主文 1 被告は,原告a,同b及び同cに対し,それぞれ427万5839円及びこれに対する平成12年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告dに対し418万6930円,同eに対し251万2158円,同fに対し167万4772円及びこれらに対する平成12年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを4分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 5 この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告a,同b及び同cに対し,それぞれ1827万2849円及びこれに対する平成12年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告dに対し1901万5810円,同eに対し1260万9486円,同fに対し940万6324円及びこれらに対する平成12年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告が施行する土地区画整理事業で仮換地の指定を受けた原告らが,仮換地の使用収益承認等が遅延したことを違法として,被告に対し,国家賠償法に基づき損害賠償を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1) 被告は,昭和57年11月20日事業計画決定公告がなされ,地区面積が11.3ヘクタール,施行期間が昭和57年度から平成18年度の堺都市計画事業α・β(β駅前)土地区画整理事業(以下「本件区画整理事業」という。)を施行している。本件区画整理事業では,昭和62年2月12日,仮換地指定がなされ,同月19日,その効力が発生したが,土地区画整理法99条2項に基づき,仮換地につい 以下「本件区画整理事業」という。)を施行している。本件区画整理事業では,昭和62年2月12日,仮換地指定がなされ,同月19日,その効力が発生したが,土地区画整理法99条2項に基づき,仮換地について使用又は収益を開始することができる日を別に定めて通知するとして,それまで仮換地の使用収益ができないこととされた。被告は,本件区画整理事業の工事の進捗状況に応じて,順次,街区を単位として一斉に地権者に仮換地の使用収益開始通知を行っているが,街区一斉の使用収益開始通知に至らない場合でも,地権者から自己の仮換地の個別開発の申請があった場合,本件区画整理事業に支障がないと判断すれば,個別に仮換地の使用収益の承認を行い,堺市長は,同法136条の3,76条による建築等の許可を行っている。 (2) 別紙図面の本件区画整理事業におけるAブロックでは,新都心と位置づけられたβ地区の駅前核商業ゾーンの中心として,地権者の土地共同利用によるテナントビル等の中高層建物の立地事業(以下「本件共同化事業」という。)が計画され,昭和62年3月には地権者らによるβ駅前共同事業準備組合が,平成4年12月には同じくβ駅前Aブロック共同事業組合(以下「共同事業組合」という。)が設立され,平成9年10月には,株式会社そごうの協力を前提に日商岩井株式会社が事業参画し,日商岩井株式会社が4000万円を全額出資してなかもずビルディング株式会社(以下「なかもずビル」という。)が設立された。被告は,本件共同化事業を推進する立場から,平成10年12月,なかもずビルに1000万円を出資し,被告の担当者らが,地権者と土地の賃貸借契約等の交渉に当たっていた。しかし,平成12年7月12日に株式会社そごうが民事再生法の適用を申請したこと等の事情により,本件共同化事業計画の実現は困難な状況となり,共同事業 が,地権者と土地の賃貸借契約等の交渉に当たっていた。しかし,平成12年7月12日に株式会社そごうが民事再生法の適用を申請したこと等の事情により,本件共同化事業計画の実現は困難な状況となり,共同事業組合は同年12月21日に解散した。 (3) gは,本件区画整理事業区域内にある別紙物件目録1(1)ア記載の各土地(以下「g従前地」という。)を所有していたところ,上記仮換地指定により,同目録1(2)ア記載の土地(以下「g仮換地」という。)について仮換地指定を受けた。その後,平成2年6月12日付けに対する持分一部贈与,平成6年5月22日g死亡による相続及び平成7年3月10日付け原告cに対するh持分の一部贈与を経て,g従前地は,原告a,原告b(以下「原告b」といい,原告a及び同cと併せて「原告aら」という。),h及びiの共有となった。そして,平成11年9月13日付け共有物分割により,原告aらは,それぞれ分筆後の同目録1(1)イ記載の従前地を取得することとなり(甲1ないし6),その仮換地は,それぞれg仮換地の一部である同目録1(2)イ記載の各土地(以下「原告aら仮換地」という。)となった。原告aら仮換地は,別紙図面記載のとおり,Aブロック内の10街区に位置する。g仮換地は,平成4年3月末に整地工事が完了し,平成5年3月末にはガス,水道,排水管工事が完了し,その後平成12年8月10日まで特に工事は行われていない。 (4) 原告d,同e及び同f(以下「原告f」といい,原告d及び同eと併せて「原告dら」という。)は,本件区画整理事業区域内にある別紙物件目録2(1)記載の土地(以下「原告dら従前地」という。)を,原告dが10分の5,同eが10分の3,同fが10分の2の持分割合で所有していたところ(甲7),上記仮換地指定により,同目録2(2)記載の土地(以下 記載の土地(以下「原告dら従前地」という。)を,原告dが10分の5,同eが10分の3,同fが10分の2の持分割合で所有していたところ(甲7),上記仮換地指定により,同目録2(2)記載の土地(以下「原告dら仮換地」といい,原告aら仮換地と併せ「原告ら各仮換地」という。)について仮換地指定を受けた。 原告dら仮換地は,別紙図面記載のとおり,Aブロック内の17街区に位置する。 原告dら仮換地は,平成7年3月末,整地,ガス,水道,排水管工事が完了し,その後平成12年8月10日まで特に工事は行われていない。 原告dら従前地上には,原告e所有名義で賃貸用建物(以下「δビル」という。)が存在していたところ,原告eは,平成9年6月16日,被告との間でδビルの移転補償契約を締結し,平成10年1月26日,δビルの撤去が完了し,原告eは,合計2億1482万8000円の補償金を取得した(甲39)。このうちδビルの譲渡価額1億3061万1578円にかかる譲渡所得については,租税特別措置法33条に規定する代替資産の買換えによる譲渡所得の課税の特例(以下「買換特例」という。)又は同法33条の4に規定する5000万円の譲渡所得等の特別控除の適用を選択的に受けることができる。原告eは,平成10年分の所得税の確定申告に当たり,δビルの譲渡所得について,譲渡年月日を平成10年2月4日とし,2年を経過する日までの期間内に代替資産を取得する見込みであるとして,同法33条2項による買換承認の申請をしたが(甲37),平成12年5月1日,期限内に代替資産を取得しなかったとして,δビルの譲渡所得について5000万円の特別控除を適用して平成10年分の所得税の修正申告を行い,1160万3000円を納付し(甲29,36),これに伴い同年6月15日,市民税府民税368万0900円を納付した( 得について5000万円の特別控除を適用して平成10年分の所得税の修正申告を行い,1160万3000円を納付し(甲29,36),これに伴い同年6月15日,市民税府民税368万0900円を納付した(甲30の1ないし30の3)。 (5) 原告aらは,平成11年7月7日,被告に対し,g仮換地について使用収益承認申請をしたが,共有者であるh及びiからは申請がなかったところ,上記共有物分割後の同年9月20日,原告aらは,改めて原告aら仮換地について使用収益承認申請を行い,更に,原告aは,同年11月24日,堺市長に対し,原告aら仮換地上の店舗付賃貸共同住宅の新築許可申請を行った(甲18,20,乙16,17)。 また,原告dらは,平成11年9月24日,被告に対し,原告dら仮換地の使用収益承認申請を行い,原告eは,同年12月3日,堺市長に対し,原告dら仮換地上の店舗ビルの新築許可申請を行った(甲19,21,乙18,19)。 上記各申請に対する承認及び許可等がなされなかったところ,原告らは,平成12年5月8日,被告に対し仮換地の使用収益承認及び損害賠償を,堺市長に対し建築許可を求めて本訴を提起し,訴状は,同年6月2日,被告に送達された。被告及び堺市長は,株式会社そごうが民事再生法の適用を申請した後である同年8月10日,原告らに対し,それぞれ上記申請にかかる使用収益承認及び建築許可を行い(乙16ないし19),原告らは,承認及び許可請求の訴えを取り下げた。 その後,原告aは,平成13年2月23日,都市基盤整備公団と施設付住宅譲渡契約を締結し,平成14年3月20日までに,建設費用合計4億6593万0013円で,原告aら仮換地上に鉄筋コンクリート造10階建マンション(以下「原告aら建物」という。)を建築し(甲43,44),また,原告eは,平成13年5月までに でに,建設費用合計4億6593万0013円で,原告aら仮換地上に鉄筋コンクリート造10階建マンション(以下「原告aら建物」という。)を建築し(甲43,44),また,原告eは,平成13年5月までに,取得費用合計1億2428万2000円で,貸店舗用5階建建物(以下「原告dら建物」といい,原告aら建物と併せて「原告ら各建物」という。)を建築した(甲43)。 2 争点本件の争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおりである。 (1) 承認等の遅延違法性(原告ら)原告ら各仮換地は,長期間工事等がないまま平成12年8月10日に使用収益承認等が行われており,遅くとも,g仮換地は原告らが相続により取得した平成6年5月には,原告dら仮換地は整地,ガス,水道,排水管工事が完了した平成7年4月には,建物の建築が可能な状態にあった。 仮換地指定により,土地所有者は,従前地の使用ができなくなる一方,仮換地の使用収益ができるのが原則であって,土地区画整理法99条2項の使用収益開始日を別に定めることができる特別の事情とは,仮換地上の物理的な障害等土地区画整理事業施行上の障害に限られるべきである。また,同法76条による建築等の許可の規定は,土地区画整理事業の施行の障害となる建物の建築等を防止するためのものであるところ,原告ら各仮換地上に建物を建築しても本件区画整理事業の障害となるものではない。本件共同化事業は地権者らによる任意の事業であり,本件土地区画整理事業と無関係な別個独立の本件共同化事業の遂行を理由に承認等を行わないことは,本件共同化事業を強制するものであって許されない。g及び原告aらは,従前より,被告担当者に対し本件共同化事業に参加しない意思を明確にしており,また,原告dらは,平成10年12月,なかもずビルが提示した賃料額が低額であったことから賃 て許されない。g及び原告aらは,従前より,被告担当者に対し本件共同化事業に参加しない意思を明確にしており,また,原告dらは,平成10年12月,なかもずビルが提示した賃料額が低額であったことから賃貸借契約の締結を断り,本件共同化事業に参加しないことを明確にしていたものである。それにもかかわらず,被告が,原告らに対し,本件共同化事業への協力を執拗に要請し,原告ら各仮換地の使用収益を承認せず,堺市長が建築許可をしなかったことは違法である。 原告aらは,被告担当者に対し,本件共同化事業に参加しないことを明言し,g仮換地の使用収益を求めていたのに対し,被告担当者は,仮換地の使用収益承認等を行わず,原告aらに対し,使用収益承認申請手続についても伝えなかったものである。平成11年2月ころ,訴外jがAブロックの仮換地に被告の承認を得て店舗の建築に着手したことからは,遅くともその6か月位前にはjに対して使用収益承認等が行われたことが推測できる。したがって,被告担当者は,遅くとも平成10年7月ころには,g仮換地についても使用収益承認をすべきであったので,その後も承認申請手続について告げず,承認等をしなかった被告担当者の行為は違法である。 また,原告dらは,原告dら仮換地に賃貸用建物を建築して買換特例の適用を受けることを前提として,被告との間でδビルの移転補償契約を締結したもので,原告dらが買換特例の適用期限である平成12年3月までに上記建物を建築する予定であったことは被告担当者も了解していたのであるから,上記適用期限に間に合うよう原告dら仮換地の使用収益承認等を行うべきであったにもかかわらず,これをしなかったことは違法な行為である。 (被告)原告ら各仮換地を含む街区については,別紙図面記載の区画道路の築造工事や民民境界の工事が完了していないため, 等を行うべきであったにもかかわらず,これをしなかったことは違法な行為である。 (被告)原告ら各仮換地を含む街区については,別紙図面記載の区画道路の築造工事や民民境界の工事が完了していないため,街区一斉の使用収益開始通知が行える段階には至っていない。 本件区画整理事業は,公共団体である被告が施行者となり,都市計画的な観点に立って,市街地の整備,まちづくりを図ることを目的に,公共的見地からの必要性から推進されているものである。本件共同化事業は,β新都心形成に当たって不可欠な中核事業であり,当時,十分実現可能性を有していた。土地区画整理法99条2項の特別の事情及び同法76条の土地区画整理事業の施行の障害となるおそれの判断においては,単に仮換地の物理的現状のみならず,本件共同化事業の成否との関連性をも勘案することは,相当期間内においては許される。被告は,原告らに対し,本件共同化事業への理解と協力を求めて,代替地の提供や買取り等を含めて諸条件を提示し,誠意をもって対応してきた。原告らは,本件共同化事業の長い経緯,公共性,他の地権者への配慮から,平成12年9月末まで仮換地の使用収益承認や建築許可を留保することを承諾していたと推認でき,被告及び堺市長が,平成12年8月10日に承認等を行ったことは,行政処分を留保することができる相当な期間として許容される限度を逸脱していないというべきである。 jは,仮設店舗を提供してもらえるなら本件共同化事業に協力することになったため,財団法人堺市都市整備公社がリースの仮設店舗を用意し,jに対し,2年間の約定で賃貸したものにすぎず,平成13年7月には,仮設店舗は撤去されている。 (2) 損害ア逸失利益(原告aら)原告aらは,平成10年7月から平成12年8月10日まで少なくとも25か月間,使用収益承認等 ものにすぎず,平成13年7月には,仮設店舗は撤去されている。 (2) 損害ア逸失利益(原告aら)原告aらは,平成10年7月から平成12年8月10日まで少なくとも25か月間,使用収益承認等が遅延したことにより,原告aら建物の完成が同期間遅れ,その間の賃料及び駐車場収入が得られなかった。原告aら建物の1か月の賃料及び駐車場収入は362万8000円であり,25か月で9070万円である。これから建物建設費用借入金の当初から25か月分の返済額3342万6816円を控除し,残額5727万3184円から2割の維持管理費,経費を控除すると,原告aらの逸失利益は4581万8547円となる。原告aらは,原告aら建物の収益を各3分の1とする旨合意しており,それぞれ1527万2849円の損害を負った。 (原告dら)原告dらは,買換特例適用のため平成12年3月までに原告dら建物を建築する予定であったところ,完成したのは平成13年5月末で,使用収益承認等が遅延したことにより14か月間建物の完成が遅れ,その間の賃料収入が得られなかった。 原告dら建物の平成13年6月から同年12月まで7か月の賃料収入は1460万1030円,利益は837万3860円であるから,14か月の利益は1674万7720円である。原告dらは,原告dら建物の収益を土地共有持分割合に応じて分配する旨合意しており,原告dは837万3860円,原告eは502万4316円,原告fは334万9544円の損害を負った。 (被告)建物の完成が遅れたとしても,その分建物の耐用年数の終期は遅くなり,耐用年数全期間の収益は同じであって,建物の完成が遅れたことによる逸失利益は認められない。仮に,耐用年数終期後の土地利用の収益による逸失利益を考えても,遠い将来の何らかの土地利用による収益という漠然とした損 全期間の収益は同じであって,建物の完成が遅れたことによる逸失利益は認められない。仮に,耐用年数終期後の土地利用の収益による逸失利益を考えても,遠い将来の何らかの土地利用による収益という漠然とした損害額算定を認める余地はない。 更に,原告aら建物の建築着工は平成13年3月,完成は平成14年3月20日で,原告dら建物の建築着工は平成12年11月,完成は平成13年5月末であって,平成12年8月10日の承認等より前の時期において,着工可能な程度に具体的な資金計画や建築計画はできていなかったとみられ,原告らが同日より遙か以前に着工可能な状態に達していたことを前提とした原告らの請求は失当である。 イ買換特例損害(原告dら)原告dらは,前記のとおり,買換特例の適用を受ける予定であったところ,被告の使用収益承認及び堺市長の建築許可がなされず,適用期限内に代替資産である建物の建築ができず,買換特例の適用が受けられなかったため,所得税及び市民税府民税合計1528万3900円を納付せざるを得なくなり,同額の損害を負った。 原告dらは,上記税負担を土地共有持分割合に応じて分配する旨合意しており,原告dは764万1950円,原告eは458万5170円,原告fは305万6780円の損害を負った。 (被告)原告dらは,δビルの移転補償金に関する被告との交渉中から,移転補償金にかかる課税問題について知っており,買換特例適用の可能な建物建築着工期限が平成11年3月ころと考えていたにもかかわらず,本件共同化事業への参加を選択して上記期限を徒過し,建築許可申請をした平成11年12月3日の時点では,代替資産取得期限まで約2か月しかなく,期限内の竣工は到底不可能となったものである。したがって,買換特例の適用が受けられなかったのは,原告dらが,本件共同化事業への参加か 1年12月3日の時点では,代替資産取得期限まで約2か月しかなく,期限内の竣工は到底不可能となったものである。したがって,買換特例の適用が受けられなかったのは,原告dらが,本件共同化事業への参加か代替資産の取得かの選択を自らの判断でした結果であり,これによる損害は原告dらが負担すべきものである。 ウ慰謝料(原告ら)原告らは,被告担当者の不誠実な対応により精神的苦痛を負ったもので,その慰謝料は,原告ら各300万円をくだらない。 (被告)原告らは,財産的損害を請求しているもので,財産的損害は金銭的に全額回復されるものであって,これ以外に精神的損害に対する慰謝料まで認められるものではない。 第3 争点に対する判断 1 承認等の遅延違法性について(1) 原告ら各仮換地の使用収益可能性についてγ・まちづくりニュース(乙13),陳述書(乙23)及び証人kの証言によれば,本件区画整理事業で予定されているAブロック内の区画道路は,本件共同化事業による外周道路への振り分け拡幅計画もあり,原告ら各仮換地の使用収益承認等が行われた平成12年8月10日にも工事が完成しておらず,原告aら仮換地のある10街区及び原告dら仮換地のある17街区は,街区一斉の仮換地使用収益開始ができない状況にあったことが認められる。しかしながら,被告は,地権者から自己の仮換地の個別開発の申請があった場合,本件区画整理事業に支障がないと判断すれば,個別に仮換地の使用収益の承認等を行っていたものであるところ,g仮換地は平成5年3月末にガス,水道,排水管工事が完了した後,原告dら仮換地は平成7年3月末に整地,ガス,水道,排水管工事が完了した後,格別工事等が行われることなく,平成12年8月10日に使用収益承認等が行われたことに照らせば,上記各工事終了後,使用収益が可能な状態にあっ 平成7年3月末に整地,ガス,水道,排水管工事が完了した後,格別工事等が行われることなく,平成12年8月10日に使用収益承認等が行われたことに照らせば,上記各工事終了後,使用収益が可能な状態にあったと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (2) 承認等の遅延違法性について土地区画整理事業において仮換地の指定が行われた場合,従前地の所有者は,仮換地指定の効力発生の日から従前地の使用収益ができなくなる一方,仮換地の使用収益ができる(土地区画整理法99条1項)が,仮換地に使用収益の障害となる物件が存するときその他特別の事情があるときは,施行者は使用収益の開始日を別に定めることができる(同条2項)。仮換地指定により,従前地の所有者は,従前地の使用収益権を失う代わりに仮換地の使用収益権を取得するのが原則であり,同条2項により仮換地の使用収益を制限することは,従前地所有者の権利に対する制約であるから,必要最小限のものでなければならない。したがって,同項にいう特別の事情とは,仮換地上の物理的な障害等の当該土地区画整理事業施行上の障害に限られるべきであり,それ以外の理由により仮換地の使用収益を制限することは許されないというべきである。また,同様に同法76条による建築等の許可の規定は,土地区画整理事業の施行の障害となる建物の建築等を防止するためのものと解されるところで,それ以外の理由により許可をしないことは許されないというべきである。 被告は,本件共同化事業の公共的見地から,土地区画整理法99条2項の特別の事情及び同法76条の土地区画整理事業の施行の障害となるおそれの判断において,本件共同化事業の成否との関連性を勘案することが,相当期間内において許される旨主張する。しかしながら,本件共同化事業は,本件区画整理事業の施行区域内で計画されていると 害となるおそれの判断において,本件共同化事業の成否との関連性を勘案することが,相当期間内において許される旨主張する。しかしながら,本件共同化事業は,本件区画整理事業の施行区域内で計画されているとはいえ,施行の主体を異にする別個の事業であり,原告らが参加を義務づけられるものでもない。したがって,本件共同化事業の成否により本件区画整理事業の施行そのものが影響を受け,仮換地の使用収益が結果的に本件区画整理事業の施行に障害となるような場合は格別,本件共同化事業の施行に障害となることを理由に使用収益の承認等を行わないことは,地権者の任意の意思に基づく本件共同化事業を事実上強制し,正当な理由なく地権者の権利を制限するものであって許されない。 本件では,原告ら各仮換地の使用収益及び建物建築により,本件区画整理事業の施行そのものについて支障が生じるとは認められないから,原告らが,文書で明確に仮換地の使用収益承認申請及び建築許可申請をしたにもかかわらず,被告及び堺市長が承認等に必要な相当期間が経過した後も承認等を行わない行為は,違法というべきである。 なお,原告らは,原告らが使用収益承認申請等をする以前においても,被告担当者が,本件共同化事業への協力を執拗に要請し,仮換地の使用収益承認等を行わず,使用収益承認申請手続について教示しなかった行為を違法と主張する。しかしながら,被告担当者が本件共同化事業への協力を要請すること自体は何ら違法なものではない。また,本件土地区画整理事業において,工事の進捗状況に応じて街区ごとに一斉に使用収益開始の通知を行うことを基本としつつ,個別の開発申請があった場合に使用収益承認等を行うという取扱いは,合理性を有すると認められ,原告らから明確な承認等の申請行為がない段階で承認等を与えなかった行為を違法ということはできず, としつつ,個別の開発申請があった場合に使用収益承認等を行うという取扱いは,合理性を有すると認められ,原告らから明確な承認等の申請行為がない段階で承認等を与えなかった行為を違法ということはできず,被告担当者が原告らに対して承認等の申請手続について積極的に教示すべき義務があるともいえない。したがって,上記原告らの主張を採用することはできない。 (3) 承認等猶予の合意についてまた,被告は,原告らが,平成12年9月末まで承認等を留保することを了承していた旨主張し,被告作成の本件共同化事業協力依頼書面(甲24,26,乙14,15),同代替資産取得期限延長依頼文書(甲27),陳述書(乙22,23)並びに証人k及び同lの各証言によれば,原告らによる仮換地の使用収益承認申請等を受けて,被告が,原告らに対し,本件共同化事業実現のめどがつく平成12年9月末まで待ってほしい旨依頼し,金銭的補償等を申し入れたこと,原告らが,上記期限を確約する書面を要求し,被告が,原告aらに対し,同期限後に使用収益承認等を行う旨の書面を交付したこと,原告dらの要望に応じ,被告が,平成12年1月20日,堺税務署長に対し,δビルの買換特例の適用に関し代替資産の取得期限延長依頼の文書を作成して提出したことが認められる。しかしながら,回答書(甲23の1),通知書(甲25の1),配達証明書(甲23の2,25の2),陳述書(甲40,41),証人mの証言及び原告b本人尋問の結果によれば,原告らは,被告から原告ら各仮換地の使用収益承認等が得られないという状況の下で,少なくとも最終期限は明らかにしてほしい趣旨で被告の確約書を求め,原告dらは,買換特例適用期限の延長を期待して被告に書面の作成を依頼したもので,原告aらは,平成12年2月1日,最終的に被告の承認等猶予の依頼を拒否する意思を被 してほしい趣旨で被告の確約書を求め,原告dらは,買換特例適用期限の延長を期待して被告に書面の作成を依頼したもので,原告aらは,平成12年2月1日,最終的に被告の承認等猶予の依頼を拒否する意思を被告に通知しており,原告dらは,被告からの金銭補償による猶予の条件に応じず,結局これを拒否しているものであって,原告らが,平成12年9月末まで承認等を留保することを了承した事実を認めることはできず,上記被告の主張を採用することはできない。 2 損害について(1) 逸失利益についてア原告ら各建物収益の逸失利益該当性について原告らは,原告ら各仮換地の使用収益承認申請に引き続き,建物建築許可申請をしており,被告担当者において,原告らが原告ら各仮換地上に賃貸用の建物を建築する予定であることを認識していたことが認められるところ,承認等の遅延により,原告らが原告ら各建物の収益を得られなくなることは予見可能な事情である。 したがって,承認等が遅延したことにより原告ら各建物の完成が遅れた期間の逸失利益を損害として認めるのが相当である。 そして,原告らの主張する逸失利益が,原告ら各建物の建築を前提とする建物の賃貸収益であり,単に仮換地の使用収益承認のみでは建物の建築をすることはできず,土地区画整理法76条による建築等の許可があって初めて建築することが可能となるものである以上,原告らの各建築許可申請から許可に必要な相当な期間経過後平成12年8月10日までの期間,原告ら各建物の完成が遅れたものと認めるのが相当である。上記によれば,原告aらの建築許可申請が平成11年11月24日,原告dらの建築許可申請が同年12月3日であることに照らし,原告ら各建物についてそれぞれ7か月間の完成遅延を認めるのが相当である。 被告は,建物の完成が遅れても,耐用年数終期が遅れるだけで 日,原告dらの建築許可申請が同年12月3日であることに照らし,原告ら各建物についてそれぞれ7か月間の完成遅延を認めるのが相当である。 被告は,建物の完成が遅れても,耐用年数終期が遅れるだけで損害は発生しない旨主張するが,原告らは,原告ら各建物の耐用年数が経過した後も当然原告ら各仮換地の使用収益が可能なのであって,被告担当者の違法行為により原告ら各仮換地の使用収益ができなかった期間における損害が,将来回復することは認められず,上記被告の主張を採用することはできない。また,被告は,原告らが建物建築着工可能な状態になく,原告ら各建物の完成遅延は認められない旨主張するが,原告らは,建築許可申請時に一応の建築計画に基づき申請しているのであって(甲20,21,乙17,19),建築許可後に資金準備等の手続がなされたとしても,建築許可が早期に出ていれば上記手続も早期にできたというべきで,上記原告ら各建物完成遅延の事実の認定を覆すものではなく,他に,これを覆すに足りる証拠はない。 イ原告dら逸失利益について確定申告書(甲42)によれば,原告dら建物の平成13年6月から同年12月まで7か月間の賃料収入は1460万1030円,利益は837万3860円であることが認められ,7か月分の逸失利益を837万3860円と認めるのが相当である。弁論の全趣旨によれば,原告dらが,原告dら建物の収益を土地共有持分割合に応じて分配する旨合意していることが認められ,上記によれば,原告dに418万6930円,原告eに251万2158円,原告fに167万4772円の逸失利益損害を認めることができる。 ウ原告aら逸失利益について家賃一覧表(甲45)によれば,原告aら建物の1か月の賃料及び駐車場収入は362万8000円であることが認められる。これに対する経費が,原告a 害を認めることができる。 ウ原告aら逸失利益について家賃一覧表(甲45)によれば,原告aら建物の1か月の賃料及び駐車場収入は362万8000円であることが認められる。これに対する経費が,原告aら主張のように借入金返済額を控除した残額の2割にとどまるとは認められないが,他方,支払利息を除く借入金返済額を賃料等の収入から経費として控除する必要もないところである。結局,原告dら建物の収入利益率57.35パーセント(8,373,860/14,601,030=0.5735)に照らし,原告aら主張の収入及び利益による利益率50.51パーセント(45,818,547/90,700,000=0.5051)は過大とはいえないから,少なくとも同利益率程度の利益が生じたものと認めるのが相当であり,7か月分の逸失利益を1282万7519円(3,628,000×7×0.5051=12,827,519)と認めるのが相当である。弁論の全趣旨によれば,原告aらが,原告aら建物の収益を各3分の1とする旨合意していることが認められ,上記によれば,原告aらに各427万5839円の逸失利益損害を認めることができる。 (2) 買換特例損害について代替地提示図面(乙21),陳述書(甲41,乙23)並びに証人m及び同lの各証言によれば,原告dらは,買換特例の適用を受けるためには平成11年3月ころには建物の建築着工をする必要があると考えており,平成10年12月になかもずビルから提示された賃料額が予想と異なり低額であったため,本件共同化事業に参加せず原告dら仮換地上に建物を建てることを考慮したが,被告から代替地の提供等の提案等もあり,本件共同化事業の推移を見守っていたため,そのまま上記建築着工期限が経過したことが認められる。上記によれば,買換特例の適用が受けられなかったことは 考慮したが,被告から代替地の提供等の提案等もあり,本件共同化事業の推移を見守っていたため,そのまま上記建築着工期限が経過したことが認められる。上記によれば,買換特例の適用が受けられなかったことは,結局原告dらの判断に基づくものというべきである。更に,前述のとおり,被告担当者の違法行為は,原告dらが平成11年9月24日,原告dら仮換地の使用収益承認申請をした後の承認等を行わなかった行為であり,原告dらによる建築許可申請が同年12月3日で,平成12年8月10日の承認等の後,原告dら建物が完成したのが平成13年5月末であることに照らせば,被告担当者の違法行為がなければ期限までに建物が完成し,買換特例の適用を受けられたということもできない。したがって,被告担当者の行為と買換特例損害との間の因果関係を認めることはできず,原告dらの上記主張損害を認めることはできない。 (3) 慰謝料について本件で原告らが主張している損害は,原告ら各仮換地を使用収益できなかったことに基づく損害であって,上記は金銭による賠償により回復できるものであって,これとは別に慰謝料を認めることは相当でない。 3 結論以上によれば,原告らの各請求は,主文1項及び2項掲記の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないのでいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官山下郁夫裁判官山田明裁判官小泉満理子
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