- 1 -平成17年(行ケ)第10706号審決取消請求事件平成18年10月25日判決言渡,平成18年7月26日口頭弁論終結判決原告東洋紡績株式会社訴訟代理人弁理士高島一,谷口操被告特許庁長官中嶋誠指定代理人石井あき子,井出隆一,柳和子,田中敬規主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 本判決においては,書証等を引用する場合を含め,公用文の用字用語例に従って表記を変えた部分がある。 第1原告の求めた裁判「特許庁が訂正2005-39079号事件について平成17年8月18日にした審決を取り消す」との判決。 。 第2事案の概要本件は,原告が,後掲の訂正審判請求について,審判請求不成立の審決を受けたため,同審決の取消しを求めた事案である。 特許庁における手続の経緯(1)本件特許(甲3の1)発明の名称:金属板ラミネート用フィルム」「- 2 -特許出願日:平成9年3月24日(国内優先日:平成8年3月25日)設定登録日:平成13年11月9日特許番号:第3248447号(2)特許異議手続特許異議事件番号:異議2002-71762号訂正請求日:平成15年5月30日異議決定日:平成16年12月22日決定の結論:訂正を認める。特許第3248447号の請求項1ないし4に係「る特許を取り消す」。 取消訴訟提起日:平成17年2月10日(当庁平成17年(行ケ)第10379号特許取消決定取消請求事件として係属中)(3)本件訂正審判手続訂正審判請求日:平成17年5月10日(訂正2005-39079,以下「本件訂正」という。甲2)手続補正日:平成17年7月13日付け(以下「本件補正」という。甲4)審決日:平成17年8月18日審判の結論:本件審判の請求は成り立たない」「。 -39079,以下「本件訂正」という。甲2)手続補正日:平成17年7月13日付け(以下「本件補正」という。甲4)審決日:平成17年8月18日審判の結論:本件審判の請求は成り立たない」「。 審決謄本送達日:平成17年8月30日(原告に対し) 訂正発明(1)本件補正後の請求項1,2に記載された発明(以下「補正発明1」などという。また,本件補正後の明細書(甲3の3)を「補正明細書」という)。 【請求項1】フィルム製造用原料として水分率を50ppm以下にしたポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加- 3 -熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下でありフィルムの面積が1 ,,~100,000mであることを特徴とするポリエステル系樹脂を含む金属 板ラミネート用フィルム。 【請求項2】少なくとも片面の表面濡れ張力が420μN/cm以上である請求項1記載の金属板ラミネート用フィルム。 (2)本件補正前であり本件訂正後の請求項12に記載された発明以下訂,,(「正発明1」などという。下線部は訂正箇所であり,二重下線部分が本件補正によって削除された。なお,本件訂正後であり,本件補正前の明細書(甲3の2)を「訂正明細書」という)。 【請求項1】フィルム製造用原料として水分率を50ppm以下にしたポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フ ppm以下にしたポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下であり,フィルムの面積が1,000~100,000mであることを特徴とするポリエステル系樹脂を含む金属 板ラミネート用フィルム。 【請求項2】少なくとも片面の表面濡れ張力が420μN/cm以上である請求項1記載の金属板ラミネート用フィルム。 (3)本件訂正前の請求項1~4に記載された発明(甲3の1)【請求項1】少なくとも金属にラミネートされる部分に存在する直径0.1mmφ以上のピンホールの数が0ケ/1,000m以下であり,かつフィルムの縦方 向および横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下- 4 -であることを特徴とする熱可塑性樹脂を含む金属ラミネート用フィルム。 【請求項2】熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂である請求項1記載の金属板ラミネート用フィルム。 【請求項3】少なくとも片面の表面濡れ張力が420μN以上である請求項1または2記載の金属板ラミネート用フィルム。 【請求項4】水分率を50ppm以下に調整した原料から造られる請求項1~3のいずれかに記載の金属板ラミネート用フィルム。 審決の理由の要点,,審決は本件補正は審判請求書の要旨変更に当たるので認められないとした上で①請求項1に係 整した原料から造られる請求項1~3のいずれかに記載の金属板ラミネート用フィルム。 審決の理由の要点,,審決は本件補正は審判請求書の要旨変更に当たるので認められないとした上で①請求項1に係る訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするとも認められない(理由1,②訂正事項j)は,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするとも認められない(理由2,③本件訂正後の請求項1,2の記載は,簡)潔ではなく特許を受けようとする発明が明確ではない理由3④訂正発明12,(),,は,当業者が容易に発明することができたものであり,独立特許要件を充足しない(理由4,との理由から本件訂正は許されないと判断した。また,審決は,仮に)本件補正が認められる場合であっても,補正発明1,2は,上記④と同様の理由から,独立特許要件を備えていないと判断した。 (1)補正の適否「本件補正は,審判請求書と,審判請求書に最初に添付した訂正明細書を補正するものであり,その補正事項には,訂正明細書の段落【0008】中の「即ち,本発明は,フィルム製造用原料として水分率を50ppm以下にしたポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される直径01mm,,. - 5 -φ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処 理した後の収縮 部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される直径01mm,,. - 5 -φ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処 理した後の収縮率がそれぞれ5%以下でありフィルムの面積が1000~100000m,,,であることを特徴とするポリエステル系樹脂を含む金属板ラミネート用フィルムに関する」。 を「即ち,本発明は,フィルム製造用原料として水分率を50ppm以下にしたポリエステ,ル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下であり,フィルムの面積が1,000~100,000mであることを特徴とするポリエステル系樹脂を含む金属 板ラミネート用フィルムに関する」と補正する補正事項,及び,審判請求書第4頁の訂正事。 項jを,前記補正事項に対応するように補正する補正事項が含まれている(以下,これらの補正事項を一括して「補正事項j」という。 。)そこで,補正事項jについて検討する。 補正事項jにより,訂正明細書に存在していた「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される」との文言が削除され,訂正事,項jは内容的に別の訂正事項に変更されることとなるから,補正事項jは,審判請求書の要旨を変更するものと認められる。 請求人は,補正事項jのうちの訂正明細書の補正は誤記の訂正を目的とするとしている(補 項jは内容的に別の訂正事項に変更されることとなるから,補正事項jは,審判請求書の要旨を変更するものと認められる。 請求人は,補正事項jのうちの訂正明細書の補正は誤記の訂正を目的とするとしている(補正書第3頁第2行参照)が「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧,を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される」との長文の記載を誤記と認めることはできない。審判,請求書に訂正事項fが存在していたことからみても,該記載を誤記と認めることはできない。 また,請求人は,補正事項jは訂正事項fに係る記載を削除する補正に伴うものであると述べている(補正書第4頁の(理由)を参照)が,訂正事項jと訂正事項fとは互いに別の訂正事項であるから,それぞれが補正の要件を満たす必要があると認められる。 - 6 -以上のとおりであるから,他の補正事項について検討するまでもなく,本件補正は認められない」。 (2)本件訂正の許否審決は,本件訂正は,以下の理由1~4により,認めることができないと判断した。 「理由1:訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするとも認められない。仮に,訂正事項fにおいて「0.1mmφ以上のピンホール」を「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホール」と訂正したことで「直径0.1mmφ以上のピンホール」が減縮されるのであれば,訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするとも認められないだけではなく,願 正したことで「直径0.1mmφ以上のピンホール」が減縮されるのであれば,訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするとも認められないだけではなく,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとも認められない。また,実質上特許請求の範囲を拡張する。 理由2:訂正事項jは,明りょうでない記載の釈明を目的とするとは認められない。特許請求の範囲の減縮や誤記の訂正を目的とするとも認められない。 理由3:訂正後の請求項1,2の記載は特許法36条6項2号,及び,3号に規定する要件を満たしていないから,訂正発明1,2は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 理由4:訂正発明1,2は,本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物1~5に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 刊行物1:特開平6-71747号公報(本訴甲9)刊行物2:特開平2-269120号公報(本訴甲10)刊行物3:湯木和男編「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」初版1989年12月22日日刊- 7 -工業新聞社発行p.199~201,676~679,830~833(本訴甲11)刊行物4:特開平4-261826号公報(本訴甲12)刊行物5:特開平7-304885号公報(本訴甲13)(3)理由1について「訂正事項fは以下のとおりである。 訂正事項f:特許請求の範囲の請求項1中の「0.1mmφ以上」の前に「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ロ 正事項f:特許請求の範囲の請求項1中の「0.1mmφ以上」の前に「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される」を加入,する(以下,ここで加入された「検出部電極と…走行させて検出される」という要件を「訂。 正検出要件」という)。 訂正事項fにより,訂正前の「直径0.1mmφ以上のピンホール」が「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホール」に訂正されることになる。 そこで,訂正検出要件について検討する。 訂正明細書の段落【0038】には,「0038(1)ピンホールの検出方法(高電圧印加方式)【】0.1mmφのピンホールを検出する場合,フィルムに0.1mmφのピンホールをあけ,これを用いて図1に示した装置の検出部電極と検出部ローラとの隙間および印加電圧を適切に決定する。本実施例の場合,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/min.に設定し,この条件で巾1,000mm,長,。」さ1000mのロール状に巻かれたフィルムサンプルロールを走行・検出検査を実施したと記載されている。そして,上記段落【0038】における「図1に示した装置」とは,訂正明細書の段落【0013】の記載からみて,高電圧印加方式のピンホール検出器の一例(以下「A装置」という)である。段落【0013【0038】の記載によれば,フィルムにま。 】,ず0.1mmφのピンホールが開けられ,そのピンホールをA装置で検出するための適切な条- 出器の一例(以下「A装置」という)である。段落【0013【0038】の記載によれば,フィルムにま。 】,ず0.1mmφのピンホールが開けられ,そのピンホールをA装置で検出するための適切な条- 8 -件が決定されたことがわかる。その適切な操作条件が,訂正検出要件である。 そうすると,訂正検出要件は,0.1mmφのピンホールを検出するためのA装置に固有の操作条件として記載されており,0.1mmφの複数種類のピンホールを相互に区別する為の要件として記載されているのではない。 したがって,段落【0038】の「0.1mmφのピンホール」を「検出部電極と検出部,ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される直径01mm,,. φのピンホール」と記載したからといって,該0.1mmφのピンホールの実体が変わるものではないのと同様に,請求項1中の「0.1mmφ以上のピンホール」を「検出部電極と検,出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径01mmφ以上のピンホールと訂正したからといって直径01mmφ以上のピンホー. 」,. ルの実体が変わるものではない。つまり,訂正事項fは,単なる文言の言い換えにすぎない。 ゆえに,訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。 ところで,特許明細書(訂正前のもの)の段落【0013【0038,図1の記載は,】,】訂正明細書の同箇所の記載と相違がなく,したがって,特許明細書において,訂正検出要件は,0.1m られない。 ところで,特許明細書(訂正前のもの)の段落【0013【0038,図1の記載は,】,】訂正明細書の同箇所の記載と相違がなく,したがって,特許明細書において,訂正検出要件は,0.1mmφのピンホールを検出するための,A装置に固有の操作条件として記載されているにすぎず,0.1mmφの複数種類のピンホールを相互に区別する為の要件として記載されているのではない。 したがって,仮に,訂正事項fにおいて「0.1mmφ以上のピンホール」を「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホール」と訂正したことで「直径0.1mmφ以上のピンホール」が減縮されるのであれば,訂正事項fは,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。また,該減縮の結果として,訂正発明1のフィルム- 9 -は,訂正前のフィルムに比べて拡張されることにもなる(フィルムに存在しないものを減縮すれば,フィルムそれ自体は拡張される。 。)したがって,この場合,訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするとも認められないだけではなく,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとも認められない。また,実質上特許請求の範囲を拡張する。 以上のとおりであるから,訂正事項fは,特許法126条1項ただし書の規定に適合せず,,「. 」,仮に訂正検出要件が訂正前の直径01mmφ以上のピンホールを減縮するのであればさらに,同条3項,及び,同条4項の規定にも適合しない」。 (4)理由2について「本件審判請求 「. 」,仮に訂正検出要件が訂正前の直径01mmφ以上のピンホールを減縮するのであればさらに,同条3項,及び,同条4項の規定にも適合しない」。 (4)理由2について「本件審判請求における訂正事項jは以下のとおりである。 訂正事項j:段落【0008】中の「即ち,本発明は,少なくとも金属にラミネートされる部分には直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しない熱可塑性樹脂を含む金属板ラミネート用フィルムに関するを即ち本発明はフィルム製造用原料として水分率を50ppm。」,「,,以下にしたポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を24kV走行速度を50m/minに設定して前記検出部電極と検出部ローラー. ,,の間にフィルムを走行させて検出される直径01mmφ以上のピンホールが存在せずフィ,. ,ルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下であり,フィルムの面積が1,000~100,000mであることを特徴とするポリエス テル系樹脂を含む金属板ラミネート用フィルムに関する」と訂正する。 。 訂正事項jは,訂正事項fが不適法な訂正であって認められない以上,明りょうでない記載の釈明を目的とするとは認められない。特許請求の範囲の減縮や誤記の訂正を目的とするとも認められない。 したがって,訂正事項jは,特許法126条1項ただし書の規定に適合しない。仮に,訂正- 10 -検出要件が訂正前の「直径0.1mmφ以上のピンホール」を減縮するのであれば,訂正事項jは,同条3項の規定に って,訂正事項jは,特許法126条1項ただし書の規定に適合しない。仮に,訂正- 10 -検出要件が訂正前の「直径0.1mmφ以上のピンホール」を減縮するのであれば,訂正事項jは,同条3項の規定にも適合しない」。 (5)理由3について「訂正後の請求項1,2は減縮されており,その記載は以下のとおりである。 「請求項1】フィルム製造用原料として水分率を50ppm以下にしたポリエステル系樹【脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下であり,フィルムの面積が1,000~100,000mmであることを特徴とするポリエステル系樹脂を含む金 属極ラミネート用フィルム。 【請求項2】少なくとも片面の表面濡れ張力が420μN/cm以上である請求項1記載の金属板ラミネート用フィルム」。 そして,訂正後の請求項1に記載された訂正検出要件は,上記「1.理由1について」において示した理由により,単に「直径0.1mmφ以上のピンホール」を検出できる操作条件にすぎず「直径0.1mmφ以上のピンホール」を事実上特定するものではない。 ,つまり「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走,行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0. つまり「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走,行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホール」は「直径0.1mmφ以上のピン,ホール」とその意味内容において相違がない。 そうすると,訂正後の請求項1は「直径0.1mmφ以上のピンホール」と簡潔に記載することができる事項を「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホール」と簡潔性を欠く表現で記載- 11 -するものである。 しかも,訂正検出要件は「1.理由1について」に示したとおりA装置固有の操作条件で,あるから,訂正検出要件はA装置を使用する場合の要件として記載されなければ意味をなさない。しかるに,訂正後の請求項1に測定装置の特定はない。 したがって,訂正後の請求項1の記載は簡潔ではなく,また,特許を受けようとする発明が明確でもない。 訂正後の請求項2の記載も,請求項1を引用している以上同様である。 したがって,訂正後の請求項1,2の記載は特許法第36条6項2号,及び,3号に規定する要件を満たしていないから,訂正発明1,2は特許出願の際独立して特許を受けることができない」。 (6)理由4についてア訂正発明1について「…以上の点からみて,刊行物1には「フィルム製造用原料としてポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程を経て得られた,フィルムの縦方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であるポリエステル系樹脂を含む金属板ラミネート用フィルム リエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程を経て得られた,フィルムの縦方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であるポリエステル系樹脂を含む金属板ラミネート用フィルム」の発明(以下「刊行物1の発明」という)が。 記載されていると認める。 訂正発明1と刊行物1の発明を対比すると,両者は「フィルム製造用原料としてポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程を経て得られた,フィルムの縦方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であるポリエステル系樹脂を含む金属板ラミネート用フィルム」の発明である点で一致し,次の点で相違する。 相違点1:フィルム製造用原料としてのポリエステル系樹脂が,前者では水分率を50ppm以下にしたものであるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 相違点2:ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中に,前者では少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターが導入されているのに対して,後者で- 12 -はこのような特定がなされていない点。 相違点3:前者では「金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 相違点4:前者では「フィルムの横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であり」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 相違点5:前者では「フィルムの面積が1,000~100,000mである」 50℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であり」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 相違点5:前者では「フィルムの面積が1,000~100,000mである」との特定 があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 そこで,これらの相違点について検討する。 a.相違点1について刊行物2の1頁左下欄下から2行~同右下欄5行には,ポリエステル中の水分が加水分解等の劣化やボイドの生成の要因となることが記載され,刊行物3の199~200頁には,ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレートについて,その中の水分がフィルムの強度を引き下げる結果となること,及び,フィルムにあっては,好ましくは0.005wt%以下の水分率を考えておく必要があることが記載されている。0.005wt%以下の水分率は,50ppm以下と換算される。 以上の点からみて,相違点1にかかる構成を採用することは容易である。 なおフィルムのように薄い成形品にあっては上記刊行物2に記載されたボイドがピンホー,,ルとなることは予測できることであり,したがって,ピンホールの発生が防止できる効果は予測できるものにすぎない。 b.相違点2について刊行物1の段落【0023】には,深絞り製缶等の加工の際に10μm以上の粗粒子がピンホールの原因となることが記載され,また,刊行物4の3頁左欄5~13行にも同様の記載がある。 - 13 -さらに,刊行物3の677頁の「D.異物」の項には「フィルム原料としては,特に異物の少ない原料であることが望ましい異物が多いと延伸中の破れの原因となるだけでなくフィ。 ,,ルムの特性(フィッシュアイや粗大突起が発生する)をも悪くする。押出し前のロ過工程で異物を除去することもできるが,フィルターの寿命を考えると が多いと延伸中の破れの原因となるだけでなくフィ。 ,,ルムの特性(フィッシュアイや粗大突起が発生する)をも悪くする。押出し前のロ過工程で異物を除去することもできるが,フィルターの寿命を考えると重合工程以前での異物(ちりやほこりも含む)はできるだけ排除しなければならない」と記載されているから,ロ過工程で異。 物を除去することが示されている。 以上の刊行物1,3,4の記載からみて,ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に,ピンホールの原因となる10μm以上の粗粒子を除く等の為に,孔径10μm未満のフィルターを導入することは容易である。訂正発明1の孔径20μm以下のフィルターには,孔径10μm未満のフィルターが含まれる。 したがって,相違点2にかかる構成を採用することは容易である。 c.相違点3について刊行物1の段落【0023】に「白色顔料の平均粒径が2.5μmを越える場合は,深絞り製缶等の加工により変形した部分に,粗大粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となり,ピンホールを生じたり,場合によっては破断が生じるので,好ましくない」と記載され,ま。 た,刊行物4には滑剤を含有する金属板貼合せ成形加工用フィルム(請求項1を参照)に関し「. ,,て滑剤の平均粒径が25μmを越える場合は深絞り製缶等の加工により変形した部分の粗大滑剤粒子例えば10μm以上の粒子が起点となりピンホールを生じたり場合によっ(),,ては破断するので好ましくない特に耐ピンホール性の点で好ましい滑剤は平均粒径2 ,。 ,. ,(). . 。」μm以下であると共に粒径比長径/短径が10~12である単分散の滑剤である(3頁左欄5~13行)と記載されているから,刊行物1,4にはピンホ ,。 ,. ,(). . 。」μm以下であると共に粒径比長径/短径が10~12である単分散の滑剤である(3頁左欄5~13行)と記載されているから,刊行物1,4にはピンホールが好ましくない。 ,,現象であるとの認識が示されているそしてその好ましくない現象が錆の発生であることは技術常識から明らかである。ピンホールが錆の発生の点で好ましくないことは,刊行物2の段落【0048】からも明らかである。 これら,刊行物1,4に記載されたピンホールはフィルムを金属板に貼り合わせた後の製缶工程等で生じるピンホールであり,金属板に貼り合わせる前のフィルム自体に存在するピン- 14 -ホールではないが,完成品において好ましくないもの,特に,フィルムが目的とする用途の上から好ましくないものを素材の段階で排除しておくことは当業者が通常考慮することである。 してみれば,フィルムの段階でピンホールを排除しておくことは,刊行物1,4の記載に基づいて当業者が当然に考慮できることにすぎない。 金属板ラミネート用フィルムは,該フィルムで金属板を覆うことにより防錆をもたらすもの(【】,,【】),であり必要ならば刊行物1の段落0002及び刊行物4の段落0002を参照ピンホールは,この覆いの欠陥であるから,ピンホール数が多いほど,また,ピンホールの径が大きいほど防錆性が悪いのは当然のことである。 してみれば,防錆の為に,金属板ラミネート用フィルム全体に径が大きいピンホールを存在させないことは当業者が当然に考慮することである。そして,存在させないピンホールの径の下限を設定することは,必要な防錆性に応じて適宜なしうることであるから,金属板ラミネート用フィルム全体において直径0.1mmφ以上のピンホールを存在しないようにすることは容 させないピンホールの径の下限を設定することは,必要な防錆性に応じて適宜なしうることであるから,金属板ラミネート用フィルム全体において直径0.1mmφ以上のピンホールを存在しないようにすることは容易である。そして,上記「3.理由3について」で示したように「金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される直径01mmφ以上のピンホールと直径01mmφ以上のピンホー,. 」「. ル」とに事実上の相違は認められない。 したがって,相違点3にかかる構成を採用することは容易である。 この判断について,請求人は平成14年(行ケ)第418号判決を参考文献1として提出して該判決に基づくと称する主張をしているが,該判決は本件とは事例を異にするから,この請求人の主張は採用できない。 d.相違点4について刊行物1の段落【0018【0019】には上記のとおり熱収縮率について記載され,該】,熱収縮率は縦方向の熱収縮率をもって代表させている。ところで,通常,フィルムの熱収縮率としては,縦方向や横方向の収縮率を測定しており,縦方向の熱収縮率をもって代表させているということは,横方向の熱収縮率も考慮に入れていることを意味している。また,刊行物1- 15 -の段落【0018】に熱収縮率を特定した意味としてしわ防止が記載されており,しわは横方向の熱収縮であっても発生する。したがって,横方向の熱収縮率も,縦方向同様に特定することは容易である。 したがって,相違点4に係る構成は,刊行物1の記載から当業者が容易に採用できたものと認める。 e.相違点5についてフィルムの面積は,金属板ラミネートに必要な量を考慮 様に特定することは容易である。 したがって,相違点4に係る構成は,刊行物1の記載から当業者が容易に採用できたものと認める。 e.相違点5についてフィルムの面積は,金属板ラミネートに必要な量を考慮して,適宜決定できるものと認められる。 したがって,相違点5に係る構成を採用することは容易である。 そして,相違点1~5に係る構成をともに採用する点にも困難はない。 したがって,訂正発明1は,刊行物1~4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 なお,請求人は,訂正発明1は,ラミネート缶におけるピンホール検査が不要になるいう効果を奏する旨の主張をしているが,該効果は訂正明細書に記載されたものではないから,この請求人の主張は採用できない。請求人は,実施例1ではピンホールの発生がないからピンホール検査が不要になるという効果は訂正明細書に記載された効果である旨の主張をしているが,実施例1は訂正発明1の一実施例にすぎないから,実施例1の効果を訂正発明1全体の効果ということはできない。また,訂正発明1には,例えば,孔径20μmのフィルターを1ヶ所導入した発明が含まれるが,このような発明では,20μm未満で10μm以上の粗大粒子をロ過することはできず,該粗大粒子に基づくピンホールが発生する可能性がある(粗大粒子に基づくピンホールの発生については刊行物14を参照したがって訂正発明1がラミネー,)。 ,,ト缶におけるピンホール検査が不要になるいう効果を当然奏するということはできない。請求人は,参考資料2を提出し,訂正発明1で使用するフィルターは10μm以上の粗大粒子を捕獲すると主張しているが,この主張は訂正明細書の記載,特に特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから採用できない」。 イ訂正発明2について 明1で使用するフィルターは10μm以上の粗大粒子を捕獲すると主張しているが,この主張は訂正明細書の記載,特に特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから採用できない」。 イ訂正発明2について- 16 -「訂正発明2と刊行物1の発明を対比すると,両者は「フィルム製造用原料としてポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程を経て得られたフィルムの縦方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であるポリエステル系樹脂を含む金属板ラミネート用フィルム」の発明である点で一致し,上記(1)に示した相違点1~5,及び,下記相違点6で相違する。 相違点6:前者は「少なくとも片面の表面濡れ張力が420μN/cm以上である」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 相違点1~5に対する判断は上記(1)に示したとおりであるから,相違点6についてさらに判断する。 刊行物1の段落【0035】には,コロナ放電処理を行うことが記載され,刊行物5には,コロナ放電処理により,表面の濡れ張力を46dyne/cm(460μN/cmと換算される)以上とし,接着力を高めることが記載されている(刊行物5の請求項1,2,段落。 【0018,段落【0022】の末尾,段落【0028,段落【0033】の表1中の濡れ】】張力の欄を参照。 。)そうすると,刊行物1の発明において,表面濡れ張力を420μN/cm以上とすることは刊行物5の記載から容易である。 したがって,訂正発明2は,刊行物1~5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認める」。 ウまとめ「以上のとおりであるから,訂正発明1,2は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認める」。 ウまとめ「以上のとおりであるから,訂正発明1,2は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない」。 (7)本件補正が認められる場合についての判断「…本件補正は認められないが,仮に認められるとしても,下記の理由により,訂正拒絶理由のうちの理由4は依然として解消していない。 ,,,「. 」,…そして補正発明12に対する理由4の判断は上記 理由4についてにおいて訂正発明1,2に対して示した判断と同様である。ただし「4.理由4について」の記載の,- 17 -うち相違点3は下記の相違点3に置き換え,また「c.相違点3について」中の「そして,上記「3.理由3について」で示したように「金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホール」と「直径0.1mmφ以上のピンホール」とに事実上の相違は認められない」との記載は削除する。 。 相違点3:前者では金属板ラミネート用フィルム全体に直径01mmφ以上のピンホー「,. ルが存在せず」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点。 以上のとおりであるから,補正発明1は,刊行物1~4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,補正発明2は,刊行物1~5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,補正発明1,2は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない」。 (8 1~5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,補正発明1,2は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない」。 (8) 結論 「以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第126条1項ただし書,及び同条5項の規定に適合しない。仮に,訂正検出要件が訂正前の「直径0.1mmφ以上のピンホール」を減縮するのであれば,さらに,同条3項,及び,同条4項の規定にも適合しない。 また,仮に本件補正が認められるとしても,本件訂正は,特許法126条5項の規定に適合しない」。 第3原告の主張の要点審決は,本件補正及び本件訂正の許否について判断を誤った結果,本件補正及び本件訂正はいずれも許されないと判断したものであり,この判断は違法であるから取り消されるべきである。 取消事由1(本件補正の許否の判断の誤り)審決は,補正事項jにより,訂正明細書(甲3の2)に存在していた「検出部電- 18 -極と検出部ローラーとの隙間を02mm印加電圧を24kV走行速度を50m. ,. ,/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される」との文言が削除されると,訂正事項jは内容的に別の訂正事項に変更されることになるとの理由から,本件補正を却下している。 しかしながら,審決は,補正事項fについて明確な判断を示していないが,訂正事項jと訂正事項fとは互いに別の訂正事項であるから,それぞれが補正の要件を満たす必要があると説示していることからすると,補正事項fは補正の要件を満たすものと判断していることがうかがわれる。訂正事項jは,特許請求の範囲における訂正事項fに対応する発明の詳細な説明を訂正するものであるから,訂正事項fと一体の訂正である。補正事項fが訂正 要件を満たすものと判断していることがうかがわれる。訂正事項jは,特許請求の範囲における訂正事項fに対応する発明の詳細な説明を訂正するものであるから,訂正事項fと一体の訂正である。補正事項fが訂正請求書の要旨を変更するものでないのであれば,補正事項jも訂正請求書の要旨を変更しないものとして認められるべきである。 審決に先立つ訂正拒絶理由通知書は,訂正事項fについて「請求項1中の,「0.1mmφ以下のピンホール」を「検出部電極と検出部ローラとの隙間を…,に設定して,前記検出部電極と検出部ローラーとの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以下のピンホール」と訂正したからといって,直径0.1mmφ以下のピンホールの実体が変わるものではない。つまり,訂正事項fは,単なる文言の言い換えにすぎない。ゆえに,訂正事項fは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない」としている。 。 そこで,原告は,審判合議体の「特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない」とする認定を回。 避するために,訂正事項fを単純に削除する補正を補正事項fとして行ったものである「単なる文言の言い換えにすぎない」とされた訂正事項fを削除しても,補。 。 正の前後において実質的な構成上の差異はないのであるから,審判請求書の要旨を変更することにはならない。訂正事項fに係る構成の削除が特許請求の範囲に実質- 19 -的な変更を与えるものでない以上,訂正事項jにおいてこれと同内容の構成を単純に削除しても,審判を申し立てている事項の同一性や範囲を変更するものとはいえない。 したがって,本件補正の補正事項jが審判請求書の要旨を変更するものであるとした審決の判断 てこれと同内容の構成を単純に削除しても,審判を申し立てている事項の同一性や範囲を変更するものとはいえない。 したがって,本件補正の補正事項jが審判請求書の要旨を変更するものであるとした審決の判断は誤りであり,取り消されるべきである。 取消事由2(明細書の記載要件の判断の誤り)審決は理由23として本件訂正後の請求項12の記載は特許法36,,,,条6項2号,3号の要件を満たしていないと判断したが,前記のとおり,審判請求書の補正事項f及びjはともに審判請求書の要旨を変更するも,。 ,のではなく本件補正を却下した審決の判断は誤りであるしたがって本件補正が却下されたことを前提とする審決の理由2,3の判断は誤りということになる。 取消事由3(補正発明1の進歩性の判断の誤り)審決は,補正発明1と,刊行物1~5記載の発明との相違点についての判断を誤り,補正発明1の顕著な効果を看過した結果,補正発明1が刊行物1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと誤って判断したものである(補正発明の内容は実質的に訂正発明と同一であり,補正発明1,2に関する取消事由3,4は,訂正発明1,2についても同様にあてはまる。 。)(1)取消事由3-1(相違点3の判断の誤り)審決は,相違点3について「刊行物1,4に記載されたピンホールはフィルム,を金属板に貼り合わせた後の製缶工程等で生じるピンホールであり,金属板に貼り合わせる前のフィルム自体に存在するピンホールではないが,完成品において好ましくないものを,特に,フィルムが目的とする用途の上から好ましくないものを素材の段階で排除しておくことは当業者が通常考慮することであるしてみればフィ。 ,ルムの段階でピンホールを排除しておくことは,これら刊行物1,4の記 ィルムが目的とする用途の上から好ましくないものを素材の段階で排除しておくことは当業者が通常考慮することであるしてみればフィ。 ,ルムの段階でピンホールを排除しておくことは,これら刊行物1,4の記載に基づいて当業者が当然に考慮できることにすぎない」と判断している。 。 - 20 -ア従来,長尺のフィルムをラミネートしたラミネート金属板から工業的に連続されるラミネート缶において,不良品(錆発生缶)の発生率は,50,000缶当たり1~9缶程度であるが,このような不良品の発生確率が0.02%(9/50,000)以下の缶について,少数抜取検査によって全缶の良/不良を判定する品質検査を行ったとしても,すべて良品と判定される蓋然性が極めて高い。 しかし,実際には,極めて稀とはいえ錆発生缶が存在し,最悪の場合には,全缶回収,全品廃棄処分という製缶メーカー及び飲料メーカーにとっては致命的といえる対応を迫られることがあるそのためこれらのメーカーは製造した50000。 ,,,個のラミネート缶1個ずつについてピンホール検査をしていたが,この作業は大変な手間と時間がかかる。補正発明は,このような検査作業をなくしたいという製缶メーカーの願望に応えるべくなされたものである。 本件発明者は,直径が0.1mmφのピンホールやそれよりもサイズが小さい直径が0.01mmφのピンホールまで検出できる高電圧印加方式によるピンホール検出器(補正明細書(甲3の3)の段落【0012)で金属板に貼り合せる前の】,. ,フィルムのピンホール検査を行うと直径01mmφ以上のピンホールが存在しそれがフィルムを金属板にラミネートしても塞がらないことが缶の錆発生をもたらしていることを見出した。 ,,本件出願前には金属板にラミネートする前のフィルムに存在するピンホールがフィルム が存在しそれがフィルムを金属板にラミネートしても塞がらないことが缶の錆発生をもたらしていることを見出した。 ,,本件出願前には金属板にラミネートする前のフィルムに存在するピンホールがフィルムを金属板にラミネートして得られるラミネート缶の錆発生につながっているとの認識はなかった。これは,ポリエステル系樹脂のフィルムの金属板へのラミネートは,補正明細書の段落【0035】にも記載のとおり,通常,フィルムの上に接着剤層や低融点ポリエステル系樹脂層を形成し,フィルムをかかる接着剤層や低融点ポリエステル系樹脂層を介して金属板に貼り合わせることにより行われることからフィルムのピンホールは接着剤層や低融点ポリエステル系樹脂層やフィ,,,ルム自体の軟化や溶融(流動)によっても塞がり,ラミネート後に錆発生原因となる欠陥として残るなどとは考えていなかったためと思われる。 - 21 -原告は,ラミネートによりピンホール孔径が変化するという複雑な挙動があるにもかかわらず,錆発生の原因となるフィルムのピンホール孔径の臨界点が直径0.1mmφであることを見出して,1ロットで製造される大面積(1,000~100,000m)のフィルムの全体から直径0.1mmφ以上のピンホール を排除する補正発明1のフィルムに到達したものである。 補正明細書の実施例2における「直径0.05mmのピンホールが1ヶ/1缶存在するサンプル」とは,直径0.05mmのピンホールが1缶相当の面積当たり1ヶ存在するようなフィルムを人為的に調製し,当該フィルムを金属板にラミネートした後製缶して得たサンプル缶を意味する。比較例6,7も同様である。これらの実験結果は,ピンホールの直径が0.1mm未満であれば,ラミネート工程以降に閉塞し,錆が発生しないことを示している。 イこれに対し,刊行物1 サンプル缶を意味する。比較例6,7も同様である。これらの実験結果は,ピンホールの直径が0.1mm未満であれば,ラミネート工程以降に閉塞し,錆が発生しないことを示している。 イこれに対し,刊行物1(甲9,4(甲12)に記載された「ピンホール」)とは,金属板ラミネート用フィルムを金属板に貼り合わせ後,深絞り加工により変形した部分の,粗大粒子(粗大滑剤粒子(例えば,10μm以上の粒子)が起点)となって生じるピンホールであって(刊行物1の段落【0023,刊行物4の段】落【0013「ピンホール」とは呼ばれているが,実際は,粗大粒子(粗大滑】),剤粒子)を起点にフィルムがその周囲に引っ張られることでフィルムが裂けて生じるフィルムの割れである。したがって,補正発明1でいうフィルムの製造段階で生じるピンホール(フィルム材料の欠落部分)とは明らかに異なる現象であり,その形状や大きさも不明である。 また,刊行物1では,1%NaCl溶液を満たした缶内に電極を挿入し,当該電極と缶体との間に6Vの電圧をかけたときに0.1mA以上の電流が流れるか否かによってフィルムの欠陥を判定しているが(実施例の耐衝撃性試験(甲9の段落【0052,この試験は塩ビタイル床面に缶を落としたときの衝撃によって生じ】)るフィルムの割れを通電電流値によって検出しているだけで,錆の発生を見ている。 ,(【】)ものではない同様に刊行物4の実施例の深絞り加工性-2段落0048- 22 -においても,深絞り加工して得られた缶の缶内に1%NaCl溶液を満たし,そこへ電極を挿入し,該電極と缶体との間に6Vの電圧をかけたときに0.2mA以上()。 の電流が流れるか否かによってフィルムの欠陥割れを判定しているにすぎないすなわち,刊行物1,4には,金属板にラミネートする 入し,該電極と缶体との間に6Vの電圧をかけたときに0.2mA以上()。 の電流が流れるか否かによってフィルムの欠陥割れを判定しているにすぎないすなわち,刊行物1,4には,金属板にラミネートする前のフィルム自体に存在するピンホール(フィルム製造段階で生じるフィルム材料の欠落部分)は記載されておらず,当該ピンホールが缶(金属容器)の錆発生原因になるとの示唆も存在しない。 このような刊行物1,4の記載に接した当業者は,滑剤粒子中の粗大粒子を排除することを考えるか,あるいは,製缶工程での粗大粒子で生じるピンホール状の割れを排除することを考えるのが通常であり,金属板にラミネートする前のフィルムに存在するピンホール(フィルム製造段階で生じるフィルム材料の欠落によるピンホール)に着目するとは考えられない。 ウ審決は,刊行物1,4の記載内容,本件出願前の技術状況及び補正明細書の記載内容を十分に検討せず,相違点3の技術的意義を看過し,その構成の採用が容易であると誤って判断したものである。また,審決の判断は,フィルムを金属板にラミネートしても塞がらないピンホールが存在し,それが錆の原因になることを知ったからこそできたものであり,発明の後知恵というべきである。 (2)取消事由3-2(相違点5の判断の誤り)審決は,相違点5について「フィルムの面積は,金属板ラミネートに必要な量,を考慮して,適宜決定できる」と判断した。 しかしながら,補正発明1のフィルムは,フィルムラミネート缶の連続生産に使用する,フィルムの面積が1,000~100,000mであるフィルムの全体 に直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しないようにしたものであり,このような直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しない大面積のフィルムは従来は存在しなかった。フィルムの面積が大きくなれば に直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しないようにしたものであり,このような直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しない大面積のフィルムは従来は存在しなかった。フィルムの面積が大きくなればなるほど,ピンホールが生じる可能性のあるフィルム領域も大きくなって,ピンホール発生の可能性が高くなるので,- 23 - 直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しない1,000~100,000mの面積のフィルムは,例えば,直径0.1mmφ 以上のピンホールが存在しない100mの面積のフィルムよりもピンホール発生の防止(抑制)がより進んだ フィルムということができる。 また,ピンホールは小さければ小さいほど発生頻度が低く,発生頻度が低ければ錆との関係把握が困難であり,大面積で初めてその関係を把握することが可能となる。したがって,相違点5に係る構成の容易想到性の判断は,相違点3に係る構成(フィルム全体におけるピンホール数)との関係で判断すべきである。 したがって「フィルムの面積は,金属板ラミネートに必要な量を考慮して,適,宜決定できる」とした審決の判断は,補正発明1と刊行物1記載の発明との真の相違点について考慮しておらず,失当である。 (3)取消事由3-3(相違点1の判断の誤り)審決は,刊行物2(甲10)には,ポリエステル中の水分が加水分解等の劣化やボイドの生成の要因となることが記載されていること,刊行物3(甲11)には,ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレートについて,その中の水分がフィルムの強度を引き下げる結果となりフィルムにあっては好ましくは0005,. wt%以下の水分率を考えておく必要があることが記載されていることなどを理由として,相違点1に係る構成は,当業者が容易に想到し得ると判断した。 しかしながら,刊行物2には,ポ ましくは0005,. wt%以下の水分率を考えておく必要があることが記載されていることなどを理由として,相違点1に係る構成は,当業者が容易に想到し得ると判断した。 しかしながら,刊行物2には,ポリエステル中の水分が成形品のボイドの発生原因となることが記載されているだけで,ポリエステルフィルムのピンホールについては一切記載されていない。フィルムに形成されるボイド(空隙)はフィルムの表裏面を貫通する欠陥であるピンホールとは異なる現象であり,しかも,フィルムのボイドの評価はせず,フィルムの成形も行っていない。また,刊行物2は,金属板に貼り合せる前のフィルム(金属板ラミネート用フィルム)について何ら言及しておらず,フィルムラミネート缶の錆発生という問題についての記載,示唆もない。 刊行物3は,フィルム強度の観点からポリエステル中の水分量を減じることが重- 24 -要である(水分量が50ppm以下が好ましい)ことを教示しているだけで,ポリエステルの水分とフィルムのピンホールの関係については何ら記載していない。 したがって,ピンホールやフィルムラミネート缶の錆発生の問題について何ら触れることなく,刊行物2,3の記載事項から,フィルムに特定の大きさ以上のピンホール(直径0.1mmφ以上のピンホール)が形成されないようにするために,フィルム原料であるポリエステル中の水分量を50ppm以下の特定量まで減じる構成を採用することは,当業者が容易になし得ることではない。 したがって,相違点1についての審決の判断は誤りである。 (4)取消事由3-4(相違点2の判断の誤り)審決は,刊行物1,3,4の記載からみて,ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1か所以上に,ピンホールの原因となる10μm以上の粗粒子を除くなどのために,孔径 )審決は,刊行物1,3,4の記載からみて,ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1か所以上に,ピンホールの原因となる10μm以上の粗粒子を除くなどのために,孔径10μm未満のフィルターを導入することは容易であると判断した。 しかしながら,刊行物3にいうフィルム原料中の「異物」とは,具体例として,チリやホコリが挙げられているように,フィルムの原料(フィルムに配合(含有)されるべきもの)とは異なる物を意味しており,フィルムの原料(フィルムに配合(含有)されるべきもの)である顔料や滑剤等はここでいう「異物」とは区別される。また,刊行物3は「異物」がピンホールの原因であるとは一切いっておらず,フィルムのピンホールを問題にしていない。したがって,刊行物3に記載された技術をピンホール状の欠陥の解消を課題とする刊行物1及び4の発明に組み合わせる動機は得られない。 したがって,相違点2についての審決の判断は誤りである。 (5)取消事由3-5(相違点1,2について判断の誤り)審決は,相違点1及び2に係る構成を同時に採用することの困難性について十分に審理をせずに,訂正発明1を容易に想到し得たと認定するものであるから,違法なものであり,取り消されるべきである。 - 25 -(6)取消事由3-6(相違点4の判断の誤り)審決は,通常,フィルムの熱収縮率としては,縦方向や横方向の収縮率を測定しており,縦方向の熱収縮率をもって代表させているということは,横方向の熱収縮率も考慮に入れていることを意味しており,横方向の熱収縮率も,縦方向同様に特定することは容易であるから,相違点4に係る構成は,刊行物1の記載から当業者が容易に想到し得たものであると判断した。 補正発明1の1,000~100,000mの面積のフィルムは工業生産され 様に特定することは容易であるから,相違点4に係る構成は,刊行物1の記載から当業者が容易に想到し得たものであると判断した。 補正発明1の1,000~100,000mの面積のフィルムは工業生産され るもので,通常,フィルムはロール状に巻かれたフィルムとして生産される(補正明細書の段落【0013】及び図1。このようなロール状のフィルムを連続して)金属板にラミネートするときに,テンションのかかっているフィルムの縦方向はしわになりにくいのに対し,フィルムの横方向はしわになりやすい。補正発明1においてフィルムの縦方向だけでなく横方向の熱収縮率を5%以下にしているのは,横方向の熱収縮率が5%を超えるとしわを防止することができないためである。 これに対し,刊行物1において,縦方向の熱収縮率を代表させているということは,フィルムのしわという課題について縦方向の熱収縮率が重要であると考えていることを示しており,また,刊行物1は工業生産される長尺のフィルムについて何ら言及していない。このような刊行物1の記載から,工業生産される1,000~100,000mの面積のフィルムの縦方向及び横方向の熱収縮率を5%以下 とすることが容易に想到できるとはいえない。 したがって,相違点5についての審決の判断は誤りである。 (7)取消事由3-7(補正発明1が奏する顕著な作用効果の看過)訂正発明1のフィルムはこのような1つの生産ロットで製造される金属板ラミネート用フィルム(面積が1,000~100,000mの大面積のフィルム) において排除することが困難であったフィルムラミネート缶の錆発生原因となるピンホールを完全になくすことに成功したものであり,このことは,補正発明1が奏する顕著な効果である。 - 26 -金属板にラミネートする前のフィルムからフィルムを金属板にラミ ト缶の錆発生原因となるピンホールを完全になくすことに成功したものであり,このことは,補正発明1が奏する顕著な効果である。 - 26 -金属板にラミネートする前のフィルムからフィルムを金属板にラミネートしても錆発生缶の原因となっていたピンホールをなくすことに成功した補正発明1のフィルムを使用すれば,錆発生缶をなくすことができるのであり,その結果として,ラミネート缶におけるピンホール検査を不要にすることができる。 このように,補正発明1が奏する作用効果は,刊行物1~5からは予期し得ない顕著なものであるにもかかわらず,審決はこれを誤って看過したものである。 取消事由4(補正発明2の判断の誤り)補正発明2は補正発明1の構成をさらに限定する発明であるところ補正発明2,,についての審決の判断は,補正発明1と同様の理由から違法なものとして取り消されるべきである。 第4被告の主張の要点原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決の認定判断に誤りはない。 取消事由1(本件補正の許否の判断の誤り)に対して特許法131条の2第1項の規定によれば,訂正審判の請求の趣旨の補正は,その要旨を変更しない範囲で許されるにすぎない。訂正審判請求の趣旨は「訂正明,細書のとおりに訂正することを求める」というものであるから,その訂正明細書を別異の明細書に変更する補正は,当初の請求の趣旨に代えて別異の趣旨について訂正審判を請求することとなり,訂正審判請求の要旨を変更するものといえる。 補正事項jは,訂正事項jによる明細書の段落【0008】の記載についての訂正事項jを別異の訂正事項に変更するものであり,その結果,訂正明細書は別異の明細書に変更されることとなる。このような補正事項を含む本件補正は,審判を申し立てている事項の同一性を変更するものであり,訂正審判請求 別異の訂正事項に変更するものであり,その結果,訂正明細書は別異の明細書に変更されることとなる。このような補正事項を含む本件補正は,審判を申し立てている事項の同一性を変更するものであり,訂正審判請求書の要旨を変更するものである。 原告は,補正事項jについて「単なる文言の言い換えにすぎない」とされた構,。 成を削除しても,補正の前後において,訂正事項jの内容が実質的に変更されるこ- 27 -とはないから,審決がいうような「内容的に別の訂正事項に変更される」というものではないと主張する。しかしながら,審決の「内容的に別の訂正事項に変更される」との一文は,補正の前後で訂正事項が別異のものとなるとの意味である。補正の前後での意味内容が実質的に同じであれば補正が認められるとの趣旨ではない。 訂正明細書の記載について実質的に同じ意味内容であっても,別異の表現に変更することは,審判請求の基礎である訂正を申し立てている事項の同一性を変更するものであるといえるから,そのような変更を含む補正は,認めることはできない。 訂正は,特許権の基礎となる特許明細書についてのものであるから,訂正後の記載は一字一句ゆるがせにできないものである。したがって,訂正審判においては,いかなる用語を用いるか,また,いかなる文章の組み立てをしたかということは,訂正審判の請求書の要旨を認定するのに重要な事項である。実質的に同一の意味内容であれば,表現を変えることが補正で許されるという性格のものではない。 審決は,補正事項fの適否は判断しておらず,仮に,補正事項fが補正の要件を充足するとしても,それによって,直ちに,補正事項jが補正の要件を充足することにはならない。したがって,補正事項fの適否を検討することは,それ自体無意味なことである。 取消事由2(明細書の記載要件の判断の誤り)に それによって,直ちに,補正事項jが補正の要件を充足することにはならない。したがって,補正事項fの適否を検討することは,それ自体無意味なことである。 取消事由2(明細書の記載要件の判断の誤り)に対して本件補正は許されないものとした審決の判断に誤りはないのであるから,原告の主張する取消事由2も失当である。 取消事由3(補正発明1の進歩性の判断の誤り)に対して(1)補正発明1についてア取消事由3-1(相違点3の判断の誤り)に対して(ア)原告は,補正発明1でいうピンホールを「フィルム製造段階でフィルム材料が欠落して生じるピンホール」であると主張し,例えば,フィルム製造段階で微粒子が起点となって生じたピンホールは,補正発明1にいうピンホールには含まれないと主張する。 - 28 -しかしながら,刊行物1,4には,明確に「ピンホール」と記載されており,粗大粒子を起点にフィルムがその周囲に引っ張られることでフィルムが裂けて生じるものであっても,その大きさが微細であればピンホールと称される。補正発明1についても,ピンホールがフィルム材料が欠落して生じたものに限るとの特定はなされていない。 (イ)原告は,フィルムのピンホール孔径の臨界径が直径0.1mmφであることを見出したと主張する。しかしながら,補正明細書の実施例と比較例を対比して,. 。 ,もいわゆる臨界径が直径01mmφであるということはできないすなわち補正明細書には,実施例1,2と比較例1~7が記載されているが,実施例2,比較例6,7には,金属板に貼り合わせる前のフィルムにおけるピンホールについての記載はない。 比較例1~4からは,貼り合わせ前のフィルムに直径0.2mm以上のピンホールがあること,これらを補正明細書の段落【0039】の特定の方法で金属板にラミネートし けるピンホールについての記載はない。 比較例1~4からは,貼り合わせ前のフィルムに直径0.2mm以上のピンホールがあること,これらを補正明細書の段落【0039】の特定の方法で金属板にラミネートし,それを不明な方法で製缶したラミネート缶において錆が発生することはわかる。実施例1のフィルムは,直径0.1mmφ以上のピンホール検出個数が0ヶ/20,000mであり,それを使用して同様に製造したラミネート缶に 錆の発生はない。実施例1のラミネート缶のフィルムにピンホールが全く存在しないとしても実施例1と比較例1~4からいわゆる臨界径は0以上で02mm,,,. 未満の範囲内のどこかにあることがわかるだけである。したがって,いわゆる臨界径が直径0.1mmφであることは補正明細書において立証されていない。 (ウ)原告は,金属板にラミネートする前のフィルムに存在するピンホールが,ラミネート缶の錆発生につながっているという知見は,本件出願時にはなかったと主張する。 しかしながら,鉄錆が鉄と酸素との結合により発生することは乙1(岩波書店発行の広辞苑第2版補訂版1529頁が示すように一般常識であり金属板ラミネー),ト用フィルムが防錆を達成するのは,当該フィルムが,金属と酸素等の錆の原因物- 29 -質との接触を妨げることによる。ラミネート金属板やラミネート缶のフィルムにピンホールがあると,その箇所の金属はフィルムで覆われない状態となり錆の原因物質と接触するから,ラミネート金属板やラミネート缶のフィルムにおけるピンホールは,その大小によらず,錆の原因となる。このように,ラミネート缶のフィルムに存在するピンホールが錆を発生させることは技術常識である。刊行物4の段落0048には防錆性試験で防錆性が×と評価されたもののフィルムにピンホー【】,ル る。このように,ラミネート缶のフィルムに存在するピンホールが錆を発生させることは技術常識である。刊行物4の段落0048には防錆性試験で防錆性が×と評価されたもののフィルムにピンホー【】,ル状の割れがあったことが記載されており,この記載からみてもピンホールが錆の原因であることは認識できる。 素材における不良部分がそのまま最終製品に持ち越されることは通常経験することであり,それゆえに,良質の最終製品を得るためには素材の段階で良質のものを使用することが各種製品において通常の業務として行われている。金属板に貼り合わせる前の金属板ラミネート用フィルムに存在するピンホールは,金属板に貼り合わせた時点でも,さらに製缶工程後であっても存在すると考えるのが普通であり,貼合せの工程等でピンホールが塞がる何らかの可能性が考えられるとしても,それは可能性にすぎず,確実に100%塞がる保証はない。 (エ)そうすると,当業者であれば,金属板に貼り合わせる前のフィルムに錆発生原因となるピンホールが存在することは当然認識できたはずである。目的とする用途上好ましくないものを素材の段階で排除しておくことは当業者が通常考慮することであるから,フィルムの段階でピンホールを排除しておくことは当業者が当然に考慮できたことにすぎない。 そして,貼り合せる前のフィルムに存在させるべきでないピンホールの径の下限は,必要な防錆性に応じて適宜設定できるのであるから,相違点3に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものである。補正発明1における防錆効果は,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しないことに応じた防錆効果が発現したにすぎず,格別のものではない。仮に,補正明細書で,いわゆる臨界径が立証されているとしても,貼り合わせる前のフィルムにおけるピンホールが錆の原因である- 30 しないことに応じた防錆効果が発現したにすぎず,格別のものではない。仮に,補正明細書で,いわゆる臨界径が立証されているとしても,貼り合わせる前のフィルムにおけるピンホールが錆の原因である- 30 -ことが技術常識から当然に認識できる以上,直径0.1mmφ以上のピンホールを存在しないようにすることは容易である。 (オ)したがって,相違点3についての審決の判断に誤りはない。 イ取消事由3-2(相違点5の判断の誤り)に対して相違点5はフィルムの面積に関するものである。 原告は,補正発明1のフィルムの特徴である直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しないことを特定するためにはフィルムの面積を考慮しなければならないと主張する。 しかしながら,補正発明1のフィルムにおける直径0.1mmφ以上のピンホール数はゼロであり,このゼロという値は,当然ながらフィルムの面積の大小とは無関係に定められている(フィルムの面積が小さくても大きくてもゼロである。補)正発明1で規定しているのは,フィルムの面積当たりのピンホールの数ではなく,フィルム中のピンホールの数の絶対値である。本件訂正後は,フィルムの面積当たりのピンホールの数は規定されていないのであるから,不存在度について判断する必要はない。 相違点3と相違点5は,別々の技術的事項であり,別々に設定できるのであるから,これらのそれぞれが容易であれば,相違点3と相違点5の両者の構成をいずれも容易に採用することができるところ,両者の構成をいずれも採用することに何の妨げもない。 したがって,相違点5についての審決の判断に誤りはない。 ウ取消事由3-3(相違点1の判断の誤り)に対して相違点1は,原料ポリエステル系樹脂の水分率に関するものであるが,相違点1の原料ポリエステル系樹脂の水分率の特定自体は,刊行物2,3の記載 はない。 ウ取消事由3-3(相違点1の判断の誤り)に対して相違点1は,原料ポリエステル系樹脂の水分率に関するものであるが,相違点1の原料ポリエステル系樹脂の水分率の特定自体は,刊行物2,3の記載から容易である。 刊行物2,3には,水分率を相違点1と同様にすることやその必要性が記載され,。 ,,ているのであるから相違点1に係る構成は容易に採用できる刊行物23には- 31 -水分率とピンホールや缶錆との関係は明記されていないが,原料ポリエステル系樹脂の水分率とピンホールや缶錆の関係が明記されていなければ,相違点1に係る構成を採用できないというものではない。 ,。 刊行物2には水分が原因で発生した成形品中のボイドについて記載されている水分が原因で発生したボイドとは,揮発した水分が樹脂を押しのけた結果生まれた気泡のことであり,一箇所に存在する水分が多ければ大きな気泡となる。成形品がフィルムである場合には,厚さが薄いので,大きな気泡はフィルムの厚みを突き破り,ピンホールとなるはずである。したがって,刊行物2に記載されたボイドがピンホールとなることは容易に予測できる。 したがって,相違点1についての審決の判断に誤りはない。 エ取消事由3-4(相違点2の判断の誤り)に対して相違点2はフィルターの導入に関するものである。 刊行物1の段落【0023】には「白色顔料の平均粒径が2.5μmを越える,場合は,深絞り製缶等の加工により変形した部分に,粗大粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となり,ピンホールを生じたり,場合によっては破断が生じるので,好ましくない」と記載されているから,深絞り製缶等の加工の際に10μm。 以上の粗大粒子がピンホールの原因となることがわかる。刊行物4の3頁左欄5~8行には,10μm以上の粗大滑剤粒子が起点となりピンホ しくない」と記載されているから,深絞り製缶等の加工の際に10μm。 以上の粗大粒子がピンホールの原因となることがわかる。刊行物4の3頁左欄5~8行には,10μm以上の粗大滑剤粒子が起点となりピンホールを生じることが記載されているから,刊行物4からも10μm以上の粗大粒子がピンホールの原因となることがわかる。 このように,刊行物1,4によれば,10μm以上の粗大粒子がピンホールの原因となることが理解できるのであるから,金属板ラミネート用フィルム中に10μm以上の粗大粒子が存在しないようにすること,10μm以上の粗大粒子があれば,それを除去してフィルムを製造すべきことは当業者が直ちに認識できることである。 一方,刊行物3の677頁の「D.異物」の項には,異物除去の手段として押出- 32 -し前のフィルターの導入によるろ過が記載されている。押出し前とは樹脂溶融中にほかならず,フィルターの導入によるろ過で大径の異物が除去できることはいうまでもない。 してみれば,刊行物1,4からピンホールの原因として認識できる10μm以上の粗大粒子を除去するために,樹脂溶融工程中に孔径が10μm未満のフィルターを1か所以上導入することは容易である。補正発明1のフィルターは孔径が20μm以下であるから,孔径が10μm未満のフィルターの導入は補正発明1に含まれる。 したがって,相違点2についての審決の判断に誤りはない。 オ取消事由3-5(相違点1,2について判断の誤り)に対して相違点1は水分率に,相違点2はフィルターに関するものである。 ,,原告は相違点1と2の組合せの想到容易性を審理していないと主張しているが相違点1は水分率に,相違点2はフィルターに関するものであるから,両者は別々の技術的事項であり,別々に設定できるのである。これらのそれぞれが容易であれば の想到容易性を審理していないと主張しているが相違点1は水分率に,相違点2はフィルターに関するものであるから,両者は別々の技術的事項であり,別々に設定できるのである。これらのそれぞれが容易であれば,相違点1と相違点2の両者の構成をいずれも容易に採用することができる。 したがって,審決の判断に原告の主張するような誤りはない。 カ取消事由3-6(相違点4の判断の誤り)に対して相違点4は,横方向の収縮率に関するものである。 刊行物1では,縦方向の熱収縮率をもって代表させており,それは,横方向の熱収縮率も考慮に入れていることを意味している。考慮に入れなければ,代表させるという発想自体が存在するはずがないからである。したがって,刊行物1でフィルムの横方向を重要視していないとはいえないし,仮に横方向を重要視していないとしても,しわは横方向の熱収縮であっても発生するのであるから,横方向の熱収縮について考慮することに困難はない。 原告は,フィルムロールの場合について主張しているが,ロールとすることは補正発明1の構成要件ではない。ロールの場合であっても,しわは横方向の熱収縮に- 33 -よっても発生するから,横方向の熱収縮について考慮することに困難はない。 したがって,相違点4についての審決の判断に誤りはない。 キ取消事由3-7(補正発明1が奏する顕著な作用効果の看過)に対して原告は,補正発明1は予期し得ない顕著な作用効果を奏すると主張するが,ラミネート缶の錆発生原因となるピンホールを完全になくしたという効果は,補正明細書には記載されていないし,立証もされていない。 審決も指摘するとおり,ラミネート缶におけるピンホール検査が不要になるとい,。 ,,,う効果は補正明細書に記載されたものではないまた補正発明1には例えば孔径20μmのフィルターを 。 審決も指摘するとおり,ラミネート缶におけるピンホール検査が不要になるとい,。 ,,,う効果は補正明細書に記載されたものではないまた補正発明1には例えば孔径20μmのフィルターを1か所導入した発明が含まれるが,このような発明では20~10μmの粗大粒子をろ過することはできず粗大粒子に基づくピンホー,,ルが発生する可能性がある。したがって,補正発明1が,錆発生缶をなくすことができ,ラミネート缶におけるピンホール検査が不要になるという効果を奏するとはいえない。 (2)取消事由4(補正発明2の判断の誤り)に対して原告の主張する補正発明2についての判断の誤りは,補正発明1についての判断の誤りと同趣旨である。補正発明1についての判断に誤りがないことは上記のとおりであるから,補正発明2についての判断にも誤りがない。 第5当裁判所の判断 取消事由1(本件補正の許否の判断の誤り)について(1)本件補正は,審判請求書と,審判請求書に最初に添付した訂正明細書を以下のとおり補正するものである。 ア訂正事項fについての補正(以下「補正事項f」という)。 訂正事項fは特許請求の範囲の請求項1の直径01mmφ以上の前に検,「. 」「出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルム- 34 -を走行させて検出される」を加入するというものであるが,補正事項fは,訂正,事項fを審判請求書から削除し,それに伴い,訂正事項fによって付加した記載を特許請求の範囲からすべて削除するものである。 イ訂正事項jについての補正(補正事項j)補正事項jは,訂正事項jで付加した明細書の「問題を解決する手段」に係る段落の記載の一部を削 て付加した記載を特許請求の範囲からすべて削除するものである。 イ訂正事項jについての補正(補正事項j)補正事項jは,訂正事項jで付加した明細書の「問題を解決する手段」に係る段落の記載の一部を削除するというものである。 ,,【】,すなわち訂正事項jは本件訂正前の明細書の段落0008の5~7行の「即ち,本発明は,少なくとも金属にラミネートされる部分には直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しない熱可塑性樹脂を含む金属板ラミネート用フィルムに関する」。 との記載を,「即ち,本発明は,フィルム製造用原料として水分率を50ppm以下にしたポリエステル系樹脂を用い,該ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターを導入して得られた金属板ラミネート用フィルム全体に,検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず,フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下であり,フィルムの面積が1,000~100,000mであることを特徴とするポリエステル系樹脂を含む金属 板ラミネート用フィルムに関する(下線部は本判決が付加したもの。なお「フィルム製造。」,用原料として…金属ラミネート用フィルム」は訂正後の請求項1と同一の文言である)。 と訂正するものであるところ,補正事項jは,補正事項fにより請求項1から上記下線部に相当する記載を削除したことに伴い,段落【0008】からも同一の記載を削除するものである。 (2)このように,補正事項f及びjは,いずれも,ピンホー 項jは,補正事項fにより請求項1から上記下線部に相当する記載を削除したことに伴い,段落【0008】からも同一の記載を削除するものである。 (2)このように,補正事項f及びjは,いずれも,ピンホールの直径の測定方法を限定する検出部電極と検出部ローラーとの隙間を02mm印加電圧を24「. ,. kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの- 35 -間にフィルムを走行させて検出される」との記載を削除することを実質的な内容,とするものである。ピンホールの直径はいかなる測定方法により測定しようと本来的には寸法が変わるものではないので,同記載は,審決も「単なる文言の言い換えにすぎない」と指摘されているとおり,技術的に格段の意味のある特定ではない。 (3)ところで,特許法131条1項は,審判請求人に,他の記載事項と並んで「請求の趣旨及びその理由」の記載を義務づけた上で,同法131条の2第1項において,審判請求書の補正は「その要旨を変更するものであってはならない」と,している。この規定は,審判請求人が審判の審理が進んだ段階で理由の要旨を拡張・変更すると,実質的な審理のやり直しをせざるを得ず,審理が長期化・遅延することに照らし,審判請求書の補正がその「要旨の変更」に当たる場合にはこれを許さないものとしたものと解される。 審決は,上記補正事項のうち,補正事項jを取り上げ,訂正明細書に存在していた「検出部電極と検出部ローラーとの隙間を0.2mm,印加電圧を2.4kV,走行速度を50m/minに設定して,前記検出部電極と検出部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される」との文言を削除すると,訂正事項jは内容的,に別の訂正事項に変更されることとなり,このような長文の記載を誤記と認めることもできないので,補正事項j 部ローラーの間にフィルムを走行させて検出される」との文言を削除すると,訂正事項jは内容的,に別の訂正事項に変更されることとなり,このような長文の記載を誤記と認めることもできないので,補正事項jは,審判請求書の要旨の変更に当たると判断した。 また,被告は,訂正明細書の記載について実質的に同じ意味内容であっても,別異の表現に変更することは,審判請求の基礎である訂正を申し立てている事項の同一性を変更するものであるといえるから,そのような変更を含む補正は,認めることはできないと主張する。 確かに,本件訂正審判の請求の趣旨は,訂正前の明細書を訂正審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認めるとの審決を求めるものであるから,明細書の記載が変更されれば訂正審判の請求の趣旨及び理由が変更されることになるが,審判における審理対象の拡張変更による審理遅延を防止するとの特許法131条の2第1項の立法趣旨等にも照らすと「要旨の変更」に当たるかどう,- 36 -,,かは単に請求の趣旨や理由が変更されたかどうかを形式的に判断するのではなく補正前の訂正事項と補正後の訂正事項の内容を対比検討し,訂正審判における審理の範囲が当該補正により実質的に拡張・変更されるかどうかに基づいて判断すべきである。 (4)前記のとおり,補正事項jは,訂正事項fにより請求項1に付加した記載,【】を補正事項fによりすべて削除したことに伴い訂正事項jにより段落0008【課題を解決するための手段】に付加した同一の記載を削除しようとするものである。もとより,補正事項fとjは別個の補正事項ではあるが,補正事項fは訂正事項fを削除するものであり,訂正審判の対象から除外するものであるから,訂正審判請求書の要旨の変更には当たらないと解されるところ,補正事項jにより訂正明細書 個の補正事項ではあるが,補正事項fは訂正事項fを削除するものであり,訂正審判の対象から除外するものであるから,訂正審判請求書の要旨の変更には当たらないと解されるところ,補正事項jにより訂正明細書から補正事項fと同一の記載を削除したとしても,訂正審判における審理の範囲が実質的に拡張・変更されたものということはできない。 しかも,前記のとおり,補正事項jにより削除された記載は技術的に格別な意味を持たない特定事項であるから,明細書の段落【0008【課題を解決するため】の手段】から同補正事項に係る記載を削除したとしても,当該補正により訂正事項jの内容が実質的に変更されるものでもない(なお,訂正審判請求書の補正について,補正前の訂正事項と補正後の同記載を実質的に対比検討した上で,当該補正が本件訂正審判請求の要旨の変更には当たらないとした裁判例として,東京高裁平成15年7月15日判決・平成14年(行ケ)653号最高裁HP掲載参照。 。)そうすると,補正事項jに係る補正は,本件訂正審判請求書の要旨の変更には該当せず,補正事項jが審判請求書の要旨の変更に当たるとして本件補正を認められないとした審決の判断は誤りというべきであるが,審決は,本件補正が認められるとしても本件補正発明1,2は進歩性を欠くと判断し,原告はこの判断は誤りであると主張しているので,進んで検討する。 取消事由3(補正発明1の進歩性の判断の誤り)について(1)取消事由3-1(相違点3の判断の誤り)について- 37 -審決は,補正発明1と刊行物1記載の発明の相違点3として「前者では「金属,板ラミネート用フィルム全体に,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点」と認。 定した。その上で,審決は,防錆のために 属,板ラミネート用フィルム全体に,直径0.1mmφ以上のピンホールが存在せず」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点」と認。 定した。その上で,審決は,防錆のために,金属板ラミネート用フィルム全体に径が大きいピンホールを存在させないことは当業者が当然に考慮することであり,ピンホールの径の下限を設定することは,必要な防錆性に応じて適宜なし得ることであるから,金属板ラミネート用フィルム全体において直径0.1mmφ以上のピン。 ,,ホールを存在しないようにすることは容易であると判断したこれに対し原告は審決のこの判断は誤りであると主張する。 アまず,補正明細書の記載について,検討する。 ,,。 (ア)補正発明1の課題及び目的について補正明細書には以下の記載がある「0006【発明が解決しようとする課題】しかし,ポリエステル系フィルムに代表され【】る熱可塑性樹脂フィルムを金属板にラミネートし,当該ラミネート金属板を金属缶に利用する,(),,場合において当該フィルムにピンホール穴が存在すると金属缶材に腐食現象が発生し金属缶外面においてはその商標印刷の鮮明度および美的意匠感を著しく損ね,金属缶内面においては金属缶材の酸化物(錆)が食料品に移行し,食料品の味や臭い,さらには人の健康面にも大きな悪影響を及ぼす。 【0007】本発明の目的は,上記問題点が解決された,ピンホールの無い,耐腐食性に優れたラミネート用フィルムを提供することである」。 ,,「. 」(イ)また同明細書にはフィルム上に直径01mmφ以上のピンホールが存在しないようにした理由について,以下の記載がある。 「0011【発明の実施の態様】本発明のフィルムには,少なくとも金属にラミネートされ【】る部分には直径 に直径01mmφ以上のピンホールが存在しないようにした理由について,以下の記載がある。 「0011【発明の実施の態様】本発明のフィルムには,少なくとも金属にラミネートされ【】る部分には直径0.1mmφ以上のピンホールが存在しないことが特徴である。即ち,本発明者らは,0.1mmφ未満のピンホールであれば,例えば,金属板への熱圧着によるラミネート時において,フィルムの熱履歴による微小な寸法変化現象が結果としてラミネート直前まで存在していたピンホールを閉塞させたり,フィルムと金属板間に存在する接着剤および/また- 38 -は接着層のラミネート時における熱履歴による微小な流動現象が,結果としてラミネート直前まで存在していたピンホールを閉塞させるために,金属缶材の防錆特性が維持でき得ることを見い出した。前記した目的を達成するためには直径0.1mmφ以上のピンホールが,フィルムの少なくとも金属にラミネートされる部分には存在しないことが必要である」。 (ウ)これらの記載によれば補正発明1は耐腐食性に優れたラミネート用フィ,,ルムを提供することを目的とするものであり,ラミネート加工する前のフィルムに着目し,その状態で存在するピンホールの直径が0.1mmφ未満であれば,ラミネートする際にピンホールが閉塞されるため,金属缶材の防錆特性(耐腐食性)を維持できることを見出したというものであると認められる。 イところで,ラミネート金属板のフィルムにピンホールのような穴が存在すれば,その穴を通じて周囲環境から気体又は液体が侵入して金属缶表面に接触し,化学的反応又は電気化学的反応により金属缶表面に錆が発生することは当然であり,補正明細書の上記段落0006にも熱可塑性樹脂フィルムを金属板にラミネー【】,トし,ラミネート金属板を金属缶に利用するに当 反応又は電気化学的反応により金属缶表面に錆が発生することは当然であり,補正明細書の上記段落0006にも熱可塑性樹脂フィルムを金属板にラミネー【】,トし,ラミネート金属板を金属缶に利用するに当たり,当該フィルムにピンホールが存在すると,金属缶材に腐食現象が発生する旨の記載がある。 また,刊行物1(甲9)には,金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルムに関して「白色顔料の平均粒径が2.5μmを越える場合は,深絞り製缶等の加工,により変形した部分に,粗大粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となり,ピンホールを生じたり,場合によっては破断が生じるので,好ましくない(段落。」【0023)と記載され,刊行物4(甲12)には,滑剤を有する金属板貼合せ】成形加工用フィルムに関して「滑剤の平均粒径が2.5μmを越える場合は,深,絞り製缶等の加工により変形した部分の,粗大滑剤粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となり,ピンホールを生じたり,場合によっては破断するので,好ましくない。特に耐ピンホール性の点で好ましい滑剤は,平均粒径2.5μm以下であると共に,粒径比(長径/短径)が1.0~1.2である単分散の滑剤である」。 (段落【0013【0014)と記載されている。 】】- 39 -刊行物14及び補正明細書の上記記載によれば金属板にラミネートされたフィ,,ルムにピンホールの存在することが金属板の腐食防止にとって好ましくないことは,周知の事項であるということができる。 ウ原告は,刊行物1,4のピンホールは,補正発明1のピンホールとは異なるものであり刊行物14の記載に接した当業者が金属板にラミネートする前のフィ,,ルムに存在するピンホール(フィルム製造段階で生じるフィルム材料の欠落によるピンホール)に着目するとは考えられないと ものであり刊行物14の記載に接した当業者が金属板にラミネートする前のフィ,,ルムに存在するピンホール(フィルム製造段階で生じるフィルム材料の欠落によるピンホール)に着目するとは考えられないと主張する。 確かに,刊行物1,4記載のピンホールは,審決も説示するとおり,フィルムを金属板に貼り合わせた後の製缶工程で生じるピンホールであり,粗大粒子(粗大滑剤粒子)を起点にフィルムがその周囲に引っ張られることでフィルムが裂けて生じるフィルムの割れであるから,補正発明1でいうフィルムの製造段階で生じるピン()。 ,,ホールフィルム材料の欠落部分とは相違するまたフィルムのピンホールはラミネートの工程によりある程度は塞がるものと考えられる。 しかしながら,ラミネート前のフィルムであっても,それにピンホールが存在すれば,その大きさによってはラミネート加工により完全に閉塞せず,ラミネート後の金属板において錆発生を引き起こす可能性のあることは,当業者であれば十分に予想できることであり,錆発生のない製品を得るためには,ラミネートに供されるフィルムが穴,割れ,しわ等の欠陥のない良好な品質であることが望ましいことは当然であるから,ラミネートに供されるフィルムから金属缶の腐食原因となるピンホールをできる限り取り除くことは,当業者にとって当然に考慮する事項であるというべきである。 エ原告は,直径0.1mmφというピンホール孔径は臨界的意義を有するものであり,当業者が防錆性に応じて適宜なし得ることではないと主張する。 しかしながら,当業者であれば,錆の発生を防ぐために,製造コストや品質面から許容し得る範囲内で,ラミネート加工前のフィルムに存在するピンホールの直径を小さくしようとすることは当然のことでありまた金属ラミネート加工前のフィ,,- 40 ぐために,製造コストや品質面から許容し得る範囲内で,ラミネート加工前のフィルムに存在するピンホールの直径を小さくしようとすることは当然のことでありまた金属ラミネート加工前のフィ,,- 40 -ルムにある程度の大きさのピンホールがあったとしても,当該ピンホールは金属ラミネート加工を行う過程で塞がる可能性があるのであるから,ピンホールの直径はゼロである必要はなく,一定数値の直径以上のピンホールが存在しないことで足りることも,容易に理解し得るところである。そうすると,フィルムの用途や特性等に基づき,防錆実験を行って,品質上許容し得ないピンホールの直径の下限を見い出したとしても,それは当業者が適宜なし得る事項の範囲内にすぎず,直径0.1mmφというピンホール孔径が臨界的意義を有するとは認められない。 したがって,存在させないピンホールの径の下限を設定することは必要な防錆性に応じて適宜なし得ることであるとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。 オ以上のとおり,相違点3に係る構成について,当業者が容易に想到し得るとした審決の判断に誤りはない。 (2)取消事由3-2(相違点5の判断の誤り)について審決は,補正発明1と刊行物1記載の発明の相違点5として「前者では「フィ,,,」,ルムの面積が1000~100000mであるとの特定があるのに対して 後者ではこのような特定がなされていない点」と認定した。その上で,審決は,。 フィルムの面積は,金属板ラミネートに必要な量を考慮して,適宜決定できるのであるから,相違点5に係る構成を採用することは容易であると判断した。 補正明細書の段落【0011】には,フィルムの面積を限定した理由について,「,,,特にフィルムの生産ロットの大きさに関係なく言い換えれば小ロ 5に係る構成を採用することは容易であると判断した。 補正明細書の段落【0011】には,フィルムの面積を限定した理由について,「,,,特にフィルムの生産ロットの大きさに関係なく言い換えれば小ロットであれ中ロットであれ大ロットであれ1 つの生産ロットのフィルムには直径01mm,,. φ以上のピンホールが1つもないことが望ましい。すなわち,直径0.1mmφ以上のピンホール数が0ケ/1000m以下0ケ/10000m以下 ,,,,, ケ/100,000m以下,0ケ/∞mが好ましい」と記載されている。 。 ,「,,」,上記記載によれば本件補正発明1の 000~100000mmは 小ロット,中ロット,大ロットのような1つの生産ロットで製造されるフィルム面- 41 -積に対応するものと認められるが,フィルムの面積そのものは,フィルムの生産量や用途に応じて適宜決定できる事項であり,同じ品質のフィルムが得られるのであれば,それが大面積であるほど望ましいのは当然のことであるから,補正発明1が,。 特定したフィルム面積は当業者が適宜になし得た設計事項であるというほかないしたがって,相違点5に係る構成について,当業者が容易に想到し得るとした審決の判断に誤りがあるということはできない。 (3)取消事由3-3(相違点1の判断の誤り)について審決は,補正発明1と刊行物1記載の発明の相違点1を「フィルム製造用原料としてのポリエステル系樹脂が,前者では水分率を50ppm以下にしたものであるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点」と認定した上で,刊。 行物2,3の記載に照らし,相違点1に係る構成を採用することは容易であると判断した。 ア補正発明1が水分率を50ppm以下に限定した 後者ではこのような特定がなされていない点」と認定した上で,刊。 行物2,3の記載に照らし,相違点1に係る構成を採用することは容易であると判断した。 ア補正発明1が水分率を50ppm以下に限定した理由について,補正明細書には「0014】0.1mmφ以上のピンホールをなくすためには,熱可塑性樹【脂フィルムの製造の際,フィルム製造用原料を充分乾燥させることが必要である。 例えば,熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂を使用する場合,該原料中の水分率を50ppm以下にする必要がある。50ppmを越えると,フィルム製造工程中に気泡が混入し,以後の諸加工工程の経緯を経ていく際にこの気泡が破壊されピンホールとなるので好ましくない」との記載があり,これによれば,補正発明1。 が水分率を50ppm以下に限定したのは,水分に起因する気泡の発生を抑制し,気泡の破裂によるピンホールの形成を防止するためであると認められる。 イ刊行物3(甲11)には「PETの加水分解速度はきわめて速く,溶融す,る前には「絶乾」といわれる極微量水分率まで乾燥しておかないと溶融粘度,分子量の低下を引き起し,ひいては繊維,フィルム,成形品の強度を実用以下に引き下げてしまう結果となる(199頁1~4行「比較的分子量の高い原料を取り。」),扱うボトル,…フィルムにあっては許容水分率を0.01wt%以下,好ましく- 42 -は0005wt%判決注:50ppm以下に考えておく必要がある . ()。」(頁8~10行)との記載がある。この記載によれば,刊行物3には,ポリエステル系樹脂フィルムの原料を使用するに際して,十分に乾燥させて水分を低減させる必要があり,好ましくは50ppm以下にすべきことが開示されているということができる。 また,刊行物2(甲10)には「ポリエステ 樹脂フィルムの原料を使用するに際して,十分に乾燥させて水分を低減させる必要があり,好ましくは50ppm以下にすべきことが開示されているということができる。 また,刊行物2(甲10)には「ポリエステル重合体粒子には,冷却固化によ,る冷却水や,空気中の水分の為,0.1~0.5重量%の水分が含まれ,これをそのまま溶融後押出し成形に供すると加水分解等の劣化や成形品中にボイドを生成するため一般にポリエステル重合体を100℃以上のガラス転移温度以上で真空乾燥。」(),又は通気乾燥する必要がある1頁左下欄下から2行~右下欄5行と記載され水分が原因で成形品中にボイドが発生するため乾燥させる必要がある旨が指摘されているフィルムのように薄い成形品の場合にはその気泡の大きさによってはフィ。 ,ルム厚みを突き破ってピンホールとなることが当然予想され,水分率を低く抑える必要があることは明らかである。 以上によれば,刊行物2,3には,水分に起因する気泡の発生を抑制し,気泡の破裂によるピンホールの形成を防止するために,水分率を50ppm以下にするこ,,,とが開示されているということができ当業者であればこれらの刊行物に基づき相違点1に係る構成を容易に採用することができたものというべきである。 ウこれに対し,原告は,刊行物2,3は,ピンホールやフィルムラミネート缶の錆発生の問題について何ら触れておらず,これらの刊行物の記載から,フィルムに特定の大きさ以上のピンホールが形成されないようにするために,フィルム原料であるポリエステル中の水分量を50ppm以下の特定量まで減じる構成を採用することは,当業者が容易になし得ることではないと主張する。 しかしながら,補正明細書の段落【0014】の記載からも明らかなように,ポリエステル中の水分量を一定以下に減じること 量まで減じる構成を採用することは,当業者が容易になし得ることではないと主張する。 しかしながら,補正明細書の段落【0014】の記載からも明らかなように,ポリエステル中の水分量を一定以下に減じることは,熱可塑性樹脂フィルムの製造一般の課題であり,金属板ラミネート用フィルムやフィルムラミネート缶の錆発生防- 43 -止に特有の問題ではないから,刊行物2,3にラミネート用フィルムやフィルムラミネート缶の錆発生の問題について触れていないとしても,上記結論を左右するものではない。前記判示のとおり,ポリエステル中の水分量を50ppm以下にすることは,刊行物2,3の記載に基づいて当業者が容易になし得る設計事項にすぎないというべきである。 エしたがって,相違点1に係る構成は当業者が容易に想到し得るとした審決の判断に誤りはない。 (4)取消事由3-4(相違点2の判断の誤り)について審決は,補正発明1と刊行物1記載の発明の相違点2を「ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中に,前者では少なくとも1ヶ所以上に孔径20μm以下のフィルターが導入されているのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点」と認定した。その上で,審決は,刊行物1,3,4の。 記載からみて,ポリエステル系樹脂をフィルム状に成形するための樹脂溶融工程中の少なくとも1ヶ所以上に,ピンホールの原因となる10μm以上の粗粒子を除く等のために,孔径10μm未満のフィルターを導入することは容易であると判断した。 ア補正明細書には,フィルターの使用に関して,以下の記載がある。 「0015】また,熱可塑性樹脂フィルムの製造の際,フィルム状に成形するための樹脂溶【融工程においては,樹脂劣化物やその他のコンタミ成分を充分に取り除くことが必要であり,例えば,当該工程中にお 。 「0015】また,熱可塑性樹脂フィルムの製造の際,フィルム状に成形するための樹脂溶【融工程においては,樹脂劣化物やその他のコンタミ成分を充分に取り除くことが必要であり,例えば,当該工程中においては少なくとも1ヶ所以上にフィルター機能を有する部位を導入しておかなければならない。フィルター機能を有する部位の無い樹脂溶融工程で熱可塑性樹脂フィルムを製造した場合,フィルム中にコンタミ等の異物が核となる気泡が発生し,異物を含んだ気泡が以後の諸加工工程の経緯を経ていく際に破壊されピンホールとなるので好ましくない。 【0043】実施例1…この時,該樹脂溶融工程中においては孔径20μmおよび10μmの2段方式のメルトフィルターを有しているものである。…- 44 -【0044】比較例1樹脂溶融工程において,孔径80μmおよび60μmの2段方式のメルトフィルターを有しているものを用い,その結果,直径0.2mmφのピンホール検出個数が1ヶ/1,000mであったポリエステル系フィルムを用いた… 【0045】比較例2樹脂溶融工程において,孔径100μmおよび80μmの2段方式のメルトフィルターを有しているものを用い,その結果,直径0.3mmφのピンホール検出個数が5ヶ/1,000mであったポリエステル系フィルムを用いた…」 以上の記載によれば,補正発明1がフィルターを使用する理由は,樹脂溶融工程で,フィルム中にコンタミ等の異物が核となる気泡が発生し,ピンホールになるのを防止するために,樹脂劣化物やその他のコンタミ成分を充分に取り除くことにあり,孔径を20μm以下に限定した根拠は,実施例1,比較例1及び2の結果に基づくものと理解できる。 イ他方,審決が引用した刊行物3(甲11)には「D.異物フィルム用原,料としては,特に異物の少ない原料であ 0μm以下に限定した根拠は,実施例1,比較例1及び2の結果に基づくものと理解できる。 イ他方,審決が引用した刊行物3(甲11)には「D.異物フィルム用原,料としては,特に異物の少ない原料であることが望ましい。異物が多いと,延伸中の破れの原因となるだけでなく,フィルムの特性(フィッシュアイや粗大突起が発生するをも悪くする押出し前のろ過工程で異物を除去することもできるがフィ)。 ,ルターの寿命を考えると重合工程以前での異物(ちりやほこりも含む)はできるだけ排除しなければならない(677頁5~11行)と記載され,この記載によれ。」ば,刊行物3には,フィルム用原料として,異物の少ないことがフィルムの破れ,フィルム特性の点で望ましく,この異物を除去するために押出成形前の溶融工程中にフィルターを用いることが開示されていると認められる。 また,刊行物1(甲9)には「白色顔料の平均粒径が2.5μmを越える場合,は,深絞り製缶等の加工により変形した部分に,粗大粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となり,ピンホールを生じたり,場合によっては破断が生じるので,好ましくない(段落【0023)と記載され,刊行物4には「滑剤の平均粒。」】,径が2.5μmを越える場合は,深絞り製缶等の加工により変形した部分の粗大滑剤粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となり,ピンホールを生じたり,場合- 45 -によっては破断が生じるので,好ましくない(段落【0013)と記載されて。」】いる。これらの記載から明らかなように,刊行物1,4には,フィルムに10μm以上の粗大粒子が含有されると,缶に被覆した後の深絞り工程において,フィルムにピンホールを発生させる原因になることが開示されており当業者であれば10,,μm以上の粗大粒子を除去することによ μm以上の粗大粒子が含有されると,缶に被覆した後の深絞り工程において,フィルムにピンホールを発生させる原因になることが開示されており当業者であれば10,,μm以上の粗大粒子を除去することによりピンホールの発生を防止できることを容易に理解できる。 以上の刊行物1,3,4の記載によれば,樹脂溶融工程中の少なくとも1か所以上にフィルターを使用することは,当業者が容易に採用し得る手段であり,フィル,,ター孔径についても除去すべき異物の寸法に応じて適宜選択できるものであって刊行物1及び4に,ピンホールの原因として10μm以上の粗大粒子が示されていることに照らすと,補正発明1のように20μm以下のフィルターとすることは当業者が適宜採用できた設計事項の範囲内であるというべきである。 ウ原告は,刊行物3にいうフィルム原料中の「異物」とは,フィルムの原料とは異なる物を意味しており,また,刊行物3はフィルムのピンホールを問題にしていないのであるから,刊行物3に記載された技術を刊行物1及び4の発明に組み合わせる動機は得られないと主張する。 しかしながら,刊行物3に記載された異物除去手段は,異物の種類に関係なく広く適用できる周知技術であって刊行物14に記載されているフィルムのピンホー,,ルの原因となる粗大粒子を除去するために用いることができることは明らかである。したがって,刊行物3記載の技術を刊行物1,4記載の発明に組み合わせることについて,動機付けがないとの原告主張は採用できない。 エ以上によれば,相違点2についての審決の判断に誤りはない。 (5)取消事由3-5(相違点1,2について判断の誤り)について原告は,審決が相違点1及び2に係る構成を同時に採用することの困難性について十分に審理をしなかった点で違法であると主張するしかしながら相違点12 消事由3-5(相違点1,2について判断の誤り)について原告は,審決が相違点1及び2に係る構成を同時に採用することの困難性について十分に審理をしなかった点で違法であると主張するしかしながら相違点12。 ,,は,個別に設定できる技術的事項であるところ,ピンホールのないフィルムを得る- 46 -ためにそれぞれの構成を採用することは容易になし得るであることは,前記判示のとおりである。そして,両者を共に採用することを妨げる事情もない。 したがって,原告の主張は失当である。 (6)取消事由3-6(相違点4の判断の誤り)について審決は,補正発明1と刊行物1に記載された発明の相違点4を「前者では「フィルムの横方向の150℃,30分間加熱処理した後の収縮率が5%以下であり」との特定があるのに対して,後者ではこのような特定がなされていない点」と認定。 した上で,通常,フィルムの熱収縮率としては,縦方向や横方向の収縮率を測定しており,縦方向の熱収縮率をもって代表させているということは,横方向の熱収縮率も考慮に入れていることを意味しているなどとして,相違点4に係る構成は,刊行物1の記載から当業者が容易に採用できたものと判断した。 ア補正明細書には,フィルムの熱収縮率に関して,以下の記載がある。 「0032】さらに,熱可塑性樹脂フィルムの縦方向および横方向の150℃,30分間加【熱処理した後の収縮率がそれぞれ5%以下であることが好ましい。上記の収縮率を5%以下とするための手段としては何ら制限を受けないが,例えば,フィルムの製造工程中で,いわゆる熱固定工程を設け,フィルムの収縮応力を緩和させる熱固定法や,製膜時のフィルムの張力を最小限にすることによってフィルムに残留する収縮力を緩和させる製膜速度条件設定やフィルム巻取り条件の設定などが挙げられる。特に熱固定 フィルムの収縮応力を緩和させる熱固定法や,製膜時のフィルムの張力を最小限にすることによってフィルムに残留する収縮力を緩和させる製膜速度条件設定やフィルム巻取り条件の設定などが挙げられる。特に熱固定法が最も推奨され,好ましい実施態様である。 【0033】上記の収縮率が5%以下であると,金属板にラミネートする際に熱収縮現象がもたらす皺が発生せず,均一なラミネート金属板が得られるので好ましい。また,上記の他,耐熱性の面より,適宜耐熱性付与のための耐熱オーバーコート層の付与,熱安定剤など公知の添加剤の配合なども好ましい実施態様である」。 上記記載から明らかなように,補正明細書には,フィルムの横方向及び縦方向の熱収縮率がそれぞれ5%以下であることが好ましい旨の規定は存在するが,熱収縮率を両方向で規定した理由については特段記載されていない。 - 47 -イ次に,刊行物1には,以下の記載がある。 「0018】本発明のポリエステルフィルムは,さらに,金属板に貼合せた時にフィルムに【しわが入るなどの欠点が生ずるのを防ぐうえで,150℃での熱収縮率が10%以下,好ましくは7%以下,特に好ましくは6%以下であることが望ましい。 【0019】ここで,熱収縮率は,室温でサンプルフィルムに2点(約10cmの間隔)の標点をつけ,150℃の熱風循環型オーブン内に30分間保持し,その後室温に戻して上記標点の間隔を測定し,150℃での温度保持前後の差を求め,この差と150℃での温度保持前の標点間隔とから算出する。そして,フィルムの縦方向の熱収縮率をもって代表させる」。 刊行物1には,熱収縮率は「特に好ましくは6%以下であることが望ましい」と記載され,その上で「縦方向」の熱収縮率でもって代表させると記載されている,,。 ,ことによれば横方向の熱収縮率も考慮に入れてい には,熱収縮率は「特に好ましくは6%以下であることが望ましい」と記載され,その上で「縦方向」の熱収縮率でもって代表させると記載されている,,。 ,ことによれば横方向の熱収縮率も考慮に入れていることは明らかであるそして両方向の熱収縮率を測定する場合はそれ相応の作業時間等を要するとしても,フィルムの品質を考慮すれば,両方向とも測定し品質を確認することが望ましいのは当然であるから,刊行物1記載のフィルムにおいて縦方向の熱収縮率に加えて,横方向の熱収縮率を規定することは,フィルムの品質に応じて当業者が適宜採用できる設計事項であると認められる。 ウこれに対し,原告は,ロール状のフィルムを連続して金属板にラミネートするときに,フィルムの横方向はしわになりやすいので,補正発明1では特に横方向の熱収縮率が特に重要であることや,刊行物1は工業生産される長尺のフィルムについて何ら言及していないことなどを主張し,相違点5に係る構成を容易に想到することはできないと主張する。 しかしながら,補正明細書には,熱収縮率を両方向で規定した理由については特段記載されていないことは前記のとおりであり,ロール状のフィルムを連続して金属板にラミネートするときに,フィルムの横方向はしわになりやすいことから横方向の熱収縮率を補正発明1で規定した旨の原告主張は,補正明細書に基づくものということはできない。また,刊行物1には,金属板にフィルムを貼り合わせたとき- 48 -に発生するフィルムのしわと熱収縮率との関係について記載されており,この関係は,フィルムの面積の大小によらず成立するものといえるから,補正発明1の面積を有するフィルムに対して刊行物1記載の熱収縮率を適用できないとする理由はない。したがって,原告の主張は採用することができない。 エ以上のとおり,相違点5につい るものといえるから,補正発明1の面積を有するフィルムに対して刊行物1記載の熱収縮率を適用できないとする理由はない。したがって,原告の主張は採用することができない。 エ以上のとおり,相違点5についての審決の判断に誤りはない。 (7)取消事由3-7(補正発明1が奏する顕著な作用効果の看過)について原告は,補正発明1は,フィルムラミネート缶の錆発生原因となるピンホールを完全になくすことに成功したものであり,その結果として,ラミネート缶におけるピンホール検査を不要にすることができるとの作用効果を奏するものであり,この作用効果は刊行物1~5からは予期し得ない顕著なものであると主張する。 しかしながら,相違点1~5に係る構成は,刊行物1~4に基づき,当業者が容易に想到し得るものであることは,前記判示のとおりであり,原告が主張する上記作用効果は,刊行物1~4記載の発明から容易に想到し得る構成自体から得られる自明な作用効果にすぎないのであって,これらの刊行物等から予期し得ない顕著な効果を奏するものということはできない。 したがって,原告の主張する取消事由3-7は理由がない。 取消事由4(補正発明2の判断の誤り)について原告は,補正発明1の構成に対しこれを限定する構成を追加する発明である補正発明2について,取消事由を主張する。しかしながら,原告が補正発明2について主張する取消事由は,いずれも補正発明1と共通する構成についての上記違法を根拠とするものであり,審決の判断に誤りはないことは前記判示のとおりである。したがって,補正発明2について審決の認定判断の誤りをいう原告の主張は理由がない。 結論 以上のとおり,原告の主張する審決取消事由1(本件補正の許否の判断の誤り)には理由があるが,本件補正が認められるとしても本件補正発明1,2は進歩性を- いう原告の主張は理由がない。 結論 以上のとおり,原告の主張する審決取消事由1(本件補正の許否の判断の誤り)には理由があるが,本件補正が認められるとしても本件補正発明1,2は進歩性を- 49 -欠くとの審決の判断は正当であるので,原告の請求は棄却されるべきである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官塚原朋一裁判官石原直樹裁判官佐藤達文
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