主 文 1 被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,連帯して,原告 Aに対し,1410万3858円及びこれに対する平成17年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,連帯して,原告 Bに対し,1900万7735円及びこれに対する平成17年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,連帯して,原告 Cに対し,1900万7735円及びこれに対する平成17年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らの被告中部電力に対する請求をいずれも棄却する。 5 原告 A の被告中部プラントサービス及び被告太平電業に対するその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用のうち,原告 A に生じた費用の5分の1,原告 Bに生じた費用の2分の1,原告 Cに生じた費用の2分の1及び被告中部プラントサービスに生じた費用の10分の7を被告中部プラントサービスの負担とし,原告 A に生じた費用の5分の1,原告 Bに生じた費用の2分の1,原告 Cに生じた費用の2分の1及び被告太平電業に生じた費用の10分の7を被告太平電業の負担とし,原告 A に生じたその余の費用,被告中部プラントサービスに生じた費用の10分の3,被告太平電業に生じた費用の10分の3及び被告中部電力に生じた費用の2分の1を原告 A の負担とし,被告中部電力に生じた費用の4分の1を原告 Bの負担とし,被告中部電力に生じた費用の4分の1を原告 Cの負担とする。 7 この判決は,第1項,第2項及び第3項に限り,仮に執行することがで きる。 事実 及び 担とし,被告中部電力に生じた費用の4分の1を原告 Cの負担とする。 7 この判決は,第1項,第2項及び第3項に限り,仮に執行することがで きる。 事実 及び理由第1 当事者の求める裁判 1 請求の趣旨(1)被告らは,連帯して,原告 A に対し,3801万5470円及びこれに対する平成17年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告らは,連帯して,原告 B及び原告 Cに対し,各1900万7735円及びこれに対する平成17年6月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)訴訟費用は,被告らの負担とする。 (4)(1),(2)につき仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する被告らの答弁(1)原告らの請求をいずれも棄却する。 (2)訴訟費用は,原告らの負担とする。 第2 事案の概要本件は,有限会社野口工業(以下「野口工業」という。)の従業員として被告中部電力の浜岡原子力発電所(以下「浜岡原発」という。)においてメンテナンス業務に従事していた D が腹膜原発悪性中皮腫により死亡したことについて, Dの妻子である原告らが, Dは被告らの安全配慮義務違反又は被告中部電力が所有する工作物である浜岡原発の瑕疵によるアスベストばく露によって死亡したと主張して,被告らに対し,債務不履行又は不法行為(被告中部電力につき民法709条,717条,その余の被告につき民法709条)による損害賠償として,原告ら合計で7603万0940円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求する事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)(1)当事者等ア Dについて れに対する遅延損害金の支払を請求する事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)(1)当事者等ア DについてDは,昭和41年2月25日に出生し,同61年9月29日,野口工業に入社した。 Dは,平成17年6月8日,腹膜原発悪性中皮腫により死亡した。 イ原告らについて(ア)原告 A は, Dの妻である。 (イ)原告 B及び原告 Cは, Dの子である。 ウ被告らについて(ア)被告中部電力について被告中部電力は,静岡県を含む中部5県において電気事業を営む株式会社であり,静岡県御前崎市 a番地に浜岡原発を所有して,昭和51年3月より原子力発電の営業運転を開始している。 (イ)被告中部プラントサービスについて被告中部プラントサービスは,火力・原子力発電所の建設・補修工事・運転関係業務,機械・電気・管工事等を業とする株式会社である。被告中部プラントサービスは,被告中部電力から浜岡原発のメンテナンス業務を継続的に請け負っていた。 (ウ)被告太平電業について被告太平電業は,原子力発電所等各種発電所の建設及び補修工事を業とする株式会社である。被告太平電業は,被告中部プラントサービスから浜岡原発のメンテナンス業務を継続的に請け負っていた。 (エ)野口工業について 野口工業は,被告太平電業から浜岡原発のメンテナンス業務を継続的に請け負っていた。 (2)浜岡原発の設備についてア浜岡原発には,1号機から5号機まで五つのプラントが存在する。 イ発電の中心となる原子炉においては,地震や津波等の自然災害によって自動停止した後においても燃料の中に蓄積された核分裂生成物によって余熱 には,1号機から5号機まで五つのプラントが存在する。 イ発電の中心となる原子炉においては,地震や津波等の自然災害によって自動停止した後においても燃料の中に蓄積された核分裂生成物によって余熱が発生することから,原子炉及びその周辺機器が熱に耐え切れずに損傷する危険を回避するため,余熱を冷やす設備が設けられている。 上記設備として,①原子炉建屋内に設置された「余熱除去ポンプ」により,冷却用配管に水を送り込み,原子炉圧力容器等の原子炉自体の余熱を冷却する「余熱除去系」と呼ばれる設備(以下,配管等の付属設備を含めて「余熱除去ポンプ」という。)と,②原子炉建屋外に設置された「原子炉機器冷却海水ポンプ」により,海水を原子炉機器冷却水熱交換器に送り込み,各種原子炉機器を冷却する「原子炉機器冷却系」と呼ばれる設備(以下,配管等の付属設備を含めて「原子炉機器冷却海水ポンプ」という。)がある。また,浜岡原発には焼却炉,サンプポンプ,収集ポンプ等の設備(以下「焼却炉等設備」という。)がある。 ウ余熱除去ポンプ,原子炉機器冷却海水ポンプ及び焼却炉等設備に使用されていたシール材の一部にアスベストを含有するガスケットやパッキンが使われていた(具体的な箇所,時期については争いがある。)。 (3)作業内容についてア野口工業は,浜岡原発内の余熱除去ポンプ,原子炉機器冷却海水ポンプ及び焼却炉等設備を含む補機(原子炉機器冷却海水ポンプに係る作業を請け負っていたか否かについては争いがある。)の保守点検作業を請け負っており, Dは,野口工業の従業員として他の従業員と共に平成16年8 月まで上記作業に従事していた。 イ浜岡原発内には放射線管理区域が設定されており,同区域においては,作業場所の放射線レベルと作業内容に応じて,①放射 として他の従業員と共に平成16年8 月まで上記作業に従事していた。 イ浜岡原発内には放射線管理区域が設定されており,同区域においては,作業場所の放射線レベルと作業内容に応じて,①放射性物質による汚染が一定以上となる黄服エリアと,②上記汚染が低レベルに留まる青服エリアが定められている。 黄服エリアにおける作業では,「放射性物質除去のためのクリーンハウス」(以下「クリーンハウス」という。)が設営され,作業者はその内部で作業する。クリーンハウスには,高性能フィルター付き局所排気装置が設置され,作業者は汚染防護服及び高性能フィルター全面マスクを着用する。 (4) Dの発症及び死亡についてDは,平成16年8月30日,腹部の異常を訴え,社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院(以下「聖隷浜松病院」という。)消化器科に入院し,腹膜原発悪性中皮腫と診断された。その後, Dは,榛原総合病院に転院した後,平成17年6月8日,上記疾患を原因として死亡した。 Dは死亡時39歳であった。 2 争点及び争点に対する当事者の主張(1)争点ア Dの作業内容及びアスベストばく露の可能性イ被告らの安全配慮義務の有無及びその内容,安全配慮義務違反の有無ウ被告らの安全配慮義務違反と Dの死亡との間の因果関係の有無エ被告中部電力の工作物責任の有無オ損害の発生及びその額(2)争点に対する当事者の主張ア争点ア( Dの作業内容及びアスベストばく露の可能性)について (原告らの主張)(ア)作業内容についてa 概括的な作業内容Dは,主に,浜岡原発1ないし4号機の「補機」と呼ばれる部分の定期点検作業(1年に1度行われる検査)に従事していた。 らの主張)(ア)作業内容についてa 概括的な作業内容Dは,主に,浜岡原発1ないし4号機の「補機」と呼ばれる部分の定期点検作業(1年に1度行われる検査)に従事していた。 具体的には,放射線管理区域内にある余熱除去ポンプ及び放射線管理区域外にある原子炉機器冷却海水ポンプの保守点検及び部品の交換作業等に従事していた。 b 概括的な作業箇所現時点で存在する記録上明らかな作業は定期点検に基づくものであるところ,ほぼ同一の作業を同一の作業態様で毎年継続して行っていたことから, Dは,以下の箇所について,ガスケット,パッキン等(いずれもアスベスト含有製品)の交換作業を行っていた(以下,各箇所を「作業箇所(a)①ⅰ」「作業箇所(e)②ⅵ」のようにいい,これらの各作業を併せて「本件各作業」という。)。 (a)1号機関連① 余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ本体内のバルブ(弁)ボンネット部分や配管との接合部分に使用されていたガスケット並びに入口配管及び「除洗座フランジ」に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン② 原子炉機器冷却海水ポンプ関係ⅰ ポンプ本体の可動部分及び付属配管に使用されていたガスケット及びパッキンⅱ 「自圧水ストレーナ」に使用されていたグランドパッキン及 び「サイクロンセパレータ」に使用されていたパッキン(なお,この部位については平成4年3月ころまでアスベスト含有製品が使用されていた。)ⅲ 付属配管に使用されていたフランジパッキン(なお,この部位については平成4年2月ころまでアスベスト含有製品が使用されていた。)ⅳ 付属弁のボンネット部分と弁箱との接触面に使用されていたシートパッキン(b)2号機関連 (なお,この部位については平成4年2月ころまでアスベスト含有製品が使用されていた。)ⅳ 付属弁のボンネット部分と弁箱との接触面に使用されていたシートパッキン(b)2号機関連余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ本体内のバルブ(弁)ボンネット部分や配管との接合部分に使用されていたガスケット及び「スプール配管」のフランジ部分に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン並びに「メカシールクーラー冷却水」に使用されていたシートパッキン(c)3号機関連① 余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ入口配管及びポンプ出口配管に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン② 原子炉機器冷却海水ポンプ関係ⅰ ポンプ本体の可動部分及び付属配管に使用されていたガスケット及びパッキンⅱ 「自圧水ストレーナ」に使用されていたグランドパッキン(な お,この部位については現在もアスベスト含有製品が使用されている。),付属配管に使用されていたパッキン(なお,この部位については平成3年6月ころまでアスベスト含有製品が使用されていた。)及び付属弁の接触面に使用されていたガスケット(d)4号機関連① 余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ入口配管及びポンプ出口配管に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたシートパッキン② 原子炉機器冷却海水ポンプ関係ⅰ ポンプ本体の可動部分及び付属配管に使用されていたガスケット及びパッキンⅱ 付属弁のボンネット部分と弁箱との接触面に使用されていたシートパッキン(なお,この部位については平成10年11月ころまでアスベスト含有製品が使用されていた。)及び付属弁のグラン 及びパッキンⅱ 付属弁のボンネット部分と弁箱との接触面に使用されていたシートパッキン(なお,この部位については平成10年11月ころまでアスベスト含有製品が使用されていた。)及び付属弁のグランド部分に使用されていたガスケット(e)その他① 焼却炉の配管継ぎ目に使用されていたガスケット② 以下のサンプポンプ(槽に溜まった水を外に排出するためのポンプ)及び収集ポンプ(槽に水を溜めるためのポンプ)の配管接合部分のガスケット及び弁の部分のグランドパッキンⅰ 1号機の原子炉建屋内に設置された「機器ドレンサンプポンプ」,「床ドレンサンプポンプ」及び「油ドレンサンプポンプ」ⅱ 3号機のタービン建屋内に設置された「T/BSDサンプポ ンプ」ⅲ 3号機のタービン建屋内に設置された「T/BHCWサンプポンプ」ⅳ 2号機の原子炉建屋内に設置された「DWサンプポンプ」ⅴ 3号機の補助建屋内に設置された「HCWサンプルポンプ」ⅵ 3号機の補助建屋内に設置された「HCW収集ポンプ」(イ)具体的な作業方法についてa ポンプ本体に関する作業方法について(a) Dは,ポンプ本体と配管の接合部分(フランジ部分)に使用されていたガスケット及びポンプ本体のバルブ(弁)に使用されていたグランドパッキンの交換作業に従事していた。 (b)フランジ部分に装着されたガスケットは,ボルトで圧着されているためスクレイパー(「鉄の爪」とも呼ばれる。)を使って剥がすことになる。その際,ガスケットのかすを残すことも,フランジ面を傷つけることも液漏れの原因になるため,細かな剝離作業が必要になる。そのため,最終的な仕上げ作業においては, Dは,作業箇所に顔を近接させて作業していた。 (c)また,バルブ(弁)はフランジ部分よりも けることも液漏れの原因になるため,細かな剝離作業が必要になる。そのため,最終的な仕上げ作業においては, Dは,作業箇所に顔を近接させて作業していた。 (c)また,バルブ(弁)はフランジ部分よりも複雑な構造になっており,交換にあたってはより慎重な作業が要求され,必然的に作業時間は長くなった。 (d)放射線管理区域外においては,平成12年ころまで防じんマスクを着用せずに上記のような作業が行われていた。 b 付属小口径配管に関する作業方法について(a) Dは,ポンプに接続された配管同士の接合部分に使用されていたガスケット,付属配管内の付属弁,弁ボンネット及び弁グランド 部分に使用されていたガスケット及びグランドパッキンの交換作業に従事していた。 (b)配管同士の接合部分における作業内容は原告らの主張(イ)a(b)と同様である。 (c)付属配管内の付属弁,弁ボンネット及び弁グランド部分における作業内容は,原告らの主張(イ)a(c)と同様である。 (d)放射線管理区域外においては,平成12年ころまで防じんマスクを着用せずに上記のような作業が行われていた。 (ウ)作業時におけるアスベストばく露の可能性a 放射線管理区域内での作業中におけるアスベストばく露(a)汚染水以外の水(海水,脱塩水,用水など)を使用するポンプの分解・点検作業は青服エリアとなり,クリーンハウスは設置されていない。 Dは,そこで作業をした際に,アスベスト粉じんのばく露を受けた。 (b)また, Dは,他の業者が他のポンプに使用されていたガスケットやグランドパッキンの交換作業を行っていた際に発生したアスベスト粉じんのばく露を受けた。 b 放射線管理区域外での作業中におけるアスベストばく露(a)放射線管理区域外に設置された原子炉機 トやグランドパッキンの交換作業を行っていた際に発生したアスベスト粉じんのばく露を受けた。 b 放射線管理区域外での作業中におけるアスベストばく露(a)放射線管理区域外に設置された原子炉機器冷却海水ポンプにおけるアスベスト含有製品(ガスケット及びパッキン)は,1年に1回,定期点検の際に交換することになっていた。 (b)ガスケット及びパッキンの交換作業の方法は上記(イ)a,bのとおりであるところ,特にフランジ部分に錆が発生した場合には,ガスケットを剥がした後,グラインダーを使用して錆を剥がすこともあった。 グラインダーを使用する際には,粉じんが撒き上がり,その中には,錆の部分に加え,付着していたガスケットのかす(アスベストを含む。)等の粉じんも含まれていた。 このような粉じんが撒き上がる作業をする際には,被告らよりゴーグルやマスクの着用が指示されており, Dもゴーグルやマスクを着用したり,頭巾を着用したりすることもあった。 しかし,そこで支給されていたマスクは,アスベスト粉じんの吸入を完全に遮断できない簡易な防じんマスクであった。 (c)そのため, Dは,定期点検作業におけるガスケット及びグランドパッキンの交換作業中にアスベストを吸引した。 (d)なお,放射線管理区域外での作業においても防じんマスクの着用が義務付けられるようになったのは, Dが被告太平電業の下で粉じん特別教育を受講した平成12年9月12日以降である。また,フランジ部分等に付着したガスケットを剥離するため,ガスケットリムーバーという剥離剤を使用するようになったのも,このころからである。 (被告らの主張)(ア)作業内容についてa 概括的な作業内容(a)被告中部電力Dが従事していた具体的な作業内容につい 使用するようになったのも,このころからである。 (被告らの主張)(ア)作業内容についてa 概括的な作業内容(a)被告中部電力Dが従事していた具体的な作業内容については不知。 (b)被告中部プラントサービス及び被告太平電業Dは,余熱除去ポンプの保守点検及び部品の交換作業に従事していたものである(被告中部プラントサービスにおいては従事の可能性を認める。)。しかし,被告太平電業が野口工業に原子炉機器 冷却海水ポンプについての作業を発注した実績はなく, Dが上記ポンプの保守点検及び部品の交換作業に従事した事実はない。 b 概括的な作業箇所(a)被告中部電力及び被告中部プラントサービス① 作業箇所(a),(c)及び(d)の各①,同(b)並びに作業箇所(a),(c),(d)の各②のうちⅰ以外の箇所におけるパッキン・ガスケット等のアスベストの含有及びその使用状況については認める(ただし,作業箇所(a)②ⅱ及び(c)②ⅱのパッキンについては,アスベスト含有製品を使用していた時期が若干異なる。)。 ② 作業箇所(a),(c),(d)の各②ⅰについては,1号機については昭和59年から,3号機及び4号機については,それぞれの運転開始時からアスベスト非含有のシール材を使用している。 ③ 作業箇所(e)①については,アスベスト含有製品はわずか9個に留まる。 ④ 作業箇所(e)②ⅰ,ⅲないしⅵの各ポンプについてはそれぞれ以下の日に,分解点検を実施した。各ポンプにはアスベスト含有製品であるガスケット,グランドパッキンが使用されている。 上記ⅰの各ポンプ 平成14年5月21日上記ⅲのポンプ 平成15年12月8日上記ⅳのポンプ 平成16年4月13日 ,グランドパッキンが使用されている。 上記ⅰの各ポンプ 平成14年5月21日上記ⅲのポンプ 平成15年12月8日上記ⅳのポンプ 平成16年4月13日上記ⅴのポンプ 同年6月14日上記ⅵのポンプ 同年6月24日他方,作業箇所(e)②ⅱのポンプについては,平成14年7 月26日,T/BSDサンプポンプが入っているタンクの点検(分解は伴わないもの)を実施しており,その際に,T/BSDサンプポンプの配管の取外し・取付けを行った。 ⑤ Dが本件各作業に従事したことについては不知。 (b)被告中部電力また,本件各作業には, Dの他にも複数の野口工業の作業員が従事していたのであり, Dが担当したのは,パッキン・ガスケット等の交換作業のごく一部である。 (c)被告中部プラントサービスDが同一の作業を同一の作業態様で毎年継続して行っていたかは明らかでない。 (d)被告太平電業現時点で存在する記録上明らかな作業が定期点検に基づくものであって,ほぼ同一の作業を同一の作業態様で毎年継続して行っていたと推測されることは争わない。ただし, Dは数名いる野口工業の作業員の一員であるに過ぎず,各作業においてパッキン・ガスケットの交換作業を Dが専ら一人で担当していた事実はない。 (e)被告中部プラントサービス及び被告太平電業被告太平電業が野口工業に原子炉機器冷却海水ポンプについての作業を発注した実績は無く, Dが作業箇所(a),(c),(d)の各②記載の箇所に係る作業を行った事実はない。 (イ)具体的な作業方法についてa 被告中部電力不知又は争う。 b 被告中部プラントサービス及び被告太平電 ),(d)の各②記載の箇所に係る作業を行った事実はない。 (イ)具体的な作業方法についてa 被告中部電力不知又は争う。 b 被告中部プラントサービス及び被告太平電業 (a)原告らの主張(イ)a,bの各(a)記載の交換作業も存在するが,以下のとおり,粉じんの飛散はほとんどない。 (b)作業の具体的方法ⅰ ガスケット(うず巻形ガスケット)についてうず巻形ガスケットは,その構造からすれば,フランジ面に固着しにくく,清掃しやすいため,ガスケットの交換は容易なものとなっている。 うず巻形ガスケットの取り外し作業は,①ボルト・ナットを緩めて配管を取り外した後(配管の大きさ等にもよるが,概ね10分から30分程度),②配管接合部分(フランジ部分)のうず巻形ガスケットをスクレイパーを使用して取り外し(①により自然に外れてしまうことも多く,自然に外れない場合であっても,手やスクレイパーにより数秒で取り外すことができる。),③ナイロンたわしやサンドペーパーなどを使用して,フランジ面を清掃する(2分から3分程度)という工程である。 ⅱ シートパッキン(ジョイントシートパッキン又はガスケット)浜岡原発で使用されているジョイントシートパッキンは,クリソタイル石綿,ゴム等を均一に混合し,加熱圧縮したシート状の加工済みの製品であり,交換作業中に加工等を行うことはなく,基本的にはフランジ面に固着せず,粉じんを飛散することはほとんどない。 ジョイントシートパッキンの取り外し作業は,①ボルト・ナットを緩めて配管を取り外した後(配管の大きさ等にもよるが,概ね10分から30分程度),②配管接合部分(フランジ 部分)のジョイントシートパッキンをスクレイパーを使用して取り外し(基 ・ナットを緩めて配管を取り外した後(配管の大きさ等にもよるが,概ね10分から30分程度),②配管接合部分(フランジ 部分)のジョイントシートパッキンをスクレイパーを使用して取り外し(基本的にはフランジ面に固着しないものの,交換周期が長い場合にはフランジ面に張り付くことがあるため,1分から5分程度),③ナイロンたわしやサンドペーパーなどを使用して,フランジ面を清掃する(5分から10分程度)という工程である。 ⅲ グランドパッキンについてグランドパッキンは,軸部分の封水用のシール材であり,軸にグランドパッキンが固着して軸が動かなくなることを防ぐために潤滑剤が施されている。また,ジョイントシートパッキン等のように配管接合部分においてボルト・ナット等で強く締め付けられているわけではない上,その構造からも,軸等に張り付くということはほとんどない。 グランドパッキンの使用された付属弁の分解作業は,①ボルト・ナットを緩めて弁上部を取り外し,更に弁上部から弁ハンドル,弁棒などを取り外した上(5分から10分程度),②弁上部と弁箱との間のフランジ面からジョイントシートパッキン(1号機及び4号機)又はうず巻形ガスケット(3号機)をスクレイパーを使用して取り外し(3号機では数秒,1号機及び4号機では2分から3分程度),③弁上部の付属弁のスタフィングボックスに残されたグランドパッキンをケガキ針等を使用して,すくい上げるようにして取り外した後(1分程度),④弁箱のフランジ面をナイロンたわしやサンドペーパーなどを使用して清掃するとともに(3号機では2分から3分程度,1号機及び4号機では5分程度),⑤グランドパッキンを取り 外したスタフィングボックス内をナイロンたわしやサンドペーパーなどを使用して清掃する(2分 るとともに(3号機では2分から3分程度,1号機及び4号機では5分程度),⑤グランドパッキンを取り 外したスタフィングボックス内をナイロンたわしやサンドペーパーなどを使用して清掃する(2分から3分程度)という工程である。 グランドパッキンの使用された「自圧水ストレーナ」の分解作業は,①ボルト・ナットを緩めてハンドル,グランドパッキン押えなどを取り外した上(10分程度),②軸のスタフィングボックスに残されたグランドパッキンをケガキ針等を使用して,すくい上げるようにして取り外した後(1分程度),③軸のスタフィングボックス内をナイロンたわしやサンドペーパーなどを使用して清掃する(2分から3分程度)という工程である。 (c)付属弁に係る作業は,上記のとおり極めて単純な作業であって,作業時間はかからない。 (d)原子力発電所においては,配管のフランジ面を傷付けずに作業する必要があり,平成12年1月以前においても,水で濡らすか,マスクとゴーグルを着用の上ガスケットリムーバーを使用してガスケット等の交換作業が行われていた。 c 被告太平電業作業の具体的方法については,被告らの主張(イ)b(b)のとおりである。ただし,バルブ(弁)に係る作業は, Dが野口工業に入社したころ以降は,専門の業者が取り扱っており,被告太平電業は受注しておらず,野口工業への発注もされていない。 (ウ)作業時におけるアスベストばく露の可能性a 放射線管理区域内での作業中におけるアスベストばく露(a)被告ら共通 放射線管理区域内の黄服エリアでの作業は,クリーンハウスの内部で行われるところ,クリーンハウスには高性能フィルター付き局所排気装置が設置されている。そのため,仮にアスベスト粉じんが生じたとしても 放射線管理区域内の黄服エリアでの作業は,クリーンハウスの内部で行われるところ,クリーンハウスには高性能フィルター付き局所排気装置が設置されている。そのため,仮にアスベスト粉じんが生じたとしても,速やかにフィルターに吸着された後,外部に排気されるため,内部の作業者が吸引する可能性は極めて僅少である。 加えて,作業者が常時着用していた汚染防護服と高性能フィルター全面マスクには,通常の防じんマスクを凌ぐ強力な捕集能力があり,アスベスト粉じんのばく露を防止するには十分な装備である。 余熱除去ポンプの分解点検は黄服エリア内において行われ,また,作業箇所(e)②ⅰないしⅵ記載の各ポンプの分解点検についてもほとんど黄服エリアを設定して作業を行うものであるため,作業者がアスベスト粉じんにばく露することはない。 したがって,間接ばく露をすることもあり得ない。 (b)被告中部電力及び被告中部プラントサービス浜岡原発で使用されていたガスケットやパッキンは,いずれも装着・取り外し時においてアスベスト粉じんがほとんど飛散しない上,作業者は,ほとんど黄服エリアを設定して分解点検作業を行うのであるから, Dが他の業者の作業により間接ばく露する機会があったとは考え難い。 (c)被告中部プラントサービス以下の点などから,仮に Dが青服エリア内でパッキン・ガスケットの交換作業に関与していたとしても,アスベストにばく露することはあり得ない。 ⅰ 建設業労働災害防止協会の定める「石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」において,パッキン・ガスケットの交換作業は,ば く露防止のための対応が要求される作業レベルに該当しないこと,石綿障害予防規則上も具体的に列挙されている作業ではないことからして,上記作業は,アスベストばく露の可能性が極めて 作業は,ば く露防止のための対応が要求される作業レベルに該当しないこと,石綿障害予防規則上も具体的に列挙されている作業ではないことからして,上記作業は,アスベストばく露の可能性が極めて低い作業である。 ⅱ 上記のとおり, Dが取り扱った可能性のあるグランドパッキンやガスケットの交換作業により粉じんが飛散することはほとんどなく,作業時間も短時間で終了する。 ⅲ 平成12年1月以降は,作業場所にかかわらずアスベストを含有するパッキン・ガスケットの交換作業においては防じんマスクの着用と湿潤化が行われ,また,上記のとおり,平成12年1月以前も,水で濡らすか,マスクとゴーグルを着用の上ガスケットリムーバーを使用してパッキン・ガスケットの交換作業が行われていた。 ⅳ 作業箇所(e)①においては,アスベストを含有する製品はわずか9個に留まり,また,同作業は3ないし5人の野口工業の作業員によって行われていたため,仮に Dが同作業に関与していたことがあったとしても,アスベスト含有製品の交換作業に携わった時間は極めて短時間であったと推測される。 (d)被告太平電業ⅰ 青服エリアではクリーンハウスの設置は必要とされていないが,その場合でも,点検保守作業は埃を伴うので,少なくとも「使い捨て防じんマスクDS2」というマスクをつけるのが常態であった。 ⅱ 平成14年4月1日から平成16年8月18日までの期間の実働日数合計586日のうち,青服エリアにおいてシートパッキ ンやガスケットの交換作業のあった日は29日に過ぎず,平成14年以前も同様であったと推測される。 b 放射線管理区域外での作業中におけるアスベストばく露(a)被告中部電力原子炉機器冷却海水ポンプは,風が通る屋外に設置されている設備であり,ガス 前も同様であったと推測される。 b 放射線管理区域外での作業中におけるアスベストばく露(a)被告中部電力原子炉機器冷却海水ポンプは,風が通る屋外に設置されている設備であり,ガスケットやパッキンの交換時に万一アスベスト粉じんの飛散が生じた場合でも,粉じんは瞬時に空気中に離散する。 また,上記のとおり,浜岡原発で使用されていたガスケットやパッキンは,いずれも装着・取り外し時においてアスベスト粉じんがほとんど飛散しない。 また,原子炉機器冷却海水ポンプに使用されていたアスベスト含有製品は極めて少数である。 さらに,野口工業社長の E の供述によれば, Dは,ガスケットやパッキンの交換に当たって,平成12年以前においても作業箇所を湿潤化した上,ゴーグルとマスクを着用して作業していたというのである。 以上からすれば,放射線管理区域外でのガスケットやパッキンの交換作業により Dがアスベスト粉じんにばく露することはない。 (b)被告中部プラントサービスそもそも Dは,放射線管理区域外にある原子炉機器冷却海水ポンプに係る作業に従事した実績はない。 また,アスベストの粉じんが飛散することは考えられない上,万一粉じんが飛散しても屋外での作業であるため瞬時に空気中に飛散し,かつ一人で交換作業を行う訳ではない。これらのことからすると, Dがアスベストにばく露することは考えられない。 なお,フランジ面に傷が付くと漏れの原因となるため,グラインダーは使用していない。 (c)被告太平電業そもそも Dは,放射線管理区域外にある原子炉機器冷却海水ポンプに係る作業に従事した実績はない。 また,平成14年4月1日から平成16年8月18日までの期間の実働日数合計586日のう 平電業そもそも Dは,放射線管理区域外にある原子炉機器冷却海水ポンプに係る作業に従事した実績はない。 また,平成14年4月1日から平成16年8月18日までの期間の実働日数合計586日のうち,放射線管理区域外においてシートパッキンやガスケットの交換作業のあった日は,焼却炉の定期検査に係る作業をした3日に過ぎず,平成14年以前も同様であったと推測される。 イ争点イ(被告らの安全配慮義務の有無及びその内容,安全配慮義務違反の有無)について(原告らの主張)(ア)安全配慮義務の有無についてa 安全配慮義務は,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触関係に入った当事者間において,当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められる(最高裁判所昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)。 b 安全配慮義務を基礎づける予見義務の内容は,生命・健康という被害法益の重大性に鑑み,安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り,必ずしも生命・健康に対する障害の性質,程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない(福岡高等裁判所平成元年3月31日判決・判例時報1311号36頁,東京地方裁判所平成16年9月16日判決・判例時報1882号70頁)。 c Dが浜岡原発構内での作業に従事するようになった昭和61年ころには,既にアスベストの発がん性が広く指摘されるとともに,悪性中皮腫の病理及び発生原因についての知見が一般的にも確立されていた。 そして,アスベスト含有製品を継続的に扱っていた被告らは,アスベストばく露によって,労働者の生命・健康の安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧を抱いていたといえ,予見義務 れていた。 そして,アスベスト含有製品を継続的に扱っていた被告らは,アスベストばく露によって,労働者の生命・健康の安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧を抱いていたといえ,予見義務が認められる。 d したがって,被告らには労働者の生命・健康に対する危険を回避するための安全配慮義務が認められる。 (イ)重畳的な請負契約関係における安全配慮義務の主体についてa 安全配慮義務の主体が直接雇用主に限定されないこと安全配慮義務は信義則上認められる一般的な義務であり,安全配慮義務を負う主体は,直接の雇用主に限られない。すなわち,元請企業と下請企業労働者が「特別な社会的接触関係」に入ったと評価できる場合には,信義則上の義務として元請企業についても安全配慮義務が認められる(最高裁判所平成3年4月11日第一小法廷判決・裁判集民事162号295頁)。 b 本件における「特別な社会的接触関係」を基礎づける事実(a)そもそも,作業場である浜岡原発構内への立入りは被告中部電力によって厳重に管理され,構内は被告中部電力の排他的支配下にあった。 (b)全体の工程管理については,注文者である被告中部電力が行い,工期や工事対象箇所,作業内容,必要人員など工事の具体的な内容については元請及び下請である被告中部プラントサービスないし被告太平電業が決定していた。 (c) Dの直接の雇用主である野口工業は2次下請に過ぎない。工事の対象箇所,作業内容,工期については全て元請業者である被告中部プラントサービス及び下請業者である被告太平電業の指示に従わざるを得ない地位にあり,野口工業は自社社員の配置を決める権限しか有していなかった。 (d)野口工業の従業員は,構内作業中においては,常時被告らの社 ス及び下請業者である被告太平電業の指示に従わざるを得ない地位にあり,野口工業は自社社員の配置を決める権限しか有していなかった。 (d)野口工業の従業員は,構内作業中においては,常時被告らの社員と行動を共にすることが義務付けられており,勝手に移動することは厳禁されていた。 (e)野口工業の従業員は,構内での作業着や作業道具を被告中部電力ないし被告太平電業から支給されていた。 (f)上記の関係からすれば,被告らと Dは「特別な社会的接触関係」にあったといえ,被告らは Dに対して安全配慮義務を負う。 (ウ)安全配慮義務の内容についてa 粉じん発生防止・抑制義務(a)内容労働者のアスベスト関連疾患への罹患を防ぐには,アスベスト粉じんの発生を防止・抑制することが最善であり,使用者らは,アスベスト粉じんの発生を防止あるいは抑制する義務を負う。 (b)被告中部プラントサービス及び被告太平電業について具体的な作業にあたり,アスベスト粉じんの発じん源を密閉化するとともに,アスベスト含有パッキン及びガスケットの取付け・取り外し作業等,アスベスト粉じんが飛散し得る工程の完全隔離を実施して,アスベスト粉じんが大気中に拡散することを抑制する義務を負っていた。 (c)被告中部電力 浜岡原発構内において広範囲にわたって使用されていたアスベスト含有製品について,速やかにアスベスト非含有製品に代替化する措置を執るべき義務を負っていた。 b 粉じん除去・遮断義務(a)内容作業の性質上アスベスト粉じんの発生がやむを得ない場合であっても,使用者らには,発生したアスベスト粉じんが空中へ飛散及び浮遊することを防止する義務がある。 (b)被告中部プラントサービス及び 作業の性質上アスベスト粉じんの発生がやむを得ない場合であっても,使用者らには,発生したアスベスト粉じんが空中へ飛散及び浮遊することを防止する義務がある。 (b)被告中部プラントサービス及び被告太平電業について作業場内に,主要換気扇,局所扇風機等の換気設備及び集じん機を適切に配置し,速やかにアスベスト粉じんを希釈・排除するよう通気・換気の改善と集じんの措置を講ずるとともに,水を撒いた上で清掃を行う等,アスベスト粉じんが飛散・浮遊しないようにすべき義務を負っていた。 c 粉じん測定及び粉じん測定に基づく作業環境状態の評価を行うべき義務(a)内容効果的なアスベスト粉じん対策の前提として,使用者らには,実際の作業環境における有害かつ吸入性の粉じんの有無及び濃度を定期的に測定し,その測定結果に基づいて当該作業環境の状態を評価すべき義務がある。 (b)被告中部プラントサービス及び被告太平電業について各作業場所におけるアスベスト粉じんの有無及び濃度を定期的に測定し,その測定結果に基づいて作業環境の状態を評価すべき義務を負っていた。 d 防護義務(a)内容アスベスト粉じんの発生の抑制,発生粉じんの除去・遮断措置を講じても,なお浮遊粉じんが残存する作業場においては,次善の策として,使用者には,労働者がアスベスト粉じんにさらされることのないよう防護措置を執る義務がある。 (b)被告中部プラントサービス及び被告太平電業についてその指揮・監督下にあって,アスベスト粉じんの生じる作業をする労働者らにはアスベスト粉じんを吸入しないよう十分な性能を有する防じんマスクあるいはエアラインマスクや防護服を配布し,その着用を義務付け,作業の際これを装着するよう指導・ ト粉じんの生じる作業をする労働者らにはアスベスト粉じんを吸入しないよう十分な性能を有する防じんマスクあるいはエアラインマスクや防護服を配布し,その着用を義務付け,作業の際これを装着するよう指導・監督すべき義務を負っていた。 (c)被告中部電力について浜岡原発構内及びその敷地内を排他的に支配する地位にあり,その支配領域内においてアスベスト製品を取り扱うことになる労働者に対して,アスベスト粉じんを吸入しないような措置を執るべき義務を負っていた。 e 粉じん教育義務(a)内容アスベスト粉じんによる被害をより確実に防止するためには,労働者が自らアスベストの危険性や対処方法について主体的に認識することが重要であり,使用者らは,アスベスト粉じんの有害性及び危険性,アスベスト関連疾患の予防措置やアスベスト関連疾患に罹患した場合の適切な処置について,定期的・計画的な安全衛生教育を実施する義務を負う。 (b)被告中部プラントサービス及び被告太平電業について現場の指揮・監督にあたる被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,個々の労働者に対して,アスベスト粉じんの危険性,防護の必要性,健康を守るための防護方法等についての教育を施す義務があった。 (c)被告中部電力について浜岡原発構内及びその敷地内を排他的に支配する地位にあり,その支配領域内においてアスベスト製品を取り扱うことになる労働者に対して,アスベスト粉じんの危険性,防護の必要性,健康を守るための防護方法等についての教育を施す義務があった。 f 上記各義務の関係安全配慮義務は,労働者の生命・健康という根源的な法益を保護するよう配慮すべき義務である。 そして,アスベストの危険性に鑑みれば,アスベスト関連 す義務があった。 f 上記各義務の関係安全配慮義務は,労働者の生命・健康という根源的な法益を保護するよう配慮すべき義務である。 そして,アスベストの危険性に鑑みれば,アスベスト関連疾患の発生を防止するためには,現場での粉じん対策のみならず,日常の粉じん教育,実際に罹患した場合に対処する方法や補償の実施など極めて多岐にわたる問題を根本的に解決するための措置が執られる必要がある。 したがって,使用者らが安全配慮義務を履行したと言えるためには,これらを一体のものとして総合的・体系的に実施することが必要である。 (エ)安全配慮義務違反の有無についてa 粉じん発生防止・抑制義務違反(a)被告中部プラントサービス及び被告太平電業について被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,「非飛散性製品」 を使用していたことをもってアスベスト粉じんの発生可能性がないと主張しているが,具体的なアスベスト粉じんの発生防止・抑制措置を何ら講じておらず上記義務に違反したといえる。 (b)被告中部電力について浜岡原発においては平成17年当時においても15万7000個ものアスベスト含有製品が使用されており,アスベスト非含有製品への代替化を進めるべき義務に違反したといえる。 なお,アスベスト含有製品の使用が法令によって許容されているからといって,安全配慮義務を免れることはできない。 b 粉じん除去・遮断義務違反(被告中部プラントサービス及び被告太平電業について)特に原子炉建屋外での作業の際には,作業場内に,主要換気扇,局所扇風機等の換気設備及び集じん機を適切に配置し,速やかに粉じんを希釈・排除するよう通気・換気の改善と集じんの措置を講ずる義務があったにもかかわらず,これら 作業の際には,作業場内に,主要換気扇,局所扇風機等の換気設備及び集じん機を適切に配置し,速やかに粉じんを希釈・排除するよう通気・換気の改善と集じんの措置を講ずる義務があったにもかかわらず,これらの局所排気装置が設置されることはなかった。 c 粉じん測定及び粉じん測定に基づく作業環境状態の評価を行うべき義務違反(被告中部プラントサービス及び被告太平電業について)アスベスト粉じんの濃度を測定して,アスベスト粉じんの発生する作業を把握することを怠った。 d 防護義務違反(a)被告中部プラントサービス及び被告太平電業放射線管理区域外においては,防じんマスクの着用は徹底されておらず,特に,建屋外の作業においては,平成12年ころまで防じんマスクを着用しないで作業を行うことが常態化していた。 すなわち,労働者に対して,有効かつ最良のマスク等の保護具やその交換部品を随時支給し,それが十分に機能を発揮できるよう管理するとともに,その装着を徹底すべく,労働者を指導・監督すべき義務を履行しなかった。 (b)被告中部電力浜岡原発構内及びその敷地内を排他的に支配する地位にありながら,その支配領域内において勤務する協力会社の社員であった Dらに対して,有効かつ最良のマスク等の保護具やその交換部品を随時支給し,それが十分に機能を発揮できるよう管理するとともに,その装着を徹底すべく,労働者を指導・監督すべき義務を履行しなかった。 e 粉じん教育義務違反(a)被告中部プラントサービス及び被告太平電業について現場の指揮・監督に当たっていながら,平成12年までは, Dらに対してアスベスト粉じんの危険性,防護の必要性,健康を守るための防護方法等についての教育を施すことはな 及び被告太平電業について現場の指揮・監督に当たっていながら,平成12年までは, Dらに対してアスベスト粉じんの危険性,防護の必要性,健康を守るための防護方法等についての教育を施すことはなかった。 (b)被告中部電力について原子力発電所構内及びその敷地内を排他的に支配する地位にありながら,その支配領域内においてアスベスト含有製品の交換業務等に従事する Dらに対して,上記のような粉じん教育を施すことはなかった。 (被告中部電力の主張)(ア)安全配慮義務の有無についてa 被告中部電力と Dとの間に労働契約関係はない。 仮に,重畳的な請負契約関係において,注文者・元請が下請・孫請 の従業員に対し,安全配慮義務を負う場合があるとするならば,注文者と請負者との間の請負契約,請負者と下請者との間の請負契約,及び下請者と下請者の従業員との間の労働契約を媒介として間接的に成立した関係が,社会通念に照らして,事実上,労働契約関係に準じると評価される場合に限られる。 そして,事実上の労働契約関係に準じる関係があるか否かについては,請負者の従業員が,注文者の実質的な支配従属関係下にあるか否かという観点から判断すべきであり,その判断にあたっては,請負者が注文者への実質的従属性が強い企業であるか否か,注文者が請負者の従業員の人事権を事実上掌握しているか否か,請負者の従業員が注文者からの事実上の指揮命令・監督を受けているか否か等の諸事情が勘案される。 b(a)本件では,被告中部電力は,元請である被告中部プラントサービスの下請である被告太平電業の,さらに下請(孫請)である野口工業の従業員である Dの人事権を,いかなる意味においても掌握していない。 (b)被告中部電力 元請である被告中部プラントサービスの下請である被告太平電業の,さらに下請(孫請)である野口工業の従業員である Dの人事権を,いかなる意味においても掌握していない。 (b)被告中部電力は,請負者ないし作業従事者に対し,個々の作業に関して具体的な作業内容や作業方法,進行等を指図,管理したり,作業の進捗状況を管理したりすることはない。また,被告中部電力の社員は,作業について作業員らと行動を共にしたことは全くないし,被告中部電力は,野口工業ないし Dに対して行動を共にすることを指示命令したことも各別に行動することを禁止したこともなく, Dに対して事実上の指揮命令・監督を行ったものではない。 (c)被告中部電力は,浜岡原発の所有権に基づく施設管理権として 発電所への立入りを管理し,排他的に支配しているものであり,特に立入りが厳格に管理されていることは,原子力発電所における放射線の安全管理等の必要性という特殊性に基づいており,野口工業ないし Dとの関係において支配従属関係を基礎づけるものではない。 被告中部電力が被告中部プラントサービスに発注する作業の作業現場が発電所構内であれば,構内への出入り及び構内における活動について被告中部電力の施設管理権に従うことは必然の結果であり,請負者ないし作業従事者との契約関係を論ずる場合に,施設管理権の行使をもって,その契約関係に指揮命令関係があるとか支配従属関係にあるとかの論拠とするのは論理の飛躍である。 (d)被告中部電力は, Dが発電所構内で作業するための防護服,工具の一部を貸与していたが,これも原子力発電所という特殊な安全管理が要請される施設であることから放射線管理のための貸与であって,業務の内容,方法等の指揮命令,監督とは何の関係もない。 防護服,工具の一部を貸与していたが,これも原子力発電所という特殊な安全管理が要請される施設であることから放射線管理のための貸与であって,業務の内容,方法等の指揮命令,監督とは何の関係もない。 c 以上より,被告中部電力は, Dが従事していた作業に関して,何ら指揮監督する関係にはなく,両者の間には「事実上労働契約関係に準じる関係」ないし「特別な社会的接触関係」はなかったのであるから,被告中部電力が Dに対して安全配慮義務を負うことはない。 (イ)安全配慮義務違反の有無仮に被告中部電力が安全配慮義務を負うとしても,被告中部電力は,浜岡原発内において,作業者がアスベストにばく露しないよう設備面においても,作業管理面においても種々の災害防止措置を講じており,被 告中部電力には何ら安全配慮義務違反はない。 a 粉じん発生防止・抑制義務について原子力発電所設備における内部物質の漏洩による火災・爆発,健康障害等の発生を予防する観点から,代替品の開発や代替品の安全性等の実証が完了していないシール材・ジョイントシートなどの石綿含有製品の使用は社会的相当性が是認されており,被告中部電力においてもアスベストの飛散防止等に十分に配慮しつつ,やむを得ず残置しているものであり,被告中部電力には安全配慮義務違反はない。 b 防護義務,粉じん教育義務浜岡原発内では,作業者が石綿にばく露しないよう設備面においても,作業管理面においても種々の災害防止措置が講じられていたのであるから,被告中部電力には安全配慮義務違反はない。 (被告中部プラントサービスの主張)(ア)安全配慮義務の有無について現在の建設業労働災害防止協会の定める「石綿粉じんへのばく露防止マ ら,被告中部電力には安全配慮義務違反はない。 (被告中部プラントサービスの主張)(ア)安全配慮義務の有無について現在の建設業労働災害防止協会の定める「石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」においても,パッキン・ガスケットの交換作業は,ばく露防止のための対応が要求される作業レベルに該当しないとされており,また,石綿障害予防規則上も具体的に列挙されている作業ではない。パッキン・ガスケット等のシール材の交換作業の危険性が指摘された行政文書が発せられたこともなく,現在においても,アスベストを含有するシール材の交換作業が危険であるとの知見が確立されているとは言えない。 加えて,被告中部プラントサービスは,シール材の製造業者でもなければ,注文主でもなく,シール材の交換作業の危険性を認識できるはずもなく,また,パッキン・ガスケットは粉じんを飛散することは想定し 難く,交換作業は短時間で終了するのである。 したがって,被告中部プラントサービスは,少なくとも平成11年11月に労働基準監督署から指摘される以前においては,到底アスベストを含有するシール材の交換作業が,生命・健康に重大な影響を及ぼすことなどおよそ予見することが不可能であったことは明らかである。 (イ)安全配慮義務の主体について本件の作業現場は被告中部電力の管理する浜岡原発であり,作業対象設備,点検範囲,数量,工期,場所等は発注者である被告中部電力が決定し,実際の人員の配置については被告太平電業が決定していた。また,資材や工具等も被告中部プラントサービスが手配したものではなく,被告中部プラントサービスの従業員が,野口工業等の2次下請業者の従業員はもちろん,上記従業員に対する指揮・命令等を行っている現場作業指揮者(2次下請業者の従業員で,浜岡原発にお 配したものではなく,被告中部プラントサービスの従業員が,野口工業等の2次下請業者の従業員はもちろん,上記従業員に対する指揮・命令等を行っている現場作業指揮者(2次下請業者の従業員で,浜岡原発において3年以上の従事経験のある者)に対して指示・命令等を行うこともなかった。現場作業指揮者の監督を行っていたのは被告太平電業の従業員であり,被告中部プラントサービスの従業員は,あくまで請負契約の内容に沿った作業であるか,安全に作業が遂行できているかを監督し,その範囲で被告太平電業の従業員である工事担当者に対して指導助言を行うことがあるに過ぎず,常時現場に立ち会ったり,野口工業の従業員らと共に実際に作業を行うことはなかった。そして,何よりは被告中部プラントサービスの2次下請業者の従業員に過ぎないという関係からすれば,被告中部プラントサービスと Dとの間に特別な社会的接触の関係などなかったことは明らかである。 したがって,被告中部プラントサービスは, Dに対して安全配慮義務を負わない。 (被告太平電業の主張)(ア)安全配慮義務の有無について被告太平電業が,野口工業に下請けさせていたシートパッキンやガスケットの交換作業にはアスベスト含有製品の交換もあったが,①いずれも非飛散型の製品になっており,一見してアスベストの含有が予測される性状でもなく,当時アスベスト含有製品にはその旨の表示がされていなかったから,その製品にアスベストが含有されているか否かはカタログにでもよらなければ知ることはできなかった。その上,この交換作業は被告中部電力から被告中部プラントサービスを通じて支給される部品の交換作業であるに過ぎず,被告太平電業や野口工業が製品の選択をした作業でもない。②また,野口工業が下請けしたシートパッキンやガスケット 告中部電力から被告中部プラントサービスを通じて支給される部品の交換作業であるに過ぎず,被告太平電業や野口工業が製品の選択をした作業でもない。②また,野口工業が下請けしたシートパッキンやガスケットの交換作業は,平均して年間約14日弱,月間約1.12日(推計)の作業でしかなく,被告太平電業らがアスベスト含有製品を継続的に扱っていた事実はない。③さらに,上記のとおりの作業方法から,アスベスト粉じんの飛散の機会自体が少なくなっていた。 以上より,被告太平電業らが,その交換作業により「労働者の生命・健康の安全性に疑念を抱く」程度の危惧を抱く事情にはなく,予見可能性はなかった。 (イ)重畳的な請負契約関係における安全配慮義務の主体について被告太平電業が下請の野口工業の従業員である Dに対し,下請業務の作業実行について,一般的な安全配慮義務を負うことは,特に争わない。 (ウ)安全配慮義務の内容及びその違反について原告の列挙する安全配慮義務違反の主張は,「粉じんが飛散し浮遊する職場」の労働者や「粉じんにばく露された状態で労働に従事する」労 働者の健康管理を行う一般的な義務であるものを列挙しているに過ぎない。しかし,上記のように,被告太平電業が野口工業に下請させ, Dが野口工業の社員として参加することがあった作業は,それらが特に必要とされるレベルには達していない。 ウ争点ウ(被告らの安全配慮義務違反と Dの死亡との間の因果関係の有無)について(原告らの主張)(ア)因果関係についてa 訴訟上の因果関係の立証訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,事実と結果との間に高度の蓋然性があることを証明することであり,その 上の因果関係の立証訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,事実と結果との間に高度の蓋然性があることを証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるとされている(最高裁判所昭和50年10月24日第二小法廷判決・民集29巻9号1417頁)。 b 疫学的因果関係わが国においては中皮腫症例の80%以上にアスベストばく露が証明されており,アスベスト粉じんの吸引が中皮腫の最大の原因ということができる。また,悪性中皮腫の発症自体がアスベストばく露の指標とされていることからしても,アスベストばく露と悪性中皮腫発症との疫学的な因果関係は明らかである。 なお,悪性中皮腫は,大量かつ長期間のアスベストばく露を原因として発症する石綿肺と異なり,少量かつ短期間のアスベストばく露であっても発症する疾病である。 c 本件における因果関係 Dは,昭和61年から平成16年までの18年間にわたって,浜岡原発構内において,アスベストを含有するガスケット,パッキン等の交換業務に従事しており,その作業過程において被告らの粉じん対策が不十分であったためにアスベスト粉じんを吸引し,その結果,悪性中皮腫に罹患して死亡したものであって,因果関係があることは明白である。 (イ)因果関係に関するその他の主張a 因果関係と「業務起因性」の関係(a)労災民事訴訟における傷病発生の因果関係については,労災保険請求における業務起因性の概念と類似するものである。 (b)本件訴訟に先行して,名古屋東労働基準監督署長が業務災害認定を行っているが,その調査内容から, Dが浜岡原発構内での作 いては,労災保険請求における業務起因性の概念と類似するものである。 (b)本件訴訟に先行して,名古屋東労働基準監督署長が業務災害認定を行っているが,その調査内容から, Dが浜岡原発構内での作業中にアスベストにばく露し,その結果悪性中皮腫を発症したことは明らかである。 したがって,業務起因性が認められる本件においては,アスベストばく露と中皮腫発症との因果関係が事実上推定されるというべきである。 b 潜伏期間との関係についてアスベストばく露から中皮腫発症までの平均潜伏期間は概ね40年程度とされているが,これはあくまでも過去の症例の平均値に過ぎないもので,ばく露から発症時まで平均値に遠く及ばない事例もある。 したがって,平均潜伏期間に満たないことを理由に,被告らの安全配慮義務違反と死亡との間の因果関係を否定することはできない。 (被告ら共通の主張) (ア) Dは,余熱除去ポンプ等のパッキン交換において,アスベストにばく露し得る環境にはなかったのであるから, Dの浜岡原発における作業と,同人が腹膜原発悪性中皮腫を発症して死亡したこととの間に相当因果関係がないことは明白である。 (イ)仮に, Dの腹膜原発悪性中皮腫の発症が昭和61年から従事した浜岡原発での作業中に吸引したアスベストが原因であるとすれば,平成11年度から同13年度の3年間において,石綿による中皮腫として労災認定された93件を対象に行われた調査における平均潜伏期間(41. 1年)や最小値(27.3年)に鑑み,平成16年の発症は極めて特異なものであり,このことは, Dの腹膜原発悪性中皮腫の発症が,昭和61年以前の別の要因によるものであることを窺わせる事情である。 (被告中部電力及び被告中部プラントサービスの主張) 特異なものであり,このことは, Dの腹膜原発悪性中皮腫の発症が,昭和61年以前の別の要因によるものであることを窺わせる事情である。 (被告中部電力及び被告中部プラントサービスの主張)Dは,昭和56年3月から昭和60年5月までの間,勇喜漁業で勤務し,かつお一本釣り漁船で漁師として従事していたところ,一般に船舶には石綿が吹き付けられており,船舶の配管にもアスベスト含有製品が用いられているため,船舶製造及び修理業者が中皮腫として認定されるケースが極めて多く,造船でのアスベストばく露は石綿を直接取り扱わない作業者でもアスベストにばく露するケースもあるのである。 このように,4年3か月もの間,かつお一本釣り漁船内で寝泊まりをする業務に従事していたが,同漁船内でアスベストにばく露した可能性は否定できず,むしろ,潜伏期間との関係では, Dはかつお一本釣り漁船で漁師として従事していた際にアスベストにばく露したと考えるのが自然である。 エ争点(4)(工作物責任の有無)について(原告らの主張) 被告中部電力は,工作物である浜岡原発を占有しているところ,アスベスト粉じんが飛散しないように局所排気装置などを設置して粉じんの除去を徹底しなければならないにもかかわらず,特に建屋外に設置されたポンプについては,上記のような装置を設置せずに,アスベストの飛散する作業に当たらせていたものであり,工作物の保存に瑕疵があった。 (被告中部電力の主張)(ア)アスベスト含有製品の使用が工作物の設置又は保存の瑕疵に該当するか否かは,有効な代替製品の存在の有無(新技術の有効性),アスベスト製品の使用の社会的有用性,相当性が是認されているか(使用により回避される危険の大きさ),使用による危険性の程度,危険防止策の実 か否かは,有効な代替製品の存在の有無(新技術の有効性),アスベスト製品の使用の社会的有用性,相当性が是認されているか(使用により回避される危険の大きさ),使用による危険性の程度,危険防止策の実施等諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである(最高裁判所昭和61年3月25日第三小法廷判決・民集40巻2号472頁参照)。 (イ)余熱除去ポンプ,原子炉機器冷却海水ポンプの付属小口径配管等において使用しているアスベストが含有されているパッキン,ガスケットは,シール材としての必要条件を満たす石綿の代替材料が存在しないため,平成16年10月の労働安全衛生法施行令改正においても石綿製品禁止の対象から除外されており,これらの使用は,社会的に有用性,相当性が是認されている。そして,これらパッキン,ガスケットが使用される箇所は限られており,かつ,これらの箇所の作業については,石綿ばく露による災害防止措置を策定・実施しており,安全性に欠ける点はない。 屋外に設置されている原子炉機器冷却海水ポンプについては,万一アスベスト粉じんの飛散が生じたとしても自然通風によって瞬時に空気中に離散するはずであり,局所排気装置の必要性,有効性は全くなく,建屋外のポンプについて局所排気装置が設置されていないことが工作物の設置又は保存の瑕疵とはいえない。 オ争点(5)(損害の発生及びその額)について(原告らの主張)(ア)逸失利益 6045万4999円年収生活費控除 28年間のライプニッツ係数579万7000円×(1-0.3)×14.8981=6045万4999円( 579万7000円×(1-0.3)×14.8981=6045万4999円(イ)入院慰謝料 300万円Dは,合計169日間にわたり入院した上,絶えず不治の病である腹膜原発悪性中皮腫の激痛に耐えながら闘病生活を続けていたのであるから,その精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料は300万円を下らない。 (ウ)死亡慰謝料 3000万円Dは,両親,妻及び就学中の子2人を扶養しており,39歳の若さで死亡した無念さを考慮すれば,死亡慰謝料は3000万円を下らない。 (エ)葬祭関係費用 150万円(オ)損益相殺 2572万4058円原告らは,労災保険年金,労災就学等援助費として1537万5852円,労災葬祭料として62万2950円,厚生遺族年金として972万5256円を受領した。 (カ)弁護士費用本件事故と相当因果関係にある弁護士費用は,原告 A 分につき340万円,同 B及び同 C分につき各170万円を下らない。 (被告ら共通の主張)争う。 (被告中部電力の主張)Dが野口工業から支給されていた生前の実収入は,年収約374万6404円(平均日額1万264円12銭×365日)と推定される。 Dの実収入は学歴別・年齢別平均賃金や学歴別・全年齢平均賃金に達しておらず,将来的にこれらの賃金が得られる蓋然性は認められない。よって,Dの逸失利益の基礎収入は,生前の実収入によるべきである。 また,原告 A も稼働している事実から, Dの生活費控除率は40%とするのが らの賃金が得られる蓋然性は認められない。よって,Dの逸失利益の基礎収入は,生前の実収入によるべきである。 また,原告 A も稼働している事実から, Dの生活費控除率は40%とするのが相当である。 原告らの請求にかかる慰謝料は,いずれも高額に過ぎる。 第3 争点に対する判断 1 前提事実並びに証拠(甲A1ないし10,甲B1ないし3,甲C1ないし4,乙A1ないし4,6ないし17,乙B1,丙A6(一部),丁A1ないし5,6(一部),7,丁B3,証人 E,証人 F(一部),証人 G(一部),証人 H(一部),原告 A 。ただし,枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実が認められる。 (1)アスベスト及びシール材についてアアスベストについてアスベスト(石綿)は繊維状の鉱物であり,蛇紋石族石綿(クリソタイル(白石綿))と角閃石族石綿(アモサイト(茶石綿),クロシドライト(青石綿),アンソフィライト石綿,トレモライト石綿,アクチノライト石綿)に分類される。世界保健機関(以下「WHO」という。)や国際労働機関(以下「ILO」という。)などの公的機関は,上記6種類の石綿の原料となる各鉱物のうち顕微鏡レベルで長さと幅の比が3以上のアスペクト比をもつ繊維状のものを石綿と定義している。クリソタイルの繊維の直径は約0.02~0.06マイクロメートルである。石綿は,燃えな い,腐らない,酸やアルカリに侵されにくい,他の物質との親和性があるなど優れた性質を多くもっており,これらの長所を生かして,重要な工業材料として各分野で使用されてきた。 産業用に使われてきた石綿は,クリソタイル,アモサイト,クロシドライト及びアンソフィライトの4種類であり,そのうち,クリソタイルが全体の9割以上を占め,次い 材料として各分野で使用されてきた。 産業用に使われてきた石綿は,クリソタイル,アモサイト,クロシドライト及びアンソフィライトの4種類であり,そのうち,クリソタイルが全体の9割以上を占め,次いで,アモサイト,クロシドライトの順に用いられてきた。 我が国においては,石綿の工業的な利用として,明治時代の後半に保温材やシール材などの生産が開始され,大正時代に建築材料の生産が始まった。シール材は代表的な石綿製品である。 石綿繊維は,粉砕により縦に裂ける傾向があり,高いアスペクト比を保ったまま細くなる。細くなった石綿繊維は,人が吸入すると鼻毛や気管・気管支の絨毛を通り越して肺胞に到達しやすい。戦前から石綿を取り扱う事業場においては,石綿を原因とするじん肺の一種である石綿肺が発生しており,戦前からその危険性が認識されていた。 イシール材について諸工業に使用されるシール材とは,パッキンやガスケットの総称であり,タンク(反応釜),パイプライン,装置機器等を接続する際の継ぎ目から流体が漏れることを防止する役割を果たすものである。通常,溝などに封入され一対のシール部分が互いに運動する箇所に使用されるもの(封入材)をパッキンと呼び,配管などのフランジ部分に固定され動くことがない箇所に使用されるものをガスケットと呼ぶ。 石綿を用いたシール材は,基礎素材である石綿糸,石綿紡織品,石綿紙又は石綿板等に他の素材を複合し,これを成形加工して製造する。 ガスケットの一種であるジョイントシートとは,重量比で65%以上の クリソタイル石綿,バインダーとして10%以上のゴム及びゴム製品,充填材を原料として,緻密で均一な厚紙状に加熱圧縮したものである。浜岡原発で使用されるジョイントシートは,加工済みの製品であり,取替えに従事する作業員が加工 ダーとして10%以上のゴム及びゴム製品,充填材を原料として,緻密で均一な厚紙状に加熱圧縮したものである。浜岡原発で使用されるジョイントシートは,加工済みの製品であり,取替えに従事する作業員が加工することはない。 うず巻型ガスケットとは,高温高圧用に製作されたセミメタリックガスケットであり,V字形等の断面を有するテープ状の金属板(フープ)と石綿紙(フィラー)を交互に渦巻状に巻き上げて両端を溶接したものである。 うず巻き型ガスケットは,製品の構造上,フランジ面に固着しにくい性質を有する。 パッキンの一種であるグランドパッキンとは,バルブのスタッフィングボックスに組み込まれて軸部分から流体が漏れるのを封止するために使用されるものであり,特殊潤滑剤等を施した材料繊維を中芯として,芯材の外周を金属線の細線によって補強した黒鉛等で編組し,特殊潤滑剤,黒鉛及び防食処理等を施された紐状のパッキンである。グランドパッキンが軸部分に固着することはほとんどない。 シール材は,耐熱性,強度,薬品に侵されないことなどの点で過酷な条件を満たす必要があり,石綿を代替する適当な材料が存在しなかったため,平成16年10月1日施行の労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令による石綿製品禁止の対象から除外された。 平成17年8月3日時点において,浜岡原発で用いられているシール材のうち全数の約96%である約15万7000個が石綿含有製品であった。 (2)腹膜中皮腫について中皮は,漿膜と呼ばれる透明な膜で,肺,心臓,消化管などの臓器の表面と体壁の内側を覆い,これらの臓器がスムーズに動くのを助けている。中皮 腫は,漿膜の表面にある中皮細胞に生じる悪性腫瘍で,発生部位としては胸膜・腹膜・心膜・精巣鞘膜がある。中皮腫の原因として疫学的に立証されてい れらの臓器がスムーズに動くのを助けている。中皮 腫は,漿膜の表面にある中皮細胞に生じる悪性腫瘍で,発生部位としては胸膜・腹膜・心膜・精巣鞘膜がある。中皮腫の原因として疫学的に立証されているものは石綿とエリオナイト(天然鉱物繊維)のばく露であり,その他には,放射線療法,胸膜の重大な傷跡,SV40ウィルスが可能性として指摘されている。日本で発症する中皮腫の要因はほとんどが石綿であり,中皮腫は石綿肺や肺がんを起こす程度の吸入量よりもはるかに少ないばく露量(短期間,間歇的,低濃度)でも発症する。 石綿のうち,中皮腫の発症力が強いものはクロシドライト及びアモサイトである。クリソタイルはこれらに比べて発症のリスクは小さいと推測されているものの,単独で中皮腫を発症させるリスクがあるとされている。中皮腫のリスクはアスベストの種類だけではなく,サイズ(長さ,太さ,アスペクト比)や化学組成も関連しており,同じ石綿の種類でも産地によって異なることも推測されている。 平成11年度から同15年度までの5年間において,石綿による中皮腫として労災認定された230人について見ると,ばく露期間の平均は20.1年,中央値は17.1年,最大50.2年,最小1.2年であり,石綿ばく露開始から中皮腫発症の症状確認日までの潜伏期間は,平均39.4年,中央値は40.0年,最大70.8年,最小11.5年であった。このうち石綿による腹膜中皮腫として労災認定された42人について見ると,ばく露期間の平均は19.2年,中央値は18.3年,最大47.0年,最小1.2年であり,石綿ばく露開始から中皮腫発症の症状確認日までの潜伏期間は,平均42.3年,中央値は43.5年,最大52.3年,最小27.3年であった。潜伏期間はばく露量が多い人ほど短くなるが,ばく露量の多い人は中 綿ばく露開始から中皮腫発症の症状確認日までの潜伏期間は,平均42.3年,中央値は43.5年,最大52.3年,最小27.3年であった。潜伏期間はばく露量が多い人ほど短くなるが,ばく露量の多い人は中皮腫を発症する前に高度のじん肺や肺がんに罹患する率が高い。中皮腫の平均潜伏期間は肺がんより長く,年数を経るほど発生頻度が高くなるので, 石綿の体内沈着量がさほど多くなくても沈着した期間が長くなればなるほど中皮腫が発生する危険性は高まる。 腹膜中皮腫は稀な疾患であるため報告は少ないが,半数例で石綿ばく露歴がはっきりしないとされ,肺に病変がなくとも発症することが知られている。石綿ばく露が腹膜中皮腫の原因となる機序については,石綿繊維が嚥下されるため,石綿繊維が横隔膜を経て腹膜へ至るため,石綿繊維が肺門からリンパ流に乗って腹腔内に到達するためという三つの仮説が存在する。 (3)アスベストに対する規制昭和35年4月1日,じん肺法が施行され,石綿を解きほぐす作業及び石綿を吹き付ける作業等が同法上の粉じん作業に位置づけられた。 昭和46年5月には,特定化学物質等障害予防規則(以下「旧特化則」という。)が制定された。旧特化則は,石綿に関して,アスベスト粉じんが発散する屋内作業上では,原則,一定の除じん装置を有する局所排気装置を設置すること,石綿を製造し,又は取り扱う作業場への関係者以外の立入りを禁止すること,石綿を製造し又は取り扱う作業場に呼吸用保護具(マスク等)を備え付けること等の規制を設けた。 昭和47年10月には労働安全衛生法が施行され,旧特化則は労働安全衛生法の省令として再制定された(以下「特化則」という。)。特化則では,建設業,製造業等の業種で新たに職務に就くこととなった職長等に対して石綿に関する安全衛生教育を行う 施行され,旧特化則は労働安全衛生法の省令として再制定された(以下「特化則」という。)。特化則では,建設業,製造業等の業種で新たに職務に就くこととなった職長等に対して石綿に関する安全衛生教育を行う義務を事業者に課すなど,旧特化則における規制等が充実強化され,以下のような規定が設けられた。 ① 石綿の粉じんが発散する屋内作業場については,当該発散源に局所排気装置を設けなければならないが,それが著しく困難な場合,又は臨時の作業を行うときは,全体換気装置を設けるか石綿を湿潤な状態にする等労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講ずべきこと。 ② 特定科学物質等作業主任者を選任し作業主任者としての職務を行わせること。 ③ 石綿等を取り扱う作業場には,呼吸用保護具を備えなければならないこと。 昭和47年12月,ILO及びWHOの国際がん研究機構が石綿のがん原性を認め,これにより国際的な知見が確立した。 特化則は,昭和50年9月30日に改正,公布され,同年10月1日から施行された(全面施行は昭和52年4月1日)。このうち石綿に関し以下の改正がされた。 ① 石綿等を取り扱う作業場には,作業に従事する労働者が見やすい箇所に,石綿等である旨の名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具を掲示すること。 ② 石綿等の切断の作業,石綿等を張り付けた物の解体等の作業,粉状の石綿等を混合する作業等に労働者を従事させるときは,石綿等を湿潤な状態のものとしなければならないこと。 これに合わせて,昭和51年5月22日,石綿を可能な限り代替化すること(特にクロシドライトについては優先的に代替措置を執ること),局所排気装置等の性能を強化すること,労働者に専用の作業衣を着用させるとともに石綿により汚染された作業衣を他の を可能な限り代替化すること(特にクロシドライトについては優先的に代替措置を執ること),局所排気装置等の性能を強化すること,労働者に専用の作業衣を着用させるとともに石綿により汚染された作業衣を他の衣服から隔離して保管すること等を内容とする通達(基発第408号「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」)が都道府県労働基準局長に対して発出された。 平成7年1月,労働安全衛生法施行令の改正により,クロシドライト又はアモサイトを1%より多く含有する製品の製造,輸入,譲渡,提供及び使用が原則禁止となり,平成16年10月には,クリソタイルも一部の用途を残してほとんどの製品の製造,輸入,譲渡,提供又は使用が禁止された。 平成17年2月24日,石綿障害予防規則が公布され,同年7月1日施行された。 (4) Dの職歴及び健康状態についてDは昭和56年3月に中学校を卒業後,静岡県立漁業高等学園に1年間通い,その後,昭和60年ころまで勇喜漁業でカツオ漁に従事していた。その後,昭和60年5月ころから昭和61年9月ころまでの間,浜岡製作所でアルゴン溶接に従事していた。 Dは,昭和61年9月29日に野口工業に入社し,それ以来野口工業でのみ稼働していた。 Dが勤務していたころの野口工業には従業員が9名程度おり,作業を行う場所はほとんどが浜岡原発内であった。 中皮腫発症以前の Dは健康に問題がなく,病気で野口工業の仕事を休むことはなかった。 (5)請負契約及び作業の体制についてア請負契約について電気事業法では,原子力発電所における安全上重要な設備を定期的に検査することが定められており,被告中部電力は,浜岡原発において定期的に点検を要する設備・機器について,点検内容や点検頻度等に関する社内基準を定めて ,原子力発電所における安全上重要な設備を定期的に検査することが定められており,被告中部電力は,浜岡原発において定期的に点検を要する設備・機器について,点検内容や点検頻度等に関する社内基準を定めている。定期点検工事は数か月間にわたるものであり,被告中部電力の社内基準に基づいて計画される。 定期点検工事の計画後,被告中部電力は,工事仕様書を作成し,定期点検の実施要領を請負会社に提示する。工事仕様書には,工事目的,工事箇所,点検項目,予定工期,支払条件や被告中部電力が請負会社に提供する電力,水,圧縮空気等の社給品,防護服,特殊工具等の貸与品,その他安全管理,品質管理上の注意事項等が記載される。浜岡原発では,放射線管理の目的から,作業場所の汚染の度合いに応じて防護服や全面マスクなど の着用が必要とされ,作業に必要でない物品の持込みが禁止されるため,被告中部電力は,請負会社に防護服や工具の一部を貸与している。 被告中部プラントサービスは,被告中部電力から工事仕様書の交付を受けると,見積書を提出して被告中部電力との間で請負契約(以下「元請契約」という。)を締結する被告中部プラントサービスは,工事仕様書の内容に従い,被告太平電業との間で請負契約(以下「下請契約」という。)を締結し,被告太平電業は,野口工業等の2次下請業者を選出して2次下請業者との間で請負契約(以下「孫請契約」という。)を締結する。被告太平電業と孫請契約を締結する2次下請業者は10社から20社程度存在する。被告中部プラントサービスは,孫請契約には関与せず,被告太平電業から,当該工事に従事する2次下請業者等が記載された工事従事者名簿の提出を受ける。 イ作業の体制について被告中部プラントサービスは,元請契約の締結後,工事要領書を作成する。工事要領書には工事 ら,当該工事に従事する2次下請業者等が記載された工事従事者名簿の提出を受ける。 イ作業の体制について被告中部プラントサービスは,元請契約の締結後,工事要領書を作成する。工事要領書には工事仕様書の内容が網羅され,作業手順が記載された作業手順書や日毎の作業スケジュール(作業工程)が記載された作業工程表が添付される。工事要領書には,点検する機器ごとに,具体的な工期,作業手順,工事工程,取り外す部品や取り替える部品,必要人員,使用工具の管理方法,安全上の注意事項及び被告中部プラントサービスの現場監督者が留意し作業従事者に対して指導確認すべき重要管理項目等が詳細に記載されるが,シール材の取り外し方法等の作業の具体的な実施方法や手順については記載されず,野口工業の現場作業指揮者が決定する。被告中部電力は,被告中部プラントサービスから工事要領書を受領し,工事仕様書に記載された工事箇所及び点検項目等と齟齬がないかどうか確認する。工事要領書は,被告中部プラントサービスから被告太平電業を通じて, 野口工業に交付される。 被告中部電力は,作業員が放射線管理区域内で使用する防護服,作業で使用する工具,シール材等の資材の手配を行う。また,被告中部電力は,定期点検工事中,作業員の感電防止のために分解点検を行う機器の電源を切るほか,放射線管理の観点から,放射線業務従事者の指定登録と身分証明カードの発行,防護服や全面マスク等の着用,不要品の持込み禁止等を管理する。被告中部電力は,定期点検工事全体の進捗状況について,被告中部プラントサービスの現場監督者に対して適宜報告を求めることや,品質管理の観点から,点検機器及び部品の健全性確認や試運転確認等の重要項目について現場監督者に立会いを求めることがあるが,現場監督者や作業従事者に対して個々の具体的 に対して適宜報告を求めることや,品質管理の観点から,点検機器及び部品の健全性確認や試運転確認等の重要項目について現場監督者に立会いを求めることがあるが,現場監督者や作業従事者に対して個々の具体的な作業について指図や管理をすることはない。被告中部電力が調達したシール材は,被告中部プラントサービスにおいてサイズ,個数及び材質等の確認が行われ,被告太平電業を経て野口工業に渡される。 被告中部プラントサービスは,作業全般の調整業務を行う現場責任者に自社の担当課長を選任するとともに,作業現場の監督をする現場監督者に自社の従業員を選任する。被告太平電業は自社の従業員から工事担当者を選任し,野口工業等の2次下請業者は自社の従業員のうち3年以上の従事経験や一定の資格を有する者から現場作業指揮者を選任する。 被告中部プラントサービスの現場責任者は,概ね数十件程度の案件を抱えて作業現場を掛け持ちしているため,特定の作業現場に常時立会うことはできない。また,現場監督者は,複数の作業現場を掛け持ちすることがあるため,特定の作業現場に常時立会うことができるわけではないものの,ほぼ現場に常駐し,朝礼や現場での打合せに参加するほか,被告太平電業の工事担当者を通じて作業を監督した。監督の具体的対象は,元請契 約の内容に沿った作業であるか,安全に作業が遂行できているかという点であり,その範囲で被告太平電業の工事担当者に対する指導助言を行う。 野口工業等の2次下請業者の従業員に対して,被告中部プラントサービスの現場責任者や現場監督者が直接に,指揮,命令又は監督することはない。 また,被告中部プラントサービスの従業員が2次下請業者の従業員らとともに現場で作業を行うことはない。 被告太平電業は,足場材や工具等を手配するほか,工事担当者において野口 は監督することはない。 また,被告中部プラントサービスの従業員が2次下請業者の従業員らとともに現場で作業を行うことはない。 被告太平電業は,足場材や工具等を手配するほか,工事担当者において野口工業の現場作業指揮者を指揮監督し,朝礼を主宰した。ガスケット等の取り外しが困難な場合や,作業箇所が重要箇所である場合に,被告太平電業の工事担当者が自らガスケット等の取り外しをすることがあったほか,かつては,被告太平電業の従業員が現場作業指揮者を担当することもあった。 野口工業の作業終了後は,被告太平電業,被告中部プラントサービス及び被告中部電力の社員が順次それぞれの立場で作業の完了を確認する。 (6) Dの従事した作業等についてア浜岡原発の区域について浜岡原発内には放射線管理区域が設定されており,同区域においては,作業場所の放射線レベルと作業内容に応じて,①放射性物質による汚染が一定以上となる黄服エリア又は,②汚染が低レベルに留まる青服エリアが定められる。建屋の中には,黄服エリアと青服エリアしかない。 黄服エリアにおける作業では,作業員が汚染防護服及び高性能フィルター全面マスクを着用するほか,高性能フィルター付き局所排気装置が設置されており,汚染の程度がより高い場合には,「放射性物質除去のためのクリーンハウス」が設営されその内部で作業が行われることもある。黄服 エリア内において作業員がマスクを装着しないでパッキンの取替作業をすることはない。 青服エリアにおける作業では,作業員が汚染防護服を着用するが,仕事内容により,マスクをつけるときとつけないときがあった。 放射線管理区域外における作業では,作業服等の指定は行われていなかった。 野口工業の社員が,黄服エリアでガスケットやグランドパッキンの取り外し作業を スクをつけるときとつけないときがあった。 放射線管理区域外における作業では,作業服等の指定は行われていなかった。 野口工業の社員が,黄服エリアでガスケットやグランドパッキンの取り外し作業をする割合と青服エリアで同様の作業をする割合はおよそ7対3の割合であった。 イ浜岡原発内のアスベスト含有製品についてDが作業に従事していた可能性があるパッキン等のうち,アスベスト含有のものは以下のとおりである(なお, Dが原子炉機器冷却海水ポンプの点検作業に従事していたことを認めるに足りる的確な証拠はない。)。 (ア)1号機関連余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ本体内のバルブ(弁)ボンネット部分や配管との接合部分に使用されていたガスケット並びに入口配管及び「除洗座フランジ」に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン(イ)2号機関連余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ本体内のバルブ(弁)ボンネット部分や配管との接合部分に使用されていたガスケット及び「スプール配管」のフランジ部分に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン並び に「メカシールクーラー冷却水」に使用されていたシートパッキン(ウ)3号機関連余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ入口配管及びポンプ出口配管に使用されていたガスケットⅱ ポンプの付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン(エ)4号機関連余熱除去ポンプ関係ⅰ ポンプ入口配管及びポンプ出口配管に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン(オ)その他① 焼却炉の配管フランジ,排気筒及び灰冷却ボックスに使用されていたガス 及びポンプ出口配管に使用されていたガスケットⅱ 付属配管に使用されていたガスケット及びシートパッキン(オ)その他① 焼却炉の配管フランジ,排気筒及び灰冷却ボックスに使用されていたガスケット(アスベスト含有製品は9個)② 以下のサンプポンプ(槽に溜まった水を外に排出するためのポンプ)及び収集ポンプ(槽に水を溜めるためのポンプ)の配管接合部のガスケット及び弁の部分のグランドパッキンⅰ 1号機原子炉建屋の原子炉格納容器内に設置された「機器ドレンサンプポンプ」,「床ドレンサンプポンプ」及び「油ドレンサンプポンプ」ⅱ 3号機タービン建屋内に設置された「SDサンプポンプ」ⅲ 3号機タービン建屋内に設置された「高電導度廃液(HCW)サンプポンプ」(アスベスト非含有のものもある。)ⅳ 2号機原子炉建屋の原子炉格納容器内に設置された「機器ドレン サンプポンプ」及び「床ドレンサンプポンプ」ⅴ 3号機補助建屋内に設置された「高電導度廃液(HCW)サンプルポンプ」ⅵ 3号機の補助建屋内に設置された「HCW収集ポンプ」(黄服エリアが多い。)ⅶ 「シャワードレンサンプポンプ」ⅷ 「高電導度廃液収集ポンプ」ウ野口工業及び Dの作業内容について野口工業の従業員は,浜岡原発1号機から4号機までの建屋の内外の作業を行っていた。屋外での作業は,全体の1,2割である。 Dが入社した昭和61年以降の野口工業における作業の大半は,浜岡原発内で行われていた。 Dは,昭和61年9月末ころから平成16年8月18日まで,野口工業の従業員として,補機と呼ばれる機器であるポンプ,タンク,クラッドセパレーター(遠心分離器)及び焼却炉の分解,点検及び手入れ等の作業を他の従業員と共同して行っていた。 Dは,他 18日まで,野口工業の従業員として,補機と呼ばれる機器であるポンプ,タンク,クラッドセパレーター(遠心分離器)及び焼却炉の分解,点検及び手入れ等の作業を他の従業員と共同して行っていた。 Dは,他の社員と同じ内容の作業をローテーションで行っていた。 Dの作業内容に時期による変化はない。 野口工業が取り扱うポンプ等の台数は,1か月当たり5台程度であり,,取り外すガスケット等の枚数は,野口工業全体で1か月当たり平均20枚から30枚程度であった。ガスケット等の取り外し及びフランジ面の清掃には,1回当たり平均約2分程度を要し,短い場合には数秒,長い場合には約10分程度かかる。ガスケット等の取り外し作業は,概ね3名ないし7名程度の作業員が共同で行っていた。 浜岡原発における Dの作業日数は,平成14年4月1日から平成16 年8月18日(871日間)までの間において合計586日であった。そのうち,パッキン等を取り外す作業に従事した日数は,放射線管理区域外において合計2日であり,青服エリアにおいて合計22日(そのうち,グランドパッキンの取り外しは5日),黄服エリアにおいて合計68日(そのうち,グランドパッキンの取り外しは3日)であった。 エ具体的な作業方法について作業全体の工程は,①ポンプの分解,②分解部品の点検手入れ,③計測や非破壊検査,④顧客の外観検査,⑤組立て,⑥試運転・検収から成っており,ガスケットやパッキンの取り外し作業は,①②に当たる。 配管のフランジ部分に使われていたガスケット等は,スパナ,ラジェット,ハンマーにより配管のボルトを緩めることで自然に脱落するものもあれば,締め付けられていたためにフランジ面に固着している場合もある。 作業員は,ガスケット等をはがしやすくするため,水を含ませたウエス(布) マーにより配管のボルトを緩めることで自然に脱落するものもあれば,締め付けられていたためにフランジ面に固着している場合もある。 作業員は,ガスケット等をはがしやすくするため,水を含ませたウエス(布)で固着したガスケット等を濡らせたり,スクレイパーという工具を用いて剥離する。スクレイパーを用いても剥離されない場合,作業員は,剥離剤を塗布することによりガスケット等をふやかして剥離していた。剥離剤はゼリー状あるいはスプレー状(ガスケットリムーバー)のものであり,ガスケットリムーバーを使用する際,作業員は,放射線管理区域であるか否かにかかわらずゴーグルとマスクを装着していた。 作業員は,ガスケット等を取り外した後,フランジ面を水で濡れたウエスで拭き,ガスケット等のかすや錆を取り除く。ウエスで不十分な場合には,サンドペーパー(研磨材)や水を含ませたスコッチブライト(ナイロンたわし)を用いてフランジ面を磨き,ガスケット等のかすや錆を除去する。その際,作業員は,フランジ面の状態を確認するため,顔をフランジ面に約30センチメートル程度まで近づけることになる。作業員は,強固 な錆等に対してワイヤーブラシを用いることがあるが,フランジ面に対して使用することはない。 被告太平電業の工事担当者であった Fは,フランジ面を清掃する作業員に対し,ガスケットを取り外した後,ほこりが舞いそうなときはマスクを着用するよう指示していた。 分解の途中でガスケットが自然にはがれなくても,半分はがれているような状態のときは,ウエスで濡らさないでそのまま取る場合もあった。 グランドパッキンの取り外し作業は,スタッフィングボックスからケガキ針等を用いてすくい上げるようにして取り外すというものであり,その際,グランドパッキンは, さないでそのまま取る場合もあった。 グランドパッキンの取り外し作業は,スタッフィングボックスからケガキ針等を用いてすくい上げるようにして取り外すというものであり,その際,グランドパッキンは,回転軸に接触する部分が硬く,他の部分が油で湿った状態であるため,回転軸に固着することはほとんどなく,1分程度で容易に取り外すことができる。その後,作業員は,スタッフィングボックス内をナイロンたわしやサンドペーパーを用いて清掃した。 作業員は,平成12年まで,黄服エリア以外の場所においては,剥離剤を使用する場合を除き,概ねマスクを装着しないままガスケット等の取り外し作業を行っており,取り外し後に行われるフランジ面の清掃作業等において,ほこりや錆の飛散が予想される場合にのみ,現場作業指揮者の指示や各自の判断によりマスクを装着したり,タオルを口に巻くなどしていた。 使用していたマスクは,使い捨て式の防じんマスク(使い捨て防じんマスクDS2)と平成11年ごろから使用されるようになったフィルター交換式のマスクの2種類であった。いずれも,口と鼻の周りを隠すような形のマスクであった。 取り外した古いガスケット等は,取り外す際に湿潤化しているので表面は濡れているが,裏面は濡れていない場合がある。作業員は,取り外 したガスケット等をすぐに各自専用のビニール袋に入れて口を縛り,廃棄物を担当する係員に引き渡す。 広い部屋などで,野口工業の社員と他の会社の社員が並行して作業をすることもあった。 (7)放射性物質対策及びアスベスト対策についてア放射性物質対策について黄服エリアにおいて,放射性物質の粉じんが発生する作業場所は,工事別計画書に従い,機器ごとに指定している。具体的な機器や作業内容に応じて必要な装備を指示する。 ア放射性物質対策について黄服エリアにおいて,放射性物質の粉じんが発生する作業場所は,工事別計画書に従い,機器ごとに指定している。具体的な機器や作業内容に応じて必要な装備を指示する。 青服エリアの作業については,放射線管理の見地からは,マスクの着用は指示しておらず,監督者又は指揮者の判断に委ねていた。 イアスベスト対策について平成6年ないし平成13年に作成されたガスケット及びジョイントシートパッキンの製品安全データシートには,「使用済みの本製品を取り替える際に発生する粉じん中に吸入性繊維が含まれるので,長期間にわたり大量に吸入すると呼吸器系障害を生じる可能性がある。」,「長期間,多量にクリソタイル石綿を吸入したとき,じん肺などを起こすおそれがある。」,「本製品の切断加工,ガスケットの取り外し等は石綿障害予防規則でいう『石綿を取り扱う作業』に該当するので,下記の点に注意すること。但し,所定形状・寸法に加工されたガスケットの単純な取付け作業は『石綿を取り扱う作業』に該当しない。①石綿障害予防規則に従い,作業主任者の選任,特殊健康診断等を実施する。②屋内の取り扱い作業場所では,局所排気装置・集塵装置の設置などを行い粉じんの飛散を防止すること。③粉じんの飛散防止ができない場合には,作業者に適切な呼吸用防護具(防じんマスク)を着用させること。・・・④取扱い後は,うがい及び 手洗いを励行すること。⑤作業時は湿潤化を推奨する。・・・粉じんの発生が防止できない時は,呼吸用保護具を着用する必要がある。呼吸用保護具としては,濃度に応じて国家検定を受けた取換え式,使い捨て式防じんマスク等を選定すること。なお,取換え式防じんマスク及び使い捨て式防じんマスクは顔面への密着に留意するとともに,特に,取換え式防じんマスクは,フ 度に応じて国家検定を受けた取換え式,使い捨て式防じんマスク等を選定すること。なお,取換え式防じんマスク及び使い捨て式防じんマスクは顔面への密着に留意するとともに,特に,取換え式防じんマスクは,フィルターの点検と交換等の保守管理を適切に行うこと。」などの記載がある。原子炉機器冷却海水ポンプに使用するシール材の製品仕様,注意事項にも上記と同様の記載があるほか,「人についての症例:石綿肺(じん肺),石綿肺がん,悪性中皮腫がある。・・・悪性中皮腫は,クリソタイル石綿も原因の一因かが議論されている。」などと記載されている。 Eや野口工業の作業員は,シール材に含まれているアスベストの危険性についての認識が十分でなく,ガスケット等の交換作業の際に,常にマスクをしていたわけではなく,マスクをしないで作業することがあった。 平成11年末ころ,被告中部プラントサービスは,労働基準監督署から,ガスケット等の取り外し作業に際して防じんマスクの着用や湿潤化を徹底するよう指導された。被告中部プラントサービスは,これを受けて,平成12年3月15日,下請企業等を対象に特定化学物質等作業主任者技術講習を実施し, Dはこれに参加した。同講習では,石綿に関して,テキスト2,3頁分に集約された石綿の名称,用途,有害性,障害の予防及び保護具等の記述内容が確認された。被告太平電業は,平成12年9月12日, Dらに対し粉じん特別教育を行った。 被告中部プラントサービスは,平成12年1月以降,ガスケット等の取り外し作業を行う作業員に対し,湿潤化と防じんマスク着用の徹底を指導監督した。被告太平電業は,平成12年ころから,ガスケット等を取 り扱う場合には,マスク等を装着するよう指導した。 平成12年以降は,被告中部プラントサービスや被告太平電業の指示によ 導監督した。被告太平電業は,平成12年ころから,ガスケット等を取 り扱う場合には,マスク等を装着するよう指導した。 平成12年以降は,被告中部プラントサービスや被告太平電業の指示により,マスクの着用などアスベスト対策が執られるようになり,作業員は,ガスケット等の取替作業において必ず防じんマスク,全面マスク又はフィルター付きマスクを着用するようになった。 なお,黄服エリアにおける作業で従前から着用されていた全面マスクは,汚染物質を通さない粉じんの吸着管があるため,アスベストも通さない。 Fが浜岡原発の作業にあたって,アスベスト濃度を測定したことは一度もない。 (8) Dの中皮腫の発症及びその後の経過についてDは,平成16年8月30日,腹部の異常を訴え,聖隷浜松病院消化器科に入院した。 Dは,同年9月9日,腹膜原発悪性中皮腫と診断され,同年11月5日まで引き続き入院した。その後,同月15日から18日,同年12月20日から23日,平成17年1月24日から3月28日,同年5月11日から26日と合計5回にわたり,同病院に入院した。 Dは,平成17年5月27日から榛原総合病院に入院し,同年6月8日,腹膜悪性中皮腫を原因として39歳で死亡した。 (9)労災認定手続の経過等についてア平成18年2月14日,磐田労働基準監督署(以下「磐田労基署」という。)から野口工業に対し,労災関係書類の提出が命じられた。 Eは,平成18年2月16日,孫請業者である野口工業が保有する資料だけでは労災関係書類を作成できなかったため,被告太平電業の労務担当者である I に相談した。 Iは, Eに協力 することとし,当時浜岡事業所所長であった Jから聞き取り かったため,被告太平電業の労務担当者である I に相談した。 Iは, Eに協力 することとし,当時浜岡事業所所長であった Jから聞き取りをして資料の提供を受け,平成18年3月3日付けで,「労災保険給付にかかわる報告書」と題する E名義の文書(甲A5の1)を作成した。同文書には以下の記載がある。 (ア)取り扱っていた石綿製品の名称(含有する石綿繊維の種類,含有率)「①名称ジョイントシート,高温バルブ用パッキン(配管・機器フランジ部のパッキン)②種類クリソタイル石綿(白石綿)③含有率 65~80%」(イ)石綿の取扱量(月間)「弁・配管・機器類のフランジ部の成型パッキン及び,弁・機器のグランドパッキン取替。(約20~30枚/月)」(ウ)作業工程図「機器点検概略作業のフロー工具機材準備点検→作業エリアシート養生→分解前記録採取→機器分解→旧パッキン,ガスケット取外し→パッキン,ガスケット当り部ミガキ→機器組立→試運転→作業エリア撤去除染片付」(エ)作業姿勢「①機器分解時は,約6割全面マスク使用②フランジ部等の近くで目視確認をしながら,ミガキ作業を行う。」(オ)保護具の使用状況防じんマスク,手袋,作業着(カ)職歴及び石綿暴露作業従事歴所属場名有限会社野口工業(浜岡原子力発電所内)在職期間昭和61年9月29日~平成17年6月8日 石綿ばくろ作業従事期間昭和61年9月29日~平成16年8月18日石綿ばくろ作業内容定期点検工事ポンプ点検工事等におけるパッキン交換作業磐田労基署の厚生労働事務官からの問合せを受けて, Iは,平成18年 平成16年8月18日石綿ばくろ作業内容定期点検工事ポンプ点検工事等におけるパッキン交換作業磐田労基署の厚生労働事務官からの問合せを受けて, Iは,平成18年7月6日,磐田労基署に対し,『石綿の取扱量(月間)』について,パッキンの1ヶ月の取替枚数の算出根拠につき,「経験から過去1人が取り扱う量を概算(最大値30枚)で報告した。客観的なデータ(算出根拠)ではない。」などの報告をファックスで行った。 イ聖隷浜松病院の K 医師は,平成18年7月5日,磐田労基署長に対して,平成16年9月9日実施の組織診(生検)により Dを腹膜悪性中皮腫と診断したこと,本例は腹膜原発であり,胸膜,肺の病理検索はされていないが,石綿ばく露と発症には何らかの因果関係があるものと推測されること等を内容とする意見書を提出した。 浜松医科大学付属病院の医師(地方労災医員)である L 医師は,平成18年7月28日,磐田労基署長宛で,「本症例をまとめると①石綿のばく露歴あり(病歴より)②石綿肺と肺がんの症状,所見はない(病歴,CTより)③中皮腫の病理診断あり(・・・)(・・・)以上より・・・おそらく石綿によるかつ確定的な腹膜中皮腫と考えられる。」との内容の意見書を提出した(甲A8)。 ウ磐田労基署の厚生労働事務官は, Dについての実地調査復命書(甲A4)を作成し,磐田労働基準監督署長は平成18年8月30日,これを決裁し,事件を名古屋東労働基準監督署に回送した。上記実地調査復命書には以下の記載がある。 (ア)傷病名について「本傷病名は本通達(平成18年2月9日付け基発第0209001号『石綿による疾病の認定基準について』)第1-1(3)の中皮腫と考えられるので,石綿との関連が明らかな疾病に該当する。」(イ)石 て「本傷病名は本通達(平成18年2月9日付け基発第0209001号『石綿による疾病の認定基準について』)第1-1(3)の中皮腫と考えられるので,石綿との関連が明らかな疾病に該当する。」(イ)石綿ばく露作業について「作業工程表,現場写真及び事業主聴取書より以下のような作業を行っていたことが確認できる。 ① 原発内部において,ポンプ等の点検手入れ作業の際に,フランジと呼ばれる部分に使用される石綿含有のパッキン(種類:クリソタイル石綿/含有率:65~80%)の交換を行なう。 ② 古いパッキンの中にはくっついてしまって剥がれにくくなっているものもあるので,鉄の爪を使ってそぎ取るようにパッキンを剥がす。手作業できれいに取るため顔を近づけて作業を行っている。 ③ 防じんマスクの着用については,当該事業場では平成12年頃から着用が徹底されてきたが,それ以前はアスベストの有害性に関する認識がなかったため,マスクの着用は徹底されてなく,マスクなしで作業を行っていたものと考えられる。 ④ パッキンの交換に要する時間は1回に10分程度,被災者は1ヶ月に20~30枚程度行っていた。10分×30枚×(18年×12ヶ月)=1080時間上記作業は本通達第1-2(7)『石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物,その附属施設等の補修又は解体作業』に該当するばく露業務と考えられる。」(ウ)調査官意見「被災者は上記のとおり当該事業場において18年間に渡り石綿ばく露業務に従事していたものと認められ,かつ,傷病名は石綿と関連が明らかな中皮腫である。 したがって,本件は石綿ばく露労働者に発症した腹膜の中皮腫で,本通達第2-3(1)のイ『石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること』に該当するものと判断できる。よって,別表第1の2第 したがって,本件は石綿ばく露労働者に発症した腹膜の中皮腫で,本通達第2-3(1)のイ『石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること』に該当するものと判断できる。よって,別表第1の2第7号の7に該当する業務上の疾病として取り扱うのが妥当と思料する。」エ名古屋東労働基準監督署所属の厚生労働事務官は,平成18年10月19日, Dについて,昭和61年9月から平成16年8月まで原発内においてポンプの分解,点検,手入れ業務の中で石綿含有のパッキン(クリソタイル石綿,含有率65~80%)の除去,取替作業をしていた,腹膜悪性中皮腫が発症し,職業性アスベストばく露作業が1年以上あることから,業務により当該傷病を発症したものと認められるなどと記載した調査結果復命書を作成した。 名古屋東労働基準監督署長は,平成18年10月24日, Dの疾患を業務災害と認定し,遺族補償年金,遺族特別支給金,遺族特別年金,葬祭料の支給を決定してこれを原告 A に通知した。 2(1)そこで,上記認定事実に基づいて各争点について以下検討する。 まず, Dのアスベストばく露の有無については,以下の点を指摘することができる。① Dは,腹膜原発中皮腫で死亡したものであるが,中皮腫の主たる発症原因は石綿ばく露とされ,他の要因としてエリオナイト,放射線療法,胸膜の重大な傷跡,SV40ウィルスが指摘されているところ(1(2)),エリオナイトは日本で産出されていない鉱物であり, Dがこれに触れる可能性があったとは考え難いし,中皮腫に罹患する前に Dの健康状態に問題はなかった(1(4))のであるから, Dの中皮腫の発症原因は石綿ばく露であると認められる。この点は,労災認定の際の主治医の意見でも「石綿ばく露と発症には何らかの因果関係があるものと推測される」と 題はなかった(1(4))のであるから, Dの中皮腫の発症原因は石綿ばく露であると認められる。この点は,労災認定の際の主治医の意見でも「石綿ばく露と発症には何らかの因果関係があるものと推測される」とされ,地方労災医員の意見でも「おそらく石綿によるかつ確定的な腹膜中皮 腫と考えられる」とされているところである(1(9)イ)。したがって,Dは生前にアスベストのばく露を受けたと認められる。②そして,野口工業における Dの作業内容には,ポンプや焼却炉等の点検検査時におけるガスケットやパッキンというシール材の交換作業が含まれていたところ(1(6)ウ,エ),ポンプや焼却炉等に使用されていたシール材にはアスベストを含有する製品が使用されていた(1(6)イ)のである。 Dは,スパナ,ラジェット,ハンマーでボルトを緩めるなどして配管等の分解作業をし,ボルトを緩めるなどしたことによって配管の継ぎ目等に使用されていたガスケット等が自然にはがれた場合を除いて,フランジ面に張り付いたガスケット等を鉄の爪とも呼ばれるスクレイパーを使ってそぎ取るようにはがし,その後に,ガスケット等がはずれたフランジ面をサンドペーパー(研磨材)やナイロンたわし等で磨いて,フランジ面に張り付いたガスケット等のかすや錆をきれいにするという作業をしていたもので(1(6)エ),ガスケット等のかすや錆が研磨の際に飛散するおそれがあった。浜岡原発で使用されていたシール材の製品安全性データシートにおいても,取扱い上の注意として,ガスケット等の取り外し作業は石綿障害予防規則でいう「石綿を取り扱う作業」に該当するから,作業時には作業者に防じんマスクを着用させるとともに湿潤化を行うなど必要な措置を行うことが記載されている(1(7)イ)。 ③そして,平成11年末ころに労働基準監督署の指導を受け 作業」に該当するから,作業時には作業者に防じんマスクを着用させるとともに湿潤化を行うなど必要な措置を行うことが記載されている(1(7)イ)。 ③そして,平成11年末ころに労働基準監督署の指導を受け,平成12年ころ以降浜岡原発においてもアスベスト対策が行われるようになったが,それ以前においては,青服エリアや放射線管理区域外における作業についてマスクの着用が徹底されていなかったなど(1(6)エ,(7)イ)アスベストの有害性を意識したアスベスト対策は何ら実施されていなかったのである。 被告らは,平成12年以前もガスケットの交換作業の際には濡れたウエスを使用していたから,アスベストが飛散することはなかったと主張するが,濡 れたウエスを使用した主眼はガスケット等をはがしやすくする点にあったところ,証人 Fや証人 Gもボルトを緩めた際に半分とれかかった場合は濡らさないこともあった,サンドペーパーは濡らさないで使用したなどと証言しているのであり,アスベストのかすや錆の飛散防止という観点から湿潤化が図られていたものではないから,それによりアスベストの飛散が完全に防止されていたとは認め難いものである。平成12年以前のマスクの着用についても,ほとんどはガスケット等をはがした後にほこりが舞うことが予想された場合に着用したというのであり(1(6)エ),ガスケット等をはがす際には着用されていないし,アスベスト繊維自体目に見えない微細な物であるから(1(1)ア), Dが吸入した可能性を否定することはできない。 ④なお,被告らは, Dが野口工業に入社する以前の昭和56年3月から昭和60年5月までの間,かつお一本釣り漁船で漁師として稼働していたことから,その間にアスベストにばく露したと考えるのが自然であると主張するところ,証拠(甲B2)によれば,平成11年度 6年3月から昭和60年5月までの間,かつお一本釣り漁船で漁師として稼働していたことから,その間にアスベストにばく露したと考えるのが自然であると主張するところ,証拠(甲B2)によれば,平成11年度から平成15年度までの間に労災認定された中皮腫の産業分類別件数によると,船舶製造・修理業が54例(23.5%),石綿製品製造業が47例(20.4%),建設・解体作業26例(11.3%),断熱作業19例(8.3%)の順となっており,船舶製造・修理業が最も多いところではある。これは,船舶に耐熱性・断熱性のあるアスベストが多用されていることによるものであるが,漁師として船舶に乗り込むことと船舶を製造・修理することを直ちに同視することはできないものであって, Dが漁師として乗船していたとしても(1(4)),そのことから,直ちにその間にアスベストにばく露したということはできない。以上の点を考慮すると, Dは,浜岡原発の作業中にアスベストにばく露したものと認められる。 (2)ア次に,被告らの安全配慮義務の有無について検討する。 イ安全配慮義務は,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において,当該法律関係の付随的義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般に認められるべきものである(最高裁判所昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)。 そして,注文者と請負人との間において請負という契約の形式をとりながら,注文者が単に仕事の結果を享受するにとどまらず,請負人の雇用する労働者から実質的に雇用関係に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていると認められる場合,すなわち,注文者の供給する設備,器具等を用いて,注文者の指示のもとに労務 負人の雇用する労働者から実質的に雇用関係に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていると認められる場合,すなわち,注文者の供給する設備,器具等を用いて,注文者の指示のもとに労務の提供を行うなど,注文者と請負人の雇用する労働者との間に実質的に使用従属の関係が生じていると認められる場合には,その間に雇用関係が存在しなくとも,注文者と請負人との請負契約及び請負人とその従業員との雇用関係を媒介として間接的に成立した法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入ったものとして,信義則上,注文者は当該労働者に対し,使用者が負う安全配慮義務と同様の安全配慮義務を負うものと解するのが相当である。これは,注文者,請負会社及び下請会社と孫請会社の従業員との間においても同様に妥当する。 ウ(ア)野口工業は,独立の有限会社であるとはいえ,その業務のほとんどは浜岡原発内の補機等の保守点検作業であり(1(6)ウ),その作業は注文者である被告中部電力から被告中部プラントサービスが請け負い,同被告から被告太平電業が請け負い,さらに同被告から野口工業が請け負ったものであった(1(5)ア)。 (イ)被告太平電業は,作業現場に工事担当者を置いて野口工業の現 場作業指揮者を指揮監督し,朝礼を主宰した。工事担当者は,野口工業の作業員に代わって実際に作業を行うこともあった(1(5)イ)。そうすると,被告太平電業は野口工業の従業員であった Dから実質的に雇用関係に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていたと認められるから,安全配慮義務を負う。 (ウ)被告中部プラントサービスは,実際の作業手順,作業スケジュールを記載した作業手順書及び作業工程表を作成し,これをもとに野口工業ら2次下請業者の現場作業指揮者が細かい ,安全配慮義務を負う。 (ウ)被告中部プラントサービスは,実際の作業手順,作業スケジュールを記載した作業手順書及び作業工程表を作成し,これをもとに野口工業ら2次下請業者の現場作業指揮者が細かい施行方法を決定していた。 また,被告中部プラントサービスは,作業全般の調整業務を行う現場責任者と作業現場の監督をする現場監督者を選任していたところ,現場監督者はほぼ現場に常駐し,朝礼や現場での打合せに参加するほか,被告太平電業の工事担当者を通じて作業を監督した。 そして,被告中部プラントサービスは,工事要領書を作成していたところ,これには点検工事に当たって被告中部プラントサービスの現場監督者が留意し作業員に対して指導確認すべき重要管理項目等が詳細に記載されていた(1(5)イ)。 このような事情によれば,被告中部プラントサービスは現場監督者による被告太平電業の工事担当者に対する指示という形で間接に野口工業の従業員である Dを指揮監督しており,また必要があれば Dに直接指示を行うことも可能であったといえるから,請負人の雇用する労働者から実質的に雇用関係に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていたと認 められるから,安全配慮義務を負う。 (エ)被告中部電力は,作業現場である浜岡原発の敷地・建物を所有・管理し,放射線管理の観点から作業員の出入り等を厳重にチェックしていた。また,作業員に対し防護服,工具の一部及び材料等を提供し,請負会社である被告中部プラントサービスに対し定期点検の実施要領である工事仕様書を渡していた(1(5)ア,イ)。 しかし,工事仕様書に記載される事項は概括的な事項にとどまっており(1(5)ア),社員を現場に常駐させていたわけではなく,進行状況については被告中部 である工事仕様書を渡していた(1(5)ア,イ)。 しかし,工事仕様書に記載される事項は概括的な事項にとどまっており(1(5)ア),社員を現場に常駐させていたわけではなく,進行状況については被告中部プラントサービスの現場監督者に対して適宜報告を求め,また品質管理の観点から重要項目について現場監督者に立会いを求めていたにとどまるものであるから(1(5)イ),野口工業の雇用していた Dから実質的に雇用関係に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていたとは認められず,安全配慮義務を負うものではない。 エ(ア)そこで,被告中部プラントサービス及び被告太平電業の安全配慮義務違反の有無について検討する。 (イ)安全配慮義務の前提として,使用者が認識すべき予見義務の内容は,生命・健康という被害法益の重大性に鑑み,安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り,必ずしも生命・健康に対する障害の性質,程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はないと解される(福岡高等裁判所平成元年3月31日判決・判例時報1311号45頁)。 上記認定事実によれば,シール材は,明治時代に生産が開始された我が国における代表的な石綿製品であり(1(1)ア),継続的にシール材を取り扱っていた被告中部プラントサービス及 び被告太平電業は,当然,シール材にアスベストが使用されていたことを認識していたものと推認できる(提出されている証拠上,平成6年に作成されたシール材の製品安全データシートにもアスベスト含有が記載されている。)。仮に,被告中部プラントサービス及び被告太平電業がシール材にアスベストが含有されていることを認識していなかったとしても,上記のような点に鑑みれば,被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,シール材にア 告中部プラントサービス及び被告太平電業がシール材にアスベストが含有されていることを認識していなかったとしても,上記のような点に鑑みれば,被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,シール材にアスベストが含有されていることについて予見可能であったと認められる。そして,昭和35年にはじん肺法が施行され,昭和46年制定の旧特化則やその後の特化則でアスベスト粉じんが発散する屋内作業場における局所排気装置の設置や呼吸用保護具の備付け等の規制が設けられ,昭和47年にはILOやWHOがアスベストのがん原性を認めて国際的な知見が確立され,昭和50年改正の特化則で石綿作業の湿潤化等の規制が設けられ,昭和51年には石綿代替化に関する通達が出されているのであるから(1(3)),被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,シール材の危険性について少なくとも安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧を有することができたというべきである。 したがって,被告中部プラントサービス及び被告太平電業にシール材の危険性についての予見可能性が認められる。 (ウ)アスベストの粉じんは,これを人が吸引した場合には,悪性中皮腫等を発症させて人の生命・健康を害する危険性があるところ(1(1)ア,(2)),被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,上記のとおり,これを予見することが可能であったと いえるから,労働者が石綿の粉じんを吸入しないようにするために万全の措置を講ずべき注意義務を負担していたと解される。 具体的には,被告中部プラントサービス及び被告太平電業には,アスベストが使用されている材料をできる限り調査して把握し,野口工業の現場作業指揮者や作業員である Dらに対して周知すべき注意義務がある。また,アスベストの人の生命・健康に対す 被告太平電業には,アスベストが使用されている材料をできる限り調査して把握し,野口工業の現場作業指揮者や作業員である Dらに対して周知すべき注意義務がある。また,アスベストの人の生命・健康に対する危険性について教育の徹底を図り, Dらに対してマスク着用の必要性について十分な安全教育を行うとともに,アスベスト粉じんの発生する現場で工事の進行管理,作業員に対する指示等を行う場合にはマスクの着用や湿潤化を義務付けるなどの注意義務があった。 そして,被告中部プラントサービス及び被告太平電業は,平成11年まで上記の義務を自覚的に履行しておらず,平成11年末ころの労働基準監督署による指導をきっかけにして,マスク着用や湿潤化の徹底及びアスベスト教育などのアスベスト対策を始めたものである(1(7)イ)。かかる経緯からすれば,上記義務を履行していなかった被告中部プラントサービス及び被告太平電業には安全配慮義務違反が認められる。 なお,シール材をアスベスト非含有の製品に代替する義務については,シール材を提供していたのは被告中部電力であったこと(1(5)イ),シール材の特性により現在に至ってもアスベスト非含有の製品に代替することは困難であること(1(1)イ)などを考慮すれば,かかる義務違反は認められない。 オしたがって,被告中部プラントサービス及び被告太平電業について,昭和61年から平成11年までの間アスベスト対策を行ってこなか った点につき安全配慮義務違反が認められる。 (3)次に,被告らの安全配慮義務違反と Dの死亡との間の因果関係の有無について検討する。この点については,以下の点を指摘することができる。 ①被告中部プラントサービス及び被告太平電業において平成12年以前にはマスク着用や湿潤化の徹底や Dの死亡との間の因果関係の有無について検討する。この点については,以下の点を指摘することができる。 ①被告中部プラントサービス及び被告太平電業において平成12年以前にはマスク着用や湿潤化の徹底や安全教育などのアスベスト対策を執ってこなかったために, Dがガスケット等の交換作業の際にアスベストにばく露したものであるから,上記被告らの安全配慮義務違反により Dはアスベストにばく露したものということができる。②そして,余熱除去ポンプ等に使用されていたガスケット等に含有されていたアスベストはクリソタイルであるところ(1(7)イ,(9)ア(ア)),クリソタイルが中皮腫を発症させるリスクは他のアスベストであるクロシドライトやアモサイトに比べて小さいと推測されているものの,単独で中皮腫を発症させるリスクがあるとされている(1(2))。③被告らは,記録が残っている平成14年4月1日から平成16年8月18日までの実績に基づいて青服エリアや放射線管理区域外における作業が少なかったことを指摘するが,そもそもそれ以前の作業状況は明らかではないし,中皮腫は石綿肺や肺ガンを起こす程度の吸入量よりもはるかに少ないばく露量(短期間,間歇的,低濃度)で発症するとされているのである(1(2))。④ところで,平成11年度から平成15年度までの間に腹膜中皮腫として労災認定された42人について,石綿ばく露開始から中皮腫発症の症状確認日までの潜伏期間は,平均42.3年,中央値43.5年,最大52.3年,最小27.3年であるところ(1(2)), Dは昭和61年に野口工業に入社し(1(4)),ガスケット等の交換作業に従事するようになり,平成16年に中皮腫を発症した(1(8))ものであるから,その潜伏期間は18年であり,上記事例と比較すると短い点が指摘できる。しかし,中皮腫 (4)),ガスケット等の交換作業に従事するようになり,平成16年に中皮腫を発症した(1(8))ものであるから,その潜伏期間は18年であり,上記事例と比較すると短い点が指摘できる。しかし,中皮腫 全体について見ると,潜伏期間の平均は39.4年,最小は11.5年であるし(1(2)),そもそも上記の数値は平成11年度から平成15年度までの5年間という限られた期間の中でのものであり,また,腹膜中皮腫はその症例数が少ないものであるから,それをもっておよそ潜伏期間18年で発症することはあり得ないなどということはできないものである(なお,被告らは, Dが昭和56年3月から昭和60年5月までの間漁船で漁師として従事していたとして,その間にばく露した可能性を指摘するところ, Dは昭和57年4月ころから勇喜漁業でカツオ漁に従事していたが,それでも潜伏期間は22年であり,上記統計の最小値に及ばないものである。)。以上の点を考慮すると, Dは被告中部プラントサービス及び被告太平電業の安全配慮義務違反によりアスベストにばく露し,それが原因で中皮腫を発症して死亡したものと認められ,上記被告らの安全配慮義務違反と Dの死亡との間には因果関係があると認められる。 (4)ア被告中部電力の工作物責任の有無について検討する。 イ工作物責任は,工作物が通常有すべき安全性を欠くときに認められ,工作物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきであると解される(最高裁判所昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁参照)。 ウ上記認定事実によると,シール材はポンプに配管を連結する箇所等に使用される原子力発電所において必須の部品であり耐熱性,強度などの点でアスベスト含有製品の使用が適 号1369頁参照)。 ウ上記認定事実によると,シール材はポンプに配管を連結する箇所等に使用される原子力発電所において必須の部品であり耐熱性,強度などの点でアスベスト含有製品の使用が適していること,シール材については現在においても法令によってアスベストの使用禁止から除外されていること,アスベスト非含有の適当な代替品が当時なかったことが認められる(1(1)イ)。そうすると,アスベスト非含有の代替品を使用することは当時としては不可能ないし著しく困難であっ たといえるから,社会通念上,工作物が通常有すべき安全性を欠くということはできない。 エしたがって,被告中部電力について工作物責任は成立しない。 (5)以上の結果, Dにおける腹膜中皮腫の発症及び Dの死亡は,被告中部プラントサービス及び被告太平電業の安全配慮義務違反によって生じたものと認められ,同被告らは,共同不法行為者として,これによって生じた損害を連帯して賠償する責任を負う。 (6)ア損害の発生及びその額について検討する。 イ上記認定事実によると,被告中部プラントサービス及び同太平電業の上記行為と相当因果関係を有する Dの損害は以下のとおりであると認められる。 (ア)逸失利益Dの基礎収入は,発症前の実収入額である年額374万6404円と認めるのが相当である。原告らは,賃金センサスの平均賃金を収入額とすべきであると主張するが, Dが将来平均賃金を得られた蓋然性があることを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 そうすると, Dの逸失利益は以下のように算定される。 年収生活費控除率 28年間のライプニッツ係数374万6404円×(1 できない。 そうすると, Dの逸失利益は以下のように算定される。 年収生活費控除率 28年間のライプニッツ係数374万6404円×(1-0.3)×14.8981=3907万0011円(1円未満切り捨て。以下特段の記載がない限り同様とする。)(イ)入院慰謝料Dの入院期間が約10月であったことを考慮し,300万円とするのが相当である。 (ウ)死亡慰謝料Dは,両親,妻及び就学中の子2人を扶養しており,一家の支柱であったと認められるから,死亡慰謝料は2800万円とするのが相当である。 (エ)葬祭関係費用150万円が相当である。 ウ(ア)相続上記 Dの損害賠償請求権(合計額7157万0011円)を妻である原告 A は2分の1(3578万5005円),子である原告 B及び同 Cは各4分の1(各1789万2503円。1円未満四捨五入)の割合で相続した。 (イ)損益相殺a 原告 A は,口頭弁論終結時までに平成17年7月分から平成23年9月分までの労災保険年金として1246万1852円(甲C3,弁論の全趣旨),労災葬祭料として62万2950円(甲C2),平成17年9月分から平成23年10月分までの遺族厚生年金として972万5256円(甲C4)を受領していることが認められる。 b 相続人のうちに,遺族年金の受給権を取得した者があるときは,遺族年金の支給を受けるべき者につき,支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で,その者が加害者に対して賠償を求め得る損害額からこれを控除 人のうちに,遺族年金の受給権を取得した者があるときは,遺族年金の支給を受けるべき者につき,支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で,その者が加害者に対して賠償を求め得る損害額からこれを控除すべきものであるが,いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についてまで損害額から控除することを要しない(最高裁判所平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁)。 本件において,遺族年金である労災保険年金の給付は,支給すべき事由が生じた月の翌月から始め,支給を受ける権利が消滅した月で終わるものであるから(労働者災害補償保険法9条1項),原告 A について労災保険年金の受給権の喪失事由が発生した旨の主張のない本件においては,口頭弁論終結の日である平成23年10月21日現在で原告 A が同年10月分までの労災保険年金の支給を受けることが確定していたものである。そして,労災保険年金等支払証明書(甲C3)によれば,原告 A について平成23年度における労災保険年金2か月分の支給額は30万2179円であり,1か月分の支給額は15万1089円であると認められる。 よって,本件において,上記損害額から控除すべき労災保険年金の額は,原告 A が既に支給を受けた1246万1852円と口頭弁論終結時において支給を受けることが確定していた同年10月分15万1089円の合計額である1261万2941円というべきである。 c 相続人が受給権を取得した遺族厚生年金等を損害賠償の額から控除するに当たっては,現にその支給を受ける受給権者についてのみこれを行うべきものである(最高裁判所平成16年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号987頁)。 よって,本件 するに当たっては,現にその支給を受ける受給権者についてのみこれを行うべきものである(最高裁判所平成16年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号987頁)。 よって,本件においては,原告 A についてのみ上記損害賠償請求権から損益相殺による控除をすべきものである。 d 原告 A の相続した上記損害賠償請求権(3578万5005円)から,これらの損益相殺の対象となる給付(合計額2296万1147円)を控除すると,原告 A の損害賠償請求権の 額は1282万3858円となる。 (ウ)弁護士費用本件事案の内容,難易等に照らすと,相当因果関係のある弁護士費用は,原告 A 分につき128万円,同 B及び同 C分につき各178万円が相当であると認められる。 エしたがって,原告 A につき1410万3858円,同 B及び同C につき各1967万2503円の損害賠償請求権が認められる。 また, これらの損害賠償請求権について,不法行為日として Dの死亡日である平成17年6月8日から支払済みまで年5分の遅延損害金が生ずる。 なお,本件において,原告 B及び原告 Cは各1900万7735円及びこれらに対する遅延損害金を請求しているから,原告B及び原告Cについては請求額の限度で認容される。 3 結論以上によれば,原告らの被告中部電力に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,原告 B及び原告 Cの被告中部プラントサービス及び被告太平電業に対する請求はいずれも理由があるからこれらを認容し,原告 Aの被告中部プラントサービス及び被告太平電業に対する請求は主文の限度で理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 静岡 主文 電業に対する請求はいずれも理由があるからこれらを認容し,原告Aの被告中部プラントサービス及び被告太平電業に対する請求は主文の限度で理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 理由 静岡地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官足立哲 裁判官大久保俊策 裁判官加藤優治
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