平成27(行ウ)63 未払賃金等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年9月20日 福岡地方裁判所 その他
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判決文本文21,758 文字)

主文 1 被告は,原告A,同B及び同Cを除くその余の各原告に対し,当該原告名が記載された別紙2「待機時間給の不足分合計一覧表」の「F.認容額」欄中の「合計」欄記載の各金員及びうち各「F.認容額」欄記載の金員に対するそれに対応する「対象年月」欄記載の月の翌月14日から支払済みまで年5分の割 合による金員を支払え。 2 前項の原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 原告A,同B及び同Cの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,各原告に対し,当該原告名が記載された別紙2「待機時間給の不足分合計一覧表」(以下「待機時間給一覧表」という。)の「D.未払い残業代」欄中の「合計」欄記載の各金員及びうち各「D.未払い残業代」欄記載の金員 に対するそれに対応する各「対象年月」欄記載の月の翌月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,各原告に対し,当該原告名が記載された待機時間給一覧表の「E. 付加金」欄中の「合計」欄記載の各金員及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告の運営する市営バスの運転手として勤務する原告らが,それぞれ,被告に対し,未払時間外割増賃金を含む未払賃金(以下,賃金というときは時間外割増賃金を含むことがある。)及びこれに対する各支払日の翌日から 支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基 準法114条本文に基づき,上記未払時間外割増賃金 増賃金を含むことがある。)及びこれに対する各支払日の翌日から 支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基 準法114条本文に基づき,上記未払時間外割増賃金と同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いがない事実又は後掲の証拠等によって容易に認められる事実) 当事者等 ア被告は,地方自治法上の普通地方公共団体であり,交通局を設置し,地方公営企業法2条1項4号所定の地方公営企業(自動車運送事業)として,北九州市市営バス(以下「北九州市バス」という。)の事業を経営している(弁論の全趣旨)。 イ原告らは,いずれも,被告の交通局(以下,単に「交通局」という。) の嘱託員として雇用され,北九州市バスの定期路線バス(乗合バス)運転手として,バス運転業務に従事する者である(以下,バス運転業務に従事する者を「乗務員」といい,原告らを含む北九州市バスの定期路線バス運転業務を委嘱された嘱託員を総称して「嘱託乗務員」ということがある。)。 嘱託乗務員の勤務時間等 ア北九州市交通局嘱託員就業細則(乙117ないし119。以下,単に「就業細則」という。)は,嘱託乗務員について,勤務時間は,休憩時間を除き,4週間を平均し1週間について30時間とし,始業時刻,終業時刻及び休憩時刻は,所属長が別に定める旨規定している(13条,別表2)。 イ嘱託乗務員の所属長は,嘱託乗務員が勤務すべき勤務番を記載した嘱託 交番表(甲2の1等。以下,単に「交番表」という。)により,各嘱託乗務員の始業時刻及び終業時刻を定めていた(交番表に「出勤」及び「退勤」と記載) ,嘱託乗務員が勤務すべき勤務番を記載した嘱託 交番表(甲2の1等。以下,単に「交番表」という。)により,各嘱託乗務員の始業時刻及び終業時刻を定めていた(交番表に「出勤」及び「退勤」と記載)。交番表には,これらの時刻のほかに,「入庫」,「出庫」及び「食事」の各時刻並びに「拘束」及び「実働」の各時間が記載されている。 嘱託乗務員は,交番表に従い,1日ごとに勤務番を変えながら,バス運 転業務に従事していた。 ウ嘱託乗務員は,1日の勤務番で複数の系統の路線バス(回送バスを含む。)の運転を担当していたところ,その運行内容等は,各勤務番の運行指示表(甲2の2等)により,系統ごとに特定されていた。 調整時間,転回時間及び待機時間の区別等ア交通局においては,1日の勤務番のうち,バスが一つの系統の路線の 終点に到着した後,次の系統の路線の始点から出発するまでの間に待機する場所(以下「転回場所」という。)ごとに,その待機の時間を「調整時間」として設定した上(調整時間のない転回場所も存在する。),調整時間のうち,乗務員が遺留品の確認,車内清掃,車両の移動等に要する時間として一定の時間を「転回時間」として定めていた。また,調 整時間のうち転回時間を除いた時間を「待機時間」と指称していた。 運行指示表の「区分」欄記載の数字は,調整時間の長さ(分)を示している。なお,運行指示表には,この記載とは別に,「休憩」や「中休」として一定の時間が記載されているものがある。 平成25年6月1日時点における転回場所(調整時間中が設定されて いるものに限る。以下同じ。)は,別紙3転回場所一覧表(以下,単に「転回場所一覧表」という。)の「転回場所(H25.6)欄」記載のとお 年6月1日時点における転回場所(調整時間中が設定されて いるものに限る。以下同じ。)は,別紙3転回場所一覧表(以下,単に「転回場所一覧表」という。)の「転回場所(H25.6)欄」記載のとおりであり,平成30年2月16日時点における転回場所は,同一覧表の「転回場所(H30.2)欄」記載のとおりである。 (甲2の2ないし2の4,3の2ないし3の5,4の2・3,乙108,1 10,弁論の全趣旨)イ被告は,嘱託乗務員に対し,調整時間のうち,転回時間については,労働基準法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)として,その時間に応じて基本給(時給)を支払っていた一方,待機時間については,賃金支払期間(毎月1日から月末まで)ごとに,その時間に応じ て1時間当たり(1時間未満の端数については,30分以上は切り上げ, 30分未満は切り捨てる。)140円を「待機加算」として支払っていた(乙117ないし119,弁論の全趣旨)。この待機加算の支払の対象となる各原告の各月の待機時間は,各原告に係る待機時間給一覧表の「B. 待機時間(h)」欄に記載のとおりであり,各原告に各月に支給された待機加算の額は,同一覧表の「C.待機支給額」欄(ただし,原告Dの平成 27年12月から平成28年8月までの各月の待機加算の額については,同原告に係る同一覧表の「G.待機加算額」欄)に記載のとおりである(ただし,平成24年4月から平成28年9月までは,誤って転回時間を加えて算出されたため,本来支給される額よりも多い額の待機加算が支給されている〔弁論の全趣旨〕。)。 ウ被告は,平成11年3月31日までは調整時間の全部を労基法上の労働時間として扱っていたが,平成9年12月24日付けで,北九州市交通局労働 が支給されている〔弁論の全趣旨〕。)。 ウ被告は,平成11年3月31日までは調整時間の全部を労基法上の労働時間として扱っていたが,平成9年12月24日付けで,北九州市交通局労働組合との間で協定書(乙20。以下「平成9年協定書」という。)を作成し,平成11年4月1日以降,調整時間について,上記のとおり取り扱うこととした。その後,被告は,平成18年3月29日付けで,同組合 との間で協定書(乙4。以下「平成18年協定書」という。)を作成し,同年4月1日以降の各転回場所における転回時間を改めた。(乙4,20,弁論の全趣旨) 前件訴訟及びその後の経緯等ア嘱託乗務員のうち14名は,平成24年6月,被告に対し,待機時間が 労基法上の労働時間に当たると主張して,平成22年1月又は同年3月から平成23年12月までの期間(以下「前件請求期間」という。)における各原告の待機時間分の時間外割増賃金の支払を求める訴訟(以下「前件訴訟」という。)を提起した(当庁平成24年(行ウ)第52号)。前件訴訟の第一審において,被告は,待機時間は休憩時間であると主張して争 ったが,裁判所は,平成27年3月4日,待機時間の全てが労基法上の労 働時間に該当するとして,前件訴訟の原告らの請求を全部認容する判決(甲36)をした。 被告が,上記判決を不服として控訴したところ(福岡高等裁判所平成27年(行コ)第37号),控訴審において和解が成立し,これにより前件訴訟は終了した(乙30,弁論の全趣旨)。 イ被告は,平成24年2月20日付けで,交通局の乗務員に対し,「転回場所における労働時間の取扱いについて(通知)」と題する文書(乙108。以下「本件通知」という。)により,転回場所における労働時間 イ被告は,平成24年2月20日付けで,交通局の乗務員に対し,「転回場所における労働時間の取扱いについて(通知)」と題する文書(乙108。以下「本件通知」という。)により,転回場所における労働時間及び休憩時間の取扱いについての通知をした。本件通知には,以下の記載がある(別表は別紙4のとおり)。 転回場所における労働時間と休憩時間・各バス停に到着後,次の発車までの時間の内,「遺留品の確認」・「車両の移動」・「接客時間(両替・案内等)」などにあたる時間を労働時間とし,残りは休憩時間とする。 ・労働時間数は各バス停において,別表のとおりとするが,社会情勢 の変化等により見直しの必要が生じた場合は,時間数の変更を行うものとする。 ・なお,休憩時間については,各自が自由に使える時間とするが,交通局職員としての自覚を持って行動すること。 延着等の取扱い 多客,事故などの理由により到着バス停に延着した場合や突発的業務で指示された休憩時間を取得することが出来なかった場合は,休憩時間を労働時間に変更するため,必ず所定の用紙に記入して操車主任に提出して下さい。 ウ平成27年(行ウ)第63号原告らは同年12月22日に,平成28年 (行ウ)第17号原告らは同年3月11日に,原告Eは同年4月14日に, 同年(行ウ)第42号原告らは同年7月7日に,原告Fは同年8月10日に,それぞれ,当裁判所に対し本件訴訟を提起した。本件訴訟において原告らが支払を求めている未払賃金のうち最も早い時期のものは平成25年6月分の賃金であり,最も遅い時期のものは平成29年6月分の賃金である(以下,平成25年6月から平成29年6月までの期間を「本件請求期 を求めている未払賃金のうち最も早い時期のものは平成25年6月分の賃金であり,最も遅い時期のものは平成29年6月分の賃金である(以下,平成25年6月から平成29年6月までの期間を「本件請求期 間」という。)。(当裁判所に顕著な事実) 3 争点及び争点に関する当事者の主張 待機時間の労基法上の労働時間該当性ア原告らの主張以下の各事情に照らすと,原告らは,待機時間中,被告から,バス内の 乗客の遺留品の有無の確認,車両の移動(待機場所内でのバスの移動),接客(両替,案内等),車内清掃の各業務に従事することを指示され,労働からの解放が保障されておらず,使用者の指揮命令下に置かれているといえるから,待機時間は,手待時間であって労基法上の労働時間に当たる。 運行指示表上,明示された休憩時間のほかに,待機時間が休憩時間で ある旨の記載はなく,就業細則上,待機時間は休憩時間とされていなかった上,平成18年協定書,交番表又は運行指示表の記載から,待機時間が休憩時間であると読み取ることもできない。交通局は,乗務員に対し,待機時間が休憩時間である旨を周知したり,待機時間中の乗客対応を免除したりしておらず,かえって,待合客等への対応を積極的に行う よう指示していた。したがって,乗務員も,待機時間が休憩時間であると認識していなかった。 多くの転回場所では,休憩施設が確保されておらず,また,乗務員は,乗務に当たり私金を携帯することを禁止されていたから,待機時間中,トイレに行くほかは,バス車内で過ごさざるをえなかった。 被告は,乗務員に対し,始発バス停にはできるだけ早くバスを着ける よう述べていたほか,乗務員らは,待機時間中も,転回場所(始点のバス停と 車内で過ごさざるをえなかった。 被告は,乗務員に対し,始発バス停にはできるだけ早くバスを着ける よう述べていたほか,乗務員らは,待機時間中も,転回場所(始点のバス停と同一の場所であるものに限られない。)において,事実上乗客対応を行わざるを得ない状況にあったから,被告は,乗務員らに対し,明示的及び黙示的に,待機時間中も労働するよう指示・命令をしていたといえる。 これらの状況について,本件通知の発出の前後で変化はない。 原告らは,調整時間中,転回場所において,バスの乗客の遺留品の有無の確認,車内清掃等の業務を行っているところ,この業務は,転回時間として設定された短時間のうちに終わるものではない。また,原告らは,被告の指示により,始発バス停にバスを早めに着け,乗客がいる場 合には,早めに乗客を乗せてエンジンを掛けたまま待機しており,その際には行き先案内,両替等の乗客対応も行う必要があった。これらの乗客対応に要する時間は,転回時間に反映されていない。 さらに,原告らは,乗務するバスについて,待機時間中に移動させる必要が生じる場合があるところ,この移動のタイミングは,先順位で待 機している他のバスの移動の状況や,後続バス又は回送バスの運行状況,道路の交通状況等によって左右され,時刻表等により予測できるものではないから,待機時間中も,臨機応変にバスを移動させることができるように備えておく必要があった。この状況は,どの転回場所であっても同様であった。 上記の各業務に加えて,嘱託乗務員は,調整時間中に,勤務表作成のための主任からの問合せや,所長からの安全管理上の確認のための問合せ等にも対応する必要があった。 これらのバス運行に伴 上記の各業務に加えて,嘱託乗務員は,調整時間中に,勤務表作成のための主任からの問合せや,所長からの安全管理上の確認のための問合せ等にも対応する必要があった。 これらのバス運行に伴う待機時間中の業務は,突発的かつ頻繁に発生するものであり,まれな出来事であるとはいえない。 記載の業務を行わなければならず, また,乗客を乗せて待機している場合には,空調等のバスの管理を行う必要もあったから,原告らは,待機時間中もバスから離れることができず,場所的に拘束されていた。 イ被告の主張 被告は,嘱託乗務員に対し,待機時間は休憩時間である旨を周知した 上,同時間中はきちんと休憩を取るように指示しており,待機時間中に乗客対応を行うことは求めていない。原告らは,そのことを認識しており,実際に,自由に待機時間を過ごしていた(バスの扉を開けたまま,バスを離れて休憩している者もいた。)。これらの事情からすれば,被告は,待機時間中,原告らの労働からの解放を保障していたといえるか ら,待機時間は,休憩時間であって,労基法上の労働時間(手待時間)ではない。 乗務員が待機時間中に乗客対応を行わなかったことについて,乗客からクレームがあったとしても,被告は,乗客に対し,休憩時間であったとして理解を求めており,そのことについて,当該乗務員に不利益を課 すことはない。また,仮に,待機時間中に嘱託乗務員が業務を行わなければならない事態が生じた場合には,嘱託乗務員は,「遅れ時分等の報告書」と題する報告書(乙5,22。以下「遅れ時分等報告書」という。)により,それに要した時間について労働時間として申告することが可能であった。 乗客の遺留品の有無の確認及び車内 書」と題する報告書(乙5,22。以下「遅れ時分等報告書」という。)により,それに要した時間について労働時間として申告することが可能であった。 乗客の遺留品の有無の確認及び車内清掃業務は,転回場所に到着した際に行われ,また,行き先案内等の接客業務は,始発バス停を出発する直前に行われるものであり,仮に待機時間中に乗客対応が生じることがあったとしても,頻繁に生じるものではなく,それに要する時間も極めて短時間である上,被告は,乗務員に対し,待機時間中にこれらの業務 を行うことを求めていないから,乗務員が,いつ発生するか分からない これらの業務に備えて待機時間中に手待状態を強いられているとはいえない。バスの移動についても,バス停によって,乗務員が移動させたい時に移動させることができるか,又は発車順番表若しくは運行指示表によりバスを移動させるタイミングを知ることができるから,発生のタイミングが特定されていない業務とはいえない。 被告は,原告らが所属する労働組合を含む全ての労働組合と協議を行った上,遺留品の確認,車内清掃,乗り場へのバスの移動等を行うために平均的に要する時間を考慮して転回時間を設定しており,調整時間のうち,労基法上の労働時間になる部分は,適切に設定され,また,休憩時間になる部分と明確に区分されている。 付加金請求の可否ア原告らの主張前件訴訟においては,第一審で待機時間は全て労基法上の労働時間に当たるとの判決がされた後,控訴審において,被告が前件訴訟原告らに対し請求金額の6割に相当する金員を支払うこと,上記判決で指摘された問題 点を踏まえて労働環境を改善すること等を内容とする和解が成立し,その後の労使間の協議において,被告は,い 件訴訟原告らに対し請求金額の6割に相当する金員を支払うこと,上記判決で指摘された問題 点を踏まえて労働環境を改善すること等を内容とする和解が成立し,その後の労使間の協議において,被告は,いくつかの転回場所について待機時間を労基法上の労働時間として取り扱うことを提案しており,これらの時間が労働時間に該当することを認識していたにもかかわらず,被告は,前件訴訟の提起から5年もの期間,乗務員の賃金体系や労働環境の抜本的な 改善を行っていない。このことからすると,被告に対しては,本件訴訟提起後に発生した未払割増賃金と同額の付加金の支払を命ずるべきである。 イ被告の主張争う。 被告の原告らに対する未払割増賃金は存在しないし,仮に存在したとし ても,待機時間は一義的に労基法上の労働時間とみることができないもの であり,その扱いについて労使間で協議が行われていたのであるから,被告による割増賃金の不払は,付加金の支払を命ずべき悪質なものであったとはいえない。 第3 当裁判所の判断 認定事実前提事実に加え,後掲各証拠(枝番又は孫番がある書証は,特に記載しない限り,枝番又は孫番を全て含む。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められ,この認定に反する証拠はいずれも採用することができない。 ア交通局における調整時間の取扱い等 交通局は,以前は調整時間の全てについて労基法上の労働時間として扱って賃金を支払っていたが,そのような扱いは北九州市バス利用者や市民から理解を得られないとの理由から,当時交通局で唯一の労働組合であった北九州市交通局労働組合に対し,実働時間の換算方法の見直しを提案し,労使交渉を経て,平成9年協定書が作成 北九州市バス利用者や市民から理解を得られないとの理由から,当時交通局で唯一の労働組合であった北九州市交通局労働組合に対し,実働時間の換算方法の見直しを提案し,労使交渉を経て,平成9年協定書が作成された。平成9年協 定書には,「勤務時間」との項目において,下記のとおりの記載がある。 記a 実働時間実働時間は,実ハンドル時間・始業・終業の点検時間・中休勤務の準備時間及び折り返し地点でのバス転回にかかる時間とする。 (中略)折り返し地点でのバス転回にかかる時間は,別紙(省略)のとおりとする。なお,a,b,c駅,d及びe駅での調整時分の実ハンドル時間への繰り入れは廃止する。 b 調整時間 調整時間は勤務の実情に応じて設定する。 調整時間のうち折り返し地点でのバス転回にかかる時間を除く時間は実働とせず,中休手当相当額を支給する。 c 休憩時間休憩時間は1時間とするが,勤務作成上これにより難い場合は,45分と15分に分けて付与する。なお,中勤務及び新中休勤務には休 憩時間は付与しない。 (以下略)(乙11,12,20,29,弁論の全趣旨) 交通局は,北九州市交通局労働組合との間で,各転回場所の転回時間の見直しを含む協議を行い,平成18年3月29日付けで,平成18年 協定書を作成した。 (乙4,12,29) G労働組合H分会(平成22年5月12日結成。分会長は原告I。)は,J労働組合総連合及びK労働組合との連名で,平成22年10月8日付けで,被告市長及び交通局長に対し,「賃金・労働条件等に関する 要求書」と題 (平成22年5月12日結成。分会長は原告I。)は,J労働組合総連合及びK労働組合との連名で,平成22年10月8日付けで,被告市長及び交通局長に対し,「賃金・労働条件等に関する 要求書」と題する文書(乙17)を提出したところ,その中の要求項目の一つとして,「c駅,f郵便局での待機の時に乗客が乗車している場合は,実働時間とすること。」を挙げている。 また,L労働組合(執行委員長は原告I。)は,J労働組合総連合との連名で,平成25年から平成27年の各年4月に,被告市長及び交通 局長に対し,賃金・労働条件等に関する要求書(乙101ないし103)を提出したところ,そのいずれにおいても,要求項目として,「折待ち時間の改善をはかること。」(平成25年及び平成26年の各要求書では,これに加えて,「待機時の乗車等の勤務の場合の申告を徹底させ,実働時間にすること。」)が挙げられている。 (乙17,101ないし103,弁論の全趣旨) 北九州西労働基準監督署は,平成23年12月7日付けで,交通局における調整時間の扱いについて,関係労働者への意見聴取,実態調査を行うことにより,不当に低い時間数で設定されていないかという点につき,各バス停毎に再度見直しを行うべきこと,及び関係労働者に対して,調整時間の扱いについて再度周知すべきことを指摘した。 被告は,上記の指摘を受け,交通局において転回場所の実態調査を行った上,本件通知を点呼場の操車室や乗務員控室に掲示して,その内容を乗務員に対し通知した。交通局においては,本件通知の発出後に採用された乗務員に対しても,本件通知を交付し,その内容を説明している。 (乙12,108,証人M) 乗務員は,転回場所への 知した。交通局においては,本件通知の発出後に採用された乗務員に対しても,本件通知を交付し,その内容を説明している。 (乙12,108,証人M) 乗務員は,転回場所へのバスの到着が遅れた場合,交通局に対し,遅れ時分等報告書を提出し,遅れ時分及びその理由等を報告することがあった。遅れ時分については,「指示表時間」欄記載の時刻と「到着時間」欄記載の時刻との差として記載し,遅れの理由については,自車の事故,自車の故障,交通渋滞,工事渋滞,自然渋滞,多客又はその他の中から 選択して記載する形式となっている。なお,この報告については,本件請求期間以前に,「遅れ報告書」との名称の書式(甲26)を用いていた時期があった。同書式においては,着停留所ごとの延着時分,超勤時分及びその理由のほか,当日の延着時分の合計,早着時分の合計及びその差引きの合計を記載する欄が設けられている。また,書式下部には, 理由番号として,「1 事故渋滞」,「2 工事渋滞」,「3 自然渋滞」,「4 多客」,「5 所要時分不足」,「6 故障」及び「7 その他」の記載がされている。 交通局は,乗務員から遅れ時分等報告書が提出された場合,所要の確認を行った上で,遅れ時分として申告された時間を労働時間として扱っ て賃金の計算をしていた。 (甲26,乙5,6,11,12,22,23,112,証人M) 前件訴訟において,被告は,同訴訟の原告らが待機時間は労基法上の労働時間に当たると主張したのに対し,待機時間は休憩時間であって,乗務員は,待機時間中,自由に過ごすことができ,交通局は乗務員に対し待機時間中に乗客対応をすることを求めていない旨主張した。また, 被告は,前件訴訟において,待機時間中に 間は休憩時間であって,乗務員は,待機時間中,自由に過ごすことができ,交通局は乗務員に対し待機時間中に乗客対応をすることを求めていない旨主張した。また, 被告は,前件訴訟において,待機時間中に乗客対応等の業務が生じた場合には,その時間について遅れ時分等報告書により申告することで,労働時間として扱うことになっているとの主張もしていた。 なお,現在,交通局には労働組合が3つあるところ,前件訴訟の原告らはいわゆる第三組合の組合員であり,本件訴訟の原告らはいわゆる第 二組合の組合員である。 (甲36,乙112,証人M,弁論の全趣旨) 嘱託乗務員の給与明細書においては,待機加算の金額が,「待機」との項目において,待機時間の時間数(ただし,平成24年4月から平成28年9月までは誤って転回時間を加えて算出 されている。)及び単価(140円)が記載されている。 (甲115,乙109)イ転回場所においてバスが停止している間の乗務員の行動等 乗務員は,転回場所に到着した後,遺留品の確認,車内の清掃等の業務を行う(ただし,これらの業務を行っていないこともある。)。これ らの業務の終了後,乗務員は,バス車内又は車外において過ごし,その間,飲み物を飲み,携帯電話を操作し,又は喫煙をするなどする状況もみられる。なお,その間も,乗務員は,交通局の制服を着用しており,他方,乗務員が休憩時間中である旨の乗客向けの表示等はされていない。 各転回場所のうち,転回場所一覧表の「転回場所(H25.6)」欄 記載の番号1ないし4に対応する各転回場所には,乗務員用の控室が存 在する。また,平成25年6月1日時点で,同欄記載の番号5ないし14に対応する転回場所は, 場所(H25.6)」欄 記載の番号1ないし4に対応する各転回場所には,乗務員用の控室が存 在する。また,平成25年6月1日時点で,同欄記載の番号5ないし14に対応する転回場所は,次にバスが運行する系統の始点となるバス停と異なる場所に存在していた。なお,同一覧表の「転回場所(H25. 6)」欄記載の各転回場所における転回時間は,同一覧表の「転回時間(分)」欄に記載のとおりである(ゴシック体で表記したものは,証拠 上転回時間の長さを認定することができないため,1分としたものである。)。 (甲19,37,乙11,14,19,28,29,110,111,原告E本人,原告I本人,弁論の全趣旨) 転回場所において,待機時間中に乗客がバスに乗車してきた場合,乗 客が乗務員に対しバスの行き先案内,両替,ICカードの積増し等を求め,乗務員がこれに対応することがある。また,乗務員は,バス車内で待機時間を過ごしている際に,エンジンをかけて冷房を入れることがあり,さらに,アイドリングストップの取組等に鑑み,冷房を入れている間に,一度エンジンを切り,車内の温度が上がったら再度エンジンをか けて冷房を入れることもある。 (甲19,37,103ないし106,乙28,29,110,111の3・5・9・10,112,証人M,原告E本人,原告I本人) 他方,乗務員は,待機時間中,一定時間をバス車外で過ごすことがあり,また,転回場所において乗客をバスに乗せたまま,バスを離れるこ ともある。この下車時間中,乗務員は,バスの付近で喫煙し,又は二,三分バスを離れるにとどまることもあるが,5分以上にわたってバスを離れることもある。 また,平成24年7月1日,北九州市バスの利用者から, 時間中,乗務員は,バスの付近で喫煙し,又は二,三分バスを離れるにとどまることもあるが,5分以上にわたってバスを離れることもある。 また,平成24年7月1日,北九州市バスの利用者から,被告に対し,乗務員が出発前に携帯電話を操作していることについてクレームがあっ たが,被告は,このクレームに対し,交通局においては,バスの到着後, 次の発車時刻までの時間について,必要な業務に要する時間を除き休憩時間として扱っており,その間に乗務員が携帯電話を使用することを禁止していない旨の回答をした。 (乙18,110,111の5・10,112,証人M,原告E本人)ウ転回場所におけるバスの移動等 本件請求期間における転回場所のうち,c駅西口,e駅,g駅,h陸上競技場(待機場側)及びc駅(北口)の各転回場所では,ダイヤ上,同時に複数のバス(回送バスを含む。)が停止することがある(ただし,g駅については,平成26年6月のダイヤ改正で,ダイヤ上は,複数のバスが同時に待機することはなくなった。)。 このうち,e駅については,運行指示表に,先に発車するバスの出発時刻が記載されている。他方,c駅(北口)及びc駅西口については,バスの車内に,同転回場所に着くバスの始発時刻を記載した発車順番表が備え付けられている。また,h陸上競技場(待機場側)については,後から来たバスが先に出発する場合には,運行指示表に,先に到着したバスは後方 で待機する旨の指示が記載されている。 (甲107,109,110,乙104ないし107,112,証人M,原告E本人,原告I本人,弁論の全趣旨) 争点に対する判断ア労基法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている 09,110,乙104ないし107,112,証人M,原告E本人,原告I本人,弁論の全趣旨) 争点に対する判断ア労基法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている 時間をいい,実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁参照)。そして,不活動時間にお いて,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命 令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして,当該時間において労働契約上の役務の提 供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である(最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決・民集56巻2号361頁,最高裁平成19年10月19日第二小法廷判決・民集61巻7号2555頁各参照)。 そこで,以下,待機時間について検討する。 イまず,就業細則等には待機時間が休憩時間である旨の明示の記載等は見受けられない。しかし,待機時間は,もともと,全て労基法上の労働時間として扱われていた調整時間について,そのような扱いは市民やバス利用者からの理解が得られないとの理由で,当時唯一 の明示の記載等は見受けられない。しかし,待機時間は,もともと,全て労基法上の労働時間として扱われていた調整時間について,そのような扱いは市民やバス利用者からの理解が得られないとの理由で,当時唯一存在した労働組合と協議 の上,実働時間として換算した時間(転回時間)を除く時間を待機時間として実働時間とは異なる扱いとすることとしたものであり,待機時間については,基本給ではなく,1時間当たり140円の待機加算が支払われ,。また, を見ると,乗務員の始業時刻から終業時刻までの時間(拘束時間)の中に,食事時間とされた休憩時間のほかに実働時間とはならない時間が存在することを読み取ることができるもの被告は,平成24年2月の時点で,乗務員に対し,本件通知により,調整時間中,転回時間を労働時間とし,残りの時間を休憩 時間とすることを周知していたものと評価できる上(その後に採用した嘱 託乗務員に対しても,採用の時点でこのことを説明している。),被告は,前件訴訟においても,待機時間は休憩時間であるとの主張をしていたものである 加えて,交通局の労働組合は,平成22年,c駅及びf郵便局の各転回場所における待機時間について,一定の場合には実働時間とするよう要求 しており,平成25年及び平成26年にも,待機時間中の乗車等の勤務の申告を徹底させ,実働時間にすることを求これらの要求は,待機時間が労基法上の労働時間ではなく休憩時間として扱われていることを乗務員としても認識していることや上記労基法上の労働時間ではない旨の取扱いを前提とするものといえる。また,遅れ時分等 報告書も,少なくともバスの転回場所への到着が遅れた場合に,その遅れた時間を労働時間として扱ってもらうために提出されていたものであるから,調整時間中に労基法上 ものといえる。また,遅れ時分等 報告書も,少なくともバスの転回場所への到着が遅れた場合に,その遅れた時間を労働時間として扱ってもらうために提出されていたものであるから,調整時間中に労基法上の労働時間とならない時間があることを前提とするものといえるのである。 以上の各事情によれば,少なくとも本件請求期間において,交通局の乗 務員は,被告が待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱っていたことを認識していたものと認められる。 ウ次に,乗務員は,待機時間中にバスの乗客から,行き先案内,両替,ICカードの積増し等の対応を求められ,これに応じることがあり,また,バス車内で待機する場合には,車内の温度の調整を行うことがあっ たものと認められる しかしながら,上記のとおり,交通局においては,待機時間は休憩時トイレ以外の理由でも,待機時間をバス車外(バス付近に限らない。)で過ごし,さらにバス車内に乗客を乗せた状態でバスを離れることを許 交通局は,待 機時間中の乗務員の過ごし方について乗客から問合せがあった場合には,待機時間は休憩時間である旨説明していたものと認められる。これらの各事情に照らすと,本件請求期間において,乗務員は,待機時間一般について,上記のような乗客対応や車内の温度の調整を行うことを労働契約上義務付けられていたと評価することはできないというべきである。 また,証拠(甲18,25,36)によれば,N運輸主任が,平成26年9月20日,乗務員であるO及びPに対し,それぞれ,点呼の際に,始点のバス停に乗客がいる場合には,バスを早めに着けるようにとの指示をしたことがあったことが認められる。 しかし,証拠(乙106)によれば,乗務員が,始点のバス停に,乗 それぞれ,点呼の際に,始点のバス停に乗客がいる場合には,バスを早めに着けるようにとの指示をしたことがあったことが認められる。 しかし,証拠(乙106)によれば,乗務員が,始点のバス停に,乗 客が乗車して定時に出発できる程度のタイミングで移動することも多く,また,定時よりも遅れて移動する場合も一定程度あることが認められ,このことからすると,上記の各指示がされたことをもって,原告らが,始点のバス停に乗客がいる場合,常に待機時間中であっても早めにバス停に移動することを義務付けられていたということはできない。 なお,乗務員がバスを出発時刻直前に始点のバス停に移動させ,また,待機時間中に乗客対応を行わないとすれば,一部の乗客において交通局への不満や批判を生じさせ,交通局に対する信頼の低下につながり得ることは否めないが,被告が平成24年2月の時点で本件通知を発出した 上で,北九州市バス事業の経営上の判断として,待機時間は休憩時間である旨を周知したものと認められるから,上記のようなリスクがあるからといって,本件請求期間において原告らが待機時間中に乗客対応を行うことを義務付けられていたことにはならないというべきである。 以上の点について,原告らは,休憩施設のない転回場所も多く,バス の運転業務に従事している間,乗務員は私金の携帯を禁止されているこ ともあって,待機時間中もバスから離れて過ごすことができず,場所的に拘束されていたとも主張する。しかし,原告らの主張する事情は,バスの運転業務の間の時間であることに伴うやむを得ない制約であるというべきであり,仮にそのことにより,乗客から対応を求められることが増えたとしても,これらの事情から,直ちに乗務員が待機時間中に乗客 対応等の役務の提供を義務付け に伴うやむを得ない制約であるというべきであり,仮にそのことにより,乗客から対応を求められることが増えたとしても,これらの事情から,直ちに乗務員が待機時間中に乗客 対応等の役務の提供を義務付けられていたということはできない。 また,原告らは,被告は乗務員に対し待機時間中に乗客対応を行わなくてよいという趣旨の指示をしていなかったとも主張するが,被告は,乗務員に対し,待機時間は休憩時間であり,自由に使える時間であることを周知していたのであるから被告が特定の業務を免 除する旨の指示をしていなかったとしても,乗務員が待機時間中に当該業務を行うことを義務付けられていたことになるものではない。したがない。 さらに,原告らは,「交通局職員心構え」(甲13)における「お客 様との接遇にあたっては,一刻も気持ちの緩みは許されない」等の記載及び「自動車乗務員服務心得」(甲14)における「待合旅客から行先等について問い合わせがあったときは,それに答えなければならない」との規定(68条〔案内の徹底〕2項後段)からすると,乗務員は,待機時間中にも乗客対応を行うことを期待されていたと主張するが,これ らの記載又は規定は,労基法上の労働時間として定められた時間中の業務に関するものと読むのが自然であり,休憩時間とされている時間中にまで乗客対応を求めるものではないと解されるから,原告らの上記主張は採用できない。 エ原告らは,乗務員は待機時間中も臨機応変にバスを移動させる必要が あったことから,待機時間は手待時間として労基法上の労働時間に当た ると主張する。 まず,e駅,c駅西口及びc駅(北口)の各転回場所については,同時に複数のバスが停止していることがあったものの,運行指示表 時間として労基法上の労働時間に当た ると主張する。 まず,e駅,c駅西口及びc駅(北口)の各転回場所については,同時に複数のバスが停止していることがあったものの,運行指示表又は発車順番表により各転回場所で待機するバスの発車時刻を知ることができ 乗務員が臨機応変にバスを移動させることができるように常に待機していなければならなかったとはいい難い。確かに,他のバスの遅延や周囲の交通状況により,運行指示表又は発車順番表のとおりに運行することができない場合もあると考えられるが,証拠(乙106)によれば,これらの転回場所においても,乗務員が待機時間中にトイレ以外の理由で もバスを離れることがあったことがうかがわれ,このことからすると,上記の事情を考慮しても,乗務員が待機時間中に予定外の移動を行わなければならないことが度々あったとは認められないから,これらの事情は上記認定を左右するまでのものとは考え難い。 次に,g駅の転回場所についても,同時に複数のバスが停止している ことがあったものの,平成26年6月のダイヤ改正により,ダイヤ上複証拠(甲109,原告E本人)及び弁論の全趣旨によれば,同転回場所においては,仮に複数のバスが同時に待機することになったとしても,本来の待機場所及びそれとは異なる場所で待機することができ,その場合であっ ても他のバスが通過することのできる程度の間隔があったものといえるから,同転回場所において,乗務員が常に待機時間中の突発的な移動に備えておかなければならなかったものとは認め難い。 また,h陸上競技場(待機場側)の転回場所については,後に来たバスが先に出発する場合,先に来たバスは,運行指示表上の指示により, これにより突発的な移動の 認め難い。 また,h陸上競技場(待機場側)の転回場所については,後に来たバスが先に出発する場合,先に来たバスは,運行指示表上の指示により, これにより突発的な移動の必要性が生じることを回避することができたと考えられる。確かに,証拠(甲110,証人M,原告E本人)によれば,本来は先に到着しているはずのバスが遅れてきたことにより,そのバスが出発するために,先に到着したバスが転回場所から移動せざるを得ない状況が生じることがあったと認められるが,証拠(証人M)及び 弁論の全趣旨によれば,同転回場所で複数のバスが同時に待機することは,ダイヤ上平日に各2回あったにすぎないことが認められ,このことに照らすと,上記のような状況が度々生じるものであったとは認められない。そうすると,同転回場所についても,上記のような状況が生じていたことから,待機時間中に乗務員が手待ち状態にあったということは できない。 他の転回場所については,それらの各転回場所において,待機時間中,突発的にバスを移動させる必要が生じることが度々あったと認めるに足りる的確な証拠はない上(特に,乗務員控室のある転回場所及び始点のバス停と同一の場所にある転回場所については,突発的な移動の必要が 頻繁に生じることは考えにくい。),本件全証拠によっても各転回場所における北九州市バスの運行の状況や,他の車両の交通状況が明らかでないことからすると,これらの転回場所においても,待機時間中,乗務員が突発的なバスの移動に備えて待機していなければならなかったとは認められない。 以上の各事情に照らすと,本件請求期間において,乗務員は,待機時間中,転回場所において突発的なバスの移動に臨機応変に対応することができるよう備えてお かったとは認められない。 以上の各事情に照らすと,本件請求期間において,乗務員は,待機時間中,転回場所において突発的なバスの移動に臨機応変に対応することができるよう備えておくことを労働契約上義務付けられていたと評価することはできないというべきである。 オなお,原告らは,待機時間の労基法上の労働時間該当性を基礎づける事 情として,待機時間中バスの遺留品の有無の確認及び車内清掃の各業務に 転回時間にとどまらない時間を要する場合がある旨主張する。 しかし,証拠(乙110,111)によれば,転回場所におけるこれらの業務に要する時間は,おおむね各転回場所の転回時間内に収まっていたことがうかがわれる。また,上記の各業務は,バスが転回場所に到着した際に行われるものであり(仮に,この際に行わなか ったとしても,乗務員は,調整時間中の任意の時期にこれらの業務を行うことができる。),業務の発生時期が不特定であったとはいえないことからすると,乗務員が待機時間中にこれらの業務の発生に備えておかなければならなかったとはいえないから,仮に,これらの業務を行うために転回時間を超える時間を要することがあったとしても,その時間については, 実作業時間として労基法上の労働時間に当たり得ることは格別,そのことは,待機時間のうちの不活動時間が労基法上の労働時間に当たることを基礎づける事情にはならないというべきである。なお,被告においては,転回場所における業務が転回時間内に収まらず,乗務員が待機時間中に業務を行った場合には,乗務員は遅れ時分報告書を提出し,所要の確認のうえ, 遅れ時分として申告された時間を労働時間として扱って賃金の計算をしていた。 また,証拠(甲106)によれば,乗務員は,待機時 は,乗務員は遅れ時分報告書を提出し,所要の確認のうえ, 遅れ時分として申告された時間を労働時間として扱って賃金の計算をしていた。 また,証拠(甲106)によれば,乗務員は,待機時間中に,バス車両の修理や整備に関する業務を行うことがあったと認められる。しかし,このような業務についても,上記の遺留品の確認及び車内清掃と同様に,待 機時間中その発生に備えておかなければならないという性質のものではない。したがって,この業務についても,待機時間のうちの不活動時間が労基法上の労働時間に当たることを基礎づける事情ということはできない。 さらに,原告らは,嘱託乗務員は待機時間中に主任や所長からの問合せ等にも対応する必要があったと主張し,証拠(甲106,108,証人M) によれば,乗務員が待機時間中に上記のような問合せ等に対応することが あったものと認められる。しかし,上記各証拠によれば,これらの対応は,上記のような問合せ等があればそれに応じて行えば足りるものであったことがうかがわれ,乗務員が待機時間中に問合せ等に常に対応できる態勢をとっているよう義務付けられていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,原告らの主張する上記の事情も,待機時間が労基法上の 労働時間に当たることを基礎づけるものではないというべきである。 カ以上によれば,本件請求期間中,待機時間一般について,その間乗務員が労働契約上の役務の提供を義務付けられており被告の指揮命令下に置かれていたものと評価することはできないから,本件請求期間中の待機時間(その間に実作業が生じた場合における当該作業に要した時間を除く。) が一般に労基法上の労働時間に当たるものとは認められないというべきである。 キところ ら,本件請求期間中の待機時間(その間に実作業が生じた場合における当該作業に要した時間を除く。) が一般に労基法上の労働時間に当たるものとは認められないというべきである。 キところで,以上に述べるところからすると,待機時間は,原告らが主張するところとは異なり,概ね休憩時間と認めるべきものということができる。しかし,これら判示したところに照らしても,例えば,転回時間内に 終了できない業務が発生したり,転回場所や始発場所におけるバスの移動等においても,なお労働時間と考えられる時間が全く存在しないとまでは見受けられず,他方において,遅れ報告書の提出が必ずしも普及していない現状に鑑みると,このような労働時間を存しないものとして割り切ることには躊躇を感ぜざるを得ない。 また,路線バスにおける一つの系統の運転業務と次の系統の運転業務との間の時間の一部であるという待機時間の性質に鑑みると,その間が短い待機時間においては,仮にその間に実作業が生じなかったとしても,乗務員は,待機時間の開始後直ちに次の運転業務に備える必要があったということができるから,転回時間の存在を考慮しても,乗 務員がその前後の労働から解放されていたとはいい難く,むしろ,乗務員 は,なお被告の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるというべきである。 そこで,以上に述べるような事情に加え,証拠(乙110)及び弁論の全趣旨から認められる各待機場所の性質及び待機時間の長さに鑑みて,待機時間の1割を労基法上の労働時間に当たるものと認めるのが相当である。 小括ア以上からすれば,各原告は,本件請求期間中の各自の待機時間のうち1割に相当する時間について,賃金を請求することができることになる。 めるのが相当である。 小括ア以上からすれば,各原告は,本件請求期間中の各自の待機時間のうち1割に相当する時間について,賃金を請求することができることになる。 そして,本件訴訟において,原告ら及び被告の間で,待機時間が労基法上の労働時間に当たるとした場合,割増率を119.07%として賃金の 額を計算することについては争いがなく,本件訴訟の経緯及び当事者の主張,立証の状況に鑑みると,上記割増率は十分に合理的であるといえるところ,前記の待機時間のうち労基法上の労働時間に当たる部分の割合に照らすと,上記の割増率を用いて各原告の上記部分に係る賃金の額を算定したとしても労働基準法37条1項本文の規律に実質的に反するものではな いと考えられる。したがって,各原告については,本件請求期間中,待機時間のうち労基法上の労働時間に当たる部分について,1時間当たり各自の基本給(時給)の119.07%に相当する賃金請求権が発生したものとするのが相当である。 イ以上のとおり算定した各原告の各月の待機時間中の労基法上の労働時間 に係る賃金から,各原告に支払われた各月の待機加算の額(同賃金の額が待機加算の額よりも小さい場合は同賃金の額の限度で)を控除すると,被告が各原告に対して支払うべき未払賃金の額(1円未満四捨五入。)は,各原告に係る待機時間給一覧表の「F.認容額」欄記載のとおりとなる(なお,被告は,待機加算は賃金に当たるものではないと主張するが,原告ら は,それぞれ,請求において各月の待機時間に係る賃金の額からその月に 支払われた待機加算の額を控除しており,これは,裁判所が認定した各月の待機時間に係る賃金の額が各原告の主張するものよりも小さい場合には,その認定額から,待機加算の額 賃金の額からその月に 支払われた待機加算の額を控除しており,これは,裁判所が認定した各月の待機時間に係る賃金の額が各原告の主張するものよりも小さい場合には,その認定額から,待機加算の額を控除した額の支払を求める趣旨であるとみるのが合理的であるから,裁判所が被告に支払を命ずるべき賃金の額を定めるに当たっては,待機加算の性質にかかわらず,その額を控除するの が相当である〔最高裁昭和53年7月25日第三小法廷判決・裁判集民事124号483頁参照〕。)。 前記1のとおり,待機時間のうち労基法上の労働時間に当たると認められる部分は待機時間全体の1割に止まり,そのうち法定時間外労働時間に当たる部 分はさらにその一部である。加えて,証拠(甲111,乙30,108,112,証人M)及び弁論の全趣旨によれば,前件訴訟の控訴審において,同訴訟の原告ら及び被告は,待機時間が労働時間と休憩時間との双方の性格を有する特殊なものであり,前件訴訟第一審判決の指摘した問題点を踏まえ,労使が待機時間の取扱いについて協議し,合意することが,前件訴訟に係る労使紛争の 適切な解決に資するとの裁判所の所見に基づき和解をしたこと,前件訴訟後も,待機時間の取扱いについて労使間で継続的に協議が行われていたこと,交通局は,前件請求期間後に,c駅(北口)における転回時間の増加,同時に複数のバスが停止する転回場所が少なくなるようにするダイヤ改正及び複数の転回場所の始点バス停と同一の場所への位置の変更等の措置を採ったことが認められ るのであり,これらの事情に鑑みると,労基法違反の程度は大きいものとはいえず,本件において,被告に対し,付加金の支払を命じることは相当でないというべきである。 したがって,被告に対し付加金の支払を求める これらの事情に鑑みると,労基法違反の程度は大きいものとはいえず,本件において,被告に対し,付加金の支払を命じることは相当でないというべきである。 したがって,被告に対し付加金の支払を求める原告らの請求はいずれも理由がない。 第4 結論 以上によれば,原告A,同B及び同Cの請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。 また,上記各原告を除くその余の各原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるからこれらを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却すべきである。なお,これらの各原告と被告との間に生じた訴訟費用については,民事訴 訟法64条ただし書を適用して,同原告らに全部を負担させることとする。 よって,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官鈴木博 裁判官山田智子 裁判官大塚真史は差し支えのため署名押印できない。 裁判長裁判官鈴木博

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