主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が控訴人に対し,平成12年7月31日付けでした行政文書公開拒否処分のうち,公開請求書別紙記載3の文書(平成4年度乃至平成12年度神奈川県体育スポーツ振興期成会分支出命令票及び附属書類一式。以下「本件(3)文書」という。)に係る部分を取り消す。 3 被控訴人が控訴人に対し,平成12年7月31日付けでした行政文書公開諾否決定期間特例延長処分のうち,公開請求書別紙記載4に係る文書(平成4年度乃至平成12年度国庫補助金の交付及び支出が明らかになる書類一式。以下「本件(4)文書」という。)の諾否の決定を行う期限を平成15年3月31日とする部分を取り消す。 4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 控訴人は,平成12年7月17日当時,神奈川県内に住所を有していたところ,同日付けで,被控訴人に対し,神奈川県情報公開条例(平成12年3月28日神奈川県条例第26号,同年4月1日施行。以下「新公開条例」という。)4条に基づき,7項目に該当する行政文書が,被控訴人スポーツ課の管理に係る行政文書であるとして,その公開請求をした(本件公開請求)。 これに対し,被控訴人は,同月31日付けで,控訴人に対し,3項目に該当する文書(本件(3)文書を含む。)について公開拒否決定(本件拒否処分)をし,その余の4項目(本件(4)文書を含む。)に該当する文書について公開諾否決定期間特例延長決定(本件延長処分)をした。本件(3)文書についての本件拒否処分の理由は,「県教育委員会(被控訴人)が文書を管理していないため」というものであり,また,本件(4)文書についての本件延長処 間特例延長決定(本件延長処分)をした。本件(3)文書についての本件拒否処分の理由は,「県教育委員会(被控訴人)が文書を管理していないため」というものであり,また,本件(4)文書についての本件延長処分の内容及び理由は,「公開請求に係る行政文書が著しく大量であるため。」「諾否の決定を行う期限」を「平成15年3月31日」とするというものであった。 (2) 本件は,控訴人が,① 本件(3)文書は,神奈川県(県)の神奈川県体育スポーツ振興期成会(期成会)に対する支出に関する県作成の文書と被控訴人の管理する期成会作成の文書の両方を意味し,これらの文書は被控訴人スポーツ課が管理していると主張して,本件拒否処分のうち本件(3)文書に係る部分の取消しを求めるとともに,② 本件延長処分のうち本件(4)文書に係る部分は,被控訴人に与えられた裁量を逸脱し,著しく妥当性を欠くものであるから違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。 これに対し,被控訴人は,①については,本件(3)文書は,期成会作成の文書を指すものと解するのが合理的であるところ,期成会は,被控訴人とは別の団体であり,本件(3)文書は,被控訴人が管理する文書ではないから,新公開条例に基づき情報公開の対象となる行政文書ではないなどと主張して争い,②については,本件(4)文書の量は,文書保管箱(1箱約2000枚収納)で38箱,合計約7万6000枚に及ぶところ,諾否決定を行うには,(ア) まず,38箱の文書保管箱を保管場所から搬入し,(イ) 文書の写しを作成した上で,文書1件ごとに公開・非公開を検討して決裁を受け,決裁が得られたら,非公開部分を黒塗りし,(ウ) 更にもう一度写しを作成する必要があり,職員が1日当たり8時間従事するとして,(ア)に13日間,(イ)の検討・黒塗りに114日間,(イ) て決裁を受け,決裁が得られたら,非公開部分を黒塗りし,(ウ) 更にもう一度写しを作成する必要があり,職員が1日当たり8時間従事するとして,(ア)に13日間,(イ)の検討・黒塗りに114日間,(イ)及び(ウ)の複写に190日間を要するので,所要時間は合計317日間となるが,実際には,職員1人が1日当たり4時間従事するのが限度であるため,634日間必要となり,1か月当たりの勤務日20日で計算すると,上記作業には32か月を要すると主張して争った。 (3) 原審は,① 本件公開請求の対象である本件(3)文書には,県作成の期成会に関する文書は含まれておらず,被控訴人の管理する期成会作成の文書のみが含まれていると解するのが合理的であるところ,期成会作成の文書を被控訴人が管理している事実は認められないから,本件(3)文書は新公開条例に基づく情報公開の対象となる文書には当たらないので,これを非公開とした本件拒否処分に違法はない,② 本件(4)文書に係る本件延長処分は,多少は短縮の余地があるのではないかとも思われるが,対象文書量や備品等の設備面の制約,被控訴人が分割公開を提案していることなどを総合すると,なお合理的なものと評価することができるから,適法と解するのが相当であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴した。 2 「前提となる事実」並びに「争点及び争点に関する双方の主張」次のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第3及び第4に摘示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決の訂正① 原判決4頁25行目の「被告が管理する分も連合会が管理する分もいずれも」及び同5頁10行目の「被告が管理する分も連合会が管理する分のいずれも」を「被控訴人の管理に係る県が作成した文書及び連合会が作成した文書の 25行目の「被告が管理する分も連合会が管理する分もいずれも」及び同5頁10行目の「被告が管理する分も連合会が管理する分のいずれも」を「被控訴人の管理に係る県が作成した文書及び連合会が作成した文書のいずれも」に,同7頁22行目の「会には存在せず」を「役員には就任しておらず」に,同9頁6行目の「として」を「としたり,神奈川県が現に行っているように,公開の日時については『都合のよい日をお教え下さい。』とするなどして」に,それぞれ改める。 ② 同11頁10行目の「分割して」の次に「諾否決定を行い」を加える。 (2) 当審における控訴人の主張及び被控訴人の反論① 控訴人の主張ア新公開条例6条は,「公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以外の情報とが記録されている場合において,当該非公開情報とそれ以外の情報とを容易に,かつ,行政文書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるときは,当該非公開情報が記録されている部分を除いて,当該行政文書の公開をしなければならない。」と定めている。 しかるに,被控訴人は,行政文書の公開を全て当該文書の写しにより行っており,そのため,延長期間の中に写しの作成という余分な作業時間を含ませ,その結果諾否決定期限を遅らせている。 イ新公開条例13条3項は,「公開請求に係る行政文書の公開をすることにより,当該行政文書を汚損し,又は破損するおそれがあると認めるときその他正当な理由があるときは,前項の規定にかかわらず,当該行政文書の公開に代えて,当該行政文書を複写したものにより,これを行うことができる。」と定めている。 しかしながら,控訴人が閲覧の際に本件文書の原本を汚損するおそれはないし,本件文書は通常の用紙で作成されている文書であるから,閲覧の際に破損するおそれもない。また,複写したものによることに いる。 しかしながら,控訴人が閲覧の際に本件文書の原本を汚損するおそれはないし,本件文書は通常の用紙で作成されている文書であるから,閲覧の際に破損するおそれもない。また,複写したものによることについて「その他正当な理由」も存しない。したがって,本件(4)文書の公開は,同条項所定の行政文書の原本に代えてコピーを閲覧に供することが許される場合には当たらない。 ブラックテープないしそれと同様の機能を有する製品は,本件公開請求当時から既に存在しており,ブラックテープ又はブラックテープと同様の機能を有する製品で行政文書の原本の非公開部分を直接被覆する方法を採れば,請求者に行政文書の原本を公開することが可能であるから,被控訴人が延長期間算定の前提としている方法,すなわち,当該行政文書をすべて複写した上,非公開部分を黒色マジックで消し,それを更にもう一度複写したものによって公開する方法は,行政文書の原本を公開すべきことを定める新公開条例との整合性を欠くものである。 ウ以上のとおり,被控訴人は,本件(4)文書のうち非公開部分が含まれるぺージについても,ブラックテープ等を使用して非公開部分を直接被覆することによって公開することが可能であり,その場合複写は全く必要ない(決裁のための複写も必要ない。)。したがって,被控訴人が延長期間について,諾否の決裁後の公開に係る事務を含め,さらに,公開実施のために本件(4)文書の写しを2回作成することを前提とする算定方法には合理性がない。 よって,本件延長処分のうち本件(4)文書に係る部分は,被控訴人の裁量権を逸脱ないし濫用したものであり,取消しを免れない。 ② 被控訴人の反論ア一部公開決定の対象である非公開部分を含む行政文書について,非公開部分を被覆する方法としては,主に,(ア) 行政文書を複写したものに黒マジ 用したものであり,取消しを免れない。 ② 被控訴人の反論ア一部公開決定の対象である非公開部分を含む行政文書について,非公開部分を被覆する方法としては,主に,(ア) 行政文書を複写したものに黒マジック等で黒塗りした上,透けて判読できないように更に複写する方法と,(イ) 行政文書にブラックテープを切り貼りして遮蔽する方法がある。 イ被控訴人は,平成13年度以降は,原則として(イ)の方法により行政文書を公開しているが,それ以前は,情報公開用のブラックテープが市販及び普及しておらず,(イ)の方法により公開することができなかったことから,原則として(ア)の方法により行政文書を公開していた。 ウ被控訴人は,上記のとおり平成13年以降は,原則として(イ)の方法により公開しているが,どのような方法で公開するかは,非公開情報を公開した結果とならぬよう安全性を重視し,対象文書により個別具体的に判断している。 行政文書は,県民の財産であるから,可能な限り公開すべきであり,公開の実効性を確保するためには,なるべく行政文書自体の公開が望ましいことは当然である。しかし,作業費用や作業効率の点から,非公開箇所が著しく大量な場合などは,複写により公開することも,新公開条例において認められている。 すなわち,新公開条例6条1項の趣旨は,公開請求された行政文書に同条例5条各号のいずれかに該当する情報(非公開情報)が記録されている場合には,原則として当該行政文書は非公開となるところ,その例外として,当該非公開情報とそれ以外の情報とを容易に,かつ,行政文書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるときは,当該非公開情報が記録されている部分を除いて,当該行政文書を公開することとし,公開請求に対して,可能な限り行政文書を公開しようとするものである。そして,「容 失わない程度に合理的に分離できるときは,当該非公開情報が記録されている部分を除いて,当該行政文書を公開することとし,公開請求に対して,可能な限り行政文書を公開しようとするものである。そして,「容易に分離できるとき」とは,多くの費用と時間をかけずに又は物理的な困難性を伴わずに分離できる場合をいうものとされており,この判断を行う際には,複写によることも手段の一つとして考えられている。同条例6条1項にいう「行政文書の公開」には,複写による公開も含まれるものである。 なお,新公開条例13条3項は,行政文書の公開の実施方法について,公開することにより「行政文書を汚損し,又は破損するおそれがあるときその他正当な理由があるとき」には,当該行政文書を複写したものにより公開することができるとしている。そして,部分公開を行う際の非公開情報の分離方法として,行政文書を複写する方法を採用した場合については,その分離方法が合理的である場合には,上記「その他正当な理由」の存在が担保されており,複写した行政文書により公開を行うことが,条例に基づく公開方法となるものである。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の本訴請求は,理由がないので棄却すべきものと判断する。 その理由は,次のとおり訂正,付加するほか,原判決の「事実及び理由」第5に説示のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 原判決12頁21行目末尾に「(なお,控訴人は,後記認定のとおり,被控訴人に対し,平成12年4月10日と平成13年1月4日の2回にわたり,被控訴人が管理する期成会の預金通帳の公開請求をしたことが認められるが,預金通帳の場合は,公開請求の時期によって記帳内容が異なることから,同一人が同一預金通帳の公開請求を重ねてすることに合理性が認められるのであって,控訴人が同一預 の公開請求をしたことが認められるが,預金通帳の場合は,公開請求の時期によって記帳内容が異なることから,同一人が同一預金通帳の公開請求を重ねてすることに合理性が認められるのであって,控訴人が同一預金通帳について重ねて公開請求をした事実は,③の判断を左右するものではない。)」を加える。 (2) 同13頁16~17行目の「その管理する分も連合会が管理する分も,」を「その管理する県が作成した文書及び連合会が作成した文書の」に改める。 (3) 同14頁1行目の「実施機関が作成し,」の次に「又は」を加える。 (4) 同15頁10行目の「宛てられ」を「当てられ」に,同23頁11行目の「なお劣る」を「必ずしも優れているとはいえない。」に,同23頁22行目の「行政文書を複写したものを」を「正当な理由があるときは,行政文書を複写したものにより」に,それぞれ改める。 (5) 同23頁23行目の「原告は」の次に「,非公開部分が含まれるか否かにかかわらず,すべて」を加える。 (6) 同24頁5行目の「見込まれ」を「見込まれる」に改める。 (7) 同24頁25行目末尾に「また,新公開条例に基づく神奈川県の取扱いは,請求者の都合に合わせて,実施機関において速やかに行政文書を公開する態勢が整っていることを前提とするものであり,上記の判断を左右するに足りるものではない。」を加える。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 新公開条例10条1項は,「実施機関は,公開請求があったときは,当該公開請求があった日から起算して15日以内に,当該公開請求に対する諾否の決定(諾否決定)を行わなければならない。」旨規定しているが,同条4項は,「実施機関は,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,第1項に規定する期間を45日以内に限り延長することができる。」旨及び同条5項 定)を行わなければならない。」旨規定しているが,同条4項は,「実施機関は,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,第1項に規定する期間を45日以内に限り延長することができる。」旨及び同条5項は,「公開請求に係る行政文書が著しく大量であるため,公開請求があった日から起算して60日以内にそのすべてについて諾否決定をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には,第1項及び前項の規定にかかわらず,実施機関は,公開請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に諾否決定をし,残りの行政文書については相当の期間内に諾否決定をすれば足りる。」旨規定している。 新公開条例10条5項の規定の趣旨は,著しく大量の行政文書の公開請求がされた場合において,実施機関がそのすべての行政文書につき,公開請求があった日から60日以内に必ず諾否決定をしなければならないものとすれば,その事務処理の影響によって,当該実施機関が所掌する他の行政事務の遂行に著しい支障が生じ,行政事務全体の円滑な遂行を阻害するおそれがあることにかんがみ,公開請求に関する事務の迅速な処理の必要性と他の行政事務の円滑な遂行の必要性とを適切に調和させようとするところにあるものと解される。そして,実施機関の事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがあるか否かは,当該実施機関の所掌に係る行政事務の性質・内容,人員等の処理態勢,公開請求に係る行政文書の量・内容及び非公開情報の存否・内容等諸事情を考慮して判断されるべきであるが,第1次的には,当該行政事務を所掌する当該実施機関の合理的な裁量判断に委ねられているものと解すべきである。そうすると,新公開条例10条5項にいう「相当の期間」とは,当該実施機関が,その処理態勢の下で,他の行政事務の遂行に著しい支障を生じさせない範囲内におい 量判断に委ねられているものと解すべきである。そうすると,新公開条例10条5項にいう「相当の期間」とは,当該実施機関が,その処理態勢の下で,他の行政事務の遂行に著しい支障を生じさせない範囲内において,残りの行政文書に係る公開事務を処理するために必要な期間をいうものであって,必要な期間をどのように設定するかは,第1次的には当該実施機関の合理的な裁量判断に属し,それが明らかに裁量判断を逸脱した不合理な期間の設定でない限り,当該実施機関の判断は尊重されるべきものと解される。 (2) 新公開条例13条1項は,「実施機関は,公開決定をしたときは,速やかに,行政文書の公開をしなければならない。」と規定しており,また,行政文書の一部を公開するときには,請求者に対する行政文書一部公開決定通知書中の「行政文書の公開の期日及び場所」欄にこれを明示することとされている。したがって,諾否決定をし,これを請求者に通知するに当たっては,事前の準備を整えた上で速やかに公開が実施できる日を見込んでおくことが必要である。被控訴人も,このような考え方に基づいて,本件延長処分の延長日数を定めたものであり,それに相応の合理性が認められることは,引用した原判決が詳細に説示するとおりである。 そして,延長期間を計算するに当たり,諾否決定後の公開に係る事務も含めて考慮するとなると,どのような公開方法を前提として公開に係る事務に要する時間を算定するかが問題となる。被控訴人は,まず,対象となる行政文書のすべてを複写してから,公開・非公開を検討し,非公開部分に印を付けて決裁権者の決裁を受けた後,非公開部分に黒塗りをし,更にもう一度複写した上,この複写したものにより公開することを前提として延長期間を算定し,本件延長処分をしたものである。 これに対し,控訴人は,そのような公開方法は新公開条例に 非公開部分に黒塗りをし,更にもう一度複写した上,この複写したものにより公開することを前提として延長期間を算定し,本件延長処分をしたものである。 これに対し,控訴人は,そのような公開方法は新公開条例に反すると主張するので,以下検討する。 (3) 新公開条例は,行政文書について原本公開の原則を採用し,行政文書を複写したものによる公開が許される場合を,「正当な理由があるとき」(新公開条例13条3項)に限定しているものと解される。控訴人は,本件(4)文書のうち非公開部分が含まれるページについても,ブラックテープ等で非公開部分を直接被覆する方法によって行政文書を公開することが可能なのであるから,新公開条例13条3項所定の行政文書の公開に代えて,当該行政文書を複写したものにより閲覧に供することが許される場合には当たらず,したがって,本件(4)文書全部の写しを2回作成する作業は必要ないと主張する。 ① まず,被控訴人担当者が最初に本件(4)文書について非公開事由の存否を1ページ毎に調査し,非公開情報が含まれていると判断した部分に印を付けて決裁権者の決裁を得るという内部決裁の手順との関係で,被控訴人担当者が最初に全部の写しを作成することには,原本の保存の必要性の観点から,公開方法如何にかかわらず,相応の合理性があるというべきである。 ② 次に,公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以外の情報とが記録されている場合の部分公開の方法としては,非公開部分が含まれる特定のページをコピーして,当該コピーの非公開部分をマジック等で黒く塗りつぶした上,単にマジック等で塗りつぶしただけでは,透かしたり特殊な液体でマジックを除去したりすることによって非公開部分が明らかになってしまうおそれが存することから,黒塗りしたコピーを更にコピーしたものをもって公開する方法(黒塗りコ ぶしただけでは,透かしたり特殊な液体でマジックを除去したりすることによって非公開部分が明らかになってしまうおそれが存することから,黒塗りしたコピーを更にコピーしたものをもって公開する方法(黒塗りコピーによる公開方法)が,非公開情報の保護及び公開情報の公開の在り方として最も合理的かつ確実な方法であるということができる。これに対し,ブラックテープ等で行政文書の非公開部分を直接被覆する方法によることも考えられるが,この場合は,同一ページの公開部分については行政文書を閲覧に供することが可能となる反面,一般的に大量的,回帰的に実施が予定されている行政文書の公開事務において,その都度,各非公開部分の大きさに合わせて,逐一ブラックテープ等を切り取り貼付するという極めて細かい手作業を長時間かけて行わざるを得ないことになり(黒色以外の色のテープ等を使用する場合には,黒色に塗ったり,若しくは上に「●」印等を付けて非公開部分であることを示すなどの手作業が更に必要となる。),また,閲覧前ないし閲覧中に,誤って非公開部分の被覆がはがれたりする危険があることは否定できない。したがって,部分公開の方法としてどのような方法を採用するかは,行政文書公開の原則及び原本閲覧の原則を損ねるものでない限り,実施機関の合理的な裁量判断に委ねられるものと解するのが相当であり,的確な部分公開のための必要性が認められ,合理的な裁量判断の範囲内である限り,行政文書を複写したものにより公開することには,新公開条例13条3項の「正当な理由」が認められるというべきである。 そこで検討するに,本件(4)文書は,国庫補助金に係る文書であり,その大半は施設整備費国庫補助金交付申請書(入札予定価格の基礎となる工事設計書や設計図等が添付されている。)であるが,その他に施設整備補助に係る交付決定や実績 4)文書は,国庫補助金に係る文書であり,その大半は施設整備費国庫補助金交付申請書(入札予定価格の基礎となる工事設計書や設計図等が添付されている。)であるが,その他に施設整備補助に係る交付決定や実績報告を始めとして,国庫補助金が含まれる他事業についての申請,決定や実績,それらの支出に係る執行伺など,様々な書式の文書が含まれており,また,施設整備費国庫補助金交付申請書は,設計書の積算単価など非公開部分が含まれるページがほとんどを占めている上,非公開部分が多数のページに散在している(乙5,7,証人A,弁論の全趣旨)。そうすると,的確に部分開示をするためには,ブラックテープ等で非公開部分を被覆する方法が必ずしも妥当な方法とはいえず,黒塗りコピーによる公開方法を採用することも,実施機関の合理的な裁量判断の範囲内にあるものとして正当であると認められる。 したがって,被控訴人が,延長期間を算定するに当たって,本件(4)文書のうち非公開部分が含まれるページについて,黒塗りコピーによる公開方法を採ることを前提に公開に係る事務(再度の複写)に要する時間を算定したことが合理性を欠くとはいえない。 他方,本件(4)文書のうち非公開部分が含まれないページについては,行政文書の汚損又は破損のおそれなどの特段の事情がない限り,原則として,新公開条例13条3項にいう「正当な理由」が存するとは認められないから,行政文書(原本)を公開するべきであり,この観点からは再度の複写は必要ないといえるであろう。しかしながら,本件延長処分当時,被控訴人には,本件(4)文書のうち非公開部分が含まれるページがどの程度あるかは明らかではなかった上,実際にも本件(4)文書の大半を占める施設整備費国庫補助金交付申請書は,非公開部分が含まれるページがほとんどを占めていることを考慮すると,被 分が含まれるページがどの程度あるかは明らかではなかった上,実際にも本件(4)文書の大半を占める施設整備費国庫補助金交付申請書は,非公開部分が含まれるページがほとんどを占めていることを考慮すると,被控訴人が,延長期間を算定するに当たって,全てのページについて再度の複写が必要になるものとして公開に係る事務(再度の複写)に要する時間を算定したことはやむを得ない判断というべきであって,これをもって,実施機関としての裁量判断を逸脱した明らかに合理性を欠くものであるとまではいえない。このように実施機関がいったん定めた延長期間が,その後短縮された場合には,請求者と適宜調整して早期の公開を実施することで対処すれば足りる。 (4) 以上によれば,控訴人の主張は採用することができない。 3 控訴人は,この他るる主張するが,いずれも以上の認定・判断を左右するに足りるものではない。 なお,控訴人は,民事訴訟法251条1項違反を主張するが,判決の言渡しが口頭弁論終結後2か月以内にされなかったからといって,無効になるものではないから,控訴人の主張は採用することができない。 よって,上記と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官大藤敏裁判官高野芳久裁判官三木素子
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