主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨。 第2 事案の概要(略称は原判決の例による。) 1 本件は、生活保護法に基づく生活扶助費の支給を受けている被控訴人らが、生活保護法による保護基準(昭和38年厚生省告示第158号。保護基準)に つき平成25年5月16日付け厚生労働省告示第174号による改定(本件改定)を受けてした所轄の福祉事務所長による生活扶助費を減額する旨の保護変更決定(本件各決定)は、憲法25条1項、生活保護法3条及び8条に違反する違憲、違法なものであると主張して、控訴人らに対し、本件各決定の取消しを求める事案である。 原審は、厚生労働大臣がゆがみ調整(2分の1処理)やデフレ調整を行うに当たっては、専門的知見に基づく適切な分析及び検討を行うことが必要であったが、厚生労働大臣はこれを怠っており、その判断の過程には過誤、欠落がみられ、本件改定はその裁量権を逸脱又は濫用したと認められるとして、本件各決定をいずれも取り消した。控訴人らがこれを不服として控訴した。 2 関係法令の定め等、前提事実、争点、争点に関する当事者の主張の要旨は、次のとおり補正し、後記3のとおり、当審における当事者の補充的主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄第2の2ないし5のとおりであるから、これを引用する。 原判決4頁16行目「、2-21」を削除する。 原判決47頁4行目「及び年間収入五分位階級別」を削除する。 3 当審における当事者の補充的主張(ただし、被控訴人らの主 原判決4頁16行目「、2-21」を削除する。 原判決47頁4行目「及び年間収入五分位階級別」を削除する。 3 当審における当事者の補充的主張(ただし、被控訴人らの主張は、被控訴人Aを除くものである。) 2分の1処理について(被控訴人らの主張)ア控訴人らは、2分の1処理が指摘される以前には、平成25年検証結果 につき、基準部会では、前2回の検証の指摘を踏まえて、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められると主張していたが、被控訴人らから2分の1処理に関する指摘がされた後は、平成25年検証における検証手法が唯一のも のであるということはできないとか、統計上の限界も認められたなどとして、平成25年検証の合理性、信頼性を一部否定するという主張の変遷が認められる。また、控訴人らは、原審において、2分の1処理をした理由につき、平成25年検証の結果判明した年齢階級別・世帯人員別・級地別の較差に係る指数をそのまま生活扶助基準に反映させた場合には、世帯類 型によっては、減額割合が10パーセントを大幅に超えるような世帯が相当数生じることが想定されるため、検証結果を反映させる比率を2分の1にとどめたことには、激変緩和措置として合理性が認められると主張しており、減額幅を2分の1とすることにしか言及しておらず、後記の控訴人らの主張アのような主張はしていない。このような控訴人らの訴訟態度か らすると、2分の1処理は正当な判断過程を経て実施されたものとは認められない。 イゆがみ調整の目的は一般低所得世帯の消費実態との乖離を調整することにあるから、その目的 らの訴訟態度か らすると、2分の1処理は正当な判断過程を経て実施されたものとは認められない。 イゆがみ調整の目的は一般低所得世帯の消費実態との乖離を調整することにあるから、その目的とする年齢差、世帯人員差及び地域差による格差の是正は、平成25年検証の結果をすべて反映されることによって完全に 達成されるものである。そうすると、できる限り平成25年検証の結果の 反映比率を高めることが、一般低所得世帯の消費実態との乖離の是正に近づくものといえ、すべての被保護世帯に一律に平成25年検証の結果を反映させる比率を半減させる2分の1処理を行うことは、ゆがみ調整の本質部分を改変するものである。仮に、ゆがみ調整の目的が生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化することにある としても、一律に2分の1処理をすると、増額されるべき世帯と減額されるべき世帯との間で不公平な結果となり、ゆがみ調整の目的に反することとなるので、やはりゆがみ調整の本質部分を改変するものといえる。 ウ控訴人らは、平成25年検証に当たっては、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界があり、生活扶助基準の展開部分については 平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われることが予定されていたことから、一律2分の1処理をすることは合理的な措置である旨主張する。 しかし、平成25年検証では、もともと10代以下の単身世帯のデータサンプルが少ないことから、10代以下の者がいる複数人世帯のデータか ら10代以下の者の消費水準を推計するために回帰分析の手法を用いることとされていた。このことからすると、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界があることを理由に、2分の1処理を行う必要はな 0代以下の者の消費水準を推計するために回帰分析の手法を用いることとされていた。このことからすると、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界があることを理由に、2分の1処理を行う必要はなかった。また、平成29年検証では、夫婦子一人世帯の年収階級別第1・十分位の生活扶助相当支出額と生活扶助基準がおおむね均衡することを確 認したにすぎず、そこから展開した様々な世帯類型、とりわけ本件改定時の2分の1処理によって不利益を受けた高齢世帯について、一般低所得世帯との消費実態との均衡が確認されたわけではない。このように、展開部分について更なる検証は実施されていないから、そもそも本件改定時において展開部分についての更なる検証は予定されていなかったといわざるを 得ず、展開部分について更なる検証が行われる予定であるとの理由で2分 の1処理をすることも、統計等の根拠に基づくものではなかったというべきである。したがって、一律2分の1処理をしたことは、平成25年報告書が示した統計等の客観的数値等との合理的関連性が認められない。 (控訴人らの主張)ア平成25年検証で採用された手法は、専門的議論の結果得られた透明性 の高い合理的なものであると評価することができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して分析する際に、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた。更に、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われることとされており、展開部分についても、平成25年検証の 結果等を前提に、その後も更なる検証が行われることが予定されていた。 また、平成25年検証は、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」(相対的な較差 も、平成25年検証の 結果等を前提に、その後も更なる検証が行われることが予定されていた。 また、平成25年検証は、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」(相対的な較差)について検証を行ったものであるところ、その影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組み合わせによって様々であると見込まれ、平成25年検証において算出された指数をそのま ま反映させた場合、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想された。この点、平成25年報告書には、平成25年検証の結果に関する留意事項として、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には(中略)とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」と明記されており、平成25年検証自体 が上記観点からの対策を講じることを要求していたといえる。 このようなことから、厚生労働大臣は、ゆがみ調整に加えて2分の1処理をすることとしたのである。 イゆがみ調整について、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)を2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)はそのまま反映させるというこ とは、理論的にはあり得る。しかし、このように世帯によって改定比率を 変える反映方法は、検証結果の取扱いの公平性を欠き、また、増額や減額に偏った反映をすることは、相対的な較差の検証という基準部会における本質的な検証の趣旨を改変することとなる。そのため、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果の反映の程度を、減額幅か増額幅かを問わず、一律に2分の1としたものである。 デフレ調整について(被控訴人らの主張)アデフレ調整の目的については、控訴人らが本件訴訟で当初主張していたとおり、生活保護受給 わず、一律に2分の1としたものである。 デフレ調整について(被控訴人らの主張)アデフレ調整の目的については、控訴人らが本件訴訟で当初主張していたとおり、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したことから、この可処分所得の実質的増加分のみ生活扶助基準額の見直しを行うというこ とであったと認めるべきであり、その後の主張の変遷は、控訴人らが訴訟手続上主張しているだけに過ぎない。 なお、仮に、デフレ調整の目的が、控訴人らの変遷後の主張である、一般国民との不均衡の是正であったとすれば、デフレ調整の結果としての生活扶助基準の引き下げに見合う、生活保護受給世帯の需要減少の有無の判 断や審査を行わないことに他ならないから、生活保護法8条2項に違反する重大な違法があることになる。 イ前記デフレ調整の目的からすれば、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分を正確に把握する必要があるところ、厚生労働大臣がデフレ調整において採用した生活扶助相当CPIの算出は、以下の点で、その判断 の過程及び手続における過誤、欠落があるというべきである。 指数品目の選定において、生活扶助費で支出される余地のない品目を除外しただけで、教養娯楽費や教養娯楽耐久財などを除外しなかったこと。 これによって、生活保護受給世帯における支出割合が必ずしも大きく ない教養娯楽費や教養娯楽耐久財などのウエイトデータが加重され、そ の結果、これらの品目の物価下落が強調されることとなり、また、平成22年の地上デジタル放送への移行の際、生活保護受給世帯には無料のチューナーが配布されているから、平成20年の生活扶助相当CPIで把握された物価動向は、生活保護受給世帯が直面した物価動向と明確に 成22年の地上デジタル放送への移行の際、生活保護受給世帯には無料のチューナーが配布されているから、平成20年の生活扶助相当CPIで把握された物価動向は、生活保護受給世帯が直面した物価動向と明確に乖離するものであって、これらによって、生活保護受給世帯の可処分所 得の実質的増加分が過大に把握されることになった。 ウエイトデータの選定において、家計調査のウエイトデータを選択したこと。 一般に、消費支出の構成は、所得水準によって異なり、所得の低い層では、特に食品などの生活必需品のウエイトが高まる一方で、奢侈品の ウエイトは低くなる。したがって、国民一般世帯のウエイトデータである家計調査のそれと生活保護受給世帯のそれとは異なるのであるから、家計調査のウエイトデータを用いて生活扶助相当CPIを算出しても、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分を把握することはできない。 ウ基準年を平成22年と設定し、そのウエイトを用いて平成20年の生活扶助相当CPIを算出したこと。 総務省統計局は、基準時点を跨ぐ消費者物価指数の扱いについて、各時点で推計された物価変動の方向性は維持して、新旧系列の連続性を保持しようとしている。このような総務省統計局の消費者物価指数の設計 と整合性の取れる考え方は、旧基準の期間は旧基準の情報を用いて計算し、新基準の期間は新基準の情報を用いて算出した指数をそれぞれ比較するというものである。生活扶助相当CPIは、個々の品目や分類については新基準に接続された旧基準指数を用いるものの、旧基準の期間である平成20年において、新基準のウエイトを借りて指数を算出したた め、全体としては物価変動の方向性が維持されておらず、新旧接続の考 え方からも結果的に乖離してい 、旧基準の期間である平成20年において、新基準のウエイトを借りて指数を算出したた め、全体としては物価変動の方向性が維持されておらず、新旧接続の考 え方からも結果的に乖離している。そうすると、生活扶助相当CPIの算出方法は、平成20年の物価動向の把握においてウエイトの時点がずれており、消費者物価指数の設計と整合性のとれる算出方法ではない。 平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに平成22年基準のウエイトを用いているところ、家電エコポイント制度の開始や地上デジタル 放送への移行に備えた需要増加により、消費者物価指数が平成17年基準から平成22年基準に改定された際、テレビのウエイトが大幅に増大した。それにもかかわらず、平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに平成22年基準のウエイトを用いると、平成20年の時点で家計がまだ直面していない制度変更の影響を先取りすることとなって相当でな い。 また、平成22年基準では、ノートパソコン、デスクトップパソコン及びカメラについて、品質調整により価格指数が下落している。平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに平成22年基準のウエイトを用いたことは、平成20年から平成22年までをパーシェ指数で求めたの と同じ計算をしていることとなるところ、前記ノートパソコン等の価格下落が、パーシェ指数の下方バイアスによって、生活扶助相当CPIの大幅な下落率をもたらしている。これは、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加とは何の関係もないものである。 このようなことから、平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに 平成22年基準のウエイトを用いることは相当でない。 (控訴人らの主張)アデフレ調整の目的は、本件改定前の保護基準の水準(絶対的 から、平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに 平成22年基準のウエイトを用いることは相当でない。 (控訴人らの主張)アデフレ調整の目的は、本件改定前の保護基準の水準(絶対的な高さ)が一般国民の生活水準と比較して高い状態であったことから、一般国民の生活実態との均衡を図るためであり、この点についての控訴人らの主張は一貫 しており、被控訴人らが主張するような変遷はない。なお、控訴人らは、 デフレ調整に関して「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加」と説明をしたことがあるが、これはデフレ調整をしたこと、すなわち、生活扶助相当CPIによって把握した物価変動率でもって生活扶助基準を改定したことを、可処分所得という観点から説明することも可能であるため、そのような説明を行ったに過ぎない。 このようなデフレ調整の目的は、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという、水準均衡方式と同じ考え方に立脚するものであり、従来の改定の考え方とも整合する。 イ生活扶助相当CPIの指数品目を生活扶助費での支出がおよそ想定さ れない品目を除外したのは、生活扶助基準の改定の指標とする物価変動率を把握するためには、これらの品目を含めて算定することは相当ではないと判断したためである。このような手法は、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定において採用され、専門委員会による平成16年検証、生活扶助基準に関する検討会による平成19年検証及び基準 部会における平成25年検証においても、一貫して採用されていた手法であることに加えて、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであるから、その判断 成19年検証及び基準 部会における平成25年検証においても、一貫して採用されていた手法であることに加えて、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであるから、その判断自体に、恣意的判断が入り込む余地がなく、十分な合理性がある。 これに対し、教養娯楽費や教養娯楽用耐久財といった特定の品目に 限って生活扶助相当CPIの算定から除外し、またはウエイトを調整するのであれば、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが必要となるが、家計調査のウエイトデータと社会保障生計調査に基づくそれとを比較すると、両者のウエイトの違いは教養娯楽費や教養娯楽用耐久財といった特定の品目に限られるものではなく、 その違いの程度も一様ではないから、そのような説明は困難である。加 えて、生活保護受給世帯においても教養娯楽用耐久財が相当程度普及していることからすれば、生活保護受給世帯において、生活保護費のうちどの程度を教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。以上によれば、特定の品目に限って生活扶助相当CP Iの算定から除外し、またはウエイトを調整することは、かえって恣意的な方法となるおそれがあるから、合理性があるとはいえない。 従前、生活扶助基準の改定として水準均衡方式が採用され、そこでは一般国民の消費水準(民間最終消費支出の伸び)が改定の指標とされてきたこと、デフレ調整の目的が前記アのとおり水準均衡方式と同様の考 え方に立脚したものであることからすれば、生活扶助相当CPIを算出するに際し用いるウエイトデータとしては、一般国民のウエイトデータである家計調査により算出 記アのとおり水準均衡方式と同様の考 え方に立脚したものであることからすれば、生活扶助相当CPIを算出するに際し用いるウエイトデータとしては、一般国民のウエイトデータである家計調査により算出されたウエイトデータが適切と考えられた。 これに対し、家計調査における低所得世帯(第1・十分位又は第1・五分位)のウエイトデータや社会保障生計調査のそれについては、統計資料 としての精度や適格性を措くとしても、前述した従来の考え方との整合性という観点からは、生活扶助相当CPIの設定に用いるウエイトデータとして適切とはいえず、厚生労働大臣が社会保障生計調査ではなく、家計調査により算出されたウエイトデータを用いて生活扶助相当CPIを算出した点について、判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはい えない。 ウ生活扶助相当CPIの算定方法は、平成22年をウエイト参照時点(基準年)として平成20年及び平成23年の物価指数を算出した上で、この2時点の指数の比較により物価の変動率を算出するというものであるところ、本件改定は平成25年に行われたものであり、その時点では平 成17年以前の基準のウエイトのほかに、平成22年基準のウエイトも 存在していた。国民の消費の内容は時間と共に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点(平成20年及び平成23年)に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータである平成22年のウエイトを用いるのが相当と考えた。 また、このように対象期間の間で任意の時点でウエイトを採る方法は、 消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介される方法でもあったことから、厚生労働大臣は、平成22年基準のウエイトのデータを用いることとした の間で任意の時点でウエイトを採る方法は、 消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介される方法でもあったことから、厚生労働大臣は、平成22年基準のウエイトのデータを用いることとしたものである。 なお、平成20年の総務省CPIを算定した時点では、平成17年以前の基準のウエイトしか存在しなかったのに対し、本件改定時には平成 22年基準のウエイトも存在していたのであるから、被控訴人らの主張する「物価変動の方向性」が何を意味するのか定かではないが、総務省CPIにおいて用いられるウエイトと生活扶助相当CPIにおいて用いられるウエイトの基準年が異なるとしても、そのことによって、直ちに生活扶助相当CPIにおいて平成22年基準によるウエイトを用いた点 に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 被控訴人らは、平成20年の生活扶助相当CPIを算出するために平成22年基準のウエイト、すなわち未来のウエイトを用いたことで、家計が平成20年の時点ではまだ経験していない経済環境の変化の影響を 受けていると主張するが、仮に、平成17年基準のウエイトを用いた場合には、過去のウエイトを用いたことになり、平成17年から平成20年までの間の消費構造の変化が反映されないことになってしまう。そこで、厚生労働大臣は、前記ウのとおり、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えたも のであって、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 このように平成22年基準のウエイトを用いたことが合理的である以上、それによって、平成17年基準のウエイトを用いた場合に比べてテレビのウエイトが大きくなったとしても、それは合理的な検討過程を経 このように平成22年基準のウエイトを用いたことが合理的である以上、それによって、平成17年基準のウエイトを用いた場合に比べてテレビのウエイトが大きくなったとしても、それは合理的な検討過程を経た結果に過ぎず、それによって手法の合理性が否定されるわけではない。 生活扶助相当CPIの算定方法は、前記で主張したとおりであり、 生活扶助相当CPIの算定過程を分析し、平成20年から平成22年にかけての変化率をパーシェ指数により、平成22年から平成23年にかけての変化率をラスパイレス指数により算出したと評価することも相当ではない。その点を措くとしても、平成20年の総務省CPIは、平成17年に見直されたウエイトに基づくものであり、この算定方式による 場合には指数の上昇率が高くなる(上方バイアスが生じる)のに対し、平成20年の生活扶助相当CPIは、平成22年に見直されたウエイトに基づくものであるところ、この算定方式による場合には下方バイアスが生じる。このように、バイアスは、生活扶助相当CPIを算定する場合はもちろん、総務省CPIを算定する場合においても不可避的に生じ るものである。そうすると、平成20年の生活扶助相当CPIを算定するに当たり指数、価格及びウエイトの参照時点を平成22年としたことに伴って下方バイアスが生じることをもって、生活扶助相当CPIの算定方法が不合理であるとはいえない。 デフレ調整に関するその他の主張 (被控訴人らの主張)被控訴人らが指摘するデフレ調整の問題点が、それぞれ単体では合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものと認められないとしても、それらの問題点が複合的、重畳的にデフレ調整で採用された物価下落率の算定結果に影響を及ぼしている場合、デフレ調整率の算定結果につい 理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものと認められないとしても、それらの問題点が複合的、重畳的にデフレ調整で採用された物価下落率の算定結果に影響を及ぼしている場合、デフレ調整率の算定結果については慎重な検討が 必要であるといえるが、これをしなかった本件改定には統計等の客観的な数 値等との合理的関連性や専門的知見との整合性は認められない。 (控訴人らの主張)本件改定前における生活扶助基準の水準(絶対的高さ)と一般国民の生活水準との間の均衡が大きく崩れた状態にあり、その乖離を適正化する必要があったところ、厚生労働大臣は、従前どおり消費に着目して生活扶助基準の 水準を改定した場合には、平成21年全国消費実態調査等の統計数値に照らし、減額幅が過大になるおそれもあり、被保護者の生活への影響が大きいため、消費そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として改定を行うと判断したものであって、かかる判断に際して、既に被保護者に対する配慮が含まれているのであるから、本件下落率の算定及びこれをデフ レ調整の改定率に採用するとの判断に当たり、更にこの点を考慮しなかったとしても、そのことをもって、統計等の客観的数値との合理的関連性又は専門的知見との整合性を欠くものとはいえず、判断の過程に過誤、欠落があるとは評価できないはずである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、次のとおりである。 2 認定事実は、原判決「事実及び理由」欄第3、1に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点(生活扶助基準の改定に対する司法審査の枠組み)について 原判決「事実及び理由」欄第3、2に記載のとおりであるから、これを引用する。 とおりであるから、これを引用する。 3 争点(生活扶助基準の改定に対する司法審査の枠組み)について 原判決「事実及び理由」欄第3、2に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 争点(ゆがみ調整の違法性の有無)について ゆがみ調整は、平成25年検証に基づいてその内容、実施が決定されているところ、平成25年検証に至る経緯をみると、まず、平成16年報告書に おいて、現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、算定につ いては、世帯人員分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定される第2費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないとして、多人数世帯基準の是正、単身世帯基準の 設定、第1費の年齢別設定の見直しを検討する必要があると指摘された(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実オa⒝)。 その後、平成19年報告書において、世帯人員別の生活扶助基準額について、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている、年齢階級別の生活扶助基準額について、年齢階級ごとに消費 実態からやや乖離している、地域別にみると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差が縮小していると指摘された(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実ウc、d)。もっとも、平成16年報告書や平成19年報告書で指摘されたこれらの問題点を踏まえた改定は行われなかった。 そして、平成25年検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及 認定事実ウc、d)。もっとも、平成16年報告書や平成19年報告書で指摘されたこれらの問題点を踏まえた改定は行われなかった。 そして、平成25年検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による指数と第1・十分位(一般低所得世帯)の消費実態による指数との間に乖離が認められた(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実オaないし⒞)。 このように、平成16年報告書や平成19年報告書で生活扶助基準に関す る問題点が指摘されていたにもかかわらず、その問題点を解消するような改定が行われなかったこと、平成25年検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による指数と第1・十分位(一般低所得世帯)の消費実態による指数との間に乖離が認められたことを踏まえ、厚生労働大臣は、生活扶助基準額による指数と第1・十分位に属す る世帯の消費実態による指数との間における年齢階級別、世帯人員別及び級 地別の較差を是正し、もって、生活保護受給世帯間の公平を図る目的で、ゆがみ調整を実施したものと認められるところ、かかる厚生労働大臣の判断過程及び手続に、過誤や欠落があるとは認められない。 なお、被控訴人らは、このゆがみ調整の目的について、控訴人らの主張が不合理に変遷しているから、ゆがみ調整の目的は控訴人らが主張するもので はなく、その真の目的は、一般低所得世帯の消費実態との乖離を調整することにあった旨主張するが、そもそも控訴人らの主張に変遷があるとは認められないし、生活保護受給世帯と消費構造が類似する一般低所得世帯と生活扶助基準の展開のための指数との間で、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の消費実態に較差がある(すなわち乖離 張に変遷があるとは認められないし、生活保護受給世帯と消費構造が類似する一般低所得世帯と生活扶助基準の展開のための指数との間で、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の消費実態に較差がある(すなわち乖離がある)ということは、生活保護受給 世帯間に消費実態とは異なった指数による展開が行われているという点で不公平が生じているということであるから、この較差(乖離)を是正することは生活保護受給世帯間の公平を図ることに他ならず、その意味で前記認定のゆがみ調整の目的と被控訴人らの主張する内容は矛盾しているとはいえない。したがって、被控訴人らの前記主張は採用できない。 被控訴人らは、平成25年検証においては、年齢別、世帯人員別、級地別に、本件改定前の生活扶助基準と第1・十分位に属する世帯の消費実態を比較してそのゆがみを是正する手法が採られているが、これは全く新たな検証方法で、基準部会委員も十分に理解できたとはいえないから、平成25年検証は相当ではない旨主張する。 しかし、平成16年報告書では、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないとして、多人数世帯基準の是正、単身世帯基準の設定、第1費の年齢別設定の見直しを検討する必要があると指摘され、平成19年報告書では、生活扶助基準の評価、検証を適切に行うためには、国民消費実態を詳細に分析する必要があり、そのために は、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別及 び地域別等の様々な角度から詳細に分析することが相当であると指摘されている(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実ウa)ところ、これらを踏まえて、平成25年検証では、平成21年全国消費実態調査のデータを用いて、年齢階級別、 相当であると指摘されている(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実ウa)ところ、これらを踏まえて、平成25年検証では、平成21年全国消費実態調査のデータを用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活保護基準額と第1・十分位に属する世帯の消費実態の乖離を分析したのであって、 その手法内容に不合理な点は認められない。平成25年検証で採られた手法が今まで採られていない手法であっても、上記のとおり平成25年検証で採られた手法は不合理なものではないから、新たな手法というだけで平成25年検証が相当でないとは認められない。また、基準部会の委員が、平成25年検証で用いられた手法について十分に理解できなかったと認めるに足り る証拠もない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 被控訴人らは、平成25年検証において、第1・十分位に属する世帯が比較対象とされたことは不適切であるから、平成25年検証に基づいてされたゆがみ調整は相当でない旨主張する。 しかし、平成25年検証は、第1・十分位に属する世帯における年齢階級 別、世帯人員別及び級地別の消費実態から把握された指数と生活扶助基準におけるそれとを比較し、その較差を把握したものであり(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実オaから⒞)、ゆがみ調整は、これに基づいてその展開のための指数の較差を是正するものであって、生活保護の水準を是正するものではないから、較差是正の結果従来の生活保 護費よりも減額となることがあったとしても、それとは別に、比較の対象が第1・十分位に属する世帯であるからといって、被控訴人らが主張するように、生活扶助基準の水準が引き下がるということにはならない。また、平成25年報告書に挙げられている、第1・十分位に属 比較の対象が第1・十分位に属する世帯であるからといって、被控訴人らが主張するように、生活扶助基準の水準が引き下がるということにはならない。また、平成25年報告書に挙げられている、第1・十分位に属する世帯の消費支出を比較対象とした理由(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認 定事実オ)には一応の合理性があるし、平成25年検証では、学識経験 者である基準部会の委員によって、比較対象としての適格性を意識的に検討したうえで、比較対象を前記のとおり選別していることからすれば、専門的知見との整合性を欠くといった事情も認められないことも併せ考慮すると、被控訴人らの主張を踏まえても、第1・十分位に属する世帯を比較対象としたことが不適切であるとは認められない。したがって、被控訴人らの上記主 張は採用できない。 被控訴人らは、平成25年検証において用いられた全国消費実態調査のデータは、その正確性及び信頼性に欠けている、平成25年検証では、データ(年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯)及びデータ(世帯員1人当たりの年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の 世帯)が使用されているが、これらのサンプルサイズを10倍しても、平成21年全国消費実態調査の総世帯の集計世帯数とは一致しないから、データ及びデータは世帯数ではなく、世帯人員数に基づいて第1・十分位の世帯を選出したと推測される、平成25年検証の分析に用いられたデータの区分方法も、総務省統計局の区分方法とは異なるものであると推察され、平 成25年報告書で示された数値は総務省統計局が公表する数値と整合しない可能性が高いとして、平成25年検証において分析の基礎とされた統計データは不適切であって、平成25年検証に基づくゆがみ 平 成25年報告書で示された数値は総務省統計局が公表する数値と整合しない可能性が高いとして、平成25年検証において分析の基礎とされた統計データは不適切であって、平成25年検証に基づくゆがみ調整に合理性はない旨主張する。 しかし、につき、全国消費実態調査は、総務省が行う基幹統計調査の一 つであって、一般的にその正確性、信頼性は認められているものであり、被控訴人らが主張するようにその統計データに一定の限界があるとしても、それだけで統計データの正確性、信頼性が否定されることにはならないし、その統計データの限界によって、平成25年検証の結果に何らかの影響があったと認めるに足りる証拠もない。また、の被控訴人らの主張は、データ 及びデータの各個票データの数が、平成21年全国消費実態調査の集計世 帯の総数の単純な10分の1の数になることを前提とするものであるが、その前提を認めるに足りないから、②の主張は失当である。そして、につき、平成25年検証の分析に用いられたデータの区分方法や、平成25年報告書で示された数値が総務省統計局のものと異なるとしても、それだけで直ちに平成25年検証に合理性がないとは認められないし、平成25年検証の分析 に用いられたデータの区分方法や平成25年報告書で示された数値が、専門的知見に反するとも認められない。したがって、被控訴人らの上記主張も採用できない。 被控訴人らは、平成25年検証において、生活保護受給世帯の消費支出分布と第1・十分位のそれとを統計的に比較するに当たり、少なくとも生活 保護受給世帯の平均世帯人員数、世帯人員の平均年齢及び生活保護費受給額の平均と、第1・十分位に属する世帯の平均世帯人員数、世帯人員の平均年齢及び年間可処分所得額の平均をそれぞ 少なくとも生活 保護受給世帯の平均世帯人員数、世帯人員の平均年齢及び生活保護費受給額の平均と、第1・十分位に属する世帯の平均世帯人員数、世帯人員の平均年齢及び年間可処分所得額の平均をそれぞれ比較して、両者が消費支出以外において等質的な集団であるかを事前に検証すべきであったが、それをしなかったし、消費支出以外の項目について等質性が認められる根拠を示さな かった、平成25年検証において生活保護受給世帯との比較対象とされた第1・十分位に属する世帯には生活保護受給世帯が含まれており、統計学上の原則から逸脱する不合理なものであるし、平成19年検証では比較対象から生活保護受給世帯を除去するという方法、手段を選択したのに、平成25年検証時にこれをしないのは、一旦選択された方法、手段から逸脱するもの であるし、平成25年検証時の第9回基準部会での委員からの意見を受けて、部会長は比較対象とされる第1・十分位に属する世帯から生活保護受給世帯を除くべきであるということを基準部会の意見として取りまとめたにもかかわらず、生活保護受給世帯を第1・十分位に属する世帯から除去しないことは手続上も不合理であるとして、平成25年検証において、第1・十分位 階級に属する世帯を比較対象としたことは不合理である旨主張する。 しかし、につき、生活保護受給世帯の消費支出分布と第1・十分位のそれとを統計的に比較するに当たり、消費支出以外の被控訴人らが指摘する項目について等質性が統計学的に必要であるとか、その有無を検証することが必須であると認める足りる証拠はない。また、につき、前記で説示のとおり、平成25年検証は、平成21年全国消費実態調査の第1・十分位のデー タを使用し、その消費実態の年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数 と認める足りる証拠はない。また、につき、前記で説示のとおり、平成25年検証は、平成21年全国消費実態調査の第1・十分位のデー タを使用し、その消費実態の年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を把握し、第1・十分位の全世帯が生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を比較して、その較差を検証することが目的であったから(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1認定事実オ)、その目的からすれば、第1・十分位世帯に生活保護受給世帯 が含まれていたとしても不合理であるとはいえない。また、平成19年検証は、生活扶助基準の水準の検証を目的としていたのであるから、それとは異なる目的で行われた平成25年検証が、異なる手法をとることは何ら不合理ではないし、基準部会での検討過程で第1・十分位世帯から生活保護受給世帯を除くべきである旨の意見が出たとしても、最終的にこれを除かずに検証 することで基準部会が了承し、平成25年報告書の作成に至っていることからすれば、手続上も不合理であるとはいえない。したがって、被控訴人らの上記主張も採用できない。 被控訴人らは、平成25年検証で採用された回帰分析の手法が、決定係数が極めて低い点、回帰係数に有意な差が認められず、帰無仮説が棄却されず に不要であると判断し得る説明変数が多数存在したのに、この検定の結果を反映させていない点で不適切であるから、平成25年検証は不合理である旨主張する。 しかし、回帰分析において、どの程度の決定係数の値であれば実態を近似したものとして妥当と評価されるかということについて一般的な基準は存 在せず、特定の決定係数の値以上でなければ採用できないという専門的知見 があるとは認められないほか、平成2 似したものとして妥当と評価されるかということについて一般的な基準は存 在せず、特定の決定係数の値以上でなければ採用できないという専門的知見 があるとは認められないほか、平成25年検証で採用された決定係数は、学識経験者で構成された基準部会で採用された決定係数であることも併せ考慮すると、平成25年検証で採用された回帰分析における決定係数を、極めて低いと評価し、これを採用したことが専門的知見に反し不合理であるとは認められない。また、t検定は、t値(推定係数をその標準誤差で割ること で求められる値)を用いて、説明変数の被説明変数への真の効果が0であるという帰無仮説(効果がない(無効)や異なっていない(同質)ことを主張する仮説)を検定し、これが否定されることで、説明変数の被説明変数への効果がある(0ではない)という対立仮説(効果がある(有効)や異なっている(異質)ことを主張する仮説)を採る手法である(乙A50)ところ、 帰無仮説が否定(棄却)されなかったからといって、結果が帰無仮説と矛盾しないことが示されただけで、帰無仮説が積極的に支持されたわけではない(乙A59)。そうすると、帰無仮説が否定されずに不要であると判断し得る説明変数を除かなかったとしても、それをもって平成25年検証で採用された回帰分析の手法が不適切であるとはいえない。したがって、被控訴人らの 上記主張も採用できない。 被控訴人らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、誤差項の分散均一性、正規性、説明変数間の多重共線性について検討する必要があるが、平成25年検証ではこの点について全く触れられておらず、検討した形跡もないなどと主張するが、そのような検討をしなければ、回帰分析の結果を採 用することができないとの専門的知見があると あるが、平成25年検証ではこの点について全く触れられておらず、検討した形跡もないなどと主張するが、そのような検討をしなければ、回帰分析の結果を採 用することができないとの専門的知見があるとは認められないから、これらの検討をしていないからといって、平成25年検証の結果やそれに基づいたゆがみ調整が専門的知見に反しているとは認められない。 また、被控訴人らは、ゆがみ調整の検証過程において、直交回帰又は主成分回帰という特殊な回帰分析が行われた疑いがあるが、その理由は示されて おらず、仮に、回帰分析において通常の最小2乗法によったのであれば、厚 生労働省の職員は基準部会の委員に対して誤った説明をしたこととなり、平成25年検証は、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証方法であるとはいえない旨主張する。 しかし、平成25年検証では、重回帰分析が採用されたものと認められるから(乙A6、51、弁論の全趣旨)、被控訴人らの前記主張は前提を欠くも のであって採用できない。また、厚生労働省が第11回基準部会で提出した資料(乙A51)には最小二乗法の考え方と記載されていることからすれば、厚生労働省の職員が基準部会の委員に対して誤った説明をしたとも認められないから、平成25年検証が専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証方法であることは否定されない。したがって、被控訴人らの上記主張 も採用できない。 5 争点(2分の1処理の違法性の有無)について ア証拠(甲A6、59の2、乙A6)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らが主張するとおり、厚生労働大臣は、次のとおり判断して2分の1処理を行ったことが認められる。 平成25年検証で採られた手法は、専門的議論の結果得られたもので、合理的なものと れば、控訴人らが主張するとおり、厚生労働大臣は、次のとおり判断して2分の1処理を行ったことが認められる。 平成25年検証で採られた手法は、専門的議論の結果得られたもので、合理的なものといえるが、平成25年報告書で指摘されているように、基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によって様々に差が生じ、この差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異な り、かつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずるが、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは平成25年検証時点では明確にできなかったこと、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることといった問題が平成25年検証には存在する。また、平成25年検証で採用された手法 が唯一の手法ともいえないし、検証方法について一定の限界も存在する。 他方、平成25年検証で算出された指数をそのまま反映させてゆがみ調整を行った場合、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想されたところ、平成25年報告書中には、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要があると指摘されている。このようなこ とを総合考慮して、2分の1処理を行うのが相当と判断した。 イ厚生労働大臣の前記アの判断の基礎とした事実(平成25年検証では、展開のための指数と消費実態との乖離についてすべての要因が解明されたわけではないこと、そこでの検証方法について一定の限界があり、統計上の限界もあること、平成25年検証で算出された指数をそのまま反映させ ると、子どもの との乖離についてすべての要因が解明されたわけではないこと、そこでの検証方法について一定の限界があり、統計上の限界もあること、平成25年検証で算出された指数をそのまま反映させ ると、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想されたこと)について、特段過誤は認められない。そして、平成25年報告書においても前記判断の基礎とした事実を指摘し、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には留意するよう意見が述べられていることや、生活扶助基準(これには当然展開のための指数も含まれるものと考えられる。)に ついては、5年ごとに評価、検証を行うために基準部会が設置されていることなども考慮すれば、それらの事実を踏まえた厚生労働大臣の判断の過程及び手続は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められない。 被控訴人らは、控訴人らは、2分の1処理が指摘される以前には、平成2 5年検証結果につき、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められると主張していたが、2分の1処理が指摘された後、平成25年検証における検証手法が唯一のものであるということはできないとか、統計上の限界も認められたなどとして、 平成25年検証の合理性、信頼性を一部否定するに至り、また、原審におい ては、2分の1処理をした理由につき、平成25年検証の結果判明した年齢階級別・世帯人員別・級地別の較差に係る指数をそのまま生活扶助基準に反映させた場合には、世帯類型によっては、減額割合が10パーセントを大幅に超えるような世帯が相当数生じることが想定されるため、検証結果を反 ・世帯人員別・級地別の較差に係る指数をそのまま生活扶助基準に反映させた場合には、世帯類型によっては、減額割合が10パーセントを大幅に超えるような世帯が相当数生じることが想定されるため、検証結果を反映させる比率を2分の1にとどめたことには、激変緩和措置として合理性が認 められると主張しており、減額幅を2分の1とすることにしか言及しておらず、このような主張の変遷からすれば、2分の1処理は、控訴人らが主張するような判断過程を経て実施されたものではなく、厚生労働大臣の裁量権を逸脱又は濫用したものというべきである旨主張する。 確かに、控訴人らは、本訴手続の初期段階において、本件改定のうちゆが み調整の部分についての判断過程を説明するに際し、2分の1処理について言及せず、被控訴人らに2分の1処理を指摘された後も、当初は2分の1処理について激変緩和措置であると説明していた。本件の審理の中心が、厚生労働大臣の本件改定に係る判断過程であることは、控訴人らも当然認識していたところであり、その審査対象となる判断過程が、行政庁の内部での意思 決定過程である以上、控訴人らがつまびらかに説明しなければ明らかにならないのであるから、被控訴人らの指摘の有無にかかわらず、その判断過程をできる限り詳細に説明・開示すべきであって(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法2条参照)、控訴人らはこれを怠ったとのそしりを免れ得ないといわざるを得ない。しかし、控訴人らが、2分の1処理が指摘される前において、 平成25年検証についてその合理性、信頼性を強調していたのは、被控訴人らから平成25年検証についての合理性、信頼性を攻撃されたことに対応したからと認められるし、その際も平成25年検証を絶対的なものとまでは主張していないから、2分の1処理指摘の前後で、平成2 被控訴人らから平成25年検証についての合理性、信頼性を攻撃されたことに対応したからと認められるし、その際も平成25年検証を絶対的なものとまでは主張していないから、2分の1処理指摘の前後で、平成25年検証の評価について、控訴人らの主張が変遷したとまでは認められない。また、2分の1処 理を、当初、激変緩和措置である旨説明していた点についても、平成25年 検証の合理性、信頼性に一定の限界があることを認めることを回避したいとの思惑からか、判断過程の正確な説明を怠ったと非難されるべきではあるが、2分の1処理の判断過程に子どものいる世帯への影響が大きくなることも考慮されていたことは前記アで認定説示のとおりであり、控訴人らの主張は、この一面のみに言及し、その余の点について沈黙したに過ぎないから、 その当否は別にして、この点もまた主張の変遷とまでは評価できない。そして、前記説示のとおり、控訴人らは、2分の1処理の判断過程について、誠実な説明を怠ったとはいえるものの、そのことのみで、2分の1処理が正当な判断過程を経て実施されたものではないとまで推認することはできない。 したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 被控訴人らは、基準部会は、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させて生活扶助基準の改定を行うことを想定しておらず、平成25年検証結果を2分の1の比率で反映させると、平成25年検証により生活保護費を増額すべきとの結果が得られた世帯の基準額は、第1・十分位の世帯の消費実態から得られる水準を下回る金額になるし、生活保護受給世帯の過半数に ついて本来増額すべき増額を行わないというものであるから、2分の1処理を行うに当たり、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性についての検 るし、生活保護受給世帯の過半数に ついて本来増額すべき増額を行わないというものであるから、2分の1処理を行うに当たり、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性についての検討を経なければならないが、本件改定の際に、そのような検討は行っていないとして、2分の1処理をした厚生労働大臣の判断は裁量権を逸脱、濫用している旨主張する。 しかし、生活保護法その他の法令において、厚生労働大臣が生活保護基準を改定するために基準部会などの専門家による検証等を経ることは要件とされていないし、基準部会の検証結果が、厚生労働大臣の判断を法的に拘束すると解釈する根拠もないことから、同検証結果は厚生労働大臣が生活扶助基準の改定を判断するに当たっての考慮要素の一つに過ぎないと解するの が相当であり、基準部会も、平成25年報告書において、「政府部内において 具体的な基準の見直しを検討する際には」などと記載していることからすれば、同様の理解であったと認められる。そうすると、厚生労働大臣が、平成25年検証を踏まえて生活扶助基準を改定するに当たり、当該検証結果をいかなる範囲で反映するかについても裁量権を有すると解されるところ、平成25年検証の結果の反映比率である2分の1は、統計等の客観的数値等を基 礎として算出されたものとは認められないものの、そもそも平成25年検証の結果の合理性、信頼性に一定の限界が認められ、その限界が数値として把握できる類のものではない以上、このような反映比率を採用することも、まさに裁量権行使の範囲内というべきである。この裁量権行使に際し、改めて基準部会等の専門家の意見を聞くなどして、合理的関連性や専門的知見との 整合性についての検討を経なければならないといった根拠は認められないし 囲内というべきである。この裁量権行使に際し、改めて基準部会等の専門家の意見を聞くなどして、合理的関連性や専門的知見との 整合性についての検討を経なければならないといった根拠は認められないし、仮に専門家に諮問したとしても、厚生労働大臣の反映比率を2分の1とするとの判断が専門的知見と整合しないなどといった判断が可能であったとも認められない。なお、2分の1処理を含むゆがみ調整及びこれらの前提となった平成25年検証は、生活扶助基準の展開のための指数を改定するこ とで生活保護受給世帯間の不平等を是正することを目的とするものであって、最低生活の需要との関係で生活扶助基準の水準を改定するためのものではないから、平成25年検証の結果をそのまま当てはめて展開のための指数を改定した場合に増額となる世帯について、2分の1処理をしたことによって、最低生活の需要を下回らないかを検討していなくとも、その判断過程に 過誤、欠落があるとは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張も採用できない。 被控訴人らは、一般低所得世帯の消費実態との乖離を調整することにあるというゆがみ調整の目的からすると、できる限り平成25年検証の結果の反映比率を高めるべきであり、すべての被保護世帯に一律に平成25年検証の 結果を反映させる比率を半減させる2分の1処理を行うことは、ゆがみ調整 の本質部分を改変するものである、ゆがみ調整の目的が生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化することにあるとしても、一律に2分の1処理をすると、増額されるべき世帯と減額されるべき世帯との間で不公平な結果となり、ゆがみ調整の本質部分を改変するものであり、2分の1処理は合理性を欠く旨主張する。 しかし、被控訴人らの平成25年 と、増額されるべき世帯と減額されるべき世帯との間で不公平な結果となり、ゆがみ調整の本質部分を改変するものであり、2分の1処理は合理性を欠く旨主張する。 しかし、被控訴人らの平成25年検証結果の反映比率をできる限り高めるべきとの主張は、同結果が絶対的に正しいということを前提としたものと理解されるが、前記4及び(1)で認定説示のとおり、平成25年検証結果は合理的ではあるものの、一定の限界も認められるのであるから、被控訴人らの主張はその前提を誤るものであって採用できない。また、前記4で認定説示 のとおり、本件改定におけるゆがみ調整の目的は、生活扶助基準の展開のための指数と第1・十分位に属する世帯の消費実態によるそれとの間における年齢階級別、世帯人員別及び級地別の較差を是正するというものであるところ、平成25年検証の結果を一律2分の1とはいえ適用することで、少なくともその限りにおいて平成25年検証で把握された較差が是正されるので あるから、ゆがみ調整の目的に沿った是正が一部なされたことには違いがない。したがって、本件改定に当たり2分の1処理をすることがゆがみ調整の本質部分を改変するものとは認められない。なお、2分の1処理をするとしても、増額となる世帯はそのままとして、減額となる世帯のみ2分の1処理をすることも、理論上は考えられるが、このような対応は、平成25年検証 結果の取扱いの公平性を欠くこととなるし、むしろ相対的な較差の是正というゆがみ調整の本質部分に反することにもなりかねないといった問題があることは別としても、他に取りうる手段があったというだけでは、厚生労働大臣が本件改定に当たって採用した2分の1処理自体の合理性が否定されない以上、その裁量権を逸脱又は濫用したとは認められない。被控訴人らの 上 、他に取りうる手段があったというだけでは、厚生労働大臣が本件改定に当たって採用した2分の1処理自体の合理性が否定されない以上、その裁量権を逸脱又は濫用したとは認められない。被控訴人らの 上記主張は採用できない。 被控訴人らは、平成25年検証では、もともと10代以下の単身世帯のデータサンプルが少ないことから、10代以下の者がいる複数人世帯のデータから10代以下の者の消費水準を推計するために回帰分析の手法を用いることとされていたので、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界があることを理由に、2分の1処理を行う必要はなかったから、2分の1 処理は不合理である旨主張するが、統計上の限界があることは、厚生労働大臣の判断の基礎となった平成25年検証の問題点の一部に過ぎず、その点を措くとしても、そもそも、回帰分析の手法を用いて推計をすれば、統計上の限界が解消するとまでは認めるに足りないから、被控訴人らの上記主張は採用できない。 6 争点(デフレ調整の違法性の有無)について デフレ調整の趣旨ないし目的についてア認定事実(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1から)、証拠(甲A59の2、乙A11、73から77、118、119の1、119の2、120の2)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らが主張す るとおり、厚生労働大臣は、次のとおりの判断過程を経て、デフレ調整を行ったことが認められる。 平成19年検証の結果、夫婦子1人(有業者あり)世帯の年間収入階級第1・十分位における生活扶助相当支出額とそれらの世帯の平均の生活扶助基準額を比較すると、生活扶助基準額がやや高めであり、単身世帯(6 0歳以上)では、生活扶助基準額が高めとの評価がされたものの、厚生労働 おける生活扶助相当支出額とそれらの世帯の平均の生活扶助基準額を比較すると、生活扶助基準額がやや高めであり、単身世帯(6 0歳以上)では、生活扶助基準額が高めとの評価がされたものの、厚生労働大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性等も勘案して、生活扶助基準の水準を引き下げる改定を行わず、基準額を据え置くこととした。その後も平成21年度以降平成24年度まで、厚生労働 大臣は、経済・雇用情勢等を考慮して、消費等の動向を基礎とした改定を 行わず、生活扶助基準の水準を据え置いてきた。しかし、その間、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機の影響で、平成21年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況となり、平成23年12月から平成24年1月頃に行った平成21年全国消費実態調査の特別集計の過程において、平成19年検証と同様の手法で平成21 年全国消費実態調査における年収階級第1・十分位の消費水準を検討したところ、夫婦子1人世帯の生活扶助相当支出額は平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセント下落し、同世帯の生活扶助基準額を約12.6パーセント下回る状況となっていることが確認できたことから、これを認識した厚生労働大臣は、一般国民の生活水準が低下しており、生活 扶助基準の水準と一般国民の生活水準との不均衡が顕著となっていると判断した。一方、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)の附則2条1項では、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが求められていた。そこで、厚生労働大臣は、展開のための指数(相対的な較差)を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活 法律第64号)の附則2条1項では、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが求められていた。そこで、厚生労働大臣は、展開のための指数(相対的な較差)を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活 扶助基準の水準を改定する必要があると判断して、デフレ調整を行うこととした。 イ厚生労働大臣の前記アの判断の基礎とした事実(平成19年検証の結果、平成20年度から平成24年度まで、生活扶助基準の水準について、消費等の動向を基礎とした改定を行わず据え置いてきたこと、平成21年以降、 賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく落ち込み、一般低所得世帯(年収階級第1・十分位)の消費水準が下落し、生活扶助基準額を下回っていたこと)及びそれの評価(一般国民の生活水準が低下し、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との不均衡が顕著となっているとの評価)について、特段過誤、欠落は認められない。そして、これらの事実及び評価を 前提に、かつ、国会から生活扶助基準の適正化を早急に図るよう求められ ていた状況を考慮すれば、それらの事実を踏まえた厚生労働大臣の前記アの判断の過程及び手続は、一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められない。 ウ被控訴人らは、控訴人らの厚生労働大臣がデフレ調整を行うこととした判断過程にかかる主張は不合理に変遷していて、変遷後の主張は信用でき ず、真実は、控訴人らが当初主張していたとおり、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価下落によって生活保護受給世帯の可処分所得に実質的増加があったと評価できるとして、この増加分だけ生活扶助基準を引き下げると判断したものであると主張し、その判断過程を前提とすれば、平成20年以降のデフレが生活保護受給世帯の可処分所得 分所得に実質的増加があったと評価できるとして、この増加分だけ生活扶助基準を引き下げると判断したものであると主張し、その判断過程を前提とすれば、平成20年以降のデフレが生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加に与えた 影響に着目した検討を何ら行っていないから不合理である旨主張する。 しかし、可処分所得の実質的増加という概念は、生活保護基準が据え置かれてきた中で物価が下落したということを説明するものであるから、物価の下落という事象に着目したものであるところ、厚生労働大臣が、当初から物価の下落に着目し、デフレ調整を行うこととしたとの事実を推認さ せる事実は認められない。従来、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとし、その生活水準を把握する指標として消費水準を採用してきた経緯からすれば、前記認定説示のとおり、厚生労働大臣が、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準が低下し、生活扶助基準の水 準を下回って均衡を失しているとの状況を認識したことから、生活扶助基準の水準の改定が必要と判断することは自然であり、それ以上に進んで、この時点で特に物価に着目してデフレ調整を行うことを判断したというのはむしろ不自然である。本件改定における厚生労働省の説明資料(甲A7、59の2、乙A16、47)においても、生活保護受給世帯の可処分所得 の実質的増加の是正ということをデフレ調整の目的であるとまでは説明し ておらず、生活水準を把握する指標として物価動向を勘案することとした理由の説明の中で「実質的な購買力を維持しつつ」といった表現をしているに過ぎないことも考慮すると、控訴人らが主張するとおり、「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、 価動向を勘案することとした理由の説明の中で「実質的な購買力を維持しつつ」といった表現をしているに過ぎないことも考慮すると、控訴人らが主張するとおり、「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加分の調整」との表現は、デフレ調整の際の指標として物価を採用したことが合理的であるとの説明 として用いたものであると解するのが相当であり、これを主張の変遷というかはともかくとして、そのような主張、表現をしていたからといって、前記認定を左右することにはならない。また、被控訴人らが指摘する本件改定当時の厚生労働省のB社会・援護局長の国会答弁の内容(甲A236)も、デフレ調整の目的を直接問われて回答するものではなく、その表現も 曖昧であることから、この内容を考慮しても、前記認定を左右しない。そうすると、被控訴人らの前記主張は、その前提を誤るものであって採用できない。 エ被控訴人らは、厚生労働大臣が、デフレ調整を行うことと判断する基礎として、平成21年全国消費実態調査における年収階級第1・十分位の夫 婦子1人世帯の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセント下落し、同世帯の生活扶助基準額を約12.6パーセント下回る状況となっていることを認識したとの事実は認められないと主張するが、基準部会では、平成25年検証に際して当初は生活扶助基準の水準についての検証も予定していたのであるから、厚生労働省がそのた めの準備として、平成21年全国消費実態調査のデータを入手し、特別集計を開始していた(乙A120の2)以上、平成19年検証と同様の手法でもって一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準とを比較するデータを算出し、把握していたことが推認され、C元課長補佐も同趣旨の供述をしていること(乙A119の1 2)以上、平成19年検証と同様の手法でもって一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準とを比較するデータを算出し、把握していたことが推認され、C元課長補佐も同趣旨の供述をしていること(乙A119の1)も考慮すれば、前記アのとおり認定するの が相当であり、被控訴人らの前記主張は採用できない。 オ被控訴人らは、仮にデフレ調整を行うことと判断した過程が前記アのとおりであるとしても、引き下げに見合う需要減少の有無の判断や審査を行っておらず、保護基準の改定が生活保護受給世帯の最低限度の生活の需要との関係で行われなければならない(生活保護法8条2項)との視点を欠いているから、結局、デフレ調整を行うことと判断したことは違法であ る旨主張する。 しかし、生活保護法8条2項は、生活保護基準が「需要」を満たすに十分なものであることを求めているが、そこにいう「需要」とは、同項が列挙する事情その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した「最低限度の生活の需要」であるところ、この最低限度の生活、すなわち健康で文化的 な生活水準(生活保護法3条)とは、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、前記ア及びイで認定説示のとおり、統計等の客観的資料に基づき、一般国民の生活水準が低下し、生活扶助基準の水準がそれを上回っているとの認 識の下、デフレ調整が必要としてこれを行うと判断したその過程は、合理的であって過誤、欠落をうかがわせる事情は認められない。もとより、デフレ調整の結果改定された保護基準が前記の意味での最低限度の生活の需要を満たすか否かは別途判断を要するが、この点については後記(7)、8及び9に判 欠落をうかがわせる事情は認められない。もとより、デフレ調整の結果改定された保護基準が前記の意味での最低限度の生活の需要を満たすか否かは別途判断を要するが、この点については後記(7)、8及び9に判示のとおりである。よって、この点の被控訴人らの主張も採用で きない。 デフレ調整における指標として物価を採用したことについてア前記アのデフレ調整を行うこととした判断過程及び弁論の全趣旨によれば、厚生労働大臣は、次のような判断過程を経て、デフレ調整において、物価を指標としたことが認められる。 厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準の改定に際し、従前採用してきた 水準均衡方式においては、改定の基礎となる指標として、一般国民全体の消費支出の動向を用いており、また、平成16年検証及び平成19年検証では、一般低所得世帯の消費支出との比較において、生活扶助基準の水準の検証を行ってきたが、本件改定に際し、平成19年検証と同様の手法で平成21年全国消費実態調査に基づき確認したところ、平成21年全国消 費実態調査における年収階級第1・十分位の夫婦子1人世帯の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセント下落し、同世帯の生活扶助基準額を約12.6パーセント下回る状況が確認された。ただ、一般に、消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであ り、平成21年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況下では、国民の将来不安が高まり、必要以上に消費が減少している可能性があり、従前と同様に消費を基礎として生活扶助基準の水準の改定を行った場合、減額幅が必要以上に大きくなることが危惧された。一方、扶助基準の改定につ 来不安が高まり、必要以上に消費が減少している可能性があり、従前と同様に消費を基礎として生活扶助基準の水準の改定を行った場合、減額幅が必要以上に大きくなることが危惧された。一方、扶助基準の改定について厚生労働大臣には広範な裁量権が認められており、 改定の方式について法令上の定めはなく、従前の消費を基礎とする水準均衡方式についても、事実上の改定指針に過ぎず、厚生労働大臣の裁量権を制約するものではないと考えられた。また、一般国民の生活水準との均衡を評価するための指標としては、消費が唯一絶対的な方法というわけではなく、物価や賃金が考えられるところ、専門委員会の平成15年中間とり まとめにおいても、消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性が言及されていた。このような事情を前提として、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準の改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として採用することとした。 イ厚生労働大臣の前記アの判断の基礎とした事実ないし知見(生活保護基 準の水準の改定において、従前水準均衡方式を採用し、消費を指標として用いてきたこと、平成21年全国消費実態調査に基づくと一般低所得世帯の消費支出が生活保護基準額と比較して約12.6パーセント下回っていたことが確認されたこと、一般に消費が物価や賃金の動向以外に主観的な要素を含む将来の予測等様々な要素にも影響されるものであること、平成 21年以降の経済状況、平成15年中間とりまとめの内容など)について、特段過誤は認められない。そして、それらの事実ないし知見を踏まえた同大臣の判断の過程及び手続は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合 とめの内容など)について、特段過誤は認められない。そして、それらの事実ないし知見を踏まえた同大臣の判断の過程及び手続は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められない。 ウ被控訴人らは、生活保護基準の水準を改定するに際し、物価を指標とし て採用することは、従前採用されていた水準均衡方式から逸脱するものであり、その採用には専門的検討を要するところ、厚生労働大臣は、デフレ調整の採用に当たり、基準部会等の専門家に対して諮問していないから、物価を指標として採用したことには合理性がなく、裁量権の逸脱、濫用である旨主張する。 しかし、前記5で説示のとおり、生活保護法その他の法令において、厚生労働大臣が生活保護基準を改定するために基準部会といった専門家による検証等を経ていることは要件とされてないから、基準部会等の専門家に対して諮問していないからというだけでは、厚生労働大臣の前記アの判断過程に欠落があったとはいえず、合理性は否定されない。なお、基準部 会では、平成25年報告書の原案について議論がなされた際、厚生労働省社会・援護局保護課のD課長が、物価や賃金等を指標とする可能性があると述べたのに対し、基準部会の複数の委員からは慎重に考えるべきとか、基準部会では未検討である旨の指摘がされたが、それを指標とすることが専門的知見に反するとまでの意見、指摘はなされなかった(前記2で引用 する原判決「事実及び理由」欄第3の1)のであるから、前記イのとお り、厚生労働大臣の前記アの判断過程に専門的知見に反する点があるとまでは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 デフレ調整の指標となる物価の変動率を算定する期間を平成20年から 厚生労働大臣の前記アの判断過程に専門的知見に反する点があるとまでは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 デフレ調整の指標となる物価の変動率を算定する期間を平成20年から平成23年としたことについてア始期を平成20年としたこと デフレ調整を検討した当時、専門機関による検証を踏まえてなされた生活扶助基準の水準の改定は、直近が平成20年度の改定であり、同年度の改定(据え置き)は、平成19年検証の結果を踏まえつつ、平成20年当時の原油価格の高騰等を含む社会経済情勢等を総合的に勘案してなされたものであるから、同年までの社会経済情勢等は同改定において 既に斟酌されていると考えられ、また、同改定後の平成20年度の生活扶助基準が生活保護法8条2項の規定に適合する妥当なものであったと考えられた。そして、デフレ調整の趣旨ないし目的が、前記(1)アで認定説示したとおり、平成20年以降の社会経済情勢、特に同年9月のリーマンショック以降賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状 況に至ったことにより、平成20年以降据え置かれた生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に生じた不均衡を是正することにあったことから、厚生労働大臣は、物価変動率を算定する期間の始期を平成20年とすることとした(弁論の全趣旨)。 厚生労働大臣の前記の判断の前提となる事実に特段過誤等は認め られず、それらの事実を踏まえた同大臣の判断の過程は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められない。 被控訴人らは、平成19年から平成20年にかけての大幅な物価上昇を考慮せずに、平成20年以降の物価下落だけを考慮してデフレ調整を 行うと、物価 との整合性に欠ける点は認められない。 被控訴人らは、平成19年から平成20年にかけての大幅な物価上昇を考慮せずに、平成20年以降の物価下落だけを考慮してデフレ調整を 行うと、物価下落率を過大に評価することとなり、生活扶助基準に対し て正確なデフレ調整はできないから、平成16年をデフレ調整の基点とすべきである旨主張する。しかし、厚生労働大臣が平成20年度の生活扶助基準の改定(据え置き)を判断するに際して、当時の原油価格の高騰という事象を考慮しているのであるから(前記第2の2で引用する原判決「事実及び理由」欄第2の3イ)、平成19年から平成20年に かけての大幅な物価上昇を考慮していないとの指摘は必ずしも正鵠を射ておらず、被控訴人らの前記主張を考慮しても、厚生労働大臣が、平成20年までの社会経済情勢等は同年度の生活扶助基準の改定において既に斟酌されていると判断したことは、一応合理的であるとの前記の認定を左右しない。 イ終期を平成23年としたこと 厚生労働大臣は、本件改定が検討された当時において、最新の総務省CPIの年次データは平成24年1月27日に公表された平成23年のものであったため(乙A37)、物価変動率の算定の終期を平成23年とした(弁論の全趣旨)が、かかる判断に過誤はなく、合理的である。 被控訴人らは、平成24年の総務省CPIのデータは、平成25年1月25日に公表されたから、平成25年度の政府予算案を閣議決定した同月29日から同年8月1日に実際に生活扶助基準が引き下げられるまでの間に、これに基づく検証を行うことは十分に可能であって、生活扶助基準が憲法で保障された国民の生存権を具体化するものであることか らすれば、厚生労働大臣は、この検討をすべ が引き下げられるまでの間に、これに基づく検証を行うことは十分に可能であって、生活扶助基準が憲法で保障された国民の生存権を具体化するものであることか らすれば、厚生労働大臣は、この検討をすべきであった旨主張するが、被控訴人らの主張を踏まえても、厚生労働大臣に、平成25年度の政府予算案の閣議決定後に、平成24年の総務省CPIのデータに基づいた検討をすべき義務があったとは認められないし、そのような検討をしていないからといって、厚生労働大臣の前記の判断過程に過誤欠落が あったとは解されない。被控訴人らの前記主張は採用できない。 デフレ調整の指標となる物価変動率を算出するための生活扶助相当CPIの指数品目として、生活扶助費で支出される品目を選定したことについてア厚生労働大臣は、本件改定が行われた平成25年当時、生活扶助費で支出される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては総務省CPIがあり、他に適切なデータは見当たらな かったので、総務省CPIのデータを基本的には用いることとしたが、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており、デフレ調整の指標とする物価変動率を把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではないと考えた。また、 従前の水準均衡方式においても、生活扶助費で支出されない費用を除外して民間最終消費支出の伸びを算出していたし、平成16年検証、平成19年検証及び平成25年検証においても、生活扶助相当品目による支出額が検証に用いられているなど、生活扶助費で支出される品目を対象とする手法は、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて 9年検証及び平成25年検証においても、生活扶助相当品目による支出額が検証に用いられているなど、生活扶助費で支出される品目を対象とする手法は、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて 行われたものであるため、十分な合理性があると考えられた。そこで厚生労働大臣は、デフレ調整の指標となる物価変動率を算出するための生活扶助相当CPIの指数品目として、生活扶助費で支出される品目を選定することとした(弁論の全趣旨)。 厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの指数品目を具体的に定めるに 当たり、平成22年総務省CPIの基礎品目に追加された32品目は、平成20年の時点では、調査の対象とされていなかったため、平成20年の生活扶助相当CPIの指数品目とすることはできないが、上記32品目は平成22年の家計消費支出の実態の中から重要なものとして、総務省統計局により新たに選ばれたものであって、これらを除外して平成 23年の生活扶助相当CPIを算定することは、かえって最新の消費構 造の指数算定を反映していないこととなり妥当ではないと考え、上記32品目を平成23年の生活扶助相当CPIにおける指数品目とすることとした(弁論の全趣旨)。 イ厚生労働大臣の前記アの判断の基礎とした事実に特段の過誤は認められず、平成20年の生活扶助相当CPIの算出に当たり対象とされた品目も、 平成23年の生活扶助相当CPIの算出に当たり対象とされた品目も、それぞれの時点で存在した総務省CPIの基礎品目に基づいており、生活扶助相当CPIで用いられた各品目別価格指数は、総務省の専門的知見を踏まえて算定されたものであって、何らの修正もなく使用することが不合理とはいえないことも併せ考慮すれば、それらの事実を踏まえた同大臣の判 断の いられた各品目別価格指数は、総務省の専門的知見を踏まえて算定されたものであって、何らの修正もなく使用することが不合理とはいえないことも併せ考慮すれば、それらの事実を踏まえた同大臣の判 断の過程及び手続は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められない。 ウ被控訴人らは、消費を指標として生活保護基準の改定を行ってきた水準均衡方式で、生活扶助相当支出額に着目するという考え方を採用していたからといって、消費とは異なる物価を指標とする際に、同様の手法をとっ た場合に起こりうる問題点について何ら検証されていないし、生活扶助費で支出されない品目を除外したことによって、除外されなかった品目のウエイトが大きく反映される結果、物価下落率の大きい教養娯楽費や教養娯楽用耐久財の価格下落の影響が増幅され、生活保護受給世帯における同財の購入頻度が一般世帯よりかなり低いのに、実態とかけ離れた数値が算定 されることになるから、このような品目も除外すべきであるのに、それをしなかった前記アの厚生労働大臣の判断に、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性が認められない旨主張する。 しかし、被控訴人らの主張は、何らかの検証をすべきであるということを前提とするものと解されるが、その検証の内容は明らかではない上、そ もそも生活保護法その他の法令において、生活扶助基準を改定するに当 たって、特定の検証を経ることを要件としては定めていない以上、被控訴人らの意図する検証がどのようなものであれ、それを経ていないというだけでは、厚生労働大臣の判断過程に欠落があったとはいえない。そして、消費であれ物価であれ、生活扶助基準の改定の指標を検討するに際し、生活扶助とはお 証がどのようなものであれ、それを経ていないというだけでは、厚生労働大臣の判断過程に欠落があったとはいえない。そして、消費であれ物価であれ、生活扶助基準の改定の指標を検討するに際し、生活扶助とはおよそ無関係な消費ないし財の品目を除外しない方がむしろ不 合理であって、それを除外すべきでないという特段の事由が本件全証拠によっても認められない以上、生活扶助費で支出されない品目を指数品目から除外するとした前記アの厚生労働大臣の判断が、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性が認められないとの被控訴人らの主張は採用できない。また、生活扶助費で支出されない品目を除外した 結果、除外されなかった品目(被控訴人らが指摘する教養娯楽費や教養娯楽用耐久財に限られない。)の物価に影響が出ることは否定できないけれども、前記説示のとおり、生活扶助費で支出されない品目を除外することが合理的として許容される以上、そのような結果が出るからといって、前記アの厚生労働大臣の判断が、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専 門的知見との整合性を欠くということにもならない。さらに、教養娯楽費や教養娯楽用耐久財などについても生活扶助費で支出される余地があり、生活保護受給世帯においても、教養娯楽用耐久財が相応に普及していること(前記2で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の1イ)からすれば、現に生活扶助費が支出されている品目であるにも関わらず、そのような特 定の品目を生活扶助相当CPIの指数品目から除外、ましてやウエイトを調整するということになれば、他の指数品目と明確に区別し得る合理的、客観的指標を設定し、あるいはどの程度調整するかの合理的根拠、基準を設定することが必要となるが、それは相当困難であると思われるし、少なくともそれが一義 なれば、他の指数品目と明確に区別し得る合理的、客観的指標を設定し、あるいはどの程度調整するかの合理的根拠、基準を設定することが必要となるが、それは相当困難であると思われるし、少なくともそれが一義的に決まるようなものではない。そうすると、客観的で 恣意的判断の余地のない基準(生活扶助で支出されうる品目か否かという 基準)で生活扶助相当CPIの指数品目を判断することとした厚生労働大臣の前記アの判断過程が、不合理であるとはいえないし、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性が認められないとも評価できない。この点の被控訴人らの主張も採用できない。 エ被控訴人らは、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶 助相当CPIは、それぞれ異なる品目に基づいて算出されたものであり、これらの比較によって算定された物価下落率には統計学的根拠がない旨主張するが、物価下落率を算定するに当たり、同じ品目で算出されたCPI同士の比較によらなければならないとの統計学的知見があると認めるに足りる証拠はなく、被控訴人らの上記主張は採用できない。 デフレ調整の指標となる物価変動率を算出するための生活扶助相当CPIの設定に際し、総務省CPIのウエイト(家計調査により算出されたウエイト)を用いたことについてア前記アで認定説示したデフレ調整の趣旨ないし目的及び弁論の全趣旨から、この点についての厚生労働大臣の判断過程は、次のとおりであった と認められる。 厚生労働大臣は、水準均衡方式では、一般国民の消費水準(民間最終消費支出の伸び)が改定の指標とされてきたところ、デフレ調整が、その水準均衡方式と同様、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なも (民間最終消費支出の伸び)が改定の指標とされてきたところ、デフレ調整が、その水準均衡方式と同様、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考 え方に立脚するものであり、この考え方からすると、一般国民のウエイトのデータを用いることが、よりその趣旨ないし目的に適合していると考えられたこと、指数品目を生活扶助で支出される品目とするためには、すべての消費品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び生活扶助で支出することが想定されていない品目を詳細に除外する必要があったこと、 総務省CPIのウエイト(家計調査により算出されたウエイト)は、総務 省統計局が実施している統計法上の基幹統計であり、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっており、品目別のウエイトを把握するのに最も適したデータであり、実際に多くの社会保障制度の給付額の改定で利用されていることから、生活扶助相当CPIの算出に当たって、総務省CPI のウエイト(家計調査により算出されたウエイト)を用いることが合理的で適当であると判断した。 イ厚生労働大臣の前記アの判断の基礎とした事実について特段過誤は認められないし、それらの事実を踏まえた同大臣の判断の過程及び手続は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見と の整合性に欠ける点は認められない。 ウ被控訴人らは、デフレ調整の趣旨ないし目的が、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分のみ生活扶助基準額の見直しを行うということであったのであるから、その生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分を正確に把握するためには、厚生労働大臣は、 生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分のみ生活扶助基準額の見直しを行うということであったのであるから、その生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分を正確に把握するためには、厚生労働大臣は、家計調査における年間収入 十分位階級別又は年間収入五分位階級別のデータから被保護世帯により近い消費生活実態を有すると考えられる収入階級のデータを使用するか、被保護世帯を対象として実施された社会保障生計調査によって明らかとなった被保護世帯の消費支出のデータを使用して生活扶助相当CPIを算出すべきであった旨主張する。 しかし、デフレ調整の趣旨ないし目的は、前記アで認定説示したとおり、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との不均衡を是正することであるから、被控訴人らの前記主張はその前提を誤るものである。また、この点を措くとしても、デフレ調整の指標として物価を選択した判断過程(前記ア)からすれば、必ずしも、生活保護受給世帯の可処分所得の実 質的増加分を正確に把握する必要があったとは認められない。他方、家計 調査における低所得世帯(第1・十分位)のウエイトのデータには、品目別分類別の統計データがないといった問題があり、社会保障生計調査にも、家計調査に比較して調査世帯の偏りがあり、サンプル数も少なく、詳細な品目ごとのウエイトが、少なくとも直ちには把握できないといった問題があることを考慮すると、社会保障生計調査や家計調査における低所得世帯 (第1・十分位)のウエイトデータを用いるのが相当であったとは認められない。そうするとこれらのデータではなく、一般国民のウエイトのデータである総務省CPIのウエイト(家計調査により算出されたウエイト)を用いることとした、前記アの厚生労働大臣の判断の過程は一応合理的であって、 するとこれらのデータではなく、一般国民のウエイトのデータである総務省CPIのウエイト(家計調査により算出されたウエイト)を用いることとした、前記アの厚生労働大臣の判断の過程は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性 に欠ける点は認められない。なお、家計調査における低所得世帯(第1・五分位)のウエイトのデータであれば、生活扶助相当CPIの算出に支障はないと認められるが、他に選択肢があったというだけでは、前記アの厚生労働大臣の判断に過誤欠落があったということにはならないから、この事実は前記判断を左右しない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用 できない。 デフレ調整の指標となる物価変動率を算出するための生活扶助相当CPIの設定に際し、基準年を平成22年として、そのウエイトを用いたことについてア厚生労働大臣は、本件改定が行われた平成25年の時点では、平成17 年以前の基準のウエイトのほかに、平成22年基準のウエイトも存在していたところ、国民の消費の内容は時間と共に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考え、平成22年基準のウエイトのデータを用いることとした(弁論の全趣旨)。 イ前記厚生労働大臣が前提とした事実に過誤はなく、消費者物価指数マ ニュアルにおいて中間年指数として、物価変動率を算出する対象期間の間に基準を採る手法が紹介されていることも踏まえると(乙A103)、厚生労働大臣の判断過程は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められないから、裁量権の逸脱又は濫用があ ていることも踏まえると(乙A103)、厚生労働大臣の判断過程は一応合理的であって、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける点は認められないから、裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められない。 ウ被控訴人らは、総務省統計局の消費者物価指数の設計と整合性の取れる考え方は、旧基準の期間は旧基準の情報を用いて計算し、新基準の期間は新基準の情報を用いて算出した指数をそれぞれ比較するというものであるが、デフレ調整において用いられた生活扶助相当CPIは、個々の品目や分類については新基準に接続された旧基準指数を用いるものの、旧基準の 期間である平成20年において、新基準(平成22年基準)のウエイトを借りて指数を算出したため、全体としては物価変動の方向性が維持されておらず、新旧接続の考え方からも結果的に乖離しており、このような生活扶助相当CPIの算出方法は、平成20年の物価動向の把握においてウエイトの時点がずれており、消費者物価指数の設計と整合性のとれる算出方 法ではない旨主張する。 しかし、総務省統計局が消費者物価指数の算出について被控訴人らが主張するような設計を意図して採っているのか否か、仮に採っているとしてそれと整合性の取れる考え方が被控訴人らの主張する内容であるのか否かを裏付ける的確な証拠はなく、被控訴人らが主張する考え方を前提とはし 難いが、その点を措くとしても、被控訴人らが主張する総務省統計局の消費者物価指数の設計と整合性のある手法以外の手法、とりわけ生活扶助相当CPIを算出した手法が、統計等の客観的数値等との合理的関連性を欠くとか、専門的知見に反するからおよそ許容されないといったことを認めるに足りる証拠もない以上、被控訴人らの前記主張を考慮しても、前記ア の厚生 手法が、統計等の客観的数値等との合理的関連性を欠くとか、専門的知見に反するからおよそ許容されないといったことを認めるに足りる証拠もない以上、被控訴人らの前記主張を考慮しても、前記ア の厚生労働大臣の判断に過誤欠落があり、合理性を欠くとは認められない。 したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 エ被控訴人らは、家電エコポイント制度の開始や地上デジタル放送への移行に備えた需要増加により、消費者物価指数が平成17年基準から平成22年基準に改定された際、テレビのウエイトが大幅に増大したが、それにもかかわらず、平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに平成22年 基準のウエイトを用いると、平成20年の時点で家計がまだ直面していない制度変更の影響を先取りすることとなるし、平成22年の地上デジタル放送への移行の際、生活保護受給世帯には無料のチューナーが配布されており、平成22年基準のウエイトは、生活保護受給世帯が経験した消費支出増加ではないと考えられ、平成20年の生活扶助相当CPIで把握され た物価動向は、生活保護受給世帯が直面した物価動向と明確に乖離するものであるから、平成22年基準のウエイトを用いることに合理性はない旨主張する。 しかし、物価変動率を算出するための基準年が比較する年と一致しない限り、その参照するウエイトは、比較する年から見れば将来あるいは過去 のウエイトとならざるを得ないのであるから、このことを捉えて基準年の設定についての厚生労働大臣の判断が不合理であるとはいえない。また、平成22年基準のウエイトが生活保護受給世帯のそれとは乖離している旨主張している点も、総務省CPIのウエイトを選択した以上、それが生活保護受給世帯のそれと必ずしも一致しないことはむしろ当然であって、 平成22年基準のウエイトが生活保護受給世帯のそれとは乖離している旨主張している点も、総務省CPIのウエイトを選択した以上、それが生活保護受給世帯のそれと必ずしも一致しないことはむしろ当然であって、そ れは基準年をどこに設定しても回避できないから、このことを捉えて基準年の設定についての厚生労働大臣の判断が不合理であるともいえない。被控訴人らの前記主張は採用できない。 オ被控訴人らは、平成22年基準では、ノートパソコン、デスクトップパソコン及びカメラについて、品質調整により価格指数が下落しているとこ ろ、平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに平成22年基準のウエ イトを用いたことは、平成20年から平成22年までをパーシェ指数で求めたのと同じ計算をしていることとなるが、前記ノートパソコン等の価格下落が、パーシェ指数の下方バイアスによって、生活扶助相当CPIの大幅な下落率をもたらしており、これは、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加とは何の関係もないものであるから、平成22年基準のウエ イトを用いることは相当でない旨主張する。 しかし、弁論の全趣旨によれば、消費者物価指数を算定するに当たり、基準年が比較する年の過去であれば上方バイアスが、将来であれば下方バイアスが生じることが指摘されていて、結局、基準年が比較する年と一致しない限り、上下いずれかのバイアスが生じることは避けられない。そう すると、仮に、被控訴人らが主張するように、平成22年基準のウエイトを用いたことで下方バイアスが生じていたとしても、それをもって平成22年基準のウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断が不合理であるとは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 カ被控訴人らは、ラスパ たとしても、それをもって平成22年基準のウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断が不合理であるとは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 カ被控訴人らは、ラスパイレス式やパーシェ式では、基準時は比較時より 過去の時点にしなければならないとされている(甲A104)から、平成20年の生活扶助基準相当CPIを算出するに当たって、同年より未来の時点である平成22年を基準時としたことは国際基準を逸脱している旨主張するが、甲A104をみても、国際的にも統計学的にも消費者物価指数の算定に当たって過去のウエイトを用いなければならないとは認められな いし、他に、これを認めるに足りる証拠もないから、被控訴人らの上記主張は採用できない。 デフレ調整に関するその他の主張についてア被控訴人らは、平成22年を基準時としたことにより、平成20年の生活扶助相当CPIは「新しい時点を基準にして旧い時点での変化はどの程 度であったか」を示す価格比の平均値であるのに対し、平成23年の生活 扶助相当CPIは「旧い時点を基準にして新しい時点での変化はどの程度であったか」を示す価格比の平均値である、あるいは、平成20年の生活扶助相当CPIは指数の上昇率が低くなる傾向が生じるパーシェ式に、平成23年の生活扶助相当CPIは指数の上昇率が高くなる傾向が生じるラスパイレス式によっており、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23 年の生活扶助相当CPIとでは計算論理が異なっていて、正確な物価下落率を算定することはできない旨主張する。 しかし、生活扶助相当CPIの算出方法を分析して、平成20年の生活扶助相当CPIをパーシェ式で、平成23年の生活扶助相当CPIをラスパイレス式で算出したと評価するこ はできない旨主張する。 しかし、生活扶助相当CPIの算出方法を分析して、平成20年の生活扶助相当CPIをパーシェ式で、平成23年の生活扶助相当CPIをラスパイレス式で算出したと評価することが相当であるかは疑問があるが、そ の点を措くとしても、前記イで認定説示のとおり、中間年指数という考え方が専門的知見に反しないものと認められる一方で、生活扶助相当CPIの算出で採られた、基点の時期よりも新しく、終点の時期よりも古い時期のウエイトを用いる手法が専門的知見に反していると認めるに足りる証拠はない以上、平成22年基準のウエイトを用いることとした厚生労働大 臣の判断が合理性に欠けるとは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 イ被控訴人らは、被控訴人らが指摘するデフレ調整の問題点が、それぞれ単体では合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものと認められないとしても、それらの問題点が複合的、重畳的にデフレ調整で採用された物 価下落率の算定結果に影響を及ぼしている場合、デフレ調整率の算定結果については慎重な検討が必要であるといえるが、これをしなかった本件改定には統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性は認められない旨主張する。 被控訴人らが主張するデフレ調整率の算定結果に対する慎重な検討とい うのが、具体的には何をどのように検討すべきというのか定かではないが、 その点を措くとしても、前記ないしで認定説示のとおり、デフレ調整の実施に至る厚生労働大臣の判断過程に一応の合理性が認められ、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがないと評価される以上、その判断過程を経て得られたデフレ調整率の算定結果を生活扶助基準 の判断過程に一応の合理性が認められ、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがないと評価される以上、その判断過程を経て得られたデフレ調整率の算定結果を生活扶助基準の水準の改定に用いることはむしろ当然であって、 これをしたことが厚生労働大臣の裁量権を逸脱、濫用したことにならない。 厚生労働大臣の判断とは異なる見解や算定方法があることは被控訴人ら主張のとおりであるが、それを採用せず、前記ないしで認定説示した判断過程を採ったことが、厚生労働大臣の裁量権行使として許容される以上、デフレ調整率の算定結果を得た段階で、再度検討することが不可欠である とまでは認められない。 もっとも、厚生労働大臣によるデフレ調整の判断過程、とりわけ、デフレ調整の指標として物価によることとした判断過程(前記)は、従前の生活扶助基準の水準の改定方式である消費を指標とした水準均衡方式を採用した場合には、平成21年全国消費実態調査の結果が、国民の将来不安 といった主観的要素の影響もあって大きく落ち込んでいることから、改定が大幅な減額となることが予想されたため、代替手法として物価を指標とすることでこれを回避するのが相当と判断したということであった。このような判断過程を前提とすると、厚生労働大臣としては、少なくとも、その代替手法によって把握された物価変動率を用いて生活扶助基準の改定を した場合の改定幅が、消費を指標とした水準均衡方式によって改定した場合に想定される変動幅の範囲内にとどまるか否かを確認することが必要であったというべきである。 そこで、この点を検討すると、前記アで認定説示のとおり、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うことが必要と判断する以前、平成21年全国消 費実態調査の特別集計の過程において、 というべきである。 そこで、この点を検討すると、前記アで認定説示のとおり、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うことが必要と判断する以前、平成21年全国消 費実態調査の特別集計の過程において、平成19年検証と同様の手法で平 成21年全国消費実態調査における年収階級第1・十分位の消費水準を検討したところ、夫婦子1人世帯の生活扶助相当支出額は平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセント下落し、同世帯の生活扶助基準額を約12.6パーセント下回る状況となっていたことを認識していたのであるから、物価下落率として把握された4.78パーセントが、消費を指 標とした水準均衡方式によって改定した場合に想定される変動幅の範囲内にとどまることが明らかであると認識したものと認められる。したがって、それ以上に、消費を指標とした水準均衡方式によって改定した場合に想定される変動幅の範囲内にとどまるか否かを改めて確認するまでもなかったといえる。そうすると、デフレ調整の結果得られた物価変動率を生活扶助 基準の水準の改定に用いると判断した厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落があったとは認められない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 7 争点(ゆがみ調整〔2分の1処理〕とデフレ調整を併せて行ったことの違法性の有無)について 被控訴人らは、ゆがみ調整に加えてデフレ調整をすることは、物価の二重評価をしたこととなり、不合理である旨主張する。 しかし、デフレ調整は生活扶助基準の水準の設定を改定するものであるのに対し、ゆがみ調整は設定された生活扶助基準の水準を前提に、その水準の展開のための指数を改定するためのものであるから、デフレ調整とゆがみ調整とに 重複する部分があるとは認められず、ゆがみ調整に 対し、ゆがみ調整は設定された生活扶助基準の水準を前提に、その水準の展開のための指数を改定するためのものであるから、デフレ調整とゆがみ調整とに 重複する部分があるとは認められず、ゆがみ調整に加えてデフレ調整をすることが不合理であるとはいえない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 8 争点(適切な激変緩和措置が採られたか)について 厚生労働大臣は、激変緩和措置として、平成25年報告書において、生活 扶助基準の見直しを検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び 一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたいと指摘されたことを踏まえ、生活扶助基準の見直しを平成25年度から3年間をかけて段階的に実施し(期末一時扶助を除く。)、見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行基準からの増減幅は、プラスマイナス10パーセントを超えないように調整した。 厚生労働大臣が、生活扶助基準の見直しを3年間かけて段階的に実施することや、増減幅についてプラスマイナス10パーセントを超えないよう調整したことは、生活保護受給世帯の生活等への影響について配慮した対応といえ、合理的なものと認められる。 被控訴人らは、本件改定前の生活扶助基準も最低限度の生活水準に達する ものではなく、本件改定により保護費が更に減額されれば、段階的に本件改定を実施するとしたとしても、被保護世帯が最低限度の生活を維持することはできなくなる旨主張する。 しかし、最低限度の生活が、抽象的かつ相対的な概念であって、それを具体化するに当たっては、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの 裁量権が認められていること、したがって、その具体化である生活扶助基準の改定についての かつ相対的な概念であって、それを具体化するに当たっては、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの 裁量権が認められていること、したがって、その具体化である生活扶助基準の改定についての司法審査は、厚生労働大臣の判断過程の審査として行うべきと解されること(前記3で引用する原判決「事実及び理由」欄第3の2)からすれば、本件改定前の生活扶助基準が最低限度の生活水準に達していたか否か、あるいは、本件改定後の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満 たすに足りているか否かについては、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有する厚生労働大臣の判断が原則として尊重され、例外的に、生活扶助基準が現実の生活条件を無視して著しく低い基準となっているなど、憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反することが明らかな場合に、前記厚生労働大臣の判断が否定され、最低限度の生活水準を下回ったと評価するのが相当 と解すべきである。そうすると、被控訴人らは、本件改定前の生活扶助基準 が最低限度の生活水準に達していないことについて、縷々主張するところ、その主張事実を前提としても、従前の生活扶助基準や本件改定後の生活扶助基準が現実の生活条件を無視して著しく低い基準となっているなど、憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反することが明らかな場合に当たるとは認められないから、前記主張は採用できない。 9 争点(本件改定後の生活扶助基準が健康で文化的な最低限度の生活水準を下回っているか)について前記8の認定説示に加えて、基準部会が平成29年に生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)について検証を行ったところ、生活扶助基準の改定の基軸となる標準世帯(33歳、29歳、4歳の3人世帯)を含む夫婦子1人世帯の第1・ 十分位の生活扶助相当支出 生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)について検証を行ったところ、生活扶助基準の改定の基軸となる標準世帯(33歳、29歳、4歳の3人世帯)を含む夫婦子1人世帯の第1・ 十分位の生活扶助相当支出額と本件改定後の生活扶助基準額とがおおむね均衡することが確認されたこと(乙A80)を踏まえると、本件改定後の生活扶助基準が健康で文化的な最低限度の生活水準を明らかに下回っているとは認められない以上、本件改定後の生活扶助基準が最低限度の生活水準を下回っており、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用したものであるとの被控訴人らの主 張は採用できない。 10 争点(本件改定が政治的意図に基づき行われたか)について被控訴人らは、自民党は平成24年12月の衆議院議員選挙の政権公約で生活扶助基準を原則として10パーセント引き下げると明示し、当時の厚生労働大臣は基準部会による最終報告を待たずに、自民党から選出された大臣 としては生活扶助基準の10パーセントの引き下げという政権公約の制約を受けていると述べ、平成25年報告書が作成される前に、生活扶助基準を引き下げないということはないことを明言しており、これらのことからすると、本件改定は、生活保護法8条2項に定める考慮事項ではない、自民党の政権公約の実現という政治的意図を考慮したもので、そのことで専門技術的 考察がゆがめられたとして、本件改定は、厚生労働大臣がその裁量権の行使 を誤った違法なものである旨主張する。 確かに、自民党は、生活扶助基準の原則10パーセント引き下げを政権公約とし(甲A32)、厚生労働大臣も生活扶助基準を下げないということはないとか、自民党から選出された大臣であるため、生活扶助基準の原則10パーセント引き下げという政権公約にある程度制約を受ける 権公約とし(甲A32)、厚生労働大臣も生活扶助基準を下げないということはないとか、自民党から選出された大臣であるため、生活扶助基準の原則10パーセント引き下げという政権公約にある程度制約を受けるなどと発言し ており(甲A34、35)、このような政治的状況ないし政治的判断が本件改定の背景にあったことは認められる。しかし、背景がどうであれ、本件改定は、厚生労働大臣が前記4ないし8で認定説示のとおりの判断過程を経て行ったものであり、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められないから、上記政治的背景ないし政治的判断が厚生 労働大臣の判断を違法にゆがめたとは認められないし、他にそれを認めるに足りる証拠もない。したがって、被控訴人らの上記主張は採用できない。 第4 結論以上によれば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められない。したがって、被控訴人らの請求はいずれも理由がな いからこれを棄却すべきところ、これと異なる原判決は相当でない。よって、原判決を取り消して、被控訴人らの請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官新谷晋司 裁判官平井健一郎 裁判官石川千咲
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