昭和24(ラ)22 親権者指定の審判に対する抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和24年7月29日 東京高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件抗告はこれを棄却すゐ。          理    由  本件抗告の要旨は、(一)申立人相手方A、相手方抗告人B間の横浜家事審判所 昭和二十三年家(イ)第一八六号親権者選定

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判決文本文3,394 文字)

主文 本件抗告はこれを棄却すゐ。 理由 本件抗告の要旨は、(一)申立人相手方A、相手方抗告人B間の横浜家事審判所昭和二十三年家(イ)第一八六号親権者選定調停事件において、昭和二十三年六月十八日当事者間に調停成立したが、右調停條項中には、相手方は事件本人たるCについて、親権者変更等の申立をしない旨の一項がある。右調停條項は確定審判と同一の効力を有するのであるから、相手方は右條項に反して親権者指定の申立はできないのである。 従つて、これに反する相手方の本件甲立は違法であり、これに基いてなされた原審判所の審判は取消さるべきである。(二)仮に本件申立が違法でないとしても、抗告人は原審において相手方の父Dは極めて非常識な性格異常者であり、これと同居する相手方は父母のいうことに盲従する自己を確立し得ない無性格な人間であるから、相手方が父母と同居して事件本人の親権者となつてこれを養育することは、事件本人の為めに不適当である所以を逐一証拠に基ずいて主張したのに拘らず、原審裁判所はこれを無視して相手方を事件本人Cの親権者に指定したのは失当であるから、原審判を取消し、抗告人をCの親権者と定めるか、又は本件を原審に差戻す旨の裁判を求める、というにある。 依つて抗告理由の(一)の点につき審按するに、相手方と抗告人とは昭和十九年九月十一日婚姻し、同二十年三月七日事件本人たるCを儲けたが、昭和二十二年十二月五日協議の上離婚をしたところ、右離婚の際Cに対し親権を行う者を定めず、そのまま新民法が施行されるに至つた為め、新民法附則第十四條の規定により、新民法施行後も相手方と抗告人とはCに対し引続き共同して親権を行うことになつたのであるが、相手方は昭和二十三年中横浜家事審判所にCの親権者を定める調停申立をなし、(同庁昭和二 第十四條の規定により、新民法施行後も相手方と抗告人とはCに対し引続き共同して親権を行うことになつたのであるが、相手方は昭和二十三年中横浜家事審判所にCの親権者を定める調停申立をなし、(同庁昭和二十三年家(イ)第一八六号)親権者選定調停申立事件)同年六月十八日に抗告人との間に調停成立し、右調停において、Aは事件本人Cの親権者変更の申立をしない旨の合意をしたことは、本件記録中の抗告人Bの戸籍謄本<要旨>及び右調停事件の調停調書謄本(記録五九丁)により明かである。而して新民法附則第十四條は、右のように</要旨>共同して親権を行つている父母は、協議でそめ一方を親権者と定めることができ、協議調わないときは、家庭審判所に協議に代る審判を請求することができることを定めているのであるが、右の規定は未成年の子の保護を全うする為めの公益規定で強行法規であると解するのが相当であるから、右規定による審刺を求める申立をしないというような右規定に反しこれを排除する趣旨め合意は法律上無効であると解すべきである。故に相手方と申立人が右調停においてなした相手方AがCの親権者変更の申立をしない旨の合意は、右規定に反し法律上無効であるといわなければならない。而して親権者を定める調停事件において当事者間に合意成立しこれを調書に記載したときは、その調停條項は確定審判と同一効力を有するのであるが、それは調停における当事者の合意が法律上有効なる場合に限り、それが法律上無効なる場合にかかる効力を生じないものというべきである。何となれば調停における当事者の合意が法律上無効のものである以上これを調書に記載したからとて、無効の合意が有効となるに由ないからである。 故に相手方は前記の調停調書に記載された條項に拘束されるいわれはないから相手方がこれに反してなした本件親権者指定の申立は適法で れを調書に記載したからとて、無効の合意が有効となるに由ないからである。 故に相手方は前記の調停調書に記載された條項に拘束されるいわれはないから相手方がこれに反してなした本件親権者指定の申立は適法であつて、これを違法であるという抗告人の(一)の主張は理由がない。 次に抗告理由の(二)の点を審究するに、原審及び当審における被審人E、相手方A、原審におけるDに対する審問の結果によると、相手方は抗告人と離婚してから相手方の父母D、同Eと肩書住所に同居して事件本人であるCを養育して居り、現在相手方はピアノの家庭教師をして約七千円の月収があり、父Dは明治大学の教授、母Eは進駐軍の飜訳をし又弟Fも働いて居り、一家の総収入は一ケ月二万五千田を下らず、従つて相手方がCを養育するについては、現在のところ全く物質上の不安がないことが認められ、一方原審及び当審における抗告人審問の結果によると、抗告人は東京芝浦電気株式会社に勤務し現在独身で横浜市a区b町c番地dに起臥して居り、Cの親権者となれば相手方から引取つて差当り横洪市内保土ケ谷カトリック団体に養育を托し将来はCを愛してくれる理解ある女性と再婚して自分の手で養育する希望であることがわかる。而して事件本人のCは昭和二十年三月生れの幼児であることは前記の通りであるから未だ満五年に達せず、従つて右認定のような事情の下では、他に特段の事情のない限りCは母である相手方を親権者としてその手許で看護養育させる方が自然でもあり適当でもあると考えられる。ところが抗告人は相手方は父母の意見に盲従する無性格の人間で到底Cの親権者としてその養育を委ねるに足らず、父Dは誦めて非常識な性格異常者であるから、かかる家庭にCを置いて養育することは不適当である、と主張しているから審究するに、原審における被審G、H、当審における同I、J及 その養育を委ねるに足らず、父Dは誦めて非常識な性格異常者であるから、かかる家庭にCを置いて養育することは不適当である、と主張しているから審究するに、原審における被審G、H、当審における同I、J及び原審並びに当審における抗告人の各審問の結果と抗告人提出の疏明書類とを綜合すると、相手方の父母であるD同E等は相手方と抗告人との婚姻中抗告人及び関係者との間に色々な紛擾を生じ、特にDには多少常識を逸した言動があつたことが認められるが、これを前掲D、同E、相手方本人の各審問の結果と対照して考えると、同人等と抗告人との間には当時相当ひどい感情のもつれがあり、同人等がかかる言動にいでたについては抗告人にも又一部の責なしとしないことが認められ、かように感情のもつれがあるときは、とかく極端な言勧にいでがちなことは常人の陥りやすいところであるから、かかる時の言動を捉えて直ちに性格異常者であるとは断じ難いところであり、且つ右D、同Eの審問の結果によると、Dの家庭がCを養育する上に不適当であるとは認められない。 又、相手方が父母の意見に盲従する無性格な人間でCの養育を托するに足りないとの点については、原審における抗告人審問の結果はこれを原審及び当審における相手方審問の結果と対照して採用できないし、却つて右相手方審問の結果に徴すると、相手方は相当はつきりした性格でCの養育を委ねられないような無性格な女性でないことがわかる。 以上認定の通りであるから抗告人の(二)の主張は採用できないし、又本件記録全部を通して見ても、他に相手方をCの親権者と定めるについてこれを不適当とするような特段の事情は認められない。 従つて現在母たる相手方の手許に養育されている満五年に満たない幼児であるCを相手方の手から引離して、独身で自分の手で養育の任に与り得ない現状にある抗告人を親 するような特段の事情は認められない。 従つて現在母たる相手方の手許に養育されている満五年に満たない幼児であるCを相手方の手から引離して、独身で自分の手で養育の任に与り得ない現状にある抗告人を親権者とすることは、どうしてもCの為めに幸福をもたらす所以とは考えられないから少くとも現在においては相手方をCの親権者としてこれを養育せしむることがCの為めに適当であるといわざるを得ない。 然らばこれと同趣旨にいで相手方をCの親権者と定めた原審制は相当であつて、抗告人の本件抗告は理由がないからこれを棄却すべきである。 依つて主文の通り決定する。 (裁判長判事大野璋五判事柳川昌勝判事浜田宗四郎)

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