平成23(わ)813 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成24年11月5日 千葉地方裁判所
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判決文本文3,147 文字)

平成24年11月5日宣告平成23年第813号判決主文被告人を懲役10月に処する。 未決勾留日数中,その刑期に満つるまでの分をその刑に算入する。 千葉地方検察庁で保管中の覚せい剤(平成23年千葉検領第1765号符号1)を没収する。 理由 (犯罪事実)被告人は,氏名不詳者らと共謀の上,平成23年5月22日(現地時間),A国所在のB空港において,覚せい剤599.5g(平成23年千葉検領第1765号符号1はその鑑定残量)が隠し入れられたボストンバッグを持って同空港発成田国際空港行きの航空機に搭乗し,同月23日,同ボストンバッグを持って同空港に到着した同航空機から降り立ち,千葉県成田市所在の成田国際空港内の東京税関成田税関支署C旅具検査場において,同支署税関職員の検査を受けた際,関税法が輸入してはならない貨物とする前記覚せい剤を携帯しているにもかかわらず,その事実を申告しないまま同検査場を通過して輸入しようとし,同職員に前記覚せい剤を発見されたため,これを遂げることができなかったが,被告人においては,前記ボストンバッグの隠匿物はダイヤモンドの原石であると誤信し,これを税関長の許可なく輸入する無許可輸入の犯意を有するに止まっていた。 (証拠)省略(事実認定の補足説明) 検察官は,本件について,被告人が,隠匿物が覚せい剤等の違法薬物であると認識した上で氏名不詳者と共謀の上,営利の目的で本件覚せい剤の密輸入に及んだものとして,覚せい剤取締法違反及び関税法違反(輸入してはならない貨物の輸入罪(関税法109条3項,1項,69条の11第1項1号))の罪で起訴している。これに対し,裁判所は,前記犯罪事実のとおり, ものとして,覚せい剤取締法違反及び関税法違反(輸入してはならない貨物の輸入罪(関税法109条3項,1項,69条の11第1項1号))の罪で起訴している。これに対し,裁判所は,前記犯罪事実のとおり,被告人が,ボストンバッグに隠匿されている物がダイヤモンドの原石であると誤信していた可能性を排斥できず,覚せい剤密輸入の故意を認定するには疑問の余地があるため,覚せい剤取締法違反罪は成立せず,関税法違反の点も輸入してはならない貨物の輸入罪ではなく貨物の無許可輸入罪(関税法111条3項,1項1号,67条)が成立するに止まると判断した。 1ないし4省略 5 結論(1) 省略したがって,被告人には,覚せい剤取締法上の覚せい剤輸入罪の故意があるとの証明はないから,同罪は成立しない。 (2) また,前記認定のほか,現に隠匿された覚せい剤の量が多量であることやその隠匿態様等からすれば,本件は複数人が関与する組織的な犯行であることは明らかであるが,被告人は,その中で,税関で申告せずに密輸するものは輸入してはならない貨物である覚せい剤ではなく,ダイヤモンド原石であると誤信して犯行に及んだということになる。 ダイヤモンド原石を無許可で輸入する罪と輸入してはならない貨物である覚せい剤を輸入する罪とは,ともに通関手続を履行しないでした貨物の輸入行為を処罰の対象とする限度において,その犯罪構成要件は重なり合っているものと解されるところ,被告人は,税関長の許可を受けないでダイヤモンド原石を輸入する意思で,輸入してはならない貨物である本件覚せい剤を輸入しようとしたことになるから, 本件輸入貨物が輸入してはならない覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がなく,輸入してはならない貨物の輸入罪の故意を欠くものとして,同罪の成立は認めら しようとしたことになるから, 本件輸入貨物が輸入してはならない覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がなく,輸入してはならない貨物の輸入罪の故意を欠くものとして,同罪の成立は認められないが,両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い貨物を無許可で輸入する罪の故意及び同限度での氏名不詳者らとの共謀が成立し,貨物の無許可輸入罪(未遂)が成立する(最高裁昭和54年3月27日第一小法廷決定・刑集第33巻第2号140頁参照)。 なお,弁護人は,訴因変更の手続きを行わずに無許可輸入罪を認定することは許されず,仮に訴因変更が不要であるとしても不意打ちに当たるので許されないと主張するが,前記のとおり,関税法上の輸入してはならない貨物である覚せい剤の輸入罪と貨物の無許可輸入罪の犯罪構成要件は後者の限度で重なり合っているのであるから,訴因変更は要しないものと解するのが相当である。また,被告人自身がダイヤモンド原石を密輸する意思であった旨明確に供述しているなどの訴訟経緯に鑑みれば,本件において無許可輸入罪を認定することが被告人の防御の利益を損なうものではない。 (3) 覚せい剤取締法上の覚せい剤輸入の点は,貨物の無許可輸入罪と観念的競合の関係に立つものであるから,無罪の言渡しはしない。 (法令の適用)罰 条刑法60条,関税法111条3項,1項1号,67条(判示行為は,客観的には関税法109条3項,1項,69条の11第1項1号に該当するが,被告人は貨物の無許可輸入の認識を有していたにすぎないと認められる。)刑種の選択所定刑中懲役刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条(その刑期に満つるまでの分をその刑に算入)没収 主文掲記の覚せい剤につき成立する犯罪は 所定刑中懲役刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条(その刑期に満つるまでの分をその刑に算入)没収 主文掲記の覚せい剤につき成立する犯罪は関税法111条3項,1項1号,67条の貨物の無許可輸入罪であるが,処罰の対象とされているのは関税法上輸入してはならない覚せい剤を輸入しようとしたという行為であり,この行為は客観的には同法109条3項,1項,69条の11第1項1号に該当することを踏まえ,同法の没収の趣旨を考慮して,同法118条1項本文により没収する(最高裁昭和61年6月9日第一小法廷決定・刑集第40巻第4号269頁参照)。 訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由)本件は,被告人が,覚せい剤が底板に隠匿されているボストンバッグにつき,国際条約によって輸出入が制限されているダイヤモンド原石が隠匿されているものと誤信した上で,これを無許可で日本に輸入しようとしたが,税関検査で覚せい剤を発見され,未遂に終わったという事案である。 被告人は,その不正取引が紛争資金源になっている状況に鑑みて多国間の条約によって国際的に輸出入が制限されているダイヤモンド原石の密輸の仕事を,共犯者から持ちかけられ,その輸出入の規制や罰則などを調査して違法性を認識したにもかかわらず,報酬目的で,共犯者からの誘いに安易かつ積極的に応じているのであって,その経緯や動機は身勝手であるとともに,国際条約による不正取引規制の制度趣旨を損なおうとする悪質な犯行である。 他方で,被告人の身柄拘束が長期間に及んでいることなど,被告人のために酌むべき事情もある。 以上の事情を考慮した結果,主文の刑に処した上,未決勾留日数をその刑に満つるまで算入するのが相当であると 他方で,被告人の身柄拘束が長期間に及んでいることなど,被告人のために酌むべき事情もある。 以上の事情を考慮した結果,主文の刑に処した上,未決勾留日数をその刑に満つるまで算入するのが相当であるとの結論に達した。 (求刑懲役10年及び罰金500万円,覚せい剤の没収)平成24年11月5日千葉地方裁判所刑事第3部裁判長裁判官稗田雅洋裁判官水上周裁判官鈴木真耶

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