令和6(わ)111 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月21日 和歌山地方裁判所
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判決文本文1,855 文字)

- 1 - 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中220日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、認知症を患っていた夫であるA(当時82歳)が頻回に求めてくる性的な行為に嫌悪感を募らせていたところ、令和5年11月24日朝方、布団の中にいる同人の挙動から、また同様の行為を求められるのではないかと感じ、とっさに、同人と一緒に死のうと考え、同日午前8時頃、和歌山県西牟婁郡(住所省略)被告人方において、Aに対し、殺意をもって、仰向けに寝ていた同人に馬乗りになり、その頸部を手のひらで押さえ付けた上、その頸部をタオルで絞め付け、よって、同日午前10時49分頃、同県田辺市(住所省略)Bにおいて、同人を頸部圧迫に基づく窒息により死亡させて殺害した。 なお、被告人は、犯行後、近所の住民を介して110番通報をして自首した。 【証拠の標目】(括弧内の証拠番号は検察官請求証拠番号)(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】被告人は、「なんや」と言って自分の行為に驚く様子を見せていた被害者の首を、同人の体から力が抜けるまで絞め続けたもので、被害者の人生を無理に絶った結果は言うまでもなく重大である。もっとも、犯意の発生は突発的で、被告人が、犯行中、被害者を確実に死亡させようと強く意識していたとまでは認められない。 次に犯行に至る経緯をみると、被告人は、長年にわたり被害者と良好な夫婦関係を- 2 - 築き、本件の約8年前に被害者が認知症と診断され、夜間に度々不穏になったり、日中でも突然怒り出したりするなどの症状が現れ始めてからも、夫婦としての情愛をもって身体障害もある被害者の介助等に当たっていた。 、本件の約8年前に被害者が認知症と診断され、夜間に度々不穏になったり、日中でも突然怒り出したりするなどの症状が現れ始めてからも、夫婦としての情愛をもって身体障害もある被害者の介助等に当たっていた。そして、本件の約11か月前頃、被害者から、勃起しなくなった、口でしてほしいなどと求められるようになってからは、口腔性交等にも応じていたものであるが、このような求めが1日に何度もあるようになり、拒むと被害者が不機嫌になることから、嫌悪感や負担感が強くなる一方、同人の望みを叶えたい気持ちもあって強く葛藤していた。その結果、本件当時は、被告人自身が中等度のうつ病にかかり、希死念慮を生じる一方、被害者を一人残してはいけないとも考えるようになっていた。被告人は、この間、行政に相談するなどしておらず、採り得る措置を尽くしていたとはいえないが、被告人の悩みの核心部分が夫婦間の性的な問題であったことからすれば、夫の恥になると思い誰にも相談できなかったという被告人の心情は理解できる。また、被害者は、途中で認知症の治療を止めているが、認知症が進んで治療を拒むようになった被害者に認知症の治療等を続けさせることは現実的に困難であったと考えられる。被告人夫婦は高齢で、社会とのつながりも希薄になっていたことや、途中からは被告人自身がうつ病を発症していたことなども併せ考えれば、被告人が採り得る措置を尽くしていなかったとして非難するのは酷であり、被告人が本件犯行に至った経緯・動機には、十分酌むべきものがある。 以上の犯情評価によれば、本件は、考慮すべき前科がない者による殺人の同種事案(配偶者に対する単独犯の殺人1件で、心中又は介護疲れを動機とし、ひも・ロープ類を凶器とする事案)の中でも軽い部類に属し、執行猶予を付すのが相当な事案といえる。そこで、犯行後、死にきれずに自殺を 案(配偶者に対する単独犯の殺人1件で、心中又は介護疲れを動機とし、ひも・ロープ類を凶器とする事案)の中でも軽い部類に属し、執行猶予を付すのが相当な事案といえる。そこで、犯行後、死にきれずに自殺を断念した後は直ちに自首したこと、従前から関わりのあった義理の姪や被告人の居住する地区の関係者が支援や受け入れの意向を示していることなどの一般情状も考慮し、自首減軽をして主文の刑を科すとともに、法律上最長の期間を定めてその刑の執行を猶予することにした。 (検察官の求刑:懲役5年、弁護人の科刑意見:懲役2年6月・執行猶予4年)令和7年1月21日- 3 - 和歌山地方裁判所刑事部裁判長裁判官福島恵子 裁判官小林薫 裁判官森谷拓朗

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