- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨( )原判決を取り消す。 ( )控訴人らが被控訴人らに対し平成15年7月23日付けでした監査請求 に対して,被控訴人らが同月29日付けでした却下通知を取り消す。 ( )訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁主文と同旨第2事案の概要 本件は,控訴人らが被控訴人らを相手として,平成15年7月29日付けで被控訴人らがした控訴人らの住民監査請求を却下する旨の通知(以下「本件却下通知」という)は,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)3条2項。 。 の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると主張して,その取消しを求めた抗告訴訟である。 原審は,①住民監査請求において,住民は,自己の法律上の利益に直接かかわりあいのない事項について,自己の個人的な利益のためではなく,専ら住民全体の利益のため,いわば公益の代表者としての住民の立場において請求することが認められているにすぎず,このため,住民監査請求に対してされる監査委員による監査等あるいはその拒絶は,請求をした住民の個人的な権利義務あるいは法的地位に影響を与えるものではない,②住民監査請求の却下通知を受けたとしても,これによって,請求をした住民の個人的な権利義務あるいは法的地位が影響を受けることはないから,住民監査請求の却下通知は,行訴- 2 -法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には該当しない,③したがって,本件却下通知の取消しを求める本件訴えは不適法であると判断し,本件訴えを却下すべきものとした。これに対し,控訴人らが本件控訴の申立てをした。 前提事実 たる行為」には該当しない,③したがって,本件却下通知の取消しを求める本件訴えは不適法であると判断し,本件訴えを却下すべきものとした。これに対し,控訴人らが本件控訴の申立てをした。 前提事実及び当事者の主張は,原判決第2「事案の概要」の1及び2(原判決2頁14行目冒頭から同6頁9行目末尾まで)のとおりであるから,これを引用する(ただし,同記載中,同4頁1行目から同2行目にかけてのもの及び同5行目のものを除く「決定」を,いずれも「通知」に改める。 。)第3当裁判所の判断 住民監査請求の制度は,普通地方公共団体の住民に対し自己の法律上の利益にかかわりあいのない住民としての資格に基づき,監査委員に対し監査その他一定の必要な措置を講ずべきことを請求することを認めたものである。したがって,住民監査請求に対して監査委員が地方自治法242条3項所定の監査を行うか否かは,請求人である住民の個人的な権利義務ないし法的地位に何らの影響を及ぼすものではなく,同項,4項,9項が当該住民に各項所定の監査結果等の事項を通知するべき旨を定め,6項が当該住民に証拠の提出及び陳述の機会を与えるべき旨を定めているのも,前者は当該住民に住民監査請求の結果を知らせて住民訴訟の提起のための判断資料を与え,後者は当該住民に住民監査請求の趣旨内容をより明らかにする機会を与える立法目的に出たものである。これらの規定からすると,住民が一種の自治参加という人格的利益を享受する権利を付与したものと解することもできるが,地方自治法は,その利益の享受,権利の最終的実現を住民訴訟を提起することによってさせるものとし,住民訴訟提起権能を付与したものであって,住民監査請求の結果(請求却下や監査の結果の通知等)について不服申立ての行政手続等を何ら定めていない。 また,住民監査請求却下や ることによってさせるものとし,住民訴訟提起権能を付与したものであって,住民監査請求の結果(請求却下や監査の結果の通知等)について不服申立ての行政手続等を何ら定めていない。 また,住民監査請求却下や監査結果の通知等は,直接住民の権利義務を形成したり,その範囲を制限したりする行政庁の行為ではない。これらのことを総合- 3 -すると,監査委員による住民監査請求の却下通知は,行訴法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には該当しないことが明らかである。なお,本件却下通知は,以前になされた住民監査請求と同一の請求であることを理由としているが,以前になされた住民監査請求については不適法な住民監査請求として却下されているところ,同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることができる(最高裁平成10年12月18日第三小法廷判決・民集52巻9号2039頁)ので,本件却下通知,,の理由はその適法性に疑問があるが本件却下通知が不適法であったとしても上記説示は妥当し,その救済は住民訴訟の提起によるべきであり,抗告訴訟によってその取消しを求めることはできない。 控訴人らは,自己の法律上の利益とかかわりなく,住民としての資格に基づき認められた手続であっても,その手続を自ら行うについて法律上の利益が認められる場合もあるとし,その例として,各地方公共団体が条例によって定める情報公開請求手続における情報公開請求権を挙げているが,一般に,情報公開請求権については,条例上,同請求却下等の行政庁の行為についてこれを処分とし,行政手続上不服申立権が認められて住民個人の権利として立法され,抗告訴訟の対象とされているものであるから,上記例の場合と同視するのは適切でない。 また,控訴人らは,地方公共団体の財政の是正方法として, 続上不服申立権が認められて住民個人の権利として立法され,抗告訴訟の対象とされているものであるから,上記例の場合と同視するのは適切でない。 また,控訴人らは,地方公共団体の財政の是正方法として,是正対象,是正手段の面から見て,住民訴訟より住民監査請求の方が広範であり,より踏み込んだ,実質的な地方財政の改善が期待できるとし,このことを理由の一つとして住民監査請求を司法審査の下に置くべき旨主張するが,仮に住民監査請求にそのような効用が認められるとしても,監査委員によるその却下通知が行訴法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないことが前示のとおりである以上,これを処分の取消しの形式をもって司法審査の対象にすることができないことはいうまでもないところである。 - 4 - 以上の次第で,本件却下通知は,行訴法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当せず,その取消しを求める本件訴えは不適法であるから,これを却下すべきものとした原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官鬼頭季郎裁判官福岡右武裁判官納谷肇
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