昭和49(行ケ)1 市長選挙における選挙の効力に関する裁決取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和51年3月19日 仙台高等裁判所 秋田支部 選挙
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【DRY-RUN】○ 主文 一 昭和四八年三月八日執行の青森県五所川原市市長選挙の効力に関し原告らがし た審査の申立てに対し、被告が昭和四九年一月一六日にした審査申立て棄却の裁決 を取り消す。 二 右選挙を無効とする。

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○ 主文一昭和四八年三月八日執行の青森県五所川原市市長選挙の効力に関し原告らがした審査の申立てに対し、被告が昭和四九年一月一六日にした審査申立て棄却の裁決を取り消す。 二右選挙を無効とする。 三訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実第一申立て一原告らの求める裁判主文同旨の判決二被告の求める裁判「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決第二主張一原告らの請求原因 1 原告らは、昭和四八年三月八日執行の青森県五所川原市市長選挙(以下本件選挙という。)の選挙人である。原告Aは、同年三月二二日本件選挙の効力に関し青森県五所川原市選挙管理委員会(以下市委員会という。)に対し異議の申出をなし、市委員会から同年四月二五日異議申出棄却の決定書の交付を受けたので、原告らは、同年五月一〇日被告に対し本件選挙の効力に関する審査の申立てをしたところ、被告は、昭和四九年一月二二日原告らに対し右審査の申立てを棄却する旨の裁決書を交付した(原告らは、同年二月一八日本件訴えを提起した。)。 2 しかし、本件選挙には、次のような選挙の規定の違反及び選挙の自由公正が著しく阻害された事実があり、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあつて、本件選挙を無効とすべきである。 (一) 本件選挙の開票管理者は、開票所を開いた後開票立会人三人中二人(B及びC)が開票所から立去つたにもかかわらず、開票立会人を選任しないで開票事務を行ない開票を終了した(公職選挙法(以下法という。)六二条八項違反)。 (二) 本件選挙においては、正規の投票用紙が市委員会の定めた枚数以上に印刷(水増印刷)されて外部に流れ、これが不正な投票に使用された疑いが濃厚である。これは、投票日の翌日正規の投票用紙とみられる多数の投票用紙が投棄せられていた事実、投票用紙の印刷に立 めた枚数以上に印刷(水増印刷)されて外部に流れ、これが不正な投票に使用された疑いが濃厚である。これは、投票日の翌日正規の投票用紙とみられる多数の投票用紙が投棄せられていた事実、投票用紙の印刷に立会つた市委員会の委員の供述の変転、審査申立てに対する市委員会の弁明書のあいまいさ及び廃棄すべき用紙の処理方法の不自然等の事実から明らかであつて、このような不正は、選挙の規定違反に該当し、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある。 (三) 青森県五所川原市新町所在増田病院は公職選挙法施行令(以下令という。)五五条二項二号により指定された病院であり、同病院の院長Dは同号により不在者投票管理者であつたが、同人は、入院中の選挙人に対し自己が選挙責任者として記載してある本件選挙の候補者Eの選挙運動用通常葉書を交付して、法一三五条二項に違反して業務上の地位を利用した選挙運動を行なつた。これは、選挙の規定違反に該当する。かりにしからずとしても、市委員会は、不在者投票管理者たるDに対し違法な行為がないよう指導し、違法な行為があつたとぎは適切な措置をすべき義務があるのに、これを怠つた。これは、法六条一項に違反するものである。 (四) F、G、H、I、J及びKは、本件選挙の投票管理者に選任され、昭和四八年二月二五日その選任の告示がなされたものであるが、上記六名は、本件選挙の候補者Eの選挙運動用通常葉書に推せん人として名前を連ね、法一三五条一項に違反して、在職中、その関係区域において、選挙運動を行なつた。これは、選挙の規定違反に該当する。かりにしからずとしても、市委員会は、前記六名の投票管理者に対し違法な行為がないよう指導し、違法な行為があつたときは適切な措置をすべき義務があるのに、これを怠つた。これは、法六条一項に違反するものである。 (五) 本件選挙の梅沢第一投票所の 名の投票管理者に対し違法な行為がないよう指導し、違法な行為があつたときは適切な措置をすべき義務があるのに、これを怠つた。これは、法六条一項に違反するものである。 (五) 本件選挙の梅沢第一投票所の選挙人名簿抄本上中下三冊のうち上三七五名分及び下三五九名分並びに栄第一投票所の選挙人名簿抄本のうち七ツ舘三三九名分及び広田四七二名分については、投票事務従事者が選挙人に投票用紙を交付する際、右名簿抄本と対照して、確認印を押捺すべきであるのに、単に鉛筆で○印又は●印を記しただけの処理をしている。これは、令三五条一項に違反するものである。かりにしからずとしても、令三五条一項の確認が正規に行なわれず、○印又は●印がされている選挙人が来場しなかつたのに、それと同数の投票がなされているものであつて、この不正事実を隠蔽するため、正規の確認印を押捺せずに○印又は●印で処理したものである。 (六) 本件選挙の毘沙門第一投票所の投票管理者は、不在者投票に用いられた空の不在者投票用外封筒及び内封筒一〇四人分を、本来選挙長に送付すべきであるのに、投票当日右投票所内のストーブに投入し焼却した。このような行為は選挙に管理執行に関する規定に違反しているのみならず不在者投票が正規の手続によつて選挙人から送致されず、不正に個人が不在者投票をまとめて送付したので、これを受理すべきでないのに、違法に受理した不正事実を隠蔽するためになされた疑いが濃厚である。 (七) 本件選挙の候補者Eは、法一六三条に違反して市委員会に申出をせずに、昭和四八年二月二七日公営施設である梅田公民館・中泉公民館及び広田公民館において個人演説会を開催した。市委員会は、右開催を知りながら、中止を勧告し、警告する等の措置をとらなかつたものであり、これは市委員会が公明選挙の指導監督の義務を懈怠したものである。 び広田公民館において個人演説会を開催した。市委員会は、右開催を知りながら、中止を勧告し、警告する等の措置をとらなかつたものであり、これは市委員会が公明選挙の指導監督の義務を懈怠したものである。 (八) 市委員会は、令五三条一項一号の規定に違反して、令五〇条一項の規定によつて交付の請求を受けた投票用紙及び投票用封筒を選挙人に直接に交付し又は郵便をもつて発送せず、請求者数人分の投票用紙及び投票用封筒を一括してそのうちの一人の請求者に送付した。このように一括して送付した分は、九九二名分である。また、市委員会の一括送付分の中には、選挙人が交付の請求をしていないのに、何者かが本人の意思に関係なく請求し、右投票用紙が本人に交付されず本人への送付の通知もない例がある。以上のような違法な一括送付によつて、送付を受けた者が自己の支持しない候補者を支持する請求者への投票用紙等の交付を遅らせて投票の妨害をし、又は送付を受けた者が請求者になりすまして投票の偽造をする等の弊害が発生した。本件選挙における当選人と次点者との間の得票差は、三五四票であつて、前記のような一括送付の数からみると、その違法は、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある。 3 よつて、第一、一記載の裁判を求める。 二請求原因に対する被告の答弁 1 請求原因1の事実を認める。 2 (一)請求原因2(一)の事実を否認する。 (二) 同2(二)の事実を否認する。 (三) 同2(三)の事実中、原告主張の病院が令五五条二項二号により指定された病院で、院長Dが同号により不在者投票管理者であつたこと及び同人がE候補の選挙運動用通常葉書に選挙責任者として氏名が記載されこれが選挙人に頒布されていることを認める。しかしそれだけでは、同人が不在者投票に関し、特にその者の業務上の地位を利用して選挙運動をしたものと認めるこ 挙運動用通常葉書に選挙責任者として氏名が記載されこれが選挙人に頒布されていることを認める。しかしそれだけでは、同人が不在者投票に関し、特にその者の業務上の地位を利用して選挙運動をしたものと認めることはできないので、原告の主張は理由がない。 (四) 同2(四)の事実中、原告挙示のF他五名が本件選挙の投票管理者であつたこと、及び同人らがE候補の選挙運動用通常葉書に名を連ねていることは認める。しかし、右事実をもつてしては、選挙の管理執行の規定違反とはいえず、又法の基本理念に反する程度に選挙の自由公正が害れたとも認められない。 (五) 同2(五)の事実については、原告主張の処理が選挙の規定に違反するものではないし、原告主張の不正事実は否認する。 (六) 同2(六)の事実中、原告主張のとおり空の不在者投票用外封筒及び内封筒一〇四人分が焼却された事実は認める。しかし、右不在者投票については所定の審査が行なわれ適法に受理と決定されたもので、原告主張のような不正の事実は全くない。 (七) 同2(七)の事実中、原告主張の公民館が法一六一条一項一号の公営施設であることは認める。候補者Eが原告主張の日個人演説会を開催することについては、市委員会になんらの届出なく、従つて市委員会の全く関知しなかつたところである。 (八) 同2(八)の事実中、原告主張のいわゆる一括送付があつたこと及びその数を認め、その余の事実を否認する。市委員会が右のいわゆる一括送付をした理由は、郵送料等の経費の節減と選管事務の省力にあつたもので、その方法においても、同一居所に在る数人の請求者のうちから無作為に一人を選んで、この者に請求者全員の名を連記した送付書を添付したうえ不在者投票用紙等を郵送したものであり、すべて事務的に処理し、その間なんらの作為も加えられていない。そして、原告らは、選挙 無作為に一人を選んで、この者に請求者全員の名を連記した送付書を添付したうえ不在者投票用紙等を郵送したものであり、すべて事務的に処理し、その間なんらの作為も加えられていない。そして、原告らは、選挙人本人の意思に関係なく不在者投票用紙等が請求されたとか、一括送付を受けた者が他の者の投票を妨害したとかの事実があつたと主張するが、審査申立てを受けた際被告が、原告らの提出したものはもちろんその他あらゆる資料を調査したけれども、右のような事実の発生は全く発見できなかつた。また法四九条一号の事由による不在者投票用紙交付数のうちの、いわゆる一括送付分中の投票者数の割合(八三・七七パーセント)は、個別送付分中の投票者数の割合(八四・四九パーセント)と殆んど差異がなく、原告らのいう一括送付を受けた者が他の投票を妨害するおそれは、全くの杞憂にすぎないことが明らかである。結局、いわゆる一括送付が選挙の管理執行の規定に違背するとしても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれはなく、原告の主張は理由がない。 ○ 理由一原告らの請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。 二そこで、原告らの請求原因2の各項目について判断する。1 請求原因2(一)についていずれも成立に争いのない乙第二号証の二から六まで(開票管理者L、市委員会委員M、同N、市委員会事務局長心得O、開票立会人B及び同Pの各聴取書)によれば、本件選挙の開票立会人は、原告主張のB及びCを含め全員開票事務終了まで参会し立会つた事実を認めることができ、成立に争いのない乙第二号証の一(開票立会人Cの聴取書)中の同人の供述部分は、その内容に照らし措信できないし、証人Q及び同Rの各証言並びに成立に争いのない甲第九号証(新聞記事)も、右認定を左右するものではない。よつて、この点に関する原告の主張は採用することができない 分は、その内容に照らし措信できないし、証人Q及び同Rの各証言並びに成立に争いのない甲第九号証(新聞記事)も、右認定を左右するものではない。よつて、この点に関する原告の主張は採用することができない。 2 請求原因2(二)についていずれも印刷された投票用紙の紙片であることに争いのない甲第一号証の一から六一まで及び同第二号証の一から一〇七まで、証人S、同L、同M及び同Tの各証言並びにいずれも成立に争いのない乙第二号証の二、四及び七から一一まで(市委員会委員長L、市委員会委員M、市委員会事務局長心得O、陸奥印刷株式会社社長U、同会社機械長S及び同会社製本長Vの各聴取書)によれば、市委員会は、本件選挙の投票用紙として不在者投票用紙五〇〇〇枚、記号式投票用紙三万枚を印刷することを決定したが、前者は昭和四八年二月一七日市委員会の委員全員立会の下に、後者は同年三月一日委員長L、委員M及び同T立会の下に(委員Nは所用のため立会せず、また委員Tは長尾委員を待つていたため遅れて立会つた。)、いずれも訴外陸奥印刷株式会社において、前記枚数どおり印刷され、他に市委員会の決定した枚数を超えて印刷(いわゆる水増印刷)された事実はないことが認められる。 原告らは、前掲甲第一号証の一から六一まで及び同第二号証の一から一〇七までなどの投票用紙が紙屑として捨てられていたこと、投票用紙の印刷に立会つた委員の供述の変転(甲第六号証((昭和四八年第一回五所川原市議会定例会会議録抄本)))などを根拠に、いわゆる水増印刷がされた疑いが濃厚であると主張するが、前掲証拠によれば、右紙屑として捨てられていた紙片は、印刷途中で生じた試験刷り又は印刷の失敗による用紙を、立会つた委員の承諾の下に印刷会社機械長及び製本長が破りすて又は機械で裁断して使用不能にしたものであることが認められるので、 てられていた紙片は、印刷途中で生じた試験刷り又は印刷の失敗による用紙を、立会つた委員の承諾の下に印刷会社機械長及び製本長が破りすて又は機械で裁断して使用不能にしたものであることが認められるので、いわゆる水増印刷を疑うべき根拠とはならず、また委員の供述の変転なども、前掲証拠によれば、一部の記憶違いあるいは説明の不十分によるものと認められ、これまた不正事実を疑う理由とはならない。そして、古物商店に勤める証人Wは、同人が前記の紙片を発見したのは三月二日か三日頃である旨証言しており、更に成立に争いのない甲第八号証に照らし、証人Rは、前記印刷会社で投票用紙が印刷されたとする三月一日午後に出た紙屑等のごみは、三月五日にならなければ五所川原市の収集車で集められて前記Wの勤務している古物商に届けられることがないことを根拠に、原告らのいう水増印刷は三月一日前になされた疑いがあると述べるのであるが、前掲乙第二号証の二及び西によると、正規の投票用紙は市委員会の印がなければ印刷できないものであるところ、右印八個は、市委員会の委員全員による封印がなされた封筒に入れられて市委員会のキヤビネツト中に保管されており、本件選挙の告示日である昭和四八年二月二六日(成立に争いのない乙第三号証の二により認める。)以後は、委員Tが右キヤビネツトの鍵を持ち保管にあたつていたこと、そして三月一日前記の印刷がされた際は、右印在中の封筒の封印は完全であつたこと以上の事実が認められるのであつて、これらの事実によれば、前記証人Rのいう疑いも根拠が薄弱で、Wの証言も記憶違いから出たものと考えられるのであつて、前記の認定を左右するに足りない。そして、他に原告ら主張の不正事実を疑うべき証拠はないから、原告らのこの点に関する主張も採用するに由ないものである。 3 請求原因2(三)及び(四)につ のであつて、前記の認定を左右するに足りない。そして、他に原告ら主張の不正事実を疑うべき証拠はないから、原告らのこの点に関する主張も採用するに由ないものである。 3 請求原因2(三)及び(四)について青森県五所川原市新町所在増田病院が令五五条二項二号により指定された病院で、その院長Dは同号により不在者投票管理者であつたが、本件選挙の候補者Eの選挙運動用通常葉書に選挙責任者としてその氏名が記載され、これが選挙人に頒布された事実及びF、G、H、I、J、Kの六名が本件選挙の投票管理者として選任されていたのに、右E候補の選挙運動用通常葉書に推せん人として名前を連ねていた事実、以上については当事者間に争いがない。そして、右選挙運動用通常葉書が右Fら六名の投票管理者の関係区域においても選挙人に頒布されたことは容易に推認され、右六名の投票管理者が法一三五条一項によつて禁止されている選挙運動をしたことは認められるのであるが、本件の全証拠をもつてしても、不在者投票管理者たるDが、同条二項によつて禁止される業務上の地位を利用した選挙運動をしたことを認めるに足りない。しかして、原告らは、右法一三五条の違反は、選挙無効の原因である選挙の規定違反にあたると主張するのであるが、法二〇五条一項の選挙の規定違反とは、選挙の管理執行に関する規定の違反を意味し、法一三五条のような選挙運動の取締規定の違反を含まないと解すべきであるから、この点に関する原告らの主張は採用できない。しかしながら、選挙無効の原因には、管理執行に関する明文の規定に反しなくても、選挙執行機関が特定の候補者に対し偏頗な行為をし、それが著しく選挙の自由公正を害するに至つた場合を含むものと解すべきであるから、この点について検討を加える。投票管理者が投票に関する事務を担任し(法三七条四項)、選挙執行機関の 対し偏頗な行為をし、それが著しく選挙の自由公正を害するに至つた場合を含むものと解すべきであるから、この点について検討を加える。投票管理者が投票に関する事務を担任し(法三七条四項)、選挙執行機関の一部を構成すもものであることは疑いのないところである。しかし、投票管理者は、投票区毎に選任され(成立に争いのない乙第一号証によれば、本件選挙においては、三二の投票区が設けられている。)、その職権の行使については制度上投票立会人によつてその恣意的な行使が阻まれる仕組となつており(法四八条、五〇条等参照)、また選任の要件は選挙人であることのみであつて、その者の党派的な傾向等は選任の要件とはなつておらないのである(当庁昭和三一年六月二一日判決行政裁判例集七巻一一号二五四五頁参照)。そうであるとすれば、投票管理者であることによる影響力は限られたものであり、その言動であるからといつて、一般の選挙人が投票意思の決定につき強く左右されるものとはいいがたいものというべきであつて、これらの点については、不在者投票管理者もほぼ同様であると判断される(原告Xは、Dの影響力は多大である旨供述するが、同人の影響力は主として病院長であることによるのであつて、不在者投票管理者であることは、選挙人の投票意思の決定には、さほど影響しないというべきである。)。しかして、投票管理者等の選挙事務従事者は、一般に多数にのぼるのであつて、それぞれの偏頗な行為をすべて選挙無効の原因とすると、一部の者が選挙の無効を期待してあえて偏頗な行為をすれば、その者の望むとおりの結果を産み、民主制度そのものを破壊に導くおそれなしとしないのであつて、このような観点からすると、偏頗な行為があつても著しく選挙の自由公正が害されない限り選挙を無効とすべきではないのである。そして、本件においてみられる投票管理者 破壊に導くおそれなしとしないのであつて、このような観点からすると、偏頗な行為があつても著しく選挙の自由公正が害されない限り選挙を無効とすべきではないのである。そして、本件においてみられる投票管理者らの行為が、前記のとおり選挙運動用通常葉書に名を連ねる程度のものである以上、これをもつて選挙の自由公正を著しく害するに至つたものとはいえず、選挙を無効とすることはできない。また、原告らは、市委員会が法六条一項に違反したと主張するけれども、そのような事実を認めるべき証拠はなく、この点についても、原告らの主張は採用できない。 4 請求原因2(五)について原本の存在及び成立に争いのない甲第四号証の一から二一まで及び同第五号証の一から二三まで(選挙人名簿抄本表紙及び内容)並びに弁論の全趣旨によれば、原告ら主張の選挙人名簿抄本について、名簿対照の確印がなく、単に鉛筆で○印又は●印を記しただけの処理がなされていることが認められる。しかし、いずれも成立に争いのない乙第二号証の一四から一六まで(栄第一投票所の投票事務従事者Y、梅沢第一投票所の同Z及び同P1の各聴取書)によれば、右○印又は●印で処理したものでも選挙人の名簿対照確認は、適式に行なわれていた事実を認めることができ、右認定を左右すべき証拠はない。しかして、名簿対照確認をしたものにつき確認印を押捺することは、望ましいことではあるが、それがなく右のように処理したとしても、令三五条一項に違反するものとは解されないから、この点に関する原告らの主張も採用できない。 5 請求原因2(ハ)について原告主張の投票所において、不在者投票に用いられた空の不在者投票用外封筒及び内封筒一〇四人分が、投票当日投票所内のストーブに投入され焼却された事実は、当事者間に争いがない。原告らは、これは、不在者投票管理者から送致された て、不在者投票に用いられた空の不在者投票用外封筒及び内封筒一〇四人分が、投票当日投票所内のストーブに投入され焼却された事実は、当事者間に争いがない。原告らは、これは、不在者投票管理者から送致されたものでない不在者投票を不正に受理した事実を隠蔽するためになされたものである旨主張するが、証人P2及び同P3の各証言及び乙第二号証の一七から二〇まで((毘沙門第一投票所の記録係P3、同投票所の立会人P4、同投票所の投票管理者P2及び同投票所の立会人P5の各聴取書)によれば、原告主張のような不正事実は認められない。証人P6は、封筒に不在者投票管理者名の記載又はその封印のないものがありこれを指摘したのに投票管理者らがこれを無視して強引に焼却した旨証言するが、反対尋問においては、被告による調査の際には、不在者投票管理者名の記載のない封筒があつたことは述べなかつたと証言しており、同人の証言はそれ自体信用性が薄く、前記の認定を左右するに足りないし、他に右認定を動かすべき証拠はない。そして、右封筒の焼却は、令四五条に違反したものであるが、右認定の事実からすると、選挙の結果に異動を生ずるおそれありと認定するに足りないものと判断される。そうとすれば、この点に関する原告の主張も理由なきに帰する。 6 請求原因2(七)について候補者が法一六三条に違反して公営施設で個人演説会を開催した事実を、選挙管理委員会が知りながら、その中止を勧告し又は警告を発する措置をとらなかつたとしても、選挙の管理執行に関する規定に違反したものとはいえず、原告らの主張は採用するに由ないものである。 7 請求原因2(八)について市委員会が令五〇条一項の規定によつて交付の請求を受けた投票用紙及び不在投票用封筒等を、数人分一括してそのうちの一人の請求者宛に送付したこと及びその数が九九二名分である 7 請求原因2(八)について市委員会が令五〇条一項の規定によつて交付の請求を受けた投票用紙及び不在投票用封筒等を、数人分一括してそのうちの一人の請求者宛に送付したこと及びその数が九九二名分であることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一三号証並びに証人O及び同P7(第一及び第二回)の各証言によると、送付の方法は、右数人分の不在者投票用紙等に、それらの者の氏名住所を記入した送付書をそえて、そのうちの一人宛に郵送したものであり、その件数は三六九件、そのうち不在者投票をしたものは、三一三件八三一名であつたことが認められる。令五三条一項一号は、令五〇条一項の場合にあつては、選挙人に直接に交付し、又は郵便をもつて発送しなければならない旨を規定しているのであるから、右のような一括送付は、この規定に違反していることが明らかである。しかして、証人R及び原告Xは、右のような一括送付が特定の候補者の支持者宛になされていると証言又は供述するのであるが、成立に争いのない乙第二号証の四並びに証人O及び同P7(第一回)の証言によれば、一括送付の宛先を決めるについて、抽選等の特別の方法がとられたわけではないけれども、ほぼ無作為的になされたことが認められ、右の証言又は供述どおりの事実を認めるべき証拠はない。 しかしながら、原告らは、右一括送付分の中には、選挙人が交付の請求をしていないのに、何者かが本人の意思に関係なく請求した等の例があると主張するので、不在者投票用紙等の請求の受理手続について検討するに、前掲乙第二号証の四及び証人Oの証言によれば、本件選挙においては、一人の者が選挙人の使者と称して一度に四〇〇人から五〇〇人分(乙第二号証の四では、九百数十枚とか五百数十枚とかの宣誓書及び請求書を持参したと述べている。)の請求をしてきたことがあり、そのような請 、一人の者が選挙人の使者と称して一度に四〇〇人から五〇〇人分(乙第二号証の四では、九百数十枚とか五百数十枚とかの宣誓書及び請求書を持参したと述べている。)の請求をしてきたことがあり、そのような請求をしてきた者は二人であるが、それ以下の請求者数(枚数)のものはさらに多数あつたものであるところ、市委員会では、宣誓書等の書類さえととのつておれば、右の使者と称するものに対し、請求者本人からいつどのように請求を依頼されたかについて個々具体的に確認することなく、これを受理していた事実を認めることができる。証人P7は、その第一回及び第二回の尋問において、使者であることの確認は、宣誓書の代理記載人氏名欄にその使者と称する者の署名(第一回の証言では署名捺印)をさせて行なつていたと証言するのであるが、成立に争いのない甲第一二号証の一の一から四四の五まで(本件選挙における「不在者投票用紙及び同封筒の送付について」と題する送付書、宣誓書及び請求書の一部)の中には、右証言どおり署名されたものではなく、うち二枚の宣誓書の代理記載人氏名欄に請求者と異なる印影が認められるのみであるばかりでなく、本来右の代理記載人とは宣誓者に代つて宣誓書を記載した者を意味することは明らかで、右証言どおりとすれば、かえつて混乱を生じさせることとなり、そのような取り扱いが市委員会でなされていたとは考え難いのであつて、右証言は、措信するに足りないというべきである。しかして、不在者投票用紙等の請求が使者と称する者からなされた場合には、単に宣誓書等の書類がととのつていることを審査するのでは足りず、右使者による請求が本人の意思に基づくことの十分な確認を必要とするのであつて(令五〇条一項。仙台高等裁判所昭和四九年四月二四日判決高等裁判所判例集二七巻二号一二四頁)、前記の受理手続は、この点において 者による請求が本人の意思に基づくことの十分な確認を必要とするのであつて(令五〇条一項。仙台高等裁判所昭和四九年四月二四日判決高等裁判所判例集二七巻二号一二四頁)、前記の受理手続は、この点において欠けるところがあつたといわねばならない。そして、証人Oの証言によれば、前記の一括送付は、個別に請求があつたものには行なわず、使者により一括して請求のあつたものについてのみ行なつたことが認められ、この認定を左右すべき証拠はない。 そこで、以上の管理執行に関する規定の違反が、本件選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあつたかどうかについて検討する。原告らは、違法な一括送付によつて、投票の妨害あるいは偽造の弊害が発生したと主張し、証人Rの証言及び原告Xの本人尋問の中には、一部右主張にそう部分もあるが、その具体的な裏付けに欠け、右弊害の発生の事実を個々具体的に認定するについては、不十分であるといわねばならず、他方被告は、一括送付分中の投票者数の割合が、個別送付の場合のそれとほぼ同数であること(前掲乙第一三号証により、被告の主張どおりであることが認められる。)、その他の被告の調査によつて、原告らの主張する弊害が杞憂にすぎないものと主張するのであるが、これまた証人P7の証言(第一及び第二回)によれば、被告又は市委員会において、一括送付分の個々の請求者等につき、具体的に調査したものでないことが認められ、その他の立証によつても、被告の主張する如く杞憂にすぎないものと認めるには不十分であるといわねばならない。そもそも、不在者投票の手続について、令五〇条以下の厳格な規定が定められているのは、選挙人本人の意思によつて投票されることを確保するためであり、些細な手続上の誤りは別として、このような手続的な保証を欠く投票は、本人の意思によるものであることが他の手段で立証されない れているのは、選挙人本人の意思によつて投票されることを確保するためであり、些細な手続上の誤りは別として、このような手続的な保証を欠く投票は、本人の意思によるものであることが他の手段で立証されない限り、有効な投票として候補者の得票に算入されてはならないのである。前記のような受理手続及び投票用紙等の交付手続の規定違反が、些細な手続上の誤りにすぎないものとはとうてい言えないばかりでなく、前記5に記したように不在者投票に用いられた封筒の一部は焼却されていて、これに記載されてある選挙人の署名等(令五六条一項及び五七条一項参照)により不正事実の存否を調査することは不可能となつており、また前記の一括送付が法四九条一号の事由による請求があつたものについてのみなされたことは前掲乙第一三号証により認められ、この一括送付に係る不在者投票の大部分は、登録市町村以外の市町村においてなされたものと考えられるのであるが、通常選挙人との面識のないその市町村の不在者投票管理者及び立会人の面前では、不正が露見することはまれで、この面においても、前記の一括送付に係る不在者投票については、選挙人本人の投票であることの手続上の保証が十分でないと評価せざるを得ないのである。 そうであるとすれば、少なくとも前記の一括送付に係る不在者投票数八三一名分中その送付の宛先である三一三人分を差し引いた残五一八名分は、候補者の得票に算入することができないものであつたというべきである。 しかして、本件選挙における当選者と次点者の得票差が三六二票であることは、成立に争いのない乙第三号証の二により認められるところであつて、前記の違法な一括送付によつて故意又は不注意により不在者投票用紙等の本人への交付が遅れ投票が不可能となつた可能性や、請求の受理手続において、使者につき実質的な審査が行なわれていれば ところであつて、前記の違法な一括送付によつて故意又は不注意により不在者投票用紙等の本人への交付が遅れ投票が不可能となつた可能性や、請求の受理手続において、使者につき実質的な審査が行なわれていれば請求が受理されず、ひいては不在者投票ができなかつた者がありうる可能性に言及するまでもなく、前記管理執行に関する規定の違反により、本件選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあつたと認定することができるのであつて、この認定を左右すべき証拠は発見できない。 三以上認定判断したところによれば、原告らの本訴請求は理由がありこれを認容すべきであるから、被告のした裁決は取り消し、本件選挙はこれを無効とすべきである。 訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条及び民事訴訟法八九条を適用する。 (裁判官西村四郎萩原昌三郎浅生重機)

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