令和1(行ヒ)252 国民健康保険税処分取消請求控訴,同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月26日 最高裁判所第二小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 平成30(行コ)304
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判決文本文5,828 文字)

- 1 -令和元年(行ヒ)第252号国民健康保険税処分取消請求控訴,同附帯控訴事件令和2年6月26日第二小法廷判決 主文 1 原判決中,配当処分の取消請求及び金員の支払請求に関する部分を破棄する。 2 被上告人の控訴を棄却する。 3 被上告人は,上告人に対し,58万5600円を支払え。 4 上告人のその余の上告を棄却する。 5 原審及び当審における訴訟費用は,これを3分し,その1を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。 理由 上告人の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 1 本件は,加須市長が,国民健康保険税及びその延滞金の滞納処分として,上告人の預金払戻請求権を差し押さえ(以下,これを「本件差押処分」という。),取り立てた金銭を上記国民健康保険税等に係る債権に配当する旨の処分(以下「本件配当処分」という。)をしたことについて,上告人が,上記債権は時効消滅していたなどと主張して,被上告人を相手に,本件配当処分の一部(上告人が延滞金として納付義務を認めている額を超える部分)等の取消しを求めるとともに,当該部分に相当する額の金員の支払を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 地方税法(平成23年法律第115号による改正前のもの)18条1項は,地方税の徴収権(地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利)は,- 2 -法定納期限等の翌日から起算して5年間行使しないことによって,時効により消滅する旨を定める。そして,同条 条1項は,地方税の徴収権(地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利)は,- 2 -法定納期限等の翌日から起算して5年間行使しないことによって,時効により消滅する旨を定める。そして,同条2項は,この場合には,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することができない旨を定め,同条3項は,地方税の徴収権の時効については,別段の定めがあるものを除き,民法の規定を準用する旨を定める。 地方税法(平成29年法律第45号による改正前のもの。以下同じ。)18条の2第1項は,地方税の徴収権の時効は,納付又は納入に関する告知(1号),督促(2号)等の処分の効力が生じた時に中断する旨を定める。また,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)147条は,時効の中断事由として,差押え(2号),承認(3号)等を掲げている。 (2)ア上告人は,平成20年9月21日,埼玉県北川辺町が行う国民健康保険の被保険者の資格を取得し,同22年3月12日,同町にその旨の届出をした。なお,同町は,同月23日,近隣の市町と合併して被上告人となった。 加須市長職務執行者は,平成22年4月1日頃,上告人の父であり,上告人を被保険者とする国民健康保険につき世帯主として国民健康保険税の納税義務を負うAに対し,平成20年度分の税額を25万1500円(納期限は同22年5月31日),同21年度分の税額を27万8700円(納期限は同22年4月30日)と決定し(以下,これらの決定を「本件各決定」といい,これにより課された国民健康保険税及びその延滞金に係る債権を「本件租税債権」という。),その旨の通知をした。 イ上告人は,平成22年8月4日,被上告人を相手に,本件各決定の取消し等を求める訴訟を提起したが,同24年5月31日,上記取消しに係る訴えは異議申立てを前置し いう。),その旨の通知をした。 イ上告人は,平成22年8月4日,被上告人を相手に,本件各決定の取消し等を求める訴訟を提起したが,同24年5月31日,上記取消しに係る訴えは異議申立てを前置していないため不適法であるなどとしてこれを却下する判決が確定した。 (3)ア被上告人は,平成23年1月26日,Aに対し,本件各決定に基づく国民健康保険税について督促状を発した。 - 3 -イ Aは,平成23年11月18日に死亡した。 ウ上告人は,平成24年1月24日,被上告人に対し,本件各決定により課された国民健康保険税のうち平成20年度分の5万9700円及び同21年度分の4万1300円を納付した(以下,この納付を「平成24年納付」という。)。 エ Aの相続人である上告人及びその姉は,平成24年3月20日,Aの遺産につき,その債務の一切を上告人が承継する旨の分割の協議を成立させた。 オ加須市長は,平成24年10月25日,納税義務承継通知書と題する書面により,上告人に対し,本件租税債権に係るAの滞納金につき,相続人として同年11月16日までに納付するよう求める旨の通知(以下「本件承継通知」という。)をした。 (4) 加須市長は,平成29年1月10日,本件租税債権につき,同日時点で第1審判決別紙「滞納明細書」の「未納額」欄及び「延滞金」欄記載のとおり合計62万4700円の滞納金があることを前提に,その滞納処分として,上告人の預金払戻請求権を差し押さえ(本件差押処分),第三債務者である銀行から62万4700円を取り立てた上,同月13日付け配当計算書に従って,その全額を本件租税債権に配当する旨の本件配当処分をした。 (5) 本件訴訟において,上告人は,上記滞納金のうち,延滞金3万9100円については納付義務を負うことを認める 付け配当計算書に従って,その全額を本件租税債権に配当する旨の本件配当処分をした。 (5) 本件訴訟において,上告人は,上記滞納金のうち,延滞金3万9100円については納付義務を負うことを認める一方,その余の58万5600円に係る債権(以下「本件係争債権」という。)は時効消滅しており,本件係争債権に基づいて行われた滞納処分は違法であると主張して,本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分等の取消しを求めるとともに,被上告人に対し,本件係争債権相当額の金員の支払を求めている。 これに対し,被上告人は,平成24年納付が債務の承認に当たり,また,本件承継通知が納付又は納入に関する告知に当たるため,これらにより本件係争債権の消滅時効は中断した旨主張している。 3 原審は,上記事実関係等の下において,平成24年納付が本件係争債権につ- 4 -いての債務の承認に当たるということはできないとした上,要旨次のとおり判断し,配当処分の取消請求を棄却するとともに,金員の支払請求に係る訴えを却下した。 (1) 平成24年10月25日にされた本件承継通知は,地方税法13条1項の納付の告知に当たり,同法18条の2により時効中断効がある。そして,時効が更に進行する時から5年が経過する前の平成29年1月10日に本件差押処分がされていることからすると,本件係争債権についての消滅時効は完成していない。 (2) 上告人による金員の支払請求に係る訴えは,行政処分の取消訴訟に伴う義務付けの訴えと解され,配当処分の取消請求を棄却すべきであることからすれば,行政事件訴訟法37条の3第1項2号の要件を欠き不適法である。 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)ア地方団体の長は,納税者又は特別徴収義務者か 37条の3第1項2号の要件を欠き不適法である。 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)ア地方団体の長は,納税者又は特別徴収義務者から地方団体の徴収金を徴収しようとするときは,これらの者に対し,納付又は納入すべき金額,納付又は納入の期限等を記載した文書により納付又は納入の告知をしなければならないとされている(地方税法13条1項)。そして,徴税吏員は,納税者等が納期限までに地方団体の徴収金を完納しない場合には,督促状を発しなければならないとされ(同法726条1項等),さらに,督促を受けた滞納者がその督促状の発せられた日から起算して10日を経過した日までにこれを完納しないときには,滞納者の財産を差し押さえなければならないとされている(同法728条1項1号等)。このように,地方団体の徴収金の徴収について段階的な手続が定められていることに鑑みると,同法において,税額等が確定し,その徴収手続として納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金に関し,再度同告知がされることは予定されていないというべきである。 また,地方団体の長による納付又は納入に関する告知は,私人による催告とは異なり,地方団体の徴収金に関する徴収手続の第一段階として,法令の規定に基づき- 5 -一定の手続と形式に従って行われるものであることから,同法18条の2第1項1号は,これについて特に消滅時効を中断する効力を認めることとしたものと解される。このような同号の趣旨をも併せ考慮すると,同号に基づく時効中断の効力は,最初に行われた納付又は納入の告知についてのみ生じ,その後,再度同様の通知がされたとしても,その通知は単なる催告としての効力を有するにとどまるものと解するのが相当である。 イそして,相続があった場合に われた納付又は納入の告知についてのみ生じ,その後,再度同様の通知がされたとしても,その通知は単なる催告としての効力を有するにとどまるものと解するのが相当である。 イそして,相続があった場合には,その相続人が被相続人の納税義務を承継するところ(地方税法9条),これに係る地方団体の徴収金について,被相続人に対し納付又は納入の告知がされているときには,その効力も相続人に引き継がれるというべきであるから,徴税吏員は,相続人に対して直ちにこれに続く徴収手続を進めることができ,改めて相続人に同告知をする必要はないものと解される。このような場合において,相続人の利益保護等の観点から,督促や差押えに先立ち,相続人に対し改めてその納付又は納入すべき税額を示し,納期限等を定めてその納付等を求める旨の通知をしたとしても,その通知は単なる催告としての効力を有するにとどまるものと解すべきことは,上記アと同様である。 したがって,被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につき,納期限等を定めてその納付等を求める旨の相続人に対する通知は,これに係る地方税の徴収権について,地方税法18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しないというべきである。 (2) 本件において,加須市長職務執行者は,Aに対し本件各決定をした上でその通知をしており,これにより,本件租税債権について納付の告知を行ったということができる。そして,Aに対しては,平成23年1月26日,更に督促状が発せられている。 本件租税債権の消滅時効は,上記納付の告知により中断し,また,上記の督促により再度中断した上,同日から起算して10日を経過した時から更に進行することとなる(地方税法18条の2第1項2号)ところ,その後,平成29年1月10日- 6 -に本件差押処 し,また,上記の督促により再度中断した上,同日から起算して10日を経過した時から更に進行することとなる(地方税法18条の2第1項2号)ところ,その後,平成29年1月10日- 6 -に本件差押処分がされるまでに約5年11箇月が経過している。被上告人は,この間における時効の中断事由として,平成24年10月25日に本件承継通知がされたことを主張するが,上記(1)で説示したところによれば,Aに対して既に納付の告知及び督促がされた本件租税債権につき,相続人である上告人に対してされた本件承継通知は,同項1号に基づく時効中断の効力を有するものではない。 そうすると,本件承継通知により同号に基づく時効中断の効力が生ずるものとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。 そして,上告人が,本件各決定の取消訴訟を提起するなど,一貫して本件各決定における税額を争っていたことに照らし,平成24年納付の際,その時に納付しなかった本件係争債権に係る滞納金につき債務の承認をしたものとは認められないことは,原審の説示するとおりであり,前記事実関係等の下で,その他の中断事由もうかがわれない。 以上によれば,本件差押処分がされた時点で,本件係争債権は時効により消滅していたというべきであり,本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分は,租税債権が存在しないにもかかわらずされた違法な滞納処分として,取り消されるべきである。 (3) 上告人は,本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分の取消しを求めるとともに,附帯控訴状において,本件係争債権相当額の金員の支払請求を追加し,「配当処分の一部取消しにより,残余の金銭は,滞納者へ交付しなければならない。」などと主張している。これによれば,同請求に係る訴えは,本件配当処分の一部に瑕疵があることを前提に,本件係争 を追加し,「配当処分の一部取消しにより,残余の金銭は,滞納者へ交付しなければならない。」などと主張している。これによれば,同請求に係る訴えは,本件配当処分の一部に瑕疵があることを前提に,本件係争債権相当額の金員を過誤納金として還付することを求める給付の訴えと解することが相当であり,その適法性を否定すべき事情はうかがわれないから,適法な訴えであるというべきである。 そして,上記(2)によれば,本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分に基づいて被上告人に配当された金員は,上告人に還付されるべきである。 5 以上と異なる見解の下に,上告人による配当処分の取消請求を棄却し,金員- 7 -の支払請求に係る訴えを却下した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中これらに関する部分は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,上記の各請求は,いずれも認容すべきである。他方,上告人のその余の請求に関する上告については,上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除された。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官菅野博之裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官岡村和美)

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