- 1 -令和4年2月17日判決言渡平成30年(行ウ)第74号公金支出差止等請求事件(住民訴訟) 主文 1 本件各訴えのうち令和4年2月17日までにされた東大阪市新 α町庁舎整備事業の実施に関する事業契約に基づく東大阪市の債務に係る支出命令の差止めを求める部分を却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,東大阪市とAが平成29年8月7日付けで締結した東大阪市α町庁舎整備事業(以下「本件事業」という。)の実施に関する事業契約(以下「本件事業契約」という。)に基づく東大阪市の債務の履行に係る支出命令をしてはならない。 2 被告は,B及びAに対し,それぞれ1億円を東大阪市に支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要東大阪市は,平成25年11月,東大阪市の公共施設を集約化・複合化する再編整備を内容とする東大阪市公共施設再編整備計画(以下「本件再編整備計画」という。)を策定し,その一環として,当時大阪府東大阪市α町に所在していた東 大阪市α町庁舎(以下「旧α町庁舎」という。)を解体して新庁舎(以下「新α町庁舎」という。)を建築し,新α町庁舎を維持管理すること等を内容とする本件事業を実施することとし,平成29年8月,Aとの間で,契約金額約22億円で本件事業を行わせる旨の本件事業契約を締結した。 本件は,東大阪市の住民である原告らが,旧α町庁舎を保存することなく解体 する旨の本件再編整備計画には地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反- 2 -する瑕疵があり,本件事業契約に基づいてAに対して本件事業契約の代金を支払うことも地方自治法2条14項及び地方財政法4条 本件再編整備計画には地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反- 2 -する瑕疵があり,本件事業契約に基づいてAに対して本件事業契約の代金を支払うことも地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に反するなどと主張して,東大阪市の執行機関である被告に対し,①本件事業契約に基づく東大阪市の債務の履行のうちまだ支出されていない部分について,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,本件事業契約に基づく東大阪市の債務の履行に係る支出命 令(以下,当該支出命令を総称して「本件支出命令」という。)をしてはならないとしてその差止めを求めるとともに(以下,この差止めに係る部分を「本件差止めの訴え」という。),②本件事業契約に基づく東大阪市の債務の履行のうち既に支出された部分について,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,不法行為による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権として,被告がB及びAに対し て一部請求としてそれぞれ1億円の請求をすることの義務付けを求める事案(住民訴訟)である。 1 前提事実以下の事実は,当事者間に争いのない事実か,又は証拠(各項に関連する書証を掲記する。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができるもので ある。 ⑴ 当事者等ア原告ら原告らは,いずれも東大阪市の住民である。原告Cは,平成26年,有志と共に,D団体を結成した。(甲35,原告C本人) イ被告被告は,東大阪市の執行機関(市長)である。東大阪市は,昭和42年に,布施市,河内市及び枚岡市(以下「旧枚岡市」という。)が合併して発足した地方自治法に定める中核市である。(弁論の全趣旨)Eは,東大阪市の職員であり,平成24年4月~平成26年3月,東大 阪 内市及び枚岡市(以下「旧枚岡市」という。)が合併して発足した地方自治法に定める中核市である。(弁論の全趣旨)Eは,東大阪市の職員であり,平成24年4月~平成26年3月,東大 阪市経営企画部資産経営室(以下「資産経営室」という。)で勤務し,平成- 3 -25年当時,資産経営室の次長であった(甲18,乙41,証人E)。 ウ B,A Bは,平成19年10月から現在まで,東大阪市長を務める者である(甲16,19,弁論の全趣旨)。 Aは,庁舎施設の設計・建築・工事監理等の施設整備業務,並びに既 存庁舎施設の解体工事及び関連業務等を目的として,平成29年7月に設立された資本金1000万円の株式会社である。Aの株主は,平成29年当時,F株式会社,株式会社G,H株式会社,株式会社I,J株式会社であった。(乙7,弁論の全趣旨)⑵ 旧α町庁舎,K町建物 東大阪市は,平成25年頃当時,東大阪市の東地域(おおむね旧枚岡市がこれに相当する。)における分庁舎として旧α町庁舎を, 東大阪市立介護老人福祉施設L(以下「福祉施設L」という。)及び東大阪市立M診療所(以下「M診療所」という。)が所在した建物(以下「K町建物」という。)を,それぞれ行政財産として有していた(乙14,40)。 ア旧α町庁舎 旧α町庁舎の建築等旧α町庁舎は,昭和39年に建築された建物であって,平成25年頃当時,大阪府東大阪市α町(近鉄奈良線N駅から北へ約600mの位置)に所在し,東大阪市の東地域における分庁舎として利用されていた(後 記⑸のとおり,旧α町庁舎は,現在,解体されて存在しない。)。 (乙14,40,弁論の全趣旨)旧α町庁舎は,坂倉準 在し,東大阪市の東地域における分庁舎として利用されていた(後 記⑸のとおり,旧α町庁舎は,現在,解体されて存在しない。)。 (乙14,40,弁論の全趣旨)旧α町庁舎は,坂倉準三(近代建築の巨匠と呼ばれるフランスの建築家ル・コルビュジエに師事した建築家)が創設した坂倉準三建築研究所大阪支所(現・株式会社坂倉建築研究所〔大阪事務所〕。以下,組織変更 の前後を通じて「坂倉大阪事務所」という。)が設計した地上3階,地下- 4 -1階建ての鉄筋コンクリート造の建物(建築面積は1555.23㎡,延べ床面積は4407.94㎡)である。旧α町庁舎は,旧枚岡市の庁舎として建築され,昭和42年に東大阪市が発足した後には,東大阪市の東地域における分庁舎として利用されてきた。(甲1の1・2,24,27,乙11,14,40) 旧α町庁舎には,平成25年頃当時,α町行政サービスコーナー,東保健センター,東福祉事務所,α町図書館,土木工営所東分室,市史資料室等が整備されていた(乙14,40)。 旧α町庁舎は,文化財の指定等は受けていなかったものの,平成13年には「関西のモダニズム建築20選」に選ばれるなど,日本のモダニ ズム建築を代表する建物であると評されていた(甲1の1・2,4,6,22~24,27,35)。 耐震診断の実施と示された補強案a 耐震改修促進計画,坂倉大阪事務所による旧α町庁舎の耐震診断の実施 東大阪市は,平成20年3月,「東大阪市住宅・建築物耐震改修促進計画」(以下「耐震改修促進計画」という。)を策定した(乙10)。 東大阪市は,耐震改修促進計画を受けて,防災関連施設(災害時に重要な機能を果たすべき建築物)である 建築物耐震改修促進計画」(以下「耐震改修促進計画」という。)を策定した(乙10)。 東大阪市は,耐震改修促進計画を受けて,防災関連施設(災害時に重要な機能を果たすべき建築物)である(東福祉事務所及び東保健センターが所在する)旧α町庁舎の耐震診断を実施することとした。そ して,入札の結果,坂倉大阪事務所が旧α町庁舎の耐震診断(具体的には,躯体亀裂調査,コンクリート圧縮強度調査,コンクリート中性化深さ実測調査,建物不同沈下調査等の現地調査結果を踏まえたもの)を実施した。(甲8,乙11,14,24~26,40)b 坂倉大阪事務所による旧α町庁舎の耐震診断の結果及び耐震補強案 坂倉大阪事務所は,平成20年12月,耐震診断の結果,旧α町庁- 5 -舎は,全階において目標の耐震性能を下回っており耐震性に「疑問あり」とし,補強が必要であるとして,①今の利用状況を妨げない案,②利用に少し制約は出るが外観について考慮した案,③今の利用状況を妨げない案を基に構造耐震判定指標を下げた案という3つの耐震補強案を提案した(また,3つの案における概算工事費も算出した。)。 その上で,坂倉大阪事務所は,旧α町庁舎は,災害時に重要な機能を果たすべき建築物であることから,外観等に制約がある(鉄骨ブレース・柱鋼板巻きが多くなる。)ものの,上記①の案(今の利用状況を妨げない案)が総合的に適している旨の所見を示した。なお,坂倉大阪事務所は,これらの補強に当たり,補強方法として,鉄骨ブレース 補強(鉄骨製のブレース〔筋交い〕を柱・はり等の四辺形の軸組みを持った構造物の対角線上にたすき掛けのように設置する補強),RC新設壁設置,RC増し打ち壁,RC壁開口縮小・閉鎖,柱補強(鋼板巻き)を用 強(鉄骨製のブレース〔筋交い〕を柱・はり等の四辺形の軸組みを持った構造物の対角線上にたすき掛けのように設置する補強),RC新設壁設置,RC増し打ち壁,RC壁開口縮小・閉鎖,柱補強(鋼板巻き)を用いるとした。(以上につき,乙11,24~26,弁論の全趣旨) c 本件再編整備計画における旧α町庁舎の耐震判定平成25年11月に取りまとめられた本件再編整備計画では,旧α町庁舎の耐震性能について,地震の振動及び衝撃に対して倒壊し,又は崩壊する危険性が高いとの判定がされた(乙14,40)。 イ K町建物 K町建物の建築等K町建物は,昭和46年に建築された建物であって,大阪府東大阪市β町(近鉄奈良線N駅から南へ約400mの位置)に所在し,平成25年頃当時,福祉施設L及びM診療所として利用されていた(なお,建築当初は病院として利用されていた。また,現在は,旧α町庁舎にあった α町図書館が移転して名称変更したγ図書館等として利用されている。)- 6 -(甲32の1~8,乙14,23,41,証人E)。 K町建物は,地上5階建ての鉄筋コンクリート造の建物である(乙14,40)。 福祉施設Lは,社会福祉法人東大阪市社会福祉事業団が指定管理者として運営していたが,遅くとも平成24年12月時点では,平成25年 度末で廃止される予定であった。 M診療所は,内科・小児科・眼科の診療を行っていたが,毎年1億円以上の赤字が出ており,平成20年度の包括外部監査において,「さらなる公費を投入してまで存続させる必要があるか,廃止を含めた議論が必要である」旨の指摘を受けた。(以上につき,甲8,乙14,40,41, 弁論の全趣旨) 包括外部監査において,「さらなる公費を投入してまで存続させる必要があるか,廃止を含めた議論が必要である」旨の指摘を受けた。(以上につき,甲8,乙14,40,41, 弁論の全趣旨) 耐震性能K町建物は,老朽化が進行しており,その耐震性能には課題があるとかねて指摘されていた。平成25年11月に取りまとめられた本件再編整備計画では,K町建物の耐震性能について,地震の振動及び衝撃に対 して倒壊し,又は崩壊する危険性があるとの判定がされた。(乙14,40)⑶ 東大阪市における公共施設の整備と旧α町庁舎ア本件再編整備計画の策定 資産経営室の設置(平成24年) 東大阪市では,高度経済成長期以降,人口の急激な増加や市民ニーズの多様化に対応するために公共施設を整備してきたが,その結果,保有する公共施設の多くにおいて,経年による老朽化や耐震性に課題がみられるようになった。そこで,東大阪市は,これら公共施設等の最適化や有効利用を図るための総合的な施策の企画・立案を行うため,平成24 年4月,経営企画部に資産経営室を設置した。(甲5の1・2,乙12~- 7 -14,40) 公共施設マネジメント推進基本方針,本件再編整備計画の策定(平成25年11月)a 公共施設マネジメント推進基本方針の策定東大阪市は,平成25年11月,「東大阪市公共施設マネジメント推 進基本方針」(以下「公共施設マネジメント推進基本方針」という。)を策定した。その概要は,次のとおりである。 内閣は,平成24年7月31日付け閣議決定(「日本再生戦略~フロンティアを拓き『共創の国』へ~」)において,平成27年度の中間目標として, を策定した。その概要は,次のとおりである。 内閣は,平成24年7月31日付け閣議決定(「日本再生戦略~フロンティアを拓き『共創の国』へ~」)において,平成27年度の中間目標として,「国,都道府県,政令市,中核市,特例市で民間提案の活用 等PFI(PrivateFinanceInitiative。民間の資金と経営能力・技術力を活用し,設計・建設・維持管理・運営等を一括して民間事業者が行う公共事業の手法の1つ)活用に係る指針の策定促進を掲げた。 そこで,東大阪市は,上記閣議決定を踏まえ,①適正な維持管理による公共施設の長寿命化の実現,②社会情勢の変化を踏まえた公共施設 の総量縮減,③民間との連携による効率的,持続可能な市民サービスの提供という3つの基本方針に従って公共施設マネジメントに取り組むこととして,公共施設マネジメント推進基本方針を策定した(なお,公共施設マネジメントとは,公共施設を通じたより良い市民サービスを提供していく上で,財務・品質・供給等の視点をバランスよく取り 入れ,公共施設の在り方について,統一的な考え方・方針・取組手法等を用いながら,長期的な視点に立って公共施設の最適化を進める経営管理手法をいう。)。(以上につき,甲5の1・2,乙12,13,18,19)。 b 本件再編整備計画の策定 また,東大阪市は,平成25年11月,公共施設マネジメント推進- 8 -基本方針(上記a)の実現に向け,本件再編整備計画を策定した。本件再編整備計画は,老朽化や耐震性に課題のある施設や防災関連施設に位置付けられている施設等を対象にして,①新設・更新・大規模修繕の実施,②周辺の公共施設を集約化・複合化する再編整備の方向性,③その実現に向けたスケジュールを示したもので のある施設や防災関連施設に位置付けられている施設等を対象にして,①新設・更新・大規模修繕の実施,②周辺の公共施設を集約化・複合化する再編整備の方向性,③その実現に向けたスケジュールを示したものである。本件再編整備 計画は,東大阪市の副市長及び関連部局長等で組織する東大阪市公共施設マネジメント推進会議(以下「公共施設マネジメント推進会議」という。)がパブリック・コメントの実施結果等を踏まえて審議し,東大阪市の行政運営における総合調整等を行う庁議(市長,副市長,教育長,水道管理事業者に加え,一部の部長等が出席して開催される会 議)において策定された。(甲5の1・2,18,乙13,14,40,証人E)イ本件再編整備計画における旧α町庁舎の機能移転等について本件再編整備計画は,老朽化の進行及び耐震性の課題を理由に旧α町庁舎をその対象施設の1つとした上で,①仮に旧α町庁舎に耐震補強工事を 実施する場合には,補強箇所が多数あり,かつ,工事に伴う騒音や振動の発生等から,施設の運営中に長期間にわたる工事を実施することが極めて困難であること,②防災関連施設である東福祉事務所及び東保健センターは,平成27年度末までに耐震性を有する施設で業務を行う必要があること,を指摘した。 また,本件再編整備計画は,上記指摘とともに旧α町庁舎の再配置計画を示した。すなわち,本件再建整備計画は,旧α町庁舎について,その機能の仮移転等の後に解体し,新α町庁舎を整備することとし,具体的には,その間,旧α町庁舎のうち,①東福祉事務所,東保健センター及びα町図書館は,K町建物の仮設庁舎に仮移転し(平成25年度末にK町建物に整 備されていた福祉施設L及びM診療所が廃止・廃院となる。),②東福祉事- 9 -務 福祉事務所,東保健センター及びα町図書館は,K町建物の仮設庁舎に仮移転し(平成25年度末にK町建物に整 備されていた福祉施設L及びM診療所が廃止・廃院となる。),②東福祉事- 9 -務所及び東保健センターが新α町庁舎に移転するものとし,新α町庁舎の整備に向けては,基本計画を策定の上,民間活力導入のための可能性に関する調査を行った上で,事業手法の検討を行うこととした。(以上につき,乙14,40)ウ一般社団法人日本建築学会の要望書等 一般社団法人日本建築学会,DOCOMOMOJapan の活動a 一般社団法人日本建築学会は,平成26年5月26日,被告に対し,「東大阪市α町庁舎の保存活用に関する要望書」を提出した(甲1の1・2,24)。 b DOCOMOMOJapan(以下「DOCOMOMOJapan」という。DOCOMOMO とは, DocumentationandConservationofbuildings, sitesandneighborhoodsoftheModernMovement の略称であり,モダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査及び保存のための国際組織である。)は,平成26年8月6日,旧α町庁舎をDOCOMOMOJapan選定建築物に選定した(甲23)。 署名活動等原告Cは,平成26年1月,有志と共に,D団体を結成し,旧α町庁舎及びα町図書館の存続請願のための署名活動等を行い,同年3月~平成28年12月,市議会に対して合計約6700筆の署名を,市長に対して合計約4600筆の署名を,それぞれ提出した。また,原告Cほか は,平成26年3月~平成28年12月,旧α町庁舎の保存 ~平成28年12月,市議会に対して合計約6700筆の署名を,市長に対して合計約4600筆の署名を,それぞれ提出した。また,原告Cほか は,平成26年3月~平成28年12月,旧α町庁舎の保存・活用を目指した旧α町庁舎の見学会等を実施した。(甲35,原告C本人)⑷ PFI導入ガイドラインの策定,本件事業契約の締結等についてア PFI導入ガイドラインの策定東大阪市は,平成26年7月,公共施設マネジメント推進基本方針(上 記⑶アa)を踏まえ,東大阪市PFI導入ガイドライン(以下「PFI- 10 -導入ガイドライン」という。)を策定した。PFI導入ガイドラインは,事業種類と規模を示した上で,初期費用が10億円以上又は維持管理・運営費等が単年度で1億円以上のものについては,PFIの導入を検討する旨定めていた。(乙15)イ旧α町庁舎でのPFI事業の実施に向けた経緯 東大阪市は,平成27年2月,「新α町庁舎整備基本計画」を策定し,新α町庁舎整備に係る基本コンセプト,必要機能・規模,配置計画,概算事業費(初期費用のうち新α町庁舎建物整備費として,少なくとも16億3300万円を計上した。)等を取りまとめるとともに,「新α町庁舎整備に伴う民間施設誘致市場調査」を実施し,誘致可能性のある民間施設の業種, 業態等について市場調査をした(乙16,18)。 東大阪市は,平成27年6月11日,株式会社Oとの間で,同日~同年12月28日を契約期間として,新α町庁舎整備の民間活力導入可能性に関する調査業務を委託する旨の業務委託契約を締結した。株式会社Oは,同月,調査結果を「新α町庁舎整備民間活力導入可能性調査」として取り まとめた。(乙17,18)「新α町庁 性に関する調査業務を委託する旨の業務委託契約を締結した。株式会社Oは,同月,調査結果を「新α町庁舎整備民間活力導入可能性調査」として取り まとめた。(乙17,18)「新α町庁舎整備民間活力導入可能性調査」は,旧α町庁舎に整備された施設のうち,東福祉事務所,東保健センター,土木工営所東分室等を新α町庁舎に整備し,α町図書館を別の場所へ移転し,α町行政サービスコーナーを廃止することを予定するものとし,民間活力導入手法として,P FI,DBO(DesignBuildOperation。設計施工・維持管理等一括発注方式)の各手法を中心として検討した結果,PFIのうちBTO方式(Build-Transfer-Operate。事業者が施設を建設し所有権を公共に移転した後に維持管理運営を行う方式)の事業手法が最適であるとした(乙18)。 ウ本件事業契約 本件事業契約の締結に至る経緯- 11 -平成28年1月,平成27年度第4回公共施設マネジメント推進会議が開催され,PFIのうちBTO方式による整備が承認された(甲5の1・2)。 東大阪市は,平成28年8月~平成29年5月(約10か月間),4回にわたって事業者選定委員会を開催し,その間,説明会や現地見学会等 を開催した上で入札を実施し,同年7月,審査講評(審査の経過及び結果等を取りまとめたもの)及び客観的な評価結果の公表を経て,落札業者ら(F株式会社ほか)との間で,基本協定(「東大阪市新α町庁舎整備事業PFI事業基本協定書」)を締結した(甲2,5の1・2,26,乙21)。 東大阪市は,平成29年8月7日,Aとの間で,本件事業契約を締結し,同年10月25日,平成29年第3回定例会におい 基本協定書」)を締結した(甲2,5の1・2,26,乙21)。 東大阪市は,平成29年8月7日,Aとの間で,本件事業契約を締結し,同年10月25日,平成29年第3回定例会において本件事業契約締結の件の承認(決定)を受けた(これにより本件事業契約の契約期間が開始した。)(甲3,5の1・2,乙1,2)。 本件事業契約の内容 本件事業契約は,Aが,旧α町庁舎を解体して新旭庁舎を建築し,新α町庁舎を維持管理すること等を内容とする東大阪市新α町庁舎整備事業(本件事業)を行うものであり,その契約期間,契約金額等は,次のとおりである。 a 契約期間東大阪市議会の議決(平成29年10月25日)~平成 46年10月31日(17年間)b 契約金額 22億4134万0958円(消費税等額を含む。)上記契約金額について,東大阪市は,Aに対し,①施設整備業務の対価として, ㋐設計業務完了時に2624万4000円(消費税等込み)を,施設整備業務完了時に10億2988万8000円(消費税 等込み)をそれぞれ支払い,㋑その余の分として,平成32年4月~- 12 -平成46年4月(15回)に合計6億1609万5865円(消費税等込み)を支払い(合計16億7222万7865円〔消費税等込み〕),②仮設庁舎リース業務(Aが,新α町庁舎を建築する間に土木工営所東分室が一時的にリースで使用する仮設庁舎を建築し,新α町庁舎の完成後に同仮設庁舎を撤去する業務)の対価として,平成30年7月 ~平成31年12月(7回)に合計5270万4000円(消費税等込み)を支払い,③維持管理業務に対する対価として,合計3億9583万8360円(消費税等込み)を支払い,④その他の 成30年7月 ~平成31年12月(7回)に合計5270万4000円(消費税等込み)を支払い,③維持管理業務に対する対価として,合計3億9583万8360円(消費税等込み)を支払い,④その他の業務の対価として,合計1億2057万0733円を支払うものとされていた。 c 新α町庁舎の延べ床面積 3000㎡程度(ただし,外構施設を除 く。)(以上につき,乙1,2,9,弁論の全趣旨)⑸ 旧α町庁舎の解体,新α町庁舎の建築Aは,平成30年4月に旧α町庁舎の解体工事に着手し,旧α町庁舎を解体した。 そして,Aは,新α町庁舎を建築し,令和元年9月30日に東大阪市に新 α町庁舎を引き渡した。なお,新α町庁舎には,現在,東保健センター,東福祉事務所,土木工営所東分室,水道東連絡所,子育て世代包括支援センターが整備されている。(以上につき,乙28,29,弁論の全趣旨)⑹ 事業費(このうち施設整備業務,仮設庁舎リース業務の対価)の支払a 施設整備業務の対価の支払 東大阪市は,本件事業契約に基づき,Aに対し,施設整備業務の対価のうち,設計業務完了時支払分として2624万4000円を平成31年4月10日に,施設整備業務完了時支払分として10億2988万8000円を令和元年11月27日に,それぞれ支払った(弁論の全趣旨)。 b 仮設庁舎リース業務の対価の支払 東大阪市は,本件事業契約に基づき,Aに対し,仮設庁舎リース業務の- 13 -対価のうち,次の金額を支払った(弁論の全趣旨)。 支払時期(契約上) 金額支払日平成30年7月分 1054万0800円平成30年9月13日平成30年10月分 を支払った(弁論の全趣旨)。 支払時期(契約上) 金額支払日平成30年7月分 1054万0800円平成30年9月13日平成30年10月分 790万5600円平成30年12月5日平成31年1月分 790万5600円平成31年1月11日 平成31年4月分 790万5600円令和元年5月20日平成31年7月分 790万5600円令和元年8月23日平成31年10月分 790万5600円令和元年10月31日平成31年12月分 263万5200円令和2年2月10日⑺ 住民監査請求 原告らは,平成30年2月21日,旧α町庁舎を解体して新α町庁舎に建て替える計画に関する公金支出が違法又は不当であるとして,東大阪市長がその差止めを行うことを求めるとともに,公金を支出している場合は,関係団体,関係人,決裁権者,その他の責任者に対し,不当利得返還請求又は損害賠償請求を行うことを求め,住民監査請求をした(甲5の1・2)。 東大阪市監査委員は,平成30年4月20日,原告らの住民監査請求のうち,不当利得返還請求又は損害賠償請求をすることを求める部分を却下し,差止めを求める部分を棄却した(甲5の1・2)。 ⑻ 本件訴えの提起原告らは,平成30年5月10日,本件訴えを提起した。 2 争点本件において,本件再編整備計画の一環として本件事業契約が締結され,本件事業契約に基づいて本件支出命令がされるという関係にあるところ,原告らは,本件事業契約の無効等を主張しない旨を明らかにし,本件事業契約が有効であることを前提とした上で,本件再編整備計画の瑕疵を理由として本件支 基づいて本件支出命令がされるという関係にあるところ,原告らは,本件事業契約の無効等を主張しない旨を明らかにし,本件事業契約が有効であることを前提とした上で,本件再編整備計画の瑕疵を理由として本件支出 命令が違法となる旨主張しており,被告がこれを争っている。したがって,本- 14 -件における主要な争点は,次のとおりである。 ⑴ 本件支出命令は地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するか否か(争点1)⑵ 東大阪市の損害(損失)の有無及びその額(争点2)⑶ Aの利得の有無及びその額(争点3) ⑷ 損益相殺の可否(争点4) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件支出命令は地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するか否か)について(原告らの主張) 次のアのとおり,本件支出命令は,本件再編整備計画をその直接の原因として位置付けることができるから,直接の原因となった本件再編整備計画に瑕疵があるときには違法になる。そして,次のイのとおり,本件再編整備計画は,被告の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反する瑕疵がある。 したがって,本件事業契約が有効であっても,本件支出命令は,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するものとして違法である。 ア本件支出命令の直接の原因となった行為が本件再編整備計画であり,本件再編整備計画に瑕疵があった場合には本件支出命令が違法となること本件支出命令は,本件事業契約に基づく東大阪市の債務の履行としてさ れるものであるが,本件支出命令は,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築のために行われるものであって,これらは本件再編整備 本件支出命令は,本件事業契約に基づく東大阪市の債務の履行としてさ れるものであるが,本件支出命令は,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築のために行われるものであって,これらは本件再編整備計画の内容に含まれるものである。そうすると,本件再編整備計画の策定がなければ旧α町庁舎の解体や新α町庁舎の建築は行われていないという関係にあるから,本件再編整備計画の策定と,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築 のために行う本件支出命令とは,密接不可分の関係にある。そして,本件- 15 -支出命令は,本件再編整備計画の策定以降,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築について,撤回や他の方法等の検討・判断を経ることなく行われているから,本件再編整備計画の策定は,本件支出命令の直接の原因となっている。 さらに,本件再編整備計画の策定は庁議によってされており,被告であ る東大阪市長もこれに直接関わっていた。 このような事情からすると,本件再編整備計画の策定に瑕疵があれば,その瑕疵の程度にかかわらず(瑕疵が重大かつ明白である必要はない。),また,本件事業契約の有効であっても,本件支出命令は,違法となる。 イ本件再編整備計画が地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反す るものとして瑕疵があること次の~のとおり,本件再編整備計画の策定は,被告の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反する。すなわち,被告は,旧α町庁舎の耐震性能等を確保すること等を強調して旧α町庁舎の文化的価値や保存活用の可能性を 考慮せず,旧α町庁舎の保存又は解体について前提を誤る不適切な比較検討を行い,市民の要望に反して,旧α町庁舎を解体して新α町庁舎を建築 と等を強調して旧α町庁舎の文化的価値や保存活用の可能性を 考慮せず,旧α町庁舎の保存又は解体について前提を誤る不適切な比較検討を行い,市民の要望に反して,旧α町庁舎を解体して新α町庁舎を建築するなどの内容を有する本件再編整備計画を策定したものである。 また,本件再編整備計画を策定した後の,新α町庁舎の床面積が2600㎡では不足することや新α町庁舎の建築等に要する費用が22億円余り を要することが判明した時点等において,旧α町庁舎の保存活用を再検討することなく本件再編整備計画を進めたことは,被告の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反する。 旧α町庁舎の文化的価値 旧α町庁舎は,旧枚岡市が,枚岡市民の誇りのシンボルとして建築を- 16 -計画し,坂倉大阪事務所に設計を依頼し,総工費2億6000万円(現在の貨幣価値に換算すると20億円程度)をかけて建築されたものであって,坂倉準三により手がけられた貴重な建築物であった。 東大阪市は,東大阪市景観形成基本計画において,旧α町庁舎を末長く保存活用すべきものとして位置付けており,旧α町庁舎は重要文化財 又は登録有形文化財に相当する建築物である。なお,文化財登録には建設後50年を要するというのも目安にすぎず,建設後48年で重要文化財の指定を受けた例もある。 本件再編整備計画の策定後も,一般社団法人日本建築学会は,平成26年5月26日,被告に対し,「東大阪市α町庁舎の保存活用に関する要 望書」を提出した。また,DOCOMOMOJapan は,同年8月6日,旧α町庁舎をDOCOMOMOJapan 選定建築物に選定したほか,平成29年3月には, 町庁舎の保存活用に関する要 望書」を提出した。また,DOCOMOMOJapan は,同年8月6日,旧α町庁舎をDOCOMOMOJapan 選定建築物に選定したほか,平成29年3月には,「東大阪市α町庁舎再生計画」を発表し,保存活用のための具体的な提案をした(甲4)。 このように,東大阪市は,有識者等から旧α町庁舎の文化的価値及び その保存活用について種々の指摘・提案を受けていたにもかかわらず,これらの点について十分な議論をしなかった。 旧α町庁舎について耐震性等を確保する具体的方法の存在a 旧α町庁舎は耐震補強をする必要があったところ,東大阪市は,旧α町庁舎の耐震補強について,DOCOMOMOJapan が提案し,実例のある 耐震壁の増設や,SRF(SuperReinforcementwithFlexibility)工法(「包帯補強」と呼ばれ,高延性材を柱に巻き付けるなどする耐震補強工法)といった実績のある工法の採用等を検討することなく,旧α町庁舎を保存する選択肢を安易に断念した。被告は,DOCOMOMOJapanの提案は,新α町庁舎整備事業の要求水準書において定められた水準 を満たさない旨主張するが,当該要求水準書は旧α町庁舎の解体方針- 17 -を決定した後に作成されたものであるし,新規建物を建築する場合と既存建物を保存活用する場合を同列に論じることができないのは当然であるから,被告の当該主張は考慮されるべきではない。 b 被告は,旧α町庁舎について,耐震補強によってはその使用上の利便性の確保が困難であり,バリアフリー化の必要性に応えられないと するが,SRF工法や空間利用に制約を与えない耐震補強等の採用や,種々の工夫によって対応する て,耐震補強によってはその使用上の利便性の確保が困難であり,バリアフリー化の必要性に応えられないと するが,SRF工法や空間利用に制約を与えない耐震補強等の採用や,種々の工夫によって対応することができるし,そもそも要求水準が上がり続けているこれらの基準に応えるために建築物の建て替えを続けることの合理性についても検討されるべき事柄である。 c 旧α町庁舎の建物強度についても,その鉄筋コンクリートへの水の 浸入を防止する処置をすることで,鉄筋の腐食を避け,その強度を維持することができたはずである。 旧α町庁舎の保存と解体の比較における誤りa 東大阪市は,㋐旧α町庁舎保存に要する費用と㋑新α町庁舎建築に要する費用を,いずれも13億円程度と見込み,費用(価格)が同じ であれば新しい方がメリットがあるなどと安易に判断し,旧α町庁舎の解体を含む本件再編整備計画を策定した。この比較の際,東大阪市は,上記㋑について,新α町庁舎の延べ床面積を2600㎡として検討していたが,その後,延べ床面積が不足するとしてその計画延べ床面積(外構設備を含む。)を3250㎡に増加し,α町図書館をK町建 物に移転することとし,これに伴って新α町庁舎の建築費用も13億円から22億4134万0958円に増加した。このような経緯に加え,旧α町庁舎の延べ床面積が4408㎡であったことからすると,東大阪市は,新α町庁舎の建築費用を13億円程度とするために強引に延べ床面積を決めていたと考えられる。そうすると,上記の比較に は,誤りがある。 - 18 -b 上記aの費用(価格)の比較において,東大阪市は,上記㋐について,旧α町庁舎について登録有形文化財の指定を受けることによって,耐震補強について相当額 は,誤りがある。 - 18 -b 上記aの費用(価格)の比較において,東大阪市は,上記㋐について,旧α町庁舎について登録有形文化財の指定を受けることによって,耐震補強について相当額の金銭的補助を受けることにより,より安価に保存活動をすることができた点を看過した(甲10,20参照)。また,旧α町庁舎は,単なる事務庁舎ではなく,整備されていたα町図 書館を市民の利用に供することが公開活用事業に当たるということができるから,旧α町庁舎について耐震補強工事をして保存する場合には,その工事費用の半額の補助金を受けることが可能であった。 c 被告は,新α町庁舎を建築することにより,小さな庁舎により庁舎の維持管理費用を抑えることができる旨主張する。しかし,旧α町庁 舎の大きな床面積を利用して機能集約を図ることによって,他施設の床面積を抑えるとともに庁舎の維持管理費用を削減することもできたはずであるところ,これらの点に関する具体的な検討はされていない。 α町図書館の移転等が不合理であること等旧α町庁舎に置かれていたα町図書館をK町建物に移転する方針は, 本件再編整備計画が策定される直前に突如現れた。また,旧α町庁舎は天井が高く大空間のフロアを有し,強固な床を備えていたから,図書館に適していたが,α町図書館の移転先となるK町建物は天井が低く床の強度も不足するなど,補強工事をしなければ図書館として利用することができない。α町図書館をK町建物に移転すること自体が,新α町庁舎 の建築に当たって費用の増大を招いている。 また,被告は,新α町庁舎内に土木工営所資材置場等を整備したことから,同資材置場等の敷地約285㎡の余剰地を有効活用できるようになった旨主張する。しかし, って費用の増大を招いている。 また,被告は,新α町庁舎内に土木工営所資材置場等を整備したことから,同資材置場等の敷地約285㎡の余剰地を有効活用できるようになった旨主張する。しかし,旧α町庁舎の床面積に照らせば,その解体・建て替えをしなくても同程度の余剰地を確保することができたはずで ある。 - 19 - α町庁舎の存続を願う市民の声原告Cを始めとする有志28名は,東大阪市が本件再編整備計画を策定した後,D団体を結成し,旧α町庁舎及びα町図書館の存続請願のための署名活動をし,平成26年3月~平成28年3月,市議会に対して合計約6700筆の署名を,市長に対して合計約4600筆の署名を, それぞれ提出した。さらに,原告Cほかは,平成26年3月~平成28年12月,旧α町庁舎の保存・活用を目指した旧α町庁舎の見学会等を繰り返し実施した。多くの東大阪市民は,旧α町庁舎の保存活用を望んでいた。 東大阪市は,本件再編整備計画を策定するに当たって実施したパブリ ック・コメントにおいて,実施要領上,1か月以上が目安とされている意見募集期間について,20日程度しか確保しなかった。また,寄せられたパブリック・コメントの意見は,旧α町庁舎の解体に反対する意見が70件に対し,建て替えを希望する意見が8件であった。このように,旧α町庁舎を解体することは,市民の意向を無視するものであった。 さらに,本件再編整備計画の検討に際して行われたパブリック・コメントの募集は,新α町庁舎にα町図書館が整備される前提で実施されており,α町図書館の移転についてはパブリック・コメントの募集は行われなかった。 (被告の主張) 本件事業契約が有効であることは原告らも α町図書館が整備される前提で実施されており,α町図書館の移転についてはパブリック・コメントの募集は行われなかった。 (被告の主張) 本件事業契約が有効であることは原告らも認めているところであって,東大阪市は,本件事業契約に基づく義務を履行しなければならない立場にある。 そうすると,本件支出命令をする権限を有する被告は,本件事業契約に基づく義務の履行を命ずる本件支出命令をしなければならないから,本件支出命令に違法はない。 この点を措くとしても,次のアのとおり,本件再編整備計画の策定が本件- 20 -事業契約の締結を直接義務付けるものではないから,非財務会計行為である本件再編整備計画の策定における瑕疵を住民訴訟の対象である本件支出命令の違法事由として主張することはできない。 また,仮に,本件支出命令が本件再編整備計画の策定における瑕疵(違法)の影響を受け得るものであるとしても,次のイのとおり,本件再編整備計画 の策定に違法はない。 したがって,本件支出命令は,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するとはいえない。 ア非財務会計行為である本件再編整備計画の策定における瑕疵を住民訴訟の対象である財務会計行為の違法事由として主張することはできないこと 本件再編整備計画は,旧α町庁舎を含めた既存の公共施設を再編整備し,公共施設の質的・量的な最適化を進める計画であり,その策定(決定)が本件事業契約の締結を直接義務付けるものとはいえない。そうすると,仮に,本件再編整備計画に違法があるとしても,その違法性が本件支出命令の違法を基礎付けるものではない。 その上で,本件事業契約は,有効である。すなわち,東大阪市とAとの間で平成29年8 本件再編整備計画に違法があるとしても,その違法性が本件支出命令の違法を基礎付けるものではない。 その上で,本件事業契約は,有効である。すなわち,東大阪市とAとの間で平成29年8月7日に本件事業契約が締結され,同年10月25日に東大阪市議会において本件事業契約が承認可決されたものであり,本件事業契約が有効であることは原告らも認めているところである。そして,本件事業契約の一方当事者である東大阪市は,本件事業契約の他方当事者で あるAに対して本件事業契約に基づく債務を履行すべき義務を負うから,同義務の履行として行われる支出を命ずる旨の本件支出命令を違法ということはできない。そうすると,本件支出命令が違法とされることはない。 イ本件再編整備計画の策定に違法はないこと上記アの点を措くとしても,次の~の事情に照らせば,被告に裁量 権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできないから,- 21 -本件再編整備計画の策定が地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するとはいえない。 旧α町庁舎の文化的価値の考慮と庁舎としての利便性・安全性等の考慮旧α町庁舎がこれまで登録有形文化財であったことはない。登録有形 文化財登録基準(平成17年3月28日文部科学省告示第44号。乙8)によれば,登録有形文化財(建築物の部)としての登録の対象は,建築物,土木構造物及びその他の工作物のうち,原則として建設後50年を経過したものとされており,旧α町庁舎は,本件再編整備計画の検討時点(平成24年)では建設後48年を経過していたにとどまり,上記基 準を満たしていなかった(なお,本件再編整備計画は,平成25年11月に策定された。)。 東大阪市にお 画の検討時点(平成24年)では建設後48年を経過していたにとどまり,上記基 準を満たしていなかった(なお,本件再編整備計画は,平成25年11月に策定された。)。 東大阪市においては,旧α町庁舎を対象施設とする本件再編整備計画についてパブリック・コメントを実施し,東大阪市景観形成基本計画を所管する担当部局との意見聴取等を行い,旧α町庁舎の文化的価値にも 配慮をした上で,庁舎が有すべき利便性,安全性,経済性等を総合的に判断し,本件再編整備計画を策定した。 旧α町庁舎及びその敷地は,東大阪市の行政財産であるから,東大阪市の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成のために利用されるべきものであり,新α町庁舎も同様である。旧α町庁舎の解体が建 築的・文化的価値に関する有識者団体の意見に反するとしても,東大阪市は,行政財産の利用という点からも,市民の庁舎の利用という点からも,安全で利用しやすい庁舎を整備する必要があった。 旧α町庁舎の耐震工事による保存について検討をしたこと東大阪市は,旧α町庁舎の耐震性能等を検討するに当たり,坂倉大阪 事務所から提案された耐震補強案を基に必要な検討を行った。その上で,- 22 -東大阪市は,旧α町庁舎解体・新α町庁舎建築の方が敷地の有効利用,維持管理費の削減,使用上の利便性,バリアフリー化の実現等のメリットがあると判断したにすぎない。 原告らは,DOCOMOMOJapan が取りまとめた再生計画案を指摘して旧α町庁舎の保存活用をすべきである旨主張する。しかし,上記再生計画案 は,必要な室の設置がないなどの点で,東大阪市における要求水準を満たすものではないし,予定されている耐震補強案も根拠や具体性を欠くもの 保存活用をすべきである旨主張する。しかし,上記再生計画案 は,必要な室の設置がないなどの点で,東大阪市における要求水準を満たすものではないし,予定されている耐震補強案も根拠や具体性を欠くものである。また,上記再生計画案は,旧α町庁舎の保存活用の費用について具体性を欠いており,旧α町庁舎の保存活用か建て替えかを費用面で比較するための合理的な資料とはいえない。 旧α町庁舎の解体と保存の比較a 建て替え費用の増加要因東大阪市は,建て替え費用算定において,新α町庁舎に必要な機能を設定した上で,旧α町庁舎において当該機能が有していた面積を基に新α町庁舎の床面積を算定して新α町庁舎の延べ床面積を2600 ㎡と想定した。その後,東大阪市は,新α町庁舎の整備に当たり調査や検討を重ねるに伴い,必要となる床面積が詳細なものとなったことから,3000㎡程度を床面積の要求水準として定めたものの,殊更に新α町庁舎の延べ床面積を狭くして費用を低くしたわけではない。 そして,新α町庁舎の建築費用は当初の試算13億円を約2億500 0万円超過するものであったが,建て替え費用の増加要因としては,試算時から新α町庁舎の延べ床面積が約400㎡増加したことのほか,建設需要の増加に伴う工事設計労務単価等の高騰等を指摘することができ,建て替えのメリットに鑑みれば,不合理な額ではないし,旧α町庁舎を保存活用する場合と比較して費用面で高くなると一概にはい えない。 - 23 -b 補助金原告らは,旧α町庁舎を登録有形文化財とすることでその保存活用に対する補助金を受けることができる旨主張する。しかし,上記のとおり,旧α町庁舎は,登録有形文化財ではなかったし,本件再編整備計画 原告らは,旧α町庁舎を登録有形文化財とすることでその保存活用に対する補助金を受けることができる旨主張する。しかし,上記のとおり,旧α町庁舎は,登録有形文化財ではなかったし,本件再編整備計画の検討時点(平成24年)では建設後48年が経過するにとど まり,登録有形文化財の対象基準を満たしていなかった。また,仮に,旧α町庁舎が登録有形文化財に登録されたとしても,建築工事経費を補助対象とするのは公開活用事業の場合であるから,事務庁舎であるα町庁舎は,公開活用を目的とした整備の対象とはならず,保存修理に係る費用の補助を受けることはできなかった。 c 建て替えのメリット旧α町庁舎を新α町庁舎に建て替えることには,敷地の有効利用,維持管理費の削減,使用上の利便性といったメリットがあった。 すなわち,①新α町庁舎の建築によって,旧α町庁舎では別棟となっていた土木工営所資材置場等が新α町庁舎内に整備されるから,新 α町庁舎の建築面積を除いた余剰地の面積が約285㎡広くなり,敷地を一層有効活用することが可能となるメリットがあった。②旧α町庁舎は,完成後約50年が経過し,建物の経年劣化は否めず,維持管理費用とともに将来的な修繕費用等が見込まれたため,新α町庁舎の建築には,そのような維持管理費を削減することができるメリットが あった。③旧α町庁舎に耐震補強をしたとしても,共用部分が狭くなり,バリアフリーが困難であるなどの問題を解決することが難しかったため,新α町庁舎の建築は,長期的な経済性に優れ,また,市民や職員の利便性においても優れているといえた。 α町図書館の移転決定の経緯と余剰地活用等が可能であること 東大阪市は,公共施設マネジメント推進基本方 優れ,また,市民や職員の利便性においても優れているといえた。 α町図書館の移転決定の経緯と余剰地活用等が可能であること 東大阪市は,公共施設マネジメント推進基本方針を策定していたとこ- 24 -ろ,公共施設マネジメント推進基本方針に掲げる公共施設の長寿命化の実現,総量縮減に伴う財政支出の削減等を踏まえ,周辺の公共施設を集約化・複合化して整備することで,施設がそれぞれ有していた課題の解決及び相乗効果を図るために,平成25年11月,本件再編整備計画においてα町図書館の移転を決定した。平成24年12月に作成した公共 施設再編整備計画(素案)では,旧α町庁舎解体後,跡地に図書館を整備する内容であったが,パブリック・コメントの意見や定例会で行われた議論の内容等を踏まえて計画を再考し,平成25年9月の定例会に本件再編整備計画の関連予算案が提出された。 旧α町庁舎解体・新α町庁舎建築により,新α町庁舎内に土木工営所 資材置場等を整備することができ,同資材置場等の敷地約285㎡の余剰地の有効活用が可能となった。 パブリック・コメント等を経たことパブリック・コメント手続は,行政が一定の計画等を策定しようとするときに,計画等の趣旨,目的,内容等を広く市民に公表し,これに対 する市民からの意見の提出を受け,これらの意見と行政の考え方を公表する一連の手続のことをいうが,市民からの意見の全てを計画等に反映することが行政に義務付けられているものではない。なお,東大阪市においては,パブリック・コメントにおいて提出された意見に対する東大阪市の考え方を公表している。 上記のとおり,旧α町庁舎及びその敷地並びに新α町庁舎は,東大阪市の行政財産であるか ては,パブリック・コメントにおいて提出された意見に対する東大阪市の考え方を公表している。 上記のとおり,旧α町庁舎及びその敷地並びに新α町庁舎は,東大阪市の行政財産であるから,新α町庁舎が建築的・文化的価値に関する市民の意見に沿わないものとなったとしても,行政財産の利用を考えるに際し,当然に違法になるものではない。 ⑵ 争点2(東大阪市の損害(損失)の有無及びその額)について (原告らの主張)- 25 -本件事業において東大阪市がAに対して支払う金員のうち,新α町庁舎の建築費用に当たる施設整備業務の対価は16億7222万7865円であり,消費税等を除いた額は15億4835万9134円である。したがって,東大阪市が被った損害(損失)の額は,15億4835万9134円と旧α町庁舎を保存活用するために必要と見込まれた費用である13億円との差 額2億6822万7865円(消費税8%〔当時〕)である。 (被告の主張)原告らの主張は,否認し,又は争う。 ⑶ 争点3(Aの利得の有無及びその額)について(原告らの主張) 本件事業において東大阪市がAに対して支払う金員のうち,新α町庁舎の建築費用に当たる施設整備業務の対価は16億7222万7865円であり,消費税等を除いた額は15億4835万9134円である。したがって,Aは,少なくとも東大阪市が支出した15億4835万9134円と旧α町庁舎を保存活用するために必要と見込まれた費用である13億円との差額 2億6822万7865円(消費税8%〔当時〕)を利得した。 (被告の主張)原告らの主張は,否認し,又は争う。 ⑷ 争点4(損益相殺の可否)について(被告の 2億6822万7865円(消費税8%〔当時〕)を利得した。 (被告の主張)原告らの主張は,否認し,又は争う。 ⑷ 争点4(損益相殺の可否)について(被告の主張) 仮に,東大阪市に損害が生じたとしても,東大阪市は,①契約金額相当の価値のある資産である新α町庁舎を取得したこと,②新α町庁舎によって,旧α町庁舎に比べて,職員の勤務の一層の効率化及び市民サービスの向上を実現できること,③α町庁舎の敷地の一部を民間事業者に貸与して年間貸与料約500万円を得られること(乙39),④新α町庁舎ができたことで,庁 舎管理費やα町庁舎の維持管理費用や修繕補修費が低額となること等のメ- 26 -リットがある。そうすると,損益相殺がされるべきであるから,東大阪市に損害が生ずることはない。 (原告らの主張)被告が損益相殺の根拠として主張する事情のうち,①については,契約金額の内訳は建物建築費用のみではないから,新α町庁舎を得たことが契約金 額相当の利益とはいえない。②については,損益相殺の対象とされるような具体的利益ではない。③については,本件事業契約がなくても,別途借地契約を締結すること等によって利益を上げることができる。④については,具体的なメリットは不明であるし,新α町庁舎には旧α町庁舎に整備されていた施設等を収容する面積が不足し,別の場所が必要となる点で新たなコスト を生じさせている。したがって,損益相殺がされるべきであるとする被告の主張は,理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認 めることができる。 ⑴ 平成24年4月~同年12月(資産経営室におけ 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認 めることができる。 ⑴ 平成24年4月~同年12月(資産経営室における再編整備計画の素案の取りまとめ)ア背景事情東大阪市は,平成20年3月に耐震改修促進計画を策定し,平成27年 度に防災関連施設における耐震化率を100%とすることを目標として掲げ,平成23年5月に「市有建築物耐震化整備計画」を策定し,東福祉事務所及び東保健センターの耐震化等の方針を決定した(前記前提事実⑵ア,乙16,41,証人E,弁論の全趣旨)。 イ資産経営室の新設と再編整備の計画 東大阪市は,平成24年4月,同月に新設された資産経営室において,- 27 -公共施設の最適化を計画し,実行するための基本方針である公共施設マネジメント推進基本方針の策定に向けた検討をするとともに,東部地域を始めとする公共施設の耐震化を兼ねた再編整備を進めた(前記前提事実⑶ア,乙41,証人E)。 資産経営室では,①東福祉事務所及び②東保健センターの耐震化につい て,旧α町庁舎の耐震補強工事を検討していたところ,平成24年当時,①東福祉事務所の主管業務である生活保護に関する業務に関し,生活保護の受給者数の増加に伴って,ケースワーカーの増加により業務スペースが狭いこと等が大きな課題となっており,旧α町庁舎の耐震補強工事の実施に伴う必要な業務スペースの喪失,騒音,粉じん等により,市民サービス に著しい影響を及ぼすことが懸念された。 そこで,資産経営室は,その頃,福祉施設Lの廃止・M診療所の廃院が決まったことを受けて,廃止・廃院後のK町建物に耐震補強を施して旧α町庁舎内の①東福 著しい影響を及ぼすことが懸念された。 そこで,資産経営室は,その頃,福祉施設Lの廃止・M診療所の廃院が決まったことを受けて,廃止・廃院後のK町建物に耐震補強を施して旧α町庁舎内の①東福祉事務所及び②東保健センターを移転させ,δ地域に市役所の機能を集約させて,業務効率性・市民利便性の向上を図ることした。 他方,資産経営室は,旧α町庁舎内に整備されていた③α町図書館について,東大阪市の公共施設の総量縮減を達成するために旧α町庁舎を解体した上で,その跡地に民間事業者が建築した建物の一部を東大阪市が賃借してα町図書館を配置することとして,検討を進めた。(以上につき,前記前提事実⑵イ,乙41,証人E) ウ公共施設再編整備計画(素案)の取りまとめ資産経営室は,平成24年12月,上記検討の下に公共施設再編整備計画(素案)を取りまとめ,これを庁内で周知するとともに,東大阪市議会の各会派に提示した(甲8,乙41)。 ⑵ 平成25年1月(公共施設再編整備計画(案)とパブリック・コメント) ア公共施設再編整備計画(案)- 28 -資産経営室は,平成25年1月,公共施設再編整備計画(素案)に形式上の修正を加え,これを公共施設マネジメント推進会議に諮って庁内の合意形成を図った上で,東大阪市公共施設再編整備計画(案)(以下「公共施設再編整備計画(案)」という。)として,方針を決定した(乙41)。 イパブリック・コメント 資産経営室は,平成25年2月,公共施設再編整備計画(案)について,同月1日~同月20日を意見の募集期間としてパブリック・コメントを実施した。しかし,同月22日に開催された総務常任委員会において,意見の募集期間が短い旨の指摘を 公共施設再編整備計画(案)について,同月1日~同月20日を意見の募集期間としてパブリック・コメントを実施した。しかし,同月22日に開催された総務常任委員会において,意見の募集期間が短い旨の指摘を受けたことから,同年4月15日~同年5月14日を追加の意見の募集期間として再度パブリック・コメントを実施し た。(甲36,乙41,証人E)⑶ 平成25年6月(公共施設再編整備計画(案)の再考)ア公共施設再編整備計画(案)への反対意見東大阪市議会は,平成25年6月,平成25年度第2回定例会(6月会)を開催し,公共施設再編整備計画(案)の執行に関連した予算案を審議し た。旧α町庁舎の付近(α町地域)以北の地域の東大阪市議会の議員から,公共施設再編整備計画(案)によれば,旧α町庁舎の付近(α町地域)以北に居住していた住民が東福祉事務所及び東保健センターの移転によりδ地域に行かなければならなくなるとして,この移転に対する反対の意見が提出され,東大阪市議会は,会期を延長した。(乙41,証人E) イ公共施設再編整備計画(案)の再考そこで,資産経営室は,このままでは平成27年度末までの防災関連施設の耐震化の実現ができなくなることを懸念し,公共施設再編整備計画(案)を再考することとし,上記予算案を取り下げた(乙41,証人E)。 ⑷ 平成25年8月(公共施設再編整備計画(再考案)の取りまとめ) ア再考の結果- 29 -資産経営室は,①K町建物を防災関連施設として要求される耐震性能を満たすよう耐震改修し,東福祉事務所及び東保健センターを耐震改修後のK町建物に仮移転させ,一定期間業務を実施した後,東福祉事務所及び東保健センターをα町地域に戻すこととし,②東 要求される耐震性能を満たすよう耐震改修し,東福祉事務所及び東保健センターを耐震改修後のK町建物に仮移転させ,一定期間業務を実施した後,東福祉事務所及び東保健センターをα町地域に戻すこととし,②東福祉事務所及び東保健センターの退去後のK町建物に,α町図書館や,東地域に点在する郷土博物館 や埋蔵文化財センター等の文化関連施設を移転させて一体整備を図ることとした(乙41,証人E)。 イシミュレーションの実施そして,資産経営室は,東福祉事務所及び東保健センターがK町建物への仮移転後にα町地域に再配置される際の施設庁舎について,新α町庁舎 (解体新築方式)と旧α町庁舎(耐震改修方式)のいずれにするかに関するシミュレーションを実施した。上記シミュレーションは,①旧α町庁舎の面積4400㎡に対し,解体新築方式の場合に必要となる面積を合計2600㎡(東福祉事務所及び東保健センターとして使用していた面積を参考に,業務スペースが狭いことの解消と共用部分の縮小を踏まえて200 0㎡とし,その後の調整においてα町庁舎に残すこととなった土木工営所東分室その他の面積を600㎡とした。)とし,②この面積を基に,1㎡当たりの建設費を45万円,改修費をその半額として試算するもので,その結果,耐震改修方式・解体新築方式ともに約13億円を要するものとされた。なお,上記シミュレーションにおいて,新α町庁舎の延べ床面積を 少なくみて金額を合わせるといった操作はされなかった。(乙14,証人E)ウ公共施設再編整備計画(再考案)の取りまとめ資産経営室は,平成25年8月,上記シミュレーションの結果を踏まえ,解体新築方式(旧α町庁舎を解体して新α町庁舎を新築する方式)を採用 することとし,公共施設再編整備計 取りまとめ資産経営室は,平成25年8月,上記シミュレーションの結果を踏まえ,解体新築方式(旧α町庁舎を解体して新α町庁舎を新築する方式)を採用 することとし,公共施設再編整備計画(案)を再考に係る修正を加えた(以- 30 -下,修正後の公共施設再編整備計画(案)を「公共施設再編整備計画(再考案)」という。)。公共施設再編整備計画(再考案)は,解体新築方式によれば,①旧α町庁舎におけるコンクリート強度の経年劣化を考慮する必要がなく,庁舎の寿命が延びること,②耐震補強工事に伴う壁等の増加によるレイアウト上の制約等を考慮する必要がなく,執務環境を確保する ことができること,③公共施設のマネジメントを推進するための方針にもある公共施設の総量縮減という目的が達成できること等を総合的に考慮したものである。(乙14,41,証人E,弁論の全趣旨)⑸ 平成25年11月(本件再編整備計画の策定)ア本件再編整備計画の策定 資産経営室は,平成25年9月,平成25年第3回定例会(9月議会)に公共施設再編整備計画(再考案)の執行に関連した予算案を提出した。 上記予算案は,同年11月11日,東大阪市議会において,賛成多数で可決された。 これを受けて,平成25年11月14日,公共施設マネジメント推進会 議において,東大阪市公共施設マネジメント推進基本方針(案)及び公共施設再編整備計画(再考案)が審議され,同月15日,庁議において,公共施設マネジメント推進基本方針及び本件再編整備計画がそれぞれ策定された。(以上につき,前記前提事実⑶ア,甲21,乙41,証人E)イ本件再編整備計画のうち旧α町庁舎に関する部分 本件再編整備計画の概要本件再編整備 された。(以上につき,前記前提事実⑶ア,甲21,乙41,証人E)イ本件再編整備計画のうち旧α町庁舎に関する部分 本件再編整備計画の概要本件再編整備計画は,社会教育施設,福祉・医療施設・庁舎等の公共施設として利用されている東大阪市の23個の建築物(延べ床面積4万1755㎡)を対象とするもので,各公共施設について,施設の概要(土地については,敷地面積,最寄り駅及び駅からの距離,路線価等の情報, 建物については,建築年次,構造,耐震性能,延べ床面積等の情報),- 31 -設置目的及び施設の現状と課題といった基礎情報を整理し,公共施設の再編整備を計画するものである。 本件再編整備計画のうち旧α町庁舎に関する部分本件再編整備計画のうち,旧α町庁舎に関する部分の概要は,次のa,bのとおりである(前記前提事実⑶イ,乙14,40)。 a 旧α町庁舎の東福祉事務所,東保健センター及びα町図書館をK町建物に仮移転させる(M診療所は廃止する。)。 旧α町庁舎の土木工営所東分室は,仮移転をするが,その設置場所は今後検討する。 旧α町庁舎のα町行政サービスコーナーは,廃止する。 旧α町庁舎の市史資料室は仮移転し,その移転先は学校規模適正化基本方針での統合校跡に移転する。 b 旧α町庁舎の機能の仮移転後,旧α町庁舎は解体し,新α町庁舎を整備する。新α町庁舎には,東福祉事務所及び東保健センターを整備する。今後,新α町庁舎の整備に向け,基本計画を策定し,民間活力 導入のための可能性に関する調査を行い,事業手法の検討を行う。 ウ旧α町庁舎の再配置計画また,本件再編整備計画は, 後,新α町庁舎の整備に向け,基本計画を策定し,民間活力 導入のための可能性に関する調査を行い,事業手法の検討を行う。 ウ旧α町庁舎の再配置計画また,本件再編整備計画は,想定する公共施設の再配置の計画を示しているところ,旧α町庁舎(土木工営所東分室分を除く。)については,平成26年度に基本計画,平成27年度の事業手法検討,平成28年度に提 案募集,平成29年度から平成30年度に民間事業者による設計・解体(旧α町庁舎の解体)・工事(新α町庁舎の建築工事)をするものとされた(乙40)。 ⑹ 平成26年以降ア 「新α町庁舎整備基本計画」(平成27年2月) 東大阪市は,平成26年3月,本件再編整備計画を受けて,「東部地域- 32 -仮設庁舎整備基本計画」を策定し,K町建物を仮設庁舎として整備し,平成28年度から平成30年度までの間,東福祉事務所及び東保健センター等の仮移転先として活用することとした。 また,東大阪市は,平成27年2月,「新α町庁舎整備基本計画」を策定し,新α町庁舎整備に係る基本コンセプト,必要機能・規模・配置計画 等を取りまとめた。(以上につき,前記前提事実⑷イ,乙16,18)イ本件事業契約締結に至る経緯東大阪市は,平成27年12月,新α町庁舎整備民間活力導入可能性に関する調査業務を委託していた株式会社Oから「新α町庁舎整備民間活力導入可能性調査」としてその結果の提出を受けた。 そして,東大阪市は,平成29年3月,総合評価一般競争入札及び開札を行い,同年8月7日,Aとの間で,本件事業契約を締結した。(以上につき,前記前提事実⑷イ,ウ,甲5の1・2,乙17,18)ウ本件事業契約の契約金額 月,総合評価一般競争入札及び開札を行い,同年8月7日,Aとの間で,本件事業契約を締結した。(以上につき,前記前提事実⑷イ,ウ,甲5の1・2,乙17,18)ウ本件事業契約の契約金額本件事業契約の契約金額は,①施設整備業務の対価,②仮設庁舎リース 業務の対価,③維持管理業務に対する対価,④その他の業務の対価として22億4134万0958円(うち消費税等の額を1億6369万5439円とする。)であり,平成25年当時の経費試算(旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の新築〔ただし,当時の計画案によるもの〕に係る建設費用〔初期費用〕のみ)である約13億円より増加した。 そして,本件事業契約の対価(契約金額)のうち,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築に係る建設費用(初期費用)に相当する施設整備業務の対価は,16億7222万7865円であり,平成25年当時の経費試算(約13億円)(上記⑷)に比べて約4億円増加した。その理由は,新α町庁舎の延べ床面積が詳細設計の過程で約650㎡増加したこと,平成2 5年当時と平成29年当時を比較すると,工事設計労務単価等が高騰した- 33 -こと,PFI事業における建中金利や割賦手数料が含まれること等によるものであった。(以上につき,前記前提事実⑷ウ,甲5の1・2)なお,平成25年度と平成29年度を比較すると,公共事業設計労務単価(普通作業員,大阪府)が1.20倍に上昇し,建築資材価格(建築・土木総合,大阪府)が1.12倍に上昇していた(甲5の1・2)。 2 事実認定の補足説明上記認定事実⑷イに関し,原告らは,資産経営室が,シミュレーションの際に,シミュレーションの結果となる金額がおおむね同額となるように,新α町庁舎の延べ床面積を 2 事実認定の補足説明上記認定事実⑷イに関し,原告らは,資産経営室が,シミュレーションの際に,シミュレーションの結果となる金額がおおむね同額となるように,新α町庁舎の延べ床面積をあえて狭くして試算した旨主張する。 しかし,証人Eは,旧α町庁舎を耐震補強して建物内を改装する方策と,旧 α町庁舎を解体してコンパクトな庁舎を新たに建てる方策とを試算した旨の証言をするところ,その証言内容は,旧α町庁舎の東福祉事務所及び東保健センターの各面積を参考として業務スペースが狭いことの解消を図る観点から新α町庁舎における福祉事務所及び東保健センターの各面積を試算し,土木工営所東分室その他の面積を加えるなどして新α町庁舎の面積を算出したもので(乙 41,証人E),相当程度具体的な検討の過程が示されており,東大阪市が公共施設等の最適化・総量縮減に取り組んできたこと(上記認定事実⑴)とも整合的であることからすると,信用性があるということができる。そして,他に原告らの上記主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,上記1⑷イのとおりの事実を認めることができる。 3 職権による検討本件における差止めの訴え中,本件事業契約に基づく東大阪市の義務の履行のうち,本判決言渡日である令和4年2月17日までにされた支出命令の差止めを求める部分の適法性について,職権により検討する。 地方自治法242条の2第1項1号に定める執行機関等に対する差止めの訴 えは,その性質上,差止めの対象となる行為が完了した場合には,訴えの利益- 34 -を欠き,不適法になると解される(最高裁令和2年(行ツ)第130号同年10月20日第三小法廷判決・判例時報2498号20頁参照)。 そうすると,本件における差止め ,訴えの利益- 34 -を欠き,不適法になると解される(最高裁令和2年(行ツ)第130号同年10月20日第三小法廷判決・判例時報2498号20頁参照)。 そうすると,本件における差止めの訴えのうち本判決言渡日である令和4年2月17日までにされた本件支出命令の差止めを求める部分は,訴えの利益を欠き,不適法である。 4 争点1(本件支出命令は地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するか否か)について⑴ 検討原告らは,前記第2の3⑴の(原告らの主張)のとおり,本件再編整備計画の策定は本件支出命令の直接の原因となっているから,本件再編整備計画 の策定が裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして本件再編整備計画の策定に地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反する瑕疵があれば,被告がする本件支出命令も地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反する旨主張する。 しかし,原告らは,本件事業契約の無効等を主張しないとして,本件事業 契約が有効であることを前提としているところ,東大阪市は,Aに対し,本件事業契約に基づく義務を履行しなければならず,同義務を履行しない場合にはAに対して同義務の不履行についての責任を問われる立場にある(前記前提事実⑷ウ)。そうすると,本件事業契約に基づく義務の履行として,本件契約に定める施設整備業務の対価の支払について支出を命ずる権限を有す る被告は,本件事業契約に基づく義務の履行を内容とする支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものではない。 他方,前記前提事実⑶イ,上記認定事実⑹のとおり,本件再編整備計画は,東大阪市における公共施設の再配置の計画にとどまる。すなわち,本件再編整備計画は,東大阪市の公共施設と うものではない。 他方,前記前提事実⑶イ,上記認定事実⑹のとおり,本件再編整備計画は,東大阪市における公共施設の再配置の計画にとどまる。すなわち,本件再編整備計画は,東大阪市の公共施設として利用されている23個の建築物を対 象とし,各公共施設の基礎情報を整理し,その再編整備を計画するものであ- 35 -って(公共施設の再配置の計画を年度の単位で定めるものであって,少なくとも月,日等を定める具体的な計画ではない。),その中で旧α町庁舎の解体,新α町庁舎の建築の方針を掲げてはいるものの,旧α町庁舎内の土木工営所東分室の旧α町庁舎の解体後の整備場所については検討事項とするものである(上記認定事実⑸)。そうすると,本件再編整備計画は,これによ り実際の公共施設の再配置等を法的に義務付け,東大阪市が締結する契約の内容を決めるものとはいえない。 したがって,本件再編整備計画が本件支出命令の直接の原因となっているということはできない。そして,本件事業契約が有効であって,被告において本件事業契約の無効等をいうことができないことに照らせば,東大阪市は 本件事業契約に基づく義務を履行しなければならない立場にあり,被告においても,本件事業契約に基づく義務の履行である限り,その支出を命じなければならないから,本件支出命令は本件事業契約に基づくものと解される。 以上によれば,本件支出命令のうち,前記前提事実⑹の各支出に対応する部分は,本件事業契約に基づく債務の履行としてされたものであって,違法 であるとはいえない。また,本件支出命令のうち,まだ支出命令がされていない部分についても,違法ではない(すなわち,被告は,本件事業契約に基づく義務の履行として支出命令をしなければならない)ということができる。 ⑵ また,本件支出命令のうち,まだ支出命令がされていない部分についても,違法ではない(すなわち,被告は,本件事業契約に基づく義務の履行として支出命令をしなければならない)ということができる。 ⑵ 原告らの主張についてこれに対し,原告らは,①本件再編整備計画の策定がなければ旧α町庁舎 の解体や旧α町庁舎の建築は行われていないという関係にあるから,本件再編整備計画の策定と,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築のために行う本件支出命令とは,密接不可分の関係にあり,本件再編整備計画の策定は,本件支出命令の直接の原因となっている,②本件再編整備計画の策定に被告も直接関わっていたことからすると,本件再編整備計画の策定に瑕疵がある ときは,本件支出命令も違法となる旨主張する。 - 36 -しかし,上記①については,上記⑴において説示したとおり,本件支出命令は,被告が,本件事業契約に基づく東大阪市の義務の履行を命ずるものであるから,本件支出命令の直接の原因となるのは本件事業契約というべきである。また,本件再編整備計画は,東大阪市における公共施設の再配置の計画にすぎないのであって,これにより実際の公共施設の再配置等を法的に義 務付け,東大阪市が締結する契約の具体的内容を決めるものではないから,本件支出命令の直接の原因であるとはいえず,本件支出命令を義務付けるものでもない。そして,上記②については,被告が本件整備再編計画を策定した庁議に関与していたか否かにより左右されるものではない。 そうすると,原告らの上記主張は採用することができない。 ⑶ 小括以上によれば,本件事業契約は有効であって,東大阪市は本件事業契約に基づく義務を履行しなければならない立場にある以上,本件事業契約に基づ は採用することができない。 ⑶ 小括以上によれば,本件事業契約は有効であって,東大阪市は本件事業契約に基づく義務を履行しなければならない立場にある以上,本件事業契約に基づく義務の履行を命ずる権限を有する被告は,本件事業契約に基づく義務の履行を命じなければならず,本件支出命令をしなければならない。他方,本件 再編整備計画は,本件支出命令の直接の原因ということはできないから,仮に本件再編整備計画に瑕疵(違法)があったとしても,本件支出命令が違法となるとはいえない。 そうすると,本件支出命令はいずれも適法である。したがって,その余の争点(争点2~4)について判断するまでもなく,地方自治法242条の2 第1項1号に基づく請求(このうち令和4年2月18日以降にされる本件事業契約に基づく東大阪市の債務に係る支出命令の差止めを求める部分)及び同項4号に基づく請求は理由がない。 なお,事案の内容及び審理の経過に鑑み,本件再編整備計画について,後記5で検討する。 5 本件再編整備計画の瑕疵(違法)の有無について- 37 -⑴ 判断枠組み原告らの請求は,本件再編整備計画を策定に関与した被告の判断が地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反することを前提とするものであるところ,東大阪市には,行政財産である公共施設の管理及びこれに支出する公費の額等の調整に関し,行政財産の効率的運用,ひいては住民の福祉を図 ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うという観点から(地方自治法1条の2第1項,238条の2第1項参照),政策的ないし技術的な見地からの裁量が認められるものというべきである。したがって,本件再編整備計画の策定に関与した被告 を広く担うという観点から(地方自治法1条の2第1項,238条の2第1項参照),政策的ないし技術的な見地からの裁量が認められるものというべきである。したがって,本件再編整備計画の策定に関与した被告の判断については,これが上記の政策的ないし技術的な見地を含む諸般の事情を総合考 慮した上でなお,その判断が裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ,同法2条14項,地方財政法4条1項に反し違法となるものではないと解される。 以下,この観点から検討する。 ⑵ 検討 ア本件再編整備事業の背景事情前記前提事実⑶イ,上記認定事実⑸のとおり,本件再編整備計画は,東大阪市における公共施設のうち23個の建築物(延べ床面積4万1755㎡)を対象とし,各公共施設の基礎情報を整理し,総量縮減・公共施設のマネジメントの促進の観点からこれらの再編整備を計画するものである。 普通地方公共団体は,地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理するものであり(地方自治法2条2項),地域における事務を広く処理する包括的な権能を有していると解されるところであって,普通地方公共団体がその権能に属する事務をどのような方法によって処理するかは,法令の定めに反しない 範囲で,当該普通地方公共団体の合理的な裁量に委ねられているというこ- 38 -とができる。そして,このことは,行政財産としての公共施設についても基本的に妥当するということができ,東大阪市は,東大阪市の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成のために行政財産を利用すべきものといえ(地方自治法238条4項,238条の4参照),本件再編整備計画もこの趣旨に沿うものと でき,東大阪市は,東大阪市の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成のために行政財産を利用すべきものといえ(地方自治法238条4項,238条の4参照),本件再編整備計画もこの趣旨に沿うものといえる。 そして,東大阪市は,平成20年頃から防災関連施設の耐震化を推し進めていたところであって(旧α町庁舎内に整備されていた東福祉事務所及び東保健センターについても耐震性能を備えた建物に整備される必要があった。)(前記前提事実⑵),平成25年11月には,①「適正な維持管理による公共施設の長寿命化の実現」,②「社会情勢の変化を踏まえた公共 施設の総量縮減」,③「民間との連携による効率的,持続可能な市民サービスの提供」という3つの基本方針に従って公共施設のマネジメントに取り組むことを内容とする公共施設マネジメント推進基本方針が策定されたのであって(前記前提事実⑶),本件再編整備計画は,東大阪市の公共施設に関する取組にも沿うものであったといえる。 イ本件再編整備計画のうち旧α町庁舎に関する部分また,本件再編整備計画のうち,旧α町庁舎に関する部分には,旧α町庁舎を解体し,新α町庁舎を建築する旨の記載があるところ,旧α町庁舎内に整備されていた東福祉事務所及び東保健センターは,いずれも防災関連施設であって,いずれも耐震性能を備えた建物として整備される必要が あった。 そして,本件再編整備計画のうち,旧α町庁舎の解体及びこれを前提とする部分は,①旧α町庁舎の東福祉事務所,東保健センター及びα町図書館のK町建物への仮移転,旧α町庁舎の土木工営所東分室の仮移転(設置場所は今後の検討),旧α町庁舎のα町行政サービスコーナーの廃止,市 史資料室の仮移転(移転先は学校規模適正化基本方針の 図書館のK町建物への仮移転,旧α町庁舎の土木工営所東分室の仮移転(設置場所は今後の検討),旧α町庁舎のα町行政サービスコーナーの廃止,市 史資料室の仮移転(移転先は学校規模適正化基本方針の統合校跡),②旧- 39 -α町庁舎の解体後に新α町庁舎を整備し,新α町庁舎には,東福祉事務所及び東保健センターを整備する(新α町庁舎の整備に向けた基本計画を策定し,民間活力導入のための可能性に関する調査を行い,事業手法の検討を行う。),というものであった。(以上につき,前記前提事実⑶イ,上記認定事実⑸) 旧α町庁舎は本件再編整備計画の検討時点(平成24年)において建築後48年が経過しており耐震性能に問題があったこと(前記前提事実⑵ア),旧α町庁舎の延べ床面積が4400㎡であったのに対し,旧α町庁舎の解体後に建築される新α町庁舎の延べ床面積が本件再編整備計画の検討時において2600㎡,本件事業契約時において3000㎡程度であったこと (前記前提事実⑷,上記認定事実⑷),③新α町庁舎においては,民間活力導入も検討されており,民間との連携による効率的市民サービスも検討されていたこと(上記認定事実⑸,⑹)等の事情に照らせば,旧α町庁舎を解体し,新しく新α町庁舎を建築することは,公共施設の長寿化・総量縮減に資するものであったといえる。 他方,東大阪市は,本件再編整備計画を策定するに当たり,旧α町庁舎の解体後に新α町庁舎を新築する場合と旧α町庁舎を耐震改修する場合の費用を対比するシミュレーションを行い,いずれの場合においても同様に約13億円を要するものとされ,旧α町庁舎の解体後に新α町庁舎を新築した場合であっても東大阪市に過大な負担が生じないことを確認した(上 記認定事実⑷)。 ウ本件再 合においても同様に約13億円を要するものとされ,旧α町庁舎の解体後に新α町庁舎を新築した場合であっても東大阪市に過大な負担が生じないことを確認した(上 記認定事実⑷)。 ウ本件再編整備計画に先行するパブリック・コメントの実施さらに,本件再編整備計画を策定するに当たっては,パブリック・コメントを実施し,東大阪市議会において本件再編整備計画の関連予算の承認,公共施設マネジメント推進会議における本件再編整備計画(平成25年9 月頃当時は公共施設再編整備計画(再考案))の審議等を経ており,その- 40 -上で,本件再編整備計画が庁議において策定されたものであって(上記認定事実⑵~⑸),このような事実経過に照らせば,本件再編整備計画は,住民の意向を踏まえ,議論・審議等を経て策定されたものといえる。 エ本件再編整備計画と本件事業契約との対比ところで,東大阪市は,本件事業契約の締結時には,新α町庁舎の延べ 床面積を増大させ,契約金額を22億円余りとしていたところ(前記前提事実⑷ウ),本件事業契約は,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築等の事業(施設整備業務)だけでなく,17年間に及ぶ事業(特に維持管理業務)の委託という形態を採用したのであるから(前記前提事実⑷ウ),本件事業契約の契約金額が,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築等の 費用を上回ること自体は,ごく自然なことである(施設整備業務の対価は,消費税等込みで約16億7000万円であった。)。 また,本件事業契約時においては,本件再編整備計画時に検討されていた延べ床面積では不足するとして延べ床面積の増加がみられるものの(前記前提事実⑷,上記認定事実⑷),本件再編整備計画時においては,細部 に未定の部分も いては,本件再編整備計画時に検討されていた延べ床面積では不足するとして延べ床面積の増加がみられるものの(前記前提事実⑷,上記認定事実⑷),本件再編整備計画時においては,細部 に未定の部分もみられたのであって,本件事業契約の締結に向けた具体的かつ詳細な検討の過程において増床が必要となること自体を一概に否定することはできない。 さらに,本件事業契約は,本件再編整備計画の策定から約4年が経過しており,その間の人件費・材料費等の増加も認められるところである(上 記認定事実⑹)。 オ判断 当時の事情に基づく本件再編整備計画の瑕疵(違法)の有無上記ア~ウの事情に照らせば,本件再編整備計画は,東大阪市の行政財産である公共施設が,行政執行の物的手段として行政目的の効果の達 成を効率的に進めるのであり,東大阪市の数年来に及ぶ防災関連施設の- 41 -耐震化・公共施設のマネジメントに向けた取組に資するものであるし,旧α町庁舎の解体・新α町庁舎の建築に関する部分をみても,防災関連施設である東福祉事務所及び東保健センターの耐震化を推し進めるだけでなく,公共施設の総量縮減等に資するものであって,東大阪市に過大な負担をもたらすものでないことを確認して進められたものであり, 住民の意向を踏まえるなどして策定されたものであるということができる。そうすると,本件再編整備計画の策定に関与した被告において,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできないから,本件再編整備計画は地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するものではない。 事後の事情も加味した本件再編整備計画の瑕疵(違法)の有無また,上記各事情に加え,上記エの事情をも考え合 治法2条14項,地方財政法4条1項に反するものではない。 事後の事情も加味した本件再編整備計画の瑕疵(違法)の有無また,上記各事情に加え,上記エの事情をも考え合わせると,新α町庁舎の延べ床面積が2600㎡では不足することが判明した時点や契約金の額が約22億円であることが判明したとしても,必ずしも本件再編整備計画の合理性が失われるとまではいえず,本件再編整備計画の変 更をしなかったとしても,被告において,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。そうすると,上記の事後の事情を加味したとしても,本件再編整備計画が地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するということはできない。 したがって,本件再編整備計画の策定に関与した被告において,その 裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできないから,本件再編整備計画は地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するものではない。 ⑶ 原告らの主張についてこれに対し,原告らは,旧α町庁舎の解体を内容として含む本件再編整備 計画の策定は,①旧α町庁舎の近代建築としての文化的価値や,旧α町庁舎- 42 -が枚岡市民の誇りのシンボルとして建設された経緯等を無視するものである,②旧α町庁舎の不足する耐震性能は耐震補強を施すことにより補うことができるし,文化的価値を有する建築物については新規の建築物と比べてバリアフリー機能に不備があっても許容されるべきである,③東大阪市の旧α町庁舎の解体・新築に要する費用と旧α町庁舎の保存に要する費用がおおむ ね同額であったとする判断は,登録文化財の指定を受けることにより交付を受けることができる耐震補強の補助金を考慮せずに保存に要す 庁舎の解体・新築に要する費用と旧α町庁舎の保存に要する費用がおおむ ね同額であったとする判断は,登録文化財の指定を受けることにより交付を受けることができる耐震補強の補助金を考慮せずに保存に要する費用を算出している点で,考慮すべき事項を考慮していない上,殊更に新α町庁舎の延べ床面積を狭くして費用を安くした疑いがある,④α町図書館をK町建物に移転することは当初の方針にはなく,K町建物はその構造からα町図書館 を整備するには不向きであって,費用の増加となる,旧α町庁舎を有効活用することにより土木工営所資材置場の敷地程度の広さの余剰地を生じさせることが可能であった,⑤旧α町庁舎の存続を願う市民の声を反映したものではない旨主張する。 以下,これらについて検討する。 ア上記①(旧α町庁舎の文化的価値等)について 旧α町庁舎の文化的価値a 旧α町庁舎に関して認定できる事実前記前提事実⑵ア,⑶ウ及び掲記の証拠によれば,原告らの主張に沿う次の⒜,⒝の事実を認めることができる。 ⒜ 坂倉準三により手がけられた庁舎建築であること等旧α町庁舎は,旧枚岡市が,枚岡市民の誇りのシンボルとして建設を計画し,坂倉大阪事務所に設計を依頼し,著名な建築家である坂倉準三により手がけられた庁舎建築であり,平成13年には「関西のモダニズム建築20選」に選ばれるなど,我が国のモダニズム 建築を代表する建物であると評されていた。そして,一般社団法人- 43 -日本建築学会から被告宛ての要望書が提出され,DOCOMOMOJapan が旧α町庁舎を選定建築物に選定したことに加え,DOCOMOMOJapanは,平成29年3月に「東大阪市α町庁舎再生計画 日本建築学会から被告宛ての要望書が提出され,DOCOMOMOJapan が旧α町庁舎を選定建築物に選定したことに加え,DOCOMOMOJapanは,平成29年3月に「東大阪市α町庁舎再生計画」を発表し,保存活用のための提案を行った。(前記前提事実⑵ア,⑶ウ,甲1の1・2,4,6,22~24,27,35,原告C本人) ⒝ 東大阪市景観形成基本計画また,東大阪市は,平成17年に策定した東大阪市景観形成基本計画(平成15年から開始した東大阪市第2次総合計画の一環として策定したもの)において,景観を悪化させない上で施設の維持管理を徹底することが大切であるとした上で,旧α町庁舎の写真及び 説明を掲げ,旧α町庁舎のような価値のある建物を保存して地域の拠点等として上手に使っていくことが大切であるとしていた。 (甲11,12)bP,長尾淳三の意見書⒜ P(Q大学教授で,DOCOMOMOJapan の東大阪市α町庁舎再生検討 ワーキング・グループのメンバーでもある。)は,旧α町庁舎が登録有形文化財以上の価値を有していたとし,①円弧を描くひさしのデザインが我が国の伝統的な屋根や鳥居の形状から発想された伝統的形態をモダンデザインに昇華した比類ないデザインであるなど,意匠的に優秀である,②屋上緑化とひさしは,現在の環境建築と同様 のデザインで,先進的なグリーン庁舎とも考えられるなど,技術的に優秀である,③設計者の坂倉準三は,パリでル・コルビュジエに師事し,ル・コルビュジエの思想とデザインを日本に展開した建築家であり,旧α町庁舎は市民に開かれた庁舎を当時最先端のデザインで表現するなどし,流派的又は地方的特色において顕著なもので あり,東大阪市の市民の貴重 ジエの思想とデザインを日本に展開した建築家であり,旧α町庁舎は市民に開かれた庁舎を当時最先端のデザインで表現するなどし,流派的又は地方的特色において顕著なもので あり,東大阪市の市民の貴重な資産であって,国の重要文化財とし- 44 -ての指定を受ける可能性も十分にあったと考えられるとした上で,補助又は助成制度を利用した改修により全体予算を削減することが可能であった旨述べる(甲4,23)。 ⒝ また,以前(平成10年7月~平成14年7月,平成18年7月~平成19年9月)に東大阪市長を務めていた長尾淳三は,上記a ⒝の東大阪市景観形成基本計画を前提として,旧α町庁舎の解体に当たっては,上記計画の変更が必要であったし,旧α町庁舎を登録有形文化財として申請すべきであった旨述べる(甲19)。 c そこで検討すると,上記bの各意見を踏まえつつ,上記aで認定した事実によれば,旧α町庁舎がそのデザイン等において建築学的に高 い価値を有するなど文化的価値を有していたこと,東大阪市は平成17年頃において景観を悪化させない上で施設の維持管理を徹底することが大切であるとして旧α町庁舎のような価値のある建物を保存して地域の拠点等として上手に使っていくことが大切であるとしていたことが認められる。具体的には,旧α町庁舎は,外装はコンクリート打 ち放し仕上げで,3階・4階には深いバルコニーがめぐらされ,反りの付いた屋根ひさしが全体をまとめており,内部においてはらせん階段を用いるなどしており,印象的な造形であると同時に,機能的でもあり,市域や生駒山との関係も考慮され,地域のランドマークとしての役割も果たしてきたことが認められるところである。 行政財産・事務庁舎としての旧α町庁舎 能的でもあり,市域や生駒山との関係も考慮され,地域のランドマークとしての役割も果たしてきたことが認められるところである。 行政財産・事務庁舎としての旧α町庁舎しかし,上記⑵のとおり,旧α町庁舎は,東大阪市の行政財産であり,東大阪市の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成のために利用されるべきものである。そして,具体的にどのような形で利用するかは,旧α町庁舎を所有し,管理する東大阪市において第一次的に決す べき事柄であると解されるところ,旧α町庁舎は,事務庁舎であるから,- 45 -その行政効率を向上させ,利用者である市民にとって安全で利用しやすいものとする必要がある(もとより,考慮すべき要素は経済効率に限られるものではないものの〔前記前提事実⑶アa〕,建築当初の市庁舎としての用途がその後変更されていたこと〔前記前提事実⑵ア〕は無視し得ない事情であるといえる。)。 そうすると,旧α町庁舎に上記のとおり高い文化的価値があったとしても,そのような観点以外の観点から利用方法等を考慮することが一切許さないということはできない。そして,このような理解は,坂倉大阪事務所が,平成20年12月に旧α町庁舎の耐震診断をした際,旧α町庁舎が災害時に重要な機能を果たすべき建築物であることから,外観等 に制約があるものの,当時の利用状況を妨げない案が総合的に適している旨の所見を示したこと(前記前提事実⑵ア)とも整合的に理解することができる。 したがって,旧α町庁舎について上記cのとおり認められるとしても,これを理由として,旧α町庁舎の解体を内容の1つとする本件再編 整備計画が直ちに違法であるということはできない。 原告らの主張等について て上記cのとおり認められるとしても,これを理由として,旧α町庁舎の解体を内容の1つとする本件再編 整備計画が直ちに違法であるということはできない。 原告らの主張等についてa 原告Cの供述・陳述部分この点に関し,原告Cは,上記のとおり,旧α町庁舎が我が国のモダニズム建築を代表する建築として文化的価値を有していたことか ら,経済効率や業務効率だけでなく旧α町庁舎の文化的価値も考慮されるべきであって,旧α町庁舎については,解体をめぐっては専門家の意見聴取等を行うべきであったし,その文化的価値を市民に周知し,景観の形成を一層重視すべきであった旨供述・陳述する(甲35,原告C本人)。 しかし,上記のとおり,旧α町庁舎が行政財産である事務庁舎で- 46 -あるから,事務庁舎として行政効率を向上させ,利用者である市民にとって安全で利用しやすいものとする必要があったということができ,行政財産の管理として,当然にその文化的価値の活用が要求されていたということはできない。また,旧α町庁舎について,専門家の意見聴取や市民への一層の周知等がされていれば,東大阪市民等における 旧α町庁舎についての理解が一層深まったものと思料されるところではあるものの,旧α町庁舎解体を含む本件再編整備計画について,被告が裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできないことは,上記⑵で説示したとおりである。 b 登録有形文化財 本件再編整備計画が策定された当時,旧α町庁舎は,登録有形文化財ではなく,建設後49年が経過したところであって,登録有形文化財登録基準(平成17年3月28日文部科学省告示第44号。乙8)に定める築年数の基準(原 画が策定された当時,旧α町庁舎は,登録有形文化財ではなく,建設後49年が経過したところであって,登録有形文化財登録基準(平成17年3月28日文部科学省告示第44号。乙8)に定める築年数の基準(原則として建設後50年)を満たしてはいなかった。また,旧α町庁舎が国の登録有形文化財・重要文化財として 指定を受ける可能性も十分にあったとするPの意見書(甲23)があるものの,仮に,旧α町庁舎が重要文化財・登録有形文化財とされた場合には,文化財としての管理を要することとなり(文化財保護法31条,60条),事務庁舎としての旧α町庁舎の機能が大きく制約される可能性も否定できなかったものと解される。このような事情からす ると,被告としては,重要文化財・登録有形文化財としての活用が義務付けられる状況にあったとはいえないというべきである(乙27参照)。 c 東大阪市景観形成基本計画以前東大阪市長を務めていた長尾淳三は,東大阪市景観形成基本計 画において,旧α町庁舎のような価値のある建物を保存して地域の拠- 47 -点等として上手に使っていくことが大切である旨の記載があることから,旧α町庁舎を解体するに当たり,同計画の変更が必要であった旨述べる(上記b⒜)。 しかし,上記計画は東大阪市の平成17年当時の行動指針を定めたものであって法的な拘束力があるとは解されないから,上記計画の変 更が必要であったとする指摘は当たらない。 イ上記②(旧α町庁舎の耐震補強の可能性)について原告らが主張するとおり,耐震補強工事には種々の方法があり,DOCOMOMOJapan からも耐震補強の提案がされているなど,原告らの主張に沿う証拠(甲4,14,乙11)もある。 原告らが主張するとおり,耐震補強工事には種々の方法があり,DOCOMOMOJapan からも耐震補強の提案がされているなど,原告らの主張に沿う証拠(甲4,14,乙11)もある。 しかし,上記アで説示したとおり,旧α町庁舎は東大阪市の行政財産であり,東大阪市の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成のために利用されるべきものであって,具体的にどのような形でこれを利用するかは,旧α町庁舎を所有し,管理する東大阪市において第一次的に決すべき事柄であると解される。そして,旧α町庁舎は事務庁舎であって,市 民が行政サービスを享受するために来訪することが予定されるところ,一般に,旧α町庁舎に耐震補強工事を施した場合に比べ,新α町庁舎を建築した場合の方が,建物の長寿化や合理的な執務スペースの確保が可能であって,バリアフリー化への対応も容易であるなど,行政効率の向上に資することに照らせば,耐震補強工事が可能であることをもって直ちに旧α町 庁舎に耐震補強工事を施すべきということはできず,むしろ旧α町庁舎解体・新α町庁舎建設によるべきであるとの帰結に至ることも十分に理由がある。なお,この点に関し,原告らは,旧α町庁舎のバリアフリー機能に不備があるとしても,文化的価値を有する建築物に新規の建築物と同程度に要求する必要はない旨主張するが,行政財産として庁舎として行政効率 を向上させ,利用者である市民にとって安全で利用しやすいものとする必- 48 -要があるから,このような点に関する判断は,東大阪市に委ねられているということができる。 また,原告らは,DOCOMOMOJapan が取りまとめた再生計画案・耐震補強案を指摘して旧α町庁舎の保存活用をすべきである旨主張する。しかし,DOCOMOMO いうことができる。 また,原告らは,DOCOMOMOJapan が取りまとめた再生計画案・耐震補強案を指摘して旧α町庁舎の保存活用をすべきである旨主張する。しかし,DOCOMOMOJapan が取りまとめた再生計画案・耐震補強案は,平成29年3 月12日付けで作成されたものであって,本件再編整備計画の策定から3年3か月余りが経過した後のものであるし,諸官庁との調整が未了であって主として建築学的観点からの検討である点や,改修費用の見積りが粗い概算にとどまる点(甲4)等において,行政財産としての旧α町庁舎としての行政効率の検討が十分であるとはいい難い。 ウ上記③(旧α町庁舎の保存と解体の比較)について 判断の観点上記アで説示したとおり,旧α町庁舎及びその敷地は,東大阪市の行政財産であり,東大阪市が直接使用することを本来の目的とするものであり,東大阪市の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成の ために利用されるべきものである。 そうすると,行政財産としての旧α町庁舎との観点からは,庁舎として行政効率を向上させ,利用者である市民にとって安全で利用しやすいものとする必要があるということができ,旧α町庁舎の解体・新築と旧α町庁舎の耐震補強による保存との比較において,いずれが行政効率を 向上させ,利用者である市民にとって安全で利用しやすいものとすることができるかという観点から,一時的・長期的な費用等を考慮する必要がある。 検討東大阪市においては,平成25年当時,東福祉事務所の業務は増加す る状況にあり,東保健センターとともに,業務を継続する必要があった。 - 49 -そして,東大阪市においては,平成27年度までに防 阪市においては,平成25年当時,東福祉事務所の業務は増加す る状況にあり,東保健センターとともに,業務を継続する必要があった。 - 49 -そして,東大阪市においては,平成27年度までに防災関連施設の耐震化を実現することを目標としており(前記前提事実⑵ア),早急に旧α町庁舎内に所在した東福祉事務所及び東保健センターについてもこの目標を達成する必要があったことからすると,旧α町庁舎における東福祉事務所及び東保健センターの業務を参考として,新α町庁舎に必要な 機能を設定した上で,旧α町庁舎においてその機能が有する面積を基に新α町庁舎の床面積を算定し,2600㎡と想定して旧α町庁舎の解体・新築の費用を試算し,これと旧α町庁舎に耐震補強を施した場合の費用を試算して対比することが不合理であるとはいえない。 もっとも,上記認定事実⑹のとおり,本件事業契約における契約金額 は,22億4134万0958円であり,このうち,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築に係る建設費用(初期費用)に相当する施設整備業務の対価は16億7222万7865円(消費税等込み)であるから,平成25年当時の経費試算(約13億円)に比べて高額化している。しかし,上記契約金額は,①施設整備業務の対価,②仮設庁舎リース業務 の対価,③維持管理業務に対する対価,④その他の業務の対価として事業期間全体の費用であって,旧α町庁舎の解体・新α町庁舎の建築費用等に限られない。そして,本件事業契約の契約金額のうち,旧α町庁舎の解体及び新α町庁舎の建築に係る建設費用(初期費用)に相当する施設整備業務の対価に相当する部分が16億7222万7865円に及 んだことには,相応の理由があったというのであるから(上記認定事実⑹),これらの事情をもって本件再 費用(初期費用)に相当する施設整備業務の対価に相当する部分が16億7222万7865円に及 んだことには,相応の理由があったというのであるから(上記認定事実⑹),これらの事情をもって本件再編整備計画に瑕疵があるということはできない(そして,旧α町庁舎の解体・新築と旧α町庁舎に耐震補強を施した場合とを比較すると,旧α町庁舎の解体・新築による場合には,当該新築建物の長期利用や庁舎の合理的利用といった建て替えのメリ ットがあり,これらのメリットに鑑みれば,上記の金額の相違が直ちに- 50 -不合理なものであるとはいえない。)。 なお,原告らは,旧α町庁舎を登録有形文化財とすることでその保存活用に対する補助金を受けることができる旨主張するが,当該主張を採用することができないことは,上記アで説示したとおりである。 エ上記④(α町図書館の移転等)について α町図書館の移転原告らが主張するとおり,平成25年1月に作成された公共施設再編整備計画(案)までは,旧α町庁舎解体後の跡地に民間施設を誘致し,その一部にα町図書館を整備することとされていた(上記認定事実⑵,⑷)のであって,これとの比較において,K町建物にα町図書館を移転 させることを含む本件再編整備計画は,当初には想定されていなかったα町図書館の移転費用について東大阪市の負担が増加したものと考えられる。 しかし,α町図書館のK町建物への移転を含む本件再編整備計画については,これを前提とする予算案が東大阪市議会において審議・可決さ れたというのである(上記認定事実⑸ア)。そして,本件再編整備計画は,α町図書館のK町建物への移転により,周辺の郷土博物館や埋蔵文化財センターを併せてK町建物に移転させて おいて審議・可決さ れたというのである(上記認定事実⑸ア)。そして,本件再編整備計画は,α町図書館のK町建物への移転により,周辺の郷土博物館や埋蔵文化財センターを併せてK町建物に移転させて一体整備を図るもの(文化複合施設の整備事業)であって(上記認定事実⑷,⑸),このような一体整備は,公共施設マネジメント推進基本方針が掲げる基本方針,すなわち, 公共施設の長寿命化の実現,総量縮減に伴う財政支出の削減等を踏まえ,周辺の公共施設を集約化・複合化して整備することで,施設がそれぞれ有していた課題の解決及び相乗効果を図ること(前記前提事実⑶ア,上記認定事実⑷)に沿ったものといえる(なお,以上の認定・判断は,東大阪市が令和2年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により税 収が落ち込む可能性を見据えて文化複合施設の整備事業を凍結した〔甲- 51 -29〕という事後の事情によって左右されない。)。そうすると,原告らの上記主張は採用することができない。 土木工営所資材置場等原告らは,旧α町庁舎の延べ床面積からすると耐震補強後の旧α町庁舎内に他の施設を整備することが可能であったというべきであって,土 木工営所資材置場等(約285㎡)の新α町庁舎への整備をもって新α町庁舎建設のメリットであるということはできない旨主張する。 しかし,本件再編整備計画は,複数の公共施設を集約するなどし,総量縮減等を図ることで公共施設マネジメント(前記前提事実⑶ア)を行おうとするものであって,仮に,耐震補強後の旧α町庁舎内に当該施 設を整備することができたとしても,行政効率が確保されたかどうかは不明であるし,複数の公共施設を全体としてみたときに,土木工営所資材置場等の新α町庁舎への整備が新α町庁舎 α町庁舎内に当該施 設を整備することができたとしても,行政効率が確保されたかどうかは不明であるし,複数の公共施設を全体としてみたときに,土木工営所資材置場等の新α町庁舎への整備が新α町庁舎建設のメリットでないということはできない。 オ上記⑤(α町庁舎の存続を願う市民の声)について 署名提出等①原告らがD団体を結成し,旧α町庁舎及びα町図書館の存続請願のための署名活動を行い,平成26年3月~平成28年12月,市議会及び市長に対して合計1万1000筆を超える署名を提出したほか,旧α町庁舎の保存・活用を目指した旧α町庁舎の見学会等を実施したこと, ②東大阪市が実施したパブリック・コメントは意見の募集期間が20日程度と短かった上に,α町図書館の移転に言及がされていない公共施設再編整備計画(案)を前提としたものであって,寄せられたパブリック・コメントの意見をみると,旧α町庁舎の解体に反対する意見が70件であったのに対し,旧α町庁舎の建て替えを希望する意見が8件であった こと(なお,上記パブリック・コメントにおいて最も多く寄せられた意- 52 -見は,K町建物におけるM診療所の廃止に反対する意見〔988件〕であった。)等(上記認定事実⑵,⑷,甲9,36,原告C本人,弁論の全趣旨),原告らの主張に沿う事実も認められる。 検討しかし,上記①については,議会及び市長に宛てた合計1万1000 筆を超える旧α町庁舎の保存・活用を求める署名が提出されたとしても,このような署名に(一般に政治的・社会的な意義があることは別として)法的拘束力があるものではない。また,この点を措くとしても,東大阪市の住民が直接選挙した議員により組織される東大阪市議会は,平成2 のような署名に(一般に政治的・社会的な意義があることは別として)法的拘束力があるものではない。また,この点を措くとしても,東大阪市の住民が直接選挙した議員により組織される東大阪市議会は,平成25年11月,本件再編整備計画を前提とする予算案を承認したというの であるから(上記認定事実⑸ア),上記署名等の存在を考慮したとしても,本件再編整備計画が東大阪市の住民の意思に反していたということはできない。 さらに,上記②については,東大阪市のパブリック・コメントは,東大阪市の政策形成過程において市民の市政への参画の機会を提供する とともに,説明責任を果たすことで,市政運営における公正性の確保及び透明性の向上を図ることを目的として,東大阪市の基本的な計画等を立案する過程において,その案を公表し,それに対して提出された市民等の意見を考慮して意思決定を行うとともに,意見に対する市の考え方を公表する一連の手続であって(甲36),その結果に法的拘束力がある ものではない。この点に関し,原告らは,平成25年2月に行われたパブリック・コメントは,意見の募集期間が短く,旧α町図書館の移転を言及しない公共施設再編整備計画(案)が前提とされたのであったから,本件再編整備計画は,実質的にはパブリック・コメントを経たものとはいえない旨主張する。しかし,東大阪市は,同月のパブリック・コメン トの意見の募集期間が短い旨の指摘を受けて,同年4月頃に追加の意見- 53 -の募集期間を設けたのであって(上記認定事実⑵),このような追加の意見募集期間が設けられたことに照らせば,意見の募集期間が短かったということはできない。また,上記認定事実⑵~⑸の経緯によれば,本件再編整備計画は,公共施設再編整備計画(案)によりパブリック・コメント 募集期間が設けられたことに照らせば,意見の募集期間が短かったということはできない。また,上記認定事実⑵~⑸の経緯によれば,本件再編整備計画は,公共施設再編整備計画(案)によりパブリック・コメントを実施し,寄せられた意見を踏まえ,更に検討・審議等を重ねて策 定されたものであって,パブリック・コメントの意見を考慮して意思決定がされたものであるということができる。 カ小括(原告らの主張について)上記ア~オのとおり,原告らの主張はいずれも理由がないか,又は,原告らの主張を考慮したとしても行政財産である旧α町庁舎の管理等に係る 東大阪市の裁量を制約する事情とはいえないから,本件再編整備計画(新α町庁舎の延べ床面積の不足又は本件事業契約の契約金が判明した時点において,本件再編整備計画を変更しなかったことを含む。)の策定に関与した被告において,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。 したがって,本件再編整備計画は,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するものではない。 6 まとめ上記3のとおり,本件各訴えのうち本判決言渡日である令和4年2月17日までにされた本件支出命令の差止めを求める部分は,訴えの利益を欠く不適法 なものであるから,これを却下すべきである。 また,上記4のとおり,本件支出命令は,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反するとはいえないから,いずれも違法又は無効であるとはいえない。したがって,その余の争点(争点2~4)について判断するまでもなく,原告らのその余の請求(地方自治法242条の2第1項1号に基づく請求〔こ のうち令和4年2月18日以降にされる東大阪市新α町庁舎整備事業の実施に- 54 -関す ついて判断するまでもなく,原告らのその余の請求(地方自治法242条の2第1項1号に基づく請求〔こ のうち令和4年2月18日以降にされる東大阪市新α町庁舎整備事業の実施に- 54 -関する事業契約に基づく東大阪市の債務に係る支出命令の差止めを求める部分〕及び同項4号に基づく請求)はいずれも理由がない。 第4 結論よって,本件各訴えのうち本判決言渡日である令和4年2月17日までにされた本件支出命令の差止めを求める部分は不適法であるからこれを却下し,原告ら のその余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地 修 裁判官新宮智之 裁判官関 尭熙
▼ クリックして全文を表示