書であることが認められる。 しかるところ,被控訴人は,本件売買契約書の記載どおり控訴人は本件- 11 -居宅を代金200万円でAらに売却したものと主張するのに対し,控訴人は,実際には本件残地のみを代金1200万円で売却し,本件居宅はAらに無償譲渡したものであるとした上,それにもかかわらず,本件売買契約書に本件居宅の代金が200万円であるかのように記載したのは,Aらから,本件残地の購入資金を労働金庫から借り入れるため,本件居宅についても形式上値段をつけてほしいと要望されたからであると主張し,控訴人の陳述書(甲6)にはこれに沿う記載部分がある。 しかしながら,本件売買契約における買主の一人であるAの作成に係る陳述書(乙40)には,本件居宅は,本件売買契約書に記載のとおり代金200万円を支払って控訴人から買い受けたものであり,無償譲渡されたものではない旨の記載があることに加え,上記認定のとおり,控訴人とAらとの間では,本件売買契約書のほかに,売買代金を2200万円とし,そのうち本件残地分は1200万円(坪当たり12万円),本件居宅分は1000万円とする本件別契約書が作成され,Aらが労働金庫から融資を受けるに当たってはこれを労働金庫に提出したことに照らすと,Aらの要望により,労働金庫からの借入れの便宜のために形式上本件売買契約書に本件居宅の代金を200万円と記載したとする控訴人の上記陳述記載部分を直ちに信用することはできない。そうすると,本件売買契約書の記載どおり控訴人は本件居宅を代金200万円でAらに売却したものと認めるのが相当であり,他にこの事実を覆すに足りる証拠はない。 したがって,本件居宅がAらに無償で譲渡されたことを前提とする,上記イのような本件建物移転補償金についての所得税法44条, 却したものと認めるのが相当であり,他にこの事実を覆すに足りる証拠はない。 したがって,本件居宅がAらに無償で譲渡されたことを前提とする,上記イのような本件建物移転補償金についての所得税法44条,措置法33条1項の適用は,結局認められないというほかはない。 (4) 以上のとおり,本件建物移転補償金につき,所得税法44条ないし措置法33条が適用される余地はないから,本件建物移転補償金は,その全額を一時所得の金額の計算上総収入に算入すべきである。 - 12 - 2 控訴人の総所得金額及び納付すべき税額について前提事実によれば,控訴人の平成14年分の総所得金額及び納付すべき税額は次のとおりとなる。 (1) 前提事実(5)のとおり,控訴人の平成14年分の事業所得の金額は50万6609円の損失,不動産所得の金額は0円,雑所得の金額は4万6096円である。 (2) 総合長期譲渡所得に係る収入金額は,本件立木移転補償金217万7000円であって,その取得費として5%に相当する10万8850円を控除すると譲渡益は206万8150円となり,さらに譲渡所得の特別控除額50万円を控除した156万8150円が総合長期譲渡所得の金額となる。 (3) 分離長期譲渡所得の金額は,次のとおりである。 ア本件補償契約に関するもの本件補償契約に基づく山形県に対する本件土地の売買代金481万4040円に加え,対価補償金の性質を有する本件工作物移転補償金1082万8900円が,分離長期譲渡所得に係る収入金額となるところ,前提事実(6)のとおり,控訴人は,これらにつき措置法33条の規定の適用を受けることを選択している。そして,これらの合計額1564万2940円は,前提事実(4)の代替資産の取得金額の合計額7783万0997円以下であるから,同条1,2項により, 置法33条の規定の適用を受けることを選択している。そして,これらの合計額1564万2940円は,前提事実(4)の代替資産の取得金額の合計額7783万0997円以下であるから,同条1,2項により,その譲渡はなかったものとされ,これに係る分離長期譲渡所得の金額は0円となる。 イ本件売買契約に関するもの本件売買契約における売買代金1200万円からその取得費として5%に当たる60万円を控除すると,本件売買契約についての分離長期譲渡所得に係る譲渡益は1140万円となる。 ウその他の土地売買に関するもの控訴人は,山形市に対し,平成13年11月28日付けで同市内の土地- 13 -を代金1681万9460円で売却したが,その取得費及び譲渡に要した費用は合計2143万8200円である(当事者間に争いがない。)。そうすると,この譲渡についての分離長期譲渡所得に係る損益は461万8740円の損失となる。 エ上記ウの分離長期譲渡所得に係る譲渡損失461万8740円は,上記イの分離長期譲渡所得に係る譲渡益1140万円から控除すべきであるから,結局,控訴人の分離長期譲渡所得の金額は,本件売買契約に係る678万1260円である。 (4) 上記1のとおり,本件建物移転補償金は,本来,控訴人の一時所得の収入金額と見るべきものであり,かつ,これにつき所得税法44条及び措置法33条は適用されないから,その全額である6624万1000円が一時所得に係る収入金額となる。そして,このことは,本件各補償金のうち,本件動産移転補償金67万3600円及び本件移転雑費補償金332万3100円についても同様であり,結局,控訴人の一時所得に係る収入金額は,これらを合計した7023万7700円となる。他方,これらの収入を得るために支出した金額は0円であるから,一時所得 金332万3100円についても同様であり,結局,控訴人の一時所得に係る収入金額は,これらを合計した7023万7700円となる。他方,これらの収入を得るために支出した金額は0円であるから,一時所得の金額は,上記収入金額から一時所得の特別控除額50万円を控除した6973万7700円となる。 (5) 総所得金額を計算する場合において,事業所得の金額や譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは,政令で定める順序により,これを他の各種所得の金額から控除するものとされているところ(所得税法69条),関係政令によれば,上記(1)の事業所得の損失50万6609円は,まず雑所得の金額4万6096円から控除され,さらにこれによって控除しきれない金額が上記(3)の分離長期譲渡所得の金額678万1260円から控除される。この損益通算の結果,雑所得の金額は0円,分離長期譲渡所得の金額は632万0747円となるが,控訴人は措置法35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除の規定の適用を選択しているから,上記分離長期譲渡所得の金- 14 -額632万0747円から所定の特別控除額が更に控除され,結局,分離長期譲渡所得の金額は0円となる。 (6) 以上によれば,上記(2)の総合長期譲渡所得及び上記(4)の一時所得以外の所得の金額はいずれも0円となり,総所得金額は,上記総合長期譲渡所得及び一時所得の所得金額の各2分の1に相当する78万4075円と3486万8850円との合計額(所得税法22条2項2号)である3565万2925円となる。そして,課税総所得金額は,この金額から前提事実(5)の所得控除の額176万6600円を差し引いた3388万6000円(国税通則法118条1項により1000円未満の端数切捨て)であり,これに対する所得税額(定率税額控除額を控除した から前提事実(5)の所得控除の額176万6600円を差し引いた3388万6000円(国税通則法118条1項により1000円未満の端数切捨て)であり,これに対する所得税額(定率税額控除額を控除した後の額)は979万7800円となって,この額が納付すべき税額となる。 3 前記2で算出された総所得金額及び納付すべき所得税の額は,本件処分による更正後の金額を下回るものではないから,本件処分にこれを取り消すべき違法はない。したがって,控訴人の請求は理由がない。 第4 結論以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官石原直樹 裁判官瀬戸口壯夫 - 15 - 裁判官谷村武則
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