平成17(ワ)3 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成20年5月9日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文55,116 文字)

平成20年5月9日判決言渡平成17年(ワ)第3号損害賠償請求事件判決主文 被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,9500万円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,原告が,被告が開設・運営する甲病院(以下「被告病院」という)において,子宮筋腫に対する腹式子宮全摘出術(以下「本件手術」とい。 う)を受けた際,被告病院担当医師が,硬膜外麻酔を施行するため注射針を。 刺入したところ,第三腰椎神経根を損傷し,その結果,反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)を発症したとして,被告に対し,被告病院担当医師に注射針刺入の際の手技上の過失及び硬膜外麻酔に関する説明義務違反があったとして,診療契約上の債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づき,損害賠償の請求をした事案である。 争いのない事実等⑴原告は,昭和28年11月22日生まれの女性であり,被告病院入院前に は,世田谷区立幼稚園において教育嘱託員として勤務するほか,体育指導のボランティア活動等を行っていた(甲B21,乙A3。 )被告は,東京都世田谷区において,被告病院を開設・運営する社団法人である(弁論の全趣旨。 )A医師は,本件手術の際に,硬膜外麻酔を施行した被告病院麻酔科医師であり,B医師は,本件手術に際しての原告の主治医であった産婦人科医師である。 ⑵原告は,平成10年11月12日,被告病院を受診し,子宮腺筋症,子宮筋 際に,硬膜外麻酔を施行した被告病院麻酔科医師であり,B医師は,本件手術に際しての原告の主治医であった産婦人科医師である。 ⑵原告は,平成10年11月12日,被告病院を受診し,子宮腺筋症,子宮筋腫,頸管ポリープ,貧血との診断を受け,これらの疾病・症状の改善のため,子宮の摘出を要すると説明され,同日,原告及び被告間で,被告がこれらの疾病・症状についての治療を行うとの診療契約が成立した(乙A1。 )⑶原告は,平成10年11月22日,同月24日に子宮腺筋症,頸管ポリープに対する治療として腹式子宮全摘術を受ける予定で,被告病院に入院した。 原告は,被告病院医師及び看護師らに対し,麻酔に対して不安があることを訴え,被告病院が原告に交付した「手術を受けられる方へ」と題する文書(甲A1の2)には「麻酔は,手術前日の麻酔科医診察後に決定します」,。 との記載があったが,手術前日(同月23日)に麻酔科医師が原告を診察することはなかった(甲A1の1,2,乙A3。 )⑷平成10年11月24日,被告病院において,原告に対し,子宮筋腫に対する腹式子宮全摘術が行われた。同手術において,A医師が硬膜外麻酔を実施するために原告の腰部に硬膜外針を刺入した際,原告は,声を上げ身体を動かして,足に痺れがあったなどと訴え,A医師は,一度刺入した硬膜外針を抜去し,再度挿入した(乙A3,乙B9。 )⑸原告は,手術直後から,右足の痺れ,右下肢の知覚・運動低下等を訴え,右膝の膝蓋腱反射が減弱していることが認められ,その後も,右足の痺れ等の症状は継続したが,同年12月8日,被告病院を退院した。 また,被告病院院長であるC医師は,同月6日,原告及び原告の夫との話し合いにおいて,原告の上記症状について「医療ミスであると思う。足にかかった費用は検討してみようと思う」などと述べ を退院した。 また,被告病院院長であるC医師は,同月6日,原告及び原告の夫との話し合いにおいて,原告の上記症状について「医療ミスであると思う。足にかかった費用は検討してみようと思う」などと述べた(乙A3)。 。 ⑹原告は,平成11年5月25日,乙センター(担当は神経内科医師であるD医師)において,右下肢に感覚障害があり,両下肢に運動障害があるなどと診断され,平成11年6月15日,神経炎による両下肢機能障害として,身体障害者3級の認定を受け,平成15年7月3日,身体障害者2級の認定を受けた(甲A7,18の1,甲C1。 )⑺原告は,平成12年8月23日及び平成15年8月11日,丙診療所(以下「丙診療所」という。担当は整形外科E医師)において,反射性交感神経),性ジストロフィー(RSD,右下肢神経根障害との診断を受けた(甲A810,15。 )⑻原告は,平成10年12月8日の被告病院退院時に,被告病院のF事務長との間で,術後神経根麻痺に伴う検査費用,他の医療機関での治療費及び通院に要する費用は被告が負担すること,その後の補償については年明けに第三者を交えて話し合いをすることを合意した。 原告代理人及び被告代理人は,平成11年7月29日,原告の本件手術に関する補償問題について協議をしたが,被告代理人は,麻酔時におけるミスはなく,法的責任はないと述べたことから,何らの合意に至らなかった。原告は,同年10月18日,被告病院院長であるC医師との間で,原告の本件手術に関する補償問題について話し合いをし,同医師は,同月22日,原告に対し,電話で「手術前に元気で歩かれた原告が手術後歩けなくなったわ,けで,病院側の何らかの手落ちにより損傷を与えてしまった事実は動かせない事実であるので,病院は誠意を持って対応する」と述べた(甲A16,弁論 「手術前に元気で歩かれた原告が手術後歩けなくなったわ,けで,病院側の何らかの手落ちにより損傷を与えてしまった事実は動かせない事実であるので,病院は誠意を持って対応する」と述べた(甲A16,弁論の全趣旨。 )⑼被告は,原告に対し,被告病院退院時である平成10年12月8日から平 成15年4月7日まで,原告の請求に応じて,歩行補助具代金,タクシー代金,整骨院施術料,カイロプラティック施術料,温泉施設入館料等として,合計776万0277円を支払った(乙C1~97〔枝番号を付された書証を含む。 。〕)被告代理人は,平成15年3月31日,原告代理人に対し,今後の原告に対する治療費等の支払を停止するとの文書をファクシミリで送信し,その後,被告は原告に対する治療費等の支払をしなくなった(甲A6。 )⑽原告は,上記身体障害者認定に基づく障害者年金を,平成12年6月から平成14年3月までは年額103万5600円,平成14年4月から平成15年3月までは年額80万4200円,平成15年4月から平成16年3月までは年額79万7000円,平成16年4月から平成18年3月までは年額79万4500円,平成18年4月以降は年額79万2100円を受給した(甲C2の1,2。 )また,世田谷区より,心身障害者福祉手当として,平成11年6月から平成15年5月までは月額7500円,平成15年6月以降は月額1万6500円を受給した(甲C4。 ) 争点 ⑴担当医師に,硬膜外麻酔の際の手技上の過失があるか。 ⑵担当医師に,麻酔方法の選択・施行についての説明義務違反があるか。 ⑶原告は,RSDを発症しているか。 ⑷硬膜外麻酔の際の手技上の過失と原告の症状との因果関係があるか。 ⑸説明義務違反と原告の症状との因果関係があるか。 ⑹損害額 争点に関する当事者の か。 ⑶原告は,RSDを発症しているか。 ⑷硬膜外麻酔の際の手技上の過失と原告の症状との因果関係があるか。 ⑸説明義務違反と原告の症状との因果関係があるか。 ⑹損害額 争点に関する当事者の主張争点についての当事者の主張は,別紙当事者の主張のとおりである第3当裁判所の判断 事実関係証拠によれば,次の事実が認められる。 ⑴入院に至る経緯ア原告は,平成10年7月ころ,世田谷区が行った健康診断において貧血を指摘され,子宮筋腫であるとの診断を受けた。その後,貧血に対する内服治療等を続けていたが,改善は見られず,月経や出血も多くなったため,同年10月9日にG小児科(G医師)を受診するほか,数件の病院を受診した。原告は,いずれの病院においても,貧血は子宮筋腫による出血が原因と考えられるため,子宮摘出術が必要であるとの説明を受けた。原告は,知人の紹介によりH医院を受診し,被告病院医師でもあるC医師の診察を受け,その勧めにより,被告病院を受診することとした(甲A13,甲B12の1,甲B21,乙A3,原告。 )イ原告は,平成10年11月12日,被告病院産婦人科を受診した。診察に当たったC医師は,原告について,子宮筋腫,貧血,子宮腺筋症及び頸管ポリープと診断した。原告は,C医師に対し,以前に筋弛緩剤を摂取したことによって2,3日間立てない状態になったことがあるため,手術の際に使用する麻酔薬に対して不安を持っていることを伝えたところ,同医師は,被告病院麻酔科のA医師に電話で確認した上,特に検査の必要はないとして,詳しいことは後日麻酔科医師から説明がされると説明した。同日,原告は,被告病院で手術を受けることとし,11月22日に入院し,同月24日に手術をするとの予約をし,同月19日,被告病院において検査を受けた(甲B21,乙A1, 師から説明がされると説明した。同日,原告は,被告病院で手術を受けることとし,11月22日に入院し,同月24日に手術をするとの予約をし,同月19日,被告病院において検査を受けた(甲B21,乙A1,3,A。 )⑵本件手術までの経過ア原告は,平成10年11月22日,被告病院に入院した。原告は,看護師に対し,筋弛緩剤を摂取したことによって2,3日間立てない状態になったことや,セデス(鎮痛剤)を摂取したことによって筋肉がつった状態 となったことを伝え,手術の際に使用する麻酔薬に対して不安を持っていることを伝えた(甲B21,乙A3,原告。 )原告は,同日,麻酔問診票に,喘息,そば,たばこ,豚肉に対するアレルギーがあること,じんましんの既往があること,筋弛緩剤を服用して3日間起きあがれなかったことがあるなどと記載した(甲B21,乙A3,原告。 )また,原告及び夫であるIは「このたび,私が貴院において,手術,,麻酔,処置,検査等を受けるにあたり,担当医からその内容について十分な説明を受け,診療上必要であることを理解しましたので,その実施を承諾します」との記載がある承諾書に署名・押印をしたものの,実際には。 同日までに,被告病院の担当医師及び麻酔科医師からの説明はされていなかった(甲B21,乙A3,原告,弁論の全趣旨。 )原告は,入院時に,被告病院から「手術を受けられる方へ」と題する書面の交付を受けた。同書面には「あなたの手術は11月24日3番目に,予定されています「家族‐11頃「麻酔は手術前日の麻酔医診察後。」,」,に決定します。*全身麻酔…眠っている状態で痛みは感じません。*腰椎麻酔…下半身は麻痺しますが意識はあります」等の記載があった(甲A。 1の2,甲B21,原告。 )イ同月23日,C医師の診察を受け,術前の検査 *全身麻酔…眠っている状態で痛みは感じません。*腰椎麻酔…下半身は麻痺しますが意識はあります」等の記載があった(甲A。 1の2,甲B21,原告。 )イ同月23日,C医師の診察を受け,術前の検査を受けた。その際に,原告は,麻酔薬に対する不安を訴えたが,同医師は,麻酔薬については,麻酔科医師から説明がされるなどと述べた。原告は,同日,看護師に対しても,担当医師からの説明がないため,麻酔薬に対して不安があるなどと述べたが,同日に,原告に対して,主治医による手術についての説明及び麻酔科医師による麻酔に関する説明はされなかった(甲A2,甲B21,乙A3,原告。 )⑶手術当日の経過 アB医師は,平成10年11月24日,被告病院に出勤しナースステーションに立ち寄ったところ,看護師から,原告が,担当医師からの説明がないことから不安な様子を見せているとの報告を受けた。B医師は,原告の病室を訪れ,原告に対し,入院診療計画書に沿って,病名は子宮腺筋症,子宮頸管ポリープ,貧血及び喘息であること,投薬によって貧血の治療を行い,開腹して子宮を摘出する予定であること,腹式子宮全摘出術を行うが開腹時に卵巣膿腫などの病変を認めた場合には切除する予定であること,推定される入院期間は2週間であること,術後に月経はなくなり,妊娠は不可能になるが,夫婦生活は可能であること,卵巣を残すため術後すぐには更年期障害にはならないこと等について説明をした。 原告は,B医師の説明が一通り終わった後に,顎をけがした際に整形外科で筋弛緩剤を処方され1錠摂取したところ,3日間立てない状態になったこと,セデスを摂取したことによって全身の筋肉がつったこと,手術の際に使用する麻酔薬に対して不安を持っていることを泣きながら伝え,麻酔科医師による説明があるかについて尋ねた。これに対し,同 になったこと,セデスを摂取したことによって全身の筋肉がつったこと,手術の際に使用する麻酔薬に対して不安を持っていることを泣きながら伝え,麻酔科医師による説明があるかについて尋ねた。これに対し,同医師は,麻酔科医師は既に手術に入っているため,説明のために来室はできないことを説明するとともに,筋弛緩剤のエピソードに関しては,薬剤の効果の持続時間を考えると1錠で3日間も効果が持続することは考え難く,原告が問題とするエピソードは筋弛緩剤の効果だとは考えられないし,本件手術の術後にはセデスを使用しないためセデスに関するエピソードも問題とならないと考え,原告にその旨を説明した。原告は,これらの説明を聞いても,なお不安を訴えた(甲B21,乙A3,乙B11,B,原告。 )同日午前10時20分,病室において,麻酔前投薬として,アトロピンが投与された(乙A3,なお,原告は,麻酔前投薬は,手術室においてされたとの供述をするが(甲B21,原告,そのような事実はないとする)証人Aの証言のほか,被告病院の麻酔記録には,午前10時20分にアト ロピンが投与されたとの記載があり,この記載の信用性を疑わせる事情も存在しないことからすれば,この点についての原告の供述は採用できない。 。)イ原告は,同日午前10時45分,ストレッチャーに乗せられ,手術室に入室した。A医師は,手術台に横たわった状態の原告に対し「麻酔担当,医師のAです」と自己紹介をした上,被告病院では子宮摘出術に対して。 は,全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して麻酔を行っていること,硬膜外麻酔とは,背骨の中に細いカテーテルを留置し,そこから麻酔薬を注入して,部分的に麻酔効果を得る方法であること,具体的方法としては,背中から針を刺して,その針を通してカテーテルを留置し,留置後は針を抜去する方法であ 中に細いカテーテルを留置し,そこから麻酔薬を注入して,部分的に麻酔効果を得る方法であること,具体的方法としては,背中から針を刺して,その針を通してカテーテルを留置し,留置後は針を抜去する方法であること,全身麻酔と硬膜外麻酔を併用すると,手術後の痛みが少なく,全身麻酔に用いる薬剤の量が抑えられるという利点があることなどを説明し,原告に対しても,全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して麻酔を行うことを告げた。原告は,A医師に対し,麻酔に関して心配なことがあるので聞いてもらえるかと尋ねたところ,A医師は,心配要りませんと返答した(甲B21,乙A3,乙B9,原告,A。 )ウA医師は,午前10時48分,原告に対し,硬膜外麻酔を施行するため,身体の右側を下にして横向きの体位をとり,背中を突き出すように指示したところ,原告は,その指示に従い,横向きの体位で背中を突き出すような姿勢をとった(乙A3,乙B9,A。 )エA医師は,原告に横向きの体位をとらせた後,感染防止のため,背部をイソジンで消毒し,硬膜外針を刺す際の痛みを和らげるため,硬膜外針を穿刺する部位である第2腰椎と第3腰椎の間に,細い針を皮膚表面及び少し奥まで刺入し,1%キシロカインを浸潤させた。 次に,A医師は,第2腰椎と第3腰椎の間に,硬膜外針を2ないし3㎝刺入し,針が棘上靱帯に到達した後は,ゆっくりとミリ単位で針を進めた。 その際,原告は,声をあげ,体をビクンと少し動かしたたため,A医師がどうしたのかを尋ねたところ,原告は,足に痺れが走ったと返答した。そのため,A医師は,すぐに硬膜外針を抜去し,原告の状態を尋ねたところ,原告は,今は大丈夫であると返答した。そこで,A医師は,再度,硬膜外針を穿刺し,前回と同様にして針を進め,針を5㎝程度刺入し,硬膜外腔に針先を到達させ,硬膜外針を通してカ 原告の状態を尋ねたところ,原告は,今は大丈夫であると返答した。そこで,A医師は,再度,硬膜外針を穿刺し,前回と同様にして針を進め,針を5㎝程度刺入し,硬膜外腔に針先を到達させ,硬膜外針を通してカテーテルを上向きに5㎝留置し,硬膜外針を抜去し,硬膜外麻酔の手技を終了し,10時58分,ラリンゲルマスクを用いて,全身麻酔を導入した(甲A25,甲B21,乙A3,乙B9,A。 )なお,原告は,硬膜外麻酔時の様子について,硬膜外針が進められた際,激しい電気的な刺激が体中を突き抜け,体がのけぞった状態になり,ギャーと叫んだと供述する(原告。しかしながら,そのような事実はないと)する証人Aの証言のほか,原告自身が,手術直後から記載した報告書(甲A16)の11月24日の欄には,硬膜外麻酔時の状況として「右下横,向きに背中を丸くして寝て背中にせきずい麻酔を打つ1本目を打った瞬間,仙蝶関節(ママ)から右足内ももつけ根を通って右膝内側,右足親指先へ電気ショックのような衝激(ママ)が走り,筋肉が反射的にビクンと動く」との記載があり,この記載と原告の供述する硬膜外麻酔時の状況は大きく異なること,手術時の看護記録には,硬膜外カテーテルについて,「スムーズに挿入する」との記載があること(乙A3)からすれば,この点についての原告の供述は採用できない。 また,原告は,その後A医師が2本目を追加しますと述べて,再度硬膜外針を穿刺したと供述する。しかしながら,そのような発言はしていないとする証人Aの証言のほか,上記のようにA医師は硬膜外針をいったん抜いた上で再度穿刺しているところ,この過程で追加するとの発言をすることは考え難く,手術記録及び麻酔記録には,麻酔薬を追加したとの記載は ないことからすれば,この点についての原告の供述も採用できない。 オ午前11時 いるところ,この過程で追加するとの発言をすることは考え難く,手術記録及び麻酔記録には,麻酔薬を追加したとの記載は ないことからすれば,この点についての原告の供述も採用できない。 オ午前11時7分,C医師は,B医師を助手として,腹式子宮全摘出術を開始し,午後0時3分,同手術は終了し,午後0時9分,ラリンゲルマスクは抜去された。午前11時55分からは,留置した硬膜外カテーテルからマーカイン等の硬膜外持続注入が開始された(乙A3。 )A医師は,原告に対し,2%カルボカイン(メピバカイン)を術中に10ml(200mg ,0.25%マーカイン(ブピバカイン)を術中から術)後に合計52ml(130mg)投与したが,原告に,アナフィラキシーショックあるいはこれに類する高度の血圧低下,頻脈,不整脈,心電図変化,気管支痙攣等は生じなかった(乙A3,乙B9,A。 )カ原告は,午後0時20分に病室に帰室したが,その際,目を開けるとめまいがすること,足に痺れ感があることを訴えた(乙A3。 )⑷退院までの経過ア原告は,平成10年11月25日,看護師に対し,右足の痺れは少し良くなったと述べた。両大腿部に蕁麻疹様の発疹が認められたが,B医師は術前からあったものと判断し,軟膏が処方された(乙A3,B。 )イ同月26日午前8時30分ころ,原告は,右大腿部に痺れ感があり,立位だと右下肢に力が入らないと訴え,自力ではトイレまで歩行できないため,車椅子を使用することとされた。原告は,同日午前9時に硬膜外カテーテルが抜去され,午後になって痺れ感が軽減したと申告したが,歩行はできなかった。 同日午後3時40分,原告がB医師に対し,右足(膝)に力が入らないと訴え,朝は右足全体が痺れていたが,今は膝の辺りが痺れていると述べたことから,B医師が診察したところ,原 が,歩行はできなかった。 同日午後3時40分,原告がB医師に対し,右足(膝)に力が入らないと訴え,朝は右足全体が痺れていたが,今は膝の辺りが痺れていると述べたことから,B医師が診察したところ,原告の左膝及び左右アキレス腱の反射は正常であったが,右膝の反射は減弱していた。B医師は,A医師に対し,原告が下肢の痺れを訴えていることを伝えて相談をしたところ,A 医師は,神経根にチューブ(管)が当たっていたためと思われ,術後鎮痛のための硬膜外持続注入を行っている患者では足の痺れを訴えることがあることから,もう少し経過を観察するよう指示した。 同日午後4時,原告は,右大腿部の感覚が無く,触っても分からない状態であると訴えた。担当の看護師は,脱力が著明であり,トイレの際にもつかまり立ちがやっとの状態であると判断した(甲A25,乙A3,原告,B,A。 )ウ同月27日午前7時ころ,原告は,右下肢の痺れが強く,夜も眠れない状態であり,膝周囲の知覚鈍麻があると訴え,午前8時30分ころには右腰部から足先まで痺れがあって膝が曲がらないと訴え,足関節の屈曲は可能であったが,右膝の屈伸はできない状態であった。しかし,同日午後4時ころには,原告は,歩行器を利用して歩行することが可能となり,右腰部から足先まで痺れがあって右膝が曲がらない状態であり,右下肢に知覚鈍麻があるものの,痺れ感が減少してきたと述べた。 診察に当たった産婦人科J医師は,麻酔科に対し,硬膜外チューブ抜去後,痛みが増悪し,右下肢がほとんど動かないという原告の主訴を診察依頼票により伝え,原告の診療を依頼した。A医師が原告を診察したところ,原告は右下肢の知覚・運動低下を訴え,右膝蓋腱反射の減弱が見られたため,同医師は,麻酔科診療録に「診察時右下肢知覚,運動低下,PTR,(膝蓋腱反射)低下あり 頼した。A医師が原告を診察したところ,原告は右下肢の知覚・運動低下を訴え,右膝蓋腱反射の減弱が見られたため,同医師は,麻酔科診療録に「診察時右下肢知覚,運動低下,PTR,(膝蓋腱反射)低下あり,硬膜外施行時に神経根に触れたために起こったものと考えられる」などと記載し,産婦人科に対しては「右下肢の知覚,・運動低下,PTR低下が認められます。神経根の障害が疑われますが,硬膜外血腫,膿瘍等を鑑別するため,整形外科受診をお願いします。神経根の障害であるならば,リハビリ,メチコバール内服で回復すると思います」との回答をした。 。 これを受けて,J医師は,整形外科に対し,診察依頼票により,硬膜外 チューブ挿入時に右下肢に電撃痛があったこと,手術後に右下肢の痺れ及び運動力の低下があることを伝え,硬膜外血腫の有無等を調べるために,原告の診察の依頼をした。整形外科K医師が診察をしたところ,右膝の膝蓋腱反射の減弱が見られ,右下肢の感覚減退が見られた。同医師は,MRI検査及びレントゲン検査を行い,11月30日に再度診察をするとの方針を立て,産婦人科に対し「第3腰椎神経根の障害と考えます。MRI,等至急精査を要します。11/30再診させてください」との回答をし。 た(乙A3ないし5,B,A。 )エ同月28日午前7時ころ,原告は,痺れ感も持続しているが減少していると訴え,スムーズではないものの介助なしで歩行できる状態であった(乙A3。 )原告は,同日,MRI検査を受けたくないとの意向を示し,右下肢の症状は改善したとして,B医師の面前で,片足立ちの姿勢をとってみせるなどした。また,原告は,被告病院の医師らに対し,同検査の延期あるいは中止を求める手紙を書いた。この手紙には「昨日の夕方ころより序々に,しびれが緩くなり右膝にも少しずつ感覚が戻りは をとってみせるなどした。また,原告は,被告病院の医師らに対し,同検査の延期あるいは中止を求める手紙を書いた。この手紙には「昨日の夕方ころより序々に,しびれが緩くなり右膝にも少しずつ感覚が戻りはじめ立てるようになりました。今朝(28日)8:00の様子は・右足を少し上挙できるようになった(15㎝・ゆっくり平らな廊下を歩けるようになった・右足を軸足)として片足立ち3秒できるようになった以上のように著しく回復いたしました「今はまだ完全な回復には遠く,中腰姿勢では全く力が入りま。」,せんし,流動的な動作には対応できませんが,昨日の昼からの短時間にずいぶん回復の兆しが見えてとても安心しました「現在の右足の感覚は。」,ゆるいしびれ感と感覚が5割程度戻ったような鈍感なだるさが少し残っているような気がします」などと記載されていた(乙A3,5,原告,。 B。 )同日午前10時30分ころ,原告は,車椅子でMRI室に行き,MRI 検査が開始されたが,間もなく原告は,MRI検査装置の中で大声で検査の中止を求めた。B医師は,検査室からの呼出により産婦人科外来からMRI検査室に駆けつけ,鎮静剤の投与を指示したが,原告が強く拒否したため,鎮静剤の投与を断念し,整形外科のL医師は検査の中止を指示した。 原告は,車椅子で帰室し,検査後から傷の奥が痛いと訴えた(甲B21,乙A3,乙B11,B,原告。 )また,原告がC医師に対し,B医師を原告の主治医から外して欲しいと訴えたことから,同日以降,B医師は原告を担当しなくなった。また,原告は,同日夜,看護師から痛み止めを勧められたが,それを拒否して使用しなかった(乙A3。 )オ原告は,同月29日,副腎皮質ホルモン剤であるプレドニンを飲んだら下肢がかゆくなり,発赤が生じたとして,薬を飲むことを拒否したが み止めを勧められたが,それを拒否して使用しなかった(乙A3。 )オ原告は,同月29日,副腎皮質ホルモン剤であるプレドニンを飲んだら下肢がかゆくなり,発赤が生じたとして,薬を飲むことを拒否したが,看護師が下肢を確認したところ,赤みは認められたが,湿疹等は認められなかった(乙A3。 )原告は,同日,下肢の症状につき,膝が曲がるようになり,感覚が戻ってきた,触られるとビリビリとした感覚が一瞬だけあると訴えた。また,右足の屈伸が自力で可能となった(乙A3。 )カ原告は,同月30日,右大腿部内側から外陰部にかけて感覚が鈍く,右足に痺れ感がある,動くとお腹が痛い,残便感があると訴えた。歩行器を使用すれば歩行は可能であったが,右足を引きずる状態であった(乙A3。 )J医師は,整形外科に対し,診療依頼票にて,MRIの結果及び今後の方針について相談をした。整形外科K医師が原告を診察したところ,右下肢に知覚異常及び感覚減退がみられたが,同医師は,回復傾向にあると判断し,産婦人科に対しては「MRI(T1(第1腰椎)のみ)上は条件,が悪いのですが血腫等明らかな異常はない様です。神経学的にも回復傾向 なので,このまま様子をみてよいと考えます。ステロイドはoff(中止,)メチコバール継続としてください」との回答をした(乙A3,5。 。 )キ原告は,同年12月1日,右大腿部の2分の1から脛の2分の1までベルトで締め付けられているような感じがする,右臀部の2分の1から右肛門周囲に麻痺している感じがある,温かいという感覚は感じたが,冷たいという感覚はない,残便感があるなどと訴えた(乙A3。 )原告は,担当看護師に対し,同月2日午前8時30分ころには,右足が痛い,右大腿部から下腿部にかけて痺れ感及び疼痛はないが,肛門周辺に麻痺感があると訴えた。 い,残便感があるなどと訴えた(乙A3。 )原告は,担当看護師に対し,同月2日午前8時30分ころには,右足が痛い,右大腿部から下腿部にかけて痺れ感及び疼痛はないが,肛門周辺に麻痺感があると訴えた。その後,同日午後4時ころには,術後初めてシャワーを浴びたところ,右下肢前面にシャワーを掛けても感覚が無く,裏側に掛けると痺れるなどと訴えた(乙A3。 )K医師は,婦人科に対し,原告の状態について,精神的な問題はあるものの,現在の回復力からみれば1か月くらいで相当の回復がみられると思われると報告した(乙A3。 )ク原告は,同月3日,手術後から背部から右下肢にかけて痺れが続いており,外陰部にも痺れ感があると訴えたが,看護師が観察したところ,右下肢に冷感及びチアノーゼはなく,歩行器を使用しての歩行が可能であった(乙A3。 )原告は,同月4日,関節,親指の付け根,背中など硬膜外チューブ挿入時にビビッときたところが痛む,痺れの強いような痛みがあると訴えた。 原告は,同日,整形外科を受診し,K医師が診察したところ,右背部から右下肢にかけての痺れ感を訴え,右下肢に知覚異常がみられ,腰痛もあるとされたが,同日から,リハビリテーションが開始された。K医師は,産婦人科からの診療依頼票に対し「リハビリテーションを開始します。本,人には2~3M(2,3か月)といってあります。1M(1か月)時に再check(再診察)を要します」との回答をした(乙A3,4。 。 ) ケ同月6日,原告の大腿部,背部及び腰部に膨隆疹,発赤が認められ,原告は,掻痒感を訴えたため,軟膏が塗布されたところ,症状の軽減が見られた(乙A3。 )同日,原告及び原告の夫は,C医師に対し,原告の足の症状についての説明を求めた。C医師は,説明が遅くなったことについて謝罪し,医療ミスであると 塗布されたところ,症状の軽減が見られた(乙A3。 )同日,原告及び原告の夫は,C医師に対し,原告の足の症状についての説明を求めた。C医師は,説明が遅くなったことについて謝罪し,医療ミスであると思う,足に関して掛かった費用は検討してみようと思う,また翌日の7日に話し合いの場を設ける予定であるなどと述べた(甲B21,乙A3,原告。 )同月7日午前2時30分ころ,左下眼瞼に発赤及び腫脹,胸腹部,背部及び大腿部に発赤がみられた。婦人科医師であるM医師が診察をし,強力ネオミノファーゲンCの点滴注射の必要性を説明したところ,原告は,点滴注射をすることに同意をしたため,強力ネオミノファーゲンCの点滴注射が行われ,その後,発赤疹等の症状は軽減した。M医師は,皮膚科に対し,診療依頼票により原告の診療を依頼したところ,皮膚科では,蕁麻疹と診断され,ポララミン錠(2mg)が処方された(乙A3,6。 )原告は,同日にも,右膝の疼痛及び痺れ感を訴えた(乙A3。 )同日午後6時ころから,C医師,J医師,N医師,A医師及びK医師が同席の上,被告病院側と原告及び原告の夫との間で話し合いが行われた。 その席上で,原告及び夫は,術前及び術後の被告病院からの説明が不足していたことについて不満を述べた。また,原告は,その当時の症状について,痛みと痺れがある,深部腱反射は翌日から減弱していた,肛門が締められるかときかれて大丈夫だと思い,そう答えたが,何日かたってウォシュレットの感覚が無くなっているのに気付いた,トイレで排便するのも困難であった,今は多少楽になってきているが,もと通りの状態にはなっていない,その後,ビリビリ痺れて正座をし続けた後のような感覚が出現し,膝を細いゴムで締め付けられる感覚がある,左右の足の長さが異なり,骨 盤がずれているのではないかと思って 通りの状態にはなっていない,その後,ビリビリ痺れて正座をし続けた後のような感覚が出現し,膝を細いゴムで締め付けられる感覚がある,左右の足の長さが異なり,骨 盤がずれているのではないかと思っているが,手術後に転倒した際にそうなったかどうかは分からないなどと説明した。これに対し,N医師は,原告の症状について,神経根の症状だけでは説明できないと述べた。また,同医師は,原告の症状はCRPStypeⅡ(RSD)である可能性が考えられること,その原因としては硬膜外麻酔が考えられること,後遺症が残る可能性があるためペインクリニック等に通院したほうがよいこと,放置しておくと筋肉が萎縮してしまうこともあるため,早期治療が必要であることなどを「反射性交感神経性筋萎縮症」と書くなどしながら説明した。 ,K医師は,原告の症状は神経根障害でも当てはまるので様子をみてもよいと考えられること,回復力には個人差があるため,回復に2ないし3か月かかるか半年かは何ともいえないと説明した。C医師は,MRI検査,リハビリ,補助具及び通院の際のタクシー代については被告が負担すること,退院は可能であるが,日常生活が難しければ入院していてもよいことなどを説明した。原告は,毎週金曜日にリハビリ,整形外科,婦人科,麻酔科受診のために,被告病院に通院すると述べた(甲A4,甲B21,乙A3,原告。 )コ原告は,同月8日,被告病院を退院した(乙A3。 。 )原告は,被告病院退院後,そのままO整骨院(O柔道整復師)を訪れ,整体の治療を受けた。同整骨院においては,マッサージや木片を使用して神経に刺激を与える等の治療を受け,同整骨院では,平成14年3月ころまで原告に対する治療が継続して行われた(甲B11,19,21,原告。 )⑸退院後の経過ア原告は,平成11年3月3日,世田 神経に刺激を与える等の治療を受け,同整骨院では,平成14年3月ころまで原告に対する治療が継続して行われた(甲B11,19,21,原告。 )⑸退院後の経過ア原告は,平成11年3月3日,世田谷区に対し,教育嘱託員再任辞退届を提出した(甲A16,甲B21。 )原告は,平成11年5月25日,身体障害者認定を受けるための診断書 を取得する目的で,乙センターを受診した。診察に当たった同センター神経内科D医師は,同年6月1日付「身体障害者診断書・意見書(肢体不自由用」において,右下肢に感覚障害(感覚脱失,感覚鈍麻,異常感覚))がある,両下肢に運動障害(弛緩性麻痺)がある,起因部位としては脊髄,末梢神経,排尿・排便機能障害あり,形態異常なし,歩行能力は2m,歩行器を使用すれば屋外の移動は可能,障害名として両下肢不自由,原因となった疾病・外傷名として多発根神経炎,総合所見として,両下肢共に著しい障害のため起立位を10分と保つことができないなどと記載し,原告の障害の程度は,身体障害者福祉法別表の等級3級に該当するとの意見を示した(甲A7,18の2。 )原告は,平成11年6月15日,神経炎による両下肢機能障害として,身体障害者3級の認定を受けた(甲C1。 )イ原告は,平成12年8月9日,右下肢に痛みと痺れがある,右足の指間から右耳にかけて蟻走感がある,第5胸椎から7胸椎の左側及び第2から4腰椎の右側に焼け火箸で突き刺すような痛みがある,足の内側を水が流れるような錯覚がある,肛門が開く感覚がない,暑い感じがしないのに汗が多い,左手第1指及び第2指の関節が痛い,被告病院医師にMRI室で追いかけられる夢を見て,不安を感じるため,臨床心理士のカウンセリングを受けている,平成10年11月24日に不安を抱えて手術に入り,硬膜外麻酔の際に硬膜外 2指の関節が痛い,被告病院医師にMRI室で追いかけられる夢を見て,不安を感じるため,臨床心理士のカウンセリングを受けている,平成10年11月24日に不安を抱えて手術に入り,硬膜外麻酔の際に硬膜外針を刺してはじめに身体が仰け反ったなどの症状等を訴えて,丙診療所を受診した。E医師が触診をした結果,右下肢は左下肢に比べて冷たいと判断した(甲A15,甲B10,E。 )ウ原告は,同月23日,障害者年金を受給するための診断書を取得する目的で,丙診療所を受診し,E医師の診察を受けた。検査の結果,右のアキレス腱反射がやや減弱しているものの,下肢腱反射は左右とも概ね正常であると判断され,E医師は,その内容を診療録に記載した。E医師は,同 日付「国民年金厚生年金保険診断書(肢体の障害用(甲A8)に,障害)」の原因となった傷病名として反射性交感神経性ジストロフィー,右下肢神経根障害,傷病の原因又は誘因として硬膜外針での神経根穿刺,初診時(平成12年8月9日)の所見として「右下肢全体の疼痛,しびれが強,く又痛覚過敏と動作時痛が同部に著しい。同時に右下肢の感覚鈍麻がある。 右L1~L5領域の筋群はほとんど随意的に動かすことができず,S1以下は動作時疼痛が強いため使えない,補助用具使用状況として「屋内歩。」行はつかまり歩き(自宅屋内,屋外歩行は歩行車を用いる(常時。タク))シー待ち等立位の補助に松葉杖を用いる」などと記載した。また,E医。 師は,反射の検査所見として,左上下肢及び右上肢は正常とした。また,右下肢についてもいったんは正常と判断してその旨を記載したが,同記載を二重線で抹消し,疼痛のため検査困難と修正した(甲A8,15,甲B10,E,原告。 )エ原告は,同年12月6日及び平成13年8月1日,丙診療所を受診した。 原告は,平成1 旨を記載したが,同記載を二重線で抹消し,疼痛のため検査困難と修正した(甲A8,15,甲B10,E,原告。 )エ原告は,同年12月6日及び平成13年8月1日,丙診療所を受診した。 原告は,平成13年8月1日の受診時に,受診時の状態として,足の方は少し動きやすくなった,背中の痛み・苦しさも少し楽になった,2時間くらいまでは腰掛けられる,気温の差がよく分からない,屋内はT字杖を使用して歩くことができる,屋外では歩行車を使用すると述べた。また,同年1月に右手関節を捻挫し,同年3月20日には左肩がずれたようになった,同年5月初旬には左橈骨茎状突起部痛が生じたなどと述べた(甲A15。 )原告は,平成14年8月21日,丙診療所を受診し,波はあるが症状が固定したため,同年3月末でO整骨院への通院を中止したと述べた(甲A15。 )オ原告は,平成13年9月5日,健康管理についてのアドバイスを受けるために,P病院(担当はQ医師)を受診し,平成16年7月ころまで,同 院に通院し,体重管理等についてのアドバイスを受けた。原告は,初診時に,診察に当たったQ医師に対し,下肢の状態について,歩行器を使用すれば歩行はできるようになったが,痺れ及び痛みが続いていると述べた。 (甲A14の1,甲B13。 )原告は,同年9月19日,P病院において,麻酔薬についての皮内反応検査(皮内テスト)を受け,キシロカイン(+,マーカイン(+,カル))ボカイン(±)~(-,生食(-)との結果を得た。同院のX医師は,)平成17年4月18日,同日における原告の皮内反応検査の結果を記載した診断書を発行した(甲A12の1,14の1。 )カ原告は,平成14年12月26日,駐車場で左第5指をぶつけたとして,左第5指の痛みを主訴として,R整形外科を受診した。診察に当たった医師 記載した診断書を発行した(甲A12の1,14の1。 )カ原告は,平成14年12月26日,駐車場で左第5指をぶつけたとして,左第5指の痛みを主訴として,R整形外科を受診した。診察に当たった医師は,左足のレントゲン検査を行った上,消炎剤の軟膏であるアメルを処方した。同日の診療録には,レントゲン検査の所見についての記載はされなかった(甲A17。 )原告は,平成15年4月12日,歩行訓練をしていたところ,足をつくと痛むとして,R整形外科を受診した。診察に当たった医師は,両足のレントゲン検査を行った上,消炎剤の軟膏であるアメルを処方した。同日の診療録には,レントゲン検査の所見についての記載はされなかった(甲A17。 )キ原告は,同年3月26日,P病院を受診し,Q医師の診察を受けた。原告はQ医師に対し,平成14年12月23日に転倒して近くの整形外科を受診したところ,レントゲンにおいて趾先部に骨萎縮があると指摘されたと述べ,Q医師が診察したところ,左趾先部に圧痛があるが,腫脹はないと判断された。Q医師は,両足のレントゲン検査を行い,右中足骨近位指骨間骨幹部に骨萎縮がみられる,左足には骨折なし,左第4指近位指骨間に骨膿胞状の部分があるとの所見を示した。原告は,同年6月3日の受診 時に,両肢の右側に痺れが強いが,左側にも出現してきたなどと述べた(甲A14の1。 )ク原告は,同年6月16日,身体障害者等級の変更申請のための診断書を取得する目的で,乙センターを受診した。診察に当たった同センター神経),内科S医師は,同日付「身体障害者診断書・意見書(肢体不自由用」に両下肢,右上肢及び右手掌に感覚障害(感覚脱失,感覚鈍麻,異常感覚)及び運動障害(弛緩性麻痺)がある,左手第1指から3指に感覚障害(感覚脱失,感覚鈍麻,異常感覚)がある,起 意見書(肢体不自由用」に両下肢,右上肢及び右手掌に感覚障害(感覚脱失,感覚鈍麻,異常感覚)及び運動障害(弛緩性麻痺)がある,左手第1指から3指に感覚障害(感覚脱失,感覚鈍麻,異常感覚)がある,起因部位としては脊髄,末梢神経,排尿・排便機能障害あり,形態異常なし,補装具なしでの歩行及び起立位保持は不能,障害名として両下肢機能障害,原因となった疾病・外傷名として多発根神経炎,総合所見として,両下肢機能の著しい障害,2級相当,その他参考となる合併症状として根性疼痛などと記載し,原告の障害の程度は,身体障害者福祉法別表の等級2級に該当するとの意見を示した(甲A9,18の2。 )原告は,平成15年7月3日,神経炎による両下肢機能障害として,身体障害者2級の認定を受けた(甲C1。 )ケ原告は,平成15年8月11日,障害者年金を受給するための診断書を取得する目的で,丙診療所を受診し,E医師の診察を受け,日常生活の障害は増悪している,背部,頸部の痛み,手の痺れがある,立位で右膝がカクンと力が抜けて左足小指が脱臼したなどと訴えた。E医師は,同日付「国民年金厚生年金保険診断書(肢体の障害用」に,障害の原因となっ)た傷病名として反射性交感神経性ジストロフィー,右下肢神経根障害,傷病の原因又は誘因として硬膜外針での神経根穿刺,現在までの治療の内容,,,期間,経過,その他参考となる事項として「当診療所は年1回の診察でその間は整骨院等で治療している。この1年に左膝,左足の疼痛過敏が出現し,生活上の障害が増悪している,随伴する脊髄・根症状などの臨床。」 症状として「allodyniaの領域は右下肢全体に拡がっている,反射は,,。」上肢は左右とも正常であるが,下肢は左右とも疼痛過敏のため検査できない,補助用具使用状況として「自宅内はいざ 症状として「allodyniaの領域は右下肢全体に拡がっている,反射は,,。」上肢は左右とも正常であるが,下肢は左右とも疼痛過敏のため検査できない,補助用具使用状況として「自宅内はいざり移動。その他の移動は車椅子,移乗時に杖も使用」などと記載した(甲A10,15,E。 )コ原告は,平成16年4月21日,P病院を受診し,背部痛と四肢の痛みが合わさり,ほとんど歩行ができなくなったと述べた(甲A14の1。 )サ原告は,平成16年10月20日,国民年金厚生年金保険申請のための診断書を取得する目的で丙診療所を受診し,E医師の診察を受けた。E医師は,同日付「国民年金厚生年金保険診断書(肢体の障害用」に,障害)の原因となった傷病名として右下肢神経根障害,反射性交感神経性ジストロフィー,傷病の原因又は誘因として硬膜外針での神経根穿刺,現在までの治療の内容,期間,経過,その他参考となる事項として「当診療所は年1回の診察で,その間は整骨院等で診療を受けている。左下肢の疼痛過敏が強まり,左足の骨萎縮が著明になった。このため,車椅子の移乗等,移動ができない時がある,随伴する脊髄・根症状などの臨床症状として,。」「allodyniaは右下肢に強いが,左下肢にも出現している,補助用具使。」用状況として「自宅内はいざり移動。その他の移動は車椅子,移乗時に杖も使用,その他の精神・身体の障害の状態として「両下肢の疼痛が強い」ときは,移動ができずベッドに寝たきりの状態になる。現在,このような状態が多くなっている」などと記載した(甲A11,14の1。 。 )シ原告は,平成17年8月12日,丁病院循環器センターを受診し,内科医であるT医師の診察を受けた。T医師は,同日の診察結果に基づき,同年11月13日,E医師に対し,原告についての診療情報 。 )シ原告は,平成17年8月12日,丁病院循環器センターを受診し,内科医であるT医師の診察を受けた。T医師は,同日の診察結果に基づき,同年11月13日,E医師に対し,原告についての診療情報提供書を交付した。同診療情報提供書には,傷病名として①反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)②高血圧症との記載があるほか「ご指摘の通り,上肢の,血圧の左右差があり,最初は左鎖骨下動脈狭窄症が最も疑いました。確定 診断をつけるためにはMRAなど血管造影をする必要がありお勧めしましたが,薬,MRIに対する恐怖が強く,たとえ狭窄が証明できても治療適応にはならないので(症状がないため,行わないことにしました。とこ)ろが,同時血圧を上肢,下肢で測定すると左右の血圧差はありませんでした。更に,血圧が不安定であることから2次性高血圧の可能性もあり(腎血管性高血圧など,ホルモン検査を行いましたが,いずれも正常範囲で)2次性高血圧は否定的でした。以上から,発作性の右上肢の高血圧であり,原因はRSDと考えます。ただ,少しずつ血圧は高めになっておられるようなので,本態性高血圧として身体全体の血圧管理は今後必要であると思います」などの記載がある(甲A19。 。 )ス原告は,平成17年8月10日,丙診療所を受診し,本件の訴訟経過を伝えるとともに,意見書の作成を依頼した。 原告は,平成18年1月18日,同診療所を受診し,E医師は診察の結果,大腿部は右より左の方が温かく,下腿部は左より右の方が温かく,体毛は右下腿及び右足指に多いことを認めた(甲A15,E。 )セ原告は,平成19年4月27日,戊大学医学部付属病院を受診し,診察に当たったU医師は,同日付診断書を作成した。同診断書には「病名反,射性交感神経性ジストロフィー,平成19年1月10日初診の症状は 原告は,平成19年4月27日,戊大学医学部付属病院を受診し,診察に当たったU医師は,同日付診断書を作成した。同診断書には「病名反,射性交感神経性ジストロフィー,平成19年1月10日初診の症状は主に背部(首~足先まで)の神経因性疼痛(しびれを伴う痛み,安静時の突出痛+,allodynia+)です。当日,アモキサン(抗うつ薬)10mg内服してもらい観察したところ,内服20分后に右足のふるえとしびれ増悪しました。血圧左右差あり(右173/103,左147/107,その後)血圧変化なく,ふるえ軽減し,帰宅しました。その後内服は中止しました。 既往に薬物アレルギー(キシロカイン,カルボカイン,マーカイン)あるため,内服薬による治療も困難と考えました」などとの記載がある(甲。 B27。 ) ソ原告は,被告病院退院後,平成19年4月までに,30を超える複数の医療機関を受診した(甲B21,26,原告。 )⑹庚病院への受診経過ア原告は,平成19年4月5日,己クリニックQ医師の紹介により,庚病院を受診した。原告は,診察に当たったV医師に対し,右膝裏,踵裏,右背部のアロディニアが強い,脊柱の両側から焼け火箸を当てられたような痛みがある,肩甲骨の部分をナイフで切られるような痛みがある,片手ずつは挙げられるが,両手を挙げようとすると疼痛が生じるなどと訴え,頭部を挙上すると疼痛が生じる,体の右側に知覚低下がある,寒暖の感覚が)。 分からないなどと述べた(甲A22の1,2,Vの書面尋問事項回答書イ原告は,同月13日,庚病院を受診し,V医師は,採血及び両下肢レントゲン検査を行った。このときのレントゲン検査の結果では,骨萎縮,骨脱灰は認められなかった。同年5月16日の診察時には,右下肢の体毛は第1指に濃いと判断された。また,同年4月25日の受診 両下肢レントゲン検査を行った。このときのレントゲン検査の結果では,骨萎縮,骨脱灰は認められなかった。同年5月16日の診察時には,右下肢の体毛は第1指に濃いと判断された。また,同年4月25日の受診時には,治療前に見られなかった足底の発汗が,治療後には右足底にのみ見られるようになったとされている(甲A22の1,甲A24の1,3,乙B22,24,Vの書面尋問事項回答書。 )原告は,およそ週1回程度の頻度で,同院に通院し,低出力レーザーによる光線療法(星状神経節照射)を受け,治療後には痛みが改善するなどの効果がみられた(甲A22の1,2,甲B28,Vの書面尋問事項回答書。 )なお,原告は,庚病院から平成19年5月1日付けの診断書の交付を受けたが,同診断書には,病名は神経障害性疼痛,複雑性局所疼痛症候群),(CRPS(反射性交感神経性ジストロフィーRSD)との記載があり「H19.4.5当院紹介受診,アロディニア,灼熱痛など右腰下肢を中心に強く上記状態と診断した。その后局麻剤アレルギーありにて交感神経 ブロック療法できず。低出力レーザーによる光線療法で加療中である」。 と記載されている(甲B28。 )ウ原告は,同年6月6日に庚病院を受診し,診察に当たった医師に対し,自己の状態について,平らな道で歩行器を使って歩行することができた,屋内ではつかまり歩行はできない,現状では立位保持はできるが,つま先に力が入らず歩行はできないなどと申告した(甲A22の1。 )原告は,同年7月13日に庚病院に受診し,両足首以下に知覚低下がある,右下腿にアロディニアがある,体毛は左よりも右に多いとされた。また,右下腿に触れられるとビッと上まで響く,光線療法前よりも感覚が改善してきている,右足指の感覚ははっきりせず,右大腿部に痙攣があるが,光線療法後は ィニアがある,体毛は左よりも右に多いとされた。また,右下腿に触れられるとビッと上まで響く,光線療法前よりも感覚が改善してきている,右足指の感覚ははっきりせず,右大腿部に痙攣があるが,光線療法後は痙攣回数が減少したなどと述べた。また,同月20日の受診時には,右大腿部の裏の部分にビールの泡が付いたような感覚が残っているが,アロディニアは減少しているなどと述べた(甲A22の1。 )エ原告は,同年7月27日の受診時には,当時の状態について,つかまり立ちで,杖で右を支え,左下肢を使用して移動していると申告し,右下肢痛,痺れ,痙攣があると述べ,同年8月3日の受診時には,リハビリで動かそうとすると,その後疼痛が増悪するなどと述べた(甲A22の1。 ) 医学的知見⑴反射性交感神経性萎縮症(RSD)ア定義反射性交感神経性萎縮症(RSD)とは,外傷をはじめとして様々な原因によって引き起こされる難治性疼痛に加え,交感神経失調症状としての血管運動障害,発汗異常,さらに進行すると筋萎縮,皮膚及び爪等の退行性変化,骨粗鬆症などの局所栄養障害をきたす症候群などと定義される(甲B7。 )世界疼痛学会(IASP)は,1994年,それまでRSDやカウザル ギーとされていた疾患を,以下のとおり,CRPS(complexregionalpainsyndrome)typeⅠとtypeⅡに区分した(この区分は,診断基準としての意味も有する。RSDという名は,必ずしも交感神経が関与していな。)かったり,ジストロフィー症状が反射性に生ずる病態とも限らない場合があったり,病期が進んでから出現したりするため,適切ではないと考えられるようになったからである(甲B10(文献1,文献2,文献4,文献5,乙B2,4,5,Vの書面尋問事項回答書,E。 ))CR あったり,病期が進んでから出現したりするため,適切ではないと考えられるようになったからである(甲B10(文献1,文献2,文献4,文献5,乙B2,4,5,Vの書面尋問事項回答書,E。 ))CRPStypeⅠ(RSD) Ⅰ型は痛みを感じるような出来事のあとにひきおこされる症候群である。 自発痛又はアロディニア(もしくは痛覚過敏)がおこる。これは,単一の末梢神経支配領域にとどまらず,先行する外傷の程度と比べても不釣り合いなほど強い。 痛みが存在する部位に浮腫,皮膚血流異常,発汗機能異常がある。 または,損傷後に認められたことがある。 痛みの強さと機能異常を説明できるような他の疾患が存在しないこと。 CRPStypeⅡ(Causalgia) Ⅱ型は神経の損傷後に引き起こされる症候群である。 自発痛又はアロディニア(もしくは痛覚過敏)がおこる。これは,必ずしも損傷を受けた神経の支配領域にとどまらない。 痛みが存在する部位に浮腫,皮膚血流異常,発汗機能異常がある。 または,損傷後に認められたことがある。 痛みの強さと機能異常を説明できるような他の疾患が存在しないこと。 イ発症原因 RSDはさまざまな原因で発生する。主なものとしては,事故による損傷(捻挫,脱臼,骨折,切断,挫滅損傷,挫傷,切創,刺傷など,外科)手術その他の医原性損傷(輸液の際の正中神経損傷,筋肉注射による坐骨神経損傷など,特定の職業に基づく外傷などがある。さらに,心筋梗塞)や神経疾患などによっても起こり得るとされる。麻酔科領域では,麻酔導入時に刺激性薬物が血管外へ漏れたために生じた神経損傷や,アルコールなどの神経破壊薬を用いた神経ブロック時の不完全な遮断などによっても),RSDが発症する危険もあるとされている(甲B7,甲B10(文献4乙B 薬物が血管外へ漏れたために生じた神経損傷や,アルコールなどの神経破壊薬を用いた神経ブロック時の不完全な遮断などによっても),RSDが発症する危険もあるとされている(甲B7,甲B10(文献4乙B2。 )ウ症状RSDの疼痛は,ズキズキうずくもの,灼熱痛と様々である。一般に,安静時も痛み,ほとんどが持続性で,運動,寒熱,機械的刺激,ストレス等で増悪するため,患者は患部を防御する行動をみせる。神経支配と一致しない痛みが,損傷部位から経過につれて末梢側及び中枢側に拡大し,さらに同側の四肢,時には脊髄を挟んで反対側にまで広がることもある。知覚異常も痛みとして表現される。多くは患部を触る等,通常痛み刺激とはならない程度の非侵害刺激でも痛みを誘発するallodyniaや,知覚過敏を認める。 局所症状としては,皮膚の温度や色調の変化(暗黒色化)等皮膚の血流異常を伴う血管運動障害が起こる。初期は血管拡張,紅潮,熱感を認めるが,病状が進行すると,血管収縮,チアノーゼ様の冷感,発汗異常(減少又は過多)もみられる。皮膚は初期,皺が少なく,浮腫や腫脹を伴うが,次第に蒼白,乾燥することもある。爪の変形や筋萎縮,X線で骨の脱灰による斑状,あるいはびまん性の骨萎縮,関節の可動域制限や拘縮等,栄養障害による器質的及び機能的な変化を認めるとされる(甲B7,甲B10(文献1,文献2,文献5,甲B25,乙B4,5。 )) エ病期RSD(CRPStype1)の病期に関しては,1期から3期に分けられる。 第1期は,受傷から約3か月間の期間であり,もともとの外傷に関係して起こっている急性期として知られている。一般に,この病期にある患者は,感じる疼痛をひりひりやずきずきといった質のものと表現し,その痛みは四肢に持続する浮腫が生じると増強される。この病期には,機械 て起こっている急性期として知られている。一般に,この病期にある患者は,感じる疼痛をひりひりやずきずきといった質のものと表現し,その痛みは四肢に持続する浮腫が生じると増強される。この病期には,機械的刺激,多くの場合,寒冷によって誘発された痛覚過敏があると報告されている。また,感情的な刺激も痛みを悪化させることがあるとされる。この時点では,四肢は温かいか,あるいは冷たくなっており,侵された領域に限局して爪や髪の毛の過度の成長が見られる。 この時期が最も治療効果がよく,この時期の痛みを見逃さないことが治療のために大切であるとされる。 第2期は,受傷後約3か月後ころからの期間であり,成長異常期ともよばれ,第1期で見られた所見の増悪がみられ慢性の域に達する。侵された四肢は通常は冷たく虚血気味で,脱毛,線の入ったもろい爪,重度の浮腫性変化などがみられる。この段階では,疼痛はより高頻度に出現し,肉体的あるいは熱性の刺激によって増悪する。レントゲンでは,びまん性骨粗鬆症がみられる。 第3期すなわち萎縮期では,皮膚の薄化,拘縮の原因ともなる筋膜の肥厚,著名なびまん性骨性無機物喪失などの不可逆的な組織損傷が起こる。 第2期,第3期になると,種々の治療に抵抗性を示す。 上記のような病期の分類に対しては,病期の進行過程において同種の規則的な進行がみられることが前提になっている点で議論があり,患者の中には,疼痛や痛覚過敏の病歴が数年にわたるにもかかわらず,発育異常性変化が最小限しかみられないような例もあるとされる(甲B7,甲B10 (文献2・文献4・文献5,甲B25,乙B2,E。 ))オ診断患者の症状がRSDによるものか否かを診断するためには,上記の臨床症状が認められるか,損傷を受けた既往歴があるかを確認し,これらが認められる場合には,さらに詳しく 5,乙B2,E。 ))オ診断患者の症状がRSDによるものか否かを診断するためには,上記の臨床症状が認められるか,損傷を受けた既往歴があるかを確認し,これらが認められる場合には,さらに詳しく問診し,筆,氷,メジャー等の診察用小道具を取り出して,詳細な理学所見をとる必要があるとされる。また,X線撮影,サーモグラフィー,骨シンチグラフィも診断に有用であるとされ,RSDでは,X線で,骨萎縮や骨吸収像がみられ,骨シンチグラフィでは,罹患部位を中心に広範な集積像が認められる。骨萎縮の所見は,疼痛などのために荷重や歩行が不能になるために出現する。また,サーモグラフィーでは,罹患肢と健側に温度差がみられ,皮膚温度の変化は大きく,医療効果を反映することもあるため,サーモグラフィーによる定期的検査とその記録,評価は有用であるとされる(甲B10(文献1,文献4,乙B。 )2,4,5。 )RSDの診断のための基準の1つとして,以下のGibbonsらのRSDスコアがあり,この基準が我が国でよく用いられているとする文献がある(甲B10(文献2,文献4,乙B2,16。 ))Ⅰ各診断項目について,陽性=1点,疑陽性=0.5点,陰性又は未評価=0点とする。 アロディニア,痛覚過敏 灼熱痛 浮腫 皮膚の色調,体毛の変化 発汗の変化 罹患肢の温度変化 X線上の骨の脱灰像 血管運動障害と発汗機能障害の定量的測定 RSDに相当する骨シンチグラフィーの所見 交感神経ブロックの効果Ⅱ総合得点で5点以上:RSDの可能性高い3.5~4.5点:RSDの可能性あり3点未満:RSDではないカ治療RSDを含むCRPSに対する治療としては,理学療法(温冷交替浴,電気刺激法,レーザー療法,自動運動,他動運動,日常動作訓練等,神 5~4.5点:RSDの可能性あり3点未満:RSDではないカ治療RSDを含むCRPSに対する治療としては,理学療法(温冷交替浴,電気刺激法,レーザー療法,自動運動,他動運動,日常動作訓練等,神)経ブロック療法(局所静脈内ステロイド注入法,交感神経ブロック〔上肢の場合は星状神経節ブロック,下肢の場合は腰部交感神経ブロック,硬〕膜外ブロック,その他の末梢神経ブロック等,薬物療法(消炎鎮痛剤,)副腎皮質ステロイド剤,抗不安薬,抗うつ薬等,手術療法(脊髄神経根)入口部破壊術,胸腔鏡下胸部交感神経節切除術等)などがある(甲B7,甲B10(文献2,文献5,乙B4ないし6。 ))RSD及びカウザルギーに対しては,早期のブロック療法が予防及び治療上極めて重要である。また,交感神経ブロックにて症状が軽快することが,RSDの診断の一つの基準とされているが,近年では,交感神経ブロックにより症状の好転する症例はそれほど多くないとの指摘もある(甲B1,7,甲B10(文献2,乙B4ないし6。 ))⑵硬膜外麻酔ア硬膜外麻酔硬膜外麻酔とは,脊髄硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し,脊髄神経を麻痺させて,この支配領域の麻酔を得る方法をいう(甲B3。 )イ手技等手術室における成人の硬膜外穿刺は,鎮静剤ないし鎮痛剤を与えて鎮静 した状態で行う。坐位,側臥位,腹臥位のいずれの体位でも行うことができるが,手術室では側臥位で行うことが多い。患者は,背中をエビのように丸くして棘突起の間隙を拡げ,穿刺針が入りやすいようにする。刺入部を中心に広く消毒し,周囲に滅菌した覆布をかける。刺入の角度を決めたら,針の刺入部位に局所浸潤麻酔を施す。腰部の場合,皮膚から硬膜外腔までおよそ4㎝であるところ,まず,穿刺針の先端を黄色靱帯へ刺入し,内針を抜いて注射器に生理食 した覆布をかける。刺入の角度を決めたら,針の刺入部位に局所浸潤麻酔を施す。腰部の場合,皮膚から硬膜外腔までおよそ4㎝であるところ,まず,穿刺針の先端を黄色靱帯へ刺入し,内針を抜いて注射器に生理食塩水と気泡を入れて接続し,注射器内筒を加圧しながら針を進め,抵抗の消失を感じたら針先は硬膜外腔に入っているため,その位置で針を止める(抵抗消失法。その後,硬膜外カテーテル)を留置して針を抜き,カテーテルから薬剤を注入する(甲B3。 )使用する局所麻酔薬には,エステル型とアミド型があり,アミド型が多く使用される。アミド型の主な薬剤には,リドカイン,メピバカイン(カルボカイン,ロピバカイン,ブピバカイン(マーカイン)等がある(甲)B3。 )ウ硬膜外麻酔の特徴硬膜外麻酔の長所としては,硬膜外麻酔は術野からの侵害刺激が中枢神経に伝わるのを遮断するため,内分泌代謝反応の亢進,異化を抑えることができる点が挙げられている。また,筋弛緩効果があるため,筋弛緩薬がいらず,呼吸機能への影響が少なく,硬膜外麻酔を手術前から実施することにより,術後痛に対して先取りに鎮痛効果を期待でき,カテーテルを残して術後の鎮痛に利用することができ,また,全身麻酔の際に用いる薬剤の容量が少なくてすむとされている。 硬膜外麻酔の短所としては,効果の発現が脊髄くも膜下麻酔に比べると遅く,一部の脳神経の含まれている副交感神経をブロックできないので,内臓からの反射を抑制することができない点が挙げられる。また,交感神経を広範にブロックすると,血圧変動などの循環変動が大きく,地蔵硬膜 外麻酔で局所麻酔薬を反復注入すると,血中局所麻酔薬濃度が増加して中毒症状を現すことがある(甲B3ないし5,乙B9。 )全身麻酔と硬膜外麻酔を含む局所麻酔の臨床的違いとして,全身麻酔では,意識がな 外麻酔で局所麻酔薬を反復注入すると,血中局所麻酔薬濃度が増加して中毒症状を現すことがある(甲B3ないし5,乙B9。 )全身麻酔と硬膜外麻酔を含む局所麻酔の臨床的違いとして,全身麻酔では,意識がなく,呼吸数・心拍数は増加,血圧が上昇,代謝が亢進し,筋弛緩効果,術後鎮痛が弱いのに対し,局所麻酔では,意識があり,呼吸数は不変,心拍数は不変又は増加,血圧は不変又は低下,代謝は不変であり,筋弛緩,術後鎮痛が強い点が挙げられている(甲B5。 )エ合併症硬膜外麻酔の合併症としては,手技に基づいて起こる合併症,薬理学的合併症,生理学的合併症,神経学的合併症等がある。 このうち,硬膜外麻酔施行後の神経学的合併症の原因としては,硬膜外針やカテーテルの挿入・抜去に伴う神経組織の機械的損傷,局所麻酔薬の神経毒性,硬膜外血腫,硬膜外膿瘍,髄膜炎,くも膜炎,脊髄梗塞などが挙げられている。この機械的損傷による神経障害については,硬膜外針やカテーテル挿入時に,これらの器具が脊髄神経根を圧迫し,患者が感覚異常を訴えるような場合,神経組織との直接の接触から機械的損傷が起こっていれば,後に生じる可能性がある。このような神経学的合併症は,一過性の症状を呈することがあっても,重症の神経障害が遷延することはほとんどないとの指摘もある。不可逆的な障害が少ない原因としては,誤って針が神経根に近づいたり触れたりすると,患者が感覚異常を訴えて危険を知らせ,神経根は可動性で針が近づくと離れようとすることが指摘されている(甲B3,乙B8。 )硬膜外麻酔を含む局所麻酔の頻度の高い合併症として,頭痛,感染,局所の出血,神経障害,薬物反応,全身麻酔の頻度の高い合併症として,咽頭痛,嗄声,悪心,嘔吐,歯牙損傷,薬物アレルギー反応,心機能不全を指摘する文献がある(甲B5。 ) オ硬 ,頭痛,感染,局所の出血,神経障害,薬物反応,全身麻酔の頻度の高い合併症として,咽頭痛,嗄声,悪心,嘔吐,歯牙損傷,薬物アレルギー反応,心機能不全を指摘する文献がある(甲B5。 ) オ硬膜外麻酔と全身麻酔の併用手術中に意識があると,副作用が現れても患者が自覚症状を訴えるため,早期に発見できるという利点があるが,患者が不安や恐怖を抱くという欠点があり,このような精神的な影響は,内分泌代謝反応を亢進する。硬膜外麻酔は,体表からの侵害刺激を抑えることができるが,内臓からの侵害刺激を十分に抑えることはできない。これらの欠点を補うために,硬膜外麻酔と全身麻酔が併用される。このように,硬膜外麻酔と全身麻酔を併用する場合には,硬膜外麻酔による血圧低下に,全身麻酔の循環抑制が加わることから,血圧が著明に低下するため,局所麻酔薬の容量を減らして,交感神経の遮断範囲を狭くすることが多いとされる(甲B3,5。 )硬膜外麻酔を併用した全身麻酔は,術中のストレス軽減,全身麻酔薬の減量,術後鎮痛など多くの利点があるとされることから,手技的には習熟を要するものの,多くの施設で行われているとされる(甲B4。 )⑶局所麻酔薬アレルギー局所麻酔薬のアレルギーには,アナフィラキシーとアレルギー性接触性皮膚炎があり,最初にどちらのアレルギーか鑑別する必要がある。アナフィラキシーとアレルギー性接触性皮膚炎の鑑別は比較的容易であり,アナフィラキシーは全身の発赤,血圧低下,気管支痙攣などの全身症状を伴うのに対し,アレルギー性接触性皮膚炎は原則的に接触した皮膚の周囲に限局した腫脹を伴った皮膚症状が発現する。 全身症状を伴ったアナフィラキシーが疑われるときには,既往歴の徹底した聴取が必要である。多くの場合心因性または迷走神経反射を介した反応であることが多く,既往歴の た腫脹を伴った皮膚症状が発現する。 全身症状を伴ったアナフィラキシーが疑われるときには,既往歴の徹底した聴取が必要である。多くの場合心因性または迷走神経反射を介した反応であることが多く,既往歴の詳しい検討により,アレルギー反応か否かをある程度判断することができる。 既往歴の徹底した聴取から,アレルギー反応が否定的なときには,ブロック前に希釈した局所麻酔薬で皮内反応検査を行う。陰性であれば,注意しな がら神経ブロックを試みる。局所麻酔薬そのものによるアレルギーの頻度は非常に少なく,むしろ添加物であるメチルパラベンによることが多いため,「アレルギー」と訴えている患者のときには,添加物を含まない局所麻酔薬を使用することが勧められる。 アレルギー反応が疑われるときの確定診断のための検査について,アレルギー性接触性皮膚炎の確定診断にはパッチテストが有用であるが,アナフィラキシーの確定診断にはほとんど価値がない。局所麻酔薬アレルギーの可能性を訴える患者に行うべきテストとしては,段階的増量チャレンジテスト,皮内反応テストなどがあるが,これらのテストの有用性には議論があり,これらのテストでは十分ではないため,テスト結果が陰性であっても,十分な注意を払ってアナフィラキシー発症の可能性を常に念頭におき,局所麻酔薬を使用すべきであるとされている(甲B5,13,乙B9,A。 ) 争点⑴(担当医師に,硬膜外麻酔の際の手技上の過失があるか)について⑴原告は,医師が患者に対し硬膜外針を刺入するに当たっては,誤って針が神経根を傷つけないよう刺入する注意義務があるところ,A医師には,硬膜外針を刺入する際に原告の第三腰椎神経根を損傷した過失があると主張する。 しかしながら,A医師が,硬膜外針を刺入する際に,原告の第三腰椎神経根を損傷したと認めるに足りる証拠はな ころ,A医師には,硬膜外針を刺入する際に原告の第三腰椎神経根を損傷した過失があると主張する。 しかしながら,A医師が,硬膜外針を刺入する際に,原告の第三腰椎神経根を損傷したと認めるに足りる証拠はない。 また,前記1⑶エのとおり,A医師は,原告の第2腰椎と第3腰椎の間に,硬膜外針を2,3㎝刺入し,針が棘上靱帯に到達した後には,ゆっくりと針を進めていたところ,原告が電撃痛を感じ,その旨を同医師に伝えたことから,すぐに硬膜外針を抜去し,再度硬膜外針を穿刺したのであって,原告の反応も,最初の穿刺の際に身体がビクンと反射的に動いたのみであって,この過程において,A医師に注意義務違反があったことを認めるに足りる事情はない。 ⑵かえって,本件でA医師が行った硬膜外穿刺の手技は,前記2⑵イで認定 した硬膜外麻酔の一般的な手技を比較しても相違する点はなく,A医師は,一般的な手順に従って,本件における硬膜外穿刺の手技を行ったと認められるところである。また,前記1⑶エのとおり,原告が電撃痛を感じた後,A医師が硬膜外針を抜去すると,原告の神経症状が消失したこと,手術直後に膝蓋腱反射の減弱がみられたこと(ただし,その後,膝蓋腱反射は正常に回復していること)からすれば,硬膜外針の刺入の際に,硬膜外針は神経根に触れたものと認められる(乙B21,A。しかし,A医師は,硬膜外麻酔)施行時に神経根に針先を絶対に接触させないようにする方法は手技的に確立されていないとしているところ(乙B9,証人E医師の証言においても,)硬膜外穿刺は盲目的手技であり,硬膜外針の刺入の際に針を神経根に触れないようにするのは困難であるとされていることからすると(E,硬膜外針)の刺入の際に,針先が神経根に触れることは不可避であるというべきであり,針先が神経根に触れたことをもって,A医 を神経根に触れないようにするのは困難であるとされていることからすると(E,硬膜外針)の刺入の際に,針先が神経根に触れることは不可避であるというべきであり,針先が神経根に触れたことをもって,A医師に何らかの注意義務違反があったと認めることはできない。 ⑶なお,原告は,被告病院の医師らが,術後に神経根障害が疑われるとしたこと(乙A3)を,A医師が神経根を損傷したことの根拠とするようであるが,神経根への刺激が引き金になって生じた機能障害全般を含む概念である神経根の「障害」と神経根の「損傷」とは概念として異なるものであり,これらは区別されるべきであること(E)からすれば,被告病院の医師らの上記判断をもって,神経根の損傷があったことの根拠とすることはできない。 したがって,この点についての原告の主張には理由がない。 争点⑵(担当医師に,麻酔方法の選択・施行についての説明義務違反があるか)について⑴原告は,医師が侵襲のある行為をするときには,患者に対し,患者の症状と行われる手技,その手技に伴う危険性,その手技による回復の可能性,その手技に代わる代替手段を説明して,患者の同意を得る必要があり,原告が 被告病院外来受診時及び入院時に,薬に対する自己の体質についての不安を訴えており,被告病院では,麻酔科医師が手術前日に患者と会って麻酔方法を決定するとされていたとの事実があることも考え併せれば,原告の不安内容について確認した上で,原告と術前に十分話し合いの場を設け,その不安が単なる原告の杞憂であれば原告が得心する説明をすべきであり,予定している麻酔薬・麻酔方法が原告に何らかの副作用を及ぼす可能性が少しでも予想されるのであれば,その可能性を否定し,予定されている麻酔薬・麻酔方法の変更の必要性を確かめるために,使用する薬剤について皮内反応検査 酔薬・麻酔方法が原告に何らかの副作用を及ぼす可能性が少しでも予想されるのであれば,その可能性を否定し,予定されている麻酔薬・麻酔方法の変更の必要性を確かめるために,使用する薬剤について皮内反応検査を行い,その結果を踏まえて説明の上,原告から麻酔薬・麻酔方法についての同意を得る義務があったと主張する。 ⑵一般に,医師の説明は,患者が自らの身に行われようとする医療措置について,その利害得失を理解した上で,当該措置を受けるか否かについて熟慮し,決断することを助けるために行われるものであることからすれば,医師が,採用し得る複数の選択肢がある中で,患者の生命,身体に一定程度の危険性を有する措置を行うに当たっては,特段の事情がない限り,患者に対し,当該措置を受けることを決定するための資料とするために,患者の疾患についての診断,実施予定の措置の内容,当該措置に付随する危険性,他に選択可能な措置があれば,その内容と利害得失などについて説明すべき義務があると解される。また,上記の内容に含まれない情報であっても,患者が,特定の具体的な情報を欲していることを,医師が認識し又は認識し得べき状況にあった場合において,その情報が,患者が当該措置を受けるか否かを決定するに当たっての重要な情報である場合には,患者の自己決定を可能にするため,患者が欲している当該情報についても,説明義務の対象となるものと解するのが相当である。 ⑶アこれを本件で行われた麻酔方法に関してみると,麻酔は患者の生命,身体に危険を及ぼすおそれのある措置であること,原告は麻酔に使用される 薬剤についての不安を繰り返し述べていたことに鑑みれば,手術自体についての説明とともに,麻酔方法についても,説明義務の対象となるものというべきである。さらに,被告病院においては,手術前日に麻酔科医師が患 ついての不安を繰り返し述べていたことに鑑みれば,手術自体についての説明とともに,麻酔方法についても,説明義務の対象となるものというべきである。さらに,被告病院においては,手術前日に麻酔科医師が患者を診察した上で麻酔方法について決定するものとされていたことは前記1⑵アのとおりであり,本件においては,このことからも麻酔方法については説明義務の対象となることが首肯されるところである。 本件では,子宮筋腫に対する腹式子宮全摘出術の際に硬膜外麻酔を併用した全身麻酔を施行するものとされたのであるから,担当医師は,子宮筋腫に対して子宮摘出術が必要であることとともに,その際には硬膜外麻酔を併用した全身麻酔を行う予定であることをも伝えた上で,その具体的内容について説明をすべきである。また,前記2⑵エのとおり,硬膜外麻酔を含む局所麻酔には,頻度の高い合併症として,頭痛,感染,局所の出血,神経障害及び薬物反応,全身麻酔の頻度の高い合併症として,咽頭痛,嗄声,悪心,嘔吐,歯牙損傷,薬物アレルギー反応,心機能不全が指摘されており,また,硬膜外針やカテーテルの挿入・抜去に伴う神経組織の機械的損傷等による神経学的合併症の危険性があるとされていて,本件当時においても硬膜外麻酔によるものと疑われる複数の症例が報告されていたのであるから(甲B4,6,患者である原告に対し,これらのうち本件で)発生する可能性がある合併症等の危険性について説明すべき義務があるというべきである。さらに,本件手術に際しての麻酔方法としては,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔の外に,全身麻酔のみによる方法等も存在したのであるから(甲A1の2,甲B5,代替手段として全身麻酔のみの方法)等も存在すること,硬膜外麻酔と全身麻酔との併用による方法と全身麻酔のみの方法等との患者に対する具体的な利害得失につ も存在したのであるから(甲A1の2,甲B5,代替手段として全身麻酔のみの方法)等も存在すること,硬膜外麻酔と全身麻酔との併用による方法と全身麻酔のみの方法等との患者に対する具体的な利害得失について説明すべきである。具体的には,前記2⑵ウないしオのとおり,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔によれば,患者が手術中に意識がないため,不安や恐怖を感じない こと,術後痛に対して先取り的に鎮痛効果を期待でき,残されたカテーテルを術後鎮痛にも利用できること及び全身麻酔に使用する薬剤が少なくてすむことなどの利点がある一方で,上記のような硬膜外麻酔に伴う危険性があることなどについて説明をすべきである。 イさらに,本件では,前記1⑴イないし⑶アのとおり,麻酔に関する問診票に,筋弛緩剤を服用した際に2,3日間立てない状態になったとの記載があり,原告は,入院前及び入院中に,C医師及びB医師並びに看護師らに対し,筋弛緩剤に関するエピソード,セデスを服用したところ全身の筋肉が痙攣したとのエピソードを伝えた上で,麻酔の際に使用される薬剤についての不安を繰り返し述べており,その旨が診療録にも記載されていたのであるから,麻酔科担当医師であるA医師においても,原告の不安及びその内容について知るべきであるし,知ることができたものと認められる。 そして,このような原告の態度からすれば,原告にとっては,麻酔薬を含む手術の際に使用される薬剤についての情報は手術を受けるか否かを決定するに当たっての重要な情報であったと認められる。そうであれば,被告病院の担当医師には,原告に対し,上記原告の不安に対応した説明をすべき義務がある。 ウ次に,被告病院の担当医師が,原告の上記不安に対応して,具体的にいかなる説明をすべきかについて検討するに,原告が筋弛緩剤及びセデスを服用した際のエピ 告の不安に対応した説明をすべき義務がある。 ウ次に,被告病院の担当医師が,原告の上記不安に対応して,具体的にいかなる説明をすべきかについて検討するに,原告が筋弛緩剤及びセデスを服用した際のエピソードを繰り返し述べたのは上記のとおりであるが,これらのエピソードがあることにより麻酔薬についてのアレルギー等が疑われるということを認めるに足りる証拠はない。A医師は,筋弛緩薬に関するエピソードについては,事前に同薬に関するアレルギー等の有無を鋭敏に判断する手段はないこと,拮抗薬や効果を確認する神経筋刺激装置を使用することにより,筋弛緩薬の作用を調整しながら使用することは可能であること,筋弛緩薬の作用が多少遷延したとしても問題はないことから, 筋弛緩薬に関するエピソードについては問題とならないと判断したものであるところ(A,この判断が誤りであると認める証拠はなく,セデスに)関するエピソードについても,同様であると解されることからすれば,担当医師は,原告が述べるエピソードからは麻酔に使用する薬剤について特段の心配をする必要がないこと及びそのことについて一般人が納得できるに足りる程度の合理的な理由について説明をすべき義務がある。 エそして,上記のとおり,原告は,麻酔に対する不安を訴え,麻酔科医師による麻酔に関する説明を何度も求めていたところ,被告病院が入院時に原告に対して交付した「手術を受けられる方へ」と題する資料(甲A1の2)には,手術の前日に麻酔科医師による診察後に麻酔方法について決定するとの記載があることからすれば,原告が,麻酔の専門家である麻酔科医師の説明を待って,自己の麻酔に対する不安を解消し,麻酔方法,ひいては手術を受けるか否かを決定しようと考えることは無理からぬところであり,上記のような本件の事情の下においては,上記内容の る麻酔科医師の説明を待って,自己の麻酔に対する不安を解消し,麻酔方法,ひいては手術を受けるか否かを決定しようと考えることは無理からぬところであり,上記のような本件の事情の下においては,上記内容の麻酔に関する説明は,麻酔科医師によってされる必要があるというべきである。 ⑷アなお,原告は,説明の前提として,皮内反応検査を行うべきであったと主張する。しかしながら,原告は,筋弛緩剤及びセデスを服用した際のエピソードを繰り返し述べているものの,これらのエピソードがあることにより麻酔薬についてのアレルギーが疑われるということを認めるに足りる証拠はないのは上記のとおりである。 他方で,前記2⑶のとおり,局所麻酔薬アレルギーに対する皮内反応検査の有用性については議論があるところであり,V医師も,その書面尋問事項回答書において,通例では,術前薬剤アレルギー検査をしない施設がほとんどであると述べている。そして,原告が述べるエピソードからは麻酔に使用する薬剤について特別の心配をする必要がないとしたA医師の判断が誤りであると認めるに足りる事情はないことは上記のとおりである。 さらに,原告は,術前には,特定の麻酔薬ではなく,麻酔に使用される薬剤全般に対しての不安を訴えていたのであるから,原告の不安を解消するためには,全ての薬剤に対する検査が必要になるが,麻酔薬アレルギーに対する確実な検査はないとされているところであり,医学的にみて原告に麻酔薬に対する特別な危険性があることを窺わせる事情がないにもかかわらず,使用する薬剤全てについて検査を行うべきとすることは,医療の実態に即さないものといえる(A。 )これらの点からすると,被告病院の担当医師に,術前に,麻酔薬アレルギーについての検査をすべき義務があるとは認められず,この点についての原告の主張には理由が 療の実態に即さないものといえる(A。 )これらの点からすると,被告病院の担当医師に,術前に,麻酔薬アレルギーについての検査をすべき義務があるとは認められず,この点についての原告の主張には理由がない。 イこれに対し,Q医師は,甲B第13号証において,アレルギーの疑いのある局所麻酔剤を使用しない麻酔法の選択がどうしてもできない場合には,念のためプリックテストや皮内反応検査を行わざるを得ず,そのような場合における皮内テストの有用性は否定できないとの意見を述べている。しかしながら,上記のとおり,術前においては,原告が局所麻酔薬にアレルギーがあると認めるに足りる事情はないことからすれば,同医師の意見はその前提を欠くものである(なお,Q医師は,原告には,本件手術以前に,局所麻酔後に体調が悪くなった既往があるとの事実を前提に意見を述べているが,上記のとおり,原告が訴えていたのは,筋弛緩剤及び解熱・鎮痛剤であるセデスについての既往であり,局所麻酔後に体調が悪くなった既往があるとの事実を認めるに足りる証拠はないから,同医師の意見は,この点においても,前提を欠くものというべきである。また,同医師の意。)見によっても,皮内テスト等は念のために行わざるを得ないとされているのみであって,医学的見地から皮内テスト等を行うべき必要があるとの意見は示されておらず,この点に関する同医師の意見は採用できない。 また,原告が平成13年9月19日に受けた皮内検査の結果によれば, キシロカイン及びマーカインに陽性であるとされている(甲A12の1,甲A14の1,甲B13。しかしながら,この結果は,本件手術後に明)らかになった結果であり,本件手術当時には,原告に麻酔薬についてのアレルギーがあると客観的に疑われる状況になかったのであるから,この結果をもって,本件手 しかしながら,この結果は,本件手術後に明)らかになった結果であり,本件手術当時には,原告に麻酔薬についてのアレルギーがあると客観的に疑われる状況になかったのであるから,この結果をもって,本件手術当時に,被告病院の担当医師が,原告の麻酔薬アレルギーを疑って何らかの措置を採るべき義務があったと認めることはできないことは明らかである。 ⑸以上の説明義務の内容等を前提に,本件で行われた説明について検討する。 アまず,本件手術で行われる麻酔方法及びその具体的内容については,前記1⑶イのとおり,麻酔科担当医師であるA医師が,本件手術直前にではあるが,全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して麻酔を行うことを説明し,硬膜外麻酔の具体的内容について説明をしているところである。 しかしながら,その麻酔方法に伴う合併症及び予定する麻酔方法以外の代替手段については,説明をしたと認めるに足りる証拠はない。また,予定する麻酔方法以外の代替手段である全身麻酔のみの方法等と硬膜外麻酔と全身麻酔との併用による方法との患者に対する具体的な利害得失については,前記1⑶イのとおり,A医師は,全身麻酔と硬膜外麻酔を併用すると,手術後の痛みが少なく,全身麻酔に用いる薬剤の量が抑えられるという利点があるなどとして,実施予定の麻酔方法の利点については説明しているものの,その合併症等の危険性があることのデメリットについては,説明をしたと認めるに足りる証拠はない。 そして,これらの説明は,まずは被告病院麻酔科担当医師であるA医師によってなされるべきものであるから,同医師は,実施予定の硬膜外麻酔を併用した全身麻酔に伴う危険性,実施予定の硬膜外麻酔を併用した全身麻酔以外の代替手段,それらの利害得失についての説明義務を怠ったというべきである。 イ次に,原告の訴えた麻酔薬に関する不安に対応 用した全身麻酔に伴う危険性,実施予定の硬膜外麻酔を併用した全身麻酔以外の代替手段,それらの利害得失についての説明義務を怠ったというべきである。 イ次に,原告の訴えた麻酔薬に関する不安に対応した説明についてみると,平成10年11月12日の被告病院の外来受診時に,原告が筋弛緩剤に関する既往を伝えて,麻酔薬に関する不安を訴えたところ,C医師は,A医師に確認の上,特に検査の必要はないと説明している。 また,B医師は,手術当日である同月24日の朝,筋弛緩剤のエピソードに関しては,筋弛緩剤の薬効等を考えると原告が問題とするエピソードは筋弛緩剤の効果だとは考え難いこと,本件手術の術後にはセデスを使用しないため同薬に関するエピソードは問題とならないことなどから,原告が述べるエピソードからは麻酔に使用する薬剤について特段の心配をする必要がないことを説明している。 しかしながら,被告病院においては術前に麻酔科医師の診察があるとされていたことから,原告は,一貫して麻酔の専門家たる麻酔科医師の説明を求めており,その説明を待って自己が麻酔を受けるか否か,受けるとしてどのような方法によるかを熟慮し,決定しようとしていたと認められるのは上記のとおりであり,このような原告の意思にもかかわらず,原告に対し麻酔科医師であるA医師による説明の機会が設けられたのは,前記1⑶イのとおり,原告が手術室に運び込まれた後の手術台の上においてであり,しかも,この場においても,原告の麻酔薬に対する不安については,一般人が納得できる程度の理由をもって説明されなかったことから,解消されなかったのである。 このような経緯からすれば,原告の不安の内容が,いかに医学的にみて合理性を有しないものであったとしても,麻酔科医師による説明がされなかったことにより,原告が麻酔を受けるか否か,受け かったのである。 このような経緯からすれば,原告の不安の内容が,いかに医学的にみて合理性を有しないものであったとしても,麻酔科医師による説明がされなかったことにより,原告が麻酔を受けるか否か,受けるとしてどのような方法によるかを熟慮し,決定する場が奪われたと認めるのが相当であるから,被告病院の麻酔科担当医師であるA医師は,原告の麻酔に対する不安に関しての説明義務を怠ったものというべきである。 ⑹以上のとおり,被告病院麻酔科医師であるA医師には,本件で実施予定の硬膜外麻酔を併用した全身麻酔に伴う危険性,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔以外の代替手段の存在,実施予定の麻酔方法と代替手段との利害得失及び原告の麻酔に対する不安に対応しての説明を怠った点において,説明義務違反が認められる。 争点⑶(原告は,RSDを発症しているか)について⑴原告は,原告には,疼痛,痺れ,起立・歩行困難などの症状があり,RSDを発症していると主張する。 前記1⑷ないし⑹のとおりの被告病院退院までの経過及び退院後の医療機関等の受診状況からすれば,原告は,平成19年中において,主に右下肢に疼痛,痺れ及び感覚異常,背部に疼痛があり,立位保持はできるが,歩行には困難を来す状態であることが認められる。 ⑵そして,原告の症状については,前記1⑸ウ,ケ,サ,シ,セ及び1⑹イのとおり,平成12年8月23日,平成15年8月11日及び平成16年10月20日に丙診療所E医師によって,平成17年8月12日に丁病院T医師によって,平成19年4月27日に戊大学付属病院U医師によって,平成19年5月1日に庚病院V医師によって,それぞれ,反射性交感神経性ジストロフィー(RSDないしCRPS)と診断されている。 このうち,E医師及びV医師においては,上記2⑴アの世界疼痛学会のCRPSt 19年5月1日に庚病院V医師によって,それぞれ,反射性交感神経性ジストロフィー(RSDないしCRPS)と診断されている。 このうち,E医師及びV医師においては,上記2⑴アの世界疼痛学会のCRPStypeⅠ(RSD)の4基準(①痛みを感じるような出来事のあとにひきおこされる。②自発痛又はアロディニアもしくは痛覚過敏がおこる。これは,単一の末梢神経支配領域にとどまらず,先行する外傷の程度と比べても不釣り合いなほど強い。③痛みが存在する部位に浮腫,皮膚血流異常,発汗機能異常がある。または,損傷後に認められたことがある。④痛みの強さと機能異常を説明できるような他の疾患が存在しない)に依拠して,RSD。 )。 と診断されたものと認められる(甲B10,Vの書面尋問事項回答書,E ⑶しかしながら,この4基準については,診断の感受性(疾患のある者を疾患ありと判断する確率)は高いが,特異性(実際には疾患のない者を疾患なしと判断する確率)が低いことが指摘されている(甲B15,乙B6。ま)た,前記2⑴オのとおり,RSDの診断に際しては,世界疼痛学会の4基準に含まれない,X線検査,骨シンチグラフィー,サーモグラフィーなどの検査結果や,詳細な理学所見の有用性が多くの文献で指摘され,これらを項目に含む診断基準も存在しているところである。 そして,労働者災害補償保険の障害等級認定基準(平成15年8月8日付厚生労働省労働基準局通達・基発0808002号「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について)によれば,RSDについて」は,①関節拘縮,②骨の萎縮,③皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り,後遺障害と認定するとされている(乙B14,15。 )そして,本件で 縮,③皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り,後遺障害と認定するとされている(乙B14,15。 )そして,本件では,前記1⑹イのとおり,平成19年4月13日の庚病院におけるレントゲン検査の結果によれば,骨の萎縮は認められなかったのであるから,上記基準を満たさないことは明らかである。また,本件においては,骨シンチグラフィー,サーモグラフィーなどの検査所見についても,明らかではない。 以上の点からすれば,原告の症状について,RSDによる後遺障害であるとまでは認定することはできない⑷なお,被告は,原告の症状が心因性のものである可能性を指摘するが,原告を診察したY病院心療内科Z医師はこの点を否定しているところであり(甲B29,原告の症状が心因性のものであるとは認められない。 )⑸以上のとおりであり,原告の症状は,医師が医療機関において原告を診療する際には,RSDあるいはその疑いがあるとして診療に当たるのが相当であると認められるが,それを超えて,実際に原告にRSDが発症しており, それによる後遺障害であるとまでは認定することができないというべきである。 争点⑸(説明義務違反と原告の症状との因果関係があるか)について⑴原告は,被告病院の担当医師らが,原告に対し,麻酔薬を使用した際の副作用,危険性,硬膜外麻酔の具体的内容などについて,事前に説明義務を尽くしていれば,原告は,被告病院が予定している麻酔薬を用いての硬膜外麻酔方法についてはこれを断り,全身麻酔を選択するか,皮内反応検査をした上で最も危険性が少ない麻酔薬及び麻酔方法の選択を求め,あるいは,他の医療機関に転院する可能性があったから,被告病院の担当医師らの説明義務違反と原告に発生したRSDとの 択するか,皮内反応検査をした上で最も危険性が少ない麻酔薬及び麻酔方法の選択を求め,あるいは,他の医療機関に転院する可能性があったから,被告病院の担当医師らの説明義務違反と原告に発生したRSDとの間には因果関係が認められると主張する。 そこで,被告病院において,必要とされる説明が尽くされていれば,原告が,硬膜外麻酔の施行に同意せず,他の方法を選択したといえるかについて検討する。 ⑵ア前記1⑴イないし⑶アのとおり,原告は,被告病院に入院する以前の外来受診時から継続して,筋弛緩剤及びセデスにまつわるエピソードを述べて,麻酔に対する不安を訴えており,麻酔薬に対して強い不安を抱いていたものであるが,前記1⑴アのとおり,原告は,被告病院入院以前に,複数の医療機関を受診し,そのいずれの医療機関においても,子宮筋腫に対する子宮摘出術の必要性を説明されており,そのために,麻酔に対する不安を抱きつつも,手術を受けることを決意したものと考えられるのであるから,被告病院において,麻酔に関する必要な説明がされていれば,入院時の予定どおり,麻酔を使用した手術を受けることとしたものと認められる。 イそして,原告が,筋弛緩剤及びセデスにまつわるエピソードを繰り返し述べて,麻酔に対する不安を度々訴えていたことは上記のとおりであるが,原告は,手術前の時点において,特に硬膜外麻酔に使用する薬剤に限定し て,不安を有していたものではなく,麻酔に使用される薬剤全般について漠然とした不安を感じていたのであって,この原告の不安は,硬膜外麻酔に使用する麻酔薬だけでなく,全身麻酔に使用する薬剤についても同様に当てはまるものであると認められる。そうすると,前記2⑵ウ及びオのとおり,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔の方法によれば,全身麻酔の際に使用する薬剤が少量ですむという利点が 使用する薬剤についても同様に当てはまるものであると認められる。そうすると,前記2⑵ウ及びオのとおり,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔の方法によれば,全身麻酔の際に使用する薬剤が少量ですむという利点が認められるのであるから,この点は,麻酔薬全般に不安を感じていた原告にとっては,同方法を選択する大きな要因の一つになったものと考えられる。 また,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔には,硬膜外針挿入時の機械的損傷による神経障害などの危険を伴うものの,硬膜外麻酔にともなう術中のストレス軽減,術後鎮痛など多くの利点があるとされることから,手技的には習熟を要するものの,多くの施設で行われていることは,前記2⑵オのとおりである。 さらに,原告自身も,その本人尋問において,自分の体のことをきちんと納得できるように説明をしてくれる病院を選びたかったとの供述をしているところ,この供述からすれば,原告は,医師の意を尽くした説明がされれば,医師の薦める方法に従って,手術及び麻酔を受ける意思を有していたことが窺われるところである。 なお,本件における術前の状況において,被告病院の担当医師に,麻酔薬についての検査を行う義務があるといえないことは,上記のとおりである。 ウ上記の諸点からすれば,麻酔科担当医師であるA医師が原告に対し,麻酔に関して必要とされる説明を行っていれば,原告は,麻酔に対する当初の不安を多少なりとも解消し,同医師の薦めに従って,本件で実施されたとおり,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔の方法で麻酔を受けることを承諾した可能性が高いというべきであり,他に,A医師が必要とされる説明を 行っていれば,原告が全身麻酔のみの麻酔方法を選択し,あるいは,他の医療機関に転院したと認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件において,原告が麻酔に関して適切な説明を受けて とされる説明を 行っていれば,原告が全身麻酔のみの麻酔方法を選択し,あるいは,他の医療機関に転院したと認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件において,原告が麻酔に関して適切な説明を受けていれば,被告病院における硬膜外麻酔を併用した全身麻酔の麻酔方法を選択しなかったとは認められず,被告病院の担当医師の説明義務違反と,原告に発生した症状との間に因果関係は認められない。 争点⑹(損害額)について上記のとおり,原告は,麻酔に関して適切な説明を受けていたとしても,被告病院における硬膜外麻酔を併用した全身麻酔の麻酔方法を選択しなかったとまでは認められないが,原告は,術前に,麻酔に対する不安を度々訴えていたにもかかわらず,被告病院の担当医師の説明義務違反(事前に約束されていた麻酔科医師による診察とその際の説明がなかったこと)により,強く不安に感じていた麻酔薬及び麻酔方法について熟慮し,選択する機会を失ったというべきである。そして,前記1⑷ないし⑹のとおり,原告は,その後の長きに渡り,疼痛等の症状(ただし,原告の症状がRSDによるものと認められないことは前記のとおりである)に苦しみ,それまでの人生が一変してしまっていると。 ころ,その原因と思われる麻酔方法の選択について熟慮し選択する機会を与えられなかったことから,現に生じた結果を受け入れることが極めて困難となっており,それによって少なからぬ精神的苦痛を受けたものと認められる。 その精神的苦痛に対する慰謝料としては,説明義務違反の内容・程度等,本件に現れた一切の事情を考慮すると,200万円を認めるのが相当である。 また,被告病院の過失(説明義務違反)と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害としては,本件事案の内容等に照らし,20万円を認めるのが相当である。 なお,被告は,前記争いのない るのが相当である。 また,被告病院の過失(説明義務違反)と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害としては,本件事案の内容等に照らし,20万円を認めるのが相当である。 なお,被告は,前記争いのない事実等のとおり,原告の請求に応じて,歩行補助具代金,タクシー代金,整骨院施術料等として合計776万0277円を 支払っているが,これらは,被告病院の担当医師による説明義務違反に基づく慰謝料として支払われたものではない。 第4結語以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は,被告に対し,220万円及びこれに対する平成17年1月15日(同日が本件訴状送達の日の翌日であることは本件記録上明らかである)から支払済みま。 で民法所定年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官村田渉裁判官大嶋洋志裁判官小西安世は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官村田渉 別紙当事者の主張第1担当医師に,硬膜外麻酔の際の手技上の過失があるか。 (原告の主張) 硬膜外麻酔時に神経根を損傷したこと⑴硬膜外麻酔時の状況A医師は,平成10年11月24日午前10時45分,手術台上の原告と初めて会い,午前10時48分,硬膜外麻酔の施行として,硬膜外針を原告の第2,第3腰椎の間に刺入した。 ⑵神経根損傷が生じたことA医師は,原告に対する硬膜外針を原告の第2,第3腰椎の間に刺入した際,原告の同部位の神経根を硬膜外針により損傷させた。 神経根を損傷したことについて過失があること医師が患者に対し,硬膜外針を刺入するに当たっては,誤って針が神経根を傷つけないよう 間に刺入した際,原告の同部位の神経根を硬膜外針により損傷させた。 神経根を損傷したことについて過失があること医師が患者に対し,硬膜外針を刺入するに当たっては,誤って針が神経根を傷つけないよう刺入する注意義務があるところ,A医師は刺入針により原告の第三腰椎神経根を損傷した過失がある。 (被告の主張) 硬膜外麻酔時に針先が神経根に接触したが,損傷はしていないこと針先は,神経根に接触したが,神経根を損傷してはいない。損傷まではしていないと推認される根拠は,次の諸事実にある。 ⑴原告が,神経根ブロックの際のブロック針が神経根に当たったときの反応と類似の反応を示したので,A医師が原告にどうしたか尋ねたところ,原告は右足にしびれが走ったと訴えたので,すぐに硬膜外針を抜去して,これでどうかと再度尋ねたところ,原告はしびれがなくなったと答えた。 ⑵仮に,神経根を損傷させていたとすれば,原告は,抜去後すぐにしびれが なくなったと答えることはなく,また,例えば,平成10年11月30日に,歩行器を使用してはいるものの,スムーズに廊下を歩くなど,手術直後に順調な回復ぶりを示すことはなかったはずである。 ⑶原告は,平成11年1月26日のO整骨院での療法中や,翌12年8月23日の丙診療所のE医師の診察の際に,右の膝蓋腱反射が正常に見られたことが証拠上明らかであるが,もし,神経根を損傷させていたとすれば,原告の右膝蓋腱反射は消失または減弱したままであったはずである。 針先が神経根に接触したことについて過失はないことA医師は,原告の反応をよく観察しつつ,抵抗消失法を用いてゆっくりと注意深く針を進め,原告に神経根ブロックに類する反応が認められた時点で即座に穿刺行為を中止し,原告が足にしびれが走ったというので直ちに針を抜去しており,注意義務を完全に尽 抗消失法を用いてゆっくりと注意深く針を進め,原告に神経根ブロックに類する反応が認められた時点で即座に穿刺行為を中止し,原告が足にしびれが走ったというので直ちに針を抜去しており,注意義務を完全に尽くしたといえる。 なお,硬膜外穿刺が盲目的に行われるものである性質上,神経根に針先を100%絶対に接触させないようにする方法は手技的に確立されていないので,硬膜外麻酔時に針先が神経根に接触したことをもって,過失があったとすることはできない。 第2担当医師に,麻酔方法の選択・施行についての説明義務違反があるか。 (原告の主張) 薬物アレルギーについて術前に検査すべきこと⑴原告が薬物アレルギーであること原告は,本件手術前に,被告病院の医師・看護師に対し,薬物アレルギーがあること,筋弛緩剤を服用した際,3日間全身脱力状態となったこと,鎮痛剤セデスを服用した際,全身が痙攣状態となり,全身の筋肉が硬直状態になったこと等の説明を繰り返し行っていた。 なお,原告の薬物アレルギーは,麻酔薬に関していえば,マーカイン・キシロカイン・カルボカインの3種類にアレルギー反応を示すものであった。 ⑵薬物アレルギーについて検査すべき義務があること原告のかかる術前の説明・申告があることからしても,被告病院担当医師は,本件手術に当たり,予定している麻酔薬に対するアレルギー反応に関し,原告への安全性を確保するためにもそれら麻酔薬に関する検査義務があった。 1の検査結果を踏まえて,被告病院が,麻酔方法の選択・施行に際して説明すべき内容医師が侵襲のある行為をするときには,患者に対し,①症状と行われる手技,②その手段に伴う危険性,③その回復の可能性,④その手技に代わる代替手段を説明し,患者の同意を得る必要がある。 本件では,被告病院が麻酔薬に関する検査(プリックテス 患者に対し,①症状と行われる手技,②その手段に伴う危険性,③その回復の可能性,④その手技に代わる代替手段を説明し,患者の同意を得る必要がある。 本件では,被告病院が麻酔薬に関する検査(プリックテスト,皮内検査等)を行っていれば,原告にはキシロカイン及びマーカインについてアレルギー反応が陽性であり,カルボカインに擬陽性を示すことが判明したはずであるから,被告病院としては,これら薬剤を用いての硬膜外麻酔の危険性について,また麻酔方法として硬膜外麻酔を用いず,全身麻酔によっても手術が行えること等について,説明を原告に行うべきであった。 また,原告は,被告病院外来受診時にも,入院時にも,薬と自己の体質を大いに気にして,本件手術等に対する心配と不安を訴えていた経過があり,被告病院においては,麻酔科医師が手術前日に患者と会って麻酔方法を決定するとされている事実があることも考えあわせれば,原告が何を不安と考えているのか,原告の薬物アレルギーとは具体的に何か,麻酔の不安とは何か等について,原告と術前に十分話し合いの場を設け,その不安が単なる原告の杞憂であれば原告が得心する説明をすべきであり,予定している麻酔薬・麻酔方法が原告に何らかの副作用を及ぼす可能性が少しでも予想されるのであれば,その可能性を否定し,予定されている麻酔薬・麻酔方法の変更の必要性を確かめるために,上記の検査等を行い,その結果を踏まえて説明の上,原告から麻酔方法についての同意を得る義務があった。 ところが,本件では,被告病院の医師は,原告が薬物アレルギーに対する具体的既往歴を述べ,また麻酔方法・麻酔薬等に関する説明を求めたにもかかわらず,上記検査等を実施しないばかりか,原告のこれらの申告・要求を全く顧慮することなく無視した。 2の内容について担当医師から説明がされなかったこ 麻酔方法・麻酔薬等に関する説明を求めたにもかかわらず,上記検査等を実施しないばかりか,原告のこれらの申告・要求を全く顧慮することなく無視した。 2の内容について担当医師から説明がされなかったこと原告の主治医であるB医師は,原告の薬物アレルギーに関して何らの術前検査をしていないのであるから,原告の薬物アレルギーについての客観的データがないにもかかわらず,麻酔に関する原告の不安を一笑に付し,麻酔方法の選択・施行についても説明をしなかった。 2の内容について麻酔科医師から説明がされなかったこと麻酔医であるA医師は,手術が今始まるという段階になって,初めて原告と顔を合わせたものである。そして,A医師は,麻酔薬に対する不安・心配から,,麻酔に関する質問をしようとして「聞いてもらえるか」と尋ねた原告に対し「心配いりませんから」と言っただけで,原告の不安・心配の内容を聞こうともせず,硬膜外麻酔を施行するに当たり,かかる麻酔方法に伴う危険性についての説明や,麻酔方法として硬膜外麻酔と全身麻酔の併用以外の麻酔方法によっても手術が可能であるなどという説明を一切せず,原告の薬剤アレルギー等に対する不安感を解消する説明を全くしなかった。 原告の自己決定権を侵害していること被告病院は,原告に対する麻酔施行について,その説明義務を尽くさず,また原告の受けるべき医療行為について,同意を得ることなく患者の自己決定権を侵害したものである。 (被告の主張) 薬物アレルギーについて術前に特別の検査をすべき義務はないこと⑴原告は薬物アレルギーでないこと原告は,客観的には,薬物アレルギー体質の持ち主ではない。原告が術前 に訴えていた「薬が効きやすい体質」は「薬物アレルギー体質」とは異なる。 原告が薬物アレルギーである旨の診断書は1通も出されていない。 ,客観的には,薬物アレルギー体質の持ち主ではない。原告が術前 に訴えていた「薬が効きやすい体質」は「薬物アレルギー体質」とは異なる。 原告が薬物アレルギーである旨の診断書は1通も出されていない。P病院の診断書(甲A12)にも,その病名欄には,平成13年9月の皮内反応検査の結果が記載してあるだけで,原告が「麻酔薬アレルギー」であると書いてあるわけではない。原告が長年かかっているというG小児科アレルギークリニックのカルテ(甲A13)をみても,原告主張の薬物アレルギーを窺わせる記述はないし,原告が本件手術前にB医師や看護師に訴えたという,平成5年,6年ころの筋弛緩剤やセデスの効き過ぎのエピソードで,G小児科アレルギークリニックを受診した旨の記載もない。 また「薬物アレルギー」といっても,特に本件で具体的に問題となるの,は,本件麻酔で実際に使用された「局所麻酔薬のアレルギー」の存否であるが,原告は,被告病院の医師に対し,筋弛緩剤やセデスについてのエピソードを話してはいたものの,本件手術前に「局所麻酔薬アレルギー」であるとの申告をしたことはないし,実際にも,原告は「局所麻酔薬アレルギー」ではない。 このことは,本件手術の術中術後に,原告が局所麻酔薬アレルギーがあると主張している局所麻酔薬(キシロカイン,カルボカイン,マーカイン)が,原告に対し現実に投与されているにもかかわらず,原告にショックや異常反応は全く起きなかったことから,明らかである。 ⑵薬物アレルギーについて特別の検査をすべき義務はないこと原告に「薬物アレルギー」があるかも知れないと疑うに足りる合理的で客観的な根拠は認められなかったのであるから,被告病院の担当医師には,薬物アレルギーについて特別の検査をすべき義務はない。 また,仮に,原告が主張するように筋弛緩剤に過敏な体質であっ に足りる合理的で客観的な根拠は認められなかったのであるから,被告病院の担当医師には,薬物アレルギーについて特別の検査をすべき義務はない。 また,仮に,原告が主張するように筋弛緩剤に過敏な体質であったとしても,事前にそれを効果的に判断する検査方法はない。また,麻酔の際に用いる筋弛緩剤については,その効果のモニタリングが可能であり,拮抗剤が存 在し,筋弛緩剤の効果時間も通常量なら30分程度であるから,仮に,麻酔の効果が多少遷延したとしても,麻酔からの覚醒が少し遅れる程度で,臨床的には問題とならない。現に本件では特別な検査はしなかったが,何らの異常も起きなかったのである。 患者が実際に使用麻酔薬で異常反応を呈したのであれば,薬剤使用前の検査義務が問題とされるべきであるが,本件では,原告は現実に何らの異常反応も呈さなかったのであるから,原告の主張する事前の検査義務は問題とならない。 麻酔方法の選択・施行に際して説明すべき内容原告が,キシロカイン,マーカイン,カルボカインについての皮内反応テストを受けたのは,本件手術から3年近くが経過した平成13年9月のP病院でのことであり,皮内反応テストは薬物アレルギー試験としての信頼性は高くないとされており,仮に,本件手術(麻酔)時に,その3剤についてテストを行ったとしても,後にP病院での検査結果と同じ結果が出たとはいえず,本件において,被告病院で原告に使用した結果,何らの異常が生じなかったことから推認されるように,3剤とも皮内反応テストにおいては,マイナス・無害という結果が出た可能性が高い。 本件で採られた硬膜外麻酔と全身麻酔の併用方式は,被告病院で本件手術のような手術を実施する場合に採られていた通常の麻酔方法であり,使用麻酔薬も通常の薬剤であった。なお,全身麻酔の他に硬膜外麻酔を併用するのは, れた硬膜外麻酔と全身麻酔の併用方式は,被告病院で本件手術のような手術を実施する場合に採られていた通常の麻酔方法であり,使用麻酔薬も通常の薬剤であった。なお,全身麻酔の他に硬膜外麻酔を併用するのは,患者の手術後の痛みが少なくて済み,また全身麻酔の際に用いる薬の量も抑えられるからである。 したがって,本件の場合には,麻酔を施行する際に説明すべき内容も,ごく一般的な麻酔の選択・施行についての説明で足りるというべきである。 2の内容について担当医師がなすべき説明があればこれをしたことB医師は,本件手術前に原告を訪室して,入院診療計画書に基づき所要の説 明は行った。 原告は,B医師が原告の薬物アレルギーに関して何らの術前検査をしていない,麻酔に関する原告の不安を一笑に付した,麻酔方法の選択施行について説明をしなかったなどと主張するが,いずれも失当である。 B医師は,原告の言う筋弛緩剤やセデスについてのエピソードは,予定の子宮摘出術や麻酔の施行前にアレルギー検査をしてみるべきであるような事柄でないと判断した上,自分の前にそのエピソードを原告から聴き取っているはずであるC医師からも術前検査の指示はなかったので,術前検査をしなかったのである。結果に照らしても,この処置になんら誤りはない。 また,B医師は,原告の麻酔に関する不安を「一笑に付した」わけでは決してなく,原告の医学的合理的根拠のない無意味な不安を解消しようとして分かりやすく理解されやすいようにと考えて,筋弛緩剤で原告が呼吸停止したかとか,盲腸の手術の例え話をしたものであって,結果的には原告の考えに批判的否定的な言葉と受け取られ,不本意にも原告の反感を買う結果となったのである。 なお,麻酔の方法の説明については,B医師の担当ではなく,A医師が,必要十分な説明をしている。 手術当日に麻 に批判的否定的な言葉と受け取られ,不本意にも原告の反感を買う結果となったのである。 なお,麻酔の方法の説明については,B医師の担当ではなく,A医師が,必要十分な説明をしている。 手術当日に麻酔科医師が説明をしたことA医師は,全身麻酔と硬膜外麻酔を併用することを告げ,必要十分な説明はしている。原告からは,なんら麻酔についての質問はなかった。もし質問があれば,当然,十分な説明をした。 原告の自己決定権は侵害されていないこと原告は薬物アレルギーではないし,本件麻酔方法はごく一般的な方法であって格別危険な麻酔方法ではなく,被告病院の医師は,原告に対し,本件手術について必要十分な説明をしているから,原告の自己決定権は何ら侵害されてはいない。 第3原告は,RSDを発症しているか。 (原告の主張) 原告の症状⑴平成11年5月25日の時点で,起立位を10分と保つことができない。 平成12年8月23日の時点で,①右下肢全体の疼痛,痛覚過敏と動作時痛が同時に起きる。②右下肢の感覚鈍麻。③右腰椎1~5領域の筋郡はほとんど随意的には動かすことができない。④仙骨部1以下は動作時疼痛。 平成15年6月16日の時点で,①排尿・排便機能障害。②歩行能力・起立位保持不能。 平成15年8月11日の時点で,①右下肢全体疼痛。②左膝・左足の疼痛過敏。③異痛が右下肢全体に広がってくる。 ⑵原告の平成18年2月の時点における症状は,以下のとおりである。 ①起立足や腰に力が入らず,痛みがあり,立ち上がることができない日が多い。 立ち上がる際にも,近くのものを支えにゆっくりと立ち上がらなければならない。 ②歩行室内では,介助の人,壁・柱などを支えに,1ないし2メートル移動できる。屋外における歩行は不能である。 ③痛み右足及び右脇腹については,常時痛みが っくりと立ち上がらなければならない。 ②歩行室内では,介助の人,壁・柱などを支えに,1ないし2メートル移動できる。屋外における歩行は不能である。 ③痛み右足及び右脇腹については,常時痛みが継続し,これ以外の部位は,左腕を除いて痛みを感じる時間が多い。痛みの感覚は,身体の外側から何かに刺される感じで,内側から外に放散するような痛みもある。痛みのために,唸り声を発することもあり,右脇腹から右足先に痛みが抜けていく感覚がある。後頭部に,不意に殴られたような痛みを感じることもある。 ④痺れ 右腕及び右足に,長時間座っていた場合に感じる痺れに似た痺れがある。 ⑤痙攣・震え右足全体及び右腕に,痙攣や震えがある。 右腕の痙攣・震えは小刻みで,週に2ないし3度起こるが,右足の太ももの外側は,筋肉が大きくうねり,数分間にわたって硬直し続け,激痛を感じることもある。このような症状は,一日に2ないし3度起こり,断続的に2ないし3日続くこともある。長く痙攣した後には足腰に力が全く入らなくなる。 ⑥幻覚足指の間から蟻などが足の甲にはい上がってくるような感覚,膝の内側に失禁したような感覚,温かい風呂の中で右足だけが氷水に浸かっているような冷たい感覚がある。 ⑦体感の喪失日常の温度差が分からない。 ⑧排便困難排便が終わったか否かが感覚的に分からず,ウォシュレットを使用するも,使用感が臀部に伝わらない。肛門の括約筋が機能しない。 ⑨血圧右腕と左腕の計測値に大きな左右差がある高血圧。 ⑩性的不能夫婦生活が不能になった。 RSDと診断されたこと原告の上記各症状は,複数の医療機関からRSDと診断されている。 (被告の主張) 原告主張の症状の存在は,否認する。 ⑴原告は,平成11年5月7日にリハビリのために被告病院を受診した後は, 原告の上記各症状は,複数の医療機関からRSDと診断されている。 (被告の主張) 原告主張の症状の存在は,否認する。 ⑴原告は,平成11年5月7日にリハビリのために被告病院を受診した後は, その主張する症状の治療のため,医療機関に通院していない。 原告が,被告病院を退院した平成10年12月8日から平成14年3月30日まではO整骨院での施術を受けていたが,その後はカイロプラクテイック整体センターでの施術を受けたり大江戸温泉に行ったりするのみで,医学上の治療を受けたことはない。 ⑵原告主張の症状は,上記各時点で受診した診療機関の診断書に記載してある症状であるが,各診断書は,いずれも,原告が日頃診療に通っていて原告の症状や性格をよく知っている医療機関の医師が作成した診断書ではなく,原告が,身体障害者手帳の交付や障害等級の書替による障害者手当や障害者年金の受給の目的が先ずあって,その利得目的の達成のために,1年から4年おきに間歇的に受診して入手した合目的的診断書であって,信用性に乏しい。 RSDであることも否認する。 RSDであることを明言する診断書はE医師のものであるが,原告はE医師の初診の日の平成12年8月9日にも,E医師が甲A8の診断書を書いた同月23日にも,亀戸の丙診療所の外に世田谷区代田所在のO整骨院に行って,O式手技療法を受けている。RSDは,アロディニア(異痛症,通常なら痛くない刺激で痛がること)やハイパーアルジェシア(痛覚過敏)を特徴としており,原告がRSDであることととO式マッサージ療法とは,両立しないはずである。 E医師の診断書(甲A8)は,ただひたすら,原告,それも障害年金受給目的で初めて訪れた原告の主訴を聴き取るだけで,5項目ないし10項目のRSDスコアのチエックもすることなくRSDであると断定して記載してい の診断書(甲A8)は,ただひたすら,原告,それも障害年金受給目的で初めて訪れた原告の主訴を聴き取るだけで,5項目ないし10項目のRSDスコアのチエックもすることなくRSDであると断定して記載していたり,右下肢反射について,一度は「正常」とカルテ記載の検査結果どおり書きながら,後で「疼痛のため検査困難」と訂正したりしているもので,信用性はない。 E医師の紹介で原告を診察したT名義の診療情報提供書(甲A19)には「原因はRSDと考えます」とは書いてあるものの「発作性の右上肢の高血, 圧」が,何ゆえにRSDを原因とするといえるのかについては何も書かれていない。 R整形のカルテ(甲A17)では「RSD」という,原告から聞き取った,と思われるたった3文字の記載があるだけで,医師が責任をもってRSDであると診断しているわけではない。原告がRSDであることの何の裏付けにもならないものである。 原告の陳述書(甲B26)によれば,原告は被告病院退院直後の平成10年12月から平成18年12月までの8年間に,約40にも上る医療機関を受診したとされているが,この間に原告がRSD(ないしCRPS)である旨の診断書を発給した医療機関は1つのみであり,原告は,RSD(ないしCRPS)を直接の対象・目的にした治療を,原告がRSDであると診断した丙診療所や,その他の診療機関でも受けていない。 また,近年はRSDと診断される機会が急増し,痛みが長引けばRSDとする傾向が見られるようになったが,そのうちのかなりの症例が心因性疼痛障害に該当するのではないかとされている(乙B1。 )第4硬膜外麻酔の際の手技上の過失と原告の症状との因果関係があるか。 (原告の主張) 原告の症状が被告の手技上の過失によって生じたこと原告のRSDの症状は,硬膜外麻酔時において原告の神経 。 )第4硬膜外麻酔の際の手技上の過失と原告の症状との因果関係があるか。 (原告の主張) 原告の症状が被告の手技上の過失によって生じたこと原告のRSDの症状は,硬膜外麻酔時において原告の神経根を損傷させたことを契機に発症したものである。 RSD(CRSP)の治療について原告には薬剤アレルギーがあり,かかる実態からブロック療法を行うとの選択肢はなかった。そのため,原告は,O整骨院においてマッサージ療法手技療法を受けたが,平成13年頃にはその効果が現れた経過もあった。 また,患者がどのような治療方法を選択するかについては,患者自身にその選択権があるものといえ,本件においても,原告には,ブロック療法は不適応 であるから,O整骨院の療法を否定される理由はない。 したがって,原告の症状は,原告自身の行動によって生じたものではない。 (被告の主張) 被告の行為から原告の主張する症状は生じないこと被告は,神経根を損傷させてはいないのであるから,被告の行為からは,原告の主張する症状は生じない。原告の本件手術後の障害は,硬膜外麻酔の施行の際に針の神経根への接触から起こりうる,時間が経過すれば自然に回復する,一般的な一過性の神経症状であった(乙B8。 ) 原告の症状は心因性のものであること原告が現在その存在を主張しているところの,起立障害,歩行障害,疼痛,その他の心身の不調不都合は,仮に真実存在するとすれば,それはすべて心因性のものである。原告主張の障害は,神経症性障害,転換性(解離性)障害と呼ばれるものに該当する。 よって原告主張の障害と本件麻酔行為との間に相当因果関係は存在しない。 原告の症状は,原告自身の行為によって生じたこと仮に,原告がその現在を主張している症状がRSD(CRPS)であるとしても,少なくとも,原告が退院した平 麻酔行為との間に相当因果関係は存在しない。 原告の症状は,原告自身の行為によって生じたこと仮に,原告がその現在を主張している症状がRSD(CRPS)であるとしても,少なくとも,原告が退院した平成10年当時は,RSD(CRPS)の予防ないし治療には,交感神経ブロック療法が第1選択であるとされており,原告は,被告病院において,局所麻酔薬を使用されたにもかかわらず,何らの異常を生じておらず,原告に神経ブロック療法が禁忌・不適応ということはなかった。また,仮に神経ブロック療法が不適応であったとしても,ペインクリニックでは薬物療法や理学的療法も行われるから,そのいずれかが有効であった可能性があるにもかかわらず,原告はペインクリニックを受診しなかったのである。 したがって,原告がRSDに罹患したのは,被告医師から資料まで渡されてペインクリニックを受診するよう指導勧告されたにもかかわらず,これを完全 に無視して,ペインクリニックを受診せず,自分勝手に3年4か月間もの間,柔道整復師のマッサージ療法等に身を委ねてきたことによるものといえる。 第5説明義務違反と原告の症状との因果関係があるか。 (原告の主張)被告病院担当医師らが,原告に対し,原告の薬物アレルギーに関する術前検査を実施して,麻酔薬を使用した際の副作用,危険性,硬膜外麻酔の具体的方法・内容などについて,事前に説明義務を尽くしていれば,原告は,被告病院が予定している麻酔薬を用いての硬膜外麻酔方法についてはこれを断り,全身麻酔を選択するか,原告に対して皮内反応テストをした上で最も危険性が少ない麻酔薬及び麻酔方法の選択を求め,あるいは,他の医療機関に転院する可能性が十分にあった。そして,硬膜外麻酔が行われなければ,硬膜外針によって,原告の神経根を損傷することはなく,神経根の損傷がなければ 酔薬及び麻酔方法の選択を求め,あるいは,他の医療機関に転院する可能性が十分にあった。そして,硬膜外麻酔が行われなければ,硬膜外針によって,原告の神経根を損傷することはなく,神経根の損傷がなければ,RSDが発症することはなかった。 したがって,被告病院担当医師らの説明義務違反と原告に発生したRSDとの間には因果関係が認められる。 (被告の主張)被告には,本件手術前に原告の薬剤アレルギー,とりわけ局所麻酔薬アレルギーに関しては,検査をすべき義務はなかった。 原告は,被告に対し,本件術前に,筋弛緩剤とセデスについてのエピソードは表明していたが,局所麻酔薬についてのアレルギーに関しては何のアピールもしていなかった。実際にも,原告には局所麻酔薬アレルギーなどはない。 原告が,キシロカイン,マーカイン,カルボカインについての皮内反応テストを行ったのは,本件手術から3年近くも経過した平成13年9月のP病院でのことであり,皮内反応テストは薬物アレルギー試験としての信頼性は高くないといわれており,本件手術(麻酔)時に,その3剤についてテストを行ったとしても,後にP病院で行ったテスト結果と同じ結果が出たという保障など全くなく,本件 での被告病院での原告への現実使用とその結果の無害性から推認されるように,3剤とも皮内反応テストはマイナス・無害という結果が出た可能性の方が高い。 なお,本件では,全身麻酔の代わりに硬膜外麻酔が選択されたわけではなく,全身麻酔と硬膜外麻酔の両方法が併用されたのである。 子宮摘出術の際の,硬膜外麻酔と全身麻酔の併用方式は,被告病院における標準的麻酔方法で,本件以外に格別トラブルになったこともない安全な麻酔方法であった。 したがって,仮に(例えば原告が事前の薬剤テスト実施を担当医師にきっぱりと明瞭に要求するなどして,薬剤検査が行わ 標準的麻酔方法で,本件以外に格別トラブルになったこともない安全な麻酔方法であった。 したがって,仮に(例えば原告が事前の薬剤テスト実施を担当医師にきっぱりと明瞭に要求するなどして,薬剤検査が行われていたとしても,検査で薬剤の)安全性が証明され,麻酔の併用方式の安全性について説明されて,結局本件と同じように麻酔が施行された蓋然性が高い。 なお,本件では,原告の神経根への接触は起きたが,神経根の損傷は起きてはいない。 第6損害額(原告の主張) 逸失利益金4545万8420円原告は,平成11年3月2日,世田谷区立幼稚園の嘱託の再任を辞退した。 また,医師の診断書からも明らかなように原告の労働能力は完全に失われた。 そこで,原告の逸失利益としては,賃金センサス第1巻第1表,産業計,女子労働者,学歴計,企業規模計,女子労働者の全年令平均女子平均賃金年345万3500円(平成11年度賃金センサスに基づく)を基に,就労可能期間22年間(原告は昭和28年11月22日生まれで,本件事故当時満45才であり,満67才までの間就労可能期間)のライプニッツ係数13.163を乗じた金4545万8420円が逸失利益となる。 治療費2688万5040円⑴原告は平成15年3月31日をもって,被告よりO整骨院における治療費, 及び同院への往復交通費等一切負担してもらえず,このことから同院での治療を受けるだけの経済力がないところから,通院を止めている。 しかし,これまで同院での治療を受けたときのみが原告にとって,その肉体的苦痛が和らげることができたものである。それを考えると,今後も同院での治療を是非とも継続することが必要である。 ⑵同院は1回の治療費が4,000円で,また原告は同院まで歩行できず,タクシーに乗らなければ通院は不可能である。そして,自宅 それを考えると,今後も同院での治療を是非とも継続することが必要である。 ⑵同院は1回の治療費が4,000円で,また原告は同院まで歩行できず,タクシーに乗らなければ通院は不可能である。そして,自宅からの往復に平均して3000円のタクシー代を要する。 ⑶原告は同院の休診日である日曜,祭日,夏季,正月休み等を除いて通院していたが,これらを前提にすると月平均20日は通院するとして,控えめに計算しても年間240日の通院を必要とする。そして,今後の通院期間としては,原告の上記疾病は回復の可能性がないと診断されているものの,少なくともO整骨院にて治療を受ける限り,苦痛は軽減することが確かである。 そこで,原告は現在51才であるが,女性の平均余命として,後33年間は通院の必要性がある。 ⑷これらをもとに治療費を計算すると4000円(治療費)+3000円(タクシー代)=7000円7000円×240日=168万円これに33年間のライプニッツ係数16.003を乗じると,2688万5040円となる。 介助費用2592万4860円原告は一人で食事・洗濯・清掃・買い物といった,日常生活を送るために必要なことを全く行えない。現在は子どもらの介助で何とか過ごしている状況である。 しかし,子どもらにも仕事があり,またいずれ子どもらが独立していくことを考えると,少なくとも原告には食事の用意・洗濯・買い物といった点におい ては,介護人の手助けを受けざるを得ない。これに要する費用は介護保険によっても,訪問介護は1時間未満2220円となっていて,原告には少なくとも一日2時間相当の介護を要するといえる。この結果2220円×2時間×365日=162万円となり,平成17年1月よりこれらの介護を受けるとすれば,原告の平均余命33年間のライプニッツ係数16.003を乗 日2時間相当の介護を要するといえる。この結果2220円×2時間×365日=162万円となり,平成17年1月よりこれらの介護を受けるとすれば,原告の平均余命33年間のライプニッツ係数16.003を乗じると,2592万4860円となる。 慰謝料金4000万円原告の反射性交感神経性ジストロフィーは,前述のように,日々原告の身体を蝕んでいて,回復の見込みはないというものである(甲A10。そして身)体障害者2級を受けている。また,その症状は日常生活における殆どの面において,単独で行うことが極めて困難というものであり,それまでの健康を考えるとき,悔しさは計り知れないものである。その慰謝料は金4000万円を相当とする。 弁護士費用金1000万円医療過誤事件において,原告自ら遂行することは多大な困難を伴うものであり,被告が負担すべき弁護士費用は総損害額の10%相当とし,その金額は1000万円である。 以上合計金1億4826万8320円となるが,原告はこれらの損害金の内一部である金9500万円を請求する。 なお,原告の障害年金及び身障者手当の支給状況は,次のとおりである。 ⑴障害基礎年金平成12年6月~平成15年3月年額80万4200円平成15年4月~平成16年3月年額79万7000円平成16年4月~平成18年3月年額79万4500円平成18年4月~現在年額79万2100円⑵福祉手当 平成11年6月~平成15年5月1か月7500円平成15年6月~現在1か月1万6500円(被告の主張)争う。 なお,被告は,原告に対し,平成10年12月9日から平成15年4月7日まで,96回にわたり合計金776万0277円を,治療費や介助費用として支払っている。 また,原告がO整骨院への通院を中止したのは,被告が費用負担の中 対し,平成10年12月9日から平成15年4月7日まで,96回にわたり合計金776万0277円を,治療費や介助費用として支払っている。 また,原告がO整骨院への通院を中止したのは,被告が費用負担の中止を原告側に通告実施した平成15年4月より1年以上前の平成14年4月からであった(乙C97。したがって,原告は,治療を受けるだけの経済力がないために通)院を止めたわけではなく,今後も同院での治療を是非とも継続することが必要であるとはいえない。 以上

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