- 1 -平成18年7月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(ワ)第10766号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成18年4月27日判決主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告A及び原告Bに対し,各3545万9362円及びこれらに対する平成11年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告らが,被告に対し,被告が開設するC病院(以下「被告病院」という)において,原告らの被相続人亡Dが死亡したのは,被告病院で受け。 た心臓病の治療において,薬剤の投与に関する注意義務違反や脳幹浮腫への対応が遅れたことによる注意義務違反があったためであると主張して,診療契約の債務不履行又は不法行為に基づき,損害賠償金の支払を求める事案である。 前提事実(証拠を掲げない事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者等ア原告等亡Dは,平成3年6月3日生まれであり,平成11年11月23日に被告病院で死亡した(死亡当時8歳。 )原告Aは亡Dの父であり,原告Bは亡Dの母である。 イ被告被告は,被告病院を開設している。 - 2 -(2)被告病院における亡Dの診療経過ア診療契約の締結亡Dは,平成4年6月3日,ファロー四徴候症及び肺動脈閉鎖の心臓病のため,被告病院を受診し,被告との間で,適切な診療を行うことを内容とする診療契約を締結した(以下「本件診療契約」という。 。)以降,亡Dは,被告病院において,入通院による治療を継続した。 イ亡Dに対する被告病院入院中の投薬等亡Dは,平成10年10月26日,被告病院に入院し,同月29日に心臓手術を受け,引き続き同病院に入院した。 亡Dは,平成10年1 ,入通院による治療を継続した。 イ亡Dに対する被告病院入院中の投薬等亡Dは,平成10年10月26日,被告病院に入院し,同月29日に心臓手術を受け,引き続き同病院に入院した。 亡Dは,平成10年11月8日,被告病院循環器外科のE医師から免疫(,。 「」。)γグロブリンγグロビリングロビリン以下γグロブリンというの投与を受けた。 亡Dは,同年12月14日,F医師から不整脈治療薬であるアスペノンの投与を受け,同月19日,担当の研修医であるG医師から消化器異常治療剤(吐き気止め)であるプリンペランの投与を受けたが,同月20日には,循環器外科のH医師により,アスペノンの投与が中止され,プリンペランの投与は,同月21日に中止された。 平成11年1月5日,循環器外科のE医師及びI医師らにより,不整脈の治療薬であるインデラルが投与され,その後,インデラルの投与は一時中断されたものの,同月13日,小児内科のJ医師及びK医師によりイン。 。 デラルの投与が再開されたインデラルの投与は同月17日に中止された同年2月13日,ビタミン剤であるソービタが投与された。 ウ亡Dは,平成11年11月23日,被告病院において,肺炎により死亡した。 エなお,被告病院における亡Dの診療経過は,別紙診療経過一覧表記載のとおりである(当事者の主張の相違する部分を除く。 。)- 3 -(3)医学専門用語本件における医学専門用語の意味は,別紙専門用語集(1)及び(2)に記載のとおりである。 争点 (1)アスペノンの投与自体の注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告らの主張の概要被告病院担当医師には,亡Dにはアスペノンを選択して投与する必要がないのにアスペノンを投与した注意義務違反がある。 イアスペノンの投与の必要性についてアスペノンは, 主張)ア原告らの主張の概要被告病院担当医師には,亡Dにはアスペノンを選択して投与する必要がないのにアスペノンを投与した注意義務違反がある。 イアスペノンの投与の必要性についてアスペノンは,不整脈治療の新薬であるが,一般に,振戦,めまい等の精神神経系の副作用及び食欲不振等の消化器系の副作用等を起こしやすく,特に,小児に対しては安全性が確立していない薬剤である(甲B1,B2。 )このような薬剤を,致死的不整脈が発生していなかった亡Dに投与する必要性は全くなかった。特に本件では,それまで使用していたメキシチールにより不整脈について改善が見られていたのであるから,メキシチールからアスペノンへ変更する理由も全く存在しなかったのである。 ウアスペノン投与前の不整脈の状態不整脈に関する診療録(乙A1)の記載は以下のとおりである。 (ア)平成10年12月10日()。 ()。 上室性期外収縮なし乙A1・124頁不整脈なし同125頁循環動態,バイタルサイン著変見られず(同125頁。 )(イ)同月11日不整脈なし(同125頁,126頁。メキシチール経口摂取開始後)不整脈落ち着いている(同126頁。同月8日に心室性期外収縮の連)- 4 -発,同月9日に一過性の心室性期外収縮があったが,同日にメキシチールを開始したところ以後不整脈がおさまった(同126頁。 )なお,同月5日から同月11日までの週間サマリーによれば,同月9日までは不整脈が存在したものの,同日のメキシチールの投与により不整脈は消失し,同月11日の時点で「24時間心電図(原告ら注:同月10日午後4時15分から開始したもの)の結果待ち。問題なければ週明け退院か(なお,同月14日が月曜日である)とされている(同」。 128頁から131頁まで。 )(ウ)同月12日 告ら注:同月10日午後4時15分から開始したもの)の結果待ち。問題なければ週明け退院か(なお,同月14日が月曜日である)とされている(同」。 128頁から131頁まで。 )(ウ)同月12日不整脈なし。全身状態明らかな変化なし(同132頁)。 (エ)同月13日全身状態変わりなし。不整脈なし(同133頁)。 (オ)同月14日同月10日施行の心電図の結果が判明。その内容は,心室性期外収縮単発のみ,心室頻拍なし,上室性頻拍?心房性頻拍?というものであった。 アスペノン投与(同月14日夕刻に投与)前まで不整脈なし(同134頁。 )以上のように,アスペノンが投与される前は,少なくとも5日間ほどは著明な不整脈は現れておらず,少なくとも,被告が主張するような致死的不整脈は全く存在しない。 したがって,あえて抗不整脈剤であるアスペノンを投与する必要性は全くなかったのである。 エWPW症候群について被告は,亡DがWPW症候群に罹患していたことをアスペノン使用の理由の一つとしてあげるが,これに対しては,平成10年6月25日に既に- 5 -カテーテル焼灼術が施行され,その結果,心電図でデルタ波は消失している(乙A1・2頁。 )オまとめよって,被告病院担当医師らには,アスペノンを選択の必要性がないのに投与した注意義務違反がある。 (被告の主張)アアスペノンについてアスペノンは,振戦,めまい等の精神神経系の副作用及び食欲不振等の消化器系の副作用を起こすことがある薬剤であり,小児に対しては安全性が確立していない薬剤ではある。 しかし,小児に対する安全性が確立していないことは,ほとんどの抗不,。 ,整脈薬剤にいえることであってアスペノンに限ったことではないまたアスペノンは小児循環器病学の成書に薬用量が設定されている薬剤である。 に対する安全性が確立していないことは,ほとんどの抗不,。 ,整脈薬剤にいえることであってアスペノンに限ったことではないまたアスペノンは小児循環器病学の成書に薬用量が設定されている薬剤である。 イ亡Dの不整脈について(ア)致死的不整脈の存在について原告らは,乙A1号証の平成10年12月10日から同月14日までの各欄(乙A1・124頁から134頁まで)に不整脈が発現したことがないことから,亡Dに致死的不整脈が発生していなかったと主張するが,これらのカルテの記載は,看護師らが担当した時間の観察した範囲内において不整脈の発現がなかったことを示すにすぎず,看護師らの観察範囲外において不整脈の発現がなかったことまでを示すものではない。 被告病院では,医師及び看護師らの観察範囲外において不整脈等が発現しているか否かをチェックするため,同月10日午後4時45分から同月11日午後4時15分までの間,24時間ホルター心電図を施行し- 6 -たが,その結果,上室性頻拍(ワイドQRS,180Bpm,最大5Beats)を疑わせる波形が現れた。具体的には,心室性期外収縮が12回,上室性期外収縮が247回記録されるなど,亡Dに頻拍発作(最(,大心拍数189回/分以下心拍数について特に単位を付さないときはこの単位とする)が出現していた。 。)この結果を見た不整脈治療専門医である循環器内科のL医師は,いずれ電気生理検査が必要であると指摘しており,24時間ホルター心電図の結果から,亡Dに,メキシチールでは抑止しきれない致死的不整脈が存在していたことは明らかである。 (イ)WPW症候群について亡Dは,出生直後からファロー四徴症として経過観察されていたが,他にWPW症候群も合併していた。 WPW症候群とは,心臓の電気刺激の伝導路が本来のルート以外に かである。 (イ)WPW症候群について亡Dは,出生直後からファロー四徴症として経過観察されていたが,他にWPW症候群も合併していた。 WPW症候群とは,心臓の電気刺激の伝導路が本来のルート以外にもう1つあり(副伝導路),2つのルートでできたループを電気刺激が旋回することによって頻拍を起こす不整脈疾患であって,副伝導路や房室結節を介して心房心室間を旋回する房室回帰性頻拍と,心房細動時の心房興奮が副伝導路を高頻度で心室に伝導する偽性心室頻拍が起こりうる(乙B1・155頁。 )頻拍発作は,重篤な症状を呈して生命にかかわる不整脈であるため,緊急に治療するのが原則である。特に,基礎に心疾患を持っている場合には生命にかかわることが多く,ファロー四徴症の術後遠隔期にみられる突然死の原因の1つと考えられている。また,持続性心室頻拍は,心室細動から心停止に至ることも多く,これを放置できないことは明らかである(乙B2・654頁,655頁,B3・171頁,172頁。 )小児のWPW症候群における上室性頻拍発作の予防には,ジゴキシンとインデラルの併用を推奨している報告が多い(乙B4・838頁,8- 7 -60頁,861頁。 )ウ亡Dの不整脈とアスペノン投与について亡Dは,WPW症候群に罹患しており,実際に乳児期に上室性頻拍発作を起こした。 平成10年6月25日,亡DのWPW症候群に対して,カテーテル焼灼術を施行し,副伝導路を遮断した結果,WPW症候群特有の波形であるデルタ(δ)波は消失したものの,しばらくすると上室性頻拍が認められた(乙A1・2頁。その後も,今回,被告病院に入院するまで,継続して)ジゴキシンを内服していた。 亡Dは,ファロー四徴症の術後にも頻拍発作を繰り返していたため,平成10年11月13日からキシロカインを投与した(乙A1・ 後も,今回,被告病院に入院するまで,継続して)ジゴキシンを内服していた。 亡Dは,ファロー四徴症の術後にも頻拍発作を繰り返していたため,平成10年11月13日からキシロカインを投与した(乙A1・81頁。 )その後,同年12月5日から上室性期外収縮が頻発したため,同月6日からジゴキシンの投与を再開し(同128頁,同月9日からはメキシチー)ルを内服薬にて投与した(同123頁,130頁。 )しかし,その後も頻拍発作は頻発しており,前記のように,同年12月10日の24時間ホルター心電図でも頻拍発作が繰り返し記録されていた。亡Dの不整脈は,ホルター心電図の波形からは心室性頻拍,上室頻拍の可能性が疑われる重篤な不整脈を示しており,副伝導路が完全に焼き切れなかったこと,WPW症候群が再発したこと,他に副伝導路が存在すること等が考えられ,病因を検索する方法の1つとして,いずれ電気生理検査が必要な状況であった。 このように,亡Dには,メキシチールを投与してもコントロールできない不整脈が発生していたため,不整脈専門医である循環器内科,循環器外科及び小児内科の医師らによる討議の上,副作用にも考慮しつつ,心室性頻拍,上室性頻拍に効果が期待できるメキシチールと同類の抗不整脈薬であるアスペノンを選択し,同月14日からアスペノンを投薬量1mg/k- 8 -g/日(亡Dは体重15kgのため15mg/日)で投与した(乙A1・134頁この量は小児循環器病学のリストに記載されている推奨量初)。 ()()。 期投与量は1~3mg/kg/日の最低量である乙B4・860頁エこのように,亡Dには不整脈が生じ,アスペノンを投与する必要性があったのであり,投与量も適切であったから,担当医師らに,薬剤の選択,投与における注意義務違反はない。 (2)インデラル 860頁エこのように,亡Dには不整脈が生じ,アスペノンを投与する必要性があったのであり,投与量も適切であったから,担当医師らに,薬剤の選択,投与における注意義務違反はない。 (2)インデラルの投与自体の注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告らの主張の概要被告病院担当医師らは,投与の必要性がない上,アナフィラキシーの既往歴があった場合には投与すべきでないにもかかわらず,不整脈治療薬であるインデラルを投与した注意義務違反がある。 イインデラル投与の必要性についてインデラルは,不整脈の治療薬であるが,気管支痙攣,呼吸困難,喘鳴などの重大な副作用を出現させやすいほか,小児に対する安全性が確立していない薬剤である。このような薬剤を,重篤な不整脈が発生していなかった亡Dに投与する必要性は全くなかった。 インデラル投与前の亡Dの不整脈の状態は以下のとおりである。 (ア)平成11年1月1日時折心拍不整みられるが,著明な不整なし(乙A1・179頁。 )(イ)同月2日看護師Kの記載欄には,時折心拍不整あり(同180頁)とあるが,G医師による不整脈に関する記載はなし。 (ウ)同月3日看護師Mの記載欄には時折心拍不整ありとあるが(同180頁,医)師の記載はなし。 - 9 -(エ)同月4日ホルター心電図にて上室性頻拍が1分間以上続いていることもあり同月5日よりインデラル投与とある(同181頁。 )(オ)同月5日朝インデラル投与。時折心拍不整みられることがあるが,著明な不整なし(同182頁)。 これらの記載をみると,インデラル投与前には,不整脈の存在は認められるものの,被告が主張するような致死的不整脈は,全く存在しないことが明らかである。 ウアナフィラキシーショックの既往歴との関係について(ア)インデラルは,前記のように は,不整脈の存在は認められるものの,被告が主張するような致死的不整脈は,全く存在しないことが明らかである。 ウアナフィラキシーショックの既往歴との関係について(ア)インデラルは,前記のように,気管支痙攣,呼吸困難,喘鳴などの重大な副作用を出現させやすいほか,小児に対する安全性が確立していない薬剤であり,特に,アナフィラキシーの既往歴のある患者には,同剤投与中に発生したアナフィラキシー反応が増悪した場合があるとの報告があり,アナフィラキシーの既往歴がある患者には,投与すべきではない薬剤であった(甲B5,B6。 ),,,,ところが亡Dの担当医師は亡Dがすでに平成10年11月8日γグロブリン投与の際にアナフィラキシーショックを起こしているにもかかわらず,これを考慮せず,投与すべきでないインデラルを同人に投与した。 したがって,副作用に考慮しつつ適切な薬剤を選択すべき,医師の注意義務に明らかに違反したものであり,インデラルの投与自体に注意義務違反があるといわなければならい。 (イ)この点,被告は,亡Dがγグロブリン投与によってアナフィラキシーショックを起こしたかどうかの点について,平成10年11月8日のγグロブリン投与後の亡Dの症状は,アナフィラキシー(アレルギーシ- 10 -ョック)によるものと断定されたわけではなく,アナフィラキシー反応が強く疑われたに過ぎないと主張する。 aしかしながら,乙A1号証63頁,午後4時40分の箇所には「アナフィラキシーショック。原因はγ-グロルビン製剤」と,同号証64頁には「γ-グロルビン製剤使用によるアナフィラキシーショックによる全身状態変動」とそれぞれ明確に記されている。そして,同号証60頁から68頁の同月8日に関する記載によれば,午前10時に本剤を点滴開始すると,急に体動が 製剤使用によるアナフィラキシーショックによる全身状態変動」とそれぞれ明確に記されている。そして,同号証60頁から68頁の同月8日に関する記載によれば,午前10時に本剤を点滴開始すると,急に体動が激しくなると同時に,血圧が60/38(収縮期血圧(mmHg)/拡張期血圧(mmHg,以下血)圧に関して単位を表示しない場合にはすべてこの単位とする)に低。 下し(本剤投与前の血圧は100/50同号証60頁参照,酸素)飽和度(SpO2)も79%(以下単位を表示しない場合はこの単位とする)まで低下し,アシドーシスとなった後,2ないし3時間か。 けて徐々にこれらの症状は回復したが,2回目のγグロブリン点滴後(午後3時すぎ)に全身特に体幹及び下肢を中心に皮疹が出現し,血圧が低下し(50/30台,酸素飽和度が低下し,心拍数は140)台となっており,アナフィラキシ-ショックが発生したことは疑いがない。 bまた,原告Bの記録によるとこの日の状況は次のとおりである。 この日(日曜日,チーム医であるE医師は,午前10時ころにγ)グロブリンを投与した。亡Dはその直後に呼吸困難に陥り暴れるなどした。しかしE医師はγグロブリンの投与について何ら検討することなく午前中に帰宅した。午後,第2回目のγグロブリン投与直後の同2時頃に,亡Dは「ママ,痒い」と言った途端,急に唇が鱈子のよ,うに腫れ,全身にチアノーゼが生じた。この急変に驚いた看護婦はICUの中で「誰か先生に連絡して!!」と大声で叫んだ。しかし亡,- 11 -Dのチーム医はすべて帰宅しており誰もおらず,結局N医師が亡Dを診察し,γグロブリンの投与を中止したのである(乙A1・64頁参照。そして,翌19日,E医師は,原告Bに対し「Dちゃんは,),γグロブリンでアナフィラキシーショックを起こして 結局N医師が亡Dを診察し,γグロブリンの投与を中止したのである(乙A1・64頁参照。そして,翌19日,E医師は,原告Bに対し「Dちゃんは,),γグロブリンでアナフィラキシーショックを起こしてしまったのですね」と語っている。 。 cこのように,γグロブリンの投与により,亡Dにアナフィラキシーショックが発生した既往があるのは明らかであり,被告の主張は失当である。 エしたがって,被告病院担当医師らには,投与すべきでないインデラルを投与したという注意義務違反がある。 (被告の主張)アインデラルについてインデラルは,不整脈治療薬であって,ときに,あるいは,まれに,気管支痙攣,呼吸困難,喘鳴などの副作用が出現する薬剤ではあるが,副作用を出現させやすい薬剤ではなく,小児循環器病学の成書に薬用量の記載があり,多くの小児症例に使用されている薬剤である。 原告らは,アナフィラキシーの既往歴のある患者には,同剤投与中に発生したアナフィラキシー反応が増悪した場合があるとの報告があり,アナフィラキシーの既往歴がある患者には,投与すべきではない薬剤であったと主張するが,前記各報告(甲B5,B6)は,アナフィラキシー反応を起こしている患者にインデラルを投与すれば,そのアナフィラキシー反応が増悪する場合があるというものであって,アナフィラキシーの既往歴のある患者には投与すべきでないというものではなく,インデラル以外の薬剤等が原因でアナフィラキシーを起こしたことのある患者にインデラルを投与することは禁忌ではない。 亡Dに,γグロブリンによるアナフィラキシー反応が強く疑われる症状- 12 -が発現したことは事実であるが,亡Dは,被告病院入院前,他病院においてγグロブリンを投与された経験があり,その際には,副作用もなく有効であったのであり,亡Dの各症状が 強く疑われる症状- 12 -が発現したことは事実であるが,亡Dは,被告病院入院前,他病院においてγグロブリンを投与された経験があり,その際には,副作用もなく有効であったのであり,亡Dの各症状がγグロブリンによるアナフィラキシーであるとは断定できない。また,亡Dは,過去にインデラルの投与によってアナフィラキシーを起こしたことはなかったし,本件におけるインデラル投与時にアナフィラキシーを起こしていたわけでもなかった。 イ亡Dの致死的不整脈の存在原告らは乙A1号証の平成11年1月1日から同月5日までの各欄乙,(A1・179頁から182頁まで)の記載を取り上げ,インデラル投与前には,不整脈の存在は認められるものの,致死的不整脈は全く存在しなかったと主張する。 しかし,常時心電図モニターを観察しているわけではない医師が不整脈を確認した旨のカルテ上の記載がないことをもって,亡Dに致死的不整脈は発生していなかったということはできない。 亡Dには,平成10年12月21日午後3時30分から同月22日午後1時42分まで及び平成11年1月5日午後1時39分から同月6日午後1時38分までに実施された24時間ホルター心電図の結果においても,上室性頻拍,心室性頻拍を疑わせる波形が現れた。具体的には,前者においては,上室性期外収縮が7080回,平成10年12月21日午後3時36分から同日午後11時30分,同月22日午前1時53分から午後1時42分に発作性上室性頻拍が記録され,後者においては,心室性期外収縮が2回及び上室性期外収縮が4403回,平成11年1月5日午後5時,,45分から同日午後9時56分に発作性上室性頻拍同日午後9時49分午後10時9分及び午後11時18分に房室ブロックを示唆する波形,同月6日午前1時52分,午前3時37分から午後1時3 後5時,,45分から同日午後9時56分に発作性上室性頻拍同日午後9時49分午後10時9分及び午後11時18分に房室ブロックを示唆する波形,同月6日午前1時52分,午前3時37分から午後1時38分に発作性上室性頻拍が記録されるなど,致死的不整脈(最大心拍数は196)が存在し- 13 -ていたことは明らかである。 ,,,,このように亡Dには頻拍発作が頻発していることが確認されまた心電図モニター上でも持続性頻拍が観察されたことから,これら不整脈の治療のため,最も投与経験の多いインデラルを選択し,投薬量1mg/kg(亡Dのは体重15kgのため15mg)で投与したのである(なお,この量は小児循環器病学のリストに記載されている推奨量の最低量のさらに半量である(初期投与量は2~4mg/kgと記載がある(乙B4・861頁。 )。)。),,,ウこのように亡Dにインデラルを投与したことについて担当医師らに薬剤の選択,投与の注意義務違反はない。 (3)プリンペランの投与自体の注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告らの主張の概要被告病院担当医師らは,亡Dが薬剤アレルギーを持つことに考慮し,適切な薬剤を選択すべきであったにもかかわらず,副作用の発現の可能性の大きい消化器異常治療剤であるプリンペランを投与した注意義務違反がある。 イプリンペランについて(ア)プリンペランは,消化器異常治療剤(吐き気止め)であるが,副作用として,錐体外路症状(手足の振戦,筋硬直,頸,顔部の攣縮,眼球回転発作,焦燥感等)が発現しやすい薬剤であり,特に,小児に投与する場合,錐体外路症状が発現しやすいとされ,ジフェンヒドラミンの予防投与を受けていない小児患者では,錐体外路症状の発生率は25%まで上昇すると報告されている(甲B3,B4。 ) ,特に,小児に投与する場合,錐体外路症状が発現しやすいとされ,ジフェンヒドラミンの予防投与を受けていない小児患者では,錐体外路症状の発生率は25%まで上昇すると報告されている(甲B3,B4。 )したがって,担当医師は,小児へのプリンペランの投与を判断するにあたっては,本人の状況や体質等から,副作用が発現する可能性の有無- 14 -を十分に考慮し,副作用が発現する可能性が高い場合には,投与を行うべきではない。また,投与を行う場合には,特に,過量投与に注意し,脱水状態,発熱時には十分な注意が必要である。 (イ)本件では,亡Dは,前記のように,γグロブリンでアナフィラキシーを起こし,また,アスペノンでも中枢神経系の副作用を出現させていたのであるから,被告も認めているように,担当医は亡Dが薬剤アレルギーを起こしやすい体質であることについて,十分な認識があった。 したがって,被告病院担当医は,亡Dが薬剤アレルギーを持つことに考慮し,適切な薬剤を選択すべきであり,副作用の発現の可能性の大きいプリンペランを投与すべきではなかった。 ところが,G医師は,かかる亡Dにプリンペランが与える副作用について考慮することなく,漫然と同剤を投与しており,本剤投与の際の注意義務を明らかに怠ったものである。 ウアスペノンの副作用との関係また,プリンペランは,平成10年12月19日に生じた嘔吐の症状を止めるために投与されたものと考えられるが,もともと,この嘔吐の症状は,アスペノンの副作用として出現しているものであるから,対応する措置としては直ちにアスペノンの投与を中止して副作用の出現を抑えるべきであり,前記のように,小児に対する安全性が確立していない新薬である,。 アスペノンの副作用について担当医は十二分に注意を払うべきであったにもかかわらず,G医師は,ア して副作用の出現を抑えるべきであり,前記のように,小児に対する安全性が確立していない新薬である,。 アスペノンの副作用について担当医は十二分に注意を払うべきであったにもかかわらず,G医師は,アスペノンの副作用に気付かず,副作用発現後も漫然とアスペノンを投与し続け,しかもプリンペランとの併用投与を行ったものである。 エ以上のように,亡Dにプリンペランを投与した被告病院担当医師は,副作用について考慮しつつ,適切な薬剤を選択すべき注意義務を怠ったものといえ,注意義務違反がある。 - 15 -(被告の主張)アプリンペランは,副作用として,まれに錐体外路症状等を発現することがある薬剤であり,小児に対して過量に投与した場合には錐体外路症状が発現しやすい薬剤である。 被告病院担当医師らは,亡Dが薬剤アレルギーを起こしやすい体質であることを考慮した上で,通常の小児治療で一般的に使われるプリンペランを選択して投与したものである。 ,,,またプリンペランの投与量はトータルで8mg/約24時間であり過量投与ではない。 イアスペノン投与後の症状との関係なお,アスペノン投与後の症状について,酩酊状態に似ている印象があり,アスペノンの副作用又はアスペノン過量投与による中枢神経症状が疑わしいと判断された。しかし,亡Dに投与したアスペノンの投与量が最低量の15mg/日であること,血中濃度も有効濃度未満であり過量投与ではなかったこと等を考え合わせると,アスペノンの副作用であるとは考え難い。亡Dには,精神運動発達遅延があったため,中枢神経症状として不眠,無表情を起こした可能性があるし,また,手術やその後のストレスに関連して発症した可能性も否定できない。 ウ以上より,被告病院担当医師らに,プリンペランの投与に関し,適切な薬剤の選択を誤った注意義務違反 情を起こした可能性があるし,また,手術やその後のストレスに関連して発症した可能性も否定できない。 ウ以上より,被告病院担当医師らに,プリンペランの投与に関し,適切な薬剤の選択を誤った注意義務違反はない。 (4)アスペノンの投与を中止しなかった注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告らの主張の概要アスペノン投与後,亡Dに明らかな副作用が発生し,平成10年12月18日にはその副作用が顕著となったのであるから,遅くとも同日にはアスペノンの投与を中止すべきであったのに,これを漫然と投与し続けた注- 16 -意義務違反がある。 イアスペノン投与について(ア)アスペノンは,前記のように,振戦,めまい等の精神神経系の副作用及び食欲不振等の消化器系の副作用等を起こしやすく,特に,小児に対しては安全性が確立していない薬剤である。また,アスペノンは新薬であり,被告病院小児科でアスペノンを小児に対して投与した例はそれまでなかった。 したがって,被告病院担当医師らは,小児へのアスペノンの投与にあたっては,副作用の発現に十分注意し,同剤の投与中に,振戦,めまい等の精神神経系症状等の副作用が発現した場合には,直ちに投与を中止する等,適切な薬剤管理を行わなければならない。 (イ)しかし,亡Dには,アスペノンの投与に伴い,食欲不振,手指の振戦,不眠,無表情,嘔吐など,精神神経系の症状が次々に発現し,母親である原告Bが,これらの副作用について担当医のG医師に訴えていたにもかかわらず,同医師はアスペノンの副作用を顧慮することなく,漫然と同剤の投与を継続した。 同月20日になって,ようやくアスペノンの投与は中止された。 ウこの点,被告は,アスペノン投与後,不眠,無表情という中枢神経系の症状及び嘔吐が発現したことは認めながらも,嘔吐は中枢神経系の症状とは 同月20日になって,ようやくアスペノンの投与は中止された。 ウこの点,被告は,アスペノン投与後,不眠,無表情という中枢神経系の症状及び嘔吐が発現したことは認めながらも,嘔吐は中枢神経系の症状とは確定できず,この時点ではこれらの症状がアスペノンの副作用であると断定することはできないと主張する。 しかしながら,平成10年12月14日夕刻から開始され同月20日まで継続されたアスペノンの投与中,亡Dには同月17日には食欲不振,同月18日には手の振戦,不眠,同月19日には無表情,嘔吐,発熱,呼吸状態悪化,手の振戦,同月20日には意識レベルの低下,人に対する反応が悪く呼びかけに対しニヤニヤ笑う,振戦,眼瞼浮腫,嘔吐などの症状が- 17 -連続して発現した(同月19日以降については乙A1・138頁から151頁まで参照。 )これらの症状の発現について,H医師は「アスペノン始めてから出現し悪化」したとし,また「アスペノンの副作用(中毒,過量投与)の疑い」としている(乙A1・147頁)のである。さらに,G医師は「アスペ,ノン内服後より振戦認められていることから,アスペノン過量投与による中枢神経症状が今回のエピソードでは疑わしい」としている(同148頁。 )また,H医師は,原告Bに対し,同月20日「中枢神経がやられ,酩,酊状態になっている。そのためアスペノンを切ります」と述べている。 このようにアスペノン投与後亡Dに発生した症状は明らかに同剤の副作用であり,かつ担当医師らは,それを認識していたことは疑いない。 エまとめしたがって,被告病院担当医師らは,特にアスペノンの副作用の発現に注意しつつ,適切な薬剤管理を行うべきであったところ,前記のとおり,アスペノン投与後亡Dに明らかな副作用が発生したのであるから,担当医師らは遅くともその副作用が顕著と 特にアスペノンの副作用の発現に注意しつつ,適切な薬剤管理を行うべきであったところ,前記のとおり,アスペノン投与後亡Dに明らかな副作用が発生したのであるから,担当医師らは遅くともその副作用が顕著となった同月18日には同剤の投与を中止すべきであったのに,これを漫然と投与し続け,医師としての注意義務を怠ったものである。 仮に,被告が主張するように,不整脈が存在していたとしても,メキシチールの投与で十分コントロールできていたのであるから,顕著な副作用を生じさせたアスペノンの投与を直ちに中止し,メキシチールの投与に切り替えることは十分可能であったのである。 (被告の主張)アアスペノンについてアスペノンは,確かに,振戦,めまい等の精神神経系の副作用及び食欲- 18 -不振等の消化器系の副作用等を起こすことがある薬剤で,小児に対しては安全性が確立していない薬剤であるが,小児に対して安全性が確立していないことはほとんどの抗不整脈薬剤にいえることであって,アスペノンに限ったことではない。アスペノンは,小児循環器病学の成書に薬用量が設定されている薬剤である。 アスペノンは,昭和62年に発売された薬剤であり,新薬ではない。被,,告病院では亡Dに投与するまで小児内科で小児に投与した経験はないが作用機序がこれと同系列の抗不整脈薬は多種使用した経験がある。 イ亡Dに発現した症状及びアスペノン投与を中止した経緯(ア)亡Dの致死的不整脈の症状に対しては,メキシチールを投与してい,,たが改善がみられないため不整脈の専門医であるL医師と循環器外科小児内科の医師らが討議の上,副作用情報も考慮しつつ,上室性頻拍,心室性頻拍の両者に有効とされる抗不整脈薬の第1選択薬剤の1つであるアスペノンを選択し,平成10年12月14日から投与した。 その後,同月19日の 師らが討議の上,副作用情報も考慮しつつ,上室性頻拍,心室性頻拍の両者に有効とされる抗不整脈薬の第1選択薬剤の1つであるアスペノンを選択し,平成10年12月14日から投与した。 その後,同月19日の昼まで亡Dは活気良好にて棟内を歩き回るなどしていたが,同月17日に軽度の食欲不振,同月18日に不眠,手の振戦,同月19日に嘔吐,同月20日に眼瞼浮腫が若干発現し,これらの症状の原因としてアスペノンの副作用が疑われたため,その時点で,G医師は,H医師に相談の上,アスペノンの投与を中止した。 (イ)アスペノンの投与を中止したのは,各症状について,酩酊状態に似ている印象があり,アスペノンの副作用又はアスペノン過量投与による中枢神経症状が疑わしいと判断したためであって,各症状をアスペノンの副作用と断定して中止したわけではない。 (ウ)なお,アスペノンの初期投与量は1~3mg/kg×1日(経口,)有効濃度は0.3~1.5μg/mlであり(乙B4・860頁,亡)Dの体重は15キログラムであるから,投与量は15~45mg/1日- 19 -となるところ,実際の投与量は15mg/1日,血中濃度の検査結果は0.19μg/mlであったのであり,投与量,有効濃度いずれからみても過量投与ではなかった。 (エ)前記に関し,原告らは,アスペノンの副作用が顕著となった同月18日には同剤の投与を中止すべきであったと主張する。 しかし,前記のとおり,亡Dには重篤な不整脈が存在し,抗不整脈薬の投与を中止すれば,致死的不整脈が頻発して死に至る可能性が大きかったのであるから,抗不整脈剤の投与中止は慎重な判断の下で行われなければならず,軽々に投与を中止すべきではなかった。 ,,,被告病院担当医師らは前記のとおり適切な薬剤管理を行っており副作用が疑われた段階でH医師に相談 脈剤の投与中止は慎重な判断の下で行われなければならず,軽々に投与を中止すべきではなかった。 ,,,被告病院担当医師らは前記のとおり適切な薬剤管理を行っており副作用が疑われた段階でH医師に相談の上,アスペノンを中止するか否かを慎重に検討し,副作用が疑わしいと判断された同月20日の時点で直ちに投与を中止したのであるから,原告らの主張は理由がない。 ウまとめしたがって,アスペノンの投与,管理は適切であり,アスペノンの投与を中止しなかった注意義務違反はない。 (5)プリンペランの投与を中止しなかった注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告らの主張の概要被告病院担当医師らは,平成10年12月20日夕刻に嘔吐が収まった時点でプリンペランの投与を中止すべきであり,遅くともプリンペランの副作用と考えられる錐体外路症状その他の症状が発現した時点で,直ちにプリンペランの投与を中止すべきであったにもかかわらず,プリンペランの投与を継続した注意義務違反がある。 イアスペノンとの関係前記のとおり,亡Dの嘔吐の症状は,アスペノンの副作用として出現し- 20 -ているものであり,対応する措置としては直ちにアスペノンの投与を中止して副作用の出現を抑えるべきであった。 にもかかわらず,G医師は,アスペノンの副作用に気付かず,副作用発現後も漫然とアスペノンを投与し続け,しかもプリンペランとの併用投与を行ったものである。 ウプリンペランの投与の継続(ア)プリンペランは,平成10年12月19日に生じた嘔吐の症状を止めるために投与されたものであるが,G医師は,嘔吐の症状が同月20日夕刻までには収まっていた(乙A1・151頁)にもかかわらず,同日にアスペノンの投与が中止された後も,小児に対して副作用の発現の可能性の大きいプリンペランを投与し続けた。さら 嘔吐の症状が同月20日夕刻までには収まっていた(乙A1・151頁)にもかかわらず,同日にアスペノンの投与が中止された後も,小児に対して副作用の発現の可能性の大きいプリンペランを投与し続けた。さらに,亡Dは心臓疾患であったため,体内の水分管理を適切に行うことが特に重要であったにもかかわらず,同医師はこれに配慮することなく,10パワーの点滴によりプリンペランを投与した。 (イ)また,プリンペラン投与後,亡Dには,手指の振戦,唾液の流涎などの嚥下困難,顎の攣縮に伴う歯ぎしり,上下肢の固縮,水平横行への眼振,上部への眼球回転などが認められた(乙A1・145頁から157頁まで)ため,母親の原告Bが,何度もG医師に,プリンペランの投与をやめてほしい,内科の医師を呼んで相談してからプリンペランの投与を判断してほしいと繰り返し訴えたにもかかわらず,同医師は,小児科等の他の医師に何ら相談することなく,独断でプリンペランの投与を継続した。 (ウ)結局,同月21日の午後に小児内科のF医師が,錐体外路症状を主体としたプリンペランの副作用を認め,プリンペランの投与を中止するまで,プリンペランの投与が継続された。 エプリンペラン投与が中止されるに至った経緯- 21 -同月21日午後3時ころ,原告BがF医師に対し「Dの状態がおかし,い」と訴えたところ,F医師は「何ででしょう?アスペノン切ったのに・・・・・」とその時は上記副作用の原因が分からないようであった。それに対し原告Bが「先生(点滴の)ボトルにプリンペランが入っている。 ,プリンペランが原因では?」と指摘したところ,同医師は驚いて「どうして!誰がプリンペランなんて!あ・・・先生のやりかたなんだよね・・。 何で・・・」と述べ,いったん亡Dのベットにしゃがみ込んだ。そして。 その場で同医師はプリンペ 摘したところ,同医師は驚いて「どうして!誰がプリンペランなんて!あ・・・先生のやりかたなんだよね・・。 何で・・・」と述べ,いったん亡Dのベットにしゃがみ込んだ。そして。 その場で同医師はプリンペランの投与を中止した。 その後,同医師は内線でO医師を呼び,十数分後にO医師が亡Dの病室に来てF医師から経過の報告を受けた。 オ亡Dの症状被告は,プリンペランの投与後に発現した,手指の振戦,唾液の流涎などの嚥下困難,顎の攣縮に伴う歯ぎしり,上下肢の固縮,水平横行への眼振,上部への眼球回転,顔部痙攣,右足筋硬直等の症状がプリンペラン投与による副作用である錐体外路症状であることを否認しているが,乙A1号証153頁,155頁において,F医師がその可能性が大きいと指摘している。 なお,乙A1号証159頁には「プリンペラン,アスペノン中止とな,り,徐々に回復してきている」との記載があり,前記症状がプリンペランの副作用であり,プリンペランの副作用と考えられる錐体外路症状その他の症状が発現していたことがわかる。 カまとめ被告病院担当医師は,平成10年12月20日夕刻に嘔吐が収まった時点でプリンペランの投与を中止すべきであり,遅くともプリンペランの副作用と考えられる錐体外路症状その他の症状が発現した時点で,直ちにプリンペランの投与を中止すべきであったにもかかわらず,プリンペランの- 22 -,,大量投与を継続したのであり投与後に副作用の発現に十分に注意しつつ薬剤投与の管理を行うべき,医師としての注意義務に明らかに違反したものというべきである。 (被告の主張)アプリンペランは,平成10年12月19日に生じた嘔吐の症状を止めるために投与されたものであるが,前記のように,嘔吐がアスペノンの副作用であると断定することはできないし,また,亡Dはメキシ 主張)アプリンペランは,平成10年12月19日に生じた嘔吐の症状を止めるために投与されたものであるが,前記のように,嘔吐がアスペノンの副作用であると断定することはできないし,また,亡Dはメキシチールの使用下でも重篤な上室性及び心室性不整脈を多発していた致死的不整脈患者であり,同人に対する抗不整脈剤の投与を中止することには慎重な判断を要するのであるから,結論にいたるまでに数日を要したとしても,それはむしろ自然なことである。 イプリンペランは,同月19日に生じた嘔吐に対し,同日午後1時から投与したものであり,その後いったん症状は収まったが,同月20日午後11時には再び嘔吐したのであって,その症状も収まったものの,それはプリンペランの効果によるものと考えられた。また,同月21日は,前日中止したアスペノンの副作用が疑われる症状が残存している可能性もある時期であったが,プリンペランの副作用の可能性が高いことを考慮し,同日午後3時20分にプリンペランの投与を中止している。 このように,被告病院担当医師らは,遅くともプリンペランの副作用が出現している可能性が高いと判断した時点で,直ちにプリンペランの投与を中止したものである。 ウなお,G医師は,プリンペランの投与の継続についても,上級医であるP医師に相談しており,独断ではない。また,F医師は,各症状についてO医師に診察を要請し,O医師によってプリンペランの副作用が発現している可能性が高いと判断されたことから,プリンペランの投与を中止したものであり,主治医でないF医師が独断で中止したものではない。また,- 23 -G医師は,水分管理には十分留意していたものである。 さらに,F医師の乙A1号証153頁,155頁の指摘は,プリンペランの副作用の可能性が否定できないという意味にすぎず,プリンペラン ,- 23 -G医師は,水分管理には十分留意していたものである。 さらに,F医師の乙A1号証153頁,155頁の指摘は,プリンペランの副作用の可能性が否定できないという意味にすぎず,プリンペラン投与による錐体外路症状の可能性が大きいと指摘したものではない。 エ以上のように,被告病院担当医師らにはプリンペランの投与に関して,薬剤投与,管理に不適切な点はなく,同剤の投与中止が遅れた注意義務違反はない。 (6)インデラルの投与を中止しなかった注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告らの主張の概要被告病院担当医師らは,インデラルの副作用に十分注意し,副作用の発現が見られた場合,直ちにインデラルの投与を中止すべきところ,それを怠り,漫然とインデラルの投与を継続した注意義務違反がある。 イアナフィラキシーの既往歴との関係インデラルは,不整脈の治療薬であるが,前記のとおり,気管支痙攣,呼吸困難,喘鳴などの重大な副作用を出現させやすいほか,小児に対する安全性が確立していない薬剤である。特に,アナフィラキシーの既往歴のある患者には,同剤投与中に発生したアナフィラキシー反応が増悪した場合があるとの報告があり,アナフィラキシーの既往歴がある患者には,投与すべきではない薬剤であった。 亡Dは,前記のように,平成10年11月8日のγグロブリンの投与によりアナフィラキシーを起こしており,薬剤アレルギーを起こしやすい体質であることはすでに被告病院担当医師らに明らかであった。 そして,亡Dの症状は,アナフィラキシーの既往歴のある患者にインデラルを投与したことにより,アナフィラキシーが増悪した結果生じたものである。このことは,O医師の原告らに対する同年2月13日の説明及び- 24 -同医師の医療意見書(甲A1)等からも裏付けられるものである。 ウインデ り,アナフィラキシーが増悪した結果生じたものである。このことは,O医師の原告らに対する同年2月13日の説明及び- 24 -同医師の医療意見書(甲A1)等からも裏付けられるものである。 ウインデラルの投与後の亡Dの症状についてインデラルの投与は,平成11年1月5日朝,同月6日夕刻から同月7日夕刻まで同月13日昼から同月16日夕刻までの3回行われている乙,(A1。 )(ア)同月1月5日のインデラル投与後,同日昼頃,ホルター心電図を取り付けに来たF医師が,亡Dの声がかすれていることを確認し,さらに同日午後9時前後に,原告Bは,亡Dが発熱し,声がかすれ,呼吸がヒューヒューと鳴っていたことを確認している。 (イ)同月6日夕刻からの投与後,同月7日に発熱,喘鳴,咳の各症状があり,また,心拍が120から130までの頻拍となったため,インデラル投与が中止された(乙A1・184頁から186頁まで。 )(ウ)さらに,同月13日昼からの投与後,同月14日に亡Dは不安感を訴え,同月15日には不眠,嘔吐,同月16日昼,眼瞼浮腫がさらに進み,右目周囲に浮腫,唇の腫脹,多呼吸,周囲のものを引きちぎる,心房性期外収縮,ウエンケバッハ様の不整脈が認められ,同月17日にも不整脈,多呼吸,顔面蒼白となり,インデラルの投与を中止した。 同月18日には脈拍が200に上昇し,眼球回転異常,右足硬直などが発生した。 同月19日にも,脈拍190,右眼瞼下垂,右眼球運動異常,右足硬直,多呼吸などが発生し,同月24日にも,眼球回転異常,仮面顔,振戦,右足硬直などが発生し,ほとんど眠ったままの昏睡状態となった。 エ(ア)このように,被告病院担当医師らは,同月5日にインデラルを投与した結果,亡Dに喘鳴などの副作用が現れ,いったんインデラルの投与を中止したにもかかわらず,副 ど眠ったままの昏睡状態となった。 エ(ア)このように,被告病院担当医師らは,同月5日にインデラルを投与した結果,亡Dに喘鳴などの副作用が現れ,いったんインデラルの投与を中止したにもかかわらず,副作用発現の可能性について考慮せず,同月13日に,インデラルの投与を再開した。 - 25 -本件において,インデラルの投与によって副作用が発現したことは明らかであるから,被告病院担当医師らは,そのことが明らかとなった平成11年1月5日に投与を止めた後,これを再開すべきではなかった。 そして遅くとも再開後の同月7日に同様の症状が出た時点で投与を止め,それ以降の投与を継続すべきでなかったことは明らかである。 (イ)そして,亡Dの前記症状に不安を感じた母親の原告Bが,同月14日に担当のJ医師に副作用の発現を訴え,さらに同月15日から同月17日にかけて,単独で担当していたG医師にも何度も副作用を訴えたにもかかわらず,被告病院担当医師らはインデラルの使用を中止せず,同月17日にI医師がインデラルの投与を中止するまで,漫然とインデラルの投与を継続し,これにより亡Dに不可逆的な脳幹障害を生じさせたのである。 オまとめよって,被告病院担当医師らは,インデラルの副作用に十分注意し,副,,作用の発現が見られた場合直ちにインデラルの投与を中止すべきところそれを怠り,漫然とインデラルの投与を継続したものであり,薬剤の投与後に,副作用の経過を観察して適切な薬剤投与の管理を行うべき注意義務を明らかに怠ったものである。 (被告の主張)アインデラルの副作用についてインデラルは持続時間が短い薬剤であるにもかかわらず,その投与中止後も症状が進行していたため,各症状の発現がインデラルの副作用とは考えにくかった反面,致死的不整脈を抑制する必要が高かったため,インデラル ラルは持続時間が短い薬剤であるにもかかわらず,その投与中止後も症状が進行していたため,各症状の発現がインデラルの副作用とは考えにくかった反面,致死的不整脈を抑制する必要が高かったため,インデラルの再投与を行ったものである。しかし,その後においてもインデラルの副作用の可能性が否定しきれなかったため投与を中止したものであって,漫然と投与を続けたものではない。また,インデラルが不可逆的な脳- 26 -幹障害を生じさせたという事実もない。 イ致死的不整脈の存在また,亡Dに重篤な不整脈が存在していたこと,致死的不整脈の存する患者に対して安易に抗不整脈薬を中止すれぱ,死に至る可能性が大きいため,抗不整脈薬の投与中止は慎重に行う必要があること等については既に述べたとおりである。 ウインデラル投与後の状況(ア)インデラルは,平成11年1月5日の夕方から投与を開始したが,24時間ホルター心電図によりインデラル投与時と未投与時における心電図波形を比較して評価するため,同月5日の夕方のみ投与し,その後一時投与を中止して,インデラル未投与時の波形を記録し,同月6日夕方から投与を再開した。同月5日夜に,亡Dの声がかすれたり,喘鳴等の症状が発現した事実はない。 ,,,その後同月7日に喘鳴が発現したためインデラルの副作用を疑い同日いったん投与を中止したが,循環器外科及び小児内科の複数の医師で副作用の可能性等について検討した結果,インデラルの副作用の可能性は低いと判断し,また,致死的不整脈の改善にはインデラルの投与が必要であるとの結論に到ったことから,原告Bに対し十分な説明を行った上,同人の同意を得て,同月13日に投与を再開した(乙A1・195頁,196頁。同月14日,亡Dは機嫌良く活気もあり,原告Bか)ら看護師に対して「調子良さそうである」と Bに対し十分な説明を行った上,同人の同意を得て,同月13日に投与を再開した(乙A1・195頁,196頁。同月14日,亡Dは機嫌良く活気もあり,原告Bか)ら看護師に対して「調子良さそうである」との報告もあった。 。 しかし,投与再開後の同月15日には不眠,嘔吐,同月16日には眼瞼浮腫,口唇浮腫,多呼吸などの症状が発現し,インデラルの副作用を完全に否定できなかったことから,同日インデラルの投与中止を決定した。ただし,同日は既に夕方の投与を完了していたため,実際にインデラルの投与を中止したのは,翌17日となった。 - 27 -なお,同月24日に,眼球回転異常,振戦,ほとんど眠ったままの昏睡状態といった症状は発現していない。 (イ)前記の経過において,亡Dは,インデラル投与後にアナフィラキシーを起こしておらず,アナフィラキシーが増悪した事実はない。インデラルの投与を中止したのは,前記のように,同月15日,同月16日の,,症状からインデラルの副作用を完全に否定できなかったためにすぎず亡Dに対するインデラルの投与量は,小児循環器病学のリスト記載の推奨量の最低量のさらに半量であるため,量的に副作用が生じる可能性が低かったと考えられる上,インデラルは持続時間の短い薬剤であるにもかかわらず,投与中止後においても前記症状が持続するなど,前記症状の発現をインデラルの副作用として合理的に説明することはできない。 ,,また研修医であるG医師が単独で診療を担当していたわけではなくインデラルの副作用の可能性が疑われた時点で速やかに中止を決定しており,漫然と投与を継続していたものではないのである。 (ウ)なお,O医師の医療意見書(甲A1)は診療録の記載に基づくものであるため,ミトコンドリア脳症との診断がなされていない時期につい,「」,,ては 与を継続していたものではないのである。 (ウ)なお,O医師の医療意見書(甲A1)は診療録の記載に基づくものであるため,ミトコンドリア脳症との診断がなされていない時期につい,「」,,ては診療録に基づきアナフィラキシーと記載しているがこれは副作用や副作用の疑い,あるいはアレルギーと思われる症状という意味で記載したものである。 エ以上から,被告病院担当医師らによるインデラルの投与の継続,中止は適切であり,注意義務違反はない。 (7)ソービタの投与に関する注意義務違反の有無(原告らの主張)アソービタについて(ア)ソービタは,高カロリー輸液用総合ビタミン剤であるが,重大な副作用として,アナフィラキシーショックを起こすことのある薬剤である- 28 -とされており,薬物過敏症の既往歴のある患者には,投与に際して特に慎重な配慮が求められるのである(甲B7。 )(イ)この点,亡Dは,すでに平成10年11月にγグロブリンでアナフ,,,,ィラキシーを起こしさらにアスペノンプリンペランインデラルと次々に薬剤の副作用を発現しており,薬剤アレルギーを極めて発現しやすい体質であることは,被告病院担当医師らにも明らかであった。 ところが,平成11年2月13日,担当のK医師らは,このような亡Dの体質に配慮することなく,医師のいない状況下で看護師により漫然とソービタを投与し,結果同剤投与後すぐに亡Dはアナフィラキシーショックを起こしたのであるが,亡Dの症状は放置され,これに対する対応は何らなされなかった。 このため,原告Bが看護師に対し,激しい副作用が発現していることを再三訴え,ようやくソービタの投与が中止された。 同日午前3時になって初めて医師が来たが,瞳孔の確認もせず,即時にCT検査も行わなかった。結局,翌朝7時頃まで に対し,激しい副作用が発現していることを再三訴え,ようやくソービタの投与が中止された。 同日午前3時になって初めて医師が来たが,瞳孔の確認もせず,即時にCT検査も行わなかった。結局,翌朝7時頃まで,CT検査はなされず,その間,医師らにより経過の観察も行われることはなかった。 亡Dはこのアナフィラキシーショックのため意識を失い,ICU室に運ばれ,人工呼吸管理を受けたが,その後死亡に至るまで症状が回復することはなかった。 イこのように,被告病院担当医師らは,ソービタの投与に際し,患者の既往歴及び体質に配慮し,薬剤投与の判断に際し十分な注意を払い,投与後の副作用を慎重に経過観察すべきであったにもかかわらず,これらの義務に違反したものである。 (被告の主張)アソービタ投与の必要性被告病院のK医師は,亡Dが薬剤アレルギーを起こしやすい体質である- 29 -ことを認識していたが,同人の経口摂取不良による低栄養状態を改善する,。 ためビタミン剤を補充することが特に重要であると診断したものであるそして,同人の体質にも考慮し,必要かつ安全性が高く,一般的に用いられる総合ビタミン剤であるソービタを投与したものであって,漫然と投与したものではない。なお,ソービタ投与後発現した,血圧低下,意識レベルの低下等の症状がアナフィラキシーであると断定することはできない。 イソービタ投与後の状況ソービタ投与後の経過観察においても,平成11年2月13日午前3時,,,30分ころ血圧低下とのドクターコールを受けQ医師が直ちに対応し。 ,同日午後3時45分には血圧は120/80台に回復しているその後もR医師,N医師が対応している。 また,原告らは,亡Dが,ICUに運ばれ,人工呼吸管理を受けたが,その後死亡に至るまで症状が回復することはなかったと主張するが, は120/80台に回復しているその後もR医師,N医師が対応している。 また,原告らは,亡Dが,ICUに運ばれ,人工呼吸管理を受けたが,その後死亡に至るまで症状が回復することはなかったと主張するが,平成11年3月中旬から同月下旬にかけて,上両肢の動きや開眼が見られ,同月29日のMRI検査においても脳幹の高信号領域は軽快している所見があった。 ウまとめ前記のとおり,被告病院担当医師らに,薬剤の選択,投与,経過観察において,何らの注意義務違反もない。 (8)脳幹浮腫への対応が遅れたことによる注意義務違反の有無(原告らの主張)ア原告ら主張の概要被告病院担当医師らは亡Dの脳幹浮腫に早期に気付くべきであったにもかかわらず,これに気付かず,適切な治療を行わなかった注意義務違反がある。 イインデラル投与後の対応- 30 -(ア)亡Dは,平成11年1月17日までインデラルの投与を受けていたが,同日ころから,右目や口唇の浮腫などに加え,視線が合わない,上眼瞼がいつもより垂れている,呼吸が荒いなどの症状が発症し,同月1,,。 ,8日にも意識レベルの低下右下肢の硬直などの症状が生じたまた同月16日から19日の間には,多呼吸や,怖いと叫ぶ,意識レベルの低下,脈拍上昇など,明らかに脳の異常を疑わせるエピソードが相次いだ。にもかかわらず,被告病院担当医師らは,インデラルの副作用は全く考えられないとしてこれを顧みず,心因性の症状と診断して,同月21日から同月23日にかけて,外出や外泊をさせるなど,インデラルの副作用に対処するための必要な処置を全く行わなかった。 そして,亡Dは,同月24日にはほとんど昏睡状態となるに至った。 (イ)このような状態の下,担当医師らは,同月25日にCTの検査を行ったが,この時既に脳幹に浮腫が発生していたにも 全く行わなかった。 そして,亡Dは,同月24日にはほとんど昏睡状態となるに至った。 (イ)このような状態の下,担当医師らは,同月25日にCTの検査を行ったが,この時既に脳幹に浮腫が発生していたにもかかわらず,被告病院担当医師らはこれを見落とした。この時他に,眼球回転異常,右足硬直など,中枢神経系の症状が既に出ていたのであるから,被告病院担当医師らは,病名を慎重に判断すべきだったにもかかわらず,これを心因性の急性ストレス反応であると誤診して,早急に行うべき脳幹浮腫への治療を行わなかった。 (ウ)また,かかる器質的疾患の症状がある中でCTで異常が発見されない場合には,被告病院担当医師らは,脳に問題が起きているという可能性を検討し,MRI検査へと進むべきであったが,被告病院担当医師らは,それ以上の検査もしなかった。 (エ)さらに,平成11年1月25日当時,亡Dの治療は外科及び内科の医師によってのみ行われており,脳幹の病変を扱う脳神経専門医による専門的な検討はなされておらず,脳の異常の発生が見逃されたものである。 - 31 -ウ(ア)脳幹浮腫の治療法としては,一般に,呼吸循環管理,輸液等による全身管理とともに,強力な脳圧降下の治療が必要とされ,浸透圧利尿薬,ステロイド剤(脳のむくみや炎症を抑える)の投与などがある(甲B13。 )同月25日に発見された脳幹浮腫は,未だ部位も限定されており,かつ進行性のものであったと認められるから,この時点で前記脳圧降下治療等を行うことによって脳圧亢進を改善させ,浮腫による神経障害を可逆的な範囲でくい止め,完全な回復も可能であった。 にもかかわらず,被告病院担当医師らが同年2月13日に脳幹の浮腫に気付くまで,脳幹浮腫を見逃し,必要な治療をしなかったため,脳幹浮腫を不可逆的な状態になるまで放置し,昏睡状 全な回復も可能であった。 にもかかわらず,被告病院担当医師らが同年2月13日に脳幹の浮腫に気付くまで,脳幹浮腫を見逃し,必要な治療をしなかったため,脳幹浮腫を不可逆的な状態になるまで放置し,昏睡状態が継続し,同月10日には瞳孔が拡大し,チアノーゼが出現するなど,脳幹の機能異常に由来する基礎的な生命維持活動が低下し,翌11日には肺炎を起こすに至り,その後,症状が回復することはなかった。 (イ)また,脳幹の異常が早期に発見され,脳幹の異常の進行が回避されていれば,平成11年2月13日に行われたソービタの投与も必要がなく,ソービタの投与に伴うアナフィキラシーショックによる症状の急激な悪化も避けることができた。 エこれらの経緯につき,同月13日に,担当のO医師が原告らに対し,同年1月25日に既に脳幹浮腫が発生していたのに医師らがこれを見落としたこと,脳幹浮腫の影響により昏睡状態に陥っていたこと,インデラルでアナフィラキシーを起こしたために脳幹に浮腫が発生したこと等について,説明している。 また,同医師は,同年4月5日付の小児慢性特定疾患医療意見書において「99年1月に不整脈に対する治療薬へ対するアナフィラキシーも出,現してきた」旨の記載も行っており(甲A1,これは同医師の前記説明)- 32 -と同旨の内容である。 オまとめこのように,平成11年1月25日には既にCTによる検査が行われており,前記のような重篤な症状が次々に出現していたのであるから,被告病院担当医師らは脳幹浮腫に早期に気付くべきであったにもかかわらず,これに気付かず,適切な検査,治療を行わなかったものであり,かかる担当医師らの行為には,注意義務違反が認められる。 (被告の主張)アインデラルの性質インデラルは短時間作用性の薬剤であるが,インデラルの投与中止後にお 検査,治療を行わなかったものであり,かかる担当医師らの行為には,注意義務違反が認められる。 (被告の主張)アインデラルの性質インデラルは短時間作用性の薬剤であるが,インデラルの投与中止後においても症状は進行しており,インデラルの副作用とは通常考えにくい。 また,平成11年1月24日に昏睡状態に陥った事実はなく,インデラルの副作用が増悪したとはいえない。 イ平成11年1月25日にCT検査について同日のCTでは脳幹の浮腫は確認されていない。 同日のCTの脳幹浮腫の徴候は,同年2月13日のCTと比較することによって初めて,若干黒っぽい部分が見受けられるという程度の軽微なものであり,同年1月25日のCTのみから脳幹浮腫を確認することはできず,脳幹浮腫を見逃した事実はない。 ウ脳幹浮腫の原因及び被告病院の対応被告病院担当医師らは,亡Dの薬剤に対する異常な反応について,その病因探索の1つとして心因性のストレスも視野に入れていたのであって,各症状を心因性と診断したわけではない。 亡Dに何らかの代謝異常があることは明らかであったが,その原因は不明であり,原因探索を行うとともに治療を継続していた。 本件は極めてまれな病態であり,脳幹浮腫の早期の診断が極めて困難で- 33 -あった。 なお,同年3月中旬から下旬にかけて上両肢の動きや開眼が見られ,同年3月29日のMRI検査においても,脳幹の高信号領域は軽快している所見があり,回復の徴候はあった。 エなお,原告らが主張するように,一時点である同月25日のCT画像からは,脳幹浮腫が未だ部位も限定されており,かつ進行性のものであったと判断することは不可能であり,原告らの主張はその後の経過を所与のものとした推論に過ぎない。 また,脳幹浮腫に対処するには,脳圧降下治療だけでは神経障害を根本的に解決すること つ進行性のものであったと判断することは不可能であり,原告らの主張はその後の経過を所与のものとした推論に過ぎない。 また,脳幹浮腫に対処するには,脳圧降下治療だけでは神経障害を根本的に解決することにはならないため不十分であり,原病である高乳酸血症の治療が必要であるにもかかわらず,これを伴わずして完全な回復が可能としている点に論理の飛躍がある。高乳酸血症があるということは,乳酸の代謝がスムーズに行われず,代謝過程において細胞ないし細胞間隙からくみ出されるべき水がくみ出されていない可能性が高いということであり,脳圧降下剤では細胞間隙から水を強引に血管内に引き込むことができても細胞レベルでの水のくみ出しを回復させるまでには至らず,結局十分な水のくみ出しができないのであるから,浮腫を完全に克服するのに十分であるとは到底いえない。 オまとめ以上から,被告病院担当医師らに注意義務違反はない。 (9)因果関係(原告らの主張)ア脳幹部の浮腫について平成11年1月25日及び同年2月13日のCTの検査により,亡Dの脳幹に浮腫が発生していたことが明らかとなっている。 脳幹部の浮腫が長期間継続すれば,体内の代謝や呼吸をつかさどる脳幹- 34 -の機能が阻害され,生命維持活動に支障を来すに至る。本件においても,脳幹の浮腫が後の呼吸困難,代謝異常,意識障害等を引き起こし,死亡に至ったものと考えられる。 この脳幹の浮腫の発生した原因は,それ以前のプリンペラン及びインデラルの投与による副作用にあると考えられる。 イプリンペランの副作用について(ア)プリンペランは消化器機能異常治療剤であり,消化機能をつかさどる脳幹部に作用する薬剤である。同剤は,軽度脂溶性であるため,脳血液関門を通過し,中枢神経系に作用しやすい。このため,プリンペランは,副作用として ンは消化器機能異常治療剤であり,消化機能をつかさどる脳幹部に作用する薬剤である。同剤は,軽度脂溶性であるため,脳血液関門を通過し,中枢神経系に作用しやすい。このため,プリンペランは,副作用として,大脳皮質から脳幹部を経由して脊髄に至る,錐体外路の諸神経核やその連絡路が侵される,いわゆる錐体外路症候群を引き起こしやすい。 (イ)本件においては,平成10年12月19日から過量投与されたプリンペランの副作用により,手指の振戦,唾液の流涎などの嚥下困難,顎の攣縮に伴う歯ぎしり,上下肢の固縮(特に強度の右足硬直),水平横行への眼振,上部への眼球回転などが認められており,これは,プリンペランの副作用として代表的な錐体外路症状の典型的なものである。したがって,亡Dに,プリンペランの副作用により錐体外路症状が発生したことは疑いを容れない。 プリンペランが脳幹に作用する薬剤であることから,同剤が,薬剤アレルギーを引き起こしやすい亡Dに過量に投与されたことにより,脳幹部に浮腫に至る異常を発生させ,また同時に脳幹部を通過する錐体外路に錐体外路症候群を引き起こし,これにより諸神経核やその連絡路が侵され,これが脳幹部に作用して,亡Dの脳幹に浮腫を発生させた原因となったものと考えられる。 ウインデラルの副作用について- 35 -(ア)インデラルをアナフィラキシーの既往歴のある患者に投与した場合,アナフィラキシー反応が増悪する場合があることが知られている。 亡Dには,γグロブリンでアナフィラキシーを起こした既往歴があったにもかかわらず,被告病院担当医師らがこれに配慮することなく,インデラルを投与したために,平成11年1月5日の1回目のインデラル投与直後から,不眠,嘔吐,不安感等の副作用が生じ始め,その後,眼,,,,,,瞼や口唇の浮腫多呼吸 配慮することなく,インデラルを投与したために,平成11年1月5日の1回目のインデラル投与直後から,不眠,嘔吐,不安感等の副作用が生じ始め,その後,眼,,,,,,瞼や口唇の浮腫多呼吸顔面蒼白無表情仮面顔等眼球回転異常振戦,手足の硬直など,次々に重篤な副作用が発現している。これらの症状からみて,亡Dが脳内の中枢神経系の重篤な障害を起こしていることが明らかである。 これは,すでにアナフィラキシーの既往歴のある亡Dに,インデラルを投与したことにより,アナフィラキシー反応が増悪し,これによって脳内の中枢神経系の障害を起こしたためと考えられる。また,アナフィラキシーによるアレルギー反応は,浮腫を起こしやすいことが知られており,亡Dには,かかるアナフィラキシーの増悪により,脳幹に浮腫が発生したものとみられる。 アナフィラキシー反応が起きると血管が拡張し,末梢の血管の血管容量が増大するためそこに血液が鬱滞し心臓に灌流しにくくなって末,,(梢血管抵抗の低下,浮腫が生じやすいし,血管拡張によって血管を構)成する内皮細胞の間隙は拡張し,血漿が通過しやすくなる(血管の透過性亢進)ことから,組織間に水分が増加して浮腫が生じやすくなる(甲B11・186頁,187頁。脳の場合,脳と血管の間には,脳血液)関門があり,通常は脳内にブドウ糖以外の血液中のたんぱく質等の成分は移行しないが,アナフィラキシーショックにより,脳血液関門が破綻ないし機能が低下し,前記血管性浮腫のメカニズムが作用して脳浮腫が生じるのである。 - 36 -(イ)また,亡Dがアナフィラキシー反応で呼吸困難に陥ったため,脳に低酸素状態を起こしたことも考えられ,これが脳浮腫を引き起こした原因となった可能性もある。 アナフィラキシーショックで気管支が収縮するなどして呼 亡Dがアナフィラキシー反応で呼吸困難に陥ったため,脳に低酸素状態を起こしたことも考えられ,これが脳浮腫を引き起こした原因となった可能性もある。 アナフィラキシーショックで気管支が収縮するなどして呼吸困難を生じ(甲B11・190頁,低酸素状態が生じると,血管等の脳血液関)門を構成する細胞が障害され,脳血液関門が働かなくなり,脳内に血液中のたんぱく質等が流出し,浸透圧の原理により,脳内に水分も流出して,脳に浮腫が起きる可能性がある(甲B13・691頁。 )(ウ)さらに,平成10年12月19日から同月21日まで投与されたプリンペランの副作用は,投与の中止に伴い,いったん収まったかに見えたが,インデラルの投与後,眼球回転異常,右足硬直,手足の振戦などが再発しており,インデラルの作用によって,プリンペランにより既に引き起こされていた錐体外路症状が再発して悪化したことも推測される。錐体外路症状は,症状が軽度の場合に出現するが,重度に至るとむしろ消失することが知られており,潜伏していた錐体外路症状が再発して,インデラルの作用と相乗して脳幹部の浮腫を更に増悪させたものと考えられる。 (エ)いずれにせよ,前記のようなインデラル投与に伴うアナフィラキシーの発現により,亡Dに,遅くとも平成11年1月初旬に脳幹部の浮腫が発生したことは疑いを容れない。 エミトコンドリア脳症の疑いについて,。 被告は亡Dの脳幹浮腫の原因がミトコンドリア脳症であると主張するしかし,ミトコンドリア病の診断においては,筋生検,生化学的診断,遺伝子診断が極めて重要であるところ,本件では,ミトコンドリア病の診断のために,平成11年9月13日に,Zセンター神経研究所に検査を依頼し,また,同日S医科大学小児科にも代謝検査を依頼し,これらの機関- 37 -で筋生検,生化学的診 件では,ミトコンドリア病の診断のために,平成11年9月13日に,Zセンター神経研究所に検査を依頼し,また,同日S医科大学小児科にも代謝検査を依頼し,これらの機関- 37 -で筋生検,生化学的診断,遺伝子診断を施行したが,いずれにおいてもミトコンドリア病を疑わせる異常は発見されなかった。 また,臨床症状に関しても,ミトコンドリア病に特徴的な臨床症状に亡Dの症状は当てはまらず,亡Dの死亡の原因がミトコンドリア病であったと考えることはできない。 ミトコンドリア脳筋症は,筋骨格系の疾患であり,直接脳幹に浮腫を発生させる原因とはなりえないことから,本件においてミトコンドリア脳筋症を死亡の原因とみることはできないのである。 以下詳述する。 (ア)ミトコンドリア病は,ミトコンドリアの機能異常を原因とする疾患であり,ミトコンドリアがエネルギーを産生する器官であることから,,,ミトコンドリアに異常を来すと大量のエネルギーを必要とする骨格筋中枢神経系にまず異常を来す(甲B10・1657頁。 )ミトコンドリア病の大半は骨格筋が侵されるので,骨格筋細胞のミトコンドリアに形態学的な異常を見るものであり,筋の染色検査でRRF()(,ragged-red-fiberと呼ばれる異常を示すことが多い同1657頁1658頁。 )また,血管の平滑筋細胞に異常ミトコンドリアが増加し,SDH染色で高活性性を示すので,これはSSV(strongly-SDH-reactive-blood-vessel)と呼ばれる(同1659頁。 )しかし,亡Dにおいては,ZセンターにおいてこれらRRF,SSVの筋生検の検査を行ったが,ミトコンドリア病に特異な異常は検出されなかった(甲A2・1952頁15行目,17行目。 )(イ)また,ミトコンドリア病においては,遺伝学的 においてこれらRRF,SSVの筋生検の検査を行ったが,ミトコンドリア病に特異な異常は検出されなかった(甲A2・1952頁15行目,17行目。 )(イ)また,ミトコンドリア病においては,遺伝学的な変異が高率で見られる。特にミトコンドリア病の60から70パーセントは,いわゆるミトコンドリア病の3大病型(CPEO,MELAS,MERRF)に属- 38 -するところ,これらにおいては60から95パーセントの割合で,遺伝学的な変異を示す(甲B10・1658頁,乙B6・225頁。 )ところが,亡Dの遺伝学的検査によれば,前記のCPEO,MELAS,MERRFのみならず,後記のリー(Leigh)脳症を含め,ミトコンドリア病に見られる遺伝学的変異はすべて否定されている(甲A2・1951頁。Zセンターにおける遺伝子検査,MITOCHONDRIALDNAANALYSISの頁に検査結果が記載され「主な変,異は認めません」と記載されている。 。 。)(ウ)なお,前記検査において乳酸値の上昇及びピルビン酸尿症は見られたものの,検査を依頼したS医大小児科においては,ミトコンドリア脳筋症以外の原因の高乳酸,ピルビン酸尿症の場合があるので,特異的な所見ではない旨の回答がなされている(乙A18。 )したがって,高乳酸,ピルビン酸尿症の所見があるからといって,本件でミトコンドリア病であるとの診断を行うことはできない。 (エ)リー(Leigh)脳症について亡Dにおいては,前記のように,ミトコンドリア病に特徴的な遺伝学的異常も,筋生検における異常も見られないことから,被告は,亡Dをミトコンドリア病の前記3大病型に属さないリー(Leigh)脳症であったものと主張している。 ,(),,aしかしリーLeigh脳症の発症年齢は乳児期であり呼 とから,被告は,亡Dをミトコンドリア病の前記3大病型に属さないリー(Leigh)脳症であったものと主張している。 ,(),,aしかしリーLeigh脳症の発症年齢は乳児期であり呼吸不全るいそうで発症後数年で多くは死の転帰をとる(甲B10・1659頁,1658頁の一覧表)のであり,亡Dのケースとは発症年齢及びその経過が全く異なっている。 ,,(),bまた臨床症状を見てもリーLeigh脳症では発育発達の停止筋力等の低下,呼吸障害,知的退行等の主症状がみられるはずである(甲B10・1659頁,乙B6・224頁,225頁。 )- 39 -しかし,亡Dは,当初重度の心不全で寝たきり状態だったために発達の遅れがあったものの,3歳で心不全の進行が止まってからは,発育及び発達は順調であり,発育,発達の遅れは見られなかった上,低身長(3歳時に低身長ではないと診断されている,成長ホルモン。)の分泌異常も検査しても異常は見られなかった。亡Dがミトコンドリ,,ア病に罹患していたのなら急激な発達の回復を見せるはずがないしミトコンドリア病を疑わせる症状が出ていたのなら,もっと早くミトコンドリア病についての説明や検査がなされたはずである。 ,,さらに本件の薬剤の副作用が出るまでは会話や表情も活発であり絵本を読むなど,精神の発達は順調で,精神遅滞や知的退行も全く見られなかった。IQの検査などもなされ,医師からは,発達には異常がない旨,両親である原告らが何度も説明を受けている。 筋力についても,年齢相応の通常の成長をしており,歩行もでき,筋力低下や筋緊張は見られなかった。また,軽い気管支炎はあったものの,呼吸障害もなかった。ミトコンドリア病に伴う心筋症(乙B6・535頁以下参照)もなく,ただファロー四徴症の特徴とし ,歩行もでき,筋力低下や筋緊張は見られなかった。また,軽い気管支炎はあったものの,呼吸障害もなかった。ミトコンドリア病に伴う心筋症(乙B6・535頁以下参照)もなく,ただファロー四徴症の特徴として心筋肥大があったのみである(心筋症に心肥大が伴うこともあるが,ミトコンドリア病に伴うのはあくまで心筋症であって,単なる心肥大ではない。 。)cCTに現れた脳幹浮腫については,まさに本件の薬剤の副作用によって出現したものである。 dこのように,亡Dには,リー(Leigh)脳症に特徴的な臨床症状は全く見られない。 なお,乙B6号証によれば,リー(Leigh)脳症のみならずミトコンドリア病の前記3大病型についても,おおむね前記の臨床症状が特徴的に見られるはずであるが,亡Dにこれが見られないことについて- 40 -は,前記のとおりである。 (オ)以上のとおり,亡Dには,ミトコンドリア病に特徴的な,筋生検,生化学的診断,遺伝子診断における異常が一切見られない上,臨床症状もミトコンドリア病とは全く異なるものであった。 よって,亡Dの死亡原因をミトコンドリア病とみることはできず,亡Dは,原告の主張するとおり,本件医療過誤により脳幹浮腫を生じ,死亡に至ったものである。 オこのように,亡Dの死亡の原因となった脳幹の浮腫は,被告病院担当医師らが,副作用につき十分な注意を払うことなく薬剤を投与したことによ(,,り発生したものであり被告病院において小児外科と小児内科の間など担当の科相互間および医師間の連絡が不十分で継続性に欠けており,本来であれば一貫して患者の容体を観察して適切な判断を行うべきところ,これが全くなされていなかったことも重要な点である,被告病院担当医。)師らの前記注意義務違反と亡Dの死亡結果との間には因果関係が認められる。 て患者の容体を観察して適切な判断を行うべきところ,これが全くなされていなかったことも重要な点である,被告病院担当医。)師らの前記注意義務違反と亡Dの死亡結果との間には因果関係が認められる。 (被告の主張)ア代謝異常について(ア)亡Dには,平成10年11月8日,白血球上昇について重症感染症であるとの判断からγグロブリンを投与したが,投与後,発疹,口唇膨張が発現し,チアノーゼとなり,アナフィラキシー反応が強く疑われたため,同日γグロブリンの投与を中止した(乙A1・60頁から65頁まで。 )同年12月19日,嘔吐に対して一般的に用いられるプリンペランを,,,,投与したが投与後において手指の振戦唾液の流涎などの嚥下困難顎の攣縮に伴う歯ぎしり,眼振,眼球回転などの症状が発現し,プリンペランの副作用の可能性を否定できなかったことから,同月21日プリ- 41 -ンペランの投与を中止した。 その後,亡Dは昏迷となり,食事の経口摂取ができなくなり,昏迷が続けば低栄養状態が進み全身状態が極度に悪化するおそれがあったため,平成11年2月13日,低栄養状態改善のため,一般的に用いられる総合ビタミン剤であるソービタを投与した。ところが,ソービタ投与後,血圧低下,意識障害などの症状が発現したため,同日ソービタの投与を中止した。 (イ)平成10年12月19日の嘔吐がプリンペランの副作用によるものとは断定できないし,同日の手指の振戦,唾液の流涎などの嚥下困難,顎の攣縮に伴う歯ぎしり,眼振,眼球回転などの症状がプリンペランの副作用であるとは断定できない。薬剤アレルギーが生じるためには,投与部分に免疫系の細胞が必要であるところ,脳内にはそのような細胞はなく,いかなる機序で原告らが主張するようなプリンペランによるアレルギーが発生したかを 定できない。薬剤アレルギーが生じるためには,投与部分に免疫系の細胞が必要であるところ,脳内にはそのような細胞はなく,いかなる機序で原告らが主張するようなプリンペランによるアレルギーが発生したかを合理的に説明できない。 むしろ,亡Dが,γグロブリン,アスペノン,プリンペラン,インデラル,ソービタと分子構造や医学的効能発現の機序を全く異にする多様な薬剤すべてに対して異常反応を示すことは医学的に考えにくく,亡Dがすべての薬剤に副作用を示した可能性は低いというべきであり,むしろ,同人に,予見不可能な何らかの代謝異常が存在したことは明らかである。 イ脳幹浮腫について原告らは,脳幹浮腫の発生原因はプリンペランであり,その後に投与したインデラルが相乗し,脳幹浮腫をさらに増悪させたと主張する。 しかしながら,プリンペランで脳幹浮腫を生じるという報告はない。 プリンペランの脳に対する作用は神経伝達物質の拮抗薬としての作用である。すなわち,プリンペランの投与によって,神経接合部にあるシナプ- 42 -スにおける正常な神経系の電気の流れが阻害され,運動がスムーズにいかないなどの症状が生じるが,プリンペランの投与を中止すれぱ,シナプスからその薬剤がなくなるために元の神経伝達は回復する。 プリンペランは,このような薬剤であって,浮腫の原因となるような血管系に対する作用はないのである。 また,インデラルでアナフィラキシーを起こしたわけではなく,インデラルが持続時間の短い薬剤であるにもかかわらず,インデラル投与中止においても亡Dの症状が継続していることから,各症状の発現をインデラルの副作用で説明することもできない。 さらに,脳幹の浮腫が生じた場合には,脳幹に存在する神経細胞が局所的に障害されることになる一方,代謝異常は全身的な細胞レベルの異常が生じることは通常 をインデラルの副作用で説明することもできない。 さらに,脳幹の浮腫が生じた場合には,脳幹に存在する神経細胞が局所的に障害されることになる一方,代謝異常は全身的な細胞レベルの異常が生じることは通常考えられず,あくまでも代謝異常は先天的なもので,脳幹の浮腫によるものではないと考えるべきである。 この点,原告らは,アナフィラキシーショックにより,脳血液関門の破綻ないし機能低下により,脳に血管性浮腫を生じさせるのを防ぐ脳血液関門が働かなくなり,血管性浮腫のメカニズムが作用して脳浮腫が生じると主張するが,そのような文献,実験的報告はないし,原告ら主張のメカニズムを前提とすると,脳内すべてにおいて浮腫が生じることになりそうであるが,実際には脳幹のみに浮腫が生じており,実際の病状を合理的に説明できない。また,亡Dには持続的モニターがつけられていたため,低酸素状態が発生した場合には直ちに発見することが可能なはずであるが,そのような記録はなく,低酸素状態はなかったのであり,原告らの主張は前提において誤りがある。 ウミトコンドリア病について(ア)ミトコンドリア病についてミトコンドリア病とは,ミトコンドリアの機能異常を原因とする病気- 43 -の総称である(乙B6・213頁。ミトコンドリア病の本態は,電子)伝達系酵素の活性低下によるエネルギー産生障害であることから,エネルギー依存の高い組織や臓器が障害を受けやすく,中枢神経,骨格筋,心臓,腎臓など,多彩な臓器障害を呈する。このなかでも,中枢神経症状と筋症状を特徴とするものをミトコンドリア脳筋症,中枢神経症状を特徴とするものをミトコンドリア脳症と呼んでいる。 ミトコンドリアの代表的な機能は,エネルギー産生であるから,ミトコンドリア病は,主として,このエネルギー産生に関わる酵素の異常が想定されてい 症状を特徴とするものをミトコンドリア脳症と呼んでいる。 ミトコンドリアの代表的な機能は,エネルギー産生であるから,ミトコンドリア病は,主として,このエネルギー産生に関わる酵素の異常が想定されている。この機能にかかわる酵素は総数100個以上に及び,特に電子伝達系酵素複合体の中には1つの酵素が40個以上のサブユニット(部品)で構成されているものもある。このため,酵素の存在自体は証明されているものの,酵素蛋白の機能異常がきちんと把握されていないものも多くみられ(乙B6・213頁,これら各酵素やそのサブ)ユニットの異常をすべて正確に診断することは極めて困難である。 原告らは,ミトコンドリアの異常は骨格筋に最も出現しやすいと主張するが,ミトコンドリア病の本態は,前記のように,電子伝達系酵素の活性低下によるエネルギー産生障害であることから,エネルギー依存の高い組織や臓器が障害を受けやすく,中枢神経,骨格筋,心臓,腎臓など,多彩な臓器障害を呈するものであり,多量のエネルギーを必要とする脳も主病変となる。 (イ)亡Dの病態a亡Dを死亡に至らしめた病因をミトコンドリア脳症と診断することに何ら矛盾はない。 ミトコンドリア病の診断に際しては,臨床的には,発育,発達の遅れ(乙B6・224頁。229頁,中枢神経系症状として精神遅滞)(同224頁,225頁,心伝導障害(同231頁)がみられ,臨)- 44 -床検査診断としては乳酸値の上昇(同226頁,233頁,脳の画)像診断上の異常所見(同226頁,236頁)が挙げられる。 この点,亡Dには,血中及び髄液中の乳酸及びピルビン酸も高値を示し,高乳酸血症(病名でもあり,症候名でもある)がみられ(乙。 A1・312頁,317頁,354頁,366頁,脳病変,運動発)達遅延,心筋肥大などの臨床症状があっ 中の乳酸及びピルビン酸も高値を示し,高乳酸血症(病名でもあり,症候名でもある)がみられ(乙。 A1・312頁,317頁,354頁,366頁,脳病変,運動発)達遅延,心筋肥大などの臨床症状があった(乙A1・2頁,13頁,338頁,A5の2及び3,A6の1から5まで,A18,A19)上,エネルギー産生障害が強く疑われたが,一般検査によって原因が確定できなかったことから,ミトコンドリア病を疑い(乙B5,病)変が脳幹を中心に脳に及んだことから,ミトコンドリア脳症のカテゴリーに入る疾患であると判断した。 亡Dの発育発達に関しては,2歳10か月時の田中ビネー知能検査では・精神年齢1歳6か月,知能指数53(乙A19)と,遠城寺式発達検査では,移動運動11か月,手の運動1歳4か月,基本的習慣1歳6か月,対人関係2歳,発語2歳,言語理解1歳9か月(乙A20)とそれぞれ判定されており,亡Dの4歳8か月時に原告Bが記入した「乳幼児精神発達質問紙(乙A21)においては,発達年齢2歳9」か月と,小学校入学を1年遅延することについてa町教育委員会(茨城県那珂郡)へ提出するため医師が作成した「健康診断についての意見書(乙A22)においては「同年令の小児に比して身体能力等」,について多少低下していると認められます」とそれぞれ記載されて。 いる。また,J医師は,平成10年7月作成の「小児慢性特定疾患医療意見書」において,精神運動発達遅滞を認める旨所見欄に記載して。 ,いる亡Dが重い心不全のため寝たきりに近い状態の時期があったが2歳10か月時及び4歳8か月時の検査結果の心身発達の遅れの原因は,この寝たきり状態が影響したとしても,それのみでは合理的に説- 45 -明できない(3歳の時点でも,身体的,精神的に発達の遅れは続いていた。 )そのほか,ミト 検査結果の心身発達の遅れの原因は,この寝たきり状態が影響したとしても,それのみでは合理的に説- 45 -明できない(3歳の時点でも,身体的,精神的に発達の遅れは続いていた。 )そのほか,ミトコンドリア病においては,CT上,脳幹に低吸収域が出現するとされており(乙B6・236頁から239頁まで,亡)Dの画像診断としては,平成11年2月13日のCTにおいて脳幹に,(),限局しているが梗塞様の所見がありリーLeigh脳症に類似した大脳基底核,脳幹部に左右対称性の病変(乙A5の2及び3,B6・226頁,236頁)がみられた。また,年齢的にリー(Leigh)脳症の好発年齢ではないが,文献報告として年齢の高い若年型リー(Leigh)脳症の報告もあり,また,不整脈や心筋肥大もミトコンドリア(,,)病に合併するとされている乙B6・231頁535頁536頁ところ,亡Dには,ファロー四徴症,肺動脈閉鎖症根治術後においても心筋肥大があった。この点について,原告らは,亡Dは心肥大であったが,3歳以降に心不全を起こさなかったことから心筋症ではなかったと主張するようであるが,ミトコンドリア異常によって引き起こされる心筋症の中には,心筋の肥大する肥大型心筋症という病態があり,心筋肥厚を示すものの通常収縮力が保たれており,末期になって,()急速に収縮力の低下を示し心不全を起こすことが多いこと乙B7から,通常心不全等の症状を示さずに突然死が問題となることの方が多いのであり,亡Dが3歳以降に心不全を起こさなかったからといって,心筋症でなかったとは到底いえない。 以上から,亡Dに発生した脳幹浮腫の原因はミトコンドリア病と考えられる。 bこの点,原告らは,Zセンター神経研究所及びS医科大学小児科における筋生検,生化学的診断,遺 でなかったとは到底いえない。 以上から,亡Dに発生した脳幹浮腫の原因はミトコンドリア病と考えられる。 bこの点,原告らは,Zセンター神経研究所及びS医科大学小児科における筋生検,生化学的診断,遺伝子診断を施行したが,いずれにおいてもミトコンドリア病を疑わせる異常は発見されなかったと主張す- 46 -る。 しかしながら,ミトコンドリア病については,前記のとおり,これに関係する多くの酵素が存在することが知られており,すべてが明らかになっているわけではない。 ミトコンドリア病に関連する遺伝子は,ミトコンドリア内で核内に存在し,その数は膨大であって,検査においてはその内の一部が検索されるにすぎず,ミトコンドリア脳症の半数程度は酵素診断や遺伝子診断では確定できないことから,亡Dについてミトコンドリア脳症で,,認められる既知の遺伝子の変異が検出されなかったとしてもこれは現在の医学で解析可能な範囲では検出されなかったということにすぎず,異常が指摘されなかったからといって,ミトコンドリア病が否定されることにはならない。原告らが挙げるRRFは特定のミトコンドリア病(MERRF)に見られる所見であるが,見られない場合も極めて多く,SSVについてもミトコンドリア病の1病型であるMELASの特徴であって,筋に出ない病型も多く,Zセンターの検査において,これらの異常が発見されなかったからといってミトコンドリア病を否定することはできない。また,亡Dの病型は,CPEO,MELAS,MERRFのいずれにも当てはまらない。 またS医科大学の検査はミトコンドリア脳症以外の代謝異常有,,(機酸代謝異常)においても乳酸,ピルビン酸の上昇が見られることがあるため,ミトコンドリア脳症以外の代謝異常を否定するために行った検査であるが,その結果は「先天代謝異常症の 外の代謝異常有,,(機酸代謝異常)においても乳酸,ピルビン酸の上昇が見られることがあるため,ミトコンドリア脳症以外の代謝異常を否定するために行った検査であるが,その結果は「先天代謝異常症の疑い」というもの,であり「ミトコンドリア脳筋症でもこのようなプロフィールをとり,矛盾しませんが,他の原因の高乳酸,ピルビン酸尿症,ケトーシスの場合もあり特異的な所見ではありませんという分析であった乙,。」(A18。すなわち「ミトコンドリア病を疑わせる異常は発見され),- 47 -なかった」という結果ではなく,ミトコンドリア脳症がさらに疑わ。 れる分析結果であったのである。 cなお,被告は亡Dの症状についてリー(Leigh)脳症と断定しているわけではない。リー(Leigh)脳症は脳症を呈するミトコンドリア病の1つであり,その原因は多様である。リー(Leigh)脳症の約20~30パーセントに遺伝子異常が見られるが,多くは常染色体,つまり核の遺伝子の異常であって,現代医学においては調査不可能である(甲B10・1659頁)。 dこのように,亡Dには,ミトコンドリア病を疑うに足る症状が発現しており,病変が脳幹を中心に脳に及んだことから,ミトコンドリア脳症のカテゴリーに入る疾患であると診断したものである。 エ以上のとおり,亡Dの脳幹浮腫は,プリンペランやその後に投与したインデラルの副作用の相乗によって発生したものではなく,ミトコンドリア脳症を原因とするものである。 したがって,本件各薬剤の投与等との因果関係はない。 (10)損害(原告らの主張)ア逸失利益亡Dは,死亡当時8歳の女子であったところ,平成12年賃金センサスによる全労働者の全年齢平均年収額は497万7700円である。同人は本事件により死亡しなければ,18歳から 告らの主張)ア逸失利益亡Dは,死亡当時8歳の女子であったところ,平成12年賃金センサスによる全労働者の全年齢平均年収額は497万7700円である。同人は本事件により死亡しなければ,18歳から67歳まで稼働可能であったと考えられるので,生活控除率を45パーセントとし,中間利息控除につきライプニッツ方式により逸失利益を算定すれば,次の計算式のとおりである。 なお,ライプニッツ方式の中間利息控除率については,現在日本において超低金利水準が継続しており,将来にわたっても,少なくとも年4パー- 48 -セントを上回る金利の上昇は見込まれないことが広く予見されていることから,本件においても中間利息控除率を年4パーセントとして算定すべきである。 497万7700円×(1-0.45)×(22.5284-8.1108)=3947万1568円原告らは,亡Dの死亡により,上記逸失利益の各2分の1である1973万5784円の損害賠償請求権をそれぞれ相続した。 イ慰謝料(ア)本件では,亡Dの慰謝料は,少なくとも2000万円とするのが相当である。原告らは,亡Dの死亡により,前記慰謝料額の各2分の1である1000万円の慰謝料請求権をそれぞれ相続した。 (イ)亡Dの父母である原告らは,まだ幼い娘を被告病院担当医師らの医,。 療過誤によって失っておりその精神的苦痛は非常に大きいものであるこれを慰謝するには,少なくとも原告それぞれにつき慰謝料相当額は250万円を下らない。 ウ弁護士費用原告らは,平成14年3月25日,原告ら訴訟代理人弁護士らに本件訴訟提起及び訴訟遂行を依頼し,その費用として,それぞれ前記逸失利益及び慰謝料の各合計損害額3223万5784円の1割である322万3578円の支払を約した。 エまとめよって,原告らは,被告に対し,不法行 び訴訟遂行を依頼し,その費用として,それぞれ前記逸失利益及び慰謝料の各合計損害額3223万5784円の1割である322万3578円の支払を約した。 エまとめよって,原告らは,被告に対し,不法行為又は本件診療契約の債務不履行に基づいて,それぞれ3545万9362円の損害賠償金(原告ら合計7091万8724円)及びこれに対する亡Dの死亡の日である平成11年11月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求権を有する。 - 49 -(被告の主張)原告らの主張は争う。 第3当裁判所の判断 各争点を検討する前提として,被告病院における亡Dの診療経過について,証拠(各掲記のとおり)及び弁論の全趣旨により,次の事実を認定する。 (1)問題となる各薬剤投与前までア亡Dは,生まれた平成3年6月3日の12日後にチアノーゼ状態が認められ,T病院において,ファロー四徴症,肺動脈閉鎖と診断された(乙A1・2頁。シャント術を施行された結果,低酸素血症は改善されたもの),,。 ,,の肺血流量が増加したことから咳喘鳴が強くなったしかし強心剤利尿剤を内服することにより,症状は改善した(乙A1・2頁。 )イその後,平成9年12月4日,被告病院においてファロー四徴症の根治術の適応につき心臓カテーテル検査を行ったところ,根治術の適応があると判断された(乙A1・2頁。 )ところが,亡Dには,乳幼児期にWPW症候群の既往が存在していたた,,,め上記根治術に先立って被告病院循環器外科及び循環器内科において副伝導路の検索及びそれに対するカテーテル焼灼術が施行された。その結果,心電図上デルタ波は消失したものの,しばらくして上室性頻拍が認められた(乙A1・2頁。 )ウ亡Dは,平成10年10月26日,ファロー四徴症の根治手術 対するカテーテル焼灼術が施行された。その結果,心電図上デルタ波は消失したものの,しばらくして上室性頻拍が認められた(乙A1・2頁。 )ウ亡Dは,平成10年10月26日,ファロー四徴症の根治手術を受けるため被告病院に入院し,同月29日,同手術が行われた(乙A1・6,12,17頁。 )なお,亡Dのファロー四徴症は,極型と呼ばれる最重症の型の先天性心臓病であり,同症に対する開心手術は,患者にとって負担が大きく,術後には不安定な血行動態の時期がしばらく続き,集中的な管理及び治療を行わなければならないとされる(乙A24・1頁。 )- 50 -被告病院担当医師らは,術後管理として,全身状態の管理を行っていたところ,不整脈の管理については徐脈を中心として管理することとしていた(乙A1・17頁,証人I医師。 )エ亡Dの心拍は,平成10年10月30日午前,一時的に180と頻脈となり,その後,心室性期外収縮(PVC)様の波形が出たため,変行伝導回路の可能性があると考えられ,カリウムの投与量が増量された(乙A1・26,30頁。 )オ亡Dは,翌平成10年10月31日午後10時ころにも心拍が160から180に上昇したが,20分後に130から140に戻ったため,経過観察となった(乙A1・35頁。 )カ亡Dは,平成10年11月初めころから炎症所見が見られるようになったが,同症状に対してブロアクト(抗菌薬)を3日間投与しても,同症状,,,の改善が見られなかったため同月7日昼から抗生物質であるチエナムバンコマイシンの投与に変更した(乙A1・59頁。 )ところが,同月8日になっても,依然として白血球数が2万(基準値は4000から9000。甲B17)と高値であり,胸部レントゲンによっても,肺に症状が見られず,感染源が不明であったため,被告病院担 )ところが,同月8日になっても,依然として白血球数が2万(基準値は4000から9000。甲B17)と高値であり,胸部レントゲンによっても,肺に症状が見られず,感染源が不明であったため,被告病院担当医師らは,亡Dが重症感染症に罹患しているとして,亡Dに対し,同日午前10時ころから,点滴でγグロブリンの投与を開始した。すると,急に体動が激しくなり,血圧が60/38,SPO2が79に低下した(乙A1・64頁。被告病院担当医師は,酸素飽和度の低下は挿管チューブを噛)んだことによる低換気であると考え,ドルミカム(鎮静剤)を増量するとともに,呼吸器の条件を変更したところ,その後心拍,血圧,酸素飽和度はそれぞれ徐々に回復した(乙A1・64頁。 )被告病院担当医師は,同日午後2時から,上記体動時に点滴が外れたため投与できなくなったγグロブリンの投与を再開したところ,同日午後3- 51 -時ころから,亡Dの血圧及び酸素飽和度が低下するとともに,体幹や下肢を中心として皮疹が生じた(乙A1・60,63,64頁。 )被告病院の担当医師らは,上記症状がγグロブリン製剤によるアナフィラキシーショックであると判断して,ステロイド剤(ソルコーテフ)を静注したところ,徐々に血圧及び酸素飽和度が上昇するとともに,約1時間(,)後には上下肢の皮疹は消失ただし腹部の皮疹は午後9時ころまで継続した(乙A1・63ないし65,67,68頁。 )被告病院担当医師らは,上記の臨床経過から,γグロブリン製剤の使用を中止した(乙A1・64頁。 )なお,このとき,亡Dの血液検査が実施され,その際,血中の乳酸値が3.04mmol/l(基準値2.0。以下特に単位を示さない場合はこ。)(,(「」の単位であるであった乙A41の22鑑定人U以下U鑑定人という 実施され,その際,血中の乳酸値が3.04mmol/l(基準値2.0。以下特に単位を示さない場合はこ。)(,(「」の単位であるであった乙A41の22鑑定人U以下U鑑定人という・意見書(2) 。 。))キ亡Dは,平成10年11月12日午前中から,心室性と思われる不整脈が見られ,特にサクション(痰の吸引)時などに,一過性に頻脈となる症状が見られた(乙A1・78頁。その後も不整脈の症状は見られ,被告)病院において同日夕方にエコー及び心電図検査を行ったものの,原因ははっきりしなかった(乙A1・80頁。 )また,同日午後11時すぎより,心室性期外収縮(PVC)及び上室性(),()。 期外収縮SVPCが頻発し血圧もやや低下した乙A1・80頁被告病院では,これに対し,ペーシングを心房ペーシングに変更したものの不整脈が継続したため,心室ペーシングを125に設定したところ,不整脈は軽減した(乙A1・80頁。 )ク同月13日の午前中,再び不整脈が発症し,心室性期外収縮及び上室性期外収縮が見られた(乙A1・81頁。 )また,同日午後には,心室頻拍様の波形が連発したことから,被告病院- 52 -担当医師らは,亡Dの上記症状に対し,2%キシロカイン(抗不整脈薬)の持続注入を開始したが,その後,全身にかゆみが出て顔色が不良となったため,注入を中止した(乙A1・82頁。 )上記注入中止前には心室性期外収縮は抑制されていたものの,その後,午後6時ころから,再び心電図の波形が心室頻拍様の波形となったことから被告病院では午後6時30分ころ再びキシロカインを静注した乙,,,(A1・84頁。このとき,キシロカインの注入によって,かゆみなどの)症状は現れなかった(証人I医師(反訳書8・18頁。 )) 午後6時30分ころ再びキシロカインを静注した乙,,,(A1・84頁。このとき,キシロカインの注入によって,かゆみなどの)症状は現れなかった(証人I医師(反訳書8・18頁。 ))ケ亡Dは,平成10年11月14日午後7時ころから,心電図上広いQR,,,S波形となり心室性期外収縮上室性期外収縮が散見されるようになり午後8時過ぎころからは,心室性期外収縮が頻発するようになったため,被告病院では,キシロカイン20mgをゆっくり静注したところ,心室性期外収縮は消失したものの,広いQRS波は続いていた(乙A1・88頁。 )被告病院においては,キシロカインを平成10年11月20日ころまで投与していたが,同日午後8時ころ,キシロカインの投与を中止した(乙A1・102頁。 )コ亡Dには,平成10年11月21日午前中から,心拍数が73に低下するなど,心拍間隔の不整が生じるようになったが,波形上は不整脈とはなっていなかった(乙A1・103頁。 )また,平成10年11月23日午前2時過ぎから,モニター上不整のアラームが鳴り,心拍数が70から150台と激しく変動した(心拍はその後徐々に落ち着いた(乙A1・105頁。 ))サその後亡Dの入眠中に不整脈の症状が生じることが数日あったものの,不整脈等については確認されていなかった(乙A1・105ないし115頁)ところ,平成10年12月5日夕方ころから,心電図上不整脈の状態- 53 -が続くようになり,心拍数も190台にまで上昇するといった症状が現れた(乙A1・116頁。また,心電図モニター上,上室性期外収縮が頻)発したため,被告病院では,亡Dに対し,ベッド上で休むよう促した(乙A1・116頁。 )ところが,亡Dが夜間入眠してからも,不整脈が持続し,熟睡中であっても時折心拍 ター上,上室性期外収縮が頻)発したため,被告病院では,亡Dに対し,ベッド上で休むよう促した(乙A1・116頁。 )ところが,亡Dが夜間入眠してからも,不整脈が持続し,熟睡中であっても時折心拍が130ないし160台に上昇し,上室性期外収縮も頻発していたため,看護師から医師に対して診察の依頼をし,医師は,診察をした結果,本人に自覚症状がないため,経過観察とすることとした(乙A1・116頁。 )亡Dの心拍は,その後落ち着いたが,時折心拍が150台に上昇し,また,上室性期外収縮も見られる状態となっていた(乙A1・116頁。 )シ亡Dの心拍は,翌6日には120から130台であることが多かったものの心拍間隔の不整が著明であり心拍数の変動が激しくなっていた乙,,(A1・117頁。 )なお,L医師によれば,同日のカルテに添付されたモニター心電図の記録では,最大で心拍が200の上室性頻拍と考えられる頻拍が多発していると判定できるとする(乙A1・117頁,乙A27・3頁。 )また,亡Dには胸部の自覚症状は見られなかったものの,不整脈は午前中から継続しその後時折心拍が150ないし190台に上昇した乙,,,(A1・117頁。これらの症状に対し,被告病院担当医師らは,同日昼)から,ジゴシンの投与を開始した(乙A1・118頁。 )ス平成10年12月7日は,亡Dに不整脈や心拍の上昇といった症状は見られなかった(乙A1・119頁)が,翌8日になると,日中にベッド上でかるたをして過ごしているにもかかわらず,心拍が140ないし160台に上昇し,不整脈が頻発し,心拍間隔の不整も著明となるといった状態となった(乙A1・119頁。また,同日午前9時ころの心電図では,)- 54 -QRS幅の広い心室性頻拍を疑わせる所見が出て,また,上 昇し,不整脈が頻発し,心拍間隔の不整も著明となるといった状態となった(乙A1・119頁。また,同日午前9時ころの心電図では,)- 54 -QRS幅の広い心室性頻拍を疑わせる所見が出て,また,上室性期外収縮も頻発となった(乙A1・120頁,乙B27・3頁,証人G医師(反訳書9・3頁。そこで,被告病院では,メキシチールの投与を開始する))とともに,心臓カテーテル検査の後に,ホルター心電図を施行して不整脈の診断を行うこととした(乙A1・120頁。 )心拍間隔の不整及び上室性期外収縮は,同日午後になっても持続していた(乙A1・121頁。 )セ亡Dの心拍数は,平成10年12月9日午前中には,110から130台であったが,昼過ぎに心拍が150台となり,上室性期外収縮も時折生じていたことから,被告病院では,同日夕方から,不整脈治療剤であるメキシチール(乙B12)の内服薬を投与した(乙A1・123,128,130頁。 )このころ,被告病院循環器外科では,亡Dの頻拍等に対してはメキシチールの投与が有効であると考えており,メキシチールの効果を見て,退院することも検討していた(証人I医師(反訳書8・24頁。 ))ソ亡Dは,平成10年12月10日午後4時15分ころから翌11日午後4時15分までの間,24時間ホルター心電図により経過観察を開始された(乙A1・124頁,乙A15。 )亡Dは,ホルター心電図を装着されたころには,心拍は90ないし110と安定しており,特に自覚症状もなく,平成10年12月12日及び13日にも,不整脈などは見られなかった(乙A1・124,132,133頁。 )タ平成10年12月10日に施行された24時間ホルター心電図による経過観察の結果は,同月14日に判明した(乙A1・134頁。 )その判定結果は,QRS波形 乙A1・124,132,133頁。 )タ平成10年12月10日に施行された24時間ホルター心電図による経過観察の結果は,同月14日に判明した(乙A1・134頁。 )その判定結果は,QRS波形の幅の広い頻拍症が生じているというもので,上室性頻拍(ワイドQRS,180bpm,最大5beats)を疑- 55 -わせる波形が現れたというものであった(乙A1・134頁,乙A24・3頁。具体的には,次のとおりの心室性期外収縮(12回)及び上室性)期外収縮(247回)が認められた。 心室性期外収縮10日午後4時50分,午後5時1分,午後6時8分発作性上室頻拍10日午後10時3分,11日午前10時,10時2分上室性期外収縮10日午後10時19分(頻発,午後11時41分,)午後11時52分(頻発,11日午前0時38分ないし午前1時14)分(頻発)同心電図では,亡Dの最大心拍数が189という頻拍発作が繰り返し記録されていた(乙A15。 )なお,I医師及びL医師は,上記ホルター心電図の結果から,反復性上室性頻拍という状態であり,同状態が継続すると,血行動態の悪化,心不全の誘発,心室頻拍の誘発などの可能性があり,突然死に至る場合もあるとの見解であった(乙A24・3頁,証人I医師(反訳書8・24頁。 ))(2)アスペノン,プリンペランの投与とその中止までア被告病院循環器外科I医師,循環器内科L医師,小児内科F医師及びJ医師は,平成10年12月14日,上記ホルター心電図の結果から亡Dに対する治療方針を検討し,亡Dに見られた頻拍は,QRSの波形の幅は通常の上室性頻拍症にしては広いと考えられ,心室性の頻拍である可能性もあるのではないかと判断した(乙A1・134頁,証人J医師(反訳書7・35頁。 ))また,I医師は,ファロー四徴症の 形の幅は通常の上室性頻拍症にしては広いと考えられ,心室性の頻拍である可能性もあるのではないかと判断した(乙A1・134頁,証人J医師(反訳書7・35頁。 ))また,I医師は,ファロー四徴症の術後に長期間上室性頻拍の症状が継続した経験がなかったことから,上室性頻拍症の原因としては,WPW症候群の関与があるのではないかとも考えた(証人I医師(反訳書8・19頁。 ))上記検討を経て,被告病院担当医師らは,亡Dがファロー四徴症の術後- 56 -であり,上室性の頻拍であっても,不整脈による突然死の可能性が残っており,また,WPW症候群にも罹患していたことより,この副伝導路が上室性頻拍症から心室性頻拍症を誘導する可能性もあったことから,亡Dについては上室性の頻拍症であるからといって致死的な状態でないとはいえず,上室性期外収縮,上室性頻拍に対しても治療を行うことが必要であると判断した(証人J医師(反訳書7・29頁。 ))そこで,被告病院担当医師らは,同日,亡Dに対し,心室性のみならず上室性の頻拍症に対しても効果があるとされるアスペノンの投与を開始した(乙A1・134頁。投与量は,1mg/kg(亡Dの体重が約15)kgであるため,15mg)とされた(乙A1・134頁。 )イその後の平成10年12月15日及び16日には,亡Dには頻拍症は発現せず,ときに不整心拍が散発する程度であった(乙A1・136頁。 )被告病院では,同日,平成10年12月21日に改めてホルター心電図を施行することとし,その予定を立てた(乙A1・136頁。 )ウ亡Dは,18日の日中は病院内を自由に歩き回っていたものの,夜に眠()。 ,,れない状態となっていた乙A1・139頁また同日の様子につき原告Bは,少し手が震えているような気がしたと考えていた(甲 18日の日中は病院内を自由に歩き回っていたものの,夜に眠()。 ,,れない状態となっていた乙A1・139頁また同日の様子につき原告Bは,少し手が震えているような気がしたと考えていた(甲A10・19頁。 )エ亡Dは,平成10年12月19日の朝から3回程度嘔吐を繰り返し,昼ころには,多量に食事を嘔吐した。午後1時過ぎには,薬を経口で服用した後に,その薬も嘔吐し,飲み直しをすることとなった(乙A1・138頁,139頁。また,同日午前11時ころからは,モニター上で上室性)期外収縮が単発で見られるようになった(乙A1・138頁。 )被告病院のG医師は,同日午後1時ころ,亡Dの嘔吐症状に対して制吐剤であるプリンペランの投与を開始した(乙A1・139頁,乙A43の7。その後亡Dの嘔吐症状は治まり,午後は殆ど入眠していた(乙A1)- 57 -・139頁。 )なお,被告病院においては,小児の嘔吐に対して,プリンペランを投与することが良く行われていた(証人J医師(反訳書7・15頁。G医))師は,亡Dの嘔吐症状を,アスペノンとの相互作用による消化器症状であるとも考えられるとしたものの,ひとまず経過を観察することとした(乙A1・140頁。 )亡Dは,同日の午後7時には嘔吐したうえ,発熱し,時折心拍が150台となり,頻脈を来す状態にあった(乙A1・144頁。また,原告B)は,同日,担当医に対し「右目が垂れてきている,手が震える」など,。 の異常を訴えた(乙A1・144頁。 )オ(ア)亡Dは,平成10年12月20日午前0時以降,入眠中に心拍が不整で心拍が90台から150台までばらつく状態であり,午前3時と午前5時には,上室性期外収縮が見られた(乙A1・145頁。 )また,眼瞼には若干浮腫が見られ,嘔吐はおさまっていたものの 中に心拍が不整で心拍が90台から150台までばらつく状態であり,午前3時と午前5時には,上室性期外収縮が見られた(乙A1・145頁。 )また,眼瞼には若干浮腫が見られ,嘔吐はおさまっていたものの,倦怠感もあるのか,直ぐに臥位になる状態であり,原告Bからは「アス,ぺノンを内服し始めたころから手の振戦があった」との訴えがあった。 (乙A1・145,146頁。 )(イ)同日午後には,亡Dには,反応が悪く,呼びかけに対しニヤニヤ笑っている,コップを持ったり飲んだり手を使用する際に手が震えると,,,いった症状が現れ午後6時30分ころから座位がとれずぐったりし唾液流嚥が見られ,意識レベルが低下するといった症状が見られるようになった(乙A1・146,147,151頁。 )被告病院の循環器外科のH医師らは,上記の各症状は,アスペノンの副作用が発症したものであるとの疑いを抱き,同日午後8時すぎ,アスペノンの投与を中止し,経過を観察することとした(乙A1・147,149頁。 )- 58 -夜間,モニター上,心拍の不整が頻回に見られ,心室頻拍様のものも見受けられた。上室性期外収縮も頻発し,心拍は,80台から120台と大きく変動した(乙A1・151,152頁。 )カ(ア)亡Dは,平成10年12月21日の朝以降,手の振戦はあったものの,活気が上昇しており,自分で歩きたがることもあった(乙A1・152頁。被告病院では,同日午前9時30分から,ソリタT500c)cにプリンペラン10mgを加えた点滴を,それまで毎時10mlで投与していたところ,毎時30mlに増量して投与した(乙A1・153頁,乙A43の7。 )亡Dは,同日の昼食を摂取した後,嘔吐することはなかったものの,同日午後2時ころからろれつが回らない状態になり,手の振戦は午前中よ 30mlに増量して投与した(乙A1・153頁,乙A43の7。 )亡Dは,同日の昼食を摂取した後,嘔吐することはなかったものの,同日午後2時ころからろれつが回らない状態になり,手の振戦は午前中よりも大きくなり,自分では起きあがれなくなる状態となった(乙A1・152,154頁。被告病院担当医師らは,午後3時ころ,亡Dを)診察し,亡Dの上記症状がプリンペランによる錐体外路症状の可能性もあるとして,同日午後3時20分までに,プリンペランの投与を中止して経過を観察することとした(乙A1・153頁,乙A23・1頁。 )この時点で,プリンペランは,同月20日から21日の2日間で8mgが投与されていた(乙A1・153頁。 )プリンペランを中止した後も,同日午後7時には,手指の振戦,上下肢の固縮,顎の攣縮によると思われる歯ぎしり,水平方向への眼振,上部への眼球回転などの症状が見られたが,その後の平成10年12月22日になると,徐々に筋固縮がとれ,行動も可能となり,振戦がなくなるなどの状態になり,意識レベルも上昇傾向となった(乙A1・156ないし161頁。 )(イ)一方,被告病院では,平成10年12月20日アスペノンの投与を中止していたものの,同剤の半減期が30時間と長く,同剤の効果が残- 59 -存しているといえる状態であると判断し,同月21日午後3時30分ころから,24時間ホルター心電図を施行して亡Dの不整脈の状態を把握することとした(乙A1・153頁,乙A43の9。同ホルター心電)図の結果,心室性期外収縮は見られなかったものの,上室性期外収縮が7080回,平成10年12月21日午後3時36分から同日午後11時30分,同月22日午前1時53分から午後1時42分に発作性上室性頻拍が記録されていた(乙A16,A27・10頁。L医師は,こ 縮が7080回,平成10年12月21日午後3時36分から同日午後11時30分,同月22日午前1時53分から午後1時42分に発作性上室性頻拍が記録されていた(乙A16,A27・10頁。L医師は,こ)れらの心電図の所見上,上室性頻拍がほぼ終日頻発しており,自然発生と停止を反復する状態の上室性頻脈であると判定した(乙A27・10頁。 )キ平成10年12月24日,アスペノンの血中濃度検査の結果が,0.19であって,有効血中濃度(0.25から1.25)未満の濃度であったことが判明した(乙A1・166頁。 )(3)インデラルの投与までア亡Dは,平成10年12月27日午後から,不整脈,心拍間隔の不整が見られるようになり,翌28日にも,心拍間隔の不整が見られるようになった(乙A1・171頁。また,亡Dは,平成10年12月後半から,)咳や喘鳴が出るようになり,被告病院では,ネブライザーをかけるなどして対処していた(乙A1・169ないし175頁。 )被告病院における咳や喘鳴に対する検査では,活動性の炎症や胸水が見られなかったことから同病院では同症状はかぜであると考えていた乙,,(A1・175頁。ただし,薬の副作用を考えて,被告病院では,同症状)に対して特に投薬をせず,必要な場合に咳止めなどの薬を処方することとした(乙A1・176頁。 )亡Dの咳等は,その後治まってきていた(乙A1・177頁。 )イ亡Dは,平成10年12月31日午前1時30分ころから,心拍が時折- 60 -60台から70台に低下し,不整脈が発症する状態となり,また,咽頭の喘鳴も生じた(乙A1・177,178頁。原告Bは,咽頭喘鳴に対し)て抗生剤の投与を希望したため,被告病院では,セフゾンの内服で経過観察とすることとした(乙A1・174,179頁。 ), 咽頭の喘鳴も生じた(乙A1・177,178頁。原告Bは,咽頭喘鳴に対し)て抗生剤の投与を希望したため,被告病院では,セフゾンの内服で経過観察とすることとした(乙A1・174,179頁。 ),,ウ亡Dの上記症状は平成11年1月2日までに治まってきていたものの時折心拍間隔の不整があり,また,咳も聴かれた(乙A1・180頁。 )このような心拍間隔の不整及び咳は,翌3日及び4日にも継続し,4日には,時折,上室性期外収縮様の波形も見られた(乙A1・181頁。 )エ被告病院では,平成11年1月4日,前記平成10年12月21日のホルター心電図の結果,上室性頻拍が1分以上続いている状態が続いていたことを踏まえて,翌5日にインデラルを投与してホルター心電図を施行することとした。なお,その際,原告Bからは,今まで頻拍発作に対してインデラルの処方を受けていたものの,実際には長く飲んだことはないとの話があった(乙A1・181,182頁。 )被告病院では,平成11年1月5日の朝に,亡Dに対してインデラル1,,5mgを投与した後同日の午後1時49分よりホルター心電図を施行し翌6日の昼までの間,インデラルの投与を中止して,ホルター心電図上インデラルの効果について判定することとした(乙A1・182頁,乙A42の10,乙A43の16。そして,同月5日朝,インデラルを投与し)た後,亡Dに喘鳴が見られたことも踏まえ,一旦インデラルの投与を中止し,同月6日夕方,インデラルの投与を再開した(乙A1・183頁,証人J医師(反訳書7・27頁。上記ホルター心電図の結果,亡Dには,))上室性頻拍,心室性頻拍を疑わせる波形が現れていた。具体的には,心室性期外収縮が2回及び上室性期外収縮が4403回,平成11年1月5日午後5時45分から同日午後9時56分に発作 果,亡Dには,))上室性頻拍,心室性頻拍を疑わせる波形が現れていた。具体的には,心室性期外収縮が2回及び上室性期外収縮が4403回,平成11年1月5日午後5時45分から同日午後9時56分に発作性上室性頻拍,同日午後9時49分,午後10時9分及び午後11時18分に房室ブロックを示唆す- 61 -る波形,同月6日午前1時52分,午前3時37分から午後1時38分に(,)。 ,発作性上室性頻拍が記録されていた乙A17A27・11頁また以前と比較すると,全体的に不整リズムが目立ち,以前は認められていなかったⅡ度の房室ブロックも見られた(乙A1・184頁。被告病院担)当医師らは,上記ホルター心電図の結果から,頻拍等に対する治療が必要であると判断した。 オ平成11年1月7日午後11時20分ころ,亡Dに39.4度の熱が生じるとともに,咳及び喘鳴が見られた(乙A1・185頁。被告病院で)は,上記の症状について上気道炎を疑い,血液検査を行ったところ,炎症反応が上昇していた(乙A1・185頁。 )被告病院では,上記の症状及び検査の結果,インデラルの副作用である気管支攣縮が発症しているのかの評価が困難となるため,同日いったんインデラルの投与を中止し,再開時期については,小児科の医師と相談の上で決定することとした(乙A1・186頁。 )被告病院では,発熱等の症状に対して抗生剤を投与して経過を観察したところ,発熱の症状は,翌8日には治まったものの,咳及び喘鳴は残存した(乙A1・189頁。そこで,被告病院の小児科及び循環器外科のカ)ンファレンスにおいて,今後の治療方針を検討した結果,咳及び炎症が治まるまでは,薬剤の量を変更せず,その後,状態が良くなった後に,ジギタリスの投与を中止し,インデラル単剤を投与して不整脈の経過をみることとな スにおいて,今後の治療方針を検討した結果,咳及び炎症が治まるまでは,薬剤の量を変更せず,その後,状態が良くなった後に,ジギタリスの投与を中止し,インデラル単剤を投与して不整脈の経過をみることとなった(乙A1・190頁。 )咳の症状については,中止後も継続していたことから,中耳炎又は尿路感染によるものが最も疑われ,インデラルの副作用による気管支攣縮から来るものとは考えにくいと判断された(乙A1・190頁。 )カその後,亡Dの咳の症状は,平成11年1月12日ころには治まってきたものの,心電図モニター上上室性頻拍と見られる症状が出ていたことか- 62 -ら,被告病院では,ジキタリスを中止し,インデラル投与の開始を検討した。しかし原告Bから,亡Dの脈を聴診器で確認していたところ,脈がだんだん遅くなり,意識が遠のくような状態になったとの報告を受けたことから,徐脈の可能性も疑い,直ちに再開せず,徐脈について心電図モニターで確認しつつ,小児科の医師と相談した上で,インデラルの使用開始時期を決定することとした(乙A1・195頁。 ),,,キJ医師は平成11年1月13日午前10時30分ころ原告Bに対し喉がヒューヒュー鳴ったりしたエピソードは,インデラルとは関係がなさそうであること,不整脈に対して治療の効果を判定する必要があること,入院中であり,モニターで監視しているため,対処することが可能であることから,インデラルの投与を開始する旨を説明し,同人の同意を得て,同月13日昼より,インデラルの投与を再開した(乙A1・195頁,196頁。 )ク亡Dは,平成11年1月14日,モニター上,心拍間隔不整が見られるものの,上室性期外収縮は見られず,ときおり機嫌良く活気もあり,原告Bから看護師に対して「調子良さそうである」との報告もあった(乙A 亡Dは,平成11年1月14日,モニター上,心拍間隔不整が見られるものの,上室性期外収縮は見られず,ときおり機嫌良く活気もあり,原告Bから看護師に対して「調子良さそうである」との報告もあった(乙A。 1・198頁。 )ケところが,翌15日,亡Dに嘔吐や咳が出るといった症状が現れた(乙A1・198頁。これに対して,被告病院の小児内科の医師が亡Dを診)察したものの,特に問題がないと診断された(乙A1・198頁。その)後,亡Dの咳は改善し,食欲も良好となっていた(乙A1・199頁。 )コ亡Dは,平成11年1月16日の午前中には,心拍間隔の不整が見られたものの,活気は良好であり,嘔吐もなかった(乙A1・199頁。と)ころが,同日昼ころ,原告Bから,右眼周囲に眼瞼浮腫が見られ,口唇浮腫,多呼吸などの症状が発現したとの話があった(乙A1・200頁。 ),,また心電図モニター上一過性に心拍数が150以上となったこともあり- 63 -12誘導心電図を施行したところ,房室伝導がよくない,心拍上の感覚がせまくなったり延長したりする,といった症状が見られ,心房性の期外収縮が発症したものと判断された(乙A1・200頁。ウェンケバッハ型)ブロック様の不整脈も認められ,上記の症状なども考慮すると,アレルギー性の原因も考えられ,インデラルの副作用を完全に否定できなかったことから,翌朝よりインデラルの投与を中止し,ジギタリスの投与を開始すると決定した(乙A1・201,202頁。 )(4)平成11年1月17日以降ア亡Dは,同月17日にも不整脈が見られたほか,若干眼瞼の下垂が見られ,原告Bからは,視線が合わないことがある,無表情で,時々呼吸が荒くなったり,顔面蒼白となる,眼瞼と口唇が腫れているとの訴えがあった(乙A1・203頁。また,同日午後 たほか,若干眼瞼の下垂が見られ,原告Bからは,視線が合わないことがある,無表情で,時々呼吸が荒くなったり,顔面蒼白となる,眼瞼と口唇が腫れているとの訴えがあった(乙A1・203頁。また,同日午後6時30分ころ,亡Dの状態は,),会話はできるものの,目がうつろな感じであった(乙A1・205頁。 )イ(ア)亡Dは,同月18日昼ころ,食事をしている最中に「怖い」と叫んでぶるぶる震えて顔面が蒼白になるといった状態になった(乙A1・206頁,証人K医師(反訳書10・1頁。そこで,バイタルサイン))を検査したところ,心拍は120,血圧は収縮期が114,拡張期が56,体温は37.2度で,呼吸が荒い状態であったが,アルカローシスは認められなかった(乙A1・206頁。 )また,このころから右下肢の硬直が見られ,自力で病棟を歩きづらくなるといった症状も現れ(乙A1・222頁,証人K医師(反訳書10・1頁,眼球の回転が異常になるといった症状も生じていた(証人))K医師(反訳書10・1頁。 ))K医師は,このころの亡Dについて,自動的な活動性に乏しく,表出する語彙が少ない,表情に乏しいものであり,このような原因不明の神経症状が消退,増悪を繰り返しながら,全体として悪くなっているとい- 64 -った印象をもっていた(証人K医師・反訳書10・1頁,15頁。 ())K医師は,上記の症状の原因が判明せず,インデラルの副作用とは考えがたいものの,発作時の心拍等を把握できていないと考えており,ICU症候群ほどではないものの,表情が硬く,変な印象が読みとれると考えており,ホルター心電図及び脳波(器質的疾患を否定する意味で)の検査を行うことが考えられると判断した(乙A1・207頁。 )同日午後6時35分に頻拍(心室頻拍様)のアラームが鳴り,K医 とれると考えており,ホルター心電図及び脳波(器質的疾患を否定する意味で)の検査を行うことが考えられると判断した(乙A1・207頁。 )同日午後6時35分に頻拍(心室頻拍様)のアラームが鳴り,K医師がベッドサイドに到着すると,亡Dの状態はぼーっとしており,やや表情が乏しく,息も荒い状態であった(乙A1・208頁。E医師は,)上記心電図に心室性期外収縮2連発が散見されるため,メキシチールを再開することとした(乙A1・208頁。 )(イ)同月19日午前にも,亡Dは「怖い」と言って震え出す状態にな,った。モニター上,心拍数は190台と上昇し,心室性期外収縮が2連発で見られ,呼吸も荒く,表情も硬い状態となったが,声を掛けると,すぐに落ち着いた。症状出現時に,同室の患児が膨らませていた風船が割れたというエピソードがあったため,被告病院担当医師らは,精神的な不安定さもあり,細かなことが誘因となって心拍数が上昇しやすい状況にある旨説明した(乙A1・211頁。 )ウ亡Dは,同月20日にも,表情が硬くなりふらつきが見られるようになり,同月22日に至っても,表情の変化が乏しい状態であった。被告病院担当医師らは,亡Dの症状が,心因性のものである可能性もあると疑い,亡Dに対して,1日個室で家族と過ごしたり,外泊することを許可し,外泊の前後の様子の変化を見て,経過を観察することとした(乙A1・214ないし216頁。亡Dは,同月22日,午前中を家族と共に個室で過)ごした後,同日午後1時30分ころから,家族で筑波山にドライブに外出し,同日夜は近くのホテルに外泊した(乙A1・214頁。 )- 65 -エ一方,K医師は,平成11年1月22日,上記の亡Dの症状につき,脳,,,の疾患の有無を検査するため同月25日に脳波検査CT検査を予約し28日 外泊した(乙A1・214頁。 )- 65 -エ一方,K医師は,平成11年1月22日,上記の亡Dの症状につき,脳,,,の疾患の有無を検査するため同月25日に脳波検査CT検査を予約し28日に小児心療内科の専門医であるV医師の外来を予定した(乙A1・215頁。 )亡Dは,同月22日,外出後も表情に変化がなく,また,歩行が困難で,。 ,,あるため原告Bに抱えられて移動する状態であったまた同月23日ホテルから帰院した際「家に帰りたい」と本人が言うとの訴えがあった,ため,被告病院のK医師は,亡Dに対し,自宅に一泊することを許可した(乙A1・214,217頁。 ),,,,,オ亡Dは同月24日自宅で外泊して帰院したが顔色は不良であり一点を見つめている感じで,直ぐにベッドに横になり,時々生あくびをする状態であった(乙A1・218頁。同月25日も,表情が硬く,自分)から話しかける状態ではなかったが,声掛けをすれば返答する状態であった(乙A1・219頁。 )被告病院担当医師らは,同日,亡Dの脳につき,脳波の検査及びCT検査を行ったところ,脳波には特段の異常は認められなかった(乙A1・220頁。 )また,K医師は,平成11年1月26日までには,前日撮影された脳CTの画像について,平成8年9月11日に撮影されたCTを参照して,明らかな器質的な病変は認めず,脳室等の形状にも著変を認めないと判断した(乙A1・220頁,乙A35の2。 )平成11年1月25日撮影のCT画像について,被告病院の放射線科の医師は,平成11年1月25日,異常なしとの報告をしており(乙A35の2,被告病院小児神経科専門医のO医師も,後方視的に見れば,脳幹)部と思われる部分に微少な病変が見られるものの,同日の段階で病変があると判断する 1月25日,異常なしとの報告をしており(乙A35の2,被告病院小児神経科専門医のO医師も,後方視的に見れば,脳幹)部と思われる部分に微少な病変が見られるものの,同日の段階で病変があると判断することは困難であるとしている(証人O医師(反訳書11・1- 66 -9頁。 ))カ亡Dは,平成11年1月26日から28日までの間,外泊した。帰院した同月28日,原告Bからは,家では発作はなく,表情も徐々に柔らかくなってきて,右足の硬直もだんだんほぐれてきたとの報告があった(乙A1・220,221頁。 )亡Dは,同月28日,心療内科のV医師の診察を受けた。V医師は,同月11日及び同月18日のエピソードなどから,急性ストレス障害と診断(ただし確定診断ではない)し,外泊で落ち着いてきているので,外泊。 を続ける,下肢について家庭でリハビリ的療法を行うなどして経過観察をする治療方針とした(乙A1・222,228頁,乙A28・3頁,証人K医師(反訳書10・4頁,22頁。 ))なお,この診断名は,器質的疾患を除外した上で,心因反応であるとすれば,術後の状況,術後において,ストレス反応の症状を呈することもあるとのV医師(小児の心療内科)の意見に従って付されたものである(証人K医師(反訳書10・22頁。 ))キ被告病院担当医師らは,同日ころ,亡Dの症状がストレスによるものとも考えられ,頻拍についても特に問題がなくなっているとして,亡Dに対して引き続き外泊を許可し,亡D及び原告らは,平成11年2月2日まで外泊した(乙A1・223頁。 )亡Dは,平成11年2月2日,外泊から帰院したが,その際,気分は暗く目を合わせようとせずほとんど話さないなどの症状が現れていた乙,,(A1・223頁。原告らは,再度外泊することを希望したため,被告病)院 1年2月2日,外泊から帰院したが,その際,気分は暗く目を合わせようとせずほとんど話さないなどの症状が現れていた乙,,(A1・223頁。原告らは,再度外泊することを希望したため,被告病)院では,ホルター心電図を装着することとして,2月4日まで外泊を許可した(乙A1・223頁,証人K医師(反訳書10・19頁。 )ク原告Bは,平成11年2月4日に外泊から帰院した際,亡Dが家でほと,,,,んど眠っており食事も23口しか食べなかった開眼したまま臥床し- 67 -親からの話しかけに対しても返答が悪い状態となったと報告した(乙A1・223頁。 )V医師は,同日,亡Dを診察し,亜昏迷状態ではないかと診断し,栄養状態の確保,最低限脱水の補正,セルシン及びトリプタノールの投与及び()。 ,脳波のチェックが必要であると判断した乙A1・224頁K医師は上記診察の結果を受けて,点滴による栄養剤の投与を開始するとともに,()。 セルシンのみの内服を翌日より開始することとした乙A1・224頁ケ亡Dは,平成11年2月5日には自力で座ることが不可能となり,仮面様の表情は変わらず,9日には再び昏迷が続き,午後からは,揺すっても開眼しない程度になった(乙A1・225,230頁,証人K医師(反訳書10・5頁。さらに翌10日になると,対光反射がマイナスとなっ))た(乙A1・234,250頁。 )コ亡Dの上記症状は同月11日になっても継続していたため,被告病院では,亡Dの脳波を検査し,MRI検査を行う予約をする計画を立て,その旨を原告らに説明した(乙A1・235,237頁。 ),,,,また同月12日V医師からメールで亡Dに対する食事等について現在の亡Dの状態で低栄養状態が進行すると,全身状態が極度に悪化するおそ らに説明した(乙A1・235,237頁。 ),,,,また同月12日V医師からメールで亡Dに対する食事等について現在の亡Dの状態で低栄養状態が進行すると,全身状態が極度に悪化するおそれがあり,経管栄養又は中心静脈栄養による非経口的な栄養(結論としては経管栄養)を行う必要があるとの回答がされた(乙A1・240頁。 )サ被告病院担当医師らは,上記の亡Dの状況に対し,脱水や低栄養がより意識状態の悪化を招くと判断し,点滴として,ソリタから,フィジオゾール及びビタミン剤であるソービタ一式に点滴ボトルを変更して投与を開始することとし,平成11年2月13日午前2時から,同剤の投与を開始し(,,())。 た乙A1・242頁乙A28・6頁証人K医師反訳書10・6頁ソービタの投与を開始した後の午前2時30分ころ,亡Dの心拍が14- 68 -0から150台に上昇したことから,点滴のボトルをフィジオゾールのみのものに変更したものの,心拍数に変動はなかった(乙A1・248頁,乙A28・5頁。 )その後午前3時ころになると,顔,首,体幹(上半身)に,直径5mmないし1cmの膨隆疹が発症したため,被告病院では,点滴のボトルを前日に使用していたソリタに変更した(乙A1・242,246頁,乙A28・4頁。 )亡Dは,午前3時30分ころ,血圧が機械では測定できない状態になったため,血圧を手動により測定したところ,血圧が76/53,SatO2が97%となり,脈も弱く,意識も声掛けに目でうっすらと反応する程度になっていた(乙A1・242,243頁,乙A28・4頁。 )上記症状はソービタに対するアレルギー反応と考えられたため,被告病院では,ステロイド剤であるソルコーテフ100mgを静注したところ,15分後の午前3時45分には,血圧が120/8 A28・4頁。 )上記症状はソービタに対するアレルギー反応と考えられたため,被告病院では,ステロイド剤であるソルコーテフ100mgを静注したところ,15分後の午前3時45分には,血圧が120/80台となり,心拍数も(,)。 ,,140台となった乙A1・242246頁その後被告病院ではアタラックスPの投与,痰の吸引を行ったところ,午前4時30分には,皮疹も消退傾向となった(乙A1・243頁。 ),,,サその後亡Dの症状は平成11年2月13日午前7時30分ころには血圧が収縮期で150,拡張期で98,心拍数は119,呼吸数が20回/分,体温が38.6度となり,対光反射,睫毛反射が消失し,呼び掛けにも無反応となるなど意識レベルが低下していたことから,被告病院担当医師らは,脳浮腫の可能性を考え,意識障害の精査のため,同日午前8時ころ,CT検査を行った(乙A1・245頁,乙A28・4頁。 )上記CT検査の結果,脳幹部に低吸収域が存在し,同所見は,平成11年1月25日に撮影されたCT画像にも存在していたものの,今回撮影されたものの方が明らかであった(乙A1・246,250頁。また,脳)- 69 -波も,活動性が低下し,徐波が2月10日よりも著明となっていた(乙A1・250頁。被告病院の脳神経外科の診断では,平成11年2月13)日午前2時以降のアレルギー反応による血圧低下が70/50であったことからすれば,それによる虚血性変化は考えにくい,というものであった(乙A1・246頁。 )また,被告病院における検討の結果,今回の症状では,ソービタと思われる薬剤アレルギーのエピソードに血圧低下があったものの,収縮期が70台であったこと,心停止又は心停止に近い状態がなかったことからすれば,このような症状から脳炎,脳症等の症状 状では,ソービタと思われる薬剤アレルギーのエピソードに血圧低下があったものの,収縮期が70台であったこと,心停止又は心停止に近い状態がなかったことからすれば,このような症状から脳炎,脳症等の症状を起こしたとは考えがたく,また,1月25日に撮影されたCT画像でも,脳幹部が低吸収域に見えることからすれば亡Dの脳浮腫は進行性のものではないかと判断された乙,(A1・251頁。 )O医師は,平成11年2月13日午後,亡Dの症状につき,CT画像で脳幹のうち橋上部から中脳までが黒く見えるが,この原因は不明であり,,,(,ミトコンドリア脳筋症多発性硬化症膠原病ただし後2者については年齢からすれば頻度は少ない)等の可能性があると判断した(乙A1・。 257頁。 )O医師らは,同日午後8時ころ,デカドロン(浮腫に対する治療薬)についてブリックテストを行って陰性であることを確認した後,原告らに対して,亡Dの症状については,脳幹の浮腫である可能性が否定できず,浮,,腫に対してデカドロンを使用するのであれば今から使用した方がよいが感染を助長する可能性がある等の副作用があることを説明した上で,デカドロンの使用を開始した(乙A1・259頁。 )シ亡Dは,平成11年2月14日には,深昏迷状態で対光反射はなくなっていた(乙A1・245頁。また,このとき,亡Dの血液検査の結果,)乳酸値が2.83,4.66と高値となっていた(乙A1・263,26- 70 -5頁。 )K医師は,亡Dの乳酸値が高いことから,代謝性疾患も鑑別診断の対象になるとして,さらに検査を行う必要があると考えていたが,高乳酸血症があるならば,脳幹に限局した梗塞様のCT所見もあるため,ミトコンドリア脳筋症の可能性が高くなると考えていた(乙A1・265頁。 )スその後 ,さらに検査を行う必要があると考えていたが,高乳酸血症があるならば,脳幹に限局した梗塞様のCT所見もあるため,ミトコンドリア脳筋症の可能性が高くなると考えていた(乙A1・265頁。 )スその後も,亡Dの意識障害は継続し,平成11年2月22日ころには,乳酸値等が高値(血中乳酸値31.5mg/dl,ピルビン酸2.37mg/dl)であって高乳酸血症であることが判明したたため,被告病院では,ミトコンドリア脳筋症が最も疑わしいと考え,今後も症状が改善されないようであれば,ステロイド・パルス療法や,ジクロロ酢酸ナトリウム(DCA)の投与を考えていることを原告Bに対して説明した(乙A1・291ないし321頁,乙A23・3頁。 )セ被告病院担当医師らは,平成11年2月26日,ミトコンドリア脳筋症の検査として,筋生検を施行したところ,赤色ぼろ繊維(ragged-redfi),。 ,()berが見られたが陽性率は低いとされた同日MRIフレア画像検査をしたところ,脳幹浮腫自体は軽快していたものの,病変の広がりは著明であり,小脳等に病変が散在的に認められた(乙A1・327,328頁。 )ソ被告病院担当医師らは,平成11年2月27日午前11時から,ミトコンドリア脳症に対する治療として,ジクロロ酢酸ナトリウムの投与を開始した(乙A1・329頁,証人O医師(反訳書11・17頁。 )),,. ,同投与開始後血中乳酸値は午前11時ころに45であったものが. ,. ,. 午後7時ころには35となり翌28日には1 3月1日には0697となり,髄液中の乳酸値も,5.87から1.51と低下した(乙A1・330ないし344頁。 )タ亡Dは,平成11年3月9日のMRI検査の結果,大脳及び小脳の病変- 71 -部に 日には0697となり,髄液中の乳酸値も,5.87から1.51と低下した(乙A1・330ないし344頁。 )タ亡Dは,平成11年3月9日のMRI検査の結果,大脳及び小脳の病変- 71 -部には縮小が見られ,脳の病変部は一部改善されたものと判断された(証人O医師(反訳書11・17頁。 ))チその後,亡Dに対しては,ステロイド・パルス療法が施行されたが亡Dは,意識を回復することなく,平成11年11月23日,被告病院において死亡した(乙A1・4頁。 )ツなお,平成17年2月8日,本訴の鑑定手続きにおいて,鑑定人W(以下「W鑑定人」という)及びU鑑定人が,亡Dの検体のミトコンドリア。 DNA(以下「mtDNA」という)塩基配列を調査したところ,ミト。 コンドリア脳筋症の患者の組織に存在し,MELAS,Leigh症候群の病的遺伝子として報告がある,13513番目の遺伝子情報がグアニンではなくアデニンになるという変異が,亡DのmtDNAに存在していることが判明した(鑑定・1ないし10頁,W鑑定人意見書(1),U鑑定人意見書(1) 。 ) 以上の事実を前提に,まず,争点(1)(アスペノンの投与自体の注意義務違反の有無)につき判断する。 (1)原告らは,平成10年12月14日ころの亡Dには致死性の不整脈はなく,アスペノンを投与する必要がなかったにもかかわらず,被告らは,亡Dに対し,小児に対して安全性が確立していないアスペノンを投与した注意義務違反があると主張する。 (2)確かに,平成10年12月10日から同月14日の亡Dの診療録には,,「」(),連日不整脈なしとの記載があること乙A1・124ないし134頁,「,。」アスペノンの添付文書には幼児小児に対する安全性は確立していないとの指摘があること(甲B1,2 「」(),連日不整脈なしとの記載があること乙A1・124ないし134頁,「,。」アスペノンの添付文書には幼児小児に対する安全性は確立していないとの指摘があること(甲B1,2)が認められる。 (3)しかしながら,前記1(1)に認定した事実及び証拠によれば,以下の点が認められる。 アアスペノン投与前の亡Dの状態は,上記ファロー四徴症根治術後の遠隔- 72 -期にあり,同時期は,頻脈等を原因とする突然死の可能性があるとされている時期にあった(ファロー四徴症根治術後の患者は,手術後の経過が良好であっても,遠隔期に一定の割合で突然死することが報告されており,その原因の一つとして心室性不整脈の関連が考えられている。また,。)亡Dは,乳児期のWPW症候群の既往があり,平成10年6月25日,副伝導路に対するカテーテル焼灼術が施行され,これによりデルタ波が消失した経緯があった(乙A1・2頁,乙B2・654頁,乙B8・1152頁,乙A24・2頁。 )イ亡Dには,前記1(1)のとおり,上記根治術の前後に,頻脈,心室性,上室性期外収縮などの症状が発症したため,平成10年11月13日から同月20日までの間,キシロカインの投与によって頻脈を抑制する治療が。 ,,,行われていたところがその後平成10年12月5日になると不整脈心拍の上昇,上室性期外収縮などが見られるようになり,翌6日からメキシチールの投与によっても,同月9日に至るまで,頻拍が認められる状態。 ,,であった被告病院ではこのような亡Dの不整脈の状態を判定するため同月10日から11日にかけてメキシチール投与下24時間ホルター心電図を実施し,その結果,同月14日には,心室性期外収縮12回,上室性期外収縮247回が認められ,心室性頻拍症については押さえられ め同月10日から11日にかけてメキシチール投与下24時間ホルター心電図を実施し,その結果,同月14日には,心室性期外収縮12回,上室性期外収縮247回が認められ,心室性頻拍症については押さえられていたものの,上室性頻拍が繰り返し見られるといった所見が出ていたというのである。 そうすると,この時点で亡Dには,メキシチールを投与してもコントロールできない不整脈,少なくとも上室性頻拍が頻発しており,これに心室性期外収縮も混じるという症状が見られたといえる。 ウそして,先天性心疾患の手術後に突然死が生じることがあり,その原因は明らかではないものも少なくないが,致死的不整脈が原因と考えられるものが多く,なかでも心室性頻脈性不整脈,上室性頻脈性不整脈,高度房- 73 -室ブロックなどが関連していると考えられていること(乙B7・221頁,術後の不整脈発生の主な危険因子として心室性又は上室性不整脈,)刺激伝導障害の発生が挙げられていること(乙B7.222頁,WPW),,,症候群患者のうち突然死のハイリスク群としては心房細動発作を有し副伝導路の順行性伝導能が良好な患者をハイリスク群と定義することが多いこと,この定義を満たさない場合であってもリスクがないわけではないこと(乙B1・156頁,ファロー四徴症根治術後の患者は,手術後の)経過が良好であっても,遠隔期に一定の割合で突然死することが報告されており,その原因の一つとして心室性不整脈の関連が考えられていること(乙B2・654頁,乙B8・1152頁,乙A24・2頁,若年者で)は,心房から心室への伝導が良好であるため,心房性の頻拍を生じると,心室頻拍,心室細動が誘発されて突然死に至る場合もあること(乙B9・1176頁,生活の質や罹病率を考えると,上室性頻脈性不整脈や徐脈)性不整脈に への伝導が良好であるため,心房性の頻拍を生じると,心室頻拍,心室細動が誘発されて突然死に至る場合もあること(乙B9・1176頁,生活の質や罹病率を考えると,上室性頻脈性不整脈や徐脈)性不整脈にも注意を払う必要があり(乙B2・655頁,上記手術後の),()術後管理として不整脈に対する管理が重要となること乙A24・2頁という医学的知見が存在した。 エ以上によれば,上室性頻脈は,通常であれば経過観察により対応できるものとされていたとしても,亡Dのように,ファロー四徴症の根治術後であって,突然死の可能性が指摘されており,しかも心筋の伝導障害であるWPW症候群に罹患していた経歴を有する患者であって,焼灼術後とはいえ,別の副伝導路による機序も直ちに否定できない状況であり(乙A1・2頁,また,若年者であって,心房から心室への伝導が良好であるとの)指摘があるような場合には,必ずしも上室性頻拍に対して経過観察していれば足りるというものではなく,上室性頻拍が心室性頻拍を引き起こし,その結果,突然死に至ることもあり得ることを想定して,メキシチール以外のコントロール可能な薬剤の投与が望ましいと判断することも,合理性- 74 -があると認められる。 オまた,薬剤の選択にあたって,アスペノンは,心室性頻拍にも,上室性頻拍にも適応のある薬剤として,小児期における不整脈の治療薬として,文献にも紹介されており(乙B4・856ないし860頁,亡Dに対す)る投与量は,文献等に記載のある投与量(静脈注射の場合で1.5~2m,。 ,g/kg経口の場合で初期に1~3mg/kg/日乙B4・860頁B7・228頁)の最低限に止まっていたと認められる。 以上のような経過に照らせば,上記のような症状経過を有する亡Dが頻拍による突然死となるのを避けるため,上室性 1~3mg/kg/日乙B4・860頁B7・228頁)の最低限に止まっていたと認められる。 以上のような経過に照らせば,上記のような症状経過を有する亡Dが頻拍による突然死となるのを避けるため,上室性頻拍に対処しつつ,心室への伝導を防ぐ必要性があると判断し,上室性頻拍及び心室性期外収縮のいずれにも対処しうる抗不整脈薬として,平成10年12月14日からアスペノンを,,投与したことは医師としての合理的な裁量の範囲内の判断であったといえ被告病院担当医師らに注意義務違反はない。 (4)アこの点に関し,原告らは,平成10年12月10日から14日にかけて,致死性の不整脈は見られなかったのであり,カルテにもその旨の記載があるとする。 しかしながら,カルテの記載は,いずれもその時点において不整脈が見られなかった旨の記載であるにすぎず,同記載があることをもって,上記の期間中,亡Dにまったく不整脈が見られなかったとはいえない上,上記認定のとおり,本件においては,上室性期外収縮,上室性頻拍に対処する必要が生じていたものであるから,致死性の不整脈というものが見られなかったからといって,アスペノンの投与を否定することにはならないというべきである。 イまた,原告らは,アスペノンが小児に対して安全性が確立していない薬剤であると主張し,効能書には,その旨の記載があることは前記認定のとおりであるが(甲B1,文献等には,小児に対してアスペノンを投与す)- 75 -る場合があることを前提として,推奨投与量を設定する記載も見られるところであって(平成9(1997)年に発刊された「小児科診療(乙B」7)によれば「アプリンジン(アスペノン)は,成人領域では新しいと,いえない抗不整脈薬であるが,最近小児の上室性頻拍にも使用されるようになった「わが国での報告では,小 れた「小児科診療(乙B」7)によれば「アプリンジン(アスペノン)は,成人領域では新しいと,いえない抗不整脈薬であるが,最近小児の上室性頻拍にも使用されるようになった「わが国での報告では,小児投与量は(中略)6歳以上は1。」~1.5mg/kg/dayの分3経口で,上室性頻拍7例中5例に有効で副作用はなかった」と記載されている。乙B7・228頁,安全性が)確立していない薬剤であるとしても,そのことによって直ちに亡Dに対してアスペノンを投与してはならないということにはならない。 (5)よって,アスペノンを投与したことについて,被告の義務違反を認めることはできない。 次に,引き続き,争点(4)(平成10年12月18日の時点でアスペノンの投薬を中止すべきであったのにこれを怠った注意義務違反)につき判断する。 (1)原告らは,平成10年12月18日の時点で,亡Dには,食欲不振,手の振戦,不眠などといった,アスペノンの副作用と思われる顕著な症状が見られたのであるから,この時点でアスペノンの投薬を中止すべきであったにもかかわらず,被告にはこれを怠った義務違反があると主張する。 (2)そこで,検討するに,確かに前記1(1)で認定したとおり,アスペノンの投与が継続していた18日には,手が震えるような症状,不眠があったことが認められ,また,アスペノンの重大な副作用として催不整脈等が,その他の副作用として,精神神経系として,振戦,めまい,ふらつき,しびれ感,言語障害などの症状が,消化器として,悪心,嘔吐,食欲不振などの症状が生じるとされ,本剤の投与中に手指振戦,めまい,ふらつき等の精神神経系症状が発現し,増悪する傾向がある場合には,直ちに減量又は投与を中止することとされていること(甲B1・1,2頁,甲B2・83,84頁)が認められる。 - 中に手指振戦,めまい,ふらつき等の精神神経系症状が発現し,増悪する傾向がある場合には,直ちに減量又は投与を中止することとされていること(甲B1・1,2頁,甲B2・83,84頁)が認められる。 - 76 -(3)しかしながら,平成10年12月14日ころからアスペノンを投与すべき必要性があったことは前記2に認定したとおりであり,現実にその効果は生じていたのであるから,これを中止するかどうかは,その必要性と副作用の重大性との如何に関わるところ,同月18日における手の振戦は,診療録等に記載されていない程度のものであり,不眠についても,同月18日の時点では,その程度が,抗不整脈薬を直ちに中止しなければならないほどに重大なものであったとまでは認められないから,これらの臨床所見から直ちにアスペノンの副作用が発症したと疑って,アスペノンの投与を中止すべき義務があるとまではいえない。 また,アスペノンの投与後,同月18日の時点で,亡Dに不整脈が生じていなかったとしても,それは,上室性頻拍がアスペノンによって抑制されている状態であるとも考えられるから,上室性頻拍に対する治療を継続すべきか否かについて検討するため,この時点でアスペノンの投与を継続しつつ経過を観察することとしても,被告病院担当医師らに注意義務違反があるものと認めることはできない。 なお,前記認定のとおり,亡Dには,その後同月19日に嘔吐,同月20日に眼瞼浮腫が発現したため,その時点で,被告病院の医師らはアスペノン,,,,の副作用を疑い投薬を中止しているがそのことから同月18日時点で直ちにアスペノンを中止すべきであったと認めることはできない。 (4)よって,同月18日の時点で,アスペノンの投薬を中止しなかったことについて,被告の義務違反を認めることはできない。 次に,争 直ちにアスペノンを中止すべきであったと認めることはできない。 (4)よって,同月18日の時点で,アスペノンの投薬を中止しなかったことについて,被告の義務違反を認めることはできない。 次に,争点(3)(プリンペランの投与自体の注意義務違反)について判断する。 (1)原告らは,被告には,亡Dが薬剤アレルギーを起こしやすい体質であることを十分認識していたにもかかわらず,嘔吐症状に対して,小児に対して錐体外路症状が発現させやすいとされているプリンペランを投与した注意義- 77 -務違反があると主張する。 (2)確かに,前記1(1)で認定したとおり,平成10年12月17日から18日にかけて,亡Dには手のふるえや食欲不振,不眠といった症状がみられたこと,同月19日の朝から昼過ぎにかけて嘔吐症状が生じており,これらがアスペノンの副作用とも合致することからすると,被告病院担当医師は,同月19日の時点で,これらの症状がアスペノンの副作用によるものか疑うことができたとも考えられる。また,プリンペラン(メトクロプラミド)は,消化機能を司る脳幹部に作用して,消化器の機能的反応又は運動異常を改善し,悪心,嘔吐,食欲不振,腹部膨満感等の症状を緩解する薬剤であり(甲B3・1頁,プリンペランの成分に対し過敏症の既往歴のある患者に対し),,,ては使用が禁忌とされ小児に対しては錐体外路症状が発現しやすいため過量投与にならないように注意し(1日当たり0.38~0.53mg/kg。甲B3・1頁,特に,脱水状態,発熱時には注意することとされてい)ること(甲B3・1頁,B4・2160頁,B9・408頁,重大な副作)用として,まれに(0.1%未満,咽頭浮腫,呼吸困難などのアナフィラ)キシー様症状や,意識障害が現れることがあり,その他の副作用として,まれ 1頁,B4・2160頁,B9・408頁,重大な副作)用として,まれに(0.1%未満,咽頭浮腫,呼吸困難などのアナフィラ)キシー様症状や,意識障害が現れることがあり,その他の副作用として,まれに手指振戦,筋硬直,頚部等の攣縮,眼球回転発作等が現れることがあること(甲B3・1頁裏)という医学的知見が存すること,亡Dは,平成10年11月8日に投与されたγグロブリンによって,アナフィラキシーとも思われる症状を呈していたことを併せ考えれば,被告病院担当医師は,この時点で嘔吐症状に対して,プリンペランを投与せず,アスペノンを中止するという選択肢も十分に考えられるところである。 (3)しかしながら,プリンペランは,副作用も指摘されているものの,鎮吐剤としては,小児科領域においても多く使用されている薬剤であって,特殊()。 ,,なものとはいえない乙B16・2005頁またアスペノンの投与は亡Dに生じていた上室性期外収縮や上室性頻拍に対処するためのものであ- 78 -り,頻拍による突然死を避けるための薬剤とされていたことは前記2で判断したとおりであるところ,その効果や,継続の必要性については,未だ判定されていなかったこと,亡Dに対するアスペノンの投与量は,成書に記載された小児に対する投与量のうちの最低量であり,アスペノンの副作用として嘔吐が挙げられてはいるものの,成書(甲B2・84頁)によれば,精神神経系症状が発現し,増悪する傾向がある場合には中止すると記載されているのみであって,精神神経症状が発現したら直ちに中止すべきであるとはされていないことからすれば,亡Dに嘔吐の症状が生じた時点で,不整脈への対処を優先してアスペノンの投与を継続しつつ,対症的に嘔吐に対してプリンペランを投与するといった選択肢を採用したとしても,直ちにその判断が いことからすれば,亡Dに嘔吐の症状が生じた時点で,不整脈への対処を優先してアスペノンの投与を継続しつつ,対症的に嘔吐に対してプリンペランを投与するといった選択肢を採用したとしても,直ちにその判断が医師としての裁量を逸脱したものとはいえず,被告病院担当医師らに注意義務違反があったとまではいえない。 また,亡Dには,γグロブリンでアナフィキラシーとも思われる症状が見られたこと,アスペノンの投与後,嘔吐の症状が生じたことは前記認定のとおりであるが,そのことから直ちにプリンペラン投与が禁忌とされるわけではないから(甲B3,4,これにより,前記のように,アスペノンの投与)を継続しつつ,嘔吐に対してプリンペランを投与するという選択肢を採用したことが,医師としての注意義務違反になるとは認められない。 (4)よって,同月19日,プリンぺランを投与したことについて,被告の義務違反を認めることはできない。 ,() 次に争点(5)プリンペランの投与を中止しなかった注意義務違反の有無につき判断する。 (1)原告らは,平成10年12月20日の夕方に嘔吐が治まった時点又は遅くともプリンペランの副作用と考えられる錐体外路症状が発現した時点で,直ちにプリンペランの投与を中止すべきであったにもかかわらず,被告病院担当医師らにはこれを怠った注意義務違反があると主張する。 - 79 -(2)そこで検討するに,前記1(2)に認定のとおり,被告病院は,平成10年12月14日から亡Dの不整脈に対しアスペノンを投与することにより対応していたところ,同月19日に嘔吐症状が生じたため,これに対処することを目的として同日にプリンペランを投与し,その後,嘔吐は治まっていたものの,平成10年12月20日に至って,眼瞼浮腫,手の振戦,意識レベルの低下といった症状が発症した 生じたため,これに対処することを目的として同日にプリンペランを投与し,その後,嘔吐は治まっていたものの,平成10年12月20日に至って,眼瞼浮腫,手の振戦,意識レベルの低下といった症状が発症したことが認められることからすれば,プリンペランの副作用に関する前記4の医学的知見に照らし,この時点でプリンペランの副作用が生じているのではないかとの疑いを抱く余地も十分にあったところではある。 (3)しかしながら,前記3に認定のとおり,当時投与していたアスペノンの副作用にも,嘔吐症状以外に,手の振戦などの精神神経系症状が挙げられているところ,亡Dには,プリンペランを投与する前から,手の振戦,嘔吐といった副作用と見られるような症状が出ていたこと,原告Bも「アスペノ,ンを内服し始めたころから手の振戦があった」と訴えていたことが認められるから,被告病院において,亡Dの前記症状が,アスペノンの副作用による,,ものではないかとの疑念を抱きまずアスペノンの投与を先行して中止してそのまま経過を観察するという選択を行うことにも,十分合理性が認められ,,,ることからすれば平成10年12月20の時点ではアスペノンを中止しプリンペランの投与を継続して経過観察するといった判断を行うこともまた,医師としての裁量の範囲内の判断であるといえ,この時点でプリンペランの投与を中止しなかったとしても,医師としての注意義務に違反したとはいえない。 なお,前記1(2)に認定のとおり,その後,平成10年12月21日の午前中になると,亡Dは,手の振戦はあったものの活気が上昇している状態となり,同日昼の昼食後にも嘔吐することはなかったなど,症状が落ち着いた状態であったが,同日午後2時に至ってろれつが回らない,手の振戦が大き- 80 -くなるなど,アスペノンを中止したにもか 状態となり,同日昼の昼食後にも嘔吐することはなかったなど,症状が落ち着いた状態であったが,同日午後2時に至ってろれつが回らない,手の振戦が大き- 80 -くなるなど,アスペノンを中止したにもかかわらず,神経系統の症状を疑わせる症状が大きくなったことから,被告病院担当医師らは,同日午後3時20分に,プリンペランの副作用を疑って,プリンペランの投与を中止したことが認められる。しかしながら,これらの経緯に照らせば,被告病院としては,プリンペランの副作用と思われる錐体外路症状と見られる症状が明確になったことから,直ちにプリンペランの投与を中止したものといえ,その時期が医師としての注意義務に違反して遅れたものと言うことはできない。 (4)また,原告らは,亡Dには,γグロブリンにアナフィキラシーの症状を呈するなど,プリンペランを投与することによって副作用が発現する可能性が高かったのであるから,嘔吐が治まった場合には,直ちにプリンペランの投与を中止すべき注意義務があったと主張する。しかしながら,γグロブリンの投与によってアナフィラキシーが生じていたとしても,そのことから直ちに亡Dがプリンペランに対してアナフィラキシーを起こしやすくなると認めるに足りる証拠はないし,前記のとおり亡Dは,同月19日と20日に嘔吐を繰り返していたのであり,それに対してプリンペランが投与されたのであるから,その後嘔吐が治まったからといって,それがプリンペランの効果であるかを見極める必要があるから,直ちにプリンペランの投与を中止すべき注意義務があると認めることは相当ではない。 なお,原告らは,被告のG医師が,小児科等の他の医師に相談することなく,独断でプリンペランの投与を継続したことを問題とするが,他の医師に相談しなかったことが,直ちに診療契約上の義務違反となるわけでは なお,原告らは,被告のG医師が,小児科等の他の医師に相談することなく,独断でプリンペランの投与を継続したことを問題とするが,他の医師に相談しなかったことが,直ちに診療契約上の義務違反となるわけではないから,原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,G医師がプリンペランの大量投与を継続したと主張するが,前記1(2)に認定のとおり,プリンペランは,同月20日から21日にかけて合計8mgが投与されていたものであって(乙A1・153頁,小)児の場合1日0.38から0.53mg/kg(亡Dの体重(約15kg),- 81 -で換算すると1日5.7mgから7.95mg)の用量基準(甲B3)に照らして過量とは言えないから,原告らの主張は採用できない。 (5)よって,同月20日,被告が,プリンペランの投与を中止しなかった義務違反を認めることはできない。 次に,争点(2)(インデラルの投与自体の注意義務違反の有無)につき判断する。 (1)原告らは,亡Dに重篤な不整脈が発生していなかったこと,アナフィラキシーの履歴があったことから,亡Dに対して,平成11年1月5日からインデラルを投与したことには,注意義務違反があると主張する。 ,,,,(2)確かに証拠によれば平成11年1月1日から3日まで診療録には時折心拍不整ありとの看護師の記載が見られる程度で,医師による不整脈についての記載が存しないこと(乙A1・179頁,前記1(1)に認定のよ)うに,平成10年11月8日,亡Dは,γグロブリンの投与に対し,アナフィキラシー様の症状を呈したことがあったこと,インデラル(塩酸)プロ(プラノロール)は,代表的なβ遮断剤であり,本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者,気管支喘息,気管支痙攣のおそれのある患者には禁忌とされていること(甲B5 あったこと,インデラル(塩酸)プロ(プラノロール)は,代表的なβ遮断剤であり,本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者,気管支喘息,気管支痙攣のおそれのある患者には禁忌とされていること(甲B5・1頁表,乙B17・15頁,重大な副作用として),(. ),(. )はときに 1ないし5%気管支痙攣が生じまれに 1%未満呼吸困難,喘鳴が現れることがあること(甲B5・1頁裏,甲B6・1901頁,乙B17・25頁,アナフィラキシーの既往歴のある患者で,本剤)又は他のβ遮断剤投与中に発生したアナフィラキシー反応の増悪を示し,また,エピネフリンによる治療に抵抗性を示したとの報告例があるとされていること(甲B5・2頁表,乙B17・31頁,平成12年10月改訂にか)(),,,かるインデラルの能書甲B6にはインデラルの低出生体重児新生児,()乳児幼児又は小児に対する安全性は確立していない甲B6・1902頁と記載されていることが認められる。 - 82 -,,,,そして亡Dにはインデラルを投与した1月5日喘鳴が見られたためE医師がインデラルの投与を中止したこと,同月7日には発熱と喘鳴,咳が見られたため,インデラルの投与が再度中止され,その後同月13日再開されたものの,同月16日に右目浮腫,口唇膨脹の症状が出たため,インデラルの副作用と判断され,中止されたことが認められる。 (3)そこで,まず,インデラル投与前に重篤な不整脈があったかが問題となる。 前記1(1)ないし(3)に認定したとおり,亡Dに対してはファロー四徴症根治術後,上室性頻拍等の不整脈症状が見られており,これに対して治療をしなければならない状態であったが,前記3に認定のとおり,アスペノンを投与した後,亡Dには手指の振戦症状な 対してはファロー四徴症根治術後,上室性頻拍等の不整脈症状が見られており,これに対して治療をしなければならない状態であったが,前記3に認定のとおり,アスペノンを投与した後,亡Dには手指の振戦症状など,アスペノンの副作用を疑わせる所見が現れたことから,アスペノンの投与を中止したこと,しかし,その後,前記不整脈症状の原因が解決したわけではなく,平成11年1月2日ころからは,亡Dに再び心拍間隔の不整脈と思われる症状が現れていたこと(原告らは,同日ころから看護師の記述には不整脈の記載があるが,G医師の記述には不整脈についての記載がないから,不整脈を認めることはできない旨主張する。しかしながら,不整脈の事実について全て医師が診療録に記載する必要があるとまではいえず,看護師が記載している以上,不整脈の事実はあったものと認めるのが相当である,また,平成11年1月4日ころまで。)に判明した平成10年12月21日に行ったホルター心電図の結果によれば,心室性期外収縮は見られなかったものの,上室性期外収縮が7080回,。 もあり上室性頻拍がほぼ終日頻発している状態であったことが認められる以上によれば,平成11年1月4日,亡Dに,抗不整脈薬の投与が必要な,,,不整脈が依然として続いていると判断しこのための治療薬として高血圧狭心症,不整脈の治療に広く用いられており,心房及び心室の期外収縮,発作性頻拍の予防,頻拍性心房細動の予防などに効果を有していている(甲B- 83 -5・1頁,乙B17・7頁)インデラルを採用することとした被告病院担当医師らの判断に,不合理な点は認められないと言うべきである。 また,前記認定のとおり,被告病院担当医師らは,同月5日,亡Dにこれを投与するとともに,インデラルの有無により不整脈がどうなるかをホルター心電図により測定 不合理な点は認められないと言うべきである。 また,前記認定のとおり,被告病院担当医師らは,同月5日,亡Dにこれを投与するとともに,インデラルの有無により不整脈がどうなるかをホルター心電図により測定したところ,インデラルを投与したにもかかわらず,な,,,お亡Dには心室性の期外収縮が2回上室性期外収縮が4403回見られ上室性の頻拍に加え,房室ブロックを示唆する波形も見られた。 以上によれば,抗不整脈薬の投与が必要な重篤な不整脈があると判断した被告病院担当医師らの判断は,合理的なものと認められる。 そして,文献等には,小児に対してインデラルを投与する場合があることを前提として,推奨投与量を設定する記載も見られること(乙B4・861頁,投与量は,経口の場合2から4mg/kg/日であるとされていると)(),,()ころ乙B4・861頁投与されたのは亡Dの体重当時約15kgに照らし最低投与量(2mg/kg)の約半量(1mg/kg)であったことが認められるから,投与方法にも問題はないと認められる。 (4)次に,前記上記2(2)のとおり,インデラルは,アナフィラキシーの既往症のある患者について,アナフィラキシー反応の増悪を示した報告例があるとする文献の指摘との関係が問題となる。 しかしながら,上記記載は,インデラルの投与中に発生したアナフィラキシー反応が増悪したとの報告であって,アナフィラキシーの既往歴のある患者に対して,インデラルの投与が禁忌とされているものではなく,投与の是非は,その必要性と副作用の危険性とを考慮して判断されることになるところ,前記のように,その必要性は肯定されていること,原告Bがそれまで頻拍発作に対してインデラルの処方を受けたことがある旨述べていたことに照らせば,亡Dがγグロブリンの投与によって,アナフィキ るところ,前記のように,その必要性は肯定されていること,原告Bがそれまで頻拍発作に対してインデラルの処方を受けたことがある旨述べていたことに照らせば,亡Dがγグロブリンの投与によって,アナフィキラシー様の症状を呈したことがあったと認められることを考慮しても,インデラルの投与を選- 84 -択した被告病院担当医師らの判断に,不合理な点は認められない。 (5)以上の事実に照らせば,被告病院担当医師らが,平成11年1月5日の時点でインデラルを投与したことが,医師としての裁量を逸脱し注意義務違反であるとまでは認められないというべきである。 次に,争点(6)(インデラルの投与を中止しなかった注意義務違反の有無)について判断する。 (1)原告らは,平成11年1月5日に亡Dに対してインデラルを投与したところ,翌日には副作用と見られる咳,喘鳴の症状が見られた上,亡Dは既にγグロブリンによってアナフィラキシー反応を示していたのであるから,同日に投薬を中止した後に再開すべきではなく,また,遅くとも平成11年1月7日以降,インデラルの投与を再開すべきではなかったと主張する。 (2)そして,前記1(3)に認定のとおり,平成11年1月5日,6日にインデラルを投与した後に,亡Dに咳,喘鳴,発熱といった,インデラルの副作用とされている症状が現れたこと,同月13日からインデラルを再開したところ,同月16日ころからは,亡Dに眼瞼浮腫,口唇浮腫,多呼吸等の症状も現れたことが認められる。 しかしながら,前記のとおり,亡Dには,同月5日からのホルター心電図の結果,心室性期外収縮が2回,上室性期外収縮が4403回現れたほか,全体的に不整リズムが目立ち,以前は認められていなかった房室ブロックも見られる状態で,治療が必要な状態と判断されていた上,被告病院では,亡Dの喘 外収縮が2回,上室性期外収縮が4403回現れたほか,全体的に不整リズムが目立ち,以前は認められていなかった房室ブロックも見られる状態で,治療が必要な状態と判断されていた上,被告病院では,亡Dの喘鳴等がインデラルの副作用である気管支攣縮によるものか,それともそれ以外の症状によるものであるのかについて,インデラルを中止して様子を見た上で,インデラル中止後にも咳が継続していたことから,インデラルの副作用によるものとは考えにくいと判断したのであり,これらの被告病院の判断が不合理であるとはいえない。 また,被告病院は,同月13日に亡Dの症状経過を観察し,咳等の症状が- 85 -治まった後にインデラルの投与を再開したのであって,上記の症状経過及び亡Dには対処すべき不整脈が継続していたことに照らせば,被告病院が平成11年1月13日からインデラルの投与を再開したことが,医師としての裁量を逸脱したものということはできない。 さらに,被告病院は,前記1(3)のとおり,平成11年1月14日から16日までの間経過を観察し,14日及び15日には,嘔吐等の症状が見られたものの,小児科医の診察や,その後の亡Dの様子などから特に問題ないと把握し,16日昼ころより発症した眼瞼浮腫,口唇浮腫,多呼吸などの症状から,インデラルの副作用を疑って同日夕方の投与を最後にインデラルの投与を中止したのであって,このような経過に照らせば,インデラルの投与の中止につき,被告病院担当医師らが裁量を逸脱したものということはできない。 (3)よって,被告病院担当医師らに,インデラルの投与を中止しなかった義務違反があるとも認められない。 次に,争点(7)(ソービタの投与に関する注意義務違反の有無)について判断する。 (1)原告らは,平成11年2月13日のソービタの投与に関し,亡Dの既 なかった義務違反があるとも認められない。 次に,争点(7)(ソービタの投与に関する注意義務違反の有無)について判断する。 (1)原告らは,平成11年2月13日のソービタの投与に関し,亡Dの既往歴及び体質に配慮して,薬剤投与の判断に際して十分な注意を払い,投与後の副作用を慎重に経過観察すべきであったにもかかわらず,被告病院担当医師らは,これらの注意義務に違反したと主張する。 (2)証拠によれば,ソービタは,経口,経腸管栄養補給が不能又は不十分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない場合のビタミン補給に適応となる高カロリー輸液用総合ビタミン剤の一種であること(甲B7・764頁,本)剤又は本剤配合成分に過敏症の既往歴のある患者に対しての投与は禁忌であり,小児に対しては,慎重投与とされていること(甲B7・765頁,重)大な副作用として,ショック,アナフィラキシー様症状を来すことがあるた- 86 -め,観察を十分に行い,血圧低下,意識障害,呼吸困難,チアノーゼ,悪心等が現れた場合には,直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこととされていること(甲B7・765頁,亡Dは,平成11月2月13日午前2時か)らソービタの投与を開始した後,午後3時ころから膨隆疹が発症し,血圧低下,意識レベルの低下など,アレルギー反応が現れたことが認められる。 (3)そこで検討するに,前記1(4)認定のとおり,亡Dは,平成11年2月4日に外泊から帰って以降,同月5日自力で坐ることができず,同月9日混迷が続き,午後からは開眼しない状態となり,同月10日には対光反射がマイナスとなってその状態が継続したため,摂食ができない状態で,栄養状態を確保する必要があったところ,同月12日に,V医師から,低栄養状態が継続すると全身状態が極度に悪化するおそれがあり,経管栄養又は ナスとなってその状態が継続したため,摂食ができない状態で,栄養状態を確保する必要があったところ,同月12日に,V医師から,低栄養状態が継続すると全身状態が極度に悪化するおそれがあり,経管栄養又は中心静脈栄養を行う必要があるという意見が出されたことから,K医師は,同月13日にビタミン剤であるソービタを投与することとしたことが認められ,同時点において,亡Dの栄養状態を確保するため,栄養剤を投与する必要があったと認められる。 そして,ソービタは副作用としてアナフィラキシー様症状を来すことがあること,亡Dは,以前γグロブリンの投与によってアナフィラキシー様の症状が出たり,薬剤に反応し易い傾向を示していたことは認められるものの,そもそもソービタがビタミン剤の中でも特にアナフィラキシーを引き起こし易い薬剤であると認めるに足りる証拠はなく(鑑定人X(以下「X鑑定人」。),,,というはアナフィラキシーの発現は亡Dの体質による要素が大きくソービタが他のビタミン剤と比較して有意にアナフィラキシーショックを起こしやすいかどうかは明確でないと証言する。鑑定・82頁,また,能書)にも,アナフィラキシーの発症に注意して,観察を十分に行うこととされているのであって,必ずしも禁忌とされているものでもないこと(前記認定のとおり,能書では,ソービタ又はソービタ配合成分に過敏症の既往のある患- 87 -者には禁忌であるが,亡Dはこれに該当していなかった)が認められる。 。 そうすると,被告病院において,平成11年2月13日の時点で亡Dに対してソービタを投与したことに,注意義務違反はないというべきである。 (4)また,ソービタを投与した後の経過観察義務違反について検討するに,確かにU鑑定人らが指摘するとおり,投薬の時間については,午前2時といった医師や ことに,注意義務違反はないというべきである。 (4)また,ソービタを投与した後の経過観察義務違反について検討するに,確かにU鑑定人らが指摘するとおり,投薬の時間については,午前2時といった医師や看護師の監視が十分でない時間帯ではなく,監視のしやすい時間帯に投与を開始した方がより適切であったと解される面はある。しかしながら,本件では,亡Dに,同日午後2時からソービタが投与された後,午前3時ころに顔,首,体幹に膨隆疹が現れたため,点滴のボトルを変更し,午前3時30分ころ,血圧低下等が見られたため,被告病院担当医師らは,この症状をソービタに対するアレルギー反応と考え,直ちにステロイド剤を静注し,午前3時45分には,血圧120/80台,心拍数140台まで回復する状態にしているのであるから(乙A1・242,243頁,被告病院担)当医師らに経過観察を怠った注意義務違反があったものと認めることはできない。 (5)よって,ソービタの投与に関して,被告病院担当医師らに注意義務違反があったと認めることもできない。 ,() 次に争点(8)脳幹浮腫への対応が遅れたことによる注意義務違反の有無について検討する。 (1)平成11月1月25日のCT画像診断についてアまず,原告らは,被告病院担当医師らが,平成11年1月25日,CT画像所見及びそれまでの臨床所見から,亡Dの器質的疾患を疑うべきであったと主張する。 確かに,前記1(4)に認定のとおり,亡Dは,平成11年1月17日ころから,眼瞼や口唇の浮腫などに加え,視線が合わない,呼吸が荒いなどの症状が発症し,同月18日にも,顔面が蒼白になったり,右下肢の硬直- 88 -などの症状が生じたこと,同月16日から19日の間には,多呼吸や,怖いと叫ぶ,意識レベルの低下,脈拍上昇など,明らかに脳の異常を 症し,同月18日にも,顔面が蒼白になったり,右下肢の硬直- 88 -などの症状が生じたこと,同月16日から19日の間には,多呼吸や,怖いと叫ぶ,意識レベルの低下,脈拍上昇など,明らかに脳の異常を疑わせるエピソードが相次いでいたこと,同月24日には,表情が硬く,声を掛ければ返答する程度の状態となるに至ったこと,そのため,K医師も,脳の疾患を疑い,同月25日に脳のCT検査をしたことが認められる。 ,,イしかしながら平成11年1月25日に撮影されたCT画像については鑑定の結果によれば,軽度の脳室の拡大及び非常に軽度な脳の萎縮が認められるものの(鑑定・13ないし15頁,このCT画像のみから脳浮腫)等の病変その他の異常所見があると診断することは困難であることが認められる(鑑定・15,20,22頁。 )したがって,被告病院担当医師らにおいて,同月25日の時点で,亡Dの脳に器質的疾患があったと判断することは困難であったと言わざるをえず,この点に,被告病院担当医師らの注意義務違反があったとは認められない。 (2)検査継続義務についてア原告らは,かかる器質的疾患の症状がある中でCTで異常が発見されない場合には,被告病院担当医師らは,さらに脳に問題が起きているという可能性を検討し,検査を継続してMRI検査へと進むべきであったと主張する。 イそこで検討するに,鑑定において,鑑定人Yは,神経症状があってCT画像上異常がない場合には,次の手段としてMRI検査を行うか神経の専門医に改めて相談するなどの処置をとる余地があったとし(鑑定・23,頁検査等を行っていれば脳幹浮腫を診断できた可能性が高いとする鑑),(定・26,28,29頁。また,W鑑定人(鑑定・24,27頁,X))鑑定人(鑑定・25,29頁)及びU鑑定人も(鑑定・26頁,M を行っていれば脳幹浮腫を診断できた可能性が高いとする鑑),(定・26,28,29頁。また,W鑑定人(鑑定・24,27頁,X))鑑定人(鑑定・25,29頁)及びU鑑定人も(鑑定・26頁,MRI)検査の必要性とそれにより得られた結果の可能性について同様の意見を述- 89 -べている。 ウそこで,まず,1月25日段階における亡Dの病状から,この時点で,直ちにMRI検査をすべき注意義務違反があったといえるかについて判断する。 前記1(3),(4)で認定したように,亡Dは,平成10年12月19日に手の振戦が見られ,同月20日意識レベルが低下し,振戦,眼瞼浮腫の症状が出たためアスペノンの投与が中止され,同月21日にも手指の振戦,ふらつき,眼球回転などといった,脳の器質的疾患を疑わせる所見が生じていたこと,その後,症状は少し良くなり経過観察していたが,平成11年1月5日にインデラルを投与した後喘鳴がみられ,インデラルの投与を中止後一時軽快したこと,同月13日からインデラルの投与を再開したところ,活気がでるなど症状は良くなっていたが,同月16日に心房性期外収縮,右目浮腫,口唇膨脹等の症状が出たため再度インデラルの投与が中止となったこと,その後,一時的に心拍数が200,190となり,心室性期外収縮があったものの,被告病院担当医師らは,精神的不安定が原因と考え,同月21日外出,同月23日から24日に外泊をしたこと,外泊,,,,から帰院後医師の診察では眼球回転異常顔面蒼白等は無かったこと同月25日,表情が硬く,右下肢に軽度の硬直が見られたが,脳波検査では異常は見られなかったことが認められる。 そうすると,平成11年1月25日の段階では,被告病院担当医師らとしては,平成10年12月に,振戦,眼瞼浮腫,眼球回転等の脳の器質的疾 られたが,脳波検査では異常は見られなかったことが認められる。 そうすると,平成11年1月25日の段階では,被告病院担当医師らとしては,平成10年12月に,振戦,眼瞼浮腫,眼球回転等の脳の器質的疾患を疑わせる所見があり,平成11年1月中旬ころまでに,喘鳴や眼瞼浮腫等の所見が出ていることを踏まえて,その原因については,薬剤の副作用であるのか,別の疾患であるのかについて未だ明確になっていなかったことから,器質的疾患をも疑って,脳波,CT検査,小児神経内科の医師への相談を検討するなど,原因究明の努力を継続していたものであるこ- 90 -とが認められる。そして,副作用が生じたと思われる薬剤の投与を中止した後には脳の器質的疾患を疑わせる特段の所見はなかったものと認められること(なお,原告らは,インデラルの再投与を中止した平成11年1月17日から同月25日までにも亡Dに眼球回転異常,顔面蒼白等の症状がでていた旨主張しているが,これを被告病院担当医師らが確認していたと認めるに足りる証拠はない,前記のとおり,平成11年1月25日の。)時点で撮影されたCT画像については,これのみで明らかな病変があったと判断することはできないものであり,同日の検査で脳波の異常もなかったのであり,前記認定のように,この時点で脳の器質的疾患を疑わせる特段の所見も見られなかったことに照らせば,被告病院のK医師が,MRI検査はCTと異なって時間がかかる検査であり,呼吸や状態が悪い場合に,,は撮影のために鎮静させるだけでも具合が悪くなることもあることから今回はひとまずCT検査を行うこととした(証人K医師(反訳書10・3,)),,頁17頁と判断したことも不合理とは言えず同月25日の時点で直ちにMRI検査をすべき注意義務があるとまで認めることはできない。 ( を行うこととした(証人K医師(反訳書10・3,)),,頁17頁と判断したことも不合理とは言えず同月25日の時点で直ちにMRI検査をすべき注意義務があるとまで認めることはできない。 (3)その後の検査継続義務についてアさらに,原告らは,当時,亡Dの治療は外科及び内科の医師によってのみ行われており,脳幹の病変を扱う脳神経専門医による専門的な検討はなされていなかったが,被告病院担当医師らは,専門的検討を加えて,MRI等の検査を継続すべきであり,脳幹浮腫への対応が遅れた注意義務違反があったと主張する。 イそこで,同年1月25日から,同年2月13日までの亡Dの症状を検討すると,前記1(4)に認定のとおり,被告病院担当医師らは,脳波の検査及び頭部CT検査の結果,特に脳には障害がないものと考え,亡Dの症状につき,同年1月28日には急性ストレス障害と診断したうえ,ストレスの軽減を図るため,当時不整脈が改善されていたこともあり,同月26日- 91 -から28日まで亡Dの外泊を許可したこと,一旦帰院した後も,継続して同年2月2日まで外泊を許可したこと,ところが,亡Dは,同日帰院した時点でも気分が暗く,ほとんど話さないなどの症状が現れていたこと,そこで,担当医師は,原告らが再度外泊を希望したこともあって,同日から引き続き同月4日まで外泊を許可したこと,亡Dは,同年2月4日に帰院した際には,亜昏迷状態であると診断され,栄養状態の確保,セルシン及びトリプタノールの投与及び脳波のチェックが必要であると判断されたこと,同月5日には自力で座ることが不可能となり,同月9日には昏迷が続き,揺すっても開眼しない状態となり,同月10日は対光反射がマイナスとなったこと,このような状態が継続したために,同月11日には,脳波の検査,MRIの検査が必要であ 可能となり,同月9日には昏迷が続き,揺すっても開眼しない状態となり,同月10日は対光反射がマイナスとなったこと,このような状態が継続したために,同月11日には,脳波の検査,MRIの検査が必要であると判断していたところ,同月12日にはV医師からの指摘を受け,同月13日にソービタを投与するに至り,その後は前記認定のとおり意識が回復しない状況に至ったことを認めることができる。 このように,被告病院担当医師らは,平成11年1月25日時点のCTで脳の器質的疾患が確認できなかったことから,急性ストレス障害と診断して,亡Dに対し,家族とともに過ごすよう外泊等の処置を取ったのであるが,外泊から帰院した2月4日にも亡Dの症状は改善せず,むしろ亜昏迷状態と診断され,さらにその症状は改善されることなく悪化していき,同月9日には揺すっても開眼しない状態となったのであるから,その原因につき,急性ストレス障害との診断が妥当しないことが判明した時点,すなわち,遅くとも亡Dの昏迷が続き開眼しないような状態になった平成11年2月9日時点においては,被告病院担当医師らとしては,亡Dの症状につき改めて器質的疾患の存在があるのではないかとの疑いを抱き,脳神経内科の医師に相談する等して,亡Dの脳についてCT検査に加え,MRI検査などの検査をすべき注意義務があったというべきである。 - 92 -ウところが,被告病院のK医師は,この時点でも脳神経内科の医師に相談するなどして器質的疾患に関する検討を十分に行わず,小児心療内科の医師であるV医師に検討を依頼するのみで,平成11年2月11日に至るまで,MRI検査等の検査依頼を行わなかったのであるから,被告病院担当医師らは,上記注意義務に違反したといわざるを得ない。 (4)よって,被告病院担当医師らには,平成11年2月9日の時点で 日に至るまで,MRI検査等の検査依頼を行わなかったのであるから,被告病院担当医師らは,上記注意義務に違反したといわざるを得ない。 (4)よって,被告病院担当医師らには,平成11年2月9日の時点で器質的疾患を疑って,脳神経内科の医師に相談する等して脳CT,MRI検査を行わなかった注意義務違反があるというべきである。 㨯上記のとおり,本件においては,被告病院担当医師らに,原告らの主張する注意義務違反のうち脳浮腫に対する対処に関する注意義務違反が認められるので,同義務違反と結果の発生との因果関係(争点(9))について検討する。 (1)ミトコンドリア病について証拠によれば,ミトコンドリア病について,次の知見等が認められる。 アミトコンドリアは,エネルギーを産生する細胞内の小器官であるが,ミトコンドリアに異常を来すと,大量のエネルギーを必要とする骨格筋や,中枢神経系に異常を来す(前記前提事実,甲B10・1657頁。 )ミトコンドリア病の病態のうちの6ないし7割は,CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺,MELAS及びMERRFの,いわゆる3大病型に属す)る(前記前提事実,甲B10・1657頁。3大病型以外の症状として)は,リー(Leigh)脳症が最も多く挙げられている(前記前提事実,甲B10・1657頁。 )イミトコンドリア病の臨床診断としては,発育・発達の遅れ,易疲労性・筋力低下,中枢神経系症状(知的退行など)があり,また,その他に肥大型などの心筋症(ただし発症頻度は高くない,心伝導障害(KSSに特)徴的)といった臨床症状が見られることがある(乙B6・231頁,鑑定・96頁。 )- 93 -上記の各症状を有する患者には,それぞれ疾患に特有のミトコンドリアDNA(mtDNA)の欠失又は変異が見られることが多く,リー(Leigh)脳 (乙B6・231頁,鑑定・96頁。 )- 93 -上記の各症状を有する患者には,それぞれ疾患に特有のミトコンドリアDNA(mtDNA)の欠失又は変異が見られることが多く,リー(Leigh)脳症の20%ないし30%も,mtDNAの変異によることが知られている(甲B10・1657頁。特定の症状におけるmtDNAの欠失)又は変異が同定されてきており,遺伝子診断が重要となっている(乙B22・1133頁。 )厚生労働科学研究,古賀班の2005年3月作成にかかる,リー(Leigh)脳症の診断基準(U鑑定人意見書(2))では,リー(Leigh)脳症は,「A臨床所見」として,①幼児期以前に発症する進行性の知的又は運動発達の障害,②不随意運動,哺乳嚥下障害,呼吸障害,眼球運動障害,失調などの大脳基底核,脳幹の障害に起因する中枢神経症状を認める,③大脳基底核,脳幹に頭部CTで低吸収域・MRIのT2及びフレア画像検査で高信号域を両側対称性に認めるのうち2項目を満たし,かつ「Bミ,トコンドリア異常の根拠」として,①血中又は髄液の乳酸値が繰り返し高いか,またはミトコンドリア関連酵素の欠損,②筋生検でミトコンドリアの形態異常,③既知の遺伝子変異のうちの2つ以上を満たす場合に診断される。 ウリー(Leigh)脳症を含むミトコンドリア病に罹患することによって乳酸値が上昇する機序としては,体内に取り込まれたグルコースなどの糖分が,代謝経路において分解され,エネルギーが産生されていく過程で,代謝産物として乳酸やピルビン酸が算出され,これらの物質は,さらに代謝経路を経て最終的には水及び二酸化炭素に分解される。そこで,代謝産物である乳酸やピルビン酸が体内に多く残存していると,代謝経路に異常があるために十分なエネルギー産生が行われていないことが推定されるが 経路を経て最終的には水及び二酸化炭素に分解される。そこで,代謝産物である乳酸やピルビン酸が体内に多く残存していると,代謝経路に異常があるために十分なエネルギー産生が行われていないことが推定されるが,代謝経路の多くはミトコンドリア内に存在していることから,代謝産物が残存している場合にはミトコンドリア内に異常を生じていることが推定さ- 94 -れる(乙A23・3頁,乙B5・251頁。 )エミトコンドリア病に対する治療としては,発作時にステロイドが有効であり,臨床症状や脳浮腫の改善が期待されるものの,頻回に発作を繰り返すことにより,脳組織に不可逆性変化が生じてくるため,予後は不良であるとされる(乙B18・509頁。 )また,ジクロロ酢酸が発作時の神経症状の回復や代謝異常の改善に効果があったとする報告があるものの,薬剤として認可はされていない(乙B18・509頁。 )(2)亡Dの疾患についてそこで,亡Dがミトコンドリア病に罹患していたか判断する。 被告病院では,亡DのDNA検査を目的として,Zセンター研究所に骨格筋からの検体を提出していた(弁論の全趣旨。 )W鑑定人及びU鑑定人が,平成17年2月8日,Zセンター研究所において,上記検体のmtDNA塩基配列を調査した(鑑定・1頁)結果,mtDNAのうち,13513番目の遺伝子情報がグアニンではなくアデニンになるという変異が,ヘテロプラスミー(正常なものと異常なものが混在している状態)で存在していることが判明した(鑑定・1ないし10頁,W鑑定人意見書(1),U鑑定人意見書(1) 。そして,13513遺伝子の変異は,ミ)トコンドリア脳筋症の患者の組織にヘテロプラスミーで存在していること,MELAS,Leigh症候群の病的遺伝子として報告があるといわれており,この遺伝子変異は,亡Dがミ 513遺伝子の変異は,ミ)トコンドリア脳筋症の患者の組織にヘテロプラスミーで存在していること,MELAS,Leigh症候群の病的遺伝子として報告があるといわれており,この遺伝子変異は,亡Dがミトコンドリア病に罹患した可能性が高いことを示す。これに加え,臨床検査所見において,血液中及び髄液中の乳酸及びピルビン酸が異常高値であったことも認められる(甲A17,乙A1・312,317頁鑑定・1ないし10,35ないし37頁。 )さらに,平成11年2月13日撮影のCT画像で脳幹部が低吸収域になっていること(いずれの鑑定人もこのことは認めている,同月15日撮影。)- 95 -(),のMRI画像でT2強調像での高信号がみられること乙A1・269頁同月26日撮影のMRIのフレア画像でも病変が広範囲に広がっており高信号がみられたこと(乙A1・328頁)が認められる。 ,,,,そうすると臨床所見として亡Dには眼球運動障害などの大脳基底核脳幹の障害に起因する中枢神経症状が認められ,これに加え,CT画像で脳幹に低吸収域が見られ,MRI画像で高信号域が認められる。さらに,ミトコンドリア異常としても,血中及び髄液の乳酸値が繰り返し高いことが認められ,遺伝子変異も認められるから,前記リー(Leigh)脳症の診断基準を満たすことになる。 これに対し,原告らは,筋生検,生科学的所見,遺伝子診断,臨床症状等,。 ,からして亡Dがミトコンドリア病であること自体を否定している確かにZセンター神経研究所が行った平成11年2月26日の骨格筋の病理学的所見では,RRF(ragged-red-fiber:赤色ぼろ繊維)やSSV(stronglySDH-reactivebloodvessels)が見られないこと(甲A2,生化学所見でも)明らかな では,RRF(ragged-red-fiber:赤色ぼろ繊維)やSSV(stronglySDH-reactivebloodvessels)が見られないこと(甲A2,生化学所見でも)明らかな酵素欠損が捉えられないこと,同年9月9月に同研究所のW(W鑑定人)が行ったDNA分析検査では,主な変異は認めませんと回答していること(甲A2)が認められる。しかし,ミトコンドリア病であれば必ず筋生検の病理学的所見としてRRFやSSVが出るわけではないし(W鑑定人。 前記のとおり,リー脳症の診断基準としても,Bミトコンドリア異常の根拠の一つとして「筋生検でミトコンドリアの形態異常」が挙げられているが,これに該当しなくとも他の根拠(①や③)を満たせば,リー脳症との診断がされるという基準になっている,生化学的所見については,乳酸及びピ。)ルビンの上昇が見られるのであり,明らかな酵素欠損の所見が認められないとしても,それゆえにミトコンドリア病でないとはいえないことはW鑑定人が意見陳述しているところである。また,臨床症状については,前記のとおり該当すると認められることからして,原告の主張によっても,亡Dがミト- 96 -コンドリア病に罹患していたことを否定することにはならない。 なお,W鑑定人が行った平成11年2月26日の遺伝子診断においては,異常が認められなかったものの,これは,その当時13513遺伝子の変異が存在しなかったからではなく,その後の研究成果等の進歩により,平成17年段階では,この遺伝子異常が判明するようになったか,この遺伝子異常がミトコンドリア病と関係があると認識されるようになったからであると解,,されるから平成11年段階の検査結果で異常がないと診断されたこと故にミトコンドリア病に罹患しているとの診断が左右されるものではない。 リア病と関係があると認識されるようになったからであると解,,されるから平成11年段階の検査結果で異常がないと診断されたこと故にミトコンドリア病に罹患しているとの診断が左右されるものではない。 しかも,前記1(4)認定のように,平成11年2月27日から,被告病院担当医師らが,ミトコンドリア病を疑い,これに効果があるとされるジクロロ酢酸ナトリウムを投与するようになってから,高値であった乳酸値が減少するようになったことも認められる。 以上によれば,亡Dは,ミトコンドリア病(そのうちのリー(Leigh)脳症)に罹患していたものと認めるのが相当である。 (3)ソービタの関与についてこのように亡Dがミトコンドリア病(そのうちリー(Leigh)脳症)に罹患していたことが認められるが,他方,亡Dが平成11年2月13日に急変したのは,ソービタを投与した直後であるから,亡Dの死因は何か,ソービタの投与等がどの程度関与しているかについて検討する。 前記(2)に認定のとおり,亡Dには,基礎疾患としてミトコンドリア病が存在していたことが認められ,このリー(Leigh)脳症を含むミトコンドリア病による代謝異常が脳幹部の病変をはじめとする中枢神経他領域の病変へと進行し,死亡に至ったたものと推認される。 他方,平成11年2月13日に,亡Dの症状が急性増悪しているが,鑑定の結果によれば,これはそのもの,あるいはソービタに含まれる不純物等による栄養剤としてのソービタの投与自体が原因なのではなく,ソービタを投- 97 -与したことにより,発生したアナフィラキシーショックにより,一時的にではあるが血圧低下が生じるなどしてこのことが急性増悪を招いたと解することが相当である。 ただし,前記認定のとおり,ソービタを投与する前である平成11年1月25日時点においても脳浮腫がう ,一時的にではあるが血圧低下が生じるなどしてこのことが急性増悪を招いたと解することが相当である。 ただし,前記認定のとおり,ソービタを投与する前である平成11年1月25日時点においても脳浮腫がうかがえること,臨床症状としても同年2月4日には意識障害が発生しており,脳の器質的障害が疑わしい状況であったこと,同年2月15日におけるCT画像の低吸収域からしてその数日から1週間は脳障害が経過したものとみられること(X鑑定人・意見書)からすると,ソービタ投与時点で脳障害(その原因は,リー(Leigh)脳症にある)。 が発生していたものと認められるのであり,ソービタの投与をきっかけに症状が悪化したもので,どの程度の影響があったかどうかは不明というほかない。 これに対し,原告らは,亡Dが脳浮腫に陥ったのは,原告らが投与した薬剤(アスペノン,インデラル,プリンペラン)やソービタの副作用が原因であり,仮に亡Dがミトコンドリア病であったとしても,これらの薬剤等の投与がなければ,急性増悪しなかったのであるから,これらの薬剤等の投与が原因であると主張する。しかし,これらの薬剤により,亡Dに脳浮腫からく。 ,る脳障害が生じたと認めるに足る証拠はないアスペノンには副作用として振戦,めまい,ふらつき,しびれ感,言語障害などの精神神経系の症状があるとされ,亡Dに手の振戦等の症状が見られたが,比較的軽度であり,アスペノン投与後は,このような症状が出ていないこと,プリンペランは,消化機能を司る脳幹部に作用して,消化器の機能的反応又は運動異常を改善する,,,,薬剤であり小児に対しては錐体外路症状が発現しやすく副作用として手指振戦,筋硬直,頚部等の攣縮,眼球回転発作等が現れるとされ,プリンペラン投与後,亡Dに振戦,眼瞼浮腫,眼球回転等が発生したことも認め あり小児に対しては錐体外路症状が発現しやすく副作用として手指振戦,筋硬直,頚部等の攣縮,眼球回転発作等が現れるとされ,プリンペラン投与後,亡Dに振戦,眼瞼浮腫,眼球回転等が発生したことも認められるが,このような症状が出て,直ちに中止され,その後,同様の症状が継- 98 -続せず,むしろ,平成10年12月末から平成11年1月初旬頃は,亡Dの症状は軽快していたこと,インデラルは,咳,喘鳴,発熱という副作用が生じることがあり,亡Dに咳や喘鳴生じたことが認められるが,これが脳障害を負わせる原因となったとは認められないことからして,これらの薬剤の投与による副作用が生じたこと自体は認められるものの,それが,亡Dの脳障害に結びついたと認めるに足る証拠まではないといわざるを得ない。また,ソービタの影響の程度についても,前記認定のとおり,不明であったものといわざるを得ない。 (4)因果関係について以上を前提に,被告病院担当医師らの脳浮腫に対する対処についての注意義務違反と亡Dの死亡との因果関係があるかどうか,すなわち,平成11年2月9日の時点でMRIにより脳の器質的疾患に関する検査を行っていれば,同検査によって脳浮腫の所見が得られ,亡Dの死亡を避けることができたかどうかついて検討する。 亡Dの脳障害は,平成11年1月25日のCT画像にも軽度の脳萎縮が見られたことやその頃から脳の器質的障害が原因とみられる臨床症状があったことからすれば,同年2月9日にMRI検査をすれば,脳浮腫の所見が得られた可能性は否定できない。そして,脳浮腫に対し,脳減圧やステロイドの投与等の抗浮腫治療が行われれば,その時点では,症状が改善する可能性もないではない。 しかしながら,前記認定のとおり,亡Dが死亡に至ったのは,ミトコンドリア病という基礎疾患を有していたからであ ドの投与等の抗浮腫治療が行われれば,その時点では,症状が改善する可能性もないではない。 しかしながら,前記認定のとおり,亡Dが死亡に至ったのは,ミトコンドリア病という基礎疾患を有していたからであり,この時点でMRI検査をしたからといってミトコンドリア病であるとの診断をすることは不可能であったといえること(被告病院担当医師らは,平成11年2月頃からミトコンドリア脳症を疑って,ジクロロ酢酸を投与したりしたが,同年9月に行った筋生検による,Zセンター神経研究所の検査でも(甲A2,S医科大学小児)- 99 -科による質量分析による代謝検査でも(乙A18,ミトコンドリア病との)結果を得られなかったのであり,本件訴訟における鑑定段階での検査において,遺伝子検査が行われた結果ミトコンドリア病であると確定診断されたのであって,これに,前記リー(Leigh)脳症の診断基準が2005年に作成されたものであることを考慮すると,亡Dの生前にミトコンドリア病であったと診断することは困難であったと認められる,リー(Leigh)脳症は脳。),,組織に不可逆的変化を生じさせるため予後が不良とされている疾患であり基本的治療法は確立しておらず,適切な対処療法を行っても回復の見込みはほとんど無いのであって,ストレス等の増悪因子が作用することにより,やはり症状の急性増悪を来す可能性は大きいといわざるを得ないこと(W鑑定人,U鑑定人,亡Dに対しては,低栄養状態を補正するためビタミン剤と)してソービタが使用された可能性は十分に考えられること,被告病院では,その後平成11年2月13日には脳のCT検査によって脳の病変を認識し,ミトコンドリア脳筋症を視野に入れつつ,脳浮腫等に対する治療を開始し,同月27日にはミトコンドリア脳筋症に対する治療としてジクロロ酢酸ナト 11年2月13日には脳のCT検査によって脳の病変を認識し,ミトコンドリア脳筋症を視野に入れつつ,脳浮腫等に対する治療を開始し,同月27日にはミトコンドリア脳筋症に対する治療としてジクロロ酢酸ナトリウムの投与を開始したが,結局,亡Dは,意識を回復することなく,平成11年11月23日に死亡するに至ったことに鑑みれば,平成11年2月9日の時点でMRI検査を行って,仮に4日早く脳浮腫が判明していたとしても,亡Dにその後の結果が発生しなかった高度の蓋然性があると認めることはできず,また,死亡を避けられた相当程度の可能性があったとも認めることはできない。 (5)そうすると,被告病院担当医師らの脳浮腫に対する対処についての注意義務違反と亡Dの死亡との間の因果関係を認めることはできず,注意義務違反がなければ亡Dの死亡を避けることができた相当程度の可能性があったと認めることもできない。 結論 - 100 -,,,以上の次第で原告らの請求はその余の争点について判断するまでもなく理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第30部秋吉仁美裁判長裁判官佐藤哲治裁判官浦上薫史裁判官
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