平成25年3月28日判決言渡平成24年(行ウ)第63号行政処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求処分行政庁が原告に対して平成24年4月13日付けでした風俗営業許可の取消処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)2条1項8号所定の風俗営業(ゲームセンター)を営んでいた原告が,処分行政庁から,あらかじめ処分行政庁の承認を受けないで営業所の構造又は設備の変更をしたことを理由として,風営法26条1項に基づき,平成24年4月13日付けで風俗営業許可の取消処分(以下「本件処分」という。)受けたため,本件処分は同条項所定の処分要件を充足せずにされたものであるから違法であるなどと主張して,本件処分の取消しを求めた事案である。 2 関係法令等の定め別紙「関係法令等の定め」に記載したとおりである(同別紙で定める略称は,以下においても用いることとする。)。 3 前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。)(1) 原告は,平成13年11月14日,処分行政庁から,風営法3条1項に基づき,愛知県刈谷市α×番地所在の「A店」(以下「本件店舗」という。)について,風営法2条1項8号所定の風俗営業(ゲームセンター)の許可を 受けた(以下「本件営業許可」という。)。(乙6)(2) 原告は,遅くとも平成22年5月下旬頃から,処分行政庁の承認を受けることなく,本件営業許可によって営業所として許可を受けた客室部分以外の場所である本件店舗1階の北側フロア及び2階フロア (2) 原告は,遅くとも平成22年5月下旬頃から,処分行政庁の承認を受けることなく,本件営業許可によって営業所として許可を受けた客室部分以外の場所である本件店舗1階の北側フロア及び2階フロアにおいて,スロットマシンやテレビゲーム機等のゲーム機を設置し,これらゲーム機を客の遊技の用に供した(以下,当該ゲーム機の設置行為を「本件増設行為」といい,本件増設行為において本件営業許可を受けた営業所の客室部分以外の部分に設置されたゲーム機を「本件ゲーム機」という。)。(甲1,乙1,2,7,9,10)(3) 処分行政庁は,平成24年4月13日,原告に対し,処分の理由を「原告が本件店舗の営業に関し,あらかじめ処分行政庁の承認を受けないで,平成22年5月下旬頃,客室数1室(客室の床面積219.10平方メートル)として風俗営業の許可を受けていた客室を3室(客室の床面積647.47平方メートル)に増やし,もって公安委員会の承認を受けないで営業所の構造又は設備の変更をしたものである」などとし,違反法条を風営法9条1項として,風営法26条1項に基づき,本件営業許可を取り消す旨の処分(本件処分)をした。(甲1)(4) 原告は,平成24年5月21日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実) 4 争点及び当事者の主張本件の争点は,本件処分の適法性であり,これに関する当事者の主張は,以下のとおりである。 (1) 被告の主張ア原告は,あらかじめ処分行政庁の承認を受けることなく,本件増設行為によって営業所の構造又は設備を変更したから,風営法9条1項に違反したというべきである。また,①原告が,本件増設行為の違法性を認識しながら,利益追求という利己的な動機に基づいて本件増設行為に及んだこ と,②原告が,本件処分前に営業停止処分 法9条1項に違反したというべきである。また,①原告が,本件増設行為の違法性を認識しながら,利益追求という利己的な動機に基づいて本件増設行為に及んだこ と,②原告が,本件処分前に営業停止処分1件及び指示処分8件の処分歴を有し,平成20年には本件と同様の構造・設備の無承認変更について指導を受けていたにもかかわらず,本件増設行為に及んだこと等に照らすと,常習性・悪質性が高く,今後の原告の営業が健全化することは期待できないから,風営法26条1項所定の「著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」場合に該当する。そうすると,原告による本件増設行為は,風俗営業許可の取消要件を定めた風営法26条1項の要件を充足するものである。 そして,本件においては,処分行政庁が風俗営業許可の取消処分に係る裁量権を逸脱又は濫用したというべき事情も存しない。 したがって,本件処分は,適法である。 イなお,原告は,本件ゲーム機は,風営法2条1項8号所定の遊技設備に該当しない旨主張するが,同条項,施行規則5条及び警察庁が風営法の解釈・運用の基準を定めた通達である「解釈運用基準」第3の2の各規定に照らすと,本件ゲーム機が風営法2条1項8号所定の遊技設備に該当することは明らかである。 また,原告は,本件増設行為に悪質性はない旨主張するが,前記アにおいて指摘した動機や処分歴等に照らすと,悪質性は明らかというほかはない。 さらに,原告は,本件処分は,原告と同様の違反行為を行っている他の風俗営業者に対する対応との公平性・均等性を欠くから違法である旨主張するが,処分の公平性・均等性は,裁量権の逸脱,濫用の有無に係る判断要素の一つにすぎない上,前記アにおいて指摘した悪質性・ いる他の風俗営業者に対する対応との公平性・均等性を欠くから違法である旨主張するが,処分の公平性・均等性は,裁量権の逸脱,濫用の有無に係る判断要素の一つにすぎない上,前記アにおいて指摘した悪質性・常習性に照らせば,仮に他の風俗営業者に対する対応と異なる点があったとしても,そのことから直ちに本件処分が違法であるということはできない。 (2) 原告の主張 ア風営法2条1項8号所定の遊技設備は,それにより遊技することで精神的満足のみならず物的利益を得ることができる遊技設備をいうものと解すべきである。本件ゲーム機の大半はスロットマシン及びテレビゲーム機であるところ,スロットマシンによって獲得できるメダルは,同種ゲーム機で使用できるのみで,金品に交換できるものではないし,テレビゲーム機は,これに勝利しても金品を獲得することはできない。そうすると,本件ゲーム機により遊技することで得られるのは精神的満足だけであり,物的利益を得ることはできないから,本件ゲーム機は,同条項所定の遊技設備に該当しない。 したがって,本件ゲーム機を設置した客室については,風俗営業の許可自体必要のないものであるから,本件ゲーム機を設置した本件増設行為は,風営法9条1項の「営業所の構造又は設備の変更」に当たらず,同条項違反の問題は生じない。 よって,本件処分は,風営法26条1項所定の風俗営業許可の取消要件を満たさないにもかかわらずされたものであるから,違法というべきである。 イまた,営業許可の取消処分は,憲法22条及び29条が保障する営業活動の自由を侵害する処分であるから,悪質性が顕著な場合に限定されるべきであるところ,①原告が本件処分前に営業停止処分を受けたことには,原告代表者の病気により店舗への指導不足となったという酌む 営業活動の自由を侵害する処分であるから,悪質性が顕著な場合に限定されるべきであるところ,①原告が本件処分前に営業停止処分を受けたことには,原告代表者の病気により店舗への指導不足となったという酌むべき事情があること,②原告が本件増設行為に係る捜査等に協力してきたことに照らすと,原告の本件増設行為に悪質性はないというべきである。 ウさらに,愛知県内の複数の風俗営業者が,原告と同様の増設行為を行っているにもかかわらず,これらの風俗営業者に対しては風俗営業許可の取消処分がされていないから,本件処分は,公平性,均等性を欠くものとして,違法というべきである。 エ加えて,本件処分は,解釈運用基準における10パーセント規制に違反したことを理由としてされたものであるところ,10パーセント規制は法令上に根拠を有しないから,本件処分は,法的根拠に基づかないでされたものとして,違法というべきである。 第3 当裁判所の判断 1 風営法1条の目的を達成する手段として,同法26条1項は,「公安委員会は,風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき,又は風俗営業者がこの法律に基づく処分若しくは第3条第2項の規定に基づき付された条件に違反したときは,当該風俗営業者に対し,当該風俗営業の許可を取り消し,又は6月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命じることができる。」と定めている。 同条は,その法文の形式から明らかなとおり,公安委員会に対し,風俗営業の許可の取消処分等をするか否かについての裁量権を付与するものであるから,風俗営業等の取消 じることができる。」と定めている。 同条は,その法文の形式から明らかなとおり,公安委員会に対し,風俗営業の許可の取消処分等をするか否かについての裁量権を付与するものであるから,風俗営業等の取消処分は,その要件充足を前提として,公安委員会の裁量的判断に委ねられているものということができる。 したがって,風俗営業許可の取消処分は,同処分の要件を欠くとき又は同処分に係る公安委員会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合には,違法になるというべきである。 2 そこで,以上の見地から本件処分について検討するに,前提事実に証拠(甲1,乙1ないし5,7ないし11,13,14)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 (1) 本件店舗における営業状況等ア原告は,遊戯場の営業等を目的とする株式会社であり,愛知県内において数店舗のゲームセンターを営んでいた。 イ原告は,平成13年頃,本件店舗における娯楽施設の営業を前経営者から居抜きの形で買い取り,同年11月14日,処分行政庁から,本件店舗1階の南側フロアの一部を営業所とする風俗営業(ゲームセンタ-)の営業許可(本件営業許可)を受けた。 原告は,本件営業許可を受けた後,本件店舗1階の南側フロアの一部にゲーム機を設置してゲームセンターとするとともに,1階のその余のフロアにはテーブルや写真撮影のできる遊技機器を設置し,2階にはビリヤード場を設け,3階は倉庫として利用することとして,本件店舗における娯楽施設の営業を始めた。 ウその後,原告は,ビリヤード場による売上げが落ちてきたことから,売上げの減少を補うため,あらかじめ処分行政庁の承認を受けないまま,本件店舗のうち,本件営業許可によって営業所として許可を受けた南側フロアの一部 告は,ビリヤード場による売上げが落ちてきたことから,売上げの減少を補うため,あらかじめ処分行政庁の承認を受けないまま,本件店舗のうち,本件営業許可によって営業所として許可を受けた南側フロアの一部以外の場所にもゲーム機を設置するようになった。このため,原告は,平成20年6月26日,上記ゲーム機の設置について,あらかじめ公安委員会の承認を受けないで営業所の構造又は設備を変更したものであり,風営法9条1項に違反するとして,愛知県刈谷警察署(以下「刈谷署」という。)から指導を受けた。 エ原告は,前記ウの指導を受けた直後,本件営業許可に係る営業所の範囲を本件店舗1階の約半分を占める南側フロア全体に拡張する旨の届出を行った。その結果,本件営業許可に係る営業所は,本件店舗1階の南側フロア全体の客室(床面積219.10平方メートル)となった。 (2) 本件増設行為の経過等ア原告は,平成22年4月頃,営業不振のため,本件店舗と同じ刈谷市所在のゲームセンター「B」を閉店したことから,同店に設置していたゲーム機を余剰機として保管する必要に迫られるようになった。このため,原告代表者C(以下「C」という。)は,前記(1)ウの指導により,公安委 員会の承認を受けずに営業所を増床するのは違法であることを知悉していたにもかかわらず,ソーシャルゲームや他の大型店との競争の激化により経営状況が悪化していたこともあって,余剰ゲーム機を稼働させて収益を上げたいと考え,遅くとも同年5月下旬頃から,本件営業許可によって営業所として許可を受けた客室以外の場所である1階北側フロア及び2階フロアに,余剰ゲーム機の中から稼働率の高いゲーム機を選んで設置し,客の遊技に供するようになった(本件増設行為)。 イその後も,原告は,本件増設行為によって設置し ある1階北側フロア及び2階フロアに,余剰ゲーム機の中から稼働率の高いゲーム機を選んで設置し,客の遊技に供するようになった(本件増設行為)。 イその後も,原告は,本件増設行為によって設置したゲーム機による利益が本件店舗全体の利益の大半を占めるようになったことから,「指導されたら直せばいい」などと考え,ゲーム機の入替えを繰り返しながら,1階北側フロア及び2階フロアにおけるゲーム機の稼働を続けた。 (3) 本件処分に至る経緯等ア刈谷署職員は,平成23年10月13日,本件店舗について,風営法37条2項に基づく立入検査を実施するとともに,実況見分を行った。当時,本件営業許可によって営業所として許可を受けた客室以外の場所である1階北側フロア(客室面積253.54平方メートル)には,対戦型テレビゲーム機28台,音楽ゲーム機(ゲーム者のステップについての得点や全国ランキングが表示されるゲーム機)1台及びプライズゲーム機(景品キャッチャー等の景品を獲得することができるゲーム機)5台が設置されており,2階フロア(客室面積174.83平方メートル)には,スロットマシン12台,対戦型テレビゲーム機12台,音楽ゲーム機8台が設置されていた。 イ原告及びCは,平成24年3月1日,安城簡易裁判所において,本件増設行為について,風営法違反の罪により,それぞれ罰金30万円に処する旨の略式命令を受けた。 ウ本件処分に先立ち,平成24年4月10日,原告に対する聴聞手続が実 施された。その際,Cは,原告代表者として,今回の違反行為に間違いはない旨陳述した。 エ原告は,平成24年4月13日付けで本件処分を受け,同月16日,本件処分に係る行政処分通知書を受領した。これを受けて,原告は,同月20日,処分行政庁に対し,本件 違いはない旨陳述した。 エ原告は,平成24年4月13日付けで本件処分を受け,同月16日,本件処分に係る行政処分通知書を受領した。これを受けて,原告は,同月20日,処分行政庁に対し,本件営業許可に係るゲームセンター等営業許可証を返納した。 オなお,解釈運用基準では,レストラン等の片隅に1台のゲーム機を設置する事例のように,店舗内におけるゲーム機営業としての外形的独立性が著しく小さい場合には,風俗営業の許可を要しない扱いとする旨を定めている(解釈運用基準第3の3(1)イ参照)。具体的には,ゲーム機設置部分を含む店舗の1フロアの客の用に供される部分の床面積に対して,客の遊技の用に供される部分の床面積が占める割合が10パーセントを超えない場合には,風俗営業の許可を要しない扱いとすることとされており,上記割合の具体的な算定方法等が定められている(10パーセント規制)。 これによって,本件営業許可の対象以外の場所における上記割合を算出すると,1階北側フロアについては約20~38パーセント,上記2階フロアについては約27~45パーセントとなり,いずれも10パーセントを大きく上回っていた。 (4) 原告の本件処分前の行政処分歴等ア原告は,本件処分以前にも,以下のとおり,風俗営業(ゲームセンター)の許可を受けた各営業所において合計13件の違反行為をし,これら違反行為について,風営法25条に基づく指示処分8件と同法26条1項に基づく営業停止処分1件を受けた経歴を有していた。 (ア) 指示処分①処分日平成16年1月5日営業所名 D 違反名変更届出義務違反,従業者名簿備付け義務違反②処分日平成16年12月20日営業所名 E店違反名変更届出義務違反 日平成16年1月5日営業所名 D 違反名変更届出義務違反,従業者名簿備付け義務違反②処分日平成16年12月20日営業所名 E店違反名変更届出義務違反③処分日平成18年9月14日営業所名 F店違反名構造設備の維持義務違反,条例遵守事項違反④処分日平成19年6月6日営業所名 G違反名構造設備の無承認変更,従業者名簿備付け義務違反⑤処分日平成19年9月4日営業所名 H違反名変更届出義務違反⑥処分日平成20年5月29日営業所名 F店違反名変更届出義務違反⑦処分日平成21年11月27日営業所名 G違反名構造設備の維持義務違反,条例遵守事項違反⑧処分日平成23年4月8日営業所名 H違反名変更届出義務違反(イ) 営業停止処分処分日平成23年4月8日営業所名 H違反名営業時間制限違反 イまた,原告は,前記(1)ウのとおり,平成20年6月26日に風営法9条1項違反により指導を受けた際,刈谷署長に対し,「営業所の拡張について処分行政庁の承認が必要であることを理解し,上記ゲーム機の設置が風営法9条1項に違反することを認めた上で,今後は健全営業になるよう改める。」旨記載した「上申書」(乙5)を提出していた。 3 以上の事実関係を前提にして,まず最初に,原告の本件増設行為が風営法9条1項に違反するかどうかについて検討する。 前記2で認定した事実によると,本件ゲーム機は,スロットマシン,対戦型テレビゲーム機,プライズゲーム機並びに遊技結果が得点及び全国ランキングの形で表示される音楽ゲーム機であって,いずれも 。 前記2で認定した事実によると,本件ゲーム機は,スロットマシン,対戦型テレビゲーム機,プライズゲーム機並びに遊技結果が得点及び全国ランキングの形で表示される音楽ゲーム機であって,いずれも遊技結果が物の数量や数字,文字等の記号によって表示されることにより,遊技結果について物品を賭けて遊技するなど射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるゲーム機であるから,風営法2条1項8号所定の遊技設備(「スロットマシン,テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの」)に該当するというべきである。 そして,前記2で認定した事実によると,①原告は,遅くとも平成22年5月下旬頃から,あらかじめ処分行政庁の承認を得ることなく,本件営業許可によって営業所として許可を受けた客室部分以外の部分である1階北側フロア及び2階フロアに本件ゲーム機を設置し,これを客の用に供したものであり,②その結果,本件店舗における客室数は,従前の1室から3室に変更され,客室床面積も,219.10平方メートルから647.47平方メートルに大幅に増加されたというのであるから,本件増設行為が風営法9条1項所定の「営業所の構造又は設備の変更」に当たることは明らかであり,同条項に違反する行為であるというほかはない。 4 次に,原告の本件増設行為が風営法26条1項所定の「著しく善良の風俗若 しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」場合に該当するかどうかについて検討するに,前記2で認定した事実によると,①本件増設行為は,客室数を1室から3室に,客室床面積を219.10平方メートルから647.47平方メートルに増加させた上,本件ゲーム機66台を設置するという するに,前記2で認定した事実によると,①本件増設行為は,客室数を1室から3室に,客室床面積を219.10平方メートルから647.47平方メートルに増加させた上,本件ゲーム機66台を設置するという大規模なものであった上,②原告は,平成20年6月26日にも,本件店舗について風営法9条1項に違反により刈谷署から指導を受けたことがあり,その際,法令遵守等を約した上申書を提出したにもかかわらず,利益追求のため,本件増設行為の違法性を十分認識しながら,再び本件増設行為に及んだものであるばかりか,③本件処分以前においても,原告は,平成16年以降,13件もの違反行為を繰り返し,風営法25条に基づく指示処分8件と同法26条1項に基づく営業停止処分1件を受けた経歴を有していたというのである。 これら諸点に照らすと,原告による本件増設行為は,常習性及び悪質性が高く,今後,原告が本件店舗において,違反行為を行わずに健全に風俗営業を続けていくことは期待し難いものといわざるを得ないから,風営法26条1項所定の「著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」場合に該当するというべきである。 5 以上によると,本件については,風営法26条1項所定の風俗営業許可取消処分の要件を充たすことは明らかであり,前記4で指摘した諸事情に照らすと,処分行政庁が原告に対して本件処分をしたことについて,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したということもできない。 したがって,本件処分は,適法である。 6 これに対し,原告は,①本件ゲーム機は,遊技することにより物的利益を得ることができないものであるから,風営法2条1項8号所定の遊技設備に該当しない,②原告が捜査に協力してきたこと等に照らすと,本件増設行為について は,①本件ゲーム機は,遊技することにより物的利益を得ることができないものであるから,風営法2条1項8号所定の遊技設備に該当しない,②原告が捜査に協力してきたこと等に照らすと,本件増設行為について悪質性はない,③本件処分は,原告と同様の増設行為を行っている風俗営業 者に対する対応との公平性,均等性を欠くものである,④本件処分は,法令上に根拠を有しない10パーセント規制に違反したことを理由としてされたものであるから,法的根拠に基づかないで行われた違法な処分である旨主張する。 しかしながら,上記①の点については,本件ゲーム機が風営法2条1項8号所定の遊技設備に該当することは,前記3で説示したとおりである。原告は,本件ゲーム機で遊技することによって直接に経済的対価を得られるものではないことを理由として同号所定の遊技設備に該当しない旨主張するものであるが,同号の文言,施行規則5条及び解釈運用基準第3の2の各規定の内容に照らせば,遊技設備そのものから経済的利益を獲得できないとしても,遊技設備が遊技結果の表示機能を有することにより,遊技結果について物品を賭けるなどして射幸心をそそるおそれのある遊技の用に供することができるものであれば,同号所定の遊技設備に該当するものというべきであるから,原告の上記主張は,採用することができない。 次に,上記②の点については,前記3で指摘した諸事情に照らすと,原告の指摘する事情を考慮しても,本件増設行為の悪質性を否定することはできないから,原告の上記主張も,採用することができない。 また,上記③の点については,本件全証拠を精査してみても,本件処分が他の風俗営業者に対する対応と比較して公平性,均等性を欠くと目すべき事情を肯認することはできないから,原告の上記主張は,採用することができない。 の点については,本件全証拠を精査してみても,本件処分が他の風俗営業者に対する対応と比較して公平性,均等性を欠くと目すべき事情を肯認することはできないから,原告の上記主張は,採用することができない。 さらに,上記④の点については,本件処分は,本件増設行為が風営法9条1項に違反するものとして,同法26条1項に基づいてされたものであり,法的根拠を欠くものでないことは明らかである。原告の指摘する解釈運用基準の10パーセント規制は,前記3で説示したとおり,店舗内におけるゲーム機営業としての外形的独立性が著しく小さい場合(具体的には,ゲーム機設置部分を含む店舗の1フロアの客の用に供される部分の床面積に対して,客の遊技の用に供される部分の床面積が占める割合が10パーセントを超えない場合)に は,例外的に風俗営業の許可を要しない扱いとする旨を定めたものにすぎず,本件店舗においては,10パーセント規制によっても,例外的に風俗営業許可を要しないとされる限度を大きく上回るゲーム機設置が行われていたというのであるから,風営法9条1項違反の結論を左右するものではない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官福井章代 裁判官笹本哲朗 裁判官山根良実 (別紙)関係法令等の定め 1 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条1項この法律において「風俗営業」とは,次のいずれかに該当する営業をいう。 1号ないし7号 《省略》 関係法令等の定め 1 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条1項この法律において「風俗営業」とは,次のいずれかに該当する営業をいう。 1号ないし7号 《省略》8号スロットマシン,テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し,又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)3条1項風俗営業を営もうとする者は,風俗営業の種別(前条第1項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて,営業所ごとに,当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。 9条1項風俗営業者は,増築,改築その他の行為による営業所の構造又は設備の変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。第5項において同じ。)をしようとするときは,国家公安委員会規則で定めるところにより,あらかじめ公安委員会の承認を受けなければならない。 25条公安委員会は,風俗営業者又はその代理人等が,当該営業に関し,法令又はこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において,善良の風俗若しくは清浄な 風俗環境を害し,又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは,当該風俗営業者に対し,善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要な指示をすることができる。 26条1項公安委員会は,風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要な指示をすることができる。 26条1項公安委員会は,風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき,又は風俗営業者がこの法律に基づく処分若しくは第3条第2項の規定に基づき付された条件に違反したときは,当該風俗営業者に対し,当該風俗営業の許可を取り消し,又は6月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。 2 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(以下「施行規則」という。)5条法第2条第1項第8号の国家公安委員会規則で定める遊技設備は,次に掲げるとおりとする。 1号スロットマシンその他遊技の結果がメダルその他これに類する物の数量により表示される構造を有する遊技設備2号テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字,文字その他の記号によりブラウン管,液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし,射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)3号フリッパーゲーム機4号前3号に掲げるもののほか,遊技の結果が数字,文字その他の記号又は物品により表示される遊技の用に供する遊技設備(人の身体の力を表示する遊技 の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)5号ルーレット台,トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技 の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)5号ルーレット台,トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備 3 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令2条法第9条第1項の内閣府令で定める軽微な変更は,営業所の構造及び設備に係る変更のうち,次に掲げる変更以外の変更とする。 1号建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第14号に規定する大規模の修繕又は同条第15号に規定する大規模の模様替に該当する変更2号客室の位置,数又は床面積の変更3号壁,ふすまその他営業所の内部を仕切るための設備の変更4号営業の方法の変更に係る構造又は設備の変更 4 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(以下「解釈運用基準」という。)第3 ゲームセンター等の定義について(法第2条第1項第8号関係) 1 《省略》 2 遊技設備本号は,「スロットマシン,テレビゲーム機その他の遊技設備で,本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)」を設置して客に遊技させる営業を対象とする。具体的な遊技設備は,施行規則第5条に定められている。 スロットマシン,テレビゲーム機等で遊技の結果が定量的に表れるもの又は遊技の結果が勝負として表れるものや,ルーレット台やトランプ台等賭博に用い られる可能性がある遊技設備は対象となるが,占い機で盤面にインプットすべき内容を指示する程度にとどまるもの等これら以外の遊技設備は,対象から除外される。また,遊技の結果 ンプ台等賭博に用い られる可能性がある遊技設備は対象となるが,占い機で盤面にインプットすべき内容を指示する程度にとどまるもの等これら以外の遊技設備は,対象から除外される。また,遊技の結果が定量的に表れ,又は遊技の結果が勝負として表れる遊技設備であっても,単に人の物理的力を表示するもの等については,「射幸心をそそる遊技の用に供されないことが明らかなもの」として対象から除外することとしているが,この規定は通常のインベーダーゲーム機等を対象から除外するという趣旨ではない。なお,①実物に類似する運転席や操縦席が設けられている「ドライブゲーム」,「飛行機操縦ゲーム」その他これに類する疑似体験を行わせるゲーム機(戦闘により倒した敵の数を競うもの等,運転や操縦以外の結果が数字等により表示されるものを除く。)②機械式等モグラ叩き機については,当面賭博,少年のたまり場等の問題が生じないかどうかを見守ることとし,規制の対象としない扱いとする。 (1) スロットマシンその他遊技の結果がメダルその他これに類するものの数量により表示される構造を有する遊技設備(施行規則第5条第1号)スロットマシンのほか,ぱちんこ遊技機,回胴式遊技機に類するもの等メダル,遊技球等の数量により遊技の結果が表示される遊技設備をいう。なお,法第2条第1項第7号の営業に用いられる遊技機を設置して営業する場合には,同号の営業の許可を要することとなるので,同号の営業に用いられる遊技機を設置している場合には,当該遊技機を撤去するか同号の営業に用いられる遊技機以外の遊技機に改めることによって営業させること。 (2) テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字,文字その他の記号によりブラウン管,液晶等の表示装置上に表 めることによって営業させること。 (2) テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字,文字その他の記号によりブラウン管,液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし,射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)(施行規則第5条第2号)ブラウン管,液晶等の表示装置に遊技内容が表示される遊技設備で,人間 と人間若しくは機械との間で勝敗を争うもの又は数字,文字その他の記号が表示されることにより,遊技の結果が表わされ,優劣を争うことができるものをいう。前者の例としては対戦型麻雀ゲーム,後者の例としてはインベーダーゲームが挙げられる。 (3) 《省略》(4) 前三号に掲げるもののほか,遊技の結果が数字,文字その他の記号又は物品により表示される遊技の用に供する遊技設備(人の身体の力を表示する遊技の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)(施行規則第5条第4号)遊技の結果が数字等で表示される遊技設備のうち,遊技の結果を数字等で表示し,その結果により優劣を争うもので,(1)から(3)までに掲げるものを除いたものをいう。このうち,人の身体の力を表示する遊技の用に供するものとは,投げた球のスピードを計測するもの,パンチの強さを計測するもの等,人の身体の能力を計測するものをいう。また,射幸心をそそるおそれのある遊技の用に供されないことが明らかであるものとは,同一の条件の下に繰り返し遊技したとしても結果に変わりがない遊技設備をいい,生年月日,血液型,自己の性格等を入力して遊技する占い機がこれに該当する。 (5) 《省略》 3 店舗その他これに類する区画 の下に繰り返し遊技したとしても結果に変わりがない遊技設備をいい,生年月日,血液型,自己の性格等を入力して遊技する占い機がこれに該当する。 (5) 《省略》 3 店舗その他これに類する区画された施設本号は,「遊技設備を備える店舗その他これに類する区画された施設」において当該遊技機を用いて客に遊技をさせる営業を対象とする。したがって,屋外にあるもの等「店舗その他これに類する区画された施設」に当たらない場所において客に遊技をさせる営業は,本号の対象とならない。また,本号の対象は,「店舗」及び「店舗に類する区画された施設」であるが,「店舗」に当たらない後者についてのみ令第1条の3の要件に当たるものを対象外とするものである。 (1) 店舗ア 《省略》イ風俗営業の許可を要しない扱いとする場合(以下,当該イによって定められた内容を「10パーセント規制」という。)アによれば,例えば,大きなレストラン等の店舗の片隅に1台のゲーム機を設置する場合にも風俗営業の許可を要することとなるが,この事例のように当該店舗内において占めるゲーム機営業としての外形的独立性が著しく小さいものについては,法的規制の必要性が小さいこととなる場合もあると考えられる。そこで,ゲーム機設置部分を含む店舗の1フロアの客の用に供される部分の床面積に対して客の遊技の用に供される部分(店舗でない区画された部分も含む。)の床面積(当該床面積は,客の占めるスペース,遊技設備の種類等を勘案し,遊技設備の直接占める面積のおおむね3倍として計算するものとする,ただし,1台の遊技設備の直接占める面積の3倍が1.5平方メートルに満たないときは,当該遊技設備に係る床面積は1.5平方メートルとして計算するものとする。)が占める割合が10パ 計算するものとする,ただし,1台の遊技設備の直接占める面積の3倍が1.5平方メートルに満たないときは,当該遊技設備に係る床面積は1.5平方メートルとして計算するものとする。)が占める割合が10パーセントを超えない場合は,当面問題を生じないかどうかの推移を見守ることとし,風俗営業の許可を要しない扱いとする。なお,「店舗の1フロア」とは,雑居ビル内の1つのフロアに複数の店舗があり,その中の1つの店舗にゲーム機を設置する場合には,そのフロア全体の床面積ではなく,当該店舗内のみをいう。また,「客の用に供される部分」には,カウンターやレジの内側等専ら従業員の用に供されている部分や洗面所等当該フロアとは完全に区画されている部分は含まない。 (2) 《省略》 5 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく指示及び営業停止命令等の基準(以下「処分基準」という。) 5 取消し次に掲げるときに取消しを行うものとする。 (1) 量定が取消しである処分事由があるとき。 (2) 《省略》(3) 《省略》別表量定基準処分事由量定法令名条項等法第9条第1項,第50条第1項第1号,第2号(構造・設備の無承認変更,偽りその他不正な手段による変更に係る承認の取得)《以下,省略》風俗営業許可の取消し《以下,省略》《以下,省略》《以下,省略》 処分事由量定法令名条項等法第9条第1項,第50条第1項第1号,第2号(構造・設備の無承認変更,偽りその他不正な手段による変更に係る承認の取得)《以下,省略》風俗営業許可の取消し《以下,省略》《以下,省略》《以下,省略》 係る承認の取得)《以下,省略》風俗営業許可の取消し《以下,省略》《以下,省略》《以下,省略》
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