令和4年7月14日判決言渡令和2年(行ウ)第195号所得税更正処分等取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求処分行政庁が平成30年5月29日付けで原告に対してした原告の平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分のうち課税総所得金額1億5 033万4000円、納付すべき税額72万7400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、平成30年11月26日付け変更決定処分により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要本件は、原告が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建てで 貸付けを行い、同貸付けをしたこと及び同貸付けに係る債権の一部に対する弁済を受けたことにより為替差益を得たが、同為替差益を雑所得の金額に含めないで平成26年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、同為替差益が雑所得に含まれるものとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、所得税法51条4項に基づき、上記 貸付けに係る債権の一部を放棄したことで原告に生じた損失を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとして、上記更正処分の一部及び同処分を前提とする過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 所得税法の関係規定 所得税法51条4項は、雑所得を生ずべき業務の用に供され又はこれらの 所得の基因となる資産(山林及び62条1項(生活に通常必要でない資産の 災害による損失)に規定する資産を除く。)の損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額、資産の譲渡により又は 及び62条1項(生活に通常必要でない資産の 災害による損失)に規定する資産を除く。)の損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額、資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの及び51条1項若しくは同条2項又は72条1項(雑損控除)に規定するものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の雑所得の金額(この項の規定を適用しないで計算し たこれらの所得の金額とする。)を限度として、当該年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する旨を定める。 所得税法57条の3第1項は、居住者が、外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいう。)を行った場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額(外 国通貨で表示された金額を本邦通貨表示の金額に換算した金額をいう。)は当該外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとする旨を定める。 2 事実関係(当事者間に争いのない事実のほか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。以下、特に掲記しない限り証拠番号は枝番号を含 む。) 原告のヨット購入及びA社の設立ア原告は、平成23年6月、原告の船舶取引を仲介したB社の担当者から提示を受けた中古ヨットの一覧表の中からC号(後に「D号」と改名された。以下「本件船舶」という。)を購入することを決め、同年7月頃、 売主との価格交渉を開始した。 本件船舶の当初の売値は4695万ユーロであったが、原告は3350万ユーロでの購入を希望し、B社を介した交渉の結果、同年8月、3500万ユーロで合意に達した。 この間のやり取 本件船舶の当初の売値は4695万ユーロであったが、原告は3350万ユーロでの購入を希望し、B社を介した交渉の結果、同年8月、3500万ユーロで合意に達した。 この間のやり取りの中で、原告側の窓口となったEは、B社担当者に対 し、原告が提示した希望価格の根拠として、購入当時既に船齢が6年で あり、本件船舶を売却する頃には10年になっている旨を伝えた。また、B社担当者は、Eに対し、適切な維持管理を行えば、船齢にかかわらず、今後4年間で本件船舶の価値が上がると予測している旨を伝えた。 (甲12ないし15)イ B社担当者は、平成23年8月、原告に対し、本件船舶のような外国籍 の船舶を所有するスキームとして、英国領バージン諸島で船舶を所有し、当該船舶を維持管理する会社を設立することが費用対効果上最も有利であるなどと説明した。これを受けて、原告は、平成23年8月ないし9月頃、英国領バージン諸島にF社(以下「A社」という。)を設立し、同社の全ての株式を保有した。(甲12、16) 原告からA社に対する貸付け等ア原告は、A社に対し、平成23年8月9日から平成26年4月17日まで38回にわたり、別表1-1ないし1-4の「貸付年月日」欄の各年月日に、「貸付金額」欄の各金員(合計3992万6350.84ユーロ)を原告のユーロ建預金口座からA社の預金口座に送金する方法によ って貸し付けた(以下、これらの貸付けを併せて「本件各貸付け」といい、本件各貸付けに係る各貸付債権を併せて「本件各貸付債権」、各貸付金を併せて「本件貸付金」という。)。 本件各貸付けについては、貸付金額を取引年月日の為替相場に基づいて円換算した額と原資であるユーロ建預金口座の円換算額との差額分の為替 件各貸付債権」、各貸付金を併せて「本件貸付金」という。)。 本件各貸付けについては、貸付金額を取引年月日の為替相場に基づいて円換算した額と原資であるユーロ建預金口座の円換算額との差額分の為替 差損益が発生しており、その金額は、別表1-1ないし1-4の「為替差益」欄のとおりであって、平成23年は計2億6776万8481円の為替差損、平成24年は計1698万3319円の為替差損、平成25年は計2948万7586円の為替差益、平成26年は計1429万5918円の為替差益がそれぞれ発生した。 A社の財務諸表には、本件各貸付けは、無担保かつ無利息であり、A 社が十分な資金を有するまでは返済を求められることがない旨の注記(ThisloanisfromtheultimateBeneficialOwnerandisunsecured, interestfreeandwillnotbecalledforrepaymentuntilthecompanyhassufficientfunds.)がある。 (乙1) イ A社は、本件貸付金のうち、平成23年8月9日及び同年10月12日の各貸付けに係る貸付金合計3500万ユーロを本件船舶の購入代金に充て、同月20日以降の各貸付けに係る貸付金合計492万6350.84ユーロを本件船舶の維持管理費用等に充てた。 本件船舶の売却 ア原告は、遅くとも平成23年11月までに本件船舶を売却することを決めた。Eは、原告の指示を受けて仲介者を選定することになり、平成23年11月、B社担当者から同社のヨット販売実績の一覧を入手した。 (甲12、17)イ原告は、所有者が一度も乗船せずに売却しようとすると瑕疵の存在を疑 わ 介者を選定することになり、平成23年11月、B社担当者から同社のヨット販売実績の一覧を入手した。 (甲12、17)イ原告は、所有者が一度も乗船せずに売却しようとすると瑕疵の存在を疑 われるとの助言を受けたことから、平成23年の年末から平成24年1月にかけて、家族らと共に本件船舶でカリブ海を航海したが、その後は、本件船舶に一度も乗船しなかった(甲12)。 ウ原告とB社は、平成24年2月28日、本件船舶の売却希望価格を4495万ユーロとし、同社が売却の仲介をすることを合意した。同社は、同 売却希望価格を掲載した広告を出すなどして買主を探したが、同価格で購入する買主は見つからなかった。(甲12、18、19)エ平成25年12月、3000万米国ドルで本件船舶を購入する旨提案する者が現れ、B社を介した交渉の結果、A社は、平成26年4月29日、本件船舶を2965万米国ドルで売却した。同価格を同日の為替相場によ りユーロに換算すると、2145万7430ユーロであり、購入価格であ る3500万ユーロの61.31%に相当する。(甲12、20、弁論の全趣旨) 本件各貸付債権への弁済、債権放棄等ア A社は、上記エの本件船舶の売却代金から一定の費用を除いた額を本件各貸付債権に対する弁済に充てることとし、平成26年5月1日に2 764万1560米国ドル、同月8日に25万8390米国ドル(合計2789万9950米国ドル)を、それぞれ原告の外貨建預金口座に振り込む方法により支払った(以下、併せて「本件各弁済」という。)。原告は、別表2のとおり、同月1日の弁済によって7億0600万8675円、同月8日の弁済によって657万9677円、合計7億1258 万8352円の為替差益を得た。 イ原告は 。)。原告は、別表2のとおり、同月1日の弁済によって7億0600万8675円、同月8日の弁済によって657万9677円、合計7億1258 万8352円の為替差益を得た。 イ原告は、A社に対し、平成26年12月1日付けの書面により、同年10月31日時点の本件各貸付債権の残債権(合計1989万8924. 71ユーロ。以下「本件貸付残債権」という。)を放棄する旨通知した(以下「本件債権放棄」という。)。 ウ原告は、平成26年12月2日、本件各弁済に係る2789万9950米国ドルに自らの外貨建預金口座の50米国ドルを加えた2790万米国ドルを日本円に交換し、為替差益を得た(以下「本件交換」という。)。 A社の財務諸表の記載A社の平成23年、平成24年及び平成25年の各12月31日時点の貸 借対照表には、固定資産として本件船舶及びその修理費用、流動資産として現金及び現金同等物(本件貸付金の残額)並びに諸債権及び前払金(各年とも1ユーロ)が計上され、負債として本件各貸付債権の残額が計上されており、平成26年8月31日時点の貸借対照表には、固定資産は計上されておらず、流動資産として現金及び現金同等物(本件各弁済後の本件貸付金の残 額)並びに諸債権及び前払金(1ユーロ)が計上され、負債として本件各貸 付債権の残額(本件各弁済後のもの)が計上されている。また、A社の上記各期間の損益計算書には、収益として銀行利息及び為替差益のみが計上され、費用として減価償却費、乗務員費、港湾利用料等が計上されている。(乙1) 確定申告、更正処分、審査請求等 ア原告は、平成26年3月13日、処分行政庁に対し、本件貸付金50億7674万9792円を国外財産として記載した平成25年12月3 (乙1) 確定申告、更正処分、審査請求等 ア原告は、平成26年3月13日、処分行政庁に対し、本件貸付金50億7674万9792円を国外財産として記載した平成25年12月31日分の国外財産調書及び同合計表を提出した。 イ原告は、処分行政庁に対し、平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下、併せて「所得税等」という。)について、確定申告書を提出した。 原告は、同申告において、本件各貸付けに係る前記アの為替差益及び本件各弁済に係る前記アの為替差益を雑所得として申告しなかった。 同申告の内容は、別表3の「確定申告」欄のとおりであり、雑所得は計上せず、総所得金額は1億4700万7018円、所得税等の納付すべき税額は「△10万3361円」(還付)である。 ウ処分行政庁は、調査の結果、原告の平成26年分の所得税等について、配当所得の金額及び外貨建取引による為替差益に係る雑所得の金額が申告されていないとして、平成30年5月29日付けで、原告に対し、別表3の「更正処分等」欄のとおり更正する旨の更正処分(以下「本件更正処分」という。)をするとともに、過少申告加算税の賦課決定処分をし た。本件更正処分は、雑所得の金額を10億4186万0316円、総所得金額を11億9429万2334円、所得税等の納付すべき税額を4億2622万3500円とし、過少申告加算税の額を4905万8500円とした。 エ原告は、平成30年7月25日、本件更正処分及び過少申告加算税の賦 課決定処分のうち、雑所得の金額に対応する税額に係る部分に不服があ るとして、再調査を請求した。 オ処分行政庁は、平成30年11月26日付けで、前記ウの過少申告加算税の賦課決定処分につき、過少申告加算税の額に の金額に対応する税額に係る部分に不服があ るとして、再調査を請求した。 オ処分行政庁は、平成30年11月26日付けで、前記ウの過少申告加算税の賦課決定処分につき、過少申告加算税の額に誤りがあったとして、別表3の「変更決定処分」欄のとおり変更決定をし、変更後の過少申告加算税の額を4900万3000円とした(乙2)。 カ再調査審理庁は、平成30年11月29日付けで、前記エの再調査の請求をいずれも棄却する旨の再調査決定をした。 キ原告は、平成30年12月21日、国税不服審判所長に対し、本件更正処分及び上記オによる変更後の過少申告加算税賦課決定処分のうち、雑所得の金額に対応する税額に係る部分に不服があるとして、審査請求を したが、同所長は、令和元年11月1日付けで、同請求を棄却した。 本件訴えの提起原告は、令和2年5月26日、本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点本件の争点は、本件貸付残債権がその損失を所得税法51条4項により雑所 得の計算上必要経費に算入できる資産に該当するか否か(争点1)、及び本件債権放棄により原告に同項の規定する損失(以下「資産損失」という。)が生じたか否か(争点2)であり、争点1は、より具体的には、本件貸付残債権が同項の「雑所得を生ずべき業務の用に供される資産」(以下「業務供用資産」ということがある。)に該当するか否か(争点1-1)、及び本件貸付残債権が 同項の「雑所得の基因となる資産」(以下「雑所得基因資産」ということがある。)に該当するか否か(争点1-2)である。 なお、被告が本訴において主張する平成26年分の原告の所得税等の税額の根拠は、別紙「被告主張の納付すべき税額等」のとおりであり、雑所得の金額は、平成26年中の各貸付けによ か(争点1-2)である。 なお、被告が本訴において主張する平成26年分の原告の所得税等の税額の根拠は、別紙「被告主張の納付すべき税額等」のとおりであり、雑所得の金額は、平成26年中の各貸付けにより生じた為替差益の額1429万5918円 及び本件各弁済により生じた為替差益の額7億1258万8352円を含む1 1億7746万9270円、課税される所得金額は13億2780万4000円、納付すべき税額は4億8160万6200円であると主張している。原告は、後記のとおり、本件債権放棄に係る損失を平成26年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張するが、同算入が認められないと仮定した場合には、被告主張の税額の計算方法を採ることにつき争っていない。 上記各争点について、当事者の主張は次の4ないし6のとおりである。 4 争点1-1(本件貸付残債権の業務供用資産該当性)(被告の主張)業務供用資産における雑所得を生ずべき「業務」についてア雑所得を生ずべき「業務」とは、事業所得との対比で、規模、継続性等 の点で、事業と称するに至らない程度の独立的営利活動をいう。ここでいう独立的営利活動は、行為者が単に主観的に利益を上げる目的を有しているだけでは足りず、客観的にみて利益が上がると期待し得る態様で活動がされていることが必要である。 イしかし、次のないしの事情からすれば、本件各貸付け及びその回収 としての弁済の態様、A社の活動内容等の各状況に照らして、本件各貸付けは、客観的にみて利益が上がると期待し得る態様でされたものではないから、一定の継続性を有する独立的営利活動には当たらず、雑所得を生ずべき業務に該当しない。 本件各貸付けは、無利息かつ無担保でされたものであり、本件債権 放棄までの 様でされたものではないから、一定の継続性を有する独立的営利活動には当たらず、雑所得を生ずべき業務に該当しない。 本件各貸付けは、無利息かつ無担保でされたものであり、本件債権 放棄までの間に利息が支払われたこともないことからすると、本件各貸付けは営利を目的としてされたものではない。 A社は、原告が、船舶の購入、保有、維持管理及び売却をする主体として設立した会社であり、原告が、同社を通じて取得及び保有していた本件船舶を、利益を得るために用いていたことをうかがわせる事 情はなく、原告の個人的な趣味、娯楽として保有していたものである。 また、同社においても、本件船舶を貸し付けて賃料収入を得るなど営利を目的として本件船舶を保有していたことをうかがわせる事情はないことからすれば、原告が同社に対して行った行為及び同社を通じて行った行為のいずれも、営利を目的とするものではない。 本件各貸付けには明確な弁済期が定められておらず、本件各弁済が為 替相場の動向と関連してされたと認められる事情もなく、本件各弁済による為替差益の発生は偶然の結果であるから、原告が為替差益を得るための活動を行っていたとはいえない。 原告は、本件船舶の取得及び維持管理の費用に充てるために本件各貸付けをしたところ、本件船舶は、原告の趣味、娯楽のために保有し ていたものであり、その取得及び維持管理の費用は、原告個人の消費支出(家事費)であるから、本件貸付金は生活用資産に該当し、その貸付けに営利性はない。 業務供用資産における「業務の用に供される」についてア所得税法51条4項が、必要経費算入の要件として、雑所得を生ずべき 業務の用に供される資産について生じた損失であることを定めていることからすると、「業務の用に供される」といえ 」についてア所得税法51条4項が、必要経費算入の要件として、雑所得を生ずべき 業務の用に供される資産について生じた損失であることを定めていることからすると、「業務の用に供される」といえるためには、当該資産が現に業務の用に供されている場合か、近い将来において業務の用に供されることが明らかであると認められる場合に限られる。そして、業務供用資産に該当するか否かは、個人の資産が比較的容易に業務用と家事用の間の転用 が可能であることから、関係者の主観的事情によるのではなく、当該資産につき損失が生じた際の状況に照らし、客観的な事実に基づいて判断することを要する。 イ原告は、本件各弁済により雑所得として課税の対象とされた為替差益を得ているが、本件各弁済の対象となっていない本件貸付残債権からは、為 替差益は生じていない。また、原告が為替差益の獲得を目的として本件各 貸付けをしたと認めるべき事情はなく、本件貸付残債権は、本件債権放棄によって回収不能となった時点において、現に雑所得を生ずべき業務の用に供されていたとはいえず、近い将来において業務の用に供されることが客観的に明らかであったともいえない。 原告の主張に対する反論 ア原告は、為替差損益を一定の期間、相応の規模、頻度で生じさせる状況が客観的に認められる場合は、「雑所得を生ずべき業務」が営まれている旨主張するが、同主張は、営利性を考慮していない点で合理性を欠くものである。 イこれに対し、原告は、本件各貸付けのような外貨建取引を行うことは必 然的に為替差損益の発生を伴うから、外貨建取引を実施して外貨建資産を保有すること自体が、投資判断として営利性を有する旨主張する。 しかし、結果的に為替差益又は含み為替差益が生じたからといって、直ちに雑所得を 差損益の発生を伴うから、外貨建取引を実施して外貨建資産を保有すること自体が、投資判断として営利性を有する旨主張する。 しかし、結果的に為替差益又は含み為替差益が生じたからといって、直ちに雑所得を生ずべき業務に当たるということはできない。本件各貸付けを開始した平成23年及び平成24年は、ほとんどの貸付けにおい て為替差損が生じていたから、仮に本件各貸付けが為替差損益の獲得を目的としてされたのであれば、為替差損の継続的な発生を防止又は減少させるよう何らかの対策を執ったはずであるが、原告がそのような対策を執った形跡はない。また、原告が、為替差益の獲得目的を有し、本件各貸付けを行って含み為替差損益の増減について認識していたとすれば、 少なくとも為替差益が発生した平成25年分について、当該為替差益に係る所得を申告する必要がある旨の認識を有していたはずであるが、原告は、同年分の申告において、本件各貸付けにより発生した為替差益に係る雑所得を含めていなかった。 さらに、本件各弁済はA社の行為であって原告とは無関係であるから、 弁済によって為替差益が生じたとしても、原告が雑所得を生ずべき業務 を行ったとみることはできない。 ウ原告は、本件船舶が本件各貸付債権の元本を上回る額で売却されていれば、同債権の利息として回収することも想定しており、A社を通じて、本件船舶を市場価格よりも安価で購入し、高額で転売できるように本件船舶の維持管理に注力していた旨主張する。 しかし、一般に、船舶のような動産は、使用又は時の経過によって価値が減少するから、取得価額を超える額で転売できる可能性は極めて低い上、本件各貸付債権の元本を上回るには、維持管理費用も含めた額を超える価格で転売しなければならず、実現可能性は更に低くなる。平成24年 減少するから、取得価額を超える額で転売できる可能性は極めて低い上、本件各貸付債権の元本を上回るには、維持管理費用も含めた額を超える価格で転売しなければならず、実現可能性は更に低くなる。平成24年及び平成25年中の貸付金額からすれば、原告が本件船舶の購入 価格に維持費用を加えた額以上で売却しようとすると、本件船舶の価格が1年当たり5%の割合で上昇しなければならないところ、本件船舶の売却価格は、この間経済危機がなかったにもかかわらず、購入価格から約4割も下落しており、本件船舶を取得価額を超える額で転売できる可能性は極めて低いものであった。これに対し、原告は、本件船舶が希少 性の高いスーパーヨットであることを主張するが、高額なスーパーヨットの売買市場が、価格の上昇要因として希少性が機能する程度の規模を有しているか疑わしい。 また、船舶購入の際に市場価格より安く購入しようと努力することや、高額で転売できるように維持管理することは、趣味、娯楽等の目的で所 有する場合も当然に行うことであるから、これらの事情は、本件各貸付債権につき元本以上の回収が可能であったことや、本件各貸付けが営利性を有していたことの客観的根拠となるものではない。 さらに、原告は、本件船舶の購入後約3か月で売却を決断した理由について、自らが希望する仕様に改造することが難しいと判明したため、 より希望に近いヨットを購入することを念頭に置いて売却を決めた旨説 明するが、希望どおりに改造できなかったから買い替えようとしたとの理由自体が高額で転売することを目的としていたとする主張と整合しない上、購入に当たって希望する仕様への改造の可否すら把握していなかったことからしても、本件船舶購入の主たる目的は多額のキャピタルゲインの獲得にはなく、原告の効用 を目的としていたとする主張と整合しない上、購入に当たって希望する仕様への改造の可否すら把握していなかったことからしても、本件船舶購入の主たる目的は多額のキャピタルゲインの獲得にはなく、原告の効用を満たすための趣味、娯楽の域を出る ものではないことが裏付けられる。 加えて、仮に本件船舶の売却によって元本超過部分に係る収益があったとしても、本件船舶を保有しているのはA社であるから、同収益が直ちに原告に支払われるものではないし、本件各貸付けはいずれも無利息であることからすれば、仮に支払われたとしても利息といえるものでは なく、原告が同社の株主として受領する配当に当たり、雑所得には該当しない。 (原告の主張)業務供用資産における雑所得を生ずべき「業務」についてア 「事業」とは、自己の計算と危険において独立して対価を得て継続的 に遂行される営利活動をいうのに対し、「業務」とは、規模・継続性等の点で事業と称するに至らない程度の独立的営利活動をいう。事業所得に損益通算が認められていることから、「事業」は厳格に認定する必要があるが、雑所得を生ずべき「業務」は、規模・継続性等の点で事業と称するに至らない程度の活動を広く含むから、業務供用資産には非営業貸金 の元本等が含まれる。これを為替差損益との関係でみると、為替差損益を一定の期間、相応の規模、頻度で生じさせる状況が客観的に認められる場合は、雑所得を生ずべき業務が営まれているといえる。 イ本件各貸付けは、4年間にわたる計38回の貸付けのうち37回について為替差損益の発生が示唆されるとともに、直近2年分の17回及び平成 26年中の本件各弁済については、為替差益の発生が示唆されていること 等の為替差益の発生期間、規模、頻度等に鑑みると、本件各貸付けにより 示唆されるとともに、直近2年分の17回及び平成 26年中の本件各弁済については、為替差益の発生が示唆されていること 等の為替差益の発生期間、規模、頻度等に鑑みると、本件各貸付けにより本件各貸付債権を保有するという一連の活動は、雑所得を生ずべき業務に当たる。 ウ本件船舶が本件各貸付債権の元本を上回る額で売却されれば、本件各貸付債権の利息として回収することが想定されるところ、原告は、将来高額 で売却できるように本件貸付金によって本件船舶の維持管理に注力し、高値で売却すべく仲介者等を通じて様々な努力を行っていたことからすると、本件各貸付けは目的において営利性を帯びていたといえる。 また、本件船舶の売却額のうち本件各貸付債権の元本を超過する部分があれば、本件貸付金の使用の対価としての所得とみることができるところ、 株式配当として株主に還元するのは合理的でないことからすれば、原告がA社から本件貸付金の使用の対価として支払を受ける旨の黙示の合意があったといえる。 業務供用資産における「業務の用に供される」についてア 「業務の用に供される」か否かは、業務実態や資産の属性に加えて、当 該業務と当該資産の関係性を踏まえつつ、客観的に判断することを要する。 イ本件各貸付けにより本件各貸付債権を保有するという原告の一連の活動は、雑所得を生ずべき業務に当たり、本件各貸付け及び本件各弁済によって多額の為替差益が実際に生み出されており、未実現とはいえ、本件各貸付債権から多額の含み為替差益が発生したことに照らせば、本件各貸付債 権は、上記雑所得を生ずべき「業務の用に供される」資産に当たる。 被告の主張に対する反論ア被告は、本件各貸付けが無利息であることから、原告が利息収入を得るための業務を行っていなか 債 権は、上記雑所得を生ずべき「業務の用に供される」資産に当たる。 被告の主張に対する反論ア被告は、本件各貸付けが無利息であることから、原告が利息収入を得るための業務を行っていなかった旨主張するが、原告は、A社が利払の原資を確保できないことに配慮していたのであり、無利息とする旨の明確な合 意があったわけではない。 イ被告は、原告が個人的な趣味、娯楽で本件船舶を保有していたとし、A社においても、営利を目的として本件船舶を保有していたことをうかがわせる事情はない旨主張するが、本件船舶の売却代金が本件各貸付債権の元本に満たなかったのは、当時の船舶の市況等からやむを得なかったものであり、原告は、本件各貸付けの当初、船舶市場の動向や売却のタイミング 次第で、元本額を上回る額の回収を想定していた。 この点に関して被告は、本件船舶の売却価格が購入価格と比較して約4割下落していること等から、原告が本件各貸付債権について元本を上回る額を利息として回収する具体的な可能性はなかった旨主張するが、実際に利益が生じなかったとしても、適切な収益計画が明確に存在する場合は、 営利性のある活動が行われていたといえる。原告は、本件船舶の購入後間もなく売却を決断し、売却に向けた活動を開始しており、仮に実際よりも早く売却されていれば、本件船舶の維持管理費用は低廉に抑えられ、約4割の価格の下落も生じなかったといえる。また、本件船舶は、いわゆるスーパーヨットの部類に入る大型ヨットであり、希少価値が極めて高いから、 市場の動向次第では、購入価格に維持費用を加えた額以上の額で売却することが十分にあり得た。 ウ被告は、貸付け又は弁済と為替相場の動向との関係性が「業務」の一要件であるかのように主張するが、為替相場は日々刻 次第では、購入価格に維持費用を加えた額以上の額で売却することが十分にあり得た。 ウ被告は、貸付け又は弁済と為替相場の動向との関係性が「業務」の一要件であるかのように主張するが、為替相場は日々刻々と変動するものであり、貸付金の弁済期を定めて弁済を受けたからといって、その動向を制御 できるものではない。また、為替相場の動向を逐一把握管理した上、その動向と関連性を持たせながら貸付けや弁済受領をしない限り営利性が認められないというのは合理的ではなく、本件各貸付けのように、外貨建取引をすること又は外貨建債権を保有することは、必然的に為替差損益の発生を伴うものであるから、それ自体が投資判断として営利性を有する。 また、被告は、平成23年及び平成24年に行われたほとんどの貸付 けにおいて為替差損が生じていたにもかかわらず、原告は為替差損の継続的な発生を防止又は減少させる対策をしていなかった旨主張するが、為替相場は日々変動し、時には予想外の動きを見せることもあるから、一定期間為替差損が生じたとしても、そのような傾向が永遠に続くことを前提に直ちに損切りを決断することはできず、現に、平成25年及び 平成26年は一転して為替差益が生じているから、長期的観点からみれば、直ちに為替対策を講じることが合理的とはいえない。 さらに、被告は、原告が確定申告において本件各貸付けにより発生した為替差益に係る雑所得を含めていなかったことをもって、原告が本件各貸付けによって為替差損益が生ずることや本件各貸付債権に含み為替 差損益が生じていることを認識していなかった旨主張するが、確定申告の有無から利益獲得目的の有無を判断することは、一種の循環論法であって合理的でない。 エ被告は、本件船舶の売却により本件各貸付債権の元本を超える収益が を認識していなかった旨主張するが、確定申告の有無から利益獲得目的の有無を判断することは、一種の循環論法であって合理的でない。 エ被告は、本件船舶の売却により本件各貸付債権の元本を超える収益があったとしても、本件船舶を保有しているのはA社であるから、直ちに 原告の収入につながるものではない旨主張するが、本件各貸付債権の引当てとなる同社の財産は本件船舶しかなく、また、本件貸付金は、本件船舶を購入するために貸し付けられたものであるから、本件船舶の売却による収入が本件各貸付債権の弁済に充てられることは合理的である。 5 争点1-2(本件貸付残債権の雑所得基因資産該当性) (被告の主張) 雑所得基因資産の意義ア雑所得基因資産の該当性判断枠組み所得税法51条4項は、「見込み」、「おそれ」等の所得が未実現であることを示す文言を用いていないから、雑所得基因資産に該当するのは、確 実に雑所得の基因となる資産であり、それを当該資産につき損失が生じた 際の状況に従って客観的な事情から判断すべきである。したがって、雑所得基因資産に該当するためには、損失が生じた際、当該資産が現に雑所得の基因となっているか、又は近い将来において基因となることが客観的に明らかであると認められる必要がある。そして、基準の明確性の観点から、近い将来において雑所得の基因となることが客観的に明らかである場合と は、単に雑所得が発生する可能性があるという程度では足りず、客観的にみて雑所得が発生する蓋然性が高いと評価できる場合に限られる。 イ原告の主張に対する反論原告は、少なくともある資産が未実現の雑所得の原因となっていれば雑所得基因資産に該当する旨主張するが、この解釈によれば、生活 用資産を含むおよそ全ての動産が雑 イ原告の主張に対する反論原告は、少なくともある資産が未実現の雑所得の原因となっていれば雑所得基因資産に該当する旨主張するが、この解釈によれば、生活 用資産を含むおよそ全ての動産が雑所得基因資産に該当し、その損失が雑所得から控除されることになりかねない。 この点について、原告は、雑所得基因資産から所得税法62条1項に規定する資産が除外されることで、資産損失の対象となる資産の範囲に制約が設けられている旨主張するが、同項は、ある資産が雑所得 基因資産に該当することを前提として、そのうち「生活に通常必要でない資産」の災害による損失を除くと規定しているにすぎず、雑所得基因資産の対象範囲を画するものではない。 原告は、貸倒損失該当性が問題となる場合は、雑所得が実質的に生じないにもかかわらず雑所得基因資産該当性が認められる一方で、本 件各貸付債権のように、多額の雑所得(為替差益)が実現所得として認定されるにもかかわらず、未実現所得の基因となっている資産について、雑所得基因資産該当性を否定するのはバランスを欠く旨主張する。 しかし、未収利息の貸倒れの事例のように、債権者と債務者が利息の 発生について合意している場合は、債務者による弁済等の行為の有無 にかかわらず、利息の発生は契約上明らかであるから、所得である利息が発生する蓋然性は高く、当該貸付債権が近い将来において雑所得の原因となることは客観的に明らかであるといえるのに対し、本件貸付残債権の場合は、外貨建てであるから、外貨建取引により為替差損益が生ずる可能性はあるものの、契約上発生することが明らかな利息 と異なり、将来外貨建取引が行われることが客観的に明らかとはいえない。また、本件のように債権放棄が行われた場合、当該債権に係る未実現の為替差 能性はあるものの、契約上発生することが明らかな利息 と異なり、将来外貨建取引が行われることが客観的に明らかとはいえない。また、本件のように債権放棄が行われた場合、当該債権に係る未実現の為替差益は雑所得として課税されず、雑所得が発生する蓋然性はないに等しく、近い将来において雑所得の基因となることが客観的に明らかであるとはいえないから、未収利息の場合とは異なる。 本件貸付残債権の雑所得基因資産該当性についてア本件貸付残債権が雑所得基因資産に該当しないこと本件各弁済がされた後、原告に残された本件貸付残債権からは、人の担税力を増加させる経済的利得は何ら発生しておらず、発生する可能性もないに等しいから、客観的にみて、本件貸付残債権から雑所得が発生 する蓋然性もないに等しい。そして、本件貸付残債権は、無利息かつ無担保で弁済期限の定めのない本件各貸付債権の一部であるから、利息が発生することはなく、未実現の含み為替差損益が生ずることはあっても、実際にそれが実現するか否かは、為替相場の性質上不明確である上、弁済等がなければ実現することはない。 A社は、海外で船舶を購入する計画を有していた原告が、船舶の購入、保有、維持管理及び売却を行う主体として設立した会社であるから、同社が本件船舶の売却代金以外の収入を得る可能性は極めて低い。同社は、本件貸付金を元手に本件船舶を購入した後、本件各貸付債権の元本を大きく下回る価格で本件船舶を売却し、その売却代金により本件各弁済を 行ったのであるから、もはや本件貸付残債権に対して弁済する資力はな かった。そうすると、本件貸付残債権に対する弁済の可能性がないに等しい以上、所得発生の蓋然性も極めて低く、近い将来において雑所得の基因となることが客観的に明らかであるとはい 弁済する資力はな かった。そうすると、本件貸付残債権に対する弁済の可能性がないに等しい以上、所得発生の蓋然性も極めて低く、近い将来において雑所得の基因となることが客観的に明らかであるとはいえないから、本件貸付残債権は、雑所得基因資産に該当しない。 イ原告の主張に対する反論 原告は、本件各貸付けの都度、その時点での為替相場の動向に応じて為替差損益が発生しているから、本件各貸付債権に対する一部弁済後の本件貸付残債権は、本件債権放棄までに現実に為替差損益を発生させる原因となっている旨主張するが、本件各貸付けの際に生じた為替差益は、原告名義のユーロ建預金の残高の含み差益が、A社への貸 付けに充てられることによって実現したものであり、本件各貸付債権から生じた為替差益ではないから、原告の主張は失当である。 原告は、本件各貸付債権のうち一部弁済を受けた部分と本件貸付残債権とが一体であることを前提とした主張をするが、これらを一体として評価すべき根拠はない。 原告は、仮に本件船舶が本件各貸付債権の元本を上回る額で売却されていれば、本件各貸付債権の全額について弁済を受けることができ、この場合は本件貸付残債権についても本件各弁済の時点と同じ為替相場による為替差益が発生していた旨主張するが、本件各貸付債権の元本を上回る額で本件船舶を転売できる可能性は極めて低かったから、 原告の主張はおよそ不可能な想定に基づくものである。 原告は、本件貸付残債権を含めた本件各貸付債権全体に係る円換算額の累計額を用いて為替差益が算出されているから、本件貸付残債権は、平成26年中に実現した雑所得の基因となっている旨主張するが、資産の取得額等の計算方法の選定と、本件貸付残債権が雑所得基因資産 累計額を用いて為替差益が算出されているから、本件貸付残債権は、平成26年中に実現した雑所得の基因となっている旨主張するが、資産の取得額等の計算方法の選定と、本件貸付残債権が雑所得基因資産 に該当するかという点は全く別個の問題であり、取得額の計算方法が 雑所得基因資産の意義ないし範囲に影響することはない。また、雑所得基因資産該当性は、本件債権放棄の時点での本件貸付残債権の評価の問題であるから、為替差益を算出するための取得額の計算方法は、同該当性の判断に影響するものではない。 (原告の主張) 雑所得基因資産の意義ア所得税法51条4項は、雑所得の獲得に寄与し得る投下資本(資産)がある場合に、回収不能となった当該投下資本との関係で課税が及ばないようにするため、雑所得がある場合にはその所得の金額を限度として、当該資産の損失の金額を必要経費に算入することを認める旨企図したものであ る。この趣旨からすれば、投下資本(資産)が雑所得の獲得に寄与し得る限り、回収不能となった当該投下資本との関係で課税が及ばないようにする必要があるから、雑所得基因資産に該当するには、当該資産について損失が発生するまでに、当該資産が雑所得の額を変動させる原因となった、又は原因となり得たことが基準となり、過去において既に雑所得の原因と なっている資産に加えて、損失発生時点までのいずれかの時点において、弁済、譲渡等が行われていれば雑所得の原因となり得る資産も包含する。 イ所得税法51条4項は、「これらの所得の基因となる資産」という文言を用いるところ、これは、資産損失の対象となる資産の範囲を規定したものであり、同法36条1項のように実現主義に立ってその年分の「所 得」を示すものではなく、ある資産が雑所得の基因(原 いう文言を用いるところ、これは、資産損失の対象となる資産の範囲を規定したものであり、同法36条1項のように実現主義に立ってその年分の「所 得」を示すものではなく、ある資産が雑所得の基因(原因)となるか、又はなり得るかを定性的に判断すべく、包括的所得概念の下で所得として捉えることのできるものを全て含む趣旨である。したがって、ある資産から未実現の雑所得が発生している場合、当該資産は、定性的にみて雑所得の原因となり得る以上、雑所得基因資産に該当する。 このことは、所得税法51条4項が、「その年分のこれらの所得の基因 となる資産」又は「その年分の所得の金額の計算の基礎となる総収入金額の基因となる資産」といった文言を用いていないこと、同じ条項において、必要経費として算入し得る上限を画する局面では、「その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額」と規定することで、所得の基因となる資産における「所得」とは異なり、 当該年分の所得(実現所得)を念頭に置いていることからも明らかである。 また、所得税法の条文の中には、「基因となった」との文言が用いられているものがあることからすれば、雑所得基因資産は、少なくとも、雑所得を現に生じさせている資産と限定的に解する余地はなく、客観的な 外形、状況からみて、雑所得を発生させる原因となり得る資産であれば足りる。 被告は、原告の解釈を採れば、生活用資産を含むおよそ全ての動産が雑所得基因資産に該当することになり結論の妥当性を欠く旨主張するが、同資産に該当すれば全て資産損失の対象として認められるわけではなく、 所得税法62条1項に規定する資産を除外することにより、その範囲に制約が設けられている。被告の主張する懸念は、同項の「生活に通常必 該当すれば全て資産損失の対象として認められるわけではなく、 所得税法62条1項に規定する資産を除外することにより、その範囲に制約が設けられている。被告の主張する懸念は、同項の「生活に通常必要でない資産の災害による損失」の解釈、適用によって対応すべきものであり、雑所得基因資産該当性とは無関係である。 ウ非営業貸金の貸倒れが発生する場合、未収利息分は、所得税法64条1 項に基づき、対応する年分の雑所得について更正の請求を行い、総収入金額から除いて計算した税額と納付税額との差額の還付を求めることが可能であり、その結果として、貸付期間中を通じて、利息分に係る所得は全く発生しないのと同様の効果を得られる一方で、元本債権は、雑所得基因資産として、その損失額を、雑所得の計算上必要経費に算入する ことができる。このように、貸倒損失該当性が問題となる場合は、雑所 得が実質的に生じないにもかかわらず雑所得基因資産該当性が認められる一方で、本件のように、多額の雑所得(為替差益)が実現所得として認定されているにもかかわらず、未実現所得の基因となっている資産について、雑所得基因資産該当性を否定するのは、同じ条文の解釈として、極めてバランスを欠いている。 エ被告は、雑所得基因資産に該当するには、損失が生じた際、当該資産が現に雑所得の基因となっているか、又は近い将来において基因となることが客観的に明らかであると認められる必要がある旨主張するが、そのような解釈を条文の文理から読み取ることはできない上、「近い将来」などという極めて曖昧かつ不明瞭な基準を設定することは、「基因となる」 との文理に沿わず、法的安定性及び納税者の予測可能性を奪うものである。「基因となる」という文言は、因果関係でいう「原因」を指し、「結 極めて曖昧かつ不明瞭な基準を設定することは、「基因となる」 との文理に沿わず、法的安定性及び納税者の予測可能性を奪うものである。「基因となる」という文言は、因果関係でいう「原因」を指し、「結果」そのものを指す概念ではなく、被告の解釈は、所得発生の結果という条文に存在しない要件を独自に付加するものであり、失当である。 また、被告は、雑所得基因資産該当性は、資産損失の発生時点を基準に 判断すべき旨主張するが、同資産に該当することが明らかな株式や利息付債権は、損失発生時点においては当該資産から所得が生ずる現実的可能性がなくなっているから、損失発生時点やその近い将来における所得の発生可能性に基づいて雑所得基因資産該当性を論ずると、これらの資産を資産損失の対象から除外することとなり、制度趣旨に照らして論理 的整合性を欠くものである。 本件貸付残債権の雑所得基因資産該当性についてア本件各貸付けについては、平成23年から平成26年にかけて、貸付けの都度、その時点での為替相場の動向に応じて為替差損益が発生しており、本件各貸付債権のうち一部弁済後の債権である本件貸付残債権は、本件債 権放棄までに、現実に為替差益、すなわち雑所得を発生させる原因となっ ているから、雑所得基因資産に該当する。 被告は、本件各貸付けの際に生じた為替差損益は、原告名義のユーロ建預金の残高の含み差損益が、A社への貸付けに充てられることによって実現したものであり、本件各貸付債権から生じた為替差損益ではない旨主張するが、本件各貸付け自体が、原資のユーロ建預金をユーロ建貸 付金に変化させることを通じて、為替差損益の発生原因となっているから、ユーロ建預金のみならず、本件各貸付けの成果である本件各貸付債権も、雑所得基因資産 け自体が、原資のユーロ建預金をユーロ建貸 付金に変化させることを通じて、為替差損益の発生原因となっているから、ユーロ建預金のみならず、本件各貸付けの成果である本件各貸付債権も、雑所得基因資産に該当するものといえる。また、雑所得として課税されたのは平成26年中の貸付けに係るもののみであるが、それ以前の貸付けについても、客観的には各年分において外貨建取引として雑所 得を生じさせる原因となっているから、本件各貸付債権は、全体として雑所得基因資産に該当する。 イ原告は、本件各弁済によって為替差益を得ている。本件各弁済は、本件各貸付債権の全額に満たないものであるが、これは、A社による本件船舶の売却代金が債権額の全額に満たなかったという事情によるものであ り、A社の弁済能力の問題にほかならず、仮に本件各貸付債権の元本を上回る価格で本件船舶が売却されていれば、原告は全額の弁済を受けることができ、本件貸付残債権についても為替差益が発生していたのであるから、本件貸付残債権は、雑所得基因資産に該当する。 また、本件各弁済のユーロ換算額は、本件貸付残債権の額を上回っ ていたから、本件各弁済が本件貸付残債権に充当されて同債権を完全に回収することができる客観的可能性があった。そして、本件貸付残債権と本件各貸付債権のうち一部弁済を受けた部分は、貸付けの目的等からすれば本件各貸付債権を一体として構成するものであるところ、現実に弁済を受けたのが本件貸付残債権ではないという理由のみで本 件貸付残債権の雑所得基因性を否定するのは、合理的ではない。被告 は、本件各弁済によって消滅した貸付債権の円換算額を算出する際、本件貸付残債権を含めた本件各貸付債権全体に係る円換算額の累計額を用いているから、本件貸付残債権は、本件更正処 的ではない。被告 は、本件各弁済によって消滅した貸付債権の円換算額を算出する際、本件貸付残債権を含めた本件各貸付債権全体に係る円換算額の累計額を用いているから、本件貸付残債権は、本件更正処分において課税対象となった本件各弁済に伴う為替差益の算定過程に取り込まれており、本件各弁済に対応する貸付債権部分を特定することはできず、特定す る必要もない。 所得税法51条4項と同様の規定である同法48条3項を受けた同法施行令118条1項の文言からすれば、2回以上にわたって取得された資産(本件では本件各貸付債権)は、物的性格の同一性、資産の相互代替性が認められることを前提として、定性的に雑所得の基因となること が想定されている。そして、同項が定める総平均法に準ずる方法が適用又は準用される場合、代替性が認められる資産の一部から所得が実現するときであっても、同じく雑所得の基因となっており相互代替性が認められる資産を、取得額の計算過程に入れて平均化を図ることが念頭に置かれている。そして、本件において、被告は、本件各貸付債権の相互代 替性を前提として、同債権全体を取得額の計算過程に取り込む判断をして、総平均法に準ずる方法を適用しているから、本件貸付残債権を含めた本件各貸付債権全体が、定性的に雑所得の基因となることが当然に導かれ、そのように解することが、所得税法48条3項、同法施行令118条1項の文理に沿うものである。 また、このように考える以上、本件各弁済によって生ずる為替差益に係る収入についても、本件貸付残債権を含めた一体としての本件各貸付債権全体との関係でとらえるべきであり、実際に一部弁済を受けた部分とのみ関連付ける合理的理由はない。したがって、少なくとも本件各弁済時点又はその直前においては、本件各貸付債権全体 としての本件各貸付債権全体との関係でとらえるべきであり、実際に一部弁済を受けた部分とのみ関連付ける合理的理由はない。したがって、少なくとも本件各弁済時点又はその直前においては、本件各貸付債権全体が雑所得 基因資産であったといえる。 ウ同じ平成26年に一部弁済を受けた部分についてのみ為替差益の実現があったとして課税所得の認定をする一方で、一部弁済後の本件貸付残債権との関係では、未実現の為替差益の発生を認めつつも当該年内に実現しなかった、又は近い将来において実現する可能性がないとして雑所得基因性を否定する被告の主張は、合理的ではなく条文解釈にも反する。 また、このような考え方は、弁済を受けた部分について雑所得として課税を行い、資産として残った部分につき資産損失を否定する局面で更に課税をすることに等しい。 エ原告は、本件船舶の売却により原資を確保できた場合は、A社から本件貸付金の使用の対価の支払を受けることを念頭に置いており、同支払を 受ければ雑所得として位置付けられるものであるから、本件各貸付債権の一部を構成している本件貸付残債権も雑所得基因資産に該当する。 6 争点2(本件債権放棄による資産損失発生の有無)(被告の主張) 資産損失の意義 所得税法は、資産損失の意義について明文の定義規定を設けていないが、同法37条の費用概念、資産の譲渡により生ずる差引損失、49条の償却費に相当する価値減少分等と対比すると、資産損失とは、資産の価値の全部又は一部の絶対的喪失であり、時の経過と無関係に生ずるものと解される。ここでいう価値の絶対的喪失とは、他の資産又は役務その他の経済的便益の創 造に寄与しない価値の消滅又は減少を意味し、その消滅又は減少した価値の他の資産等への転換に 関係に生ずるものと解される。ここでいう価値の絶対的喪失とは、他の資産又は役務その他の経済的便益の創 造に寄与しない価値の消滅又は減少を意味し、その消滅又は減少した価値の他の資産等への転換にすぎない相対的喪失は、資産損失に該当しない。 本件債権放棄によって資産損失が生じていないことア本件各貸付けは、無利息かつ無担保であり、A社が資金を有するまでは返済を求めないとして、弁済期も定められていない。また、A社は、本件 船舶の購入、保有等を目的として設立された法人であり、唯一の株主であ る原告が完全に支配する関係にあり、原告からの借入金を原資として、本件船舶の取得、維持管理、譲渡をして、原告からの借入金に対する一部弁済をした以外は、特段の活動を行っていないから、同社の活動は本件船舶の維持管理を行うことが全てであったといっても過言ではなく、この活動は、費用を生ずるものではあっても収入を生ずるものではなかった。 このような本件各貸付けの態様や借主であるA社の活動状況等からすると、本件貸付金は、原告が、趣味、娯楽のために保有する本件船舶の取得及び維持管理の費用、すなわち原告個人の消費支出(家事費)を賄うためのものであり、原告は、その支出(貸付け)により、原告が完全に支配する関係にあったA社を通じて間接的に本件船舶を保有するという 目的を達し、その支出(貸付け)について効用(満足)を得たといえるから、本件債権放棄に伴う債権の消滅は、原告が船舶を所有するという便益に関連して生じたものである。したがって、本件貸付残債権が回収不能となったことは、他の経済的便益の創造に寄与しない価値の絶対的喪失に該当するものではなく、資産損失に当たらない。 イ原告は、本件各貸付けが当初から全額の弁済を予 貸付残債権が回収不能となったことは、他の経済的便益の創造に寄与しない価値の絶対的喪失に該当するものではなく、資産損失に当たらない。 イ原告は、本件各貸付けが当初から全額の弁済を予定していないのであれば、貸付けの時点で贈与が成立して本件各貸付債権は存在しないことになる旨主張するが、原告とA社との間では、本件船舶の購入及び維持管理に充てるための資金の移転を貸付けとして処理していた以上、原告がA社を通じて何らかの収入を得る活動をする可能性がないわけではなか ったといえるから、当初から全額の弁済が予定されていなかったからといって、貸付けの時点で既に贈与が成立していたことになるものではない。 (原告の主張) 資産損失の意義 ア所得税法51条4項の文理解釈上、債権放棄を含めた債権の貸倒れが 同項の資産損失から除外されないことは明らかであるところ、債権の貸倒れに該当するか否かを判断する際は、客観的に当該債権につき弁済を受けることが困難と認められる事情があったか否かを考慮すべきである。 そして、債務者の資産状況、支払能力、事業実態等からみて、債務者から弁済を受ける可能性が客観的に認められる状況にあれば、債権放棄等 により債権者から債務者への実質的な贈与(価値の移転)があるといえ、債権の貸倒れを否定することが一般的な取引通念と整合する。 イ被告は、債権放棄が債権者において何らかの対価(便益)を受けたことにより行われた場合は資産損失に該当しない旨主張するが、同基準は極めて曖昧であり、合理的根拠はない。 また、資産損失に含まれない価値の相対的喪失とは、ある資産の価値の消滅又は減少の反射的効果として、別の資産等への転換が行われる場合に限られるところ、被告は 、合理的根拠はない。 また、資産損失に含まれない価値の相対的喪失とは、ある資産の価値の消滅又は減少の反射的効果として、別の資産等への転換が行われる場合に限られるところ、被告は、資産価値の消滅又は減少が、何らかの役務や便益に関連して生じたものであれば足りるとしており、「関連」という言葉に幅を持たせることによって、相対的喪失の範囲を際限なく広げ ようとしている。 本件債権放棄によって資産損失が生じたことア A社は、事業開始以来継続的に債務超過状態にあったところ、平成26年に本件船舶を売却し、売却代金から一定の費用を除いた残額を本件各貸付債権に対する一部弁済に充てたことにより、本件船舶や現金を含む一切 の資産を失った。A社は、本件船舶を保有する目的で設立されたから、本件船舶の売却によって存在意義を失い、以降は何らかの事業活動を行うことで収益を生み出すことはできなくなっていた。したがって、A社の資産状況、支払能力のほか、同社が事業活動を停止した実態も踏まえると、本件船舶の売却及び本件各弁済に伴う明確な債務超過状態が本件債権放棄の 時点で相当期間継続しており、同時点で、本件貸付残債権の全額について 回収する見込みがなくなっていたことは明白であるから、平成26年中に本件貸付残債権に係る資産損失が生じたといえる。 イ被告は、原告は当初から本件各貸付債権の全額の回収を見込んでいたわけではない、原告は本件各貸付けによりA社を通じて本件船舶を保有するという効用を得ている、本件貸付金は形式的に貸付金として処理を したものである、本件船舶は原告が趣味、娯楽のために保有したものであるなどと主張する。 しかし、本件船舶を保有したのは原告ではなくA社であるから、被告の主張は前提を誤 して処理を したものである、本件船舶は原告が趣味、娯楽のために保有したものであるなどと主張する。 しかし、本件船舶を保有したのは原告ではなくA社であるから、被告の主張は前提を誤っている。また、原告がA社との取引に基づき同社に対して本件各貸付債権を有していたことは私法上明白であり、形式的に 貸付金として処理していたわけではない。 本件船舶は、高額で売却されることが当初から選択肢の一つとして想定されており、本件各貸付債権の全額を回収することが見込まれていた。 A社の株主であった原告は、同社を通じて本件船舶を目論見どおり安値で購入する一方で、購入直後には本件船舶を手放す決断をしているから、 購入当初から、本件船舶について売却による一定規模の収益が生ずることを念頭に置きつつ、本件各貸付債権の元本を大きく上回る額の回収を図ることを想定していたのであり、自ら本件船舶に乗船するなどして純粋な趣味、娯楽目的で使用するために購入したものではなく、実際にもその目的で使用したことはなかった。原告が本件各貸付債権の全額を回 収できなかったのは、ユーロ危機等の影響によりスーパーヨットの市場が予想外に低迷し、本件船舶の売却に想定外の時間がかかって維持管理費用の増加を招いたことに加え、売却価格も想定を下回ったことが原因であり、収益計画が最初から存在しなかったわけではない。 ウ被告は、原告が本件各貸付債権のうち当初から弁済を予定していなか った部分の回収を断念したに過ぎない旨主張するが、この主張によると、 当初から弁済を予定していなかった部分については貸付けの時点で贈与が成立して本件各貸付債権のうち同部分は存在しないことになるから、本件各貸付債権の存在自体を否定しない被告の主張と矛盾する。 第3 当裁判 ら弁済を予定していなかった部分については貸付けの時点で贈与が成立して本件各貸付債権のうち同部分は存在しないことになるから、本件各貸付債権の存在自体を否定しない被告の主張と矛盾する。 第3 当裁判所の判断 1 争点1-1(本件貸付残債権の業務供用資産該当性)について 業務供用資産の意義所得税法51条4項は、「雑所得を生ずべき業務の用に供される資産」(業務供用資産)は、その損失の金額を一定の限度で、当該年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する旨を定めるところ、ここでいう「業務」とは、規模、継続性等の点で、事業と称するに至らない程度の独立的営利活動をい う。そして、ここでいう独立的営利活動が認められるためには、単に主観的に利益を得る目的を有しているだけでは足りず、客観的にみて利益の発生を期待し得る活動をしていることが必要であるというべきである。 業務供用資産該当性の判断以上の「業務」の意義を前提として、本件各貸付けによる利息獲得、為替 差益獲得等について検討する。 ア本件各貸付による利息獲得について前記事実関係のとおり、A社の財務諸表に本件各貸付けは無担保かつ無利息であり同社が十分な資金を有するまでは返済を求められることはない旨の注記があることに加え、同社は、原告がヨットを購入し て維持管理するために設立した会社であり、原告が全ての株式を保有している上、同社が本件各貸付けについて原告に利息を支払ったことはなく、原告が本件各弁済以前に同社に対して弁済を求めたことをうかがわせる証拠もないことからすれば、本件各貸付けについては、財務諸表の上記注記のとおり、無担保かつ無利息であり、原告は同社が 十分な資金を有するまで弁済を求めない旨の合意が成立していたと認 め 証拠もないことからすれば、本件各貸付けについては、財務諸表の上記注記のとおり、無担保かつ無利息であり、原告は同社が 十分な資金を有するまで弁済を求めない旨の合意が成立していたと認 められる。 この点に関し、原告は、上記注記について、無担保及び無利息(unsecured, interestfree)の部分にも、A社が十分な資金を有するまで(untilthecompanyhasasufficientfunds)との条件が付されている旨主張するが、担保の具体的内容や利率が定められていな い上、「十分な資金」がどの程度のものであるかも不明確であることからすれば、同注記の記載をもって、条件付きの担保差入れ又は利息支払いの合意があったと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 原告は、本件船舶が高額で売却された場合、A社から、本件各貸付債 権の元本を上回る部分を利息として回収することを想定していたから、本件各貸付けには利息獲得という営利目的があった旨主張する。 しかしながら、前記事実関係によれば、本件船舶の購入の際、原告側の窓口であったEとB社担当者との間で、原告が4年間は本件船舶を保有することを前提とするやり取りがあったことが認められ、また、原告 は、本件船舶の売却を決めたのは、自らが希望する仕様への改造が難しい旨が判明したことが理由であったと主張しているから、少なくとも購入時には、本件船舶を希望する仕様に改造した上で4年程度は乗船するなどして使用することを想定していたとみて矛盾がなく、即時に転売して利益を得る目的や意図であったことをうかがわせる事情は証拠上見当 たらない。 また、一般的に中古船舶は、使用や経年に伴って船体が劣化するために価値が減少するものと考えら なく、即時に転売して利益を得る目的や意図であったことをうかがわせる事情は証拠上見当 たらない。 また、一般的に中古船舶は、使用や経年に伴って船体が劣化するために価値が減少するものと考えられ、購入価格に売却時までの維持管理費用を加えた額を上回る価格で売却することは容易ではないと推認されるところ、本件全証拠によっても、本件船舶が、例えば発売から相 当期間が経過した一定の自動車(いわゆるスーパーカーのうちの特定 の車種)のように、使用や経年によっても価値が維持され又は上昇するなどの特質を有する船舶であることを認めるに足りる証拠はない。 実際にも、前記事実関係のとおり、本件船舶はユーロ換算にして購入価格の6割程度の価格で売却するに至ったものであるから、本件各貸付けの時点において、本件貸付金によって購入し維持管理した船舶を、 本件貸付金を上回る価格で転売して利益を得ることは、客観的には極めて困難な状況であったことが認められる。 前記事実関係のとおり、原告は、本件船舶を購入するに当たり、Eを通じた交渉により当初売主から提示された売値よりも相当低額な価格で購入し、購入後も、本件各貸付けによってA社に本件船舶の維持管 理費用を提供し、売却を決めた後も、仲介者を探したりするなどして高値での売却を実現しようと行動していたことが認められるものの、安値で購入し価値を維持して高値で売却しようとすること自体は、転売等による利潤を追求する目的で船舶を保有する者のみならず、趣味、娯楽を目的として船舶を保有する者であっても通常行うことであるか ら、原告の上記認定に係る行動をもって、直ちに本件各貸付け等について営利性を認めることはできない。 原告は、本件各貸付けの当初は船舶市場の動向や売却のタイミング次第で本件各貸付けの元本 ら、原告の上記認定に係る行動をもって、直ちに本件各貸付け等について営利性を認めることはできない。 原告は、本件各貸付けの当初は船舶市場の動向や売却のタイミング次第で本件各貸付けの元本額を上回る額を回収することが想定された、本件船舶は希少価値の高いスーパーヨットであるから市場の動向次第 では購入価格に維持管理費用を加えた額以上の額で売却することがあり得たなどと主張するが、既に判示したところによれば、上記各主張はいずれも前提を欠くものであり、原告主張に係る額での売却が可能な状況であったことは証拠上うかがわれない。そして、前記事実関係のとおり、購入後原告らがわずか1回しか乗船していないにもかかわ らず、購入から3年にも満たない期間で購入価格から約4割も下落し た価格でしか売却できなかったことからすれば、本件船舶は、購入価格にその後の維持管理費用を加えた額以上の価格で売却できる客観的可能性があったと認めることはできない。 原告は、実際に利益が生じなかったとしても、適切な収益計画が明確に存在する場合は、営利性のある活動が行われていた旨主張するが、 本件船舶を本件各貸付債権の元本額を超える価格で売却し、元本を超える額を利息として回収する旨の計画が実現可能なものであったとはいい難いことは前判示のとおりであるから、原告主張の収益計画をもって、本件各貸付けに営利性があったと認めることはできない。 以上によれば、本件各貸付けについては、利息による利益獲得の営 利性を認めることはできない。 イ本件各貸付による為替差益獲得について原告は、本件各貸付けの一部及び本件各弁済において、原告が為替差益を得ているところ、為替差益に係る所得発生の期間、規模、頻度等に鑑み、本件各貸付けが雑所得を生ずべき業務に該当 替差益獲得について原告は、本件各貸付けの一部及び本件各弁済において、原告が為替差益を得ているところ、為替差益に係る所得発生の期間、規模、頻度等に鑑み、本件各貸付けが雑所得を生ずべき業務に該当する旨主張す る。 しかしながら、前記事実関係において摘示したとおり、A社は、本件各貸付けによって取得した金員を本件船舶の購入、維持管理のために使用したことが認められ、他の使途に使用したことは証拠上認められない。そうすると、原告は、同社に対して本件船舶の購入資金及び維 持管理費用として本件各貸付けを行ったものと認められ、貸付けによって為替差益を得る旨企図していたことをうかがわせるに足りる証拠はない。また、貸付け及びA社からの弁済に係る送金時期をみても、前記事実関係に上記判示を総合すれば、平成23年8月9日及び同年10月12日の貸付けは、同年8月に本件船舶の購入価格を3500 万ユーロとする旨合意したことを受けて、A社の預金口座に送金した ものであり、それ以降の36回の貸付けは、本件船舶の維持管理費用に充てるためおおむね月に1回の頻度で送金したものと認められ、弁済についても、平成26年4月29日に本件船舶を2965万米国ドルで売却したことを受けて、その直後である同年5月1日及び同月8日に、A社が売却代金を原資として原告の預金口座に送金したものと 認められるから、上記各送金が為替差益の獲得を企図して為替相場の状況を考慮した上でされたものとは認められない。さらに、前記アで認定したとおり、本件各貸付けについては、原告はA社が十分な資金を有するまで弁済を求めない旨の合意が成立していた上、前記事実関係において摘示したA社の財務諸表の記載によれば、同社は、原告 から本件船舶の購入資金及び維持管理費用を得たにとどまり 十分な資金を有するまで弁済を求めない旨の合意が成立していた上、前記事実関係において摘示したA社の財務諸表の記載によれば、同社は、原告 から本件船舶の購入資金及び維持管理費用を得たにとどまり、他に何らかの収益を獲得するための活動を行っておらず、本件船舶を売却するまでは、本件各貸付債権に対する弁済に充てられる原資を保有していなかったと認められるから、原告は、自らにとって為替相場が有利な時機に弁済を求めることもできなかったものである。 そして、前記事実関係のとおり、原告は、平成23年及び平成24年における各貸付けの大部分において為替差損が生じていたにもかかわらず、差損の解消又は縮小のために何らかの対策を講じたことは証拠上うかがわれず、その後も貸付けを継続したことからも、為替差損益とは無関係に本件各貸付けをしたことが裏付けられる。なお、前記事 実関係のとおり、原告は、平成25年及び平成26年の各貸付け並びに本件各弁済の際に為替差益を得ているが、上記判示に照らせば、これは、為替相場の動向とは無関係に貸付けを行い弁済を受けた結果として、いわば偶発的に利益を得たものとみられるのであって、これをもって、本件各貸付け等が営利性を有するものであったと直ちに認め ることはできない。 原告は、本件各貸付けのように、外貨建取引をすること又は外貨建債権を保有することは、必然的に為替差損益の発生を伴うものであるから、それ自体が投資判断として営利性を有する旨主張するが、上記で判示したところによれば、原告は、為替差損益の発生を念頭に置き、為替差益を獲得するために本件各貸付けを行ったとは認められず、原 告の主張は採用することができない。 以上のとおり、本件各貸付けについては、為替差益を得る旨の営利性 生を念頭に置き、為替差益を獲得するために本件各貸付けを行ったとは認められず、原 告の主張は採用することができない。 以上のとおり、本件各貸付けについては、為替差益を得る旨の営利性を有するものと認めることはできない。 ウその他、原告が本件各貸付債権又は本件貸付残債権に関して、主観的に利益を得る目的を有しており、かつ、客観的にみて利益の発生を期待し得 る活動をしていたことを認めるに足りる証拠はない。 小括以上によれば、本件各貸付債権又は本件貸付残債権に関して、原告が独立的営利活動を行っていたことを認めることはできず、雑所得を生ずべき業務自体が認められないから、本件貸付残債権は、その余の点について検討する までもなく、業務供用資産に該当しないというべきである。 2 争点1-2(本件貸付残債権の雑所得基因資産該当性)について雑所得基因資産の意義ア雑所得基因資産の該当性判断枠組み所得税法51条4項は、「(雑)所得の基因となる資産」(雑所得基因資 産)は、その損失の金額を一定の限度で、当該年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する旨を定める。 「所得の基因となる資産」との文言は、一定の時点において現に所得を発生させ、又は将来発生させ得るといった点に着目した文言ではなく、所得を発生させる原因となるという当該資産の性質について定めた文言 とみるのが文理上自然である。このような解釈は、所得税法が一定の時 点において現に所得を発生させた資産を指す場合は、「(所得の)基因となった」との文言を用いていること(24条2項、33条3項等)とも整合する。 また、証拠(甲7)によれば、昭和38年12月に税制調査会から提出された「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」に なった」との文言を用いていること(24条2項、33条3項等)とも整合する。 また、証拠(甲7)によれば、昭和38年12月に税制調査会から提出された「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」において、非営 業貸金の貸倒れによる元本損失については、貸倒れの生じた年に当該貸金の利子に対して課税する場合は、その利子に係る所得の金額を限度として控除を認めることが適当であるとされたことが認められる。しかし、元本の貸倒れによる損失が生ずる場合は、現実には利子の収入もない場合が多く、上記答申にあるように利子に係る所得の金額を限度とすると 実益が乏しい一方で、貸金の利子があった年に遡って控除し、又はその後の年において生ずる利子から順次控除する方法も税制を複雑にして適当でないことから、所得税法51条4項は、その年の雑所得又は不動産所得を限度としてそれぞれ控除するものとしたものと解される。このような立法趣旨からすれば、同項は、貸金の貸倒れ時点における利息の回 収可能性の有無にかかわらず、元本の損失額をその年の雑所得等から控除することを想定しているものと解され、これは上記解釈に沿うものといえる。 以上によれば、所得税法51条4項の規定する雑所得基因資産とは、その性質上雑所得を発生させる原因となる資産を意味するものと解する のが相当である。もっとも、当該資産の抽象的性質からは雑所得を発生させる抽象的な可能性を有する資産であっても、当該資産の客観的性質に照らして雑所得を発生させる具体的可能性がない場合には、当該資産に「基因して」雑所得が発生する可能性がないのであるから、雑所得基因資産に当たらないものというべきである。 イ被告の主張について この点につき、被告は、雑所得基因資産と認められるためには、損 が発生する可能性がないのであるから、雑所得基因資産に当たらないものというべきである。 イ被告の主張について この点につき、被告は、雑所得基因資産と認められるためには、損失が生じた際、当該資産が現に雑所得の基因となっているか、又は近い将来において基因となることが客観的に明らかであることが必要である旨主張する。 しかしながら、所得税法51条4項の文言からは、当該資産が、損失 が生じた時点において、現に雑所得の基因となっていること、又は近い将来において基因となることが客観的に明らかであることを要求していると読み取ることはできないばかりでなく、被告主張の解釈は、条文の文理上読み取ることのできない要件を追加又は加重して、資産損失を必要経費に算入できる場面を限定するものであるから、そもそ も法令の解釈としての妥当性に疑問なしとしない上、租税法律主義の観点からも問題があり、採用することができない。 被告主張の解釈によれば、利息の合意のある貸金債権が貸倒れとなった場合、通常は、元本のみならず利息についても弁済が不能となっており、貸倒れ時において、又はその近い将来において、利息の受領によっ て雑所得を得ることができなくなっているから、当該貸金債権は雑所得基因資産に該当しないことになるが、このような帰結は、非営業貸金の貸倒れによる元本の損失をその年の雑所得等を限度として控除することを可能とするために規定されたという前記立法趣旨と整合せず、この点からも被告主張の解釈を採用することはできない。 被告は、未実現の雑所得の原因となることのみをもって雑所得基因資産該当性を認めると、生活用資産を含むおよそ全ての動産が雑所得基因資産に該当して、その損失が雑所得から控除されることになりか 被告は、未実現の雑所得の原因となることのみをもって雑所得基因資産該当性を認めると、生活用資産を含むおよそ全ての動産が雑所得基因資産に該当して、その損失が雑所得から控除されることになりかねないから、妥当性を欠く旨主張する。 しかしながら、所得税法51条4項が、雑所得基因資産の範囲につき、 62条1項に規定する資産等を明文で除外する以外に限定を設けてい ないことからすれば、同除外以外に雑所得基因資産の範囲を限定することは文理解釈上無理がある。仮に資産損失の対象が広くなり過ぎることによって生ずる不当な結果を回避する必要があるとしても、そのような場合には、前判示のとおり、雑所得を発生させる原因となるか否かの判断において、当該資産の客観的性質に照らして雑所得を発生 させる具体的可能性がない場合に当たるか否かを検討することによって図るのが相当である。 雑所得基因資産該当性の判断ア外貨建債権は、外貨による弁済がされると、当該弁済を行った時点における為替相場により弁済額の円換算がされ、為替相場によっては為替差 益が生じて雑所得が発生する(所得税法57条の3第1項参照)。これは外貨建債権一般に当てはまるものであるから、資産の抽象的性質からは雑所得を発生させる抽象的な可能性を有するといえなくもない。 もっとも、実際に弁済がされて為替差益等の雑所得が発生する可能性の程度は、個々の債権に係る具体的事情によって様々であるから、外貨建債 権であることをもって直ちに雑所得基因資産該当性を認めるべきではなく、前判示のとおり、当該資産の客観的性質に照らして雑所得を発生させる具体的可能性がない場合には、雑所得基因資産に当たらないところ、外貨建債権の為替差益の場合は、当該債権の内容、発生原因ないし経緯、債権 前判示のとおり、当該資産の客観的性質に照らして雑所得を発生させる具体的可能性がない場合には、雑所得基因資産に当たらないところ、外貨建債権の為替差益の場合は、当該債権の内容、発生原因ないし経緯、債権者と債務者との関係等の客観的事情に照らして、弁済による為替差益等の雑 所得が発生する具体的可能性の有無を検討すべきである。 イこれを本件各貸付債権についてみるに、前記事実関係及び前記1ア認定のとおり、本件各貸付けは、原告が、自らが全ての株式を保有するA社を通じてヨットを保有するため、その購入及び維持管理に要する費用を貸し付けたものであり、無担保かつ無利息であること及び貸主である 原告は同社が十分な資金を有するまで弁済を求めないことが合意されて いた。また、前記事実関係の財務諸表の記載等からすれば、本件各貸付債権に対する弁済の原資となり得るA社の資産は、本件貸付金の残額を除けば、本件船舶の売却前は本件船舶のみ、売却後は同売却代金のみであった上、A社は、弁済に充てる原資を獲得するための活動を行っておらず、その能力も有していなかったものと認められる。加えて、前記事 実関係及び前記1ア認定のとおり、原告は、本件船舶購入当初は即時に転売することを予定しておらず、購入後間もなく売却することを決めてB社を介して売却先を探したものの、売却を決めてから実際に売却するまでに2年半程度の期間を要したことが認められる。 以上の事情を総合すれば、本件各貸付債権は、貸付金によって購入し た船舶が売却されるまで弁済を受けることが予定されておらず、船舶売却時期が未確定であったことから弁済期も確定していなかった上、弁済を受ける範囲についても、実際に船舶が売却されて代金の支払がされた後で、同代金を原資としてその限度で弁済を受けるこ れておらず、船舶売却時期が未確定であったことから弁済期も確定していなかった上、弁済を受ける範囲についても、実際に船舶が売却されて代金の支払がされた後で、同代金を原資としてその限度で弁済を受けることが予定されていたものと認められる。 このように、本件各貸付債権は、本件船舶が売却されるまでは、弁済期及び弁済を受けられる範囲が確定していなかったものであるから、弁済による為替差益発生の具体的可能性があったとはいえず、本件船舶が売却された時点で初めて、その売却代金の限度で弁済を受けて為替差益が発生する具体的可能性が生じたものであり、同限度を超える部分、すなわち本件 貸付残債権については、当初から上記弁済時点まで一貫して弁済を受ける具体的可能性がなかったものと認めるのが相当である。そして、この弁済を受ける具体的可能性は、例えば貸金債務の債務者の財産状態の変化により債務の弁済可能性が変化するといった債務者の主観や一時的な財産状態に基づくものではなく、本件貸付残債権の発生原因である消費貸借契約の 合意内容、本件各貸付けの相手方は原告が全株式を保有する法人であり、 本件船舶の購入及び維持管理等も含めて利益獲得活動を行っていなかったこと等の前判示に係る客観的事実関係に基づくものであるから、本件貸付残債権の客観的性質に照らし、債権発生時から上記弁済時点まで弁済を受ける具体的可能性がなかったということができる。 以上を踏まえると、本件貸付残債権は、その客観的性質に照らし、弁済 による為替差益等の雑所得が発生する具体的可能性がなかったということができるから、雑所得基因資産に該当しないものというべきである。 原告の雑所得基因資産該当性に係る主張についてア原告は、本件各貸付けの際に為替差益が発生していることを理由として ったということができるから、雑所得基因資産に該当しないものというべきである。 原告の雑所得基因資産該当性に係る主張についてア原告は、本件各貸付けの際に為替差益が発生していることを理由として、本件貸付残債権が雑所得基因資産である旨主張する。しかしながら、本件 各貸付けによって実現したのは、その原資であるユーロ建預金の為替差益であり、これは本件各貸付債権又は本件貸付残債権とは別個の資産について生じたものであって、その発生によって本件貸付残債権の雑所得基因性が基礎付けられるものではないから、原告の主張は前提を欠くものであって採用することができない。 イ原告は、本件各弁済によって本件各貸付債権の一部につき為替差益が発生したことから、本件船舶が本件各貸付債権の元本を上回る額で売却されていれば、本件貸付残債権についても弁済を受けることができたとして、本件貸付残債権が雑所得基因資産に該当する旨主張する。しかしながら、本件貸付残債権について当初から一貫して弁済による為替差益等の雑所得 が発生する具体的可能性がなかったことは、前判示のとおりであるし、本件船舶を本件各貸付債権の元本を上回る額で売却する具体的可能性がなかったことは前記1アで認定したとおりであり、前判示に照らし、その抽象的可能性のみでは、本件貸付残債権の雑所得基因資産該当性を肯定することはできない。 ウ原告は、本件貸付残債権と本件各弁済を受けた部分とは、本件各貸付 債権を一体として構成するものであるところ、本件各弁済のユーロ換算額は本件貸付残債権の額を上回っていたから、本件貸付残債権に充当され同債権について完全な回収が得られて為替差益が発生した客観的可能性があったとして、本件貸付残債権が雑所得基因資産に該当する旨主張する。しかしながら 権の額を上回っていたから、本件貸付残債権に充当され同債権について完全な回収が得られて為替差益が発生した客観的可能性があったとして、本件貸付残債権が雑所得基因資産に該当する旨主張する。しかしながら、本件貸付残債権について当初から一貫して弁済に よる為替差益等の雑所得が発生する具体的可能性がなかったことは、前判示のとおりであり、本件各貸付債権の一部に弁済を受けた部分があったことのみをもって、実際に弁済を受けていない本件貸付残債権についても弁済によって為替差益が実現する具体的可能性があったということはできない。 原告は、本件各貸付債権の一体性を前提として、本件貸付残債権の雑所得基因資産該当性を主張するところ、前記事実関係のとおり、本件各貸付けを構成するのは、異なる時点に行われた計38回の貸付けであるから、本件船舶の購入及び維持管理に係る資金の提供という共通の目的を有することのみをもって、法的に本件各貸付債権を一体の ものと評価することはできない。 この点について、原告は、被告において、本件各弁済に係る為替差益を算定するに当たり、本件各貸付債権全体を取得額の計算過程に取り込む総平均法に準ずる計算方法を適用していることから、本件各貸付債権を構成する債権には相互代替性が認められ、全体について定性的 に雑所得基因資産該当性を認めることが所得税法48条3項、同法施行令118条1項の文理に沿う旨主張するが、仮に同項の規定する計算方法の根拠が原告主張のとおり対象資産の相互代替性にあるとしても、同項は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額等を算定する過程において、複数回にわたって取得した有価証券の取得費を算 出するための便宜上の方法を定めるものにすぎず、ある資産について 同様の計算方法を採用したからとい に算入する金額等を算定する過程において、複数回にわたって取得した有価証券の取得費を算 出するための便宜上の方法を定めるものにすぎず、ある資産について 同様の計算方法を採用したからといって、直ちに当該資産全体を法的に一体と評価すべきであるとはいえない。そして、本件各貸付けの状況等を踏まえると、本件各貸付債権を構成する各債権を法的観点からみて一体と評価することができないことは前判示のとおりであるから、原告の主張は採用することができない。 エ原告は、被告において本件各貸付債権の取得額の計算につき総平均法に準ずる方法を適用しているから、本件貸付残債権を含めた本件各貸付債権全体が定性的に雑所得の基因となることが導かれる旨主張するが、既に判示したとおり、雑所得基因資産該当性は、当該資産がその性質上雑所得を発生させる原因となるか否かによって判断すべきである以上、雑所得の算 定過程における当該資産の取得額の計算方法如何によって雑所得基因資産該当性が左右されるものではないから、原告の主張は理由がない。 オ原告は、同じ平成26年に一部弁済を受けた部分についてのみ為替差益が実現したとして課税所得の認定をする一方で、一部弁済後の本件貸付残債権について雑所得基因資産該当性を否定するのは、合理的とはいえ ず条文解釈に反する、弁済を受けた部分について雑所得の課税をしながら残債権について資産損失該当性を否定することで更に課税を行うに等しいなどと主張する。しかしながら、本件船舶の売却代金を原資としてその限度で弁済を受けることが予定されていたという本件各貸付債権の性質に照らし、現に弁済を受けて為替差益が実現した部分について雑所 得の発生を認めて課税し、他方で弁済の具体的可能性のなかった本件貸付残債権について雑所得 予定されていたという本件各貸付債権の性質に照らし、現に弁済を受けて為替差益が実現した部分について雑所 得の発生を認めて課税し、他方で弁済の具体的可能性のなかった本件貸付残債権について雑所得基因資産該当性を否定したことは、所得税法51条4項の「所得の基因となる資産」を前判示のとおり解釈して適用した結果であるから、条文解釈に反するものではなく、実質的な二重課税に当たるともいえない。 カ原告は、本件船舶の売却により原資を確保できた場合は、A社から本件 貸付金の使用の対価の支払を受けることを念頭に置いており、同支払を受けた場合には雑所得として位置付けられるものであるから、本件各貸付債権の一部を構成している本件貸付残債権も雑所得基因資産に該当する旨主張するが、前判示によれば、本件船舶の売却によって本件各貸付債権の元本を超える金員が原告に支払われる具体的可能性、すなわち、 原告主張に係る原資が確保できる具体的可能性があったとは認められないから、原告の主張は前提を欠くものであって採用することはできない。 キその他、本件貸付残債権について、弁済による為替差益等の雑所得が発生する具体的可能性を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。 小括 以上によれば、本件貸付残債権は雑所得基因資産に該当しない。 3 本件更正処分等の適法性前記1及び2で判示したとおり、本件貸付残債権は、所得税法51条4項の定める業務供用資産及び雑所得基因資産のいずれにも該当しないから、争点2(本件債権放棄による資産損失発生の有無)について判断するまでもなく、同 項の適用によって、本件貸付残債権に係る損失を、原告の平成26年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。そうすると、原 る資産損失発生の有無)について判断するまでもなく、同 項の適用によって、本件貸付残債権に係る損失を、原告の平成26年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。そうすると、原告の平成26年分の所得税等として納付すべき税額は、別紙の被告主張のとおりの計算により、4億8160万6200円となるところ、前記事実経過のとおり、本件更正処分は納付すべき税額を4億2622万3500円としており、上記 認定の納付すべき税額を超えるものではないから、本件更正処分は適法であり、同処分を基にされた過少申告加算税の賦課決定処分(変更決定後のもの)も適法である。 第4 結論以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、 主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官春名 茂 裁判官下道良太 裁判官瀬智彦は、差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官春名 茂 (別表1~3省略) (別紙)被告主張の納付すべき税額等 1 総所得金額 13億2990万1288円次のからの各金額の合計額 配当所得の金額 542万5000円原告が所有するハウスコム株式会社の株式について、平成26年中に生じた剰余金の配当の金額給与所得の金額 1億4700万7018円雑所得の金額 11億7746万9270円 次のアからウの各金額の合計額ア本件各貸付けにより生じた為替差益の額 1429万5918円 8円雑所得の金額 11億7746万9270円 次のアからウの各金額の合計額ア本件各貸付けにより生じた為替差益の額 1429万5918円平成26年中の本件各貸付けにより生じた各貸付金の円換算額と同貸付けの原資となった各預金の円換算額との差額の合計額イ本件各弁済により生じた為替差益の額 7億1258万8352円 本件各弁済により原告が受領した米国ドルの円換算額と本件各弁済によって消滅した本件貸付金の円換算額との差額の合計額ウ本件交換により生じた為替差益の額 4億5058万5000円原告が本件交換によって受領した33億0363万9000円と本件交換の際に支払った2790万米国ドルの円換算額28億5305万4000円 との差額 2 所得控除の額の合計額 209万7115円 3 課税される所得金額 13億2780万4000円上記1の金額から上記2の金額を控除した後の金額(1000円未満の端数切捨て) 4 納付すべき税額 4億8160万6200円 次のの金額から次のの金額を控除し、次のの金額を加算した後に、次の及びの各金額を差し引いて算出した金額(100円未満の端数切捨て)課税総所得金額に対する税額 5億2832万5600円上記3の金額に所得税法89条1項(平成25年法律第5号による改正前のもの)に規定する税率を乗じて算出した金額 配当控除の額 27万1250円所得税法92条1項3号イの規定に基づき、上記1の金額に100分の5の割合を乗じて算出した金 を乗じて算出した金額 配当控除の額 27万1250円所得税法92条1項3号イの規定に基づき、上記1の金額に100分の5の割合を乗じて算出した金額復興特別所得税額 1108万9141円上記の金額から上記の金額を控除した後の金額に、東日本大震災からの 復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条が規定する100分の2.1の税率を乗じて算出した金額(1円未満の端数切捨て)源泉徴収税額 5743万4265円次のア及びイの各金額の合計額 ア確定申告分 5632万6480円前記1の給与所得に係る源泉徴収税額イ配当所得に係る源泉徴収税額 110万7785円前記1の配当所得に係る源泉徴収税額予定納税額 10万3000円 以上
▼ クリックして全文を表示