【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を浦和地方裁判所に差戻す。 理 由 弁護人小原栄次の控訴趣意書は本判決末尾添附の控訴趣意書に記載のとおりであ るから
主文原判決を破棄する。 本件を浦和地方裁判所に差戻す。 理由弁護人小原栄次の控訴趣意書は本判決末尾添附の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これについて判断する。 一、第一点および第二点について原判示事実の要旨は、被告人はAから同人の内縁の妻B所有の建物を担保にして金二万円の金策方依頼を受けたのを奇貨とし、併せて擅に自用の金子をも入手しようと企てCに対し恰も右Aから金六万円の金策を依頼されているが如き詐言を弄して同人を欺罔した結果右建物を担保に供して金六万円借受の約定をなし、その利息として六千円を控除した残金五万四千円の交付を受け以て同金額と右二万円との差額たる金三万四千円(原判決に三万六千円と記載あるは誤記と認める)を騙取したものなりというに在る。そこで、(一) まず、原判決が被告人の右金員騙取の詐欺罪成立を肯認したのは事実誤認なりや否やの論点(控訴趣意第二点)につき按ずるに、原判決引用にかかる原審証人Cの供述(原審第三回公判調書記載)同Aの供述(同第四回公判調書記載)被告人の検察官に対する第一、二回供述調書および不動産登記簿謄本を綜合すると、原判示日時場所において、被告人がAから同人およびBのためB所有の本件建物を担保に供して金策されたい旨の依頼を受けたのに乗じ、此の機に自用の金員をも調達しようと考え、Cに対し、同建物を担保にして、その所有者Bに金六万円を貨与されたい旨申し向けたところ、Cは右担保物件を信頼してBに金六万円を貸渡す約定をなし、その利息として金六千円を控除した残金五万四千円を被告人に交付したが、被告人は右金借申込当時その金員借受および担保提供の代理行為をなす真意を有し、同時に右Cが同金員貸与に至つたのは、専ら同担保物件の価値に信頼したからであつて、 た残金五万四千円を被告人に交付したが、被告人は右金借申込当時その金員借受および担保提供の代理行為をなす真意を有し、同時に右Cが同金員貸与に至つたのは、専ら同担保物件の価値に信頼したからであつて、被告人とAやB等との間の金策依頼の限度等はCにおいて関知するところでなかつたこと明らかである。尤も、前記証人Cの証言中には、自分は若し当時Bが被告人に対し金二万円を限度とする金策を依頼したに止まることを知つていたならば、後日の面倒を避けるため、右六万円の貸渡しはしなかつたであらうとの趣旨の供述も見えるが、これらは、事後になされた一種の仮定論に過ぎずこれを以て前記貸与当時におけるCの現実的意思認定の資料となすには足りない。 従つて、被告人には、Cに対する限り、別段欺罔行為があるわけでなく、Cにも亦右金員貸与につき何等錯誤があるものでないから、原判決において同金員授受に関し被告人に詐欺所為ありと断じたのは事実を誤認したものであり、而して同誤認は判決に影響を及ぼすことの明らかなること所論のとおりである。(因に、右詐欺罪の成否は、実際授受された五万五千円全額につき判断されるべきで、それと二万円との差額のみにつき論ずるのは、被告人とAやB等との内部関係につき関知しないCの意思よりみて、理由ないことである)。 <要旨>(二) 次に、原判決に理由くいちがいありやの論点(控訴趣意第一点)につき審究するに、原判決は、結局は被</要旨>告人のCに対する詐欺所為を認定したのであるが、その判示事実の始終を通覧するに、被告人がAよりB所有建物を担保にして金二万円の融資方斡旋を依頼されたのに乗じ、自用の金員を入手しうと企てAやBの承認を受けないまま、Cに対し前記建物を担保に供しBを借主として金六万円の借用を実現させるに至つた事実を認定しておることが認められるのである を依頼されたのに乗じ、自用の金員を入手しうと企てAやBの承認を受けないまま、Cに対し前記建物を担保に供しBを借主として金六万円の借用を実現させるに至つた事実を認定しておることが認められるのである。従つて原判決は、被告人がA等から依頼された金策という事務の処理に当り私利を図る目的を以て、その本来の任務に反する金策手段を採り同人等に無断で六万円の借用金債務にB所有の右建物を担保に差入れてB名義で同金額を借用し以て同人等に不測の損害を加えた点において、Cに対する詐欺の所為とは別に、実質上AやBに対する背任的所為となすべき客観的事実を認定したものとみることができる。然るに、原判決自らは結局本件事実総体を詐欺一色に認定しているのであつて、これは、被告人とCとの前記交渉においては詐欺罪の成立を当然と解し、被告人とAおよびB等との間の依頼関係は右詐欺に至る縁由的過程とのみ認めた結果と推察されるのであるが、前述の如く、既に実質上背任的事実をも認定している以上それと詐欺事実との関係は矛盾なく明確に判示するを要するのである。而して此の場合右詐欺は被告人とCとの関係であり、背任は被告人AやB等間の関係であつて、それぞれ当事者および被害者等を異にする別個独立の事項であり、その一を以て他を包含し又は両者が想像的に競合するが如き関係に在るものではない(大正三年一二月二二日大審院判決―同院判決録第二〇輯第二五九八頁―参照)。故に、原判決において右両者に該当する事実を単純に詐欺の一罪に包括処断したのは、判決理由全般として趣旨の統合一貫を欠き、いわゆる「くいちがい」ある場合に属すること所論のとおりである。 (但し、斯ように原判決理由自体において「くいちがい」あり且つ本件詐欺罪の成立を認めることは事実誤認なること前述のとおりとしても、然らば直ちに進んで背任の事実を罪 属すること所論のとおりである。 (但し、斯ように原判決理由自体において「くいちがい」あり且つ本件詐欺罪の成立を認めることは事実誤認なること前述のとおりとしても、然らば直ちに進んで背任の事実を罪となるべき事実として採り挙げ得るやは自ら別問題であり、これは背任的事実と本件訴因範囲との関係を考按の上あらためて解決されるべき事項である。)叙上の次第であるから、原判決は、控訴趣意第一点および第二点の孰れよりみるも破棄を免れず、右論旨は共に理由がある。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事久礼田益喜判事武田軍治判事石井文治)
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