平成14年3月12日宣告傷害致死(予備的訴因傷害,暴行)被告事件判決被告人氏名,本籍,住居,職業,生年月日 (略) 主文 被告人を罰金30万円に処する。 未決勾留日数中,1日を金5000円に換算して罰金額に満つるまでの分を刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 平成13年2月15日午前11時ころ,札幌市a区b条c丁目d番e号所在のA食品工業株式会社製造部2課洋菓子工場内において,B(当時47歳)に対し,その左眼部を右手拳で1回殴打した上,その左腹部を左手拳で1回殴打し,足で1回蹴るなどの暴行を加え,よって同人に全治約1か月間を要する左眼部挫傷及び皮下出血の傷害を負わせ,第2 同日午後1時10分ころ,同所において,前記鳴海に対し,その腹部を2,3回膝蹴りするなどの暴行を加えた。 (証拠の標目)(略)(事実認定の補足説明) 1 本件の主位的訴因は,「被告人は,(1)平成13年2月15日午前11時ころ,札幌市a区b条c丁目d番e号所在のA食品工業株式会社製造部2課洋菓子工場内において,B(当時47歳)に対し,その左眼部を右手拳で殴打し,その左腹部を左手拳で殴打したり,足蹴にする暴行を加え,同人に左眼部打撲に起因するくも膜下出血及び脳幹部実質内出血等の傷害を負わせ,(2)前同日午後1時10分ころ,前記場所において,Bに対し,その腹部を膝蹴りするなどの暴行を加え,よって,同月21日,同区f条g丁目h番i号j号室所在のB方寝室において,同人を前記傷害に基づく脳機能障害により死亡させた。」というものであるが,当裁判所は,判示のとおり予備的訴因である傷害及び暴行の事実を認定したので,以下,その理由を説明する。 2 被告人が被害者に対し判示の一連の暴行を加え,判示第1の傷害を負わせたこと及び被害 であるが,当裁判所は,判示のとおり予備的訴因である傷害及び暴行の事実を認定したので,以下,その理由を説明する。 2 被告人が被害者に対し判示の一連の暴行を加え,判示第1の傷害を負わせたこと及び被害者が主位的訴因の日時場所において死亡したことは,前掲関係各証拠によって認めることができる。 そこで,被害者の死因について検討すると,この点について,C作成の鑑定書及び同人の公判供述は,被告人の暴行の「反対損傷」としてくも膜下出血が生じ,これから脳浮腫,大孔ヘルニア,2次性脳幹部出血という経緯をたどって被害者が死亡したのであるから,被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係があるとしている。これに対して,D作成の鑑定書及び追加鑑定書は,C鑑定が暴行の「反対損傷」としてくも膜下出血が生じたとする点について,法医学及び頭部外傷論の見地から全く根拠がないとし,大脳組織には軽微な脳浮腫があるが,大孔ヘルニアを引き起こし2次性脳幹部出血を発生させるほど重篤なものではないとも指摘している。そして,被害者にくも膜下出血が生じた原因については,脳幹部出血が原発的に生じ,第4脳室内に流入した血液が脳脊髄液の循環に伴ってくも膜下腔に流れ込んだためであると判断し,脳幹部出血の原因としては,高血圧性脳内出血のほか,動脈瘤や脳動静脈吻合症などが考えられ,顔面外傷との関係では,遅発性外傷性脳内出血の可能性も考えられるが,現状の臓器の保存状態では,脳幹部出血の原因をこれ以上分析することは不可能であるとしている。その説明は,説得的であり,特に不合理な点は認められない。なお,E作成の意見書も,臨床医学的な見地からC鑑定は誤りであるとしている。 3 以上によれば,被告人の暴行と被害者の死亡との間に因果関係があるというC鑑定には合理的な疑いを入れる余地があり,他に上記因果関係を認 意見書も,臨床医学的な見地からC鑑定は誤りであるとしている。 3 以上によれば,被告人の暴行と被害者の死亡との間に因果関係があるというC鑑定には合理的な疑いを入れる余地があり,他に上記因果関係を認めるに足りる証拠はないから,主位的訴因を認定することはできない。したがって,判示のとおり予備的訴因の事実を認定する。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法204条に,判示第2の所為は同法208条にそれぞれ該当するところ,各所定刑中いずれも罰金刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で被告人を罰金30万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中,1日を金5000円に換算して罰金額に満つるまでの分を刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,勤めていた会社の工場で,同僚であった被害者の仕事のやり方などに腹を立て,怒りにまかせて安易に暴力を加えたものであって,動機に酌量すべき点は乏しい。犯行の態様は,判示第1の犯行については,手拳で被害者の左眼部を強打した上,四つんばいになって苦しそうにうめき声を上げている被害者の腹部を足で力一杯蹴ったというものであり,判示第2の犯行については,胸ぐら等をつかんで腹部を思い切り2,3回膝蹴りしたというものであって,いずれも危険な犯行であり,無抵抗の被害者に対して一方的に暴行を加えた点及び昼休みをはさんで2度にわたって行われた点で悪質である。これにより被害者は全治約1か月間を要する傷害を負ったのであるから,結果は重く,被害者の家族も被告人の被害者に対する仕打ちを許せないと述べている。以上によれば,被告人の刑事責任は軽くないというべきである。 しかし 者は全治約1か月間を要する傷害を負ったのであるから,結果は重く,被害者の家族も被告人の被害者に対する仕打ちを許せないと述べている。以上によれば,被告人の刑事責任は軽くないというべきである。 しかしながら,他方において,被告人が本件犯行を素直に認めて深く反省していること,本件犯行後,被害者は日曜日を除いて通常どおり出勤しており,被害者から被告人に電話をかけたことがきっかけとなって和解していること,おわびとして被害者の家族に対して200万円を支払う用意するなど,慰謝の措置を講じる努力をしていること,会社から懲戒解雇の処分を受けたこと,前科前歴はなく,今まで社会人としてまじめに働いてきていること,妻が被告人の監督を約束していることなど被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで,当裁判所は,被告人を主文のとおり罰金刑に処するのが相当であると判断したが,被告人が約3か月間身柄を拘束されていたことを考慮して,罰金額の全部について未決勾留日数を算入することとした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役4年)(検察官本多裕一郎,私選弁護人坂口唯彦各出席)平成14年3月12日札幌地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官井口修裁判官登石郁郎裁判官小野瀬昭
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