主文 1 本件訴えのうち、次の確認を求める部分の訴えをいずれも却下する。 ⑴ A取締役を被告の取締役会の議長に選任する旨の決議が無効であることの確認を求める部分⑵ B取締役、C取締役及びD取締役を被告の指名・報酬諮問委員会の委員に選 任する旨の決議が無効であることの確認を求める部分⑶ 原告を被告の会長職から解職すると共に、原告と被告との間の一切の契約を解除する旨の決議が無効であることの確認を求める部分 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告の令和5年3月24日開催の取締役会における、A取締役を被告の取締役会の議長に選任する旨の決議が無効であることを確認する。 2 被告の令和5年3月24日開催の取締役会における、B取締役、C取締役及び D取締役を被告の指名・報酬諮問委員会の委員に選任する旨の決議が無効であることを確認する。 3 被告の令和5年3月28日開催の取締役会における、原告を被告の会長職から解職すると共に、原告と被告との間の一切の契約を解除する旨の決議が無効であることを確認する。 4 被告は、原告に対し、金390万円及びこれに対する令和5年10月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告の株主であり、会長職の立場にあった原告が、被告に対し、被告の取締役会決議には招集手続違反等の瑕疵があったと主張して、令和5年3月2 4日開催の取締役会決議における、Aを被告の取締役会の議長に選任する旨の決 議、及び、B、C及びDを被告の指名・報酬諮問委員会の委員に選任する旨の決議、並びに、令和5年3月28日開催の取締役会決議における、原告を被告の る、Aを被告の取締役会の議長に選任する旨の決 議、及び、B、C及びDを被告の指名・報酬諮問委員会の委員に選任する旨の決議、並びに、令和5年3月28日開催の取締役会決議における、原告を被告の会長職から解職すると共に原告と被告との間の一切の契約を解除する旨の決議が無効であることの確認を求め、さらに、原告に会長職としての業務を委託する旨の委任契約の解除は無効であると主張して、同委任契約に基づく令和5年4ない し6月分の報酬及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 以下では、人名・法人名の略称について次のとおりとする(人名等:略称)。 E:EF:FC:C G:GA:AD:Dオアシス・マネジメント・カンパニー・リミテッド:オアシスB:B 1 前提事実⑴ 当事者等ア原告は、被告の株主であり、令和元年6月21日から令和4年6月23日までの間、被告の取締役及び代表取締役であった者である。原告は、同日、任期満了により被告の取締役及び代表取締役を退任し、被告との間で、原告 が被告の会長職に就任する旨の委任契約を締結した(甲2、14。以下「本件委任契約」という。)。 本件委任契約の要旨は、以下のとおりである。 被告は原告に、会長として経営全般に関する助言の業務を委託し、原告はこれを受任する。(1条) 被告が原告に業務を委任する期間は、令和4年6月23日より1年間とす る。(2条)被告は原告に対し、第1条に定める業務の報酬として、月額130万円を支払う。(3条)イ被告は、エレベーター、エスカレーター及び動く歩道等の研究開発・製造・販売・据付及び保守等をその事業内容とする株式会社である。 ウオアシスは、被告の株主であり、令和4 支払う。(3条)イ被告は、エレベーター、エスカレーター及び動く歩道等の研究開発・製造・販売・据付及び保守等をその事業内容とする株式会社である。 ウオアシスは、被告の株主であり、令和4年11月29日時点で被告の総株主等の議決権の10%以上の議決権を保有していた(甲4)会社である。 ⑵ 株主総会及び取締役会の経緯ア令和5年2月24日開催の被告の臨時株主総会(以下「本件株主総会」という。)において、E及びFを取締役から解任する旨が決議されるとともに、 C、G、A及びDを取締役に選任する旨の決議がされた(以下「本件株主総会決議」という。)。本件株主総会決議により、被告の取締役は9名となった。 本件株主総会決議は、オアシスが提案した議案に基づくものである。(争いなし)イ令和5年3月24日開催の被告の取締役会(以下「24日の取締役会」と いう。)において、A、C、D、G(以下、4名を併せて「Aら4名」という。)及びBの5名の賛成により、Aを議長として選任する旨の決議(以下「本件議長選任決議」という。)、並びに、B、C及びDを被告の指名・報酬諮問委員会の委員に選任する旨の決議(以下「本件委員選任決議」という。)がなされた(争いなし)。 ウ令和5年3月28日開催の被告の取締役会(以下「28日の取締役会」といい、24日の取締役会と併せて「本件各取締役会」という。)において、Aが議事進行し、原告を会長職から解職するとともに、本件委任契約を含む原告と被告との間の一切の契約を解除する旨の決議(以下「本件解職決議」といい、本件議長選任決議及び本件委員選任決議と併せて「本件各決議」とい う。)がなされた(争いなし)。 ⑶ 本件委任契約の解除通知被告は、原告に対し、本件解職決議に基づき、令和5 、本件議長選任決議及び本件委員選任決議と併せて「本件各決議」とい う。)がなされた(争いなし)。 ⑶ 本件委任契約の解除通知被告は、原告に対し、本件解職決議に基づき、令和5年3月28日頃、本件委任契約の解除の意思表示をした(甲5、15(令和5年3月28日の通知に関する部分)、弁論の全趣旨)。 ⑷ 招集権者の定め 被告は、本件株主総会の時点において、被告の定款(甲6。以下「本件定款」という。)22条1項及び被告の取締役会規定(甲7。以下「本件取締役会規定」という。)4条1項に基づき、取締役会の第1順位の招集権者をEと定め、本件定款22条2項及び本件取締役会規定4条2項に基づき、取締役会の第2順位の招集権者をFと定めていた(争いなし)。 ⑸ 本件定款本件定款には、以下の定め(要旨)がある。 22条(取締役会の招集および議長)1項取締役会は、法令に別段の定めがある場合を除き、あらかじめ取締役会が定める取締役が招集し、その議長となる。 2項前項に定める取締役に事故あるときは、取締役会においてあらかじめ定めた順序により、他の取締役がこれにあたる。 3項 (省略)⑹ 本件取締役会規定本件取締役会規定には、以下の定め(要旨)がある。 4条(招集権者および議長)1項取締役会は法令に別段の定めがある場合を除き、あらかじめ取締役会が定める取締役が招集し、その議長となる。 2項前項に定める取締役が招集できないとき、および議長を務められないときは、あらかじめ取締役会の決議により定めた順序により、他の取 締役が招集および議長を務める。 3項 (省略) 2 争点⑴ 本件各決議の無効確認の利益の有無⑵ 本件各取締役会の招集手続違反の 会の決議により定めた順序により、他の取 締役が招集および議長を務める。 3項 (省略) 2 争点⑴ 本件各決議の無効確認の利益の有無⑵ 本件各取締役会の招集手続違反の有無⑶ 24日の取締役会における同時通訳等の措置を講じない手続違反の有無 ⑷ 本件各取締役会において特別利害関係を有する取締役の参加により決議が成立したか否か 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(本件各決議の無効確認の利益の有無)について【原告の主張】 ア原告は被告の株主であるから、株主の共同の利益は原告にも属する法律的地位である。そして、本件各決議は、いずれも一株主にすぎないオアシスの意見に迎合してなされた決議であり、株主平等原則に反する態様での経営がなされたものと認められる。そうだとすれば、本件各決議が無効と確認されることにより、株主平等原則に反する態様での経営がなされることが排斥さ れ、今後の株主平等原則に反する態様での取締役会決議も抑制されるのであるから、株主平等原則に関わる株主の共同の利益に対する不安、危険を除去することができる。そのため、本件各決議の無効確認の利益が認められる。 イ本件委任契約の解除は、「支配人その他の重要な使用人」(会社法362条4項3号)の解任に当たり、「重要な業務執行の決定」(同項柱書)として取 締役会の専決事項となるところ、本件解職決議が無効と確認されれば、本件委任契約の解除も無効となり、その有効性に関わる紛争が解決することになる。そのため、本件解職決議の無効確認の利益が認められる。 【被告の主張】ア原告は、本件各決議の決議内容に関して根拠のない憶測をるる述べるのみ であり、また、原告の主張は、株主の共同の利益に依拠する以 職決議の無効確認の利益が認められる。 【被告の主張】ア原告は、本件各決議の決議内容に関して根拠のない憶測をるる述べるのみ であり、また、原告の主張は、株主の共同の利益に依拠する以上、株主であ ればおよそ確認の利益が認められると述べているに等しく、原告と被告との間に現存するいかなる法的紛争をいかなる意味で抜本的に解決することになるのかを主張しているものではない。そのため、本件各決議の無効確認の利益は認められない。 イ本件委任契約は準委任契約であるところ、委任者が解除権を放棄している 場合を除き、受任者は委任者による解除の有効性を争うことはできない。また、仮に原告が本件委任契約の解除により何らかの経済的又は精神的損害を被り、その回復を試みようというのであれば、損害賠償請求等を行えば足りる。さらに、そもそも本件委任契約の解除には、会社法上、取締役会決議は必要ないと考えられるところ、本件委任契約の解除が仮に「重要な業務執行 の決定」であり、かつ、本件解職決議が無効であると仮定しても、被告の代表取締役が契約解除の意思表示をした以上、原告は本件委任契約の解除の効力を争えない。そのため、本件解職決議の無効確認の利益は認められない。 ⑵ 争点⑵(本件各取締役会の招集手続違反の有無)について【原告の主張】 ア被告における取締役会は、原則としてあらかじめ取締役会が定める取締役が招集し、かつ議長を務める必要があり、あらかじめ定められた取締役が招集できないか、又は議長を務めることができないときは、取締役会においてあらかじめ定めた順序により、他の取締役が招集しかつ議長を務める必要がある。 イ被告の取締役会では、従前、取締役会の第1順位の招集権者をE、第2順位の招集権者をFと定 、取締役会においてあらかじめ定めた順序により、他の取締役が招集しかつ議長を務める必要がある。 イ被告の取締役会では、従前、取締役会の第1順位の招集権者をE、第2順位の招集権者をFと定め、それ以降の順位の招集権者は定めていなかったところ、E及びFは本件株主総会において取締役から解任されたため、E及びFが取締役会を招集しまた議長を務めることはできなくなった。 この状況及び被告の定款の定め等を踏まえると、被告においては、まず、 24日の取締役会より前の取締役会において、取締役会を招集する取締役を 定める必要があり、その取締役が24日の取締役会を招集しかつ議長となる必要があった。しかし、被告はその手続を怠ったまま24日の取締役会を招集し開催しており、この点において24日の取締役会の招集手続は、会社法366条1項ただし書及び本件定款22条1項に違反している。 また、被告の定款上、取締役会の招集者が取締役会の議長を務めることと されているが、24日の取締役会では、取締役会の招集者と議長が一致しておらず、この点でも24日の取締役会は本件定款22条1項に違反している。 ウ 24日の取締役会において、Aが議長兼招集権者に選定されているが、24日の取締役会には、前記招集手続の瑕疵のほか、通訳の不存在、特別利害関係を有する取締役参加による決議成立という重大な手続上の瑕疵がある から、24日の取締役会決議はいずれも無効である。 エ Aは何ら取締役会の招集権限を有しておらず、かつ、24日の取締役会の本件議長選任決議以外に28日の取締役会より前の取締役会において取締役会を招集する取締役を定め、当該取締役が28日の取締役会を招集した事実も存しないことから、28日の取締役会の招集手続は、会社法366条1 項 外に28日の取締役会より前の取締役会において取締役会を招集する取締役を定め、当該取締役が28日の取締役会を招集した事実も存しないことから、28日の取締役会の招集手続は、会社法366条1 項ただし書及び本件定款22条1項に違反している。 【被告の主張】ア会社法366条1項の規定からすると、取締役会招集権は取締役会の構成員である各取締役にあるのが原則である。定款又は取締役会の決定により定められた所定の招集権者を欠く場合には、原則に戻って、各取締役が招集権 を有する。 イ本件株主総会において、定款及び取締役会規定に基づき取締役会の招集権者とされていたE及びFは解任されたところ、これにより、被告は所定の招集権者を欠く状態になったので、原則に戻り、各取締役が招集権を有することになった。24日の取締役会は、本件株主総会後最初の取締役会であり、 各取締役が招集権を有する状況下で取締役及び監査役の全員が出席して開 催されたものであるから、24日の取締役会の招集手続に何らの瑕疵もないことは明らかである。 ウ 24日の取締役会においてAが議長兼招集権者に選定され、同人が28日の取締役会を招集している以上、28日の取締役会の招集手続に何らの瑕疵もないことは明らかである。なお、28日の取締役会も、取締役及び監査役 の全員が出席して開催されたものである。 ⑶ 争点⑶(24日の取締役会における同時通訳等の措置を講じない手続違反の有無)について【原告の主張】本件株主総会開催直後の時点で、被告の取締役は9名となり、うち2名に外 国人が含まれていた。24日の取締役会は紛糾したため、当初予定時間は1時間であったのに対し、実際は約3時間を要することとなった。このため、被告が依頼して 告の取締役は9名となり、うち2名に外 国人が含まれていた。24日の取締役会は紛糾したため、当初予定時間は1時間であったのに対し、実際は約3時間を要することとなった。このため、被告が依頼していた同時通訳担当者が時間切れとなり、取締役会は途中から、Aら4名が同時通訳担当者なしで勝手に英語で話すという事態が生じ、そのような混乱状態の中で一連の決議が行われていた。このような事態の下で決議を行う ことを会社法が許容していないことは明らかであり、24日の取締役会の手続には重大な瑕疵があるというべきである。 【被告の主張】24日付け取締役会において、同時通訳者が不在となった以降は、日本語及び英語の両方の話者である取締役(主としてA及びG)が必要に応じて通訳を 行っていたのであり、当該取締役会の手続には何の瑕疵もない。 ⑷ 争点⑷(本件各取締役会において特別利害関係を有する取締役の参加により決議が成立したか否か)について【原告の主張】Aら4名は、本件株主総会において、オアシスの株主提案に基づき選任され た取締役である。そして、Aが24日の取締役会において上程した議案の内容 (以下「24日の上程議案」という。なお、24日の上程議案には本件各決議に係る議案が含まれており、本件解職決議に関する議案については、24日の取締役会では採決されず、28日の取締役会で採決された。)は、オアシスが従前から強く要求していた事項と同一であった。また、オアシスは、オアシスの要求に従わない取締役について、解任や株主代表訴訟等による責任追及などの 法的措置を行うことを示唆していた。 Aら4名は、オアシスの要求と合致する議案に賛成することで、高額な報酬を得る社外取締役の地位を維持できるという利益を得るこ 主代表訴訟等による責任追及などの 法的措置を行うことを示唆していた。 Aら4名は、オアシスの要求と合致する議案に賛成することで、高額な報酬を得る社外取締役の地位を維持できるという利益を得ることができ、さらに、オアシスの行為によって取締役の地位を喪失し、何らかの法的責任追及をされるという損害を回避できる状況にあったのであるから、会社(被告)の利益よ りも自らの社外取締役としての地位を維持し、一方でオアシスによる解任や法的責任追及を回避することを優先するという個人的利害関係を有していたことは明らかである。したがって、Aら4名は、24日の上程議案に関し会社(被告)に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難であったと認められる。 以上から、Aら4名は、本件各決議に関し、一株主(オアシス)との個人的利害関係ないしは会社外の利害関係があり、特別の利害関係を有していたのであるから決議に参加することはできなかったにもかかわらずこれに参加し、同人らが賛成したことで決議が成立している。これらは、会社法369条2項に違反し無効である。 【被告の主張】Aら4名がオアシスの株主提案によって選任されたというだけで、オアシスの要求と合致する議案と特別の利害関係を有することにはならない。 第3 争点に対する判断 1 本案前の争点について ⑴ 争点⑴(本件各決議の無効確認の利益の有無)について ア確認訴訟における確認の対象となる法律関係は、原則として現在における法律関係であって、本件各決議の無効確認のような過去の法律関係の確認については、現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合に限って、確認の利益が認められると解するのが相当である(最高裁昭和47年 効確認のような過去の法律関係の確認については、現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合に限って、確認の利益が認められると解するのが相当である(最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号151 3頁参照)。 イ原告は、本件各決議が無効と確認されることにより、株主平等原則に反する態様での経営がなされることが排斥され、今後の株主平等原則に反する態様での取締役会決議も抑制されるのであるから、株主平等原則に関わる株主の共同の利益に対する不安、危険を除去することができると主張する。 しかし、原告が主張する紛争は、原告の主観的な不安に過ぎず、具体的な法律関係についての紛争ではない。そして、本件各決議により、いかなる意味で株主平等原則に関わる株主の共同の利益が害されるのかは定かではなく、本件各決議の無効確認により原告が主張する紛争が抜本的に解決されるか否かは定かではない。また、原告が主張するような、株主平等原則に関わ る株主の共同の利益に対する不安や危険については、そのような損害が顕在化したときに損害賠償請求等で争えば足りる。そのため、本件各決議の無効確認を求める訴えが、原告の主張する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要であるとは認められない。 したがって、原告の上記主張は採用できない。 ウ原告は、本件解職決議が無効と確認されることにより、本件委任契約の解除も無効となり、その有効性に関わる紛争が解決されることになると主張するところ、解決すべき現存する紛争として、本件解職決議により解職されていなければ存続しているはずの会長職の地位の有無、及び本件解職決議により解職されていなければ得ていたであろう会長職の報酬請求権の存否が考 えられる。 争として、本件解職決議により解職されていなければ存続しているはずの会長職の地位の有無、及び本件解職決議により解職されていなければ得ていたであろう会長職の報酬請求権の存否が考 えられる。 しかし、本件委任契約において、被告が原告に会長職としての業務を委任する期間は、令和4年6月23日より1年間と規定されているから(前提事実⑴ア)、本件解職決議により解職されていなければ存続しているはずの会長職としての地位も、令和5年6月22日の経過により消滅したものというべきである。そのため、本件解職決議の無効確認を求める訴えは、原告の会 長職としての地位の有無に係る現に存する紛争を直接かつ抜本的に解決するために最も適切かつ必要であるとは認めることはできない。 また、本件解職決議により解職されていなければ得ていたであろう会長職の報酬請求権の存否に紛争が生じているとしても、本件解職決議の無効を前提問題として、同報酬請求権の給付訴訟ないし確認訴訟を提起すれば足りる。 そのため、本件解職決議の無効確認を求める訴えは、原告の被告に対する報酬請求権の存否に係る現に存する紛争を直接かつ抜本的に解決するために最も適切かつ必要とは認めることはできない。 したがって、原告の上記主張は採用できない。 エこの他に、本件各決議の無効確認が、現に存する紛争の直接かつ抜本的な 解決のために最も適切かつ必要であると認められるに足りる証拠はない。 ⑵ 小括以上のとおり、本件訴えのうち、本件各決議が無効であることの確認を求める部分は、いずれも確認の利益を欠くものであって不適法であるから、却下を免れない。 2 本案の争点について却下されていない本案の訴えに係る請求は、本件委任契約に基づき令和5年4ないし6月分の報 いずれも確認の利益を欠くものであって不適法であるから、却下を免れない。 2 本案の争点について却下されていない本案の訴えに係る請求は、本件委任契約に基づき令和5年4ないし6月分の報酬及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求(請求4)であり、28日の取締役会における本件解職決議が直接的な関連性を有する。 当裁判所は、この点に関し、争点⑵については、28日の取締役会は、その招 集の経過にかんがみ、24日の取締役会における本件議長選任決議が無効となる か否かにかかわらず、有効に招集され開催されたものと判断し、また、争点⑷については、28日の取締役会における本件解職決議に特別利害関係を有する取締役が参加したということはできないと判断する。このため、争点⑵のうち24日の取締役会に関する部分、24日の取締役会決議の無効に関する争点である争点⑶、争点⑷のうち24日の取締役会決議に関する部分ついては、いずれも判断す る必要がない。 以上をもとに以下検討する。 ⑴ 争点⑵(本件各取締役会の招集手続違反の有無)のうち28日の取締役会に関する部分について後掲証拠、前提事実及び弁論の全趣旨によれば、本件株主総会において、本 件定款及び本件取締役会規定に基づき取締役会の招集権者とされていたE及びFは解任され、被告は所定の招集権者を欠く状態になったこと、24日の取締役会においてAが取締役会の招集権者及び議長に選任されており、28日の取締役会の招集に関する通知メール(乙5)と併せると、28日の取締役会は、Aが招集したと認められること、及び28日の取締役会ではAが議長に就いて 会議が行われたことが、それぞれ認められる。 そして、原告は、24日の取締役会における、Aを招集権者及び議長に選任する旨の本件議長選任 められること、及び28日の取締役会ではAが議長に就いて 会議が行われたことが、それぞれ認められる。 そして、原告は、24日の取締役会における、Aを招集権者及び議長に選任する旨の本件議長選任決議は無効であり、Aは28日の取締役会の招集権限を有していなかったため、28日の取締役会で行われた本件解職決議は会社法366条1項ただし書及び本件定款22条1項に違反し無効である旨主張する。 この点について、会社法366条1項は、取締役会の招集権限は各取締役にあることを原則として定め、ただし書において、例外として、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、当該取締役が招集権限を有する旨を定めている。そのため、招集権者と定められた取締役が解任されるほか、招集権者を定めた取締役会決議が無効または不存在であること等により、所定 の招集権者を欠くに至ったときは、原則のとおり、各取締役が招集権を有する ことになると解するのが相当である。 そうすると、本件においては、仮に本件議長選任決議が有効であれば、Aによる28日の取締役会の招集は有効となり、反対に本件議長選任決議が無効であったとしても、前記原則のとおり各取締役が招集権を有することになり、取締役であるAは招集権を有することとなるため、本件議長選任決議が有効か否 かにかかわらず、28日の取締役会は、招集権限を有するAにより有効に招集が行われたこととなる。 また、28日の取締役会においてAが議長に就いたことは、同日の議事が進行されている以上、本件議長選任決議が無効であったとしても、同取締役会の出席者の合意の上で行われたものと認めることができ、同取締役会の決議に影 響を及ぼすようなものとは認められない。 したがって、28日の取締役会は招集権限を有しない者 ったとしても、同取締役会の出席者の合意の上で行われたものと認めることができ、同取締役会の決議に影 響を及ぼすようなものとは認められない。 したがって、28日の取締役会は招集権限を有しない者により招集されているなどとして、本件解職決議は会社法366条1項ただし書及び本件定款22条1項に違反し無効であるとする原告の上記主張は、採用できない。 ⑵ 争点⑷(本件各取締役会において特別利害関係を有する取締役の参加により 決議が成立したか否か)のうち28日の取締役会に関する部分について会社法369条2項は、取締役会「決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない」旨規定しているところ、同項の「特別の利害関係」とは、特定の取締役が、取締役会決議について、会社に対する忠実義務(同法355条)を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個 人的利害関係ないしは会社外の利害関係をいうと解するのが相当である。 ここで、ある取締役が特定の株主の株主提案に基づき選任されたという事情があったとしても、当該取締役が、取締役会において、会社に対する忠実義務に反してでも当該株主の要求事項に従って権限行使するとは限らない。そして、特定の株主の要求事項は会社にとって有益ではないとは限らず、取締役が、取 締役会において、特定の株主の要求事項に沿った権限行使をすることにより、 会社に対する忠実義務に反することになるとは直ちにはいえない。そのため、ある取締役が、特定の株主の株主提案に基づき選任されたことや、決議の内容が当該株主の要求事項であることのみをもって、当該決議について、当該取締役が、会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係を有していると が当該株主の要求事項であることのみをもって、当該決議について、当該取締役が、会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係を有しているとは直ちには認め られない。 このため本件において、Aら4名は、被告の株主であるオアシスの株主提案に基づき選任された取締役であり(前提事実⑵ア)、本件解職決議の内容はオアシスが要求していた内容であったとしても、Aら4名が、本件解職決議について、会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められ る個人的利害関係ないしは会社外の利害関係、すなわち「特別の利害関係」を有していたとは認められない。 したがって、28日の取締役会に「特別の利害関係」を有するAら4名が参加した上で成立した本件解職決議は会社法369条2項に違反し無効であるとの原告の主張は、採用できない。 ⑶ 小括以上のとおりであるから、その余の争点について判断するまでもなく、原告の本件委任契約に基づき報酬及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求(請求4)は、本件解職決議が無効であるとは認められず、請求に係る期間の開始前に本件委任契約が終了したと言わざるを得ないから、棄却を免れない。 第4 結論以上の次第であって、本件訴えのうち、本件各決議が無効であることの確認を求める部分は、不適法であるからこれをいずれも却下し、その余の部分は、理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 大津地方裁判所民事部 裁判長裁判官池田聡介 裁判官島田正人 裁判官高橋唯 裁判長 裁判官池田聡介 裁判官島田正人 裁判官高橋唯
▼ クリックして全文を表示