平成24(ネ)2928 不正競争行為差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成25年9月26日 大阪高等裁判所
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判決文本文33,301 文字)

平成25年9月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年第2928号不正競争行為差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成23年第12566号)(口頭弁論終結日平成25年4月25日)判決 控訴人(1審原告)大幸薬品株式会社 同訴訟代理人弁護士柴田弘典 同岩瀬吉和 同川端康弘 同森田慈心 被控訴人(1審被告)キョクトウ株式会社 同訴訟代理人弁護士藤井夫 主文 1 控訴人の本件控訴並びに当審における請求(変更後の差止請求・廃棄請求及び予備的損害賠償請求)をいずれも棄却する。 2 当審における訴訟費用は全部控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,原判決別紙被告表示目録1記載の表示を使用し,又は,同表示を用いた商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのため展示してはならない。 3 被控訴人は,原判決別紙被告表示目録2記載の包装を使用し,又は,同包装を用いた商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのため展示してはならない。 4 被控訴人は,第2項記載の表示,同表示を表示した宣伝用カタログその他の 2記載の包装を使用し,又は,同包装を用いた商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのため展示してはならない。 4 被控訴人は,第2項記載の表示,同表示を表示した宣伝用カタログその他の 広告物及び同表示の印刷用原版を廃棄せよ。 5 被控訴人は,第3項記載の包装,同包装を表示した宣伝用カタログその他の広告物及び同包装の印刷用原版を廃棄せよ。 6 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成23年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 訴訟費用は,第1審,第2審とも被控訴人の負担とする。 8 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,控訴人が,被控訴人の行為が,①不正競争防止法(以下「法」という。)2条1項2号の他人の商品等表示として著名な原判決別紙原告表示目録記載1ないし3の各商品表示(以下「控訴人表示1」〈原告表示1〉ないし「控訴人表示3」〈原告表示3〉といい,併せて「控訴人各表示」〈原告各表示〉という。)と同一又は類似の商品表示を使用した商品を譲渡する行為に当たるとして,又は②法2条1項1号の他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されている控訴人各表示と同一又は類似の商品表示を使用した商品を譲渡し,胃腸薬である控訴人商品と混同を生じさせる行為であるとして,被控訴人に対し,法3条に基づき,原判決別紙被告表示目録記載1,2の各表示(以下「被控訴人表示1」〈被告表示1〉,「被控訴人表示2」〈被告表示2〉といい,併せて「被控訴人各表示」〈被告各表示〉という。)の使用差止め並びに被控訴人表示1の表示を付した包装及び被控訴人表示2の包装の廃棄を求めるとともに,法4条本文に基づき,1000万円の損害賠償及びこれに対する平成23年10月15日(訴状送達の日の翌日 用差止め並びに被控訴人表示1の表示を付した包装及び被控訴人表示2の包装の廃棄を求めるとともに,法4条本文に基づき,1000万円の損害賠償及びこれに対する平成23年10月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却するとの判決をし,これに対し,控訴人が本件控訴をして,差止請求及び廃棄請求に係る請求の趣旨を控訴の趣旨第 2ないし第5項のとおりに変更し,損害賠償請求(控訴の趣旨第6項)の予備的請求原因として不法行為を追加した。 2 前提となる事実(証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア控訴人は,医薬品及び動物用医薬品,医薬部外品,農業薬品,化粧品の製造,販売並びに輸出入等を目的とする会社である。 イ被控訴人は,医薬品・医薬部外品・動物用医薬品・化粧品・医療用具の製造並びに販売等を目的とする会社である。 (2) 控訴人の商品表示控訴人は,控訴人各表示を使用して,胃腸薬である控訴人商品(後記参照)を製造販売している(なお,控訴人商品には瓶詰タイプの製品とPTP包装タイプの製品の2種類がある。)。 (3) 被控訴人の行為等被控訴人は,平成21年2月ころから(甲41,乙6),被控訴人表示2の包装を使用して,胃腸薬である被控訴人商品(後記参照)を製造販売している(ただし,上記包装を使用して販売することにより,いかなる商品表示を使用しているといえるかについては,後記のとおり争いがある。)。 (4) 控訴人商品及び被控訴人商品控訴人商品と被控訴人商品は,いずれもクレオソートを主成分とする胃腸薬(以下「本件医薬品」という。)のうち,一般に「糖衣錠」と称される種類の錠剤で )。 (4) 控訴人商品及び被控訴人商品控訴人商品と被控訴人商品は,いずれもクレオソートを主成分とする胃腸薬(以下「本件医薬品」という。)のうち,一般に「糖衣錠」と称される種類の錠剤である。 3 争点(1) 控訴人各表示は,控訴人の商品表示として周知著名なものであるか(争点1)。 (2) 被控訴人各表示は,控訴人各表示と同一又は類似の商品表示であるか等(争点2)。 (3) 被控訴人の行為は,控訴人商品と混同を生じさせるものであるか(争点3)。 (4) 被控訴人各表示は,普通名称を普通に用いられる方法で使用したもの(法19条1項1号)に該当するか(争点4)。 (5) 被控訴人の行為は,不法行為に該当するか(争点5)。 (6) 被控訴人が損害賠償責任を負う場合に控訴人に対して支払うべき損害額はいくらか(争点6)。 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(控訴人各表示は,控訴人の商品表示として周知著名なものであるか。)について次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」第3の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 【原判決の補正】ア 5頁14行目冒頭から15行目末尾までを「控訴人表示3は,控訴人商品の直方体箱入りの包装表示であり(ただし,原判決別紙原告表示目録3では,正面と左側面のみを記載),その具体的な構成を正面部と左側面部を中心に特定すると,以下のとおりである。」と改める。 イ 6頁13行目末尾の後に「控訴人による控訴人商品のテレビ・ラジオ・新聞等での広告宣伝では,全てに自他商品識別機能を有する『ラッパのマーク』又は『大幸薬品』の両方又は一方が入っている。」を加え,15行目の「原告表示3」の後に「(控訴人商品の包装箱の表示)」を加える。 ( 告宣伝では,全てに自他商品識別機能を有する『ラッパのマーク』又は『大幸薬品』の両方又は一方が入っている。」を加え,15行目の「原告表示3」の後に「(控訴人商品の包装箱の表示)」を加える。 (2) 争点2(被控訴人各表示は,控訴人各表示と同一又は類似の商品表示であるか等。)について次のとおり,原判決の補正をし,当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 【原判決の補正】ア 7頁17行目冒頭から18行目末尾までを「被控訴人表示2は,被控訴人商品の直方体箱入りの包装表示であり(ただし,原判決別紙被告表示目録2では,正面と右側面のみを記載),その具体的な構成を正面部と右側面部を中心に特定すると,以下のとおりである。」と改める。 イ 10頁5行目末尾の後に「被控訴人商品には,被控訴人が控訴人商品を識別する機能を有するものとして主張するラッパのマークに対応するような識別マークは付されていない。」を加える。 ウ 11頁13行目末尾の後に「なお,『S』の文字は,正露丸,供給先のドラッグストア(株式会社サンドラッグ〈以下「サンドラッグ」という。〉)のストア・ブランド的意味や,スペシャル,スーパー等の意味を込めて用いており,色合いや曲線表現により,柔らかさ,優しさを出し,糖衣錠の飲みやすさを印象付けている。」を加える。 【控訴人の補充主張】ア被控訴人表示1の使用 控訴人商品及び被控訴人商品を含む,いわゆる一般用医薬品(医師による処方箋を必要とせずに購入できる医薬品)は,薬局,ドラッグストア等で販売されており,同業他社の類似製品が薬局やドラッグストアの同じ若しくは近接した棚に並び販売されることも多く,各製造販売会社は当該医療品の効能によって同業他社製 医薬品)は,薬局,ドラッグストア等で販売されており,同業他社の類似製品が薬局やドラッグストアの同じ若しくは近接した棚に並び販売されることも多く,各製造販売会社は当該医療品の効能によって同業他社製品との差別化を図ろうと試みることはもちろん,当該製品のパッケージ(包装)についても他社製品に比して,できる限り需要者の目に留まるように工夫する必要がある。そして,一般用医薬品商品の包装に,当該製品の正面部に商品名を,文字のフォント,色,大きさ等を変えた上で,横書きで2段ないし3段に上から下へ,左から右へ向けて表記して,一連に商品名が称呼される商品(例えば,「ムヒアルファEX」,「アリナミンEXPLUS」, 「サンテFXネオ」,「キューピーコーワゴールドA」,「ポポンピュメリ錠VA」,「マイティアCLクール」等)が多数存在している。このような商品等表示を普段自然に目にしている取引者ないし需要者は,こういった商品等表示に慣れており,当該商品表示を,無意識のうちに,あるいは,無理なく,一連の商品表示ないし一体の商品表示として認識するというのが実情である。これを被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)についてみると,取引者又は需要者の視線が,自然に,上側から下側へ,そして,左側から右側に移動していくことによって,被控訴人商品は「正露丸糖衣S」と認識され,「セイロガントーイエス」と称呼されるものである。  市場で先行する著名商品が存在する場合,同種の後行商品に触れた,通常の注意力を有する取引者及び需要者は,後行商品の商品名は,先行著名商品のそれではないかと反応する。控訴人商品の控訴人表示2は,平成7年4月まで(遅くとも別件の大阪地裁判決で著名性が認定された平成11年)には,全国的な著名性を獲得しており,控訴人という特定の会社により製造され ないかと反応する。控訴人商品の控訴人表示2は,平成7年4月まで(遅くとも別件の大阪地裁判決で著名性が認定された平成11年)には,全国的な著名性を獲得しており,控訴人という特定の会社により製造された商品及び「セイロガントーイエー」という称呼が浸透している中で,取引者ないし需要者は,無意識のうちに,これを脳裏に記憶されている控訴人各表示に引き付けるものであり,その結果,同種の著名商品が存在しない場合に比して,被控訴人表示2を「セイロガントーイエス」と称呼する蓋然性は高まる。このことは,控訴人が新たに行ったアンケート調査の結果(甲69~72)からも裏付けられている。  したがって,被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)には,被控訴人表示1が使用されている。 イ控訴人表示1及び控訴人表示2と被控訴人表示1との類似性 法2条1項2号(著名商品等表示)の場合 法2条1項2号の立法趣旨は,フリーライド(ただ乗り)やダイリューション(希釈化)等を防止することで永年の営業上の努力により高い信用・名声・評判を有するに至った著名表示のブランドイメージを保護する点にあるところ,その類似性については「容易に著名表示を想起させるほど似ている表示」といえるかどうかによって判断されている。また,同号の類似性の判断においては,立法趣旨に鑑み背景の取引事情も十分に勘案することが必要であり,従前の関係,表示選択動機,表示に現れた悪意等の要素も斟酌されるべきであると解され,著名表示のブランドイメージを保護するという観点からも,不正競争者にフリーライドの意図が認められるような場合には,当該行為に対しては厳しく考えていかなければならないとされている。さらに,同号の類似性は,法2条1項1号の類似性と同様,対比観察ではなく,離隔的観察によって判断されるべ が認められるような場合には,当該行為に対しては厳しく考えていかなければならないとされている。さらに,同号の類似性は,法2条1項1号の類似性と同様,対比観察ではなく,離隔的観察によって判断されるべきものとされている。 これを本件についてみるに,「セイロガントーイエー」と「セイロガントーイエス」とは,「エー」と「エス」とで最初の母音が共通しており,また10文字という長い称呼の中の最後の1文字が異なるのみであり,その称呼もほぼ同じである。また,同じ家庭医薬品で「A」と「S」を用いる同系の医薬品が多数存在し,共通する名称に異なる名称を付加したシリーズ商品が見られ,そのことは需要者にとっても顕著な事実であることからすると,セイロガン糖衣Aと正露丸糖衣Sとがシリーズ商品であるとの誤認が需要者に生じるおそれがある。このような医薬品業界における医薬品の商品名に関する現状その他の取引の実情に鑑みると,被控訴人表示1を目にした際,控訴人表示1ないし控訴人表示2が容易に想起され,被控訴人商品が控訴人商品の関連商品として観念されるほどに似ているという客観的状況があるといえる。そして,被控訴人は,平成8年ころから,薬事法による承認を受けた販売名を「正露 丸糖衣キョクトウ」と称して被控訴人商品を製造販売しているところ,発売開始当時の包装は,包装の正面に「キョクトウ」の文字を使用して,「キョクトウ製」であることを全面にアピールするデザインで,控訴人商品である「セイロガン糖衣A」のそれとは相当異なっていた。その後,平成18年ころの包装変更を経て,平成21年2月ころ(遅くとも平成22年12月ころ)より,被控訴人商品は現行の包装(被控訴人表示2)で販売されるに至った。被控訴人は,被控訴人商品を製造販売するに当たって,その包装を自由に採択することができるに ころ(遅くとも平成22年12月ころ)より,被控訴人商品は現行の包装(被控訴人表示2)で販売されるに至った。被控訴人は,被控訴人商品を製造販売するに当たって,その包装を自由に採択することができるにもかかわらず,無数に選択し得る包装の中から,被控訴人表示2を用い始めた経緯は明らかに不自然であって,控訴人が昭和56年11月から使用している著名表示である控訴人表示3に類似させ,フリーライドを試みようとした意思が強く推認される。 したがって,被控訴人表示1は,控訴人表示1及び控訴人表示2と類似する。  法2条1項1号(周知商品等表示)の場合法2条1項1号は,2号とは異なり,「混同」を要件としている以上,類似性の判断においては,混同が発生する可能性があるか否かという点が重視され,かつ市場における需要者の判断が基準となると解されており,取引の実情の下において,取引者又は需要者が両表示の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当であるとされている(出所混同防止の基準)。 これを本件についてみるに,「セイロガントーイエー」(控訴人表示1及び控訴人表示2)と「セイロガントーイエス」(被控訴人表示1)については,最後の文字を「エー」と発音するか「エス」と発音するかのみの差であり,かつ前述のとおり,市場において控訴人表示1及び控 訴人表示2は「セイロガン糖衣A」ブランドとしての地位を確立し,取引者及び需要者との関係で優に周知性が認められる取引環境にあることに鑑みれば,市場における需要者は,両表示を混同する可能性があることに疑いの余地はない。 したがって,法2条1項1号との関係でも,被控訴人表示1と控訴人表示1及び控訴人表示2との間に類似性 ことに鑑みれば,市場における需要者は,両表示を混同する可能性があることに疑いの余地はない。 したがって,法2条1項1号との関係でも,被控訴人表示1と控訴人表示1及び控訴人表示2との間に類似性は認められる。 ウ控訴人表示3と被控訴人表示2との類似性 控訴人表示3のようないわゆるパッケージ(包装)デザインは,控訴人表示1及び控訴人表示2のような文字表示に比して,その色,デザイン,ロゴ等の模様も相まって視覚的に需要者の脳裏に残りやすいことからすれば,控訴人表示1及び控訴人表示2に比して,より控訴人商品を識別・想起させる商品表示として,需要者の間に周知著名になっていたといえる。  控訴人表示3及び被控訴人表示2の包装の態様は,以下の点において,正面部及び側面部のいずれにも類似性が認められる。 a 正面部における類似性 控訴人表示3の下半分全体に大きくアルファベットの欧文字が1字記載されているのに対し,被控訴人表示2の下半分全体にも大きくアルファベットの欧文字が1字記載されている。  控訴人表示3の大きなアルファベットの欧文字は,金色で表示されているのに対し,被控訴人表示2のアルファベットの欧文字は,文字表示部は背景色であるオレンジ色になっているが,それを控訴人表示3と同様の金色が取り囲むように表示され,いずれにおいても,全体として,欧文字は,金色の印象を与えるように表示されている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2には,いずれものアルファベ ットの欧文字の中央付近を横切るように赤いラインが用いられている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2には,セイロガンないし正露丸の文字の真下に「糖衣」という文字が記載されており,その文字は赤い図形上に,白抜き文字で記載されている。  控訴人表示3及び被控訴  控訴人表示3及び被控訴人表示2には,セイロガンないし正露丸の文字の真下に「糖衣」という文字が記載されており,その文字は赤い図形上に,白抜き文字で記載されている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2はいずれもオレンジ色を背景とした上で,赤色,黒色及び白色を用いて商品名等の文字が記載されている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2にはいずれも黒字で「飲みやすい白い錠剤」と記載されている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2にはいずれも,右下に黒字で錠数が記載されている。 b 側面部における類似性 控訴人表示3の右半分全体に大きくアルファベットの欧文字が1字記載されているのに対し,被控訴人表示2の右半分にも大きくアルファベットの欧文字が1字記載されている。  控訴人表示3の大きなアルファベットの欧文字は,金色で表示されているのに対し,被控訴人表示2のアルファベットの欧文字は,文字表示部は背景色であるオレンジ色になっているが,それを同様の金色が取り囲むように表示され,いずれにおいても,全体として,欧文字は,金色の印象を与えるように表示されている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2には,いずれものアルファベットの欧文字の中央付近を横切るように赤いラインが用いられている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2には,セイロガンないし正露丸の文字のすぐ近くに「糖衣」という文字が記載されており,その文 字は赤い図形上に,白抜き文字で記載されている。  控訴人表示3の左上上部には,「軟便・下痢・食あたり」という控訴人商品が医薬品として有する効能が記載されているのに対し,被控訴人表示2の左上上部にも,「下痢・食あたり・水あたり」という被控訴人商品が医薬品として有する効能が記載されており,そのうち,下痢と食あたりにつ 医薬品として有する効能が記載されているのに対し,被控訴人表示2の左上上部にも,「下痢・食あたり・水あたり」という被控訴人商品が医薬品として有する効能が記載されており,そのうち,下痢と食あたりについては記載が共通している。  控訴人表示3及び被控訴人表示2はいずれもオレンジ色を背景とした上で,赤色,黒色及び白色を用いて商品名等の文字が記載されている。  控訴人表示3及び被控訴人表示2にはいずれも黒字で「飲みやすい白い錠剤」と記載されている。 c 全体としての類似性控訴人表示3はオレンジ色の背景に赤色を基調とし,かつ黒及び白を用いた色彩構成になっている点,包装の下半分に大きいアルファベットの欧文字が1字記載されている点及び同アルファベット文字の真ん中を包装の基調色ともなっている赤いラインが横切っている点に特徴があるところ,これらの特徴はいずれも被控訴人表示2と共通し,又は極めて類似している。しかも,被控訴人表示2には,被控訴人の名称や被控訴人を示す商標などその出所を示すような表示は全く付されておらず,需要者が被控訴人商品と控訴人商品とを誤認するような事態が生じている。そして,控訴人表示3及び被控訴人表示2の両表示を全体的,離隔的に対比して観察した場合には,前記の共通点から生じる印象の強さが,「セイロガン」という文字の表記方法や,ラッパのマークが入っているか否かといった相違点から生じる印象の強さを上回り,取引者又は需要者において,両表示が類似するものと受け取られるおそれがある。 【被控訴人の反論】ア被控訴人表示1の使用 被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)には,「正露丸」「糖衣」「S」は一連一体のものとして記載されていない。そもそも「S」が地色で模様のようになっている上,文字の中央を白抜きで「SEI の使用 被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)には,「正露丸」「糖衣」「S」は一連一体のものとして記載されていない。そもそも「S」が地色で模様のようになっている上,文字の中央を白抜きで「SEIROGAN」と記載した赤い線が横切っているため,「S」がはっきりとは見えない。さらに,正面部縦表示では,上下に分断しており,右側面部横表示では,左右に分断さえしている。また,取引の実情では,被控訴人商品は「正露丸糖衣『キョクトウ』90錠」として扱われており,「正露丸糖衣S」と称呼はされていない。このように,被控訴人商品には,控訴人が主張する控訴人表示1は表示されていないし,表音されることもない。したがって,被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)における「正露丸」「糖衣」「S」は一連一体とはいえない。  控訴人が例としてあげる「ムヒアルファEX」や「アリナミンEXPLUS」では,「ムヒ」や「アリナミン」自体に個性があり,そもそも普通名称である「正露丸」「糖衣」とは比較にならないし,いずれも3段表記であるが,字の大きさ・配置等により読みやすくしており,被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)とは表現方法が違う。 イ控訴人表示1及び控訴人表示2と被控訴人表示1との類似性そもそも,被控訴人は控訴人が主張する被控訴人表示1を使用していないから,類似性などあろうはずがない。「A」と「S」は全く異なるアルファベットであるから,シリーズ商品と誤認されるおそれなど全くない。 ウ控訴人表示3と被控訴人表示2との類似性 被控訴人商品は,被控訴人がドラッグストアであるサンドラッグのプライベート・ブランド商品(以下「PB商品」という。)として製造販売している商品であり,デザインもサンドラッグに合わせ,さらに柔ら かい表現により糖衣錠の飲みやす トアであるサンドラッグのプライベート・ブランド商品(以下「PB商品」という。)として製造販売している商品であり,デザインもサンドラッグに合わせ,さらに柔ら かい表現により糖衣錠の飲みやすさを表現するなど独自に工夫しており,被控訴人の他の商品とデザインを別にしている。  控訴人商品の包装(控訴人表示3)と被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)では,「正露丸」の読みと「糖衣」は共通している。これは,普通名称としての共通性によるものである。黒い大きな漢字の「正露丸」とカタカナの「セイロガン」では印象が全く異なる。「糖衣」は赤字に白抜きは共通しているが,控訴人表示3では「A」の横棒の上の小さな四角形の中に小さく白抜きになっている。これに対し,被控訴人表示2では,比較的大きな楕円形の中にくっきりと読みやすく白抜きされている。両者はデザインを全く異にする。そして,被控訴人商品は,正露丸の糖衣錠であることが一目でわかるように,包装の上面及び底面に「正露丸」・「糖衣」と明示している。控訴人商品は,包装の上面及び底面に,控訴人にとって重要なラッパのマークが明示されている。したがって,両商品の包装は類似していない。  以上のとおり,被控訴人表示2と控訴人表示3とは類似していないから,控訴人のただ乗りの主張は的外れである。 (3) 争点3(被控訴人の行為は,控訴人商品と混同を生じさせるものであるか。)について次のとおり,原判決の補正をし,当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 【原判決の補正】12頁7行目末尾の後に「被控訴人商品と控訴人商品とがその包装上の近似性から誤認混同のおそれがあることは,インターネットリサーチの方法によって実施したアンケート結 用する。 【原判決の補正】12頁7行目末尾の後に「被控訴人商品と控訴人商品とがその包装上の近似性から誤認混同のおそれがあることは,インターネットリサーチの方法によって実施したアンケート結果(甲59~62)によっても裏付けられる。」を加える。 【控訴人の補充主張】ア需要者が,圧倒的なシェアを誇り周知著名性を有する控訴人商品の称呼と類似性のある被控訴人商品の称呼と接した場合,時を異にして耳にすれば,周知著名な控訴人商品あるいはその関連製品であると誤認してしまうおそれがあることは明らかである。「セイロガントーイエー」(控訴人表示1及び控訴人表示2)と「セイロガントーイエス」(被控訴人表示1)は最後に「エー」と発音するか「エス」と発音するかのみの差であり,長い称呼の中で見ればその差はほんのわずかなものにすぎず,しかも,「セイロガン糖衣A」ブランドという控訴人商品の著名性も考慮すれば,取引者及び需要者は,被控訴人表示1に接した場合,既に聴きなじんでいる「セイロガントーイ」と「エ」の部分の共通性により,控訴人表示1ないし控訴人表示2を連想・想起し,両者を類似のものとして受け取るおそれがある。 イ需要者が,圧倒的なシェアを誇り周知著名性を有する控訴人商品の包装(控訴人表示3)と類似性のある被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)に接した場合,時を異にして目にすれば,周知著名な控訴人商品あるいはその関連製品であると誤認してしまうおそれがあることは明らかである。 さらに,需要者が本件医薬品を購入する際には同医薬品が販売カウンターの背面等に置かれ,需要者が直接手に取ることが容易でなく,当該商品の包装を近くでじっくりと見ることができない場合も少なからず存するところ,そのような場合には,需要者は全体的な色彩の構成が控訴人商品の包 面等に置かれ,需要者が直接手に取ることが容易でなく,当該商品の包装を近くでじっくりと見ることができない場合も少なからず存するところ,そのような場合には,需要者は全体的な色彩の構成が控訴人商品の包装(控訴人表示3)と同一である被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)を控訴人商品として誤認混同するおそれがより高まる。 【被控訴人の反論】ア被控訴人商品の販売名や会社名には,当然自他商品識別機能がある。控訴人商品ないし控訴人表示3は,ラッパのマークや会社名を加えても,著 名ではないし周知性もない。 イ前述したとおり,控訴人商品と被控訴人商品とは類似していないから,混同のおそれもない。 (4) 争点4(被控訴人各表示は,普通名称を普通に用いられる方法で使用したものに該当するか。)【被控訴人の主張】ア被控訴人表示2のうち「正露丸」及び「糖衣」の各文字は,普通名称にすぎない単語であり,また,医薬品についてアルファベットを付記することも慣用されているから,「S」部分は慣用表示である。 イ承認を要する医薬品の名称についての表現は,「販売名,日本薬局方に定められた名称又は一般的名称以外の名称を使用しないものとする。」(昭和55年10月9日厚生省薬務局長通知「医薬品等適正広告基準について」)とされている。被控訴人は,被控訴人商品の包装の左側面に販売名を記載し,正面及び右側面には「正露丸」「糖衣」「SEIROGAN」「S」等の一般名称を表記している。「S」は模様になっているが,正露丸やサンドラッグの頭文字であり,かつスーパー,スペシャル等の意味を込めているものであって,アルファベットの慣用表示を普通に用いられる方法で使用したものである。 【控訴人の主張】ア法19条1項1号にいう「普通に用いられる方法」とは,普通名称等を ル等の意味を込めているものであって,アルファベットの慣用表示を普通に用いられる方法で使用したものである。 【控訴人の主張】ア法19条1項1号にいう「普通に用いられる方法」とは,普通名称等を一般取引上普通に行われる態様で使用することをいう。そして,かかる規定の趣旨を濫用して使用したものはここにいう普通の用法による使用とはいえないと解されており,濫用の有無については当該商品の具体的取引過程の実態により判断すべきであると解されている。例えば,特殊な字体で現すとか,特別の図案を施すとか,特定の商品を指示するように足るよう特に技巧を施して使用することは,普通の用法による使用ではないと解さ れており,判例でも「普通に用いられる方法」とは,特に一般の注意を引くに足りるような特別な書体や図案により技巧を加えた標章ではなく,普通の書体でかつ普通に使われる図形で表された外観のものをいうと解されている。 イこれを本件についてみるに,控訴人表示1及び控訴人表示2はいずれも自他商品識別機能があり,いずれも周知著名性を有するものであるところ,被控訴人表示1は,控訴人において多大の時間と費用をかけて獲得した控訴人各表示の周知著名性にただ乗りするものであるから,被控訴人表示1の使用は,その態様いかんを問わず,出所表示機能を不可避的に奏するものである。そして,被控訴人表示1が「クレオソートを主成分とする胃腸薬」という医療品の性質を表示するために「S」を付加しなければならない必然性ないし必要性を裏付ける事情が全く存在しないことからすると,これが「普通に用いられる方法」に該当する余地はない。また,被控訴人表示2においては,控訴人表示3を多分に意識し,これに類似したデザインが施されているから,「普通に用いられる方法」で使用されているとはいえない。 いられる方法」に該当する余地はない。また,被控訴人表示2においては,控訴人表示3を多分に意識し,これに類似したデザインが施されているから,「普通に用いられる方法」で使用されているとはいえない。 ウしたがって,被控訴人による被控訴人商品の販売行為に法19条1項1号が適用される余地はない。 (5) 争点5(被控訴人の行為は,不法行為に該当するか。)について【控訴人の主張(当審における予備的主張)】ア控訴人は,昭和56年11月以降,控訴人各表示を使用した上で継続して控訴人商品を販売してきているところ,同製品については発売当初からテレビ・ラジオ・新聞その他種々の媒体を通じた広告宣伝を行っており,その広告宣伝費が平成13年11月から平成23年3月までの間だけを見ても約32億円(正露丸との混在広告を含めると73億円以上)に上る。 控訴人が多額の資金を広告宣伝費として投資することによって,需要者及 び業界の間においても「セイロガントーイエー」,「セイロガントーイ」といえば控訴人商品を指称するものとの認識が定着するまでに「セイロガン糖衣A」ブランドを高めてきた。その結果,控訴人商品は,クレオソートを主剤とする糖衣錠タイプの胃腸薬の市場において,単なる糖衣錠タイプの胃腸薬とは異なるブランドとして確立され,クレオソートを主剤とする糖衣錠タイプの胃腸薬の分野でのシェアは,売上高の87%以上,販売個数の85%以上を誇っており,売上高については,ここ最近(平成22年4月から平成23年3月)におけるシェアは90%を超えるに至っている。したがって,控訴人は,多額の費用と労力をかけて構築した営業の成果である「セイロガン糖衣A」ブランドについて,第三者にただ乗りされないという法的利益を有している。 イ被控訴人は,平成8年ころから,販売名を ,控訴人は,多額の費用と労力をかけて構築した営業の成果である「セイロガン糖衣A」ブランドについて,第三者にただ乗りされないという法的利益を有している。 イ被控訴人は,平成8年ころから,販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と称する被控訴人商品の製造販売を行っているところ,平成21年2月ころ(遅くとも平成22年12月ころ)から商品パッケージ(包装)のデザインには無数の選択肢があるにもかかわらず,被控訴人商品のパッケージを控訴人商品の対応するパッケージに類似させてきた。被控訴人は,控訴人が上記のような営業活動を行っていることを熟知しているはずなのに,控訴人各表示と同一又は類似の商品名,包装デザインを有する製品を製造し,あたかも控訴人商品と同シリーズであるかのような体裁を生じさせた上で販売している。これは,明らかに控訴人が多大な費用と労力を投資して築き上げてきた「セイロガン糖衣A」ブランドにフリーライドして販売しようとするものである。 とりわけ,控訴人表示3及び被控訴人表示2はいずれもオレンジ色を背景とした上で,赤色,黒色及び白色を用いて商品名等の文字を記載するという色彩の構成が全く同一であるという点,包装正面部の商品名の表示の下半分全体に大きくアルファベットの欧文字の中央付近を横切るように赤 いラインが用いられている点,及びいずれも黒字で「飲みやすい白い錠剤」と記載されている点については,被控訴人が控訴人商品を意識せずしては,およそデザインしようがない程度に似せられているというほかない。 さらに,被控訴人は,販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と称しながら,その販売名をそのまま商品表示として正面部等に表示せず,あえて控訴人表示1及び控訴人表示2を意識した「正露丸糖衣S」を商品表示として使用しているが,このような態様は明らかに不自然 ウ」と称しながら,その販売名をそのまま商品表示として正面部等に表示せず,あえて控訴人表示1及び控訴人表示2を意識した「正露丸糖衣S」を商品表示として使用しているが,このような態様は明らかに不自然である。 このような被控訴人の一連の行為は,周知著名な控訴人商品の表示を明らかに意識し,控訴人表示1及び控訴人表示2によって作り上げられたイメージや広告力ないしは名声等のブランド力に便乗する意図であるとしか説明しようがない。 ウしたがって,仮に被控訴人による被控訴人商品の製造販売行為が不正競争行為であると認められないとしても,被控訴人の同行為は民法709条の不法行為に該当する。 【被控訴人の主張】被控訴人は,日露戦争に由来する「正露丸」(糖衣錠はその糖衣型で,時代に合わせ飲みやすくしたものである。)の名により,被控訴人商品を製造販売しているものであり,被控訴人には,不法行為の故意も過失もないし,控訴人は被控訴人からいかなる被害も受けていないから,損害もない。 (6) 争点6(被控訴人が損害賠償責任を負う場合に控訴人に対して支払うべき損害額はいくらか。)について【控訴人の主張】被控訴人は,平成21年2月ころ(遅くとも平成22年12月ころ)から被控訴人商品を製造販売しており,かかる不正競争を行うにつき故意又は少なくとも過失があるところ,これにより,控訴人は,営業上の利益を侵害され,少なくとも1000万円の損害を被った。不法行為による損害について も同じである。 【被控訴人の主張】被控訴人が平成21年2月ころから被控訴人商品を製造販売していることは認めるが,その余は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件医薬品の名称に関する経緯事実証拠(甲30,60,乙3,4,14)及び弁論の全趣旨によれば,上 控訴人商品を製造販売していることは認めるが,その余は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件医薬品の名称に関する経緯事実証拠(甲30,60,乙3,4,14)及び弁論の全趣旨によれば,上記経緯事実については,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」第4の1(「正露丸」が本件医薬品の普通名称であること),同(「正露丸」の名称で本件医薬品を製造販売する他社の存在)に記載のとおりであることが認められる。 【原判決の補正】13頁20行目末尾の後に「同様の状況は,その後も現在に至るまで変わっていない。また,糖衣錠タイプの正露丸も,控訴人・被控訴人以外に少なくとも数社から販売されており,それらの商品は,包装箱に「正露丸糖衣錠」又は「正露丸糖衣」ないしそれらを含む商品名を表示している。」を加え,21行目冒頭から23行目末尾までを削除する。 2 争点1(控訴人各表示は,控訴人の商品表示として周知著名なものであるか。)について(1) 控訴人各表示は,原判決別紙原告表示目録1ないし3のとおりであり,その構成は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」第4の2「原告各表示の構成」に記載のとおりである。 【原判決の補正】ア 14頁11行目の「各文字を」の後に「普通の活字体で」を,15行目の「具体的には,」の後に「カタカナの太字で横書きに表記した『セイロガン』の右に」を,「アルファベットの『A』の」の後に「右側の 字画を太い垂直の棒状とし,」を,それぞれ加える。 イ 15頁15行目末尾の後に「『A』の文字は,横線が飛び出していないことのほかは,控訴人表示2の『A』のデザインとほぼ同じである。」を加え,16行目の「重なる形で」を「重なり,左方に飛び出す形で」と改める。 (2) 被控訴人は, 字は,横線が飛び出していないことのほかは,控訴人表示2の『A』のデザインとほぼ同じである。」を加え,16行目の「重なる形で」を「重なり,左方に飛び出す形で」と改める。 (2) 被控訴人は,控訴人表示1及び控訴人表示2は,普通名称である「正露丸」及び「糖衣」と,アルファベットの「A」を組み合わせただけのものであり,自他商品識別機能を有するものではない,控訴人表示3のうち自他商品識別機能を有するのは,ラッパのマークと控訴人の会社名のみであり,その他の部分に自他商品識別機能はない,と主張するので,この点について検討する。 ア 「セイロガン」は,控訴人の主力商品である「正露丸」のカタカナ表記である(甲1の2,甲7,8,37,45,74,乙13,弁論の全趣旨)ところ,前記1の認定事実によれば,「正露丸」は,本件医薬品の名称として,遅くとも昭和29年ころまでに普通名称となっていたこと,平成18年当時,「正露丸」又は「SEIROGAN」の名称で本件医薬品を製造販売を行っていた業者は,控訴人のほかに少なくとも10社以上存在し,その後も同様の状況が続いていることが認められる。 ところで,ある標章が普通名称であるか否かはもっぱら取引界の実情との関係で相対的に判断されるべきものであるから,ある時期において普通名称であるとされた標章であっても,その後の取引の実情の変化により,特定の商品を指称するものとして取引界に認識され,自他商品識別力を獲得するに至る場合があることは否定し得ず,この理は「正露丸」についても妥当する。しかし,本件においては,上記のとおり,「正露丸」又は「SEIROGAN」の名称で本件医薬品を製造販売している業者が控訴人と被控訴人のほかに少なくとも10社以上存在している状況が続いてき たのであるから,本件医薬品の のとおり,「正露丸」又は「SEIROGAN」の名称で本件医薬品を製造販売している業者が控訴人と被控訴人のほかに少なくとも10社以上存在している状況が続いてき たのであるから,本件医薬品の取引業界では「正露丸」が普通名称であるとの認識が一般であると認められ,他に「正露丸」が自他商品識別性を獲得するに至ったと判断するに足りる証拠もない。したがって,「正露丸」自体はなお普通名称であるというべきであり,この理は,「正露丸」のカタカナ表記である「セイロガン」についても,同様である。 イ一般に,「糖衣」とは「飲みやすくするために,丸薬・錠剤に施した糖分を含んだ甘い被膜」(大辞林)をいい,「糖衣錠」とは,「飲みやすくするために外側を糖製品で包んだ錠剤」(広辞苑第六版)とされており,製剤の一類型を指称する普通名称であることが認められる。したがって,「糖衣」自体に自他商品識別力を認めることはできない。 ウ 「A」は,アルファベット最初の文字にすぎず,それ自体では自他商品識別力を認めることはできない。 エ上記のとおり,控訴人表示1及び控訴人表示2の「セイロガン」,「糖衣」,「A」の各要素自体については自他商品識別力を認めることはできない。 (3) 次に,それらが結合した控訴人表示1及び控訴人表示2の著名商品表示性について検討する。 ア前記第2の2の前提となる事実(以下「前提となる事実」という。),証拠(甲1,3~9,12~30,33~35,37~41,44,45,58,60,74,83,84,乙5,6,10~14,18~20〈ただし,枝番号のあるものはそれも含む。〉)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。  控訴人は,昭和41年6月から,クレオソートを主剤(主成分)とする胃腸薬(本件医薬品=正露丸)に糖衣コーティ 枝番号のあるものはそれも含む。〉)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。  控訴人は,昭和41年6月から,クレオソートを主剤(主成分)とする胃腸薬(本件医薬品=正露丸)に糖衣コーティングを施した錠剤について,「セイロガン糖衣」又は「セイロガントーイ」との表示(商品名)で控訴人商品を販売してきており,昭和56年11月からは,控訴 人各表示(控訴人表示1・控訴人表示2・控訴人表示3の包装)を使用して控訴人商品を販売してきた。また,PTP包装タイプの製品は,昭和61年7月から発売され,当初は「セイロガントーイ」と表示されたが,平成4年7月以降,控訴人表示2に変更して現在に至っている。  他社製品としては,昭和23年当時,「クレオソート糖衣錠」が,昭和52年当時,民生薬品工業株式会社の「正露丸糖衣」が,昭和57年当時,大光製薬株式会社の「正露丸糖衣」が,昭和62年当時,和泉薬品工業株式会社の「イヅミ糖衣正露丸」がそれぞれ販売されており,平成7年4月当時,渡辺薬品工業株式会社及び日新薬品株式会社の「正露丸糖衣錠AA」が,平成8年中ころからは被控訴人の「正露丸糖衣錠」がそれぞれ販売されていた。  昭和56年11月から平成7年10月までの間,控訴人商品の売上数量は,総計約2352万個,年平均約168万個となっている。また,株式会社社会調査研究所が薬局POSデータ(約440店)による調査結果をベースに抽出作成したデータによると,平成7年4月1日から平成8年1月31日までの10か月間及び平成7年4月1日から平成8年11月30日までの20か月間の「クレオソートを主剤とする胃腸薬の糖衣錠」に関する売上は,控訴人商品が約95%又は約93%,「正露丸糖衣錠AA」が約5%又は約7%であり,両製品以外では該当製品は確認されていない での20か月間の「クレオソートを主剤とする胃腸薬の糖衣錠」に関する売上は,控訴人商品が約95%又は約93%,「正露丸糖衣錠AA」が約5%又は約7%であり,両製品以外では該当製品は確認されていないという結果であった。そうすると,平成7年ないし平成8年当時,「正露丸糖衣錠AA」以外の他社製品の販売数量は定かではないが,ごくわずかなものであったと推認される。  控訴人は,控訴人商品について,平成2年11月から平成7年10月までの間に,新聞,テレビ及びラジオを通じた広告宣伝費用として,合計約24億5000万円(これには,控訴人が別途販売している「正露丸」が混在するものは含まれていない。)を投下した。 このうち新聞広告においては,通常,控訴人が別途販売している「正露丸」と並べて控訴人商品の広告がなされており,そこでは控訴人表示2が表示され,同時にラッパのマーク及び「私にはラッパのマークがついています」と記載されていた。 テレビ広告においては,種々のものがあるが,いずれにおいても「セイロガントーイエー」と商品名が連呼され,控訴人表示2が表示された包装が映し出されていた。また,それとともに,「大幸薬品です」又は「ラッパのマークの大幸薬品です」とのナレーションが挿入されている。 ラジオ広告においては,「セイロガントーイ」との称呼で商品名が連呼されていた。  控訴人は,平成8年に,「正露丸糖衣錠AA」の名称で本件医薬品を製造又は販売していた渡辺薬品工業株式会社及び日新薬品株式会社を被告として,同会社らの行為が法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するとして損害賠償等を求める訴えを大阪地裁に提起した。同裁判所は,平成11年3月11日,「セイロガン糖衣A」という表示は平成7年4月以前の時点において控訴人商品を識別する周知著名な 不正競争に該当するとして損害賠償等を求める訴えを大阪地裁に提起した。同裁判所は,平成11年3月11日,「セイロガン糖衣A」という表示は平成7年4月以前の時点において控訴人商品を識別する周知著名な商品表示になっており,「正露丸糖衣錠AA」は上記表示に類似し,同会社らの行為は法2条1項2号に当たると判断して,損害賠償請求の一部を認容する判決をした。同判決は確定した。  平成13年11月から平成23年3月までの間における控訴人商品の販売個数は,約3156万個,売上高は約185億円であり,糖衣錠タイプの本件医薬品(正露丸)における市場占有率は,売上高でみると87%以上であり,特に平成22年4月から平成23年3月までの間には売上高で90%を超える市場占有率を有していた。販売個数を基準としても,平成13年度から平成22年度までの間における市場占有率は,約80%以上であった。なお,控訴人が販売している本件医薬品は,糖 衣錠の控訴人商品と糖衣錠タイプでない従来からの主力商品である「正露丸」とがあるところ,その比率は,平成14年度では控訴人商品が販売数量比率で43%,売上金額比率で42%であったが,その後徐々に控訴人商品の比率が高くなって,販売数量比率では平成20年度から,売上金額比率でも平成21年度から控訴人商品が50%を超えるに至っており,平成23年度では販売数量比率で55%,売上金額比率で53%を糖衣錠タイプの控訴人商品が占めている。  控訴人は,全国の広い範囲にわたって新聞,テレビ及びラジオその他の媒体による広告宣伝を継続しており,平成13年11月から平成23年3月までの間における控訴人商品に関する広告宣伝費は,約32億円であり,控訴人が別途販売している「正露丸」の広告と併せた広告宣伝費は,73億円以上である。 このう 平成13年11月から平成23年3月までの間における控訴人商品に関する広告宣伝費は,約32億円であり,控訴人が別途販売している「正露丸」の広告と併せた広告宣伝費は,73億円以上である。 このうち新聞広告の内容は,前記のとおりである。 テレビ広告においては,種々のものがあるが,いずれにおいても商品名は「セイロガントーイエー」と称呼され,控訴人表示2が表示された包装(控訴人表示3の左側面に該当するもの)が映し出されている。また,それとともに,「ラッパのマーク,大幸薬品のセイロガン糖衣A」とのナレーションが挿入されているものもある。 ラジオ広告においては,「飲みやすい白い錠剤ラッパのマーク大幸薬品の『セイロガン糖衣A』。」,「ラッパのマーク大幸薬品の正露丸。 のみやすい糖衣Aもあります。」,「ラッパのマーク,大幸薬品の『正露丸』。のみやすい白い錠剤『糖衣A』もあります。」など,種々のものがあるが,いずれにおいても控訴人商品の商品名は「セイロガントーイエー」と称呼されている。  被控訴人は,平成21年2月ころから,被控訴人表示2の包装を使用して,被控訴人商品をサンドラッグのPB商品として製造販売している。 イ前記ア認定の事実によれば,控訴人商品については,前記ア記載の別件訴訟における大阪地裁判決で認定判断されたように,大量に販売され,長期にわたり強力な広告宣伝がされたことと,他に同種の商品名を持つ有力な競合商品も存在しなかったことから,「正露丸糖衣錠AA」が発売された平成7年4月以前の時点で,既に「セイロガン糖衣A」の商品名で広く国民の間に浸透していたものと認められる。このことに加え,控訴人は,その後も控訴人商品の全国的に広告宣伝を強力に行ってきたものであり,控訴人商品は全国で販売されており,本件医薬品を製造販売 名で広く国民の間に浸透していたものと認められる。このことに加え,控訴人は,その後も控訴人商品の全国的に広告宣伝を強力に行ってきたものであり,控訴人商品は全国で販売されており,本件医薬品を製造販売する業者が控訴人と被控訴人以外に10数社あるにしても,糖衣錠タイプの本件医薬品における抜群の市場占有率を維持してきたものである。これらの事実によれば,被控訴人商品が発売された平成21年2月ころにおいても,現在においても,一般的な家庭用医薬品の需要者が「セイロガントーイエー」なる控訴人表示1及び控訴人表示2の称呼を聞いた時には,控訴人商品を連想,想起させる状況になっており,控訴人表示2の外観も,上記の事情とその固有のデザインが相まって,控訴人商品を識別,想起させる商品表示となっているということができ,控訴人表示1及び控訴人表示2は控訴人商品を識別する周知著名な商品表示であると認められる。 次に,控訴人表示3についてみると,控訴人商品の包装箱の正面には,その中央に控訴人表示2が「セイロガン」と「糖衣A」の各部分に分けて縦2段で表示され,これに加えて「糖衣A」の文字の上部から控訴人表示3の正面下半分を占める大きさで控訴人表示2の「A」の文字と同様のデザインの「A」の文字が金色で大きく表示されており,控訴人表示2そのものではないが,これと同様の字体,デザインによる実質的には控訴人表示2と同一といってよい「セイロガン糖衣A」の商品表示が使用されていること,同包装箱の左側面には,その上半分のところに控訴人表示2と同様の字体,デザインによる「セイロガン糖衣A」 の文字,すなわち控訴人表示2そのものが表示され,これに加えて控訴人表示3の左側面右半分を占める大きさで控訴人表示2の「A」の文字と同様のデザインの「A」の文字が金色で大きく表示さ 衣A」 の文字,すなわち控訴人表示2そのものが表示され,これに加えて控訴人表示3の左側面右半分を占める大きさで控訴人表示2の「A」の文字と同様のデザインの「A」の文字が金色で大きく表示されていること,上記正面と左側面の大きな金色の「A」の文字は控訴人表示2の「A」の部分をさらに強調して需要者の目を引くものとしていることからすると,控訴人表示2と同一の商品表示が使用されていることは明らかであり,需要者も控訴人商品の包装箱を目にしたときにそのように把握することは,前記広告宣伝の事実や包装箱全体の表示態様に照らして明らかである。しかし,商品の陳列時に需要者の目を引くと考えられる包装箱の正面と左側面には,この表示部分と包装箱の正面及び左側面に存在するラッパのマークを除けば,薬品の種類,効能や特徴等が普通に表示されているにすぎず,上面と底面にもラッパのマークと控訴人表示2(底面はアルファベット表示したもの)が存在し,右側面や背面は小さく控訴人の会社の表示(右側面),ラッパのマーク(右側面),控訴人表示1(背面)が存在するけれども,主として注意事項や効能,用法・用量,成分・分量等が小さな文字で記載されているのであり(前記補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2ウ記載参照),全体としては,控訴人表示2に相当する表示部分とラッパのマークを除けば特徴的な表示はない。その他,控訴人商品の箱の色(明るい黄色がかった橙色)もこの種の他の商品でも用いられているものと同種ないしさほど差がないものであること(甲60,乙14),控訴人商品の広告宣伝においても特にパッケージ(包装)の特徴に力点を置いてきたというような事情もうかがわれないことからすると,控訴人表示3の商品包装全体が控訴人商品を識別する商品表示として周知著名であるとまで認めるこ においても特にパッケージ(包装)の特徴に力点を置いてきたというような事情もうかがわれないことからすると,控訴人表示3の商品包装全体が控訴人商品を識別する商品表示として周知著名であるとまで認めることはできない。他に,控訴人表示3の全体(包装全体)が控訴人商品の商品表示として著名又は周知であることを認めるに足りる証拠はない。 ウ被控訴人は,控訴人表示1及び控訴人表示2は,普通名称である「正露丸」及び「糖衣」と,アルファベットの「A」を組み合わせただけのものであり,自他商品識別機能を有するものではないと主張する。しかし,自他商品識別力は表示の構成のみによって生じるのではなく,取引の実情に応じて獲得されるものであるから,普通名称を本来の意味どおりに使用した場合であっても,使用の態様や取引の実情から自他商品識別力を獲得し得る場合があるはずである。そして,前述したように,控訴人表示1及び控訴人表示2は,多年にわたる販売,広告宣伝により,その本来の意味内容を超えて,控訴人商品を指称する表示として周知著名なものとなっていることが認められるから,被控訴人の上記主張は採用することができない。 また,被控訴人は,控訴人表示3のうち自他商品識別機能を有するのは,ラッパのマークと控訴人の会社名のみであり,その他の部分に自他商品識別機能はないと主張する。確かに,前記アの認定事実によれば,控訴人商品の広告宣伝において,ラッパのマークが強調されており,ラッパのマークが控訴人商品に限らず控訴人が販売する商品を識別する表示として周知著名であることは明らかであるが,広告宣伝において商品名とともに自社の名称や標章をも広告宣伝することは通常行われていることであるから,ラッパのマークが広告宣伝中で強調されているからといって,控訴人表示3の包装のうち控訴人表示 が,広告宣伝において商品名とともに自社の名称や標章をも広告宣伝することは通常行われていることであるから,ラッパのマークが広告宣伝中で強調されているからといって,控訴人表示3の包装のうち控訴人表示2に係る部分の自他商品識別力を否定する理由とはならない。むしろ,前述した控訴人商品の販売実績と広告宣伝実績からすると,控訴人表示2は,控訴人の標章であるラッパのマークとは独立して,控訴人商品を示す商品表示としての識別性を獲得しているというべきである。したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 エそして,他に,以上の認定を左右するに足りる的確な証拠はない。 3 争点2(被控訴人各表示は,控訴人各表示と同一又は類似の商品表示であるか等。)について 当裁判所も,被控訴人が被控訴人表示1を使用しているとは認められないし,被控訴人表示2が控訴人各表示と同一又は類似の商品表示であるとは認めることはできないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 (1) 被控訴人表示1の使用の有無控訴人は,被控訴人が被控訴人表示1を使用していると主張するところ,被控訴人表示1は,原判決別紙被告表示目録1で特定された表示であって,単に「正露丸糖衣S」という漢字5文字とアルファベット1文字を普通の活字体で連続して一連一体に表示したものである。控訴人が,被控訴人において被控訴人表示1を使用しているとする根拠として主張するところは,前記第2の4【控訴人の補充主張】アのとおりであって,要は,被控訴人商品の包装である被控訴人表示2から被控訴人商品が「正露丸糖衣S」であるとの認識が生じ,「セイロガントーイエス」との称呼が生じるというものである。しかし,被控訴人表示2中に,特段のデザイン化等のされていない上記の「正露丸糖衣S」と同一の表 商品が「正露丸糖衣S」であるとの認識が生じ,「セイロガントーイエス」との称呼が生じるというものである。しかし,被控訴人表示2中に,特段のデザイン化等のされていない上記の「正露丸糖衣S」と同一の表示が存在しないことは明らかである(被控訴人商品の包装箱の正面及び右側面以外でも使用されていない〈甲5,乙1〉。)。控訴人が主張するように,被控訴人表示2から「正露丸糖衣S」の表示(ただし,外観上,被控訴人表示1と同一のものではない。)が読み取れ,「セイロガントーイエス」の称呼が生じるとしても,それは被控訴人表示1そのものの使用とは別の問題である。そのほかに,被控訴人が被控訴人表示1を使用していることを認めるに足りる証拠もない。 (2) 控訴人各表示の構成及び被控訴人表示2の構成ア控訴人各表示の構成については,前記のとおり補正して引用した原判決「事実及び理由」第4の2のとおりである。 イ被控訴人表示2の構成は,原判決「事実及び理由」第4の2「ア被告商品の包装の構成」に記載されたところと同じであるから,これを引用する。ただし,原判決17頁14行目及び18頁7行目の「錠剤型の」を いずれも削除する。 (3) 被控訴人表示2と控訴人各表示との類否についてア特定の商品表示が法2条1項1号又は2号にいう他人の商品表示と類似のものか否かを判断するに当たっては,取引の実情の下において,取引者,需要者が,両者の外観,称呼,又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。 イ被控訴人表示2の構成は前記イのとおりであるところ,これと証拠(甲5,47,48,75,乙1)によれば,本件医薬品が販売される薬局,ドラッグストア等の商品陳列では,通常 するのが相当である。 イ被控訴人表示2の構成は前記イのとおりであるところ,これと証拠(甲5,47,48,75,乙1)によれば,本件医薬品が販売される薬局,ドラッグストア等の商品陳列では,通常,包装箱の正面部を前面に向けて置かれており,陳列されている被控訴人商品をそのままであるいは手に取って見る需要者は,「正露丸」の表示を含む被控訴人商品の包装箱の正面又は同様の表記を横書きにした右側面部を目にするのが普通であると考えられる。そして,被控訴人表示2においては,前記正面及び右側面のいずれにおいても,「正露丸」「糖衣」「S」は,目立つように大きく表示されており,上から下へ,あるいは左から右へ見ると,連続した一つのまとまった表示として捉えられる可能性が大きいと認められる。このことは,一般用医薬品商品の包装に,当該製品の正面部に商品名を,文字のフォント,色,大きさ等を変えた上で,横書きで2段ないし3段に上から下へ,左から右へ向けて表記しているものが多数存在している実情があること(甲65の1~12,甲66)からも裏付けられる(例えば,「ムヒアルファEX」,「アリナミンEXPLUS」,「サンテFXネオ」,「キューピーコーワゴールドA」,「ポポンピュメリ錠VA」,「マイティアCLクール」等〈甲49,65の1~12,甲66,弁論の全趣旨〉)。確かに,被控訴人も主張するように,それらの商品の商品名には,「ムヒ」,「アリナミン」,「サン テ」,「コーワ」,「ポポン」,「ピュメリ」,「マイティア」等といったそれ自体に個性のある名称が使用され,その包装には,横書きで2段ないし3段になっているものの,文字の大きさ・配置等により,各文字が読みやすく表記されており,当該商品の商品名が容易に一連一体に称呼され,当該商品が認識(観念)されるといえる。 装には,横書きで2段ないし3段になっているものの,文字の大きさ・配置等により,各文字が読みやすく表記されており,当該商品の商品名が容易に一連一体に称呼され,当該商品が認識(観念)されるといえる。これに対し,被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)に使用されているのは,普通名称である「正露丸」及び「糖衣」にすぎず,これらの表示態様と「S」の部分の表示態様とでは,文字の大きさ,字体及び色が全く異なり,正面では上下に,右側面では左右に明確に分けて記載されており,需要者が必ずしも一体的なまとまりのある印象を受けるとは限らないという面があることは否定できない。しかし,一般用医薬品において,その包装の正面部に商品名を横書き3段で記載したものも多くみられ,それらは一連に商品名が称呼されるものであることは,一般需要者もなじんだ状況になっていると考えられるし,薬品の名称にアルファベットが付されることは,上記の例を含め極めてありふれたことであり,「正露丸」と「糖衣」は普通名称であるから,ほかに被控訴人商品を識別する表示も見当たらない正面及び右側面では,これに独自のデザインを施して特に大きく表示された「S」の文字(「S」の文字の部分は下地となる金色の四角形の部分を含めると正面及び右側面それぞれのほぼ半分のスペースを占めている。)に需要者の目が引かれるのは当然のことであり(なお,被控訴人は,「S」が地色で模様のようになっている上,文字の中央を「SEIROGAN」と記載した赤い線が横切っているため,「S」がはっきりとは見えないなどと主張するが,被控訴人なりの意味を込めて「S」の字を用いていることは,被控訴人自身が主張するところであり,独自のデザインによる「S」の文字が表示されていることは,被控訴人主張のような表示態様にかかわらず,被控訴人表示2を目にし 込めて「S」の字を用いていることは,被控訴人自身が主張するところであり,独自のデザインによる「S」の文字が表示されていることは,被控訴人主張のような表示態様にかかわらず,被控訴人表示2を目にし た需要者の多くが容易に看取することができるものといえる。),「S」を加えて,全体で「正露丸糖衣S」との商品であると需要者に受け取られる相当の可能性があることも否定できない。 さらに,前記のとおり,「セイロガン糖衣A」が周知著名の商品表示であり,需要者の多くが「セイロガン糖衣A」という商品の存在を認識していると考えられることからすれば,需要者の間では,「正露丸糖衣S」を商品名として一連に結合したものと受け取られる可能性が高いということができる。 そして,インターネットリサーチ会社が控訴人の依頼で実施したアンケート結果によれば,一般消費者(医薬品の製造販売従事者を除く。)が被控訴人商品のパッケージ(包装箱)を見て商品名をどのように認識するかという点については,「正露丸糖衣」と回答した者が一番多い(45%程度)が,「正露丸糖衣S」と回答した者がその次に多く,30%強を占めており(被控訴人商品の販売名である「正露丸糖衣キョクトウ」と回答した者よりはるかに多い。),さらに,その中で控訴人商品(セイロガン糖衣A)を認知している者(上記アンケート対象の一般消費者の約87%)では,非認知者に比べて,被控訴人商品の商品名を「正露丸糖衣S」と認識する者の比率が2倍以上に高くなっていることが認められる(甲69~72)。このようなアンケート結果も上記の認定を裏付けるものといえる。 また,被控訴人表示2の正面及び右側面には,「正露丸」「糖衣」「S」の部分以外に,「下痢・食あたり・水あたり」「飲みやすい白い錠剤」「第2種医薬品」「90錠」の表示等も を裏付けるものといえる。 また,被控訴人表示2の正面及び右側面には,「正露丸」「糖衣」「S」の部分以外に,「下痢・食あたり・水あたり」「飲みやすい白い錠剤」「第2種医薬品」「90錠」の表示等も存在するが,これらは,被控訴人商品の効能,特徴,種類,数量等を普通に表示したもので,その表示内容,性質,態様等に照らして,「正露丸」「糖衣」「S」の部分の表示と一体性を持ったものではない。 以上によれば,被控訴人表示2においては,「正露丸糖衣S」の部分が一連に結合して商品表示となっているものと認められる。 ウそうすると,「セイロガン糖衣A」という表示からなる控訴人各表示(控訴人表示3については「セイロガン糖衣A」〈金色の大きな「A」の文字の部分を含む。〉の部分)と被控訴人表示2の「正露丸糖衣S」の商品表示との類否が問題になる。  まず,称呼についてみると,控訴人各表示からは「セイロガントーイエー」の称呼が生じ,被控訴人表示2の「正露丸糖衣S」の部分からは「セイロガントーイエス」の称呼が生じる。これらを比較すると,10文字からなる称呼のうち最後の1文字が違うだけである。 次に,観念についてみると,控訴人各表示からは,周知著名の糖衣錠タイプの家庭用胃腸薬「正露丸」である「セイロガン糖衣A」という商品名が想起されるといえる。これに対し,被控訴人表示2の「正露丸糖衣S」の表示からは,そのような商品名の糖衣錠タイプの家庭用胃腸薬「正露丸」であるとの観念が生じると考えられる。 それぞれの外観は,前記の控訴人各表示の構成と被控訴人表示2の構成で記述したとおりであり,これらが外観上類似しているといえないことは明らかである。  以上を前提に控訴人各表示と被控訴人表示2の類否を検討する。まず,称呼については,確かに,「セイロガント 構成で記述したとおりであり,これらが外観上類似しているといえないことは明らかである。  以上を前提に控訴人各表示と被控訴人表示2の類否を検討する。まず,称呼については,確かに,「セイロガントーイエー」と「セイロガントーイエス」とでは,最後の1文字が異なるだけであるし,観念にしても「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」という商品名を比べると,実質的な違いは「A」と「S」の部分だけといえる。 上記の相違部分はアルファベットの「A」と「S」の差異に由来するところ,アルファベットの「A」と「S」とは,一般に発音上紛らわしいものではなく,聞き間違えによる誤認の可能性がないとはいえないに しても,その可能性はそれほど大きくない。また,医薬品が陳列されている薬局やドラッグストア等で需要者が買い求める一般の家庭用医薬品であるという本件の取引の実情に照らすと,称呼のみで取引される可能性がそれほどあるとも考えにくい。控訴人商品と被控訴人商品のパッケージの外観を見ると,「セイロガン」ないし「正露丸」のカタカナと漢字の違いほか,全体にデザインが明らかに異なっているのであり,特に大きく表示されている「A」と「S」のデザイン上の差は大きい。控訴人が主張するように,同じ家庭医薬品で「A」と「S」を用いる同系の医薬品が多数存在し,共通する名称を付加したシリーズ商品が見られることは公知の事実であろうが,そのような場合であればデザイン上も統一的なものとするのが一般であると考えられる(「S」と「A」ではないが,シリーズ商品に複数のアルファベットを用いた例として甲65の5~11)。そして,「正露丸」と「糖衣」が普通名称であり,これらの表示部分についても文字の表記,フォント,デザインが異なることに加え,控訴人各表示と被控訴人表示2の実質的な相違部分である 甲65の5~11)。そして,「正露丸」と「糖衣」が普通名称であり,これらの表示部分についても文字の表記,フォント,デザインが異なることに加え,控訴人各表示と被控訴人表示2の実質的な相違部分である「A」と「S」の間で顕著にデザインが異なることからすると,両者の商品表示は類似しているとはいえないと判断するのが相当である。  控訴人は,控訴人表示3と被控訴人表示2との類似性に関し,控訴人表示3はオレンジ色の背景に赤色を基調とし,かつ黒及び白を用いた色彩構成になっている点,包装の下半分に大きいアルファベットの欧文字が1字記載されている点及び同アルファベット文字の真ん中を包装の基調色ともなっている赤いラインが横切っている点に特徴があるところ,これらの特徴はいずれも被控訴人表示2と共通しており,控訴人表示3及び被控訴人表示2の両表示を全体的,離隔的に対比して観察した場合には,上記共通点から生じる印象の強さが,「セイロガン」という文字の表記方法や,ラッパのマークが入っているか否かといった相違点から 生じる印象の強さを上回り,取引者又は需要者において,両表示が類似するものと受け取られるおそれがあると主張する。 しかし,控訴人の主張するような共通点は,前記のような控訴人表示3の「セイロガン糖衣A」の部分と被控訴人表示2の「正露丸糖衣S」の部分との具体的な差異を凌駕するものとは認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。  控訴人は,控訴人各表示と被控訴人各表示が類似することなどを裏付ける証拠として,インターネットを用いたアンケート結果に係る書証(甲59~62〈原審:以下「本件第1回アンケート」という。〉,甲69~72〈当審:以下「本件第2回アンケート」という。)を提出している。 このうち,本件第1回アンケート ンケート結果に係る書証(甲59~62〈原審:以下「本件第1回アンケート」という。〉,甲69~72〈当審:以下「本件第2回アンケート」という。)を提出している。 このうち,本件第1回アンケートの結果の概要は,被控訴人商品(被控訴人表示2の正面)のみを示して知っていると回答した81.7%の回答者ら(842名。全体の回答者数は1030名。関連業種従事者は除外されている。)に対し,控訴人商品を含むその他の本件医薬品(糖衣錠)の包装を見せて確認したところ,そのうち74.8%の者(630名)が被控訴人商品以外の商品と誤解していたと回答し,さらにそのうち91.4%の者(576名。すなわち,全体の55.9%,被控訴人商品を示されて知っていると回答した者の68.4%)が,控訴人商品と誤認していたというもの(甲60,61の2・3)である。しかしながら,控訴人各表示と被控訴人各表示の類似性の判断は,対象となっている両当事者の商品(本件医薬品のうち糖衣錠型)に係る取引者又は需要者の中の平均人を主体とし,具体的な取引の実情の下で,その者が取引社会において通常使用する注意力ないし判断力をもって基準とすることになると解される。しかるところ,前記認定の控訴人各表示の周知著名性からすると,一般消費者の中には「正露丸」や「セイロガン」が 普通名称であるとの認識がなく,控訴人商品の商品表示(又はその一部)と認識する者も少なからず存在するものと推測され,本件において明らかな控訴人商品と被控訴人商品の市場占有率や知名度の差に鑑みると,控訴人商品を示されて知っていると答えた回答者の多くは,被控訴人表示2の「正露丸糖衣」の部分から控訴人商品を想起したのではないかと推測される。しかし,「正露丸」及び「糖衣」は普通名称であるから,この点において誤解する需要者がいた 答えた回答者の多くは,被控訴人表示2の「正露丸糖衣」の部分から控訴人商品を想起したのではないかと推測される。しかし,「正露丸」及び「糖衣」は普通名称であるから,この点において誤解する需要者がいたとしても,控訴人各表示の周知著名性の証左であるとはいえても,実際の取引の実情の下において控訴人各表示と被控訴人表示2とが類似するとか,混同のおそれがあると直ちにはいえない。したがって,本件第1回アンケートの結果をもって,被控訴人各表示が控訴人各表示と類似することが裏付けられたとはいえない。 次に,本件第2回アンケートの結果については,前記イで既に触れたとおりであり,被控訴人各表示が控訴人各表示と類似することの裏付けとなるものとはいえない。 また,証拠(甲76~79)によれば,実際に被控訴人商品を控訴人商品と誤解して購入し消費者が存在することがうかがわれるが,本件証拠上はごく少数の例にとどまっており,控訴人各表示と被控訴人表示2とが混同のおそれがある程度に類似していると認めるには足りない。 (4) 各表示の類似性に関する控訴人のその余の主張についてア控訴人は,法2条1項1号と2号の保護目的の違いから,1号の類似性は,出所混同のおそれを基準に考えるべきであるのに対し,2号の類似性は,「容易に著名表示を想起させるほど似ている表示」といえるかどうかによって判断すべきである,2号の類似性の判断においては,立法趣旨(フリーライド〈ただ乗り〉やダイリューション〈希釈化〉等の防止)に鑑み背景の取引事情も十分に勘案することが必要であり,従前の関係, 表示選択動機,表示に現れた悪意等の要素も斟酌されるべきと解され,著名表示のブランドイメージを保護するという観点からも,不正競争者にフリーライドの意図が認められるような場合には,当該行 , 表示選択動機,表示に現れた悪意等の要素も斟酌されるべきと解され,著名表示のブランドイメージを保護するという観点からも,不正競争者にフリーライドの意図が認められるような場合には,当該行為に対して厳しく考えていかなければならないところ,被控訴人は,平成8年ころから,販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と称して被控訴人商品を製造販売しており,発売開始当時の包装は,包装の正面に「キョクトウ」の文字を使用して,「キョクトウ製」であることを全面にアピールするデザインであったにもかかわらず,その後,無数に選択し得る包装の中から,現行の包装(被控訴人表示2)を採択して,平成21年2月ころ(遅くとも平成22年12月ころ)より,被控訴人商品の包装として使用し始めたのは,明らかに不自然であって,控訴人が昭和56年11月から使用している控訴人表示3の著名性に類似させ,フリーライドを試みようとした意思が強く推認される旨主張する。 イ上記アの点については,混同のおそれの観点も踏まえて商品表示の類似性について前記で判断したところであるので,同,の点について検討するに,前提となる事実,前記2ア,の認定事実,証拠(甲2,6,40,41,58,60,84,85,乙10,12,14,18~20〈ただし,枝番号のあるものはそれも含む。〉)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。  被控訴人は,昭和25年,富山市で医薬品の製造販売会社として設立,創業し,その後,数社の薬品会社を吸収合併した後,昭和50年に,昭和22年設立の興和薬品工業株式会社及び昭和28年設立の大学堂製薬株式会社(以下「大学堂製薬」という。)と合併した。  上記2社は,いずれも設立当初から本件医薬品(正露丸)を製造販売しており,被控訴人は,上記合併により正露丸を 社及び昭和28年設立の大学堂製薬株式会社(以下「大学堂製薬」という。)と合併した。  上記2社は,いずれも設立当初から本件医薬品(正露丸)を製造販売しており,被控訴人は,上記合併により正露丸を製造販売するようになった。  大学堂製薬は,「本方正露丸」の名称で正露丸を製造販売しており,その包装箱の正面部に「本方正露丸」と黒色で大きく表記していたところ,被控訴人は,この大学堂の黒色表記を受け継いで,包装箱に「正露丸」と黒色表記した商品を数点製造販売しており,現在もその名称の商品を製造販売している。  被控訴人は,平成8年中ころから,本件医薬品(正露丸)の糖衣錠型を製造販売しているが,この商品にも従前の黒色表記を取り入れた。  被控訴人の販売方法は,家庭配置薬(売薬)に乗せる方法と薬局・ドラッグストア等小売店で販売する方法があり,売薬に当てている商品は,被控訴人固有の自社ブランド品「正露丸糖衣錠キョクトウ」であり(甲41のB-2),小売店に当てている商品は10種ほどあるが,全て被控訴人商品と同様,販売先のPB商品であるため,販売先毎に包装箱のデザインが違っている(甲41のA,B-2・3~6,C1~3)。  被控訴人は,平成21年2月ころから,サンドラッグのPB商品として被控訴人商品を製造販売しており,その包装(被控訴人表示2)の「S」表示には,正露丸やサンドラッグの頭文字,スーパーやスペシャルの意味が込められていると説明している。もっとも,被控訴人商品がサンドラッグのPB商品であることは,一般には知られていない。 ウ確かに,市場に出ている糖衣錠タイプの本件医薬品においては,商品表示にアルファベット(ローマ字表記)を用いたものは控訴人商品と被控訴人商品以外には見当たらず(甲60,弁論の全趣旨),被控訴人が「S 確かに,市場に出ている糖衣錠タイプの本件医薬品においては,商品表示にアルファベット(ローマ字表記)を用いたものは控訴人商品と被控訴人商品以外には見当たらず(甲60,弁論の全趣旨),被控訴人が「S」の表示を使用する理由として説明するところ(前記イ)も曖昧で,必ずしも説得的なものではない。しかし,再々説示したとおり,「正露丸」も「糖衣」も普通名称であり,医薬品の商品表示中にアルファベットを用いることも極めてありふれたことであり,控訴人商品の商品表示が周知著名 であるからといって,これらの使用を独占できるものでなはい。そして,上記イの認定事実に,前記で被控訴人表示2と控訴人表示3との商品表示の類似性について判示したところを併せ考慮すると,被控訴人に,控訴人表示3の著名性にフリーライド(ただ乗り)しようとの意思があったとは認め難い。他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。 エよって,控訴人の上記主張は採用することができない。 (5) 以上によれば,被控訴人が被控訴人表示1を使用しているとは認められないし,被控訴人が被控訴人表示2を使用して被控訴人商品を製造販売する行為が法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するとは認められない。 4 争点5(被控訴人の行為は,不法行為に該当するか。)について控訴人は,被控訴人による被控訴人商品の製造販売は,控訴人が多額の費用と労力をかけて構築した営業の成果である「セイロガン糖衣A」ブランドへフリーライドするものであり,不法行為を構成する旨主張する。 しかしながら,控訴人が主張するフリーライドというような事象は,法2条1項1号又は2号の不正競争該当性の問題として,法によって救済されるべき事柄であり,前記のとおり,被控訴人の行為が不正競争に当たるとはいえず,控訴人の法に基づく請 ーライドというような事象は,法2条1項1号又は2号の不正競争該当性の問題として,法によって救済されるべき事柄であり,前記のとおり,被控訴人の行為が不正競争に当たるとはいえず,控訴人の法に基づく請求が認められない以上,特段の事情がなければ,これと別個に不法行為が成立するとはいえない。さらに,前記2で認定したとおり,控訴人各表示(控訴人表示3については控訴人表示2に相当する部分の表示)は,控訴人商品を識別する周知著名な商品表示となっているが,上記3で認定,説示したところによれば,被控訴人がこれにフリーライドしている事実は認められない。そして,他に,被控訴人の行為が不法行為を構成することの主張立証はない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 5 結論以上の次第で,その余の点(争点3,4及び6)について判断するまでもな く,控訴人の請求(当審における変更後の差止請求・廃棄請求及び予備的損害賠償請求を含む。)はいずれも理由がないから,控訴人の本件控訴並びに当審における請求(変更後の差止請求・廃棄請求及び予備的損害賠償請求)を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官小松一雄 裁判官長井浩一 裁判官横路朋生

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