平成18年9月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年第25464号損害賠償請求事件( )ワ口頭弁論終結日平成18年7月19日判決主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告らは、原告に対し、連帯して3447万9435円及びこれに対する被告医療法人社団Aに対しては平成17年1月8日から、被告Bに対しては平成17年1月12日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要事案の要旨 原告は、昭和62年1月21日、約20年前に他の美容整形外科病院で受けた豊胸手術後のトラブルを心配し、被告Bが開設するC美容形成外科を受診し、同年2月21日には、注入異物除去・乳房再建手術を受け、その後、数度にわたって再手術を受けるなどしていた。 このことについて、原告は、被告らに対し、原告に対する診療主体は当初は被告Bであり、その後被告医療法人社団Aがこれを承継したものであるところ、不十分な説明により不必要な手術を行い、無計画かつ不適切な再手術により原告の身体の損傷を拡大したと主張して、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金3447万9435円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した前提となる事実証拠のページ番号を〔〕内に示す)。 当事者( )ア原告関係原告は、昭和22年9月15日生まれの女性である。 イ被告関係。 、( )ア被告医療法人社団A(以下「被告A」という)は、診療所を経営し科学的でかつ適正な医療を普及することを目的とする医療法人社団であり、Dクリニックと呼称する診療所 る。 イ被告関係。 、( )ア被告医療法人社団A(以下「被告A」という)は、診療所を経営し科学的でかつ適正な医療を普及することを目的とする医療法人社団であり、Dクリニックと呼称する診療所を東京都、大阪府及び福岡県に開設している(争いのない事実、甲B1。E医師は、被告Aの代表者理事)長である(甲B1。 )被告Bは、E医師の父親で、昭和39年から「C美容形成外科」の()イ、名称で東京都品川区aに診療所を開設し、平成3年9月まで診療を行っていた医師である(争いのない事実、乙A3〔2。 〕) 診療契約(初めての診察)( )原告は、昭和62年1月21日、被告Bが開設するC美容形成外科を受診し、同年2月21日には、注入異物除去・乳房再建手術を受けた(争いのない事実。 ) 争点 本件治療の主体( ) 注入異物除去手術に関する説明義務違反の有無( ) 再手術の繰返しにより原告の身体の損傷を拡大した過失の有無( ) 消滅時効の成否( ) 損害額( )争点についての当事者の主張 争点1 (本件治療の主体)について( )( )(原告の主張)ア被告Bの責任 被告Bは、昭和62年、原告との間で診療契約を締結し、これに基づき原告を診察し、異物除去手術等を実施した。したがって、注入異物除去手術に関する説明義務違反について被告Bが責任を負うのは当然である。 また、同人は、手術後、その結果に不満を訴える原告に対し、E医師を紹介し、以後は二人で診療に当たると述べた。そうである以上、それ以降、E医師が行った診療行為については、E医師自身の診療行為であると同時に、被告Bにとっても契約の共同当事者の行為として、診療契約上の責任を生じさせるものである。 したがって、再手術を繰り返して原告の障害を拡大し った診療行為については、E医師自身の診療行為であると同時に、被告Bにとっても契約の共同当事者の行為として、診療契約上の責任を生じさせるものである。 したがって、再手術を繰り返して原告の障害を拡大した過失についても、被告Bは責任を免れない。 イ被告Aの責任上記で主張したとおり、E医師は昭和63年以降、被告Bと主に原告の診療行為に当たってきた。そして、遅くとも昭和63年4月以降、記録上は平成14年である最終の診療行為時まで診療行為は継続して実施された。 E医師は、少なくとも再手術の繰返しについては中心的に自らの判断で診察、治療を実施し、手術を自ら開設していたdの診療所で行ってもいるから、原告との関係では、被告Bとともに診療契約の当事者であった。このことは、E医師が被告Bとの関係で「分院長」と呼ばれていたことや、被告AがE医師を「F医院四代目院長」と呼称していることなどからすれば明らかである。 そして、平成2年に被告Aが設立され、これに伴ってE医師が負っていた診療契約に基づく法律関係が被告Aに引き継がれており、原告との関係についても同様に引き継がれた。また、被告Aは、被告Bが病気で倒れた後、医療器具や従業員の一部を引き取るなどの組織に関する承継を受けたほか、原告を含む患者についても診療そのものを引き継いでいるのであるから、明示の合意がなくても被告Bに由来する診療契約上及び不法行為上 の責任を同被告と重畳して承継していると解すべきである。 したがって、原告との診療契約は被告Bとの間で昭和62年にされたものが再手術時においても継続し、これらが一連のものである以上、被告Aもまた昭和62年からの治療行為一切について重畳的に責任を負うものである。 (被告の主張)ア被告Bについて原告との関係では、被告Bは昭和62年から平成3年6月7日までの時 ものである以上、被告Aもまた昭和62年からの治療行為一切について重畳的に責任を負うものである。 (被告の主張)ア被告Bについて原告との関係では、被告Bは昭和62年から平成3年6月7日までの時期の診療に関しては、診療契約の主体であり、同時期に一緒に診療に当たっていたE医師は、被告Bの医院で非常勤医師をしていたのであるから、被告Bの被用者ないし履行補助者であり、診療契約の主体ではない。 しかしながら、それ以降の診療については別個独立のものであるところ、被告Bは平成3年9月に心筋梗塞を発病して医業を引退し、同年12月に自己の診療所を閉鎖して療養生活を送っているのであって、それ以降の診療には一切関与していないから、診療契約の主体にはなり得ない。 イ被告Aについて被告Aは、平成4年6月20日以降の診療について、同診療契約の主体であるが、それ以前の診療については、被告Aが被告Bから又は被告B及びE医師から債務引受をした等の事実がない以上、診療契約の主体とはなり得ない。 ウ原告は、E医師が「分院長」と呼ばれていたり、被告AがE医師を「F医院四代目院長」と称していたこと、E医師が原告の手術を自己の診療所で行い被告Bの医業廃業後に原告を引き続き診療したことを根拠として、Bが診療契約の主体であった時期の診療についての責任をE医師が当然承継し、それをさらに被告Aも承継したと主張する。 しかし、被告AがE医師を「F医院四代目院長」と称したのは、単にF 家が4代続いて医師を職業としていることを述べたにすぎない。また、「分院長」と呼ばれていたことについては、昭和63年当時、E医師は被告Bが開設していたab丁目所在のC美容形成外科及びac丁目所在の同分院のうち、主に同分院において非常勤医師として勤務していたため、そのように呼ばれていたにすぎないから、 昭和63年当時、E医師は被告Bが開設していたab丁目所在のC美容形成外科及びac丁目所在の同分院のうち、主に同分院において非常勤医師として勤務していたため、そのように呼ばれていたにすぎないから、E医師が診療契約上の責任を負うことはないし、E医師と被告Aとの間において債務引受の合意がない以上、仮にE医師に何らかの診療契約上の責任があったとしても、それが被告Aに帰属する法律上の根拠がない。 争点2 (注入異物除去手術に関する説明義務違反の有無)について( )( )(原告の主張)ア豊胸手術においては、今日では患者の胸部に生理食塩水のバッグを挿入するなどの方法がとられているが、それ以前にはシリコンジェルバッグを挿入する方法が主流であった。しかし、この方法では発がん性があるなどの危険性が1990年代に指摘された。さらに、シリコンジェルバッグを挿入する方法以前には、パラフィン、オルガノーゲン、シリコン等の石油生成物をバッグという被膜を介することなくして患者の胸部組織内に直接注入する方式が採用されていた。原告が昭和40年代に受けたという最初の豊胸手術は、詳細こそ不明であるが、おそらくは最後者の方式によるものと考えられる。 イ上記手術によって体内に注入された異物を除去する手術においては、当然に、原告に生じたような乳房の損傷、血流障害による組織の壊死といった新たな問題をもたらす危険性が高いところ、こうした危険性は、長年美容形成外科に従事してきた被告Bには予測可能であった。他方、上記石油生成物による発がん性については、現在においても医学的に確認された情報とはなっておらず、むしろ現在では異物によるしこりの存在が乳がんの発見を遅らせる危険性があるといった付随的な問題が指摘されるに止まっ ている。そして、原告の当時の状態は、左乳房の上、鎖骨 れた情報とはなっておらず、むしろ現在では異物によるしこりの存在が乳がんの発見を遅らせる危険性があるといった付随的な問題が指摘されるに止まっ ている。そして、原告の当時の状態は、左乳房の上、鎖骨付近に3センチメートル程度のしこりがあるのみであり、その他に豊胸手術の影響とみられる症状は現れていなかった。 こうした状況に鑑みれば、組織内に直接挿入された異物を除去する手術の困難性と危険性に比し、原告が当時においてこのような手術を受ける必要性は全くなかった。 したがって、被告Bとしては、原告が異物除去手術を受けるか否か判断する前提として、原告の当時の症状とその原因、手術をする理由、手術内容、それによる危険性の程度、手術を行った場合の改善の見込み、程度及び手術をしない場合の症状等について具体的に説明すべき義務があった。 ウしかしながら、被告Bは、原告に対し「簡単な手術である」とのみ告、げて、原告に手術を迫ったものであって、上記説明義務に違反していることは明らかである。 (被告の主張)ア昭和62年に行われた異物除去手術には、次のとおり必要性及び適応が存在した。 イ現在は勿論、昭和62年当時においても、異物注入による豊胸手術を( )ア受けた患者には、そのほとんどに重篤な後遺障害が発生することが知られ、その危険性が広く認識されていた。 原告は、初診時、注入異物による硬結の存在が両乳房中に複数認めら( )イれ、当初の豊胸手術(異物注入手術)による後遺障害が発現・進行していることが認められた。原告が異物注入手術を受けてから既に20年間が経過していたことからすれば、これを放置すれば今後、乳房の硬結の増殖・悪化、乳房の変形、皮膚への浸潤・潰瘍へと後遺障害が進行することが予想され、さらにはヒトアジュバンド病発症の可能性も危惧された。したがっ いたことからすれば、これを放置すれば今後、乳房の硬結の増殖・悪化、乳房の変形、皮膚への浸潤・潰瘍へと後遺障害が進行することが予想され、さらにはヒトアジュバンド病発症の可能性も危惧された。したがって、原告には、異物除去手術の適応があったし、その必要 性もあった。 ウなお、原告は、異物除去手術が危険で、本来実施してはならない手術であることを主張の前提としているが、これは文献の誤読、E医師の発言を誤解ないし記憶違いしたことによるものであり、E医師が原告に対して述べたのは、当初の異物注入手術が本来してはならない手術であったということである。 エそれだけでなく、被告Bは、診療録の記載からすれば、手術を行うかについてはあくまでも原告の意向を尊重して決定する旨説明しており、原告の意に反して手術を積極的に勧めたとか原告に手術をせかした事実は全く認められないし、異物をとった後に乳房がつぶれること、手術後に被膜拘縮が発生する可能性があることも説明している。また、被告Bが説明の補充として原告に交付した自著にも、異物除去手術が決して簡単な手術ではなく、術後には手術痕が残ることや乳房再建が必ずしも容易でないことが何か所にも記載されている。 争点3 (再手術の繰返しにより原告の身体の損傷を拡大した過失の有無)( )( )について(原告の主張)ア被告Bは、原告に対し、最初の異物除去手術によって生じた問題の解決のために、短期間に複数回の乳房再建手術を実施している。 これらの手術は異物が摘出された原告の乳房を切開して生理食塩水のバッグを挿入するか、再び乳房を切開して挿入されたバッグを摘出するものであり、このような外科的侵襲が短期間のうちに同一箇所に繰り返し行われれば、当然に当該部位には組織の破壊、皮膚の引きつれ、筋肉の損傷等の問題が生じることは明 を切開して挿入されたバッグを摘出するものであり、このような外科的侵襲が短期間のうちに同一箇所に繰り返し行われれば、当然に当該部位には組織の破壊、皮膚の引きつれ、筋肉の損傷等の問題が生じることは明らかである。 イ被告Bは、当初の判断の誤りにより原告に生じた結果を糊塗するため、原告の苦情に応えるような姿勢をとりながら無計画に不適切な手術を繰り 返したのであり、その結果、原告の身体に生じた損傷は拡大した。 (被告の主張)否認する。 なお、本件各乳房再建手術は、異物除去に関して状況改善のために実施されていたのではない。異物除去は当初の手術で達成されており、その後の各乳房再建手術は原告が各回の手術の直前に実施された手術の結果に美的観点から主観的に満足が得られなかったため、原告が新たな手術を求め、その個別の希望に基づいて実施されたものである。 争点4 (消滅時効の成否)について( )( )(被告の主張)ア本件の診療経過からすれば、仮に何らかの損害賠償請求権が原告に成立したとしても、それが消滅時効により消滅していることは明らかである。 すなわち、被告Bないし被告Aが行ったとされる次の診療行為については、次のとおり時効消滅した。被告らは、これらの時効を援用する(第1回弁論準備手続期日において援用。 )被告Bが、被用者・履行補助者G医師をして昭和62年2月21日に( )ア実施した注入異物除去・乳房再建手術を原因とする損害賠償請求権(説明義務違反を含む)不法行為平成2年2月21日の経過を以て時効消滅債務不履行平成9年2月21日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者G医師をして昭和62年9月19日に( )イ実施した乳腺下インプラント除去・乳房再建手術を原因とする損害賠償請求権(説明義務違反を含む)不法行為平成2 て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者G医師をして昭和62年9月19日に( )イ実施した乳腺下インプラント除去・乳房再建手術を原因とする損害賠償請求権(説明義務違反を含む)不法行為平成2年9月19日の経過を以て時効消滅債務不履行平成9年9月19日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者G医師をして昭和62年11月21日( )ウ に実施した右乳頭形成手術を原因とする損害賠償請求権不法行為平成2年11月21日の経過を以て時効消滅債務不履行平成9年11月21日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者G医師をして昭和63年1月9日に実( )エ施した右乳頭形成手術を原因とする損害賠償請求権不法行為平成3年1月9日の経過を以て時効消滅債務不履行平成10年1月9日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者E医師をして昭和63年4月30日に( )オ実施した乳房再建・右乳頭形成手術を原因とする損害賠償請求権不法行為平成3年4月30日の経過を以て時効消滅債務不履行平成10年4月30日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者E医師をして平成元年2月11日に実( )カ施した乳房再建手術(エキスパンダー挿入)を原因とする損害賠償請求権不法行為平成4年2月11日の経過を以て時効消滅債務不履行平成11年2月11日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者E医師をして平成元年6月12日及び( )キ13日に実施した乳房再建手術(エキスパンダー抜去・インプラント挿入・血腫除去・インプラント入替え)を原因とする損害賠償請求権不法行為平成4年6月13日の経過を以て時効消滅債務不履行平成11年6月13日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者E医師をして平成3年6月7 ラント入替え)を原因とする損害賠償請求権不法行為平成4年6月13日の経過を以て時効消滅債務不履行平成11年6月13日の経過を以て時効消滅被告Bが、被用者・履行補助者E医師をして平成3年6月7日に実施( )クしたインプラント抜去手術を原因とする損害賠償請求権不法行為平成6年6月7日の経過を以て時効消滅債務不履行平成13年6月7日の経過を以て時効消滅被告Aが、平成7年6月12日に実施した乳房再建手術を原因とする( )ケ 損害賠償請求権不法行為平成10年6月12日の経過を以て時効消滅イ消滅時効の起算点について原告は、被告Bが注入異物除去手術を実施したこと自体及び注入異物( )ア除去手術に先だって必要な説明を怠ったこと、並びに、その後の手術を実施したことが不法行為ないし債務不履行に該当すると主張するものであるから、原告は、各手術における損害及び加害者については各手術日において知り得る地位にあった。かつ、債務不履行の時点は各手術日であるから、不法行為及び債務不履行のいずれの損害賠償請求権も各手術日が消滅時効の起算点となる。 この点については、原告は、全体として一つの診療契約に基づく行為( )イであった以上、消滅時効期間の起算点は最後の診療日であると主張するが、仮にそうであったとしても、債務不履行に基づく損害賠償請求権は債務不履行時に成立し、同時点より権利行使に法律上の障碍がなくなるのであるから、同時点より消滅時効期間も進行するのであって、原告の主張は法的根拠に基づかない独自の見解であるという以外にない。したがって、債務不履行に基づく損害賠償請求権は、上記時点において時効消滅した。 また、不法行為に基づく損害賠償請求権についても、胸部の著しい醜( )ウ状については各手術(最終手術は平成7年6月12日) て、債務不履行に基づく損害賠償請求権は、上記時点において時効消滅した。 また、不法行為に基づく損害賠償請求権についても、胸部の著しい醜( )ウ状については各手術(最終手術は平成7年6月12日)直後から、ないし、遅くとも次の手術の直前期には、組織の破壊・皮膚の引きつれ等に伴う胸部痛については、最初の手術(昭和62年2月21日)直後から、それぞれ内容を知悉していたことは明らかであるし、仮にそうでないとしても、どんなに遅くとも平成8年ころまでには知っていた。 したがって、遅くとも平成12年ころまでには、全ての手術に対する不法行為を理由とする損害賠償責任はいずれも時効消滅した。 (原告の主張)ア治療行為は一連のものとして平成14年まで継続していたこと被告Bによる原告に対する治療は、昭和62年から平成14年まで継続していた。診療録上、途中に記載がない期間が存在するが、これは、原告が被告らの開設する診療所を訪れた日時を全て記録しておらず、医師が診察したものの医療行為と評価できる措置を行わなかったために記載がないことなどによるものであって、原告は、上記診療所に継続的に通院していたものである。診療契約上の債務不履行責任における消滅時効の満了期間は最終の診察日から10年経過時であり、不法行為に基づく責任についても同様に考えられるから、本件において、時効期間は満了していない。 イ不法行為ないし債務不履行内容を知悉した時期仮に、診療行為が被告の主張するように別個独立のものであったとしても、受診者であった原告が自らに対する不法行為についてその内容を知悉するに至ったのは本件について証拠保全(平成15年10月29日)手続によって診療録を入手し、これをもとに協力医に相談を仰いだ時点であって、不法行為請求債権に対する消滅時効期間は満了していない。 するに至ったのは本件について証拠保全(平成15年10月29日)手続によって診療録を入手し、これをもとに協力医に相談を仰いだ時点であって、不法行為請求債権に対する消滅時効期間は満了していない。 争点5 (損害額)について( )( )(原告の主張)ア治療費134万0000円以上原告に対して実施された行為はそもそも必要のない外科的侵襲であり、その後も繰り返し実施された手術も、発端において不要である以上、本来、原告が受ける必要が全くなかったものである。 原告の治療費は最初の手術以外は責任を認めた被告らによって全て負担され、原告が請求されることはなかったが、原告は被告らの治療方針に疑問を感じ始めた平成8年ころから、Dクリニック以外にも複数の医療機関を受診しているところ、その額は合計で134万円(この額は、原告が昭 和62年2月に受けた最初の手術代金である)を下らない。 。 イ慰謝料3000万0000円原告は、不必要な治療行為及びその後の不適切な手術の繰返しにより、現在、胸部に著しい醜状を残している上、組織の破壊や皮膚の引きつれ等に伴う胸部痛などにも悩まされ続けている。 また、乳房に生じたこのような醜状が原因となって、原告は当時の夫との間の夫婦関係が破綻し、離婚するに至っており、現在は家族と別れ、一人での生活を余儀なくされている。このように、本件が原告の人生全般に与えた影響は多大である。 このような状況をもたらした本件に関する慰謝料としては3000万円が相当である。 ウ証拠保全費用13万9435円原告は、東京簡易裁判所に証拠保全の申立てを行い、平成15年10月29日、証拠保全が実施された。この手続に伴い、原告が負担した記録謄写費用は13万9435円である。 エ弁護士費用300万0000円本件は専門的知識を必要とす 全の申立てを行い、平成15年10月29日、証拠保全が実施された。この手続に伴い、原告が負担した記録謄写費用は13万9435円である。 エ弁護士費用300万0000円本件は専門的知識を必要とする医療事件であり、事件の解決のためには原告に助力する法律の専門家としての弁護士の存在が必要不可欠である。 本件における弁護士費用としては、申立人の被害総額3147万9435円の約1割に相当する300万円が被告らの行為と相当因果関係のある損害である。 オ合計3447万9435円(被告の主張)被告らが原告に対し、最初の手術費用の他に費用請求をしていない点は認め、最初の手術費用が134万円であったこと、原告が平成8年ころから他の医療機関を受診していたことは不知、その余は否認ないし争う。 第3当裁判所の判断事実認定 前記第2の2の前提となる事実及び証拠等によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ。 。) C美容整形外科の受診等( )原告は、昭和22年9月15日生まれの女性であるところ、昭和62年1月21日、20年ほど前に別の美容整形外科病院で受けた豊胸手術後のトラブルを心配し、被告Bが開設する東京都品川区a所在のC美容形成外科(以下「aの医院」という)を受診した。その際、原告が「約20年前にシリ。 コン注入手術を受けたが、手術後すぐに固くなって何度かつぶしてもらった。 子供を2人産んで授乳はしたがこのままでよいかどうか」という趣旨のことを被告Bに対して訴えたところ、被告Bは、いままで変化がないならこれでもよいが、気になるなら摘出してもよい、摘出後つぶれるのを予防するにはプロテーゼを挿入するとよい旨を述べ「術後、乳房が石のように固くなら、ないの えたところ、被告Bは、いままで変化がないならこれでもよいが、気になるなら摘出してもよい、摘出後つぶれるのを予防するにはプロテーゼを挿入するとよい旨を述べ「術後、乳房が石のように固くなら、ないのか」との原告からの質問に対しては、生体膜の締め付けがあるからマッサージをすることが大切であると回答した(争いのない事実、乙A1〔3。また、被告Bは、原告の判断の参考に供するため、注入異物除去術〕)の成功例を記載した自らの著書(甲B2)を原告に交付したが、同書中には、異物が組織内に入り込んでいることから除去術は大変な手術になること、手術によって乳房に傷が付くことが記載されていた。 原告は、aの医院において手術を受けることを決意し、同年2月7日に注入異物除去等の手術をすることになったが、その後同2月7日の手術は中止となり、同年2月21日に、同医院に入院の上、勤務医であるG医師の執刀の下に、注入異物除去・乳房再建手術(以下「本件再建手術」という)を。 受け、翌22日に退院した(争いのない事実、甲A1〔5、乙A1〔4、〕 41、弁論の全趣旨。しかし、本件再建手術直後から、原告は、乳房に激〕)痛を覚えたことや、同手術の結果、自分の乳房が、事前に受けた話とは全く異なる状況で、醜くなったと思ったことから、本件再建手術の結果に不満を持った(甲A1〔5、原告本人〔39、弁論の全趣旨。 〕〕) 本件再建手術以後、第一ないし第五再手術の施行経過( )ア原告は、本件再建手術後、同年2月23日から同年3月14日まで、毎日ないし4日間隔でaの医院に通院し、排液処理等を受けた。しかし、原告が、本件再建手術の結果に不満を抱いたほか、同年3月3日には右乳首が壊死していることが判明したため、再手術を希望したことから、暫く時間をおいて再手術をすることとな 、排液処理等を受けた。しかし、原告が、本件再建手術の結果に不満を抱いたほか、同年3月3日には右乳首が壊死していることが判明したため、再手術を希望したことから、暫く時間をおいて再手術をすることとなった(なお、第一再手術以降の医療費については、すべて無料とされている(乙A1(甲A1〔6、7、乙)。)。 〕A1〔4、5)〕イ第一再手術そこで、同年6月13日には、同年9月に再手術をする方針が定められた。原告は、同年9月19日に入院し、乳房再建術(乳腺下インプラント除去及び乳腺下インプラント再挿入。第一再手術)を受け、同月24日に退院し、それ以降はマッサージ指導等のため、定期的に通院していた。 (甲A1〔7、乙A1〔6、7、42ないし44、48)〕〕その後、同年11月21日、原告は、右乳頭形成術を受けた。しかし、原告は、同年12月4日の通院時において、再手術後、半分戻ってしまったと述べたことから、昭和63年1月9日に、再び右乳頭形成術を受けた。 (甲A1〔9、乙A1〔8、9、46、47)〕〕しかしながら、原告は、被告Bに対し、同年3月10日の診察時において、左右乳房の癒着(へこみ、左右乳房が動かない点及び右乳首を治し)て欲しいと述べた。そこで、被告Bは、当時aの医院の非常勤医師として勤務していたE医師と検討することとし、同月26日には被告BとE医師 の2人で原告を診察することとなった。そして、同月26日、被告B及びE医師が原告を診察した上、E医師が同年4月30日に再手術を行うこととなった(乙A1〔9、A3〔3、4)。 〕〕ウ第二再手術原告は、昭和63年4月30日、E医師が開設経営する東京都台東区d所在のC美容外科(以下、E医師が開設経営する医院を総合して「被告医院」という)に入院し、E医師により乳房再建術(乳 ウ第二再手術原告は、昭和63年4月30日、E医師が開設経営する東京都台東区d所在のC美容外科(以下、E医師が開設経営する医院を総合して「被告医院」という)に入院し、E医師により乳房再建術(乳腺下インプラント。 除去後、胸筋下インプラント挿入)及び右乳頭形成術(全体をして「第二再手術」という)を受け、翌5月1日に退院した(乙A1〔10、49。 ないし51、A3〔4。原告は、翌2日に通院してドレーンからの排〕〕)液処理を受けた後、平成元年2月11日まで通院をしていない(乙A1〔10。 〕)エ第三再手術原告は、再び再手術を希望し、まず、平成元年2月11日、乳房再建術(胸筋下インプラント除去及びエキスパンダー挿入。次に述べる6月12日、13日の手術と併せて「第三再手術」という)を受けた。その後同。 年2月中は7回に渡って通院して排液処理等の処置を受けた(乙A1〔10ないし12、52ないし55、A3〔4。 〕〕)その上で、数回の通院を経て、平成元年6月12日に再び入院し、乳房再建術(胸筋下エキスパンダー除去及び胸筋下インプラント挿入)を受けたところ、右乳房に血腫が認められたことから、翌13日、右血腫除去及び胸筋下インプラント入替えの手術を受け、翌14日に退院した(乙A1〔12、13、57ないし59、68、70。その後、原告は、同年7〕)月3日まで7回通院したが、同日において、次回通院日を同月16日と指示されたにもかかわらず、平成3年5月19日にaの医院に電話をかけたこと(原告本人〔12、13)を除き、平成3年6月7日まで通院をし〕 ていない(乙A1〔15、16)。 〕オ第四再手術原告は、平成3年5月19日、aの医院に電話をかけ、応対したE医師に対し、乳房が不自然なのでどうにかならないかと相談したところ 院をし〕 ていない(乙A1〔15、16)。 〕オ第四再手術原告は、平成3年5月19日、aの医院に電話をかけ、応対したE医師に対し、乳房が不自然なのでどうにかならないかと相談したところ、同医師からは、これ以上改善することはないから今後は健康のためを考えて、インプラントを抜去するほうがよいのではないかと説明された。原告は、不満もあったが、上記の説明を理解した上、インプラントを抜去する手術。 〕〕、を受けることに同意した(乙A1〔16、A3〔5、原告本人〔1440、41)〕原告は、平成3年6月7日、通院により胸筋下インプラント抜去手術(第四再手術」という)を受けた(乙A1〔16、17、56、60な「。 いし63、71。 〕)しかし、原告は、同日の通院を最後に、次の平成4年6月20日まで被告医院に通院しなかった(乙A1〔17、18。 〕)カ上記認定の補足説明上記について、原告は、[1]昭和63年5月2日から平成元年2月11日までの間、[2]平成元年7月3日から平成3年6月7日まで、及び[3]平成3年6月7日から平成4年6月20日までの間も継続的に通院していたと主張し、同旨の陳述ないし供述をする。しかしながら、診療録の記載をみると、上記[1]の期間の前後については、昭和63年5月2日の記載の直下に平成元年2月11日の記載がされ、両者はともに同じ頁上に存在し(乙A1〔10、上記[2]の期間の前後については、平成元年7月3日〕)の記載がされた頁の裏に平成3年5月19日及び6月7日の記載がされ(乙A1〔15、16、上記[3]の期間の前後についても、平成元年6〕)月7日の記載がされた頁の次に同日の手術記録の記載及びその裏に平成4年6月20日及び平成7年3月15日の記載がされた頁が綴られており (乙A1 上記[3]の期間の前後についても、平成元年6〕)月7日の記載がされた頁の次に同日の手術記録の記載及びその裏に平成4年6月20日及び平成7年3月15日の記載がされた頁が綴られており (乙A1〔16ないし18、原告の上記主張の各期間については診療記〕)録上に何らの記載も存在していない。そして、患者が医師を診察し、何らかの診療行為がされれば何らかの記録が残されるのが通常であるところ、上記原告主張の上記各期間について何らの記載がなく、しかもその前後の各記載が連続していることに鑑みれば、上記各期間に原告は被告医院に通院しなかったものと認めるのが相当である。 これに対して、原告は、平成3年6月7日の手術前に検査がされたのに診療録上記載がないことを挙げ、診療録に記載がない場合があるから、診療録上記載がないことをもって通院がないとすることはできない旨主張する。この点については、昭和63年ないし平成3年当時、本件診療録(乙A1)はC美容形成外科の管理下にあったものと認められるところ、第二再手術ないし第五再手術は被告医院で実施されたものであり(乙A3〔6、その際には診療録は貸出し扱いにより医院間を移動することにな〕)るものであることからすれば(被告A代表者〔50、51、各手術後数〕)日については、原告の通院にもかかわらず診療録がないために記載ができなかった可能性があるものと認められる。しかし、仮にそうだとしても、同診療録の記載は、原告との会話内容や手術後の処置内容等について全体として詳細に記載されているものと認められることに照らすと、通院の事実があったにもかかわらず特記事項がないために記載がないとも考え難い。 そうすると、これらのことから、少なくとも10か月以上の期間である上記各期間全体にわたって通院の事実を診療録に記載しなかったと推 実があったにもかかわらず特記事項がないために記載がないとも考え難い。 そうすると、これらのことから、少なくとも10か月以上の期間である上記各期間全体にわたって通院の事実を診療録に記載しなかったと推認することはできない。したがって、原告の主張は採用できない。 原告の再通院開始から通院終了まで( )ア原告は、平成4年6月20日、被告医院を訪れ、超音波検査を受けた。 その際、原告は、今となっては本件再建手術を悔やんでいる旨をE医師に対して表明したところ、E医師は、必ず良くなるからあきらめないように と声をかけた。このことについて、原告は、E医師によれば、本件再建手術そのものが危険であり、本来であれば実施すべき手術ではなかったという内容を説明されたと記憶しており、自分のこれまでの苦痛はいったい何のためだったかという気持ちを抱いた(甲A1〔14、15、乙A1。 〕〔18、19)〕イ原告は、平成7年3月15日、被告医院を訪れ、超音波検査及び血液検査を受け、次は3か月後に受診するよう指示を受けた。そこで、原告は、3か月後に当たる同年5月15日に被告医院を訪れ、その際、再手術をしたい、既に原告の乳房に注入された物を取り除いてから行うか、乳腺の下に注入物を入れるか、E医師が適切と思った方法でして欲しいと述べた。 そこで、E医師は、乳腺の下にシリコンを注入する方法による単純豊胸術を実施することとし、手術は同年6月8日午前11時と予約されたものの、その後の通院経過により同年6月12日と手術日が変更され、同日に手術(注入物の完全除去及び単純豊胸術「第五再手術」という)が施行され。 。 た(乙A1〔22ないし24。しかし、原告は、第五再手術の結果につ〕)いても、満足の行くものではなかったとの認識を有している(甲A1〔1 。 〕)ウ 第五再手術」という)が施行され。 。 た(乙A1〔22ないし24。しかし、原告は、第五再手術の結果につ〕)いても、満足の行くものではなかったとの認識を有している(甲A1〔1 。 〕)ウその後、原告は、平成7年7月27日まで被告医院に通院した後、約5年間にわたって被告医院に通院することはなかったが、平成12年6月20日、被告医院を訪れ、E医師により超音波検査を受け、次回は1年後に来院するよう指示を受けた(乙A1〔25ないし27、74。 〕)原告は、同日から約2年3か月後の平成14年9月24日に被告医院を訪れ、E医師により超音波検査を受けたが、その際、原告は、本件再建手術について、あのとき手術をしたのが間違いだった旨の発言をした(乙A1〔74、A3〔10。同日の受診の際、次回は1年後に来院するよ〕〕)う指示を受けたが、原告は、同日の受診を最後に、以降、現在に至るまで 被告医院の診察は受けていない(乙A1、弁論の全趣旨。 ) 時効の援用( )被告らは、原告に対し、平成17年3月17日の本件第1回弁論準備手続期日において、被告らの主張する消滅時効を援用するとの意思表示をした(裁判所に顕著な事実。 )争点4 (消滅時効の成否)について ( ) 上記の事実関係からすると、原告主張の債務不履行又は不法行為の存在自( )体にも疑問があるが、その判断に先だって消滅時効の成否について判断することとし、次の2 及び3 において、原告主張の債務不履行又は不法行為が存( )( )在するものとの仮定の下にこの点を検討する。 債務不履行について( )ア債権一般の消滅時効の起算点は権利を行使する法律上の障碍がなくなった時であると解すべきところ、これを債務不履行に基づく損害賠償請求権についてみると、損害賠償請求権は 債務不履行について( )ア債権一般の消滅時効の起算点は権利を行使する法律上の障碍がなくなった時であると解すべきところ、これを債務不履行に基づく損害賠償請求権についてみると、損害賠償請求権は期限の定めのない債務として直ちに行使し得るものであるから、その消滅時効の起算点は、もともとの債務が転化するなどして損害賠償請求権が発生した時点であると解される。 イこれを本件についてみると、原告は、債務不履行となるべき行為として、[1]本件再建手術(昭和62年2月21日)前の説明義務違反と[2]第一ないし第五再手術の各時点(最終時点は平成7年6月12日)における治療選択の誤りを主張するものである。 これらの主張を前提とすると、上記各債務不履行行為に基づく損害賠償請求権は上記各手術後直ちに発生しており、原告もその結果を認識していたと認められるから、それを前提として本来の債務、すなわち原告が望む態様に乳房を整形することを請求し、又はこれに代え若しくはこれとともに右記債務不履行に基づく損害賠償請求権を行使することは上記各手術直後から可能であると解されるから、各債務不履行に基づく消滅時効の期間 は、上記各手術の日から進行するというべきである。 そうすると、上記[1]本件再建手術の日は前記11 のとおり昭和62年( )2月21日であるから、これに関する消滅時効は平成9年2月21日の経過を以て完成したものである。また、上記[2]第一ないし第五再手術のうち、第一、第二、第三及び第四再手術は前記12 イないしオにおいて認定( )したとおり次の手術日欄記載の日にされたものであるから、それぞれについて消滅時効は次の時効完成日欄記載の日の経過を以て完成したものである(ただし、第一及び第三再手術については、一連の手術の最終日を記載する。 。)手術名手 にされたものであるから、それぞれについて消滅時効は次の時効完成日欄記載の日の経過を以て完成したものである(ただし、第一及び第三再手術については、一連の手術の最終日を記載する。 。)手術名手術日時効完成日第一再手術昭和63年1月9日平成10年1月9日第二再手術昭和63年4月30日平成10年4月30日第三再手術平成元年6月13日平成11年6月13日第四再手術平成3年6月7日平成13年6月7日他方、第五再手術は、手術日が平成7年6月12日であるので、平成17年6月12日の経過時を以て消滅時効が完成するものと解されるが、本件訴訟が平成16年11月30日に提起されたことは記録上明らかであるから、同日を以て時効期間の進行が中断したものである。したがって、第五再手術については、債務不履行に基づく消滅時効は完成していない。 不法行為について( )ア不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は、民法724条前段により、被害者が損害及び加害者を知った時から進行するから、本件においては、原告が損害及び加害者を現実に認識した時点から同請求権の消滅時効期間が進行するものと解するのが相当である。 イこれを本件についてみると、原告は、不法行為として、上記[1]及び[2]を主張するものであるので、これを前提として判断する。 ところで、原告は、前記11 のとおり、本件再建手術を受けた直後から( )乳房の激痛及び状態を認識し、事前に受けた話と全く異なる状況であって本件再建手術の結果には不満があったものであり、かつ、前記12 アのと( )おり実際に不満を表明して再手術を希望しており、しかも原告は本件再建手術を除いて治療費を払っていないものであるところ、このことについては医院に治療費を負担すべき責任があると考えていたことが認 ( )おり実際に不満を表明して再手術を希望しており、しかも原告は本件再建手術を除いて治療費を払っていないものであるところ、このことについては医院に治療費を負担すべき責任があると考えていたことが認められる(原告本人〔34。これらの事実からすれば、原告は、本件再建手術に〕)ついて、手術前の説明とは全く違った結果になったことを問題視し、しかもそれが被告B又はその補助者の責任であると認識していたと推認されるから、原告は、本件再建手術直後には、不法行為に基づく損害及び加害者があったことを認識していたと評価するのが相当である。 また、原告は、前記12 イないしオ及び前記13 イのとおり、第一ない( )( )し第五再手術について、その直後ないし直近の時期において結果に不満を有しており、それが直接的には執刀医である被告Bの補助者及びE医師の行為に基づくものであり、被告B及びE医師が代表者を務める被告Aが責を負うべきものであると認識できたと認められるから、第一ないし第五再手術によって原告の損害が拡大したとの主張を前提とすると、各手術の結果を見て不満であると認識を有した時点を以て、不法行為に基づく損害及び加害者を認識していたと評価するのが相当である。 したがって、上記[1]及び[2]の行為については、遅くとも平成10年6月12日ないしその直近の時期までに、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は全て経過したものというべきであって、これに対し、原告は、時効の中断事由について何ら主張・立証していない。 まとめ( )ア以上から、上記[1]及び[2]のうち第五再手術を除く各債務不履行並びに上記[1]及び[2]の各不法行為については、消滅時効が完成し、かつ、これ ら全てについて前記14 のとおり時効援用の意思表示がされているから、( 2]のうち第五再手術を除く各債務不履行並びに上記[1]及び[2]の各不法行為については、消滅時効が完成し、かつ、これ ら全てについて前記14 のとおり時効援用の意思表示がされているから、( )上記の消滅時効が完成している行為については、仮に原告が主張するとおりの債務不履行ないし不法行為であるとしても、これらに基づく損害賠償請求権はいずれも時効消滅しているものといわざるを得ない。 イこれに対して、原告は、まず、昭和62年から最終通院日である平成14年までの治療行為を一体として評価すべきであり、債務不履行についての消滅時効の起算点は最終通院日である平成14年9月24日であると主張する。 この点については、そもそも債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する消滅時効の起算点についての解釈を誤っているものといわざるを得ないが、仮にそうでないとしても、前記12 及び3 おいて認定説示したとおり、( )( )昭和63年5月2日から平成元年2月11日まで、平成元年7月3日から平成3年6月7日まで、同日から平成4年6月20日まで、同日から平成7年3月15日まで、同年7月27日から平成12年6月20日まで、同日から平成14年9月24日までそれぞれ通院していない期間があり、しかも同期間を空けることについて医師から指示があったとも認められないことに加え、本件の経過からすれば、ある手術がされた後には再手術の要求がなければ、術後直近の時期を除いてそれ以上の措置はされていないこと及びその手術内容に照らすと、本件再建手術及び第一ないし第五再手術は、少なくとも医学的にはその後にさらなる手術等を予定したものではなく、それぞれが独自に完結した診療行為であると評価すべきである。したがって、本件再建手術及び第一ないし第五再手術については、各手術ごとに個別の行為と 的にはその後にさらなる手術等を予定したものではなく、それぞれが独自に完結した診療行為であると評価すべきである。したがって、本件再建手術及び第一ないし第五再手術については、各手術ごとに個別の行為として評価する方がむしろ実態に即した適切な評価であるというべきであって、昭和62年から平成14年までの期間における全治療行為を一体として評価することはできず、原告のこの主張は採用できない。 ウまた、原告は、不法行為における損害賠償請求権の消滅時効に関し、損 害及び加害者を知った時期は平成15年に証拠保全を施行した後であると主張する。しかしながら、この点については、前記23 において説示した( )とおり、各手術後直ちに損害及び加害者を知ったものと評価でき、同主張は採用できない。 第五再手術について 以上からすれば、消滅時効が完成していないのは、上記[2]のうち第五再( )手術に関する債務不履行責任のみとなる。 しかしながら、第五再手術について原告は治療選択を誤り、損害を拡大したと主張しているが、具体的にいかなる障害が原告にあり、それが第五再手術によってどのように拡大されたのかについての具体的主張を欠くから、原告の主張は前提において失当であるというべきであるだけでなく、仮にこの点を措くとしても、第五再手術前と後とを比較して、原告に新たに何らかの障害が発生したことをうかがわせる証拠はない。 したがって、第五再手術については、これに基づく権利侵害が認められな( )い以上、第五再手術が善管注意義務違反等の債務不履行に該当するということはできない。 結論 以上によれば、第五再手術を除く行為については、仮に損害賠償請求権が発生すべき責任原因があったとしても、それに基づく請求権は時効消滅しているし(争点4 、第五再手術については、仮に不 い。 結論 以上によれば、第五再手術を除く行為については、仮に損害賠償請求権が発生すべき責任原因があったとしても、それに基づく請求権は時効消滅しているし(争点4 、第五再手術については、仮に不法行為に該当したとしても、そ( ))れに基づく損害賠償請求権は時効消滅しており(争点4 、同手術において債( ))務不履行があったとは認められないのであるから(前記3、その余について)は判断するまでもなく、被告らに債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償義務が発生しないことは明らかである。 したがって、原告の請求にはいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基
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